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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20231006BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20231006BHJP
   B60C 23/20 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
B60C19/00 G
B60C11/00 C
B60C11/00 D
B60C19/00 B
B60C23/20
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021525386
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 GB2019052006
(87)【国際公開番号】W WO2020016584
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】1811752.3
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521026194
【氏名又は名称】オートモーティブ・フュージョン・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ジョン・ホール
(72)【発明者】
【氏名】アリ・エッサム・クッバ
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-117144(JP,A)
【文献】特開2016-203829(JP,A)
【文献】特開2007-118873(JP,A)
【文献】特開2013-159322(JP,A)
【文献】実開平01-108804(JP,U)
【文献】国際公開第2014/057282(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105751821(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00-23/20
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの転動条件に適応的に適合させるためのタイヤであって、前記タイヤは、第1および第2の側壁と、これらの間に延在する接触壁と、前記第1の側壁、第2の側壁、および接触壁のうちの1つまたは複数を加熱するためのヒータと、を含み、前記タイヤ内には複数のチャンバが画定され、前記複数のチャンバのうちの少なくとも1つは、前記第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の外形を変更するために選択的に膨張可能である、タイヤ。
【請求項2】
前記ヒータは、前記第1の側壁、第2の側壁、および/または前記接触壁を加熱するように配置されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ヒータは、前記第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁内に少なくとも部分的に埋め込まれている、請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ヒータは加熱要素を含む、請求項1、2、または3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記加熱要素は、前記タイヤのベルトまたは他の強化要素を含む、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記タイヤ内の熱流および/または前記タイヤからの熱損失を制御するための断熱手段を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記断熱手段は、少なくとも部分的に前記第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁内にある、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記断熱手段は、前記ヒータと、前記第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の外面との間に配置されている、請求項6または7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記断熱手段は断熱層を含む、請求項6、7、または8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の温度を測定するための温度センサを含む、請求項4または5に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記温度センサは、前記第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の前記温度を直接的または間接的に測定するように構成されている、請求項10に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記温度センサは、前記加熱要素の抵抗を測定するためのデバイスを含む、請求項10または11に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記複数のチャンバのうちの1つまたは複数を膨張させるための膨張手段を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記膨張手段はポンプを含む、請求項13に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記複数のチャンバのうちの1つもしくは複数内の流体の圧力を制御するため、ならびに/または前記第1の側壁、第2の側壁、および/もしくは接触壁を加熱するための前記ヒータを制御するための制御手段を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項16】
