(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/62 20180101AFI20231006BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20231006BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20231006BHJP
F24F 11/523 20180101ALI20231006BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20231006BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20231006BHJP
【FI】
F24F11/62
F24F11/46
F24F11/64
F24F11/523
F24F110:12
F24F110:10
(21)【出願番号】P 2020022935
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】安田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】妻鹿 利宏
(72)【発明者】
【氏名】成井 智祐
(72)【発明者】
【氏名】村山 修一
(72)【発明者】
【氏名】海津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】中島 義統
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134360(JP,A)
【文献】特開2020-020531(JP,A)
【文献】特開2006-057908(JP,A)
【文献】特開2019-049404(JP,A)
【文献】特開2013-083402(JP,A)
【文献】特開2014-214905(JP,A)
【文献】特開2008-306870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機と、
所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する室温を推定する室温推定装置と、を含む空調システムであって、
前記室温推定装置は、
設定温度と省エネ制御パターンとのマトリクスの各セルに、対応する設定温度と対応する省エネ制御パターンによって前記空調機を運転した場合の外気温に対する推定室温を算出する室温推定モデルを格納した室温推定モデルデータベースと、
前記室温推定モデルデータベースに基づいて推定室温の算出を行う推定室温算出部と、を備え、
前記推定室温算出部は、
前記室温推定モデルデータベースに所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンに対応する室温推定モデルが格納されている場合には、前記室温推定モデルデータベースに格納されている室温推定モデルを用いて外気温に対する推定室温を算出し、
前記室温推定モデルデータベースに所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンに対応する室温推定モデルが格納されていない場合には、室温推定モデルが格納されている複数のセルにおいて室温推定モデルを用いて外気温に対する推定室温をそれぞれ算出し、算出した複数のセルの各推定室温を補間して、所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する推定室温を算出すること、
を特徴とする空調システム。
【請求項2】
請求項1に記載の空調システムであって、
前記推定室温算出部は、
前記室温推定モデルデータベースのマトリクスの一つの行または一つの列の2つのセルに室温推定モデルが格納されている場合には、各セルにおいて室温推定モデルを用いて外気温に対する推定室温をそれぞれ算出し、算出した各セルの各推定室温を線形補間して所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する推定室温を算出し、
前記室温推定モデルデータベースのマトリクスの一つの行または一つの列の3つ以上のセルに室温推定モデルが格納されている場合には、各セルにおいて室温推定モデルを用いて外気温に対する推定室温をそれぞれ算出し、算出した各セルの各推定室温を線形補間して、又は、算出した各セルの各推定室温によりセルの並びに対する推定室温の変化を示す近似曲線を生成し、生成した近似曲線に基づいて、所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する推定室温を算出すること、
を特徴とする空調システム。
【請求項3】
複数の室内機を含む少なくとも一つの空調機と、
室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する各室内機近傍の各室温を推定する室温推定装置と、を含む空調システムであって、
前記室温推定装置は、
室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンとのマトリクスの各セルに、対応する室内機別の設定温度と対応する室内機別の省エネ制御パターンによって前記空調機を運転した場合の外気温に対する一の室内機近傍の推定室温を算出する室内機別室温推定モデルを格納した室内機別室温推定モデルデータベースを複数の室内機毎に格納した室温推定モデルデータベースと、
前記室温推定モデルデータベースに基づいて各室内機近傍の各推定室温の算出を行う推定室温算出部と、を備え、
前記推定室温算出部は、
一の室内機の前記室内機別室温推定モデルデータベースに室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンに対応する室内機別室温推定モデルが格納されている場合には、前記室内機別室温推定モデルデータベースに格納されている室内機別室温推定モデルを用いて外気温に対する一の室内機近傍の推定室温を算出する動作を、複数の室内機毎に繰り返して実行して各室内機近傍の各推定室温を算出し、
一の室内機の前記室内機別室温推定モデルデータベースに室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンに対応する室内機別室温推定モデルが格納されていない場合には、室内機別室温推定モデルが格納されている複数のセルにおいて室内機別室温推定モデルを用いて外気温に対する一の室内機近傍の推定室温をそれぞれ算出し、算出した複数のセルの一の室内機近傍の推定室温を補間して、室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する一の室内機近傍の推定室温を算出する動作を、複数の室内機毎に繰り返して実行して各室内機近傍の各推定室温を算出すること、
を特徴とする空調システム。
【請求項4】
請求項3に記載の空調システムであって、
前記推定室温算出部は、
前記室内機別室温推定モデルデータベースのマトリクスの一つの行または一つの列の2つのセルに室温推定モデルが格納されている場合には、各セルにおいて室温推定モデルを用いて外気温に対する一の室内機近傍の推定室温をそれぞれ算出し、算出した各セルの一の室内機近傍の推定室温を線形補間して室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する一の室内機近傍の推定室温を算出し、
