(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】マルチモーダルポリエチレンポリマーおよび前記ポリマーの調製方法
(51)【国際特許分類】
C08F 210/02 20060101AFI20231006BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20231006BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
C08F210/02
C08L23/04
C08L23/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021000126
(22)【出願日】2021-01-04
(62)【分割の表示】P 2017251391の分割
【原出願日】2013-01-31
【審査請求日】2021-02-03
(32)【優先日】2012-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514193177
【氏名又は名称】ノルナー・アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】イレーネ・ヘラント
(72)【発明者】
【氏名】トーレ・ドレンク
(72)【発明者】
【氏名】アリルト・フォレシュタット
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-510429(JP,A)
【文献】特開昭61-014207(JP,A)
【文献】特開昭57-031945(JP,A)
【文献】特開昭59-227913(JP,A)
【文献】特開昭59-196346(JP,A)
【文献】特表2008-520780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00、301/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)低分子量エチレンホモポリマーを20~70質量%、
(ii)第1の高分子量エチレンコポリマーを20~70質量%、および
(iii)第2の高分子量エチレンコポリマーを0.5~9.5質量%、
を含み、
前記第1の高分子量エチレンコポリマーは、
プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよびそれらの混合物から選択される1種又は複数種のα-オレフィンコモノマーを含み、かつ、前記第1の高分子量エチレンコポリマーは、200,000~700,000g/molの重量平均分子量
及び0.3~2.5質量%のコモノマー含有量を有し、
前記第2の高分子量エチレンコポリマーは、
プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよびそれらの混合物から選択される1種又は複数種のα-オレフィンコモノマーを含み、かつ、前記第2の高分子量エチレンコポリマーは、200,000~2,000,000g/molの重量平均分子量
および1~20質量%のコモノマー含有量を有し、
前記第2の高分子量エチレンコポリマーが、前記第1の高分子量エチレンコポリマーよりも大きい重量平均分子量を有
し、かつ、前記第2の高分子量エチレンコポリマーが、前記第1の高分子量エチレンコポリマーよりも高い質量%のコモノマー含有量を有する、ポリエチレン。
【請求項2】
マルチモーダル分子量分布を有する、請求項1に記載のポリエチレン。
【請求項3】
前記第2の高分子量エチレンコポリマーが、1.2~8.5質量%の量又は1.5~6質量%の量で存在している、請求項1または2に記載のポリエチレン。
【請求項4】
前記第1の高分子量エチレンコポリマー
が、エチレン1-ブテンコポリマーであり、かつ、前記第2の高分子量エチレンコポリマーが、エチレン1-ブテンコポリマーである、請求項1から
3のいずれか一項に記載のポリエチレン。
【請求項5】
グラジエント液体としてイソプロパノール-水を用い、ISO1183:1987(E)の方法Dに従って測定して、945~962kg/m
3の密度、および/または、ISO1133に従って5.0kgの負荷で190℃にて測定して、0.15~0.6g/10分のMFR
5を有する、請求項1から
4のいずれか一項に記載のポリエチレン。
【請求項6】
エチレンおよび必要に応じ
プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよびそれらの混合物から選択される少なくとも1種の他のα-オレフィンを重合して、前記ポリエチレンを生成させる工程を含み、前記重合が、少なくとも3工程で実施される、請求項1から
5のいずれか一項に記載のポリエチレンの調製方法。
【請求項7】
連続する工程(a)~(c):
(a)エチレンを、第1の反応器中で重合して、低分子量エチレンホモポリマーを生成する工程、
(b)エチレンおよび
プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよびそれらの混合物から選択されるα-オレフィンコモノマーを、第2の反応器中で重合して、第1の高分子量エチレンコポリマーを生成する工程、ならびに
(c)エチレンおよび
プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよびそれらの混合物から選択されるα-オレフィンコモノマーを、第3の反応器中で重合して、第2の高分子量エチレンコポリマーを生成する工程
を含むか、あるいは、
連続する工程(a)~(c):
(a)エチレンを、第1の反応器中で重合して、低分子量エチレンホモポリマーを生成する工程、
(b)エチレンおよび
プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよびそれらの混合物から選択されるα-オレフィンコモノマーを、第2の反応器中で重合して、第2の高分子量エチレンコポリマーを生成する工程、ならびに
(c)エチレンおよび
プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよびそれらの混合物から選択されるα-オレフィンコモノマーを、第3の反応器中で重合して、第1の高分子量エチレンコポリマーを生成する工程
を含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から
5のいずれか一項に記載のポリエチレンを含む、組成物。
【請求項9】
- 80℃の温度で、8.5MPaの負荷により、ISO16770に従って測定すると、20時間を超える破壊までのFNCT時間を有する;かつ/あるいは、
- +23℃において、圧縮成形試験片について、ISO179-1/1eAに従って測定すると、12kJ/m
2より大きいシャルピー衝撃を有する;かつ/あるいは、
- デジタルショア測定器に従って測定すると、ショア硬度が少なくとも50を有する、請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のポリエチレンまたは請求項
8もしくは
9に記載の組成物を含む、物品。
【請求項11】
パイプである、請求項
10に記載の物品。
【請求項12】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のポリエチレンまたは請求項
8もしくは
9に記載の組成物を成形する工程を含む、請求項
10または
11に記載の物品の調製方法。
【請求項13】
パイプの製造における、請求項1~
5のいずれか一項に記載のポリエチレンまたは請求項
8もしくは
9に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)低分子量エチレンポリマーを20~70質量%、(ii)第1の高分子量エチレンコポリマーを20~70質量%、および(iii)第2の高分子量エチレンコポリマーを0.5~9.5質量%含む、マルチモーダル分子量分布を有するポリエチレンに関する。本発明はまた、該ポリエチレンの調製方法、該ポリエチレンを含む組成物、および該ポリエチレンまたはその組成物を使用する物品の調製方法にも関する。該物品それ自体、特にパイプが、本発明のさらなる態様である。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン(PE)は、多くの場合、加圧下において水およびガスを分配するために使用されるパイプを製造するために主として一般に使用されている材料である。主要な関心分野は、HDPE製パイプ用のポリエチレンである。これらのパイプには、配位触媒を使用して中程度の圧力において重合されたポリエチレンが使用される。
【0003】
HDPE製パイプの製造に使用されるポリエチレンは、ある種の必要条件を満たさなければならない。それらは、高い内部圧で使用され、外部からの機械的な力にさらされることが多い。全体の圧力は、通常、該ポリマーの降伏応力をはるかに下回るが、ポリマーが化学的に分解する前に、機械的な不具合がほぼ必ず起こる。これは、ポリエチレン製パイプにおけるマイクロメーターサイズの局所的な不均質性の存在により、欠陥周辺にある、降伏応力を超える強力な局所応力分布を引き起こすことによるものと一般に認識されている。こうした応力の集中により、クレーズフィブリルの破裂によるクレーズの形成および成長が誘発される。したがって、この明らかに脆い不具合様式、いわゆる低速亀裂成長(SCG)が観察され、ポリエチレン製パイプの寿命が制限される。
【0004】
ポリエチレン製パイプは、その可撓性、変形性および長尺可用性に起因して、非従来的なパイプの敷設に特に適している。近代的なリライニング技法および迅速なパイプ敷設作業が広範に使用されていることにより、特に、これらの技法に特有でかつSCGを促進するスクラッチ傷、ノッチ、ニックおよび衝撃の影響に関して、材料の高い必要条件および性能の保証が要求されている。近代的な無発掘敷設法またはトレンチレス敷設法によりパイプを設置する場合(例えば、パイプバースティング法、誘導式水平ボーリング法)、パイプは地面の中を水平に引きずられる。無発掘法は、地表、例えば道路および他の敷設を妨害する必要がないこと、および敷設コストがかなり削減されるという点で、かなりの利点があることが多い一方、突き出ている石、岩などが縦方向においてパイプの外側表面にスクラッチ傷を付ける傾向が高いという欠点をもたらす。さらに、圧力がパイプ内部にかかると、こうした縦のスクラッチ傷の底部において、非常に高い局所的な接線応力が存在することになる。したがって、不運なことに、こうしたスクラッチ傷により、普通なら始まることさえないと思われる亀裂の伝播が壁に沿って始まることが多いので、スクラッチ傷は非常に有害である。さらに、HDPE製パイプは、時として、例えば採掘作業における研磨スラリーを導くために使用される。こうした使用にとって、パイプが高い摩耗抵抗性を有することは重要である。
【0005】
亀裂の開始と開始した任意の亀裂のSCGによる伝播の両方に対して優れた抵抗性を有するポリエチレンは、一層良好で長期の耐久性があるパイプを可能にし、かつパイプ製造において使用されるポリエチレン体積をより一層高めることを可能にすることになる。摩耗抵抗性を有するパイプは、特に魅力的である。
【0006】
使用の際に内部圧を有するHDPE製パイプに関する別の重要な潜在的な不具合様式は、急速亀裂伝播(RCP)である。高いRCPを伴うパイプ内部のガス圧の緩和なしに、縦の亀裂が開始する場合、この亀裂がさらに開いて非常に迅速かつ長距離にわたりパイプを割いて開口する傾向を有することになる。しかし、低いRCP特性を有するパイプでは、パイプの割れは、短い距離の後に止まることになる。したがって、RCPに対する優れた抵抗性を有するポリエチレンは、パイプ製造に特に望ましい。
【0007】
ポリエチレンが加圧パイプ用途のために有するべき重要な特性がいくつか存在する;
1)低速亀裂成長(SCG)抵抗性
2)迅速亀裂伝播(RCP)抵抗性
3)パイプ押出成形を可能にする加工性(例えば、MFR5によって示される)
4)スクラッチ傷/くぼみに対する抵抗性(例えば、硬さ抵抗性、スクラッチ傷抵抗性、および摩耗抵抗性により示される)
5)パイプのバースティング後に伴う延性膨張に対する抵抗性。
【0008】
SCG抵抗性およびRCP抵抗性とは、存在している欠陥から亀裂が伝播する見込みがないことを意味する一方、スクラッチ傷およびくぼみに対する抵抗性とは、亀裂を誘発し得る欠陥が起こる見込みがないことを意味する。
【0009】
文献は、SCGを改善すると、RCPの悪化が通常、同時に引き起こされると明記している。これは、コモノマーレベルの増加(通常、密度の低下に相当する)が、SCGにとって有益である一方、コモノマーレベルの低下は、RCPおよび延性膨張にとって有益であると一般に言われているからである。さらに、MFR5が低下した場合、FNCTが向上することは知られている。しかし、ポリマーをパイプに押出成形するために、MFR5は、加工性に関して通常使用される範囲に維持されなければならないので、上記のことは許容されない。亀裂が発達する傾向を高める欠陥が最小化されるよう、スクラッチ傷に対する摩耗抵抗性も最大限維持しなければならない。同じ理由のために、ポリマーの硬度は最大限にすべきである。ポリエチレンの硬度は一般に、結晶化度の向上および層厚の向上に伴って向上する。一方、SCGに対する抵抗性は、結晶化度の低下に伴って向上することが知られている。
【0010】
これらの相反する要因は、必要なバランス特性(例えば、RCP、硬度、摩耗抵抗性および加工性に悪影響を及ぼすことのないSCGの改善)を有するパイプを製造するためのポリエチレンを開発することを、非常に困難なものにしている。
【0011】
SCGに対するHDPEの抵抗性は、その環境応力亀裂抵抗性(ESCR)の測定により通常求められる。RCPに対するHDPEの抵抗性は、その衝撃抵抗性の測定により通常求められる。
【0012】
HDPE製パイプにおいて現在使用されているポリマーは、主に2つのタイプがある:
1)単一反応器中で作製された、Cr(フィリップス)触媒による、モノモーダルCr HDPE。この技術は、加圧パイプ用途の要求に関する特性プロファイルには、比較的不良である。
2)2つの連続操作反応器により作製されるバイモーダルチーグラーHDPE;反応器の1つは、低分子量ホモポリマーを作製し、また反応器の1つはコモノマーを含有する高分子量ポリマーを作製する。この技術は、モノモーダルCr HDPEと比べて、より良好な特性プロファイルを与える。
【0013】
