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特許7361793変電所ネットワークにおける失われた時間同期の取り扱い
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】変電所ネットワークにおける失われた時間同期の取り扱い
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20231006BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H04L7/00 990
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021561840
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2020060373
(87)【国際公開番号】W WO2020212300
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】19169478.5
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バイマン,カール
(72)【発明者】
【氏名】サリ,ヨーアン
(72)【発明者】
【氏名】ピン,ヘンリク
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-091828(JP,A)
【文献】国際公開第2014/002191(WO,A1)
【文献】特開2010-246084(JP,A)
【文献】特開2018-117227(JP,A)
【文献】特開2015-023742(JP,A)
【文献】特開平10-042448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H04L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変電所ネットワーク(100a、100b)において時間シフトされたデータストリームを取り扱うための方法であって、前記方法はインテリジェント電子デバイス(IED)(200)によって行なわれ、前記方法は、
前記変電所ネットワーク(100a、100b)における少なくとも2つの時間同期されたデータソース(120a、120b、120c)からそれぞれのデータストリームを受信するステップ(S102)と、
前記データソース(120a、120b、120c)のうちの1つがその時間同期を失うことから生じる前記データストリーム間の時間シフトを検出したときに、構成された時間量が満了するまで、前記データストリームに基づいて、前記変電所ネットワーク(100a、100b)における保護機能(130)が作用するのをブロックするステップ(S104)とを含む、方法。
【請求項2】
前記構成された時間量は、前記変電所ネットワーク(100a、100b)における前記データソース(120a、120b、120c)のクロックドメイン階層に依存する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記構成された時間量は、静的な値および動的な値のうちの1つを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記クロックドメイン階層は、前記変電所ネットワーク(100a、100b)における少なくとも1つの時間ソース(110a、110b)によって前記データソース(120a、120b、120c)が時間同期される順序を定義する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記クロックドメイン階層に従って、前記データソース(120a、120b、120c)のうちの少なくとも2つが、それぞれの異なる時間ソース(110a、110b)から時間同期される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記クロックドメイン階層に従って、各データソース(120a、120b、120c)が時間同期を回復するのに多くて時間単位量x3がかかり、前記時間同期がすべてのデータソース(120a、120b、120c)に伝搬するのに時間単位量x2がかかり、前記構成された時間量は、前記データソース(120a、120b、120c)のために前記時間同期が回復されてから時間単位量x2後に満了する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記クロックドメイン階層に従って、すべてのデータソース(120a、120b、120c)が、全く同じグローバル時間ソース(110a)から、時間単位量x3以内に時間同期される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記クロックドメイン階層に従って、すべてのデータソース(120a、120b、120c)が、前記時間単位量x3以内にローカルに時間同期され、前記同じグローバル時間ソース(110a)を有し、すべてのデータソース(120a、120b、120c)の前記時間同期は