前記室内機別室温推定モデルデータベースのマトリクスの一つの行または一つの列の3つ以上のセルに室温推定モデルが格納されている場合には、各セルにおいて室温推定モデルを用いて外気温に対する一の室内機近傍の推定室温をそれぞれ算出し、算出した各セルの一の室内機近傍の推定室温を線形補間して、又は、算出した各セルの一の室内機近傍の推定室温によりセルの並びに対する一の室内機近傍の推定室温の変化を示す近似曲線を生成し、生成した近似曲線に基づいて、室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する一の室内機近傍の推定室温を算出すること、
を特徴とする空調システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の空調システムであって、
前記室温推定装置は、複数の室内機が配置された空調空間の画像と、複数の室内機それぞれの近傍の各推定室温の分布と、を重ね合わせて表示画像を生成する表示生成部と、
前記表示生成部で生成した画像を表示する表示部と、を備えること、
を特徴とする空調システム。
【請求項6】
請求項5に記載の空調システムであって、
前記表示部は、外気温の設定が可能であり、
前記室温推定装置は、前記表示部で設定された外気温に基づいて各室内機近傍の各推定室温を算出して前記表示部に表示すること、
を特徴とする空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンで空調機を運転した際の外気温に対する室温を推定する空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空調機の運転実績を分析することにより、空調機を運転した際の室温を推定する計算パラメータを設定し、このパラメータを用いて空調機を運転した際の外気温に対する室温を推定することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年、空調システムでも省エネルギーが求められている。この場合、空調機を省エネ制御モードで運転した場合でも快適性を保てるように、どのような省エネ制御を実行したら室温がどのようになるのかを予測することが必要となる。しかし、特許文献1に記載された従来技術のように、過去の運転実績からパラメータを設定して室温を推定する場合、過去に運転実績のない省エネ制御を実行した場合の室温を予測することができない。このため、十分な省エネ制御ができず、目標消費電力未達となってしまう場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、運転実績のない省エネ制御を実行した場合でも省エネ制御実施時の室温を推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空調システムは、空調機と、所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する室温を推定する室温推定装置と、を含む空調システムであって、前記室温推定装置は、設定温度と省エネ制御パターンとのマトリクスの各セルに、対応する設定温度と対応する省エネ制御パターンによって前記空調機を運転した場合の外気温に対する推定室温を算出する室温推定モデルを格納した室温推定モデルデータベースと、前記室温推定モデルデータベースに基づいて推定室温の算出を行う推定室温算出部と、を備え、前記推定室温算出部は、前記室温推定モデルデータベースに所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンに対応する室温推定モデルが格納されている場合には、前記室温推定モデルデータベースに格納されている室温推定モデルを用いて外気温に対する推定室温を算出し、前記室温推定モデルデータベースに所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンに対応する室温推定モデルが格納されていない場合には、室温推定モデルが格納されている複数のセルにおいて室温推定モデルを用いて外気温に対する推定室温をそれぞれ算出し、算出した複数のセルの各推定室温を補間して、所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する推定室温を算出すること、を特徴とする。
【0007】
これにより、所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンでの空調機の運転実績がなく、室温推定モデルデータベースに所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンに対応する室温推定モデルが格納されていない場合でも、補間により外気温に対する室温を推定することができる。このため、空調機の十分な省エネ制御を行うことができ、目標消費電力を達成することが容易となる。
【0008】
本発明の空調システムにおいて、前記推定室温算出部は、前記室温推定モデルデータベースのマトリクスの一つの行または一つの列の2つのセルに室温推定モデルが格納されている場合には、各セルにおいて室温推定モデルを用いて外気温に対する推定室温をそれぞれ算出し、算出した各セルの各推定室温を線形補間して所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する推定室温を算出し、前記室温推定モデルデータベースのマトリクスの一つの行または一つの列の3つ以上のセルに室温推定モデルが格納されている場合には、各セルにおいて室温推定モデルを用いて外気温に対する推定室温をそれぞれ算出し、算出した各セルの各推定室温を線形補間して、又は、算出した各セルの各推定室温によりセルの並びに対する推定室温の変化を示す近似曲線を生成し、生成した近似曲線に基づいて、所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する推定室温を算出してもよい。
【0009】
室温推定モデルデータベースのマトリクスの一つの行または一つの列の2つのセルに室温推定モデルが格納されている場合には、線形補間により簡便に室温の推定を行うことができ、室温推定モデルデータベースのマトリクスの一つの行または一つの列の3つ以上のセルに室温推定モデルが格納されている場合には、近似曲線による補間を行うことにより、室温の推定精度を向上させることができる。
【0010】
本発明の空調システムは、複数の室内機を含む少なくとも一つの空調機と、室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する各室内機近傍の各室温を推定する室温推定装置と、を含む空調システムであって、前記室温推定装置は、室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンとのマトリクスの各セルに、対応する室内機別の設定温度と対応する室内機別の省エネ制御パターンによって前記空調機を運転した場合の外気温に対する一の室内機近傍の推定室温を算出する室内機別室温推定モデルを格納した室内機別室温推定モデルデータベースを複数の室内機毎に格納した室温推定モデルデータベースと、前記室温推定モデルデータベースに基づいて各室内機近傍の各推定室温の算出を行う推定室温算出部と、を備え、前記推定室温算出部は、一の室内機の前記室内機別室温推定モデルデータベースに室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンに対応する室内機別室温推定モデルが格納されている場合には、前記室内機別室温推定モデルデータベースに格納されている室内機別室温推定モデルを用いて外気温に対する一の室内機近傍の推定室温を算出する動作を、複数の室内機毎に繰り返して実行して各室内機近傍の各推定室温を算出し、一の室内機の前記室内機別室温推定モデルデータベースに室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンに対応する室内機別室温推定モデルが格納されていない場合には、室内機別室温推定モデルが格納されている複数のセルにおいて室内機別室温推定モデルを用いて外気温に対する一の室内機近傍の推定室温をそれぞれ算出し、算出した複数のセルの一の室内機近傍の推定室温を補間して、室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する一の室内機近傍の推定室温を算出する動作を、複数の室内機毎に繰り返して実行して各室内機近傍の各推定室温を算出すること、を特徴とする。
