(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】発光素子及び発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/54 20100101AFI20231006BHJP
H01L 33/44 20100101ALI20231006BHJP
H01L 33/46 20100101ALI20231006BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/44
H01L33/46
(21)【出願番号】P 2022017911
(22)【出願日】2022-02-08
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木津 紀幸
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0350788(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0058020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1半導体層、前記第1半導体層上に形成された発光層、及び前記発光層上に形成されるとともに前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2半導体層を有する積層構造体を備える発光素子本体と、
前記発光素子本体の表面を平坦化する、有機材料からなる有機被覆部と、
前記有機被覆部を覆う、無機材料からなる無機被覆部と、を備え、
前記発光素子本体は、前記積層構造体と前記有機被覆部との間に、前記発光層から発される光を反射する反射部を有する
発光素子。
【請求項2】
前記発光素子本体は、前記第1半導体層上に接続された第1コンタクト電極と、前記第2半導体層上に接続された第2コンタクト電極と、を有し、
前記反射部は、導体であり、かつ、前記第1コンタクト電極及び前記第2コンタクト電極から離れて形成されており、
前記発光素子本体は、前記反射部と前記積層構造体との間に、無機材料からなる絶縁部を有する、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第1半導体層、前記発光層、及び前記第2半導体層の積層方向から見たときにおいて、前記反射部と前記第1コンタクト電極との最短距離をL1、前記反射部と前記第2コンタクト電極との最短距離をL2、前記第1コンタクト電極と前記第2コンタクト電極との最短距離をL3としたとき、前記L1及び前記L2のそれぞれは、0.05×L3以上0.45×L3以下を満たす、
請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記発光素子本体は、前記第1半導体層上に接続された第1コンタクト電極と、前記第2半導体層上に接続された第2コンタクト電極と、を有し、
前記反射部は、前記第1コンタクト電極及び第2コンタクト電極の少なくとも一方と同じ材料からなる、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項5】
前記反射部は、前記有機被覆部及び前記無機被覆部の双方と前記積層構造体との間に形成されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項6】
前記積層構造体のうち、少なくとも前記発光層及び前記第2半導体層は、メサ構造となるよう形成されており、
前記反射部は、前記発光層の側面及び第2半導体層の側面に沿った傾斜部を有する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項7】
前記発光層は、紫外光を発する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項8】
第1導電型の第1半導体層、前記第1半導体層上に位置する発光層、及び前記発光層上に位置するとともに前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2半導体層を有する積層構造体を製造する工程と、
前記積層構造体の表面に沿って反射部を形成する工程と、
前記積層構造体及び前記反射部を、有機材料からなる有機被覆部にて覆って平坦化する工程と、
前記有機被覆部を、無機材料からなる無機被覆部にて覆う工程と、
を有する発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1半導体層の表面に第1コンタクト電極を蒸着により形成し、前記第2半導体層の表面に第2コンタクト電極を蒸着により形成する工程をさらに備え、
前記反射部は、前記第1コンタクト電極及び前記第2コンタクト電極の少なくとも一方と同時に蒸着により形成される、
請求項8に記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子及び発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、n型半導体層、発光層、p型半導体層、n型コンタクト電極及びp型コンタクト電極を備える発光素子本体を、酸化シリコン(SiO2)等の無機材料からなる絶縁層で直接的に被覆した半導体発光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の半導体発光素子においては、無機材料からなる絶縁層が直接的に発光素子本体を覆っている。そのため、発光素子本体の表面の段差部及び角部等を起点として絶縁層にクラックが生じるおそれがある。そうなると、クラックを通って水分が発光素子本体近傍に到達し、発光素子本体が劣化するおそれがある。
【0005】
