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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】双眼鏡及び目標位置算出方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/02 20060101AFI20231006BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20231006BHJP
【FI】
G02B23/02
G03B5/00 J
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021544996
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2019035452
(87)【国際公開番号】W WO2021048910
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501439264
【氏名又は名称】株式会社ニコンビジョン
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 孝雄
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-144257(JP,A)
【文献】特開平07-084223(JP,A)
【文献】特開平07-199121(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0309327(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 23/00 - 23/22
G03B 5/00 - 5/08
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 - 23/76
H04N 23/90 - 23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1鏡筒の振れに基づいて、前記第1鏡筒に保持される第1補正光学系の目標位置を示す第1目標位置を算出する第1目標位置算出部と、
前記第1目標位置と、機軸部を介して前記第1鏡筒に連結する第2鏡筒の前記機軸部回りの前記第1鏡筒に対する回転を示す回転情報であって、前記第1鏡筒と連結される第1機軸部回りの第1回転情報及び前記第1機軸部を介して前記第1鏡筒と前記第2鏡筒とを連結する第2機軸回りの第2回転情報とに基づいて、前記第2鏡筒に保持される第2補正光学系の目標位置を示す第2目標位置を算出する第2目標位置算出部と、を備える、双眼鏡。
【請求項2】
記回転情報を用いて前記第1目標位置を回転演算し、前記第2目標位置を算出する、請求項1に記載の双眼鏡。
【請求項3】
前記第2目標位置算出部は、前記第1鏡筒と前記第2鏡筒との光軸を同一にする所定の調整値に基づいて前記第2目標位置を算出する、請求項1又は請求項2に記載の双眼鏡。
【請求項4】
前記第2目標位置算出部は、前記第1鏡筒に保持される第1検出部が検出する第1検出値に基づいて前記第1回転情報を取得し、取得した前記第1回転情報、又は前記第2鏡筒に保持される第2検出部が検出する第2検出値に基づいて、前記第2回転情報を取得する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の双眼鏡。
【請求項5】
前記第2目標位置算出部は、前記第1鏡筒に保持される前記第1検出部の取り付け誤差に基づいて前記第1回転情報を補正し、前記第2鏡筒に前記第2検出部が保持される場合に、前記第2検出部の取り付け誤差に基づいて前記第2回転情報を補正する、請求項4に記載の双眼鏡。
【請求項6】
前記第1検出部又は前記第2検出部は、傾斜センサ及び加速度センサのうち少なくともいずれか1つである、請求項4又は請求項5に記載の双眼鏡。
【請求項7】
前記第2目標位置算出部は、前記第1鏡筒及び前記第2鏡筒の前記機軸部回りの回転量を検出する第3検出部の検出量に基づいて、前記第1回転情報、前記第2回転情報、及び前記回転情報の少なくともいずれか1つを算出し、
前記第3検出部は、前記機軸部に保持されるポテンショメータを含む、請求項から請求項6のいずれか一項に記載の双眼鏡。
【請求項8】
前記第1回転情報を用いて、前記第1鏡筒の前記振れを、該振れの検出軸から観察軸に変換する変換部、を備え、
前記第1目標位置算出部は、前記観察軸における前記第1鏡筒の前記振れに基づいて、前記観察軸における前記第1補正光学系の目標位置を示す第3目標位置を算出し、
前記第1回転情報と前記第3目標位置とに基づいて、前記第1目標位置を算出する目標位置変換部、を備え、
前記第2目標位置算出部は、前記第2回転情報と前記第3目標位置とに基づいて、前記第2目標位置を算出する、請求項から請求項7のいずれか一項に記載の双眼鏡。
【請求項9】
前記第1回転情報を用いて、前記第1鏡筒の前記振れを、該振れの検出軸から観察軸に変換する第1変換部と、
前記第2回転情報を用いて、前記第2鏡筒の振れを、該振れの検出軸から観察軸に変換する第2変換部と、
前記観察軸における前記第1鏡筒の前記振れと、前記観察軸における前記第2鏡筒の前記振れとを平均する平均部と、を備え、
前記第1目標位置算出部は、前記平均部が平均した振れに基づいて、前記観察軸における前記第1補正光学系の目標位置を示す第3目標位置を算出し、
前記第1回転情報と前記第3目標位置とに基づいて、前記第1目標位置を算出する目標位置変換部、を備え、
前記第2目標位置算出部は、前記第2回転情報と前記第3目標位置とに基づいて、前記第2目標位置を算出する、請求項から請求項7のいずれか一項に記載の双眼鏡。
【請求項10】
前記第1目標位置算出部は、前記第1補正光学系の可動範囲に含まれる前記第1目標位置を算出する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の双眼鏡。
【請求項11】
前記第1目標位置算出部は、前記第1目標位置に応じて設定されるバイアス量が与えられた、前記第1鏡筒の振れに基づいて、前記第1目標位置を算出する、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の双眼鏡。
【請求項12】
前記第1目標位置に基づいて、前記第1補正光学系を駆動する第1補正機構の駆動量を算出する第1駆動量算出部と、
前記第2目標位置に基づいて、前記第2補正光学系を駆動する第2補正機構の駆動量を算出する第2駆動量算出部と、を備える、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の双眼鏡。
【請求項13】
前記第1駆動量算出部は、前記第1目標位置と、前記第1補正光学系の現在位置との偏差に基づいて、前記第1補正機構の駆動量を算出し、
前記第2駆動量算出部は、前記第2目標位置と、前記第2補正光学系の現在位置との偏差に基づいて、前記第2補正機構の駆動量を算出する、請求項12に記載の双眼鏡。
【請求項14】
前記第1駆動量算出部は、前記第1鏡筒に保持される補正光学系の光軸が重力方向に向けられている場合に、前記第1補正光学系を移動させない、又は所定位置に保持させる駆動量を算出し、
前記第2駆動量算出部は、前記第2鏡筒に保持される補正光学系の光軸が前記重力方向に向けられている場合に、前記第2補正光学系を移動させない、又は所定位置に保持させる駆動量を算出する、請求項12又は請求項13に記載の双眼鏡。
【請求項15】
前記第1目標位置算出部は、所定のノイズ成分を除去した前記第1鏡筒の前記振れに基づいて、前記第1目標位置を算出する、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の双眼鏡。
【請求項16】
前記第1目標位置算出部は、パンニング動作によって前記第1鏡筒に前記振れが生じる場合に、前記振れの信号成分から除去する信号の周波数帯域を、前記パンニング動作とは異なる動作の場合に除去する周波数帯域よりも大きく設定する、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の双眼鏡。
【請求項17】
第1補正光学系を保持する第1鏡筒と、
第2補正光学系を保持する第2鏡筒と、
前記第1鏡筒と連結される第1機軸部と、
前記第1機軸部を介して前記第1鏡筒と前記第2鏡筒とを連結する第2機軸部と、
前記第1鏡筒に保持され、前記第1鏡筒の前記第1機軸部回りの回転を検出する第1検出部と、
前記第2鏡筒に保持され、前記第2鏡筒の前記第2機軸部回りの回転を検出する第2検出部と、
前記第1鏡筒及び前記第2鏡筒のうち少なくとも一方に保持され、前記第1鏡筒又は前記第2鏡筒の振れを検出する振れ検出部と、
前記第1鏡筒及び前記第2鏡筒のうち少なくとも一方の前記振れに基づいて、前記第1補正光学系の目標位置を示す第1目標位置を算出する第1目標位置算出部と、
前記第1目標位置と、前記第1検出部及び前記第2検出部の検出値に基づいて検出される前記第1鏡筒に対する前記第2鏡筒の前記第1機軸部及び前記第2機軸部回りの回転情報と、に基づいて、前記第2補正光学系の目標位置を示す第2目標位置を算出する第2目標位置算出部と、を備える、双眼鏡。
【請求項18】
双眼鏡における像位置を補正する補正光学系の目標位置を算出する目標位置算出方法であって、
第1鏡筒の振れに基づいて、前記第1鏡筒に保持される第1補正光学系の目標位置を示す第1目標位置を算出することと、
前記第1目標位置と、機軸部を介して前記第1鏡筒に連結する第2鏡筒の前記機軸部回りの前記第1鏡筒に対する回転を示す回転情報であって、前記第1鏡筒と連結される第1機軸部回りの第1回転情報及び前記第1機軸部を介して前記第1鏡筒と前記第2鏡筒とを連結する第2機軸回りの第2回転情報とに基づいて、前記第2鏡筒に保持される第2補正光学系の目標位置を示す第2目標位置を算出することと、を含む、目標位置算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双眼鏡及び目標位置算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、双眼鏡の振れに対応する信号に応じて、光束を偏向する第1及び第2の光学部材の動作を関連付ける技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第005672862号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1実施態様によれ、双眼鏡が提供される。双眼鏡は、第1鏡筒の振れに基づいて、第1鏡筒に保持される第1補正光学系の目標位置を示す第1目標位置を算出する第1目標位置算出部を備える。双眼鏡は、第1目標位置と、機軸部を介して第1鏡筒に連結する第2鏡筒の機軸部回りの第1鏡筒に対する回転を示す回転情報であって、第1鏡筒と連結される第1機軸部回りの第1回転情報及び第1機軸部を介して第1鏡筒と第2鏡筒とを連結する第2機軸回りの第2回転情報とに基づいて、第2鏡筒に保持される第2補正光学系の目標位置を示す第2目標位置を算出する第2目標位置算出部を備える。
【0005】
本発明の第2実施様態によれ、双眼鏡が提供される。双眼鏡は、第1補正光学系を保持する第1鏡筒を備える。双眼鏡は、第2補正光学系を保持する第2鏡筒を備える。双眼鏡は、第1鏡筒と連結される第1機軸部を備える。双眼鏡は、第1機軸部を介して第1鏡筒と第2鏡筒とを連結する第2機軸部を備える。双眼鏡は、第1鏡筒に保持され、第1鏡筒の第1機軸部回りの回転を検出する第1検出部を備える。双眼鏡は、第2鏡筒に保持され、第2鏡筒の第2機軸部回りの回転を検出する第2検出部を備える。双眼鏡は、第1鏡筒及び第2鏡筒のうち少なくとも一方に保持され、第1鏡筒又は第2鏡筒の振れを検出する振れ検出部を備える。双眼鏡は、第1鏡筒及び第2鏡筒のうち少なくとも一方の振れに基づいて、第1補正光学系の目標位置を示す第1目標位置を算出する第1目標位置算出部を備える。双眼鏡は、第1目標位置と、第1検出部及び第2検出部の検出値に基づいて検出される第1鏡筒に対する第2鏡筒の第1機軸部及び第2機軸部回りの回転情報と、に基づいて、第2補正光学系の目標位置を示す第2目標位置を算出する第2目標位置算出部を備える。
【0006】
本発明の第3実施様態によれば、双眼鏡における像位置を補正する補正光学系の目標位置を算出する目標位置算出方法が提供される。目標位置算出方法は、第1鏡筒の振れに基づいて、第1鏡筒に保持される第1補正光学系の目標位置を示す第1目標位置を算出することを含む。目標位置算出方法は、第1目標位置と、機軸部を介して第1鏡筒に連結する第2鏡筒の機軸部回りの第1鏡筒に対する回転を示す回転情報であって、第1鏡筒と連結される第1機軸部回りの第1回転情報及び第1機軸部を介して第1鏡筒と第2鏡筒とを連結する第2機軸回りの第2回転情報とに基づいて、第2鏡筒に保持される第2補正光学系の目標位置を示す第2目標位置を算出することをむ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る双眼鏡の例を示す図。
図2】第1実施形態に係る振れ補正機構部の構成例を示す図。
図3】第1実施形態に係る振れ補正機構部の構成例を示す図。
図4】第1実施形態に係る回路基板の構成例を示す図。
図5】第1実施形態に係る第1目標位置算出部の構成例を示す図。
図6】第1実施形態に係る振れ状態判定部の構成例を示す図。
図7】第1実施形態に係る第1駆動量算出部の構成例を示す図。
