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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】クローラ、車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
B62D55/253 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020064994
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160596
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000239127
【氏名又は名称】福山ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 宏司
(72)【発明者】
【氏名】木曽 毅彦
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-133878(JP,A)
【文献】特開2001-341677(JP,A)
【文献】特開2005-022462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の幅方向両側にそれぞれ設けられた複数の車輪に巻回され、該巻回方向に転動するクローラであって、
前記巻回方向に延びるとともに、前記幅方向に複数配列されるスチールコードと、
前記スチールコードの端部に設けられ、前記幅方向に広がる芯金と、
前記スチールコード、及び前記芯金を覆うゴム部と、
前記巻回方向に隣り合う一対の前記芯金同士を連結する連結部と、
を備え、
前記芯金は、前記幅方向に配列された複数の芯金分割体を有し、
前記スチールコードの端部が挿通される筒状のカシメ部と、
前記スチールコードが挿通される複数の挿通孔が形成され、前記幅方向に延びる板状のプレートと、
をさらに有し、
前記巻回方向における一端側の前記芯金と、他端側の前記芯金とが厚さ方向から互いに重ねられて前記カシメ部、及び前記プレートを挟持することで前記連結部を形成しているクローラ。
【請求項2】
前記車輪の前記幅方向における中央部に、径方向内側に向かって凹むとともに周方向に延びる溝が形成され、
前記複数の芯金分割体は、前記溝を挟んで前記幅方向に配列されている請求項1に記載のクローラ。
【請求項3】
前記車体と、
前記車輪に巻回された請求項1又は2に記載のクローラと、
を備え、
前記車輪は、起動輪、誘導輪、及び転輪を含み、
前記クローラは、前記起動輪によって前記巻回方向に転動する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クローラ、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
主として不整地での車両の移動を円滑に行うための装置として、無限軌道が広く実用化されている。無限軌道は、車両の幅方向両側に設けられた起動輪、誘導輪、転輪に巻回されるベルト状をなしており、起動輪によって駆動されることで巻回方向に転動する。従来、無限軌道は金属によって構成されていた一方、近年では、軽量化や低コスト化を目的として、これをゴムによって構成する例が増えている。この種の無限軌道は、クローラ(又はゴムクローラ)と呼ばれる。
【0003】
クローラの具体例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載されたクローラは、上記巻回方向に延びるとともに、車両の幅方向に配列された複数のスチールコードと、スチールコードの両端部に取り付けられたカシメ部と、このカシメ部を脱落不能に保持する芯金と、を有するユニットを複数有している。複数のユニットが連結ピンによって連結されることで、環状のクローラが形成されている。芯金は、幅方向に延びる一体の板状をなしている。したがって、クローラの転動中に転輪の下を芯金が通過する際には、1つの芯金が転輪からの荷重を負担する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】カナダ特許出願公開第2992866号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クローラの内面には、当該クローラを転輪によって案内するためのガイドが突出している。また、転輪の幅方向における中央部にはこのガイドに対応する円周状の溝が形成されている。