従来技術もまた、パイプ生産用の新規ポリエチレンをいくつか提案している。US2009/0105422は、例えば、マルチモーダル分子質量分布を有しており、かつ低分子量エチレンホモポリマーを45~55質量%、エチレンと4~8個の炭素を有する別のオレフィンとを含む高分子量コポリマーを20~40質量%、および超高分子量エチレンコポリマーを15~30質量%含む、ポリエチレン成形用組成物を開示している。このポリマーは、各工程に関して、連続的な低水素/エチレン濃度を用いる重合工程で作製されている。このポリエチレンは、環境応力亀裂抵抗性、機械的強度および加工挙動の改善組合せを有すると言われている。US'422の実施例には、低分子量エチレンホモポリマーを50質量%、高分子量エチレン/1-ブテンコポリマーを32質量%、および超高分子量エチレン/1-ブテンコポリマーを18質量%含むトリモーダルポリエチレンは、比較例のバイモーダルポリエチレンと比べると、ESCRが改善されていることが示されている。実施例にはまた、トリモーダルポリエチレンの機械的性能(具体的には、耐ノッチ衝撃性および引張りクリープ)は、バイモーダルの比較実施例のそれと広く類似していることも示されている。スクラッチ傷発生に対する抵抗性は言及されていない。
【0014】
US6,713,561は、類似の方法で作製された類似のポリエチレン成形用組成物を開示しており、この組成物は、応力クラッキング抵抗性に対する剛性のより良好な比、およびその溶融物の高膨潤率をもたらすことを教示している。後者は、ブロー成形による瓶および小型容器などの物品の調製において特に有利である。US'561の実施例は、対応するバイモーダル組成物と比較して、ポリエチレン成形用組成物は、応力亀裂抵抗性および膨潤率が改善され、曲げクリープ抵抗性が同等であることを示している。
【0015】
US7,829,646は、Cr/アルミノホスフェート触媒による一重合工程においてHDPE製パイプの材料を作製することにより、一段階で従来的なCr触媒を使用する場合、および二段階でチーグラー触媒を使用する場合よりも、有利な摩耗抵抗性がもたらされることを開示している。
【0016】
しかし、RCPに対して悪影響を及ぼすことがなく、かつ同時に、硬度および/または摩耗抵抗性および/またはスクラッチ傷発生抵抗性が維持されているかまたは改善されている、バイモーダルポリエチレンと比べてSCGの改善をもたらすパイプ生産用のマルチモーダルポリエチレンを開示している従来技術の文献はない。硬度および摩耗抵抗性という特性が、後に亀裂を開始する恐れがあるディテント、ノッチおよび不完全性の発生を最小限にし、同時に、SCG性能の改善は、亀裂が発達する場合、長い期間をかけて亀裂が発達することを意味し、SCG性能の改善によりパイプの使用寿命が改善されるので、こうしたポリエチレンは特に魅力的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】US2009/0105422
【文献】US6,713,561
【文献】US7,829,646
【文献】US6828267
【文献】US4081674
【文献】WO98/02246
【文献】US4792588
【文献】EP520732
【文献】US7312283
【文献】US5880241
【文献】EP279863
【文献】WO93/23439
【文献】EP793678
【文献】WO96/00245
【文献】WO97/29134
【文献】WO91/09882
【文献】WO97/31038
【文献】EP810344
【文献】EP792297
【非特許文献】
【0018】
【文献】G.J.P.Britovsekら:The Search for New-Generation Olefin Polymerization Catalysts:Life beyond Metallocenes、Angew.Chemie Int.編、38巻(1999年)、428頁。
【文献】H.Makioら:Fl Catalysts:A New Family of High Performance Catalysts for Olefin Polymerization, Advanced Synthesis and Catalysis、344巻(2002年)、477頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、同時に起こるRCPの低下なしにSCGの改善を示す、パイプ製造用ポリエチレンが依然として必要とされている。さらに、摩耗抵抗性および/または硬度および/またはスクラッチ傷発生抵抗性が、現在のバイモーダルポリエチレン製パイプに対して同等であるかまたは向上しており、したがってSCGの開始によるスクラッチ傷が発生する可能性が低減されているポリエチレンは、特に魅力的と思われる。もちろん、任意の新規に開発されたポリエチレンはまた、パイプ用途に許容される範囲のMFR5(例えば、0.2~1.4g/10分)により表されるように、加工可能でなければならない。
【0020】
驚くべきことに、比較的高分子量のエチレンコポリマーを比較的少量(例えば、ポリエチレンを0.5~9.5質量%)含むマルチモーダルポリエチレン(好ましくは、トリモーダル組成を有するポリエチレン、および/またはバイモーダルもしくはトリモーダル分子量分布を有するポリエチレン)がこの非常に望ましい特性の組合せを示すことを、今般見いだした。少量の比較的高分子量のエチレンコポリマーが存在していることを考慮すると、重要な他の特性(例えば、RCP、硬度、摩耗抵抗性、スクラッチ傷抵抗性および加工性)に対して悪影響を及ぼすことなくSCGが改善される程度は、驚くべきものである。SCG、硬度およびスクラッチ傷抵抗性は、該ポリマー組成物が、高分子量のエチレンコポリマーを多量に有している場合よりも、少量有している場合の方が良好であるという証拠さえ存在する。
【0021】
さらなる重要な問題は、本発明のマルチモーダルポリエチレンをいかに製造するかである。こうしたポリマーは、例えば、個別に重合したポリマーの押出成形ブレンドによるか、または連続重合により製造することができる。連続重合を使用する場合、一般に、該ポリマーは、分子量を増加させるおよび/もしくはコモノマー含有量を増加させる、または分子量を低下させるおよび/もしくはコモノマー含有量を低下させるという道理で調製される。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1の態様から見ると、本発明は、
(i)低分子量エチレンポリマーを20~70質量%、
(ii)第1の高分子量エチレンコポリマーを20~70質量%、および
(iii)第2の高分子量エチレンコポリマーを0.5~9.5質量%、
含むポリエチレンを提供する。
【0023】
好ましくは、ポリエチレンはマルチモーダルである。好ましくは、ポリエチレンは、マルチモーダル分子量分布を有する。好ましくは、ポリエチレンは、マルチモーダル組成を有する。
【0024】
さらなる態様から見ると、本発明は、エチレンおよび必要に応じ少なくとも1種の他のα-オレフィンを重合して、前記ポリエチレンを生成する工程を含み、前記重合が、少なくとも3工程で行われる、上で定義したポリエチレンの調製方法を提供する。
【0025】
さらなる態様から見ると、本発明は、上で定義した方法により得ることができるポリエチレンを提供する。
【0026】
さらなる態様から見ると、本発明は、上で定義したポリエチレンを含む組成物を提供する。
【0027】
さらなる態様から見ると、本発明は、上で定義したポリエチレンまたは上で定義した組成物を含む物品を提供する。
【0028】
好ましい実施形態では、該物品はパイプである。
【0029】
さらなる態様から見ると、本発明は、上で定義したポリエチレンまたは上で定義した組成物を成形する、例えばブロー成形する工程を含む、上で定義した物品の調製方法を提供する。
【0030】
さらなる態様から見ると、本発明は、パイプの製造における、上で定義したポリエチレンまたは上で定義した組成物の使用を提供する。
【0031】
さらなる態様から見ると、本発明は、
(i)低分子量エチレンポリマーを20~70質量%、
(ii)第1の高分子量エチレンポリマーを20~70質量%、および
(iii)第2の高分子量エチレンポリマーを0.5~30質量%、
を含むポリエチレンの調製方法であって、
連続する工程(a)~(c):
(a)エチレンおよび任意選択のα-オレフィンコモノマーを、第1の反応器中で重合して、低分子量エチレンポリマーを生成する工程、
(b)エチレンおよび任意選択のα-オレフィンコモノマーを、第2の反応器中で重合して、第2の高分子量エチレンポリマーを生成する工程、ならびに
(c)エチレンおよび任意選択のα-オレフィンコモノマーを、第3の反応器中で重合して、第1の高分子量エチレンポリマーを生成する工程、
を含む、方法を提供する。
【0032】
好ましくは、ポリエチレンはマルチモーダルである。好ましくは、ポリエチレンは、マルチモーダル分子量分布を有する。好ましくは、ポリエチレンは、マルチモーダル組成物を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】第2の高分子量エチレンコポリマーの画分に対するFNCTを示すグラフである。
【
図3】+23℃における、第2の高分子量エチレンコポリマーの画分に対するシャルピー衝撃を示すグラフである。
【
図4】-20℃における、第2の高分子量エチレンコポリマーの画分に対するシャルピー衝撃を示すグラフである。
【
図5】第2の高分子量エチレンコポリマーの画分に対する傷つき性を示すグラフである。
【
図6】第2の高分子量エチレンコポリマーの画分に対する摩耗を示すグラフである。
【
図7】第2の高分子量エチレンコポリマーの画分に対するショア硬度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
本明細書で使用する場合、用語「ポリエチレン」とは、少なくとも50質量%、より一層好ましくは少なくとも75質量%、より一層好ましくは少なくとも85質量%、より一層好ましくは少なくとも90質量%のエチレン由来の単位を含むポリマーを指す。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「エチレンホモポリマー」とは、エチレン由来の繰り返し単位から本質的になるポリマーを指す。ホモポリマーは、例えば、少なくとも99質量%、好ましくは少なくとも99.5質量%、より好ましくは少なくとも99.9質量%、より一層好ましくは少なくとも99.95質量%(例えば、100質量%)のエチレンに由来する繰り返し単位を含むことができる。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「エチレンコポリマー」とは、エチレンおよび少なくとも1種の他のモノマー由来の繰り返し単位を含むポリマーを指す。典型的なコポリマーでは、少なくとも0.05質量%、より好ましくは少なくとも0.1質量%、より一層好ましくは少なくとも0.4質量%の繰り返し単位が、エチレン以外の少なくとも1種のモノマーに由来している。通常、エチレンコポリマーは、エチレン以外のモノマーを由来とする繰り返し単位を15質量%以下で含むことになる。
【0037】
本明細書で使用する場合、質量%は、別段の指定がない限り、ポリエチレンの質量に対して表現される。
【0038】
本明細書で使用する場合、「低」および「高」という用語は、相対的に使用される。したがって、低分子量エチレンポリマーは、高分子量ポリマーほど大きくない分子量を有する。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語LMWポリマーとは、低分子量エチレンポリマーを指す。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語HMW1は、第1の高分子量エチレンコポリマーを指す。本明細書で使用する場合、用語HMW2は、第2の高分子量エチレンコポリマーを指す。HMW1およびHMW2は各々、LMWポリマーよりも高い分子量を有する。HMW1またはHMW2のどちらか一方は、最も高い分子量を有することができるか、またはそれらは同じ分子量を有することができる。したがって、好ましくは、本発明のポリエチレンは、バイモーダルまたはトリモーダルである。
【0041】
用語「分子量」を使用する場合いつでも、別段の指定がない限り、重量平均分子量を意味する。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「マルチモーダル」とは、複数の成分または画分を含むポリマーを指し、これらは、様々な重合条件下、ならびに/あるいは1段階でマルチサイト触媒系(例えば、2タイプ以上の活性サイトを有する系)を使用することにより、および/または重合段階もしくは工程において2種以上の異なる触媒を使用することにより生成されたものであり、これらの成分に対して様々な重量平均分子量および分子量分布がもたらされ、ならびに/または様々なコモノマー含有量がもたらされたものである。接頭語「マルチ」とは、ポリマー中に存在する様々な成分の数を指す。したがって、例えば、3つの成分からなるポリマーは単に「トリモーダル」と呼ばれる。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「マルチモーダル組成物」とは、複数の成分または画分を含む組成物を指し、これらは、組成物中で各々異なっている。好ましくは、成分または画分の各々は、異なる構成組成を有する。すなわち、例えば、エチレンホモポリマー、0.1質量%のコモノマーを含むエチレンコポリマー、および0.5質量%のコモノマーを含むエチレンコポリマーを含む組成物は、マルチモーダル組成物、具体的にはトリモーダル組成物である。
【0044】
本明細書で使用する場合、用語「マルチモーダル分子量分布」とは、分子量分布曲線の形態、すなわちその分子量の関数としてのポリマー質量画分のグラフの外観を指す。マルチモーダル分子量分布を有するポリエチレンは、2つ以上の極大を示し得るか、または少なくとも、個々の成分曲線と比較すると明確に幅広くなり得る。さらに、マルチモーダル性は、溶融物または成分の結晶化温度曲線の差として示し得る。対照的に、一定の重合状態下で生成した一成分を含むポリマーは、本明細書では、ユニモーダルと称される。
【0045】
本明細書で使用する場合、触媒系という用語は、重合反応を触媒する総合的な活性実体を指す。通常、触媒系は、遷移金属化合物(活性サイト前駆体)および遷移金属化合物を活性化することができる活性剤(時として、共触媒と称される)を含む、配位触媒系である。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「チーグラーナッタ(ZN)」触媒は、その配位子および活性剤(例えば、Al含有有機金属化合物)にシグマ結合する遷移金属成分(例えば、Ti)を好ましくは含む触媒を指す。好ましいチーグラーナッタ触媒は、粒子構成材料(particle building material)を任意選択で含む。
【0047】
