(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】空調設備における熱媒体配管のループ構造システム
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
F24F5/00 101Z
(21)【出願番号】P 2020055781
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】杉原 広英
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 俊行
(72)【発明者】
【氏名】尾山 美佳子
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-135840(JP,A)
【文献】実開昭50-133747(JP,U)
【文献】特開2018-066549(JP,A)
【文献】特開昭52-044044(JP,A)
【文献】特開2018-044689(JP,A)
【文献】特開2010-255939(JP,A)
【文献】特開平03-247934(JP,A)
【文献】特開2004-211998(JP,A)
【文献】特表2018-536829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
11/00-11/89
F25D 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源設備(2)から冷熱または温熱を与えられて送給される熱媒体を各フロアに配設された空調機(6)に送給し、当該空調機(6)により冷熱または温熱を奪われた熱媒体を前記熱源設備(2)へ循環する熱媒体配管の構成システムであって、
熱源設備(2)から送給される熱媒体を各フロアの空調機に送給する往き主竪管(3A、3B)と、
各フロアの空調機(6)において必要とする熱媒体を前記往き主竪管(3A、3B)から接続分岐され途中二方弁(5)を介して空調機(6)に接続される分岐往管(4)を通して空調機(6)に取り入れ、前記空調機(6)で熱交換を行って冷熱又は温熱を奪われた熱媒体は空調機(6)から分岐還管(7)を介して排出され合流し、前記熱源設備(2)に熱媒体を還流する還り主竪管(8A、8B)と、
前記往き主竪管(3A、3B)及び還り主竪管(8A、8B)の各基部と前記熱源設備(2)とを繋ぐ往き横引き主管(9)と還り横引き主管(10)とで構成された熱媒体循環路を少なくとも2系統並置し、
両系の往き主竪管(3A、3B)同士、及び還り主竪管(8A、8B)同士のうち、少なくとも片側同士
の主竪管(3A、3B又は8A、8B)を当該主竪管(3A、3B又は8A、8B)の基部から先端部までの主竪管の長さ100%のうち、先端部から20%以内の位置でバイパス管(12a)またはバイパス管(12b)で接続してループを形成してなることを特徴とする空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
【請求項2】
前記バイパス管(12a)またはバイパス管(12b)が、各系統の前記往き主竪管(3A、3B)または前記還り主竪管(8A、8B)の末端部に接続してループを形成してなることを特徴とする請求項1に記載の空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
【請求項3】
前記バイパス管(12a)またはバイパス管(12b)が、各系統の前記往き主竪管(3A、3B)または前記還り主竪管(8A、8B)の末端部から基部に向かって各主竪管の長さの20%未満の部位の位置に接続してループを形成してなることを特徴とする請求項1に記載の空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
【請求項4】
前記バイパス管(12a)の管径を、往き主竪管(3A、3B)に送られる熱媒体流量100%に対し、10~15%の流量が送れる太さとしたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
【請求項5】
前記往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)の管径を、往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)に送られる、建造物において熱負荷ピーク時に必要な定格熱媒体流量100%にて選定したのち、
前記バイパス管(12a、12b)の管径を、往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)の管径における定格熱媒体流量に対し、10~15%の流量が送れる太さとして決定した後で、
前記往き主竪管(3A、3B)と還り主竪管(8A,8B)の管径を、定格熱媒体流量100%にて選定した太さと比べて細くしてなることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
【請求項6】
前記熱源設備(2)、前記往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)の基部、および前記往き横引き主管(9)と前記還り横引き主管(10)とが、1階もしくは地下階に位置し、
前記往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)の末端部が最上階に位置することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載される空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
【請求項7】
前記熱源設備(2)、前記往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)の基部、および前記往き横引き主管(9)と前記還り横引き主管(10)とが、屋上もしくは最上階に位置し、