このため、上記のように芯金が一体の板状である場合、溝を挟んで幅方向の2点で芯金に対して荷重が付加される。この荷重によって、芯金の中央部には大きな曲げ応力が生じる。この曲げ応力に抗するためには、芯金の板厚や面積を大きくする方法が考えられる。しかしながら、この場合、クローラ全体の重量が増大してしまう。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、より軽量なクローラ、及びこれを備える車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るクローラは、車体の幅方向両側にそれぞれ設けられた起動輪、誘導輪、及び転輪に巻回され、前記起動輪によって前記巻回方向に転動するクローラであって、前記巻回方向に延びるとともに、前記幅方向に配列され、前記巻回方向に複数が設けられたスチールコードと、前記スチールコードの端部に設けられ、前記幅方向に広がる板状の芯金と、前記スチールコード、及び前記芯金を覆うゴム部と、前記巻回方向に隣り合う一対の前記芯金同士を連結する連結部と、を備え、前記芯金は、前記幅方向に配列された複数の芯金分割体を有し、前記スチールコードの端部が挿通される筒状のカシメ部と、前記スチールコードが挿通される複数の挿通孔が形成され、前記幅方向に延びる板状のプレートと、をさらに有し、前記巻回方向における一端側の前記芯金と、他端側の前記芯金とが厚さ方向から互いに重ねられて前記カシメ部、及び前記プレートを挟持することで前記連結部を形成している。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より軽量なクローラ、及びこれを備える車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第一実施形態に係る車両の構成を示す側面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係るクローラ及び下部転輪を巻回方向から見た断面図である。
図3】本開示の第一実施形態に係るクローラの連結部における内部構造を示す縦断面図である。
図4】本開示の第二実施形態に係るクローラの連結部における内部構造を示す平面透視図である。
図5】本開示の第二実施形態に係るクローラの連結部における内部構造を示す縦断面図である。
図6】本開示の第二実施形態に係るクローラのピンとコネクタの断面図である。
図7】本開示の第三実施形態に係るクローラの連結部における内部構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
(車両の構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る車両100、及びクローラ2について、図1から図3を参照して説明する。車両100は、主として不整地を移動することを目的として用いられる輸送機械である。図1に示すように、車両100は、車体1と、クローラ2と、を備えている。
【0011】
車体1は、乗員や荷物等を収容する車体上部1Aと、エンジンや変速機等が収容される車体下部1Bと、車体下部1Bの幅方向両側に設けられた複数の車輪と、を有している。より具体的には、車体下部1Bには、それぞれ1つの起動輪11と、1つの誘導輪12と、複数(一例として5つ)の下部転輪13Aと、複数(一例として5つ)の上部転輪13Bと、が設けられている。起動輪11は、車体下部1Bの前方側の端部に取り付けられている。起動輪11は、後述するクローラ2に係合する複数の爪を有している。起動輪11は、エンジンから伝達された動力によって車両100の幅方向に延びる回転軸回りに回転駆動される。なお、以降の説明では、車両100の幅方向を単に「幅方向」と呼ぶ。
【0012】
誘導輪12は、車体下部1Bにおける起動輪11とは反対側の端部に設けられている。誘導輪12は、幅方向に延びる回転軸回りに回転自在とされている。言い換えると、誘導輪12には動力は与えられない。下部転輪13Aは、車体下部1Bの下部に設けられ、車体1の荷重を支持しつつ、幅方向に延びる回転軸回りに回転自在とされている。上部転輪13Bは、クローラ2の垂れ下がりを防止するため、下部転輪13Aの上方であって、起動輪11と誘導輪12との間に設けられている。
【0013】
(クローラの構成)
これら起動輪11、誘導輪12、下部転輪13A、及び上部転輪13Bには、無限軌道としてのクローラ2が外側から囲むようにして巻回されている。より具体的には、クローラ2は、起動輪11から上部転輪13Bを経て誘導輪12に向かって延びるとともに、誘導輪12から下部転輪13Aを経て起動輪11まで延びている。以降の説明では、このクローラ2の延びる方向を「巻回方向」と呼ぶ。