本明細書で使用する場合、用語「スラリー重合」は、ポリマーが液体中で固体として形成する重合を指す。液体は、ポリマーのモノマーであってもよい。この場合、重合は、時としてバルク重合と称される。スラリー重合という用語は、当分野において、時として超臨界重合と称されるもの、すなわち、ポリマーが、流体の臨界点または流体が混合物である場合はその疑似臨界点に比較的近い流体中で懸濁している固体である場合の重合を包含する。その圧縮係数が、流体の臨界圧縮係数または混合物の場合はその疑似臨界圧縮係数の2倍未満である場合、流体はその臨界点に比較的近いと考えることができる。
【0048】
本明細書で使用する場合、用語「多段階重合」とは、2段階以上で行われる重合を指す。一般に、各段階は、個別の反応器中で実施される。多段階重合という用語は、多工程重合と互換的に使用される。
【0049】
ポリエチレン
物品(例えば、パイプ)に加工するための最終的なポリエチレンは、以下に記載されるカーボンブラックおよび着色剤などのある種の添加物を含有することが多く、これらの添加物は、ポリエチレン合成の完了後、濃縮マスターバッチとしてのポリエチレン中に通常配合される。ポリエチレンに関する以下の詳細は、ポリエチレン自体のことを指し、また明確に記載しない限り、任意のさらなる添加物を含まない。
【0050】
本発明のポリエチレンは、好ましくはマルチモーダルである。好ましくは、ポリエチレンは、マルチモーダル(例えば、バイモーダルまたはトリモーダル)分子量分布を有する。好ましくは、ポリエチレンは、マルチモーダル(例えばトリモーダル)組成物を有する。
【0051】
本発明のポリエチレン中に存在しているエチレンモノマーの総量は、好ましくは50~99.9質量%、より好ましくは50~99.5質量%、より一層好ましくは75~99.0質量%(例えば、85~97質量%)である。特に、好ましくはポリエチレン中のエチレンモノマーの総量は、92~99.8質量%、より好ましくは98~99.9質量%である。
【0052】
本発明のポリエチレンの総コモノマー含有量は、好ましくは0.1~10質量%、より一層好ましくは0.2~5質量%、より一層好ましくは0.3~3質量%である。ポリマー中に存在している所与のモノマー量が、ある量であるということを本明細書で明記する場合、モノマーは繰り返し単位の形態のポリマー中に存在しているものと理解すべきである。当業者は、任意の所与のモノマーについて、繰り返し単位が何であるかを容易に求めることができる。コモノマーは、好ましくは1種または複数種(例えば1種)のα-オレフィンである。特に好ましくは、コモノマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよびそれらの混合物から選択される。しかし、好ましくは、α-オレフィンは、1-ブテンである。
【0053】
本発明のポリエチレンは、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)である。HDPEは、比較的低い固有の質量であるが、依然として、高い機械的強度、耐腐食性および耐薬品性ならびに長期安定性を有するという利点を有している。好ましくは、本発明のポリエチレンは、935~910kg/m3、より好ましくは935~970kg/m3、より一層好ましくは940~965kg/m3、より一層好ましくは945~962kg/m3の密度を有する。
【0054】
本発明のポリエチレンは、好ましくは0.05~2.0g/10分、より好ましくは0.05~1.0g/10分、より一層好ましくは0.1~0.75g/10分、より一層好ましくは0.15~0.6g/10分のMFR5を有する。これは、パイプ用途の許容範囲であり、すなわちポリエチレンは押出成形することができることが確実である。
【0055】
本発明のポリエチレンは、好ましくは2.6~10、より好ましくは2.9~8、より一層好ましくは3~6のFRR(MFR5/MFR2)を有する。
【0056】
本発明のポリエチレンは、好ましくは100~140℃、より一層好ましくは110~138℃、より一層好ましくは120~135℃の融解温度を有する。
【0057】
本発明のポリエチレンのMn(数平均分子量)は、好ましくは1,000~50,000g/mol、より一層好ましくは3,000~40,000g/mol、より一層好ましくは5,000~30,000g/molである。本発明のポリエチレンの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100,000~1,000,000g/mol、より一層好ましくは150,000~750,000g/mol、より一層好ましくは200,000~500,000g/molである。
【0058】
本発明のポリエチレンは、マルチモーダルである。特に好ましくは、本発明のポリエチレンは、バイモーダルまたはトリモーダル、例えばトリモーダルである。好ましくは、ポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、5~100、より好ましくは10~50である。
【0059】
本発明のポリエチレンのトリモーダル性および幅広い分子量分布は、ポリマー特性の魅力的なバランスを実現することができることを確実にしている。特に、第2の高分子量エチレンコポリマー、とりわけ超高分子量エチレンコポリマーが少量(例えば、0.5~9.5質量%)存在すると、優れたSCG抵抗性ならびにRCPに対する高い抵抗性、スクラッチ傷抵抗性および硬度を有するポリエチレンが生じる。
【0060】
低分子量ポリマー
本発明のポリエチレン中に存在している低分子量ポリマーは、エチレンホモポリマーまたはエチレンコポリマーとすることができる。好ましいコポリマーは、1種または複数種(例えば、1種)のα-オレフィンコモノマーを含む。好ましいα-オレフィンモノマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよびそれらの混合物から選択される。好ましくは、α-オレフィンは、1-ブテンである。しかし、好ましくは、低分子量エチレンポリマーは、エチレンホモポリマーである。
【0061】
好ましくは、低分子量エチレンポリマーは、920~980kg/m3、より好ましくは920~970kg/m3の密度を有する。ある場合、低分子量エチレンポリマーは、好ましくは930~965kg/m3、より一層好ましくは940~960kg/m3の密度を有する。しかし、より一層好ましくは、低分子量エチレンポリマーは、960~975kg/m3、より好ましくは967~972kg/m3の密度を有する。
【0062】
好ましくは、低分子量エチレンポリマーは、10~5000g/10分、より一層好ましくは20~2000g/10分、より一層好ましくは50~1500g/10分のMFR2を有する。
【0063】
低分子量エチレンポリマーは、好ましくは、2.6~10、より一層好ましくは2.9~8、より一層好ましくは3~6のFRR(MFR5/MFR2)を有する。
【0064】
低分子量エチレンポリマーは、好ましくは120~140℃、より一層好ましくは125~138℃、より一層好ましくは127~135℃の融解温度を有する。
【0065】
低分子量エチレンポリマーのMnは、好ましくは1,000~100,000g/mol、より一層好ましくは1,500~80,000g/mol、より一層好ましくは2,000~60,000g/mol(例えば、2500~5000g/mol)である。低分子量エチレンポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000~150,000g/mol、より一層好ましくは10,000~100,000g/mol、より一層好ましくは15,000~80,000g/mol(例えば、17000~35000g/mol)である。
【0066】
低分子量エチレンポリマーのMw/Mnは、好ましくは、3~18、より一層好ましくは4~15、より一層好ましくは5~13である。
【0067】
本発明のポリエチレン中に存在している低分子量エチレンポリマーの量は、好ましくは30~70質量%、より好ましくは35~65質量%、より一層好ましくは40~60質量%、より一層好ましくは45~55質量%であり、質量%は、ポリエチレンの質量基準である。
【0068】
好ましくは、低分子量エチレンポリマーは、チーグラーナッタポリマーであり、すなわちチーグラーナッタ触媒重合により調製される。
【0069】
第1の高分子量ポリマー
本発明のポリエチレン中に存在している第1の高分子量ポリマーは、エチレンコポリマーである。好ましいコポリマーは、1種または複数種(例えば1種)のα-オレフィンコモノマーを含む。好ましいα-オレフィンコモノマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよびそれらの混合物から選択される。好ましくは、コモノマーは1-ブテンである。すなわち、好ましくは第1の高分子量ポリマーは、エチレン1-ブテンコポリマーである。
【0070】
第1の高分子量ポリマー中に存在しているエチレンモノマーの量は、好ましくは50~99.9質量%、より好ましくは50~99.5質量%である。一部の第1の高分子量ポリマーでは、存在しているエチレンモノマーの量は、コポリマーの質量基準で、好ましくは75~99.0質量%、例えば、85~97質量%である。より好ましい第1の高分子量ポリマーでは、存在しているエチレンモノマーの量は、コポリマーの質量基準で、好ましくは90~99.8質量%、より好ましくは、98~99.7質量%である。第1の高分子量ポリマーの総コモノマー含有量は、コポリマーの質量基準で、好ましくは0.1~9.5質量%、より一層好ましくは0.2~4.5質量%、より一層好ましくは0.3~2.5質量%である。好ましくは、第1の高分子量ポリマーのコモノマー含有量(質量%基準)は、低分子量コポリマーのそれよりも200%超、より好ましくは400%超、より一層好ましくは900%超で高い。
【0071】
好ましくは、第1の高分子量エチレンコポリマーは、880~960kg/m3、より好ましくは880~940kg/m3の密度を有する。一部の実施形態では、第1の高分子量エチレンコポリマーは、890~930kg/m3、より一層好ましくは890~920kg/m3の密度を有する。しかし、より好ましくは、第1の高分子量エチレンコポリマーは、920~955kg/m3、より一層好ましくは930~950kg/m3の密度を有する。
【0072】
好ましくは、第1の高分子量エチレンコポリマーは、MFR21が0.1~10g/10分、より一層好ましくはMFR21が0.2~5g/10分、より一層好ましくはMFR21が0.3~4g/10分を有する。
【0073】
第1の高分子量エチレンコポリマーは、好ましくは2.6~10、より好ましくは2.8~8、より一層好ましくは3~6のFRR(MFR5/MFR2)を有する。
【0074】
第1の高分子量エチレンコポリマーのMnは、好ましくは10,000~150,000g/mol、より一層好ましくは20,000~125,000g/mol、より一層好ましくは30,000~100,000g/molである。
【0075】
第1の高分子量エチレンコポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは、低分子量エチレンポリマーのMwよりも高い。好ましくは、第1の高分子量エチレンコポリマーのMwは、低分子量エチレンポリマーのMwよりも100%超、より好ましくは200%超、より一層好ましくは400%高い。第1の高分子量エチレンコポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100,000~1,000,000g/mol、より一層好ましくは150,000~800,000g/mol、より一層好ましくは200,000~700,000g/molである。
【0076】
第1の高分子量エチレンコポリマーのMw/Mnは、好ましくは3~25、より好ましくは4~20、より一層好ましくは5~18である。
【0077】
本発明のポリエチレン中に存在している第1の高分子量エチレンポリマーの量は、好ましくは30~70質量%、より好ましくは35~65質量%、より一層好ましくは40~60質量%、より一層好ましくは40~50質量%の範囲にあり、質量%は、ポリエチレンの質量基準である。
【0078】
好ましくは、第1の高分子量エチレンコポリマーは、チーグラーナッタポリマーである。すなわちチーグラーナッタ触媒重合により調製される。
【0079】
第2の高分子量ポリマー
本発明のポリエチレン中に存在している第2の高分子量ポリマーは、エチレンコポリマーである。好ましいコポリマーは、1種または複数種(例えば1種)のα-オレフィンコモノマーを含む。好ましいα-オレフィンコモノマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよびそれらの混合物から選択される。好ましくは、コモノマーは1-ブテンである。すなわち、好ましくは第2の高分子量ポリマーは、エチレン1-ブテンコポリマーである。
【0080】
第2の高分子量ポリマー中に存在しているエチレンモノマーの量は、コポリマーの質量基準で、好ましくは50~99.5質量%、より一層好ましくは75~99.0質量%(例えば、85~97質量%)である。第2の高分子量ポリマーの総コモノマー含有量は、コポリマーの質量基準で、好ましくは0.1~30質量%、より一層好ましくは0.5~25質量%、より一層好ましくは1~20質量%(例えば2~10質量%)である。
【0081】
好ましくは、第2の高分子量エチレンコポリマーは、第1の高分子量コポリマーよりも高い質量%のコモノマー含有量を有する。好ましくは、第2の高分子量コポリマーのコモノマー含有量(質量%基準)は、第1の高分子量エチレンコポリマーのそれよりも、50%超、より好ましくは100%超、より一層好ましくは300%超で高い。例えば、低分子量エチレンポリマーがホモポリマーである場合、これはマルチモーダル組成物、具体的にはトリモーダル組成物を有するポリエチレンをもたらす。
【0082】
好ましくは、第2の高分子量エチレンコポリマーは、875~935kg/m3の密度を有する。一部の好ましい第2の高分子量エチレンコポリマーは、885~920kg/m3、より一層好ましくは890~915kg/m3の密度を有する。しかし、より好ましい第2の高分子量エチレンコポリマーは、890~930kg/m3、より一層好ましくは905~925kg/m3の密度を有する。
【0083】
好ましくは、第2の高分子量エチレンコポリマーは、0.001~40g/10分、より一層好ましくは0.005~30g/10分、より一層好ましくは0.006~20g/10分、特に好ましくは0.007~10g/10分(例えば、0.0075~1g/10分)のMFR21を有する。
【0084】
