ホーム > 特許ランキング > 株式会社ＳＵＢＡＲＵ
知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】車両の乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/207 20060101AFI20231006BHJP
B60R 21/2338 20110101ALI20231006BHJP
B60R 21/231 20110101ALI20231006BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20231006BHJP
【ＦＩ】
B60R21/207
B60R21/2338
B60R21/231
B60N2/42
【請求項の数】
5
(21)【出願番号】P 2020081568
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2021175644
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社ＳＵＢＡＲＵ
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第２０１９／００１６２８８（ＵＳ，Ａ１）
【文献】米国特許出願公開第２０１９／０２４８３２２（ＵＳ，Ａ１）
【文献】米国特許出願公開第２０１５／０２５９０７１（ＵＳ，Ａ１）
(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)
Ｂ６０Ｒ ２１／２０７
Ｂ６０Ｒ ２１／２３３８
Ｂ６０Ｒ ２１／２３１
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートに設けられ、前記シートの背部の左右それぞれの上部から前記シートに着座する乗員の左右それぞれの肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に展開可能な右袋体および左袋体と、前記右袋体および前記左袋体を展開するインフレータと、
前記右袋体および前記左袋体の中の一方の袋体に形成される挿通部と、
前記挿通部を通して他方の袋体に接続されるテザーと、
前記テザーを引く引込装置と、
を有する、車両の乗員保護装置。
【請求項2】
前記一方の袋体についての前記挿通部が設けられる部位と、前記他方の袋体についての前記テザーの接続部位とは、これらの袋体についての前記シートに着座する乗員の後側となる部位である、請求項１記載の、車両の乗員保護装置。
【請求項3】
前記引込装置は、前記一方の袋体についての前記挿通部が設けられる部位と、前記他方の袋体についての前記テザーの接続部位とが接するように、前記テザーを引く、請求項１または２記載の、車両の乗員保護装置。
【請求項4】
前記引込装置は、前記右袋体および前記左袋体が、前記シートに着座する乗員より前へ移動することが可能な展開完了タイミングより後に、前記テザーを引き始める、請求項１から３のいずれか一項記載の、車両の乗員保護装置。
【請求項5】
前記右袋体および前記左袋体は、展開を開始した後に前記引込装置により前記テザーが引かれることにより、前記シートに着座する乗員の左右両肩の上側を通って乗員の前面に密着する、請求項１から４のいずれか一項記載の、車両の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両では、乗車している乗員を保護するために、シートベルト装置や、エアバッグ装置が使用されている（特許文献１）。
シートベルトは、乗員の上体の前に掛け渡されるシートベルトにより、シートに着座している乗員がシートから変位しないように拘束する。エアバッグ装置は、シートに着座する乗員の周囲で展開し、シートの着座位置から変位した乗員に作用する可能性がある大きな衝撃を吸収する。これらの乗員保護装置を使用することにより、車両は、乗車している乗員を保護することができる。
シートベルトは、乗員の上体の前に掛け渡されるシートベルトにより、シートに着座している乗員がシートから変位しないように拘束する。エアバッグ装置は、シートに着座する乗員の周囲で展開し、シートの着座位置から変位した乗員に作用する可能性がある大きな衝撃を吸収する。これらの乗員保護装置を使用することにより、車両は、乗車している乗員を保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開２０１７－１７８１４８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、たとえばシートベルトは、乗員を局所的に拘束する。このため、大きな衝撃から乗員を保護することができても、乗員に局所的な負担がかかる可能性がないとは言えない。
また、袋体は、それが想定している衝突形態については適切な衝撃吸収をすることができるが、想定したものとは異なる衝突形態については適切な衝撃吸収をすることができるとは限らない。たとえばシートに着座する乗員の前で展開する袋体は、側面衝突によりシートの横方向へ倒れる乗員についてのシートの着座位置からの変位について、適切に衝撃を吸収することは難しい。このため、車両では、シートの周りに、それぞれの衝突形態に対応する複数のエアバッグ装置を設けている。
また、袋体は、様々な乗員の体形に対応するなどのために、シートの着座位置にいる乗員のたとえば上体から少し離れた位置において展開する。展開した袋体は、乗員のたとえば上体が明らかに動いてから、その衝撃を吸収するように機能し始める。この場合、展開した袋体は、既に動き始めている乗員のたとえば上体についての大きな衝撃を吸収する必要がある。
また、袋体は、それが想定している衝突形態については適切な衝撃吸収をすることができるが、想定したものとは異なる衝突形態については適切な衝撃吸収をすることができるとは限らない。たとえばシートに着座する乗員の前で展開する袋体は、側面衝突によりシートの横方向へ倒れる乗員についてのシートの着座位置からの変位について、適切に衝撃を吸収することは難しい。このため、車両では、シートの周りに、それぞれの衝突形態に対応する複数のエアバッグ装置を設けている。
また、袋体は、様々な乗員の体形に対応するなどのために、シートの着座位置にいる乗員のたとえば上体から少し離れた位置において展開する。展開した袋体は、乗員のたとえば上体が明らかに動いてから、その衝撃を吸収するように機能し始める。この場合、展開した袋体は、既に動き始めている乗員のたとえば上体についての大きな衝撃を吸収する必要がある。
【0005】
このように車両に設けられる乗員保護装置には、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の乗員保護装置は、車両のシートに設けられ、前記シートの背部の左右それぞれの上部から前記シートに着座する乗員の左右それぞれの肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に展開可能な右袋体および左袋体と、前記右袋体および前記左袋体を展開するインフレータと、前記右袋体および前記左袋体の中の一方の袋体に形成される挿通部と、前記挿通部を通して他方の袋体に接続されるテザーと、前記テザーを引く引込装置と、を有する。
【0007】
好適には、前記一方の袋体についての前記挿通部が設けられる部位と、前記他方の袋体についての前記テザーの接続部位とは、これらの袋体についての前記シートに着座する乗員の後側となる部位である、とよい。
【0008】
好適には、前記引込装置は、前記一方の袋体についての前記挿通部が設けられる部位と、前記他方の袋体についての前記テザーの接続部位とが接するように、前記テザーを引く、とよい。
【0009】
好適には、前記右袋体および前記左袋体は、前記テザーが引かれることにより、前記シートに着座する乗員の上体の前面に密着可能である、とよい。
【0010】
好適には、前記右袋体および前記左袋体は、前記シートから前広がりとなる斜前方向へ向かって、または前記シートについての左右両側へ向かって展開を開始する、とよい。
【0011】
好適には、前記右袋体および前記右袋体は、巻いた状態で前記シートに設けられ、展開する勢いにより前記シートの左右両側において前へ移動可能である、とよい。
【0012】
好適には、前記引込装置は、前記右袋体および前記左袋体が展開を開始した後に、前記テザーを引き始める、とよい。
【0013】
好適には、前記引込装置は、前記右袋体および前記左袋体が、前記シートに着座する乗員より前へ移動することが可能な展開完了タイミングより後に、前記テザーを引き始める、とよい。
