(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】内視鏡外科手術処置中の外科手術空洞内のガス組成物を制御するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/94 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
A61B17/94
(21)【出願番号】P 2020567219
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 US2019031377
(87)【国際公開番号】W WO2019236240
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-01-06
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500103074
【氏名又は名称】コンメッド コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シルバー ミキヤ
(72)【発明者】
【氏名】ティーガン ギャリー
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205342(JP,A)
【文献】特表平07-508443(JP,A)
【文献】米国特許第05676155(US,A)
【文献】特開2006-167299(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0174305(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡外科手術処置の間に外科手術空洞内のガス組成物を制御するためのシステムの作動方法であって、
a)ガスが前記システム内に流入する流入口からのガス流中の複数のガス種を前記システムが監視することであって、前記ガス流はポンプによって駆動され、前記監視することは、ガス種センサのアレイを使用することを含み、前記ガス種センサのアレイは、前記ポンプの上流で、前記流入口からくる主ガス流と平行なガス流の流れからサンプリングするように位置付けられ、前記平行なガス流は、前記ガス種センサのアレイの上流で前記主ガス流から分岐し、前記ガス種センサのアレイの下流で、前記主ガス流に再び合流する、複数のガス種を前記システムが監視することと、
b)前記ガス種センサのアレイによって前記流入口からの前記ガス流中の前記複数のガス種を前記システムが測定することと、
c)前記流入口からの前記ガス流中で測定された前記ガス種がそれぞれ存在するかどうか、および/またはそれぞれの所望の範囲内にあるかどうかを前記システムが判定することと、
d)前記ガス種のいずれかが前記それぞれの所望の範囲外にある場合、前記システムが是正処置を取ることと、を含み、
前記システムが是正処置を取ることは、
前記複数のガス種の一つ以上のガス種が前記それぞれの所望の範囲外にある場合に、前記システムがガスを前記外科手術空洞に追加する、または前記システムが前記ガスの一部を前記システムから雰囲気に排出すること、
前記システムが、前記所望の範囲外であるガス種をユーザに警告すること、
前記システムが、外部または内部の気腹装置に対して、前記外科手術空洞を二酸化炭素でフラッシュするよう指示する電気信号を出力すること、および、
前記システムが、ガス流を、気腹装置またはガス再循環器から前記外科手術空洞に対して送ること、
のうちの少なくとも一つを含む、
システムの作動方法。
【請求項2】
前記複数のガス種を前記システムが監視することは、前記ガス流を連続的に監視することを含む、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項3】
前記複数のガス種を前記システムが監視することは、前記ガス流を連続的または定期的に監視することを含む、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項4】
前記流入口からのガス流中で測定された前記ガス種がそれぞれ、それぞれの所望の範囲内にあるかどうかを判定することが、前記ガス種の組成が、指定されたレベルより低い二酸化炭素(CO
2)の濃度を含むかどうかを判定することを含む、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項5】
前記システムが前記ガスを
前記外科手術空洞に追加することは、
二酸化炭素(CO
2)の濃度が前記指定されたレベルよりも低い場合、前記複数のガス種を測定することにより得られた前記二酸化炭素(CO
2)の濃度が前記指定されたレベルよりも高くなるように、二酸化炭素(CO
2)を
前記外科手術空洞に加えることを含む、請求項4に記載のシステムの作動方法。
【請求項6】
複数のガス種を監視することおよび前記ガス種が測定されたか判定することが、窒素(N
2)がそれぞれの所望の範囲内にあるかどうか監視することおよび判定することを含む、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項7】
複数のガス種を監視することおよび前記ガス種が測定されたか判定することが、酸素(O
2)がそれぞれの所望の範囲内にあるかどうか監視することおよび判定することを含む、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項8】
複数のガス種を監視することおよび前記ガス種が測定されたか判定することが、二酸化窒素(NO
2)がそれぞれの所望の範囲内にあるかどうか監視することおよび判定することを含む、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項9】
複数のガス種を監視することおよび前記ガス種が測定されたか判定することが、水蒸気(H
2O)がそれぞれの所望の範囲内にあるかどうか監視することおよび判定することを含む、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項10】
複数のガス種を監視することおよび前記ガス種が測定されたか判定することが、セボフルランがそれぞれの所望の範囲内にあるかどうか監視することおよび判定することを含む、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項11】
複数のガス種を監視することおよび前記ガス種が測定されたか判定することが、メタン(CH
4)がそれぞれの所望の範囲内にあるかどうか監視することおよび判定することを含む、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項12】
複数のガス種を監視することおよび前記ガス種が測定されたか判定することが、キセノン(Xe)、アルゴン(Ar)、デスフルラン、イソフルラン、および/または一酸化炭素(CO)のうちの一つ以上がそれぞれ所望の範囲内にあるかどうか監視することおよび判定することを含む、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項13】