前記往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)の末端部が最下階に位置することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載される空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
【請求項8】
空調設備における熱媒体配管のループ構造が、建造物の高さ方向に複数あり、
前記熱源設備(2)、前記往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)の基部、および前記往き横引き主管(9)と前記還り横引き主管(10)との組が複数あり、そのうちの一つの組が、中間階に位置することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載される空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
【請求項9】
熱源設備(2)から冷熱または温熱を与えられて送給される熱媒体を各フロアに配設された空調機(6)に送給し、当該空調機(6)により冷熱または温熱を奪われた熱媒体を前記熱源設備(2)へ循環する熱媒体配管の構成システムであって、
熱源設備(2)から送給される熱媒体を各フロアの空調機に送給する往き主竪管(3A、3B)と、
各フロアの空調機(6)において必要とする熱媒体を前記往き主竪管(3A、3B)から接続分岐されて分岐往管(4)を通して接続される空調機(6)に取り入れ、前記空調機(6)で熱交換を行って冷熱又は温熱を奪われた熱媒体は途中二方弁(5)を介して空調機(6)から分岐還管(7)を通じて排出され合流し、前記熱源設備(2)に熱媒体を還流する還り主竪管(8A、8B)と、
前記往き主竪管(3A、3B)及び還り主竪管(8A、8B)の各基部と前記熱源設備(2)とを繋ぐ往き横引き主管(9)と還り横引き主管(10)とで構成された熱媒体循環路を少なくとも2系統並置し、
両系の往き主竪管(3A、3B)同士、及び還り主竪管(8A、8B)同士のうち、少なくとも片側同士
の主竪管(3A、3B又は8A、8B)を当該主竪管(3A、3B又は8A、8B)の基部から先端部までの主竪管の長さ100%のうち、先端部から20%以内の位置でバイパス管(12a)またはバイパス管(12b)で接続してループを形成してなることを特徴とする空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の店舗や事務所などが入居する高層ビル等の大型建造物における空気調和設備(空調設備)において、熱媒体(温水または冷水)を建造物の各フロアに複数設けられた空調機に送給し循環するための空調設備における熱媒体配管のループ構造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の店舗および事務所などが入居する高層ビル等の大型建造物では、地下や屋上に冷凍機や冷温水発生器やボイラ等の熱源設備を設け、主に冷水や温水などである熱媒体に冷熱または温熱を与えて、各フロアに設けた空調機に送り空調機のコイルにて空気と熱媒体とを熱交換して、それぞれのフロアの室温を調節する空調設備が設けられている。
その設備構成は、建造物であるビルの規模や形状によって異なるが、例えば床面が方形な直方体の建造物の場合で4隅にコア部が設けられる際には、該建造物の4隅にそれぞれ熱源設備から冷熱または温熱を与えられ各フロアの各コア部に位置する空調機に熱媒体を送る往き主竪管と、空調機のコイルでの熱交換により冷熱または温熱を奪われた熱媒体を熱源設備に戻す還り主竪管とが配管され、各フロアでは、前記往き主竪管から熱媒体を分岐して空調機に取り入れる分岐往管と、空調機で熱交換を行った後の熱媒体を前記還り主竪管に戻す分岐還管が配管される。そして、熱媒体は、熱源設備が最下階に位置する場合、最上階の空調機に届くようポンプによって加圧され、往き主竪管に送給される。
【0003】
一般に、熱媒体を送給する往き主竪管および分岐還管にて還され合流する還り主竪管は、各フロアで必要とする量の熱媒体を確実に供給できるように、夏期ピーク時または冬期ピーク時の熱負荷を定格として定格100%の冷熱または温熱が搬送できるだけの熱媒体流量に基づき、管径が選定されている。また、前記ポンプについては、熱源設備から見て最も末端に設置される空調機へ送給し循環を可能とする、当該空調機での必要最大流量が確保できる揚程を有するものが配置される。
前記ポンプは電動機によって駆動されるが、この電動機による消費電力は大きく、電動機の消費電力を低減することによって、建物全体の省エネルギー化を図る上で大きく寄与することができる。
建造物の居室などの熱負荷を処理する空調機については、変動する熱負荷に最適に熱処理するため、空調機のコイルへの熱媒体の流量を2方弁などを操作器として室温の設定値と計測値との偏差に基づいて調整することで対応している。
定流量ポンプによる熱媒体搬送を行う空調設備であると、2次側の空調機コイルに対応する2方弁が閉まり勝手に多数が動く場合、流量を絞るので揚程がいたずらに上がりその搬送動力が無駄になる。そのため、末端に位置する空調機などへの圧力を保持するように、ポンプを変流量制御する末端圧制御などによって、各空調機熱負荷を総合した空調負荷に応じて熱媒体の搬送動力を制御することで省電力化を図っている。
【0004】
