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特許7361769大腿局所深部静脈血栓症デバイスおよびデバイスを使用するダブルパルセーション方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】大腿局所深部静脈血栓症デバイスおよびデバイスを使用するダブルパルセーション方法
(51)【国際特許分類】
   A61H 7/00 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
A61H7/00 322B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021521091
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 SE2019050990
(87)【国際公開番号】W WO2020080994
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】62/747,864
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】1950136-0
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】511070053
【氏名又は名称】アリオ・アイピー・ホールディング・アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・デヴィット・ニュートン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・リース・モーリス
(72)【発明者】
【氏名】リサ・マリア・ペイジ
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-161418(JP,A)
【文献】特表2016-512438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0245519(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の大腿に対して圧力を印加するためのデバイスであって、
前記患者の大腿の上に位置決めされ、前記患者の大腿を受けるように構成されたガーメントであって、
近位エッジ、遠位エッジ、および
少なくとも1つの膨張性チャンバ
を備える、ガーメントと、
制御ユニットであって、膨張/収縮プロセスを利用して前記少なくとも1つの膨張性チャンバに対して圧縮流体を供給するように構成された制御ユニットと
を備え、
前記膨張/収縮プロセスは、
初期圧力から第1の圧力へと前記少なくとも1つのチャンバを膨張させることと、
第1の所定時間量の間にわたり前記少なくとも1つのチャンバを前記第1の圧力に維持することと、
前記少なくとも1つのチャンバ内の圧力を前記第1の圧力から第2の圧力へと変更することであって、前記第2の圧力が前記初期圧力よりも高く前記第1の圧力よりも低い、変更することと、
第2の所定時間量の間にわたり前記少なくとも1つのチャンバを前記第2の圧力に維持することと、
前記少なくとも1つのチャンバ内の圧力を前記第2の圧力から前記第1の圧力へまたは前記第2の圧力よりも高い第3の圧力へと変更することと、
第3の所定時間量の間にわたり前記少なくとも1つのチャンバを前記第1の圧力または前記第3の圧力に維持することと、
前記少なくとも1つのチャンバをゼロ圧力または第4の圧力へと収縮することと
であり、
前記近位エッジには凹部が画定される
ことを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つのチャンバ内の圧力を前記第1の圧力から前記第2の圧力へと変更することは、前記少なくとも1つのチャンバを収縮することを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つのチャンバ内の圧力を前記第2の圧力から前記第1の圧力へまたは前記第3の圧力へと変更することは、前記少なくとも1つのチャンバを膨張させることを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第2の圧力は、0よりも高く45mmHg未満である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第2の所定時間量は、少なくとも2秒である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記膨張/収縮プロセスは、前記膨張/収縮プロセスの各サイクル同士の間にある28秒超にわたり継続する時間間隔を伴いながら反復可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記デバイスが、加圧ガーメントであ前記加圧ガーメントの全体が前記患者の大腿を囲み、前記加圧ガーメントが、前記患者の大腿上にのみ位置決めされるように構成され、前記患者の前記大腿のみに対して圧力を印加し、
前記加圧ガーメントが、
前記凹部が設けられた前記近位エッジと、
前記患者の大腿に対して圧迫力を印加するために設けられた少なくとも1つの膨張性チャンバと
で構成される、加圧ガーメントである、請求項1に記載のデバイス
【請求項8】
前記加圧ガーメントは、ガーメントのタイプが前記大腿向けに意図された特定のタイプのものであるとの制御ユニットによる自動認識を可能にするために感知可能識別構成要素をさらに備える、請求項7に記載のデバイス
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイスの前記少なくとも1つの膨張性チャンバに対して前記制御ユニットが圧縮流体を供給する方法であって、
初期圧力から第1の圧力へと前記少なくとも1つのチャンバを膨張させるステップと、
第1の所定時間量の間にわたり前記少なくとも1つのチャンバを前記第1の圧力に維持するステップと、
前記少なくとも1つのチャンバ内の圧力を前記第1の圧力から第2の圧力へと変更するステップであって、前記第2の圧力が前記初期圧力よりも高く前記第1の圧力よりも低い、ステップと、
第2の所定時間量の間にわたり前記少なくとも1つのチャンバを前記第2の圧力に維持するステップと、
前記少なくとも1つのチャンバ内の圧力を前記第2の圧力から前記第1の圧力へまたは前記第2の圧力よりも高い第3の圧力へと変更するステップと、
第3の所定時間量の間にわたり前記少なくとも1つのチャンバを前記第1の圧力または前記第3の圧力に維持するステップと、
前記少なくとも1つのチャンバをゼロ圧力または第4の圧力へと収縮するステップと
を含み、
前記少なくとも1つのチャンバを前記ゼロ圧力または前記第4の圧力へと収縮するステップの後に、前記ゼロ圧力または前記第4の圧力を前記第2の所定時間量よりも長い期間の間維持する収縮の延長期間が定義されることを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、様々な患者による後の使用の間に前記デバイスを洗浄するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には加圧装置と、かかるデバイスを使用して患者の肢に対して圧力を印加するための方法とに関し、詳細には大腿局所深部静脈血栓症予防デバイスと、患者の肢に対して圧力を印加するダブルパルセーション方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
組織の健康状態を維持するためには、患者の肢において血流およびリンパ流が最適な状態でなければならない。健康なヒトにおいて、これらの流体の効果的な流れは、多数の恒常性システムの相互作用により制御される。いずれの流体輸送管においても、適切な流れの中断が長期化すると、様々な負の臨床作用の悪化を結果としてもたらし得る。排液流または還流は、組織の健康維持において供給流と同様に重要である。脈管疾患では、罹患した組織へまたは組織からの血流を適切に強化することにより、組織の健康が改善され、組織損傷が持続的なものである場合には迅速な治癒が促進される。
【0003】
血栓症の研究において、ウィルヒョウの3主徴として知られる周知の臨床概念と、その近年の同等の3主徴とが存在する。これらの3主徴は、肢における静脈血塊(血栓)の形成に相互作用し関与すると主張されている3つの異なる血行動態側面からなる。これらの側面は、3つの原因要因すなわち鬱血、凝固性亢進、および静脈損傷として一般的に認識されている。静脈損傷は、潜在的な根本原因であり、典型的には特定の予防法による改善が不可能である。しかし、他の潜在的な原因要因すなわち静脈鬱血および凝固性亢進の影響を防ぐための予防を行うことは可能である。特に間欠的圧迫の利用がこれに関して有益である。
【0004】
これらの要因による血栓症の発生を最小限に抑制するまたは防止するために、現行の臨床診療の範囲内で利用可能な複数の異なる予防アプローチが存在し、これらのアプローチはそれぞれ、異なる臨床適性レベル、適用性、および有効性レベルを有する。静脈血栓症(VTE)を予防するための薬剤使用は、3主徴の凝固性亢進の側面を対象としたものであるが、広い臨床的使用において、内出血増加などの患者への禁忌および副作用の観点から複数の制限を伴う。しかし、血液の凝固能力が結果的に低下することにより、外科手技の複雑さおよび時間が共に増大し得る点において、負の影響も生じ得る。
【0005】
