(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】造形方法、スライスデータの生成方法、造形装置、及びスライスデータ生成装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20231006BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20231006BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231006BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231006BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20231006BHJP
【FI】
B29C64/386
B33Y50/00
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/112
(21)【出願番号】P 2022069913
(22)【出願日】2022-04-21
(62)【分割の表示】P 2018095706の分割
【原出願日】2018-05-17
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】原山 健次
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/204094(WO,A1)
【文献】特開2018-039126(JP,A)
【文献】特開2017-097517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的な造形物を造形する造形方法であって、
造形しようとする前記造形物を示すデータである造形物データを準備する造形物データ準備段階と、
前記造形物の断面を示すデータであるスライスデータを前記造形物データに基づいて生成する段階であり、互いに異なる位置における前記造形物の断面をそれぞれが示す複数のスライスデータを生成するスライスデータ生成段階と、
前記複数のスライスデータに基づいて前記造形物を造形する造形段階と
を備え、
前記造形物データ準備段階において、それぞれが前記造形物の一部を示すデータである複数のパーツデータを含む前記造形物データを準備し、
前記造形物データが含む複数の前記パーツデータのうち、少なくとも一部の前記パーツデータが示す部分は、他の前記パーツデータが示す部分の周囲を囲む部分であり、
それぞれの前記パーツデータは、当該パーツデータが示す部分の
立体的な外面形状と、当該部分の外面に対して着色される色とを少なくとも示すデータであり、
前記スライスデータ生成段階において、それぞれの前記パーツデータが示す部分に対応する断面の各位置の色を設定することにより、前記造形物の断面を示す前記スライスデータを生成し、かつ、それぞれの前記パーツデータが示す部分の内部の色について、前記外面に対して設定されている色に基づいて設定
することを特徴とする造形方法。
【請求項2】
前記造形段階において、互いに異なる複数色の前記造形の材料を吐出するヘッド部から、前記スライスデータに基づいて複数色の前記造形の材料を吐出することで、前記パーツデータが示す部分の内部における少なくとも一部が着色された前記造形物を造形することを特徴とする請求項1に記載の造形方法。
【請求項3】
前記スライスデータ生成段階において、それぞれの前記パーツデータが示す部分に対応する断面の外周の各位置における法線方向を算出し、当該パーツデータが示す部分のうち、少なくとも前記外周の近傍について、前記法線方向に沿った各位置に対し、同じ色を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の造形方法。
【請求項4】
前記スライスデータ生成段階において、それぞれの前記パーツデータが示す部分の内部の色を設定することにより、それぞれの前記パーツデータが示す部分の合間に対して前記造形段階において隙間なく造形の材料が充填されるように、前記スライスデータを生成することを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載の造形方法。
【請求項5】
前記パーツデータは、当該パーツデータが示す部分の内部に対して色の設定が行われていないデータであることを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の造形方法。
【請求項6】
前記パーツデータにおいて、前記外面に対して着色される色は、テクスチャマッピングにより設定されていることを特徴とする請求項1から
5のいずれかに記載の造形方法。
【請求項7】
立体的な造形物の断面を示すデータであるスライスデータを生成するスライスデータの生成方法であって、
造形しようとする前記造形物を示すデータである造形物データを準備する造形物データ準備段階と、
前記スライスデータを前記造形物データに基づいて生成する段階であり、互いに異なる位置における前記造形物の断面をそれぞれが示す複数のスライスデータを生成するスライスデータ生成段階と