図8】第1実施形態に係る回転情報の例を説明する図。
図9】第1実施形態に係る回転情報の例を説明する図。
図10】第1実施形態に係る回転情報の例を説明する図。
図11】第1実施形態に係る双眼鏡における処理の流れの例を示すフローチャート。
図12】第1実施形態に係る第1目標位置算出部における処理の流れの例を示すフローチャート。
図13】第1実施形態に係る振れ状態判定部における処理の流れの例を示すフローチャート。
図14】第1実施形態に係る第2目標位置算出部における処理の流れの例を示すフローチャート。
図15】第1実施形態に係る第1駆動量算出部及び第2駆動量算出部における処理の流れの例を示すフローチャート。
図16】第2実施形態に係る回路基板の構成例を示す図。
図17】第2実施形態に係る双眼鏡における処理の流れの例を示すフローチャート。
図18】第3実施形態に係る回路基板の構成例を示す図。
図19】第3実施形態に係る双眼鏡における処理の流れの例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きく又は強調して表すなど適宜縮尺を変更して表現しており、実際の製品とは大きさ、形状が異なる場合がある。また、実施形態の説明においては、図中において示したXYZ直交座標系を用いて方向を説明する場合がある。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、適宜、図中の矢印の方向が+方向(例えば、+X方向)であり、図中の矢印に対して反対の方向が-方向(例えば、-X方向)であるとする。なお、実施形態は、ダハプリズム型の双眼鏡を例に挙げて説明するが、ポロプリズム型の双眼鏡にも適用可能である。
【0009】
[第1実施形態]
第1実施形態を説明する。図1は、第1実施形態に係る双眼鏡の例を示す図である。双眼鏡1の使用時において、上下方向はX方向であり、+X方向が上方向、-X方向が下方向である。また、双眼鏡1の使用時において、左右方向はY方向であり、左方向が+Y方向、右方向が-Y方向である。図1は、双眼鏡1を上方(+X方向)から見た図である。なお、図1では、1軸タイプの双眼鏡1を例に挙げているが、2軸タイプの双眼鏡1においても本実施形態を適用することができる。
【0010】
図1に示すように、双眼鏡1は、第1鏡筒20と、第2鏡筒30と、機軸部40とを備える。例えば、第1鏡筒20は、左眼用の鏡筒である。また、例えば、第2鏡筒30は、右眼用の鏡筒である。第1鏡筒20及び第2鏡筒30は、機軸部40(機軸Ax)を介して連結する。機軸部40は、回路基板10を保持する。
【0011】
第1鏡筒20は、光軸LOA方向に、接眼レンズ21、正立プリズム22、第1補正光学系23、フォーカスレンズ26、及び対物レンズ27の光学系を保持する。また、これらの光学系とは別に、第1鏡筒20は、振れ検出部24と、第1検出部25とを保持する。なお、第1検出部25については、傾斜センサ及び加速度センサのうち少なくともいずれか1つが採用されるが、加速度、又は、鏡筒の機軸部回りの回転量を測定できるセンサであれば、傾斜センサ及び加速度センサに限定されない。また、後述するように、第1検出部25は、複数のセンサで構成される場合があるが、かかる場合、傾斜センサ及び加速度センサのそれぞれを採用した構成でもよい。
【0012】
対物レンズ27には、双眼鏡1を用いた観察対象の物体から光が入射する。対物レンズ27は、観察対象の物体から入射された光をフォーカスレンズ26に導く。フォーカスレンズ26は、第1鏡筒20の光学系の焦点位置及び焦点距離を調整する。例えば、フォーカスレンズ26は、光軸LOA方向に移動し、第1鏡筒20の光学系の焦点を調整する。なお、フォーカスレンズ26は、第1鏡筒20の光学系において、対物レンズ27から接眼レンズ21までの光路に配置される。
【0013】
第1補正光学系23は、光軸LOAと直交する平面内で移動し、双眼鏡1の使用で発生する振れ(像位置)を補正する。第1補正光学系23の駆動は、後述する振れ補正機構部50(第1補正光学系23を駆動する補正機構を示す「第1補正機構」)により実現する。正立プリズム22は、対物レンズ27が形成する倒立像を正立像に変換する。なお、正立プリズム22は、第1鏡筒20の光学系において、対物レンズ27から接眼レンズ21までの光路に配置される。双眼鏡1のユーザは、正立プリズム22が変換した正立像を、接眼レンズ21を介して観察可能である。接眼レンズ21は、第1鏡筒20の光学系のうち、双眼鏡1のユーザの視点に最も近い光学系である。
【0014】
なお、第1鏡筒20は、正立プリズム22を保持しなくてもよく、例えばリレー光学系等により倒立像を正立像に変換してもよい。また、接眼レンズ21、フォーカスレンズ26、及び対物レンズ27のうち少なくとも1つは、複数の光学部品(例えば、レンズ部材、反射部材等)を含んでもよい。また、第1鏡筒20の光学系は、像の倍率を変更するズーム光学系を含んでもよい。フォーカスレンズ26は、像の倍率の変更に利用されてもよい。
【0015】
振れ検出部24は、第1鏡筒20において、X軸回り(Pitch方向)、Y軸回り(Yaw方向)、及びZ軸回り(Roll方向)の振れ(例えば、角速度等)を検出する。すなわち、振れ検出部24は、X軸、Y軸、及びZ軸それぞれに対応した3つの角速度センサを有する。第1検出部25は、第1鏡筒20において、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向(光軸LOA方向)の加速度(第1検出値)を検出する。すなわち、第1検出部25は、X軸、Y軸、及びZ軸それぞれに対応した3つの加速度センサを有する。なお、振れ検出部24と第1検出部25とは、互いの軸ずれを防止する目的で、1パッケージで構成された6軸センサでもよい。
【0016】
第2鏡筒30は、光軸ROA方向に、接眼レンズ31、正立プリズム32、第2補正光学系33、フォーカスレンズ35、及び対物レンズ36の光学系を保持する。また、これらの光学系とは別に、第2鏡筒30は、第2検出部34を保持する。なお、第2検出部34については、傾斜センサ及び加速度センサのうち少なくともいずれか1つが採用されるが、加速度、又は、鏡筒の機軸部回りの回転量を測定できるセンサであれば、傾斜センサ及び加速度センサに限定されない。また、後述するように、第2検出部34は、複数のセンサで構成される場合があるが、かかる場合、傾斜センサ及び加速度センサのそれぞれを採用した構成でもよい。さらに、第1検出部25と第2検出部34とで、何れか一方において傾斜センサを採用し、他方において加速度センサを採用する構成でもよい。
【0017】
対物レンズ36には、双眼鏡1を用いた観察対象の物体から光が入射する。対物レンズ36は、観察対象の物体から入射された光をフォーカスレンズ35に導く。フォーカスレンズ35は、第2鏡筒30の光学系の焦点位置及び焦点距離を調整する。例えば、フォーカスレンズ35は、光軸ROA方向に移動し、第2鏡筒30の光学系の焦点を調整する。なお、フォーカスレンズ35は、第2鏡筒30の光学系において、対物レンズ36から接眼レンズ31までの光路に配置される。
【0018】
第2補正光学系33は、光軸ROAと直交する平面内で移動し、双眼鏡1の使用で発生する振れ(像位置)を補正する。第2補正光学系33の駆動は、後述する振れ補正機構部50(第2補正光学系33を駆動する補正機構を示す「第2補正機構」)により実現する。正立プリズム32は、対物レンズ36が形成する倒立像を正立像に変換する。なお、正立プリズム32は、第2鏡筒30の光学系において、対物レンズ36から接眼レンズ31までの光路に配置される。双眼鏡1のユーザは、正立プリズム32が変換した正立像を、接眼レンズ31を介して観察可能である。接眼レンズ31は、第2鏡筒30の光学系のうち、双眼鏡1のユーザの視点に最も近い光学系である。
【0019】
なお、第2鏡筒30は、正立プリズム32を保持しなくてもよく、例えばリレー光学系等により倒立像を正立像に変換してもよい。また、接眼レンズ31、フォーカスレンズ35、及び対物レンズ36のうち少なくとも1つは、複数の光学部品(例えば、レンズ部材、反射部材等)を含んでもよい。また、第2鏡筒30の光学系は、像の倍率を変更するズーム光学系を含んでもよい。フォーカスレンズ35は、像の倍率の変更に利用されてもよい。
【0020】
第2検出部34は、第2鏡筒30において、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向(光軸ROA方向)の加速度(第2検出値)を検出する。すなわち、第2検出部34は、X軸、Y軸、及びZ軸それぞれに対応した3つの加速度センサを有する。
【0021】
なお、双眼鏡1は、少なくとも一方の鏡筒に加速度センサ(又は、傾斜センサ)を保持する構成でよい。具体的には、第1検出部25及び第2検出部34は、双方が各鏡筒に保持されてもよいし、いずれか一方が保持されてもよい。すなわち、機軸が単数である双眼鏡1の場合は、一方の鏡筒の機軸部回りの他方の鏡筒に対する回転情報が分かれば、他方の鏡筒についての回転情報も一意に決まるため、少なくとも一方の鏡筒に加速度センサ(又は、傾斜センサ)を保持する構成でよい。
【0022】
回路基板10は、各センサ(例えば、振れ検出部24、第1検出部25、及び第2検出部34)からの検出信号に基づいて、第1補正光学系23及び第2補正光学系33の目標位置、駆動量を算出する。なお、回路基板10の詳細については後述する。
【0023】
図2及び図3は、第1実施形態に係る振れ補正機構部の構成例を示す図である。振れ補正機構部50は、第1補正光学系23、第2補正光学系33の現在位置の検出、及び、第1補正光学系23、第2補正光学系33を光軸(光軸LOA、光軸ROA)に対して垂直平面内に駆動する機構である。振れ補正機構部50は、第1補正光学系23、第2補正光学系33の周囲に配置される。
【0024】
図2及び図3に示すように、振れ補正機構部50は、付勢バネ51と、位置検出用マグネット52と、位置検出用ヨーク53と、ホール素子54とを有する。加えて、振れ補正機構部50は、固定部55と、可動部56と、付勢バネ57と、駆動用マグネット58と、駆動用ヨーク59と、コイル60とを有する。詳細には、固定部55には、位置検出機構としてホール素子54が配置され、駆動機構として駆動用マグネット58及び駆動用ヨーク59が配置される。一方、可動部56には、位置検出機構として位置検出用マグネット52及び位置検出用ヨーク53が配置され、駆動機構としてコイル60が配置される。可動部56は、付勢バネ51、付勢バネ57によって弾性的に付勢され、第1補正光学系23、第2補正光学系33を移動可能に支持する。固定部55は、付勢バネ51、付勢バネ57を介して可動部56を支持する。位置検出機構及び駆動機構は、直交する2軸(一方をX軸、他方をY軸とする)方向にそれぞれ設けられる。
【0025】
ホール素子54は、位置検出用マグネット52の磁束の強さを検出できる向きで、位置検出用マグネット52に対向して配置される。位置検出用ヨーク53は、位置検出用マグネット52とホール素子54との対向面ではない側において、位置検出用マグネット52の周囲への磁束の拡がりを防止する目的で、位置検出用マグネット52の近傍に配置される。この構成により、ホール素子54は、位置検出用マグネット52の移動による磁束の強さの変化を検出することで、第1補正光学系23、第2補正光学系33の現在位置(移動距離に応じた現在位置)を検出する。
【0026】
コイル60は、駆動用マグネット58に対向して配置される。駆動用ヨーク59は、駆動用マグネット58の周囲への磁束の拡がりを防止する目的で、駆動用マグネット58の近傍、及びコイル60の近傍に配置される。コイル60には、第1補正光学系23、第2補正光学系33の駆動量に応じた電流が入力される。この構成により、可動部56は、コイル60と駆動用マグネット58との間で電磁力が発生し、付勢バネ51、付勢バネ57の伸縮に応じて移動する。
【0027】
図4は、第1実施形態に係る回路基板の構成例を示す図である。図4に示すように、回路基板10は、第1目標位置算出部102と、振れ状態判定部103と、偏差算出部104と、第1駆動量算出部105とを含む。第1目標位置算出部102、振れ状態判定部103、偏差算出部104、及び第1駆動量算出部105は、第1補正光学系23のX軸に関する各種演算を実行する。
【0028】
回路基板10は、第1目標位置算出部107と、振れ状態判定部108と、偏差算出部109と、第1駆動量算出部110とを含む。第1目標位置算出部107、振れ状態判定部108、偏差算出部109、及び第1駆動量算出部110は、第1補正光学系23のY軸に関する各種演算を実行する。
【0029】
回路基板10は、第2目標位置算出部115と、偏差算出部116と、第2駆動量算出部117と、偏差算出部118と、第2駆動量算出部119とを含む。第2目標位置算出部115、偏差算出部116、及び第2駆動量算出部117は、第2補正光学系33のX軸に関する各種演算を実行する。第2目標位置算出部115、偏差算出部118、及び第2駆動量算出部119は、第2補正光学系33のY軸に関する各種演算を実行する。
【0030】
振れ検出部(VωLX)101は、第1鏡筒20におけるX軸回りの角速度センサである。すなわち、振れ検出部101は、振れ検出部24の1つに相当する。振れ検出部101は、第1鏡筒20におけるX軸回りの振れを検出する。第1目標位置算出部102は、第1補正光学系23のX軸方向の目標位置を算出する。より具体的には、第1目標位置算出部102は、振れ検出部101から角速度センサ出力である第1鏡筒20におけるX軸回りの振れを取得する。そして、第1目標位置算出部102は、第1鏡筒20におけるX軸回りの振れに基づいて、第1補正光学系23の目標位置を示す第1目標位置(X軸方向)を算出する。
