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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20231006BHJP
   B05B 11/00 20230101ALI20231006BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
B65D47/34 200
B05B11/00 101E
B05B11/00 101G
B65D47/34 BRL
B65D83/00 K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020015819
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021123360
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】當麻 徹
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-099207(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109809026(CN,A)
【文献】特表2015-521138(JP,A)
【文献】特開2013-086877(JP,A)
【文献】特開2004-141639(JP,A)
【文献】特開2002-066401(JP,A)
【文献】特開2011-063289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B05B 11/00
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液が収容された容器体の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムを有するポンプと、
前記ステムの上端部に装着される装着筒部を有するとともに、ノズル孔が形成された押下ヘッドと、
前記ポンプを前記口部に装着する装着キャップと、を備え、
前記口部に装着した状態で、前記押下ヘッドを押下して前記ステムを下方に移動させ前記ポンプを作動させることにより、前記内容液を前記ステム内を通して前記ノズル孔から吐出する吐出器であって、
前記ポンプは、前記装着筒部を径方向の外側から囲うとともに、前記装着筒部に対して係合して回転不能に設けられた下端部を有し、前記ステムを上方付勢する、合成樹脂製の付勢部材を備え、
前記装着キャップは、前記付勢部材の前記下端部を下方から支持する支持部を備え、
前記支持部の上面、および前記付勢部材の前記下端部の下面のうちいずれか一方は、他方に向けて突出する突部を備え、
前記他方は、前記押下ヘッドを前記装着キャップに対して周方向に回転させたときに、前記突部が摺動することで前記付勢部材の前記下端部を上方に移動させる傾斜面を備える、
吐出器。
【請求項2】
前記一方は、前記突部に前記周方向に連なり、前記傾斜面に当接した対向傾斜面を有する、
請求項1に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、内容液が収容された容器体の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムを有するポンプと、ステムの上端部に装着された装着筒部を有するとともに、ノズル孔が形成された押下ヘッドと、ポンプを口部に装着する装着キャップと、を備え、口部に装着した状態で、押下ヘッドを押下してステムを下方に移動させポンプを作動させることにより、内容液をステム内を通してノズル孔から吐出する吐出器が知られている。
一般に、ステムを上方付勢する付勢部材は、金属材料で形成されるとともに、ポンプのシリンダ内に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-123927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の吐出器では、廃棄に際し、付勢部材をシリンダから取り出しにくく、金属材料からなる付勢部材と、合成樹脂材料からなるその他の部材と、を分別することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、廃棄時の分別を不要にすることができる吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吐出器は、内容液が収容された容