同時に始まり、前記構成された時間量は、時間単位量x3が経過すると満了する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記クロックドメイン階層に従って、各データストリームが、そのデータソース(120a、120b、120c)の前記時間ソース(110a、110b)を識別する情報を含む場合、前記構成された時間量は、すべてのデータストリームの前記情報が全く同じ時間ソース(110a、110b)を識別すると満了する、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記時間シフトは、前記データストリームが時間的に互いに同期されなくなることによって、または、前記データソース(120a、120b、120c)のうちのすべてではないものの少なくとも1つからの前記データストリームにおけるサンプルカウントにジャンプがあることによって、検出される、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
すべてのデータソース(120a、120b、120c)が、前記変電所ネットワーク(100a、100b)における変電所(160)のそれぞれの合流ユニット(140a、140b、140c)に属する、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
各データストリームは、たとえば前記変電所ネットワーク(100a、100b)における変電所(160)の合流ユニット(140a、140b、140c)の電圧または電流測定値を表わすアナログサンプルを含む、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記保護機能(130)は、継電器保護機能である、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
変電所ネットワーク(100a、100b)において時間シフトされたデータストリームを取り扱うためのインテリジェント電子デバイス(IED)(200)であって、前記IED(200)は処理回路(210)を含み、前記処理回路は、前記IED(200)に、
前記変電所ネットワーク(100a、100b)における少なくとも2つの時間同期されたデータソース(120a、120b、120c)からそれぞれのデータストリームを受信させ、
前記データソース(120a、120b、120c)のうちの1つがその時間同期を失うことから生じる前記データストリーム間の時間シフトを検出したときに、構成された時間量が満了するまで、前記データストリームに基づいて、前記変電所ネットワーク(100a、100b)における保護機能(130)が作用するのをブロックさせるように構成される、IED(200)。
【請求項15】
請求項2~13のいずれか1項に記載の方法を行なうようにさらに構成された、請求項14に記載のIED(200)。
【請求項16】
変電所ネットワーク(100a、100b)において時間シフトされたデータストリームを取り扱うためのコンピュータプログラム(320)であって、前記コンピュータプログラムは、インテリジェント電子デバイス(IED)(200)の処理回路(210)上で実行されると前記IED(200)にステップを行なわせるコンピュータコードを含み、前記ステップは、
前記変電所ネットワーク(100a、100b)における少なくとも2つの時間同期されたデータソース(120a、120b、120c)からそれぞれのデータストリームを受信するステップ(S102)と、
前記データソース(120a、120b、120c)のうちの1つがその時間同期を失うことから生じる前記データストリーム間の時間シフトを検出したときに、構成された時間量が満了するまで、前記データストリームに基づいて、前記変電所ネットワーク(100a、100b)における保護機能(130)が作用するのをブロックするステップ(S104)とを含む、コンピュータプログラム(320)。
【請求項17】
請求項16に記載のコンピュータプログラム(320)が格納された、コンピュータ読取可能記憶媒体(330)。
【請求項18】
請求項17に記載のコンピュータ読取可能記憶媒体(330)を含む、コンピュータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
ここに提示される実施形態は、変電所ネットワークにおいて失われた時間同期によって生じる時間シフトされたデータストリームを取り扱うための方法、インテリジェント電子デバイス(intelligent electronic device:IED)、コンピュータプログラム、およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
一般用語では、変電所とは、発電、送電および配電システムの一部である。変電所は、電気システムの異なる送電線間の接続点として作用し、それに加えて、電圧を高から低にまたはその逆に変換するか、もしくは、いくつかの他の機能のうちのいずれかを行なう場合がある。発電所と消費者との間で、電力は、異なる電圧レベルのいくつかの変電所を通って流れる場合がある。変電所は、高い送電電圧とより低い配電電圧との間に、または、2つの異なる送電電圧の相互接続部に、電圧レベルを変更するための変圧器を含む場合がある。