前記制御手段は、前記温度センサによって測定された、前記第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の温度に応答して、前記ヒータを制御するように構成されている、または構成可能である、請求項10から12のいずれか一項に従属するときの請求項15に記載のタイヤ。
【請求項17】
前記制御手段は、タイヤ転動条件に応答して、前記複数のチャンバのうちの1つまたは複数を膨張または収縮させるように前記膨張手段を制御するように構成されている、または構成可能である、請求項13または14に従属するときの請求項15または16に記載のタイヤ。
【請求項18】
前記接触壁はその外面上にトレッドバンドを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項19】
前記トレッドバンドは、第1の材料で形成された第1の部分と、異なる第2の材料で形成された第2の部分と、を含む、請求項18に記載のタイヤ。
【請求項20】
前記第1の材料は前記第2の材料よりも比較的低い耐摩耗性を有する、請求項19に記載のタイヤ。
【請求項21】
前記第1の部分は、前記タイヤの前記第1および/または第2の側壁に、またはこれに隣接して配置されている、請求項19または20に記載のタイヤ。
【請求項22】
前記第2の部分は、前記タイヤの前記接触壁の中央領域に、またはこれに隣接して配置されている、請求項19、20、または21に記載のタイヤ。
【請求項23】
1つまたは複数のタイヤ転動条件を感知するための感知手段を含む、請求項1から22のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項24】
前記第1の材料は前記第2の材料よりも比較的低い耐摩耗性を有し、前記制御手段は、前記第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の外形を変更するための前記膨張手段を制御するように構成され、または構成可能であり、前記第1の側壁、第2の側壁、および接触壁のうちの1つまたは複数を加熱し、前記タイヤの転動条件に応じて、寒冷条件において前記タイヤの前記第1の側壁、第2の側壁、および接触壁のうちの1つまたは複数の特性を調整するための前記ヒータを制御するように構成され、または構成可能である、請求項16に従属する請求項17に従属するときの請求項22に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概してタイヤに関する。より具体的には、排他的ではないが、本発明は、タイヤの転動条件に適応的に適合させるためのタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ、たとえば空気入りタイヤは、自動車のような陸上車両で、および飛行機のような航空機でも用いられる。
【0003】
空気入りタイヤは通常、第1および第2の側壁と、これらの間に延在する接触壁とを含む。また、このような空気入りタイヤは一般に、エラストマー材料の複数の層から製造される。これらの層は、カーカス、ライナーまたはインナー層、ビード、ベルト構成およびトレッドパターンを含む。これらの層は通常、シリンダの周りに重ねて装着される。これらの層を次いでモールド内へ拡張させてタイヤの最終形状を形成し、次いで硬化させて(たとえば、蒸気の適用によって)これらの層を互いに結合し、したがってタイヤを形成する。次いで、使用中、タイヤが転動する表面に接触するため、トレッドバンドをタイヤTの接触壁に取り付け得る。
【0004】
習慣的に、空気入りタイヤは、少なくとも動いている間、単一の圧力設定を有するように膨張している。これは、車両を支持している、または車両に取り付けられているときにタイヤがどのように機能するかという観点において最適でないことがある。たとえば、タイヤが受ける転動条件が変わることがある一方(たとえば、コーナリング、滑らかなまたは粗い表面、上り坂または下り坂の移動のために)、タイヤ圧は実質的に一定のままであることがあり、または比較的少量だけ変化することがある。理解されるであろうように、タイヤの形状も、したがって、実質的に一定のままであり得る。あるいは、および/または加えて、たとえば摩擦のため、タイヤの表面に対して作用する外力が、タイヤの性能に悪影響を及ぼし得る方法でタイヤ形状を変えることがある。
【0005】
理解されるであろうように、オフロード使用に適したタイヤ内の所望のまたは要求される圧力は、オンロード使用に適したタイヤ内の圧力とは著しく異なることがある。さらに、タイヤのこれが転動している表面との接触パッチのサイズおよび/または形状は、転動抵抗およびタイヤが上記表面を把持する能力に影響を及ぼし得る。しかしながら、接触パッチの形状および/またはサイズは、構築されたときのタイヤの元の形状によって、およびその使用前、タイヤが最初に膨張したタイヤの内圧によって、実質的に決定および固定される。従来のタイヤの接触パッチの形状および/またはサイズは使用中に変化することがあるが(たとえば、加えられた外部荷重のため)、このような変化は、タイヤの性能に悪影響を及ぼすことがあり、通常は望ましくない。このような外部荷重は、タイヤが取り付けられている車両の質量の変化、および/またはタイヤの外面に対する衝撃(たとえば岩場からの)を含み得る。当業者によって理解されるであろうように、タイヤとこれが転動している表面との間の摩擦を比較的減少または増加させるため、異なるサイズおよび/または形状の接触パッチが異なる運転条件(たとえば直線を運転することとは対照的にコーナリングのとき)において有益であり得る。
【0006】