【0014】
クローラ2は、幅方向に直交する面内で自在に湾曲することが可能とされている。起動輪11の爪がクローラ2に係合した状態で当該起動輪11を回転させることによって当該クローラ2に駆動力を与えられる。つまり、クローラ2は、巻回方向におけるいずれか一方側に向かって転動する。なお、クローラ2の駆動方式は上記に限定されず、例えば下部転輪13A又は上部転輪13Bによって駆動される方式を採ることも可能である。また、誘導輪12を備えない構成を採ることも可能である。
【0015】
クローラ2は、巻回方向における中途位置で複数に分割されている。つまり、一定の単位長さを有する複数のユニットを連結することで、環状のクローラ2が形成されている。
【0016】
図2に示すように、クローラ2の内面(つまり、下部転輪13A側を向く側)には、下部転輪13Aに形成された溝13Rに係合するガイド2Gが設けられている。ガイド2Gは、クローラ2の内面から当該クローラ2の厚さ方向に突出している。詳しくは後述するが、クローラ2の内部には、当該クローラ2の端部同士を連結するための板状の芯金24が設けられている。この芯金24は、ガイド2G(溝13R)の位置を基準として、幅方向両側に配列された複数(図2の例では2つ)の芯金分割体24Pを有している。
【0017】
次いで、図3を参照して、クローラ2の接続部における内部構成について詳述する。クローラ2は、スチールコード21と、カシメ部22と、プレート23と、芯金24と、ゴム部3と、連結部4と、を有している。
【0018】
スチールコード21は、一例として直径4mm程度の鉄製の編み込みワイヤである。スチールコード21は、巻回方向に延びるとともに、車両100の幅方向に間隔をあけて複数配列されている。これらスチールコード21のそれぞれの端部には、カシメ部22が設けられている。カシメ部22は、スチールコード21を外周側から覆う筒状をなしており、その外径は一例として8mm程度である。つまり、カシメ部22は、スチールコード21よりも大きな外径を有している。なお、カシメ部22は、スチールコード21に対して周方向の全域からカシメ固定されている。
【0019】
このカシメ部22の基端側(つまり、スチールコード21の端部とは反対側)には、プレート23が設けられている。プレート23は、幅方向に延びる板状をなしている。プレート23には、それぞれ1つのスチールコード21が挿通される複数の挿通孔23hが形成されている。これら複数の挿通孔23hは、幅方向に間隔をあけて配列されている。挿通孔23hの内径は、カシメ部22の外径よりも小さく設定されている。プレート23は、カシメ部22に対して基端側から当接している。また、幅方向及び巻回方向に直交する法線方向(つまり、クローラ2の厚さ方向)におけるプレート23の寸法は、当該厚さ方向におけるカシメ部22の寸法と同等か大きく設定されている。
【0020】
これらカシメ部22、及びプレート23は、互いに当接した状態で芯金24によって一体に保持されている。芯金24は、厚さ方向に重ねられた上部芯金24U及び下部芯金24Lと、これら上部芯金24U及び下部芯金24Lによって形成されたチャック部25と、を有している。上部芯金24U及び下部芯金24Lは、幅方向に広がる板状をなしている。上部芯金24Uと下部芯金24Lは図示しないボルトによって互いに結合されている。また、上述のようにこれら上部芯金24U及び下部芯金24Lは幅方向に複数に分割されている。
【0021】
図3に示すように、チャック部25は、収容溝25sと、爪部25cと、キャビティCと、を有している。収容溝25sは、芯金24を幅方向に貫通する溝である。収容溝25s内には、上述のカシメ部22が収容されている。クローラ2の厚さ方向における収容溝25sの寸法は、カシメ部22の外径と同等である。つまり、カシメ部22は、収容溝25sに嵌め込んで保持された状態とされている。これにより、収容溝25s内でカシメ部22が傾いたり、両者の当接状態が不安定になったりすることによるカシメ部22の変形が抑制される。
【0022】
収容溝25sにおけるカシメ部22とは反対側には、爪部25cが設けられている。爪部25cは、クローラ2の厚さ方向両側に1つずつ設けられている。爪部25cは、プレート23に対して当該反対側から当接している。これにより、カシメ部22、及びプレート23が収容溝25sから脱落不能に保持されている。つまり、巻回方向における一端側の芯金24(上部芯金24U)と他端側の芯金24(下部芯金24L)とによってカシメ部22、及びプレート23を挟持することで、クローラ2の端部同士を連結する連結部4が形成されている。
