(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】配線ダクト
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20231006BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20231006BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231006BHJP
F16L 41/00 20060101ALI20231006BHJP
H01R 13/73 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
H02G3/04 062
H02G3/30
B60R16/02 621C
F16L41/00
H01R13/73 D
(21)【出願番号】P 2020034637
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】500543775
【氏名又は名称】株式会社ジーエスエレテック
(74)【代理人】
【識別番号】100188075
【氏名又は名称】石黒 修
(72)【発明者】
【氏名】兼松 正美
(72)【発明者】
【氏名】杉本 幸一
【審査官】鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-084558(JP,U)
【文献】実開昭61-117526(JP,U)
【文献】特開2007-306776(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018178(WO,A1)
【文献】特開2012-210043(JP,A)
【文献】実公昭53-034555(JP,Y1)
【文献】特開2011-120318(JP,A)
【文献】特開平08-223737(JP,A)
【文献】実開平06-048324(JP,U)
【文献】特開2013-090528(JP,A)
【文献】特開2014-064429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 3/30
B60R 16/02
F16L 41/00
H01R 13/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号の流れる複数の配線(2)が挿通するとともにこの複数の配線を複数の配線群(3、4)に分離する複数の開口端部(7、8)を有し
、2つの形成部材(20、21)から形成される分岐配線ダクト(1)において、
前記複数の配線群の少なくとも1つの配線群であって終端が外部に露出しない終端配線群(30)は、この終端配線群が挿通する前記複数の開口端部の少なくとも1つの開口端部である終端開口端部(31)に配されるとともに電気信号を外部に取り出すコネクタ部(27)に終端が接続されており、
前記コネクタ部は前記終端開口端部に対して前記コネクタ部が前記終端開口端部に全周に渡って接触する部分を有するとともに前記コネクタ部の複数の係合凸部が前記終端開口端部の
前記2つの形成部材のそれぞれに形成される複数の係合凹部に係合するように着脱自在に固定されていることを特徴とする分岐配線ダクト。
【請求項2】
請求項1に記載の分岐配線ダクトにおいて、
前記複数の配線群の内、前記終端配線群と異なる少なくとも1つの配線群はコルゲートチューブ(29)内を挿通し、
前記終端開口端部以外の前記複数の開口端部の少なくとも1つは前記コルゲートチューブの外表面の凹凸が着脱自在に嵌合するように内表面に凹凸が形成されていることを特徴とする分岐配線ダクト。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の分岐配線ダクトにおいて、
自身を対象物に対して着脱自在に固定する固定部(35)を有することを特徴とする分岐配線ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号の流れる複数の配線が挿通する配線ダクト、特に複数の配線を複数の配線群に分離する分岐配線ダクトに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気信号の流れる複数の配線が挿通するとともに複数の配線を複数の配線群に分離する複数の開口端部を有する分岐配線ダクトが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、このような分岐配線ダクトでは複数の配線を複数の配線群に分離するだけであり、配線群を別途の配線群とコネクタ部を介して接続する際には、分岐配線ダクト外にコネクタ部を用意する必要があり、配線の分岐配線ダクト外への配索、分岐配線ダクト外の配線の保護処理等に手間が掛かる問題があった。