そこで、発光素子本体を、比較的クラックの生じ難い有機材料からなる有機被覆部にて覆うことを検討する。この場合において、特に工夫しなければ、有機被覆部が発光層から発される光を吸収し、半導体発光素子の発光出力が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、発光素子本体の劣化を抑制するとともに発光出力の低下を抑制することが可能な発光素子及び発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記の目的を達成するため、第1導電型の第1半導体層、前記第1半導体層上に形成された発光層、及び前記発光層上に形成されるとともに前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2半導体層を有する積層構造体を備える発光素子本体と、前記発光素子本体の表面を平坦化する、有機材料からなる有機被覆部と、前記有機被覆部を覆う、無機材料からなる無機被覆部と、を備え、前記発光素子本体は、前記積層構造体と前記有機被覆部との間に、前記発光層から発される光を反射する反射部を有する発光素子を提供する。
【0008】
また、本発明は、前記の目的を達成するため、第1導電型の第1半導体層、前記第1半導体層上に位置する発光層、及び前記発光層上に位置するとともに前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2半導体層を有する積層構造体を製造する工程と、前記積層構造体の表面に沿って反射部を形成する工程と、前記積層構造体及び前記反射部を、有機材料からなる有機被覆部にて覆って平坦化する工程と、前記有機被覆部を、無機材料からなる無機被覆部にて覆う工程と、を有する発光素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導体発光素子本体の劣化を抑制するとともに発光出力の低下を抑制することが可能な発光素子及び発光素子の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態における、発光素子の平面図である。
【
図3】実施の形態における、第1コンタクト電極、第2コンタクト電極、及び反射部のそれぞれの形成領域を模式的に示した図である。
【
図4】実施の形態における、積層構造体形成工程及び第1蒸着工程後に得られる第1中間体の断面図である。
【
図5】実施の形態における、絶縁部形成工程後に得られる第2中間体の断面図である。
【
図6】実施の形態における、第2蒸着工程後に得られる発光素子本体の断面図である。
【
図7】実施の形態における、有機被覆部形成工程において、発光素子本体に液状の有機高分子材料が塗布された状態を示す断面図である。
【
図8】実施の形態における、有機被覆部形成工程後に得られる第3中間体を示す断面図である。
【
図9】実施の形態における、無機被覆部形成工程の途中段階の状態を示す断面図である。
【
図10】実施の形態における、無機被覆部形成工程後の第4中間体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、
図1乃至
図10を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0012】
(発光素子1)
図1は、本形態における発光素子1の平面図である。
図2は、
図1のII-II線矢視断面図である。
【0013】
本形態の発光素子1は、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)又は半導体レーザ(LD:Laser Diode)を構成するものである。本形態において、発光素子1は、深紫外光を発する深紫外LEDを構成するものであり、例えば殺菌(例えば空気浄化、浄水等)、医療(例えば光線治療、計測・分析等)、UVキュアリング等の分野において用いることができる。本形態の発光素子1は、発光素子本体2(以後、単に「素子本体2」ということもある。)と有機被覆部3と無機被覆部4と第1パッド電極5と第2パッド電極6とを備える。
【0014】
(素子本体2)
図2に示すごとく、素子本体2は、積層構造体21と第1コンタクト電極22と第2コンタクト電極23と絶縁部24と反射部25とを備える。積層構造体21は、基板211と、バッファ層212と、第1導電型を有する第1半導体層213と、発光層214と、第2導電型を有する第2半導体層215とをこの順に有する。本形態において、第1導電型はn型であり、第1半導体層213はn型半導体からなる層である。また、第2導電型はp型であり、第2半導体層215はp型半導体からなる層である。第1コンタクト電極22は、第1半導体層213に接続されており、第2コンタクト電極23は、第2半導体層215に接続されている。
【0015】
以後、積層構造体21を構成する複数の半導体層の積層方向を上下方向Zといい、上下方向Zの一方側であって、基板211に対して各半導体層が積層された側を上側、その反対側を下側という。なお、上下の表現は便宜的なものであり、例えば発光素子1の使用時における、鉛直方向に対する発光素子1の姿勢を限定するものではない。
【0016】
基板211は、発光層214が発する光(本形態においては深紫外光)を透過する性質を有する基板であり、例えばサファイア(Al2O3)基板とすることができる。また、基板211として、例えば窒化アルミニウム(AlN)基板又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)基板等を用いてもよい。
【0017】
バッファ層212、第1半導体層213、発光層214及び第2半導体層215を構成する半導体としては、例えば、AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)にて表される2~4元系のIII族窒化物半導体を用いることができる。なお、深紫外LEDにおいては、インジウムを含まないAlzGa1-zN系(0≦z≦1)が用いられることが多い。
【0018】
