(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】障害状態の存在下での陰圧創傷療法装置の制御
(51)【国際特許分類】
A61M 27/00 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
A61M27/00
(21)【出願番号】P 2019548398
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2018055698
(87)【国際公開番号】W WO2018162613
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-27
(32)【優先日】2017-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391018787
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Building 5,Croxley Park,Hatters Lane,Watford,Hertfordshire WD18 8YE,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ベン・アラン・アスケム
(72)【発明者】
【氏名】イェスワンス・ガッデ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ケルビー
(72)【発明者】
【氏名】ダミン・マスグレイブ
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス・クラレンス・キンタナル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・リー・スチュワード
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】井上 哲男
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-514451(JP,A)
【文献】特表2016-517318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0136325(US,A1)
【文献】特表2015-510803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷に陰圧を加える装置であって、
患者の創傷上に配置されるように構成された創傷被覆材と、
前記創傷被覆材上または前記創傷被覆材内に配置された陰圧源であって、流体流路を介して陰圧を前記創傷被覆材に提供するように構成された、陰圧源と、
前記創傷被覆材上または前記創傷被覆材内に配置されたスイッチであって、前記陰圧源による陰圧の供給を制御するために
起動入力を受信するように構成される、スイッチと、
前記創傷被覆材上または前記創傷被覆材内に配置されたインタフェース要素であって、前記インタフェース要素は、取り付けられた時に電気接点を完了しかつ取り外し時に電気接点を切断する
導電性ラベルを含む、インタフェース要素と、
前記スイッチおよび前記インタフェース要素に電気的に連結された制御回路であって、前記制御回路が
、
前記陰圧源が陰圧を供給していない間に、前記
起動入力の受信に応答して前記陰圧源で陰圧を供給し、
前記陰圧源が陰圧を供給している間に、前記
起動入力の受信に応答して前記陰圧源で陰圧を供給することを防止し、
前記インタフェース要素の前記導電性ラベルを取り外したとき、前記陰圧源での陰圧の供給を無効にするように構成される、制御回路と、を備える、装置。
【請求項2】
前記制御回路が、前記陰圧源または前記制御回路の動作の停止、前記流体流路内に位置付けられたベントの開放、または前記流体流路内に位置付けられた弁の閉鎖によって、前記陰圧源での陰圧の供給を無効化するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御回路が、(i)前記陰圧源または前記制御回路への電力の切断、または(ii)前記陰圧源または前記制御回路に提供されるイネーブル信号の取消によって、前記陰圧源または前記制御回路の動作を停止するように構成される、請求項
2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御回路が、前記陰圧源の動作の停止、前記流体流路内に位置付けられたベントの開放、または前記流体流路内に位置付けられた弁の閉鎖によって、前記陰圧源での陰圧の供給を防止するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記インタフェース要素が、前記創傷被覆材に結合されたフィルム内に成形される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記スイッチが、一定期間の間、前記スイッチの押下げに応答して前記
起動入力を受信するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記期間が0.5秒~5秒である、請求項
6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月8日出願の米国仮特許出願第62/468,796号の利益を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示の実施形態は、陰圧療法もしくは減圧療法または局所陰圧(TNP)療法を用いて、創傷を被覆かつ治療するための方法及び装置に関する。具体的には、限定するものではないが、本明細書に開示された実施形態は、陰圧療法デバイス、TNPシステムの動作を制御するための方法、及びTNPシステムの使用方法に関する。
【発明の概要】
【0003】
一部の実施形態では、創傷への陰圧を適用するための装置が開示される。装置は、患者の創傷の上に配置されるように構成された創傷被覆材、流体流路を介して陰圧を創傷被覆材に供給するように構成された、創傷被覆材上または創傷被覆材内に配置された陰圧源、第一のユーザ入力を受信するように構成されている、創傷被覆材上または創傷被覆材内に配置されたスイッチ、第二のユーザ入力を受信するように構成されている、創傷被覆材上または創傷被覆材内に配置されたインタフェース要素、および制御回路をみうる。制御回路は、スイッチおよびインタフェース要素に電気的に結合されうる。第一のモードにある時、陰圧源が陰圧を供給しない間、第一のユーザ入力の受信に応答して、制御回路は陰圧を陰圧源で供給でき、陰圧源が陰圧を供給している間、第一のユーザの入力の受信に応答して、陰圧源での陰圧の供給を防止することができ、第二のユーザ入力の受信に応答して、第一のモードから第一のモードとは異なる第二のモードに変更できる。第二のモードにある時、制御回路は陰圧源での陰圧の供給を無効化することができる。
