(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ジェットエンジンのコアエンジンを洗浄するための装置、方法、およびアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B08B 3/02 20060101AFI20231006BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20231006BHJP
B05B 3/02 20060101ALI20231006BHJP
B05B 3/12 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
B08B3/02 E
F01D25/00 R
B08B3/02 F
B05B3/02 B
B05B3/12
(21)【出願番号】P 2021506288
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2019070742
(87)【国際公開番号】W WO2020030515
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】102018119094.8
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503371373
【氏名又は名称】ルフトハンザ・テッヒニク・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】LUFTHANSA TECHNIK AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・デーヤ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】ジーナ・グラッセ
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07445677(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/02
F01D 25/00
B05B 3/02
B05B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェットエンジンのコアエンジンを洗浄するための装置であって、
前記コアエンジンに洗浄媒体を導入するように構成される
ノズル設備
と、前記ジェットエンジンのファンのシャフトへの回転を固定した態様での接続を行う手段とを有し、
洗浄媒体を供給するように回転継手(8)を介して前記ノズル設備に接続された接続ライン(10)を有し、
前記ノズル設備は、
複数のノズルを有し、各ノズルの噴霧角度は20~120°であり、前記ノズルは、少なくとも1つのフラットジェットノズルと、少なくとも1つのフルコーンノズルまたはホロコーンノズルとを
含み、
前記装置が前記接続を行う手段を使用して前記シャフトに固定されているときに、各ノズルの主出口方向と、前記装置の回転軸とは、-5°~30°の角度αをなすように前記ノズル設備の前記ノズルが配向されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記装置は、
少なくとも1つの
フラットジェットノズルと
、少なくとも1つのフルコーンノズルとを有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各ノズルの噴霧角度は、
60°~90°であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
ジェットエンジンと、前記コアエンジンの洗浄を実行するように前記ジェットエンジンに取り付けられた請求項1
に記載の装置とのアセンブリであって、
前記アセンブリは、
ア)前記ノズル設備が前記ジェットエンジンの前記ファンの前記シャフトに
回転を固定した態様で接続され、
イ)前記ジェットエンジンの前記ファンの回転軸および前記ノズル設備の回転軸が実質的に同心になるように配置され、
ウ)前記ノズルの噴射が実質的に妨げられない態様で前記ファンの平面を通過できるように、前記ノズルの出口開口部が軸方向において前記ファンの平面の後方に配置され、および/または、前記ノズルがファンブレードの間の空間に配置されるか若しくはファンブレードの間の空間に向けて揃えられ
、
エ)前記ノズルの出口開口部は、前記コアエンジンのインレットガイドベーンの入口面から1~25cm
の間隔を有している
ことを特徴とする、アセンブリ。
【請求項5】
前記各ノズルの主出口方向と、前記コアエンジンのインレットガイドベーンのプロファイルコードとは、-75°~75°
の角度βをなしていることを特徴とする、請求項