【0014】
好適には、前記右袋体および前記左袋体は、展開を開始した後に前記引込装置により前記テザーが引かれることにより、前記シートに着座する乗員の左右両肩の上側を通って乗員の前面に密着する、とよい。
【0015】
好適には、前記右袋体は、前記シートの前記背部の右上部と前記シートの座部の右側部分とに固定され、前記シートの前記背部の右上部から前記シートの座部の右側部分にかけて延在するように展開し、前記左袋体は、前記シートの前記背部の左上部と前記シートの座部の左側部分とに固定され、前記シートの前記背部の左上部から前記シートの座部の左側部分にかけて延在するように展開する、とよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、車両のシートに設けられる右袋体および左袋体が、インフレータにより、シートの背部の左右それぞれの上部からシートに着座する乗員の左右それぞれの肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に展開することができる。袋体がこのように展開することにより、シートに着座している乗員は、その状態に維持され得る。たとえば、車両に対して前方向から衝撃が入力される場合だけでなく、斜前方向から入力される場合でも、乗員をシートに着座している状態に維持するように拘束し得る。また、乗員の上体の前面は、左右の袋体により抑えられる。シートベルトにより乗員を保護しようとする場合には、乗員を拘束する力が上体の前面についてのシートベルトが当たる部位に局所的に強い力が作用する可能性があるが、本発明ではそのような可能性を低減できる。
しかも、本発明では、テザーが、右袋体および左袋体の中の一方の袋体に形成される挿通部を通して、他方の袋体に接続される。一方の袋体についての挿通部が設けられる部位と、他方の袋体についてのテザーの接続部位とは、たとえば、これらの袋体についてのシートに着座する乗員の後側となる部位でよい。そして、引込装置は、テザーを引く。引込装置は、たとえば、一方の袋体についての挿通部が設けられる部位と、他方の袋体についてのテザーの接続部位とが接するように、テザーを引く。これにより、たとえば乗員の上体の前に離れて展開している右袋体および左袋体は、シートの左右方向の中央へ向かって寄るように接近しながら引かれる。右袋体および左袋体は、寄せて引かれることにより、シートに着座している乗員の上体の前面に対して、その体格によらず密着することが可能である。シートに着座している乗員は、右袋体および左袋体によりシートに押し付けられて、その着座している状態から動き難くなる。しかも、右袋体および左袋体は、シートの中央へ向かって引き寄せられるので、乗員の首部の周囲の近くに位置し、首部へ密着するようになり得る。首部の周囲に袋体が近接または密着することにより、頭部は振れ難くなる。特に、一方の袋体についての挿通部が設けられる部位と、他方の袋体についてのテザーの接続部位とが接するようにテザーを引くことにより、頭部の振れを効果的に抑制できる。
これらの作用により、本発明では、各種の衝突において高い乗員保護を実現可能である。たとえば前面衝突や斜め衝突やオフセット衝突だけでなく、側面衝突などにおいても、右袋体および左袋体により、乗員がシートの着座位置から変位し難くなるように拘束できる。しかも、右袋体および左袋体により乗員を拘束するので、シートベルトのように局所的に強く力を乗員に対して作用させ難くし得る。また、右袋体および左袋体は、シートの着座位置にいる乗員の上体の近くにおいて好適には密着するように展開しているので、乗員の上体が明らかに動いてしまう前に、その衝撃を吸収し始めるように機能し得る。
しかも、本発明では、テザーが、右袋体および左袋体の中の一方の袋体に形成される挿通部を通して、他方の袋体に接続される。一方の袋体についての挿通部が設けられる部位と、他方の袋体についてのテザーの接続部位とは、たとえば、これらの袋体についてのシートに着座する乗員の後側となる部位でよい。そして、引込装置は、テザーを引く。引込装置は、たとえば、一方の袋体についての挿通部が設けられる部位と、他方の袋体についてのテザーの接続部位とが接するように、テザーを引く。これにより、たとえば乗員の上体の前に離れて展開している右袋体および左袋体は、シートの左右方向の中央へ向かって寄るように接近しながら引かれる。右袋体および左袋体は、寄せて引かれることにより、シートに着座している乗員の上体の前面に対して、その体格によらず密着することが可能である。シートに着座している乗員は、右袋体および左袋体によりシートに押し付けられて、その着座している状態から動き難くなる。しかも、右袋体および左袋体は、シートの中央へ向かって引き寄せられるので、乗員の首部の周囲の近くに位置し、首部へ密着するようになり得る。首部の周囲に袋体が近接または密着することにより、頭部は振れ難くなる。特に、一方の袋体についての挿通部が設けられる部位と、他方の袋体についてのテザーの接続部位とが接するようにテザーを引くことにより、頭部の振れを効果的に抑制できる。
これらの作用により、本発明では、各種の衝突において高い乗員保護を実現可能である。たとえば前面衝突や斜め衝突やオフセット衝突だけでなく、側面衝突などにおいても、右袋体および左袋体により、乗員がシートの着座位置から変位し難くなるように拘束できる。しかも、右袋体および左袋体により乗員を拘束するので、シートベルトのように局所的に強く力を乗員に対して作用させ難くし得る。また、右袋体および左袋体は、シートの着座位置にいる乗員の上体の近くにおいて好適には密着するように展開しているので、乗員の上体が明らかに動いてしまう前に、その衝撃を吸収し始めるように機能し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0019】
図１は、本発明の実施形態に係る自動車１の説明図である。自動車１は、車両の一例である。車両には、この他にもたとえば、公共交通用のバス、電車、個人用のパーソナルモビリティ、パーソナルモビリティを乗せる架台装置、がある。車両は、手動運転または自動運転できるものでもよい。
図１（Ａ）は、自動車１の模式的な側面図である。図１（Ｂ）は、図１（Ａ）の自動車１の上面図である。図１には、自動車１とともに、自動車１に乗車している乗員が図示されている。
自動車１は、車体２、を有する。車体２は、複数のシート４が前向きで配置される乗員室３を有する。シート４は、座部５と、座部５の後縁から上へ立設する背部６と、を有する。乗員は、その腰部および腿を座部５に載せ、その上体の背中を背部６に当ててシート４に着座する。
図１（Ａ）は、自動車１の模式的な側面図である。図１（Ｂ）は、図１（Ａ）の自動車１の上面図である。図１には、自動車１とともに、自動車１に乗車している乗員が図示されている。
自動車１は、車体２、を有する。車体２は、複数のシート４が前向きで配置される乗員室３を有する。シート４は、座部５と、座部５の後縁から上へ立設する背部６と、を有する。乗員は、その腰部および腿を座部５に載せ、その上体の背中を背部６に当ててシート４に着座する。
【0020】
このような自動車１では、乗車している乗員を保護するために、シートベルト装置や、エアバッグ装置が使用される。
シートベルト装置は、シート４に着座している乗員の上体の前に掛け渡されるシートベルトを有する。シートベルトは、衝突の際にシート４に着座している乗員がシート４からずれて変位しないように乗員をシートに拘束する。
エアバッグ装置は、シート４に着座する乗員の周囲で展開する袋体を有する。袋体は、たとえばシート４の前側において展開する。乗員の上体は、衝突の際にシート４に背をつけている着座位置からたとえば前へ倒れるが、展開している袋体に当たることにより衝撃が吸収される。乗員に作用する衝撃を吸収できる。
これらのシートベルト装置や、エアバッグ装置により、自動車１は、乗車している乗員を保護することができる。
しかしながら、たとえばシートベルトは、乗員の胸部を局所的に拘束する。このため、大きな衝撃が入力された際に、乗員の胸部に局所的な負担がかかる可能性がないとは言えない。
また、袋体は、それが想定している衝突形態については適切な位置およびタイミングに展開して衝撃吸収をすることができるが、想定したものとは異なる衝突形態については適切に衝撃を吸収できるとは限らない。たとえばシート４に着座する乗員の前で展開する袋体は、側面衝突によりシート４の横方向へ倒れる乗員についてのシート４の着座位置からの車幅方向への変位について、衝撃を吸収することは難しい。このため、自動車１では、シート４の周りに、複数の衝突形態に対応する複数のエアバッグ装置を設けることになる。シート４の周りには、衝突形態に対応する数の多数のエアバッグ装置が設けられることになる。この場合、乗員を保護するための装置の構造および制御は、複雑化する。