このような大型ビルで比較的広い領域を複数の空調機などを使用して空気調和制御するのに、直吹出し空調機等の原始的な空調設備では空調機等の近傍だけが最適状態に空気調和され、そこから離れた場所において適切な空気調和がされないという不具合を解消するため、広い領域を予め所定の少し狭いブロックなどに区分し、その区分領域ごとに独立させた給気ダクトを展開して空気調和制御を行う方式が広く採用されている。しかして、この少し狭いブロックを、例えば建造物の平面での4隅のコア部を利用して区分割り付けし、階層が異なる各空調機へ対する冷水流量または温水流量の均等化を図るために、往き還りの主竪管をブロックごとに設置し、往き主竪管から空調機を経て還り主竪管までの分岐往き管と分岐還り管との距離が等距離となって有利なリバースリターン配管方式をとることがある。
図5は、このリバースリターン配管方式をとる空調設備における熱媒体配管システムの公知の構成を示している。
図5において、サプライ管27の下方、及びリターン管30の下方にある白抜き矢印のところには、図示しない冷凍機又はボイラ等の熱源機があり、27は熱源機の出口側に接続されて冷水又は温水等の熱媒体が送給されるサプライ管(往き主竪管の基部から往き横引き主管に相当)、27Aと27A’はサプライ管27から分岐して建造物の隅のパイプシャフトを立ち上がるサプライ竪管(往き主竪管に相当)、当該サプライ竪管27A,27A’に連結され分岐されるサプライ管27a、27a’、27b、27b’、27c、27c’、27d、27d’(分岐往管に相当)と、これらサプライ管(分岐往管)からそれぞれ自動制御弁28a、28a’、28b、28b’、28c、28c’、28d、28d’を介して該サプライ管(分岐往管)に並列に配置されている空調機等29a、29a’、29b、29b’、29c、29c’、29d、29d’(空調機に相当)と、該空調機等からのリターン管30a、30a’、30b、30b’、30c、30c’、30d、30d’(分岐還管に相当)とから構成され、これらのリターン管はリターン竪管30A,30A’(還り主竪管に相当)に連結され、最後リターン管30(還り主竪管の基部から還り横引き主管に相当)に合流接続され、図示しない熱源機につながって、熱媒体を循環できるように構成されている。
この熱媒体配管システムにおいて、図示しない熱源機により温調され及びポンプにより搬送される熱媒体は、サプライ管27及び系統を別にする2本のサプライ竪管27A,27A’を経て分岐往管に相当するサプライ管27a、27a’、27b、27b’、27c、27c’、27d、27d’へと導入され、自動制御弁を介して熱媒体は空調機等29a、29a’、29b、29b’、29c、29c’、29d、29dに供給され、空調機等で熱交換し終えた熱媒体は分岐還管であるリターン管30a、30a’、30b、30b’、30c、30c’、30d、30d’を通りリターン竪管30A,30A’へ送られ、最後リターン管30を経て熱源機に戻される。
この際、空調機等29a、29a’、29b、29b’、29c、29c’、29d、29dを通る熱媒体は、空調機等のコイルによって空気―熱媒体の熱交換をされ、各空調機等が受け持つ空調対象空間に送られる空気を温調して該対象空間が所定の温度になるよう、各自動制御弁を調整して交換熱量を制御して適正な温度の温調空気に調整している。
【0005】
ここで、分岐往管に相当するサプライ管27a、27a’、27b、27b’、27c、27c’、27d、27d’ごとに、
図5では3台の複数の空調機等に熱媒体を供給するのに、サプライ竪管に近い側に設置されている空調機等の方が遠い側に設置されている空調機等よりも流路抵抗が少なく流れやすく、各空調機等に対する熱媒体流量の均等化が阻害されることとなる。これを防止し熱媒体流量の同一分岐往管内の均等化を図るため、分岐還管であるリターン管30a、30a’、30b、30b’、30c、30c’、30d、30dのそれぞれの熱源機からのトータル長さをそろえることで流路抵抗を揃えるリバースリターン方式がよく知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5に示す熱媒体配管システムでは、サプライ竪管27A,27A’から分岐した分岐往管ごとにぶら下がる空調機等への流量の均等化は図れるとしても、建造物の平面位置による負荷の不均一な変動や負荷の偏在についてサプライ竪管27A,27A’を流れる熱媒体を、平面位置で偏在する熱負荷に応じて適切に分配する仕組みは全く示唆もない。そのため、サプライ竪管27A,27A’のうち、余力のある系統を有効に利用せず、片側だけの竪管に熱媒体の大流量を流すので、流路抵抗による圧力損失が大きくなり、そこに無理に流すためにポンプの変流量としては揚程を上げても流量確保する結果、熱媒体ポンプの消費動力が大きく、つまり熱媒体の搬送動力が大きくなり、省エネルギーにすることは難しい。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するために、従来の大型ビルの空調設備で用いられてきた比較的広い領域を複数の空調機などを使用して空気調和するのに、広い領域を予め所定の少し狭いブロックなどに区分し、その区分割り付けを例えば建造物の平面での中央ではない隅部のコア部を利用して割り付けし、階層が異なる各空調機へ対する冷水流量または温水流量の流路長さの短縮と、熱負荷変動傾向や偏在傾向の区分によるまとめを図るために、往き還りの主竪管をブロックごとに設置するのに、各主竪管を全く独立とせず、主竪管系統間で熱媒体を融通し合うことで、全体の流路抵抗を低下させて、ポンプの動力を削減できる空調設備用の熱媒体配管のループ構造システムを提供することを目的とするものである。
具体的には、配管サイズの変更や、熱媒体を送る2本以上の往き主竪管の末端部同士を結ぶバイパス管の構成や、熱媒体を熱源設備へ戻すための2本以上の還り主竪管の熱源設備から遠い末端部同士を結ぶバイパス管の構成を追加することで、配管にかかるコストの削減、電動機によるポンプ駆動電力の低減を可能とした空調設備用の熱媒体配管のループ構造システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を下記の手段より解決した。