好ましくは、第2の高分子量エチレンコポリマーは、4.4~20、より好ましくは6~18、より一層好ましくは7~15のFRR(MFR21/MFR5)を有する。
【0085】
第2の高分子量エチレンコポリマーのMnは、好ましくは20,000~500,000g/mol、より一層好ましくは30,000~400,000g/mol、より一層好ましくは40,000~300,000g/molである。
【0086】
第2の高分子量エチレンコポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは、第1の高分子量エチレンコポリマーのMwよりも大きい。より一層好ましくは、第2の高分子量エチレンコポリマーのMwは、第1の高分子量エチレンコポリマーのMwよりも5~1250%、より一層好ましくは10~1000%、より一層好ましくは15~750%(例えば、30~300%)大きい。第2の高分子量エチレンコポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100,000~3,000,000g/mol、より一層好ましくは150,000~2,500,000g/mol、より一層好ましくは200,000~2,000,000g/mol、とりわけ好ましくは500,000~1,500,000g/molの範囲にある。このポリマーは、超高分子量エチレンコポリマーであると見なすことができる。
【0087】
第2の高分子量エチレンコポリマーのMw/Mnは、好ましくは3~30、より好ましくは4~25、より一層好ましくは5~23である。
【0088】
本発明のポリエチレン中に存在している第2の高分子量エチレンコポリマーの量は、好ましくは0.5~9.5質量%の範囲にある。好ましくは、第2の高分子量エチレンコポリマーの量は、1.0質量%超、例えば1.2質量%または1.5質量%である。好ましくは、第2の高分子量エチレンコポリマーの量は、9.5質量%未満、例えば9.0質量%、または8.5質量%である。本発明の一部のポリエチレンでは、第2の高分子量エチレンコポリマーの量は、好ましくは1.2~8.5質量%、より好ましくは1.0~7.5質量%、より一層好ましくは1.5~6.0質量%、より一層好ましくは3~6質量%であり、質量%はポリエチレンの質量基準である。
【0089】
理論に拘束されることを望むものではないが、少量しか存在していないエチレンコポリマーに比較的多量のコモノマーを導入することは、該コモノマーが、コポリマー中に存在している長鎖およびその短鎖に組み込まれることを意味するものと仮定する。このことは、コポリマー中に存在している側鎖のレベルが向上し、かつそれに対応して、鎖の絡み合いも増加することを意味する。これらの効果の両方とも、SCG性能の改善に寄与すると考えられる。しかし、同時に、わずか少量のポリエチレンしかこの方法で修飾されないので、従来技術において一般に観察されるRCPに対する悪影響は、もしあるとしても非常に少ない。
【0090】
好ましくは、第2の高分子量エチレンコポリマーは、チーグラーナッタポリマーである。すなわちチーグラーナッタ触媒重合により調製される。
【0091】
方法
本発明のポリエチレンは、本明細書で定義するエチレンポリマー(i)、(ii)および(iii)をブレンドすることにより調製することができる。しかし、より好ましくは、本発明のポリエチレンは、多段階重合法で調製される。ポリマーが多段階法で製造される場合、反応器は並列または直列とすることができるが、直列配列が好ましい。ポリマー成分が並列配置で生成する場合、粉末が、均質化のために好ましくは混合されて、押出成形される。
【0092】
触媒系
本発明のポリエチレンは、チーグラーナッタ触媒、シングルサイト触媒系、またはこれらの触媒のハイブリッドを使用して、調製することができる。しかし、好ましくは、ポリエチレンは、1種または複数種のチーグラーナッタ触媒系を使用して調製される。好ましくは、本発明のポリエチレンは、例えば多段階重合の各段階で、1種のチーグラーナッタ触媒系を使用して調製される。
【0093】
チーグラーナッタ触媒系は、好ましくは遷移金属成分および活性剤を含む。好ましくは、重合反応に添加されるときの遷移金属成分は、固形微粒子内に含有されている。好ましくは、時として共触媒と称される、少なくともある活性剤が、液体または溶液の形態で重合反応に添加される。
【0094】
チーグラーナッタ触媒系
遷移金属成分
触媒系の活性サイトは遷移金属である。4族(例えば、Ti、Zr、Hf)または5族(例えば、V、Nb、Ta)の遷移金属、特に4族の金属、とりわけTiが好ましい。特に好ましいチーグラーナッタ触媒では、4族の遷移金属(例えば、Ti)しか存在しない。
【0095】
触媒系の調製中、アルコキシ化合物またはハロゲン化合物、とりわけ塩化物の形態で遷移金属を使用することが好ましい。特に好ましくは、触媒系の調製工程にそれを導入する段階において、TiはTiCl4として供給される。
【0096】
乾燥固体触媒成分の質量に基づく最終的な固体触媒中の遷移金属の含有量は、好ましくは0.1~5mmol/gである。
【0097】
好ましくは、最終固体触媒粒子はまた、2族金属、好ましくはマグネシウム化合物、より一層好ましくはMg-Cl化合物(例えばMgCl2)も含む。
【0098】
マグネシウム化合物は、Mg-Cl(例えば、MgCl2化合物それ自体)として触媒調製に導入することができるが、触媒調製の手順内でインシチューで作製し、高分散度、すなわち遷移金属と細孔との接触を確実なものとすることが好ましい。当業者は、こうしたインシチュー反応を実施する方法を承知している。
【0099】
乾燥固体触媒成分の質量に基づく最終的な固体触媒中のMgの含有量は、好ましくは1~25質量%である。
【0100】
粒子構成材料
チーグラーナッタ触媒を含む触媒系に存在している粒子構成材料は、シリカ、アルミナ、チタニア、シリカ-アルミナおよびシリカ-チタニアなどの無機酸化物担体とすることができ、あるいは、塩化物、オキシ塩化物、アルキルもしくはアルコキシドまたは有機陰イオンとの金属塩などのMgまたはCa化合物とすることができる。しかし、好ましくは、この材料は任意選択の他の成分を含むシリカまたはMgCl2である。より一層好ましくは、この材料は、MgCl2である。これは、第2の高分子量エチレンコポリマーを生成するための重合において、特に有利である。
【0101】
粒子構成材料は、存在する場合、好ましくは最終乾燥固体触媒の30~90質量%を占める。粒子構成材料は、Mg-Cl化合物を含む場合、通常、構成材料はまた、上で記載したマグネシウム化合物として機能することにもなる。粒子構成材料が金属酸化物である場合、金属酸化物微粒子は、通常、最終触媒系の外側の形態を定義し、触媒系の他の成分は、その細孔内部で合成されることになる。
【0102】
活性剤および追加成分
活性剤とは、遷移金属成分を活性化することができる化合物である。活性剤は、時として共触媒と称される。有用な活性剤は、とりわけ、アルキルアルミニウム化合物およびアルコキシアルミニウム化合物である。とりわけ好ましい活性剤は、アルキルアルミニウム、特にトリアルキルアルミニウム(例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、およびトリ-イソブチルアルミニウム)である。活性剤は、遷移金属成分に対して過剰で好ましくは使用される。例えば、アルキルアルミニウムが活性剤として使用される場合、遷移金属成分中の遷移金属に対する活性剤中のアルミニウムのモル比は、好ましくは1~500mol/mol、好ましくは2~100mol/mol、例えば5~50mol/molである。活性剤は、通常、固体微粒子触媒の一部ではないが、液体として重合反応器に添加される。
【0103】
チーグラーナッタ触媒を含む触媒系は、共活性剤および/または修飾剤をさらに含んでもよい。すなわち、例えば、上で記載された2種以上のアルキルアルミニウム化合物を使用してもよく、ならびに/または該触媒系の成分を、異なるタイプのエーテル、エステル、シリコンエーテルなどと組み合わせて、当分野で公知の触媒系の活性および/もしくは選択性を変えてもよい。
【0104】
触媒系調製
チーグラーナッタ触媒を含む触媒系は、当分野で公知の手順により、例えば、US6828267、US4081674およびUS4792588において開示されている通り、調製することができる。
【0105】
固体触媒系粒子は、任意選択で、使用前に洗浄して、結合していない遷移金属を除去してもよい。重合に添加される最終的な触媒系粒子の場合、非常に少量の遷移金属だけが、80℃でアルカン中に抽出可能となるべきである。
【0106】
触媒系粒子の平均粒子サイズは、好ましくは1~250μm、より好ましくは4~100μm、より一層好ましくは6~30μm(例えば、10~25μm)の範囲にある。粒子は、好ましくは球状である。
【0107】
触媒系粒子の表面積は、好ましくは1~500m2/g、より好ましくは2~300m2/gの範囲にある。触媒系粒子の細孔体積は、好ましくは0.1~5cm3/g、好ましくは0.2~1.5cm3/gの範囲にある。
【0108】
シングルサイト触媒系
一般的なシングルサイト触媒
本発明の方法において使用することができるシングルサイト触媒を含む触媒系は、好ましくはメタロセン含有触媒系である。こうした触媒系は、当分野、例えばWO98/02246から周知であり、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
触媒系は、担持されていても担持されていなくてもよいが、好ましくは担持されている。担持触媒系は、その中に活性サイト前駆体を浸漬することにより調製することができる。あるいは、触媒系は、個別の浸漬工程なしで、液体出発材料成分から直接、固体粒子を生成させることにより合成することができる。シングルサイト触媒を含む好ましい触媒系は、担体を含む。
【0110】
シングルサイト触媒を含む触媒系は、好ましくは担体、活性剤、および少なくとも1種の遷移金属活性サイト前駆体(例えばメタロセン)を含む。活性剤は、アルミノキサン、ボランまたはボレートとすることができるが、好ましくはアルミノキサンである。好ましくは、活性サイト前駆体は、メタロセンである。
【0111】
触媒形態および担体
シングルサイト触媒を含む触媒系は、好ましくは微粒子形態にある。好ましくは、触媒系は、1~250ミクロン、好ましくは4~150ミクロンの重量平均粒子サイズを有する粒子の形態にある。好ましくは、触媒系は、易流動性粉末の形態にある。
【0112】
シングルサイト触媒を含む触媒系において使用するための適切な担体材料は、当分野において周知である。担体材料は、好ましくは無機材料、例えば、ケイ素および/もしくはアルミニウムの酸化物、またはMgCl2である。好ましくは、担体はケイ素および/またはアルミニウムの酸化物である。より一層好ましくは、担体はケイ素である。
【0113】
好ましくは、担体粒子は、1~500ミクロン、好ましくは3~250ミクロン(例えば、10~150ミクロン)の平均粒子サイズを有する。適切なサイズの粒子は、過大粒子を除去するためにふるいにかけることにより得ることができる。ふるいがけは、触媒系の調製前、調製中または調製後に行うことができる。好ましくは、粒子は球状である。担体の表面積は、好ましくは5~1200m2/g、より好ましくは50~600m2/gの範囲にある。担体の細孔体積は、好ましくは0.1~5cm3/g、好ましくは0.5~3.5cm3/gの範囲にある。
【0114】
好ましくは、担体は使用前に脱水される。特に好ましくは、担体は、使用前に100~800℃、より好ましくは150~700℃(例えば、約250℃)に加熱される。好ましくは、脱水は0.5~12時間実施される。
【0115】
本明細書で記載される触媒系の調製に適した担体は、例えば、Grace and PQ Corporation社から市販されている。
【0116】
活性剤
アルミノキサンは、好ましくは活性剤として触媒系に存在している。アルミノキサンは、好ましくはオリゴマーである。より一層好ましくは、アルミノキサンは、例えば適切な式(Al1.4R0.8O)n(nは10~60であり、Rはアルキル基、例えば、C1~20アルキル基である)を有するケージ様(例えば多環式)分子である。好ましいアルミノキサンでは、Rは、C1~8アルキル基、例えばメチルである。メチルアルミノキサン(MAO)は、好ましくは平均分子量が700~1500を有する分子量分布を有するオリゴマーの混合物である。MAOは、触媒系において使用される好ましいアルミノキサンである。
【0117】
アルミノキサンは、アルキルアルミニウムまたはアルコキシアルミニウム化合物により修飾されていてもよい。とりわけ好ましい修飾化合物は、アルキルアルミニウム、特にトリアルキルアルミニウム(トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、およびトリイソブチルアルミニウムなど)である。トリメチルアルミニウムが、特に好ましい。
【0118】
本明細書で記載されている触媒系の調製に適したアルミノキサン(MAOなど)は、例えば、Albemarle and Chemtura社から市販されている。
【0119】
例えば、担体の細孔内部のトリメチルアルミニウムのゆっくりとした加水分解により、インシチユーで活性剤を生成することも可能である。この方法は、当分野において周知である。
【0120】
あるいは、ホウ素をベースとする活性剤を使用してもよい。好ましいホウ素をベースとする活性剤は、EP520732に記載されている少なくとも3個のフッ素化フェニル環に付着しているものである。
【0121】
あるいは、US7312283に記載されている活性化固体表面も担体として使用することができる。これらは、ルイス酸またはブレンステッド酸性挙動を示し、かつ電子吸引性成分(通常、陰イオン)により処理して、次に焼成を行った、細孔度の高い固体の無機酸化物微粒子である。
【0122】
遷移金属活性サイト前駆体
一般に、遷移金属前駆体の金属は、16電子錯体であるが、それらはより少ない電子、例えばTi、ZrまたはHfの錯体を時として含んでもよい。
【0123】
活性サイト遷移金属前駆体は、好ましくはメタロセンである。
【0124】
メタロセンは、好ましくは、1つまたは複数のη-結合性配位子により配位している金属を含む。金属は、好ましくはZr、HfまたはTi、とりわけZrまたはHfである。η-結合性配位子は、好ましくは、任意選択で縮合またはペンダント置換基を有する、η5-環式配位子、すなわちホモ環式またはヘテロ環式シクロペンタジエニル基である。η-結合性配位子の2つは、架橋していてもよい。
【0125】
メタロセンの調製は、文献から公知の方法に従ってまたは類似の方法に従って実施することができ、またポリマー化学者の技能の範囲内にある。
【0126】
他のタイプのシングルサイト前駆体化合物は以下において記載されている:
G. J. P. Britovsekら:The Search for New-Generation Olefin Polymerization Catalysts: Life beyond Metallocenes、Angew. Chemie Int. 編、38巻(1999年)、428頁。
H.Makioら: Fl Catalysts: A New Family of High Performance Catalysts for Olefin Polymerization, Advanced Synthesis and Catalysis、344巻(2002年)、477頁。
Dupont-Brookhart型活性サイト前駆体は、US5880241に記載されている。
【0127】
触媒系調製
シングルサイト触媒系の調製は、当分野で公知の方法に従って実施することができる。例えば、事前形成させた担体およびアルミノキサンによりシングルサイト触媒を担持する方法は、EP279863、WO93/23439、EP793678、WO96/00245、WO97/29134に与えられている。あるいは、事前形成させた担体およびホウ素活性剤によりシングルサイト触媒を担持する方法は、WO91/09882およびWO97/31038に与えられている。事前形成させた担体を使用することなく微粒子触媒系を得る方法は、EP810344およびEP792297に与えられている。
【0128】
チーグラーナッタ触媒を使用すると、非常に高い分子量と、重合工程の1つにおいて標的とするコモノマーの比較的高い取り込みとの組合せを実現することが通常より容易になるので、チーグラーナッタ触媒の使用が、シングルサイト触媒よりも好ましい。
【0129】
多段階重合方法
好ましくは、本発明のポリエチレンは、多段階重合方法で調製される。好ましくは、ポリエチレンは、3段階または3工程で、より一層好ましくは3つの異なる反応器中で調製される。好ましくは、この方法は、半連続または連続である。
【0130】
本発明のポリエチレンは、例えば、スラリー、ガスおよび/または溶液重合反応により調製することができる。気相重合およびスラリー相重合を、粒状重合と総称する。好ましくは、本発明の方法は、粒状重合を含む。より一層好ましくは、本発明のポリエチレンは、スラリー重合反応により調製される。重合は、好ましくは、慣用的な循環ループ式反応器または撹拌式槽型反応器中、好ましくは撹拌式槽型反応器中で実施される。希釈剤は、好ましくは炭素原子3~10個の炭化水素である。好ましくは、希釈剤はn-ヘキサンまたはイソブタンである。最も好ましくは、希釈剤はn-ヘキサンである。
【0131】
存在する場合、コモノマーは、好ましくは炭素原子3~10個のアルファオレフィンである。好ましくは、コモノマーは、プロピレン、n-ブテン、n-ペンテン、4-メチル-ペンテン-1、n-ヘキセンまたはn-オクテンである。希釈剤がn-ヘキサンである場合、好ましくはコモノマーは、プロピレン、n-ブテン、n-ペンテンまたは4-メチル-ペンテン-1である。より好ましくは、コモノマーは、n-ブテンまたはn-ペンテンであり、最も好ましくはn-ブテンである。希釈剤がイソブテンである場合、好ましくはコモノマーは、n-ブテン、n-ペンテン、4-メチル-ペンテン-1、ヘキセンまたは1-オクテンである。より好ましくは、コモノマーは、n-ブテン、n-ペンテン、n-ヘキセンまたはn-オクテンであり、最も好ましくはn-ヘキセンである。
【0132】
一般的なスラリー重合条件
スラリー重合を実施するための条件は、当分野においてよく確立されている。反応温度は、好ましくは30~120℃、例えば50~100℃の範囲である。反応圧力は、好ましくは1~100bar、例えば10~70barまたは2~50barの範囲になる。反応器中の総滞留時間は、好ましくは0.5~6時間、例えば1~4時間の範囲である。使用される希釈剤は、一般に、-70~100℃の範囲の沸点を有する脂肪族炭化水素となる。好ましい希釈剤は、n-ヘキサン、イソブタンおよびプロパン、とりわけn-ヘキサンである。
【0133】
分子量調節物として機能させるため、反応器の少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つに水素も供給される。使用する場合、反応器中の水素とエチレンとの間の分圧の比は、0.001~5である。
【0134】
好ましくは、重合反応は、連続法または半連続法として実施される。したがって、モノマー、希釈剤および水素は、好ましくは連続的または半連続的に反応器に供給される。さらに、前のどの反応器からのスラリーも、連続的または半連続的に供給してもよい。好ましくは、直接供給が必要な場合、触媒系も、反応器に連続的または半連続的に供給される。より一層好ましくは、ポリマースラリーは、反応器から連続的または半連続的に取り出される。半連続的とは、反応器中のポリマーの滞留時間と比べて、重合期間の少なくとも75%(例えば100%)の間の、比較的短い時間間隔(例えば、20秒から2分の間)で添加および/または取り出しが行われるよう、それらを制御することを意味する。
【0135】
好ましくは、重合の間、反応器中に存在しているポリマーの濃度は、合計(例えばスラリー)基準で15~55質量%、より好ましくは合計(例えばスラリー)基準で25~50質量%の範囲にある。こうした濃度は、モノマーの添加速度、希釈剤(存在する場合)および触媒系の添加速度、ならびにある程度、ポリマー(例えば、スラリー用反応器からのポリマースラリー)の取り出し速度を制御することにより維持することができる。
【0136】
気相重合条件
気相重合を実施するための条件は、当分野においてよく確立されている。各反応器系は、通常、反応器およびガスリサイクルならびに冷却システムを含み、この場合、リサイクルおよび冷却システムは、ガスの一部を任意選択で凝縮する。反応温度は、好ましくは50~125℃、例えば70~120℃の範囲にある。反応圧力は、好ましくは1~100bar、例えば10~30barの範囲にある。反応器中の総滞留時間は、好ましくは2~9時間、例えば3~7時間の範囲にある。窒素および低沸点アルカン(例えばイソペンタン)などの不活性ガスが、好ましくは存在している。
【0137】
分子量調節物として機能させるため、反応器系の少なくとも2つに水素も供給される。使用する場合、反応器中の水素とエチレンとの間の分圧の比は、好ましくは0.001~5である。
【0138】
好ましくは、重合反応は、連続法または半連続法として実施される。したがって、モノマー、水素、窒素および揮発性炭化水素は、好ましくは連続的または半連続的に反応器系に供給される。前のどの反応器からのポリマー粉末も、好ましくは連続的または半連続的に供給される。好ましくは、直接供給が必要な場合、触媒系も、反応器に連続的または半連続的に供給される。より一層好ましくは、ポリマーは、反応器から連続的または半連続的に取り出される。半連続的とは、反応器中のポリマーの滞留時間と比べて、重合期間の少なくとも75%(例えば100%)の間の、比較的短い時間間隔(例えば、20秒から5分の間)で添加および/または取り出しが行われるよう、それらを制御することを意味する。
【0139】
粒状方法は、ハイブリッド性とすることができ、スラリー用反応器および気相用反応器の両方を含む。
【0140】
溶液重合方法
このタイプの方法では、ポリマーは、反応器中、溶液中で、好ましくはC6~10飽和炭化水素液体中に存在している。温度は、好ましくは90~320℃の範囲にある。好ましくは、温度は、各重合工程について上昇する。反応圧力は、好ましくは2~200barの範囲にある。好ましくは、反応圧力は、各工程に関して低下する。反応器中の総滞留時間は、好ましくは3分から1.5時間である。溶媒は、好ましくは、ポリマー溶融物からの脱気によりポリマーから除去される。
【0141】
第1の好ましい方法
好ましい一方法は、連続する工程(a)~(c)を含む:
(a)エチレンおよび任意選択のα-オレフィンコモノマーを、第1の反応器中で重合して、低分子量エチレン(LMW)ポリマーを生成する工程、
(b)エチレンおよびα-オレフィンコモノマーを、第2の反応器中で重合して、第1の高分子量エチレンコポリマー(HMW1)を生成する工程、ならびに
(c)エチレンおよびα-オレフィンコモノマーを、第3の反応器中で重合して、第2の高分子量エチレンコポリマー(HMW2)を生成する工程。
【0142】
本発明の第1の好ましい方法では、(例えばマルチモーダル)ポリエチレンは、最も低分子量から最も高分子量へと連続的にそのエチレンポリマー成分を調製することにより調製される。すなわち、これらの成分の分子量は、LMW<HMW1<HMW2の順に増加する。本発明のさらに好ましい方法では、(例えばマルチモーダル)ポリエチレンは、最も少ないコモノマー含有量から最も多いコモノマー含有量へと連続的にエチレンポリマー成分を調製することにより調製される。すなわち、これらの成分のコモノマー含有量は、LMW<HMW1<HMW2の順に増加する。この後者の場合、LMWポリマーはまた、一般に最も低分子量のポリマーになることになるが、HMW1またはHMW2のどちらか一方が、最も高分子量のポリマーとなり得る。好ましくは、HMW2が、最も多いコモノマー含有量および最も高分子量を有する。
【0143】
好ましい方法では、第1の高分子量エチレンコポリマーを生成する前記重合中に、前記低分子量エチレンポリマーの少なくともいくらかが、前記第2の反応器中に存在している。さらなる好ましい方法では、低分子量エチレンコポリマーの一部分しか、第2の反応器中に存在していない。好ましくは、低分子量エチレンポリマーの別の一部分は、第3の反応器中の第2の高分子量エチレンコポリマーの重合に直接移送される。特に好ましい方法では、第2の高分子量エチレンコポリマーを生成する前記重合中に、前記低分子量エチレンポリマーおよび前記第1の高分子量エチレンコポリマーは、前記第3の反応器中に存在している。
【0144】
この好ましい方法では、本質的に、反応器中で使用される触媒はすべて、第1(LMW)の反応器に好ましくは供給される。第1の反応器にはまた、好ましくはエチレンおよび水素が供給される。第1の反応器が、スラリー相反応器または溶液相反応器である場合、希釈剤または溶媒もそれぞれ好ましくは供給される。好ましくは、第1の反応器中で重合を実施するための条件は、以下の通りである。
温度:50~270℃、より好ましくは60~120℃、より一層好ましくは50~100℃、より一層好ましくは70~90℃
圧力:1~220bar、好ましくは1~60bar、より好ましくは1~20bar、より一層好ましくは5~15bar
エチレン分圧:1~200bar、好ましくは1~15bar、より好ましくは1~10bar、より一層好ましくは2~10bar
滞留時間:1分~6時間、好ましくは0.5~4時間、より好ましくは1~2時間
希釈剤/溶媒:存在しないか(気相の場合)、または希釈剤としてC4~10飽和アルカン(好ましくはヘキサンまたはイソブタン)のどちらか
H2:エチレンの分圧比:5:1~0.5:1、好ましくは3:1~1:1
反応器中のコモノマー:0~1質量%、好ましくは0~0.1質量%、より好ましくは0質量%
【0145】
好ましくは、任意選択のコモノマーは、1-ブテンである。
【0146】
第1の反応器中の重合は、好ましくは、総ポリエチレンの30~70質量%、より好ましくは35~65質量%、より一層好ましくは40~60質量%、最も好ましくは45~55質量%が生成する。
【0147】
第1(LMW)の反応器の流出物は、好ましくは、第2の反応器に向けられる。好ましくは、流れの100%は、第2の反応器に向かう。最も揮発性の高い成分は、水素の80%超、より好ましくは少なくとも水素の90%が除去された後、この流れは第2の反応器に入るように、第1の反応器の流出物から好ましくは除去される。
【0148】
第2の反応器には、エチレン、コモノマーおよび任意選択の水素が供給される。第2の反応器が、スラリー相反応器または溶液相反応器である場合、希釈剤または溶媒がそれぞれさらに供給される。圧力は、好ましくは第1の反応器中よりも第2の反応器中の方が低い。好ましくは、第2の反応器中で重合を実施するための条件は、以下の通りである。
温度:50~290℃、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~100℃、より一層好ましくは70~90℃
圧力:1~200bar、好ましくは1~60bar、より好ましくは1~15bar、より一層好ましくは2~15bar、より一層好ましくは2~10bar
エチレン分圧:0.2~200bar、好ましくは0.5~15bar、より好ましくは0.5~6bar、例えば0.7~6bar
滞留時間:1分~4時間、好ましくは0.5~4時間、より好ましくは0.5~3時間、より一層好ましくは1~2時間
希釈剤/溶媒:存在しないか(気相の場合)、または希釈剤としてC4~10飽和アルカン(好ましくはヘキサンまたはイソブタン)のどちらか
H2:エチレンの分圧比:0.01:1~0.5:1、好ましくは0.02:1~0.2:1
反応器中のコモノマー:エチレンの分圧比:0.0001:1~0.01:1、好ましくは0.003:1~0.005:1
【0149】
好ましくは、任意選択のコモノマーは、1-ブテンである。
【0150】
第2の反応器では、好ましくは総ポリエチレンの30~70質量%、より好ましくは35~65質量%、より一層好ましくは40~60質量%、最も好ましくは40~50質量%が作製される。
【0151】
本質的に、第2の反応器の流出物のすべては、好ましくは、第3の反応器に供給される。水素は、好ましくは除去される。第3の反応器に、エチレンおよびコモノマーが供給される。第3の反応器がスラリー相反応器または溶液相反応器である場合、それぞれ、希釈剤または溶媒が追加的に好ましくは供給される。好ましくは、第3の反応器中で重合を実施するための条件は、以下の通りである。
温度:50~320℃、より好ましくは50~100℃、より一層好ましくは60~100℃、より一層好ましくは70~90℃
圧力:0.5~220bar、より好ましくは1~60bar、より一層好ましくは1~10bar、好ましくは1.5~7bar
エチレン分圧:0.2~200bar、より好ましくは0.25~10bar、より一層好ましくは0.3~4bar
滞留時間:0.2分~2時間、好ましくは2分間~1時間、より好ましくは5~30分間
希釈剤/溶媒:存在しないか(気相)、または希釈剤としてC4~10飽和アルカン(好ましくは、ヘキサンまたはイソブタン)のどちらか
H2:エチレンの分圧比:0.000:1~0.05:1、好ましくは0.000:1~0.01:1
反応器中のコモノマー:エチレンの分圧比:0.001:1~0.2:1、好ましくは0.003:1~0.03:1
【0152】
好ましくは、任意選択のコモノマーは、1-ブテンである。
【0153】