器体の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設されるステムを有するポンプと、前記ステムの上端部に装着される装着筒部を有するとともに、ノズル孔が形成された押下ヘッドと、前記ポンプを前記口部に装着する装着キャップと、を備え、前記口部に装着した状態で、前記押下ヘッドを押下して前記ステムを下方に移動させ前記ポンプを作動させることにより、前記内容液を前記ステム内を通して前記ノズル孔から吐出する吐出器であって、前記ポンプは、前記装着筒部を径方向の外側から囲うとともに、前記装着筒部に対して係合して回転不能に設けられた下端部を有し、前記ステムを上方付勢する、合成樹脂製の付勢部材を備え、前記装着キャップは、前記付勢部材の前記下端部を下方から支持する支持部を備え、前記支持部の上面、および前記付勢部材の前記下端部の下面のうちいずれか一方は、他方に向けて突出する突部を備え、前記他方は、前記押下ヘッドを前記装着キャップに対して周方向に回転させたときに、前記突部が摺動することで前記付勢部材の前記下端部を上方に移動させる傾斜面を備える、ことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、付勢部材が合成樹脂材料で形成されているので、吐出器の廃棄に際し、付勢部材と、合成樹脂材料からなる他の部材と、を分別する必要をなくすことができる。
押下ヘッドを装着キャップに対して回転させると、押下ヘッドの装着筒部に対して回転不能に設けられた付勢部材も回転し、突部が傾斜面を摺動する。これにより付勢部材の下端部が上方に移動するので付勢部材が圧縮される。よって、押下ヘッドが付勢部材によって上方付勢され、かつ押下可能となり、ポンプを作動させることができる。
ここで、付勢部材を自然長の状態で配置し、かつ吐出器を使用する際に押下ヘッドを回転させることで付勢部材を圧縮することが可能となる。このため、付勢部材が合成樹脂材料で形成されているので、付勢部材に上下方向の圧縮力を長時間加えると、付勢部材に圧縮変形の癖が付くおそれがあるが、付勢部材に上下方向の圧縮力を加えずに流通および保管等を行うことによって、この期間に付勢部材に圧縮変形の癖が付くこと(塑性変形)がなく、吐出器の使用に際して、付勢部材が弾性変形しにくくなっているのを防ぐことができる。
また、ユーザーの使用時においても、押下ヘッドを回転させて使用開始前の位置に戻すことが可能であり、例えば吐出器の使用後の保管時に押下ヘッドを使用開始前の位置に戻す操作を行えば、付勢部材にかかる負荷を低減し、長期にわたって付勢部材による良好な付勢力を保つことができる。
【0008】
上記の吐出器において、前記一方は、前記突部に前記周方向に連なり、前記傾斜面に当接した対向傾斜面を有していてもよい。
【0009】
本発明によれば、傾斜面および対向傾斜面が周方向に対向し合った状態で互いに当接するので、傾斜面および対向傾斜面が互いに近付く方向に装着キャップおよび付勢部材の下端部が相対回転することを抑制できる。したがって、付勢部材の下端部の位置ずれを抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、廃棄時の分別を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る吐出器であって、押下ヘッドが規制位置に位置した状態を示す縦半断面図である。
図2図1のII-II線における断面を示す図である。
図3】実施形態に係る吐出器の要部における周方向に沿う断面であって、押下ヘッドが規制位置に位置した状態を示す断面図である。
図4】実施形態に係る吐出器であって、押下ヘッドが待機位置に位置した状態を示す縦半断面図である。
図5】実施形態に係る吐出器の要部における周方向に沿う断面であって、押下ヘッドが待機位置に位置した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る吐出器1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の吐出器1は、ステム21を有するポンプ2と、ステム21に装着された押下ヘッド5と、ポンプ2を内容液が収容された容器体Aの口部A1に装着する装着キャップ7と、を備えている。
吐出器1を構成する全ての部品は、合成樹脂材料により形成されている。
【0013】
容器体Aにおける横断面の中央を通る中心線を容器軸Oといい、容器軸Oに沿って押下ヘッド5側を上側、装着キャップ7側を下側という。また、容器軸Oに沿う方向を上下方向といい、上下方向から見て、容器軸Oに交差する方向を径方向、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。以下、特に断らない限り、押下ヘッド5が装着キャップ7に対して下方移動不能な規制位置に位置している状態を説明する。