【0031】
振れ検出部(VωLY)106は、第1鏡筒20におけるY軸回りの角速度センサである。すなわち、振れ検出部106は、振れ検出部24の1つに相当する。振れ検出部106は、第1鏡筒20におけるY軸回りの振れを検出する。第1目標位置算出部107は、第1補正光学系23のY軸方向の目標位置を算出する。より具体的には、第1目標位置算出部107は、振れ検出部106から角速度センサ出力である第1鏡筒20におけるY軸回りの振れを取得する。そして、第1目標位置算出部107は、第1鏡筒20におけるY軸回りの振れに基づいて、第1補正光学系23の目標位置を示す第1目標位置(Y軸方向)を算出する。
【0032】
図5は、第1実施形態に係る第1目標位置算出部の構成例を示す図である。なお、図5では、第1目標位置算出部102を例に挙げて説明するが、第1目標位置算出部107においても同様の処理が実行される。図5に示すように、第1目標位置算出部102は、LPF(Low Pass Filter)102aと、減算器102bと、減算器102cと、バイアス演算部102dと、積分器102eと、KLC102fと、可動範囲制限部102gとを有する。
【0033】
LPF102aは、角速度センサ出力信号から所定のノイズ成分を抽出する。角速度について「0(基準)」を検出することが困難であるため、角速度センサ出力信号には、幾分かのオフセットが含まれる。LPF102aは、減算器102bにおいて、角速度センサ出力信号のオフセットを除去する目的で使用される。より具体的には、LPF102aは、振れ検出部101の出力信号「Vω1」のうち、所定周波数より高い周波数成分(周波数帯域)をフィルタリングする。例えば、LPF102aのカットオフ周波数fcsは0.1Hzである。なお、LPF102aのカットオフ周波数fcsは、0.1Hzに限定されない。
【0034】
また、LPF102aは、振れ状態判定部103の判定結果に応じて、カットオフ周波数fcsを変更してもよい。より具体的には、LPF102aは、振れ状態判定部103から、パンニング動作等による構図変更が開始された(又は、継続している)ことを示す判定結果を受け付けた場合に、カットオフ周波数fcsを所定値よりも大きく設定する。例えば、LPF102aのカットオフ周波数fcsは1.0Hzである。双眼鏡1のユーザが意図してパンニング動作等を実施する場合は、パンニング動作時に発生する振れを残した方が好ましい。従って、LPF102aは、双眼鏡1のユーザが意図した動作によって発生する振れ(振れの信号成分)を残すために、カットオフ周波数fcsを所定値よりも大きく設定する。この結果、双眼鏡1は、双眼鏡1を介してユーザが観察する対象物への追従性を高めることができる。なお、LPF102aのカットオフ周波数fcsは、1.0Hzに限定されず、所定値(例えば、0.1Hz)よりも大きく設定されればよい。例えば、LPF102aのカットオフ周波数は、2.0Hz、3.0Hz等でもよい。
【0035】
LPF102aは、カットオフ周波数を所定値よりも大きく設定した後、振れ状態判定部103から、パンニング動作等による構図変更が終了したことを示す判定結果を受け付けた場合に、カットオフ周波数fcsを所定値に戻す。すなわち、パンニング動作等による構図変更が終了した場合は、双眼鏡1のユーザが意図しない振れが発生している可能性があり、ユーザが意図しない振れについては残さずに除去される。
【0036】
減算器102bは、角速度センサ出力信号から所定のノイズ成分を除去する。より具体的には、減算器102bは、振れ検出部101の出力信号「Vω1」から直流成分「Vω0s」を除去し、双眼鏡1に加わる振れに対応した角速度「Vω」を出力する。
【0037】
減算器102cは、角速度にバイアス量を与える。バイアス演算部102dは、第1補正光学系23の現在の目標位置に基づくバイアス量を演算する。より具体的には、バイアス演算部102dは、第1補正光学系23の現在の目標位置に基づいて、第1補正光学系23の可動範囲の中心に向かって移動させる向心力をバイアス量「Vbias」として演算する。減算器102cは、双眼鏡1に加わる振れに対応した角速度「Vω」に、バイアス量「Vbias」を与える。第1補正光学系23は、バイアス量「Vbias」が大きい程、移動量が小さくなり、バイアス量「Vbias」が小さい程、移動量が大きくなる。
【0038】
積分器102eは、バイアス量が与えられた角速度を積分する。より具体的には、積分器102eは、バイアス量「Vbias」が与えられた角速度「Vω」を積分し、ディメンジョンを速度「VC」にする。KLC102fは、入力に対して係数を掛ける。より具体的には、KLC102fは、速度「VC」に対して、第1補正光学系23の目標位置「LC」の単位に合わせる係数「KLC」を掛ける。なお、係数「KLC」は、様々な条件のもとで定められた所定の係数であり、製品の特長ごとに異なる場合がある。
【0039】
可動範囲制限部102gは、第1補正光学系23の可動範囲を制限する。より具体的には、可動範囲制限部102gは、第1補正光学系23の目標位置について、第1補正光学系23の可動範囲に含まれるように制限し、X軸方向の第1目標位置「LCLX」を出力する。上述したように、第1補正光学系23の移動量は、バイアス量「Vbias」の大きさによって変化する。但し、第1補正光学系23の移動量は、双眼鏡1の物理的な要因(大きさ、形状等)による制限がある。従って、可動範囲制限部102gは、双眼鏡1における物理的な可動範囲に含まれるように、第1補正光学系23の目標位置を制限する。例えば、可動範囲制限部102gは、第1補正光学系23の目標位置が可動範囲に含まれない場合、可動範囲の上限等に目標位置を変更する。
【0040】
図4の説明に戻り、振れ状態判定部103は、第1鏡筒20におけるX軸回りの振れの状態を判定する。より具体的には、振れ状態判定部103は、振れ検出部101から角速度センサ出力である第1鏡筒20におけるX軸回りの振れを取得する。そして、振れ状態判定部103は、第1鏡筒20におけるX軸回りの振れに基づいて、双眼鏡1のユーザの意図しない振れ(例えば、手振れ等)に対し、パンニング動作等の意図した振れ(X軸回り)が開始されたか(又は、継続しているか)を判定する。
【0041】
振れ状態判定部108は、第1鏡筒20におけるY軸回りの振れの状態を判定する。より具体的には、振れ状態判定部108は、振れ検出部106から角速度センサ出力である第1鏡筒20におけるY軸回りの振れを取得する。そして、振れ状態判定部108は、第1鏡筒20におけるY軸回りの振れに基づいて、双眼鏡1のユーザの意図しない振れ(例えば、手振れ等)に対し、パンニング動作等の意図した振れ(Y軸回り)が開始されたか(又は、継続しているか)を判定する。
【0042】
図6は、第1実施形態に係る振れ状態判定部の構成例を示す図である。なお、図6では、振れ状態判定部103を例に挙げて説明するが、振れ状態判定部108においても同様の処理が実行される。図6に示すように、振れ状態判定部103は、LPF103aと、減算器103bと、ABS(absolute value)103cと、振れ状態切替部103dとを有する。
【0043】
LPF103aは、角速度センサ出力信号から所定のノイズ成分を抽出する。LPF103aは、減算器103bにおいて、角速度センサ出力信号のオフセットを除去する目的で使用される。より具体的には、LPF103aは、振れ検出部101の出力信号「Vω1」のうち、所定周波数より高い周波数成分をフィルタリングする。例えば、LPF103aのカットオフ周波数fckは0.1Hzである。
【0044】
減算器103bは、角速度センサ出力信号から所定のノイズ成分を除去する。より具体的には、減算器103bは、振れ検出部101の出力信号「Vω1」から直流成分「Vω0k」を除去する。ABS103cは、角速度センサ出力信号から所定のノイズ成分を除去した値の絶対値をとる。より具体的には、ABS103cは、振れ検出部101の出力信号「Vω1」と、直流成分「Vω0k」との差の絶対値「|Vω1-Vω0k|」をとる。振れ状態切替部103dは、第1鏡筒20におけるX軸回りの振れの状態の判定結果を切り替える。より具体的には、振れ状態切替部103dは、ABS103cが出力した絶対値「|Vω1-Vω0k|」が第1閾値「Panωth1」以上であるかを判定する。そして、振れ状態切替部103dは、「|Vω1-Vω0k|」が第1閾値「Panωth1」以上である場合に、双眼鏡1のユーザのパンニング動作等による構図変更が開始された(又は、継続している)と判定する。続いて、振れ状態切替部103dは、双眼鏡1のユーザのパンニング動作等による構図変更が開始された(又は、継続している)ことを示す判定結果を出力する。
【0045】
また、振れ状態切替部103dは、絶対値「|Vω1-Vω0k|」が第2閾値「Panωth1-e」以下である場合に、双眼鏡1のユーザのパンニング動作等による構図変更が終了したと判定する。そして、振れ状態切替部103dは、双眼鏡1のユーザのパンニング動作等による構図変更が終了したことを示す判定結果を出力する。なお、振れ状態切替部103dが出力する判定結果は、上述したように、第1目標位置算出部102で利用される。振れ状態の判定で使用する閾値(第1閾値及び第2閾値)には、ヒステリシス特性を持たせているが、同一の閾値が使用されてもよい。
【0046】
図4の説明に戻り、偏差算出部104は、第1補正光学系23の目標位置と現在位置との偏差を算出する。より具体的には、偏差算出部104は、第1補正光学系23を駆動する補正機構を示す第1補正機構LOSのうち、X軸方向における駆動に関する補正機構を示す第1補正機構LOSxのホール素子54から、第1補正光学系23のX軸方向の現在位置「LRLX」を取得する。そして、偏差算出部104は、第1目標位置算出部102が算出した第1補正光学系23の第1目標位置「LCLX」(X軸方向)と、第1補正光学系23の現在位置「LRLX」(X軸方向)との偏差「ΔLX」(ΔLX=LCLX-LRLX)を求める。
【0047】
偏差算出部109は、第1補正光学系23の目標位置と現在位置との偏差を算出する。より具体的には、偏差算出部109は、第1補正機構LOSのうち、Y軸方向における駆動に関する補正機構を示す第1補正機構LOSyのホール素子54から、第1補正光学系23のY軸方向の現在位置「LRLY」を取得する。そして、偏差算出部109は、第1目標位置算出部107が算出した第1補正光学系23の第1目標位置「LCLY」(Y軸方向)と、第1補正光学系23の現在位置「LRLY」(Y軸方向)との偏差「ΔLY」(ΔLY=LCLY-LRLY)を求める。
【0048】
第1駆動量算出部105は、第1目標位置に基づいて、第1補正光学系23を駆動する第1補正機構LOSxの駆動量を算出する。より具体的には、第1駆動量算出部105は、偏差算出部104が算出したX軸方向の偏差「ΔLX」に比例する項、X軸方向の偏差「ΔLX」の積分に比例する項、X軸方向の偏差「ΔLX」の微分に比例する項を加算し、第1補正光学系23のX軸方向における駆動信号を演算する。
【0049】
第1駆動量算出部110は、第1目標位置に基づいて、第1補正光学系23を駆動する第1補正機構LOSyの駆動量を算出する。より具体的には、第1駆動量算出部110は、偏差算出部109が算出したY軸方向の偏差「ΔLY」に比例する項、Y軸方向の偏差「ΔLY」の積分に比例する項、Y軸方向の偏差「ΔLY」の微分に比例する項を加算し、第1補正光学系23のY軸方向における駆動信号を演算する。
【0050】
図7は、第1実施形態に係る第1駆動量算出部の構成例を示す図である。なお、図7では、第1駆動量算出部105を例に挙げて説明するが、第1駆動量算出部110においても同様の処理が実行される。図7に示すように、第1駆動量算出部105は、偏差算出部105aと、加算器105bと、Z変換部105cと、Kinte105dとを有する。加えて、第1駆動量算出部105は、Kprop105eと、減算器105fと、Z変換部105gと、Kdiff105hと、加算器105iとを有する。なお、偏差算出部105aは、上述した偏差算出部104に相当する。
【0051】
偏差算出部105aは、第1補正光学系23の第1目標位置「LCLX」(X軸方向)と、第1補正光学系23の現在位置「LRLX」(X軸方向)との偏差「ΔLX」を求める。加算器105bは、第1補正光学系23のX軸方向における目標位置と現在位置との偏差に、Z変換部105cからの出力を加算する。Z変換部105cは、第1補正光学系23のX軸方向における目標位置と現在位置との偏差について、1サンプリング前の情報を出力する。すなわち、加算器105bは、偏差算出部105aが算出したX軸方向の偏差に、Z変換部105cが出力した1サンプリング前のX軸方向の偏差を加算する。Kinte105dは、加算器105bが出力した偏差の積分に比例する項を出力する。Kprop105eは、偏差算出部105aが出力した偏差に比例する項を出力する。
【0052】
減算器105fは、第1補正光学系23のX軸方向における目標位置と現在位置との偏差から、Z変換部105gからの出力を減算する。Z変換部105gは、第1補正光学系23のX軸方向における目標位置と現在位置との偏差について、1サンプリング前の情報を出力する。すなわち、減算器105fは、偏差算出部105aが算出したX軸方向の偏差から、Z変換部105gが出力した1サンプリング前のX軸方向の偏差を減算する。Kdiff105hは、減算器105fが出力した偏差の微分に比例する項を出力する。加算器105iは、Kinte105dが出力した偏差の積分に比例する項と、Kprop105eが出力した偏差に比例する項と、Kdiff105hが出力した偏差の微分に比例する項とを加算し、駆動量を含む駆動信号を出力する。