前記ガス流中の前記複数のガス種を測定することが、複数のガス種センサからの情報に基づいて個々のガス種の流量を合計し、前記ガス流中のすべてのガス種の合計流量で除算することによって、各ガス種をモル百分率として計算することを含む、請求項1に記載のシステムの作動方法。
【請求項14】
各ガス種を計算することが、複数のガス種センサからの情報に基づいて個々のガス種の流量を合計し、前記ガス流中のすべてのガス種の総流量で除算することによって、各ガス種をモル百分率として計算することを含む、請求項13に記載のシステムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月5日に出願された米国特許出願第16/000,378号の優先権の利益を主張するものであり、この開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
主題開示は、内視鏡外科手術、より具体的には、内視鏡または腹腔鏡外科手術処置中の外科手術空洞内のガス組成物を制御するためのシステムおよび方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
腹腔鏡外科手技または「低侵襲」外科手技は、胆嚢摘除、虫垂切除、ヘルニア修復および腎摘出などの処置の実施において日常事になりつつある。このような手術の利点には、患者への外傷の減少、感染の機会の低減、および回復時間の減少が含まれる。腹部(腹膜)空洞内のこのような手術は、典型的には、トロカールまたはカニューレとして知られる装置を通して実施され、これは腹腔鏡器具の患者の腹腔内への導入を促進する。
【0004】
さらに、このような処置は、一般に、二酸化炭素などの加圧流体で腹腔の充填または腹腔に「送気」して、気腹と呼ばれる手術空間を作り出すことを含む。送気は、送気用流体を送達するように装備されたトロカールなどの手術用アクセス装置、または送気用(ベレス)ニードルなどの別個の送気用装置によって、実施され得る。気腹を維持するために、注入ガスの実質的な損失なしに、外科手術機器の気腹への導入が望ましい。
【0005】
典型的な腹腔鏡処置の間、外科医は、通常、約12ミリメートル未満の小さな三つから四つの切開を行い、これは典型的には手術用アクセス装置自体で、多くの場合、その中に置かれた別個のインサータまたは閉塞具を使用してなされる。挿入後、閉塞具が取り外され、トロカールは腹腔内に挿入される器具に対するアクセスを可能にする。典型的なトロカールは、外科医が作業する開放内部空間を持つように、腹腔に送気する経路を提供する。
【0006】
トロカールは、トロカールと使用されている外科手術器具の間の密封によって空洞内の圧力を維持する方法を提供しつつも、なお外科手術器具の少なくとも最小量の移動の自由を可能にしなければならない。このような器具には、例えば、はさみ、把持器具および閉塞具、焼灼ユニット、カメラ、光源およびその他の外科手術機器が含まれ得る。密封要素または機構は通常、腹腔からの送気用ガスの漏れを防ぐためにトロカールに提供される。これらの密封機構は多くの場合、トロカールを通過する外科手術器具の外側表面の周りに密封するために、比較的柔軟な材料で作られたダックビル型弁を含む。
【0007】
ConMed Corporationの完全子会社であるSurgiQuest, Inc.は、例えば米国特許第7,854,724号に記載されるように、従来の機械的弁シールを必要とせずに、送気された外科手術空洞にすぐにアクセスできる、独自のガス密封外科手術アクセス装置を開発した。これらの装置は、内側管状体部分および同軸外側管状体部分を含むいくつかのネストされた構成要素から構築される。内側管状体部分は、従来の腹腔鏡外科手術器具を患者の腹腔に導入するための中央ルーメンを画定し、外側管状体部分は、患者の腹腔に送気用ガスを送達し、腹圧の定期的な感知を促進するための内側管状体部分を囲む環状ルーメンを画定する。SurgiQuest, Inc.は、米国特許番号8,715,219、米国特許番号8,961,451、米国特許番号9,295,490に記載されるようなマルチモード送気システム、ならびに2018年4月4日出願の米国特許出願番号15/945,007に記載されるような煙排出システムも開発しており、これらは、それぞれ、その全体が参照により本明細書に援用されている。
【0008】
これらの独自の外科手術アクセス装置は、ガス密封を作成および維持するためにトロカールの中央ルーメンに加圧された外科手術用ガスの流れを提供する、上述のガス送達システムなどのガス送達システムとともに利用される。アクセス装置の中央ルーメンは体腔と直接連通しており、したがって、再循環流は必然的に体腔内のガスを含む。このガスは、送気に影響を与えず、環状ルーメンを通して感知することなく、連続的に再循環される。外科手術処置の過程の間、体腔内のガスの成分は、電気焼灼、麻酔などの結果として変化し得る。このガス組成物は、患者に影響を与えることができるが、最先端技術では、外科手術処置中に体腔内のガス組成物にどのような変化が生じているかを知るための信頼できる方法はない。
【0009】
空気、窒素、その他のガスや混合物による早期の送気が行われたが、1970年代初めに二酸化炭素が送気用ガスの治療の選択肢の標準になり始めた。二酸化炭素には、医学界や科学界で認識されている他のガスに比べて多くの利点がある。人体には、自然と二酸化炭素の除去方法が組み込まれている。呼吸中、酸素を豊富に含む空気が吸入され、動脈系を介して酸素が全身に運ばれる。二酸化炭素は、細胞呼吸から自然に発生する老廃物であり、静脈系を介して肺に運ばれ、吐き出される。二酸化炭素は、身体によって容易に吸収され、前述の方法によって除去することができる。その他のガスは体内からの除去がより困難であり、これにより肺気腫または不完全な脱気による閉じ込められた送気用ガス、皮下気腫(皮下に閉じ込められたガス)、または塞栓症を含む術後合併症に至ることがある。塞栓症は、ガス気泡が血流に入り、特定の血管の血流を遮断するときに起こり得る。塞栓症は、神経、筋肉、脳の損傷や死に至ることさえもあり得る。人体が二酸化炭素を除去する能力により、二酸化炭素の気泡が他のガスよりも有害な塞栓症を引き起こす可能性は低い。というのも、身体が二酸化炭素をより簡単に吸収して大きさを小さくしたり塞栓症を除去したりできるからである。
【0010】
低侵襲外科手術が急増し、腹腔鏡腔内の送気が一般的となったため、送気は大腸内視鏡や低侵襲直腸手術などの他の内視鏡処置で使用され始めた。大腸腔内の送気について調査した初期の研究および出版物では、燃焼のトピックについて特に懸念が示された。腹腔鏡外科手術およびその他の内視鏡外科手術では、電気焼灼器を使用して軟組織を切断および凝固させることが一般的である。モノポーラ、バイポーラ、RF、高調波、およびその他の装置は、市場で容易に入手可能である。これらの装置は、過度の出血を防ぐために切開が行われる際に、電気またはその他のエネルギー形態を使用して組織を燃焼する。大腸外科医は、患者の腸内に閉じ込められたメタンガスのポケットが存在する可能性により、燃焼の燃料が得られる可能性があるため、空気の送気を懸念するようになった。空気送気における酸素の存在は、いくつかの注目された症例で起こった爆発を支持することが見いだされた。二酸化炭素が可燃性でないという事実は、急速に、大腸の送気における最適な送気ガスおよび標準治療として医療コミュニティ内で採用されるに至った。
【0011】