4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記ノズル設備の前記ノズルの前記出口開口部は、ジェットエンジンの回転軸から、第1圧縮段の上流へ向いた入口開口部の半径の0.6~1.2倍
に相当する径方向の間隔をもって配置されていることを特徴とする、請求項
4に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記ノズルの出口開口部は、前記コアエンジンのインレットガイドベーンの入口面から1~25cm
の間隔を有していることを特徴とする、請求項1
に記載の装置によってジェットエンジンのコアエンジンを洗浄するための方法。
【請求項8】
前記各ノズルの主出口方向と、前記コアエンジンのインレットガイドベーンのプロファイルコードとは、-75°~75°
の角度βをなしていることを特徴とする請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
液体洗浄媒体を、平均液滴サイズ10~500μmで前記ノズルから出す、
請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
液体洗浄媒体を、0.5~100バール
の圧力で、前記ノズルに供給する、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
ノズル1本あたりの液体洗浄媒体のスループットは毎分1~200リットル
であり、および/または、前記ジェットエンジンを毎分50~500
のファン回転速度で回転させることを特徴とする、請求項
7に記載の方法。
【請求項12】
気体に液体を分散させた分散液を洗浄媒体として使用する、請求項
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットエンジンのコアエンジンに洗浄媒体を導入するように構成されるとともにファンのシャフトへの回転固定式の接続手段となっているノズル設備を有し、洗浄媒体を供給するように回転継手を介してノズル設備に接続された接続ラインを有する、ジェットエンジンのコアエンジンを洗浄するための装置に関する。
【0002】
本発明の主題は、さらにそのような装置とジェットエンジンのアセンブリにも関する。
【背景技術】
【0003】
民間の亜音速旅客機のジェットエンジンは、今日主にターボファンジェットエンジンである。このようなターボファンジェットエンジンは、灯油の実際的な燃焼工程が実行されるコアエンジンを備えている。コアエンジンは、公知の態様で、1つ以上の圧縮機段と、燃焼室と、高温の燃焼ガスが機械的エネルギーの一部を放出する1つ以上のタービン段とを有している。この機械的エネルギーは、一方では、圧縮機段を駆動するために必要であるが、他方では、コアエンジンの上流に配置され、典型的にはコアエンジンよりも大幅に大きな直径を有し、エンジンを通過する空気全体の大部分をバイパス空気流または2次空気流としてエンジンを通過させるターボファンを駆動するために必要である。このバイパス空気流によって、ターボファンはエンジンの推力出力の大部分を発生させるとともに、バイパス空気流の比率が高いことによってエンジンの環境適合性が向上し、特に亜音速での効率が向上し、コアエンジンの高温排気流の騒音低減性についても向上する。
【0004】
ジェットエンジンは、動作中、コアエンジンの燃焼残留物や、燃焼またはバイパス空気によって吸引された空気汚染物、例えば、ほこり、昆虫、塩水噴霧、または他の環境汚染物のそれぞれによって汚染されている。これらの汚染物は特にコアエンジンの圧縮機のローターブレードおよび/またはステーターブレード上にも層を形成し、それが表面品質を阻害し、結果的にエンジンの熱力学的効率を阻害する。
【0005】
ジェットエンジンは、汚染物を除去するために洗浄される。このために、国際公開第2005/077554号では、ファンとコアエンジンを洗浄するようにターボファンエンジンのファンの上流に複数の洗浄ノズルを配置することが知られている。
【0006】
国際公開第2008/113501号は、ファン上に配置され、洗浄動作中に連動して回転する、冒頭で記載した種類の装置を開示している。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、良好な洗浄性能を有する冒頭に述べたタイプの装置、方法、およびアセンブリを実現するという目的に基づく。
【0008】
この目的を達成するために、本発明によれば、ノズル設備は、少なくとも1つのフラットジェットノズルと、少なくとも1つのフルコーンノズルまたはホロコーンノズルとを有する。
【0009】