【0004】
上記の段落に記載の装置は、以下の特徴のうちの一つ以上を含み得る。スイッチがフォルトを経験し、第一のユーザ入力を受信できなくなると、制御回路は、第二のユーザ入力以外のユーザ入力の受信をしないことに応じて、陰圧を陰圧源で供給することを防止または無効化できる。制御回路は、第一のユーザ入力以外のユーザ入力の受信をしないことに応じて、陰圧を陰圧源で供給することができる。陰圧源が陰圧を供給している間に、制御回路は、第一のユーザ入力および第二のユーザ入力以外のユーザ入力の受信をしないことに応じて、陰圧を陰圧源で供給することを防止または無効化できる。制御回路が第二のモードにある時、制御回路は、第二のユーザ入力の受信に応答して、第二のモードから第一のモードへ変更し、陰圧源で陰圧を供給することができる。制御回路は、陰圧源または制御回路の動作の停止、流体流路内に位置付けられたベントの開放、または流体流路内に位置付けられた弁の閉鎖によって、陰圧源での陰圧の供給を無効化することができる。制御回路は、(i)陰圧源または制御回路への電力の切断、または(ii)陰圧源または制御回路に提供されるイネーブル信号の取消によって、陰圧源または制御回路の動作を停止できる。制御回路は、陰圧源の動作の停止、流体流路内に位置付けられたベントの開放、および流体流路内に位置付けられた弁の閉鎖によって、陰圧源での陰圧の供給を防止することができる。インタフェース要素は、創傷被覆材に結合されたフィルム内に形成することができる。インタフェース要素は、第二のユーザ入力を受けるように構成された電気接点を含み得る。スイッチは、スイッチの押下げに応答して一定期間にわたって第一のユーザ入力を受けることができる。期間は0.5秒~5秒とすることができる。
【0005】
前述の二つの段落に記載した装置の動作方法、使用方法、または製造方法も開示される。
【0006】
一部の実施形態では、創傷被覆材を備えた陰圧創傷療法装置を作動する方法が開示される。陰圧源は創傷被覆材の上または被覆材内に配置することができ、スイッチは創傷被覆材の上または被覆材内に配置することができる。インタフェース要素は、創傷被覆材上または創傷被覆材内に配置することができ、スイッチは第一のユーザ入力を受信することができ、インタフェース要素は第二のユーザ入力を受信できる。その方法は、陰圧源が陰圧を創傷被覆材に供給していない間に第一のユーザ入力の受信に応答して、流体流路を介して創傷被覆材に陰圧源で陰圧を供給すること、陰圧源が創傷被覆材に陰圧を供給している間、第一のユーザ入力の受信に応答して、流体流路を介して創傷被覆材に陰圧源での陰圧の供給を防止すること、第二のユーザ入力の受信に応答して、創傷被覆材に陰圧源での陰圧の供給を無効化すること、およびその陰圧の供給の無効化に続いて、第一のユーザ入力の受信に応答して、流体流路を介して創傷被覆材に陰圧源で陰圧を供給しないこと、を含む。
【0007】
上記の段落に記載の方法は、以下の特徴のうちの一つ以上を含み得る。その方法はさらに、スイッチがフォルトを経験し、第一のユーザ入力を受信できなくなることに続いて、第二のユーザ入力以外のユーザ入力の受信をしないことに応じて、陰圧源で陰圧を供給することを防止または無効化できることを含む。方法は、第一のユーザ入力以外のユーザ入力の受信をしないことに応じて、陰圧を陰圧源で供給することをさらに含みうる。方法は、陰圧源が陰圧を供給している間、第一のユーザ入力および第二のユーザ入力以外のユーザ入力を受信しないことに応じて、陰圧を陰圧源で防止または無効化することをさらに含みうる。陰圧の供給無効化は、陰圧源または制御回路の動作の停止、流体流路内に位置付けられたベントの開放、あるいは流体流路内に位置付けられた弁の閉鎖を含み得る。方法はさらに、インタフェース要素の電気接点を介して第二のユーザ入力を受信することを含み得る。方法はさらに、スイッチの押下げに応答して一定期間にわたって第一のユーザ入力を受信することを含み得る。期間は0.5秒~5秒とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の特徴および利点は、添付図面と共に下記の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0009】
【
図1】
図1は、一部の実施形態による陰圧療法システムを示す。
【
図2A】
図2Aは、
図1の陰圧療法システムなどの、一部の実施形態による陰圧療法システムの側面図を示す。
【
図2B】
図2Bは、
図1の陰圧療法システムなどの、一部の実施形態による陰圧療法システムの上面図を示す。
【
図3】
図3は、
図2Aおよび
図2Bの陰圧療法システムなどの、一部の実施形態による陰圧療法システムの上面図を示す。
【
図4】
図4は、
図2Aおよび
図2Bの陰圧療法システムなどの、一部の実施形態による陰圧療法システムの上面図を示す。
【
図6】
図6は、一部の実施形態による陰圧療法システムで実行可能な療法制御プロセスを示す。
【
図9】
図9は、
図2Aおよび
図2Bの陰圧療法システムなどの、一部の実施形態による陰圧療法システムの構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、減圧療法または局所陰圧(TNP)療法を用いて、創傷を被覆かつ治療するための方法及び装置に関する。具体的には、限定するものではないが、本開示の実施形態は、陰圧療法装置、TNPシステムの動作を制御するための方法、およびTNPシステムの使用方法に関する。方法及び装置は、以下に説明する特徴の任意の組み合わせを組み込むか、または実装することができる。
【0011】
様々な種類の創傷被覆材が、ヒトまたは動物の治癒過程を補助するものとして公知である。様々な種類の創傷被覆材には、様々な種類の材料および層、例えば、ガーゼ、パッド、フォームパッド、または多層創傷被覆材が含まれる。TNP療法は、真空補助閉鎖療法、陰圧創傷療法、または減圧創傷療法とも称されることがあり、創傷の治癒率を改善するための有益な機序になり得る。こうした療法は、切開創傷、開放創、および腹部創などの広範な創傷に適用することができる。
【0012】