加圧ストッキングなどのより単純な圧迫方法の利用もまた、肢に対して一定に低圧迫を印加することにより静脈血流速度を上昇させることによって鬱血を防止するために利用され得る。これは、静脈拡張を抑制する圧迫により静脈直径を縮小させることによって達成されると考えられている。しかし、これらのデバイスは、血液凝固性亢進には影響を及ぼさない、または間欠的空気圧迫と同程度の血流上昇をもたらさないことが、現在のエビデンスから示唆されている。患者の肢に着用されるストッキングとして構成される加圧靴下は、腓腹サイズまたは腓腹および大腿の両方を包囲するサイズのものがしばしば市販されている。この靴下は、静脈還流を上昇させ得る一定の圧迫力を印加するように意図される。
【0006】
しかし、機械的加圧デバイスの使用は、薬剤ベース予防または加圧靴下との組合せにおいてまたはその代用としてしばしば使用される。当技術では、血流改善のために患者の肢に対して圧締圧力を印加するための様々な従来的な加圧デバイスが知られている。例えば、術前、術中、および術後に患者の下肢に対して適用される深部静脈血栓症(DVT、Deep Vein Thrombosis)予防のための間欠的空気圧迫システムの使用が知られている。これらのシステムは、肢の静脈内の流量上昇を促進することにより、鬱血と後の血栓形成リスクとを防止するために使用される。静脈血流の観点からすると、患者の肢の脈管系のすべての部分がリンクしている。したがって、患者の肢の任意の特定部分を圧迫することは、患者の肢およびさらに広範な身体のすべての他の部分において少なくとも幾分かの影響を有することになる。例えば、患者の腓腹が従来の腓腹用ガーメントを使用して圧迫されると、大腿内の血液は、停止状態に留まらない。腓腹から排出された血液は、大腿内へと移動し、大腿から血液を変位させる。健康な静脈を持つ患者の場合には、血液は、静脈内に存在する弁により遠位方向へ(心臓の方向から離れるように)は移動することができない。機能不全の弁(すなわち完全に閉じずしたがって逆流を防ぐことができない弁)を有する患者であっても、腓腹からの血液は、足に完全に留まることはできない。したがって、腓腹の圧迫により大腿の血液停止が緩和されることになるのは、本質的な事実である。同様に、足の圧迫もまた、腓腹および/または大腿の直接圧迫よりは低い程度であるが、腓腹および大腿における流れに影響を及ぼすことになる。患者の下肢全体を覆うマルチチャンバ膨張性ガーメントを使用したより複雑な加圧システムが、リンパ浮腫の治療のために使用可能である。これらのチャンバは、シーケンスパターンで膨張および収縮されて、過剰な間質液を上方へと押しやる。ここでもまた難治性の静脈損傷および動脈損傷の治癒を促進するために、間欠的圧迫が利用される。これらの技術はいずれも、様々な圧迫サイクル時間および圧力を用いて適用される。
【0007】
当技術で既知である多数の下肢加圧デバイスは、患者の足、腓腹、手/腕、または腓腹および大腿の組合せに対して使用するように構成される。腓腹および大腿の組合せに対する多数の従来の加圧デバイスは、「サイハイ(thigh high、大腿高さまでの)」としばしば呼ばれる。これらの製品は、患者の腓腹に対する圧迫を併せ持ち、患者の大腿に装着される膨張性チャンバをさらに備える。腓腹に装着される膨張性チャンバは、大腿に装着される膨張性チャンバに対して連結される。典型的には、腓腹部ガーメントセクションは、圧縮流体を大腿セクションに空気圧により送給する。腓腹セクションを最初に膨張させることなく大腿セクションのみ膨張させることは不可能である。この加圧デバイスの膨張性チャンバのこれらの2つのセクションは、患者の脚の後部で位置合わせされる。なぜならば、腓腹セクションが合わせられるべき位置が後部であるからである。したがって、この構成では患者の大腿の後部部分が圧迫される。独立した送給経路を有する腓腹および大腿部ガーメントの他の例が存在するが、腓腹セクションが大腿セクションの膨張前に膨張される。これらの他の例は、同様におよび意図された効果下で動作する。上記の「サイハイ」の例のいずれにおいても、腓腹は常に圧迫される。
【0008】
患者の腓腹および大腿の流体を移動させるような意図がある一方で、腓腹-大腿組合せ加圧デバイスの使用が実現不可能であるまたは有効でない様々な状況が存在する。中でも腓腹の損傷、腓腹部の骨折、腓腹部固定器、腓腹部ギブス、腓腹の包帯、腓腹の皮膚条件、および/または切断など、腓腹圧迫が適用不能であるまたは不要である、位置ベースでの多くの状況が存在する。したがって、これらの状況により、腓腹-大腿組合せ加圧デバイスの使用が望ましくないなど、患者の腓腹に加圧デバイスを配置することによってさらなる損傷が引き起こされる、不快感がもたらされる、または患者の腓腹の治癒が妨げられる場合がある。
【0009】
腓腹ベース圧迫が実現不可能であるいくつかの状況では、足ベース圧迫を利用することが可能であるが、足ベース圧迫にはしばしば複数の欠点が存在する。具体的には、足ベース圧迫は、より高圧の圧締圧力を使用し、快適性がより低く、費用がより高く、患者の肢からの血液移動がより少なく、可動性の妨げになる。さらに、足ベース加圧デバイスを着用した状態での歩行動作はしばしば禁忌とされる。なぜならば、そのような歩行動作は、加圧デバイス上の可搬性圧縮ポンプの動作に干渉し、また足部ガーメントの近傍に位置する空気ホースにつまずくリスクにより患者にとって危険となり得るからである。
【0010】
間欠的空気圧迫(IPC、Intermittent Pneumatic Compression)システムは、患者の体内流体の循環を支援するために広く使用され、動脈系、静脈系、およびリンパ系に対して利点および適用性を有する。IPCシステムの重要な1つの用途は、DVTまたはVTEの防止にある。患者の肢におけるDVT/VTEの防止手段としてのIPCシステムの使用において、患者の肢(例えば腓腹または腓腹および大腿の組合せ)は、一般的には圧縮流体が肢の周囲に巻き付けられた膨張性ガーメントに対して供給されることにより圧迫される。図7に示すように、この圧迫は、典型的には12秒の期間にわたり印加され、その後、低圧迫または無圧迫の延長期間が、典型的には48秒の追加期間にわたり継続する。次いで、ガーメントが、この膨張シーケンスで繰り返し膨張されることにより患者の肢に対して継続的な予防が施され、その結果として肢からの血流が上昇する。
【0011】
典型的には12秒の膨張時間の間に、静脈血は、肢において近位方向に移動されることにより静脈鬱血を軽減し、静脈壁の圧迫によって血液内における自然発生的な抗凝固因子の増強の観点からさらなる追加的な有利な効果をもたらす。また、これに関連して肢内への動脈流における改善が存在する。血流速度における強化の大部分は、12秒間の圧迫期間の最初の部分に(典型的には装着される膨張性ガーメント/スリーブのタイプおよび膨張特性に応じて最初の3~7秒に)達成される。圧迫時間の残余は、血液が患者の肢を通り流れ続けるのを確保するために正圧の維持を確保するのを助ける。先行技術の範囲内における既知の動作基準は、標的圧力(例えば40mmHgまたは45mmHg)が印加され、膨張期間の残余の間にこのレベルにて継続的に維持されるものである。複数のシーケンス膨張チャンバを有するIPCシステムは、より近位側のチャンバを膨張させるために圧迫時間の残余を使用する。
【0012】
現行の間欠的圧迫システムは、ウィルヒョウの3主徴の中の2つの側面に対処することを目的とする。これらの側面とは、静脈血流の上昇を促進することによる鬱血、および静脈加圧機構の結果として血液の組成変化による凝固性亢進である。さらに、もう1つの重要な考慮要件は、静脈内においてDVTまたは血塊が形成され得る位置である。臨床文献では、この血塊形成は静脈鬱血が解消されても血流が比較的低い位置である静脈弁尖の裏側において発生し得る、という主張がこれまで長きにわたりなされてきた。この位置は、静脈内の主要静脈流からある程度の退避を可能にし、したがって流れの低速化または鬱血が見られる領域である。初期部分の圧迫パルスにより達成される血流の乱れにより乱流効果がもたらされ、その結果として静脈内の弁尖の周囲および裏側にフラッシュ作用が得られ、またこれにより静脈鬱血の低下が促進され、より大きな血塊形成が防止される。これは、薬剤ベース予防および静的加圧ストッキングと比較した場合の間欠的圧迫ベース予防の1つの利点としてしばしば挙げられる。
【0013】
先行技術のガーメントで利用される典型的な圧迫方法を示す図7に示すように、印加圧力は、腓腹部ガーメントに関しては25~26mmHgの範囲内が利用され、この圧力範囲の全体にわたり有効性を有する。圧迫パルスサイクルの膨張部分は、ガーメントのタイプ、サイズ、および空気供給源の能力に応じて約3~7秒の初期期間にわたり典型的には実施される。標的圧力に到達すると、圧力は、典型的にはこの方法の膨張部分の残余の間にわたり一定のレベルに維持される。次いで、腓腹部ガーメントの膨張性チャンバがゼロ圧力へと収縮される。このサイクルは、十分に確立されているDVT予防方法を実現するために患者の肢に対して継続的に繰り返される。
【0014】
図8は、先行技術のガーメントにおいて利用される圧迫方法の超音波スキャン画像を示す。このスキャン画像は、13秒のスキャン期間にわたる時間(x軸)に対して大腿血流速度(y軸)に対するこの圧迫方法の効果を示す。このスキャン画像は、-11秒のマークの位置に示される1つのみの血流速度ピークを有する。この速度ピークは、単一の圧迫パルスに対応する。この単一パルスが印加され、結果として血流速度上昇が達成された後では、印加圧力が一定であるにもかかわらず、膨張期間の残余にわたりさらなる血流はほとんど生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】WO2014/068288
