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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】乗用溝切機
(51)【国際特許分類】
   E02F 5/02 20060101AFI20231006BHJP
   A01B 13/00 20060101ALI20231006BHJP
   A01B 35/16 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
E02F5/02 A
A01B13/00
A01B35/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020074753
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2021172978
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】三澤 充
(72)【発明者】
【氏名】池田 望
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-027035(JP,A)
【文献】特開2017-129271(JP,A)
【文献】特開2019-035454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 5/02
A01B 13/00
A01B 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が座る座席(12)を有する本体フレーム(9)と、前記本体フレーム(9)の前部に回転自在に連結され、駆動輪(6)を操舵するハンドル(1)のハンドル軸(2)と、前記駆動輪(6)に接続され、前記駆動輪(6)を駆動するための駆動輪ユニットと、前記本体フレーム(9)の後部に連結され、溝を形成するための溝切部(7)と、を備え、前記駆動輪ユニットは、原動機(15)と、前後方向に延び前記原動機(15)の動力を前記駆動輪(6)に伝達する伝動軸と、前記伝動軸を収容する伝動軸収容パイプ(13)と、を有する乗用溝切機(100)において、
前記伝動軸収容パイプ(13)に、当該伝動軸収容パイプ(13)の軸心周りに回転自在な回転体(42)を設け、
前記本体フレーム(9)に、前記回転体を下から受け止める回転体受け部(41)を設けたことを特徴とする乗用溝切機(100)。
【請求項2】
前記回転体(42)は、ベアリングにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の乗用溝切機(100)。
【請求項3】
前記本体フレーム(9)は、前記伝動軸収容パイプ(13)が通過し当該伝動軸収容パイプ(13)の旋回を可能とする湾曲部(14)を備え、
前記回転体受け部(41)は、前記湾曲部(14)に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の乗用溝切機(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用溝切機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場(水田)の排水を速やかに行うべく圃場に溝を切る乗用溝切機が知られている。この乗用溝切機は、本体フレームに設けられた座席に作業者が跨がって座り、エンジンの駆動による駆動輪の回転により進行しながら、本体フレーム後部の溝切部により圃場に溝を切るものである。以下の特許文献1には、作業者によるハンドル操作により、駆動輪を操舵し進行方向を変えるものが記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載の乗用溝切機では、作業者が座る座席を有し、前後方向に延びると共に後方へ向かって下方へ傾斜する本体フレームを備えている。本体フレームの前部には、ハンドルのハンドル軸が回転自在に連結され、ハンドル軸の下方には、ブラケットを介して、駆動輪を片持ち支持すると共に駆動輪に動力を伝達するためのギヤケースが連結されている。また、本体フレームの後部には、圃場に溝を形成するための溝切部が連結されている。
【0004】