低侵襲手術の当業者は、様々な他のガスが、様々な供給源から外科手術空洞に入り得ることを理解することができる。室内の空気は、漏れから、または滅菌チューブセットもしくは滅菌包装に空気圧封止され、患者の空洞に挿入されるか、または取り付けられるその他の医療製品内に閉じ込められたガスによって、空洞に入ることができる。電気焼灼装置またはレーザー焼灼装置自体(アルゴンビーム凝固装置など)は、アルゴンのような特定のガスをそのエネルギーを伝送するためにときどき使用して、そのガスの空洞内の存在につながることがある。焼灼のプロセスは、空洞内に閉じ込められた有害なガス状化合物である一酸化炭素および揮発性有機化合物(VOC)を放出することができる。最後に、特定のガスを使用して、手術前に患者に麻酔をかける。これらの麻酔ガスは、身体によって代謝され、外科手術空洞内に存在を示すことができる。これは、非二酸化炭素ガスが外科手術空洞においてどのように問題となり得るかの別の例である。
【0012】
前述の考察は、腹腔鏡検査および大腸送気について特に言及するが、当業者は、外科手術空洞におけるガス組成物の制御の問題は、胸部送気を含む任意の適切な外科手術空洞の送気および任意の適切な内視鏡処置に一般的に関連があることを容易に理解するであろう。
【0013】
従来的な技術は、意図された目的で満足していると考えられている。しかしながら、外科手術処置中のガス送達を制御するための改善されたシステムおよび方法に対するニーズは、常に存在する。本開示は、このニーズの解決策を提供する。
【発明の概要】
【0014】
内視鏡外科手術処置の間に外科手術空洞内のガス組成物を制御するための方法は、患者の外科手術空洞からのガス流中の複数のガス種を監視することを含む。方法は、外科手術空洞からのガス流中の複数のガス種を測定することと、外科手術空洞からのガス流中で測定されたガス種が、それぞれ存在する、および/またはそれぞれの所望の範囲内にあるかどうかを判定することとを含む。方法は、ガス種のいずれかがそれぞれの所望の範囲外にある場合、是正処置を取ることを含む。
【0015】
是正処置を取ることは、複数のガス種の一つ以上のガス種がそれぞれの所望の範囲外にある場合に、外科手術空洞内のガス種の組成物をそれぞれの所望の範囲内に至らせるように、ガスを外科手術空洞に添加することを含み得る。是正処置を取ることは、非理想的なガス組成物をユーザに警告することを含み得る。是正処置を取ることには、外部または内部の気腹装置に、外科手術空洞を二酸化炭素でフラッシュするよう指示することが含まれ得る。是正処置を取ることには、患者への危害を防止するために装置を無効にすることが含まれ得る。ガスセンサは、異なるガス種の存在を測定するために、質量流量または体積流量を測定してもよい。システム/方法は、複数の質量流量または体積流量の読み取り値からモル百分率を計算するためにルックアップテーブルの使用を含み得る。是正処置を取ることは、ガス流を気腹装置またはガス再循環器から外科手術空洞内に送達することを含み得る。
【0016】
外科手術空洞からのガス流中の複数のガス種の監視は、ガスの流れの連続的な監視を含み得る。外科手術空洞からのガス流中の複数のガス種の監視は、ガスの流れの連続的または定期的なサンプリングを含み得る。外科手術空洞からのガス流は、外科手術空洞からのガスの排出、外科手術空洞からのガスの再循環、および/または外科手術空洞からのガスの断続的な漏れに起因する場合がある。外科手術空洞内にガスを添加することは、気腹装置またはガス再循環器から外科手術空洞内にガスの流れを送達することを含み得る。
【0017】
外科手術空洞からのガス流中で測定されたガス種がそれぞれ、それぞれの所望の範囲内にあるかどうかを判定することは、ガス種の組成物が、指定されたレベルより低い二酸化炭素(CO2)の濃度を含むかどうかを判定することを含み得る。外科手術空洞内にガスを添加することは、二酸化炭素(CO2)の濃度が指定されたレベルよりも低い場合、外科手術空洞内の二酸化炭素(CO2)の濃度が指定されたレベルよりも高くなるように、二酸化炭素(CO2)を外科手術空洞内に添加することを伴い得る。
【0018】
複数のガス種の監視、および測定されたガス種の判定は、窒素(N2)、酸素(O2)、亜酸化窒素(NO2)、水蒸気(H2O)、セボフルラン、メタン(CH4)、キセノン(Xe)、アルゴン(Ar)、デスフルラン、イソフルラン、および/または一酸化炭素(CO)が、存在する、かつ/またはそれぞれの所望の範囲内にあるかどうかを監視し、判定することを含み得る。
【0019】
ガス流中の複数のガス種を測定することは、複数のガス種センサからの情報に基づいて個々のガス種の流量を合計し、ガス流中のすべてのガス種の合計流量で除算することによって、各ガス種をモル百分率として計算することを含み得る。各ガス種を計算することは、複数のガス種センサからの情報に基づいて個々のガス種の流量を合計し、ガス流中のすべてのガス種の総流量で除算することによって、各ガス種をモル百分率として計算することを含み得る。
【0020】
監視は、外科手術空洞から来る主ガス流と一直線に位置付けられるセンサを使用することを含み得る。また、監視は、外科手術空洞から来る主ガス流と平行なガス流の流れからサンプリングするように位置付けられるセンサを使用することを含み得ることも意図されている。
【0021】
内視鏡外科手術処置の間に外科手術空洞内のガス組成物を制御するためのシステムは、患者の外科手術空洞からのガス流中の複数のガス種を監視するためのセンサを含む。プロセッサは、外科手術空洞からのガス流中で監視されるガス種がそれぞれ存在する、および/またはそれぞれの所望の範囲内にあるかどうかを判定するために、センサに動作可能に接続され、任意のガス種がそれぞれの所望の範囲外にある場合には、是正処置を取る。
【0022】
複数のガス種の中の一つ以上のガス種が、それぞれの所望の範囲外にある場合、外科手術空洞内のガス種の組成物を所望の組成物に対するそれぞれの所望の範囲内に至らせるように、気腹装置は、外科手術空洞内にガスを添加するためのプロセッサに動作可能に接続され得る。
【0023】
センサは、マスフローセンサ、非分散型赤外線センサ、金属酸化物センサ、触媒ビーズセンサ、熱伝導度センサ、比色センサ、光イオン化検出器、炎イオン化検出器、電気化学センサ、ならびに/または半導体センサおよび音響波センサのうちの少なくとも一つを含み得る。センサは、ガス種センサのアレイを含み得る。ガス種センサのアレイは、並列に配置され得る。また、ガス種センサのアレイは、直列に配置され得ることも意図されている。
【0024】
ポンプを気腹装置に動作可能に接続して、ガスの流れを外科手術空洞から移動させることができる。ポンプは、少なくとも一つのトロカールに動作可能に接続することができる。気腹装置は、ガス源に動作可能に接続することができる。
【0025】
複数のガス種を監視するためのセンサは、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)、酸素(O2)、亜酸化窒素(NO2)、水蒸気(H2O)、セボフルラン、メタン(CH4)、キセノン(Xe)、アルゴン(Ar)、デスフルラン、イソフルラン、および/または一酸化炭素(CO)の濃度に感応する一つ以上のガス種センサを含み得る。
【0026】