【0004】
また、設置位置が振動の多い場所であると、分岐配線ダクト外にコネクタ部が設定される場合、分岐配線ダクトとコネクタ部との相対変位に起因するコネクタ部の接続外れ、配線の断線等にも気を配る必要があった。
【0005】
そこで、分岐配線ダクトとコネクタ部とを一体に形成する対策を講じることができるが、分岐配線ダクトとコネクタ部とを一体に成形してしまうとコネクタ部の金属接続端子と配線との接続の自由度が少なくなり、配線接続に手間が掛かってしまう。
また、このような一体成型品であるとコネクタ部にのみ問題が発生した場合であっても、分岐配線ダクト全体を交換する必要が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、簡便にコネクタ部を配設することができる分岐配線ダクトを提供することにある。
【0008】
本願発明によれば、分岐配線ダクトは2つの形成部材から形成されており、電気信号の流れる複数の配線が挿通するとともに複数の配線を複数の配線群に分離する複数の開口端部を有する。
そして、複数の配線群の少なくとも1つの配線群であって終端が外部に露出しない終端配線群は、終端配線群が挿通する複数の開口端部の少なくとも1つの開口端部である終端開口端部に配されるとともに電気信号を外部に取り出すコネクタ部に終端が接続されている。
ここで、コネクタ部は終端開口端部に対してコネクタ部が終端開口端部に全周に渡って接触する部分を有するとともにコネクタ部の複数の係合凸部が終端開口端部の2つの形成部材のそれぞれに形成される複数の係合凹部に係合するように着脱自在に固定されている。
【0009】
これにより、コネクタ部は終端開口端部に対して固定されているため、分岐配線ダクト外にコネクタ部を設定する必要もなく、配線の分岐配線ダクト外への配索、分岐配線ダクト外の配線の保護処理等も必要がなくなる。
このため、簡便にコネクタ部を配設することができる。
【0010】
また、コネクタ部が終端開口端部から着脱自在に設けられているため、コネクタ部を分岐配線ダクトから取り外した状態でコネクタ部の金属接続端子と終端配線群を電気的に接続することができ、コネクタ部と終端配線群との電気的接続の自由度を高めることができる。
また、コネクタ部のみに問題が発生した場合であっても、コネクタ部のみの交換で十分となる。
【0011】
さらに、コネクタ部が終端開口端部に対して固定されているため、振動を有する場所に設置されたとしても、コネクタ部の分岐配線ダクトに対する相対変位に起因するコネクタ部の接続外れ、配線の断線等の発生を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】(a)分岐配線ダクトの斜視図、および、(b)分岐配線ダクトの分解斜視図である(実施例)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。
なお、以下の実施例は具体的な一例を開示するものであり、本発明が以下の実施例に限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0014】
[実施例]
本発明の実施例による分岐配線ダクト1を
図1に示す。
分岐配線ダクト1は、車両に搭載され、電気信号の流れる複数の配線2を複数の配線群3、4に分離するものである。
なお、複数の配線2は、車両の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)10に接続されており、複数の配線2を介してECU10と各機器との間で電気信号の送受信が行われている。
【0015】
ここで、配線群3は、車輪11に設けられる減衰力を段階的に切り替え可能なショックアブソーバを含むAVS(Adaptive Valiable Suspension)12に接続されており、AVS12はECU10によって車両のロール姿勢等が制御されている。
【0016】
また、配線群4は車輪11の近傍に設けられ車輪11の回転速度である車輪速を検出する車輪速センサ14に接続されている。
そして、検出された車輪速のデータはECU10に送られる。
【0017】
分岐配線ダクト1の特徴的な構成について