【0014】
容器体Aは、有底筒状に形成され、口部A1の外周面に雄ねじが形成されている。
装着キャップ7は、天壁部71および装着周壁部72を有する有頂筒状に形成され、容器軸Oと同軸に配設されている。天壁部71は環状に形成され、天壁部71の内側に、ステム21が上下動自在に挿入されている。装着周壁部72の内周面に、口部A1の雄ねじに螺合した雌ねじが形成されている。なお、装着周壁部72は、口部A1に、例えばアンダーカット嵌合等されてもよい。
【0015】
装着キャップ7は、天壁部71の内周縁から上方および下方の双方向に向けて延びる案内筒73を備える。案内筒73は、容器軸Oと同軸に配設されている。案内筒73は、天壁部71の内周縁に接続し一定の内径で延びる上部74と、上部74の下端開口縁から径方向の内側に突出するとともに周方向に沿って延びる環状の支持部75と、支持部75の内周縁から下方に延びる下部76と、を備える。
【0016】
支持部75は、付勢部材25の下端部41の下面41aを下方から支持する。支持部75の上面75aは、付勢部材25の下端部41の下面41aに向けて(すなわち上方に向けて)突出するキャップ側突部80を有する。キャップ側突部80は、一対設けられ、容器軸Oを中心として互いに2回対称に形成されている。キャップ側突部80は、支持部75の上面75aの外周部に設けられている。支持部75の上面75aの具体的な形状については後述する。
【0017】
案内筒73の下部76の内周面のうち上端部を除く部分には、径方向の内側に突出するとともに周方向に沿って延びる規制凸部77が形成されている。規制凸部77の上面は、全周にわたって同じ高さに形成されている。規制凸部77の内周面には、上下方向に延在するとともに規制凸部77の上面に開口する一対の案内溝77aが形成されている。一対の案内溝77aは、容器軸Oを中心として等角度間隔に配置されている。
【0018】
図2に示すように、案内筒73の下部76の内周面のうち規制凸部77よりも上方の部分には、径方向の内側に突出する係止片78および小突起79が形成されている。係止片78は、案内溝77aと同数設けられている。一対の係止片78は、容器軸Oを中心として等角度間隔に配置されている。各係止片78は、案内溝77aに対して周方向にずれた位置に形成されている。係止片78は、案内筒73の下部76の内周面を基準として、規制凸部77以下の高さに形成されている。小突起79は、各係止片78に対して2つずつ設けられている。小突起79は、係止片78に対して周方向に所定の間隔をあけた位置に形成されている。小突起79は、案内筒73の下部76の内周面を基準として、係止片78よりも低く形成されている。小突起79は、押下ヘッド5の後述する縦リブ55が乗り越え可能となっている。
【0019】
図1に示すように、ポンプ2は、ステム21、ピストン22、シリンダ23、下部弁体24、および付勢部材25を備える。
シリンダ23は、容器軸Oと同軸に配設されている。シリンダ23には、下方に向けて延びる取付筒27が配設されている。取付筒27には、吸上筒28の上端部が嵌合されている。吸上筒28の下端開口部は、容器体Aの底部内に位置する。シリンダ23および取付筒27それぞれの内側は互いに連通している。シリンダ23および取付筒27は、容器軸Oと同軸に配設されている。
【0020】
シリンダ23の上端部には、径方向の外側に向けて突出するとともに周方向に延びるフランジ部29が形成されている。フランジ部29は、パッキン9を介して容器体Aの口部A1の上端開口縁に配置される。フランジ部29の上面には、装着キャップ7の天壁部71の下面が配置される。シリンダ23の下端部内に、下部弁体24が収容されている。
【0021】
下部弁体24は、嵌合筒31と、弁本体32と、を備える。嵌合筒31は、シリンダ23の下端部内に嵌合されている。弁本体32は板状に形成され、シリンダ23の内面における下端開口の周縁部に配置されている。弁本体32は、嵌合筒31の内周面に、弾性変形可能な連結片を介して連結されている。弁本体32は、連結片の弾性変形に応じて上下方向に弾性変位可能に配設されている。以上より、下部弁体24は、シリンダ23内の加圧時にシリンダ23の下端開口を閉塞した状態に保持し、シリンダ23内の減圧時にシリンダ23の下端開口を開放する逆止弁となっている。すなわち、下部弁体24は、シリンダ23内の加圧時に、シリンダ23内の内容液がシリンダ23の下端開口を通じて容器体Aに戻ることを阻止する一方、シリンダ23内の減圧時に、容器体A内の内容液をシリンダ23の下端開口を通じてシリンダ23内に流入させる。
