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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20231006BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/14 607
B41J2/14 501
B41J2/01 301
B41J2/01 305
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021553740
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2020040944
(87)【国際公開番号】W WO2021085632
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2019197862
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 英
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 宏行
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-206945(JP,A)
【文献】特開2019-177638(JP,A)
【文献】特開2018-187846(JP,A)
【文献】特開2010-188547(JP,A)
【文献】特開平02-112946(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0275794(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および前記第1面の反対側に位置する第2面を有する流路部材と、
前記第1面上に位置する加圧部と、
前記第2面に位置する複数の吐出孔と、
前記加圧部上に位置する一端部が前記加圧部に電気的に接続されているフレキシブル基板と、
前記一端部を覆うカバー部材と、
前記カバー部材上に位置するヒータと
を備える液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1面との間に前記加圧部、前記一端部、前記カバー部材および前記ヒータを収容する収容部と、前記収容部に連通するスリットとを有し、前記流路部材に繋がる供給部材と、
前記ヒータに電気的に接続されているヒータ配線と
を備え、
前記フレキシブル基板および前記ヒータ配線は、前記スリットから前記供給部材の外部に引き出されている
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記フレキシブル基板は、前記ヒータ配線よりも外側に位置するように前記スリットから引き出されている
請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記供給部材上に位置するヒータをさらに備える
請求項2または3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記カバー部材は、前記カバー部材の長さ方向の端部で前記流路部材と接触しており、
前記供給部材および前記流路部材がそれぞれ有する流路は、前記流路部材の長さ方向の端部で接続されている
請求項2~4のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記供給部材および前記流路部材がそれぞれ有する流路が接続される位置よりも内側で前記流路部材と接触している
請求項2~5のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記ヒータと前記供給部材との間に位置する熱伝導シートをさらに備える
請求項2~6のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記カバー部材は、前記フレキシブル基板に固定されている
請求項1~7のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記カバー部材は、前記流路部材に固定されている
請求項1~8のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
第1面および前記第1面の反対側に位置する第2面を有する流路部材と、
前記第1面上に位置する加圧部と、
前記第2面に位置する複数の吐出孔と、
前記流路部材の上に位置し、前記流路部材に繋がる分岐流路部材と、
前記分岐流路部材上に位置するヒータと、
前記分岐流路部材および前記ヒータの上に位置し、前記分岐流路部材に繋がり、第1方向に長い供給部材と
を備え
前記供給部材は、内部に供給流路を有し、
前記供給流路は、前記供給部材の前記第1方向の一端部から他端部にわたって形成されており、
前記ヒータは、前記供給流路に対向す液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記供給流路のうち、前記ヒータに対向する部位の厚みが略均一であ
請求項10に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記供給流前記第1方向の両端部から前記分岐流路部材に液体を供給する
請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに対して記録媒体を搬送する搬送部と
を備える記録装置。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッドと、
記録媒体にコーティング剤を塗布する塗布機と
を備える記録装置。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1つに記載の液体吐出ヘッドと、
記録媒体を乾燥させる乾燥機と
を備える記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、液体吐出ヘッドおよび記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置として、インクジェット記録方式を利用したインクジェットプリンタやインクジェットプロッタが知られている。このようなインクジェット方式の印刷装置には、液体を吐出させるための液体吐出ヘッドが搭載されている。
【0003】