図2を用いて説明する。
分岐配線ダクト1は、複数の配線2を複数の配線群3、4に分離する複数の開口端部7、8を有している。
なお、分岐配線ダクト1は、
図2(b)に示すように外形が略T字を呈する筒状体を、軸線を含む平面で分割した2つの樹脂製のダクト形成部材20、21からなる。
ここで、ダクト形成部材20は爪部23を有し、ダクト形成部材21は爪部23と係合する突起部24を有する。そして、爪部23と突起部24とを係合させることで、ダクト形成部材20、21を組み合わせて分岐配線ダクト1は形成される。
【0018】
なお、分岐配線ダクト1は、爪部23を跳ね上げ、突起部24との係合を解くことで、容易にダクト形成部材20、21に分解することもできる。
すなわち、分岐配線ダクト1は、スナップフィット方式で容易に分解、組み付けを行うことができる。
【0019】
また、ECU10に接続される複数の配線2の数は4本となっており、それぞれ絶縁性の樹脂で被覆されている被覆線となっている。そして、複数の配線2は、4本まとめて外装保護樹脂Gによってさらなる被覆の施される所謂シース線となっている。
そして、4本の複数の配線2のうち、2本の配線からなる配線群3が電気信号を外部に取り出すコネクタ部27に接続し、残りの2本の配線からなる配線群4がコルゲートチューブ29内を挿通している。
なお、コネクタ部27は、樹脂製の本体部と金属製の接続端子から構成されている。
【0020】
すなわち、配線群3がコネクタ部27を介しAVS12に、配線群4が車輪速センサ14に電気的に接続していることになる。
なお、配線群3、および、配線群4における、配線の一方はそれぞれグランド線となっている。
【0021】
ここで、配線群3は、終端が外部に露出しない終端配線群30となっており、終端配線群30が挿通する開口端部7が終端開口端部31となっている。
また、配線群4の挿通するコルゲートチューブ29は終端開口端部31ではない開口端部8に固定されている。
なお、シース線となっている複数の配線2は、開口端部Eに固定されている。
【0022】
なお、先述のように、分岐配線ダクト1は、スナップフィット方式で容易に分解できるため、コネクタ部27は終端開口端部31に対して着脱自在となっており、コルゲートチューブ29も開口端部8に対して着脱自在になっている。
そして、配線分岐ダクト1は、自身を着脱自在に固定する固定部35を介して車体に対して相対変位をしない対象物に固定している。
【0023】
より具体的には、コネクタ部27の外表面に設けられる係合凸部をダクト形成部材20、21にそれぞれ設けられる係合凹部に嵌め込むことで、コネクタ部27は終端開口端部31に対して着脱自在に固定されている。
【0024】
また、ダクト形成部材20、21は、コルゲートチューブ29外表面の凹凸に対応する凹凸がダクト形成部材20、21の内表面に設けられており、それぞれの凹部と凸部が嵌合することでコルゲートチューブ29も開口端部8に対して着脱自在に固定されている。
なお、シース線の外装保護樹脂Gと開口端部Eは略同径に設けられており、ダクト形成部材20、21によって挟み込まれることで開口端部Eに対して着脱自在に固定されている。
【0025】
また、配線分岐ダクト1は、対象物の係合穴等に固定部35を弾性変形させて嵌め込むことで車体に対して相対変位を行わないようにスナップフィット方式で着脱自在に固定されている。
【0026】
なお、コネクタ部27は、雄コネクタとなっておりAVS12から延びる雌コネクタと嵌合接続することでAVS12と配線群3は電気的に接続される。
また、コネクタ部27は雄コネクタとなっているが、特にこだわるものではなく雌コネクタであってもよい。この場合、AVS12から延びる雄コネクタと嵌合接続することでAVS12と配線群3は電気的に接続されることになる。
【0027】
[実施例の効果]
2つのダクト形成部材20、21から形成される配線分岐ダクト1において、終端が外部に露出しない終端配線群30は、終端配線群30が挿通する終端開口端部31に配されるとともに電気信号を外部に取り出すコネクタ部27に終端が接続されている。
ここで、コネクタ部27は終端開口端部31に対してコネクタ部27が終端開口端部31に全周に渡って接触する部分を有するとともにコネクタ部27の複数の係合凸部が終端開口端部31の2つのダクト形成部材20、21のそれぞれに形成される複数の係合凹部に係合するように着脱自在に固定されている。
【0028】