【0011】
室内機の設置されている場所、例えば、窓側、或いは、通路側等により、室内機の熱負荷が異なってくる。このため、空調機の省エネ制御を実行した場合の室温の変化は室内機毎に異なってくる。本発明は、室温推定モデルデータベースに各室内機の近傍の各室温をそれぞれ推定する室内機別室温推定モデルを複数格納し、室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンに対応する室内機別室温推定モデルが格納されていない場合には補間により各室内機の外気温に対する各室温を推定するので、所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンでの空調機の運転実績がなく、室温推定モデルデータベースに所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンに対応する室温推定モデルが格納されていない場合でも、各室内機の外気温に対する各室温を推定することができる。これにより、省エネ制御を実施した場合の各室内機の近傍の室温の変化を推定し、各室内機の近傍の各室温の変化が大きくならないように各室内機の省エネ制御を行いながら目標消費電力を達成することが容易となる。
【0012】
本発明の空調システムにおいて、前記推定室温算出部は、前記室内機別室温推定モデルデータベースのマトリクスの一つの行または一つの列の2つのセルに室温推定モデルが格納されている場合には、各セルにおいて室温推定モデルを用いて外気温に対する一の室内機近傍の推定室温をそれぞれ算出し、算出した各セルの一の室内機近傍の推定室温を線形補間して室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する一の室内機近傍の推定室温を算出し、前記室内機別室温推定モデルデータベースのマトリクスの一つの行または一つの列の3つ以上のセルに室温推定モデルが格納されている場合には、各セルにおいて室温推定モデルを用いて外気温に対する一の室内機近傍の推定室温をそれぞれ算出し、算出した各セルの一の室内機近傍の推定室温を線形補間して、又は、算出した各セルの一の室内機近傍の推定室温によりセルの並びに対する一の室内機近傍の推定室温の変化を示す近似曲線を生成し、生成した近似曲線に基づいて、室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンで前記空調機を運転した際の外気温に対する一の室内機近傍の推定室温を算出してもよい。
【0013】
室内機別室温推定モデルデータベースのマトリクスの一つの行または一つの列の2つのセルに室温推定モデルが格納されている場合には、線形補間により簡便に室温の推定を行うことができ、室内機別室温推定モデルデータベースのマトリクスの一つの行または一つの列の3つ以上のセルに室温推定モデルが格納されている場合には、近似曲線による補間を行うことにより、室温の推定精度を向上させることができる。
【0014】
本発明の空調システムにおいて、前記室温推定装置は、複数の室内機が配置された空調空間の画像と、複数の室内機それぞれの近傍の各推定室温の分布と、を重ね合わせて表示画像を生成する表示生成部と、前記表示生成部で生成した画像を表示する表示部と、を備えてもよい。
【0015】
これにより、空調空間における各室内機の近傍の各室温の分布を視覚的に認識することができ、各室内機の省エネ制御パターンを調整することが容易となる。
【0016】
本発明の空調システムにおいて、前記表示部は、外気温の設定が可能であり、前記室温推定装置は、前記表示部で設定された外気温に基づいて各室内機近傍の各推定室温を算出して前記表示部に表示してもよい。
【0017】
これにより、画面を見ながら外気温が変化した場合の各室温の変化を視覚的にとらえることができ、各室内機の省エネ制御パターンを容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、運転実績のない省エネ制御を実行した場合でも省エネ制御実施時の室温を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の空調システムの構成を示す系統図である。
【
図2】
図1に示す空調システムの空調機のコントローラ、室温推定装置を形成するコンピュータのハードウェア構成図である。
【
図3】
図1に示す空調機のコントローラの記憶部の中に格納されている室内機設定データベースのデータ構造を示す図である。
【
図4】
図1に示す室温推定装置の記憶部に格納されている空調機運転記録データベースの構造を示す図である。
【
図5】
図1に示す室温推定装置の記憶部に格納されている室温推定モデルデータベースの構造を示す図である。
【
図6】
図5に示す室温推定モデルデータベースの中の一つの室内機別室温推定データベースの構造を示す図である。
【
図7】実施形態の空調システムの動作を示すフローチャートである。
【
図8】室内機別室温推定モデルデータベースと、室内機別室温推定モデルデータベースに基づいて、ある設定温度及びある省エネ制御パターンで空調機を動作させた際の室内機の近傍の室温を計算した室温マトリクスを示す図である。
【
図9】
図8に示す室温マトリクスを補間して室内機近傍の室温を推定計算した室温マトリクスを示す図である。
【
図10】他の温推定モデルデータベースと、他の機別室温推定モデルデータベースに基づいて、他の設定温度及び他の省エネ制御パターンで空調機を動作させた際の室内機の近傍の室温を計算した他の室温マトリクスを示す図である。
【
図11】
図10に示す他のマトリクスを補間して室内機近傍の室温を推定計算した他の室温マトリクスを示す図である。
【
図12】空調空間の配置と各室内機近傍の各室温とを重ね合わせて表示した際の表示部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら実施形態の空調システム100について説明する。
図1に示すように、実施形態の空調システム100は、空調機10と、所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンで空調機10を運転した際の外気温T0に対する室温Trを推定する室温推定装置50とで構成されている。
【0021】
図1に示すように、空調機10は、空調空間であるビルの部屋60(
図12参照)の天井等に配置される第1~第6室内機31~36と、ビルの屋上等の屋外に配置される第1、第2室外機21,22と、コントローラ40と、通信部45とで構成されている。なお、以下の説明では、第1~第6の各室内機を区別しない場合には室内機30といい、第1、第2室外機21,22を区別しない場合には、室外機20という。
【0022】