〔1〕冷凍機、ボイラ等を備えた熱源設備(2)から冷熱または温熱を与えられて送給される熱媒体を各フロアに配設された空調機(6)に送給し、当該空調機(6)により冷熱または温熱を奪われた熱媒体を前記熱源設備(2)へ循環する熱媒体配管の構成システムであって、
熱源設備(2)から送給される熱媒体を各フロアの空調機に送給する往き主竪管(3A、3B)と、
各フロアの空調機(6)において必要とする熱媒体を前記往き主竪管(3A、3B)から接続分岐され途中二方弁(5)を介して空調機(6)に接続される分岐往管(4)を通して空調機(6)に取り入れ、前記空調機(6)で熱交換を行って冷熱又は温熱を奪われた熱媒体は空調機(6)から分岐還管(7)を介して排出され合流し、前記熱源設備(2)に熱媒体を還流する還り主竪管(8A、8B)と、
前記往き主竪管(3A、3B)及び還り主竪管(8A、8B)の各基部の下端部と前記熱源設備(2)とを繋ぐ往き横引き主管(9)と還り横引き主管(10)とで構成された熱媒体循環路を少なくとも2系統並置し、
両系の往き主竪管(3A、3B)同士、及び還り主竪管(8A、8B)同士のうち、少なくとも片側同士をバイパス管(12a)またはバイパス管(12b)で接続してループを形成してなることを特徴とする空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
〔2〕前記バイパス管(12a)またはバイパス管(12b)が、各系統の前記往き主竪管(3A、3B)または前記還り主竪管(8A、8B)の末端部に接続してループを形成してなることを特徴とする〔1〕に記載の空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
〔3〕前記バイパス管(12a)またはバイパス管(12b)が、各系統の前記往き主竪管(3A、3B)または前記還り主竪管(8A、8B)の末端部から基部に向かって各主竪管の長さの20%未満の部位の位置に接続してループを形成してなることを特徴とする〔1〕に記載の空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
〔4〕前記バイパス管(12a)の管径を、往き主竪管(3A、3B)に送られる熱媒体流量100%に対し、10~15%の流量が送れる太さとしたことを特徴とする〔1〕から〔3〕の何れか1に記載の空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
〔5〕前記往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)の管径を、往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)に送られる、建造物において熱負荷ピーク時に必要な定格熱媒体流量100%にて選定したのち、
前記バイパス管(12a、12b)の管径を、往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)の管径における定格熱媒体流量に対し、10~15%の流量が送れる太さとして決定した後で、
前記往き主竪管(3A、3B)と還り主竪管(8A,8B)の管径を、定格熱媒体流量100%にて選定した太さと比べて細くしてなることを特徴とする〔1〕から〔4〕の何れか1に記載の空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
〔6〕前記熱源設備(2)、前記往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)の基部、および前記往き横引き主管(9)と前記還り横引き主管(10)とが、1階もしくは地下階に位置し、
前記往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)の末端部が最上階に位置することを特徴とする〔1〕から〔5〕の何れか1に記載される空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
〔7〕前記熱源設備(2)、前記往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)の基部、および前記往き横引き主管(9)と前記還り横引き主管(10)とが、屋上もしくは最上階に位置し、
前記往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)の末端部が最下階に位置することを特徴とする〔1〕から〔5〕の何れか1に記載される空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
〔8〕空調設備における熱媒体配管のループ構造が、建造物の高さ方向に複数あり、
前記熱源設備(2)、前記往き主竪管(3A、3B)および還り主竪管(8A,8B)の基部、および前記往き横引き主管(9)と前記還り横引き主管(10)との組が複数あり、そのうちの一つの組が、中間階に位置することを特徴とする〔1〕から〔5〕の何れか1に記載される空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
〔9〕冷凍機、ボイラ等を備えた熱源設備(2)から冷熱または温熱を与えられて送給される熱媒体を各フロアに配設された空調機(6)に送給し、当該空調機(6)により冷熱または温熱を奪われた熱媒体を前記熱源設備(2)へ循環する熱媒体配管の構成システムであって、
熱源設備(2)から送給される熱媒体を各フロアの空調機に送給する往き主竪管(3A、3B)と、
各フロアの空調機(6)において必要とする熱媒体を前記往き主竪管(3A、3B)から接続分岐され分岐往管(4)を通して接続される空調機(6)に取り入れ、前記空調機(6)で熱交換を行って冷熱又は温熱を奪われた熱媒体は空調機(6)から途中二方弁(5)を介して分岐還管(7)を通して排出され合流し、前記熱源設備(2)に熱媒体を還流する還り主竪管(8A、8B)と、