【0023】
収容溝25sと爪部25cとの間には、キャビティCが形成されている。キャビティCは、収容溝25sの端部からクローラ2の厚さ方向両側に向かって凹む空間である。幅方向から見て、キャビティCの底面は円弧状に湾曲している。
【0024】
このように構成されたスチールコード21、カシメ部22、プレート23、及び芯金24は、外側からゴム部3によって覆われている。
【0025】
(作用効果)
次いで、車両100、及びクローラ2の動作について説明する。車両100を移動させるためには、まずエンジンによって起動輪11を回転駆動する。起動輪11の爪がクローラ2に係合した状態で当該起動輪11を回転させることによって当該クローラ2に駆動力を与えられる。これにより、クローラ2は、巻回方向におけるいずれか一方側に向かって転動する。これにより、車両100には推進力が与えられる。
【0026】
ここで、上述したように、クローラ2の内面には、当該クローラ2を下部転輪13Aによって案内するためのガイド2Gが突出している。また、下部転輪13Aの幅方向における中央部にはこのガイド2Gに対応する円周状の溝13Rが形成されている。例えば芯金24が一体の板状である場合、溝13Rを挟んで幅方向の2点で芯金24に対して荷重が付加される。この荷重によって、芯金24の中央部には大きな曲げ応力が生じる。この曲げ応力に抗するためには、芯金24の板厚や面積を大きくする方法が考えられる。しかしながら、この場合、クローラ2全体の重量が増大してしまう。
【0027】
そこで、本実施形態では、上述のように芯金24が複数に分割されている。上記構成によれば、芯金24が幅方向に配列された複数の芯金分割体24Pを有することから、転輪から芯金24が受ける荷重をこれら複数の芯金分割体24Pに分散させることができる。これにより、芯金分割体24Pごとの板厚や面積を小さく抑えることができる。その結果、クローラ2の重量を小さくすることができる。
【0028】
また、下部転輪13Aにはガイド2Gを通過させるための溝13Rが形成されている。この溝13Rを挟んで幅方向の2点で下部転輪13Aから芯金24に荷重が付加される。上記構成によれば、溝13Rを挟んで幅方向に複数の芯金分割体24Pが配列されている。これにより、上記2点の荷重をそれぞれ1つずつの芯金分割体24Pによって負担することができる。その結果、芯金分割体24Pごとの板厚や面積をさらに小さく抑えることができる。加えて、芯金分割体24Pごとの幅方向の寸法を小さくできることから、転輪から受ける荷重による曲げモーメントのモーメントアームが短くなる。したがって、当該荷重によって芯金24(芯金分割体24P)が変形する可能性を低減することができる。
【0029】
さらに、上記構成によれば、一端側の芯金24(上部芯金24U)と他端側の芯金24(下部芯金24L)とを重ね合わせ、両者の間にカシメ部22とプレート23を挟持することのみによって、クローラ2の端部同士を連結することができる。これにより、部品点数が削減されるため、クローラ2の重量をより一層小さく抑えることができる。
【0030】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態について、図4から図6を参照して説明する。なお、上記の第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図4及び図5に示すように、本実施形態では、連結部4bの構成が上記第一実施形態とは異なっている。連結部4bは、一端側の芯金24(第一芯金24A)と他端側の芯金24(第二芯金24B)とを連結するコネクタ41と、ピン42と、ブッシュ43と、を有している。
【0031】
図4に示すように、コネクタ41は幅方向に間隔をあけて複数(一例として4つ)設けられている。コネクタ41は幅方向に広がる板状をなしている。ピン42は、これらコネクタ41と芯金24とに挿通される棒状の部材である。さらに、図5に示すように、ピン42における芯金24に挿通される部分のみに、当該部分を外周側から覆う筒状のブッシュ43が設けられている。ブッシュ43は外力によって弾性変形可能なゴム又は樹脂材料で形成されている。
【0032】