第3の反応器中のコモノマーとエチレンとの間のモル比は、第2の反応器中のコモノマーとエチレンとの間のモル比よりも、好ましくは1.5~20倍、より好ましくは2~15倍、より一層好ましくは3~10倍高い。
【0154】
第3の反応器では、総ポリエチレンの0.5~9.5質量%が好ましくは作製される。好ましくは、総ポリエチレンの少なくとも1.0質量%(例えば、1.2質量%または1.5質量%)が、第3の反応器中で作製される。好ましくは、総ポリエチレンの9.5質量%未満(例えば、9.0質量%または8.5質量%)が、第3の反応器中で作製される。特に好ましくは、総ポリエチレンの1.2~8.5質量%、より好ましくは1.0~7.5質量%、より一層好ましくは1.5~6質量%、最も好ましくは3~6質量%が作製される。
【0155】
第3の反応器中での重合後、ポリエチレンは、遠心分離またはフラッシングにより好ましくは得られる。
【0156】
本方法で調製されるポリマー、すなわち、第1の低分子量エチレンポリマーならびに第1および第2の高分子量エチレンコポリマーの好ましい特徴は、上で定義した通りである。
【0157】
任意選択で、第2および第3の反応器の重合は、単一反応器シェル内の様々な重合条件を含む様々なゾーン中での重合として行うことができる。しかし、これは好ましいものではない。
【0158】
第2の好ましい方法
本発明の第2の好ましい方法では、ポリエチレンは、低分子量エチレンポリマー、第2の高分子量エチレンコポリマー、次に第1の高分子量エチレンコポリマーの順序で、そのエチレンポリマー成分を調製することにより調製される。
【0159】
この好ましい方法は、連続する工程(a)~(c)を含む:
(a)エチレンおよび任意選択のα-オレフィンコモノマーを、第1の反応器中で重合して、低分子量エチレンポリマー(LMW)を生成する工程、
(b)エチレンおよびα-オレフィンコモノマーを、第2の反応器中で重合して、第2の高分子量エチレンコポリマー(HMW2)を生成する工程、および
(c)エチレンおよびα-オレフィンコモノマーを、第3の反応器中で重合して、第1の高分子量エチレンコポリマー(HMW1)を生成する工程。
【0160】
本発明の第2の好ましい方法では、(例えばマルチモーダル)ポリエチレンは、最も低分子量、最も高分子量、次に2番目に高分子量の順序でそのエチレンポリマー成分を調製することにより、好ましくは調製される。すなわち、これらの成分の分子量はLMW<HMW1<HMW2の順に増加する。本発明のさらに好ましい第2の方法では、(例えば、マルチモーダル)ポリエチレンは、最も少ないコモノマー含有量、最も多いコモノマー含有量、次に第2の最も多いコモノマー含有量の順序でそのエチレンポリマー成分を調製することにより調製される。すなわち、これらの成分のコモノマー含有量は、LMW<HMW1<HMW2の順に増加する。この場合、LMWポリマーはまた、一般に最も低分子量のポリマーになることになるが、HMW1またはHMW2のどちらか一方が、最も高分子量のポリマーとなり得る。好ましくは、HMW2が、最も多いコモノマー含有量および最も高分子量を有する。
【0161】
この好ましい方法は、以下により詳細に議論される
図1に示されている。
【0162】
好ましい方法では、第2の高分子量エチレンコポリマーを生成する前記重合中に、前記低分子量エチレンポリマーの少なくともいくらかは、第2の反応器中に存在している。さらなる好ましい方法では、低分子量エチレンコポリマーの一部分しか、第2の反応器中に存在していない。好ましくは、低分子量エチレンポリマーの別の一部分は、第3の反応器中の第1の高分子量エチレンコポリマーの重合に直接移送される。さらに好ましい方法では、第1の高分子量エチレンコポリマーを生成する前記重合中に、前記低分子量エチレンポリマーおよび前記第2の高分子量エチレンコポリマーは、第3の反応器中に存在している。
【0163】
この好ましい方法では、反応器中で使用される触媒は本質的にすべて、第1の反応器に好ましくは供給される。第1の反応器にはまた、好ましくはエチレンおよび水素が供給される。第1の反応器が、スラリー用反応器または溶媒用反応器である場合、それぞれ、希釈剤または溶媒も好ましくは供給される。好ましくは、第1の反応器中で重合を実施するための条件は、以下の通りである。
温度:50~270℃、より好ましくは50~120℃、より好ましくは50~100℃、より一層好ましくは70~90℃
圧力:1~220bar、好ましくは1~70bar、より好ましくは1~20bar、より一層好ましくは2~50bar、より一層好ましくは3~20bar、例えば5~15bar
エチレン分圧:0.2~200bar、より好ましくは0.5~15bar、より一層好ましくは1~10bar、例えば2~10bar
滞留時間:1分~6時間、好ましくは0.5~4時間、より好ましくは1~2時間
希釈剤/溶媒:存在しないか(気相の場合)、または希釈剤としてC4~10飽和アルカン(好ましくはヘキサンまたはイソブタン)のどちらかであり、より一層好ましくは希釈剤としてヘキサン
H2:エチレンの分圧比:5:1~0.5:1、好ましくは3:1~1:1
反応器中のコモノマー:0~1質量%、好ましくは0~0.1質量%、より好ましくは0質量%
【0164】
好ましくは、任意選択のコモノマーは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンまたは1-オクテン、より好ましくは1-ブテンである。
【0165】
第1の反応器中の重合は、好ましくは総ポリエチレンの30~70質量%、より好ましくは35~65質量%、より一層好ましくは40~60質量%、最も好ましくは45~55質量%が生成する。
【0166】
第1の反応器の流出物(水素の除去後)は、すべて第2の反応器に移送されてもよい。しかし、より好ましくは、第3の反応器に直接向かうものと第2の反応器を経由して向かうものに分割される。好ましくは流れの5~100%、より好ましくは10~70%、最も好ましくは15~50%(例えば、20~40%)が、第2の反応器を経由して向かう。任意選択で、望ましくない化合物が流れから除去される。最も揮発性の高い成分は、例えば、水素の96%超が除去された後、この流れは第2の反応器に入り、また水素の80%超が除去された後、流れは第3の反応器に直接入るように、第1の反応器の流出物から好ましくは除去される。したがって、第2の反応器に入る流れ、および第3の反応器に直接入る流れは、ポリエチレンおよび希釈剤を主に含む。好ましくは、実質的に水素のすべて(例えばすべて)が除去された後、この流れは分割される。任意選択のこの分割は、例えばスラリーの質量流量の測定による制御を使用して、および/または、容量フィーダー、もしくは短配列における第2の反応器と第3の反応器との間での流れの切替えを使用して、実現することができる。
【0167】
第2の反応器に、エチレンおよびコモノマーが供給される。コモノマー供給物のかなりの画分は、好ましくは第3の反応器から未精製のリサイクル流である。第2の反応器が、スラリー相または溶液相である場合、それぞれ、希釈剤または溶媒が好ましくは供給される。任意選択で、水素も反応器に供給される。好ましくは、第2の反応器中で重合を実施するための条件は、以下の通りである。
温度:50~290℃、好ましくは55~120℃、より好ましくは50~100℃、例えば60~100℃、より一層好ましくは70~90℃
圧力:0.5~220bar、好ましくは0.75~70bar、より好ましくは1~50bar、より一層好ましくは1~16bar、例えば5~11bar
エチレン分圧:0.2~200bar、好ましくは0.3~10bar、より好ましくは0.3~4bar
H2:エチレンの分圧比:0.000:1~0.05:1、好ましくは0.000:1~0.01:1
滞留時間:0.2分~1時間、好ましくは1分~1時間、好ましくは2~20分
希釈剤:存在しないか(気相の場合)、または希釈剤としてC4~10飽和アルカン(より好ましくはヘキサンまたはイソブタン)、より一層好ましくは希釈剤としてヘキサン
反応器中のコモノマー:エチレンの分圧比:0.001:1~0.2:1、好ましくは0.003:1~0.03:1
【0168】
好ましくは、任意選択のコモノマーは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンまたは1-オクテン、最も好ましくは1-ブテンである。
【0169】
第2の反応器では、総ポリマーの0.5~9.5質量%が好ましくは作製される。好ましくは、総ポリエチレンの少なくとも1.0質量%(例えば、1.2質量%または1.5質量%)が、第2の反応器中で作製される。好ましくは、総ポリエチレンの9.5質量%未満(例えば、9.0質量%または8.5質量%)が、第2の反応器中で作製される。特に好ましくは、総ポリエチレンの1.2~8.5質量%、より好ましくは1.0~7.5質量%、より一層好ましくは1.5~6質量%、最も好ましくは3~6質量%が作製される。
【0170】
本質的に、第2の反応器のポリマー流出物のすべては、好ましくは、第3の反応器に供給される。この流れは、主としてポリエチレンおよび希釈剤を含む。任意選択で、揮発物は流れから部分的に除去された後、第3の反応器に入る。例えば、揮発性コモノマー(例えば、1-ブテン)が流れから除去され得る。第2の反応器に入らない第1の反応器のどのポリマー流出物も、好ましくは第3の反応器に供給される。
【0171】
第3の反応器に、エチレンおよび水素が供給される。第3の反応器が、スラリー相または溶液相である場合、希釈剤または溶媒が、それぞれ好ましくは供給される。コモノマーも、好ましくは供給される。好ましくは、主な量のコモノマー供給物は、第2の反応器からのポリマーと一緒に来る。好ましくは、第3の反応器中で重合を実施するための条件は、以下の通りである。
温度:50~320℃、好ましくは50~120℃、より好ましくは50~100℃、より一層好ましくは70~90℃
圧力:1~220bar、好ましくは1~70bar、より好ましくは1~50bar、より一層好ましくは1~15bar、より一層好ましくは2~10bar
エチレン分圧:0.4~200bar、より好ましくは0.5~15bar、より一層好ましくは0.5~6bar
滞留時間:1分~4時間、好ましくは0.5~4時間、より好ましくは1~2時間
希釈剤:存在しないか(気相の場合)、または希釈剤としてC4~10飽和アルカン(より好ましくはヘキサンまたはイソブタン)、より一層好ましくは希釈剤としてヘキサン
H2:エチレンの分圧比:0.01:1~0.5:1、好ましくは0.02:1~0.2:1
反応器中のコモノマー:エチレンの分圧比:0.0001:1~0.01:1、好ましくは0.0003:1~0.005:1
【0172】
好ましくは、任意選択のコモノマーは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンまたは1-オクテン、より一層好ましくは1-ブテンである。
【0173】
コモノマー/エチレンのモル比は、好ましくは第2の反応器中におけるモル比の5~90%、より好ましくは第2の反応器中のモル比の10~40%である。圧力は、第2の反応器中よりも第3の反応器中の方が低い。
【0174】
第3の反応器では、総ポリマーの30~70質量%、より好ましくは35~65質量%、より一層好ましくは40~60質量%、最も好ましくは40~50質量%が作製される。
【0175】
任意選択で、第3の反応器を出る流れの一部分(portion)または一部(part)は、第2の反応器にリサイクルされる。
【0176】
第3の反応器中での重合後、ポリエチレンは、遠心分離またはフラッシングにより好ましくは得られる。
【0177】
本方法で調製されるポリマー、すなわち、第1の低分子量エチレンポリマーならびに第1および第2の高分子量エチレンコポリマーの好ましい特徴は上で定義した通りである。
【0178】
本重合は、一般にマルチモーダル(例えばトリモーダル)ポリエチレンの調製に適用可能である。すなわち、さらなる態様から見ると、本発明は、
(i)低分子量エチレンポリマーを20~70質量%、
(ii)第1の高分子量エチレンポリマーを20~70質量%、および
(iii)第2の高分子量エチレンポリマーを0.5~30質量%、
を含むポリエチレンの調製方法であって、
連続する工程(a)~(c)
(a)エチレンおよび任意選択のα-オレフィンコモノマーを、第1の反応器中で重合して、低分子量エチレン(LMW)ポリマーを生成する工程、
(b)エチレンおよび任意選択のα-オレフィンコモノマーを、第2の反応器中で重合して、第2の高分子量エチレン(HMW2)ポリマーを生成する工程、および
(c)エチレンおよび任意選択のα-オレフィンコモノマーを、第3の反応器中で重合して、第1の高分子量エチレン(HMW1)ポリマーを生成する工程
を含む、方法を提供する。
【0179】
好ましくは、ポリエチレンはマルチモーダルである。好ましくは、ポリエチレンは、マルチモーダル分子量分布を有する。好ましくは、ポリエチレンは、マルチモーダル組成を有する。
【0180】
本発明のこの方法では、ポリエチレンは、低分子量エチレンポリマー、第2の高分子量エチレンコポリマー、次に第1の高分子量エチレンコポリマーの順序でそのエチレンポリマー成分を調製することにより調製される。好ましくは、(例えばマルチモーダル)ポリエチレンは、最も低分子量、最も高分子量、次に2番目に高分子量の順序でそのエチレンポリマー成分を調製することにより調製される。すなわち、これらの成分の分子量はLMW<HMW1<HMW2の順に増加する。本発明のさらに好ましい第2の方法では、(例えばマルチモーダル)ポリエチレンは、最も少ないコモノマー含有量、最も多いコモノマー含有量、次に2番目に多いコモノマー含有量の順序でそのエチレンポリマー成分を調製することにより調製される。すなわち、これらの成分のコモノマー含有量は、LMW<HMW1<HMW2の順に増加する。この後者の場合、LMWポリマーはまた、一般に最も低分子量のポリマーになることになるが、HMW1またはHMW2のどちらか一方が、最も高分子量のポリマーとなり得る。好ましくは、HMW2が、最も多いコモノマー含有量および最も高分子量を有する。
【0181】
好ましい方法では、第2の高分子量エチレンコポリマーを生成する前記重合中に、前記低分子量エチレンポリマーの少なくともいくらかは、前記第2の反応器中に存在している。さらなる好ましい方法では、低分子量エチレンコポリマーの一部分しか、第2の反応器中に存在していない。好ましくは、低分子量エチレンポリマーの別の一部分は、第3の反応器中の第1の高分子量エチレンコポリマーの重合に直接移送される。さらに好ましい方法では、第1の高分子量エチレンコポリマーを生成する前記重合中に、前記低分子量エチレンポリマーおよび前記第2の高分子量エチレンコポリマーは、前記第3の反応器中に存在している。したがって、前記第2の反応器中には存在していない任意の低分子量エチレンポリマーは、好ましくは第3の反応器に直接向かう。