【0003】
一般用語では、変電所は無人である場合が多く、遠隔監視および制御に頼っている。この点において、変電所内の異なるデータソースからのデータストリームが、保護機能に供給される場合がある。保護機能は、これらのデータストリームに基づいて、遮断決定を下し、ひいては、回路遮断器を遮断するか否かを判断するように構成される。
【0004】
一般用語では、遮断決定がいくつかのデータソースからのデータストリームに依存する保護機能のために、これらのデータストリームは時間相関される必要がある。よって、保護機能が適切に機能するために、これらのデータソースの正確で統一された時間同期が必要とされる。時間同期が階層的な態様で伝搬されるシステム(たとえば、境界クロックと相互接続された複数のサブネットワークを有し、高精度時間プロトコル(precision time protocol:PTP)、またはそのプロファイルサブセットIEC61850-9-3を使用するシステム)では、時間ソースにおける時間シフト(または時間ソースの切り替え)が、変電所内のシステム全体にわたる時間シフトの実質的な伝搬遅延を示唆する場合がある。これは次に、データソース間の過渡時間差をもたらすかもしれず、それは、保護機能の誤動作をもたらすおそれがある。保護機能によって受信されたデータストリーム同士が時間相関されることが保証できない場合、保護機能はしたがって、誤遮断が回避されるようにブロックされるべきである。
【0005】
しかしながら、変電所ネットワークにおける保護機能の性能を向上させる必要が依然としてある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
ここにおける実施形態の目的は、保護機能の性能を向上させるために使用され得る、変電所ネットワークにおいて時間シフトされたデータストリームを取り扱うための効率的なメカニズムを提供することである。
【0007】
第1の局面によれば、変電所ネットワークにおいて時間シフトされたデータストリームを取り扱うための方法が提示される。方法はIEDによって行なわれる。方法は、変電所ネットワークにおける少なくとも2つの時間同期されたデータソースからそれぞれのデータストリームを受信するステップを含む。方法は、データソースのうちの1つがその時間同期を失うことから生じるデータストリーム間の時間シフトを検出したときに、構成された時間量が満了するまで、データストリームに基づいて、変電所ネットワークにおける保護機能が作用するのをブロックするステップを含む。
【0008】
第2の局面によれば、変電所ネットワークにおいて時間シフトされたデータストリームを取り扱うためのIEDが提示される。IEDは処理回路を含む。処理回路は、IEDに、変電所ネットワークにおける少なくとも2つの時間同期されたデータソースからそれぞれのデータストリームを受信させるように構成される。処理回路は、IEDに、データソースのうちの1つがその時間同期を失うことから生じるデータストリーム間の時間シフトを検出したときに、構成された時間量が満了するまで、データストリームに基づいて、変電所ネットワークにおける保護機能が作用するのをブロックさせるように構成される。
【0009】
第3の局面によれば、変電所ネットワークにおいて時間シフトされたデータストリームを取り扱うためのコンピュータプログラムが提示され、コンピュータプログラムは、IED上で実行されるとIEDに第1の局面に従った方法を行なわせるコンピュータプログラムコードを含む。
【0010】
第4の局面によれば、第3の局面に従ったコンピュータプログラムと、コンピュータプログラムが格納されるコンピュータ読取可能記憶媒体とを含む、コンピュータプログラム製品が提示される。コンピュータ読取可能記憶媒体は、非一時的コンピュータ読取可能記憶媒体であってもよい。
【0011】
有利には、これは、データソース同士が時間同期していない場合に、保護機能の効率的なブロッキングを提供する。
【0012】
有利には、これは、保護機能の効率的なブロッキングを必要なだけ長く提供する。
有利には、これは、保護機能のより良好な利用を可能にするものの、依然としてあらゆる誤遮断を回避する。
【0013】
同封された実施形態の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な開示から、添付された従属請求項から、および図面から明らかになるであろう。
【0014】
一般に、請求項で使用される用語はすべて、ここに別段の明示的な定義がない限り、技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。「1つの/当該要素、装置、構成要素、手段、モジュール、アクションなど」への言及はすべて、別段の明示的な定めがない限り、当該要素、装置、構成要素、手段、モジュール、アクションなどの少なくとも1つの事例を指すとして公然と解釈されるべきである。ここに開示されるあらゆる方法のアクションは、明示的な定めがない限り、開示された順序通りに行なわれなくてもよい。
【0015】
添付図面を参照して、この発明の概念を、例として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に従った変電所ネットワークを示す概略図である。