本発明の文章で使用されるいくつかの用語を先に説明する。ジェットエンジンという用語は、航空宇宙分野のアプリケーションのあらゆる移動式ガスタービンのことをいう。本発明の文章において、この用語は、特にターボファンエンジンのことをいい、当該ターボファンエンジンでは、実際のガスタービンがいわゆるコアエンジンを形成し、比較的大きな直径を有するとともにバイパス気流を生成するターボファンがコアエンジンの上流に配置されている。コアエンジンという用語は、燃料、典型的には灯油の燃焼工程が実行されるジェットエンジンの実際的なガスタービンのことをいう。このようなコアエンジンは、通常、1つ以上の圧縮機段と、燃焼室と、高温の排気ガスによって駆動される1つ以上のタービン段とを有している。
【0010】
ノズル設備は、洗浄媒体用の複数のノズルと、ノズル設備を当該複数のノズルはジェットエンジンのファンのシャフトに回転固定式に接続する手段とを備えている。当該手段については、以降でより詳細に説明する。
【0011】
洗浄媒体は、接続ラインと回転継手とを介してノズル設備に供給される。本発明の文章における接続ラインという用語は、広く解釈されるべきであり、例えば回転継手上における(連動して回転しない)静止接続片を構成する場合もある。
【0012】
特許請求の範囲で構成されていない供給設備は、(例えば、1つ以上のタンク内の)洗浄媒体を提供し、運転駆動設備、ポンプ、パワーアキュムレータなどを備えてもよい。好ましくは、供給設備は、移動可能であって特に駆動可能なユニットとして構成される。
【0013】
コーンノズルは、実質的に回転対称で、ホロコーン(ホロコーンノズル)またはフルコーン(フルコーンノズル)の形状をしたスプレー噴射を行う。主出口方向は、コーンの対称軸に対応している。
【0014】
フラットジェットノズルは、主出口方向に垂直な第1空間方向において、主出口方向および第1空間方向に垂直な第2空間方向よりも実質的に大きい噴霧角または開口角をそれぞれ有する平坦なスプレー噴射を行うものである。小さい(鋭い)開口角は、例えば、1°~5°であり得る。
【0015】
本発明によれば、コーンノズルの中でもフルコーンノズルが好ましい。
【0016】
本発明では、フラットジェットノズルと、コーンノズルの特にフルコーンノズルとの組み合わせにより、コアエンジン内の洗浄性能が大幅に向上することを確認した。フラットジェットノズルは、前段圧縮領域(上流側)の洗浄性能を向上させる効果がある。コーンノズルは、コアエンジンの後段領域(下流側)の洗浄性能を向上させる効果がある。これは、動作条件(洗浄媒体の供給速度と圧力)が同じであれば、液体洗浄媒体が、コーンノズルによってより細かく霧化されるとともに、よりゆっくりと噴射されるためである。このようにして、洗浄媒体は、コアエンジン内の流れに良好に追従でき、細かく分散された液滴として、より深く浸透できる。
【0017】
本発明に係る装置は、好ましくは各場合に少なくとも1つの、好ましくは各場合に2つのフラットジェットノズルとフルコーンノズルとを有する。2つのフラットジェットノズルと2つのフルコーンノズルとの組み合わせにより、特に良好な洗浄性能が得られる。
【0018】
各ノズルの噴霧角度は、20°~120°、好ましくは60°~90°であることが好ましい。ここでいう噴霧角度とは、スプレーコーンやスプレーファンの最大開口角度のことをいう。
【0019】
本発明のさらに好ましい一実施形態によれば、各ノズルの主出口方向と装置の回転軸とは、-45°~45°、好ましくは-5°~30°の角度αをなしている。この角度は、各場合において洗浄するエンジンのタイプに合わせることが好ましい。洗浄動作中の装置の回転軸は、エンジンの回転軸に対応する。角度の負の代数的符号は、外側に向かって回転軸から遠ざかる主出口方向を意味する。角度の正の代数的符号は、内側に向かって回転軸を指す主出口方向を意味し、これは一般的に好ましいものである。
【0020】
本件の他の主題は、本発明に係る装置を用いてジェットエンジンのコアエンジンを洗浄するための方法に関するものである。この方法では、ノズルの出口開口部は、コアエンジンのインレットガイドベーンの入口面から1~25cm、好ましくは4~15cmの間隔を有している。
【0021】
本発明では、この間隔の選択は、スプレーの噴射がコアエンジンに入射する前に既に所望の分布度または所望の液滴サイズになることに大きく寄与することを確認している。これにより、一方では、入口開口部の完全な幅と高さ、または、コアエンジンのインレットガイドベーンの完全な幅と高さをそれぞれ掃引でき、他方では、所望の分布度または細分化度で入射するので、所望の洗浄効果が得られる。
【0022】
この方法では、この間隔の範囲と、装置の記載として上述した角度αの好ましい範囲とを組み合わせることが特に有益である。ここでは、インレットガイドベーンの入口面からノズルまでの間隔は、設けられた開口角度(噴霧角度)αでインレットガイドベーンが全領域にわたって覆われるように前述の範囲内で選択されることが好ましい。ここでのスプレーコーンの中心軸は、インレットガイドベーンに対して実質的に中心を揃えることが好ましい。
【0023】