このように乗員保護装置には、さらなる改善が求められている。
シートベルト装置は、シート４に着座している乗員の上体の前に掛け渡されるシートベルトを有する。シートベルトは、衝突の際にシート４に着座している乗員がシート４からずれて変位しないように乗員をシートに拘束する。
エアバッグ装置は、シート４に着座する乗員の周囲で展開する袋体を有する。袋体は、たとえばシート４の前側において展開する。乗員の上体は、衝突の際にシート４に背をつけている着座位置からたとえば前へ倒れるが、展開している袋体に当たることにより衝撃が吸収される。乗員に作用する衝撃を吸収できる。
これらのシートベルト装置や、エアバッグ装置により、自動車１は、乗車している乗員を保護することができる。
しかしながら、たとえばシートベルトは、乗員の胸部を局所的に拘束する。このため、大きな衝撃が入力された際に、乗員の胸部に局所的な負担がかかる可能性がないとは言えない。
また、袋体は、それが想定している衝突形態については適切な位置およびタイミングに展開して衝撃吸収をすることができるが、想定したものとは異なる衝突形態については適切に衝撃を吸収できるとは限らない。たとえばシート４に着座する乗員の前で展開する袋体は、側面衝突によりシート４の横方向へ倒れる乗員についてのシート４の着座位置からの車幅方向への変位について、衝撃を吸収することは難しい。このため、自動車１では、シート４の周りに、複数の衝突形態に対応する複数のエアバッグ装置を設けることになる。シート４の周りには、衝突形態に対応する数の多数のエアバッグ装置が設けられることになる。この場合、乗員を保護するための装置の構造および制御は、複雑化する。
このように乗員保護装置には、さらなる改善が求められている。
【0021】
図２は、図１の自動車１に設けることが可能な乗員保護装置の基本的な右袋体２１および左袋体２２の展開状態の説明図である。図２は、右袋体２１および左袋体２２による乗員保護の基本的な原理を説明するものである。
【0022】
図２の右袋体２１は、不図示のインフレータ２３からの高圧ガスの流入により、シート４の背部６の右上部から前方へ突出し、さらに下方へ突出するように展開する。この場合、右袋体２１は、シート４の背部６の右上部からシート４に着座する乗員の右肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に展開することになる。
【0023】
左袋体２２は、不図示のインフレータ２３からの高圧ガスの流入により、シート４の背部６の左上部から前方へ突出し、さらに下方へ突出するように展開する。この場合、左袋体２２は、シート４の背部６の左上部からシート４に着座する乗員の左肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に展開することになる。
【0024】
このように自動車１のシート４に設けられる右袋体２１および左袋体２２は、インフレータ２３により、シート４の背部６の左右それぞれの上部からシート４に着座する乗員の左右それぞれの肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に別々に展開する。シート４に着座している乗員の上体は、その全面に密着している右袋体２１および左袋体２２により抑えられ、衝突の際にその状態に維持され得る。展開した右袋体２１および左袋体２２は、自動車１に対して前方向から衝撃が入力される場合だけでなく、斜前方向から入力される場合でも、乗員をシート４に着座している状態に維持するように拘束できる。また、乗員の上体の前面には、展開した右袋体２１および左袋体２２により抑えられる。展開した右袋体２１および左袋体２２は、シートベルトが乗員の上体の前面を拘束する場合と比べて、乗員を拘束する力が上体の前面の一部に局所的に強く作用し難くなる。
本実施形態では、このような効果を実用的に期待することができる乗員保護装置１０について説明する。
本実施形態では、このような効果を実用的に期待することができる乗員保護装置１０について説明する。
【0025】
図３は、図１の自動車１に設けられる乗員保護装置１０の制御系の説明図である。
図３の乗員保護装置１０は、ステレオカメラ１１、赤外線カメラ１２、ＬｉＤＡＲ１３、加速度センサ１４、通信装置１５、ＧＰＳ受信機１６、および、エアバッグ装置１７、を有する。エアバッグ装置１７は、右袋体２１、左袋体２２、インフレータ２３、後述する挿通部２４、後述するテザー２５、巻取装置２６、および、これらが接続される制御部２７、を有する。これら乗員保護装置１０の各センサおよび各装置は、自動車１に設けられる不図示の車ネットワークにより、制御部２７に接続されてよい。
図３の乗員保護装置１０は、ステレオカメラ１１、赤外線カメラ１２、ＬｉＤＡＲ１３、加速度センサ１４、通信装置１５、ＧＰＳ受信機１６、および、エアバッグ装置１７、を有する。エアバッグ装置１７は、右袋体２１、左袋体２２、インフレータ２３、後述する挿通部２４、後述するテザー２５、巻取装置２６、および、これらが接続される制御部２７、を有する。これら乗員保護装置１０の各センサおよび各装置は、自動車１に設けられる不図示の車ネットワークにより、制御部２７に接続されてよい。
【0026】
ステレオカメラ１１は、たとえば乗員室３の前部において前向きに配置される。ステレオカメラ１１は、車幅方向に並ぶ複数の撮像デバイスを有する。ステレオカメラ１１は、複数の撮像デバイスにより撮像される車外の人などを撮像する。ステレオカメラ１１は、撮像した車外の人についての車体２を基準とした方向および距離を演算してよい。ステレオカメラ１１は、複数の撮像デバイスの撮像画像における被写体である車外の人の位置に基づいて、たとえば三角法などにより、被写体の方向および距離を演算してよい。ステレオカメラ１１は、また、時間をずらして撮像した画像中での位置の変化により、被写体の移動の有無、移動方向、移動速度などを演算してよい。
赤外線カメラ１２は、たとえばステレオカメラ１１と同様に乗員室３の前部において前向きに配置される。赤外線カメラ１２は、車外の人や他の移動体などを撮像した赤外線画像を撮像する。
ＬｉＤＡＲ１３は、たとえば車体２の前部において前向きに配置される。ＬｉＤＡＲ１３は、前方へ向かって光を照射し、車体２の前方の車外の人による反射光に基づいて、被写体の方向、距離、速度などを取得する。
加速度センサ１４は、車体２に設けられる。加速度センサ１４に作用する加速度を検出する。車体２が人などの移動体に当たると、加速度センサ１４は、通常の走行では生じないような大きな加速度を検出する。この場合、加速度センサ１４は、衝突検出を出力してよい。この場合、加速度センサ１４は、車体２と他の動体との接触を予測または検出する衝突検出部として機能する。
通信装置１５は、無線通信により他の移動体、たとえば他の自動車や歩行者の他の通信装置、道路沿いに配置される基地局、などと通信する。通信装置１５は、他の通信装置から、他の移動体の現在位置、移動方向、移動速度などを取得してよい。
ＧＰＳ受信機１６は、ＧＰＳ衛星などから電波を受信し、自車の現在位置、移動速度、などを取得する。
赤外線カメラ１２は、たとえばステレオカメラ１１と同様に乗員室３の前部において前向きに配置される。赤外線カメラ１２は、車外の人や他の移動体などを撮像した赤外線画像を撮像する。
ＬｉＤＡＲ１３は、たとえば車体２の前部において前向きに配置される。ＬｉＤＡＲ１３は、前方へ向かって光を照射し、車体２の前方の車外の人による反射光に基づいて、被写体の方向、距離、速度などを取得する。
加速度センサ１４は、車体２に設けられる。加速度センサ１４に作用する加速度を検出する。車体２が人などの移動体に当たると、加速度センサ１４は、通常の走行では生じないような大きな加速度を検出する。この場合、加速度センサ１４は、衝突検出を出力してよい。この場合、加速度センサ１４は、車体２と他の動体との接触を予測または検出する衝突検出部として機能する。
通信装置１５は、無線通信により他の移動体、たとえば他の自動車や歩行者の他の通信装置、道路沿いに配置される基地局、などと通信する。通信装置１５は、他の通信装置から、他の移動体の現在位置、移動方向、移動速度などを取得してよい。
ＧＰＳ受信機１６は、ＧＰＳ衛星などから電波を受信し、自車の現在位置、移動速度、などを取得する。
【0027】
エアバッグ装置１７の右袋体２１および左袋体２２は、たとえばナイロンその他の樹脂繊維により滑らかな表面に形成されてよい。右袋体２１および左袋体２２は、後述するように折れ曲がった棒形状の袋体でよい。