【文献】米国特許第7,038,419号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記を鑑みて、患者の大腿のみに対して圧迫力を印加するための大腿局所DVT加圧ガーメントの必要性が存在する。さらに、患者の肢におけるDVT/VTEを軽減するために任意のタイプの加圧ガーメント(単一チャンバまたは複数チャンバの、一様なまたは順次のなどの)と共に利用されることとなるダブルパルセーション圧迫方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示の一態様によれば、患者の肢に対して圧力を印加するためのデバイスが、患者の肢の上に位置決めされるように構成されたスリーブであって、患者の肢を受けるように構成された内部スリーブ通路および少なくとも1つの膨張性チャンバを備える、スリーブと、制御ユニットであって、膨張/収縮プロセスを利用して少なくとも1つの膨張性チャンバに対して圧縮流体を供給するように構成された制御ユニットとを備え、膨張/収縮プロセスは、初期圧力から第1の圧力へと少なくとも1つのチャンバを膨張させることと、第1の所定時間量の間にわたり少なくとも1つのチャンバを第1の圧力に維持することと、少なくとも1つのチャンバ内の圧力を第1の圧力から第2の圧力へと変更することであって、第2の圧力が初期圧力よりも高い、変更することと、第2の所定時間量の間にわたり少なくとも1つのチャンバを第2の圧力に維持することと、少なくとも1つのチャンバ内の圧力を第2の圧力から第1の圧力へまたは第2の圧力よりも高い第3の圧力へと変更することと、第3の所定時間量の間にわたり少なくとも1つのチャンバを第1の圧力または第3の圧力に維持することと、少なくとも1つのチャンバをゼロ圧力または第4の圧力へと収縮することである。
【0018】
本開示の別の態様によれば、少なくとも1つのチャンバ内の圧力を第1の圧力から第2の圧力へと変更することは、少なくとも1つのチャンバを部分的に収縮することを含む。少なくとも1つのチャンバ内の圧力を第2の圧力から第1の圧力へまたは第3の圧力へと変更することは、少なくとも1つのチャンバを膨張させることを含む。初期圧力は、ゼロ圧力または第4の圧力に等しい。初期圧力は、ゼロ圧力または第4の圧力とは異なる。スリーブは、患者の大腿のみに対して使用するように構成される。第1の圧力は、典型的には40mmHg~45mmHgの間である。しかし、第1の圧力は、25mmHg~65mmHgの間であることも予期される。第2の圧力は、ゼロよりも高く45mmHg未満である。第2の所定時間量は、少なくとも2秒である。膨張/収縮プロセス全体の期間は、15秒未満である。膨張/収縮プロセスは、膨張/収縮プロセスの各サイクル同士の間にある28秒超にわたり継続する時間間隔を伴いながら反復可能である。制御ユニットは、ガーメントコネクタ内に位置する感知可能および測定可能な識別構成要素を検出するように構成されてもよく、制御ユニットにより検出される特定の識別は、大腿局所ガーメント識別である。したがって、制御ユニットは、測定される構成要素を介して大腿局所ガーメントと共に使用するように構成可能である。
【0019】
本開示の別の態様では、加圧ガーメントの少なくとも1つの膨張性チャンバに対して圧縮流体を供給する方法が、初期圧力から第1の圧力へと少なくとも1つのチャンバを膨張させるステップと、第1の所定時間量の間にわたり少なくとも1つのチャンバを第1の圧力に維持するステップと、少なくとも1つのチャンバ内の圧力を第1の圧力から第2の圧力へと変更するステップであって、第2の圧力が初期圧力よりも高い、ステップと、第2の所定時間量の間にわたり少なくとも1つのチャンバを第2の圧力に維持するステップと、少なくとも1つのチャンバ内の圧力を第2の圧力から第1の圧力へまたは第2の圧力よりも高い第3の圧力へと変更するステップと、第3の所定時間量の間にわたり少なくとも1つのチャンバを第1の圧力または第3の圧力に維持するステップと、少なくとも1つのチャンバをゼロ圧力または第4の圧力へと収縮するステップとを含む。
【0020】
本開示の別の態様では、少なくとも1つのチャンバ内の圧力を第1の圧力から第2の圧力へと変更することは、少なくとも1つのチャンバを収縮することを含む。少なくとも1つのチャンバ内の圧力を第2の圧力から第1の圧力へまたは第3の圧力へと変更することは、少なくとも1つのチャンバを膨張させることを含む。初期圧力は、ゼロ圧力または第4の圧力に等しい。初期圧力は、ゼロ圧力または第4の圧力とは異なる。スリーブは、患者の大腿のみに対して使用するように構成される。第1の圧力は、典型的には40mmHg~45mmHgの間である。しかし、第1の圧力は、25mmHg~65mmHgの間であり得ることも予期される。第2の圧力は、ゼロよりも高く45mmHg未満である。第2の所定時間量は、少なくとも2秒である。膨張/収縮プロセス全体の期間は、15秒未満である。膨張/収縮プロセスは、膨張/収縮プロセスの各サイクル同士の間にある28秒超にわたり継続する時間間隔を伴いながら反復可能である。
【0021】
本開示の他の態様では、加圧ガーメントであって、ガーメントの全体が患者の大腿を囲み、患者の大腿のみに対して圧力を印加する、加圧ガーメントが、患者の大腿上にのみ位置決めされるように構成された外方スリーブと、患者の大腿に対してのみ圧迫力を印加するために外方スリーブ内に設けられた少なくとも1つの膨張性チャンバとで構成される。凹部が、ガーメントの近位エッジに画定される。少なくとも1つの膨張性チャンバは、第2の膨張性セクションからオフセットされた第1の膨張性セクションを備え得る。少なくとも1つの膨張性チャンバは、3つの膨張性チャンバからなり得る。ガーメントが患者の大腿上に位置決めされた場合に、少なくとも1つの膨張性チャンバは、患者の大腿の内側表面に対して圧迫力を印加するように構成される。ガーメントは、ガーメントのタイプがある特定のタイプのものであるとの制御ユニットによる自動認識を可能にするために、感知および/または測定されることが可能な識別構成要素を備え得る。少なくとも1つの膨張性チャンバを有するガーメントは、患者の大腿上に位置するように構成されてもよく、24mmHgを上回り66mmHg未満まで加圧されるように構成され得る。シーケンス圧迫力が、ヒトの身体の大腿領域に対してのみ印加され得る。この圧迫力は、大腿の前方領域に対して直接的に印加され得る。圧迫力は、大腿の内側面および外側面に対して印加され得る。加圧ガーメント内の少なくとも1つのチャンバが、大腿の前方領域上に配置され得る。加圧ガーメント内の少なくとも1つのチャンバが、大腿の内側面および外側面上に配置され得る。これらのチャンバは、各脚の大腿の前方部に対して圧力を印加するようにガーメント内に配置され得る。ガーメントおよび膨張性チャンバにより提供される圧迫効果は、各肢に対して取り付けられた場合に同一となり、したがってガーメントは、左右相称的に使用することが可能である。ガーメントおよび膨張性チャンバにより提供される圧迫効果は、左右の肢に対して取り付けられる場合に異なり得る。これらのガーメントは、左肢インジケーションまたは右肢インジケーションのいずれかでマーキングされ得る。肢インジケーションは、ガーメント上にスクリーン印刷され得る。デバイスは、個別にパッケージングされ、単一の圧迫ガーメントとして使用場所へと提供され得る。デバイスは、少なくとも2つの加圧ガーメントの倍数でパッケージングされ、使用場所へ提供され得る。デバイスは、1人の患者の使用向けに意図され得る。デバイスは、複数患者における使用向けに意図され得る。
【0022】
本開示の別の態様では、上記に挙げたデバイスなどのデバイスを再処理する方法が、様々な患者による後の使用の間にデバイスを洗浄するステップを含む。この洗浄方法は、高水準消毒を伴い得る。この洗浄方法は、エチレンオキシドガスの使用を伴い得る。コネクタは、洗浄プロセス中に変更され得る。膨張性チャンバは、洗浄プロセスの一部として膨張され得る。
【0023】
さらなる詳細および利点が、添付の図面と組み合わせて以下の詳細な説明を読むことにより理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】患者の大腿のみに対して適用される本開示による加圧ガーメントと共に患者の下肢を示す正面図である。
図2】本開示の一態様による加圧ガーメントの上面図である。
図3】本開示の別の態様による加圧ガーメントの上面図である。
図4】本開示の別の態様による加圧ガーメントの上面図である。
図5】本開示の別の態様による加圧ガーメントの上面図である。
図6】本開示の別の態様による加圧ガーメントの上面図である。
図7】加圧ガーメントと共に利用するための先行技術による圧力波形を示す波形グラフである。
図8】ヒトの腓腹に対する先行技術による圧力波形の利用を示すドプラ超音波スキャン画像である。
図9】加圧ガーメントと共に利用するための本開示の一態様による圧力波形を示す波形グラフである。
図10】ヒトの腓腹に対する本開示による圧力波形の利用を示すドプラ超音波スキャン画像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以降のこの説明において、使用される空間配向用語は、添付の図面において配向されるようなまたは以下の詳細な説明において説明されるような参照とされる実施形態に関するものである。しかし、以降で説明される実施形態は、多数の代替的な変形および構成をとり得る点を理解されたい。また、添付の図面に示されるまたは本明細書で説明される特定の構成、デバイス、特徴、および動作シーケンスは、単なる例示であり、限定的なものとしてみなされるべきではない点を理解されたい。
【0026】