また、図6に示すように、ピン42におけるコネクタ41に挿通される部分には、幅方向から見て平面状をなすピン係合面S1が形成されている。つまり、ピン42の円周における一部のみが平面状に切り欠かれている。コネクタ41におけるピン42が挿通される孔(ピン孔Hp)の内周面には、ピン係合面S1と面接触する平面状のピン孔係合面S2が形成されている。これらピン係合面S1及びピン孔係合面S2が互いに面接触して係合していることにより、コネクタ41とピン42との相対回転が規制されている。
【0033】
上記構成によれば、コネクタ41とピン42によってクローラ2の端部同士を強固に連結することができる。
【0034】
さらに、上記構成によれば、ピン係合面S1とピン孔係合面S2とが面接触することで、ピン42とコネクタ41とが互いに係合する。これにより、両者の間の相対回転を規制することができる。その結果、ピン42とコネクタ41とが摺動することによる摩耗を抑えることができる。
【0035】
また、上記構成によれば、クローラ2に巻回方向の張力が付加された場合に、ブッシュ43が弾性変形することで、クローラ2のピッチ(長さ)がわずかに伸ばされる。これにより、例えば起動輪11にクローラ2が巻き付く際に、当該起動輪11に対してクローラ2の連結部4bをより柔軟に追従させることができる。その結果、起動輪11によってクローラ2をより安定的に駆動することができる。
【0036】
<第三実施形態>
続いて、本開示の第三実施形態について、図7を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態では、連結部4cの構成が上記各実施形態とは異なっている。連結部4cは、クローラ2の巻回方向における一端側に設けられた芯金24(一対の下部芯金24D)と、他端側に設けられた芯金24(一対の上部芯金24C)とによって、スチールコード21を厚さ方向から挟持することによって形成されている。より具体的には、一端側のスチールコード21(下部スチールコード21A)と他端側のスチールコード21(上部スチールコード21B)とは、巻回方向における端部同士が互いに重なった状態で芯金24によって挟持されている。なお、上部芯金24Cと下部芯金24Dは図示しないボルトによって互いに結合されている。
【0037】
上記構成によれば、一端側の芯金24と他端側の芯金24とによってスチールコード21の端部同士を挟持することのみによって、クローラ2の端部同士を連結することができる。これにより、連結部4cを形成するための部品点数がさらに削減されるため、クローラ2の重量をより一層小さく抑えることができる。
【0038】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記の各実施形態では、芯金24が一対の芯金分割体24Pを有する例について説明した。しかしながら、芯金24の態様は上記に限定されず、設計や仕様に応じて芯金分割体24Pを3つ以上有する構成を採ることも可能である。具体的には、上記の第二実施形態で説明した連結部4bの構成を採る場合には、ピン42の径を確保するために芯金24の板厚を過度に小さくできないという制約があることから、芯金分割体24Pの個数を2つとすることが望ましい。一方で、第一実施形態で説明した連結部4、及び第三実施形態で説明した連結部4cの構成を採る場合には、上記のような制約が生じないことから、芯金分割体24Pを3つ以上とし、これら芯金分割体24Pごとの板厚や面積をさらに小さくすることが可能である。
【0039】
<付記>
各実施形態に記載のクローラ2、及び車両100は、例えば以下のように把握される。
【0040】
(1)第1の態様に係るクローラ2は、車体1の幅方向両側にそれぞれ設けられた複数の車輪に巻回され、該巻回方向に転動するクローラ2であって、前記巻回方向に延びるとともに、前記幅方向に複数配列されるスチールコード21と、前記スチールコード21の端部に設けられ、前記幅方向に広がる芯金24と、前記スチールコード21、及び前記芯金24を覆うゴム部3と、前記巻回方向に隣り合う一対の前記芯金24同士を連結する連結部4と、を備え、前記芯金24は、前記幅方向に配列された複数の芯金分割体24Pを有する。
【0041】
上記構成によれば、芯金24が幅方向に配列された複数の芯金分割体24Pを有することから、転輪(下部転輪13A)から芯金24が受ける荷重をこれら複数の芯金分割体24Pに分散させることができる。これにより、芯金分割体24Pごとの板厚や面積を小さく抑えることができる。
【0042】
(2)第2の態様に係るクローラ2では、前記転輪(下部転輪13A)の前記幅方向における中央部に、径方向内側に向かって凹むとともに周方向に延びる溝13Rが形成され、前記複数の芯金分割体24Pは、前記溝13Rを挟んで前記幅方向に配列されている。
【0043】