前記往き主竪管(3A、3B)及び還り主竪管(8A、8B)の各基部と前記熱源設備(2)とを繋ぐ往き横引き主管(9)と還り横引き主管(10)とで構成された熱媒体循環路を少なくとも2系統並置し、
両系の往き主竪管(3A、3B)同士、及び還り主竪管(8A、8B)同士のうち、少なくとも片側同士をバイパス管(12a)またはバイパス管(12b)で接続してループを形成してなることを特徴とする空調設備における熱媒体配管のループ構造システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば下記の効果が発揮できる。
冷凍機、ボイラ等の熱源設備と、これら熱源設備で冷却、加熱された冷水又は温水等の熱媒体を各フロアに配設された空調機に送給する往き主竪管と、前記空調機で熱交換を行った熱媒体を前記熱源設備に還流する還り主竪管とからなる熱媒体循環路を備えたオフィスビルや多目的商業ビル等の大型建物における空調設備の熱媒体配管の構成システムであって、前記熱媒体配管を少なくとも2系統並置し、両系の主竪管同士、及び還竪管同士をバイパス管で接続してループを形成してなるので、1本の往き主竪管に対する必要要求水量の偏在化に対し、他の往き主竪管を介して熱媒体の余剰分を相互に補うことができる。還り主竪管についても同様である。
例えば、大型建造物の東西にコア部が配設され、各フロアの両コア部機械室に配設された空調機にかかる空調負荷のピーク時が、東側では午前9時頃、西側では午後4時頃というように異なる場合、比較的定格流量からは余裕のある主竪管側に余剰分を流し、午前中は西側から東側へ、午後は東側から西側へというようにバイパス管を通して相互に余剰分の熱媒体を融通することができる。
これをさらに発展すると、従来の空調設備では、空調負荷ピーク時に必要となる熱媒体の最大供給量を想定して配設されていた主竪管と還竪管の管径を、細くすることができ、またポンプの動力の削減もでき、消費電力の削減に資する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の空調設備における熱媒体配管のループ構造システムを備えたビルの最上階における空調機室とバイパス管との配設状態を示す平面図
【
図2】本発明の空調設備における熱媒体配管のループ構造システムの構成模式図
【
図3】従来の東西に分離して配設された空調用熱媒体配管構造システムの構成図
【
図4】本発明の空調設備における熱媒体配管のループ構造システムの構成図
【
図5】特許文献1に示された従来の空調用熱媒体配管システムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を、実施例の図に基づいて説明する。
図1、
図2、
図3、
図4は熱源設備が地階など下層に設けられている場合であり以下はその場合の説明を行う。
図1は本発明の空調設備における熱媒体配管のループ構造システムを備えたビルで、コア部とその機械室が4個あるように区分された場合の最上階における空調機室とバイパス管の配設状態を示す平面図であり、
図2は本発明の空調設備における熱媒体配管のループ構造システムについて2区分に簡略的にまとめた構成模式図である。
図1~
図4において、1は複数の店舗や事務所などが入居する高層ビル等の大型の建造物、2は熱源設備、3(3A、3B、3C、3D)は往き主竪管、4は分岐往管、5は二方弁、6は空調機、7は分岐還管、8(8A、8B、8C、8D)は還り主竪管、9は往き横引き主管、10は還り横引き主管、11はポンプ、12a、12bはバイパス管、20(20A、20B、20C、20D)は空調機室を示す。
なお、図に示す実施例においては、方形の床面を有する直方体の建造物1を想定しているので、その四隅を特定して説明するため、往き主竪管3について3A、3B、3C、3D、還り主竪管8について8A、8B、8C、8D、空調機室20について20A、20B、20C、20Dと付しているが、本発明にかかる空調設備における熱媒体配管のループ構造システムは、様々な形状、フロア数の建造物に適用できるものであり、建造物の形状やフロア数は特に限定されるものではなく、適宜設計変更して実施可能である。また、空調機については、空調機室に設置される循環空気と外気とを導入する一般の空調機であることを例示して説明するが、これに限らず、機械室ごとに、外気を処理する外調機と循環空気を処理する内調機の組み合わせでも、機械室がなく、天井内などに収められる小型のファンコイルユニットであっても、熱媒体と空気との熱交換器であるコイルとファンとを内蔵していればすべて空調機に当てはまるのは言うまでもない。
【0013】
図に示す本実施例では、オフィスビル等の大型の建造物1の各フロアの四隅をコア部としてコア部ごとに空調機室20A、20B、20C、20Dが設けられ、各フロアを4つの空調領域に分割して空調が行われている。
そして、該建造物1の四隅コア部には、主竪管を中に収める竪穴区画のパイプシャフトがあり、
図2に示すように、地下に設けられた冷凍機やボイラ等の熱源設備2からの熱媒体を前記各空調機室20A、20B、20C、20Dに送給する往き主竪管3A、3B、3C、3Dが立ち上げられ、空調機室20A、20B、20C、20Dで熱交換し終えた熱媒体を前記熱源設備2に戻す還り主竪管8A、8B、8C、8Dが立ち下げられている。
このように空調領域を分割してなる建造物においては、その立地環境にも拠るが、一般に東側と西側の空調領域の室温が時間帯によって異なる。そのため、時間帯によってそれぞれの主竪管にぶら下がる空調機6群ごとにかかる空調負荷の相違が生じる。
したがって、空調負荷の相違を考慮して、どの時間帯においても前記往き主竪管3A、3B、3C、3Dへそれぞれにぶら下がる複数の空調機を総計した熱負荷に必要な熱媒体を供給可とするため、冷却の場合は夏期のピーク時、温熱の場合は冬期のピーク時それぞれの定格熱媒体流量で選定した配管サイズ(管径)で、すべての往き主竪管3A、3B、3C、3Dが構成される。同様に、還り主竪管8A,8B,8C,8Dでも同じ定格熱媒体流量で選定した配管サイズで構成される。