【0028】
インフレータ２３は、右袋体２１および左袋体２２に接続される。インフレータ２３は、点火信号により高圧ガスを発生し、右袋体２１および左袋体２２へ供給する。
【0029】
巻取装置２６は、後述するように右袋体２１および左袋体２２について設けられるテザー２５を巻き取る。
【0030】
制御部２７は、たとえばＣＰＵ（Ｃｅｎｔｒａｌ Ｐｒｏｃｅｓｓｉｎｇ Ｕｎｉｔ）、ＥＣＵ（Ｅｌｅｃｔｒｉｃ Ｃｏｎｔｒｏｌ Ｕｎｉｔ）である。制御部２７は、たとえば、エアバッグ装置１７に専用のＣＰＵとして自動車１に設けられても、自動車１に設けられる各種の保護装置に共通するＣＰＵとして自動車１に設けられてもよい。ＣＰＵは、ＲＯＭ（Ｒｅａｄ Ｏｎｌｙ Ｍｅｍｏｒｙ）などのストレージからプログラムを読み込んで実行する。これにより、ＣＰＵは、エアバッグ装置１７の制御部２７として機能する。エアバッグ装置１７の制御部２７は、ステレオカメラ１１、赤外線カメラ１２、ＬｉＤＡＲ１３、加速度センサ１４、通信装置１５といった衝突検出部からの検出情報に基づいて、自動車１についての衝突の可能性を判断し、衝突を検出する。ＣＰＵは、判断または検出した衝突に基づいて、インフレータ２３へ点火信号を出力し、巻取装置２６によりテザー２５を巻取る。これにより、エアバッグ装置１７は、展開した右袋体２１および左袋体２２による乗員保護を実行する。
【0031】
図４は、図３の制御部２７による乗員保護処理の流れを示すフローチャートである。
制御部２７としてのＣＰＵは、たとえば自動車１の走行中の場合に、または自動車１に乗員が乗車している場合に、図４の処理を繰返し実行する。
制御部２７としてのＣＰＵは、たとえば自動車１の走行中の場合に、または自動車１に乗員が乗車している場合に、図４の処理を繰返し実行する。
【0032】
ステップＳＴ１において、ＣＰＵは、衝突の検出を判断する。ＣＰＵは、車体２と他の動体との接触が予測または検出されていない場合、本処理を繰り返す。車体２と他の動体との接触が予測または検出されると、ＣＰＵは、衝突が検出されたとして、処理をステップＳＴ２へ進める。
【0033】
ステップＳＴ２において、ＣＰＵは、エアバッグ装置１７を展開する。ＣＰＵは、インフレータ２３へ点火信号を出力する。これによりエアバッグ装置１７の右袋体２１および左袋体２２は、展開を開始する。
【0034】
ステップＳＴ３において、ＣＰＵは、エアバッグ装置１７の展開状態として展開完了を判断する。ＣＰＵは、たとえばインフレータ２３へ点火信号を出力してからの経過時間が、右袋体２１および左袋体２２の展開時間以上であるか否かに基づいて、展開完了を判断してよい。この他にもたとえば、ＣＰＵは、右袋体２１および左袋体２２の展開状態を検出して、展開完了を判断してよい。なお、本処理において展開完了とは、右袋体２１および左袋体２２の展開が最大に展開するタイミングであってもよいが、それより前の直前のタイミングであってもよい。
【0035】
ステップＳＴ４において、ＣＰＵは、テザー２５を巻取る。ＣＰＵは、巻取装置２６を作動させる。巻取り装置は、テザー２５を巻取る。このように巻取装置２６は、展開完了の判断タイミングより後に、テザー２５を巻き取って引く。巻取装置２６は、早くとも、右袋体２１および左袋体２２が展開を開始したタイミングより後に、テザー２５を引き始める。
これにより、制御部２７としてのＣＰＵは、自動車１の衝突が検出または予測された場合に、乗員保護装置１０の右袋体２１および左袋体２２を展開できる。
これにより、制御部２７としてのＣＰＵは、自動車１の衝突が検出または予測された場合に、乗員保護装置１０の右袋体２１および左袋体２２を展開できる。
【0036】
次に、図４の処理により展開される右袋体２１および左袋体２２について説明する。
図５は、本発明の実施形態に係る乗員保護装置１０の右袋体２１および左袋体２２についてのシート４での収容状態の説明図である。
図５（Ａ）は、シート４の前面図である。図５（Ｂ）は、シート４の側面図である。図５（Ｃ）は、シート４の上面図である。
図５は、本発明の実施形態に係る乗員保護装置１０の右袋体２１および左袋体２２についてのシート４での収容状態の説明図である。
図５（Ａ）は、シート４の前面図である。図５（Ｂ）は、シート４の側面図である。図５（Ｃ）は、シート４の上面図である。
【0037】
図５に示すように、本実施形態の右袋体２１は、略棒形状に展開可能な長尺形状の袋体である。長尺形状の右袋体２１の一端は、シート４の背部６の右上部についての中央よりの位置に固定され、他端は、シート４の座部５の右前部分に固定される。右袋体２１は、シート４の右縁部分に沿って、シート４の背部６から座部５にかけて埋設される。左袋体２２は、略棒形状に展開可能な長尺形状の袋体である。長尺形状の左袋体２２の一端は、シート４の背部６の左上部についての中央よりの位置に固定され、他端は、シート４の座部５の左前部分に固定される。左袋体２２は、シート４の左縁部分に沿って、シート４の背部６から座部５にかけて埋設される。
そして、右袋体２１および左袋体２２は、展開時の圧力によりシート４の表面を形成するシートカバーを破って、シート４の外へ突出する。シート４の外へ突出する右袋体２１および左袋体２２は、シート４から左右へ展開することができる。シート４から右へ展開した右袋体２１は、シート４の背部６の右上部からシート４の座部５の右側部分にかけて延在するように展開できる。シート４から左へ展開した左袋体２２は、シート４の背部６の左上部からシート４の座部５の左側部分にかけて延在するように展開できる。
そして、右袋体２１および左袋体２２は、展開時の圧力によりシート４の表面を形成するシートカバーを破って、シート４の外へ突出する。シート４の外へ突出する右袋体２１および左袋体２２は、シート４から左右へ展開することができる。シート４から右へ展開した右袋体２１は、シート４の背部６の右上部からシート４の座部５の右側部分にかけて延在するように展開できる。シート４から左へ展開した左袋体２２は、シート４の背部６の左上部からシート４の座部５の左側部分にかけて延在するように展開できる。
【0038】
ただし、このように右袋体２１がシート４の背部６から座部５にかけてシート４の右縁部分に沿って埋設されている場合、シートカバーを破ってシート４の外へ突出した後の右袋体２１の長さは、右袋体２１の両端が固定されているシート４の背部６の右上部から座部５の右前部分までの直線距離より長くなる。右袋体２１は、２つの固定点の直線距離より長い長さで展開することになる。このため、右袋体２１は、単に展開しただけでは、撓んで展開するようになり、図２のように乗員に密着して拘束するようにはなり難い。
同様に、左袋体２２はシート４の背部６から座部５にかけてシート４の左縁部分に沿って埋設されている場合、シートカバーを破ってシート４の外へ突出した後の左袋体２２の長さは、左袋体２２の両端が固定されているシート４の背部６の左上部から座部５の左前部分までの直線距離より長くなる。左袋体２２は、２つの固定点の直線距離より長い長さで展開することになる。このため、左袋体２２は、単に展開しただけでは、撓んで展開するようになり、図２のように乗員に密着して拘束するようにはなり難い。
そして、乗員の左右で撓んだままに展開される右袋体２１および左袋体２２は、シート４に着座している乗員の前面や左右の両肩に対して密着するようには展開し難い。
同様に、左袋体２２はシート４の背部６から座部５にかけてシート４の左縁部分に沿って埋設されている場合、シートカバーを破ってシート４の外へ突出した後の左袋体２２の長さは、左袋体２２の両端が固定されているシート４の背部６の左上部から座部５の左前部分までの直線距離より長くなる。左袋体２２は、２つの固定点の直線距離より長い長さで展開することになる。このため、左袋体２２は、単に展開しただけでは、撓んで展開するようになり、図２のように乗員に密着して拘束するようにはなり難い。
そして、乗員の左右で撓んだままに展開される右袋体２１および左袋体２２は、シート４に着座している乗員の前面や左右の両肩に対して密着するようには展開し難い。
【0039】
【0040】
図６（Ａ）は、右袋体２１および左袋体２２についての展開開始前の収容状態である。略棒形状に展開可能な長尺形状の袋体である右袋体２１および左袋体２２は、それらの上部を巻いた状態で、シート４に収容されている。具体的には、右袋体２１は、右回りに巻き取られ、左袋体２２は、左回りに巻き取られている。このように右袋体２１および左袋体２２は、後巻きに巻いた状態でシート４に設けられる。インフレータ２３が高圧ガスを噴出することにより、右袋体２１および左袋体２２は、展開を開始する。右袋体２１および左袋体２２は、巻きをほどくようにしながら左右へ広がるように展開を開始する。