バッファ層212は、基板211上に形成されている。バッファ層212は、アンドープのAlaGa1-aN(0≦a≦1)からなる。一例として、バッファ層212は、基板211上に形成された窒化アルミニウム(すなわちa=1)からなるAlN層と、AlN層上に形成されたアンドープの窒化アルミニウムガリウム(すなわち0<a<1)からなるAlGaN層とを有する。なお、これに限られず、バッファ層212は単層とすることも可能である。また、基板211が窒化アルミニウム基板又は窒化アルミニウムガリウム基板である場合、バッファ層212は必ずしも設けなくてもよい。
【0019】
第1半導体層213は、バッファ層212上に形成されている。第1半導体層213は、n型不純物がドープされたAlbGa1-bN(0≦b≦1)からなる。第1半導体層213は、単層構造でも複数層構造でもよい。上側から見たとき、第1半導体層213は、バッファ層212よりも一回り小さく、第1半導体層213の外形は、バッファ層212の外形の内側に収まるよう形成されている。
【0020】
発光層214は、第1半導体層213の上面の一部に形成されており、発光層214上に第2半導体層215が形成されている。ここで、第2半導体層215上に形成される第2コンタクト電極23は、
図1に示すごとく櫛状に形成されており、発光層214及び第2半導体層215は、第2コンタクト電極23と上下方向Zに重なる位置に、第2コンタクト電極23と同様な櫛状に形成されている。第2コンタクト電極23の形状については後述する。なお、
図1においては、上側から見たときの第1コンタクト電極22、第2コンタクト電極23、及び有機被覆部3の輪郭位置を破線にて示している。
【0021】
発光層214は、AlcGa1-cN(0≦c≦1)からなり、例えば井戸層を1つ有する単一量子井戸構造、又は井戸層を複数有する多重量子井戸構造とすることができる。発光層214においては、第1半導体層213から供給される電子と、第2半導体層215から供給される正孔とが再結合し、発光する。発光層214は、波長365nm以下の深紫外光を出力するために、バンドギャップが3.4eV以上となるよう構成されている。特に本形態において、発光層214は、中心波長が200nm以上365nm以下の深紫外光を発生することができるよう構成されている。また、発光層214が発する光の中心波長は、280nm以下とすることもできる。
【0022】
第2半導体層215は、発光層214上に形成されている。第2半導体層215は、p型不純物がドープされたAldGa1-dN(0≦d≦1)からなる。第2半導体層215は、単層構造でも複数層構造でもよい。
【0023】
本形態において、第1半導体層213の側面213a、発光層214の側面214a及び第2半導体層215の側面215aは、第1半導体層213、発光層214及び第2半導体層215が上側に向かうほど幅狭となるよう傾斜している。すなわち、第1半導体層213、発光層214及び第2半導体層215は、メサ構造となるよう形成されている。
【0024】
第1半導体層213の上面における発光層214から露出した露出上面213bには、第1コンタクト電極22が形成されており、第2半導体層215の上面には、第2コンタクト電極23が形成されている。第1コンタクト電極22は、第1半導体層213にオーミック接触しており、第2コンタクト電極23は、第2半導体層215にオーミック接触している。第1コンタクト電極22及び第2コンタクト電極23のうち、少なくとも第2コンタクト電極23は、発光層214が発する光を反射可能な金属からなる。第2コンタクト電極23は、発光層214が発する光の中心波長における反射率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。第2コンタクト電極23は、発光層214が発する紫外光の反射率を高めるべく、ロジウム(Rh)又はアルミニウム(Al)を含有していることが好ましい。なお、第1コンタクト電極22も、第2コンタクト電極23と同様に、発光層214が発する光を反射する金属にて構成することが、基板211面から取り出される光を増やす観点から好ましい。
【0025】
図1に示すごとく、第1コンタクト電極22は、上下方向Zに直交する方向に延在する第1基部221と、第1基部221の複数箇所から第2コンタクト電極23側に突出する第1突出部222とを有する。第2コンタクト電極23は、第1基部221と略平行に形成された第2基部231と、第2基部231の複数箇所から第1コンタクト電極22側に突出する第2突出部232とを有する。上側から見たとき、隣り合う第1突出部222の間に、複数の第2突出部232が1つずつ挿入されている。以後、上下方向Zに直交する方向であって第1基部221及び第2基部231のそれぞれが延在する方向を横方向Xといい、上下方向Z及び横方向Xの双方に直交する方向を縦方向Yという。縦方向Yは、第1突出部222及び第2突出部232のそれぞれが延在する方向である。
【0026】
図2に示すごとく、絶縁部24は、積層構造体21と反射部25との間に位置し、薄膜状に形成されている。絶縁部24は、積層構造体21と反射部25とが導通することを防ぐ役割を有する。絶縁部24は、積層構造体21の表面のうち、バッファ層212の上面から上側に位置する面を覆っている。また、絶縁部24は、上側から見たときの第1コンタクト電極22及び第2コンタクト電極23の形成領域には形成されていない。
【0027】
絶縁部24は、電気的絶縁性を有する無機材料からなる。絶縁部24は、例えば、発光層214から発される光の透過率が50%以上である。絶縁部24は、例えば二酸化ケイ素(SiO2)、アルミナ(Al2O3)等からなる。本形態において、絶縁部24は、単層からなるが、複数層からなっていてもよい。
【0028】
反射部25は、絶縁部24における積層構造体21に接する側と反対側の面に形成されている。反射部25は、発光層214から発された光であって、積層構造体21中において上側に向かう光を下側に向けて反射する役割を有する。積層構造体21中において上側に向かう光は、例えば、発光層214から直接的に上側に向かって発される光や、積層構造体21の各層の表面において反射されて上側に向かう光等がある。
【0029】