駆動輪を駆動するための駆動輪ユニットは、原動機と、原動機の動力を駆動輪に伝達するための伝動軸と、伝動軸を収容した伝動軸収容パイプと、備えている。伝動軸収容パイプは、後方へ向かって上方へ傾斜し、その前端が、ギヤケースに連結されると共に、その後端が、原動機に連結されており、座席の下方を通るように延びている。本体フレームは、座席の前側の近傍から、伝動軸収容パイプから離れる側へ湾曲する湾曲部を備えており、ハンドルを操舵して左へ切ったときに伝動軸収容パイプが右へ旋回して湾曲部に進入し、本体フレームに干渉しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-027035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記乗用溝切機にあっては、原動機の駆動による駆動輪の駆動時に、駆動輪が圃場からの抵抗を受けて回転反力が生じ、駆動輪を中心に乗用溝切機が回転させられる。すなわち、駆動輪の駆動時には、乗用溝切機の前部が上方へ浮き、乗用溝切機の後部が下方へ沈むような回転反力を受ける。このとき、伝動軸収容パイプが本体フレームの湾曲部に進入した状態にあると、伝動軸収容パイプが下方へ回動し湾曲部に当接して抵抗を受け、この状態ではハンドルを円滑に操舵できないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、駆動輪の駆動時に、ハンドルの円滑な操舵が可能となる乗用溝切機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による乗用溝切機(100)は、作業者が座る座席(12)を有する本体フレーム(9)と、本体フレーム(9)の前部に回転自在に連結され、駆動輪(6)を操舵するハンドル(1)のハンドル軸(2)と、駆動輪(6)に接続され、駆動輪(6)を駆動するための駆動輪ユニットと、本体フレーム(9)の後部に連結され、溝を形成するための溝切部(7)と、を備え、駆動輪ユニットは、原動機(15)と、前後方向に延び原動機(15)の動力を駆動輪(6)に伝達する伝動軸と、伝動軸を収容する伝動軸収容パイプ(13)と、を有する乗用溝切機(100)において、伝動軸収容パイプ(13)に、当該伝動軸収容パイプ(13)の軸心周りに回転自在な回転体(42)を設け、本体フレーム(9)に、回転体(42)を下から受け止める回転体受け部(41)を設けたことを特徴としている。
【0009】
このような乗用溝切機(100)によれば、駆動輪(6)の駆動時に、駆動輪(6)が圃場からの抵抗を受け、乗用溝切機(100)の前部が上方へ浮き、乗用溝切機(100)の後部が下方へ沈むような回転反力を受けて、伝動軸収容パイプ(13)が下方へ回動した際に、伝動軸収容パイプ(13)に設けられ当該伝動軸収容パイプ(13)の軸心周りに回転自在な回転体(42)が、本体フレーム(9)に設けられ回転体(42)を下から受け止める回転体受け部(41)に当接し抵抗を受ける。このとき、ハンドル(1)を操舵すると、回転体(42)は回転体受け部(41)上をスムーズに転がるため、ハンドル(1)を円滑に操舵することができる。
【0010】
ここで、回転体(42)はベアリングにより構成されていると、簡易に回転体(42)を構成できると共に良好な回転性を得ることができる。
【0011】
また、上記作用を効果的に奏する構成としては、具体的には、本体フレーム(9)は、伝動軸収容パイプ(13)が通過し当該伝動軸収容パイプ(13)の旋回を可能とする湾曲部(14)を備え、回転体受け部(41)は、湾曲部(14)に設けられている構成が挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、駆動輪の駆動時に、ハンドルを円滑に操舵できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る乗用溝切機を示す側面図である。
図2図1に示す乗用溝切機を後方上方から見た概略斜視図である。
図3図1及び図2中のハンドル、ハンドル軸及びハンドル軸回転範囲規制手段を示す縦断面図であり、ハンドル固定の場合を示す図である。
図4図3中のハンドル軸回転範囲規制手段を構成する上段プレート及びノブボルトを示す平面図である。
図5図3中のハンドル軸回転範囲規制手段を構成する中段プレートを示す平面図である。
図6図3中のハンドル軸回転範囲規制手段を構成する下段プレートを示す平面図である。
図7図1中の溝切部、溝切部回転範囲規制手段及び中立戻し機構を示す一部断面側面図である。
図8図7中の中立戻し機構を示す平面図である。