使用中、タイヤが表面上を転動することにより、タイヤのトレッドバンドが摩耗する。このような摩耗により、最終的に、タイヤはさらなる使用に適さなくなる(安全でなくなるため、および/またはトレッドバンド深さに関する地方の規制に抵触することにより)。したがって、タイヤは耐用寿命を有する。したがって、比較的高い耐摩耗性を有する材料からトレッドバンドを形成し、これによってタイヤの比較的長い耐用寿命を提供することが有利である。しかしながら、比較的高い耐摩耗性を有する材料は、比較的低い摩擦係数を有することがあり、したがって、タイヤが転動している表面に対して比較的低いグリップを提供することがある。このようなタイヤは、したがって、高いグリップが要求される条件において比較的性能が低くなることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上で特定された問題のうちの1つまたは複数を少なくとも部分的に軽減するタイヤを提供することが、本発明の第1の非排他的な目的である。タイヤ転動条件に、たとえばタイヤ転動条件を変化させることに適応可能なタイヤを提供することも、本発明の非排他的な目的である。タイヤ転動条件に(たとえばタイヤ転動条件を変化させることに)動的に適応可能なタイヤを提供することも、本発明の非排他的な目的である。たとえば転動使用中、その外形が変化し得るタイヤを提供することが、本発明の非排他的な目的である。比較的長い耐用寿命を有するとともに比較的高いグリップを有するタイヤを提供することが、本発明の非排他的な目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の第1の態様は、タイヤの転動条件に適応的に適合させるためのタイヤを提供し、このタイヤは、第1および第2の側壁と、これらの間に延在する接触壁とを含み、このタイヤは、第1の側壁、第2の側壁、および接触壁のうちの1つまたは複数を加熱するためのヒータをさらに含む。
【0009】
「接触壁」という用語は、第1および第2の側壁間に延在し、使用中、タイヤが転動している表面に接触するように意図されたタイヤの部分を指すと当業者によって理解されよう。接触壁は、複数の材料層および/または構成要素を含むことができる。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、タイヤの転動条件に適応的に適合させるためのタイヤが提供され、このタイヤは、第1および第2の側壁と、これらの間に延在する接触壁とを含み、接触壁は、その外面に配置されたトレッドバンドを含み、このタイヤは、第1の側壁、第2の側壁、および接触壁のうちの1つまたは複数を加熱するためのヒータをさらに含む。
【0011】
「トレッドバンド」という句は、接触壁の外面上の構造を指すと当業者によって理解されることとなり、トレッドバンドの少なくとも一部は、使用中、タイヤが転動している表面に接触するように意図されている。トレッドバンドは、実質的に滑らかな外面を含むことができ、またはパターン化することができる。
【0012】
第1または第2の態様のいくつかの実施形態において、タイヤ内には複数のチャンバを画定し得る。複数のチャンバのうちの1つまたは複数は、第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の外形を変更するために(たとえば、使用中、タイヤが転動している間)選択的に膨張可能であり得る。
【0013】
有利には、本発明により、タイヤトレッドバンドにおいて異なる特性を有する異なる材料の使用が可能になる。タイヤTの外形の適応性により、タイヤとこれが転動する表面との間の接触パッチの形状および/またはサイズが変更される。接触パッチの形状および/またはサイズを変更することによって、トレッドバンドに異なる材料を用いることができるということ、特に、タイヤの比較的長い耐用寿命を維持しながら、異なる摩耗率を有する材料を用いることができるということがわかった。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、タイヤの転動条件に適応的に適合させるためのタイヤが提供され、このタイヤは、第1および第2の側壁と、これらの間に延在する接触壁と、第1の側壁、第2の側壁、および接触壁のうちの1つまたは複数を加熱するためのヒータと、を含み、タイヤ内に複数のチャンバが画定され、複数のチャンバのうちの少なくとも1つは、第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の外形を変更するために(たとえば、使用中、タイヤが転動している間)選択的に膨張可能である。
【0015】
実施形態において、複数のチャンバのうちの1つ、いくつか、またはそれぞれは、複数のチャンバのうちの1つまたは複数の他のものから流体的に分離しまたは分離可能とし得る。実施形態において、複数のチャンバのうちの1つ、いくつか、またはそれぞれは、複数のチャンバのうちの他の1つ、いくつか、またはそれぞれから別個に膨張可能であり得る。
【0016】
有利には、第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の材料を加熱することにより、同じ膨張を達成するために必要だがこのような加熱のない圧力よりも比較的減少した圧力を用いて、複数のチャンバのうちの少なくとも1つを膨張させる(したがってタイヤの1つまたは複数の壁の外形を変更する)ことが可能になる。さらに、タイヤの1つまたは複数の壁の外形の変更は、本発明のタイヤを用いて、より正確におよび/または迅速に制御し得る。いかなる特定の理論によっても拘束されることを望まないが、ヒータの制御により、第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の延性を制御し得ると考えられている。タイヤが一般的に製造されるエラストマー材料は通常、比較的より熱いときよりも比較的冷たいとき弾性変形しにくい。したがって、タイヤの1つまたは複数の壁がヒータによって加熱されると、複数のチャンバのうちの1つまたは複数が膨張する結果、第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の外形が、タイヤの壁が加熱されない場合(同じ圧力を加えるとき)よりも比較的大きく変形する。タイヤの1つまたは複数の壁の外形のこの強化された制御は、寒冷条件の間、たとえば周囲温度が比較的冷たいとき、および/または一定期間静止していた後(たとえばタイヤが取り付けられている車両が一晩駐車されていたとき)のタイヤの比較的早いまたは最初の使用中、特に有益であるということがわかった。
【0017】
第1および第3の態様のいくつかの実施形態において、接触壁は、その外面に配置されたトレッドバンドを含み得る。
【0018】
トレッドバンド(提供される場合)は、たとえばタイヤの第1および/または第2の側壁に、またはこれに隣接して配置された第1の部分を含み得る。トレッドバンドは、たとえば接触壁の中央領域に、またはこれに隣接して(たとえば第1および/または第2の側壁から離間して)配置された第2の部分を含み得る。トレッドバンドの第1および第2の部分は、同じまたは異なる材料から、たとえば同じ材料のコンパウンドから、または異なる材料のコンパウンドから形成し得る。第1および第2の部分のうちの一方は、第1および第2の部分のうちの他方とは異なる摩擦係数を提供するように構成し得る。第1および第2の部分のうちの一方は、第1および第2の部分のうちの他方とは異なる表面処理またはパターンを含み得る。あるいは、第1および第2の部分は、同じ表面処理および/もしくはパターンを含み得、ならびに/または同じ摩擦係数を提供するように構成し得る。