を備え、
前記造形物データ準備段階において、それぞれが前記造形物の一部を示すデータである複数のパーツデータを含む前記造形物データを準備し、
前記造形物データが含む複数の前記パーツデータのうち、少なくとも一部の前記パーツデータが示す部分は、他の前記パーツデータが示す部分の周囲を囲む部分であり、
それぞれの前記パーツデータは、当該パーツデータが示す部分の
立体的な外面形状と、当該部分の外面に対して着色される色とを少なくとも示すデータであり、
前記スライスデータ生成段階において、それぞれの前記パーツデータが示す部分に対応する断面の各位置の色を設定することにより、前記造形物の断面を示す前記スライスデータを生成し、
かつ、それぞれの前記パーツデータが示す部分の内部の色について、前記外面に対して設定されている色に基づいて設定
することを特徴とするスライスデータの生成方法。
【請求項8】
立体的な造形物を造形する造形装置であって、
請求項
7に記載のスライスデータの生成方法で生成された複数のスライスデータに基づいて前記造形物を造形することを特徴とする造形装置。
【請求項9】
立体的な造形物の断面を示すデータであるスライスデータを生成するスライスデータ生成装置であって、
造形しようとする前記造形物を示すデータである造形物データに基づき、前記スライスデータを生成し、かつ、互いに異なる位置における前記造形物の断面をそれぞれが示す複数のスライスデータを生成し、
前記造形物データとして、それぞれが前記造形物の一部を示すデータである複数のパーツデータを含むデータを用い、
前記造形物データが含む複数の前記パーツデータのうち、少なくとも一部の前記パーツデータが示す部分は、他の前記パーツデータが示す部分の周囲を囲む部分であり、
それぞれの前記パーツデータは、当該パーツデータが示す部分の
立体的な外面形状と、当該部分の外面に対して着色される色とを少なくとも示すデータであり、
前記スライスデータを生成する動作において、それぞれの前記パーツデータが示す部分に対応する断面の各位置の色を設定することにより、前記造形物の断面を示す前記スライスデータを生成し、
かつ、それぞれの前記パーツデータが示す部分の内部の色について、前記外面に対して設定されている色に基づいて設定
することを特徴とするスライスデータ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形方法、スライスデータの生成方法、造形装置、及びスライスデータ生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドを用いて造形物を造形する造形装置(3Dプリンタ)が知られている。このような造形装置においては、例えば、インクジェットヘッドにより形成するインクの層を複数層重ねることにより、積層造形法で造形物を造形する。また、従来、着色された造形物を造形する方法に関し、例えば、着色用の材料で造形物の表面を形成することで、表面が着色された造形物を造形する方法等が知られている。また、近年、着色された造形物の造形の仕方に関し、白色材料と加飾用材料とを混在させて造形物の内部を形成することで、造形物の内部に対してまで着色を行うことも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
造形物の内部に対して着色を行う場合、例えば、造形物で表現する物の実際の内部と同じように、造形物の内部を着色することが考えられる。そして、この場合、造形物の内部について、領域によって異なる色での着色を行うことが必要になる。しかし、立体的な構造を示すデータである3Dデータは、通常、内部の詳細な構造までは示さず、表面の形状等のみを示す。そのため、例えば広く用いられている一般的な形式の3Dデータを用いる場合、造形物の内部の各色の色等を指定することが難しくなると考えられる。
【0005】
これに対し、例えば特別な形式の3Dデータを用いれば、立体的な構造について、内部の各位置の色等まで指定することも可能である。しかし、この場合、従来と大きく異なる方法で造形物を示す3Dデータを作成することが必要になり、3Dデータを用意する作業に大きな手間がかかるおそれがある。また、この場合、造形物の内部の各位置の色等を全
て指定することで、3Dデータのデータ量が大きく増大するおそれもある。また、この場合、造形物を示す3Dデータの作成について、広く用いられている公知の3DCAD等では行えなくなること等も考えられる。
【0006】