主題開示のこれらおよびその他の特徴は、以下の図面の簡単な説明と併せてなされた好ましい実施形態の詳細な説明から、主題開示に関連する当業者にはより容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
当業者は、必要以上の実験無しに、主題開示のガス循環システムを製造および使用する方法を容易に理解するであろうゆえに、好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0028】
【
図1】
図1は、外科手術空洞からのガスの流れにおけるガス種を監視するように構成される、主題開示の実施形態に従って構築された外科手術ガス再循環および濾過システムの概略図である。
【
図2】
図2は、一体型気腹装置による煙排出中の外科手術空洞からのガスの流れにおけるガス種の連続的な監視のために構成される、主題開示の別の実施形態に従って構築された外科手術ガス送達システムの概略図である。
【
図3】
図3は、ガス再循環および/または通気を伴う煙排出中の外科手術空洞からのガスの流れにおけるガス種の連続的な監視のために構成される、主題開示の別の実施形態に従って構築された外科手術ガス送達システムの概略図である。
【
図4】
図4は、通気および一体型気腹装置を備えた煙排出中の外科手術空洞からのガスの流れにおけるガス種の連続的な監視のために構成される、主題開示の別の実施形態に従って構築された外科手術ガス送達システムの概略図である。
【
図5】
図5は、空気式独立した送気および吸引回路を有する、煙排出中の外科手術空洞からのガスの流れにおけるガス種の連続的な監視のために構成される、主題開示の別の実施形態に従って構築された外科手術ガス送達システムの概略図である。
【
図6】
図6は、空気圧封止された弁のないトロカールを有する外科手術空洞からのガスの流れにおけるガス種を監視するように構成される、主題開示の実施形態に従って構築されたマルチモード外科手術ガス送達システムの概略図である。
【
図7】
図7Aは、外科手術空洞からのガス流の流路と一直線にガス種センサを備える、主題開示に従って構築されたガスセンサの例示的な実施形態の概略図である。
図7Bは、外科手術空洞からのガス流の主流路からサンプリングすることを意味する並列流路に配置されたガス種センサを備える、主題開示に従って構築されたガスセンサの例示的な実施形態の概略図である。
【
図8】
図8Aは、互いに並列に接続される複数のガス種センサを有し、外科手術空洞からのガス流の流路と直列に接続されるアレイを備える、主題開示に従って構築されたガスセンサの例示的な実施形態の概略図である。
図8Bは、互いに並列に接続される複数のガス種センサを有し、外科手術空洞からのガス流の主流路からサンプリングすることを意味する並列流路で接続されるアレイを備える、主題開示に従って構築されたガスセンサの例示的な実施形態の概略図である。
【
図9】
図9Aは、互いに直列に接続される複数のガス種センサを有し、外科手術空洞からのガス流の流路と直列に接続されるアレイを備える、主題開示に従って構築されたガスセンサの例示的な実施形態の概略図である。
図9Bは、外科手術空洞からのガス流の主流路からサンプリングすることを意味する並列流路に接続された各センサを有する直列に配置された複数のガス種センサを有するアレイを備える、主題開示に従って構築されたガスセンサの例示的な実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで、同様の参照番号が主題の開示の類似の構造特徴または態様を特定する図面を参照する。説明および例示の目的で、主題開示による外科手術ガス送達システムの例示的な実施形態の部分図は、
図1に示されているがこれに限定されず、全体的に参照符号10によって示される。本開示による外科手術ガス送達システムのその他の実施形態、またはその態様は、
図2~9Bに記載されるように、提供される。本明細書に記載のシステムおよび方法は、内視鏡外科手術処置の間に外科手術空洞内のガス組成物を制御するために使用され得る。
【0030】
ここで
図1を参照すると、内視鏡外科手術処置中に患者の外科手術空洞16からガスを連続的に除去するための、ガス排出システム10、より具体的には、ガス再循環および煙排出システムが図示されている。煙排出システム10は、患者の外科手術空洞16と連通する第一のトロカール18につながる入口流路22を含み、それを通して連続的なガスの流れが外科手術空洞16に送達される。第一のトロカール18は、ガス密封トロカールとは対照的に、機械シール20を有する標準的なトロカールであることが好ましい。システム10は、外科手術空洞16と連通する第二のトロカール26からつながる出口流路24をさらに含み、それを通して煤煙ガスの連続的な流れが外科手術空洞16から除去される。第二のトロカール26はまた、機械シール28を有する標準的なトロカールであることが好ましい。機械的に封止されたトロカールの例示的な文脈で本明細書に示され、記載されるが、当業者であれば、本明細書に開示されたシステムおよび方法は、本開示の範囲から逸脱することなく、空気圧封止されたトロカールおよび/または機械的に封止されたトロカールとともに使用され得ることを容易に理解するであろう。
【0031】
ポンプ30は、クリーンガスの連続的な流れを外科手術空洞16に送達するための入口流路22と、外科手術空洞16から煤煙ガスの連続的な流れを除去するための出口流路24と連通する。当業者であれば、連続的な流れが例として本明細書で使用され、また流れが本開示の範囲内において連続的なものである必要はないことを容易に理解するであろう。
【0032】
フィルタ32は、清掃またはそこを通過するガスを別様に調整するために、入口流路22および出口流路24のうちの少なくとも一つと動作可能に関連付けられる。センサ34は、ポンプ30の上流およびフィルタ32および第二のトロカール26の下流の出口流路24に含まれる。センサ34は、患者の外科手術空洞16からのガス流中の複数のガス種を監視するように構成される。プロセッサ36は、外科手術空洞16からのガス流中で監視されるガス種がそれぞれ存在するか、かつ/またはそれぞれの所望の範囲内にあるかを判定するために、センサ34に動作可能に接続される。
【0033】
センサ34は、マスフローセンサ、非分散型赤外線センサ、金属酸化物センサ、触媒ビーズセンサ、熱伝導度センサ、比色センサ、光イオン化検出器、炎イオン化検出器、電気化学センサ、半導体センサ、および音響波センサ、ならびに/または任意の他の好適なタイプのガスセンサのうちの少なくとも一つを含み得る。センサ34は、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)、酸素(O2)、亜酸化窒素(NO2)、水蒸気(H2O)、セボフルラン、メタン(CH4)、キセノン(Xe)、アルゴン(Ar)、デスフルラン、イソフルラン、一酸化炭素(CO)、および/または任意の他の好適なガス種の濃度に感応する一つ以上のガス種センサを含み得る。
【0034】
ここで
図2を参照すると、外科手術空洞内のガス組成物を制御するためのシステム100の別の例示的な実施形態は、一体型気腹装置を備えた煙排出装置として示されている。システム100は、他のアクティブな内部システム構成要素からつながれる三つの導管112、114、118と、導管118が導管112に供給し、それと結合することを可能にするバルブ295とを含む。導管112および114はそれぞれ、二つの異なる外科手術装置133、135につながる。