転輪(下部転輪13A)にはガイド2Gを通過させるための溝13Rが形成されている。この溝を挟んで幅方向の2点で転輪から芯金に荷重が付加される。上記構成によれば、2点の荷重をそれぞれ1つずつの芯金分割体24Pによって負担することができる。その結果、芯金分割体24Pごとの板厚や面積をさらに小さく抑えることができる。さらに、芯金分割体24Pごとの幅方向の寸法を小さくできることから、転輪から受ける荷重による曲げモーメントのモーメントアームが短くなる。したがって、当該荷重によって芯金24が変形する可能性を低減することができる。
【0044】
(3)第3の態様に係るクローラ2は、前記スチールコード21の端部が挿通される筒状のカシメ部22と、前記スチールコード21が挿通される複数の挿通孔23hが形成され、前記幅方向に延びる板状のプレート23と、をさらに有し、前記巻回方向における一端側の前記芯金24と、他端側の前記芯金24とが厚さ方向から互いに重ねられて前記カシメ部22、及び前記プレート23を挟持することで前記連結部4を形成している。
【0045】
上記構成によれば、一端側の芯金24と他端側の芯金24とを重ね合わせ、両者の間にカシメ部22とプレート23を挟持することのみによって、クローラ2の端部同士を連結することができる。これにより、部品点数が削減されるため、クローラ2の重量を小さく抑えることができる。
【0046】
(4)第4の態様に係るクローラ2では、前記連結部4bは、前記巻回方向における一端側の前記芯金24と、他端側の前記芯金24との間に設けられたコネクタ41と、前記一端側の芯金24と前記コネクタ41、及び前記他端側の芯金24と前記コネクタ41にそれぞれ挿通されたピン42と、を有する。
【0047】
上記構成によれば、コネクタ41とピン42によってクローラ2の端部同士を強固に連結することができる。
【0048】
(5)第5の態様に係るクローラ2では、前記ピン42は、前記幅方向から見て平面状をなすピン係合面S1を有し、前記コネクタ41における前記ピン42が挿通されるピン孔Hpには、前記ピン係合面S1と面接触するピン孔係合面S2が形成されている。
【0049】
上記構成によれば、ピン係合面S1とピン孔係合面S2とが面接触することで、ピン42とコネクタ41とが互いに係合する。これにより、両者の間の相対回転を規制することができる。その結果、ピン42とコネクタ41とが摺動することによる摩耗を抑えることができる。
【0050】
(6)第6の態様に係るクローラ2では、前記ピン42における前記芯金24に挿通される部分を外周側から覆うブッシュ43をさらに有する。
【0051】
上記構成によれば、クローラ2に巻回方向の張力が付加された場合に、ブッシュ43が弾性変形することで、クローラ2のピッチ(長さ)がわずかに伸ばされる。これにより、例えば起動輪11にクローラ2が巻き付く際に、当該起動輪11に対してクローラ2の連結部4bをより柔軟に追従させることができる。
【0052】
(7)第7の態様に係るクローラ2では、前記巻回方向における一端側の前記芯金24と、他端側の前記芯金24とが厚さ方向から互いに重ねられて前記スチールコード21の端部同士を挟持することで前記連結部4cを形成している。
【0053】
上記構成によれば、一端側の芯金24と他端側の芯金24とによってスチールコード21の端部同士を挟持することのみによって、クローラ2の端部同士を連結することができる。これにより、部品点数がさらに削減されるため、クローラ2の重量をより一層小さく抑えることができる。
【0054】
(8)第8の態様に係る車両100は、前記車体1と、前記起動輪11、前記誘導輪12、及び前記転輪(下部転輪13A,上部転輪13B)に巻回され、前記起動輪11によって前記巻回方向に転動するクローラ2と、を備える。
【0055】
上記構成によれば、より軽量なクローラ2を備えることで、車両100の安定性や機動性が高まるとともに、製造コストや運用コストを低く抑えることができる。
【符号の説明】
【0056】
100 車両
1 車体
1A 車体上部
1B 車体下部
2 クローラ
2G ガイド
3 ゴム部
4,4b,4c 連結部
11 起動輪
12 誘導輪
13A 下部転輪
13B 上部転輪
13R 溝
21 スチールコード
22 カシメ部
23 プレート
23h 挿通孔
24 芯金
24P 芯金分割体
25 チャック部
25c 爪部
25s 収容溝
41 コネクタ
42 ピン
43 ブッシュ
Ac 回動軸
Hp ピン孔
S1 ピン係合面
S2 ピン孔係合面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7