図2】実施形態に従った変電所ネットワークを示す概略図である。
図3】実施形態に従った方法のフローチャートである。
図4】実施形態に従った保護機能のブロッキングの持続時間を概略的に示す図である。
図5】実施形態に従った保護機能のブロッキングの持続時間を概略的に示す図である。
図6】実施形態に従ったIEDの機能ユニットを示す概略図である。
図7】実施形態に従った、コンピュータ読取可能記憶媒体を含むコンピュータプログラム製品の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
この発明の概念のある実施形態が示される添付図面を参照して、この発明の概念を以下により十分に説明する。しかしながら、この発明の概念は異なる形で具現化されてもよく、ここに述べられる実施形態に限定されるよう解釈されるべきでない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が完全になってこの発明の概念の範囲を当業者に十分に伝えるように、例として提供される。説明全体を通し、同じ数字は同じ要素を指す。破線によって示されたあらゆるアクションまたは特徴は、オプションであると見なされるべきである。
【0018】
図1は、ここに提示される実施形態が適用され得る変電所ネットワーク100aを示す概略図である。変電所ネットワーク100aは、データソース(data source)120a、120b、120c(DS1、DS2、DS3と表記される)を含む。データソース120a、120b、120cは、データストリームを生成し、当該データストリームを保護機能130に提供するように構成される。各データソース120a、120b、120cは、変電所ネットワーク100aにおける変電所160のそれぞれの合流ユニット(merging unit)140a、140b、140c(図4および図5にMU1、MU2、MU3と表記される)に属していてもよい。
【0019】
保護機能130は、IED200の一部であるか、IED200と一体化されるか、または、IED200と併置される。保護機能の異なる例があり得る。いくつかの例では、保護機能130は、継電器保護機能、または制御機能、たとえば同期チェック機能である。データソース120a、120b、120cは、MU140a、140b、140cに属しており、それらは、アナログサンプルの形をしたデータストリームをプロセスバス150を介して保護機能130に提供する。各データストリームはこのため、たとえば変電所ネットワーク100a、100bにおけるMU140a、140b、140cの電圧または電流測定値を表わすアナログサンプルを含んでいてもよい。
【0020】
データソース120a、120b、120cは、変電所ネットワーク100aのためのグランドマスタークロックとして作用し得る時間ソース110aによって時間同期される。
【0021】
図2は、ここに提示される実施形態が適用され得る変電所ネットワーク100bを示す概略図である。変電所ネットワーク100bは、変電所ネットワーク100aと同じ構成要素を含む。それに加えて、さらに別の時間ソース110bが、境界クロックの形で提供される。図2では、境界クロックはIED200から物理的に隔てられているが、変電所ネットワーク100aも、IED200と一体化されるかまたはIED200と併置され得る境界クロックを含んでいてもよい。
【0022】
上に開示されたように、MU140a、140b、140cのデータソース120a、120b、120cからのデータストリームは、遮断決定を下すために保護機能130に供給される場合がある。上にさらに開示されたように、保護機能130の性能を向上させる必要がある。
【0023】
より詳細には、変電所ネットワーク100a、100bにおいて時間シフト(基準時間の変化など)がある場合、すべてのデータソース120a、120b、120cが同時に時間を変更しないかもしれない。これは、たとえば、以前に時間同期していなかった変電所ネットワーク100a、100bに新しい時間ソース110a、110bが接続される場合、または、各々がそれ自体の時間ソースを有する異なる変電所ネットワークがともに接続される場合に起こり得る。
【0024】
変電所のデータソースがPTP(またはIEC 61850-9-3)を介して時間同期される場合、新しい時間は、クロックから変電所ネットワーク100a、100bを通って各データソース120a、120b、120cまで脈動するであろう。これは、遷移中、たとえば、クロックがしばらくの間自由にドリフトした後に時間同期を回復した場合に、変電所ネットワーク100a、100bの異なる部分に異なる時間が存在するであろうということを意味する。
【0025】