本開示は、一般的にはDVT加圧ガーメントおよびこのガーメントを使用して患者の肢に対して圧力を印加するための方法に関し、詳細には大腿局所深部静脈血栓症加圧ガーメントおよび患者の肢に対して圧力を印加するダブルパルセーション方法に関する。図1図6図9、および図10では、これらのガーメントおよび圧迫方法のいくつかの好ましいおよび非限定的な態様が示される。
【0027】
I.大腿局所DVTガーメント
図1図6を参照して、DVT加圧ガーメント2(以降では「ガーメント2」と呼ぶ)を図示および説明する。一態様では、ガーメント2は、患者の大腿4のみに対してなど、患者の一部分のみの周囲に配置されるように構成される。ガーメント2は、患者の腓腹、腰部、足、膝、または任意の他の肢部などの患者の第2の部分に対して装着される追加部分または追加セグメントを備えない。図2に示す一態様では、ガーメント2は、患者の大腿4の周囲に巻き付けられるように構成された単一ガーメントである。図1に示す別の態様では、ガーメント2は、患者の大腿4の周囲に巻き付くように共に連結された複数のセクション6を備える。このガーメント2は、少なくとも1つの膨張性チャンバ14を有する発泡材ベースに対して積層された起毛ループポリエステルから作製され得る。ガーメント2は、ライクラ、スパンデックス、および/またはエラステイン、ならびに繊維材料、発泡材料、およびスペーサ材料などの先行技術で典型的に見られる材料を含むように作製され得る。ガーメント2の少なくとも一部分が、種々のサイズの患者の大腿4により良好に対応するようにガーメントを撓曲および拡張させ得るための弾性材料を含み得る。ガーメント2は、患者の膝と生殖器エリアとの間の患者の大腿の周囲に装着されるように構成され得る。ガーメント2の端部の一方または両方が、患者の大腿4の周囲にガーメント2を固定するために、ガーメント2のこれらの端部同士を共に連結するために使用される留め具8を備え得る。留め具8は、ボタン、ベルクロ(登録商標)などのフックアンドループ留め具、フック、ジッパー、接着テープ、またはガーメント2の2つの端部を相互に連結するのに適した任意の他の解除可能機構留め具であってもよい。
【0028】
図2および図3に示すように、ガーメント2は、全般的に矩形の形状を有する。また、代替的な形状が患者の大腿4に対するガーメント2の装着の固定を確保するために使用されてもよい点が予期される。図3に示すように、ガーメント2の一態様では、凹部10が、ガーメント2の上方エッジまたは近位エッジ12に画定される。ガーメント2に凹部10を設けることにより、ガーメント2の近位エッジ12と患者の生殖器エリアとの間をより大きく離すことが可能となる。腓腹セクションと大腿セクションとの組合せからなる従来のガーメントでは、大腿セクションは、患者の生殖器エリアの近傍にしばしば位置決めされ、これによりガーメントの使用時に刺激、不快感、および損傷の可能性がもたらされ得る。本開示のガーメント2の凹部10により、ガーメント2による患者の生殖器エリアの刺激、干渉、または損傷が生じないことが確保される。なぜならば、ガーメント2の近位エッジ12が、凹部10により患者の生殖器エリアから実質的に離間されるからである。この凹部10により、失禁事象によるガーメント汚損を回避するための余地がガーメント2においてさらに大きく確保され、また衛生管理、看護、および医療処置のためのアクセスが改善される。この大きな離間は、直接的にはこのエリアにおける凹部10の凹状特性によるものであり、この特徴は、ある特定のガーメントが一方の肢のみに対して使用されるように特に意図されるように、特定の一方のみの肢(例えば左または右の)に対する大腿部ガーメント2の使用に対する適用が可能であり、または代替的には、凹部10は、この離間が常に適用されしたがってガーメント2が患者のいずれの大腿に対しても適用可能となるのに十分なものとなるように大きいことが可能である。
【0029】
図4を参照すると、一態様では、ガーメント2は、患者の大腿4に対して圧力を印加するための単一の膨張性チャンバ14を備える。一態様では、例えば高周波、熱、または超音波溶接プロセスなどの利用により少なくとも1つのチャンバを形成するように一体的に形成された、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、またはポリオレフィン(PO)などのこの膨張性チャンバ14は、2つの可撓性材料層から作製される。一態様では、膨張性チャンバ14は、ガーメント2の中央に位置決めされ、ガーメント2の近位エッジ12と遠位エッジ16との間に延在する。膨張性チャンバ14は、空気などの圧縮流体を受け放出することにより、患者の大腿4に対して圧迫力を印加するように構成される。膨張性チャンバ14は、ガーメント2が患者の脚上に取り付けられた場合に、膨張性チャンバ14の少なくとも一部が患者の大腿上に位置する標的圧縮性エリアに位置合わせされるように、ガーメント2内に位置決めされる。一態様では、圧縮流体は、ポンプ18から膨張性チャンバ14へ送られる。この圧縮流体は、注入チューブ20を経由して膨張性チャンバ14内へ送られる。注入チューブ20は、膨張性チャンバ14の2つのPVC層、PO層、またはPU層の間で溶接されて、ポンプ18からチャンバ14への連結部を形成してもよく、または代替的には、注入チューブ20は、グロメットまたは他の形態の空圧連結部などの中間連結部により装着され得る。膨張性チャンバ14は、ガーメント2が患者の大腿4上に位置決めされた場合に、患者の大腿4の内側表面に対して圧力を印加するように構成される。患者の大腿4に対する圧力を解放し、膨張性チャンバ14から空気を除去するために、ガーメント2内の空気は、注入チューブ20を介してポンプ18へ戻され得る。また、膨張性チャンバ14から空気を放出するための膨張性チャンバ14中の小型通気穴または大気中への小型通気チューブの形態の、大気中への二次空気経路(図示せず)が予期される。ポンプ18内の弁が、圧縮空気源に対して、または通気のために大気に対して膨張性チャンバ14を連結する。
【0030】
ガーメント2は、大腿直筋、恥骨筋、および長内転筋上部を含む、大腿4の主要筋群により形成される解剖学的領域において大腿4の主要筋量に対して圧力を印加する。次いで、大腿4のこのエリアにおける筋組織の圧迫により、大腿静脈および大伏在静脈などの外方静脈が、深部大腿静脈および貫通静脈などのより内方に位置する静脈と共に圧迫される。このような外方静脈の圧迫および内方静脈の圧迫の組合せにより、静脈血の移動におけるガーメント2の有効性の改善が確保され、さらに大腿4上におけるガーメント2の回転位置許容性が上昇する。また、この解剖学的領域は、大腿動脈などの動脈との関連も有し、大腿部ガーメントの圧迫効果の側面との関連性がさらに存在する。大腿4が、単独で圧迫される(肢のより遠位における圧迫を伴わない)場合には、血液は、大腿領域内の静脈から近位方向へとおよびしたがって脚から出るように移動される。これにより、静脈血の移動量と、静脈内で測定され得る血流速度上昇とに関する第1の血行動態効果がもたらされ、これは腓腹の同等の圧迫で実現されるものよりも大きい。大腿部ガーメント2の収縮時には、第2の血行動態効果がもたらされ、大腿静脈内の静脈圧が結果的に低下することにより、遠位の腓腹/足と近位の大腿4との間の圧力勾配が上昇し、さらにこれにより腓腹静脈などの下腿エリアからの流量が上昇し、これにより血液が大腿4内へと近位方向へ移動する。したがって、大腿局所圧迫により、圧力が直接的に印加されない下腿と、圧迫される大腿エリアとにおいて流量の上昇が結果的に得られる。したがって、本発明は、具体的には、肢の下方部分におけるDVT形成を防止するための方法と、そのために患者の大腿のみを圧迫することにおいて必要となるステップとを含む。
【0031】
大腿4内の静脈は、脚の下方(例えば腓腹)の静脈よりも大きな直径を有する。結果として、大静脈においては腓腹静脈よりも大量の血液が存在する。したがって、圧迫力が大腿エリアに対して印加された場合に、より大量の血液が移動される。さらに、大腿4の解剖学的特徴は、この領域内の静脈が、腓腹の静脈に比べてより周囲へと分布し、さらに大腿内においてより中心寄りに位置するというものである。したがって、大腿4のみに対する圧迫の利用により、この圧迫がより効果的なものとなり、より実現容易なものとなり、他の解剖学的領域よりも静脈がさらに広範に分布する領域において確実に印加されることが確保され、結果として圧迫の有効性が高まる。単一の膨張イベントにより生じるこれらの2つの異なる圧迫効果により、血流全体が上昇ししたがって静脈鬱血が防止される。また、大腿領域は、腓腹領域よりも圧迫可能な組織が一般的により多い。したがって、大腿局所ガーメント2の使用は、低体重、少ない腓腹筋量、高齢患者などのように腓腹圧迫効果がより低い患者、または低レベルの膨張圧力が好ましいもしくは必要である患者において特に有益となる。次に、ガーメント2を使用して患者の大腿4のみに対して圧力を印加する具体的な一方法をさらに詳細に説明する。
【0032】
図5を参照すると、別の態様では、ガーメント2は、オフセットセクション22、24を有する単一の膨張性チャンバ14を備え、これらのオフセットセクション22、24は、一態様では主に前方位置を含むそれぞれ異なる周囲領域において圧力を印加する。別の態様では、圧迫は、患者の大腿4の内側表面上および外側表面上などのエリアにチャンバ位置が置かれるという観点から、肢の側部を標的とすることが可能である。膨張性チャンバの位置から生じる圧迫効果は、ガーメントの締付けにより肢に対して周方向力が結果的に印加されるため、当然ながら周方向においても存在することが当業者には明白であろう。膨張性チャンバ14は、チャネル26により分離された2つのオフセットセクション22、24を備える。圧縮流体は、圧縮流体を注入チューブ20内へと送るポンプ18により膨張性チャンバ14へと供給される。ガーメント2の動作中に、圧縮流体は、最初に第1のオフセットセクション22内へ送られ、チャネル26を通りその後第2のオフセットセクション24内へ送られる。第1のオフセットセクション22(遠位に位置する)が圧縮流体でほぼ完全に充填されると、第2のオフセットセクション24(近位に位置する)は、圧縮流体で充填され始める。これにより、遠位に位置するオフセットセクションがより近位に位置するオフセットセクションの前に大腿4の部分を圧迫するシーケンス効果(遠位から近位へ)が得られ、結果として近位方向への流体流を促進する圧力勾配がガーメント2において得られる。ガーメント2が患者の大腿4上に位置決めされると、一方のオフセットセクション22、24が患者の大腿4の内方側部表面上に位置決めされ、他方のオフセットセクション22、24が患者の大腿4の外方側部表面上に位置決めされるため、圧力は、患者の大腿4の内方側部表面および外方側部表面に対して印加される。