そのため、造形物の内部に対して着色を行う場合において、従来、より適切な方法で3Dデータを準備して、より適切な方法で造形を行うことが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる造形方法、スライスデータの生成方法、造形装置、及びスライスデータ生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明者は、造形物の内部に対して着色を行う場合等に関し、より適切に造形を行う方法について、鋭意研究を行った。そして、造形しようとする造形物を複数のパーツに分けて考え、造形物を示すデータである造形物データについて、各パーツを示すパーツデータの集合により表現することを考えた。また、この場合、各パーツデータとして、各パーツの外面形状と、外面の色とを指定するデータを用いることを考えた。この場合、それぞれのパーツデータや、パーツデータを組み合わせた造形物データとして、例えば広く用いられている一般的な形式の3Dデータを用いることが可能になる。また、これにより、例えば、データ量が過度に大きくなることを防ぎつつ、造形物の内部の状態を適切に示すことができる。また、この場合、例えば、3Dデータの作成について、広く用いられている公知の3DCAD等を用いて行うこと等も可能になる。
【0008】
また、造形物を造形する場合、例えば、造形物の断面を示すスライスデータを造形物データに基づいて生成して、スライスデータに基づき、造形の動作を実行する。そして、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような造形物データを用いる場合において、スライスデータの生成時に、各パーツデータが示す部分の内部の色について、外面に対して設定されている色に基づいて設定することを考えた。このように構成すれば、上記のようなパーツデータで構成される造形物データに基づき、スライスデータを適切に生成することができる。また、これにより、造形物の造形を適切に実行することができる。また、本願の発明者は、上記のような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、上記の課題を解決するために、本発明は、立体的な造形物を造形する造形方法であって、造形しようとする前記造形物を示すデータである造形物データを準備する造形物データ準備段階と、前記造形物の断面を示すデータであるスライスデータを前記造形物データに基づいて生成する段階であり、互いに異なる位置における前記造形物の断面をそれぞれが示す複数のスライスデータを生成するスライスデータ生成段階と、前記複数のスライスデータに基づいて前記造形物を造形する造形段階とを備え、前記造形物データ準備段階において、それぞれが前記造形物の一部を示すデータである複数のパーツデータを含む前記造形物データを準備し、前記造形物データが含む複数の前記パーツデータのうち、少なくとも一部の前記パーツデータが示す部分は、他の前記パーツデータが示す部分の周囲を囲む部分であり、それぞれの前記パーツデータは、当該パーツデータが示す部分の外面形状と、当該部分の外面に対して着色される色とを少なくとも示すデータであり、前記スライスデータ生成段階において、それぞれの前記パーツデータが示す部分に対応する断面の各位置の色を設定することにより、前記造形物の断面を示す前記スライスデータを生成し、かつ、それぞれの前記パーツデータが示す部分の内部の色について、前記外面に対して設定されている色に基づいて設定することを特徴とする。
【0010】
このように構成すれば、例えば、造形物データにおいて、造形物の内部の色を適切に設定することができる。また、造形物データに基づき、スライスデータを適切に生成し、スライスデータに基づき、造形の動作を適切に実行することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、内部が着色された造形物を適切に造形することができる。
【0011】
また、この構成において、造形段階では、例えば、互いに異なる複数色の造形の材料を吐出するヘッド部から、スライスデータに基づいて複数色の造形の材料を吐出する。また、これにより、例えば、パーツデータが示す部分の内部における少なくとも一部が着色された造形物を造形する。このように構成すれば、例えば、内部が着色された造形物の造形をより適切に実行することができる。
【0012】
また、この構成において、スライスデータ生成段階では、例えば、それぞれのパーツデータが示す部分に対応する断面の外周の各位置における法線方向(法線ベクトル)を算出する。そして、そのパーツデータが示す部分のうち、少なくとも外周の近傍について、法線方向に沿った各位置に対し、同じ色を設定する。この場合、それぞれのパーツデータが示す部分のうち、内側の他のパーツデータと重なっていない部分について、法線方向に沿った各位置に対し、同じ色を設定することが考えられる。より具体的に、例えば、他のパーツデータが示す部分の周囲を囲む部分を示すパーツデータを外側データと定義し、当該他のパーツデータを内側データと定義した場合、スライスデータ生成段階において、外側データが示す部分から内側データが示す部分を除いた部分に対し、外側データの法線方向に沿った各位置に対し、同じ色を設定することが考えられる。このように構成すれば、各パーツデータにおいて外面に設定されている色に基づき、パーツデータに対応する部分の内部に対し、色を適切に設定することができる。
【0013】