非限定的で例示的な例として、図1または図2を参照して、時間ソース110aが、それが時間同期をしばらくの間失う原因となる故障を経験し、次に、たとえば衛星システム(図示せず)から信頼できる時間同期を回復すると仮定する。このため、正しい時間はまず、MU1および(保護機能130を含む)IED200に到達するであろう。次に、正しい時間は、(図1でのようにIED200の内部に設けられた、または、図2でのように別個の存在として設けられた)境界クロック110bを通って、MU2およびMU3に伝搬するであろう。これは、短い持続時間の間、MU2およびMU3は双方とも、時間同期されるように見えるものの、それらは実際には、MU1および(保護機能130を含む)IED200と比べて異なる時間を有するであろうということを意味する。したがって、この状況の間に保護機能130がブロックされない場合、保護機能130によって誤遮断がトリガされるかもしれない。すべてのデバイス(IEDおよびMU)が同じ時間ソースから時間同期される場合、保護機能130のブロッキングを停止することができる。
【0026】
この例示的な例が示すように、時間シフトが生じる場合、異なるデータソース120a、120b、120cからのデータストリームはこのため、互いに対して時間同期していないかもしれず、それは次に、たとえば差動電流が保護機能130で登録され、MU140a、140b、140cのいずれかまたはそれらの一部に故障がなくても、保護機能130が遮断をトリガすることをもたらすかもしれない。上述のように、この問題は、これらの状況の間に保護機能130をブロックすることによって軽減され得る。しかしながら、保護機能130のブロッキングをいつ開始するか、および、ブロッキングの持続時間をどれくらい長く続けるべきかを判断することは、厄介かもしれない。さもなければ、保護機能130がブロックされる持続時間が短すぎる(潜在的な誤遮断をもたらす)か、または、長すぎる(保護機能130で真の差動電流を登録し損ない、保護機能130が真の遮断をし損なう可能性をもたらす)という潜在的リスクがある。
【0027】
1つのやり方は、保護機能130自体がデータストリームにおける時間シフトを検出した場合に保護機能130をブロックすることである。しかしながら、これは、データストリームにおけるこの時間シフトが保護機能130によって検出される前にデータソース120a、120b、120cのうちの1つ以上が時間をシフトした場合には、役に立たない。
【0028】
別のやり方は、各データソース120a、120b、120cがどのマスター時間ソースに接続されるかという情報を含むことである。しかしながら、これは、すべてのデータソース120a、120b、120c(および保護機能130)がそのような機能性をサポートする場合にのみ機能する。これも、すべてのデータソース120a、120b、120cについて時間が同じであるものの、データソース120a、120b、120cが異なる時間ソースを使用している場合、たとえば、主要時間ソースがいくばくか失われ、他の時間ソースが引き継ぐ場合に、必要でなくても保護機能130をブロックするであろう。
【0029】
また、システムがクロックを失い、システムにおける別の時間ソースがグランドマスタークロックとしての役割を担う場合、転換は、すべてのデータソース120a、120b、120cについて同時には起こらない。これは、時間シフトがなくても保護機能130のブロックをもたらすであろう。
【0030】
ここに開示された実施形態によれば、時間シフトの伝搬中の(たとえば保護機能130をブロックすることによる)誤動作を防止するメカニズムが提供される。また、保護機能130のブロッキングをできるだけ制限するものの、依然として誤遮断(すなわち、変電所ネットワーク100a、100bにおける理由のない遮断)を防止するためのメカニズムが提供される。
【0031】
これは、必要な場合に保護機能130をブロックするものの、できるだけ時間を制限すること、および、必要でない場合に保護機能130をブロックすることを回避することによって達成される。
【0032】
ここに開示される実施形態は特に、変電所ネットワーク100a、100bにおいて時間シフトされたデータストリームを取り扱うためのメカニズムに関する。そのようなメカニズムを得るために、IED200、IED200によって行なわれる方法、IED200上で実行されるとIED200に方法を行なわせる、たとえばコンピュータプログラムの形をしたコードを含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【0033】
図3は、変電所ネットワーク100a、100bにおいて時間シフトされたデータストリームを取り扱うための方法の実施形態を示すフローチャートである。方法は、IED200によって行なわれる。方法は有利には、コンピュータプログラム720として提供される。
【0034】
S102:IED200は、変電所ネットワーク100a、100bにおける少なくとも2つの時間同期されたデータソース120a、120b、120cからそれぞれのデータストリームを受信する。
【0035】
保護機能130のブロッキングは、少なくとも1つのデータストリームが時間シフトされたデータを含むことをIED200が検出すると始まる。そのような時間シフトが検出されると、保護機能130はすぐにブロックされる。
【0036】
S104:IED200は、データソース120a、120b、120cのうちの1つがその時間同期を失うことから生じるデータストリーム間の時間シフトを検出したときに、構成された時間量が満了するまで、データストリームに基づいて、変電所ネットワーク100a、100bにおける保護機能130が作用するのをブロックする。