反射部25は、発光層214が発する光を反射可能な導体、具体的には金属からなる。反射部25は、発光層214が発する光の中心波長における反射率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。反射部25は、発光層214が発する紫外光の反射率を高めるべく、ロジウム(Rh)又はアルミニウム(Al)を含有していることが好ましい。本形態において、反射部25は、第2コンタクト電極23と同一の金属からなる。
【0030】
反射部25は、バッファ層212の上面と、第1半導体層213の側面213a及び上面と、発光層214の側面214aと、第2半導体層215の側面215aのそれぞれに、絶縁部24を介して対向するよう形成されている。反射部25における、第1半導体層213の側面213a、発光層214の側面214a、及び第2半導体層215の側面215aのそれぞれに対向する部位は、これらの面に沿うよう上下方向Zに対して傾斜した傾斜部251である。また、反射部25は、有機被覆部3及び無機被覆部4の双方と、絶縁部24との間に形成されており、有機被覆部3及び無機被覆部4の双方に接している。なお、これに限られず、例えば反射部25は、有機被覆部3に接するが無機被覆部4には接さないよう構成されてもよい。
【0031】
図3は、上側から見たときの、第1コンタクト電極22、第2コンタクト電極23、及び反射部25のそれぞれの形成領域を模式的に示した図である。反射部25は、第1コンタクト電極22及び第2コンタクト電極23から離れて形成されている。上側から見たとき、反射部25は、第1コンタクト電極22及び第2コンタクト電極23の全体を取り囲むよう形成された包囲部252と、第1コンタクト電極22と第2コンタクト電極23との間を蛇行するよう形成された蛇行部253とを有する。
【0032】
図3に示すごとく、上側から見たときにおいて、反射部25と第1コンタクト電極22との最短距離をL1、反射部25と第2コンタクト電極23との最短距離をL2、第1コンタクト電極22と第2コンタクト電極23との最短距離をL3とする。このとき、最短距離L1及びL2のそれぞれは、0.05×L3以上0.45×L3以下を満たす。本形態において、上側から見たとき、反射部25と第1コンタクト電極22との間隔は一定となっている。同様に、上側から見たとき、反射部25と第2コンタクト電極23との間隔は一定となっている。そして、上側から見たとき、反射部25における第1コンタクト電極22に臨む側の端縁の各部は、第1コンタクト電極22との間の最短距離が0.05×L3以上0.45×L3以下を満たしている。同様に、上側から見たとき、反射部25における第2コンタクト電極23に臨む側の端縁の各部は、第2コンタクト電極23との間の最短距離が0.05×L3以上0.45×L3以下を満たしている。
【0033】
図2に示すごとく、反射部25は、絶縁部24に沿って屈曲するとともに全体において一定の厚みを有する板状に形成されている。本形態において、反射部25の厚みは、第2コンタクト電極23の厚みと同等である。反射部25の厚みと第2コンタクト電極23との厚みとが同等であるとは、例えば、反射部25の厚みと第2コンタクト電極23の厚みとの差の絶対値が、反射部25の厚みと第2コンタクト電極23の厚みとのうち大きい方の10%以下となるような場合も含む。詳細は後述するが、本形態において反射部25は第2コンタクト電極23と同時に蒸着により形成されるため、反射部25と第2コンタクト電極23とは互いに厚みが同等となる。
【0034】
(有機被覆部3)
図2に示すごとく、有機被覆部3は、素子本体2を覆い、素子本体2の表面形状に存在する段差及び角部を埋めて平坦化する。有機被覆部3は、電気的絶縁性を有する有機高分子材料から構成することができる。本形態において、有機被覆部3は、フォトレジストからなる。フォトレジストとしては、ポジ型及びネガ型のいずれかを採用することが可能である。
【0035】
本形態において、有機被覆部3は、素子本体2における第1半導体層213の上側に形成されており、バッファ層212における第1半導体層213と重ならない部位の上側には形成されていない。発光層214、第2半導体層215、第1コンタクト電極22及び第2コンタクト電極23は、有機被覆部3の内側に配されている。また、発光層214、第2半導体層215、第1コンタクト電極22及び第2コンタクト電極23の周囲に形成された絶縁部24及び反射部25も、有機被覆部3の内側に配されている。反射部25における、第1コンタクト電極22側の端縁254及び第2コンタクト電極23側の端縁255も、有機被覆部3にて覆われている。
【0036】
有機被覆部3の外面31(すなわち無機被覆部4に接する面)は、有機被覆部3の内面32(すなわち無機被覆部4と接さない面)よりも平坦となるよう構成されている。有機被覆部3の外面31は、上下方向Zに直交する上面311と、上下方向Zに形成された側面312とを備える。外面31における上面311と側面312との間の角部313は、曲面状(すなわちアール状)に形成されている。なお、有機被覆部3の外面31の側面312は、例えば下側程、外方へ向かうように傾斜等していてもよい。
【0037】
ここで、
図2に示すごとく、第2コンタクト電極23の上面233と有機被覆部3の下端面33との間の上下方向Zの長さをHとしたとき、有機被覆部3の厚みT1は、0.8H≦T1≦1.2Hを満たしている。すなわち、有機被覆部3の上面311は、第2コンタクト電極23の上面233と略面一に形成されている。有機被覆部3の上面311は、第2コンタクト電極23の上面233と面一に形成されることが好ましい。ここで、有機被覆部3の上面311と第2コンタクト電極23の上面233とを面一になるよう設計したものの、製造公差等により有機被覆部3の上面311と第2コンタクト電極23の上面233との位置が僅かにずれたような場合も、有機被覆部3の上面311と第2コンタクト電極23の上面233とは面一であるとする。そして、第2コンタクト電極23の上面233は、第2パッド電極6との導通を図るべく、有機被覆部3から露出している。
【0038】