図9図7中のIX-IX矢視図である。
図10図7中の溝切部回転範囲規制手段を示す背面図である。
図11】駆動輪と溝切部の位相関係を示す平面図であり、駆動輪及び溝切部が中立位置に位置している状態を示す図である。
図12】駆動輪と溝切部の位相関係を示す平面図であり、駆動輪を中立位置から時計回りに旋回した状態を示す図である。
図13】駆動輪と溝切部の位相関係を示す平面図であり、駆動輪を中立位置から反時計回りに旋回した状態を示す図である。
図14】駆動輪の駆動時に圃場から回転反力を受けた乗用溝切機の状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る乗用溝切機の好適な実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1及び図2は、本発明の実施形態に係る乗用溝切機を示す各図、図3は、ハンドル、ハンドル軸及びハンドル軸回転範囲規制手段を示す縦断面図であり、ハンドル固定の場合を示す図、図4図6は、ハンドル軸回転範囲規制手段を示す各図、図7は、溝切部、溝切部回転範囲規制手段及び中立戻し機構を示す一部断面側面図、図8は、中立戻し機構を示す平面図、図9は、図7中のIX-IX矢視図、図10は、溝切部回転範囲規制手段を示す背面図、図11図13は、駆動輪と溝切部の位相関係を示す各平面図、図14は、駆動輪の駆動時に圃場から回転反力を受けた乗用溝切機の状態を説明するための図である。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」等の方向を示す語は、乗用溝切機が水平面上に置かれた場合の前進方向を前方と定めた状態を基準としている。
【0015】
図1及び図2に示すように、乗用溝切機100は、その前部に、作業者が握るハンドル1と、ハンドル1の下部から斜め下方且つ前方へ延びるハンドル軸2と、ハンドル軸2の下端部に連結され紙面手前側にオフセットされてハンドル軸2と同傾斜で下方へ延びる連結ブラケット3と、連結ブラケット3に連結されたギヤケース4と、ギヤケース4の内側のハブに片持ち支持で連結されると共に外周の周方向に沿って等間隔で平板状の滑り止め5が設けられた駆動輪6と、を備え、その後部に、圃場に溝を切るための溝切部7と、溝切部7に連結され斜め上方且つ後方へ延びる溝切部軸8と、を備えている。
【0016】
また、乗用溝切機100は、前後方向に後ろ下がりで延びる本体フレーム9を備えている。本体フレーム9の前部には、ハンドル軸回転支持パイプ10が設けられ、ハンドル軸回転支持パイプ10にハンドル軸2が内挿され回転自在に連結されている。
【0017】
本体フレーム9には、その軸線方向略中央の上部に、作業者が跨がって座るための座席12が設けられている。座席12は、上下方向位置が調整可能とされている。また、本体フレーム9の軸線方向中央より後部側は、後述の伝動軸収容パイプ13が進入しハンドル軸2を回転軸心として左右方向(紙面垂直方向)に揺動できるように、略U字状に側方(紙面奥側)に膨らむように湾曲する湾曲部14を備えている。
【0018】
湾曲部14の略U字を構成する後部側の部分の上部には、当該部分に沿うように延びると共に斜め後ろ上がりの傾斜で延びる平板状の回転体受け部41が固定されている(図7参照)。この回転体受け部41は、後述の回転体42を下から受け止めるためのものである。
【0019】
また、本体フレーム9の湾曲部14から後方へ延びる後端部には、溝切部軸回転支持パイプ11が設けられ、溝切部軸回転支持パイプ11に溝切部軸8が内挿され回転自在に連結されている。
【0020】
溝切部7は、平面視において先細のハの字状をなすと共に、前後方向視においてV字溝を形成するように平板を連設して構成されており、V字溝を形成する平板の上端に、ハの字状に沿って水平方向外側へ延びる平板が連設されている。そして、溝切部7による溝切りに際しては、V字溝の先端を圃場に食い込ませ、V字溝外側上方へ押し上げられた土を左右に拡散するようになっている。
【0021】
ギヤケース4は、曲り歯かさ歯車等を収容し、このギヤケース4に対しては、内部に伝動軸を収容し前後方向へ後ろ上がりで延びる伝動軸収容パイプ13が連結され、伝動軸収容パイプ13の後端には原動機15が連結される。伝動軸収容パイプ13は、ギヤケース4の曲り歯かさ歯車により右側(紙面奥側)にやや傾斜しながら後方へ延びている。原動機15は、座席12の後方に配置され、伝動軸収容パイプ13は、座席12の下を通り本体フレーム9の湾曲部14の内側を通過して原動機15に至るように配置されている。ここで、原動機15と、伝動軸と、伝動軸収容パイプ13により、駆動輪を駆動するための駆動輪ユニットが構成されている。