かかる液体吐出ヘッドには、吐出孔から吐出される液体の粘性を調整するため、ヘッド本体を介して液体を昇温するヒータが設けられている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-223801号公報
【発明の概要】
【0005】
実施形態の一態様に係る液体吐出ヘッドは、流路部材と、加圧部と、複数の吐出孔と、フレキシブル基板と、カバー部材と、ヒータとを備える。流路部材は、第1面および前記第1面の反対側に位置する第2面を有する。加圧部は、前記第1面上に位置する。複数の吐出孔は、前記第2面に位置する。フレキシブル基板は、前記加圧部上に位置する一端部が前記加圧部に電気的に接続されている。カバー部材は、前記一端部を覆う。ヒータは、前記カバー部材上に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係る記録装置の説明図(その1)である。
図2図2は、実施形態に係る記録装置の説明図(その2)である。
図3図3は、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの要部の構成を示す分解斜視図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの要部の構成を示す斜視図である。
図5図5は、図4に示す液体吐出ヘッドの拡大平面図である。
図6図6は、図5に示す領域Bの拡大図である。
図7図7は、図5に示すC-C線に沿った断面図である。
図8図8は、図4に示すA-A線に沿った拡大断面図である。
図9A図9Aは、ヘッド本体におけるカバー部材の配置を示す説明図である。
図9B図9Bは、ヘッド本体におけるカバー部材の配置を示す説明図である。
図10図10は、第1変形例に係る液体吐出ヘッドの要部の構成を示す断面図である。
図11図11は、第2変形例に係る液体吐出ヘッドの要部の構成を示す断面図である。
図12図12は、変形例に係るカバー部材の配置を示す説明図である。
図13図13は、第2の実施形態に係る液体吐出ヘッドの要部の構成を示す分解斜視図である。
図14図14は、第2の実施形態に係る液体吐出ヘッドの要部の構成を示す斜視図である。
図15図15は、図14に示すD-D線に沿った断面図である。
図16図16は、図14に示すE-E線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
従来の液体吐出ヘッドでは、ヒータが吐出孔から離れて位置すると、ヒータからの熱を効率よく伝達することができず、液体の吐出状態にばらつきが生じるおそれがある。
【0008】
本願の開示する液体吐出ヘッドおよび記録装置によれば、ヒータからの熱を効率よく伝達することができる。
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する液体吐出ヘッドおよび記録装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す各実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
<プリンタの構成>
まず、図1および図2を参照して実施形態に係る記録装置の一例であるプリンタ1の概要について説明する。図1および図2は、実施形態に係るプリンタ1の説明図である。具体的には、図1は、プリンタ1の概略的な側面図であり、図2は、プリンタ1の概略的な平面図である。実施形態に係るプリンタ1は、たとえば、カラーインクジェットプリンタである。
【0011】
図1に示すように、プリンタ1は、給紙ローラ2と、ガイドローラ3と、塗布機4と、ヘッドケース5と、複数の搬送ローラ6と、複数のフレーム7と、複数の液体吐出ヘッド8と、搬送ローラ9と、乾燥機10と、搬送ローラ11と、センサ部12と、回収ローラ13とを備える。搬送ローラ6は、搬送部の一例である。
【0012】
さらに、プリンタ1は、給紙ローラ2、ガイドローラ3、塗布機4、ヘッドケース5、複数の搬送ローラ6、複数のフレーム7、複数の液体吐出ヘッド8、搬送ローラ9、乾燥機10、搬送ローラ11、センサ部12および回収ローラ13を制御する制御部14を備える。
【0013】
プリンタ1は、印刷用紙Pに液滴を着弾させることにより、印刷用紙Pに画像や文字の記録を行う。印刷用紙Pは、記録媒体の一例である。印刷用紙Pは、使用前において給紙ローラ2に巻かれた状態になっている。そして、プリンタ1は、印刷用紙Pを、給紙ローラ2からガイドローラ3および塗布機4を介してヘッドケース5の内部に搬送する。
【0014】
塗布機4は、コーティング剤を印刷用紙Pに一様に塗布する。これにより、印刷用紙Pに表面処理を施すことができることから、プリンタ1の印刷品質を向上させることができる。
【0015】
ヘッドケース5は、複数の搬送ローラ6と、複数のフレーム7と、複数の液体吐出ヘッド8とを収容する。ヘッドケース5の内部には、印刷用紙Pが出入りする部分などの一部において外部と繋がっている他は、外部と隔離された空間が形成されている。
【0016】
ヘッドケース5の内部空間は、必要に応じて、温度、湿度、および気圧などの制御因子のうち、少なくとも1つが制御部14によって制御される。搬送ローラ6は、ヘッドケース5の内部で印刷用紙Pを液体吐出ヘッド8の近傍に搬送する。
【0017】
フレーム7は、矩形状の平板であり、搬送ローラ6で搬送される印刷用紙Pの上方に近接して位置している。また、図2に示すように、フレーム7は、長手方向が印刷用紙Pの搬送方向に直交するように位置している。そして、ヘッドケース5の内部には、複数(たとえば、4つ)のフレーム7が、印刷用紙Pの搬送方向に沿って位置している。
【0018】
液体吐出ヘッド8には、図示しない液体タンクから液体、たとえば、インクが供給される。液体吐出ヘッド8は、液体タンクから供給される液体を吐出する。
【0019】
制御部14は、画像や文字などのデータに基づいて液体吐出ヘッド8を制御し、印刷用紙Pに向けて液体を吐出させる。液体吐出ヘッド8と印刷用紙Pとの間の距離は、たとえば、0.5~20mm程度である。
【0020】
液体吐出ヘッド8は、フレーム7に固定されている。液体吐出ヘッド8は、長手方向が印刷用紙Pの搬送方向に直交するように位置している。
【0021】
すなわち、実施形態に係るプリンタ1は、プリンタ1の内部に液体吐出ヘッド8が固定されている、いわゆるラインプリンタである。なお、実施形態に係るプリンタ1は、ラインプリンタに限られず、いわゆるシリアルプリンタであってもよい。
【0022】