TNP療法は、組織浮腫を軽減し、血流を促し、肉芽組織の形成を促進させ、過剰な滲出物を除去し、細菌負荷つまり創傷への感染を低減することによって、創傷の閉鎖および治癒を支援することができる。その上、TNP療法は、創傷の外部障害を減らし、より迅速な治癒を促すことができる。
【0013】
本明細書で使用される場合、-XmmHgといった減圧または陰圧レベルは、通常、760mmHg(または、1気圧、29.93inHg、101.325kPa、14.696psiなど)に相当する大気圧よりも低い圧力レベルを表す。したがって、-XmmHgの陰圧値は、(760-X)mmHgの圧力といった、大気圧よりもXmmHg低い圧力を表している。さらに、-XmmHgよりも「低い」または「小さい」陰圧は、大気圧により近い圧力に相当する(例えば、-40mmHgは-60mmHgよりも低くなる)。-XmmHgよりも「高い」または「大きい」陰圧は、大気圧からより遠い圧力に相当する(例えば、-80mmHgは-60mmHgよりも高くなる)。
【0014】
概要
一部のTNP装置のユーザインタフェースは、それを介してユーザがユーザ入力を提供できる限定的な要素を持ちうる。一部の実例では、特定のユーザインタフェースは、ユーザによって使用可能な単一要素を含んで、陰圧の送達を停止および開始をすることができ、ユーザは単一要素を別の要素と交換またはやり取りすることができない場合がある。これらの特定のユーザインタフェースは、多数の要素を有するより複雑なユーザインタフェースより構築して操作することがより簡単であることが望ましい場合がある。しかし、特定のユーザインタフェースは、単一要素がフォルト(例えば、故障など)を経験し、ユーザ入力を受信するように機能できなくなる場合に問題を呈しうる。特定のユーザインタフェースのユーザは、陰圧がまだ提供されていない場合、陰圧の送達を不所望に開始できない場合があり、陰圧が提供されている場合に陰圧の送達を不所望に停止できない場合がある。
【0015】
陰圧の送達を停止できないユーザの状況は、患者の創傷の治癒に対するリスクを追加的にもたらし得る。陰圧の送達中、患者が不快感を創傷被覆材から経験した場合、単一要素の体験によりユーザ入力を受けることができなくなり、患者は創傷被覆材を取り除いて陰圧の送達をやむなく終了する可能性がある。創傷被覆材の除去は、患者の創傷を損傷する可能性があり、すでに進行していた任意の治癒軌道を妨げるほか、創傷被覆材からの保護の喪失に起因して創傷を外部汚染物質に曝露する可能性がある。
【0016】
陰圧の送達を停止することができないユーザの状況に対処するために、陰圧の送達の停止および開始のためユーザによって使用可能な単一要素を持つTNP装置は、別の冗長化機構などを含んで、陰圧の送達を停止することができる。一部の実施態様では、四つの回路を備えたヘッダ回路を使用することができ、それぞれの対の回路を使用して一つ以上の手段による操作を停止することができる。一対の回路をTNP装置の電源に接続するために使用することができ、他方の対の回路をイネーブル信号(例えば、制御回路イネーブル信号)に接続するために使用することができる。追加でまたは代替で、表面実装技術(SMT)ピンヘッダを使用することができる。別の機構は、例えば、アクティブ化機構を簡単に失うことができないように創傷被覆材に溶着されうるフィルム内に形成されるアクティブ化部品でありうる。追加でまたは代替で、ゼロ挿入力(ZIF)コネクタのロック機構を使用して、保持を改善しうる。別の実施例では、アクティブ化機構は、フレキシブルPCBなど、挿入用フィルムに構築されたプリント回路基板(PCB)とすることができる。また別の実施例では、アクティブ化機構は、取り付けられた時に回路を完成させる導電性ラベルを含み、陰圧の送達を停止するために取り外し可能である。一部の実施態様では、タブは追加でまたは代替で使用されてもよく、例えば、タブを引き抜いてTNP装置用の電源を中断させる(電池を除去するためなど)か、または創傷被覆材内の開口を引き裂いて(創傷被覆材の外側のタブを引き抜くことによるなど)、陰圧の送達の終了を引き起こす大きな漏れを強制することができる。
【0017】
減圧療法システム及び方法
図1はTNP装置11および創傷14を含む陰圧療法システム100を示す。TNP装置11は創傷14を治療するために使用され得る。TNP装置11には、相互に電気的に通信するように構成された、制御回路12Aと、メモリ12Bと、陰圧源12Cと、ユーザインタフェース12Dと、電源12Eと、第一の圧力センサ12Fと、第二の圧力センサ12Gと、皮膚検出器12Hとが含まれ得る。さらに、TNP装置11には創傷被覆材13が含まれ得る。電源12Eは、TNP装置11の一つ以上の構成要素に電力を供給することができる。
【0018】
制御回路12A、メモリデバイス12B、陰圧源12C、ユーザインタフェース12D、電源12E、第一の圧力センサ12F、第二の圧力センサ12G、および皮膚検出器12Hのうちの一つ以上が、創傷被覆材13と一体化され得るか、その被覆材13の一部として組み込まれ得るか、その被覆材13に付着され得るか、またはその被覆材13内に配置され得る。したがって、TNP装置11は、その制御エレクトロニクスを有し、創傷被覆材13から分離しているのではなく、創傷被覆材13を搭載してポンピングするとみなされ得る。
【0019】
制御回路12Aには、一つ以上のコントローラと、起動回路と、ブーストコンバータと、電流制限器と、フィードバック調整回路と、Hブリッジインバータとが含まれ得る。一つ以上のコントローラは、メモリデバイス12Bに格納された命令に少なくとも従って、TNP装置11の一つ以上の他の構成要素の動作を制御することができる。一つ以上のコントローラは、例えば、一つ以上のHブリッジインバータへの信号入力(例えば、信号のパルス幅変調)を介して陰圧源12Cを制御することができ、これは電源12Eから陰圧源12Cへの電力を駆動する。
【0020】
陰圧源12Cには、限定されないが、ロータリーダイヤフラムポンプもしくは他のダイヤフラムポンプ、圧電ポンプ、蠕動ポンプ、ピストンポンプ、ロータリーベーンポンプ、液封式ポンプ、スクロールポンプ、圧電変換器によって動作するポンプ、ボイスコイルポンプ、または他の任意の好適なポンプもしくはマイクロポンプ、あるいは上記のものの任意の組み合わせなどのポンプが含まれ得る。
【0021】