これにより、コネクタ部27は終端開口端部31に対して固定されているため、分岐配線ダクト1外にコネクタ部27を設定する必要もなく、配線の分岐配線ダクト1外への配索、分岐配線ダクト1外の配線保護処理等も必要がなくなる。
このため、簡便にコネクタ部27を配設することができる。
【0029】
また、コネクタ部27が終端開口端部31から着脱自在に設けられているため、コネクタ部27を分岐配線ダクト1から取り外した状態で、コネクタ部27の金属接続端子と終端配線群30を電気的に接続することができ、コネクタ部27と終端配線群30との電気的接続の自由度を高めることができる。
また、コネクタ部27のみに問題が発生した場合であっても、コネクタ部27のみの交換で十分となる。
【0030】
ここで、コネクタ部が一体に形成されている分岐配線ダクトを考えると、型抜きの都合上、コネクタ部の金属接続端子をインサート成型することが一般的となる。しかし、このような構成であると分岐配線ダクト内に固定されている金属接続端子と終端配線群との終端との接続は分岐配線ダクト内の狭い領域に対する作業となるため困難になる。
しかし、金属接続端子と終端配線群との終端との接続を容易にできるように金属接続端子を分岐配線ダクト外に突出させる構成にすると突出部の絶縁対策、突出部による分岐配線ダクトの体格の肥大化等を招いてしまう。
【0031】
しかし、本実施例では、コネクタ部27の樹脂製の本体部が分岐配線ダクト1とは別体となっているため、コネクタ部27の金属接続端子と終端配線群30の各配線の終端との接続の自由度が高くなっている。
例えば、コネクタ部27と終端配線群30との電気的接続については、金属接続端子と各配線の終端とを予め圧着端子締結器等で圧着した後に、コネクタ部27の樹脂製の本体部に金属接続端子を固定する等の接続方法が考えられる。
なお、金属接続端子に係合凸部をつけ、本体部の係合凹部に係合させることで容易に本体部から外れることのない構成とすることができる。
【0032】
さらに、コネクタ部27が終端開口端部31に対して固定されているため、振動を有する場所に設置されたとしても、コネクタ部27の分岐配線ダクト1に対する相対変位に起因するコネクタ部27の接続外れ、配線の断線等の発生を抑制することもできる。
【0033】
また、配線分岐ダクト1において、終端配線群30と異なる配線群4はコルゲートチューブ29内を挿通し、開口端部8はコルゲートチューブ29の外表面の凹凸が着脱自在に嵌合するように内表面に凹凸が形成されている。
これにより、外装保護樹脂Gの剥がされた配線群4をコルゲートチューブ29によって保護することができる。
また、コルゲートチューブ29は開口端部8に着脱自在に固定されているため、コルゲートチューブ29のみの破損の際にも、コルゲートチューブ29のみの交換で十分となる。
【0034】
なお、
図2(a)に示すように、それぞれの配線は、シース線の外装保護樹脂G、分岐配線ダクト1、コルゲートチューブ29によって覆われているため、外部への露出がなく、飛び石等の飛来による断線、破損等を抑制できる。
【0035】
また、配線分岐ダクト1は、自身を対象物に対して着脱自在に固定する固定部35を有している。
これにより、振動を有する場所に設置されても、対象物と配線分岐ダクト1との相対変位に起因する振動の発生を抑制することができるため、コネクタ部27の接続外れ、配線の断線等の発生を抑制できる。
また、着脱自在であるため、分岐配線ダクト1のみ破損の際にも、分岐配線ダクト1の交換のみで十分となる。
【0036】
[変形例]
本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形例を考えることができる。
実施例においては、複数の配線2は、外装保護樹脂Gによって覆われていたが、複数の配線2をコルゲートチューブで覆う構成とすることもできる。
これにより、外装保護樹脂Gを剥がす手間を省くことができる。
【0037】
また、実施例においては、配線群3はAVS12に、配線群4は車輪速センサ14に電気的に接続されていたが、配線群4をAVS12に、配線群4を車輪速センサ14に接続する構成としてもよい。
また、配線群3、4を、AVS12、車輪速センサ14以外の、EPB(Electronic Parking Brake)、PWI(Pad Wear Indicater)等に接続する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0038】
1 分岐配線ダクト 2 複数の配線 3 配線群 4 配線群 7 開口端部
8 開口端部 27 コネクタ部 30 終端配線群 31 終端開口端部