【0035】
バルブ295は、破線参照番号110の配置によって概略的に示されるように、制御ユニット110内に一体的に提供される。バルブ295には、以下に説明するように、異なる機能に対応する二つの動作位置、すなわち位置AおよびBが提供される。システム100の圧力感知機能がアクティブなとき、バルブ295は、位置「A」に配置され、それを通して送気/感知導管118を導管112に接続し、チューブセット155を通して外科手術装置133(例えば、トロカール)へ接続することを可能にする。バルブ295が位置Aに位置付けられ、外科手術装置133を接続するとき、送気サブユニット121は、腹圧を感知することが許容される。ポンプ111は、気腹装置および外科手術装置133に動作可能に接続され、外科手術空洞16からのガスの流れを移動する。バルブ295の位置Aでは、ポンプ111からの出力は供給導管114に入る。この構成は、ポンプ111が感知中に作動を継続することを可能にし、したがって、ポンプ111を停止および再開する場合に生じ得るいかなる電力スパイクも回避する。
【0036】
システム100が適切なモード(煙排出および送気の組み合わせなど)に設定されている場合、外科手術空洞圧が感知を介して判定されるとき、バルブ295は、再循環導管112を送気導管118に接続するために位置Aに切り替えられ、再循環導管112を通して送気ガスをシステム100に追加することが可能になる。同時に、送気サブユニット121は、送気モードのみに設定することができ、したがって、ガスをシステム100に加えるだけで、圧力を感知しない。位置Aにある間、バルブ295は、好ましい態様に従って、従来の外科手術用気腹装置で実施されるように、送気サブユニット121の機能を単独で(感知から二酸化炭素の供給に切り替えることを)可能にする。
【0037】
したがって、上述のように、
図2のシステム100では、煙排出および濾過は、バルブ295が位置Bにあるときにのみ行われ、これによりポンプ111を介して外科手術空洞16へのガスの再循環が許容される。こうした配置では、煙排出/濾過および圧力感知との間のトグルは、所望または必要に応じて、通常感知モード、または通常フィルタリングモードのいずれかとして構成され得る。腹圧の監視が通常優先されるため、通常フィルタリングモードよりも通常検知モードの方が好ましいと考えられる。
【0038】
特定の用途では、送気中に、外科手術空洞16の圧力をリアルタイムで監視することが有利である。リアルタイムでの圧力の監視は、外科手術空洞の圧力の変化をより良く検出し、それに対応するのに役立つ。さらに、新しいまたは再循環された送気ガスの一貫した流れと連動した連続圧力監視はまた、外科手術空洞からの改善された煙除去を容易にする。
【0039】
当業者であれば、システム100は、煙排出をリアルタイムに感知するために使用できることを容易に理解するであろう。そのさらなる詳細は、米国特許出願第15/945,007号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
上述したシステム10と同様に、システム100は、外科手術空洞16からのガス流中の複数のガス種を監視するために、ポンプ111のすぐ上流の流路114内にセンサ34を含む。送気ユニット121などの気腹装置は、複数のガス種の中の一つ以上のガス種がそれぞれの所望の範囲外にある場合に、外科手術空洞16内のガス種の組成物をそれぞれの所望の範囲内に至らせるように、供給源140からのガスを外科手術空洞16に添加するために、プロセッサ170に動作可能に接続される。ダンプバルブ115は、導管114と連結して含まれる。センサ117は、送気導管118または他の腹圧源と流体連通している。過圧状態が感知されると、圧力センサ117は、ダンプバルブ115に信号を送り、システム100から流体を放出する。
【0041】
ここで
図3を参照すると、外科手術空洞内のガス組成物を制御するためのシステム300の別の例示的な実施形態は、通気を伴うガス再循環/煙排出システムとして示されている。システム300は、トロカール320および350、シール322および352、ならびに
図1を参照して上述したものと類似したフィルタ390を含む。システム300の実施形態は、プログラムされた駆動圧で供給されるガス流量が、 外科手術空洞16内の外科手術空洞圧力に応じて変化するように構成することができ、プロセッサ370は、例えば、入口流路310と動作可能に関連付けられるフローセンサ382、および/または出口流路340と動作可能に関連付けられる前記フローセンサ384などのプロセッサ370と通信するフローセンサによって連続的に測定されたガス流量測定値に対応する外科手術空洞圧力を判定するように構成される。このタイプの煙排出システムの典型的な駆動圧は、約60mmHgである。
【0042】
システム300の実施形態は、特定のガス流量を維持するために必要な駆動圧が、外科手術空洞16内の外科手術空洞圧力に応じて変化するように構成することができ、プロセッサ370は、例えば、入口流路310と動作可能に関連付けられる圧力センサ386、および/または出口流路340と動作可能に関連付けられる圧力センサ388などのプロセッサ370と通信する圧力センサによって連続的に測定される測定された駆動圧に対応する外科手術空洞圧力を判定するように構成される。このタイプの煙排出システムの一般的なガス流量は、約5 L/分である。
【0043】
プロセッサ370は、クリーンガスが、ポンプ360によって外科手術空洞16から煤煙ガスが除去されるガス流量に関連するガス流量でポンプ360によって外科手術空洞16に送達されるように、ポンプ360を制御する。たとえば、外科手術空洞16内の圧不足状態または過圧状態の場合に、プロセッサ370は、クリーンガスが、ポンプ360によって外科手術空洞16から煤煙ガスが除去されるガス流量に等しいガス流量で、または、ポンプ360によって外科手術空洞16から煤煙ガスが除去されるガス流量よりも大きいか、またはそれ未満のガス流量で、ポンプ360によって外科手術空洞16に送達されるように、ポンプ360を制御する。この点に関して、本システム全体にわたるガスの流れは本質的に連続的であるが、システムの極度な圧不足または過圧状態を防止するために、送気もしくはガス送達流量および/または排出もしくはガス除去流量が一時的に0L/分に低下する場合があることを理解されたい。また、システム300は、空洞圧力を監視し、新鮮な二酸化炭素で送気する外部気腹装置と通信するように構成され得ることも意図されている。
【0044】
随意に、バルブ392は、プロセッサ370によって制御されて雰囲気からより多くのガスを吸い込むポンプ360の入口側(340)に配置されてもよく、かつ/または、バルブ394は、流量をより良く調整するために、ガス流の一部を雰囲気に排出するようにプロセッサ370によって制御されるポンプ360の出口側(310)に配置されてもよい。
【0045】