ユーザインタフェース12Dは、ユーザ入力を受信するか、またはユーザ出力を患者または介護者に提供する一つ以上の要素を含み得る。ユーザ入力を受信する一つ以上の要素は、ボタン、スイッチ、ダイヤル、またはタッチスクリーンなどを含んでもよく、ユーザ出力を提供する一つ以上の要素は、発光ダイオード(LED)のアクティブ化もしくはディスプレイの一つ以上のピクセルのアクティブ化、またはスピーカーのアクティブ化などを含んでもよい。一例では、ユーザインタフェース12Dは、第一のユーザ入力(例えば、陰圧の起動または停止の入力)を受信するためのスイッチと、第二のユーザ入力を受信するためのインタフェース要素(例えば、陰圧無効化入力)と、TNP装置11の動作状態(例えば、正常に機能している状態、故障状態、またはユーザ入力を待っている状態)を示すための二つのLEDとを含んでもよい。
【0022】
第一の圧力センサ12Fは、陰圧源12Cと創傷14とに接続している流体流路の圧力、創傷14での圧力、または陰圧源12Cにおける圧力などの、創傷被覆材13の下の圧力をモニタリングするために使用され得る。第二の圧力センサ12Gは、創傷被覆材13の外側の圧力をモニタリングするために使用され得る。創傷被覆材の外側の圧力は大気圧であり得るが、大気圧は、例えば使用される高度、またはTNP装置11が使用され得る圧力調整された環境に応じて変動し得る。
【0023】
制御回路12Aは、陰圧源12Cによる陰圧の供給を、第一の圧力センサ12Fによりモニタリングされる圧力と第二の圧力センサ12Gによりモニタリングされる圧力とを少なくとも比較することによって、制御することができる。制御回路12Aは、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサなどのコントローラを含み得る。
【0024】
皮膚検出器12Hは、創傷被覆材13が創傷14の上に配置されているかどうかを判定するために使用できる。皮膚検出器12Hは、例えば、患者の皮膚を検出することができる。皮膚検出器12Hによる検出は、創傷被覆材13が、創傷14の横の患者の皮膚に結合されているかどうかを確認できる。皮膚が検出されると、これにより、TNP装置11の起動は、非意図的ではなく意図的であり、TNP装置11の輸送または製造の間など、TNP装置11の非意図的な起動、またはTNP装置11の寿命末期のタイマを防止するために使用できることを示し得る。一実施例では、皮膚検出器12Hが皮膚を検出したことを制御回路12Aに示す場合、制御回路12Aは、陰圧源12Cを起動して、ユーザインタフェース12Dを介して起動入力の受信に応答して陰圧を供給することができる。一方、皮膚検出器12Hが、皮膚が検出されないと制御回路12Aに示す場合、制御回路12Aは、陰圧源12Cを起動してユーザインタフェース12Dを介して起動入力の受信に応答して陰圧を供給できない。皮膚検出器12Hは、容量センサ、インピーダンスセンサ、光学センサ、ピエゾ抵抗センサ、圧電センサ、エラスト抵抗センサ、および電気化学センサのうち一つ以上を含み得る。
【0025】
創傷被覆材13は、創傷接触層と、スペーサ層と、吸収層とを具備し得る。創傷接触層は、創傷14に接触していてもよい。創傷接触層は、被覆材を創傷14の周囲の皮膚に固定するために、患者に対向する側に接着剤を具備し得るか、または、創傷接触層を創傷被覆材13のカバー層もしくは他の層に固定するために、上側に接着剤を具備し得る。動作時に、創傷接触層は、滲出物が創傷14に戻るのを阻止または実質的に防止しつつ、創傷から滲出物を取り除きやすくするように一方向流をもたらすことができる。スペーサ層は、創傷部位の上に陰圧を分配するよう促し、創傷滲出物及び流体を創傷被覆材13内に輸送しやすくするよう促すことができる。さらに、吸収層は創傷14から吸引された滲出物を吸収し、保持することができる。
【0026】
制御回路12Aは、一部の場合、陰圧源12Cでの陰圧の供給を防止することができる。例えば、制御回路12Aは、陰圧源の動作を停止することによって陰圧の供給を防ぎ、流体流路内に位置付けられたベントを開くことおよび流体流路内に位置付けられた弁を閉じることを防止することができる。
【0027】
陰圧源12Cによる陰圧の供給は、一部の場合には無効化することができる。例えば、陰圧の供給は、陰圧源12Cまたは制御回路12Aの動作を停止すること、流体流路内に位置付けられたベントを開くこと、および流体流路内に位置付けられた弁を閉じることによって無効化することができる。一部の実施態様では、陰圧源12Cまたは制御回路12Aの動作の停止は、陰圧源12Cもしくは制御回路12Aへの電力の切断、または陰圧源12Cもしくは制御回路12Aに供給されるイネーブル信号の取り消しによって実施され得る。
【0028】
制御回路12Aは、陰圧源12Cのデューティサイクルを監視できる。本明細書で使用される場合、「デューティサイクル」とは、陰圧源12Cが作動中であるか、またはある期間にわたって稼働している時間量を表し得るものである。言い換えると、デューティサイクルは、陰圧源12Cが作動状態である時間を、対象となる総時間の割合として表し得るものである。デューティサイクルの測定値は、陰圧源12Cの働きのレベルを表し得る。例えば、デューティサイクルは、陰圧源12Cが正常に動作している、よく稼働している、極めてよく稼働しているなどを示すことができる。さらに、周期的なデューティサイクル測定値といったデューティサイクルの測定値は、漏出の存在もしくは漏出の程度、または創傷から吸引される流体(例えば、空気、液体、または固体の滲出物など)の流量などの様々な動作状態を表すことができる。測定したデューティサイクルと一連の閾値(例えば、較正時に算出される)とを比較することなどによって、デューティサイクルの測定値に基づいて、コントローラは、システムの動作を制御するアルゴリズムまたはロジックを実行することができるか、または実行するようにプログラムされ得る。例えば、デューティサイクルの測定値は、大きな漏出があることを示すことができ、制御回路12Aは、この状態をユーザ(例えば、患者、介護者、または医師など)に示すようにプログラムされ得るか、または節電のために陰圧源の動作を一時的に中断もしくは一時停止するようにプログラムされ得る。
【0029】
TNP装置11が創傷14を治療するのに用いられ得る場合には、創傷被覆材13は、創傷13の周囲及び創傷被覆材13の下に実質的に密閉された空間または閉鎖された空間を作ることができ、第一の圧力センサ12Fがこの空間の圧力レベルを周期的または連続的に測定またはモニタリングすることができる。制御回路12Aは、この空間の圧力レベルを、第一の陰圧設定値限界と少なくとも第二の陰圧設定値限界との間で制御することができる。一部の例では、第一の設定値限界は約-70mmHgであるか、または約-60mmHg以下~約-80mmHg以上であり得る。一部の例では、第二の設定値限界は約-90mmHgであるか、または約-80mmHg以下~約-100mmHg以上であり得る。
【0030】