室外機20は、内部にヒートポンプ等を備え、冷房用の低温の冷媒、或いは、暖房用の高温の冷媒を室内機30に供給するものである。第1室外機21は、第1~第3室内機31~33に接続されて第1~第3室内機31~33に冷媒を供給する。また、第2室外機22は、第4~第6室内機34~36に接続されて、第4~第6室内機34~36に冷媒を供給する。各室内機30は、冷媒の熱を空気に伝達する熱交換器とファンとを備えており、冷媒と室内の空気との間で熱交換を行い、空調空間を冷房、又は暖房する。
【0023】
各室内機30には、各室内機30の近傍の室温Trを検出する室温センサ37が取付けられている。また、各室外機20には、外気温T0を検出する外気温センサ23が取付けられている。各室外機20と各室内機30とは、コントローラ40に接続されている。室温センサ37、外気温センサ23が検出した各室内機30の近傍の各室温Trと、各室外機20の近傍の外気温T0とはコントローラ40に入力される。
【0024】
コントローラ40は、内部に情報処理を行うCPU151とメモリとを含む汎用コンピュータ150(
図2参照)で構成されており、第1、第2室外機21,22、第1~第6室内機31~36の運転を制御する制御部41と、第1、第2室外機21,22と第1~第6室内機31~36の動作設定情報を格納した室内機設定データベース200を含む記憶部42と、通信部45との3つの機能ブロックを備えている。なお、記憶部42には、第1、第2室外機21,22、第1~第6室内機31~36の運転制御のためのプログラムと動作データとが格納されている。また、通信部45は、電話回線、インターネットなどの通信回線48と接続されている。
【0025】
図2に示すように、汎用コンピュータ150は、情報処理を行うプロセッサであるCPU151と、情報処理の際にデータを一時的に記憶するROM152、RAM153と、プログラムやユーザのデータ等を格納するハードディスクドライブ(HDD)154と、入力手段として設けられたマウス155と、キーボード156、及び表示装置として設けられたディスプレイ157とを含んでいる。CPU151とROM152とRAM153とHDD154とはデータバス160によって接続されている。また、マウス155とキーボード156とディスプレイ157とは入出力インターフェース158を介してデータバス160に接続されている。また、データバス160には通信手段として設けられたネットワークコントローラ159が接続されている。
【0026】
コントローラ40の制御部41、通信部45は、
図2に示す汎用コンピュータ150のハードウェアとCPU151で動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、記憶部42は
図2に示す汎用コンピュータ150のHDD154によって実現される。なお、HDD154に代えて、外部の記憶手段をネットワーク経由で利用することによって実現してもよいし、SDDを用いてもよい。
【0027】
図3に示すように、記憶部42に格納された室内機設定データベース200は、各室内機30の設定温度と、各室内機30の室内機省エネ制御パターンと、各室内機30が接続されている室外機20の室外機省エネパターンとを関連付けて格納したものである。ここで、設定温度は各室内機30の近傍の室温Trの制御目標温度である。室外機20と室内機30とで構成される空調機10の省エネ制御パターンは、室内機30の室内機省エネ制御パターンと、室外機20の室外機省エネ制御パターンの組み合わせで構成される。室内機省エネ制御パターンの一例は、送風ローテーション制御である。送風ローテーション制御とは、一つの室外機20に接続されている複数の室内機30の熱交換器へ低温又は高温の冷媒の供給を停止して、所定時間だけファンのみの運転とする運転状態を複数の室内機30で順番に行う制御である。送風ローテーション制御は、30分の運転時間の間に何分間送風運転を行うかで複数の制御パターンがある。例えば、30分の運転の中で、3分間だけ送風運転を行う場合には、「送風ローテーション 送風3分」の送風機省エネ制御パターンとなる。また、30分の運転の中で、6分だけ送風運転を行う場合には、「送風ローテーション 送風6分」の送風機省エネ制御パターンとなる。なお、送風運転を行わない通常運転の場合は、「送風ローテーション 0分」の室内機省エネ制御パターンとなる。
【0028】
また、室外機省エネ制御パターンの一例は、室外機20の能力を低減して運転する能力セーブ制御がある。この場合、室外機20は80%等に低減した能力で運転し、室外機20に接続されている各室内機30は、それぞれ通常運転を行う。この場合、室外機省エネ制御パターンは、「能力80%」となる。また、室外機20が省エネ制御をおこなわず、通常運転を行う場合には、空調機省エネ制御パターンは「能力100%」となる。なお、室外機20を80%の能力で運転し、室内機30を送風ローテーション制御で運転するようにしてもよい。
【0029】
空調機10のコントローラ40の制御部41は、室内機設定データベース200に格納された各室内機30、室外機20の運転条件に基づいて、各室外機20、室内機30の運転を行う。この際、制御部41は、室外機20、室内機30ともに通常運転で省エネ制御運転を行わない場合には、各室内機30の室温センサ37によって検出した室温Trが設定温度となるように、室外機20と室内機30とを動作させる。一方、室外機20、室内機30のどちらかに省エネ制御パターンが設定されている場合には、各省エネ制御パターンによる運転を優先させて室外機20、室内機30を運転する。このため、省エネ制御パターンが設定されている場合には、室温Trは、設定温度から変化した温度となる。例えば、冷房の場合には、室温Trは設定温度よりも少し高めの温度となる。
【0030】
コントローラ40は、上記のような運転を行った際の空調機10の運転記録を通信部45から通信回線48に出力する。運転記録は、例えば、日時、外気温センサ23で検出した外気温T0、設定温度、室内機30、室外機20の省エネ制御パターン、室温センサ37で検出した室温Trを含んでいる。
【0031】
室温推定装置50は、通信部51と、室温推定モデル生成部52と、推定室温算出部53と、表示生成部54と、表示部55と、記憶部56との6つの機能ブロックで構成される。各機能ブロックの概要は以下の通りである。
【0032】
通信部51は、通信回線48と通信して空調機10のコントローラ40から空調機10の各室内機30の運転記録を受信して、記憶部56の空調機運転記録データベース300に格納する。室温推定モデル生成部52は、空調機運転記録データベース300に蓄積された各室内機30の運転状態を読み出して、外気温T0に対する各室内機30の近傍の室温Trを算出する室内機別室温推定モデルを生成して室温推定モデルデータベース400のマトリクスに格納する。推定室温算出部53は、室温推定モデルデータベース400のマトリクスに格納された室内機別室温推定モデルを用いて各室内機30の近傍の室温を算出する。表示生成部54は、推定室温算出部53が算出した各室内機30の近傍の推定室温のデータと空調空間の画像とを重ね合わせて表示画像を生成して表示部55に出力する。表示部55は、空調空間と推定室温Trとが重ね合わされた画像を表示する。
【0033】
ここで、通信部51と、室温推定モデル生成部52と、推定室温算出部53と、表示生成部54とは、
図2に示す汎用コンピュータ150のハードウェアとCPU151で動作するプログラムとの協調動作により実現される。表示部55は、
図2に示す汎用コンピュータ150のディスプレイ157によって実現され、記憶部56は
図2に示す汎用コンピュータ150のHDD154によって実現される。
【0034】