上述したシステム10と同様に、システム300は、バルブ392およびポンプ360のすぐ上流およびフローセンサ384のすぐ下流の流路340内に、外科手術空洞16からのガス流中の複数のガス種を監視するセンサ34を含む。センサ34は、外科手術空洞16内のガス組成物を制御するためにプロセッサ370に動作可能に接続される。システム300は、センサ34が潜在的に有害なガスの存在および/または濃度を読み取る場合、バルブ392、394を使用して不要なガス種を排出することができる。例えば、ガスセンサ34は10%のメタンを読み取り、プロセッサは、外科手術空洞からメタンを排出するためにバルブ392を開くことができる。この例では、システム300は、完全に別個の気腹装置または何らかの通信を介して接続される、外部気腹装置のいずれかと併用される必要がある。この例では、
図3に示す煙排出装置は、メタンを検出し、バルブ392を開いてメタンを排出し、気腹装置が感知し、補間するために二酸化炭素中を流し入れる圧不足を作り出す。これは、ガス種が存在する、かつ/または所望の範囲外にあることに応じて、是正処置を取る一つの例である。
【0046】
ここで
図4を参照すると、全体的に参照番号500で示される内視鏡外科手術処置中に患者の外科手術空洞16からガスを連続的に除去するための通気および一体型気腹装置を備えた煙排出システムが図示されている。煙排出システム500は、トロカール550からつながる真空ポンプ560の入口流路540に関連付けられた流量センサ584および/または圧力センサ588を含み、トロカール520ならびにフィルタ590につながる送気経路510に関連付けられた流量センサ582および/または圧力センサ586を含む。この点に関して、このシステム500全体にわたるガスの流れは本質的に連続的である一方で、システム500の極度な圧不足または過圧状態を防止するために、送気もしくはガス送達流量および/または排出もしくはガス除去流量が一時的に0L/分に低下する場合があることを理解されたい。
【0047】
さらに、煙排出システム500では、ポンプ560の出口側は、送気ガス源558に接続された送気ユニット556の下流の送気流路510と連通する。さらに、バルブ592は、ポンプ560の入口側と関連付けられ、雰囲気からガスを吸い込むようにプロセッサ570によって制御され、かつ/または排気バルブ594は、ポンプ560の出口側に位置し、
図3に関して上述したものと同様に、是正処置を取る例としてガスを雰囲気に排出するようにプロセッサ570によって制御される。この配管配置の結果として、煙排出システム500の出口流路または圧力回路510は、必要に応じて、新鮮な送気ガスの流入流で拡張され得る。
【0048】
上述のシステム10と同様に、システム500は、流路540内に、バルブ592およびポンプ560のすぐ上流、および流れセンサ584および588のすぐ下流に、外科手術空洞16からのガス流中の複数のガス種を監視するためのセンサ34を含む。センサ34は、外科手術空洞16内のガス組成物を制御するためにプロセッサ570に動作可能に接続される。
【0049】
図5を参照すると、煙排出装置および空気圧に依存しない送気および吸引回路を有するシステム400が図示されている。煙排出システム400は、送気ガスと検知空洞圧力とを交互に切り替える送気/感知ラインを利用することができるか、または米国特許出願第15/812,649号または第15/945,007号に開示されるリアルタイムの圧力監視を利用することができ、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0050】
煙排出システム400は、外科手術空洞16と連通する第一のトロカール420につながる入口流路410を含み、それを通してクリーンガスの連続的な流れが外科手術空洞16に送達される。第一のトロカール420は、機械シール422を有する標準的なトロカールであることが好ましい。システム400は、外科手術空洞16と連通する第二のトロカール450からつながる出口流路440をさらに含み、それを通して煤煙ガスの連続的な流れが外科手術空洞16から排出される。第二のトロカール450はまた、機械シール452を有する標準的なトロカールであることが好ましい。送気ユニット456は、クリーンガスの連続的な流れを外科手術空洞16に送達するために、入口流路410と連通する。送気ユニット456は、ガス源458に動作可能に接続され、これは独立した貯蔵タンク458または主分配ラインからのハウスガスであり得る。
【0051】
真空ポンプ460は、外科手術空洞16から煤煙ガスの連続的な流れを除去するために、出口流路440と連通する。真空ポンプ460は、排気バルブ465に動作可能に接続され、この排気バルブは、ろ過されたガスを雰囲気に放出することが好ましい。プロセッサ470は、真空ポンプ460によって煤煙ガスが外科手術空洞16から除去されるガス流量に関連するガス流量で、クリーンガスが送気ユニット456によって外科手術空洞16に送達されるように、送気ユニット456およびポンプ460(ならびにバルブ465)の両方を制御する。
【0052】
たとえば、外科手術空洞16内の圧不足状態または過圧状態の場合に、プロセッサ470は、クリーンガスが、ポンプ460によって煤煙ガスが外科手術空洞16から除去されるガス流量に等しいガス流量で、またはポンプ460によって外科手術空洞16から煤煙ガスが除去されるガス流量よりも大きいか、またはそれ未満のガス流量で、送気ユニット456によって外科手術空洞16に送達されるように、送気ユニット456と真空ポンプ460の両方を制御する。この点に関して、本システム全体にわたるガスの流れは本質的に連続的であるが、システムの極度な圧不足または過圧状態を防止するために、送気もしくはガス送達流量および/または排出もしくはガス除去流量が一時的に0L/分に低下する場合があることを理解されたい。好ましくは、フィルタ490は、清掃のために、入口流路410および出口流路440のうちの少なくとも一つと動作可能に関連付けられるか、そうでなければ、そこを通過するガスを調整する。
【0053】
システム400は、プログラムされた駆動圧で供給されるガス流量が、外科手術空洞16内の外科手術空洞圧力に応じて変化するように構成され得る。プロセッサ470は、例えば、入口流路410と動作可能に関連付けられたフローセンサ482および/または出口流路440と動作可能に関連付けられたフローセンサ484など、プロセッサ470と通信するフローセンサによって連続的に測定されるガス流量測定値に対応する外科手術空洞圧力を判定するように構成される。このタイプの煙排出システムの典型的な駆動圧は、約60mmHgである。
【0054】
システム400は、特定のガス流量を維持するために必要な駆動圧が、外科手術空洞16内の外科手術空洞圧力に応じて変化するように構成することができ、プロセッサ470が、例えば、入口流路410と動作可能に関連付けられる圧力センサ486、および/または出口流路440と動作可能に関連付けられる圧力センサ488などのプロセッサ470と通信するフローセンサによって連続的に測定される測定された駆動圧に対応する外科手術空洞圧力を判定するように構成される。このタイプの煙排出システムの一般的なガス流量は、約5 L/分である。当業者であれば、システム200が煙排出に使用され得ることを容易に理解するであろう。そのさらなる詳細は、米国特許出願第15/945,007号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