【0022】
図1図2及び図7に示すように、伝動軸収容パイプ13において上記回転体受け部41の上には、伝動軸収容パイプ13の軸心周りに回転自在な回転体42が設けられている。回転体42はベアリングより構成されており、ここでは、玉軸受が用いられている。回転体42を構成するベアリングは、伝動軸収容パイプ13に固定された内輪と、玉を介して回転自在な外輪より構成されている。
【0023】
なお、作業者がハンドル1を左右に回転操作した場合、駆動輪6は左右に旋回し伝動軸収容パイプ13も左右に旋回するが、ハンドル1が中立位置、左右の旋回位置のどこにあっても、伝動軸収容パイプ13の回転体42の下に、回転体受け部41が位置する構成となっている。因みに、回転体受け部41と回転体42との間には、実際には、隙間が存在している。
【0024】
そして、原動機15の駆動力が伝動軸を介してギヤケース4のハブに伝達され、駆動輪6が回転する。なお、連結ブラケット3と伝動軸収容パイプ13とは補強フレーム29により連結されている。
【0025】
図3に示すように、ハンドル軸2は、ハンドル軸回転支持パイプ10内に収容されたフランジ型軸受(無給油軸受)16を介して回転自在に支持されており、ハンドル軸回転支持パイプ10の前面、及び、図1図3に示すように、連結ブラケット3においてハンドル軸回転支持パイプ10の下に位置し左右方向に延びるブラケット部37の前面には、ハンドル軸2の回転範囲を規制するハンドル軸回転範囲規制手段17が設けられている。
【0026】
図3に示すように、ハンドル軸回転範囲規制手段17は、ハンドル軸回転支持パイプ10の前面に固定された上段プレート18と、ブラケット部37の前面に固定され、上段プレート18の下方に離間して重ねて配置された中段プレート19及び下段プレート20と、を備えている。
【0027】
図3及び図4に示すように、上段プレート18には、ノブボルト21が螺子込まれている。図5に示すように、中段プレート19には、ハンドル軸2を回転軸心として平面視円弧状に延びる長孔22が貫通形成され、当該長孔22にノブボルト21の先端部が進入し遊嵌配置可能とされている。図6に示すように、下段プレート20には、ノブボルト21の下方位置に、ノブボルト21の先端部が進入可能な貫通孔23が形成されている。そして、図3に示すように、上段プレート18にノブボルト21を螺子込み、当該ノブボルト21の先端部を中段プレート19の長孔22(図5参照)に進入させることで、ハンドル軸2及びハンドル1が回転可能とされる。ハンドル軸2及びハンドル1の回転範囲は、中段プレート19の長孔22の左右の終端部が移動し、ノブボルト21の先端部に突き当たるまでの範囲である。
【0028】
また、上段プレート18にノブボルト21をさらに螺子込み、当該ノブボルト21の先端部を下段プレート20の貫通孔23(図6参照)に進入させることで、ハンドル軸2及びハンドル1を回転不能に固定できる。なお、図3は、ハンドル軸2及びハンドル1を固定した場合を示している。
【0029】
ここで、本実施形態では、ノブボルト21の先端部は下段プレート20の貫通孔23に進入せず、中段プレート19の長孔22に遊嵌配置されており、図2を参照すれば、ハンドル1を回転操作(操舵)すると、ハンドル軸2を回転軸心として、駆動輪6が左右方向(反時計回り、時計回り)に旋回すると共に、伝動軸収容パイプ13及び原動機15が左右方向(反時計回り、時計回り)に旋回する。なお、ノブボルト21に代えて、レバーボルトやインデックスプランジャを用いても良い。
【0030】
また、図1及び図2に示すように、伝動軸収容パイプ13と溝切部軸8との間には、中立戻し機構24が介在している。中立戻し機構24は、図1図7及び図8に示すように、伝動軸収容パイプ13と溝切部軸8とを、互いに回転軸心周り中立位置に向かうように引き寄せる弾性体としてのコイルスプリング25a,25bを介して連結したものである。伝動軸収容パイプ13には、左右方向に延びる前側の調整板26が連結され、溝切部軸8には、左右方向に延びる後側の調整板27が回転ブラケット31を介して固定されており、前側の調整板26及び後側の調整板27には、コイルスプリング25a,25bの端部を係止するための係止部(係止孔)28が左右方向に沿って複数離間して設けられている(図8参照)。