以下、各機能ブロックの詳細について説明する。記憶部56に格納された空調機運転記録データベース300は、
図4に示すように、室内機毎の室内機別運転記録データベース301~303を複数格納したものである。室内機別運転記録データベース301~303は、室内機30毎に、運転日時と、その室内機30が接続されている室外機20の外気温センサ23で検出した外気温T0と、その室内機30の設定温度と、その室内機30の室内機省エネ制御パターンと、その室内機30が接続されている室外機20の室外機省エネ制御パターと、その室内機30の室温センサ37で検出したその室内機30の近傍の室温Trとを関連付けて格納したデータベースである。
【0035】
図4に示す室内機別運転記録データベース301を例としてデータベース構造を説明する。室内機別運転記録データベース301は、室内機番号が001の第1室内機31の運転記録である。外気温T0は、第1室内機31が接続されている第1室外機21に取付けられた外気温センサ23で検出した値である。また、室温Trは、第1室内機31に取付けられた室温センサ37で検出した値である。第1室内機31の設定温度は、先に説明した室内機設定データベース200の室内機番号001の設定温度である26℃となっている。また、第1室内機31の室内機省エネ制御パターン、第1室外機21の室外機省エネ制御パターンは、それぞれ室内機設定データベース200に格納されているように、「送風ローテーション 送風6分」、「能力100%」である。
【0036】
そして、
図4に示すように、2019年8月28日の14:00~14:40の間、第1室内機31は、設定温度26℃、室内機省エネ制御パターンが「送風ローテーション 送風6分」で運転されており、第1室外機21は、室外機省エネ制御パターンが「能力100%」で運転されている。この間、外気温T0は、30.0℃から33.0℃の間で変化し、この外気温T0の変化に応じて第1室内機31の近傍の室温Trは26.2℃から26.5℃の間で変化する。第1室内機31が省エネ制御で運転されているので、空調機10のコントローラ40は、室温Trを設定温度に制御せずに、第1室内機31の省エネ制御パターンを優先させて第1室内機31を運転する。このため、室温Trは、設定温度の26℃よりも少し高めの温度となっている。
【0037】
同様に、室内機別運転記録データベース302は、室内機番号が002の第2室内機32の運転状態と外気温T0に対する室温Trの変化を格納している。第2室内機32も第1室内機31と同様、「送風ローテーション 6分」の省エネ制御パターンで運転されている。ただし、
図12に示すように、第2室内機32は部屋60の窓61に近い位置に配置されているので、第2室内機32の近傍の室温Trは、同じ「送風ローテーション 6分」の省エネ制御パターンで運転されて第1室内機31の近傍の室温Trよりも少し高くなっている。
【0038】
通信部51は、通信回線48を介して空調機10のコントローラ40から取得したこれらのデータを空調機運転記録データベース300に出力し、空調機運転記録データベース300に格納する。
【0039】
先に説明したように、室温推定モデル生成部52は、空調機運転記録データベース300に蓄積された各室内機30、各室外機20の運転状態を読み出して、外気温T0に対する各室内機30の近傍の室温Trを算出する室内機別室温推定モデルを生成して室温推定モデルデータベース400のマトリクスに格納する。
【0040】
以下、一例として、室温推定モデル生成部52が、室内機別運転記録データベース301に格納された第1室内機31の運転記録に基づいて、外気温T0に対する第1室内機31の近傍の室温Trを算出する室温推定モデルを生成する場合について説明する。
【0041】
第1室内機31の近傍の室温Trは、外気温T0の関数として下記の(式1)のように表すことができる。
【数1】
(式1)の傾きAと切片Bとは、例えば、室内機別運転記録データベース301に格納された第1室内機31の運転記録の外気温T0と室温Trのデータを線形回帰により求めることができる。室温Trと外気温T0との関係は、第1室内機31の設定温度、室内機省エネ制御パターン、室外機省エネ制御パターンによって変化する。従って、室温推定モデル生成部52は、室内機別運転記録データベース301に基づいて、第1室内機31の設定温度が26℃、室内機省エネ制御パターンが「送風ローテーション 送風6分」、室外機省エネ制御パターンが「能力100%」の条件で第1室内機31と第1室外機21とを運転した際の外気温T0に対する室温Trを推定する(式1)の傾きA,切片Bを線形回帰により生成し、推定式を生成する。生成した室温Trの推定式は、
図5に示す室温推定モデルデータベース400に格納される。
【0042】
図5に示すように室温推定モデルデータベース400は、室内機別室温推定モデルデータベース401~404を構成するマトリクスを複数格納したものである。以下、
図6を参照しながら例として室内機別室温推定モデルデータベース401について説明する。なお、
図5では図示を省略しているが、室温推定モデルデータベース400は、第1~第6室内機31~36のそれぞれについて少なくとも1つの室内機別室温推定モデルデータベースを格納している。
【0043】
図6に示すように、室内機別室温推定モデルデータベース401は、行を第1室内機31設定温度とし、列を第1室内機31の室内機省エネ制御パターンとしたマトリクスの各セルに、対応する設定温度、対応する室内機省エネ制御パターンで第1室内機31を運転し、第1室内機31が接続されている第1室外機21を能力100%で運転した場合の外気温T0に対する第1室内機31の近傍の室温Trを計算する室温推定モデルを格納したものである。
図6に示すように、各セルに格納される室温推定モデルは、アルファベットのfと、3桁の数字で区別される。1行1列には「f111(T0)」と記載されている。「f111(T0)」中のアルファベットの「f」は、第1室内機31の省エネ制御パターンが送風ローテーション制御であることを示し、最初の数字「1」は、第1室内機31の室内機の番号の「1」を示す。また、「f111(T0)」の2つ目の数値と3つ目の数値とは、室温推定モデルが格納されているマトリクスの行番号と列番号である。また、(T0)は、室温推定モデルにおいて、外気温T0が変数であることを示す。
図6の場合、1行は、設定温度25℃の行、1列は、室内機省エネ制御パターンが「送風ローテーション 送風0分」の列であるから、1行1列は、第1室内機31を設定温度25℃、室内機省エネ制御パターンを「送風ローテーション 送風0分」で運転し、第1室外機21を能力100%で運転した場合の外気温T0に対する第1室内機31の近傍の室温Trを算出する室温推定モデルが格納されているセルとなる。
【0044】
同様に、2行1列から4行1列までの各セルには、第1室内機31の室内機省エネ制御パターンを「送風ローテーション 送風0分」とし、それぞれ設定温度を26℃、27℃、28℃として第1室内機31を運転し、第1室外機21を能力100%で運転した場合の外気温T0に対する第1室内機31の近傍の室温Trを算出する室温推定モデルが格納されている。
【0045】
先に説明した
図4の室内機別運転記録データベース301に基づいて、室温推定モデル生成部52が生成した、第1室内機31の設定温度が26℃、室内機省エネ制御パターンが「送風ローテーション 送風6分」、室外機省エネ制御パターンが「能力100%」の条件で第1室内機31と第1室外機21とを運転した際の外気温T0に対する室温Trを推定する室温推定モデルは、
図5又は
図6に示す室内機別室温推定モデルデータベース401の2行3列に、「f123(T0)」として格納される。