また、この場合、スライスデータ生成段階では、例えば、それぞれのパーツデータが示す部分の内部の色を設定することにより、それぞれのパーツデータが示す部分の合間に対して造形段階において隙間なく造形の材料が充填されるように、スライスデータを生成する。この場合、それぞれのパーツデータが示す部分の合間とは、例えば、それぞれのパーツデータが示す外面形状に挟まれる領域のことである。このように構成すれば、例えば、各パーツデータが示す部分の間に余計な隙間等を生じさせることなく、スライスデータを適切に生成することができる。また、これにより、造形段階において、内部に余計な隙間等を生じさせることなく、造形物を適切に造形することができる。
【0014】
また、スライスデータ生成段階では、造形物データが含む複数のパーツデータについて、より具体的に、例えば、順番に選択して、選択したパーツデータが示す部分に対応する断面の各位置の色を設定することが考えられる。この場合、複数のパーツデータについて、順番に選択するとは、例えば、一つのスライスデータを生成する動作の中で、順番に選択することである。パーツデータを選択する順番については、例えば、造形物データの生成時に、予め設定することが考えられる。また、この場合、例えば、複数のレイヤーで構成されるデータ形式の造形物データを用いて、レイヤー単位で順番を設定することが考えられる。
【0015】
より具体的に、この場合、レイヤーとは、例えば、3D空間の同じ位置で論理的に重なる互いに独立な空間に対応する構成のことである。また、レイヤーについては、例えば、3Dデータを編集するソフトウェア(例えば、3DCADのソフトウェア)等で定義されている一般的なレイヤー(3Dレイヤー)と同一又は同様の構成等と考えることもできる。また、この構成においては、例えば、造形物データの作成を行うソフトウェア等において予め順序づけられている複数のレイヤーを用いることが考えられる。また、例えば一つのパーツデータに対応する部分を一つのレイヤーに含めることで、それぞれのパーツデータについて、いずれかの一つのレイヤーに対応付けることが考えられる。この場合、スライスデータ生成段階では、例えば、複数のレイヤーのそれぞれを、予め設定された順番で選択して、選択したレイヤーに対応付けられているパーツデータが示す部分に対応する断面の各位置の色を設定する。このように構成すれば、例えば、造形物データの作成時等にレイヤーとの対応付けにより設定される順番で、それぞれのパーツデータを適切に選択す
ることができる。
【0016】
また、この場合、複数のパーツデータについては、造形物の外側の部分に対応するパーツデータから順番に選択を行うことが好ましい。より具体的に、この場合、例えば、他のパーツデータが示す部分の周囲を囲む部分を示すパーツデータについて、当該他のパーツデータよりも先に選択することが考えられる。このように構成すれば、例えば、一定のルールに従って、それぞれのパーツデータを適切に選択することができる。また、この場合、パーツを選択する順番について、必ずしも予め設定するのではなく、それぞれのパーツデータが示す部分の位置関係に基づき、スライスデータ生成段階において順番を決定してもよい。
【0017】
また、スライスデータの生成時には、先に選択したパーツデータに基づいて設定した色について、後で選択するパーツデータに基づき、色の上書き処理等を行うことが考えられる。より具体的に、他のパーツデータが示す部分の周囲を囲む部分を示す外側データと、当該他のパーツデータである内側データとに関し、スライスデータ生成段階において、外側データが示す部分の内部の色を設定する場合、例えば、内側が示す部分にも、外側データが示す部分の外面に対して設定されている色に基づいて、色を設定する。そして、その後、内側データが示す部分の内部の色を設定する場合において、当該内部の色について、外側データが示す部分の内部の色の設定時に設定されている色を変更する上書き処理を行うことで、内側データが示す部分の外面に対して設定されている色に基づき、色を設定する。このように構成すれば、例えば、それぞれのパーツデータに基づく色の設定を適切に行うことができる。
【0018】
また、この構成において、パーツデータとしては、例えば、そのパーツデータが示す部分の内部に対して色の設定が行われていないデータを好適に用いることができる。また、より具体的に、このようなパーツデータとしては、例えば、外面の形状及び色のみが指定されたデータ等を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、少ないデータ量のパーツデータにより、造形物の各部の状態を適切に指定することができる。また、パーツデータにおいて、外面に対して着色される色は、例えば、テクスチャマッピングにより設定することが考えられる。このように構成すれば、例えば、パーツデータにおいて、外面の色を適切に設定することができる。
【0019】
また、上記の造形方法については、例えば、造形物の製造方法と考えることもできる。また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有するスライスデータの生成方法、造形装置、及びスライスデータ生成装置等を用いることも考えられる。これらの場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、造形物の内部に対して着色を行う場合等に、より適切に造形を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る造形システム10の一例を示す図である。