【0019】
ヒータは、トレッドバンドを(たとえば選択的に)加熱するように構成しまたは構成可能としまたは配置しまたは配置可能とし得る。ヒータは、トレッドバンドの第1の部分(提供される場合)および/またはトレッドバンドの第2の部分(提供される場合)を(たとえば選択的に)加熱するように構成しまたは構成可能としまたは配置しまたは配置可能とし得る。好ましくは、ヒータは、(たとえば単独でまたは優先的に)トレッドバンドの第1の部分を(たとえば選択的に)加熱するように構成しまたは構成可能としまたは配置しまたは配置可能とし得る。
【0020】
有利には、トレッドバンドの一部を加熱することにより、トレッドバンドのその部分の材料特性が(たとえば少なくとも一時的に)変わることがある。いくつかの実施形態において、トレッドバンドの一部を加熱することにより、トレッドバンドのその部分のグリップを改善し得る。たとえば、トレッドバンドの材料は、非加熱条件においてよりも比較的延性が高くなることがある。したがって、トレッドバンドの加熱部分は、それが転動している表面に対して比較的増大したトラクションを生成し得る。トレッドバンドの1つまたは複数の部分のトラクションを選択的に増大させることによって、タイヤは、要求されるとき(たとえばコーナリングのとき)にグリップを強化し、他の時(たとえば直線を転動するとき)にグリップを比較的減少させ得る。これによってタイヤの耐用寿命を実質的に維持しながら、要求されるようなときグリップ特性を強化し得る。
【0021】
タイヤは、たとえばタイヤ内の熱分布および/または流れを制御または配向するように、および/またはタイヤからの熱損失を制御するように構成または配置された断熱手段(たとえば断熱材)を含み得る。断熱手段は断熱層を含み得る。断熱手段は、少なくとも部分的に第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁内にあっても(たとえば少なくとも部分的にこの中に埋め込まれても)よい。断熱手段は、ヒータと第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の外面との間に少なくとも部分的に配置し得る。断熱手段は、ヒータからトレッドバンド(提供される場合)への、またはこれに向かう、たとえばトレッドバンド(提供される場合)の第1の部分および/もしくは第2の部分への、またはこれに向かう熱流を少なくとも部分的に防止もしくは低減するように構成または配置し得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、トレッドバンド(提供される場合)の第1および第2の部分は、異なる材料から、たとえば異なる材料のコンパウンドから形成し得る。たとえば、トレッドバンドの第1の部分は第1の材料から形成し得、たとえばトレッドバンドの第2の部分は第2の(たとえば異なる)材料から形成し得る。第1の材料は、第2の材料よりも比較的低い耐摩耗性を有し得る。第2の材料は比較的高い耐摩耗性を有し得る。第1の材料は、使用中、比較的高い摩擦係数を提供するように構成し得る。第2の材料は、使用中、たとえば第1の材料よりも低い、比較的低い摩擦係数を提供するように構成し得る。第1および第2の材料は、たとえばヒータによる加熱に対して異なる反応をするように選択し得る。第1の材料は、第2の材料よりも加熱時に比較的延性が高くなるように、および/または比較的高い摩擦係数を提供するように構成し得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、ヒータは、第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁を加熱するように構成し得る。いくつかの実施形態において、ヒータは、第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁内に少なくとも部分的に埋め込み得る。ヒータは加熱要素を含み得る。加熱要素は、タイヤの一ベルトもしくはベルトまたは他の強化要素を含み得る。一ベルトもしくはベルトまたは他の強化要素は、実質的にタイヤの円周の周りに延在し得る。ヒータは、電気エネルギー源に接続しまたは接続可能とし得る。ヒータは、第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の1つまたは複数の部分を選択的に加熱するように構成しまたは構成可能とし得る。ヒータは、たとえば、第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の第1の部分を第1の温度に選択的に加熱し、第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の第2の部分を第2の温度(たとえば第1の温度とは異なる)に選択的に加熱するように構成しまたは構成可能とし得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、タイヤは、たとえば、第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の温度を測定するための温度センサを含み得る。温度センサは、第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の温度を直接的または間接的に測定するように構成し得る。温度センサは、加熱要素(提供される場合)の抵抗を測定するためのデバイスを含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、タイヤは、たとえば複数のチャンバ(提供される場合)のうちの1つまたは複数を膨張させるための膨張手段(たとえば膨張機構)を含み得る。膨張手段は、1つまたは複数の(たとえば1つの)ポンプ、たとえば、ロータリーポンプ、ピストンポンプ、ダイアフラムポンプ、スクリューポンプ、または他の適切なタイプのポンプのうちの1つまたは複数を含み得る。膨張手段は、タイヤの内側および/または外側に配置しまたは配置可能とし得る。