【0046】
また、
図4の室内機別運転記録データベース302に基づいて、室温推定モデル生成部52が生成した、第2室内機32の設定温度が26℃、室内機省エネ制御パターンが「送風ローテーション 送風6分」、室外機省エネ制御パターンが「能力100%」の条件で第2室内機32と第1室外機21とを運転した際の外気温T0に対する室温Trを推定する室温推定モデルは、
図5に示す室内機別室温推定モデルデータベース402の2行3列に、「f223(T0)」として格納される。
【0047】
また、
図4の室内機別運転記録データベース303に基づいて、室温推定モデル生成部52が生成した、第1室内機31の設定温度が26℃、室内機省エネ制御パターンが「送風ローテーション 送風0分」、室外機省エネ制御パターンが「能力90%」の条件で第1室内機31と第1室外機21とを運転した際の外気温T0に対する室温Trを推定する室温推定モデルは、
図5に示す室内機別室温推定モデルデータベース404の2行3列に、「g123(T0)」として格納される。ここで、アルファベット「g」は、室外機20が能力低減運転を行う省エネ制御パターンを示す。
【0048】
以上説明したように、室温推定モデル生成部52は、
図4に示す空調機運転記録データベース300に蓄積された各室内機30、各室外機20の運転状態を読み出して、外気温T0に対する各室内機30の近傍の室温Trを算出する室内機別室温推定モデルを生成して室温推定モデルデータベース400の室内機別室温推定モデルデータベース401~404のマトリクスに格納する。ただし、
図5に示す室内機別室温推定モデルデータベース401の1行2列の設定温度が25℃、室内機省エネ制御パターンが「送風ローテーション 送風3分」の場合のように、運転実績のない運転条件のセルには、室温推定モデルは格納されていない。
【0049】
次に、
図7から
図11を参照しながら、推定室温算出部53の動作について説明する。
以下、室温推定モデルデータベース400には、
図8に示す室内機別室温推定モデルデータベース410が格納されているとして説明する。
図8に示すように、室内機別室温推定モデルデータベース410は、第1室内機31に接続されている第1室外機21を能力100%で運転し、2行1列に第1室内機31の設定温度を26℃、室内機省エネ制御パターンを「送風ローテーション 送風0分」とした場合の外気温T0に対する室温Trを計算する室温推定モデルが「f121(T0)」として格納されている。また、2行3列には、第1室内機31の設定温度を26℃、室内機省エネ制御パターンを「送風ローテーション 送風6分」とした場合の外気温T0に対する室温Trを計算する室温推定モデルが「f123(T0)」として格納されている。更に、1行5列と3行5列には、第1室内機31の室内機省エネ制御パターンを「送風ローテーション 送風15分」とし、設定温度をそれぞれ25℃、27℃とした場合の外気温T0に対する室温Trを計算する室温推定モデルがそれぞれ「f115(T0)」、「f135(T0)」として格納されている。室内機別室温推定モデルデータベース410のそれ以外のセルには、室温推定モデルは格納されていない。
【0050】
図7のステップS101に示すように、推定室温算出部53は、推定室温の計算を行う計算条件、すなわち、室内機30の特定と、その室内機30の設定温度と、その室内機30の室内機省エネ制御パターン、及び、その室内機30に接続されている室外機20の室外機省エネ制御パターンを設定する。そして、ステップS102に進んで、設定した計算条件に一致する室温推定モデルが室内機別室温推定モデルデータベース410に格納されているかを確認する。
【0051】
例えば、第1室内機31を設定温度26℃、「送風ローテーション 送風0分」で運転し、第1室内機31に接続されている第1室外機21を能力100%で運転することを室温Trの計算条件に設定した場合、この計算条件は、
図8に示す室内機別室温推定モデルデータベース410の2行1列に室温推定モデル「f121(T0)」として格納されている。この場合、推定室温算出部53は、
図7のステップS102でYESと判断して
図7のステップS103進む。
図7のステップS103において、推定室温算出部53は、室温推定モデル「f121(T0)」に外気温T0を入力することによって、設定した計算条件で第1室内機31、第1室外機21を運転した際に外気温T0に対する第1室内機31の近傍の室温を「T121(T0)」として算出し、
図8に示す室温マトリクス510に格納する。ここで、室温マトリクス510は、室内機別室温推定モデルデータベース410と同一のマトリクス構造で、推定室温算出部53は、算出した室温「T121(T0)」を室温マトリクス510の同一の行列位置である2行1列のセルに格納する。
【0052】
同様に、第1室内機31の設定温度を26℃、室内機省エネ制御パターンを「送風ローテーション 送風6分」を計算条件に設定した場合、第1室内機31の室内機省エネ制御パターンを「送風ローテーション 送風15分」とし、設定温度をそれぞれ25℃、27℃の場合を計算条件に設定した場合にも各計算条件に対応する室温推定モデルが
図8に示す室内機別室温推定モデルデータベース410の2行3列、1行5列、3行5列に室温推定モデル「f123(T0)」、「f115(T0)」、「f135(T0)」として格納されている。このため、推定室温算出部53は、
図7のステップS102でYESと判断して
図7のステップS103に進み、室温推定モデル「f123(T0)」、「f115(T0)」、「f135(T0)」にそれぞれ外気温T0を入力することによって、設定した計算条件で第1室内機31、第1室外機21を運転した際に外気温T0に対する第1室内機31の近傍の室温をそれぞれ「T123(T0)」、「T115(T0)」、「T135(T0)」として算出する。そして、推定室温算出部53は、算出した室温「T123(T0)」、「T115(T0)」、「T135(T0)」を室温マトリクス510の同一の行列位置セルに格納する。
【0053】
そして、推定室温算出部53は、計算した室温「T121(T0)」、「T123(T0)」、「T115(T0)」、「T135(T0)」を表示生成部54に出力する。表示生成部54は、
図7のステップS107において、空調空間配置データベース600の中に格納されたビルの部屋の中の室内機30や机等の配置画像に推定室温算出部53が算出した室温Trを重ね合わせて表示側画像を生成して、表示部55に表示する。
【0054】
一方、第1室内機31の設定温度が26℃で室内機省エネ制御パターンの「送風ローテーション 送風3分」、「送風ローテーション 送風9分」、又は「送風ローテーション 送風15分」に対応する
図8の2行2列、2行4列、2行5列のセルには室温推定モデルが格納されていない。このため、このような計算条件を設定した場合には、推定室温算出部53は、
図7のステップS102でNOと判断して
図7のステップS104に進んで補間により設定した計算条件で第1室内機31、第1室外機21を運転した場合の室温Trの推定計算を行うことができるかどうか判断する。
【0055】
推定室温算出部53は、
図7のステップS104で室内機別室温推定モデルデータベース410の中のマトリクスの一つの行または一つの列の2つ以上のセルに室温推定モデルが格納されているかを判断する。
図8に示すように、室内機別室温推定モデルデータベース410の第2行には、2行1列と2行3列の2つのセルに室温推定モデルが格納されており、第5列には、1行5列と3行5列の2つのセルに室温推定モデルが格納されている。このため、推定室温算出部53は、