【0033】
図6を参照すると、別の態様では、ガーメント2は、ガーメント2の遠位-近位方向全体にわたり延在する3つの別個の膨張性チャンバ32、30、28を備える。他の適用エリアを意図される同様の構成のガーメントが、国際特許出願公開WO2014/068288において開示されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。圧縮流体が、注入チューブ20を通して第1の膨張性チャンバ32へ圧縮流体を供給するポンプ18により、膨張性チャンバ32、30、28へ供給される。圧縮流体は、第1の膨張性チャンバ32内へ送られ、移動チューブ36を経由して第2の膨張性チャンバ30内へ送られ、別の移動チューブ34を経由して第3の膨張性チャンバ28内へ送られる。移動チューブ36は、第1の膨張性チャンバ32と第2の膨張性チャンバ30との間の流体連通を確立する。移動チューブ34は、第2の膨張性チャンバ30と第3の膨張性チャンバ28との間の流体連通を確立する。第1の膨張性チャンバ32が圧縮流体でほぼ充填されると、次いで第2の膨張性チャンバ30は圧縮流体を保持し始める。同様に、第2の膨張性チャンバ30が圧縮流体でほぼ充填されると、第3の膨張性チャンバ28は圧縮流体を保持し始める。この態様のガーメント2のこの圧迫タイプは、シーケンス圧迫と呼ばれる。また、上述と同様の様式でまたは同時にしかしポンプ18から個別の経路を介してポンプ18が各膨張性チャンバ28、30、32に対して圧縮流体を供給し得るように、個別の注入経路を用いた別の構成を各膨張性チャンバ32、30、28に対して適用することが可能であることも予期される。このシーケンス圧迫は、患者の大腿4の内方側部表面に沿って圧力勾配を生じさせる。一態様では、3つの膨張性チャンバ32、30、28は、加圧された場合に単一の圧力を有さず、サイクルの少なくとも一部分の間においてそれらのチャンバ圧力間に差異が存在する。別の態様では、3つの膨張性チャンバ32、30、28はいずれも、同一の圧力が印加される。別の態様では、これらの圧力が、それぞれ異なる時点においてチャンバ32、30、28に対して印加されることにより、別のタイプのシーケンス圧迫効果をもたらす。別の態様では、それぞれ異なる圧力がそれぞれ異なる時点において印加されることにより、大腿局部ガーメントのこれらのチャンバ内のみに
おいてシーケンス圧迫効果をもたらし得る。別の態様では、チャンバが1つのみ存在し、別の態様では、チャンバが2つの異なる別個のパーツを有し、しかしこれらの両者において同一圧力を有するように意図される。別の態様では、これらのチャンバは、大腿部ガーメント内に(図4図5、および図6に詳細が示されるように)、ならびに大腿の前方領域上に位置するように配置される。図6に詳細に示すように、一実施形態は、複数のチャンバを有する大腿局部配置されるガーメントを用いるものであり、これらのチャンバは、ガーメント内において共に連結されるかまたは代替的にはガーメントの外部にて連結される。さらに他の態様では、大腿ガーメント内におけるチャンバの形状および位置が、ガーメントが患者のいずれの大腿に対する使用にも適したものとなるように構成され、したがって大腿部ガーメントは、患者に対する適合性の面で左右相称性を有する。上述の大腿部ガーメントの左右相称性設計により、適用可能な肢(例えば左脚または右脚など)の明確化についての懸念を伴うことなく、いずれも単一パッケージの形態で(肢切断者または整形外科患者に対して便利となる)医療利用者に対して提供されることが可能となる。代替的には、このガーメントが、少なくとも2つの大腿部ガーメントを有する複数パッケージ形態で提供されることが可能であり、これらの大腿部ガーメントは、いずれの肢に対しても適用が可能であり、したがって大腿部ガーメントの看護利用および患者利用の両方を簡易化する。さらに他の態様では、大腿局部ガーメントが、所与の肢(例えば左または右の)に対する性能が最適化されるように特定的に設計され、したがって対応する指定の肢のマーキングが施される。このマーキングは、あるガーメントがいずれの肢用に指定されたものであるかをユーザが識別することができるように、ガーメント上にスクリーン印刷された印の形態をとり得る。
【0034】
患者の大腿4の解剖学的寸法により、このガーメント2および具体的には膨張性チャンバ14(32、30、28)は、腓腹部ガーメントのものよりも短い。また、ガーメント2は、一般的に大腿4が患者の腓腹よりも著しく太いため、より長い周長に及ぶ。一態様では、大腿部ガーメント2は、大腿4の中間領域に配置され、遠位方向においては膝蓋骨から物理的に離れ、近位方向においては生殖器から物理的に離れるのに十分なだけ小さい。これにより、ガーメント2は、広範にわたる手技中および介護活動の最中に介護の複雑化を伴わずに臨床的に効果的な使用が可能となる。この領域に適合するように、ガーメント2の高さ(近位または遠位からの測定による)は、200mm未満である。膨張性チャンバ14(32、30、28)の寸法は、肢の周長中央値の25%を超過するエリアにわたり圧迫力が組織量に対して直接的に印加されることが確保されるように、膨張性エリアが大腿4の周囲にわたり延在するようなものとなる。
【0035】
一態様では、少なくとも1つの膨張性チャンバ14が、少なくとも1:0.75の最大幅寸法対最小幅(寸法)比を有する。したがって、膨張性チャンバ14は、遠位幅よりも近位幅においてより幅広である。ガーメント2は、大腿4の周囲に巻き付けられた場合のガーメント2が近位周長よりも短い遠位周長を有するように、大腿4に対して調節可能に適合するように形状設定される。さらなる一態様では、近位から遠位へ測定したガーメントの長さが、200mm未満である。別の態様では、膨張性チャンバ幅(大腿周囲に沿って測定されるような)対膨張性チャンバ高さ(近位遠位方向に測定されるような)の比率が、1.6:1を上回り3:1未満である。大腿局部ガーメントの解剖学的位置特性および圧迫帯の一形態として機能する(潜在的な故障モードのもとでの)その能力により、本発明の範囲内に明確に含まれる、チャンバ収縮の確保に関する態様がさらに存在する。ガーメント内の少なくとも1つのチャンバのための好ましい収縮経路は、注入流体経路と同一である排出経路をたどりポンプ内へと戻る。他の態様では、大腿部ガーメントは、例えば図示するように図6のチャンバ28に配置された、注入チョークチューブ34により送り込まれた空気の排出を可能にするための追加のチョークチューブを有するなど、ポンプへ戻る流体経路においてもたらされる可能性のある任意の制限が発生した場合でも収縮を確保するために、大気へ直接的に至る流体経路の形態の追加通気機構を備える。また、この追加の収縮機構は、大気への認識された流体流量が可能となるように制御された内径を有するチョークチューブを介した、各チャンバからのまたはチャンバの中の少なくとも1つからの専用通気経路の形態をとることも可能である。代替的な一態様は、少なくとも1つのチャンバ(32、30、28)中に配置された、またはグロメット20に装着された一体連結チューブ中に配置された、特別に導入された小型の「マイクロホール」の使用を伴う。追加の通気経路を提供するだけでなく、通常動作において、これらのマイクロホールからの空気は、患者の大腿に対する通気性などさらなる利点をもたらすために使用され得る。また、これは、患者の大腿周辺および大腿部ガーメント材料における微小気候(温度および湿度)の改善によりガーメントおよび患者の全体的な快適性に寄与する。これは
、チャンバ内外へのこれらの特定の通気経路からの正圧空気流の結果として得られるものであり、結果として熱および湿度の上昇を軽減し、また(汗および潜在的に尿からの)湿度を放散し、大腿領域および患者から離れる方向への熱の流れを促進する。
【0036】
既存のDVTガーメントおよび加圧靴下と比較した場合のガーメント2の1つの利点は、患者の大腿4に対して物理的に適合し患者の大腿4に対してのみ使用される点と、それにより腓腹部ガーメントまたは足部ガーメントの利用または使用が不可能である場合に使用可能であるという点である。患者の腓腹または足にガーメントを配置することができず、したがって大腿局部ガーメント2が望ましい多くの臨床状況が存在する。ガーメント2は、以下の臨床適用分野において従来の腓腹部ガーメントまたは足ベースガーメントを上回る複数の利点を提供する。すなわち、腓腹に対するギブス/固定器の使用を含む整形外科的状況、腓腹に蜂窩織炎を患う患者、腓腹、足首、または踵エリア周辺の圧迫に対する影響を被りやすい組織エリアとの紛糾の回避、足圧迫に痛みを伴い得る糖尿病患者、圧迫できる腓腹または足のない肢切断者(膝の上下の両方)、膝手術(従来の腓腹部ガーメントでは手術部位に対して近すぎる場合があるため)、足首/足手術(従来の足部ガーメントおよび腓腹部ガーメントでは手術部位に対して近すぎるため)、DVT予防を必要とするが標準寸法外の大きさの足または腓腹を有する患者(例えば象皮症、浮腫、リンパ浮腫等の症状による)、下肢に対して特定の静脈アクセスを必要とする手術を受ける患者(例えば静脈抜去術または静脈瘤手技など)、下肢に対してアクセスを必要とする治療を受ける患者、腓腹部ガーメントの代わりに肥満症患者に対して代替として大腿の利用が可能である、腓腹圧迫が禁忌となり得る下肢の問題を抱えた患者、肢挙上を伴う結石摘出術の位置/患者の複雑化が必要となる手技(これは一般外科学、泌尿器科学、婦人科学などの広範な外科分野における多数の手技をカバーする)、腓腹または足において下腿潰瘍、創傷、熱傷、または皮膚疾患を患う患者、血流を上昇させることが必要な追加の専門家を必要とする条件、足ベースガーメントまたは腓腹ベースガーメントの継続的使用を遵守していない患者、および肢の重量が腓腹ベースガーメントの膨張に対して影響し得る高体重患者である。