【0053】
本実施形態では、第1検出部25又は第2検出部34により各鏡筒における傾き角を検出している。そこで、各鏡筒の光軸が重力方向となる姿勢である場合は、各鏡筒の補正光学系の位置について、振れに対応する補正(補正光学系の駆動)を行わなくてもよい。具体的には、第1駆動量算出部105、第1駆動量算出部110、第2駆動量算出部117、及び第2駆動量算出部119は、第1検出部111、第1検出部112、第2検出部113、及び第2検出部114のうちいずれか1つの検出値に基づき、補正光学系の光軸が重力方向に向けられていることを認識する。そして、第1駆動量算出部105、第1駆動量算出部110、第2駆動量算出部117、及び第2駆動量算出部119は、補正光学系の光軸が重力方向に向けられている場合に、補正光学系を移動させない、又は所定位置に保持させる補正機構の駆動量を算出する。例えば、所定位置は、補正光学系の可動範囲の中央付近である。
【0054】
図4の説明に戻り、第1検出部(VaLX)111は、第1鏡筒20におけるX軸方向の加速度を検出する。すなわち、第1検出部111は、第1検出部25の1つに相当する。第1検出部(VaLY)112は、第1鏡筒20におけるY軸方向の加速度を検出する。すなわち、第1検出部112は、第1検出部25の1つに相当する。第2検出部(VaRX)113は、第2鏡筒30におけるX軸方向の加速度を検出する。すなわち、第2検出部113は、第2検出部34の1つに相当する。第2検出部(VaRY)114は、第2鏡筒30におけるY軸方向の加速度を検出する。すなわち、第2検出部114は、第2検出部34の1つに相当する。なお、上述したように、機軸が単数である場合は、第1検出部111及び第1検出部112、又は、第2検出部113及び第2検出部114のいずれか一方に検出部を備える構成でもよい。
【0055】
第2目標位置算出部115は、第1目標位置と、第2鏡筒30の機軸部40(機軸Ax)回りの第1鏡筒20に対する回転を示す回転情報とに基づいて、第2鏡筒30に保持される第2補正光学系33の目標位置を示す第2目標位置を算出する。より具体的には、第2目標位置算出部115は、(数1)により、第1検出部111が出力したX軸方向の加速度センサ出力「VaLx」と、第1検出部112が出力したY軸方向の加速度センサ出力「VaLy」とから、第1鏡筒20の傾き角「VθL」を算出する。
【0056】
【数1】
【0057】
そして、第2目標位置算出部115は、(数2)により、第1鏡筒20における第1検出部111及び第1検出部112の取り付け誤差に起因する角度ずれ「VΔθL」を、第1鏡筒20の傾き角「VθL」に加算する。加算結果は、第1鏡筒20の真の傾き角「VθL’」とする。なお、各加速度センサの取り付け誤差に起因する角度ずれについては、予めメモリ(例えば、回路基板10のROM領域等)に保存されればよい。なお、第1検出部111及び第1検出部112が第1鏡筒20に保持されない場合は、取り付け誤差も存在ないため実施されなくてよい。
【0058】
【数2】
【0059】
続いて、第2目標位置算出部115は、(数3)により、第2検出部113が出力したX軸方向の加速度センサ出力「VaRX」と、第2検出部114が出力したY軸方向の加速度センサ出力「VaRY」とから、第2鏡筒30の傾き角「VθR」を算出する。
【0060】
【数3】
【0061】
その後、第2目標位置算出部115は、(数4)により、第2鏡筒30における第2検出部113及び第2検出部114の取り付け誤差に起因する角度ずれ「VΔθR」を、第2鏡筒30の傾き角「VθR」に加算する。加算結果は、第2鏡筒30の真の傾き角「VθR’」とする。なお、各加速度センサの取り付け誤差に起因する角度ずれについては、予めメモリ(例えば、回路基板10のROM領域等)に保存されればよい。なお、第2検出部113及び第2検出部114が第2鏡筒30に保持されない場合は、取り付け誤差も存在しないため実施されなくてよい。
【0062】
【数4】
【0063】
そして、第2目標位置算出部115は、(数5)により、第1鏡筒20の真の傾き角「VθL’」と、第2鏡筒30の真の傾き角「VθR’」とから、第2鏡筒30に対する第1鏡筒20の折り角「Vθ」を算出する。第2鏡筒30に対する第1鏡筒20の折り角「Vθ」は、回転情報の一例である。
【0064】
【数5】
【0065】
続いて、第2目標位置算出部115は、第1目標位置算出部102及び第1目標位置算出部107から、第1補正光学系23のX軸方向の目標位置「LCLX」と、第1補正光学系23のY軸方向の目標位置「LCLY」とを取得する。その後、第2目標位置算出部115は、(数6)により、第1補正光学系23の目標位置「LCLX」、「LCLY」と、第2鏡筒30に対する第1鏡筒20の折り角「Vθ」とから、第2補正光学系33の目標位置を算出する。(数6)では、第2補正光学系33のX軸方向の目標位置を「LCRX」で表し、第2補正光学系33のY軸方向の目標位置を「LCRY」で表している。
【0066】
【数6】
【0067】
本実施形態で使用される三角関数は、予めメモリに保存されてもよい。第1検出部25及び第2検出部34の角度分解能は、1度以下であることが好ましい。また、1つの態様として、双眼鏡の光軸出し(各鏡筒の光軸合わせ)は、対物レンズを回す方法、正立プリズムを移動させる方法がある。本実施形態に係る双眼鏡1では、補正光学系を移動させることでも光軸出しを実現することができる。具体的には、第2目標位置算出部115は、アフィン変換後に、第1鏡筒20と第2鏡筒30との光軸(LOA,ROA)を同一にする所定の調整値を加算し、第2目標位置を算出する。所定の調整値は、光軸出し用の補正光学系の調整値としてメモリに保存されればよい。双眼鏡1は、光軸出し用の補正光学系の調整値をアフィン変換後に加算することで、回転を加味したオフセットが可能となる。
【0068】
上記では、回転情報について、第2鏡筒30に対する第1鏡筒20の折り角「Vθ」を使用する場合を説明した。ここで、図8図9、及び図10を用いて、回転情報について説明する。図8図9、及び図10は、第1実施形態に係る回転情報の例を説明する図である。
【0069】
図8では、1軸タイプの双眼鏡1である場合を例に挙げる。図8に示す双眼鏡1では、機軸部40回りの第1鏡筒20の回転を示す第1回転情報(LRI)と、機軸部40回りの第2鏡筒30の回転を示す第2回転情報(RRI)とが同一となる。従って、第2目標位置算出部115は、第1回転情報と第2回転情報とのうち少なくともいずれか一方に基づいて回転情報を算出し、算出した回転情報を用いて第1目標位置を回転演算し、第2目標位置を算出する。
【0070】
図9では、2軸タイプで2つの機軸部(第1機軸部40L、第2機軸部40R)の機軸(第1機軸LAx、第2機軸RAx)を通る線が、各鏡筒の光軸(光軸LOA、光軸ROA)を通る線と平行である場合を例に挙げる。図9に示す双眼鏡1では、第1機軸部40L回りの第1鏡筒20の回転を示す第1回転情報(LRI又はLRI)と、第2機軸部40R回りの第2鏡筒30の回転を示す第2回転情報(RRI又はRRI)とが同一となる。なお、LSt及びRStは、回転情報の基準を示す線である。第1回転情報は、基準LStに対する回転情報(LRI)を用いてよいし、図8と同様の回転情報(LRI)を用いてもよい。同様に、第2回転情報は、基準RStに対する回転情報(RRI)を用いてもよいし、図8と同様の回転情報(RRI)を用いてもよい。従って、第2目標位置算出部115は、第1回転情報と第2回転情報とのうち少なくともいずれか一方に基づいて回転情報を算出し、算出した回転情報を用いて第1目標位置を回転演算し、第2目標位置を算出する。
【0071】
図10では、2軸タイプで2つの機軸部(第1機軸部40L、第2機軸部40R)の機軸(第1機軸LAx、第2機軸RAx)を通る線が、各鏡筒の光軸(光軸LOA、光軸ROA)を通る線と平行でない場合を例に挙げる。図10に示す双眼鏡1では、第1機軸部40L回りの第1鏡筒20の回転を示す第1回転情報(LRI又はLRI)と、第2機軸部40R回りの第2鏡筒30の回転を示す第2回転情報(RRI又はRRI)とが同一とはならない。例えば、第1機軸部40Lを基準の機軸としたときの第1機軸部40Lの機軸部回りの回転情報は、第1回転情報と第2回転情報との差分の絶対値とすればよい。同様に、第2機軸部40Rを基準の機軸としたときの第2機軸部40Rの機軸部回りの回転情報は、第1回転情報と第2回転情報との差分の絶対値とすればよい。
【0072】
図4の説明に戻り、偏差算出部116は、第2補正光学系33の目標位置と現在位置との偏差を算出する。より具体的には、偏差算出部116は、第2補正光学系33を駆動する補正機構を示す第2補正機構ROSのうち、X軸方向における駆動に関する補正機構を示す第2補正機構ROSxのホール素子54から、第2補正光学系33のX軸方向の現在位置「LRRX」を取得する。そして、偏差算出部116は、第2目標位置算出部115が算出した第2補正光学系33の第2目標位置「LCRX」(X軸方向)と、第2補正光学系33の現在位置「LRRX」(X軸方向)との偏差「ΔRX」(ΔRX=LCRX-LRRX)を求める。
【0073】
偏差算出部118は、第2補正光学系33の目標位置と現在位置との偏差を算出する。より具体的には、偏差算出部118は、第2補正機構ROSのうち、Y軸方向における駆動に関する補正機構を示す第2補正機構ROSyのホール素子54から、第2補正光学系33のY軸方向の現在位置「LRRY」を取得する。そして、偏差算出部118は、第2目標位置算出部115が算出した第2補正光学系33の第2目標位置「LCRY」(Y軸方向)と、第2補正光学系33の現在位置「LRRY」(Y軸方向)との偏差「ΔRY」(ΔRY=LCRY-LRRX)を求める。
【0074】
第2駆動量算出部117は、第2目標位置に基づいて、第2補正光学系33を駆動する第2補正機構ROSxの駆動量を算出する。より具体的には、第2駆動量算出部117は、偏差算出部116が算出したX軸方向の偏差「ΔRX」に比例する項、X軸方向の偏差「ΔRX」の積分に比例する項、X軸方向の偏差「ΔRX」の微分に比例する項を加算し、第2補正光学系33のX軸方向における駆動信号を演算する。なお、第2駆動量算出部117における処理は、第1駆動量算出部105における処理と同様である。
【0075】
第2駆動量算出部119は、第2目標位置に基づいて、第2補正光学系33を駆動する第2補正機構ROSyの駆動量を算出する。より具体的には、第2駆動量算出部119は、偏差算出部118が算出したY軸方向の偏差「ΔRY」に比例する項、Y軸方向の偏差「ΔRY」の積分に比例する項、Y軸方向の偏差「ΔRY」の微分に比例する項を加算し、第2補正光学系33のY軸方向における駆動信号を演算する。なお、第2駆動量算出部119における処理は、第1駆動量算出部105における処理と同様である。
【0076】
図11は、第1実施形態に係る双眼鏡における処理の流れの例を示すフローチャートである。ステップS101において、第1目標位置算出部102及び第1目標位置算出部107は、第1鏡筒20の振れに基づいて、第1目標位置を算出する。具体的には、第1目標位置算出部102は、振れ検出部101の出力信号のうち、所定周波数より高い周波数成分をフィルタリングする。このとき、第1目標位置算出部102は、振れ状態判定部103の判定結果に応じて、カットオフ周波数を設定してもよい。例えば、第1目標位置算出部102は、双眼鏡1のユーザが意図したパンニング動作等による構図変更が開始された(又は、継続している)ことを示す判定結果を振れ状態判定部103から受け付けた場合に、カットオフ周波数を所定周波数よりも高く設定する。
【0077】
そして、第1目標位置算出部102は、振れ検出部101の出力信号から直流成分を除去し、双眼鏡1に加わる振れに対応した角速度を算出する。続いて、第1目標位置算出部102は、第1補正光学系23の現在の目標位置に基づいて、第1補正光学系23の可動範囲の中心に向かって移動させる向心力をバイアス量として演算する。その後、第1目標位置算出部102は、双眼鏡1に加わる振れに対応した角速度にバイアス量を与える。そして、第1目標位置算出部102は、バイアス量を与えた角速度を積分し、ディメンジョンを速度にして、第1補正光学系23の目標位置の単位に合わせる係数を掛ける。続いて、第1目標位置算出部102は、第1補正光学系23の目標位置について、第1補正光学系23の可動範囲に含まれるように制限し、第1目標位置(X軸方向)を算出する。
【0078】
同様に、第1目標位置算出部107は、振れ検出部106の出力信号のうち、所定周波数より高い周波数成分をフィルタリングする。このとき、第1目標位置算出部107は、振れ状態判定部108の判定結果に応じて、カットオフ周波数を設定してもよい。例えば、第1目標位置算出部107は、双眼鏡1のユーザが意図したパンニング動作等による構図変更が開始された(又は、継続している)ことを示す判定結果を振れ状態判定部108から受け付けた場合に、カットオフ周波数を所定周波数よりも高く設定する。
【0079】