有機被覆部3には、有機被覆部3を上下方向Zに貫通した複数のコンタクトホール34が形成されている。複数のコンタクトホール34は、第1コンタクト電極22と上下方向Zに重なる位置に形成されており、下端が第1コンタクト電極22に向かって開口している。複数のコンタクトホール34は、互いに同等の形状を有し、等間隔に形成されている。
図1に示すごとく、第1コンタクト電極22の第1基部221に開口する複数のコンタクトホール34は、横方向Xに等間隔に設けられており、第2コンタクト電極23の第1突出部222に開口する複数のコンタクトホール34は、縦方向Yに等間隔に設けられている。等間隔とは、厳密な等間隔に限られず、例えば、隣り合うコンタクトホール34間の間隔のうちの最大値と最小値との差が当該最大値の10%以下となるような、略等間隔も含む。なお、
図1においては、コンタクトホール34の下端部の輪郭位置を破線で表している。
【0039】
図2に示すごとく、コンタクトホール34は、上下方向Zに長尺に形成されている。本形態において、コンタクトホール34の上下方向Zの長さ(本形態においては後述のホール内導体51の長さLと同等である。)は、第1コンタクト電極22の厚みT2よりも長い。コンタクトホール34は、上側の位置ほど内径が大きくなるテーパ状(本形態においては円錐台形状)に形成されている。
【0040】
本形態において、有機被覆部3は単層構造であるが、複数層構造であってもよい。また、有機被覆部3は、フォトレジストから構成したが、例えばフォトレジスト以外の有機材料から構成することも可能である。
【0041】
(無機被覆部4)
図2に示すごとく、無機被覆部4は、有機被覆部3を外周側及び上側から覆っている。さらに、無機被覆部4は、有機被覆部3からはみ出した反射部25を、絶縁部24と反対側から覆っている。無機被覆部4は、電気的絶縁性を有するとともに、水分を通し難い無機材料からなる。本形態において、無機被覆部4は、二酸化ケイ素(SiO
2)からなる。無機被覆部4は、絶縁部24と同じ材料にて構成することも可能である。
【0042】
無機被覆部4には、内側に第1パッド電極5が配された第1開口部41と、内側に第2パッド電極6が配された第2開口部42とが形成されている。第1開口部41は、第1コンタクト電極22と上下方向Zに対向する位置に形成されており、第2開口部42は、第2コンタクト電極23と上下方向Zに対向する位置に形成されている。本形態において、無機被覆部4は単層からなるが、複数層からなる構成であってもよい。
【0043】
(第1パッド電極5及び第2パッド電極6)
図2に示すごとく、第1パッド電極5は、第1コンタクト電極22と電気的に接続されており、第2パッド電極6は、第2コンタクト電極23と電気的に接続されている。
図1に示すごとく、上側から見たとき、第1パッド電極5は、発光素子1の縦方向Yの中心位置よりも第1コンタクト電極22の第1基部221側に形成されており、第2パッド電極6は、前記中心位置よりも第2コンタクト電極23の第2基部231側の領域に形成されている。
【0044】
図2に示すごとく、第1パッド電極5は、コンタクトホール34内に充填されるよう形成されたホール内導体51と、無機被覆部4の第1開口部41内に埋設された第1埋設部52と、無機被覆部4から上側に露出した第1露出部53とを一体的に備える。
【0045】
ホール内導体51は、当該ホール内導体51が配されたコンタクトホール34の内側領域と同等の形状となる。すなわち、ホール内導体51は、上下方向Zに長尺に形成されている。また、ホール内導体51の上下方向Zの長さLは、第1コンタクト電極22の厚みT2よりも長く、第1コンタクト電極22の厚みT2よりも3倍以上長いことが好ましい。
【0046】
ホール内導体51は、コンタクトホール34の内側領域の形状と同様に、上下方向Zに直交する断面の面積が、上側の部位ほど大きくなるテーパ状(本形態においては円錐台形状)に形成されている。上下方向Zに直交するホール内導体51の断面の面積は、上下方向Zに直交する第1コンタクト電極22の面積の100%未満であることが好ましく、上下方向Zに直交する第1コンタクト電極22の面積の5%以上95%以下であることがより好ましい。第1コンタクト電極22の面積は、第1コンタクト電極22の上面の面積である。なお、本形態のように、ホール内導体51が複数形成されている場合において、上下方向Zに直交するホール内導体51の断面の面積とは、上下方向Zに直交するすべてのホール内導体51の断面の面積の合計を意味するものとする。また、本形態のように、各ホール内導体51がテーパ状に形成されているような場合は、上下方向Zの各位置において、ホール内導体51の断面の面積が、上下方向Zに直交する第1コンタクト電極22の面積の100%未満であることが好ましく、5%以上95%以下であることがより好ましい。ホール内導体51の下端部は、第1コンタクト電極22と電気的に接続されている。
【0047】
第1埋設部52は、第1開口部41内に充填されるよう形成されており、その下端部が各ホール内導体51の上端部に接続されている。図示は省略するが、第1埋設部52は、第1コンタクト電極22と上下方向Zに対向する櫛状の領域に形成されている。
【0048】
図1に示すごとく、第1露出部53は、上側から見たときの形状が横方向Xに長尺な略長方形状となるよう形成されている。
図2に示すごとく、第1露出部53の下端部が第1埋設部52に接続されている。
【0049】
第2パッド電極6は、無機被覆部4の第2開口部42に埋設された第2埋設部61と、無機被覆部4から上側に露出した第2露出部62とを一体的に備える。
【0050】
第2埋設部61は、第2開口部42内に充填されるよう形成されており、その下端部が第2コンタクト電極23の上面233に接続されている。図示は省略するが、第2埋設部61は、第2コンタクト電極23と上下方向Zに対向する櫛状の領域に形成されている。
【0051】
図1に示すごとく、第2露出部62は、上側から見たときの形状が横方向Xに長尺な略長方形状となるよう形成されている。第1露出部53と第2露出部62とは、縦方向Yに間隔をあけて並んでいる。