シリアルプリンタとは、液体吐出ヘッド8を、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向、たとえば、略直交する方向に往復させるなどして移動させながら記録する動作と、印刷用紙Pの搬送とを交互に行う方式のプリンタである。
【0023】
図2に示すように、1つのフレーム7に複数(たとえば、5つ)の液体吐出ヘッド8が固定されている。図2では、印刷用紙Pの搬送方向の前方に3つ、後方に2つの液体吐出ヘッド8が位置している例を示しており、印刷用紙Pの搬送方向において、それぞれの液体吐出ヘッド8の中心が重ならないように液体吐出ヘッド8が位置している。
【0024】
そして、1つのフレーム7に位置する複数の液体吐出ヘッド8によって、ヘッド群8Aが構成されている。4つのヘッド群8Aは、印刷用紙Pの搬送方向に沿って位置している。同じヘッド群8Aに属する液体吐出ヘッド8には、同じ色のインクが供給される。これにより、プリンタ1は、4つのヘッド群8Aを用いて4色のインクによる印刷を行うことができる。
【0025】
各ヘッド群8Aから吐出されるインクの色は、たとえば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。制御部14は、各ヘッド群8Aを制御して複数色のインクを印刷用紙Pに吐出することにより、印刷用紙Pにカラー画像を印刷することができる。
【0026】
なお、印刷用紙Pの表面処理をするために、液体吐出ヘッド8からコーティング剤を印刷用紙Pに吐出してもよい。
【0027】
また、1つのヘッド群8Aに含まれる液体吐出ヘッド8の個数や、プリンタ1に搭載されているヘッド群8Aの個数は、印刷する対象や印刷条件に応じて適宜変更可能である。たとえば、印刷用紙Pに印刷する色が単色で、かつ、1つの液体吐出ヘッド8で印刷可能な範囲を印刷するのであれば、プリンタ1に搭載されている液体吐出ヘッド8の個数は1つでもよい。
【0028】
ヘッドケース5の内部で印刷処理された印刷用紙Pは、搬送ローラ9によってヘッドケース5の外部に搬送され、乾燥機10の内部を通る。乾燥機10は、印刷処理された印刷用紙Pを乾燥する。乾燥機10で乾燥された印刷用紙Pは、搬送ローラ11で搬送されて、回収ローラ13で回収される。
【0029】
プリンタ1では、乾燥機10で印刷用紙Pを乾燥することにより、回収ローラ13において、重なって巻き取られる印刷用紙P同士が接着したり、未乾燥の液体が擦れたりすることを抑制することができる。
【0030】
センサ部12は、位置センサや速度センサ、温度センサなどにより構成されている。制御部14は、センサ部12からの情報に基づいて、プリンタ1の各部における状態を判断し、プリンタ1の各部を制御することができる。
【0031】
ここまで説明したプリンタ1では、印刷対象(すなわち、記録媒体)として印刷用紙Pを用いた場合について示したが、プリンタ1における印刷対象は印刷用紙Pに限られず、ロール状の布などを印刷対象としてもよい。
【0032】
また、プリンタ1は、印刷用紙Pを直接搬送する代わりに、搬送ベルト上に載せて搬送するものであってもよい。搬送ベルトを用いることで、プリンタ1は、枚葉紙や裁断された布、木材、タイルなどを印刷対象とすることができる。
【0033】
また、プリンタ1は、液体吐出ヘッド8から導電性の粒子を含む液体を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。また、プリンタ1は、液体吐出ヘッド8から反応容器などに向けて所定量の液体の化学薬剤や化学薬剤を含んだ液体を吐出させて、化学薬品を作製してもよい。
【0034】
また、プリンタ1は、液体吐出ヘッド8をクリーニングするクリーニング部を備えていてもよい。クリーニング部は、たとえば、ワイピング処理やキャッピング処理によって液体吐出ヘッド8の洗浄を行う。
【0035】
ワイピング処理とは、たとえば、柔軟性のあるワイパーで、液体が吐出される部位の面を払拭することで、液体吐出ヘッド8に付着していた液体を取り除く処理である。
【0036】
また、キャッピング処理は、たとえば、次のように実施する。まず、液体を吐出される部位、たとえば、流路部材21の第2面21b(図7参照)を覆うようにキャップを被せる(これをキャッピングという)。これにより、第2面21bとキャップとの間に、略密閉された空間が形成される。
【0037】
次に、このような密閉された空間で液体の吐出を繰り返す。これにより、吐出孔163(図7参照)に詰まっていた、標準状態よりも粘度が高い液体や異物などを取り除くことができる。
【0038】
[第1の実施形態]
<液体吐出ヘッドの構成>
次に、図3図4を参照して第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド8の構成について説明する。図3は、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド8の概略構成を示す分解斜視図である。図4は、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド8の要部の構成を示す斜視図である。
【0039】
液体吐出ヘッド8は、ヘッド本体20と、配線部40と、カバー部材50と、ヒータ60とを備える。ヘッド本体20は、流路部材21と、圧電アクチュエータ基板22と、リザーバ70とを備える。また、配線部40は、フレキシブル基板41,42と、駆動IC43とを備える。
【0040】
なお、説明を分かりやすくするために、図3図4には、鉛直下向きを正方向とし、鉛直上向きを負方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。また、以下の説明では、便宜的に、液体吐出ヘッド8においてヘッド本体20の流路部材21が設けられる方向、すなわち、Z軸正方向側を「下」と呼称し、流路部材21に対してリザーバ70が設けられる方向、すなわち、Z軸負方向側を「上」と呼称する場合がある。また、図3図4では、各部材の形状を簡略化して示している場合がある。
【0041】
流路部材21は、略平板形状であり、1つの主面である第1面21a(図7参照)と、第1面21aの反対側に位置する第2面21b(図7参照)とを有している。第1面21aは、開口161a(図5参照)を有し、リザーバ70から開口161aを介して流路部材21の内部に液体が供給される。リザーバ70は、供給部材の一例である。
【0042】
第2面21bには、印刷用紙Pに液体を吐出する複数の吐出孔163(図5参照)が位置している。そして、流路部材21の内部には、第1面21aから第2面21bに液体を流す流路が形成されている。