そして、第1目標位置算出部107は、振れ検出部106の出力信号から直流成分を除去し、双眼鏡1に加わる振れに対応した角速度を算出する。続いて、第1目標位置算出部107は、第1補正光学系23の現在の目標位置に基づいて、第1補正光学系23の可動範囲の中心に向かって移動させる向心力をバイアス量として演算する。その後、第1目標位置算出部107は、双眼鏡1に加わる振れに対応した角速度にバイアス量を与える。そして、第1目標位置算出部107は、バイアス量を与えた角速度を積分し、ディメンジョンを速度にして、第1補正光学系23の目標位置の単位に合わせる係数を掛ける。続いて、第1目標位置算出部107は、第1補正光学系23の目標位置について、第1補正光学系23の可動範囲に含まれるように制限し、第1目標位置(Y軸方向)を算出する。
【0080】
ステップS102において、第1駆動量算出部105及び第1駆動量算出部110は、第1目標位置に基づいて、第1補正光学系23を駆動する第1補正機構LOSの駆動量を算出する。具体的には、第1駆動量算出部105は、第1補正光学系23の第1目標位置(X軸方向)と、第1補正光学系23の現在位置(X軸方向)との偏差を求める。そして、第1駆動量算出部105は、第1補正光学系23のX軸方向における目標位置と現在位置との偏差に、1サンプリング前のX軸方向の偏差を加算し、偏差の積分に比例する項を算出する。続いて、第1駆動量算出部105は、第1補正光学系23のX軸方向における目標位置と現在位置との偏差に比例する項を算出する。その後、第1駆動量算出部105は、第1補正光学系23のX軸方向における目標位置と現在位置との偏差から、1サンプリング前のX軸方向の偏差を減算し、偏差の微分に比例する項を算出する。そして、第1駆動量算出部105は、全ての項について加算し、第1補正機構LOSxの駆動量を算出する。
【0081】
同様に、第1駆動量算出部110は、第1補正光学系23の第1目標位置(Y軸方向)と、第1補正光学系23の現在位置(Y軸方向)との偏差を求める。そして、第1駆動量算出部110は、第1補正光学系23のY軸方向における目標位置と現在位置との偏差に、1サンプリング前のY軸方向の偏差を加算し、偏差の積分に比例する項を算出する。続いて、第1駆動量算出部110は、第1補正光学系23のY軸方向における目標位置と現在位置との偏差に比例する項を算出する。その後、第1駆動量算出部110は、第1補正光学系23のY軸方向における目標位置と現在位置との偏差から、1サンプリング前のY軸方向の偏差を減算し、偏差の微分に比例する項を算出する。そして、第1駆動量算出部110は、全ての項について加算し、第1補正機構LOSyの駆動量を算出する。
【0082】
ステップS103において、第2目標位置算出部115は、第2鏡筒30の機軸部40(機軸Ax)回りの第1鏡筒20に対する回転情報と、第1目標位置とに基づいて、第2目標位置を算出する。具体的には、第2目標位置算出部115は、第1検出部111が出力したX軸方向の加速度センサ出力と、第1検出部112が出力したY軸方向の加速度センサ出力とから、第1鏡筒20の傾き角を算出する。そして、第2目標位置算出部115は、第1鏡筒20における第1検出部111及び第1検出部112の取り付け誤差に起因する角度ずれを、第1鏡筒20の傾き角に加算し、第1鏡筒20の真の傾き角を算出する。
【0083】
続いて、第2目標位置算出部115は、第2検出部113が出力したX軸方向の加速度センサ出力と、第2検出部114が出力したY軸方向の加速度センサ出力とから、第2鏡筒30の傾き角を算出する。その後、第2目標位置算出部115は、第2鏡筒30における第2検出部113及び第2検出部114の取り付け誤差に起因する角度ずれを、第2鏡筒30の傾き角に加算し、第2鏡筒30の真の傾き角を算出する。そして、第2目標位置算出部115は、第1鏡筒20及び第2鏡筒30の真の傾き角から、第2鏡筒30に対する第1鏡筒20の折り角を算出する。続いて、第2目標位置算出部115は、第1目標位置算出部102及び第1目標位置算出部107から、第1補正光学系23のX軸方向及びY軸方向の目標位置(第1目標位置)を取得する。その後、第2目標位置算出部115は、取得した第1目標位置と、第2鏡筒30に対する第1鏡筒20の折り角とから、第2補正光学系33の目標位置(第2目標位置)を算出する。
【0084】
ステップS104において、第2駆動量算出部117及び第2駆動量算出部119は、第2目標位置に基づいて、第2補正光学系33を駆動する第2補正機構ROSの駆動量を算出する。具体的には、第2駆動量算出部117は、第2補正光学系33の第2目標位置(X軸方向)と、第2補正光学系33の現在位置(X軸方向)との偏差を求める。そして、第2駆動量算出部117は、第2補正光学系33のX軸方向における目標位置と現在位置との偏差に、1サンプリング前のX軸方向の偏差を加算し、偏差の積分に比例する項を算出する。続いて、第2駆動量算出部117は、第2補正光学系33のX軸方向における目標位置と現在位置との偏差に比例する項を算出する。その後、第2駆動量算出部117は、第2補正光学系33のX軸方向における目標位置と現在位置との偏差から、1サンプリング前のX軸方向の偏差を減算し、偏差の微分に比例する項を算出する。そして、第2駆動量算出部117は、全ての項について加算し、第2補正機構ROSxの駆動量を算出する。
【0085】
同様に、第2駆動量算出部119は、第2補正光学系33の第2目標位置(Y軸方向)と、第2補正光学系33の現在位置(Y軸方向)との偏差を求める。そして、第2駆動量算出部119は、第2補正光学系33のY軸方向における目標位置と現在位置との偏差に、1サンプリング前のY軸方向の偏差を加算し、偏差の積分に比例する項を算出する。続いて、第2駆動量算出部119は、第2補正光学系33のY軸方向における目標位置と現在位置との偏差に比例する項を算出する。その後、第2駆動量算出部119は、第2補正光学系33のY軸方向における目標位置と現在位置との偏差から、1サンプリング前のY軸方向の偏差を減算し、偏差の微分に比例する項を算出する。そして、第2駆動量算出部119は、全ての項について加算し、第2補正機構ROSyの駆動量を算出する。
【0086】
図12は、第1実施形態に係る第1目標位置算出部における処理の流れの例を示すフローチャートである。ステップS201において、第1目標位置算出部102及び第1目標位置算出部107は、第1鏡筒20の振れ状態の判定結果に基づいて、角速度センサ出力信号のノイズ成分を除去する。具体的には、第1目標位置算出部102は、振れ状態判定部103から、振れ状態の判定結果を受け付ける。そして、第1目標位置算出部102は、パンニング動作等による構図変更が開始された(又は、継続している)ことを示す判定結果を受け付けた場合に、カットオフ周波数を所定値よりも大きく設定し、振れ検出部101の出力信号に対し、設定した周波数より高い周波数成分をフィルタリングする。また、第1目標位置算出部102は、パンニング動作等による構図変更が終了したことを示す判定結果を受け付けた場合に、カットオフ周波数を所定値に設定し、振れ検出部101の出力信号に対し、設定した周波数より高い周波数成分をフィルタリングする。続いて、第1目標位置算出部102は、振れ検出部101の出力信号から直流成分を除去し、双眼鏡1に加わる振れに対応した角速度を算出する。これらの処理により、第1目標位置算出部102は、ノイズ成分を除去した角速度センサ出力信号を得る。
【0087】
同様に、第1目標位置算出部107は、振れ状態判定部108から、振れ状態の判定結果を受け付ける。そして、第1目標位置算出部107は、パンニング動作等による構図変更が開始された(又は、継続している)ことを示す判定結果を受け付けた場合に、カットオフ周波数を所定値よりも大きく設定し、振れ検出部106の出力信号に対し、設定した周波数より高い周波数成分をフィルタリングする。また、第1目標位置算出部107は、パンニング動作等による構図変更が終了したことを示す判定結果を受け付けた場合に、カットオフ周波数を所定値に設定し、振れ検出部106の出力信号に対し、設定した周波数より高い周波数成分をフィルタリングする。続いて、第1目標位置算出部107は、振れ検出部106の出力信号から直流成分を除去し、双眼鏡1に加わる振れに対応した角速度を算出する。これらの処理により、第1目標位置算出部107は、ノイズ成分を除去した角速度センサ出力を得る。
【0088】
ステップS202において、第1目標位置算出部102及び第1目標位置算出部107は、ノイズ成分を除去した角速度センサ出力信号に、バイアス量を与える。具体的には、第1目標位置算出部102は、第1補正光学系23の現在の第1目標位置(X軸方向)に基づいて、第1補正光学系23の可動範囲の中心に向かって移動させる向心力をバイアス量として演算する。そして、第1目標位置算出部102は、双眼鏡1に加わる振れに対応した角速度に、バイアス量を与える。
【0089】
同様に、第1目標位置算出部107は、第1補正光学系23の現在の第1目標位置(Y軸方向)に基づいて、第1補正光学系23の可動範囲の中心に向かって移動させる向心力をバイアス量として演算する。そして、第1目標位置算出部107は、双眼鏡1に加わる振れに対応した角速度に、バイアス量を与える。
【0090】
ステップS203において、第1目標位置算出部102及び第1目標位置算出部107は、バイアス量を与えた角速度センサ出力信号を積分し、ディメンジョンを速度にする。ステップS204において、第1目標位置算出部102及び第1目標位置算出部107は、第1補正光学系23の目標位置の単位に合わせる係数を掛け、第1補正光学系23の可動範囲に含まれる第1目標位置を算出する。
【0091】
具体的には、第1目標位置算出部102は、バイアス量が与えられた角速度を積分し、ディメンジョンを速度にして、速度に対して、第1補正光学系23の目標位置(X軸方向)の単位に合わせる係数を掛ける。そして、第1目標位置算出部102は、第1補正光学系23の目標位置(X軸方向)について、第1補正光学系23の可動範囲に含まれるように制限し、第1目標位置(X軸方向)を算出する。
【0092】
同様に、第1目標位置算出部107は、バイアス量が与えられた角速度を積分し、ディメンジョンを速度にして、速度に対して、第1補正光学系23の目標位置(Y軸方向)の単位に合わせる係数を掛ける。そして、第1目標位置算出部107は、第1補正光学系23の目標位置(Y軸方向)について、第1補正光学系23の可動範囲に含まれるように制限し、第1目標位置(Y軸方向)を算出する。
【0093】
図13は、第1実施形態に係る振れ状態判定部における処理の流れの例を示すフローチャートである。ステップS301において、振れ状態判定部103及び振れ状態判定部108は、角速度センサ出力信号を所定のカットオフ周波数であるLPF(LPF103a,LPF108a)にかける。具体的には、振れ状態判定部103は、振れ検出部101の出力信号のうち、所定のカットオフ周波数(例えば、0.1Hz等)より高い周波数成分をフィルタリングする。同様に、振れ状態判定部108は、振れ検出部106の出力信号のうち、所定のカットオフ周波数(例えば、0.1Hz等)より高い周波数成分をフィルタリングする。
【0094】
ステップS302において、振れ状態判定部103及び振れ状態判定部108は、角速度センサ出力信号と、LPFからの出力との差の絶対値をとる。より具体的には、振れ状態判定部103は、振れ検出部101の出力信号から直流成分を除去し、振れ検出部101の出力信号と直流成分との差の絶対値をとる。同様に、振れ状態判定部108は、振れ検出部106の出力信号から直流成分を除去し、振れ検出部106の出力信号と直流成分との差の絶対値をとる。
【0095】
ステップS303において、振れ状態判定部103及び振れ状態判定部108は、絶対値が第1閾値以上であるかを判定する。絶対値が第1閾値以上である場合(ステップS303:Yes)、ステップS304において、振れ状態判定部103及び振れ状態判定部108は、パンニング動作が開始された(又は、継続している)と判定する。具体的には、振れ状態判定部103は、振れ検出部101の出力信号と直流成分との差の絶対値が第1閾値以上である場合に、双眼鏡1のユーザのパンニング動作等による構図変更が開始された(又は、継続している)と判定する。同様に、振れ状態判定部108は、振れ検出部106の出力信号と直流成分との差の絶対値が第1閾値以上である場合に、双眼鏡1のユーザのパンニング動作等による構図変更が開始された(又は、継続している)と判定する。
【0096】
一方、絶対値が第1閾値未満である場合(ステップS303:No)、ステップS305において、振れ状態判定部103及び振れ状態判定部108は、絶対値が第2閾値以下であるかを判定する。絶対値が第2閾値以下である場合(ステップS305:Yes)、ステップS306において、振れ状態判定部103及び振れ状態判定部108は、双眼鏡1のユーザのパンニング動作等による構図変更が終了したと判定する。
【0097】
具体的には、振れ状態判定部103は、振れ検出部101の出力信号と直流成分との差の絶対値が第2閾値以下である場合に、双眼鏡1のユーザのパンニング動作等による構図変更が終了したと判定する。また、振れ状態判定部103は、振れ検出部101の出力信号と直流成分との差の絶対値が第2閾値より大きい場合に(ステップS305:No)、処理を終了する。ステップS305:Noである場合、振れ検出部101の出力信号と直流成分との差の絶対値は、第2閾値より大きく第1閾値未満である。第2閾値より大きく、第1閾値未満である場合、それまでに構図変更が開始された(又は、継続している)と判定されていれば、第1目標位置算出部102では、カットオフ周波数を所定値よりも大きく設定したフィルタリングが実行される。また、第2閾値より大きく、第1閾値未満である場合、それまでに構図変更が開始された(又は、継続している)と判定されていなければ、第1目標位置算出部102では、カットオフ周波数を所定値に設定したフィルタリングが実行される。