図2に示すごとく、第2露出部62の下端部が第2埋設部61に接続されている。
【0052】
第1パッド電極5と第2パッド電極6とのそれぞれは、それぞれ単一部材にて構成した例を示したが、複数の部材を上下方向Z等に接続して構成してもよい。
【0053】
第1パッド電極5の第1露出部53及び第2パッド電極6の第2露出部62は、例えば図示しないサブマウントの電極に実装される。例えば、発光素子1は、基板211がサブマウントと反対側に位置する姿勢で、サブマウントの電極に、金(Au)バンプ等を介してフリップチップ実装される。この場合、発光素子1から発される光は、主に素子本体2の基板211からサブマウントと反対側に取り出される。
【0054】
(発光素子1の製造方法)
次に、
図4乃至
図10を参照しつつ、本形態の発光素子1の製造方法の一例につき説明する。
【0055】
発光素子1の製造方法は、積層構造体形成工程、第1蒸着工程と、絶縁部形成工程と、第2蒸着工程と、有機被覆部形成工程と、無機被覆部形成工程と、第3蒸着工程とを有する。
【0056】
図4は、積層構造体形成工程及び第1蒸着工程後に得られる第1中間体11の断面図である。積層構造体形成工程は、積層構造体21を形成する工程である。積層構造体形成工程においては、まず、基板211上にバッファ層212、第1半導体層213、発光層214及び第2半導体層215が順次エピタキシャル成長される。エピタキシャル成長法としては、有機金属化学気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)、分子線エピタキシ法(Molecular Beam Epitaxy:MBE)、ハライド気相エピタキシ法(Hydride Vapor Phase Epitaxy:HVPE)等の周知のエピタキシャル成長法を用いることができる。各層をエピタキシャル成長させるための成長温度、成長圧力、及び成長時間等の製造条件については、各層の構成に応じた一般的な条件とすることができる。
【0057】
次いで、第2半導体層215の上面の所定箇所に、図示しないマスクが形成される。そして、マスクと上下方向Zに重ならない位置に形成された第2半導体層215及び発光層214が、エッチングにより除去される。これにより、第1半導体層213に、発光層214から上側に露出した露出上面213bが形成される。露出上面213bを形成した後、マスクを除去することで、積層構造体21が得られる。
【0058】
次いで、第1蒸着工程が行われる。第1蒸着工程においては、蒸着により、第1半導体層213の露出上面213b上に第1コンタクト電極22が形成される。例えば、バッファ層212上面から上側に位置する積層構造体21の表面であって、第1コンタクト電極22が形成される面以外の面にマスクが形成され、蒸着により第1コンタクト電極22が形成された後、マスクが除去される。蒸着としては、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法等を採用可能であり、これについては第2蒸着工程及び第3蒸着工程においても同様である。第1蒸着工程により、
図4に示す第1中間体11が得られる。
【0059】
次いで、絶縁部形成工程が行われる。
図5は、絶縁部形成工程後に得られる第2中間体12の断面図である。絶縁部形成工程においては、例えば化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法などの周知の技術を用いて、第1中間体11の表面のうちバッファ層212の上面から上側の面が、二酸化ケイ素又はアルミナ等の無機材料からなる薄膜にて覆われる。そして、形成された無機材料からなる薄膜のうち、第2コンタクト電極23が配される部位、及び第1コンタクト電極22の表面に形成された部位が除去されることで絶縁部24が形成され、
図5に示す第2中間体12が得られる。
【0060】
次いで、第2蒸着工程が行われる。
図6は、第2蒸着工程後に得られる素子本体2の断面図である。第2蒸着工程においては、蒸着により、第2コンタクト電極23と反射部25とが同時に形成される。例えば、第2蒸着工程においては、第2中間体12の、第2コンタクト電極23及び反射部25が形成される箇所以外がマスクで覆われ、蒸着により第2コンタクト電極23及び反射部25が同時形成され、その後マスクが除去される。このように、第2コンタクト電極23と反射部25とは、フォトリソグラフィ技術によって同時に形成され、第2コンタクト電極23と反射部25との厚みが互いに同じになる。第2蒸着工程により、
図6に示す素子本体2が得られる。
【0061】
次いで、有機被覆部形成工程が行われる。
図7は、有機被覆部形成工程において、素子本体2に液状の有機高分子材料30が塗布された状態を示す断面図である。
図8は、有機被覆部形成工程後に得られる第3中間体13を示す断面図である。有機被覆部形成工程においては、
図7に示すごとく、有機被覆部の原料となる液状の有機高分子材料30が、素子本体2の上に塗布される。塗布方法は、スプレーコート、スピンコートなど、種々の方法を採用することが可能である。有機高分子材料30の塗布の際は、第2コンタクト電極23の上面233が、有機高分子材料30から上側に露出される。なお、有機高分子材料30を塗布した直後の状態において、第2コンタクト電極23の上面233が有機高分子材料30に覆われていてもよいが、この場合は、第2コンタクト電極23の上側に形成された有機高分子材料30を後に除去される。
【0062】
有機高分子材料30の塗布後、有機高分子材料30に露光及び現像が行われ、