【0043】
圧電アクチュエータ基板22は、流路部材21の第1面21a上に位置している。圧電アクチュエータ基板22は、複数の変位素子170(図7参照)を有している。変位素子170は、加圧部の一例である。変位素子170は、流路部材21の第1面21a上に位置している。なお、圧電アクチュエータ基板22については、図7を用いて後述する。
【0044】
圧電アクチュエータ基板22には、フレキシブル基板41,42が電気的に接続されている。フレキシブル基板41,42は、外部から送られた所定の信号をヘッド本体20に伝達する機能を有している。図3に示すように、実施形態に係る液体吐出ヘッド8は、2つのフレキシブル基板41,42を有している。なお、図4では、フレキシブル基板41,42の図示を省略している。
【0045】
フレキシブル基板41,42の一端部41a,42a(図8参照)は、ヘッド本体20の圧電アクチュエータ基板22上に位置している。一端部41a,42aは、圧電アクチュエータ基板22と電気的に接続されている。フレキシブル基板41,42の他端部は、リザーバ70のスリット70bを挿通するように上方に引き出されており(図8参照)、図示しない配線基板と電気的に接続されている。
【0046】
駆動IC43は、フレキシブル基板41,42にそれぞれ搭載されている。駆動IC43は、圧電アクチュエータ基板22における各変位素子170の駆動を制御する。
【0047】
図3に示すように、駆動IC43は、フレキシブル基板41,42上にそれぞれ2つ設けられている。なお、フレキシブル基板41,42にそれぞれ設けられる駆動IC43の数は2つに限られない。
【0048】
カバー部材50は、フレキシブル基板41,42上に位置している。カバー部材50は、平面視で矩形状を有しており、圧電アクチュエータ基板22上に位置するフレキシブル基板41,42の一端部41a,42aを覆っている。カバー部材50は、一端部41a,42aを覆うことで、圧電アクチュエータ基板22から離れる方向への一端部41a,42aの移動を規制する。これにより、実施形態では、圧電アクチュエータ基板22とフレキシブル基板41,42とが剥離する可能性を低減することができる。カバー部材50は、一端部41a,42aを圧電アクチュエータ基板22に向けて上から押圧するように位置してもよい。また、カバー部材50は、フレキシブル基板41,42とは離れて位置してもよい。
【0049】
カバー部材50は、例えば、金属製の板状部材により作製することができる。また、カバー部材50は、樹脂により形成してもよく、セラミックス等の無機材料により形成してもよい。なお、カバー部材50の配置例については後述する。
【0050】
ヒータ60は、カバー部材50上に位置しており、ヘッド本体20を流れる液体を所定の温度に近づけるために設けられている。ヒータ60とカバー部材50とは、図示しない接着剤や両面テープなどで接着してもよい。
【0051】
ヒータ60としては、フィルムヒータを用いると、厚み方向の大きさを低減することができる。また、図示していないが、ヒータ60は、通電により発熱する抵抗配線を内部に有している。ヒータ60の抵抗配線は、ヒータ配線61と電気的に接続されている。実施形態に係る液体吐出ヘッド8では、カバー部材50の形状に対応する1つのヒータ60を位置させたが、これに限らず、複数のヒータ60をカバー部材50上に位置させてもよい。
【0052】
ヒータ配線61は、リザーバ70のスリット70bを挿通するように上方に引き出されており、ヒータ配線61の上端部に位置するコネクタを介して、ヒータ60と外部とを電気的に接続することができる。実施形態に係る液体吐出ヘッド8では、ヒータ配線61は、スリット70bの長さ方向(Y軸方向)の端部に位置するが、これに限らず、中央部分に位置させてもよい。また、フレキシブル基板41,42が位置するスリット70bの両方に位置させてもよい。
【0053】
また、かかるヒータ60上に、1または複数のサーミスタ65(図8参照)を設けてもよい。かかるサーミスタ65は、ヘッド本体20やヒータ60の温度を検知する機能を有しており、検知された温度に応じてヒータ60に対する通電が制御される。
【0054】
供給部材としてのリザーバ70は、ヘッド本体20の反対面側に位置し、圧電アクチュエータ基板22以外の第1面21aに接している。リザーバ70は、内部に流路を有しており、外部から開口70aを介して液体が供給される。リザーバ70は、流路部材21に液体を供給する機能、および供給される液体を貯留する機能を有している。
【0055】
なお、液体吐出ヘッド8は、図3図4に示した部材以外の部材、例えば、配線部40を収容する筐体等をさらに含んでもよい。
【0056】
<ヘッド本体の構成>
次に、図5図7を参照して第1の実施形態に係るヘッド本体20の構成について説明する。図5は、第1の実施形態に係るヘッド本体20の拡大平面図であり、図の右側領域が透過した領域を示している。図6は、図5に示す領域Bの拡大図である。図7は、図5に示すC-C線に沿った断面図である。
【0057】
図5に示すように、ヘッド本体20は、流路部材21と圧電アクチュエータ基板22とを有している。流路部材21は、供給マニホールド161と、複数の加圧室162と、複数の吐出孔163とを有している。
【0058】
複数の加圧室162は、供給マニホールド161に繋がっている。複数の吐出孔163は、複数の加圧室162にそれぞれ繋がっている。
【0059】
加圧室162は、流路部材21の第1面21a(図7参照)に開口している。また、流路部材21の第1面21aは、供給マニホールド161と繋がる開口161aを有している。そして、リザーバ70(図3参照)から、開口70aを介して流路部材21の内部に液体が供給される。
【0060】
図5に示す例において、ヘッド本体20は、流路部材21の内部に4つの供給マニホールド161を有している。供給マニホールド161は、流路部材21の長手方向に沿って延びる細長い形状を有しており、その両端において、流路部材21の第1面21aに供給マニホールド161の開口161aが形成されている。
【0061】
流路部材21には、複数の加圧室162が2次元的に広がって形成されている。加圧室162は、角部にアールが施されたほぼ菱形の平面形状を有する中空の領域である。加圧室162は、流路部材21の第1面21aに開口しており、第1面21aに圧電アクチュエータ基板22が接合されることによって閉塞される。
【0062】