図2Aは陰圧療法システム200の側面図を示し、
図2Bは陰圧療法システム200の上面図を示している。陰圧療法システム200は、陰圧療法システム100の実施態様例となり得る。
【0031】
陰圧療法システム200では、TNP装置11の創傷被覆材13は創傷14に付着しているように示されている。創傷被覆材13を通る空気の流れと、創傷14からの創傷滲出物の流れとを矢印で示している。TNP装置11には、空気排出部26と、制御回路12A、メモリデバイス12B、陰圧源12C、ユーザインタフェース12D、電源12E、第一の圧力センサ12F、第二の圧力センサ12G、おおび皮膚検出器12Hのうちの一つ以上などのTNP装置11の構成要素のための構成要素のハウジングまたは構成要素の収納領域などの構成要素領域25とが含まれ得る。
【0032】
陰圧療法システム200のユーザインタフェース12Dには、スイッチ21(ドームスイッチなど)と、インタフェース要素22(電気接点)、第一の表示器23(第一のLEDなど)と、第二の表示器24(第二のLEDなど)とが含まれ得る。スイッチ21は、陰圧の起動または停止のユーザ入力を受信すること(例えば、0.5秒~5秒の間などのある期間の間スイッチ21を押し下げることに呼応して、起動または停止のユーザ入力を受信することなど)ができる。インタフェース要素22は、陰圧無効ユーザ入力を受信できる。第一の表示器23と第二の表示器24は、正常に機能している状態、故障状態、またはユーザ入力を待っている状態などの動作状態を示すことができる。一部の実施態様では、スイッチ21またはインタフェース要素22は、陰圧源12Cもしくは制御回路12Aの電源接続部(制御回路12Aのコントローラなど)、または陰圧源12Cもしくは制御回路12Aのイネーブル信号部と連結して、陰圧の供給を起動もしくは停止するか、または陰圧の供給を無効化することができる。追加でまたは代替で、SMTピンヘッダを使用して、陰圧の供給を起動もしくは停止、または陰圧の供給を無効化することができる。
【0033】
陰圧療法システム200の創傷被覆材13の構成要素部が、エアロック層27と、吸収層28と、接触層29とを含むように示されている。エアロック層27は、空気が流れるようにすることができる。吸収層28は、創傷滲出物を吸収することができる。接触層29は柔軟性があり、シリコンを含んでいてもよく、TNP装置11を患者につなげるために使用することができる。
【0034】
図3は、陰圧療法システム200のより詳細な実施態様例でありうる陰圧療法システム300の上面図を示す。図示のように、インタフェース要素22は、位置32において創傷被覆材13に溶着されるフィルム内に形成され得るアクティブ化部品31を含み得る。アクティブ化部品31は、インタフェース要素22のユーザ入力を受けるために使用できる。
【0035】
図4は、陰圧療法システム200のより詳細な実施態様例でありうる陰圧療法システム400の上面図を示す。図示のように、インタフェース要素22は、可撓性で、挿入用のフィルム内に構築され、位置42で創傷被覆材13に溶着され得るプリント回路基板(PCB)41を含み得る。プリント回路基板41は、インタフェース要素22のユーザ入力を受信するために使用できる。さらに、ゼロ挿入力(ZIF)コネクタのロック機構を使用して、保持を改善しうる。
【0036】
図5Aおよび
図5Bは、陰圧療法システム200のより詳細な実施態様例でありうる陰圧療法システム500の上面図を示す。図示のように、インタフェース要素22は、取り付けられた時(
図5Bを参照)に電気接点を完了し、取り外し時に電気接点を切断してインタフェース要素22のユーザ入力を受信するために使用され得る導電性ラベル51を含むことができる。さらに、ZIFコネクタのロック機構を使用して、保持を改善しうる。
【0037】
図6は、TNP装置11などの装置による陰圧療法の送達を制御するために使用可能な療法制御プロセス600を示す。便宜上、療法制御プロセス600がTNP装置11の文脈において説明されるが、代わりに、本明細書に記載の他のシステムで、または示されていない他のシステムによって実行される場合もある。療法制御プロセス600は、一部の例において、TNP装置11の制御回路12Aによって実施され得る。
【0038】
ブロック602で、療法制御プロセス600は、無効入力がユーザから受信されたかどうかを判断できる。無効入力は、例えば、インタフェース要素22を介してユーザから受信されてもよい。一部の実施態様では、無効入力は、インタフェース要素22を介する以外のTNP装置11へのいずれのユーザ入力によっても提供されない場合がある。
【0039】
無効入力が受信された場合、ブロック604で、療法制御プロセス600は陰圧の供給を無効にすることができる。陰圧の供給は、例えば、陰圧源12Cまたは制御回路12Aの動作の停止、流体流路内に位置付けられたベントの開放、流体流路内に位置付けられた弁の閉鎖によって無効化され得る。ブロック604の後、療法制御プロセス600は終了することができる。一部の実施態様では、ブロック604の後、TNP装置11は、スイッチ21へのユーザ入力によっては起動されなくなることがあり、そのためユーザはTNP装置11に陰圧を生成させることができなくなり得る。
【0040】
無効入力が受信されなかった場合、ブロック606で、療法制御プロセス600は、起動入力がユーザから受信されたかどうかを判断できる。起動入力は、例えば、スイッチ21を介してユーザから受信され得る。一部の実施態様では、起動入力は、スイッチ21を介する以外のTNP装置11へのいずれのユーザ入力によっても提供されない場合がある。
【0041】
起動入力が受信されなかった場合、療法制御プロセス600はブロック602に戻り、再び無効入力がユーザから受信されたかどうかを判断することができる。
【0042】
一方、起動入力が受信された場合、ブロック608で、療法制御プロセス600は陰圧を供給することができる。陰圧の供給は、陰圧源12Cによって実施することができ、陰圧は、流体流路を介して創傷被覆材13に供給することができる。
【0043】
ブロック610で、療法制御プロセス600は、不停止入力がユーザから受信されたかどうかを判断できる。停止入力は、例えば、スイッチ21を介してユーザから受信されうる。一部の実施態様では、停止入力は、スイッチ21を介する以外のTNP装置11へのいずれのユーザ入力によっても提供されない場合がある。
【0044】