【0022】
ステム21は、口部A1に上方付勢状態で下方移動可能に立設されている。ステム21は、有底筒状に形成され、容器軸Oと同軸に配設されている。ステム21の下部は、シリンダ23の上端開口部より下方に位置している。ステム21の上部は、シリンダ23の上端開口部より上方に位置している。ステム21の下部には、径方向に貫く連通孔34が形成されている。ステム21には、径方向の外側に突出した台座部35が形成されている。台座部35は、ステム21のうち、連通孔34より下方に位置する部分に形成されている。台座部35は、ピストン22を、ピストン22の下方から支持している。台座部35の上面には、上方に突出するとともに周方向に沿って全周にわたって延在するシール突起35aが設けられている。
【0023】
ピストン22は、外筒37、内筒38、およびフランジ39を備え、シリンダ23内に上下摺動可能に嵌合されている。外筒37は、円筒状に形成され、容器軸Oと同軸に配設されている。外筒37は、シリンダ23の内周面に摺接している。シリンダ23において、外筒37と径方向で対向する部分に、径方向に貫通する貫通孔が形成されている。フランジ39は、外筒37から径方向の内側に突出するとともに周方向の全周にわたって連続して延びている。内筒38は、円筒状に形成され、フランジ39の内周縁から上方および下方の双方向に延びている。内筒38の下端部は、ステム21の台座部35に上下方向で対向している。ピストン22は、内筒38の下端部をステム21の台座部35に上方から密に接触させることで、シリンダ23内において、ピストン22より下方に位置する部分と、ステム21の連通孔34と、の連通を遮断している。より詳細に、ピストン22の内筒38がシール突起35aとステム21の外周面との間に上方から挿入されることにより、内筒38がシール突起35aの内周面に密接するとともに、内筒38の下端部が径方向の内側に押圧されてステム21の外周面に密接し、内筒38の下端部とステム21の台座部35との間がシールされる。ステム21がピストン22に対して下方移動し、台座部35がピストン22の内筒38から下方に離間したときに、シリンダ23内において、ピストン22より下方に位置する部分と、ステム21の連通孔34と、が連通する。
【0024】
押下ヘッド5は、規制位置と、装着キャップ7に対して下方移動可能な待機位置と、の間を装着キャップ7に対して回転して移動可能に配設されている。本実施形態では、押下ヘッド5を規制位置から待機位置に変位させる際に、押下ヘッド5を装着キャップ7に対して上方から見て容器軸O回りで時計回り方向に回転させる。以下、周方向のうち上方から見た場合の時計回り方向を解除方向と称する。
【0025】
押下ヘッド5は、頂壁部51および外筒部52を有する有頂筒状に形成されている。押下ヘッド5は、容器軸Oと同軸に配設されている。外筒部52の下端部の内周面は、装着キャップ7の案内筒73の上端部の外周面に径方向で対向している。押下ヘッド5は、頂壁部51から下方に突出した装着筒部53と、装着筒部53から径方向の外側に向けて延び、外筒部52を径方向に貫くノズル筒部54と、を有する。装着筒部53は、外筒部52によって径方向の外側から囲われ、容器軸Oと同軸に配設されている。装着筒部53の下端部は、外筒部52の下端部よりも下方に位置している。装着筒部53の内側には、ステム21の上端部が装着されている。ノズル筒部54の先端には、径方向に開口するノズル孔54aが形成されている。ノズル筒部54の内部は、装着筒部53の内部に連通している。
【0026】
装着筒部53は、装着キャップ7における案内筒73の内側に挿入されている。装着筒部53の下端部は、案内筒73の規制凸部77の径方向内側に配置されている。装着筒部53の下端開口縁は、ピストン22のフランジ39と上下方向で対向している。装着筒部53の内周面の下端は、他の部分より拡径された拡径部53aとなっている。拡径部53aは、ステム21の外周面に対して隙間を設けている。拡径部53aとステム21の外周面との隙間には、ピストン22の内筒38の上部が下方から挿入されている。拡径部53aには、ピストン22の内筒38の外周面が密に接触している。
【0027】