【0037】
IED200によって行なわれるような、変電所ネットワーク100a、100bにおける時間シフトされたデータストリームの取り扱いのさらなる詳細に関する実施形態を、以下に開示する。
【0038】
構成された時間量は、変電所ネットワーク100a、100bにおけるデータソース120a、120b、120cのクロックドメイン階層に依存する。構成された時間量は、静的な値を有し得る。それに代えて、構成された時間量は、変電所ネットワークにおけるデータソースのクロックドメイン階層に依存して設定され得る。ここで、クロックドメイン階層に従って、構成された時間期間は、静的な値または動的な値であってもよい。これのさらなる例を、以下に開示する。
【0039】
任意のデータソース120a、120b、120cがいつ時間をシフトするかを検出することにより、ブロッキングは、任意のデータソース120a、120b、120cからの失われたデータをカバーすることができる。加えて、ブロッキングは、すべての他のデータソースが少なくともそれらの時間シフトを開始し、したがってそれらの時間シフトが保護機能130によって検出され得るように、時間シフトの検出後に非常に長く続くように設定される。ブロッキングの持続時間を最適化するために、ブロッキングは、すべてのデータソース120a、120b、120cが同じ時間ソース110a、110bから時間同期される場合に解除され得る。
【0040】
一般用語では、データソース120a、120b、120cが時間シフトした場合、サンプルの時間にジャンプがあるか、または、データストリームは、それが時間同期していないという表示を含む。時間シフトはこのため、データストリームが同期されなくなることによって、または、データストリームにおけるサンプルカウントにジャンプがあることによって、検出され得る。すなわち、いくつかの局面では、時間シフトは、データストリームが時間的に互いに同期されなくなることによって、または、データソース120a、120b、120cのうちのすべてではないものの少なくとも1つからのデータストリームにおけるサンプルカウントにジャンプがあることによって、検出される。この情報を用いて、IED200は、データストリーム間に時間シフトがあると検出することができるようになる。
【0041】
いくつかの局面では、クロックドメイン階層は、変電所ネットワーク100a、100bにおける少なくとも1つの時間ソース110a、110bによってデータソース120a、120b、120cが時間同期される順序を定義する。これのさらなる局面を次に開示する。
【0042】
いくつかの局面では、クロックドメイン階層に従って、データソース120a、120b、120cのうちの少なくとも2つが、それぞれの異なる時間ソース110a、110bから時間同期される。
【0043】
すべての時間ソース120a、120b、120cの時間調節は連続しているかもしれないため、1つのデータソースが時間同期を達成してから、別の時間ソースがその時間再同期を開始するかもしれない。したがって、いくつかの局面では、保護機能130は、すべての他のデータソースの時間再同期を開始するのにかかり得る時間だけ長くブロックされる。
【0044】
ここで、第1の例に従った保護機能130のブロッキングの持続時間を示す図4を参照する。ここで、最初にMU1が時間同期され、次にMU2が時間同期され、最後にMU3が時間同期されるということが仮定される。また、MU1を時間同期するのにかかる時間が410aに対応し、MU2を時間同期するのにかかる時間が410bに対応し、MU3を時間同期するのにかかる時間が410cに対応し、410cは、(秒または分単位で与えられ得る)時間単位量x3と同等であるということが仮定される。さらに、MU1およびMU2のための追加のブロック時間420a、420b(ならびに、オプションで、MU3のための追加のブロック時間420c)が付加されるということが仮定される。さらに、MU1で時間同期が開始した後で、MU3のための時間同期が開始するのに、(秒または分単位で与えられ得る)時間単位量x2がかかるということが仮定される。MU1が保護機能130をブロックさせる総時間単位量は、(秒または分単位で与えられ得る)x1と表記され、このため、MU1を時間同期するのにかかる時間(410aに対応)と追加のブロック時間420aとの組合せと等しい。
【0045】
すなわち、データストリームが時間同期されたデータを再び送り始めると、保護機能130は、追加の時間420a、420b、ブロックされる。この追加の時間420a、420bは、時間同期があるデータソースから別のデータソースに伝搬するための時間を有するように、十分に長い。追加のブロッキング時間420a、420bは、すべてのデータストリームにとって同じであってもよく、変電所ネットワーク100a、100bにおける時間同期のための伝搬時間に依存してもよい。追加の時間により、データストリームのうちの任意の他のデータストリームがブロッキング時間中に時間をシフトし始めた場合、保護機能130のブロッキングは続くであろう。
【0046】