停止入力がブロック612で受信された場合、療法制御プロセス600は、陰圧の供給を防止することができる。陰圧の供給は、例えば、陰圧源12Cの動作の停止、流体流路内に位置付けられたベントの開放、および流体流路内に位置付けられた弁の閉鎖のうちの一つ以上によって防止されうる。ブロック612の後、療法制御プロセス600はブロック602に戻り、再び無効入力がユーザから受信されたかどうかを判断することができる。
【0045】
停止入力がブロック614で受信された場合、療法制御プロセス600は、無効入力がユーザから受信されたかどうかを判断できる。無効入力は、例えば、インタフェース要素22を介してユーザから受信されてもよい。一部の実施態様では、無効入力は、インタフェース要素22を介する以外のTNP装置11へのいずれのユーザ入力によっても提供されない場合がある。いくつかの実施形態では陰圧の供給を無効化するかどうかを判断するために、TNP装置11が陰圧創傷療法を提供する間に、ブロック614は定期的に実行される。
【0046】
無効入力が受信されなかった場合、療法制御プロセス600はブロック608に戻り、陰圧の供給を続けることができる。
【0047】
無効入力が受信された場合、ブロック616で、療法制御プロセス600は陰圧の供給を無効にすることができる。陰圧の供給は、例えば、陰圧源12Cまたは制御回路12Aの動作の停止、流体流路内に位置付けられたベントの開放、流体流路内に位置付けられた弁の閉鎖によって無効化され得る。ブロック616の後、療法制御プロセス600は終了することができる。一部の実施態様では、ブロック616の後、TNP装置11は、スイッチ21へのユーザ入力によっては起動されなくなることがあり、そのためユーザはTNP装置11に陰圧を生成させることができなくなり得る。追加でまたは代替で、TNP装置11は、インタフェース要素22を介してユーザからなど、イネーブル入力が受信されるまで、スイッチ21へのユーザ入力によって起動されなくなり得る。一部の実施態様では、イネーブル入力は、インタフェース要素22を介する以外のTNP装置11へのいずれのユーザ入力によっても提供されない場合がある。
【0048】
療法制御プロセス600の一部の実施態様では、陰圧の供給は、停止入力または無効入力以外のいずれのユーザ入力によっても停止しない場合がある。
【0049】
図7A、
図7B、
図7Cは、本明細書に記載の陰圧システムの任意の実施形態と併用できるコネクタを図示する。
図7Aは、例えば、スイッチ21およびインタフェース要素22を各対の回路に接続する四つの回路(またはコネクタ)70A、70B、70C、および70Dを持つヘッダ700Aを図示する。
図7Bは、例えば、スイッチ21とインタフェース要素22を接続するためのSMTピンヘッダ700Bを図示する。一部の実施態様では、スイッチ21はコネクタ72Aに接続されてもよく、インタフェース要素22はコネクタ72Bに接続されてもよく、またはその逆でもよい。
図7Cは、スイッチ21またはインタフェース要素22を接続できる端子74を有するZIFコネクタ700Cを図示する。いくつかの実施形態では、スイッチ21およびインタフェース要素22のそれぞれを接続するために、二つのZIFコネクタ700Cを使用できる。
【0050】
図8Aは、陰圧療法システム200のより詳細な実施態様例でありうる陰圧療法システム800Aの上面図を示す。タブ810Aは、創傷被覆材内の開口を引き裂いて、陰圧の送達の終了を引き起こす点線820Aに沿った大きな漏れを強制することができる。
図8Bは、陰圧治療システム200のより詳細な実施態様例でありうる陰圧治療システム800Bの上面図を示す。タブ810Bは、点線820Bに沿って創傷被覆材を引き裂いて、陰圧の送達の終了を引き起こすTNP装置用の電源または電子機器を破壊する(電池または電気構成要素を除去するなど)ことができる。
【0051】
図9は、陰圧療法システム200のより詳細な実施態様例でありうる陰圧療法システムの構成要素900を示す。構成要素900は、電池が制御電子回路から分離できることを示すことができ、電池と制御電子回路との間の接続を起動機能として使用することができる。構成要素900は、図示されたように下側に表面取り付けコネクタ910を含み得る。
【0052】
図10は、陰圧療法システム200のより詳細な実施態様例でありうる陰圧療法システムの構成要素1000を示す。構成要素1000は、図示したように上面上に表面取り付けコネクタ1010を含みうる。構成要素1000は、主電気領域がリジッドPCBを含みうること、およびバッテリーアセンブリに接続するために最上面上にコネクタを持つことを図示できる。
【0053】
図11は、陰圧療法システム200のより詳細な実施態様例でありうる陰圧療法システムの構成要素1100を示す。構成要素1100は、一つ以上のその他の実施形態に対して、再分割された電子回路の配置を図示できる。ポンプは一方の側にあり、電池をパックとして追加することができる。パックは創傷被覆材に接着するため下側にシリコンを有しうる。構成要素1100は、図示されたように下側に表面取り付けコネクタを含み得る。
【0054】
図12は、陰圧療法システム200のより詳細な実施態様例でありうる陰圧療法システムの構成要素1200を示す。構成要素1200は、表面取り付けコネクタ1210がまだ上側にあるポンプモジュールの上部を図示することができる。
【0055】
他の変形
本明細書で提供される閾値、限界値、期間などの値は、絶対的なものであることを意図するものではなく、したがっておおよそのものでありうる。さらに、本明細書で提供される任意の閾値、限界値、期間などは、自動的にまたはユーザによって、固定されるかまたは変えられうる。さらに、本明細書で使用される場合、参照値に関連した、超える、超、未満などの相対的な程度を表す用語は、参照値と等しい場合も包含することが意図される。例えば、正の参照値を超えることは、参照値以上であることを包含することができる。その上、本明細書で使用される場合、参照値に関連した、超える、超、未満などの相対的な程度を表す用語は、参照値に関連した、下にある、未満、超などの開示された関係とは逆のものも包含することが意図される。また、種々のプロセスのブロックは、ある値が特定の閾値に達するかまたは達しないかを判定することに関して説明されうるが、ブロックは、例えば、ある値が(i)閾値未満であるかもしくは閾値を超えているか、または(ii)閾値を満たすかもしくは満たしていないかに関しても同様に解釈されうる。
【0056】