【0098】
同様に、振れ状態判定部108は、振れ検出部106の出力信号と直流成分との差の絶対値が第2閾値以下である場合に、双眼鏡1のユーザのパンニング動作等による構図変更が終了したと判定する。また、振れ状態判定部108は、振れ検出部106の出力信号と直流成分との差の絶対値が第2閾値より大きい場合に(ステップS305:No)、処理を終了する。ステップS305:Noである場合、振れ検出部106の出力信号と直流成分との差の絶対値は、第2閾値より大きく第1閾値未満である。第2閾値より大きく、第1閾値未満である場合、それまでに構図変更が開始された(又は、継続している)と判定されていれば、第1目標位置算出部107では、カットオフ周波数を所定値よりも大きく設定したフィルタリングが実行される。また、第2閾値より大きく、第1閾値未満である場合、それまでに構図変更が開始された(又は、継続している)と判定されていなければ、第1目標位置算出部107では、カットオフ周波数を所定値に設定したフィルタリングが実行される。
【0099】
図14は、第1実施形態に係る第2目標位置算出部における処理の流れの例を示すフローチャートである。ステップS401において、第2目標位置算出部115は、第1鏡筒20の傾き角を算出する。具体的には、第2目標位置算出部115は、第1検出部111が出力したX軸方向の加速度センサ出力と、第1検出部112が出力したY軸方向の加速度センサ出力とから、第1鏡筒20の傾き角を算出する。
【0100】
ステップS402において、第2目標位置算出部115は、第1検出部111及び第1検出部112の取り付け誤差に起因する角度ずれを、第1鏡筒20の傾き角に加算する。具体的には、第2目標位置算出部115は、第1鏡筒20における第1検出部111及び第1検出部112の取り付け誤差に起因する角度ずれに関する情報をメモリから取得する。そして、第2目標位置算出部115は、取得した角度ずれに関する情報を、第1鏡筒20の傾き角に加算する。
【0101】
ステップS403において、第2目標位置算出部115は、第2鏡筒30の傾き角を算出する。具体的には、第2目標位置算出部115は、第2検出部113が出力したX軸方向の加速度センサ出力と、第2検出部114が出力したY軸方向の加速度センサ出力とから、第2鏡筒30の傾き角を算出する。ステップS404において、第2目標位置算出部115は、第2検出部113及び第2検出部114の取り付け誤差に起因する角度ずれを、第2鏡筒30の傾き角に加算する。具体的には、第2目標位置算出部115は、第2鏡筒30における第2検出部113及び第2検出部114の取り付け誤差に起因する角度ずれに関する情報をメモリから取得する。そして、第2目標位置算出部115は、取得した角度ずれに関する情報を、第2鏡筒30の傾き角に加算する。
【0102】
ステップS405において、第2目標位置算出部115は、第2鏡筒30に対する第1鏡筒20の折り角を算出する。具体的には、第2目標位置算出部115は、第1鏡筒20の真の傾き角と、第2鏡筒30の真の傾き角とから、第2鏡筒30に対する第1鏡筒20の折り角を算出する。
【0103】
ステップS406において、第2目標位置算出部115は、第1目標位置と、第2鏡筒30に対する第1鏡筒20の折り角とから、第2目標位置を算出する。具体的には、第2目標位置算出部115は、第1目標位置算出部102から、第1補正光学系23のX軸方向の第1目標位置を取得する。また、第2目標位置算出部115は、第1目標位置算出部107から、第1補正光学系23のY軸方向の第1目標位置を取得する。そして、第2目標位置算出部115は、第1補正光学系23のX軸方向及びY軸方向の第1目標位置と、第2鏡筒30に対する第1鏡筒20の折り角とから、第2補正光学系33の第2目標位置(X軸方向、Y軸方向)を算出する。
【0104】
図15は、第1実施形態に係る第1駆動量算出部及び第2駆動量算出部における処理の流れの例を示すフローチャートである。ステップS501において、第1駆動量算出部105、第1駆動量算出部110、第2駆動量算出部117、及び第2駆動量算出部119は、補正光学系の目標位置と現在位置との偏差を求める。具体的には、第1駆動量算出部105は、第1補正光学系23の第1目標位置(X軸方向)と、第1補正光学系23の現在位置(X軸方向)との偏差を求める。同様に、第1駆動量算出部110は、第1補正光学系23の第1目標位置(Y軸方向)と、第1補正光学系23の現在位置(Y軸方向)との偏差を求める。同様に、第2駆動量算出部117は、第2補正光学系33の第2目標位置(X軸方向)と、第2補正光学系33の現在位置(X軸方向)との偏差を求める。同様に、第2駆動量算出部119は、第2補正光学系33の第2目標位置(Y軸方向)と、第2補正光学系33の現在位置(Y軸方向)との偏差を求める。
【0105】
ステップS502において、第1駆動量算出部105、第1駆動量算出部110、第2駆動量算出部117、及び第2駆動量算出部119は、偏差に比例する項、偏差の積分に比例する項、偏差の微分に比例する項を加算し、駆動信号を演算する。具体的には、第1駆動量算出部105は、第1補正光学系23のX軸方向における第1目標位置と現在位置との偏差に、1サンプリング前の偏差を加算し、偏差の積分に比例する項を算出する。そして、第1駆動量算出部105は、第1補正光学系23のX軸方向における第1目標位置と現在位置との偏差に比例する項を算出する。続いて、第1駆動量算出部105は、第1補正光学系23のX軸方向における第1目標位置と現在位置との偏差から、1サンプリング前の偏差を減算し、偏差の微分に比例する項を算出する。その後、第1駆動量算出部105は、算出した全ての項を加算し、第1補正光学系23を駆動する第1補正機構LOSxの駆動量を含む駆動信号を出力する。
【0106】
同様に、第1駆動量算出部110は、第1補正光学系23のY軸方向における第1目標位置と現在位置との偏差に、1サンプリング前の偏差を加算し、偏差の積分に比例する項を算出する。そして、第1駆動量算出部110は、第1補正光学系23のY軸方向における第1目標位置と現在位置との偏差に比例する項を算出する。続いて、第1駆動量算出部110は、第1補正光学系23のY軸方向における第1目標位置と現在位置との偏差から、1サンプリング前の偏差を減算し、偏差の微分に比例する項を算出する。その後、第1駆動量算出部110は、算出した全ての項を加算し、第1補正光学系23を駆動する第1補正機構LOSyの駆動量を含む駆動信号を出力する。
【0107】
同様に、第2駆動量算出部117は、第2補正光学系33のX軸方向における第2目標位置と現在位置との偏差に、1サンプリング前の偏差を加算し、偏差の積分に比例する項を算出する。そして、第2駆動量算出部117は、第2補正光学系33のX軸方向における第2目標位置と現在位置との偏差に比例する項を算出する。続いて、第2駆動量算出部117は、第2補正光学系33のX軸方向における第2目標位置と現在位置との偏差から、1サンプリング前の偏差を減算し、偏差の微分に比例する項を算出する。その後、第2駆動量算出部117は、算出した全ての項を加算し、第2補正光学系33を駆動する第2補正機構ROSxの駆動量を含む駆動信号を出力する。
【0108】
同様に、第2駆動量算出部119は、Y軸方向の偏差に1サンプリング前のY軸方向の偏差を加算し、偏差の積分に比例する項を算出する。そして、第2駆動量算出部119は、Y軸方向の偏差に比例する項を算出する。続いて、第2駆動量算出部119は、Y軸方向の偏差から、1サンプリング前のY軸方向の偏差を減算し、偏差の微分に比例する項を算出する。その後、第2駆動量算出部119は、算出した全ての項を加算し、第2補正光学系33を駆動する第2補正機構ROSyの駆動量を含む駆動信号を出力する。
【0109】
本実施形態の構成により、振れが生じたときに、第1鏡筒20と第2鏡筒30とのそれぞれに保持された補正光学系の振れを打ち消す方向に同期して動かすことができるため、観察者は、振れの無い状態で対象物を観察することができる。
【0110】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を説明する。本実施形態において、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する場合がある。
【0111】
図16は、第2実施形態に係る回路基板の構成例を示す図である。図16に示すように、回路基板10aは、第1目標位置算出部202と、振れ状態判定部203と、偏差算出部104と、第1駆動量算出部105とを含む。回路基板10aは、第1目標位置算出部207と、振れ状態判定部208と、偏差算出部109と、第1駆動量算出部110とを含む。回路基板10aは、符号反転演算子220と、符号反転演算子221と、変換部222と、目標位置変換部223とを含む。回路基板10aは、第2目標位置算出部215と、偏差算出部116と、第2駆動量算出部117と、偏差算出部118と、第2駆動量算出部119とを含む。
【0112】
符号反転演算子220は、入力情報の符号を反転する。より具体的には、符号反転演算子220は、第1検出部111が出力した加速度センサ出力を-1倍し、符号を反転する。符号反転演算子221は、入力情報の符号を反転する。より具体的には、符号反転演算子221は、第1検出部112が出力した加速度センサ出力を-1倍し、符号を反転する。
【0113】
変換部222は、第1鏡筒20の振れを、該振れの検出軸から観察軸に変換する。より具体的には、変換部222は、振れ検出部101が出力したX軸回りの振れを示す出力信号「VωLX1」と、振れ検出部106が出力したY軸回りの振れを示す出力信号「VωLY1」とを取得する。また、変換部222は、第1検出部111の符号が反転された加速度センサ出力と、第1検出部112の符号が反転された加速度センサ出力とから、第1鏡筒20の真の傾き角「-VθL’」を算出する。
【0114】
そして、変換部222は、(数7)により、出力信号「VωLX1」と出力信号「VωLY1」とに対して、第1鏡筒20の真の傾き角「-VθL’」分だけアフィン変換で回転演算する。(数7)では、回転演算後の加速度センサ出力をVωX1(X軸回りの振れ)、VωY1(Y軸回りの振れ)とする。VωX1、VωY1については、双眼鏡1のユーザの水平・垂直方向と同じ向きに合わせたことになる(重力方向及び重力方向に直交する方向と、X軸及びY軸とを合わせたことになる)。変換部222は、角速度センサ出力を角速度の検出軸から観察軸に変換することで、振れ状態判定部203及び振れ状態判定部208で構図変更であると判定された場合の見映えの違和感を抑制することができる。
【0115】
【数7】
【0116】
第1目標位置算出部202は、観察軸における第1鏡筒20の振れに基づいて、観察軸における第1補正光学系23の目標位置を示す第3目標位置を算出する。より具体的には、第1目標位置算出部202は、変換部222が出力した観察軸における第1鏡筒20のX軸回りの振れ「VωX1」を取得する。そして、第1目標位置算出部202は、観察軸における第1鏡筒20のX軸回りの振れ「VωX1」に対し、第1目標位置算出部102と同様の処理を実行し、第3目標位置(X軸方向)を算出する。なお、X軸方向の第3目標位置は「LCX」とする。
【0117】
振れ状態判定部203は、観察軸における第1鏡筒20のX軸回りの振れの状態を判定する。より具体的には、振れ状態判定部203は、変換部222が出力した観察軸における第1鏡筒20のX軸回りの振れ「VωX1」を取得する。そして、振れ状態判定部203は、観察軸における第1鏡筒20のX軸回りの振れ「VωX1」に対し、振れ状態判定部103と同様の処理を実行し、パンニング動作等の意図した振れ(X軸回り)が開始されたか(又は、継続しているか)を判定する。
【0118】
第1目標位置算出部207は、観察軸における第1鏡筒20の振れに基づいて、観察軸における第1補正光学系23の目標位置を示す第3目標位置を算出する。より具体的には、第1目標位置算出部207は、変換部222が出力した観察軸における第1鏡筒20のY軸回りの振れ「VωY1」を取得する。そして、第1目標位置算出部207は、観察軸における第1鏡筒20のY軸回りの振れ「VωY1」に対し、第1目標位置算出部107と同様の処理を実行し、第3目標位置(Y軸方向)を算出する。なお、Y軸方向の第3目標位置は「LCY」とする。
【0119】
振れ状態判定部208は、観察軸における第1鏡筒20のY軸回りの振れの状態を判定する。より具体的には、振れ状態判定部208は、変換部222が出力した観察軸における第1鏡筒20のY軸回りの振れ「VωY1」を取得する。そして、振れ状態判定部208は、観察軸における第1鏡筒20のY軸回りの振れ「VωY1」に対し、振れ状態判定部108と同様の処理を実行し、パンニング動作等の意図した振れ(Y軸回り)が開始されたか(又は、継続しているか)を判定する。
【0120】
目標位置変換部223は、第1回転情報と第3目標位置とに基づいて、第1目標位置を算出する。より具体的には、目標位置変換部223は、第1検出部111が出力した加速度センサ出力と、第1検出部112が出力した加速度センサ出力とを取得し、第1鏡筒20の真の傾き角「VθL’」を算出する。そして、目標位置変換部223は、(数8)により、X軸方向の第3目標位置「LCX」と、Y軸方向の第3目標位置「LCY」とを、第1鏡筒20の真の傾き角「VθL’」分だけアフィン変換で回転演算する。(数8)では、回転演算後の第3目標位置、すなわち第1目標位置をLCLX(X軸方向)、LCLY(Y軸方向)とする。