本発明に係る方法のさらに好ましい一実施形態によれば、各ノズルの主出口方向とコアエンジンのインレットガイドベーンのプロファイルコードとは、-75°~75°、好ましくは-35°~35°の角度βをなしている。インレットガイドベーンのプロファイルコードに対して主出口方向をこのように適応することで、スプレーミストがコアエンジンの前部領域または前部圧縮段をそれぞれより良好に通過できるようになる。
【0024】
プロファイルコードで定義する代わりに、対応する角度を回転軸で定義することもできる。例えば、エンジンタイプがCF6-50の場合、プロファイルコードから見た角度βは-27°が好ましく、これは回転軸から見た角度が0°に相当する。
【0025】
本発明によれば、液体洗浄媒体を、平均液滴サイズ10~500μmでノズルから出すことが好ましい。
【0026】
本発明の一変形例によれば、液体洗浄媒体を、0.5~100バール、好ましくは30~80バールの圧力でノズルに供給する。
【0027】
ノズル1本あたりの液体洗浄媒体のスループットは毎分1~200リットル、好ましくは毎分3~20リットルである。
【0028】
洗浄中にジェットエンジンを毎分50~500、好ましくは毎分100~300、さらに好ましくは毎分120~250のファン回転速度で回転させる。
【0029】
気体媒体(好ましくは空気)中の液体(好ましくは水)の分散液が、好ましくは洗浄媒体として使用される。この分散液は、例えば空気などの気体を洗浄液に加えることによって、ノズル出口開口部の前に既に生成できる。しかしながら好ましくは、液体洗浄媒体のみがノズル出口開口部まで案内され、ノズル出口開口部での射出によって圧力下で噴霧され、液体と気体の混合物になる。この分散液またはエアロゾルは、コアエンジンを介して運ばれる。洗浄媒体(またはエアロゾルの液体調和)は、好ましくは20から100℃、さらに好ましくは30から80℃、さらに好ましくは50から70℃の範囲に温度制御される。
【0030】
本発明の他の主題は、ジェットエンジンと、コアエンジンの洗浄を実行するようにジェットエンジンに取り付けられた本発明に係る装置とのアセンブリに関し、当該アセンブリは、
ア)ノズル設備がジェットエンジンのファンのシャフトに回転固定式に接続され、
イ)ジェットエンジンのファンの回転軸およびノズル設備の回転軸が実質的に同心になるように配置され、
ウ)ノズルの噴射が実質的に妨げられない態様でファンの平面を通過できるように、ノズルの出口開口部が軸方向においてファンの平面の後方に配置され、および/または、ノズルがファンブレードの間の空間に配置されるか若しくはファンブレードの間の空間に向けて揃えられている
との特徴を有し、
ノズルの出口開口部は、コアエンジンのインレットガイドベーンの入口面から1~25cm、好ましくは4~15cmの間隔を有していることを特徴とする。
【0031】
好ましくは、各ノズルの主出口方向と、コアエンジンのインレットガイドベーンのプロファイルコードとは、-75°~75°、好ましくは-15°~15°の角度βをなしている。
【0032】
ノズル設備のノズルの出口開口部は、エンジンの回転軸から、第1圧縮段の上流へ向いた入口開口部の半径の0.6~1.2倍、好ましくは0.6~1倍に相当する径方向の間隔をもって配置されることが好ましい。
【0033】
本発明に係る装置およびアセンブリのさらに有利な実施形態を以下に開示するが、当該例示的な実施形態は、取り扱いおよび動作の点で特に有利である。
【0034】
好ましくは、ノズル設備は、軸方向においてファンブレードを支持するための第1接触面を有する。ノズル設備をジェットエンジンのスピナーに配置するとき、これらの所定の第1接触面は、ノズル設備をジェットエンジンに対して少なくとも軸方向において決められた態様で位置決めする戻り止め(detent)を形成する。配置されると、これらの第1接触面が軸方向においてファンブレードを支持するように面して位置の移動を止める。その後、ノズル設備はファンブレードに固定され、以下でより詳細に説明するが、後述する回転固定式の接続手段は洗浄動作におけるファンブレードへの接触を考慮して決められた軸方向の配置が維持されるような方法で軸方向に作用する力(引張力)を付加する。
【0035】
好ましくは、第1接触面は、例えばゴム緩衝材のようにクッション性および/または弾性を有するように構成される。第1接触面は、複数の接触面、好ましくは3つ以上の接触面であり、好ましくは等角度間隔で円周上に分布している。当該接触面の径方向および周方向の大きさは、確実な位置決めと、配置されたノズル設備の力の吸収とに対して十分なものであることが好ましい。
【0036】
本発明のこの態様が認めることには、国際公開第2008/113501号の先行技術では、ノズル設備がスピナーに対して接触または支持によってのみ配置されるため、典型的には、ノズル設備がジェットエンジンに対して決められていないおよび/または偏心した態様で配置される。これにより、洗浄動作において、不均一および/または回転継手における大きな摩耗が生じる。これに対し、本発明に係るファンブレードの軸方向の接触によれば、ノズル設備(および回転継手)の軸が常にジェットエンジンの軸と同じ方向に延びることを保証する決められた位置決めが可能となる。