システム400は、バルブ465およびポンプ460のすぐ上流、ならびに外科手術空洞16からのガス流中の複数のガス種を監視するためのフローセンサ484および488のすぐ下流の流路440内にセンサ34を含む。センサ34は、外科手術空洞16内のガス組成物を制御するためにプロセッサ470に動作可能に接続される。システム400は、是正処置を取る例として、望ましい範囲から読み出されるガス組成物と戦うために、排気バルブ/送気速度を制御できる。例えば、この実施形態では、センサ300が、望ましくないガス種および/または所望の範囲外にあるガス種の存在を検出する場合、プロセッサ470は、排出ポンプ460およびバルブ465に、より多くの排出を行わせ、気腹装置に、より多くの通気をさせて、排出ガスを補填させ得る。
【0056】
図6に示すように、ガス送達システム100は、空気圧封止された弁なしトロカールを実行するように構成されたマルチモード送気システムとして提供される。システム100は、患者の外科手術空洞16と連通する三つの外科手術アクセス装置またはトロカール(131、133、135)と機能するように適合される。ガス送達システム100は、例えば、同一出願人による米国特許第9,375,539号に開示されているように、二つの外科手術アクセス装置またはトロカールとともに使用されてもよいことが想定される。あるいは、システムは、例えば、同一出願人による米国特許第9,295,490号に開示されているように、単一の外科手術アクセス装置と共に使用されてもよい。システム100は、上述した制御ユニット210に類似した制御ユニット110を含み、
図6の制御ユニット110内の同様の番号の項目は、圧力調節器141によって圧力源140に接続される、
図2の制御ユニット210に関して上述したものと同じである。
【0057】
また、チューブセット155が提供され、チューブセット155は、一方の端で供給導管114、戻り導管112および送気導管118に、また反対側の端で、外科手術空洞16と流体連通している外科手術アクセス装置131、133、135に接続するように適合され、構成される。チューブセット155の構成は、所望の実装に応じて変化し得る。システム100の場合、チューブセット155は、入力181および出力183ポートまたはインターフェースへの単一、マルチルーメン接続、および個別の外科手術装置131、133、135への別個の接続を有することが好ましい。チューブセット155は、制御ユニット110から所定の距離だけポート181、183への接続部で開始する、複合マルチルーメンチューブを有し得、分岐の中間点(例えば、
図6のチューブセット155の概略ボックス内)で、複数の別個のチューブを生成することが想定される。システム100の場合、三つの別個のチューブは、送気能力を有する外科手術アクセス装置、または一つ以上のベレス針などの他の器具であり得る外科手術装置131、133、135のそれぞれにつながる。したがって、外科手術装置131、133、135は、供給導管114、戻り導管112、および送気導管118のうちの一つに個別に接続され、したがって、その機能をそれぞれ促進する。別個に示されていないが、バルブ295は、ポート181および183に類似したインターフェースを含み得るが、チューブセット155は導管118を外科手術装置131に接続することを当業者は容易に理解するであろう。
【0058】
上述のように、一つの好ましい態様では、チューブセット155の別個の遠位チューブ部分は、従来の外科手術装置上のルアーロックフィッティングなどの従来のフィッティングによって接続される。チューブセット155の正確な構成は、所望の構成に応じて変化し得る。マルチルーメンチューブセット用のフィッティングの例は、同一出願人による米国特許第9,526,886号に記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0059】
使い捨てフィルタ116はまた、チューブセット155と関連付けられ、例えば、各ポート181、183、およびバルブ295のポートまたはインターフェースで、それから分離されるか、またはそれらと一体化される。専用の空気圧封止された外科手術アクセス装置と併用するための送気、煙排出および再循環機能を有するマルチモードガス送達システム100と併用するのに適したフィルタは、米国特許第9,067,030号および第9,526,849号に開示されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0060】
システム100は、外科手術空洞16からのガス流中の複数のガス種を監視するために、ポンプ111のすぐ上流にある供給導管114の流路内の
図1に関して上述したものに類似したセンサ34を含む。センサ34は、
図2を参照して上述したプロセッサ170とよく似た外科手術空洞16内のガス組成物を制御するためにプロセッサ170に動作可能に接続される。これは、例えば、ガス組成物の任意の望ましくない変化を修正できるように、外科手術処置の間に患者の体腔内のガス組成物を監視することを可能にする。
【0061】
内視鏡外科手術処置の間に外科手術空洞(例えば、
図1~6の外科手術空洞16)内のガス組成物を制御するための方法は、例えば、上述の流路24、導管114、流路340、流路540、および流路440のいずれかにおけるガス流を監視するなど、患者の外科手術空洞からのガス流中の複数のガス種を監視することを含む。方法は、例えば、外科手術空洞からのガス流と流体連通する上述のセンサ34を使用して、外科手術空洞からのガス流中の複数のガス種を測定することと、外科手術空洞からのガス流中で測定されたガス種が各々存在するか、かつ/または、それぞれの所望の範囲内にあるかどうかを判定することと、を含む。方法は、ガス種のいずれかがそれぞれの所望の範囲外にある場合、是正処置を取ることを含む。
【0062】
是正処置を取ることは、複数のガス種の中の一つ以上のガス種がそれぞれの所望の範囲外にある場合、例えば、外科手術空洞内のガス種の組成物をそれぞれの所望の範囲内に至らせるように、ガスを、例えば、上述のように源140、558、または458から外科手術空洞に添加することを含み得る。これにより、外科手術処置中に複数のガス種をそれらの所望の範囲内に維持することが可能になる。是正処置を取ることは、非理想的なガス組成物をユーザに警告することを含み得る。是正処置を取ることには、外部または内部の気腹装置に、外科手術空洞を二酸化炭素でフラッシュするよう指示することが含まれ得る。是正処置を取ることは、吸引または煙排出機構を介して空洞から非理想的なガスを取り除くことを含み得る。是正処置を取ることは、電気焼灼器または麻酔装置などの装置を無効にして、患者への危害を防止することを含み得る。
【0063】
外科手術空洞からのガス流中の複数のガス種に対する監視は、ガスの流れを連続的に監視することを伴い得るが、外科手術空洞からのガス流中の複数のガス種に対する監視は、定期的にガスの流れをサンプリングすることを伴い得ることも意図されている。例えば、システムは、時間0でガス流全体の測定を行い、30秒経過してから、別の測定を行うことができる。別の例では、システムは、主ガス流路からダイバートされた側流の一定の(またはほぼ一定の)測定を行い、側流から測定することができる。さらに、定期的または連続的監視の任意の組み合わせを、インラインまたはサイドストリームサンプリングの任意の組み合わせとともに使用することができる。