なお、定格熱媒体流量といっても、熱源設備から往き主竪管3A、3B、3C、3Dの基部から立ち上がって、分岐往管で分岐して各フロアの空調機へ熱媒体が分岐されていき段階的に往き主竪管内の流量は減少していくので、下方の基部側の管径を太くし、上方に向け末端部へ向けて管径を徐々に縮小し、末端部から2フロア程度手前からは同一径にして配管される(いわゆるタケノコ配管)。これにより管内の基部から末端部へかけて単位長さ当たりの流路抵抗を揃えることができ上下での均等分岐に寄与する。同様に、還り主竪管8A,8B,8C,8Dでも熱源設備に近い基部側が太く、末端側に向けて関係を徐々に細くしていて、基本的に隣に敷設される往き主竪管と同サイズに選定した配管サイズで構成される。
【0014】
図2は、
図1の建造物1を単純化して、東西に各一つずつコア部があるとして、時間帯によって空調負荷が大きく変わる建造物1における東西に配設される2つの主竪管のセットである、往き主竪管3Aと還り主竪管8A、往き主竪管3Bと還り主竪管8Bそれぞれの空調系統間での熱媒体の相互補完を可能にした本発明の空調設備における熱媒体配管のループ構造システムの構成模式図を示したものである。
図中の往き主竪管3A、3Bは、それぞれ前記熱源設備2から送給される熱媒体を分岐往管4を通して各フロアの空調機室20A、20Bに備えられた空調機6に熱媒体を供給するものであり、二方弁5は空調機6の入口側に設けられ、該空調機6に供給する熱媒体をその空調負荷に対応した供給量に調整するものである。
また、還り主竪管8A、8Bは、前記空調機6で熱交換された後に排出された熱媒体を分岐還管7から受け取り合流して熱源設備2に戻すものであり、往き主竪管3A、3Bに対応して配設されている。
そして往き横引き主管9は、往き主竪管3A、3Bとその基部で接続され、前記往き主竪管3A、3Bは末端部である上端でバイパス管12aにより接続され、全体として連結されている。
また、還り横引き主管10は、還り主竪管8A、8Bのそれぞれの基部と熱源設備2とを接続するものであり、前記還り主竪管8A、8Bの末端部はバイパス管12bで接続されていることから、還り横引き主管10、還り主竪管8A、バイパス管12b、還り主竪管8B、還り横引き主管10という構成でそれぞれの還り横引き主管10が熱源設備2の還り側に連結されている。
往き横引き主管9及び還り横引き主管10は、それぞれ熱源設備2に接続され、ポンプ11は、数ある空調機6の熱負荷によって開閉する数ある二方弁5の総合的な絞り度合いを圧力などで検知しながら前記絞り度合いに基づき、図示しないインバータによってポンプモータの回転数を変化することによって熱媒体の送給量を調整し、前記往き横引き主管9を介して往き主竪管3A、3Bに送る。
したがって、このポンプ11には、熱媒体配管のループ構造の末端部である建造物1の最上階に配設された空調機6において必要とされる熱媒体の最大流量が確保できる揚水能力を有するものであることが必要である。
【0015】
本発明のポイントであるバイパス管12a、12bは、2本の往き主竪管3A、3B同士及び還り主竪管8A、8B同士を連結したものであり、熱源設備2から送給される熱媒体を2つの主竪管系統間で相互融通可能とするための配管である。
2本の往き主竪管3A、3Bは、例えば、往き主竪管3Aが建造物1の東側に配設され、往き主竪管3Bが西側に配設される。
図1においては、該バイパス管12aを最上階にある空調機室20A、20B間、20C、20D間に配設していて、
図2においては、該バイパス管12aを最上階にある空調機室20A、20B間に配設してるが、もちろんこれに限定されるものでなく、建造物1の高さに応じて最上階から下方のフロア、例えば40階建ての建造物であれば、1~6階下の34階から39階などのフロアにバイパス管12aを配管してもよい。
同様に、2本の還り主竪管8A、8Bは、例えば、還り主竪管8Aが建造物1の東側に配設され、還り主竪管8Bが西側に配設される。
図1においては、該バイパス管12bを最上階にある空調機室20A、20B間、20C、20D間に配設していて、
図2においては、該バイパス管12bを最上階にある空調機室20A、20B間に配設してるが、もちろんこれに限定されるものでなく、建造物1の高さに応じて最上階から下方のフロア、例えば40階建ての建造物であれば、1~6階下の34階から39階などのフロアにバイパス管12bを配管してもよい。
通常はバイパス管12aとバイパス管12bとを設置するが、バイパス管12aだけまたはバイパス管12bだけを設置してもよい。
すなわち、主竪管(3A、3B)同士及び還竪管(8A、8B)同士を連結するバイパス管12a,12bを連結配管する箇所は、往き主竪管(3A、3B)同士及び還り主竪管(8A、8B)同士の基部から先端部までの主竪管の長さ100%のうち、先端部から20%以内の位置でバイパス管を設置することとすればよい。
【0016】
上記のように、往き主竪管3A、3B同士をバイパス管12aにより接続し連結することにより、一方の往き主竪管3Aに送給された熱媒体の余剰分を他方の往き主竪管3Bに送ったり、逆に往き主竪管3Bに送給された熱媒体の余剰分を往き主竪管3Aに送ったりと相互に余剰分を融通し合うことができることになる。
余剰分を受け取った側では、その分、還り主竪管8A又は8Bへの排出熱媒体量が増加するが、その増加分はバイパス管12bが接続されている場合は、還り主竪管8A、8Bの先端部を連結したバイパス管12bによって融通したほうの還竪管に戻されるループ管路が形成されるので、熱媒体は滞ることなく熱源設備2に戻される。バイパス管12bが接続されていない場合は、還り主竪管8A,8B間の融通は無くなるが、往き主竪管3A,3Bでの搬送動力削減効果は発生するので有利である。
【0017】