特定の態様、実施形態、または実施例に関連して説明される特性、物質、特徴、または群は、本明細書に記載される他の任意の態様、実施形態、または実施例に、これらと両立できないことがない限り、適用可能であることを理解されたい。本明細書(添付の任意の特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)に開示される全ての特徴、または同様に開示される任意の方法もしくはプロセスの全てのステップは、こうした特徴またはステップのうち少なくともいくつかが相互に排他的となる組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされてよい。本発明の保護するものは、前述の任意の実施形態の詳細に限定されない。保護するものは、本明細書(添付の任意の特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)において開示される特徴のうちの任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせに及び、または同様に開示される任意の方法またはプロセスのステップのうちの任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0057】
一定の実施形態が説明されてきたが、これらの実施形態は、単に例として提示されており、保護範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書に記載の新規な方法及びシステムは、様々な他の形態で具現化されてもよい。さらに、本明細書に記載の方法及びシステムの形態において、様々な省略、置換、及び変形がなされ得る。実施形態によっては、図示または開示されたプロセスにおいて実施される実際のステップは、図に示されたステップとは異なり得ることを、当業者は認識するであろう。実施形態によっては、上述したステップのうちの特定のステップが除去される場合があり、別のものが加えられる場合もある。例えば、開示されるプロセスで実施される実際のステップまたはステップの順序は、図で示したものとは異なっていてもよい。実施形態によっては、上述したステップのうちの特定のステップが除去される場合があり、別のものが加えられる場合もある。例えば、図に示した様々な構成要素が、プロセッサ、コントローラ、ASIC、FPGA、または専用ハードウェア上のソフトウェアまたはファームウェアとして実装されてもよい。プロセッサ、ASIC、FPGAなどのハードウェア構成要素には論理回路が含まれうる。さらに、上記に開示された特定の実施形態の特徴及び特性は、様々な方法で組み合わせることができ、さらなる実施形態を形成することができるが、その全てが本開示の範囲内に収まることになる。
【0058】
本明細書で図示され、説明されるユーザーインタフェーススクリーンには、追加の構成要素または代替の構成要素が含まれうる。これらの構成要素には、メニュー、リスト、ボタン、テキストボックス、ラベル、ラジオボタン、スクロールバー、スライダー、チェックボックス、コンボボックス、ステータスバー、ダイアログボックス、ウィンドウなどが含まれうる。ユーザーインタフェーススクリーンには、追加の情報、または代替の情報が含まれうる。構成要素は、任意の好適な順番に配置され、グループ化され、標示されうる。
【0059】
本開示には、特定の実施形態、実施例、及び用途が含まれるが、本開示は、具体的に開示された実施形態の範囲を超えて、他の代替の実施形態または使用ならびにその明らかな変更形及びその等価物にまで及び、これには本明細書に記載された特徴および利点の全てを提供しているとは限らない実施形態が含まれることは、当業者に理解されるであろう。したがって、本開示の範囲は、本明細書における好ましい実施形態の特定の開示によって限定されることを意図するものではなく、本明細書に提示されるまたはこの後に提示される特許請求の範囲によって画定されうる。
【0060】
「し得る(can)」、「できる(could)」、「可能性がある(might)」、または「場合がある(may)」などの条件付き言い回しは、別途具体的に記載されない限り、または使用される文脈の範囲内で別途解釈されない限り、一定の実施形態が、特定の特徴、要素、またはステップを含む一方で、他の実施形態は含まないということの伝達を意図するのが通例である。したがって、こうした条件付き言い回しは、特徴、要素、またはステップが一つまたは複数の実施形態に多少なりとも必要とされるという示唆、またはこれらの特徴、要素、もしくはステップが特定の任意の実施形態に含まれているかどうか、もしくは該実施形態で実施されるべきかどうかを、ユーザ入力または命令の有無にかかわらず決定するためのロジックが、一つまたは複数の実施形態に必然的に含まれているという示唆を必ずしも意図するものではない。「備える(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」などの用語は、同義語であり、包含的に非限定様式で用いられ、追加の要素、特徴、行為、および動作などを排除するものではない。また、用語「または(or)」は、包括的な意味で(排他的な意味ではなく)用いられることで、例えば要素の列記をつなぐのに使用される場合、列記の要素のうちの一つ、一部、または全てを意味することになる。さらに、用語「各々」は、本明細書で使用される場合、通常の意味を有するのに加えて、用語「各々」が適用されている一連の要素の任意のサブセットも意味し得る。
【0061】
語句「X、Y、およびZのうちの少なくとも一つ」などの連言的言い回しは、別途具体的に記載されない限り、ある項目や用語などが、Xか、Yか、Zのいずれかであり得ることを伝えるのに一般的に用いられる文脈と共に、別途解釈されるものである。したがって、こうした連言的言い回しは、特定の実施形態が、少なくともXのうちの一つと、少なくともYのうちの一つと、少なくともZのうちの一つとを含むことを必要とするという示唆を必ずしも意図するものではない。
【0062】
本明細書で使用される「およそ」、「約」、「概して」、および「実質的に」という用語などの、本明細書で使用される程度を表す言い回しは、所望の機能を依然として果たすかまたは所望の結果をもたらす所定の値、量、または特性に近い値、量、または特性を表すものである。例えば、「およそ」、「約」、「概して」、及び「実質的に」という用語は、所定の量の10%未満以内、5%未満以内、1%未満以内、0.1%未満以内、及び0.01%未満以内の量を意味し得る。別の例として、一定の実施形態において、「概して平行」及び「実質的に平行」という用語は、丁度平行である状態から15度以下、10度以下、5度以下、3度以下、1度以下、または0.1度以下ずれている値、量、または特性を意味する。
【0063】
本開示の範囲は、本節におけるまたは本明細書の他の箇所における好ましい実施形態の