加圧室162は、長手方向に配列された加圧室行を構成する。加圧室行の加圧室162は、近隣する2行の加圧室行の間において千鳥状に配置されている。1つの供給マニホールド161に繋がっている2行の加圧室行によって、1つの加圧室群が構成されている。図5に示す例では、流路部材21が4つの加圧室群を有している。
【0063】
また、各加圧室群内における加圧室162の相対的な配置は同じになっており、各加圧室群は長手方向にわずかにずれて位置している。
【0064】
吐出孔163は、流路部材21のうち供給マニホールド161と対向する領域を避けた位置に配置されている。すなわち、流路部材21を第1面21a側から透過視した場合に、吐出孔163は、供給マニホールド161と重なっていない。
【0065】
さらに、平面視して、吐出孔163は、圧電アクチュエータ基板22の搭載領域に収まるように位置している。このような吐出孔163は、1つの群として圧電アクチュエータ基板22と略同一の大きさおよび形状の領域を占有している。
【0066】
そして、対応する圧電アクチュエータ基板22の加圧部である変位素子170(図7参照)を変位させることにより、吐出孔163から液滴が吐出される。
【0067】
図7に示すように、流路部材21は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。これらのプレートは、流路部材21の第1面21a側から順に、キャビティプレート21A、ベースプレート21B、アパーチャ(しぼり)プレート21C、サプライプレート21D、マニホールドプレート21E,21F,21G、カバープレート21Hおよびノズルプレート21Iが位置している。
【0068】
流路部材21を構成するプレートには、多数の孔が形成されている。各プレートの厚さは、10μm~300μm程度である。これにより、孔の形成精度を高くすることができる。プレートは、これらの孔が互いに連通して個別流路164および供給マニホールド161を構成するように、位置合わせして積層されている。
【0069】
流路部材21において、供給マニホールド161と吐出孔163との間は、個別流路164で繋がっている。供給マニホールド161は、流路部材21の内部の第2面21b側に位置しており、吐出孔163は、流路部材21の第2面21bに位置している。
【0070】
個別流路164は、加圧室162と、個別供給流路165とを有している。加圧室162は、流路部材21の第1面21aに位置しており、個別供給流路165は、供給マニホールド161と加圧室162とを繋ぐ流路である。
【0071】
また、個別供給流路165は、他の部分よりも幅の狭いしぼり166を含んでいる。しぼり166は、個別供給流路165の他の部分よりも幅が狭いため、流路抵抗が高い。このように、しぼり166の流路抵抗が高いとき、加圧室162に生じた圧力は、供給マニホールド161に逃げにくい。
【0072】
圧電アクチュエータ基板22は、圧電セラミック層22A,22Bと、共通電極171と、個別電極172と、接続電極173と、ダミー接続電極174と、表面電極175(図5参照)とを含んでいる。
【0073】
圧電アクチュエータ基板22は、圧電セラミック層22B、共通電極171、圧電セラミック層22Aおよび個別電極172がこの順に積層されている。
【0074】
圧電セラミック層22A,22Bは、それぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電セラミック層22A,22Bのいずれの層も複数の加圧室162を跨ぐように延在している。圧電セラミック層22A,22Bは、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料を用いることができる。
【0075】
共通電極171は、圧電セラミック層22Aおよび圧電セラミック層22Bの間の領域に面方向の略全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極171は、圧電アクチュエータ基板22に対向する領域内の全ての加圧室162と重なっている。共通電極171の厚さは、2μm程度である。共通電極171は、たとえば、Ag-Pd系などの金属材料を用いることができる。
【0076】
個別電極172は、個別電極本体172aと、引出電極172bとを含んでいる。個別電極本体172aは、圧電セラミック層22B上のうち加圧室162と対向する領域に位置している。個別電極本体172aは、加圧室162より一回り小さく、加圧室162と略相似な形状である。
【0077】
引出電極172bは、個別電極本体172aから引き出されている。引出電極172bの一端における加圧室162と対向する領域外に引き出された部分には、接続電極173が位置している。個別電極172は、たとえば、Au系などの金属材料を用いることができる。
【0078】
接続電極173は、引出電極172b上に位置し、厚さが15μm程度で凸状である。また、接続電極173は、フレキシブル基板41,42(図3参照)に設けられた電極と電気的に接合されている。接続電極173は、たとえば、ガラスフリットを含む銀-パラジウムを用いることができる。
【0079】
ダミー接続電極174は、圧電セラミック層22A上に位置しており、個別電極172などの各種電極と重ならないように位置している。ダミー接続電極174は、圧電アクチュエータ基板22とフレキシブル基板41,42とを接続し、接続強度を高めている。
【0080】
また、ダミー接続電極174は、圧電アクチュエータ基板22と、圧電アクチュエータ基板22との接触位置の分布を均一化し、電気的な接続を安定させる。ダミー接続電極174は、接続電極173と同等の材料、同等の工程により形成されるとよい。
【0081】
表面電極175は、圧電セラミック層22A上において、個別電極172を避ける位置に形成されている。表面電極175は、圧電セラミック層22Aに形成されたビアホールを介して共通電極171と繋がっている。このため、表面電極175は、接地され、グランド電位に保持されている。表面電極175は、個別電極172と同等の材料、同等の工程により形成されるとよい。
【0082】
複数の個別電極172は、個別に電位を制御するために、それぞれがフレキシブル基板41,42および配線を介して、個別に制御部14(図1参照)に電気的に接続されている。そして、個別電極172と共通電極171とを異なる電位にして、圧電セラミック層22Aの分極方向に電界を印加すると、かかる圧電セラミック層22A内の電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として動作する。