図8に示すごとく所定形状の有機被覆部3が形成される。このとき、有機高分子材料30から、外周部と、コンタクトホール34となる部位とが除去される。有機高分子材料30がネガ型のフォトレジストである場合は、有機高分子材料30の除去される箇所以外の箇所を上側から露光し、現像する。これにより、有機高分子材料30における露光された箇所が現像後に残り、有機被覆部3となる。露光時の光の拡散により、現像後のコンタクトホール34は、下側程内径が小さくなるよう形成される。また、有機高分子材料30がポジ型のフォトレジストである場合は、有機高分子材料30の除去される箇所を上側から露光し、現像する。これにより、有機高分子材料30における露光された箇所以外の箇所が現像後に残り、有機被覆部3となる。露光時、有機高分子材料30におけるコンタクトホール34となる部位は、上側の部位ほど強く光が当たるため、現像後のコンタクトホール34は、下側程内径が小さくなるよう形成される。有機被覆部形成工程によって、
図8に示す第3中間体13が得られる。
【0063】
次いで、無機被覆部形成工程が行われる。
図9は、無機被覆部形成工程の途中段階の状態を示す断面図である。
図10は、無機被覆部形成工程後の第4中間体14の断面図である。
図9に示すごとく、無機被覆部形成工程においては、例えば、化学気相成長法等の周知の技術を用いて、第3中間体13を上側から覆うよう無機被覆部4が形成される。無機被覆部4は、一旦、コンタクトホール34内にも形成される。
【0064】
そして、
図10に示すごとく、無機被覆部4におけるコンタクトホール34内の部位が除去され、第1パッド電極の第1埋設部(
図2の符号52参照)が形成される部位が除去されて第1開口部41が形成される。また、無機被覆部4における第2パッド電極の第2埋設部(
図2の符号61参照)が形成される部位が除去されて第2開口部42が形成される。無機被覆部4における第1開口部41及び第2開口部42の形成は、例えばフォトリソグラフィ技術を用いて実現可能である。無機被覆部形成工程にて、
図10に示す第4中間体14が得られる。
【0065】
次いで、第3蒸着工程が行われる。第3蒸着工程においては、図示は省略するが、無機被覆部4の上面における、第1パッド電極5及び第2パッド電極6を形成する箇所以外の箇所にマスクを形成し、蒸着により、第1パッド電極5及び第2パッド電極6を形成する。第1パッド電極5及び第2パッド電極6の形成後、マスクが除去される。
以上のように、本形態の発光素子1を製造することができる。
【0066】
(実施の形態の作用及び効果)
本形態の発光素子1は、素子本体2と、素子本体2の表面を平坦化する有機被覆部3と、有機被覆部3を覆う無機被覆部4とを備える。これにより、有機被覆部3及び無機被覆部4にクラックが生じ難い。すなわち、有機材料からなる有機被覆部3は、比較的クラックが生じ難く、また、無機被覆部4は、表面が平坦な有機被覆部3を覆っているため、有機被覆部3及び無機被覆部4にクラックが生じ難い。これらにクラックが生じると、クラックを通って水分が素子本体2に到達し、素子本体2を劣化させるおそれがあるが、本形態によれば素子本体2の劣化を抑制することができる。
【0067】
さらに、素子本体2は、積層構造体21と有機被覆部3との間に、発光層214から発される光を反射する反射部25を有する。それゆえ、発光層214から発される光が有機被覆部3にて吸収されることを抑制できる結果、発光素子1の発光出力が向上する。
【0068】
また、反射部25は、導体であり、かつ、第1コンタクト電極22及び第2コンタクト電極23から離れるよう形成されており、素子本体2は、反射部25と積層構造体21との間に、無機材料からなる絶縁部24を有する。それゆえ、発光素子1を発光させるべく発光素子1に電圧を印加した際、反射部25に電流が流れることを抑制できる結果、発光素子1の発光出力の低下を抑制できる。
【0069】
また、上下方向Zから見たときにおいて、反射部25と第1コンタクト電極22との最短距離をL1、反射部25と第2コンタクト電極23との最短距離をL2、第1コンタクト電極22と第2コンタクト電極23との最短距離をL3としたとき、L1及びL2のそれぞれは、0.05×L3以上0.45×L3以下を満たす。L1及びL2のそれぞれが0.05×L3以上を満たすことにより、反射部25と第1コンタクト電極22及び第2コンタクト電極23との間が導通することを抑制しやすい。また、L1及びL2のそれぞれが0.45×L3以下を満たすことで、反射部25と第1コンタクト電極22及び第2コンタクト電極23との間から有機被覆部3へ漏れる光の量を抑制しやすい。
【0070】
また、反射部25は、第1コンタクト電極22及び第2コンタクト電極23の少なくとも一方と同じ材料からなる。それゆえ、反射部25を形成するために、第1コンタクト電極22及び第2コンタクト電極23の材料以外の材料を新たに準備する必要がない。
【0071】
また、反射部25は、有機被覆部3及び無機被覆部4の双方と積層構造体21との間に形成されている。それゆえ、反射部25が広い範囲に形成され、発光層214から発された光が有機被覆部3に漏れることを一層抑制することができる。
【0072】
また、積層構造体21のうち、少なくとも発光層214及び第2半導体層215は、メサ構造となるよう形成されており、反射部25は、発光層214の側面214a及び第2半導体層215の側面215aに沿った傾斜部251を有する。それゆえ、素子本体2内を上側に向かう光は、傾斜部251にて反射されて下側に向かいやすくなり、発光層214から下側から取り出される光を増やすことができる。
【0073】
また、発光層214は、紫外光を発する。このような場合、発光層214が発する紫外光が有機被覆部3に到達すると、紫外光が有機被覆部3に吸収されるとともに有機被覆部3が劣化する。本形態においては、反射部25を備えるため、有機被覆部3へ紫外光が到達することを抑制できる結果、有機被覆部3による紫外光の吸収を抑制できるとともに、有機被覆部3の劣化を抑制できる。
【0074】
また、本形態の発光素子1の製造方法において、反射部25は、第1コンタクト電極22及び第2コンタクト電極23の少なくとも一方と同時に蒸着により形成される。それゆえ、発光素子1の生産性を向上させることができる。
【0075】
以上のごとく、本形態によれば、素子本体の劣化を抑制するとともに発光出力の低下を抑制することが可能な発光素子及び発光素子の製造方法を提供することができる。
【0076】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0077】