図7のステップS104でYESと判断して
図7のステップS105に進んで室温推定モデルが格納されている複数のセルの内で計算条件に近いセルにおいて室温推定モデルを用いて外気温T0に対する推定室温をそれぞれ算出する。なお、推定室温算出部53は、
図7のステップS104でNOと判断した場合には、推定室温の計算処理を終了する。
【0056】
図7のステップS105において、推定室温算出部53は、第1室内機31の設定温度を26℃、室内機省エネ制御パターンを「送風ローテーション 送風3分」に対応する2行2列のセルの室温「T122(T0)」を推定しようとする場合、或いは、「送風ローテーション 送風9分」に対応する2行4列のセルの室温「T124(T0)」を推定しようとする場合には、
図8に示すように、同様の条件で室内機省エネ制御パターンのみが異なる隣接する2行1列の「送風ローテーション 送風0分」の室温推定モデル「f121(T0)」と、2行3列の「送風ローテーション 送風6分」の室温推定モデル「f123(T0)」を用いて、2行1列の「送風ローテーション 送風0分」の場合と2行1列の「送風ローテーション 送風0分」の場合の外気温T0に対する推定室温「T121(T0)」、「T123(T0)」を算出する。そして、推定室温算出部53は、算出した推定室温を室内機別室温推定モデルデータベース410と同一のマトリクス構造の室温マトリクス510の同一の行列位置のセルに格納する。
【0057】
そして、推定室温算出部53は、
図7のステップS106に進んで、算出した2行1列推定室温「T121(T0)」と2行3列のセルの推定室温「T123(T0)」を補間して、2行2列のセルの外気温T0に対する室温「T122(T0)」、2行4列のセルの外気温T0に対する室温「T124(T0)」を算出する。
【0058】
室温「T122(T0)」、「T124(T0)」の算出は、室温マトリクス510を直交座標系とみなし、室温マトリクス510の1セルを単位距離として、算出した複数のセルの各推定室温「T121(T0)」、「T123(T0)」を補間して算出する。
【0059】
室温マトリクス510の1セルを単位距離とするので、
図9に示すように、室温マトリクス510の2行1列のセルと2行2列のセルとの距離d1は1となり、室温マトリクス510の2行2列のセルと2行3列のセルとの距離d2も1となる。そして、2行2列のセルの外気温T0に対する室温「T122(T0)」は、下記の(式2)のような内挿補間式により算出される。
【数2】
【0060】
また、室温マトリクス510の2行1列のセルと2行4列のセルとの距離d4は3となり、室温マトリクス510の2行3列のセルと2行4列のセルとの距離d3は1となる。そして、2行4列のセルの外気温T0に対する室温「T124(T0)」は、下記の(式3)のような外挿補間式により算出される。
【数3】
【0061】
同様に、推定室温算出部53は、第1室内機31の設定温度を26℃、室内機省エネ制御パターンを「送風ローテーション 送風15分」に対応する2行5列のセルの室温「T125(T0)」、或いは、設定温度を28℃、室内機省エネ制御パターンを「送風ローテーション 送風15分」に対応する4行5列のセルの室温「T145(T0)」を推定しようとする場合、隣接する2行5列の設定温度25℃、「送風ローテーション 送風15分」の室温推定モデル「f115(T0)」と、3行5列の設定温度27℃、「送風ローテーション 送風15分」の室温推定モデル「f135(T0)」を用いて、1行5列の設定温度25℃、「送風ローテーション 送風15分」の場合と3行5列の設定温度27℃、「送風ローテーション 送風15分」の場合の外気温T0に対する推定室温「T115(T0)」、「T135(T0)」を算出する。そして、算出した各推定室温「T115(T0)」、「T135(T0)」を室温マトリクス510の同一のセルに格納する。
【0062】
先に列について説明したと同様、室温マトリクス510の1セルを単位距離とするので、
図9に示すように、室温マトリクス510の1行5列のセルと2行5列のセルとの距離e1は1となり、室温マトリクス510の2行5列のセルと3行5列のセルとの距離e2も1となる。そして、2行5列のセルの外気温T0に対する室温「T125(T0)」は、下記の(式4)のような内挿補間式により算出される。
【数4】
【0063】
また、室温マトリクス510の1行5列のセルと4行5列のセルとの距離e4は3となり、室温マトリクス510の3行5列のセルと4行5列のセルとの距離e3は1となる。そして、4行5列のセルの外気温T0に対する室温「T145(T0)」は、下記の(式5)のような外挿補間式により算出される。
【数5】
【0064】
そして、推定室温算出部53は、算出した各推定室温「T125(T0)」、「T145(T0)」を室温マトリクス510の同一のセルに格納する。
【0065】
そして、推定室温算出部53は、計算した推定室温「T121(T0)」、「T122(T0)」、「T123(T0)」、「T124(T0)」、「T125(T0)」、「T115(T0)」、「T135(T0)」、「T145(T0)」を表示生成部54に出力する。表示生成部54は、
図7のステップS107において、空調空間配置データベース600の中に格納されたビルの部屋の中の室内機30や机等の配置画像に推定室温算出部53が算出した各推定室温を重ね合わせて表示側画像を生成して、表示部55に表示する。
【0066】
以上、第1室内機31を所定の設定温度と所定の室内機省エネ制御パターンで運転し、第1室外機21を所定の室外機省エネ制御パターンで運転した場合の第1室内機31の近傍の室温Trを推定することについて説明したが、推定室温算出部53は、第2室内機32~第6室内機36についても、
図7のステップS101~S107を実行して第2室内機32~第6室内機36を所定の設定温度と所定の室内機省エネ制御パターンで運転し、第1室外機21、第2室外機22を所定の室外機省エネ制御パターで運転した場合の第2室内機32~第6室内機36の近傍の各室温Trを推定することができる。
【0067】
そして、
図7のステップS107で、
図12に示すように、空調空間のビルの部屋60に配置された第1~第6室内機31~36の配置、窓61、机63の配置に各室温表示64を重ね合わせて画像を生成し、
図12のような画像を表示部55に表示する。これにより、空調機10を所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンで運転した際の外気温T0に対する第1~第6室内機31~36の近傍の室温Trの分布を表示することができる。これにより、空調空間における第1~第6室内機31~36の近傍の各室温Trの分布を視覚的に認識することができ、第1~第6室内機31~36の省エネ制御パターンを調整することが容易となる。
【0068】
また、
図12に示すように、表示部55に計算したい外気温T0を変更可能なバー65を表示し、このバー65のカーソル66を
図2に示すマウス155で移動させることにより、計算する外気温T0を変更してもよい。これにより、画面を見ながら外気温T0が変化した場合の各室温Trの変化を視覚的にとらえることができ、第1~第6室内機31~36の省エネ制御パターンを容易に調整することができる。
【0069】