【0031】
図1及び図2に示すように、回転ブラケット31は、平板によりL字状に構成されている。回転ブラケット31は、L字状を構成する底板31aの前端が後側の調整板27の後端に固定され、底板31aに、溝切部軸8が貫通し固定されている。
【0032】
図2及び図8に示すように、コイルスプリング25a,25bは、平面視においてハンドル軸2と溝切部軸8の各回転軸心を結ぶ直線の左右両側にそれぞれ設けられており、ここでは、右側のコイルスプリング25aは、前側及び後側の調整板26,27の下側に、左側のコイルスプリング25bは、前側及び後側の調整板26,27の上側にそれぞれ配置されている。
【0033】
また、平面視斜めの伝動軸収容パイプ13に対して、中立戻し機構24を介して連結された溝切部7が、乗用溝切機100の進行方向前方を向く中立位置に位置するように(駆動輪6の中立位置に合わせるように)、左側のコイルスプリング25bの前側の調整板26に対する係止位置は左側にオフセットされており、右側のコイルスプリング25aよりも強い引っ張り力を働かせている。
【0034】
また、図7に示すように、溝切部軸8は、溝切部軸回転支持パイプ11内に収容されたフランジ型軸受(無給油軸受)36を介して回転自在に支持されており、図1図2及び図7に示すように、溝切部軸8に固定された回転ブラケット31、及び、溝切部軸回転支持パイプ11に、溝切部7の回転範囲を規制する溝切部回転範囲規制手段30が設けられている。
【0035】
溝切部回転範囲規制手段30は、溝切部軸回転支持パイプ11に後方へ向かって突出するように突設された突設部材としてのボルト32と、回転ブラケット31のL字状を構成し上方へ突出する規制ブラケット31bと、を備えている。
【0036】
規制ブラケット31bは、図2図7図9及び図10に示すように、その上部に、上方へ開放され左右方向へ延びる凹部33を備え、凹部33に、ボルト32が進入している。従って、溝切部7及び溝切部軸8が回転すると、規制ブラケット31bが、溝切部軸回転支持パイプ11の周囲を回転する。溝切部7及び溝切部軸8の回転範囲は、規制ブラケット31bが回転し、規制ブラケット31bの凹部33を形成する左右端部に、ボルト32が突き当たるまでの範囲である。
【0037】
このような構成を有する乗用溝切機100を使用する場合には、作業者は、座席12に跨がって座り、原動機15を駆動し、原動機15の駆動力を、伝動軸収容パイプ13に収容された伝動軸を介してギヤケース4内の歯車、内側のハブに伝達し、駆動輪6が駆動輪として回転する。
【0038】
このとき、ハンドル軸2及び溝切部軸8は、互いに回転軸心周り中立位置に位置し、図11に示すように、駆動輪6の方向と溝切部7の方向が一致しているため、乗用溝切機100は前進する。この際、乗用溝切機100及び作業者の重量が、駆動輪6及び溝切部7に加わるため、駆動輪6に追従する溝切部7によって圃場に溝が形成される。
【0039】
乗用溝切機100が前進する中で、ハンドル1を回転操作すると、ハンドル軸2、連結ブラケット3、駆動輪6、ギヤケース4、伝動軸収容パイプ13、原動機15が、ハンドル軸2の回転軸心を中心に回転し、例えば、ハンドル1を右に切った場合には、図12に示すように、駆動輪6が右に旋回し、乗用溝切機100の進行方向が右へ変更される。また、例えば、ハンドル1を左に切った場合には、図13に示すように、駆動輪6が左に旋回し、乗用溝切機100の進行方向が左へ変更される。
【0040】
このとき、溝切部軸8は、コイルスプリング25a,25bを有する中立戻し機構24を介して伝動軸収容パイプ13に接続されているため、溝切部7は溝切部軸8の回転軸心を中心として、ハンドル1を右に切った場合には、図12に示すように、反時計回りに回転し、左に切った場合には、図13に示すように、時計回りに回転する。すなわち、ハンドル軸2が回転した位相と、溝切部7が回転した位相とは逆位相となり、駆動輪6と溝切部7が逆方向を向いた状態で乗用溝切機100は進行する。
【0041】
この状態で、ハンドル1の操作方向がそのまま留まらないように、中立戻し機構24が作用し、コイルスプリング25a,25bによって、ハンドル1及び溝切部7が上記とは逆方向に回転し、中立位置に復帰する。
【0042】
ここで、このような構成を有する乗用溝切機100において、作業者が座席12に跨がって座りハンドル1を握り原動機15により駆動輪6を駆動すると、図14に示すように、駆動輪6が圃場からの抵抗を受けて回転反力が生じ、駆動輪6を中心に乗用溝切機100が矢印Aで示すように回転させられる。