【0083】
すなわち、圧電アクチュエータ基板22では、個別電極172、圧電セラミック層22Aおよび共通電極171における加圧室162に対向する部位が、変位素子170として機能する。そして、かかる変位素子170がユニモルフ変形することにより、加圧室162が押圧され、吐出孔163から液体が吐出される。
【0084】
つづいて、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド8の駆動手順について説明する。まず、個別電極172を予め共通電極171よりも高い電位(以下、高電位という)にしておく。そして、吐出要求があるごとに個別電極172を共通電極171と一旦同じ電位(以下、低電位という)とし、その後、所定のタイミングで再び高電位とする。
【0085】
これにより、個別電極172が低電位になるタイミングで、圧電セラミック層22A,22Bが元の形状に戻り、加圧室162の容積が初期状態(両電極の電位が異なる状態)よりも増加する。
【0086】
このとき、加圧室162内に負圧が与えられ、液体が供給マニホールド161側から加圧室162内部に吸い込まれる。その後、再び個別電極172を高電位にしたタイミングで、圧電セラミック層22A,22Bが加圧室162側へ向けて凸となるように変形し、加圧室162の容積減少により加圧室162内の圧力が正圧となる。
【0087】
この結果、加圧室162内部の液体に付与する圧力が上昇し、液滴が吐出される。つまり、液滴を吐出させるため、高電位を基準とするパルスを含む駆動信号を個別電極172に供給することになる。
【0088】
このパルス幅は、圧力波がしぼり166から吐出孔163まで伝播する時間の長さであるAL(Acoustic Length)とすればよい。これによると、加圧室162の内部が負圧状態から正圧状態に反転するときに両者の圧力が合わさり、より強い圧力で液滴を吐出させることができる。
【0089】
また、階調印刷においては、吐出孔163から連続して吐出される液滴の数、すなわち、液滴吐出回数で調整される液滴量(体積)で階調表現が行われる。このため、指定された階調表現に対応する回数の液滴吐出を、指定されたドット領域に対応する吐出孔163から連続して行う。
【0090】
一般に、液体吐出を連続して行う場合は、液滴を吐出させるために供給するパルスとパルスとの間隔をALとしてもよい。これにより、先に吐出された液滴を吐出させるときに発生した圧力の残余圧力波と、後に吐出させる液滴を吐出させるときに発生する圧力の圧力波との周期が一致する。このため、残余圧力波と圧力波とが重畳して液滴を吐出するための圧力を増幅させることができる。なお、この場合、後から吐出される液滴の速度が速くなり、複数の液滴の着弾点が近くなる。
【0091】
<液体吐出ヘッドの要部の構成>
次に、図8を参照して実施形態に係る液体吐出ヘッド8の要部の構成について説明する。図8は、図4に示すA-A線に沿った拡大断面図である。
【0092】
図8に示すように、流路部材21の第1面21a上に位置するリザーバ70は、収容部73と、接続部74とを有する。リザーバ70は、Y軸方向に沿って延びるスリット70bを有する。
【0093】
上述したように、流路部材21の第1面21a上には、圧電アクチュエータ基板22、フレキシブル基板41,42の一端部41a,42a、カバー部材50、ヒータ60、およびサーミスタ65が順に位置している。収容部73は、第1面21aとの間に圧電アクチュエータ基板22、フレキシブル基板41,42の一端部41a,42a、カバー部材50、ヒータ60、およびサーミスタ65を収容する空間である。
【0094】
また、接続部74は、収容部73とスリット70bとを連通させる開口であり、ヒータ60に接続されたヒータ配線61およびフレキシブル基板41,42を、リザーバ70の外部に引き出すために利用される。
【0095】
このようにリザーバ70が収容部73を有することにより、流路部材21の近傍にヒータ60を位置させることができる。このため、ヒータ60からの熱を効率よく流路部材21に伝達することができ、液体の吐出状態が安定する。また、ヒータ60からの熱が速やかに流路部材21に伝達されるため、第2面21bに位置する吐出孔163(図7参照)およびその近傍に位置する液体の温度を速やかに上昇させることができ、液体吐出ヘッド8の起動時間が短縮する。
【0096】
また、リザーバ70が接続部74およびスリット70bを有することにより、フレキシブル基板41,42やヒータ配線61の配設が容易になる。
【0097】
また、図8に示すように、フレキシブル基板42は、ヒータ配線61よりも外側に位置するようにスリット70bから引き出されている。このため、フレキシブル基板42は、スリット70bからのヒータ配線61の引き出しを案内するガイドの役割を担うことができ、作業効率が向上する。
【0098】
また、サーミスタ65が有する図示しないリード線は、導線61aを介してヒータ配線61に接続されている。ヒータ配線61を介したヒータ60への電力供給は、サーミスタ65が感知した温度に応じて制御されることで、ヒータ60の温度を所定の範囲に保つことができる。
【0099】
<カバー部材の配置例>
図9A図9Bは、ヘッド本体におけるカバー部材の配置を示す説明図である。図9Aは、カバー部材50をZ軸負方向側から見た平面図であり、図9Bは、フレキシブル基板41が位置する部分をYZ平面に沿って切断した断面図である。なお、図9A図9Bでは、カバー部材50上に位置するヒータ60およびサーミスタ65の図示は省略している。
【0100】
図9Aに示すように、流路部材21は、第1面21aの長さ方向の両端部に位置する開口161aを有している。開口161aは、リザーバ70から供給された液体を流路部材21に導入するようリザーバ70が有する流路に接続されている。
【0101】
また、図9Bに示すように、カバー部材50は、長さ方向の端部に位置し、第1面21a側に突出する突出部50aで流路部材21と接触している。カバー部材50上に位置させたヒータ60からの熱は、突出部50aを介して流路部材21の第1面21aに伝達される。このため、液体の流れが集中する開口161aの近傍に位置する液体の温度を速やかに上昇させることができ、液体吐出ヘッド8の起動時間が短縮する。
【0102】
また、カバー部材50は、リザーバ70および流路部材21がそれぞれ有する流路が接続される開口161aよりも内側に位置する突出部50aで流路部材21と接触している。このため、リザーバ70から流路部材21に供給された液体の温度を速やかに上昇させることができ、液体吐出ヘッド8の起動時間が短縮する。