【0064】
外科手術空洞からのガス流は、外科手術空洞からのガスの排出、外科手術空洞からのガスの再循環、および/または外科手術空洞からのガスの断続的な漏れに起因する場合がある。外科手術空洞内にガスを添加することは、例えば、上述の送気サブユニット121、556、または456を使用して、気腹装置から外科手術空洞内にガスの流れを送達することを含み得る。
【0065】
この方法には、ガス種の組成物が、指定レベルよりも低い二酸化炭素(CO2)の濃度を含むかどうかを判定することと、二酸化炭素(CO2)の濃度が指定レベルよりも低い場合、二酸化炭素(CO2)を外科手術空洞に添加して、外科手術空洞内の二酸化炭素(CO2)の濃度を指定レベルより高くすることと、を含み得る。しかしながら、当業者であれば、複数のガス種の監視、および測定されたガス種が範囲内にあるかどうかの判定が、任意の他の好適なガス種が存在するかどうか、かつどの濃度であるか監視および判定することを含み得ることを容易に理解するであろう。例えば、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、窒素(N2)、酸素(O2)、亜酸化窒素(NO2)、水蒸気(H2O)、セボフルラン、メタン(CH4)、キセノン(Xe)、アルゴン(Ar)、デスフルラン、イソフルラン、揮発性有機化合物(VOC)および/または一酸化炭素(CO)のガス流を監視することができる。例えば、酸素および一酸化炭素またはメタンなどの可燃性ガスが所望の範囲外である場合、システム10は、外科手術担当者に警告し、ガス混合物を燃焼させる可能性のある電気焼灼装置などの外科手術器具を導入する前にガス組成物を修正することができる。別の例として、亜酸化窒素、セボフルラン、デスフルラン、またはイソフルランなどの麻酔剤の量が所望の範囲から外れている場合、システム10は、麻酔を修正する必要がある可能性があることを外科手術担当者に警告することができる。別の例では、部屋の空気が、漏れから、または無菌チューブセットもしくは滅菌包装に空気圧封止され、その後、身体空洞に挿入されるか、または取り付けられる、他の医療製品中に閉じ込められたガスから外科手術空洞に入る場合、窒素および/または酸素レベルは、例えば、塞栓症を回避するために、外科手術空洞内の窒素および酸素をフラッシュするために加圧された二酸化炭素を供給することによって、修正され得る所望の範囲外であり得る。
【0066】
ここで
図7Aを参照すると、センサ34は、
図2に関して上述したように、導管114と一直線に並んでプロセッサ12に接続された単一のマルチガスセンサとして示されている。また、センサ34は、
図7Bに示す通り、導管114と並列に接続されるマルチガスセンサであってもよく、センサ34は、バイパス導管119を通って導管114を通るガス流と流体連通して接続されることが意図されている。簡潔に述べると、センサ34は、上述のように、外科手術空洞からの出口の側面上のシステムの任意の場所、例えば、
図2のポンプ111の上流の導管114の任意の場所に含まれ得る。
【0067】
ここで
図8Aを参照すると、センサ34は、例えば、各ガス種センサ35が、アレイ内の他のガス種センサ35とは異なる一つ以上の異なるガス種に対して感応する、ガス種センサ35のアレイを含み得ることも意図されている。ガス種センサ35の各々は、プロセッサ12に動作可能に接続され、導管114を通るガス流中のそれぞれのガス種の量を示す入力を提供する。
図8Aに示すように、ガス種センサ35のアレイは、全体として導管114と直列であり、ガス種センサ35の各々は、他のものと並列である。
図8Bは、アレイ全体が導管114と並列であり、それぞれのセンサ35が他のものと並列である、ガス種センサ35の別の配置を示す。
【0068】
一部のガスセンサは、特定のガス種の濃度の割合を測定する。例えば、ガス組成物中に20%の二酸化炭素がある場合、組み合わせセンサは、それを通過するガスの流れを読み取り、例えば、モルベースで、ガス組成物が20%の二酸化炭素、70%の酸素、および10%の水蒸気、であると判断することができる。ガスセンサは、異なるガス種の存在を測定するために、質量流量または体積流量を測定してもよい。システム/方法は、複数の質量流量または体積流量の読み取り値からモル百分率を計算するためにルックアップテーブルの使用を含み得る。
【0069】
別の態様では、特に単一ガスセンサのアレイでは、各単一センサは、所与のガス種に対する読み取り値を提供することができる。例えば、センサAは二酸化炭素2リットル/分を読み取り、センサBは酸素7リットル/分を読み取り、センサCは水蒸気1 L/分を読み取り、すべて主流路を通って流れるガスの同じ組成物に対する。このタイプの構成では、プロセッサは、例えば、モルベースで、割合を計算するために、異なるセンサからの情報を集計することができる。これは、すべてのセンサによって測定されるすべての質量または体積流量の全体を合計することによって行うことができるか、またはインライン流量計を包含して全体的な質量または体積流量を判定することによって行うことができる。プロセッサは、システムに記憶または事前プログラムされたルックアップテーブルまたはその他の情報を介してモル百分率を計算できる。この情報には、アレイ内のセンサのモル質量または較正データが含まれ得る。
【0070】
図7B、8B、および9Bなどの実施形態では、主流路からサンプリングするセンサのアレイがある。この側部サンプル経路は、主流路よりも小さい流量を有し、その流量は、例えば、モルベースで、アレイ内の個々のガスセンサの読み取り値と共に、ガス組成物割合を計算するために測定され、使用され得る。プロセッサは、全体的なガス組成物をより正確に計算するために、流路の空気圧が側流内のガス組成物にどのように影響するかに関する計算を含み得る。
【0071】
ここで
図9Aを参照すると、多種センサ34のアレイは、個々のガス種センサ35と、互いと直接直列に、かつ導管114と直列に配置され得ることも意図されている。
図9Bに示す別の配置では、多種センサ34のアレイは、導管114を通る流れと平行に、それぞれの個々のガス種センサ35と共に、そのそれぞれのバイパスフローライン37に配置され得、ガス種センサ35(それぞれ、そのそれぞれのバイパスフローライン37と共に)は、導管114に沿って直列に離間される。
図8A、8B、9A、および9Bはそれぞれ、三つのガス種センサ35を示しており、当業者であれば、任意の好適な数のガス種センサ35が、本開示の範囲から逸脱することなく含まれ得ること、および各ガス種センサ35が、単一のガス種又は複数のガス種に対して感応し得ることを容易に理解するであろう。例えば、マルチガス種センサは、単一のガス種センサとネットワーク化され得る。
図1~6は、センサ34を利用することができるシステムの様々な例を示しており、それぞれは、
図7A~9Bに示すセンサ34の任意の構成と共に使用することができる。
【0072】
上述し、図面に示す本開示の方法およびシステムは、複数の異なるガス種を監視する能力を含む、優れた特性を有する外科手術空洞内のガス組成物の制御を提供する。主題開示の装置および方法が好ましい実施形態を参照して示され、記述されてきたが、当業者であれば、変更および/または修正が、主題開示の範囲から逸脱することなくなされ得ることを容易に理解するであろう。