膨張手段がタイヤの内側に配置されるまたは配置可能である場合、タイヤは膨張手段を保持するように構成し得る。膨張手段は、タイヤ、たとえばその内面に取り付けられ得るまたは取り付け可能とし得る。膨張手段は、複数のチャンバ(提供される場合)のうちの1つまたは複数に取り付けられ得るまたは取り付け可能とし得る。膨張手段は、複数のチャンバのうちの1つ、いくつか、またはそれぞれに流体的に(たとえば動作可能に)接続し得る。膨張手段は、たとえば膨張手段を複数のチャンバのうちの1つ、いくつか、またはそれぞれに流体的に接続するためのマニホルドを含み得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、複数のチャンバ(提供される場合)のうちの少なくとも1つは、接触壁に、またはこれに隣接して配置し得る。複数のチャンバのうちの少なくとも1つは、使用中、接触壁(たとえば接触壁の一部)の外形を変更するように配置しまたは配置可能とし得る。複数のチャンバのうちの少なくとも1つは、第1および第2の側壁間の、接触壁の小部分を横切って延在し得る。その小部分は、タイヤの側壁間の距離の半分未満、たとえばタイヤの側壁間の距離の3分の1、4分の1、5分の1、6分の1未満を含み得る。複数のチャンバのうちの1つ、いくつか、またはそれぞれは、可変容積を有し得、たとえば拡張可能または縮小可能とし得る。複数のチャンバのうちの1より多くまたはそれぞれは、たとえばタイヤの外形を変更するため膨張可能とし得る。
【0027】
接触壁は、第1の側壁にある、またはこれに隣接する第1の領域(たとえば内側領域)、第2の側壁にある、またはこれに隣接する第2の領域(たとえば外側領域)、および第1および第2の領域間の第3の領域(たとえば中央領域)を含み得る。複数のチャンバ(提供される場合)は、接触壁の第1、第2、および第3の領域のうちの1つの形状を変更するように構成された、または構成可能な第1のチャンバを含み得る。複数のチャンバは、接触壁の第1、第2、および第3の領域のうちの別の1つの形状を変更するように構成された、または構成可能な第2のチャンバを含み得る。複数のチャンバは、接触壁の第1、第2、および第3の領域のうちの別の1つの形状を変更するように構成された、または構成可能な第3のチャンバを含み得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、複数のチャンバ(提供される場合)のうちの1つは、たとえば第1の側壁から第2の側壁へ延在する、さらなるまたはメインチャンバを含み得る。さらなるまたはメインチャンバは、複数のチャンバのうちの他の1つまたは複数またはそれぞれよりも大きな容積を有し得る。さらなるまたはメインチャンバは、他の複数のチャンバのうちの1つまたは複数と動作可能に流体連通するように構成し得る。
【0029】
タイヤは、感知手段(たとえばセンサ)に動作可能に接続し得、たとえばタイヤは、たとえば1つまたは複数のタイヤ転動条件を感知するための感知手段(たとえばセンサ)を含み得る。感知手段は、タイヤの、および/またはタイヤの周囲環境の1つまたは複数の条件を監視するように構成しまたは構成可能とし得る。タイヤの1つまたは複数の条件は、タイヤの複数のチャンバ(提供される場合)のうちの1つまたは複数における圧力、タイヤの1つまたは複数の構成要素が受ける荷重、タイヤのチャンバおよび/または膨張手段(提供される場合)内および/またはここへの、もしくはここからの加圧流体の流量を含み得る。周囲環境の1つまたは複数の条件は、大気温度、大気圧、タイヤが転動している、または転動する可能性のある表面の表面粗さ、タイヤが転動している、または転動する可能性のある表面の傾斜または下降、タイヤが転動している、または転動する可能性のある曲がりの鋭さ、タイヤが転動している、または転動する可能性のある表面の材料特性を含み得る。感知手段は、光学センサ、圧力センサ、流量センサ、画像センサ、温度センサ、力センサのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0030】
タイヤは、制御手段(たとえばコントローラ)に動作可能に接続し得、たとえばタイヤは、たとえば複数のチャンバ(提供される場合)のうちの1つまたは複数内の流体の圧力を制御するため、および/または(たとえば、第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁を加熱するための)ヒータを制御するための制御手段(たとえばコントローラ)を含み得る。制御手段は、たとえば温度センサによって測定された、第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の温度に応答して、ヒータを制御するように構成しまたは構成可能とし得る。制御手段は、たとえばタイヤ転動条件(たとえば、提供される場合、感知手段によって感知または測定される)に応答して、複数のチャンバ(提供される場合)のうちの1つまたは複数を膨張または収縮させるように膨張手段(提供される場合)を制御するように構成しまたは構成可能とし得る。制御手段は、複数のチャンバのうちの1つまたは複数内の流体の圧力を選択的に増加または減少させ、たとえばこれによってタイヤの形状を変更するように構成しまたは構成可能とし得る。制御手段は、膨張手段を制御するように構成しまたは構成可能とし得る。制御手段は、感知手段によって測定されたタイヤ転動条件に応答して、膨張手段および/またはヒータを制御するように構成しまたは構成可能とし得る。制御手段は1つまたは複数のバルブを含み得る。1つまたは複数のバルブは、複数のチャンバのうちの1つ、いくつか、またはそれぞれに関連付けられ、たとえばチャンバもしくは各チャンバ内および/または外への流体流を選択的に制御し得る。制御手段は、バルブまたは各バルブを選択的に制御するように動作可能とし得る。制御手段は、タイヤが転動している間にその形状を変更して、たとえばタイヤの形状を動的に変更するように構成しまたは構成可能とし得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、トレッドバンド(提供される場合)の第1の材料が第2の材料よりも比較的低い耐摩耗性を有する場合、制御手段は、(たとえば、第1の側壁、第2の側壁、および/または接触壁の外形を変更するための)膨張手段を制御するように構成しもしくは構成可能とし得、および/または(たとえば、第1の側壁、第2の側壁、および接触壁のうちの1つまたは複数を加熱して、たとえば寒冷条件においてタイヤのこれらの壁の特性を調整し、たとえばヒステリシス損失を最小化するとともにタイヤの輪郭歪みを最大化するための)ヒータを制御するように構成しまたは構成可能とし得る。制御手段は、(たとえば1つまたは複数のセンサによって感知されるような)タイヤの転動条件に依存して、および/またはこれに応答して、膨張手段および/またはヒータを制御するように構成しまたは構成可能とし得る。このように、タイヤにおける、および/またはここからのエネルギー損失を比較的減少させ得る。