【0037】
また、ガーメント2は、従来の腓腹部/足部ガーメントを上回る複数のさらなる利点を提供する。例えば、他の解剖学的エリアよりも大腿部の圧迫による血流実現の効果がより高い特定の患者タイプ(例えば高齢患者または低体重患者)が存在する。これらの患者は、腓腹および/または足に加圧デバイスを使用することができない場合がある、または使用したいと望まない場合がある。また、ガーメント2は、腓腹部ガーメントを使用する場合に比較して、患者の大腿4に対する膨張性チャンバ14の位置決めに関する有効性および位置の自由度を改善する。また、ガーメント2は、腓腹部ガーメントと比較した場合に、膨張性チャンバの周方向位置に関して患者および看護スタッフによるガーメント2の位置決めおよび位置変更におけるばらつきに対してはるかに高い許容性を有する。したがって、実際の臨床的使用において、ガーメント2は、圧力送達においてより高レベルの有効性を実現することが可能となる。
【0038】
また、ガーメント2は、腓腹部/足部ガーメントに比べてより多量の血液を移動させる。結果として、ガーメント2は、静脈鬱血の防止という目的の達成においてより効果的であると共に、さらに肢の質量およびサイズ、肢に対するガーメントの取付け、肢上における位置決め、患者の位置、ならびに多様な患者における傾向および実際の臨床的使用において見受けられるばらつきに対してより高い許容性を有する。また、この量および速度の両方における移動される血液の上昇(腓腹圧迫と比較した場合)により、血流の乱流特性の増大による有益な効果の上昇が得られ、したがって、血栓症進行の防止をさらに助けることになる。さらに、大腿部ガーメント2は、患者の肢裏に直接的に膨張性チャンバを配置しないため(先行技術ではなされる)、ガーメント2を膨張させることがより容易となる。したがって、ガーメント2についての空気圧要件が低くなり、それにより結果としてガーメント2の使用時の電力消費量がより低下し、ポンプのバッテリ持続時間が改善される。
【0039】
また、ガーメント2は、ガーメントサイズが縮小され、したがって患者の肢上に位置するガーメント材料量が減少し、これにより大腿部ガーメントおよび腓腹部ガーメントの組合せに比べて患者に対する熱的影響が低下する。患者の解剖学的構造体と接触状態になることが必要な材料量が減少することにより、大腿部ガーメント2は、より高い快適性を有し、患者コンプライアンスを改善する。また、ガーメントサイズの縮小により、保健医療提供者に対して費用対効果のより高いガーメントを製造および提供することが可能となる。また、ガーメント2は、腓腹部ガーメントと比較した場合に、ポンプ連結部との間におけるガーメント2の連結および連結解除が容易である。(例えば病床からバスルームへ移動したい場合になど)連結部を解除するために腓腹部下方まで物理的に手を伸ばすことが困難な多くの患者が存在する。大腿部ガーメントコネクタへのアクセスは、それらのコネクタが患者の手のより近くに位置するためより容易である。この側面は、看護アシスタントの必要性を低下させること、つまずいて転倒するリスクを低下させること、より容易かつより早い移動を支援すること、システムによる拘束感を低下させること、および患者がベッドに戻った場合にシステムの再連結および実際の使用が確実なものになることにおいて、大きな利点を有する。
【0040】
また、本開示の大腿局部ガーメント2は、患者の大腿4に対して脚に沿って位置変更することが考えられ得るという、先行技術の腓腹部ガーメントとは大きな機能的相違点を有する。1つの相違点では、必要な標的圧迫面積に対する膨張性チャンバ14の位置が、同等ではない。患者の脚に沿って移動される腓腹部ガーメントは、膨張性チャンバが患者の大腿の背部に位置決めされる結果となる。本開示の大腿局部ガーメント2は、患者の大腿4の内側表面上に膨張性チャンバ14を位置決めする。もう1つの相違点では、腓腹部ガーメントの長さは、患者の大腿4において患者の膝上方に実際に適合するガーメント長さよりも長い。
【0041】
一態様では、本開示の大腿局部ガーメント2は、1人の患者のみの使用期間向けに設計される。また、さらなる態様では、単一患者使用向けのガーメント2が、長期使用が可能であってもよく、複数の患者による臨床的使用の間で洗浄、衛生化、または滅菌される必要があってもよい。また、大腿局部ガーメント2は、ある患者による前回の使用後に洗浄、衛生化、または滅菌され得るように、認可された洗浄プロセスを受けることが可能となり得るように構成され得る。別の態様では、大腿局部ガーメント2は、複数患者による使用向けに特に設計され、したがって病院環境内での洗浄の容易さを必要とする。ガーメント2は、患者によるガーメント2の臨床的使用後にエチレンオキシドガスを使用して消毒することを含む様々なプロセスを利用して洗浄することが可能である。また、ガーメント2は、例えば患者によるガーメント2の臨床的使用前に初期洗浄ステップまたは初期滅菌ステップを実施するためにエチレンオキシドガスまたはガンマ線滅菌などを利用して処理することも可能である。ガーメント2の構造は、高水準消毒(HLD)プロセスを利用した洗浄が可能となるように最適化されたものが可能である。大腿局部ガーメント2の洗浄に用いられる方法およびプロセスもまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0042】
II.ダブルパルセーション圧迫方法
図7を参照して、大腿部ガーメント2と共に利用される圧迫方法が図示および説明される。この圧迫方法は、患者の肢に対して圧力を印加することを含み、それによりこの印加される圧力波形の圧力および時間的な特徴によって、改善された予防形態が結果的に得られる。別の態様では、図9に示す圧迫方法が、上述の大腿局所ガーメント2と共に利用される。圧迫方法が上述の大腿局所ガーメント2との関係において説明されるが、この圧迫方法は、足、腓腹、大腿/腓腹、大腿、または腕に対して使用されるものを含む、患者の肢の任意部分に対して適用される任意のガーメントと共に利用され得ることも予期される。本開示のさらなる態様は、ガーメント2に対して連結されたポンプ18が、ユーザの選択で、または自動感知された具体的なガーメント2の具体的な検出に基づき自動的にのいずれかにより、この動作モードの実現を可能にするというものである。この圧迫方法は、ポンプ18と、例えば大腿4などの患者の肢に対して取り付けられた関連付けられるガーメント2とを使用して、反復的に実施される。ポンプ18は、ガーメント2に対して間欠的に圧迫媒体(通常は圧縮空気)を供給する。ポンプ18は、既定の圧力波形により印加圧力のタイミングを制御する。この方法は、修正された圧力波形を用いて膨張性ガーメント2を使用して患者の肢を圧迫することを含み、この圧力波形は、従来的な単一の圧迫パルスではなく2つの圧迫パルスを患者の肢に対して印加する2つの時間連動した圧迫相を含む。低レベル圧迫を間に有する短期間(例えば10秒未満)内の2つの別個の圧迫の組合せにより、患者の肢内において量および速度に関して移動流体(例えば血液)のより大きな移動がもたらされ、したがって静脈鬱血のより効果的な防止が可能となる。
【0043】
この方法は、従来のガーメントにおいて典型的に見受けられるような同一レベルの効果的な予防を実現するように意図的に設計された第1の圧迫と、ある圧力および時間を伴う介在相と、続いて2つのさらなる有利な効果を提供することにより予防を強化する第2の追加的な圧迫とを伴う。第2の圧迫は、静脈血のさらなる移動を引き起こし、患者の肢の脈管内で移動される血液の総量を結果的に増加させる。第1の圧迫と第2の圧迫との間において圧力を低下させることにより、末端-近心間における身体の通常のプロセスを利用した肢内の脈管の再充填を開始させることが可能となる。次いで、この追加の流体が第2の圧迫中に移動される。また、第2の圧迫により、脈管壁がさらに圧迫され、静脈壁から静脈血中への自然発生的な抗凝固物質の放出が強化される。
【0044】
図9に示すように、本開示の圧迫方法は、図7に示すものと比較して異なる膨張段階と収縮段階との間の圧力波形を有する。この圧力波形の第1の部分は、ガーメント2の膨張性チャンバ14内の圧力が第1の一定圧力レベルにて安定化される、ガーメントの膨張段階となる。一態様では、この膨張段階は、4秒間にわたり継続し得る。この膨張段階後に、圧力波形は、より低い第2の圧力値(膨張間圧力)への収縮を迎え、この収縮は、第2の一定膨張圧力または第3の圧力値への第2の圧力上昇が起こるまで、ある時間にわたり維持される。第2の圧力値は、第1の圧力レベルよりも低くてもよい。第2の圧力値は、第3の圧力レベルよりも低くてもよい。第1の一定の膨張圧力レベルおよび第3の一定の膨張圧力レベルは、同一レベルであってもよく、または異なるものであってもよい。第1の一定の膨張圧力レベルまたは第2の一定の膨張圧力レベルのいずれかが他方よりも高いことが可能であるということは、本開示の範囲内に含まれる。