いくつかの局面では、クロックドメイン階層に従って、各データソース120a、120b、120cが時間同期を回復するのに多くて時間単位量x3がかかり、時間同期がすべてのデータソース120a、120b、120cに伝搬するのに時間単位量x2がかかり、構成された時間量は、データソース120a、120b、120cのために時間同期が回復されてから時間単位量x2後に満了する。これを図4に示す。各データソース120a、120b、120cが時間同期を回復するための最大値の一例は、IEC61850-9-3で与えられる。
【0047】
他の局面では、クロックドメイン階層に従って、すべてのデータソース120a、120b、120cが、全く同じグローバル時間ソース110aから、時間単位量x3以内に時間同期される。これを図5に示す。
【0048】
ここで、第2の例に従った保護機能130のブロッキングの持続時間を示す図5を参照する。
【0049】
ここで、MU1、MU2、およびMU3は並行して時間同期されるということが仮定される。追加のブロッキング時間420a、420b、420cはしたがって、除去され得る。また、MU1を時間同期するのにかかる時間が410aに対応し、MU2を時間同期するのにかかる時間が410bに対応し、MU3を時間同期するのにかかる時間が410cに対応し、410cは、時間単位量x3と同等であるということが仮定される。
【0050】
いくつかの局面では、クロックドメイン階層に従って、すべてのデータソース120a、120b、120cが、時間単位量x3以内にローカルに時間同期され、同じグローバル時間ソース110aを有し、すべてのデータソース120a、120b、120cの時間同期は同時に始まり、構成された時間量は、時間単位量x3が経過すると満了する。これを図5に示す。
【0051】
このため、すべての時間ソース110a、110bがグローバルに時間同期される場合、または、すべてのデータソース120a、120bがローカルに時間同期され、同じグランドマスタークロックを有する場合、追加のブロッキング時間420a、420bは短縮され、さらには(図5の例でのように)除去され得る。
【0052】
各データストリームが、当該データストリームが生じたデータソース120a、120b、120cによって使用される時間ソースについての情報を含む場合、保護機能130のブロッキングは、すべてのデータソース120a、120b、120cが同じ時間ソースを有するやいなや解除されてもよい。すなわち、いくつかの局面では、クロックドメイン階層に従って、各データストリームが、そのデータソース120a、120b、120cの時間ソース110a、110bを識別する情報を含む場合、構成された時間量は、すべてのデータストリームの情報が全く同じ時間ソース110a、110bを識別すると満了する。時間ソースは共通の時間ソースであってもよく、または、すべての時間ソース110a、110bはグローバル時間に対して時間同期される。
【0053】
上述の実施形態、例、および局面に基づく、変電所ネットワーク100a、100bにおいて時間シフトされたデータストリームを取り扱うための1つの特定の実施形態を、変電所ネットワーク100a、100bのいずれかを例示的な実現化例として使用して、以下に開示する。
【0054】
通常動作下で、グローバル時間に対するすべてのデータソース120a、120b、120cの時間同期を提供するために、時間ソース110aが使用されるということが仮定される。次に、データソース120a、120b、120cのうちの1つ以上がグローバル時間に対するその時間同期を失うことを引き起こす可能性がある故障を、時間ソース110aが経験するということが仮定される。
【0055】
次に、IED200は、その時間ソース110bにより、ローカル時間に対するすべてのデータソース120a、120b、120cの時間同期を行なう。しかしながら、しばらくして、時間ソース110bは、グローバル時間からドリフトして離れるかもしれない。
【0056】
次に、時間ソース110aは修復され、時間同期メッセージをデータソース120a、120b、120cに(およびIED200に)送信し始める。まず、(MU1を表わすような)データソース120aと(保護機能130を含む)IED200とが、新しいグローバル時間に対する時間同期を開始する。しかしながら、(MU2およびMU3を表わす)データソース120、120は、依然としてローカル時間に基づいている。このため、MU1が時間をシフトし、新しい時間を用いてデータストリームを保護機能130に向けて送信し始める一方、MU2およびMU3は依然として、古い時間を用いてデータストリームを保護機能130に向けて送信する。保護機能130のブロッキングがなければ、この状況は、保護機能130が回路遮断器の遮断をトリガすることを引き起こすであろう。
【0057】
この誤遮断が生じることを回避するために、IED200がデータストリームのうちの1つにおける時間シフトを検出した後で、保護機能130は、追加の時間、ブロックされる。この時間の間、新しい時間はMU2およびMU3に伝搬することができ、そのためそれらは、それらが時間同期しておらず、再び時間同期され始めたことをIED200に報告することができる。保護機能130は、MU2およびMU3のための時間シフトの間(および、オプションで、追加のブロッキング時間の間)、IED200によってブロックされる。すべてのMUがグローバルな同期データを報告する場合、または、すべてのMUがローカルに同期され、全く同じ時間ソースを識別する場合、追加のブロッキング時間は減少されてもよい。