本発明にかかる空調設備における熱媒体配管のループ構造システムは、一対の往き主竪管3A、3B、及び還り主竪管8A、8Bをバイパス管12a,12bで連結したため、複数の主竪管系統のうち、竪にぶら下がる空調機6群の空調負荷の小さな系統では分岐往管4、分岐還管7では流量が絞られるものの、バイパス管12aのおかげで、その系統の全分岐往管4をその時に流れる流量よりも多く往き主竪管内に余剰の熱媒体を流すことができ、空調負荷の大きな系統でその系統の全分岐往管4に流す必要量より少なくなるようポンプ11の回転数を絞っても、不足する冷熱や温熱を保持する熱媒体がバイパス管12aを流れ、空調負荷の大きな系統の末端側から逆な方向に流れ込んで、空調負荷の高い系統の上方部の複数フロアに配設された空調機6に流入するので、往き主竪管3A、3Bとの流量は平準化され、これにより、前述のポンプ11の回転数を下げることができ、それにより配管の流通抵抗が低減しポンプ11の吐出圧をさらに下げることができ、搬送動力の削減が図れる。還り主竪管8A,8Bの間にバイパス管12bを更に設置することで、還り主竪管側も同じ現象が生じ、さらに搬送動力の低減が図れる。
またバイパス管12a,12bにより、大型建造物1に設けられる往き主竪管3A,3B及び還り主竪管8A,8Bの管径は、従来の空調システムにおける両主竪管をセットとする各系統の管径が最大負荷時に必要な熱媒体量を基準にして定められていたのに対して、最大負荷時に相互に熱媒体を融通し合えることから、融通分を見て従来より細くすることもできる。
例えば、本実施例においては、バイパス管12a,12bの管径は、往き主竪管3に送給される熱媒体量100%に対し、10~15%の流量(例えば建造物1が35階建ての場合は、3~5階分に相当する量)が送れる太さとし、逆に主竪管側を定格時の90%程度の流量に選定基準とみれば管径は細くできる。主竪管を90%にしてもバイパス管を介して10%が融通されるのでピーク不可にも対応できる。なおこの割合には限定されるものではない。
上記の、バイパス管12a,12bの管径が往き主竪管3に送給される熱媒体量100%に対する10~15%の流量とするのは、ペリメータ部分の変動する負荷割合がこのぐらいであり、インテリア部分負荷が残り85~90%に大型建造物の負荷傾向があるという経験からきているが、この割合に限定されるものではない。
【0018】
上記のように本発明実施の形態においては、
図2で簡略化して説明してきたが、
図1に戻って、熱源設備2から送給される熱媒体を受け取る往き主竪管3と、建造物1の各階で前記往き主竪管3に接続された分岐往管4、二方弁5、空調機6、分岐還管7、前記分岐還管7に接続された還り主竪管8、前記還り主竪管8に接続された還り横引き主管10、及び前記往き主竪管3と接続される往き横引き主管9とで構成された熱媒体循環路を1系統とし、建造物1の四隅に配管される往き主竪管3A、3B、3C、3Dについて、それぞれが同様の熱媒体循環路の系統を構成し、少なくとも2系統の往き主竪管3同士、還り主竪管8同士をバイパス管12a,12bの少なくとも1本を接続し、ループ構造としたものである。
本実施例においては、東側に配管された往き主竪管3Aと、西側に配管された往き主竪管3Bとをバイパス管12aで接続し、同様に往き主竪管3Cと往き主竪管3Dをバイパス管12aで接続した例を示したが、さらに東側に配管された還り主竪管8Aと、西側に配管された還り主竪管8Bとをバイパス管12bで接続し、同様に還り主竪管8Cと還り主竪管8Dをバイパス管12bで接続することもできる。そして、往き主竪管の接続組合せを、3Aと3C、3Bと3Dとしてバイパス管12aでそれぞれ接続しても、還り主竪管の接続組合せを、8Aと8C、8Bと8Dとしてバイパス管12bでそれぞれ接続してもよい。
【0019】
以下、本発明の空調設備における熱媒体配管のループ構造システムの作用を、
図3と
図4を用いて、従来の空調用配管システムの作用と比較しながら説明する。
ここで、
図3は従来の空調用熱媒体配管構造システムの構成図であり、
図4は本発明の空調設備における熱媒体配管のループ構造システムである。
両図において、二方弁の図示は省略し、また建造物1の東側の面を東面、西側の面を西面、前記東面に配設される熱媒体配管システムを東系統、西面に配設される熱媒体配管システムを西系統として説明する。
また、本発明の空調設備における熱媒体配管のループ構造システムの効果は、日射によって影響が顕著に現れるので熱媒体として冷水を送給する場合で説明する。
【0020】
まず、
図3に示す従来の空調用熱媒体配管システムの構成図においては、熱源設備2から送給される熱媒体を受け取る往き主竪管30aと、建造物1の各階で前記往き主竪管30aに接続された分岐往管4、空調機6、分岐還管7、前記分岐還管7に接続された還り主竪管80a、前記還り主竪管80aに接続された還り横引き主管10、及び熱源設備2と前記往き主竪管30aとを接続する往き横引き主管9とで構成された熱媒体循環路が東系統を構成し、熱源設備2から送給される熱媒体を受け取る往き主竪管30bと、建造物1の各階で前記往き主竪管30bに接続された分岐往管4、空調機6、分岐還管7、前記分岐還管7に接続された還り主竪管80b、前記還り主竪管80bに接続された往き横引き主管10、及び熱源設備2と前記往き主竪管30bとを接続する往き横引き主管9とで構成された熱媒体循環路が西系統を構成している。
【0021】
この場合、一般的に、時間帯によって、太陽の影響により建造物1の東面と西面において空調機6にかかる負荷が午前と午後とで異なってくる。
朝方は日差しが直接当たる東系統で負荷が高く、夕方は強い西日により西系統で負荷が高くなる。
したがって、
図3に示す従来の空調用熱媒体配管システムでは、その最も負荷が高い時に熱負荷処理対応ができるその系統の空調機6群への熱媒体流量を定格の100%確保しうる太さの往き主竪管30a、30b及び還り主竪管80a、80bが東西両系統に配設されている。