【0121】
【数8】
【0122】
第2目標位置算出部215は、第2回転情報と第3目標位置とに基づいて、第2目標位置を算出する。より具体的には、第2目標位置算出部215は、第2検出部113が出力した加速度センサ出力と、第2検出部114が出力した加速度センサ出力とを取得し、第2鏡筒30の真の傾き角「VθR’」を算出する。そして、第2目標位置算出部215は、(数9)により、X軸方向の第3目標位置「LCX」と、Y軸方向の第3目標位置「LCY」とを、第2鏡筒30の真の傾き角「VθR’」分だけアフィン変換で回転演算する。(数9)では、回転演算後の第2目標位置をLCRX(X軸方向)、LCRY(Y軸方向)とする。
【0123】
【数9】
【0124】
本実施形態では、第2回転情報と第3目標位置とに基づいて、第2目標位置を算出する場合を例に挙げた。第2目標位置は、第1実施形態と同様に、第1目標位置と回転情報とに基づいて算出されてもよい。具体的には、第2目標位置算出部215は、目標位置変換部223が算出した第1目標位置を取得し、第1目標位置と、第2鏡筒30の機軸部40(機軸Ax)回りの第1鏡筒20に対する回転情報とに基づいて、第2目標位置を算出する。
【0125】
図17は、第2実施形態に係る双眼鏡における処理の流れの例を示すフローチャートである。ステップS601において、変換部222は、第1回転情報を用いて、第1鏡筒20の振れを、該振れの検出軸から観察軸に変換する。具体的には、変換部222は、振れ検出部101が出力したX軸回りの振れを示す出力信号と、振れ検出部106が出力したY軸回りの振れを示す出力信号とを取得する。また、変換部222は、符号反転演算子220及び符号反転演算子221を介して、第1検出部111及び第1検出部112の符号が反転された加速度センサ出力を取得し、第1鏡筒20の真の傾き角を算出する。そして、変換部222は、X軸回り及びY軸回りの振れを示す出力信号に対して、第1鏡筒20の真の傾き角分だけアフィン変換で回転演算し、第1鏡筒20の振れについて、振れの検出軸から観察軸に変換する。
【0126】
ステップS602において、第1目標位置算出部202及び第1目標位置算出部207は、観察軸における第1鏡筒20の振れに基づいて、第3目標位置を算出する。具体的には、第1目標位置算出部202は、変換部222が出力した観察軸における第1鏡筒20のX軸回りの振れのうち、所定周波数よりも高い周波数成分をフィルタリングする。このとき、第1目標位置算出部202は、振れ状態判定部203の判定結果に応じて、カットオフ周波数を設定してもよい。例えば、第1目標位置算出部202は、双眼鏡1のユーザが意図したパンニング動作等による構図変更が開始された(又は、継続している)ことを示す判定結果を振れ状態判定部203から受け付けた場合に、カットオフ周波数を所定周波数よりも高く設定する。
【0127】
そして、第1目標位置算出部202は、観察軸における第1鏡筒20のX軸回りの振れから直流成分を除去し、双眼鏡1に加わる振れに対応した観察軸における第1鏡筒20のX軸回りの振れを算出する。続いて、第1目標位置算出部202は、第1補正光学系23の現在の目標位置に基づいて、第1補正光学系23の可動範囲の中心に向かって移動させる向心力をバイアス量として演算する。その後、第1目標位置算出部202は、双眼鏡1に加わる振れに対応した観察軸における第1鏡筒20のX軸回りの振れにバイアス量を与える。そして、第1目標位置算出部202は、バイアス量を与えた振れを積分し、ディメンジョンを速度にして、第1補正光学系23の目標位置の単位に合わせる係数を掛ける。続いて、第1目標位置算出部202は、第1補正光学系23の目標位置について、第1補正光学系23の可動範囲に含まれるように制限し、観察軸における第1補正光学系23の目標位置を示す第3目標位置(X軸方向)を算出する。
【0128】
同様に、第1目標位置算出部207は、変換部222が出力した観察軸における第1鏡筒20のY軸回りの振れのうち、所定周波数よりも高い周波数成分をフィルタリングする。このとき、第1目標位置算出部207は、振れ状態判定部208の判定結果に応じて、カットオフ周波数を設定してもよい。例えば、第1目標位置算出部207は、双眼鏡1のユーザが意図したパンニング動作等による構図変更が開始された(又は、継続している)ことを示す判定結果を振れ状態判定部208から受け付けた場合に、カットオフ周波数を所定周波数よりも高く設定する。
【0129】
そして、第1目標位置算出部207は、観察軸における第1鏡筒20のY軸回りの振れから直流成分を除去し、双眼鏡1に加わる振れに対応した観察軸における第1鏡筒20のY軸回りの振れを算出する。続いて、第1目標位置算出部207は、第1補正光学系23の現在の目標位置に基づいて、第1補正光学系23の可動範囲の中心に向かって移動させる向心力をバイアス量として演算する。その後、第1目標位置算出部207は、双眼鏡1に加わる振れに対応した観察軸における第1鏡筒20のY軸回りの振れにバイアス量を与える。そして、第1目標位置算出部207は、バイアス量を与えた振れを積分し、ディメンジョンを速度にして、第1補正光学系23の目標位置の単位に合わせる係数を掛ける。続いて、第1目標位置算出部207は、第1補正光学系23の目標位置について、第1補正光学系23の可動範囲に含まれるように制限し、観察軸における第1補正光学系23の目標位置を示す第3目標位置(Y軸方向)を算出する。
【0130】
ステップS603において、目標位置変換部223は、第1回転情報と第3目標位置とに基づいて、第1目標位置を算出する。具体的には、目標位置変換部223は、第1検出部111及び第1検出部112が出力した加速度センサ出力から、第1鏡筒20の真の傾き角を算出する。そして、目標位置変換部223は、X軸方向及びY軸方向の第3目標位置を、第1鏡筒20の真の傾き角分だけアフィン変換で回転演算し、X軸方向及びY軸方向の第1目標位置を算出する。
【0131】
ステップS604において、第1駆動量算出部105及び第1駆動量算出部110は、第1目標位置に基づいて、第1補正光学系23を駆動する第1補正機構LOSの駆動量を算出する。なお、ステップS504における処理は、上述したステップS102における処理と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0132】
ステップS605において、第2目標位置算出部215は、第2回転情報と第3目標位置とに基づいて、第2目標位置を算出する。具体的には、第2目標位置算出部215は、第2検出部113及び第2検出部114が出力した加速度センサ出力から、第2鏡筒30の真の傾き角を算出する。そして、第2目標位置算出部215は、X軸方向及びY軸方向の第3目標位置を、第2鏡筒30の真の傾き角分だけアフィン変換で回転演算し、X軸方向及びY軸方向の第2目標位置を算出する。
【0133】
ステップS606において、第2駆動量算出部117及び第2駆動量算出部119は、第2目標位置に基づいて、第2補正光学系33を駆動する第2補正機構ROSの駆動量を算出する。なお、ステップS606における処理は、上述したステップS104における処理と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0134】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態を説明する。本実施形態において、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する場合がある。
【0135】
図18は、第3実施形態に係る回路基板の構成例を示す図である。図18に示すように、回路基板10bは、第1目標位置算出部302と、振れ状態判定部303と、偏差算出部104と、第1駆動量算出部105とを含む。回路基板10bは、第1目標位置算出部307と、振れ状態判定部308と、偏差算出部109と、第1駆動量算出部110とを含む。回路基板10bは、符号反転演算子320と、符号反転演算子321と、第1変換部322と、目標位置変換部323とを含む。回路基板10bは、符号反転演算子326と、符号反転演算子327と、第2変換部328と、平均部329と、平均部330とを含む。回路基板10bは、第2目標位置算出部315と、偏差算出部116と、第2駆動量算出部117と、偏差算出部118と、第2駆動量算出部119とを含む。
【0136】
符号反転演算子320、符号反転演算子321、及び第1変換部322は、それぞれ、上述した符号反転演算子220、符号反転演算子221、及び変換部222における処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0137】
振れ検出部(VωRX)324は、第2鏡筒30におけるX軸回りの角速度センサである。すなわち、双眼鏡1は、第1鏡筒20の振れ検出部101に加えて、第2鏡筒30にも角速度センサを備える。振れ検出部324は、第2鏡筒30におけるX軸回りの振れを検出する。振れ検出部(VωRY)325は、第2鏡筒30におけるY軸回りの角速度センサである。すなわち、双眼鏡1は、第1鏡筒20の振れ検出部106に加えて、第2鏡筒30にも角速度センサを備える。振れ検出部325は、第2鏡筒30におけるY軸回りの振れを検出する。
【0138】
符号反転演算子326は、入力情報の符号を反転する。より具体的には、符号反転演算子326は、第2検出部113が出力した加速度センサ出力を-1倍し、符号を反転する。符号反転演算子327は、入力情報の符号を反転する。より具体的には、符号反転演算子327は、第2検出部114が出力した加速度センサ出力を-1倍し、符号を反転する。
【0139】
第2変換部328は、第2鏡筒30の振れを、該振れの検出軸から観察軸に変換する。より具体的には、第2変換部328は、振れ検出部324が出力したX軸回りの振れを示す出力信号「VωRX1」と、振れ検出部325が出力したY軸回りの振れを示す出力信号「VωRY1」とを取得する。また、第2変換部328は、第2検出部113の符号が反転された加速度センサ出力と、第2検出部114の符号が反転された加速度センサ出力とから、第2鏡筒30の真の傾き角「-VθR’」を算出する。
【0140】
そして、第2変換部328は、(数10)により、出力信号「VωRX1」と出力信号「VωRY1」とに対して、第2鏡筒30の真の傾き角「-VθR’」分だけアフィン変換で回転演算する。(数10)では、回転演算後の加速度センサ出力をVωX2(X軸回りの振れ)、VωY2(Y軸回りの振れ)とする。VωX2、VωY2については、双眼鏡1のユーザの水平・垂直方向と同じ向きに合わせたことになる(重力方向及び重力方向に直交する方向と、X軸及びY軸とを合わせたことになる)。第2変換部328は、角速度センサ出力を角速度の検出軸から観察軸に変換することで、振れ状態判定部303及び振れ状態判定部308で構図変更であると判定された場合の見映えの違和感を抑制することができる。
【0141】
【数10】
【0142】
平均部329は、観察軸における第1鏡筒20の振れと、観察軸における第2鏡筒30の振れとを平均する。より具体的には、平均部329は、第1変換部322が出力した観察軸における第1鏡筒20のX軸回りの角速度センサ出力「VωX1」と、第2変換部328が出力した観察軸における第2鏡筒30のX軸回りの角速度センサ出力「VωX2」とを取得する。そして、平均部329は、(数11)により、観察軸における各鏡筒のX軸回りの角速度センサ出力を平均する。(数11)では、観察軸における各鏡筒のX軸回りの角速度センサ出力の平均結果をVωXとする。平均部329は、角速度センサ出力を平均することで、角速度センサ固有のノイズ成分を除去することができる。従って、双眼鏡1は、より高精度に第1補正光学系23及び第2補正光学系33の目標位置を算出することができる。
【0143】
【数11】
【0144】
平均部330は、観察軸における第1鏡筒20の振れと、観察軸における第2鏡筒30の振れとを平均する。より具体的には、平均部330は、第1変換部322が出力した観察軸における第1鏡筒20のY軸回りの角速度センサ出力「VωY1」と、第2変換部328が出力した観察軸における第2鏡筒30のY軸回りの角速度センサ出力「VωY2」とを取得する。そして、平均部330は、(数12)により、観察軸における各鏡筒のY軸回りの角速度センサ出力を平均する。(数12)では、観察軸における各鏡筒のY軸回りの角速度センサ出力の平均結果をVωYとする。平均部330は、角速度センサ出力を平均することで、角速度センサ固有のノイズ成分を除去することができる。従って、双眼鏡1は、より高精度に第1補正光学系23及び第2補正光学系33の目標位置を算出することができる。
【0145】
【数12】
【0146】
第1目標位置算出部302は、観察軸における第1鏡筒20及び第2鏡筒30の振れの平均値に基づいて、観察軸における第1補正光学系23の目標位置を示す第3目標位置を算出する。より具体的には、第1目標位置算出部302は、平均部329が出力した観察軸における第1鏡筒20の振れと第2鏡筒30の振れとの平均値「VωX」を取得する。そして、第1目標位置算出部302は、観察軸における第1鏡筒20及び第2鏡筒30のX軸回りの振れの平均値「VωX」に対し、第1目標位置算出部107と同様の処理を実行し、第3目標位置(X軸方向)を算出する。なお、X軸方向の第3目標位置は「LCX」とするが、本実施形態に係る第3目標位置は、観察軸における第1鏡筒20及び第2鏡筒30の振れの平均値を用いて算出されるため、上記実施形態で説明した第3目標位置とは値が異なる。