【0058】
図6は、実施形態に従ったIED200の構成要素を、複数の機能ユニットに関して概略的に示す。たとえば記憶媒体230の形をした(図7でのような)コンピュータプログラム製品310に格納されたソフトウェア命令を実行することができる、好適な中央処理装置(central processing unit:CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor:DSP)などのうちの1つ以上の任意の組合せを使用して、処理回路210が提供される。処理回路210はさらに、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)として提供されてもよい。
【0059】
特に、処理回路210は、IED200に、上に開示されたような1組の動作またはアクションを行なわせるように構成される。たとえば、記憶媒体230は1組の動作を格納してもよく、処理回路210は、IED200に1組の動作を行なわせるために、記憶媒体230から1組の動作を検索するように構成されてもよい。1組の動作は、1組の実行可能命令として提供されてもよい。
【0060】
こうして、処理回路210はそれにより、ここに開示されるような方法を実行するために配置される。記憶媒体230はまた、永続的なストレージを含んでいてもよく、それは、たとえば、磁気メモリ、光メモリ、ソリッドステートメモリ、さらには遠隔搭載メモリのうちのいずれか1つまたはそれらの組合せであり得る。IED200はさらに、少なくとも変電所ネットワーク100a、100bの他のエンティティ、機能、ノード、およびデバイスとの通信のために構成された通信インターフェイス220を含んでいてもよい。そのため、通信インターフェイス220は、アナログおよびデジタルコンポーネントを含む1つ以上の送信機および受信機を含んでいてもよい。処理回路210は、たとえば、データおよび制御信号を通信インターフェイス220および記憶媒体230に送信することによって、通信インターフェイス220からデータおよび報告を受信することによって、ならびに、記憶媒体230からデータおよび命令を検索することによって、IED200の一般的な動作を制御する。
【0061】
上に開示されたように、保護機能130は、IED200の一部であるか、IED200と一体化されるか、または、IED200と併置される。よって、いくつかの局面では、IEDは保護機能130をさらに含む。
【0062】
IED200の他の構成要素および関連する機能性は、ここに提示される概念を不明瞭にしないために省略される。
【0063】
図7は、コンピュータ読取可能記憶媒体330を含むコンピュータプログラム製品310の一例を示す。このコンピュータ読取可能記憶媒体330上に、コンピュータプログラム320を格納することができ、コンピュータプログラム320は、処理回路210と、それに動作可能に結合されたエンティティおよびデバイス、たとえば通信インターフェイス220および記憶媒体230とに、ここに説明される実施形態に従った方法を実行させることができる。コンピュータプログラム320および/またはコンピュータプログラム製品310はこのため、ここに開示されるようなあらゆるアクションを行なうための手段を提供してもよい。
【0064】
図7の例では、コンピュータプログラム製品310は、CD(compact disc:コンパクトディスク)またはDVD(digital versatile disc:デジタル多用途ディスク)またはブルーレイディスクなどの光ディスクとして示される。コンピュータプログラム製品310はまた、ランダムアクセスメモリ(random access memory:RAM)、読出専用メモリ(read-only memory:ROM)、消去可能プログラマブル読出専用メモリ(erasable programmable read-only memory:EPROM)、または電気的消去可能プログラマブル読出専用メモリ(electrically erasable programmable read-only memory:EEPROM)などのメモリとして具現化され、より特定的には、USB(Universal Serial Bus:ユニバーサルシリアルバス)メモリまたはフラッシュメモリ、たとえばコンパクトフラッシュ(登録商標)メモリなどの外部メモリにおけるデバイスの不揮発性記憶媒体として具現化され得る。このため、コンピュータプログラム320はここでは、図示された光ディスク上のトラックとして概略的に示されているが、コンピュータプログラム320は、コンピュータプログラム製品310にとって好適なあらゆるやり方で格納され得る。
【0065】
いくつかの実施形態を参照して、この発明の概念を主として上述してきた。しかしながら、当業者であれば容易に理解できるように、上に開示されたもの以外の実施形態も、添付された特許請求項によって定義されるようなこの発明の概念の範囲内で同様に可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7