【0037】
好ましくは、第1接触面は、ノズル設備の第1環状領域に配置される。好ましくは、この環状領域は、配置状態で、下流へ向いたノズル設備の端部領域に配置される閉じたリングとして構成され得る。本発明によれば、この環状領域の軸方向において下流へ向いた面が、全周にわたってまたは周のサブセグメントにわたって(クッション性のある)第1接触面として構成され得る。
【0038】
好ましくは、本発明に係るアセンブリでは、第1環状領域の内径は、スピナーの外径(ファンブレードの前縁が存在する軸平面における外径)に対して同一またはわずかに大きい。これにより、ジェットエンジンに対して、軸方向だけでなく、径方向にもノズル設備を正確に位置決めできる。ここでいう「わずかに大きい」とは、配置状態において、第1環状領域がジェットエンジンに対して径方向の遊びを持ち、所望の中心適合性が、仮にあったとしても、わずかに損なわれるだけであることを意味する。
【0039】
有利な一実施形態では、ノズル設備は、ジェットエンジンのスピナーを支持するための第2接触面をさらに有する。当該第2接触面は、例えば軸方向において第1環状領域と回転継手との間に配置されるノズル設備の第2環状領域に配置され得る。当該第2接触面は、同様に弾性/クッション性を有してもよい。好ましくは、第2接触面が資することには、ジェットエンジンに配置されたノズル設備を、径方向平面(radial plane)内においてスピナーの上流側先端部とファンブレードの前縁との間の中心に配置する。
【0040】
全体として、第1接触面および第2接触面が一体となって、装置をジェットエンジンのスピナーの中心に配置するように構成できる。
【0041】
配置状態の本発明に係る装置においても、本発明によるアセンブリにおいても、ノズル設備の質量分布は、後段(latter)の回転軸を中心に回転対称であることが好ましい。
【0042】
本発明の好ましい一実施形態では、ジェットエンジンのファンのシャフトへの回転固定式の接続手段は、少なくとも2つ、好ましくは3つ以上のテンションロープと、テンションロープをファンブレードに固定するための固定手段とを有している。固定手段は、個別にロック可能な個別固定手段として構成されている。周方向における固定手段および/またはテンションロープの分布は、第1接触面の分布にそれぞれ対応してもよく、または周方向においてそのような接触面の間に配置されてもよい。
【0043】
好ましくは、テンションロープは、ファンブレードに固定でき、また好ましくは後段の後縁に(フックまたはクランプ顎を用いて)固定できる。これらのフックまたはクランプ顎(clamping jaw)は、それぞれ、十分に柔らかいプラスチック材料またはゴムのコーティングまたはケーシングを有し得る。
【0044】
個別にロック可能な個別固定手段としての固定手段の本発明による設計形態は、国際公開第2008/113501号に開示された中央クランプ装置と比較して実質的な利点を有している。当該先行技術では、テンションロープが複雑な方法で回転継手まで偏らせて案内される必要がある。当該先行技術は、すべてのテンションロープが同時に張力を受けることによって、ノズル設備が比較的不正確に位置決めされることとなる中央クランプリングを提供する。
【0045】
本発明によって設けられる接触面と、当該接触面によってなされるノズル設備の位置決めとによって、実質的に取り扱いが容易であるとともに連続した態様で固定およびロックできる個別固定手段を提供できる。これは、接触面によって位置決めがすでに保証されていることによる。さらに、個別固定手段によって、テンションロープを短縮でき、その結果、シンプルで堅牢なクランプシステムを実現できる。
【0046】
好ましくは、個別固定手段は、テンションロープをロックして張力を付加するためのベルクランクレバーを有する。ベルクランクレバーの場合、付加力と結果力との間の伝達比または1次スローと2次スローとの間の伝達比は、それぞれ作動中に連続的に変化する。閉状態(ロック状態)への作動中は、一定の作動速度で(テンションロープに作用する)スロー速度が減少するが、これに対してテンションロープに作用する引張力は増加する。
【0047】
個別固定手段の本発明による設計形態は、工具の助けを借りずに、簡単かつ確実で決められた態様でノズル設備をジェットエンジンに固定することを可能にする。
【0048】
個別固定手段は、好ましくは、ノズル設備を決められた力で押圧するように、テンションロープの予め決められた予荷重を設定するためのばね要素を有する。
【0049】
本発明によれば、個別固定手段が、閉状態に保持するために、保持設備を有し得る。例えば、ベルクランクレバーは、閉状態において、割りピンや安全ピンでロックされ得る。
【0050】