【0045】
本開示の一態様では、膨張性チャンバ14の第1の一定圧力レベルへの膨張は、少なくとも1秒間の期間にわたり続く。膨張性チャンバ14の第1の一定圧力レベルへの膨張は、少なくとも2秒の期間にわたり続く。第2の圧力値は、少なくとも1秒の期間にわたり維持されてもよい。第1の圧力レベルおよび第3の圧力レベルは、25mmHg超であってもよい。第1の圧力レベルおよび第3の圧力レベルは、少なくとも40mmHgであってもよい。第1の圧力レベルおよび第3の圧力レベルは、少なくとも45mmHgであってもよい。第2の圧力レベルは、ゼロmmHg超であり30mmHg未満であってもよい。第2の圧力レベルは、ゼロmmHg超であり20mmHg未満であってもよい。膨張性チャンバ14の第1の圧力レベルから第2の圧力レベルへの収縮は、少なくとも2秒の期間にわたり続いてもよい。ガーメント2の圧迫サイクル全体は、15秒未満であってもよい。ガーメント2の圧迫サイクル全体は、12秒であってもよい。ガーメント2の圧迫サイクルは、反復可能なものであってもよく、28秒超にわたり継続する長い収縮期間がその後に続いてもよい。別の態様では、この長い収縮期間は、最大で48秒にわたり継続してもよい。
【0046】
第1の圧力レベルへの第1の圧力傾斜の期間は、第3の圧力レベルへの第2の圧力傾斜の期間と同等であってもよい。第1の圧力レベルへの第1の圧力傾斜の期間は、第3の圧力レベルへの第2の圧力傾斜の期間よりも長くてもよい。ガーメント膨張サイクル中における平均圧力上昇速度は、+10mmHg/秒超である。第3の圧力レベルは、第1の圧力レベルの一定割合となり得る。第1の圧力レベルおよび第3の圧力レベルは、相互の5mmHgの範囲内であり得る。第1の圧力レベルは、第3の圧力レベルよりも高くてもよい。一態様では、第3の圧力レベルは、第1の圧力レベルよりも高くてもよい。
【0047】
図10は、この圧迫方法の超音波スキャン画像と、本開示による圧力波形とを示す。スキャン画像は、13秒のスキャン期間にわたる時間(x軸)に対する大腿血流速度(y軸)に対する本開示の圧迫方法の効果を示す。このスキャン画像は、2つの別個の血流速度パルスを示し、これらのパルスは、圧締圧力波形の異なる膨張段階と直接的に合致し関係する。圧迫前の基底大腿静脈血流速度は、マーカC(速度C=6.0cm/s)として示され、これは、患者の休息基底血流速度に相当する。肢に対するガーメントの初期膨張は、-13秒マーカから―10秒マーカまで継続する。この膨張により、血流速度の第1の上昇がもたらされ(速度A=23.6cm/sのピークへの)、これは基底血流速度よりも著しく高い。次いで、この圧力波形では、-8~-6秒マーカにおいてガーメントの部分収縮が発生し、これは、圧力波形のより低い「膨張間圧力」セクションに対応する。この圧力は、大腿血流速度の低下と対応する。なぜならば、肢の静脈内の血液の大半が、前回の圧迫により既に移動されているからである。次いで、第2の膨張が、-6秒マーカから0秒マーカにかけて起こり、これにより速度B=19cm/sのさらなる血流速度が得られる。この第2の膨張パルスは、先行技術の「単一パルス」システムの動作では見られなかった大腿血流速度の第2の上昇を結果的にもたらす。
【0048】
一態様では、第2の流体膨張速度は、第1の圧迫前に脈管が完全に充填されるため、典型的には第1の流体膨張により達成される速度未満となる。したがって、ガーメント2により印加される圧迫力は、ガーメントにより覆われた脈管および組織の全内容物に対して印加される。この第1の圧迫が完了すると、パルス間に存在するより低い圧力により、天然の循環プロセスの利用による脈管/組織の再充填が可能となる。この再充填は長い秒数をかけて行われるため、これは第2の圧迫について使用可能な流体量は、第1の圧迫について使用可能な流体量に比べてその一部の量でしかないことを意味する。したがって、結果的に得られる第2の圧迫力は、第1の圧迫力に比べてより少ない流体に対して作用し、そのため結果として血流速度の強化がより低いものとなる。しかし、第2のパルスは、第1のパルスに対する追加であるため、移動される血液または達成される速度上昇の追加的な増加は、第1のパルスによるものに対する追加的なものとなり、より効果的な圧迫方法が実現される。
【0049】
第2のインパルスは、基底血流速度の大幅な上昇をもたらし、したがってさらなる流体の肢からの押出しを確保する。さらに、第2のインパルスは、血液中におよび脈管(例えば血管)内に二次インパルスをもたらし、結果として第1のインパルスに関連付けられた流体移動動作が反復される。第1のパルスの印加圧力上昇(dP1/dt1)と第2の圧力パルスの印加圧力上昇(dP2/dt)との間における経時的な印加圧力上昇の関係性および数値(dP/dt)により、2つのインパルスによって移動血液を最大化および均衡化する方法が実現される。好ましい一態様では、dP1/dt1値は、先行技術のものと変わらず、5mmHg/s超の平均値を有し、好ましくは10mmHg/s超の平均値を有する。第2の圧力上昇dP2/dt2は、典型的には第1のdP1/dt1と同様であるかまたはそれ未満であるかのいずれかとなる。さらに別の代替的な実施形態では、第2の上昇速度dP2/dt1は、第1の上昇速度DP1/dt1よりも速い。本開示のさらなる態様は、第2のインパルスで達成される速度増加率の上昇は、第1のインパルスにより実現される速度増加率の上昇の少なくとも50%となるというものである。このデュアルインパルス機能により、第1のインパルスと第2のインパルスとの間により低圧の期間が確保されるという特定の利点が得られる。これは、適用される治療の全般的な効果および快適性を助長し、肢に対して印加される圧力の平均値を低下させる。
【0050】
本圧迫方法の結果による移動血液の総量の上昇は、2つのインパルスにより達成される移動血液量の和に直接関係する。この血液総量は、図10における圧力波形の12秒の期間中における速度曲線下の領域と同等となる。これは、図8に示す先行技術の圧力波形よりも本発明による圧力波形の場合においてより顕著となる。脈管内における流体流に関して、第1のインパルスは、完全充填された脈管に対して作用し、その中に位置する流体を近位方向へ移動させる。次いで、脈管内において結果的に生じた低圧により、患者の肢の遠位領域からの圧力再充填が可能となり、次いでこの流体が、第2のインパルスにより圧縮される。したがって、本圧迫方法による2つの圧迫パルス間の中間圧力は、ガーメントの遠位に位置する流体がガーメント2の下方エリアに位置する脈管内に流入することが可能となる十分な低さとなる。次いで、第2の圧迫が、脈管内に位置するこの流体に対して作用する。2つの圧迫パルス間で印加される圧力は、ガーメントが配置された肢に対する静脈閉塞圧力を達成するのに必要な圧力未満となる。一態様では、腓腹および大腿の領域に必要な圧力は、典型的には30mmHg未満である。
【0051】
先行技術の方法および本圧迫方法と比較した場合に、同一の肢に対する圧力印加同士の間で設定されるタイミングについての変更は不要である。したがって、患者の静脈の圧迫と自然な静脈再充填との間の時間的関係性は維持される。したがって、本圧迫方法は、先行技術の方法においてみられるような印加同士の間に同じく48秒の休止期間を設ける証明済みの利点を伴った実施を継続し得る。さらに、本圧迫方法は、患者に対して圧力が印加される総時間の変更を不要とする。したがって、これらの2つの膨張は、先行技術の方法において見受けられる現行の12秒の膨張期間内において行われる。
【0052】
また、患者の肢を通る静脈流の上昇はいずれも、それに関連した患者の動脈流の上昇という形において、関連する有益な副次的効果を有することが知られている。したがって、本開示の2パート圧迫パルスは、患者の肢において動脈流を上昇させるために適用することも可能である。この利点に加えて、肢内のリンパ流体流の増強に関しても付随的な利点が存在する。本発明の圧力波形により実現される経時的な肢からの移動血液の総量(すなわち体積流量)は、経時的な血液流速の積分により得られ、この量は、図10に示すドプラ速度波形の流体血液速度曲線下の領域を考慮することにより視覚的に提示され得る。患者にとって有意かつ臨床的に有益な、二次圧迫により達成される有意な二次血液流が存在することが理解できる。
【0053】
VTE防止のケースでは、本圧迫方法は、圧迫システムにおける本質的な制約を克服することを試みる。単一の圧迫により作用を受け得る最大血液量は、加圧ガーメント下の静脈中に位置する血液、およびさらに圧迫部位の近位の静脈中に位置する血液に本質的に限定される。この血液が移動されると、次いで先行技術のシステムは、正常な循環プロセスにより静脈が静脈血で再充填されるまで血液を移動させることができない。特に、先行技術のシステムは、圧迫中に圧迫部位に対して遠位側に位置する血液を移動させることができず、この血液は、身体の自然な循環プロセスにより患者の肢内の血液がさらに近位方向へと移動したときの圧迫時までは移動されない。肢外への静脈血の移動における肢圧迫の効果は、圧迫部位の近位側の血液柱全体に対して作用するおよびこの血液柱全体を移動させる必要性に起因して本質的に制限される。外科手術中および患者介護が長時間にわたる場合に利用される周知の臨床患者位置の中のいくつかなど、患者が仰臥位置に横たわっておらず代わりに座位または斜位に位置する場合には、これはさらに困難となる。
【0054】