【0032】
タイヤの形状が変更される、またはされ得るということを述べる場合、これは、タイヤの接触壁、またはその1つまたは複数の部分の形状を変更することを含み得るということが理解されよう。
【0033】
タイヤは空気入りタイヤを含み得る。タイヤは、陸上車両および/または航空機での使用に適し得る。
【0034】
本発明の第4の態様によれば、タイヤの転動条件に適応的に適合させるためのタイヤが提供され、このタイヤは、第1および第2の側壁と、これらの間に延在する接触壁とを含み、接触壁は、その外面に配置されたトレッドバンドを含み、トレッドバンドは、第1の材料で形成された第1の部分と、第2の異なる材料で形成された第2の部分と、を含む。
【0035】
実施形態において、本発明の第5の態様は、タイヤ内に画定された複数のチャンバ、ならびに/または第1の側壁、第2の側壁、および接触壁のうちの1つもしくは複数を加熱するためのヒータを含み得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、複数の圧力チャンバ(たとえば複数のチャンバ)と併せて上記加熱システム(たとえばヒータ)を有するタイヤは、外側パフォーマンストレッドに対する高いコーナリング力のために最適化されたトレッドコンパウンド(提供される場合)および中央エコノミートレッドに対するより長持ちする低エネルギー損失コンパウンドと併せて、制御システム(たとえば、提供される場合、制御手段またはコントローラ)およびタイヤ膨張機構(たとえば、提供される場合、膨張手段)と協働して、ヒステリシス損失を最小化するとともに輪郭歪みを最大化するため寒冷条件においてゴム特性を最適化する加熱特性能力から利益を得ながら、その輪郭(たとえば外形)を変化させる手段を有し、最適な歪みおよび温度を生成してタイヤにおけるエネルギー損失を減少させ得る。
【0037】
本発明のさらなる一態様によれば、本明細書に記載のようなタイヤを製造する方法が提供される。
【0038】
疑問の回避のため、本明細書に記載の特徴のいずれも、本発明の任意の態様に等しく適用される。
【0039】
本願の範囲内で、前の段落に、請求項に、および/または次の説明および図面に、特にその個々の特徴に記載された様々な態様、実施形態、例、および代替案は、独立して、または任意の組合せで受け取られ得るということが明確に想定される。本発明の一態様または実施形態に関連して説明する特徴は、このような特徴が不適合でなければ、すべての態様または実施形態に適用可能である。
【0040】
ここで添付の図面を参照して本発明の実施形態を単に例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】ホイールリムに装着された本発明の一実施形態によるタイヤの概略断面図である。
図2図1に示すタイヤの部分断面斜視図である。
図3】さらなる構成要素を含む図1に示すタイヤの簡略概略図である。
図4】本発明のさらなる一実施形態によるタイヤの部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
ここで図1から図3を参照すると、本発明の一実施形態によるタイヤTが示されている。タイヤTは、第1および第2の側壁1、2と、これらの間に延在する接触壁3とを含む。第1および第2の側壁1、2、ならびに接触壁3は、エラストマー材料のプライのカーカスCと、これらの壁の内面を横切って延在してタイヤTを封止するライナーLとを含む。タイヤTは図1においてホイールリムWRに装着されて示されている。
【0043】
接触壁3は、この実施形態において、第1、第2、および中央トレッド部分30a、30b、30cを含む、その外面上のトレッドバンド30を含む。この実施形態において、トレッド部分30a、30b、30cは、比較的増大した摩擦係数を提供するように選択されている。この実施形態において、第1および第2のトレッド部分30a、30bは、中央トレッド部分30cが形成されている材料のコンパウンドよりも比較的低い耐摩耗性および比較的高い摩擦係数を有する材料のコンパウンドから形成されている。しかしながら、いくつかの実施形態において、トレッド部分30a、30b、30cは、同じ材料のコンパウンドから作製し得る。
【0044】
タイヤT内には複数のチャンバ4、5、6が画定されている。メインチャンバ4は、この実施形態において、第1の側壁1から第2の側壁2へ延在し、タイヤTの内部容積の大部分を含む。サイドチャンバ5は、タイヤTの両側に(たとえば側壁1、2に隣接して)配置されている。中央チャンバ6は、サイドチャンバ5間に接触壁3に隣接して配置されている。
【0045】
サイドチャンバ5および中央チャンバ6は、任意の適切な手段によって形成し得る。ある実施形態において、チャンバ5、6は別個に形成され、次いでタイヤTのカーカスの内面に結合し得る。2つのサイドチャンバ5および3つの中央チャンバ6が示されているが、当業者によって理解されるであろうように、これらのチャンバ5、6の任意の適切な数があり得る。実施形態において、タイヤTは、サイドチャンバ5がなく、および/または中央チャンバ6がなくてもよい。
【0046】
タイヤTはヒータ7をさらに含み、これはこの実施形態において加熱要素70を含む。加熱要素70は、接触壁内に埋め込まれ、タイヤTのベルト材料を含み、これはタイヤTに構造的剛性も提供する。この実施形態において、加熱要素70は、電気エネルギー源(図示せず)に動作可能に取り付けられている。
【0047】
断熱層8を含む断熱手段が接触壁3内に配置され、この実施形態において、使用中、加熱要素70による加熱から接触壁3を保護するように配置されている。たとえば、断熱層8は、加熱による層剥離から接触壁3を保護するように配置し得る。断熱層8は、任意の適切な断熱材料、たとえば断熱特性を有するポリマーまたは布で形成し得る。断熱層8は、この実施形態において、第1から第2の側壁へ、接触壁の幅を横切って延在する。断熱層8は、この実施形態において、ヒータ7から接触壁のトレッドバンド30への、またはこれに向かう熱の伝達を軽減するように配置されている。