【0043】
すなわち、駆動輪6の駆動時には、乗用溝切機100の前部が矢印Bで示すように上方へ浮き、乗用溝切機100の後部が矢印Cで示すように下方へ沈むような回転反力を受ける。すると、伝動軸収容パイプ13は矢印Dで示すように下方へ回動し、湾曲部14に進入している回転体42は、本体フレーム9の回転体受け部41に当接して抵抗を受ける。この状態で、ハンドル1を操舵すると、従来では操舵が難しかったが、本実施形態では、回転体42が回転体受け部41上をスムーズに転がるため、ハンドル1を円滑に操舵する(円滑に切る)ことができる。
【0044】
このように、本実施形態によれば、駆動輪6の駆動時に、駆動輪6が圃場からの抵抗を受け、伝動軸収容パイプ13が下方へ回動した際に、伝動軸収容パイプ13に設けられた回転体42が、本体フレーム9に設けられた回転体受け部41に当接するため、当該回転体42により、ハンドル1を円滑に操舵できる。
【0045】
また、回転体42はベアリングにより構成されているため、簡易に回転体42を構成できると共に良好な回転性を得ることができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、以下の作用・効果も奏する。すなわち、座席12を有する本体フレーム9に対し回転自在に連結されたハンドル1のハンドル軸2が、中立位置から切られた場合、本体フレーム9に対し回転自在に連結された回転ブラケット31(溝切部7)とハンドル軸2とを連結する弾性体としてのコイルスプリング25a、25bにより、回転ブラケット31とハンドル軸2とが互いに中立位置に向かうように引き寄せられるため、ハンドル1が中立位置へ容易に戻され、安定した直進性を維持できる。
【0047】
また、コイルスプリング25a,25bは、平面視においてハンドル軸2と回転ブラケット31(溝切部7)の各回転軸心を結ぶ直線の左右両側にそれぞれ設けられているため、ハンドル1を左右の何れに切った場合でも、ハンドル1が中立位置へ容易に戻される。
【0048】
また、上記構成に加えて、本体フレーム9の前部にハンドル軸2が回転自在に連結されると共に、本体フレーム9の後部に回転ブラケット31を介して溝切部7が回転自在に連結されているため、ハンドル軸2が回転した位相と、溝切部7が回転した位相とを逆位相にでき、駆動輪6と溝切部7とが逆方向を向き、回転半径や内輪差を小さくでき、小回りを利かせることができる。
【0049】
また、ハンドル軸2の回転範囲を規制するハンドル軸回転範囲規制手段17を備えているため、ハンドル1の回転範囲が規制され、ハンドル1の切り過ぎによる部品との干渉や必要以上の負荷を抑止できる。
【0050】
また、ノブボルト21を螺子込み、先端部を下段プレート20の貫通孔23に進入させ、ハンドル軸2を固定しロックすることにより、ハンドル1が回らない状態で溝切部7を浮かし駆動輪6を転がしながら走行作業ができるため、圃場での乗用溝切機100の運搬移動が容易であり、しかも、ハンドル1、駆動輪6、伝動軸収容パイプ13、原動機15が動かないため、安全である。
【0051】
また、中立戻し機構24の前側の調整板26、後側の調整板27の係止部28に対するコイルスプリング25a,25bの取り付け位置を変えることにより、コイルスプリング25a,25bの角度を調整し負荷の変更ができるため、ハンドル1の取られやすい圃場でも、操作性能の差を少なくできる。
【0052】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、溝切部7を、平面視ハの字状、前後方向視V字溝を形成するように平板を連設して構成しているが、そろばん玉形状としても良い。
【0053】
また、上記実施形態においては、溝切部7が回転する乗用溝切機100に対する適用を述べているが、溝切部7が固定タイプの乗用溝切機に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…ハンドル、2…ハンドル軸、6…駆動輪、7…溝切部、9…本体フレーム、12…座席、13…伝動軸収容パイプ、14…湾曲部、15…原動機、41…回転体受け部(41)、42…回転体(ベアリング)、100…乗用溝切機。
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