本発明は、初期膨張後のより低圧の期間を利用した圧迫方法を詳述するが、これにより、圧迫部位の遠位側に位置する血液は、第2の膨張前の時間における静脈内圧により圧迫部位の近位方向へと移動することが可能となる。次いで、第2の膨張は、静脈系内の血液に対して第2のインパルスを印加する。したがって、本発明は、2つの圧迫インパルスを使用ししたがって静脈血柱に対して2つのインパルスを印加することにより、血液の移動および静脈鬱血の克服に関してさらにより高い能力を有する。これらのインパルスの結果により、患者の肢を通りそこから移動される血液の総量が増加する。患者の肢を通り移動される血流総量がこのように増加することは、血行動態フローレベルがより低い患者、または組織内の間質液の増加に起因する浮腫レベルが高い患者において有利となり得る。
【0055】
一態様では、制御システム19が、ガーメント2に圧縮流体を供給するようにポンプ18を制御するために使用される。制御システム19は、ポンプ内の圧力変換器(図示せず)を使用してガーメント2に対して提供されるものとしての圧力のリアルタイム測定を利用する。この圧力測定は、ガーメント2に対する圧力波形の正確かつ反復可能な提供を可能にする。この圧力測定はガーメント2に対して圧縮流体を供給するようにポンプ18の出力を制御するために使用される、制御アルゴリズムに対する入力を生成する。
【0056】
第1の膨張からより低い膨張間圧力への圧力降下は、所要圧力レベルの達成を確保するように制御される。これは、より少ない圧縮流体が膨張性ガーメント2に対して適用されるように印加電力を低下させることを含む、入力変数としてとしてのポンプ18のエネルギーを制御変調する制御システム19を使用することによって達成され得る。追加的にはまたは代替的には、空気圧制御システムが、ポンプ分配弁中の通気経路を介したまたはガーメントに配置された通気穴および経路を介したものなど、大気中への特定の通気経路を使用することによりこの圧力を低下させることが可能である。
【0057】
圧力波形の様々な部分によるガーメント圧力の制御は、先行技術において周知である複数の確立された数学ベース制御技術の利用により容易に実現することができる。これらの制御技術の例としては、比例-積分-微分(PID)、「バング-バング」オン-オフ、およびファジー論理制御方法などの種々の制御アプローチを利用した閉ループ制御の利用が含まれる。また、ポンプ18への印加電力を制御し、システム内で制御されるリークに対して結果的に得られる印加圧力を空気圧的に均衡化することを利用して圧力波形の任意箇所にて必要な圧力を達成する、閉ループ制御システムを利用することが可能である。これらの技術は、圧力波形全体に対して単独で利用されることが可能であり、または代替的には、圧力波形の種々の相のそれぞれに対して単一の制御技術を個別に選択しながら複数の技術を利用することが可能である。ポンプ18の出力制御は、例えば米国特許第7,038,419号において開示されるパルス幅変調(PWM)アプローチの利用などにより、個別のポンプ応答制御に対する入力要件を設定する制御アルゴリズムの制御能力を利用することによって実現される。この米国特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。結果的に得られる圧力が、ガーメント2における時間変動する標的圧力と比較される。
【0058】
本開示のさらなる態様は、連結されるガーメントタイプがポンプ18により自動識別され、このガーメント識別により、適切な制御アルゴリズムおよびパラメータがガーメントの圧力波形に対して適用されるものである。このアプローチにより、ポンプは、連結された具体的なガーメントタイプに基づき圧力波形の制御を最適化することが可能となる。大腿部ガーメント2は、連結チューブ20と制御ユニット8との間に存在するコネクタに配置された識別構成要素または感知性構成要素を備え、この識別構成要素または感知性構成要素は、大腿部ガーメント2が検出され、他のおよび異なるガーメントのタイプおよびサイズからの区別が可能になるように、制御ユニットによって感知され得る。
【0059】
本開示で説明される圧迫方法は、先行技術で利用される単一インパルス圧迫方法を上回る複数の利点を提供する。ガーメント2のタイミング要件および膨張要件の定量解析は、先行技術において一般的な12秒の膨張期間以内が、本開示の複数インパルスを達成するために十分な時間となることを示唆している。例えば、2つの膨張段階のそれぞれについて先行技術と同一速度である膨張速度(すなわち+dP/dt)を使用することにより、同一の移動血流速度が結果的に達成され、その乱流特性が維持されることが確保される。一態様では、膨張中における圧力上昇速度は、10mmHg/秒超である。
【0060】
単一の圧迫を利用する先行技術の間欠的圧迫システムは、長期間にわたり肢の組織に対する一定の力を維持する。本圧迫方法は、先行技術の方法と比較して肢に対して印加される力の平均値を低下させる。また、先行技術の圧力波形と比較して、同じ12秒の期間にわたり肢に対して印加される圧力の総量が低下することにより、患者の皮膚および組織にとって有利となる。予防の快適性の改善を確保することは、医師に指示された療法に対する患者の利用および患者コンプライアンスの促進にとって重要である。したがって、本圧迫方法の利点は、先行技術と同じく12秒以内の膨張期間にわたりその圧力レベルが印加されないため、患者の快適性が改善される点である。
【0061】
さらに、単一の膨張のみの効果に依存する場合には、体積および速度上昇の両者に関してある一定度合いの血液流体移動が達成されるにすぎない。しかし、ガーメント内において複数の同様の膨張を利用することにより、より高い血液移動量が患者の肢において結果的に実現される。空気供給源またはバッテリベースの電源などの、比較的小容量のシステム構成要素に起因する制約は、圧力波形の圧力要件が低いことによりさほど問題ではなくなる。このシステムは、先行技術の方法で維持されるような長期にわたりかかる高い数値にガーメント圧力を維持する必要がない。
【0062】
本開示の別の態様では、圧力波形を実現するシステムは、患者からの臨床パラメータを感知または利用することが可能であり、結果として上述の印加圧力波形のタイミングおよび圧力相を変更することが可能である。これにより、予防を経時的に変化させることができ、快適性および有効性の改善など患者にとってのさらなる利点がもたらされる。この臨床パラメータは、呼吸速度またはパルスもしくは他のパラメータなどの患者の測定値であってもよい。この臨床パラメータは、患者の具体的な臨床条件に基づき複数インパルスパラメータを調節することが可能となるように、加圧システムに対して提供され得る。代替的には、加圧システムは、提供される圧力期間をモニタリングし、それまで提供された予防の量に基づき圧力波形を調節し得る。本開示のさらなる態様は、時刻に基づきまたは患者が睡眠状態にあるか否かに基づき調節される圧迫パルスパラメータおよびタイミングを用いる。測定され得る臨床パラメータの例としては、患者の位置(例えば仰臥位置、座位)、連結される加圧ガーメントの既知のサイズの範囲内の患者の肢のサイズ、組織タイプに関連する肢の特性およびそれに関連する機械的変形度、ならびに達成される圧迫が含まれる。このパラメータに関して使用され得るさらなる要素の例としては、前回のシステム使用(目標使用の時間またはパーセンテージ)、および具体的な臨床分類(既知のリスク要因およびリスクスコア、他の予防治療および予防薬の使用)を含むより一般的な側面が含まれる。実現される血流上昇レベルは、図9に示すパラメータに関係し、したがってこれらのパラメータが患者の臨床ニーズに応じてポンプにより自動的にまたは臨床スタッフにより調節され得ることが、本発明の範囲内に含まれる。
【0063】
本開示のさらなる態様は、システムが、いかなる測定値を用いることもなく所定のシーケンスに基づき図9に示す圧力波形のタイミングおよび圧力相を変更し得るものである。結果として、圧力波形は、予防期間の間にわたり圧力波形パラメータを変更しながらガーメント2に対して反復的に提供され得る。したがって、加圧システムは、連結されるガーメントタイプ、選択される圧力レベル、患者測定パラメータ、時間、治療推移、または代替的には加圧システムと通信状態にある患者ベースパラメータを含む、様々な入力に基づき2つのインパルスの圧力波形およびタイミングを適合化することが可能となる。
【0064】
本圧迫方法は、修正の必要を伴わずに既存のガーメント設計に対して適用可能である。圧力波形の必要な制御は、ポンプ18により実現される。これは、典型的にはソフトウェアおよび電子ベース制御システムの使用により実現されて、ポンプ18および圧力弁の使用により圧力の生成および印加を変調させる。本圧迫方法は、いかなる異なる制御システムまたはハードウェアを必ずしも必要としないが、圧力レベルおよびタイミングを制御するソフトウェアに対する変更のみを伴う。
【0065】
ガーメントおよびダブルパルセーション圧迫方法の複数の態様が、添付の図面に示され上記で詳細に説明されたが、本開示の範囲および趣旨から逸脱しない他の態様が、当業者には明らかであり容易に実現されよう。したがって、前述の説明は、限定的なものではなく例示的なものとして意図される。上記に説明した本発明は、添付の特許請求の範囲により定義され、それらの請求項の意味および範囲内に含まれる本発明に対するあらゆる変更が、特許請求の範囲内に包含される。
【符号の説明】
【0066】
2 DVT加圧ガーメント
4 大腿
6 セクション
8 留め具、制御ユニット
10 凹部
12 近位エッジ
14 膨張性チャンバ
16 遠位エッジ
18 ポンプ
19 制御システム
20 注入チューブ、連結チューブ、グロメット
22 第1のオフセットセクション
24 第2のオフセットセクション
26 チャネル
28 第3の膨張性チャンバ
30 第2の膨張性チャンバ
32 第1の膨張性チャンバ
34 移動チューブ、注入チョークチューブ
36 移動チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10