【0048】
この実施形態において、接触壁3の温度を測定する温度センサ9が配置されている。温度センサ9は、タイヤTの接触壁3に埋め込まれて示されているが、こうである必要はなく、代わりに温度センサ9は、接触壁3の温度を直接測定する任意の適切な場所に配置し得る。実施形態において、複数の温度センサがあり得、たとえばこれらは、タイヤTの異なる部分(たとえばその異なる壁1、2、3)の温度を測定するように配置し得る。実施形態において、温度センサ9は、接触壁3に加えて、またはこれの代わりに、第1および/または第2の側壁の温度を測定するように構成し得る。温度センサ9は、この実施形態において熱電対である。
【0049】
チャンバ4、5、6内の空気圧は、使用中、任意の適切なポンプ、たとえばピストンポンプを含み得るポンプ40を含むポンプシステム40によって変更される。ポンプ40は、この実施形態においてタイヤTの外側に配置されている。しかしながら、いくつかの実施形態において、ポンプ40は、タイヤTの内側に配置し得る。
【0050】
本実施形態は、タイヤTの内側または外側に、制御ユニット20を含み、これは、チャンバ4、5、6内の流体の圧力を制御するように構成されている。タイヤTにおけるバルブシステム42が、チャンバ4、5、6内および/または外への流体の流れを選択的に許可ならびに防止し、これによってその膨張および収縮を可能にする。制御ユニット20は、ポンプシステム40のポンプ40およびバルブシステム42に動作可能に接続されている。
【0051】
タイヤTは、流体流をチャンバ5、6(および任意選択でメインチャンバ4)内および/または外へ、ならびにポンプ40へ/から向けるように配置されたマニホルド41または他の流体連通アセンブリを含み得る。タイヤTは、チャンバ4、5、6へ流体を供給、および/またはこれらから流体を受け取るように配置し得る流体源(図示せず)を含み得る。このような流体源は、タイヤTの外部または内部にあり得、たとえば、加圧容器を含み得る。
【0052】
チャンバ5、6の内部容積は、使用中、1つのチャンバ5から他のチャンバ5、6のうちの1つまたは複数に流体を移送して、メインチャンバ4または流体源(図示せず)から流体にアクセスする必要なく、他のチャンバ5、6のうちの上記1つまたは複数を膨張させることができるように構成および/または選択し得る。あるいは、または加えて、メインチャンバ4から流体を取り出して、チャンバ5、6のうちの1つまたは複数に再分配(またはその逆に)し得る。適応可能なバルブ(たとえば三方バルブ)を利用することによって、チャンバ4、5、6間の空気流ネットワークを簡略化することができる。メインチャンバ4からおよび/またはここへの圧力伝達は、たとえば急速な圧力変化要件下で、追加の流体供給として用いることができる。
【0053】
タイヤTは、タイヤの転動条件を感知するためのセンサを含み得る。転動条件は、たとえば、タイヤが転動している、または転動する可能性がある(たとえば転動しようとしている)表面の傾斜または下降を含み得る。センサは、加速度計および/または1つもしくは複数のカメラのような画像感知手段を含み得る。制御ユニット20は、センサから転動条件データ(たとえばタイヤが転動している表面の傾斜または下降)を受け取り得、ポンプ40を動作させてチャンバ4、5、6のうちの1つまたは複数における圧力を変更し得る。
【0054】
使用中、温度センサ9は、接触壁3の温度を測定し、この情報を制御ユニット20に送信する。接触壁3の温度が閾値温度(たとえば事前設定された閾値温度)未満であれば、制御ユニット20は接触壁3を加熱するようにヒータ7を動作させる。電気エネルギーが電気接続を介してヒータの加熱要素70に供給され、これが抵抗性的に熱を生成する。加熱された加熱要素70は、伝導および放射を介して熱エネルギーを接触壁3に伝達する。断熱層8を設けることにより、接触壁3からタイヤTの周囲への(たとえばタイヤTが転動している表面への)熱損失が有利に減少する。要求される熱エネルギーの量がこれによって比較的減少し、有益なことに、接触壁3の所望の温度(たとえば閾値温度)への、またはこれに向かう加熱がしたがって比較的より速くなり、維持されるべき電気エネルギーの量が比較的減少する。ヒータは約1kWの電力を消費し得る。加えて、断熱層8は、タイヤTの接触壁3を通る熱分配を、その中の熱エネルギーの保持を助けることによって有益に改善し得る。さらに、断熱層8を設けることにより、ヒータ7からトレッドバンド30への熱の伝達が軽減され、これによってその剛性およびしたがってその転動面に対するグリップを維持するのに役立ち得る。さらにまた、断熱層8は、タイヤTの層を通る熱エネルギーの流れを(このような断熱層8がないタイヤTに対して)比較的減少させることによって、タイヤTの層剥離の発生を減少させ得る。
【0055】
接触壁3の測定温度が閾値温度以上であるとき、制御ユニット20は接触壁3の加熱を停止するようにヒータ7を動作させる。有利には、接触壁3(および/または第1の側壁1および/または第2の側壁2)を加熱することにより、タイヤTの外形の所与の量の変形を生成するためにチャンバ5、6における要求される圧力変化が比較的減少する。したがって、比較的力の弱いポンプ40を使用し得、および/またはポンプ40を動作させるために要求され得るエネルギーを少なくし得る。加えて、タイヤTは、「寒冷」条件の間、たとえば周囲温度が比較的冷たい(たとえば摂氏10度未満)場合、またはタイヤが取り付けられた車両が長期間静止している(たとえば一晩駐車している)ときのようなタイヤTが長期間表面の上を転動していない場合、チャンバ5、6における圧力の変化に対してより反応的であるということがわかった。
【0056】
実施形態において、制御ユニット20は、異なる動作モードにしたがってタイヤTを動作させるように構成し得る。たとえば、制御ユニット20は、エコノミーモード、パフォーマンスモード、およびオフロードモードのような、異なる動作モード間でタイヤTを切り替えるように構成し得る。
【0057】