図1および図2に示すように、装着筒部53の外周面のうち下端部を除く部分には、上下方向に延在する縦リブ55が形成されている。縦リブ55は、装着キャップ7の案内溝77aと同数設けられている。容器軸Oを中心として、縦リブ55の外径は、案内筒73の規制凸部77の内径よりも大きい。縦リブ55の下端面は、規制凸部77の上面に当接している。これにより、装着筒部53は、装着キャップ7に対する下方移動を規制されている。縦リブ55は、係止片78に対して解除方向から接触または近接している。縦リブ55は、小突起79に対して解除方向とは反対方向から接触または近接している。これにより、装着筒部53は、装着キャップ7に対する解除方向とは反対方向への回転を規制されている。また、装着筒部53は、縦リブ55が小突起79を乗り越える際の抵抗によって、装着キャップ7に対する解除方向への回転に抵抗を付与されており、押下ヘッド5が規制位置に保持されている。
【0028】
縦リブ55の下端面は、押下ヘッド5が待機位置に位置した状態で、規制凸部77の案内溝77aの上方に配置され、案内溝77aに上方から挿入可能となる(図4参照)。これにより、押下ヘッド5が装着キャップ7に対して下方移動可能となる。また、縦リブ55は、押下ヘッド5が待機位置に位置した状態で、係止片78に対して解除方向とは反対方向からに接触または近接する。縦リブ55は、小突起79に対して解除方向から接触または近接する。これにより、装着筒部53は、装着キャップ7に対する解除方向への回転を規制され、かつ装着キャップ7に対する解除方向とは反対方向への回転に抵抗を付与されて、押下ヘッド5が待機位置に保持される。
【0029】
図1に示すように、付勢部材25は、一定の内径で螺旋状に延びている。付勢部材25は、容器軸Oと同軸に配設されている。付勢部材25は、装着筒部53を径方向の外側から囲っている。付勢部材25の内周面には、装着筒部53の縦リブ55に係合する係合溝25aが形成されている。係合溝25aは、付勢部材25の下端面から上端面にわたって上下方向に延びている。これにより、付勢部材25は、押下ヘッド5に対して回転不能とされている。付勢部材25は、案内筒73より径方向の内側に設けられている。付勢部材25は、自然長の状態で配設されている。付勢部材25の上端部は、押下ヘッド5に下方から当接している。付勢部材25の下端部41は、案内筒73の上部74の内周面に摺接している。付勢部材25の下端部は、装着キャップ7の案内筒73の支持部75の上面75aに上方から当接している。付勢部材25は、押下ヘッド5が待機位置に位置する状態、および待機位置から下降した状態で、押下ヘッド5を介してステム21を装着キャップ7に対して上方付勢する。なお、付勢部材25の上端部は、押下ヘッド5から下方に離間していてもよい。すなわち、押下ヘッド5が規制位置に位置する状態で付勢部材25の上端部が押下ヘッド5から下方に離間していても、押下ヘッド5が待機位置に位置する状態で付勢部材25の上端部が押下ヘッド5に下方から当接するように構成されていればよい。
【0030】
付勢部材25の下端部41の下面41aの外周部は、装着キャップ7のキャップ側突部80の数に対応し、容器軸Oを中心として2回対称に形成されている。図3に示すように、付勢部材25の下端部41の下面41aの外周部は、キャップ側突部80に上下方向で対向する第1対向面42と、押下ヘッド5を解除方向に回転させたときに、キャップ側突部80が摺動することで付勢部材25の下端部を上方に移動させる第1傾斜面43と、を備える。第1対向面42は、径方向および周方向に延びる平面状に形成され、例えば容器軸Oを中心として20°にわたって延びている。第1対向面42には、キャップ側突部80が当接している。第1傾斜面43は、第1対向面42に周方向に連なり、周方向に対して上下方向のうちキャップ側突部80に近付く側(すなわち下方)に傾斜して延びている。第1傾斜面43は、第1対向面42から解除方向とは反対方向に延びている。換言すると、第1傾斜面43は、押下ヘッド5を解除方向に回転させた際の、付勢部材25に対する装着キャップ7の回転方向に、第1対向面42から延びている。
【0031】
付勢部材25の下端部41の下面41aの外周部は、第1傾斜面43に周方向で連なる付勢部材側突部44と、付勢部材側突部44に第1傾斜面43とは反対側で連なる第1係合面45と、を備える。付勢部材側突部44は、第1対向面42と平行に延びている。付勢部材側突部44には、押下ヘッド5が待機位置に位置した状態で、キャップ側突部80が当接する(図5参照)。第1係合面45は、周方向に対して第1傾斜面43よりも大きい傾斜角度で付勢部材側突部44から上方に延びている。本実施形態では、第1係合面45は、付勢部材側突部44から上下方向に沿って上方に延びている。
【0032】
装着キャップ7の支持部75の上面の具体的な形状について詳述する。支持部75の上面75aの外周部は、キャップ側突部80の数に対応し、容器軸Oを中心として2回対称に形成されている。キャップ側突部80は、付勢部材25の第1対向面42と同形同大、かつ平行に形成されている。