【0041】
図６（Ｂ）は、右袋体２１および左袋体２２が展開を開始して、シート４の右縁および左縁を破って展開している状態である。それぞれの巻きをほどくようにしながら左右へ広がるように展開を開始した右袋体２１および左袋体２２は、シート４の右縁および左縁を破ってさらに左右へ広がるように展開する。
【0042】
図６（Ｃ）は、図６（Ｂ）からさらに展開して、右袋体２１および左袋体２２がシート４の右側および左側に大きく撓んで展開している状態である。撓んで展開する右袋体２１および左袋体２２は、図６（Ｃ）のようにシート４の右縁および左縁より左右へ突出して車幅方向へ広がる。この広がった状態において、右袋体２１の巻きおよび左袋体２２の巻きがほどける。巻きがほどけた右袋体２１では、巻きをほどく際の左回りの慣性が働く。巻きがほどけた左袋体２２では、巻きをほどく際の右回りの慣性が働く。このように右袋体２１および左袋体２２は、シート４の背部６から前広がりとなるように斜前方向へ向かって、またはシート４についての左右の両側へ向かって展開を開始することになる。
【0043】
図７（Ａ）は、図６（Ｃ）からさらに展開して、右袋体２１および左袋体２２が、展開時の慣性力によりシート４の前側へ展開している状態である。巻きがほどけた右袋体２１は、左回りの慣性力により、前へ移動する。巻きがほどけた左袋体２２は、右回りの慣性力により、前へ移動する。
【0044】
図７（Ｂ）は、図７（Ａ）からさらに展開して、右袋体２１および左袋体２２が、展開時の慣性力により、シート４に着座している乗員の上体の前に展開している状態である。前へ移動した右袋体２１は、左回りの慣性力により、乗員の前側において左方向へ移動する。前へ移動した左袋体２２は、右回りの慣性力により、乗員の前側において右方向へ移動する。
このように後巻きに巻いた状態でシート４に設けられる右袋体２１および左袋体２２は、展開する勢いによりシート４の背部６の左右両側において、着座している乗員の上体より前へ移動する。
また、撓んで展開することにより、右袋体２１および左袋体２２は、シート４に着座している乗員の上体などにより前への移動を阻害されることなく、着座している乗員の上体より前へ移動することができる。
ただし、右袋体２１および左袋体２２は、この段階でも撓んだ状態にあるため、シート４に着座している乗員の上体を拘束することは難しい。
このように後巻きに巻いた状態でシート４に設けられる右袋体２１および左袋体２２は、展開する勢いによりシート４の背部６の左右両側において、着座している乗員の上体より前へ移動する。
また、撓んで展開することにより、右袋体２１および左袋体２２は、シート４に着座している乗員の上体などにより前への移動を阻害されることなく、着座している乗員の上体より前へ移動することができる。
ただし、右袋体２１および左袋体２２は、この段階でも撓んだ状態にあるため、シート４に着座している乗員の上体を拘束することは難しい。
【0045】
図８は、図５の巻取装置２６による巻取方法の説明図である。
図８において、シート４の背部６に収容されている巻取装置２６は、説明のためにシート４の背部６の後側に示している。
図８（Ａ）において、右袋体２１および左袋体２２は、図７（Ｂ）のように、着座している乗員の上体の前において展開している。
図８において、シート４の背部６に収容されている巻取装置２６は、説明のためにシート４の背部６の後側に示している。
図８（Ａ）において、右袋体２１および左袋体２２は、図７（Ｂ）のように、着座している乗員の上体の前において展開している。
【0046】
そして、右袋体２１についての上側の固定部の近くには、挿通部２４が設けられる。挿通部２４は、たとえば筒状布体、リングなどにより構成されてよい。挿通部２４は、右袋体２１についての背部６への固定部の近くの外面であって、シート４の左右方向の中央側となる部分に設けられる。
【0047】
テザー２５は、挿通部２４を通して、一端が巻取装置２６に接続され、他端が左袋体２２に接続される。テザー２５の他端は、左袋体２２についての、接続される。背部６への固定部の近くの外面であって、シート４の左右方向の中央側となる部分に設けられる。
【0048】
このように右袋体２１についての挿通部２４が設けられる部位と、左袋体２２についてのテザー２５の接続部位とは、双方の袋体が展開した状態において背部６の上側となる位置についての中央側の面に設けられる。すなわち、双方の袋体が展開した状態においてシート４に着座する乗員の頭部または首部の後側となる位置についての中央側の面に設けられる。なお、挿通部２４とテザー２５とは、左右逆に取り付けられてよい。
そして、巻取装置２６は、右袋体２１および左袋体２２が図７（Ｂ）のように着座している乗員の上体の前において展開した後に、テザー２５を巻き取る。巻取装置２６は、右袋体２１および左袋体２２がシート４に着座する乗員より前へ移動することが可能な展開完了タイミングより後に、テザー２５を引き始める。
また、巻取装置２６は、右袋体２１についての挿通部２４が設けられる部位と、左袋体２２についてのテザー２５の接続部位とが接するようになるまで、テザー２５をシート４の背部６へ向けて引く。これにより、図８（Ｂ）に示すように、撓んで展開している右袋体２１と左袋体２２とは、巻き取られるテザー２５により、シート４の左右方向の中央側へ寄るように後ろへ引かれる。右袋体２１および左袋体２２の撓みは、巻取装置２６により巻き取られる。右袋体２１および左袋体２２は、シート４に着座する乗員の左右両肩の上側を通って乗員の前面へ至る位置へ引き寄せられるように移動する。そして、展開した右袋体２１と左袋体２２とは、シート４に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着する状態となる。
図８（Ｂ）は、展開した右袋体２１と左袋体２２とがシート４に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着している状態である。
そして、巻取装置２６は、右袋体２１および左袋体２２が図７（Ｂ）のように着座している乗員の上体の前において展開した後に、テザー２５を巻き取る。巻取装置２６は、右袋体２１および左袋体２２がシート４に着座する乗員より前へ移動することが可能な展開完了タイミングより後に、テザー２５を引き始める。
また、巻取装置２６は、右袋体２１についての挿通部２４が設けられる部位と、左袋体２２についてのテザー２５の接続部位とが接するようになるまで、テザー２５をシート４の背部６へ向けて引く。これにより、図８（Ｂ）に示すように、撓んで展開している右袋体２１と左袋体２２とは、巻き取られるテザー２５により、シート４の左右方向の中央側へ寄るように後ろへ引かれる。右袋体２１および左袋体２２の撓みは、巻取装置２６により巻き取られる。右袋体２１および左袋体２２は、シート４に着座する乗員の左右両肩の上側を通って乗員の前面へ至る位置へ引き寄せられるように移動する。そして、展開した右袋体２１と左袋体２２とは、シート４に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着する状態となる。
図８（Ｂ）は、展開した右袋体２１と左袋体２２とがシート４に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着している状態である。
【0049】
図９は、図８の巻取処理後の右袋体２１および左袋体２２の展開状態の説明図である。
図９（Ａ）は、前面図である。図９（Ｂ）は、側面図である。図９では、展開した右袋体２１と左袋体２２とは、図８（Ｂ）と同様にシート４に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着している。両端の２つの固定点の直線距離より長い長さで展開を開始することに起因して撓んだ状態で展開を開始する右袋体２１と左袋体２２とは、図６から図７に示すように撓んだままにシート４の着座する乗員の前側へ移動でき、最終的には図８および図９に示すようにシート４に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着するように展開できる。右袋体２１と左袋体２２とは、最終的にはそれらの撓みを残さないように展開して、シート４に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着するように展開できる。