エコノミーモードにおいて、メインチャンバ4は比較的高い圧力を有し得、サイドおよび/または中央チャンバ5、6は比較的より低い圧力を有し得、これによってトレッドバンド30の中央部分30cとタイヤTが転動している表面との接触を促進する一方、トレッドバンド30の第1および第2の部分30a、30bと上記表面との接触を最小化する。有利には、トレッドバンド30の第1および第2の部分30a、30bの耐摩耗性がより低い材料は、タイヤが転動している表面に対する摩耗から少なくとも部分的に保護し得る。加えて、表面に対するタイヤTの転動抵抗は、比較的より高い摩擦係数を有する第1および第2の部分30a、30bの材料との接触が減少するため、比較的減少し得る。したがって、このモードにおいて車両の運転コスト(たとえばエネルギーコスト)を比較的削減し得る。
【0058】
パフォーマンスモードにおいて、サイドチャンバ5(および任意選択で中央チャンバ6のうちの1つまたは複数)は、(エコノミーモードにおいてよりも)比較的高い圧力を有し得る。実施形態において、メインチャンバ4は、比較的減少した圧力を有し得る。タイヤTの外形は、この圧力分布によって変更されて、トレッドバンド30の第1および第2の部分30a、30bとタイヤTが転動している表面との接触を比較的増大させ得る。有利には、トレッドバンド30の第1および第2の部分30a、30bが形成されている材料の比較的より高い摩擦係数のため、表面とのタイヤTの追加のグリップおよび剛性をこの構成によって提供し得る。このようなモードは、コーナリング、激しいブレーキング、および加速など、タイヤTが、それが転動している表面に対する摩擦から比較的大きな力を受ける可能性がある場合、特に有利であり得る。理解されるであろうように、チャンバ4、5、6における圧力は、トレッドバンド30の第2の部分30bよりも大きな割合のトレッドバンド30の第1の部分30aが、タイヤTが転動している表面と接触するよう、またはその逆(たとえばコーナリングのため)に変更し得る。
【0059】
オフロードモードにおいて、中央チャンバ6(および任意選択でサイドチャンバ5)は、比較的低い圧力(たとえば、エコノミーおよびパフォーマンスモードよりも低い)を有し得る一方、メインチャンバ4は、(中央チャンバ6およびサイドチャンバ5に対して)比較的高い圧力を有し得る。このように、接触壁3は、タイヤTが転動している表面上の隆起および/または物体に接触すると、より容易に変形し得る。有益なことに、これは、表面の不均一の影響を低減し、したがってタイヤTが取り付けられている車両の乗員の快適さを向上させ得る。加えて、不均一な表面とのタイヤTのグリップは、チャンバ4、5、6内のこのような圧力分布によって比較的強化し得る。
【0060】
ここで図4を参照すると、本発明のさらなる一実施形態によるタイヤ1Tが示され、図1および図2に示すタイヤTに関して説明したものと同様の特徴は、前に「1」が付いた同様の参照符号によって示し、本明細書でさらには説明しない。図4に示すタイヤ1Tは、2つのみの中央チャンバ16が提供されるという点において図1および図2に示すものとは異なる。
【0061】
本発明の範囲から逸脱することなく、前述の実施形態に対するいくつかの変形が想定されるということが当業者によって理解されよう。たとえば、ヒータ7は、タイヤのベルト材料を含む加熱要素70を含むとして示されているが、こうである必要はなく、代わりに、加熱要素70は、ベルト材料に追加されても、またはこれの代わりに提供されてもよい。あるいは、ヒータ7は、第1の側壁1、第2の側壁2、および/または接触壁3を加熱するための代替手段を含み得る。たとえば、実施形態において、ヒータ7は、加熱された媒体(たとえば加熱された流体)を通過させて、第1の側壁1、第2の側壁2、および/または接触壁3と熱交換する導管を含み得る。
【0062】
加えて、またはあるいは、実施形態においてタイヤT、1Tは、チャンバ5、6、15、16なしで提供し得る。
【0063】
加えて、またはあるいは、実施形態において、タイヤT、1Tは断熱層8を含まなくてもよい。加えて、またはあるいは、断熱手段は断熱層8を含み、これはヒータ7からトレッドバンド30への熱の伝達を軽減するように配置され、第1の側壁1から第2の側壁2へ接触壁3の幅を横切って延在するとして説明しているが、こうである必要はなく、代わりに、断熱層8(または他の適切な断熱手段)は、第1および第2の側壁1、2間の接触壁3の幅の一部のみを横切って延在し得、ならびに/またはヒータ7からトレッドバンド30の中央部分30cのみ、もしくはトレッドバンド30の第1および/もしくは第2の部分30a、30bのみへの熱の伝達を軽減するように配置し得る。
【0064】
加えて、またはあるいは、実施形態において、タイヤT、1Tはトレッドバンド30を含まなくてもよい。
【0065】
加えて、またはあるいは、温度センサ9は熱電対であるとして説明しているが、こうである必要はなく、代わりに、温度センサ9は、抵抗性温度デバイス(たとえばサーミスタ)、赤外線ラジエーター、バイメタルデバイス、液体膨張デバイスなどのような任意の適切なタイプの温度センサを含み得る。加えて、またはあるいは、温度センサ9は、接触壁3の温度を直接測定するとして説明しているが、こうである必要はなく、代わりに、温度センサ9は、たとえば加熱要素70のおよび/または接触壁3に隣接する構成要素の温度を測定することによって、接触壁3の温度を間接的に測定し得る。いくつかの実施形態において、温度センサ9は、加熱要素の抵抗を判定するように構成し得、これから加熱要素の抵抗率を計算することができる(その長さおよび断面積を知ることによって)。加熱要素70の温度は、計算された抵抗率から、または先に判定された加熱要素の温度対抵抗率性能のルックアップテーブルから計算することができる。
【0066】
前述の特徴および/または添付の図面に示すものの任意の数の組合せが先行技術に対して明らかな利点を提供し、したがって本明細書に記載の本発明の範囲内にあるということも当業者によって理解されよう。
【符号の説明】
【0067】
1 第1の側壁
2 第2の側壁
3 接触壁
4 メインチャンバ
5 サイドチャンバ
6 中央チャンバ
7 ヒータ
8 断熱層
9 温度センサ
11 第1の側壁
12 第2の側壁
13 接触壁 15 サイドチャンバ
16 中央チャンバ 20 制御ユニット
30 トレッドバンド
30a 第1のトレッド部分
30b 第2のトレッド部分
30c 中央トレッド部分
40 ポンプ
41 マニホルド
42 バルブシステム
70 加熱要素
170 加熱要素
図1
図2
図3
図4