【0033】
支持部75の上面75aの外周部は、付勢部材25の付勢部材側突部44が上下方向で対向する第2対向面81と、押下ヘッド5を解除方向に回転させたときに、付勢部材側突部44が摺動することで付勢部材25の下端部を上方に移動させる第2傾斜面82と、を備える。第2対向面81は、付勢部材側突部44と同形同大、かつ平行に形成されている。第2対向面81には、付勢部材側突部44が当接している。第2傾斜面82は、第2対向面81に周方向に連なり、周方向に対して上下方向のうち付勢部材側突部44に近付く側(すなわち上方)に傾斜して延びている。第2傾斜面82は、第2対向面81から解除方向に延びている。換言すると、第2傾斜面82は、押下ヘッド5を解除方向に回転させた際の、装着キャップ7に対する付勢部材25の回転方向に、第2対向面81から延びている。第2傾斜面82は、付勢部材25の第1傾斜面43と同形同大、かつ平行に形成されている。第2傾斜面82は、付勢部材25の第1傾斜面43に当接している。
【0034】
支持部75の上面75aの外周部は、キャップ側突部80に第2傾斜面82とは反対側で連なる第2係合面83を備える。第2係合面83は、周方向に対して第2傾斜面82よりも大きい傾斜角度でキャップ側突部80から下方に延びている。第2係合面83は、付勢部材25の第1係合面45と同形同大、かつ平行に形成されている。第2係合面83は、付勢部材25の第1係合面45に周方向で対向して当接している。このように、本実施形態では、装着キャップ7の支持部75の上面75aにおける外周部の全周が、付勢部材25の下端部41の下面41aにおける外周部の全周に重なるように形成されている。そして、付勢部材25の下端部41は、付勢部材25の第1係合面45と装着キャップ7の第2係合面83とが当接し合うことで、押下ヘッド5の待機位置とは反対側に向けた回転(すなわち解除方向とは反対方向の回転)が規制されている。
【0035】
次に、上述した吐出器1の作用について説明する。
押下ヘッド5を待機位置から解除方向に回転させると、付勢部材25が押下ヘッド5とともに装着キャップ7に対して解除方向に回転する。これにより、装着キャップ7のキャップ側突部80が付勢部材25の第1対向面42から周方向に離間するとともに、付勢部材25の付勢部材側突部44が装着キャップ7の第2対向面81から離間する。押下ヘッド5を継続して回転させると、キャップ側突部80が付勢部材25の第1傾斜面43を摺動するとともに、付勢部材側突部44が装着キャップ7の第2傾斜面82を摺動し、付勢部材25の下端部41が装着キャップ7の支持部75に対して上昇し、付勢部材25が圧縮される。さらに押下ヘッド5を継続して回転させると、キャップ側突部80および付勢部材側突部44が当接し合う。これにより、押下ヘッド5を付勢部材25の上方付勢力に抗してステム21とともに押し下げることが可能となる待機位置に位置した状態となる。
【0036】
押下ヘッド5を待機位置から押し下げると、ステム21の台座部35がピストン22から下方に離間し、シリンダ23内において、ピストン22より下方に位置する部分と、ステム21の連通孔34と、が連通する。この状態からさらに押下ヘッド5を継続して押し下げると、装着筒部53の下端開口縁がピストン22のフランジ39に当接することで、ピストン22も押下ヘッド5などとともに下方移動する。これにより、シリンダ23内において、ピストン22より下方に位置する部分が加圧され、シリンダ23内の内容液が、台座部35とピストン22との間の上下方向の隙間、連通孔34、ステム21内、押下ヘッド5における装着筒部53内、およびノズル筒部54内をこの順に通過して、ノズル孔54aから吐出される。この際、下部弁体24の弁本体32が、シリンダ23の内面における下端開口の周縁部に着座した状態に保たれる。
【0037】
その後、押下ヘッド5の押し下げを解除すると、付勢部材25による上方付勢力により、押下ヘッド5がステム21とともに上方に復元移動する。この過程において、ステム21の台座部35が、ピストン22にピストン22の下方から当接することで、シリンダ23内において、ピストン22より下方に位置する部分と、ステム21の連通孔34と、の連通が遮断され、その後継続して、ピストン22も押下ヘッド5などとともに上方に移動すると、シリンダ23内において、ピストン22より下方に位置する部分が減圧され、下部弁体24における弁本体32が、連結片を弾性変形させつつ、シリンダ23の内面における下端開口の周縁部から上方に離間することで、シリンダ23の下端開口が開放され、容器体A内の内容液が、吸上筒28内を通してシリンダ23内に流入する。