【0182】
任意選択で、第2および第3の反応器の重合は、単一反応器シェル内の様々な重合条件を含む様々なゾーン中での重合として行うことができる。しかし、これは好ましいものではない。
【0183】
第3の反応器中での重合後、ポリエチレンは、遠心分離またはフラッシングにより好ましくは得られる。
【0184】
こうした方法では、低分子量エチレンポリマーは、好ましくはエチレンホモポリマーである。好ましくは、第1の高分子量エチレンポリマーは、エチレンコポリマーである。好ましくは、第2の高分子量エチレンポリマーは、エチレンコポリマーである。好ましくは、前記第2の高分子量エチレンポリマーの量は、0.5~30質量%、より好ましくは1~15質量%、より一層好ましくは1.5~9.5質量%、より一層好ましくは1.2~8.5質量%(例えば、1.5~6質量%)である。
【0185】
こうした方法では、第2の高分子量エチレンポリマーは、第1の高分子量エチレンポリマーよりも高い質量%のコモノマー含有量を有する。好ましくは、第2の高分子量エチレンコポリマーは、1~20質量%のコモノマー含有量を有する。好ましくは、第2の高分子量コポリマーは、1種または複数種のα-オレフィンコモノマーを含み、特に好ましくは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよびそれらの混合物から選択される。特に好ましくは、第2の高分子量コポリマーは、エチレン1-ブテンコポリマーである。
【0186】
こうした方法では、好ましくは、第1の高分子量エチレンコポリマーは、0.3~2.5質量%のコモノマー含有量を有する。好ましくは、第1の高分子量コポリマーは、1種または複数種のα-オレフィンコモノマーを含み、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよびそれらの混合物から選択される。特に好ましくは、第1の高分子量コポリマーは、エチレン1-ブテンコポリマーである。
【0187】
こうした方法では、好ましくは、第2の高分子量コポリマーは、前記第1の高分子量コポリマーよりも高い重量平均分子量を有する。好ましくは、第2の高分子量コポリマーは、200,000~2,000,000g/molの重量平均分子量を有する。好ましくは、第1の高分子量コポリマーは、200,000~700,000g/molの重量平均分子量を有する。
【0188】
こうした方法では、好ましくは、第1の高分子量コポリマーは、40~60質量%の量で存在している。好ましくは、低分子量エチレンポリマーは、エチレンホモポリマーである。好ましくは、低分子量エチレンポリマーは、50~4000g/10分のMFR2を有する。
【0189】
こうした方法では、好ましくは、ポリエチレンは、945~962kg/cm3の密度、および/または0.15~0.6g/10分のMFR5を有する。
【0190】
こうした方法では、好ましくは、各重合はチーグラーナッタ触媒によるものである。
【0191】
各ポリマー成分およびポリエチレンのさらに好ましい特徴は、上で記載した通りである。さらに、各重合段階を実施するのに好ましい条件は、第2の好ましい方法に関して上で定義した通りである。
【0192】
上で記載した本方法を、
図1に概略的に示す。
図1は、第1(LMWポリマー)の反応器由来の流れが、第2(HMW2ポリマー)反応器と第3(HMW1ポリマー)の反応器の間でどのように分割されるかを示している。
図1はまた、この方法が希釈剤および/またはコモノマーをいかに有利にリサイクルすることができるかも示している。
図1中の点線は、ポリエチレン生成物から分離されたコモノマーの各反応器へのリサイクルを例示している。
図1中の薄い実線は、精製形態または未精製形態のどちらか一方の希釈剤のリサイクルを例示している。本明細書で使用する場合、未精製希釈剤とは、ワックス(ヘキサンに可溶なPE画分)が除去されておらずかつコモノマーが完全には除去されていない希釈剤を指す。対照的に、水素は、例えば第3の反応器にリサイクルされる前に、任意選択で除去されてもよく、また好ましくは除去される。それに対応して、希釈剤を精製するとは、ワックスおよびコモノマーを本質的に含まない希釈剤を意味する。
【0193】
好ましい方法では、精製希釈剤は、リサイクルされる総希釈剤の30~100%を占める。好ましくは、第1(LMWポリマー)の反応器には、精製希釈剤が供給される。好ましくは、第2(HMW2ポリマー)の反応器には、非精製希釈剤および/または精製希釈剤が供給される。好ましくは、第3(HMW1ポリマー)の反応器には、非精製希釈剤および/または精製希釈剤が供給される。さらに、ある量の新しい希釈剤(例えば、0.1~4体積%)が、反応器系、例えば損失した希釈剤に取って替わるために、好ましくは添加される。
【0194】
さらに好ましい方法では、第1(LMWポリマー)、第2(HMW2ポリマー)および第3(HMW1ポリマー)の反応器には、新しいコモノマーおよび/またはリサイクルしたコモノマーが供給される。好ましくは、コモノマーは、第1(LMWポリマー)の反応器には供給されない。好ましくは、第3(HMW1)の反応器へのコモノマーの総供給量の40質量%超、より一層好ましくは60質量%超(例えば、40~80質量%)が、希釈剤、および第2(HMW2)の反応器由来のポリマーの流れと一緒にやって来る。
【0195】
図1に示されている方法の従来法(分子量およびコモノマー含有量が増加したポリマーを順に作製するもの)に対する利点には、以下の点が含まれる。
・コモノマー濃度は、HMW2ポリマーの反応器中よりもHMW1ポリマーの反応器中の方が通常低いので、分離由来のコモノマーの総質量流量が削減される。このことにより、希釈剤からおよびポリエチレンワックスからコモノマーを分離するのが一層容易になり、また、より少ない体積により、コモノマーの取り扱いが一層容易になりかつより安価になる。また、コモノマーの一部がこのリサイクル系において望ましくない化学反応を受ける場合に有利である。より少ないコモノマーを必要とするグレードへ生成物を移行する間の余分なコモノマーの貯蔵に必要な体積がより小さくなる。
・触媒濃度がHMW2ポリマーの反応器においてかなり高いため、および圧力が本方法の初期よりも通常高くなるため、HMW2ポリマーの反応器の容積はかなり小さくすることができる。また、HMW2ポリマーの反応器中では、HMW2ポリマー工程における反応器系中の触媒の滞留時間が従来法における場合よりも短いため、およびチーグラー触媒は、滞留時間の増加に伴ってコモノマーを取り込む能力が低下するため、通常、非常に高いコモノマー含有量を取り込むのは一層容易である。
・リサイクル希釈剤の高い画分を、非精製希釈剤として利用することができる。
・3つの反応器すべてにおいて、等しい総滞留時間(実施例を参照されたい)では、触媒消費がより低い。
・コモノマーおよび希釈剤のブレンドを第2の反応器にリサイクルすることが可能である。
・LMWポリマーがコポリマーである場合、またはコモノマーの少量がLMWポリマー中で許容することができる場合、第3の反応器由来の希釈剤を、コモノマーの除去なく第1の反応器に戻してリサイクルすることが可能である。
【0196】
3つの工程および3つの反応器配列に関連して重合について説明してきたが、当然ながら、さらなる反応器を含むより長い(例えば、4つ以上の工程)配列に組み込んでもよいことを、ここではやはり留意すべきである。例えば、使用される方法に関わらず、第3の反応器の後ろに反応器が1つ、任意選択で存在してもよい。これにより、好ましくはコポリマーが生成する。この場合、反応器は総ポリマーの1~30質量%、より好ましくは2~20質量%(例えば、2~9.5質量%)、より一層好ましくは3~15質量%(例えば、4~9.5質量%)を生成させる。同様に、上で言及した第1の反応器の前に、反応器(例えば、予備重合用反応器)が1つ存在してもよい。
【0197】
下流での加工
最終ポリエチレンがスラリー用反応器から得られると、該ポリマーはそこから取り出され、希釈剤が好ましくはフラッシングまたはろ過により該ポリマーから分離される。希釈剤および未転化コモノマーの主要部分は、好ましくはリサイクルされて、重合反応器に戻される。好ましくは、次に、該ポリマーは乾燥される(例えば、反応器由来の液体およびガスの残留物を除去するため)。任意選択で、該ポリマーは脱灰工程、すなわち(任意選択で炭化水素液体または水と混合した)アルコールによる洗浄に供される。好ましくは、脱灰工程がない。
【0198】
困難さを伴わずにポリエチレンを取り扱うことができるようにするため、重合プロセス内およびその下流の両方で、反応器からのポリエチレンは、好ましくは高いかさ密度の比較的大きな粒子(例えば、該ポリマー粉末の20質量%未満がサイズ100μmよりも小さく、かつゆるめかさ密度が300kg/m3よりも大きい)を有することにより、好ましくは易流動性状態にある。
【0199】
好ましくは、重合からペレット化向け押出成形器の出口までのプロセスが、不活性(例えば、N2)ガス雰囲気下で実施される。
【0200】
酸化防止剤が好ましくはポリエチレンに添加される(加工安定化剤および長期酸化防止剤)。酸化防止剤として、本目的のためのものとして公知のすべての化合物タイプ(立体障害または半立体障害があるフェノール、芳香族アミン、立体障害のある脂肪族アミン、有機ホスフェート、および硫黄含有化合物(例えばチオエーテル))を使用することができる。他の添加物(粘着防止剤、カラーマスターバッチ、帯電防止剤、スリップ剤、充てん剤、UV吸収剤、潤滑剤、酸中和剤およびフッ素エラストマー、ならびに他のポリマー加工剤)を、任意選択でポリマーに添加してもよい。
【0201】
ポリエチレンがパイプ製造に使用されることになる場合、顔料(例えばカーボンブラック)が好ましくは添加された後、押出成形される。顔料は、マスターバッチの形態で好ましくは添加される。
【0202】
ポリエチレンは、好ましくは押出成形されてペレットに造粒される。好ましいペレットは、400kg/m3を超えるゆるいかさ密度を有し、かつサイズが2mmより小さいペレットを10質量%未満で有するものである。
【0203】
ポリエチレンのペレット化後に、さらなる添加物(例えば、ポリマー加工剤または粘着防止剤)を加えてもよい。この場合、添加物は、例えば物品に成形される前に、それと一緒に混合されるマスターバッチおよびペレットとして好ましくは添加される。
【0204】
ポリエチレン組成物
本発明のポリエチレン組成物は、少なくとも以下の特性の1つを好ましくは有する
【0205】
ポリエチレンは、例えば、以下の実施例において指定する条件下で、破壊までのFNCT時間が、好ましくは10時間を超え、より好ましくは15時間を超え、より一層好ましくは20時間を超える。破壊までの最大FNCT時間は、例えば50時間とすることができる。
【0206】
ポリエチレンは、例えば、以下の実施例において指定する条件下で、+23℃におけるシャルピー衝撃が、好ましくは5kJ/m2を超え、より好ましくは10kJ/m2を超え、より一層好ましくは12kJ/m2を超える。最大のシャルピー衝撃は、例えば、50kJ/m2とすることができる。
【0207】
ポリエチレンは、例えば、以下の実施例において指定されている条件下で、ショア硬度が、好ましくは少なくとも30、より好ましくは少なくとも40、より一層好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも60を有する。最大のショア硬度は、90とすることができる。
【0208】
ポリエチレンは、例えば、以下の実施例おいて指定する条件下で、摩耗が、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満、より一層好ましくは25%未満を有する。最小の摩耗は、5%とすることができる。
【0209】
本発明のポリエチレン組成物の利点は、実現し得る特性の組合せである。本発明の好ましいポリエチレン組成物は、例えば、以下の実施例において指定されている条件下で測定すると、以下の特性の少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、より一層好ましくは4つのすべてを有する:
破壊までのFNCT時間:>10時間
シャルピー衝撃:>5kJ/m2
ショア硬度:>30
摩耗:<40%
【0210】
より一層好ましくは、本発明のポリエチレン組成物は、例えば、以下の実施例において指定されている条件下で測定すると、以下の特性の少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、より一層好ましくは4つのすべてを有する:
破壊までのFNCT時間:>20時間
シャルピー衝撃:>12kJ/m2
ショア硬度:>50
摩耗:<25%
【0211】
用途
本発明のポリエチレンは、ブロー成形などの任意の成形用途において、またはパイプ押出成形およびフィルム押出成形などの押出成形において使用することができる。しかし、好ましくは、ポリエチレンは、押出成形、とりわけパイプ押出成形において使用される。
【0212】
本発明のポリエチレンは、パイプ用途に好ましくは使用される。好ましくは、例えばPE80またはPE100標準による、HDPE製パイプにおいて使用される。パイプは、例えば、水およびガスの分配、下水道、廃水、農業用途、スラリー、化学品などに使用することができる。
【0213】
本発明について、以下の非限定的な実施例および図面を参照しながら以下に説明する。
【実施例】
【0214】
(実施例)
ポリマーの測定法
特に明記しない限り、以下の表に示されているポリマー試料に関して、以下のパラメータを測定した。
【0215】
MFR2、MFR5およびMFR21は、ISO1133に従って、それぞれ2.16、5.0および21.6kgの負荷で測定した。それらの測定は、190℃で行った。
【0216】
分子量および分子量分布、Mn、MwおよびMWDは、以下の方法に従って、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した:重量平均分子量Mw、および分子量分布(MWD=Mw/Mn、Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である)は、ISO16014-4:2003に基づく方法により測定する。屈折率検出器およびオンライン粘度計を装備したWaters社のAlliance GPCV2000機器を、1 PLgel GUARD+3 PLgel MIXED-B、および溶媒として1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB、250mg/Lの2,6-ジtertブチル-4-メチル-フェノールにより安定化したもの)を用い、140℃で一定流速1mL/分で使用した。試料溶液200μlを一分析あたり注入した。カラムセットは、1.0kg/mol~12000kg/molの範囲の、15という狭い分子量分布のポリスチレン(PS)標準による、汎用キャリブレーション(ISO16014-2:2003に従う)を使用して較正した。これらの標準は、Polymer Labs社からのものであり、1.02~1.10のMw/Mnを有していた。Mark Houwink定数は、ポリスチレンおよびポリエチレン(PSに関しては、K:0.19×10-5dL/gおよびa:0.655、PEに関しては、K:3.9×10-4dL/gおよびa:0.725)について使用した。試料はすべて、GPC機器に試料注入する前に、安定化TCB4mL中に(140℃で)ポリマー0.5~3.5mgを溶解し、かつ時々震とうしながら140℃で3時間、および160℃でさらに1時間保持することにより調製した。