本発明によれば、回転継手が衝撃保護部を有し得る。衝撃保護部は、例えば特定点で径方向において特に配置されるときの衝撃から回転継手を保護する(例えば、プラスチック材料のリングとして構成される)クッションであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】ジェットエンジン上に組み付けられた本発明に係る装置を模式的に示す。
【
図2】本発明に係る装置が配置されたエンジンの軸方向断面を模式的に示す。
【
図3】インレットガイドベーンに対するノズルの組み付けとその間隔Xとを模式的に示す。
【
図4】回転軸とノズルの主出口方向との間の角度αを決定する様子を模式的に示す。
【
図5】コアエンジンのインレットガイドベーンのプロファイルコードとノズルの主出口方向との間の角度βを決定する様子を模式的に示す。
【
図6】ベルクランクレバーによる固定を詳細に示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の例示的な実施形態について図面を参照して以下説明する。
【0053】
ノズル設備は、2つの環状領域、即ち環状要素1,2をそれぞれ有し、その助けを借りてノズル設備はジェットエンジンのファンのシャフトハブ即ちスピナー3にそれぞれ配置される(
図1参照)。配置状態では、環状要素1,2は、実質的に形状が適合した態様でスピナー3を取り囲んでいる。軸方向において下流に配置される環状要素1の内径は、ファンブレード4の前縁が位置する軸平面におけるスピナー3の外径よりもわずかに大きい。
【0054】
第1環状要素1の円周にわたって分布するゴム緩衝材5は第1接触面を形成し、それによって環状要素1はファンブレード4の前縁を軸方向において支持する。
【0055】
第2環状要素2の円周にわたって分布するゴム緩衝材6は第2接触面を形成し、それによって環状要素2がスピナー3を支持する。
【0056】
2つの環状要素1,2は、ラジアルステー7によって互いに接続されている。回転継手は、全体として参照符号8で特定され、衝撃保護部9と、接続ラインの接続片10とを有し、(エンジンの流れ方向に関して)上流に向いたノズル設備の先端に配置される。
【0057】
洗浄媒体を4つのノズル(図示せず)に供給する4つの圧力ライン11は、この回転継手から延びている。圧力ライン11は、環状要素1,2に対してこれらの環状要素に固定されており、ノズル設備全体の支持構造の一部を形成している。
【0058】
テンションロープ12は、フック(図示せず)によってファンブレード4の後縁に引っ掛けることができるようになっており、ノズル設備をファンに固定するために設けられている。テンションロープ12を固定するための個別固定手段として、安全ピン14によってロック位置に固定できるベルクランクレバー13が設けられている。ばね15は、テンションロープ12に決められた張力を与える。
【0059】
コアエンジンの洗浄のために、特に
図1から導出可能な態様で、ノズル設備をファンの上に配置し、テンションロープ12によってファンブレードに固定する。エンジンは、回転状態(ドライクランキング)にセットされる。ノズルには、接続ライン10と、回転継手8と、圧力ライン11とを介して、供給設備(図示せず)から洗浄媒体が供給される。
【0060】
この洗浄媒体は、コアエンジンの入口を後段の全周にわたって掃引し、洗浄を実行する。
【0061】
図3は、圧力ライン11と、当該圧力ライン11の端部であってファンブレード4の間に配置されるフルコーンノズル16と、当該フルコーンノズル16のスプレーコーン17とを模式的に示している。コアエンジンのインレットガイドバルブ18の入口面からノズル16の出口開口部の軸方向間隔は、参照符号Xによって模式的に示されている。
【0062】
図4は、ノズル(図示せず)の主出口方向と、回転軸に平行な軸との間の角度αを模式的に示している。本実施形態のこの変形例では、角度αは、エンジンの回転軸と、第2直線との間の角度に近似する。第2直線は、コアエンジンの圧縮機の吸気口の径方向外周の接線として、かつ、その後方に配置されたフローダクトの凸状曲面上の接線として延びている。
【0063】
図5は、ノズル16の主出口方向とコアエンジンのインレットガイドベーン18のプロファイルコード19(またはその仮想延長線)との間の角度βを模式的に示したものである。
【符号の説明】
【0064】
1 第1環状領域(第1環状要素)
2 第2環状領域(第2環状要素)
3 スピナー
4 ファンブレード
5 ゴム緩衝材(第1接触面)
6 ゴム緩衝材(第2接触面)
7 ラジアルステー
8 回転継手
9 衝撃保護部
10 接続ライン(接続片)
10 接続ライン
10 平均液滴サイズ
11 圧力ライン
12 テンションロープ
13 ベルクランクレバー
14 安全ピン(保持設備)
15 ばね要素(ばね)
16 フルコーンノズル
17 スプレーコーン
18 インレットガイドバルブ(インレットガイドベーン)
19 プロファイルコード