第1~第6室内機31~36の設置されている場所、例えば、窓側、或いは、通路側等により、第1~第6室内機31~36の熱負荷が異なってくる。このため、空調機10の省エネ制御を実行した場合の室温の変化は第1~第6室内機31~36でそれぞれ異なってくる。実施形態の空調システム100では、室温推定モデルデータベース400に各室内機30の近傍の各室温Trをそれぞれ推定する室内機別室温推定モデルデータベース401~404を複数格納し、室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンに対応する室内機別室温推定モデルが格納されていない場合には補間により各室内機30の外気温T0に対する各室温Trを推定するので、所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンでの空調機10の運転実績がなく、室温推定モデルデータベース400に所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンに対応する室温推定モデルが格納されていない場合でも、各室内機30の外気温T0に対する各室温Trを推定することができる。これにより、省エネ制御を実施した場合の各室内機30の近傍の室温Trの変化を推定し、各室内機30の近傍の各室温Trの変化が大きくならないように各室内機30の省エネ制御を行いながら目標消費電力を達成することが容易となる。
【0070】
以上の説明では、
図8に示すように、室内機別室温推定モデルデータベース410のマトリクスの第2行の中で室内機別室温推定モデルが格納されているセルは、2行1列と2行3列の2つであり、第5列の中で室内機別室温推定モデルが格納されているセルは、1行5列と3行5列の2つである。このため、室内機別室温推定モデルが格納されていないセルの室温を推定する場合には、これら2つのセルの計算した室温「T121(T0)」、「T123(T0)」を用いて2行において線形補間をし、「T115(T0)」、「T135(T0)」を用いて5列において線形補間をした。つまり、室内機別室温推定モデルデータベース410のマトリクスの一つの行または一つの列の2つのセルに室内機別室温推定モデルが格納されている場合には、室温推定モデルが格納されている各セルの計算した推定室温を用いて線形補間で室内機別室温推定モデルが格納されていないセルの推定室温を計算した。
【0071】
しかし、以下に説明するように、室内機別室温推定モデルデータベース410のマトリクスの一つの行または一つの列の3つ以上のセルに室内機別室温推定モデルが格納されている場合には、これに限らない。
【0072】
例えば、
図10に示す室内機別室温推定モデルデータベース420のように、第2行の中で室内機別室温推定モデルが格納されているセルは、2行1列と2行3列と2行5列の3つであり、第3列の中で室内機別室温推定モデルが格納されているセルは、1行3列と2行3列と4行3列の3つである場合には、下記の(式6)、(式7)に示すようなセルの並びに対する推定室温Trの変化を示す近似曲線を生成し、生成した近似曲線に基づいて室内機別の所定の設定温度と室内機別の所定の省エネ制御パターンで空調機10を運転した際の外気温T0に対する室内機30の近傍の推定室温Trを算出してもよい。
【0073】
【数6】
【数7】
(式6)、(式7)おいて、n、mはそれぞれ列番号、行番号を示す。
【0074】
この場合、推定室温算出部53は、
図7のステップS105で
図10に示すように、室内機別室温推定モデルデータベース420の2行1列、2行3列、2行5列、1行3列、4行3列にそれぞれ格納されている室内期別室温推定モデル「f121(T0)」、「f123(T0)」、「f125(T0)」、「f113(T0)」、「f143(T0)」を用いて各セルの推定室温「T121(T0)」、「T123(T0)」、「T125(T0)」、「T113(T0)」、「T143(T0)」を算出し、
図10に示す室温マトリクス520の同一の行列位置のセルに格納する。
【0075】
そして 、推定室温算出部53は、
図7のステップS106で、室温マトリクス520の2行1列、2行3列、2行5列の各セルの推定室温「T121(T0)」、「T123(T0)」、「T125(T0)」に基づいて、(式6)のようにセルの列の並びに対する推定室温Trの変化を示す近似曲線を生成する。そして、
図11に示すように、(式6)のnに2を代入して2行2列のセルの推定室温「T122T0」を算出し、nに4を代入して2行4列の推定室温「T124(T0)」を算出し、室温マトリクス520に格納する。
【0076】
また、推定室温算出部53は、
図7のステップS106で、1行3列、2行3列、4行3列の各セルの推定室温「T113(T0)」、「T123(T0)」、「T143(T0)」に基づいて、(式7)のようにセルの行の並びに対する推定室温Trの変化を示す近似曲線を生成する。そして、
図11に示すように、(式7)のmに3を代入して3行3列のセルの推定室温「T133T0」を算出し、nに5を代入して5行3列の推定室温「T1535(T0)」を算出し、室温マトリクス520に格納する。
【0077】
このように、室内機別室温推定モデルデータベース420のマトリクスの一つの行または一つの列の3つ以上のセルに室内機別室温推定モデルが格納されている場合には、近似曲線による補間を行うことにより、室温Trの推定精度を向上させることができる。
【0078】
以上、室内機別室温推定モデルデータベース420のマトリクスの一つの行または一つの列の3つ以上のセルに室内機別室温推定モデルが格納されている場合には、近似曲線による補間を行うこととして説明したが、これに限らず、先に
図8、
図9を参照して説明したように、室内機別室温推定モデルデータベース420のマトリクスの一つの行または一つの列の3つ以上のセルに室内機別室温推定モデルが格納されている場合でも、室温推定モデルが格納されている各セルの計算した各推定室温を用いて線形補間で室内機別室温推定モデルが格納されていないセルの推定室温を計算してもよい。
【0079】
以上説明した空調システム100は、空調機10は2つの第1、第2室外機21,22と6つの第1~第6室内機31~36とで構成されていることとして説明したが、空調機10が1の室外機20と1つの室内機30とで構成されてもよい。
【0080】
以上説明した空調システム100は、所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンでの空調機10の運転実績がなく、室温推定モデルデータベース400に所定の設定温度と所定の省エネ制御パターンに対応する室温推定モデルが格納されていない場合でも、補間により外気温T0に対する室温Trを推定することができる。このため、空調機10の十分な省エネ制御を行うことができ、目標消費電力を達成することが容易となる。
【符号の説明】
【0081】
10 空調機、20 室外機、21,22 第1,第2室内機、23 外気温センサ、30 室内機、31~36 第1~第6室内機、37 室温センサ、40 コントローラ、41 制御部、42 記憶部、45,51 通信部、48 通信回線、50 室温推定装置、52 室温推定モデル生成部、53 推定室温算出部、54 表示生成部、55 表示部、56 記憶部、60 部屋、61 窓、63 机、64 室温表示、65 バー、66 カーソル、100 空調システム、150 汎用コンピュータ、151 CPU、152 ROM、153 RAM、154 ハードディスク(HDD)、155 マウス、156 キーボード、157 ディスプレイ、158 入出力インターフェース、159 ネットワークコントローラ、160 データバス、200 室内機設定データベース、300 空調機運転記録データベース、301~303 室内機別運転記録データベース、400 室温推定モデルデータベース、401~404,410,420 室内機別室温推定モデルデータベース、510,520 室温マトリクス、600 空調空間配置データベース。