以上により、吐出器1による1回の吐出動作が完了する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の吐出器1によれば、付勢部材25が合成樹脂材料で形成されているので、吐出器1の廃棄に際し、付勢部材25と、合成樹脂材料からなる他の部材と、を分別する必要をなくすことができる。
押下ヘッド5が規制位置に位置する状態から押下ヘッド5を回転させると、押下ヘッド5の装着筒部53に対して回転不能に設けられた付勢部材25も回転し、キャップ側突部80が第1傾斜面43を摺動する。これにより、付勢部材25の下端部が上方に移動するので付勢部材25が圧縮される。なお、付勢部材側突部44と装着キャップ7の第2傾斜面82との関係についても同様である。よって、押下ヘッド5が規制位置から待機位置まで回転して移動し、押下ヘッド5が付勢部材25によって上方付勢され、かつ押下可能となり、ポンプ2を作動させることができる。
ここで、付勢部材25を自然長の状態で配置し、かつ吐出器1を使用する際に押下ヘッド5を回転させることで付勢部材25を圧縮することが可能となる。このため、付勢部材25が合成樹脂材料で形成されているので、付勢部材25に上下方向の圧縮力を長時間加えると、付勢部材25に圧縮変形の癖が付くおそれがあるが、押下ヘッド5を規制位置に位置させ、付勢部材25に上下方向の圧縮力を加えずに流通および保管等を行うことによって、この期間に付勢部材25に圧縮変形の癖が付くこと(塑性変形)がなく、吐出器1の使用に際して、付勢部材25が弾性変形しにくくなっているのを防ぐことができる。
また、ユーザーの使用時においても、押下ヘッド5を回転させて使用開始前の規制位置に戻すことが可能であり、例えば吐出器の使用後の保管時に押下ヘッド5を規制位置に戻す操作を行えば、付勢部材25にかかる負荷を低減し、長期にわたって付勢部材25による良好な付勢力を保つことができる。
【0039】
また、押下ヘッド5が規制位置に位置する状態と、押下ヘッド5が待機位置に位置する状態と、の2つの状態で押下ヘッド5の高さを同じにすることができる。よって、流通および保管等を行う期間において、吐出器1の全高の増大を抑制し、吐出器1の占有スペースの削減を図ることができる。
【0040】
また、押下ヘッド5が規制位置に位置した状態では、押下キャップ5の縦リブ55が装着キャップ7の規制凸部77の上面に当接しているので、押下ヘッド5の押下が規制される。このため、押下ヘッド5の押下を規制するためにストッパー等の別部材を設ける必要がなく、使用に際して廃棄する部品を削減できるとともに、使用後に押下が規制された状態に戻したい場合に、ストッパー等の別部材の紛失のおそれがない吐出器1とすることができる。
【0041】
また、装着キャップ7の支持部75は、付勢部材の第1傾斜面43に当接した第2傾斜面82を有する。これにより、第1傾斜面43および第2傾斜面82が周方向に対向し合った状態で互いに当接するので、第1傾斜面43および第2傾斜面82が互いに近付く方向に装着キャップ7および付勢部材25の下端部41が相対回転することを抑制できる。したがって、付勢部材25の下端部41の位置ずれを抑制できる。
【0042】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、付勢部材25の下端部41の下面41aに、キャップ側突部80が摺動する第1傾斜面43が設けられ、装着キャップ7の支持部75の上面75aに、付勢部材25の付勢部材側突部44が摺動する第2傾斜面82が設けられている。しかしながらこの構成に限定されず、付勢部材25の下端部41の下面41a、および装着キャップ7の支持部75の上面75aの少なくともいずれか一方に、他方の突部が摺動する傾斜面が形成されていればよい。
【0043】
また、上記実施形態では、キャップ側突部80が2つ設けられているが、キャップ側突部は3個以上設けられていてもよい。付勢部材側突部44についても同様である。
【0044】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…吐出器 2…ポンプ 5…押下ヘッド 7…装着キャップ 21…ステム 25…付勢部材 41…下端部 41a…下面 43…第1傾斜面(傾斜面、対向傾斜面) 44…付勢部材側突部(突部) 53…装着筒部 54a…ノズル孔 75…支持部 75a…上面 80…キャップ側突部(突部) 82…第2傾斜面(対向傾斜面、傾斜面) A…容器体 A1…口部
図1
図2
図3
図4
図5