図９の状態において、右袋体２１は、シート４の背部６の右上部からシート４に着座する乗員の右肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に展開する。左袋体２２は、シート４の背部６の左上部からシート４に着座する乗員の左肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に展開する。シート４に着座している乗員の上体は、それに密着するように展開している右袋体２１と左袋体２２により抑えられ、前後上下左右へずれたり移動したりし難くなる。右袋体２１と左袋体２２とにより拘束される乗員の上体は、中央寄せされた右袋体２１と左袋体２２とによりしっかりとホールドされて、それらの間からたとえば前へ抜け出し難くなる。
しかも、側突時に図９の状態となることにより、乗員の首の側方近傍に右袋体２１と左袋体２２とが存在することになり、乗員の上体が左右の側方へ移動してしまうことを効果的に抑制し得る。
図９（Ａ）は、前面図である。図９（Ｂ）は、側面図である。図９では、展開した右袋体２１と左袋体２２とは、図８（Ｂ）と同様にシート４に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着している。両端の２つの固定点の直線距離より長い長さで展開を開始することに起因して撓んだ状態で展開を開始する右袋体２１と左袋体２２とは、図６から図７に示すように撓んだままにシート４の着座する乗員の前側へ移動でき、最終的には図８および図９に示すようにシート４に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着するように展開できる。右袋体２１と左袋体２２とは、最終的にはそれらの撓みを残さないように展開して、シート４に着座している乗員の上体の前面および両肩の上に密着するように展開できる。
図９の状態において、右袋体２１は、シート４の背部６の右上部からシート４に着座する乗員の右肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に展開する。左袋体２２は、シート４の背部６の左上部からシート４に着座する乗員の左肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に展開する。シート４に着座している乗員の上体は、それに密着するように展開している右袋体２１と左袋体２２により抑えられ、前後上下左右へずれたり移動したりし難くなる。右袋体２１と左袋体２２とにより拘束される乗員の上体は、中央寄せされた右袋体２１と左袋体２２とによりしっかりとホールドされて、それらの間からたとえば前へ抜け出し難くなる。
しかも、側突時に図９の状態となることにより、乗員の首の側方近傍に右袋体２１と左袋体２２とが存在することになり、乗員の上体が左右の側方へ移動してしまうことを効果的に抑制し得る。
【0050】
以上のように、本実施形態では、自動車１のシート４に設けられる右袋体２１および左袋体２２が、インフレータ２３により、シート４の背部６の左右それぞれの上部からシート４に着座する乗員の左右それぞれの肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に別々に展開することができる。このように袋体を展開することにより、シート４に着座している乗員をその状態に維持するようにできる。自動車１に対して前方向から衝撃が入力される場合だけでなく、斜前方向から入力される場合でも、乗員をシート４に着座している状態に維持するように拘束し得る。また、乗員の上体の前面は、左右の袋体により抑えられる。シートベルト単独により乗員を保護しようとする場合には、乗員を拘束する力が上体の前面の一部に局所的に強く作用する可能性があるが、本実施形態ではそのような可能性を低減できる。
特に、本実施形態では、テザー２５が、右袋体２１および左袋体２２の中の一方の袋体についての背部６上側の固定部の近くに形成される挿通部２４を通して他方の袋体についての背部６上側の固定部の近くに接続される。一方の袋体についての挿通部２４が設けられる部位と、他方の袋体についてのテザー２５の接続部位とは、双方の袋体が展開した状態において背部６の上側となる位置についての中央側の面に設けられる。または、一方の袋体についての挿通部２４が設けられる部位と、他方の袋体についてのテザー２５の接続部位とは、双方の袋体が展開した状態においてシート４に着座する乗員の頭部または首部の後側となる位置についての中央側の面に設けられる。そして、巻取装置２６は、テザー２５を後へ引く。巻取装置２６は、一方の袋体についての挿通部２４が設けられる部位と、他方の袋体についてのテザー２５の接続部位とが接するようになるまで、テザー２５を背部６へ向けて引く。これにより、たとえば乗員の上体の前に展開している右袋体２１および左袋体２２は、巻取装置２６により、シート４の左右方向の中央へ向かって引き寄せられるように接近しつつ後ろへ引かれる。右袋体２１および左袋体２２は、シート４に着座している乗員の上体の前面に密着できるようになる。シート４に着座している乗員は、その体格によらず密着している右袋体２１および左袋体２２によりシート４に押し付けられ、その着座している状態から動き難くなる。しかも、右袋体２１および左袋体２２は、シート４の中央へ向かって引き寄せられることにより、乗員の首部の周囲の近くに位置し、首部へ密着し得るようになり得る。首部の周囲に袋体が近接または密着することにより、頭部は振れ難くなる。
これらの作用により、本実施形態では、各種の衝突において高い乗員保護を実現可能である。たとえば前面衝突や斜め衝突やオフセット衝突だけでなく、側面衝突などにおいても、右袋体２１および左袋体２２により、乗員がシート４の着座位置から変位し難くなるように拘束できる。しかも、右袋体２１および左袋体２２により拘束するため、シートベルトのように局所的に強く乗員を拘束しないようにし得る。
また、右袋体２１および左袋体２２は、シート４の着座位置にいる乗員の上体の近くにおいて密着して展開するので、乗員の上体が動き始める前に、その衝撃を吸収し始めるように機能し得る。この場合、展開した右袋体２１および左袋体２２は、仮にたとえば乗員から離れた位置において衝撃を吸収する場合のように、既に動き始めている乗員についての大きな衝撃を吸収できるようにする必要はない。
特に、本実施形態では、テザー２５が、右袋体２１および左袋体２２の中の一方の袋体についての背部６上側の固定部の近くに形成される挿通部２４を通して他方の袋体についての背部６上側の固定部の近くに接続される。一方の袋体についての挿通部２４が設けられる部位と、他方の袋体についてのテザー２５の接続部位とは、双方の袋体が展開した状態において背部６の上側となる位置についての中央側の面に設けられる。または、一方の袋体についての挿通部２４が設けられる部位と、他方の袋体についてのテザー２５の接続部位とは、双方の袋体が展開した状態においてシート４に着座する乗員の頭部または首部の後側となる位置についての中央側の面に設けられる。そして、巻取装置２６は、テザー２５を後へ引く。巻取装置２６は、一方の袋体についての挿通部２４が設けられる部位と、他方の袋体についてのテザー２５の接続部位とが接するようになるまで、テザー２５を背部６へ向けて引く。これにより、たとえば乗員の上体の前に展開している右袋体２１および左袋体２２は、巻取装置２６により、シート４の左右方向の中央へ向かって引き寄せられるように接近しつつ後ろへ引かれる。右袋体２１および左袋体２２は、シート４に着座している乗員の上体の前面に密着できるようになる。シート４に着座している乗員は、その体格によらず密着している右袋体２１および左袋体２２によりシート４に押し付けられ、その着座している状態から動き難くなる。しかも、右袋体２１および左袋体２２は、シート４の中央へ向かって引き寄せられることにより、乗員の首部の周囲の近くに位置し、首部へ密着し得るようになり得る。首部の周囲に袋体が近接または密着することにより、頭部は振れ難くなる。
これらの作用により、本実施形態では、各種の衝突において高い乗員保護を実現可能である。たとえば前面衝突や斜め衝突やオフセット衝突だけでなく、側面衝突などにおいても、右袋体２１および左袋体２２により、乗員がシート４の着座位置から変位し難くなるように拘束できる。しかも、右袋体２１および左袋体２２により拘束するため、シートベルトのように局所的に強く乗員を拘束しないようにし得る。
また、右袋体２１および左袋体２２は、シート４の着座位置にいる乗員の上体の近くにおいて密着して展開するので、乗員の上体が動き始める前に、その衝撃を吸収し始めるように機能し得る。この場合、展開した右袋体２１および左袋体２２は、仮にたとえば乗員から離れた位置において衝撃を吸収する場合のように、既に動き始めている乗員についての大きな衝撃を吸収できるようにする必要はない。