特定の開示によって制限されることを意図するものではなく、本節においてまたは本明細書の他の箇所において提示されているか、またはこの後に提示される特許請求の範囲によって定義されうる。本特許請求の範囲の言い回しは、本特許請求の範囲で用いられている言い回しに基づいて広い意味で解釈されるべきであり、本明細書で説明されている例または本出願の手続きの間に説明される例に限定されるものではなく、それらの例は非排他的なものとして解釈されるべきである。
[付記項1]
創傷に陰圧を加える装置であって、
患者の創傷上に配置されるように構成された創傷被覆材と、
前記創傷被覆材上または前記創傷被覆材内に配置された陰圧源であって、流体流路を介して陰圧を前記創傷被覆材に提供するように構成された、陰圧源と、
前記創傷被覆材上または前記創傷被覆材内に配置されたスイッチであって、第一のユーザ入力を受信するように構成される、スイッチと、
前記創傷被覆材上または前記創傷被覆材内に配置されたインタフェース要素であって、第二のユーザ入力を受信するように構成される、インタフェース要素と、
前記スイッチおよび前記インタフェース要素に電気的に連結された制御回路であって、前記制御回路が、
第一のモードにあるとき、
前記陰圧源が陰圧を供給していない間に、前記第一のユーザ入力の受信に応答して前記陰圧源で陰圧を供給し、
前記陰圧源が陰圧を供給している間に、前記第一のユーザ入力の受信に応答して前記陰圧源で陰圧を供給することを防止し、
前記第二のユーザ入力の受信に応答して、前記第一のモードから前記第一のモードとは異なる第二のモードに変更し、
前記第二のモードにあるとき、前記陰圧源での陰圧の供給を無効にするように構成される、制御回路と、を備える、装置。
[付記項2]
前記スイッチがフォルトを経験し、前記第一のユーザ入力を受信することができなくなった時、前記制御回路が、前記第二のユーザ入力以外のユーザ入力の受信をしないことに応答して、前記陰圧源での陰圧の供給を防止または無効化するようにさらに構成される、付記項1に記載の装置。
[付記項3]
前記制御回路が、前記第一のユーザ入力以外のユーザ入力の受信をしないことに応答して、前記陰圧源で陰圧を供給するようにさらに構成される、付記項1に記載の装置。
[付記項4]
前記陰圧源が陰圧を供給している間、前記制御回路が、前記第一のユーザ入力および前記第二のユーザ入力以外のユーザ入力の受信をしないことに応答して、前記陰圧源での陰圧の供給を防止または無効化するようにさらに構成される、付記項1に記載の装置。
[付記項5]
前記制御回路が前記第二のモードにあるとき、前記制御回路が、前記第二のユーザ入力の受信に応答して、
第二のモードから第一のモードへ変更し、
前記陰圧源で陰圧を供給するようにさらに構成される、付記項1に記載の装置。
[付記項6]
前記制御回路が、前記陰圧源または前記制御回路の動作の停止、前記流体流路内に位置付けられたベントの開放、または前記流体流路内に位置付けられた弁の閉鎖によって、前記陰圧源での陰圧の供給を無効化するように構成される、付記項1に記載の装置。
[付記項7]
前記制御回路が、(i)前記陰圧源または前記制御回路への電力の切断、または(ii)前記陰圧源または前記制御回路に提供されるイネーブル信号の取消によって、前記陰圧源または前記制御回路の動作を停止するように構成される、付記項6に記載の装置。
[付記項8]
前記制御回路が、前記陰圧源の動作の停止、前記流体流路内に位置付けられたベントの開放、または前記流体流路内に位置付けられた弁の閉鎖によって、前記陰圧源での陰圧の供給を防止するように構成される、付記項1に記載の装置。
[付記項9]
前記インタフェース要素が、前記創傷被覆材に結合されたフィルム内に成形される、付記項1に記載の装置。
[付記項10]
前記インタフェース要素が、前記第二のユーザ入力を受信するように構成された電気接点を備える、付記項1に記載の装置。
[付記項11]
前記スイッチが、一定期間の間、前記スイッチの押下げに応答して前記第一のユーザ入力を受信するように構成される、付記項1に記載の装置。
[付記項12]
前記期間が0.5秒~5秒である、付記項11に記載の装置。
[付記項13]
創傷被覆材、前記創傷被覆材上または前記創傷被覆材内に配置された陰圧源、前記創傷被覆材上または前記創傷被覆材内に配置されたスイッチ、および前記創傷被覆材上または前記創傷被覆材内に配置されたインタフェース要素を備え、前記スイッチが第一のユーザ入力を受信するように構成され、前記インタフェース要素が第二のユーザ入力を受信するように構成される、陰圧療法装置を動作される方法であって、
前記陰圧源が前記創傷被覆材に陰圧を供給していない間に、前記第一のユーザ入力の受信に応答して、流体流路を介して前記創傷被覆材に前記陰圧源で陰圧を供給することと、
前記陰圧源が前記創傷被覆材に陰圧を供給している間、前記第一のユーザ入力の受信に応答して、前記流体流路を介して前記創傷被覆材に前記陰圧源で陰圧を供給することを防止することと、
前記第二のユーザ入力の受信に応答して、前記創傷被覆材に前記陰圧源で陰圧源を供給することを無効化することと、
前記陰圧の供給の無効化の後に、前記第一のユーザ入力の受信に応答して、前記流体流路を介して前記創傷被覆材に前記陰圧源で陰圧を供給しないことと、を含む、方法。
[付記項14]
前記スイッチがフォルトを経験し、前記第一のユーザ入力を受信できなくなることに続いて、前記第二のユーザ入力以外のユーザ入力の受信をしないことに応答して、前記陰圧源での陰圧の供給を防止または無効化することをさらに含む、付記項13に記載の方法。
[付記項15]
前記第一のユーザ入力以外のユーザ入力の受信をしないことに応答して、前記陰圧源で陰圧を供給することをさらに含む、付記項13に記載の方法。
[付記項16]
前記陰圧源が陰圧を供給している間、前記第一のユーザ入力および前記第二のユーザ入力以外のユーザ入力の受信をしないことに応答して、前記陰圧源での陰圧の供給を防止または無効化することをさらに含む、付記項13に記載の方法。
[付記項17]
前記陰圧の供給の無効化が、前記陰圧源または前記制御回路の動作の停止、前記流体流路内に位置付けられたベントの開放、または前記流体流路内に位置付けられた弁の閉鎖を含む、付記項13に記載の方法。
[付記項18]
前記インタフェース要素の電気接点を介して前記第二のユーザ入力を受信することをさらに含む、付記項13に記載の方法。
[付記項19]
一定期間の間、前記スイッチの押下げに応答して前記第一のユーザ入力を受信することをさらに含む、付記項13に記載の方法。
[付記項20]
前記期間が0.5秒~5秒である、付記項19に記載の方法。