【0103】
また、図9Bに示すように、カバー部材50は、接着材80を介してフレキシブル基板41,42に固定されている。接着材80は、例えば、両面テープまたは接着剤である。カバー部材50上に位置させたヒータ60からの熱は、カバー部材50→フレキシブル基板41,42→圧電アクチュエータ基板22→流路部材21の順に伝わる。カバー部材50およびフレキシブル基板41,42を固定することにより、カバー部材50とフレキシブル基板41,42との密着性が高まり、流路部材21への伝熱性が向上する。
【0104】
<液体吐出ヘッドの変形例>
図10は、第1変形例に係る液体吐出ヘッドの要部の構成を示す断面図である。図10に示す液体吐出ヘッド8は、リザーバ70の上面71に位置するヒータ63をさらに備えることを除き、図8に示す液体吐出ヘッド8と同様の構成を有している。ヒータ63には、ヒータ配線64を介して電力供給が行われる。このようにリザーバ70上にヒータ63を位置させることにより、液体吐出ヘッド8の内部に位置する液体の均熱性を高めることができる。また、リザーバ70内の液体の温度を速やかに上昇させることができる。
【0105】
図11は、第2変形例に係る液体吐出ヘッドの要部の構成を示す断面図である。図11に示す液体吐出ヘッド8は、ヒータ60の上に熱伝導シート66がさらに位置している点で図8に示す液体吐出ヘッド8と相違する。熱伝導シート66は、収容部73の上端75とヒータ60との間に位置している。熱伝導シート66は、ヒータ60で発生した熱をリザーバ70に伝達させる。このように、ヒータ60上に熱伝導シート66を位置させることにより、液体吐出ヘッド8の内部に位置する液体の均熱性を高めることができる。また、リザーバ70内の液体の温度を速やかに上昇させることができる。
【0106】
熱伝導シート66としては、例えば、シリコン系、または非シリコン系の熱伝導シートを使用することができる。熱伝導シート66は、収容部73の上端75に接していてもよく、離れていてもよい。熱伝導シート66およびリザーバ70が接触していると、リザーバ70内の液体の温度を効率よく上昇させることができる。
【0107】
なお、図11では図示を省略したが、液体吐出ヘッド8は、サーミスタ65(図8参照)を有してもよい。かかる場合、サーミスタ65は、熱伝導シート66が位置しないヒータ60上に位置してもよく、ヒータ60と熱伝導シート66との間に位置してもよい。また、サーミスタ65は、熱伝導シート66と収容部73の上端75との間に位置してもよい。なお、液体吐出ヘッド8は、サーミスタ65を有さなくてもよい。
【0108】
<カバー部材の変形例>
図12は、変形例に係るカバー部材の配置を示す説明図である。図12に示すカバー部材50は、突出部50aに配された接着材80を介して流路部材21の第1面21aに固定されている。このようにカバー部材50と流路部材21とを固定することにより、カバー部材50から流路部材21への伝熱性が向上する。
【0109】
なお、図12において、カバー部材50とフレキシブル基板41,42とは互いに接触していてもよく、離間していてもよい。カバー部材50とフレキシブル基板41,42とが接触していると、圧電アクチュエータ基板22とフレキシブル基板41,42とが剥離する可能性を低減することができる。また、カバー部材50とフレキシブル基板41,42との間、突出部50aと流路部材21との間にそれぞれ接着材80を位置させて、カバー部材50およびフレキシブル基板41,42、突出部50aおよび流路部材21をそれぞれ固定させてもよい。
【0110】
[第2の実施形態]
次に、図13図16を参照して第2の実施形態に係る液体吐出ヘッド8の構成について説明する。図13は、第2の実施形態に係る液体吐出ヘッド8の概略構成を示す分解斜視図であり、図14は、第2の実施形態に係る液体吐出ヘッド8の要部の構成を示す斜視図である。また、図15は、図14に示すD-D線に沿った断面図であり、図16は、図14に示すE-E線に沿った拡大断面図である。
【0111】
図13図14に示すように、液体吐出ヘッド8は、ヘッド本体20と、配線部40と、カバー部材50と、ヒータ60とを備える。ヘッド本体20は、流路部材21と、圧電アクチュエータ基板22と、分岐流路部材55と、リザーバ70Aとを備える。リザーバ70Aおよび分岐流路部材55は、例えば、第1の実施形態に係るリザーバ70(例えば、図3図4等参照)に相当する。
【0112】
また、図15図16に示すように、ヒータ60は、分岐流路部材55上に位置している。具体的には、ヒータ60は、分岐流路部材55の上面である第1面55aに固定されている。また、第1面55aに面するリザーバ70Aには、凹部77が位置しており、ヒータ60は、第1面55aと凹部77との間の空間に収容されている。
【0113】
このように、分岐流路部材55上にヒータ60を位置させることにより、液体吐出ヘッド8の内部に位置する液体の均熱性を高めることができる。また、分岐流路部材55およびリザーバ70A内の液体の温度を速やかに上昇させることができる。
【0114】
ヒータ60は、分岐流路部材55の内部に位置する分岐流路56に対向している。換言すると、ヒータ60は、分岐流路部材55の分岐流路56を構成する隔壁と対向している。それにより、分岐流路56を流れる液体を効率よく昇温することができる。
【0115】
また、ヒータ60は、リザーバ70Aの内部に位置する供給流路76に対向している。換言すると、ヒータ60は、リザーバ70Aの供給流路76を構成する隔壁と対向している。それにより、供給流路76を流れる液体を効率よく昇温することができる。
【0116】
液体吐出ヘッド8は、ヒータ60が、分岐流路部材55の内部に位置する分岐流路56に対向しているとともに、ヒータ60は、リザーバ70Aの内部に位置する供給流路76に対向する構成を有している。そのため、液体吐出ヘッド8に供給された液体を効率よく昇温することができる。
【0117】
なお、図16では、ヒータ60はリザーバ70Aと分岐流路部材55との間に位置するとして説明したが、これに限られない。ヒータ60は、例えば、リザーバ70Aの内部に位置する供給流路76および/または分岐流路部材55の内部に位置する分岐流路56に面していてもよい。これにより、ヒータ60は、供給流路76および/または分岐流路56を流れる液体を直接加熱することができる。このため、液体吐出ヘッド8の内部に位置する液体の均熱性をさらに高めることができる。また、供給流路76および/分岐流路56内の液体の温度をさらに速やかに上昇させることができる。