【0051】
また、本実施形態では、右袋体２１および右袋体２１は、後巻きに巻いた状態でシート４に設けられる。この場合、右袋体２１および右袋体２１は、展開する勢いによりシート４の背部６の左右両側において着座している乗員の上体より前へ移動できる。右袋体２１および左袋体２２は、シート４の背部６から前広がりとなるように斜前方向へ向かって、またはシート４についての左右の両側へ向かって展開を開始できる。これにより、シート４に着座している乗員の上体より前へ展開することができる。
そして、本実施形態では、巻取装置２６は、右袋体２１および左袋体２２が、シート４に着座する乗員の左右両肩の上側を通って乗員の前面へ至ることが可能な形状に展開することになる展開完了タイミングより後に、テザー２５を引き始める。右袋体２１および左袋体２２は、展開を開始した後に巻取装置２６によりテザー２５が引かれることにより、シート４に着座する乗員の左右両肩の上側を通って乗員の上体の前面へ至る位置へ移動する。これにより、右袋体２１および左袋体２２は、乗員をシート４に着座している状態に維持するように拘束し得る。
そして、本実施形態では、巻取装置２６は、右袋体２１および左袋体２２が、シート４に着座する乗員の左右両肩の上側を通って乗員の前面へ至ることが可能な形状に展開することになる展開完了タイミングより後に、テザー２５を引き始める。右袋体２１および左袋体２２は、展開を開始した後に巻取装置２６によりテザー２５が引かれることにより、シート４に着座する乗員の左右両肩の上側を通って乗員の上体の前面へ至る位置へ移動する。これにより、右袋体２１および左袋体２２は、乗員をシート４に着座している状態に維持するように拘束し得る。
【0052】
本実施形態では、右袋体２１は、略棒形状に展開可能であり、その両端がシート４の背部６の右上部とシート４の座部５の右側部分とに固定され、シート４の背部６の右上部からシート４の座部５の右側部分にかけて延在するように展開する。これにより、シート４の背部６の右上部からシート４に着座する乗員の右肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に展開する。同様に、左袋体２２は、略棒形状に展開可能であり、その両端がシート４の背部６の左上部とシート４の座部５の左側部分とに固定され、シート４の背部６の左上部からシート４の座部５の左側部分にかけて延在するように展開する。これにより、シート４の背部６の左上部からシート４に着座する乗員の左肩の上側を通って乗員の上体の前へ至る状態に展開する。
このように右袋体２１および左袋体２２が上下の二か所においてシート４に固定されることにより、乗員の荷重が作用しても右袋体２１および左袋体２２は、その展開している位置に維持され易くなる。右袋体２１および左袋体２２は、乗員の大きな荷重が作用したとしても、展開している位置に維持され得る。乗員を良好に支持することができる。
このように右袋体２１および左袋体２２が上下の二か所においてシート４に固定されることにより、乗員の荷重が作用しても右袋体２１および左袋体２２は、その展開している位置に維持され易くなる。右袋体２１および左袋体２２は、乗員の大きな荷重が作用したとしても、展開している位置に維持され得る。乗員を良好に支持することができる。
【0053】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0054】
たとえば上述した実施形態では、右袋体２１および左袋体２２は、それぞれの両端がシート４の背部６の上部とシート４の座部５の左右の側部分とに固定されている。
この他にもたとえば、右袋体２１および左袋体２２は、それぞれの両端がシート４の背部６の上部とシート４の左右のアームレスト部とに固定されてよい。
この他にもたとえば、右袋体２１および左袋体２２は、それぞれの両端がシート４の背部６の上部とシート４の左右のアームレスト部とに固定されてよい。
【0055】
上述した実施形態では、右袋体２１および左袋体２２は、たとえばシート４の左右で独立して展開する。
この他にもたとえば、右袋体２１および左袋体２２は、たとえばシート４の背部６の上で連結されて、一体化されてもよい。この場合でも、一方の袋体についての挿通部２４が設けられる部位と、他方の袋体についてのテザー２５の接続部位とは、左右に分岐されている部位に設けることができる。
この他にもたとえば、右袋体２１および左袋体２２は、たとえばシート４の背部６の上で連結されて、一体化されてもよい。この場合でも、一方の袋体についての挿通部２４が設けられる部位と、他方の袋体についてのテザー２５の接続部位とは、左右に分岐されている部位に設けることができる。
【0056】
上述した実施形態では、巻取装置２６は、右袋体２１および左袋体２２が、シート４に着座する乗員の左右両肩の上側を通って乗員の前面へ至ることが可能な形状に展開することになる展開完了タイミングより後に、テザー２５を引き始める。
この他にもたとえば、巻取装置２６は、右袋体２１および左袋体２２の展開完了タイミングより前に、テザー２５を引き始めてもよい。巻取装置２６は、右袋体２１および左袋体２２が展開を開始したタイミングより後であれば、テザー２５を引き始めてよい。
この他にもたとえば、巻取装置２６は、右袋体２１および左袋体２２の展開完了タイミングより前に、テザー２５を引き始めてもよい。巻取装置２６は、右袋体２１および左袋体２２が展開を開始したタイミングより後であれば、テザー２５を引き始めてよい。
【0057】
上述した実施形態では、右袋体２１および右袋体２１は、後巻きに巻いた状態でシート４に設けられ、展開する勢いによりシート４の背部６の左右両側において着座している乗員の上体より前へ移動している。
この他にもたとえば、右袋体２１および右袋体２１は、前巻きに巻いた状態でシート４に設けられても、蛇腹状に折り畳まれてシート４に設けられても、よい。これらの場合であっても、たとえばシート４の左右に反射板を設け、袋体を反射板に当てて前へ移動させるようにすれば、右袋体２１および右袋体２１は、シート４の背部６から前広がりとなるように斜前方向へ向かって、またはシート４についての左右の両側へ向かって展開を開始することができる。
この他にもたとえば、右袋体２１および右袋体２１は、前巻きに巻いた状態でシート４に設けられても、蛇腹状に折り畳まれてシート４に設けられても、よい。これらの場合であっても、たとえばシート４の左右に反射板を設け、袋体を反射板に当てて前へ移動させるようにすれば、右袋体２１および右袋体２１は、シート４の背部６から前広がりとなるように斜前方向へ向かって、またはシート４についての左右の両側へ向かって展開を開始することができる。
【0058】
図１０は、図６の右袋体２１および左袋体２２の変形例の展開方法の説明図である。図１０（Ａ）から図１０（Ｃ）は、図６（Ａ）から図６（Ｃ）に対応する。
図１０（Ａ）は、変形例に係る右袋体２１および左袋体２２についての展開開始前の収容状態である。右袋体２１は、左回りに巻き取られ、左袋体２２は、右回りに巻き取られて収容されている。このように右袋体２１および左袋体２２は、前巻きに巻いた状態でシート４に設けられる。インフレータ２３が高圧ガスを噴出することにより、右袋体２１および左袋体２２は、展開を開始する。右袋体２１および左袋体２２は、巻きをほどくようにしながら左右へ広がるように展開を開始し、図１０（Ｂ）に示すようにシート４の左右の縁から飛び出し、規制板２８に当たって前へ跳ね返される。巻きがほどけた右袋体２１および左袋体２２は、図１０（Ｃ）に示すように、展開時の慣性力により、前へ移動する。
このように前巻きに巻いた状態でシート４に設けられる右袋体２１および左袋体２２は、図７と同様に、展開する勢いにより着座している乗員の上体より前へ移動できる。
図１０（Ａ）は、変形例に係る右袋体２１および左袋体２２についての展開開始前の収容状態である。右袋体２１は、左回りに巻き取られ、左袋体２２は、右回りに巻き取られて収容されている。このように右袋体２１および左袋体２２は、前巻きに巻いた状態でシート４に設けられる。インフレータ２３が高圧ガスを噴出することにより、右袋体２１および左袋体２２は、展開を開始する。右袋体２１および左袋体２２は、巻きをほどくようにしながら左右へ広がるように展開を開始し、図１０（Ｂ）に示すようにシート４の左右の縁から飛び出し、規制板２８に当たって前へ跳ね返される。巻きがほどけた右袋体２１および左袋体２２は、図１０（Ｃ）に示すように、展開時の慣性力により、前へ移動する。