【0147】
振れ状態判定部303は、観察軸における第1鏡筒20のX軸回りの振れの状態を判定する。より具体的には、振れ状態判定部303は、平均部329が出力した観察軸における第1鏡筒20の振れと第2鏡筒30の振れとの平均値「VωX」を取得する。そして、振れ状態判定部303は、観察軸における第1鏡筒20及び第2鏡筒30の振れの平均値「VωX」に対し、振れ状態判定部108と同様の処理を実行し、パンニング動作等の意図した振れ(X軸回り)が開始されたか(又は、継続しているか)を判定する。
【0148】
第1目標位置算出部307は、観察軸における第1鏡筒20及び第2鏡筒30の振れの平均値に基づいて、観察軸における第1補正光学系23の目標位置を示す第3目標位置を算出する。より具体的には、第1目標位置算出部307は、平均部330が出力した観察軸における第1鏡筒20の振れと第2鏡筒30の振れとの平均値「VωY」を取得する。そして、第1目標位置算出部307は、観察軸における第1鏡筒20及び第2鏡筒30のY軸回りの振れの平均値「VωY」に対し、第1目標位置算出部107と同様の処理を実行し、第3目標位置(Y軸方向)を算出する。なお、Y軸方向の第3目標位置は「LCY」とするが、本実施形態に係る第3目標位置は、観察軸における第1鏡筒20及び第2鏡筒30の振れの平均値を用いて算出されるため、上記実施形態で説明した第3目標位置とは値が異なる。
【0149】
振れ状態判定部308は、観察軸における第1鏡筒20のY軸回りの振れの状態を判定する。より具体的には、振れ状態判定部308は、平均部330が出力した観察軸における第1鏡筒20の振れと第2鏡筒30の振れとの平均値「VωY」を取得する。そして、振れ状態判定部308は、観察軸における第1鏡筒20及び第2鏡筒30の振れの平均値「VωY」に対し、振れ状態判定部108と同様の処理を実行し、パンニング動作等の意図した振れ(Y軸回り)が開始されたか(又は、継続しているか)を判定する。
【0150】
目標位置変換部323は、第1回転情報と第3目標位置とに基づいて、第1目標位置を算出する。より具体的には、目標位置変換部323は、第1検出部111が出力した加速度センサ出力と、第1検出部112が出力した加速度センサ出力とを取得し、第1鏡筒20の真の傾き角「VθL’」を算出する。そして、目標位置変換部323は、X軸方向の第3目標位置「LCX」と、Y軸方向の第3目標位置「LCY」とを、第1鏡筒20の真の傾き角「VθL’」分だけアフィン変換で回転演算する。回転演算後の第3目標位置、すなわち第1目標位置をLCLX(X軸方向)、LCLY(Y軸方向)とする。
【0151】
第2目標位置算出部315は、第2回転情報と第3目標位置とに基づいて、第2目標位置を算出する。より具体的には、第2目標位置算出部315は、第2検出部113が出力した加速度センサ出力と、第2検出部114が出力した加速度センサ出力とを取得し、第2鏡筒30の真の傾き角「VθR’」を算出する。そして、第2目標位置算出部315は、X軸方向の第3目標位置「LCX」と、Y軸方向の第3目標位置「LCY」とを、第2鏡筒30の真の傾き角「VθR’」分だけアフィン変換で回転演算する。回転演算後の第2目標位置をLCRX(X軸方向)、LCRY(Y軸方向)とする。なお、本実施形態では、第1鏡筒20の第3目標位置が観察軸における第1鏡筒20及び第2鏡筒30の振れの平均値を用いて算出されるため、第1鏡筒20の第1目標位置及び第2鏡筒30の第2目標位置は、上記実施形態で説明した第1目標位置及び第2目標位置とは値がそれぞれ異なる。
【0152】
本実施形態では、第2回転情報と第3目標位置とに基づいて、第2目標位置を算出する場合を例に挙げた。第2目標位置は、第1実施形態と同様に、第1目標位置と回転情報とに基づいて算出されてもよい。具体的には、第2目標位置算出部315は、目標位置変換部323が算出した第1目標位置を取得し、第1目標位置と、第2鏡筒30の機軸部40(機軸Ax)回りの第1鏡筒20に対する回転情報とに基づいて、第2目標位置を算出する。
【0153】
図19は、第3実施形態に係る双眼鏡における処理の流れの例を示すフローチャートである。ステップS701において、第1変換部322は、第1回転情報を用いて、第1鏡筒20の振れを、該振れの検出軸から観察軸に変換する。具体的には、第1変換部322は、振れ検出部101が出力したX軸回りの振れを示す出力信号と、振れ検出部106が出力したY軸回りの振れを示す出力信号とを取得する。また、第1変換部322は、符号反転演算子320及び符号反転演算子321を介して、第1検出部111及び第1検出部112の符号が反転された加速度センサ出力を取得し、第1鏡筒20の真の傾き角を算出する。そして、第1変換部322は、X軸回り及びY軸回りの振れを示す出力信号に対して、第1鏡筒20の真の傾き角分だけアフィン変換で回転演算し、第1鏡筒20の振れについて、振れの検出軸から観察軸に変換する。
【0154】
ステップS702において、第2変換部328は、第2回転情報を用いて、第2鏡筒30の振れを、該振れの検出軸から観察軸に変換する。具体的には、第2変換部328は、振れ検出部324が出力したX軸回りの振れを示す出力信号と、振れ検出部325が出力したY軸回りの振れを示す出力信号とを取得する。また、第2変換部328は、符号反転演算子326及び符号反転演算子327を介して、振れ検出部324及び振れ検出部325の符号が反転された加速度センサ出力を取得し、第2鏡筒30の真の傾き角を算出する。そして、第2変換部328は、X軸回り及びY軸回りの振れを示す出力信号に対して、第2鏡筒30の真の傾き角分だけアフィン変換で回転演算し、第2鏡筒30の振れについて、振れの検出軸から観察軸に変換する。
【0155】
ステップS703において、平均部329及び平均部330は、観察軸における第1鏡筒20の振れと、観察軸における第2鏡筒30の振れとを平均する。具体的には、平均部329は、第1変換部322が出力した観察軸における第1鏡筒20のX軸回りの振れと、第2変換部328が出力した観察軸における第2鏡筒30のX軸回りの振れとを平均する。また、平均部330は、第1変換部322が出力した観察軸における第1鏡筒20のY軸回りの振れと、第2変換部328が出力した観察軸における第2鏡筒30のY軸回りの振れとを平均する。
【0156】
ステップS704において、第1目標位置算出部302及び第1目標位置算出部307は、平均部329及び平均部330が平均した振れに基づいて、第3目標位置を算出する。具体的には、第1目標位置算出部302は、平均部329が出力した観察軸における第1鏡筒20及び第2鏡筒30のX軸回りの振れの平均値のうち、所定周波数よりも高い周波数成分をフィルタリングする。このとき、第1目標位置算出部302は、振れ状態判定部303の判定結果に応じて、カットオフ周波数を設定してもよい。例えば、第1目標位置算出部302は、双眼鏡1のユーザが意図したパンニング動作等による構図変更が開始された(又は、継続している)ことを示す判定結果を振れ状態判定部303から受け付けた場合に、カットオフ周波数を所定周波数よりも高く設定する。
【0157】
そして、第1目標位置算出部302は、観察軸における第1鏡筒20及び第2鏡筒30のX軸回りの振れの平均値から直流成分を除去し、双眼鏡1に加わる振れに対応した観察軸における第1鏡筒20のX軸回りの振れを算出する。続いて、第1目標位置算出部302は、第1補正光学系23の現在の目標位置に基づいて、第1補正光学系23の可動範囲の中心に向かって移動させる向心力をバイアス量として演算する。その後、第1目標位置算出部302は、双眼鏡1に加わる振れに対応した観察軸における第1鏡筒20のX軸回りの振れにバイアス量を与える。そして、第1目標位置算出部302は、バイアス量を与えた振れを積分し、ディメンジョンを速度にして、第1補正光学系23の目標位置の単位に合わせる係数を掛ける。続いて、第1目標位置算出部302は、第1補正光学系23の目標位置について、第1補正光学系23の可動範囲に含まれるように制限し、観察軸における第1補正光学系23の目標位置を示す第3目標位置(X軸方向)を算出する。
【0158】
同様に、第1目標位置算出部307は、平均部330が出力した観察軸における第1鏡筒20及び第2鏡筒30のY軸回りの振れの平均値のうち、所定周波数よりも高い周波数成分をフィルタリングする。このとき、第1目標位置算出部307は、振れ状態判定部308の判定結果に応じて、カットオフ周波数を設定してもよい。例えば、第1目標位置算出部307は、双眼鏡1のユーザが意図したパンニング動作等による構図変更が開始された(又は、継続している)ことを示す判定結果を振れ状態判定部308から受け付けた場合に、カットオフ周波数を所定周波数よりも高く設定する。
【0159】
そして、第1目標位置算出部307は、観察軸における第1鏡筒20及び第2鏡筒30のY軸回りの振れの平均値から直流成分を除去し、双眼鏡1に加わる振れに対応した観察軸における第1鏡筒20のY軸回りの振れを算出する。続いて、第1目標位置算出部307は、第1補正光学系23の現在の目標位置に基づいて、第1補正光学系23の可動範囲の中心に向かって移動させる向心力をバイアス量として演算する。その後、第1目標位置算出部307は、双眼鏡1に加わる振れに対応した観察軸における第1鏡筒20のY軸回りの振れにバイアス量を与える。そして、第1目標位置算出部307は、バイアス量を与えた振れを積分し、ディメンジョンを速度にして、第1補正光学系23の目標位置の単位に合わせる係数を掛ける。続いて、第1目標位置算出部307は、第1補正光学系23の目標位置について、第1補正光学系23の可動範囲に含まれるように制限し、観察軸における第1補正光学系23の目標位置を示す第3目標位置(Y軸方向)を算出する。
【0160】
ステップS705において、目標位置変換部323は、第1回転情報と第3目標位置とに基づいて、第1目標位置を算出する。具体的には、目標位置変換部323は、第1検出部111及び第1検出部112が出力した加速度センサ出力から、第1鏡筒20の真の傾き角を算出する。そして、目標位置変換部323は、X軸方向及びY軸方向の第3目標位置を、第1鏡筒20の真の傾き角分だけアフィン変換で回転演算し、X軸方向及びY軸方向の第1目標位置を算出する。
【0161】
ステップS706において、第1駆動量算出部105及び第1駆動量算出部110は、第1目標位置に基づいて、第1補正光学系23を駆動する第1補正機構LOSの駆動量を算出する。なお、ステップS706における処理は、上述したステップS102における処理と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0162】
ステップS707において、第2目標位置算出部315は、第2回転情報と第3目標位置とに基づいて、第2目標位置を算出する。具体的には、第2目標位置算出部315は、第2検出部113及び第2検出部114が出力した加速度センサ出力から、第2鏡筒30の真の傾き角を算出する。そして、第2目標位置算出部315は、X軸方向及びY軸方向の第3目標位置を、第2鏡筒30の真の傾き角分だけアフィン変換で回転演算し、X軸方向及びY軸方向の第2目標位置を算出する。
【0163】
ステップS708において、第2駆動量算出部117及び第2駆動量算出部119は、第2目標位置に基づいて、第2補正光学系33を駆動する第2補正機構ROSの駆動量を算出する。なお、ステップS708における処理は、上述したステップS104における処理と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0164】
なお、技術範囲は、上述した実施形態等で説明した態様に限定されるものではない。上述した実施形態等で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述した実施形態等で説明した要件は、適宜、組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述した実施形態等で引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0165】
上記実施形態では、第1検出部25及び第2検出部34等の傾斜センサ、加速度センサにより各鏡筒の傾き角を検出する場合を説明した。傾き角の検出については、第3検出部として、機軸部40回りの回転量を検出するロータリーエンコーダ又はポテンショメータを使用してもよい。すなわち、第2目標位置算出部115(215、315)は、第3検出部の検出量に基づいて、第1回転情報、第2回転情報、及び回転情報の少なくとも1つを算出する。第3検出部を使用する場合は、機軸Axの折り角が最小の場合と最大の場合とにおける検出量を予めメモリに保存しておく。
【符号の説明】
【0166】
1・・・双眼鏡、10・・・回路基板、20・・・第1鏡筒、23・・・第1補正光学系、24・・・振れ検出部、25・・・第1検出部、30・・・第2鏡筒、33・・・第2補正光学系、34・・・第2検出部、102・・・第1目標位置算出部、103・・・振れ状態判定部、104・・・偏差算出部、105・・・第1駆動量算出部、107・・・第1目標位置算出部、108・・・振れ状態判定部、109・・・偏差算出部、110・・・第1駆動量算出部、115・・・第2目標位置算出部、116・・・偏差算出部、117・・・第2駆動量算出部、118・・・偏差算出部、119・・・第2駆動量算出部
図1
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