[1]本発明の第1の実施態様は、第1導電型の第1半導体層(213)、前記第1半導体層(213)上に形成された発光層(214)、及び前記発光層(214)上に形成されるとともに前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2半導体層(215)を有する積層構造体(21)を備える発光素子本体(2)と、前記発光素子本体(2)の表面を平坦化する、有機材料からなる有機被覆部(3)と、前記有機被覆部(3)を覆う、無機材料からなる無機被覆部(4)と、を備え、前記発光素子本体(2)は、前記積層構造体(21)と前記有機被覆部(3)との間に、前記発光層(214)から発される光を反射する反射部(25)を有する発光素子(1)である。
これにより、発光素子本体の劣化を抑制するとともに発光素子の発光出力の低下を抑制することができる。
【0078】
[2]本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様において、前記発光素子本体(2)が、前記第1半導体層(213)上に接続された第1コンタクト電極(22)と、前記第2半導体層(215)上に接続された第2コンタクト電極(23)と、を有し、前記反射部(25)が、導体であり、かつ、前記第1コンタクト電極(22)及び前記第2コンタクト電極(23)から離れて形成されており、前記発光素子本体(2)が、前記反射部(25)と前記積層構造体(21)との間に、無機材料からなる絶縁部(24)を有するであることである。
これにより、発光素子の発光出力の低下を抑制することができる。
【0079】
[3]本発明の第3の実施態様は、第2の実施態様において、前記第1半導体層(213)、前記発光層(214)、及び前記第2半導体層(215)の積層方向(Z)から見たときにおいて、前記反射部(25)と前記第1コンタクト電極(22)との最短距離をL1、前記反射部(25)と前記第2コンタクト電極(23)との最短距離をL2、前記第1コンタクト電極(22)と前記第2コンタクト電極(23)との最短距離をL3としたとき、前記L1及び前記L2のそれぞれが、0.05×L3以上0.45×L3以下を満たすことである。
これにより、反射部と、第1コンタクト電極及び第2コンタクト電極との間が導通することを抑制するとともに、発光層から発された光が有機被覆部へ漏れることを抑制することができる。
【0080】
[4]本発明の第4の実施態様は、第1乃至第3のいずれか1つの実施態様において、前記発光素子本体(2)が、前記第1半導体層(213)上に接続された第1コンタクト電極(22)と、前記第2半導体層(215)上に接続された第2コンタクト電極(23)と、を有し、前記反射部(25)が、前記第1コンタクト電極(22)及び第2コンタクト電極(23)の少なくとも一方と同じ材料からなることである。
これにより、反射部を形成するために、第1コンタクト電極及び第2コンタクト電極の材料以外の材料を新たに準備する必要がない。
【0081】
[5]本発明の第5の実施態様は、第1乃至第4のいずれか1つの実施態様において、前記反射部(25)が、前記有機被覆部(3)及び前記無機被覆部(4)の双方と前記積層構造体(21)との間に形成されていることである。
これにより、反射部が広い範囲に形成され、発光層から発された光が有機被覆部に漏れることを一層抑制することができる。
【0082】
[6]本発明の第6の実施態様は、第1乃至第5のいずれか1つの実施態様において、前記積層構造体(21)のうち、少なくとも前記発光層(214)及び前記第2半導体層(215)が、メサ構造となるよう形成されており、前記反射部(25)が、前記発光層(214)の側面(214a)及び第2半導体層(215)の側面(215a)に沿った傾斜部(251)を有することである。
これにより、発光素子本体内の光は、傾斜部にて反射されることで、特定の一方向に集光されやすくなる。
【0083】
[7]本発明の第7の実施態様は、第1乃至第6のいずれか1つの実施態様において、前記発光層(214)が、紫外光を発することである。
これにより、有機被覆部による紫外光の吸収を抑制できるとともに、有機被覆部の劣化を抑制できる。
【0084】
[8]本発明の第8の実施態様は、第1導電型の第1半導体層(213)、前記第1半導体層(213)上に位置する発光層(214)、及び前記発光層(214)上に位置するとともに前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2半導体層(215)を有する積層構造体(21)を製造する工程と、前記積層構造体(21)の表面に沿って反射部(25)を形成する工程と、前記積層構造体(21)及び前記反射部(25)を、有機材料からなる有機被覆部(3)にて覆って平坦化する工程と、前記有機被覆部(3)を、無機材料からなる無機被覆部(4)にて覆う工程と、を有する発光素子(1)の製造方法である。
これにより、発光素子本体が劣化し難く、かつ、発光出力を向上させやすい発光素子を製造することが可能となる。
【0085】
[9]本発明の第9の実施態様は、第8の実施態様において、前記第1半導体層(213)の表面に第1コンタクト電極(22)を蒸着により形成し、前記第2半導体層(215)の表面に第2コンタクト電極(23)を蒸着により形成する工程をさらに備え、前記反射部(25)が、前記第1コンタクト電極(22)及び前記第2コンタクト電極(23)の少なくとも一方と同時に蒸着により形成されることである。
これにより、発光素子の生産性を向上させることができる。
【0086】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1…発光素子
2…発光素子本体
21…積層構造体
213…第1半導体層
214…発光層
214a…側面
215…第2半導体層
215a…側面
22…第1コンタクト電極
23…第2コンタクト電極
24…絶縁部
25…反射部
251…傾斜部
3…有機被覆部
4…無機被覆部
Z…積層方向