このように前巻きに巻いた状態でシート４に設けられる右袋体２１および左袋体２２は、図７と同様に、展開する勢いにより着座している乗員の上体より前へ移動できる。
【0059】
図５では、右袋体２１および左袋体２２は、シート４の背部６の上において、中央寄りの位置に固定されている。
この他にもたとえば、右袋体２１および左袋体２２は、図１１（Ａ）に示すように、シート４の背部６の上において、左右両端寄りの位置に固定されてもよい。図１１は、図５の右袋体および左袋体の他の変形例の展開方法の説明図である。
この場合、右袋体２１および左袋体２２の長さは、図５と比べて短くなるため、展開を開始した後の撓みを小さくできる。
しかも、右袋体２１および左袋体２２がシート４の背部６の上において左右両端寄りの位置に固定されているため、図１１（Ｂ）に示すように巻取装置２６によりテザー２５を巻き取ることによる撓み解消効果が高くなる。テザー２５により大きく引き寄せることにより、右袋体２１および左袋体２２の撓みを効果的に解消し得る。
この他にもたとえば、右袋体２１および左袋体２２は、図１１（Ａ）に示すように、シート４の背部６の上において、左右両端寄りの位置に固定されてもよい。図１１は、図５の右袋体および左袋体の他の変形例の展開方法の説明図である。
この場合、右袋体２１および左袋体２２の長さは、図５と比べて短くなるため、展開を開始した後の撓みを小さくできる。
しかも、右袋体２１および左袋体２２がシート４の背部６の上において左右両端寄りの位置に固定されているため、図１１（Ｂ）に示すように巻取装置２６によりテザー２５を巻き取ることによる撓み解消効果が高くなる。テザー２５により大きく引き寄せることにより、右袋体２１および左袋体２２の撓みを効果的に解消し得る。
【0060】
なお、右袋体２１および左袋体２２は、基本的には、通常のサイドエアバッグと同様に、埋設した袋体が膨張することによりシート４の表皮を破り、その後は慣性により破り方向の先へ向かって移動する。この方向が前方となるように設置することにより、右袋体２１および左袋体２２は、前へ展開し得る。上述した右袋体２１および左袋体２２は、収容状態において巻かれたり、または規制板２８により跳ね返されたりされているので、より確実に前へ移動することが可能になる。
【0061】
また、上述した実施形態では、右袋体２１および左袋体２２は、シート４の背部６から座部５にかけてシート４の左右両縁部分に沿って埋設されている。
この他にもたとえば、右袋体２１および左袋体２２は、シート４の背部６から座部５にかけてシート４の左右両縁部分に沿って弛ませて埋設されてもよい。この場合、右袋体２１および左袋体２２についてのシート４に固定される２点間での、展開長さを、シート４の左右両縁部分の長さより長く稼ぐことができる。右袋体２１および左袋体２２が長くなることにより、たとえば図６から図７にかけての前への展開中において、シート４に着座している乗員の両肩から外へ離れた位置を通過して前へ移動し易くなる。前へ展開しようとしている右袋体２１および左袋体２２は、シート４に着座している乗員の両肩と干渉し難くなる。
ただし、このように右袋体２１および左袋体２２を長くした場合、シート４の背部６に設ける巻取装置２６のみでは、右袋体２１および左袋体２２を十分な速さまたは十分な量で後へ引き込むことができない可能性がある。このような巻取装置２６では、シート４の背部６のサイズなどに起因する大きさや性能についての制限が生じやすい。
この他にもたとえば、右袋体２１および左袋体２２は、シート４の背部６から座部５にかけてシート４の左右両縁部分に沿って弛ませて埋設されてもよい。この場合、右袋体２１および左袋体２２についてのシート４に固定される２点間での、展開長さを、シート４の左右両縁部分の長さより長く稼ぐことができる。右袋体２１および左袋体２２が長くなることにより、たとえば図６から図７にかけての前への展開中において、シート４に着座している乗員の両肩から外へ離れた位置を通過して前へ移動し易くなる。前へ展開しようとしている右袋体２１および左袋体２２は、シート４に着座している乗員の両肩と干渉し難くなる。
ただし、このように右袋体２１および左袋体２２を長くした場合、シート４の背部６に設ける巻取装置２６のみでは、右袋体２１および左袋体２２を十分な速さまたは十分な量で後へ引き込むことができない可能性がある。このような巻取装置２６では、シート４の背部６のサイズなどに起因する大きさや性能についての制限が生じやすい。
【0062】
図１２は、右袋体２１および左袋体２２の引込性能を改善する変形例の説明図である。
図１２（Ａ）において、右袋体２１および左袋体２２は、シート４の背部６から座部５にかけてシート４の左右両縁部分に沿って弛ませて埋設されている。右袋体２１および左袋体２２の長さは、シート４の背部６から座部５にかけてシート４の左右両縁部分より長くなっている。右袋体２１の上端および左袋体２２の上端には、上述した実施形態と同様に不図示のテザー２５により巻取装置２６が接続される。
そして、図１２では、右袋体２１の下端および左袋体２２の下端は、ベルト４１により調整装置４２に接続される。調整装置４２は、シート４の座部５の下に配置される、たとえば巻取装置でよい。ベルト４１は、複数のプーリ４３に掛けられてよい。複数のプーリ４３に掛けて折り返すことにより、シート４の座部５の下に収まる範囲で、ベルト４１の長さを確保できる。
図１２（Ａ）において、右袋体２１および左袋体２２は、シート４の背部６から座部５にかけてシート４の左右両縁部分に沿って弛ませて埋設されている。右袋体２１および左袋体２２の長さは、シート４の背部６から座部５にかけてシート４の左右両縁部分より長くなっている。右袋体２１の上端および左袋体２２の上端には、上述した実施形態と同様に不図示のテザー２５により巻取装置２６が接続される。
そして、図１２では、右袋体２１の下端および左袋体２２の下端は、ベルト４１により調整装置４２に接続される。調整装置４２は、シート４の座部５の下に配置される、たとえば巻取装置でよい。ベルト４１は、複数のプーリ４３に掛けられてよい。複数のプーリ４３に掛けて折り返すことにより、シート４の座部５の下に収まる範囲で、ベルト４１の長さを確保できる。
【0063】
長尺の右袋体２１および左袋体２２は、展開を開始すると、図１２（Ｂ）に示すように、シート４に着座している乗員より前へ大きく撓んで展開する。右袋体２１および左袋体２２は、シート４に着座している乗員の両肩と干渉することなく、シート４に着座している乗員より前へ大きく撓んで展開できる。
この右袋体２１および左袋体２２が前へ展開した状態において、調整装置４２は、ベルト４２をたとえば所定量で巻き取る。
これにより、図１２（Ｃ）に示すように、長尺の右袋体２１および左袋体２２の一部は、シート４の座部５の下側へ引き込まれる。一部が引き込まれた右袋体２１および左袋体は、側面視においてシート４に着座している乗員の上体より一回り大きい程度のサイズで湾曲する。図１２（Ｃ）での右袋体２１および左袋体２２の湾曲の程度は、図１２（Ｂ）と比べて抑制される。この状態で、巻取装置２６は、テザー２５を巻き取り、右袋体２１および左袋体２２を後へ引込む。これにより、右袋体２１および左袋体２２は、上述した実施形態と同様に、シート４に着座している乗員の上体の前面および両肩に密着できる。
この右袋体２１および左袋体２２が前へ展開した状態において、調整装置４２は、ベルト４２をたとえば所定量で巻き取る。
これにより、図１２（Ｃ）に示すように、長尺の右袋体２１および左袋体２２の一部は、シート４の座部５の下側へ引き込まれる。一部が引き込まれた右袋体２１および左袋体は、側面視においてシート４に着座している乗員の上体より一回り大きい程度のサイズで湾曲する。図１２（Ｃ）での右袋体２１および左袋体２２の湾曲の程度は、図１２（Ｂ）と比べて抑制される。この状態で、巻取装置２６は、テザー２５を巻き取り、右袋体２１および左袋体２２を後へ引込む。これにより、右袋体２１および左袋体２２は、上述した実施形態と同様に、シート４に着座している乗員の上体の前面および両肩に密着できる。
【符号の説明】
【0064】
１…自動車（車両）、２…車体、３…乗員室、４…シート、５…座部、６…背部、１０…乗員保護装置、１１…ステレオカメラ、１２…赤外線カメラ、１３…ＬｉＤＡＲ、１４…加速度センサ、１５…通信装置、１６…ＧＰＳ受信機、１７…エアバッグ装置、２１…右袋体、２２…左袋体、２３…インフレータ、２４…挿通部、２５…テザー、２６…巻取装置（引込装置）、２７…制御部、２８…規制板
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】