【0118】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。たとえば、上述の実施形態では、流路部材21が積層された複数のプレートで構成された例について示したが、流路部材21は積層された複数のプレートで構成されている場合に限られない。
【0119】
たとえば、供給マニホールド161や個別流路164などをエッチング処理で形成することにより、流路部材21を構成してもよい。
【0120】
以上のように、実施形態に係る液体吐出ヘッド8は、流路部材21と、加圧部(変位素子170)と、複数の吐出孔163と、フレキシブル基板41,42と、カバー部材50と、ヒータ60とを備える。流路部材21は、第1面21aおよび第1面21aの反対側に位置する第2面21bを有する。加圧部(変位素子170)は、第1面21a上に位置する。複数の吐出孔163は、第2面21bに位置する。フレキシブル基板41,42は、加圧部(変位素子170)上に位置する一端部41a,42aが加圧部(変位素子170)に電気的に接続されている。カバー部材50は、フレキシブル基板41,42の一端部41a,42aを覆う。ヒータ60は、カバー部材50上に位置する。このため、ヒータ60からの熱を効率よく伝達することができる。
【0121】
また、実施形態に係る液体吐出ヘッド8は、供給部材(リザーバ70)と、ヒータ配線61とを備えてもよい。供給部材(リザーバ70)は、収容部73と、スリット70bとを有し、流路部材21に繋がる。収容部73は、第1面21aとの間に加圧部(変位素子170)、一端部41a,42a、カバー部材50およびヒータ60を収容する。スリット70bは、収容部73に連通する。ヒータ配線61は、ヒータ60に電気的に接続されている。フレキシブル基板41,42およびヒータ配線61は、スリット70bから供給部材(リザーバ70)の外部に引き出されている。これにより、フレキシブル基板41,42やヒータ配線61の配設が容易になる。
【0122】
また、実施形態に係る液体吐出ヘッド8において、フレキシブル基板41,42は、ヒータ配線61よりも外側に位置するようにスリット70bから引き出されていてもよい。これにより、スリット70bからのヒータ配線61の引き出しの作業性が向上する。
【0123】
また、実施形態に係る液体吐出ヘッド8において、供給部材(リザーバ70)上に位置するヒータ63をさらに備えてもよい。これにより、液体吐出ヘッド8の内部に位置する液体の均熱性を高めることができる。また、供給部材(リザーバ70)内の液体の温度を速やかに上昇させることができる。
【0124】
また、実施形態に係る液体吐出ヘッド8において、カバー部材50は、カバー部材50の長さ方向の端部で流路部材21と接触しており、供給部材(リザーバ70)および流路部材21がそれぞれ有する流路は、流路部材21の長さ方向の端部で接続されていてもよい。これにより、液体の流れが集中する部分(開口161a)の近傍に位置する液体の温度を速やかに上昇させることができる。
【0125】
また、実施形態に係る液体吐出ヘッド8において、カバー部材50は、供給部材(リザーバ70)および流路部材21がそれぞれ有する流路が接続される位置(開口161a)よりも内側で流路部材21と接触していてもよい。これにより、供給部材(リザーバ70)から流路部材21に供給された液体の温度を速やかに上昇させることができる。
【0126】
また、実施形態に係る液体吐出ヘッド8において、ヒータ60と供給部材(リザーバ70)との間に位置する熱伝導シート66をさらに備えてもよい。これにより、液体吐出ヘッド8の内部に位置する液体の均熱性を高めることができる。また、供給部材(リザーバ70)内の液体の温度を速やかに上昇させることができる。
【0127】
また、実施形態に係る液体吐出ヘッド8において、カバー部材50は、フレキシブル基板41,42に固定されていてもよい。これにより、カバー部材50とフレキシブル基板41,42との密着性が高まり、ヒータ60から流路部材21への伝熱性が向上する。
【0128】
また、実施形態に係る液体吐出ヘッド8において、カバー部材50は、流路部材21に固定されていてもよい。これにより、カバー部材50と流路部材21との密着性が高まり、ヒータ60から流路部材21への伝熱性が向上する。
【0129】
また、実施形態に係る液体吐出ヘッド8は、流路部材21と、加圧部(変位素子170)と、複数の吐出孔163と、分岐流路部材55と、ヒータ60と、供給部材(リザーバ70A)を備える。流路部材21は、第1面21aおよび第1面21aの反対側に位置する第2面21bを有する。加圧部(変位素子170)は、第1面21a上に位置する。複数の吐出孔163は、第2面21bに位置する。分岐流路部材55は、流路部材21の上に位置し、流路部材21に繋がる。ヒータ60は、分岐流路部材55上に位置する。供給部材(リザーバ70A)は、分岐流路部材55およびヒータ60の上に位置し、分岐流路部材55に繋がる。これにより、液体吐出ヘッド8の内部に位置する液体の均熱性を高めることができる。また、分岐流路部材55および供給部材(リザーバ70A)内の液体の温度を速やかに上昇させることができる。
【0130】
また、実施形態に係る分岐流路部材55は、内部に分岐流路56を有し、ヒータ60は、分岐流路56に対向していてもよい。これにより、分岐流路56内の液体の温度をさらに速やかに上昇させることができる。
【0131】
また、実施形態に係る供給部材(リザーバ70A)は、内部に供給流路76を有し、ヒータ60は、供給流路76に対向していてもよい。これにより、供給流路76内の液体の温度をさらに速やかに上昇させることができる。
【0132】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0133】
1 プリンタ(記録装置の一例)
4 塗布機
6 搬送ローラ(搬送部の一例)
8 液体吐出ヘッド
10 乾燥機
14 制御部
21 流路部材
41,42 フレキシブル基板
50 カバー部材
55 分岐流路部材
60,63 ヒータ
70,70A リザーバ(供給部材の一例)
70b スリット
170 変位素子(加圧部の一例)
163 吐出孔(吐出孔の一例)
図1
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図9A
図9B
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