【0217】
融点は、Perkin Elmer DSC-7示差走査熱量測定で、ISO11357-1に従って測定した。加熱曲線は、10℃/分で、-10℃~200℃とした。200℃で10分間保持した。冷却曲線は、10℃/分で、200℃~-10℃とした。融点は、第2の加熱の吸熱ピークとして採用した。結晶化度は、観察された融解ピークを完全な結晶ポリエチレンの融解熱(一般に290J/gが採用される)で除算することにより算出した。
【0218】
コモノマー含有量(質量%)は、C13-NMRにより較正したフーリエ変換赤外分光(FTIR)に基づいて決定した。
【0219】
材料の密度は、グラジエント液体としてイソプロパノール-水を用い、ISO1183:1987(E)の方法Dに従って測定する。試料を結晶化させる場合、プラークの冷却速度は15℃/分とした。調節時間は16時間とした。
【0220】
ポリマーのレオロジーは、ISO6721-10に従い、並列式プレート形状、直径25mmのプレート、および1.2mmの間隔を有するRheometrics社のRDA II Dynamic Rheometerを使用して、窒素雰囲気下、190℃で周波数掃引することにより測定した。これらの測定により、貯蔵弾性率(G')、損失弾性率(G")、および複素粘度(η*)と共に複素弾性率(G*)が、すべて周波数(ω)の関数として得られた。これらのパラメータは以下の通り関連づけられる:任意の周波数ωについて:複素弾性率:G*=(G'2+G"2)1/2。複素粘度:η*=G*/ω。弾性率に使用した単位は、Pa(またはkPa)であり、粘度に使用した単位はPa sであり、周波数(1/s)である。η*
0.05は、周波数0.05s-1における複素粘度であり、η*300は、300s-1における複素粘度である。経験的Cox-Merz規則に従い、所与のポリマーおよび温度について、この動的方法により測定される周波数の関数としての複素粘度は、安定状態の流れ(例えばキャピラリー)に関する剪断速度の関数としての粘度と同じである。
【0221】
ベンチスケールの重合操作に対する活性係数は、以下の式により算出される:
【0222】
【0223】
多分散指数であるPIは、RDA周波数掃引における交錯点であり、G'はG"に等しく、PI=105Pa/G'により与えられる。
【0224】
固有粘度:粘度数は、EN-ISO1628-3:20に従い、135℃でデカリン中で測定し、この固有粘度から以下の通り算出した。各重合工程後の測定から、Mv(粘度平均分子量)は、頻度因子0.0475ml/g、および指数0.725を使用するMarks-Houwink式により算出した。これにより、各工程において作製されたポリマーのMvの計算が、以下の追加的な式によって可能となる。
【0225】
【0226】
式中、Mw、MnおよびMvは、それぞれ重量平均、数平均分子量および粘度平均分子量であり、Wはポリマーの質量分率であり、iはポリマー成分であり、nは工程後の総成分数である。最初の2つの式は厳密なものであり、3番目の式は経験的なものである。さらに、各ポリマー成分のMw/Mnは7として採用した。
【0227】
ポリマー組成物の測定法
特に明記しない限り、以下のパラメータは、ISO293-186、ISO1872-2-1197およびISO1873-2-1997を参照して、Collin 300 P圧縮用モルダーで圧縮成形した4mmプレートについて測定した。
【0228】
破壊までのFNCT時間は、ノッチ深さが全面で1.6mmの圧縮成形プレートから粉砕した、10mmの圧縮成形ドッグボーンについて、脱イオン水中、2質量%のArkopal N110中、80℃の温度で負荷8.5MPaを用い、ISO16770に従って測定する。
【0229】
シャルピー衝撃は、圧縮成形試験片上のV型ノッチ試料を使用してISO179-1/1eAに従って、+23℃および-20℃で測定する。
【0230】
ショア硬度:ショアDは、開始した任意の亀裂により、デジタルショア測定器、Bareiss型HHP-2001上で測定する。試料の調整は、ISO291:1997に従って行う。
【0231】
摩耗抵抗性は、23℃において10Nの力で、ISO4649のタイプB試験(非回転試料)に従って測定する。
【0232】
傷つき性:ポリマー組成物の圧縮成型プレートを+23℃、1mmの先端径を備えたErichsen社のスクラッチ傷抵抗性試験器により、10Nという通常の力で引っ掻いた。引っ掻いたプレートをスクラッチ傷に対して垂直に裁断し、横断面の顕微鏡写真を撮影し、この点からスクラッチ傷までの深さを測定した。
【0233】
小規模試験に関すると、この試験のためにパイプを作製して試験することができないので、SCGの尺度として化合物に対するFNCT測定値を使用すること、およびRCPの尺度として化合物に対するシャルピー衝撃を使用することが通例である。同様に、ショア硬度Dは試料の硬度を測定するものであり、スクラッチ傷発生が起こり得る可能性の尺度である。ISO4649による摩耗抵抗性とは、試験の同一指定条件下で、参照化合物が定義した質量損失を引き起こすことになる摩耗シートにより、摩耗にさらされた後の試験材料の体積損失を測定するものである。例えば、ポリマー表面に沿った摩耗スラリーの移動により、摩耗程度の測定をも実現する他に、硬度試験のように、スクラッチ傷が発生し得る可能性の尺度も提供する。
【0234】
実験
(実施例1~4)
遷移金属としてTiを含む、従来的なチーグラーナッタ触媒を使用した。この触媒は、US4792588に記載されている。チタン含有量は、3.4質量%であった。
【0235】
重合は、撹拌器および温度制御システムを装備した8リットルフラスコ中で実施した。触媒は、泥状として加えた。TEA、すなわちトリエチルアルミニウムを、活性剤として使用した。すべての操作について、同じコモノマーの供給システムを使用した。手順は、以下の工程を含んだ:
【0236】
低分子量エチレンポリマーの重合:
反応器を窒素でパージし、110℃に加熱した。次に、水素を20℃で充てんし、3.05barの圧力を与えた。次に、3000mlの液状ヘキサンを反応器に加え、300rpmで撹拌を開始した。反応器の温度は、70℃とした。次に、共触媒およびTEAを泥中で5分間事前に接触させ、ヘキサン800mlと共に充てんした。次に、エチレンを供給して合計圧力を12.3barにした。次に、質量流量計により、エチレンを連続的に供給した。十分な量の粉末が作製されたら、重合を停止し、ヘキサンを蒸発させる。
【0237】
第1の高分子量エチレンの重合:
水素を20℃で0.16barまで充てんする。次に、撹拌を300rpmで開始する。次に、反応器を>70℃に加熱する。温度が72℃に達したら、1-ブテン35mlを加え、エチレンを供給し、合計圧力5.7bar gにする。次に、エチレンおよび1-ブテンを連続的に供給する。十分な量の粉末が作製されたら、重合を停止し、ヘキサンを蒸発させる。
【0238】
第2の高分子量エチレンポリマーの重合:
反応器を>70℃に加熱し、3000mlのヘキサンを充てんして、300rpmで撹拌を開始する。温度が72℃に到達したら、エチレンおよび1-ブテン180mlを供給し、合計圧力5.3barにする。次に、エチレンおよび1-ブテンを連続的に供給した。十分な量の粉末が作製されたら、重合を停止し、ヘキサンを蒸発させる。
【0239】
実施例1、3および4において、重合は、(i)低分子量エチレンポリマー、(ii)第1の高分子量エチレンポリマー(HMW1)、および(iii)第2の高分子量エチレンポリマー(HMW2)の順序で実施した。したがって、HMW1を重合する場合、LMWポリマーが存在しており、またHMW2を重合する場合、LMWポリマーとHMW1ポリマーの両方が存在している。実施例2では、重合は、(i)低分子量エチレンポリマー、(ii)第2の高分子量エチレンポリマー(HMW2)、および(iii)第1の高分子量エチレンポリマー(HMW1)の順序で実施した。したがって、HMW2を重合する場合、LMWポリマーが存在しており、またHMW1を重合する場合、LMWポリマーとHMW2ポリマーの両方が存在している。
【0240】
4つの比較例の重合も実施した。第1の比較例重合(C1)は、第2の高分子量エチレンポリマーの重合時に1-ブテンを添加しないことを除き、上と同じ方法で実施した。比較例重合(C2およびC4)は、第1の高分子量エチレンの重合後に重合を停止した以外、上と同じ方法で実施した。比較例重合(C3)は、より多い量(10質量%)の第2の高分子量(HMW2)ポリマーで行った。
【0241】
重合手順および重合結果のさらなる詳細は表1Aに与えられており、得られたポリエチレンポリマーの詳細は、以下の表1Bにまとめられており、ここでRlは第1の反応器における重合およびその生成物を指し、Rllは第2の反応器における重合および第1の反応器と第2の反応器の生成物を一緒にしたものを指し、またRlllは第3の反応器における重合および第1の反応器と第2の反応器と第3の反応器の生成物を一緒にしたものを指し、この生成物が最終的なポリエチレン生成物である。
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
重合の活性結果は、工程Rlの活性に対するすべての工程の有効平均活性の比が、他の3工程重合および2工程重合と比較して、第2の工程におけるHMW2に関する3工程操作に関して10%超高い点で、驚くものであった。この比は、所与の総滞留時間で、所与の触媒による、所与の製造速度における、製造プラント中での触媒消費の逆数の関連尺度である。これは、第2の重合工程におけるものであるが第3の工程におけるものではないHMW2ポリマーの製造では、連続的な商業生産において、触媒の消費がかなり低くなることが期待されることを意味している。同様に、第2の重合工程におけるものであるが第3の工程におけるものではないHMW2ポリマーの製造は、2工程だけでポリマーを製造するよりも、触媒の消費がかなり低くなることが期待される。触媒消費のコストは、商業生産ではかなりの製造コストであり、したがって、この低減はかなりの節約を示して利益を向上させる。また、第3の反応器中におけるHMW2ポリマーの製造は、2工程だけでポリマーを製造するのと比較すると、かなり有利である。
【0247】
ポリマーは、L/D=25を有するPrism16押出成形器で、Irganox B215(酸化防止剤)1550ppmと一緒に配合した。押出成形器は、出力速度1kg/時、500rpm、非真空および窒素のフラッシングにより実施した。押出成形器の温度プロファイルは、180~200×4~180(ダイ)とした。次に、得られたペレットはISO293-1986、1872-2および1873-2に従い、4mmのプレートにプレスした。次に、これらのプレートから適切な試験片を作製した。
【0248】
これらの結果を以下の表2に示す。
【0249】
【0250】
実施例1~4およびC1~C4の最終ポリマーは、非常に類似しているかまたは同じ密度値を有しており、また非常に類似したMFR5値を有しており、このことは、これらの剛性も、それらの実際の押出成形の加工性がそうであるように、非常に類似していることを意味している。その結果、それらを適正に比較することができる。
【0251】
驚くべきことに、本発明のポリエチレン組成物は、比較例のポリマー組成物のすべてよりも、はるかに高いFNCT結果を有する。驚くべきことに、FNCTは、より低い含有量の第2の高分子量エチレンコポリマーを含む本発明のポリエチレン組成物の方が、より高い含有量の同じエチレンコポリマーを有するものよりも高い。これは、
図2にも示されている。
【0252】
さらに一層驚くべきことに、RCP抵抗性を示すシャルピー衝撃は低下したことはなく、これは記載した通り、ポリマーに修飾を行うと通常起こり、これによりFNCTが向上する。これは、
図3および
図4に示されている。室温でのシャルピー衝撃(
図3)と低温のシャルピー衝撃(
図4)の両方が、より低い含有量の第2の高分子量エチレンコポリマーを含むポリエチレン組成物の方が、より高い含有量の同じコポリマーよりも優れていた。
【0253】
傷つき性は、より低い含有量の第2の高分子量エチレンコポリマーを含むポリエチレン組成物の方が、より高い含有量の同じコポリマーよりも優れていること(より低い値)がさらに見いだされた。これは、
図5に示されている。摩耗抵抗性は、より低い含有量の第2の高分子量エチレンコポリマーを含むポリエチレン組成物の方が、より高い含有量の同じコポリマーよりも優れていること(より低い値)も見いだされた。これは、
図6に示されている。第3の成分/画分は、その高いコモノマー含有量のため、相対的に軟成分であるにもかかわらず、ショア硬度さえも維持されていた。これは、
図7に示されている。
【0254】
機械的特性、具体的にはSCGおよびRCPのこうしたかなりの改善は、こうした少量の第2の高分子量コポリマーの組み込みにより得ることができたというのは印象的である。さらに一層望ましいことに、結果(ショア硬度、スクラッチ傷発生抵抗性および摩耗抵抗性)は、本発明のポリエチレンが、当分野におけるパイプの取り扱いにより、まず第1に、スクラッチ傷ができる、欠けるまたはノッチができるようになることに対する耐性がより高いことを示しており、このことは、亀裂に伝播する恐れがある欠陥の数およびサイズも低減することを意味する。この特性の組合せは、パイプ、特に耐圧用パイプの製造に非常に望ましい。
【0255】
比較的高い分子量および比較的高いコモノマー含有量を有する第3のポリマーは、ポリエチレン組成物において、鎖の結びつきおよび絡み合いのレベルを向上しているものと仮定される。鎖の結びつきおよび絡み合いのレベルのこの向上は、初期の亀裂における応力場に関連するエネルギーを消失させ、亀裂が伝播する可能性を低減することになる。さらには、本発明のポリマーは、調製にも便利である。比較的少量の第2の高分子量コポリマーは、比較的小さな反応器中、短い滞留時間で、あるいは非常に従来的な反応器条件が使用される中サイズの反応器中で、作製することができる。