しかし、東西の両系統に常時100%の熱媒体流量が流されることはなく、例えば、夏期ピークに近い日でも朝方には東面側は日射の影響が大きくなるが外気や室内負荷は昼間のピークより低く二方弁5の作用によって、主竪管30aに送り込まれる熱媒体流量は80%程度となり、西面側ではさらに日射の影響が少ないため50%の熱媒体量を主竪管30bに送り込む。このように熱媒体の供給量は時間帯により東西系統で異なり、夕方になると西日の差す西面側の室内負荷が高まるのでその配分が逆転する。
このことから、ある主竪管にぶら下がる空調機6群が要求する負荷処理の熱媒体量は、西系統では朝方に余力があり、東系統では夕方に余力があるといえるが、ポンプ11は東西両系統の主竪管30a、30bに導入される熱媒体をいずれも最上階の空調機6まで送り届ける揚程が必要であり、余分な消費電力がかかる。そして、空調機6に供給する熱媒体流量が多い系統では同じポンプ仕事では揚水のための揚程が減少するため、ポンプ11はその揚程低下分を補って、最上階まで熱媒体を送り届けられるよう回転数を上昇させてポンプ仕事を増加させなければならず、それに対応したポンプ11が設置され、消費電力の削減は期待できない。
【0022】
図4は本発明の空調設備における熱媒体配管のループ構造システムの構成図であって、
図3に示す従来の空調用熱媒体配管システムと同様に、熱源設備2から送給される熱媒体を受け取る往き主竪管3Aと、建造物1の各階で前記往き主竪管3Aに接続された分岐往管4、空調機6、分岐還管7、前記分岐還管7に接続された還り主竪管8A、前記還り主竪管8Aに接続された還り横引き主管10、及び前記往き主竪管3Aと熱源設備2を接続する往き横引き主管9とで構成された熱媒体循環路が東系統を構成している。
同様に、熱源設備2から送給される熱媒体を受け取る往き主竪管3Bと、建造物1の各階で前記往き主竪管3Bに接続された分岐往管4、空調機6、分岐還管7、前記分岐還管7に接続された還り主竪管8B、前記還り主竪管8Bに接続された還り横引き主管10、及び熱源設備2と前記往き主竪管3Bを接続する往き横引き主管9とで構成された熱媒体循環路が西系統を構成している。
そして、前記東系統の往き主竪管3Aと、西系統の往き主竪管3Bが、本実施例では端部でバイパス管12aにより接続され、往き主竪管3Aと3Bを連結しループを形成している。
同様に、前記東系統の還り主竪管8Aと西系統の還り主竪管8Bが、本実施例では端部で接続され、還り主竪管8Aと還り主竪管8Bをバイパス管12bにより接続され、還り主竪管8Aと8Bを連結しループを形成している。
【0023】
図4において、前記東系統の往き主竪管3Aの基部と、西系統の往き主竪管3Bの基部とに繋がる往き横引き主管9から、熱媒体として必要とされる冷水を東系統の往き主竪管3Aと西系統の往き主竪管3Bに送給したときの両系統の負荷流量を示している。
本来、前記従来のシステムと同様に、朝方においては空調に必要な熱媒体の流量は東系統では80%、西系統では50%であるが、本実施例における空調設備における熱媒体配管のループ構造システムにおいては、両往き主竪管3A、3Bがその末端部においてバイパス管12aで繋がれているので、両往き主竪管3A、3Bの基部における圧力は略同一(間の配管抵抗分僅かに異なるだけ)となり、両往き主竪管3A、3Bには同量の熱媒体が冷水ポンプ11から往き横引き主管9を介して供給される。ここでは、両往き主竪管3A、3Bともに熱媒体流量は65%である。
バイパス管で連通されて両往き主竪管3A、3Bともに65%流量となった場合、西系統の往き主竪管3Bに接続された空調機6で必要とされる冷水量50%に対し、冷水15%の余剰分は、前記バイパス管12aを介して東系統の往き主竪管3Aに送ることができる。
【0024】
また、東系統では冷水供給量80%が必要とされるが、往き主竪管3Aにポンプ11から供給される冷水65%では15%が不足する。この不足分は、西系統で余剰分となった冷水15%が往き主竪管3Bから前記バイパス管12aを介して、送給される。本発明は、このようにして、東西両系統の各空調機に必要とする冷水量を確保する構成となっている。
【0025】
このため、従来のシステムのように、例えば上記実施例では、片側の主竪管系統のために、熱媒体の流量を80%で最上階空調機6までの揚程とする必要がなく、熱媒体流量65%で最上階空調機6までの揚程のポンプ仕事となる回転数で運転するポンプ11でよく、ポンプ11の駆動電力を従来のシステムに比べて削減できる。
また、複数の主竪管系統でピーク時にも偏在する熱負荷に対し、ほかの主竪管系統から融通することで、結局主竪管の熱媒体の最大供給流量を少なくすることができることから、往き主竪管3及び還り主竪管8の管径も小さくすることも可能で、空調設備の新設の際のイニシャルコストの低減にも寄与することができる。
さらにバイパス管12a、12bを東西両系統の往き主竪管3と還り主竪管8の末端部または末端側部位を繋いで設けているので、既存の建造物においても、上方のフロアの一部を改修するだけで本発明の空調設備における熱媒体配管のループ構造システムを適用することができる。
なお、本発明の実施形態においては、例として熱源設備が地階に設けられている場合で説明しているが、これに限らず熱源設備が屋上に設けられている場合でも適用できる。
このように熱源設備が屋上に設けられている場合は、屋上から地下に向かって熱媒体配管のループ構造システムが設けられることになる。
さらに、超高層ビルなど、熱媒体配管のループ構造が何層かで区分されている場合、中間階に熱源設備を設けている場合も適用できる。
さらに、それぞれの対象エリアの負荷系統が異なる各空調機6毎に熱媒体と空気との空調機コイルにおける熱交換量を調整する二方弁については、例として分岐往管4に割って入っている場合で説明してきたが、分岐還管7に割って入っている場合ももちろん同様に熱交換量を調整できる。
【符号の説明】
【0026】
1:建造物
2:熱源設備
3:往き主竪管
4:分岐往管
5:二方弁
6:空調機
7:分岐還管
8:還り主竪管
9:往き横引き主管
10:還り横引き主管
11:ポンプ
12:バイパス管
20:空調機室