図1(a)は、造形システム10の構成の一例を示す。
図1(b)は、造形装置12の要部の構成の一例を示す。
図1(c)は、ヘッド部102の構成の一例を示す。
【
図2】造形物データ及びスライスデータについて更に詳しく説明をする図である。
図2(a)は、造形物データの形式について説明をする図である。
図2(b)は、本例において生成するスライスデータ400の一例を示す。
【
図3】パーツの内部に対応する領域への色の設定の仕方の例を示す図である。
図3(a)は、本例において行う色の設定の仕方の一例を示す。
図3(b)は、色の設定の仕方の他の例を示す。
【
図4】一つのスライスデータにおける各領域に対して色を設定する動作について説明をする図である。
図4(a)は、領域402aに対して色を設定する動作の一例を示す。
図4(b)は、領域402aに対して色を設定する動作の変形例を示す。
図4(c)は、領域402bに対して色を設定する動作の一例を示す。
【
図5】領域402c~fに対して色を設定する動作の一例を示す図である。
【
図6】スライスデータを生成する動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】スライスデータを生成する動作の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る造形システム10の一例を示す。
図1(a)は、造形システム10の構成の一例を示す。本例において、造形システム10は、立体的な造形物を造形する造形システムであり、造形装置12及び制御PC14を備える。
【0023】
造形装置12は、造形物の造形を実行する装置であり、制御PC14の制御に応じて、造形物を造形する。また、より具体的に、造形装置12は、フルカラーでの着色がされた造形物を造形可能なフルカラー造形装置であり、造形しようとする造形物を示すデータを制御PC14から受け取り、このデータに基づいて、造形物を造形する。また、本例において、造形装置12は、外部から色彩が視認できる表面のみではなく、内部についても着色がされた造形物(バルクカラー着色がされた造形物)を造形する。この場合、造形物の表面から最も遠い造形物の中心に対しても加飾がされるように、造形物の内部の全体に対して着色を行うことで、高品質な造形物を造形することができる。このような造形物の造形の仕方については、以下において詳しく説明をする。
【0024】
また、本例において、造形装置12は、造形物を示すデータとして、造形しようとする造形物の全体を示す造形物データを受け取る。また、造形装置12は、造形物データに基づき、予め設定された積層方向における互いに異なる位置での造形物の断面をそれぞれ示す複数のスライスデータを生成する。そして、それぞれのスライスデータに基づき、造形物を構成するそれぞれの層を形成する。
【0025】
制御PC14は、造形装置12の動作を制御するコンピュータ(ホストPC)である。制御PC14は、例えば造形装置12に実行させる造形のジョブを管理し、造形物データを造形装置12へ供給することで、造形装置12による造形の動作を管理する。
【0026】
尚、上記のように、本例において、スライスデータの生成は、造形装置12において行う。しかし、造形システム10の構成の変形例においては、例えば、制御PC14において、スライスデータを生成してもよい。この場合、制御PC14は、造形装置12へスライスデータを供給することにより、造形装置12の動作を制御する。また、上記のように、本例において、造形システム10は、複数の装置である造形装置12及び制御PC14により構成されている。しかし、造形システム10の変形例において、造形システム10は、一台の装置により構成されてもよい。この場合、例えば、制御PC14の機能を含む一台の造形装置12により造形システム10を構成すること等が考えられる。
【0027】
続いて、造形装置12の具体的な構成について、説明をする。
図1(b)は、造形装置12の要部の構成の一例を示す。本例において、造形装置12は、立体的な造形物50を造形する造形装置であり、ヘッド部102、造形台104、走査駆動部106、及び制御部110を有する。
【0028】
尚、以下に説明をする点を除き、造形装置12は、公知の造形装置と同一又は同様の構
成を有してよい。より具体的に、以下に説明をする点を除き、造形装置12は、インクジェットヘッドを用いて造形物50の材料となる液滴を吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。また、造形装置12は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形等に必要な各種構成を更に備えてよい。また、本例において、造形装置12は、積層造形法により立体的な造形物50を造形する造形装置(3Dプリンタ)である。この場合、積層造形法とは、例えば、複数の層を重ねて造形物50を造形する方法である。造形物50とは、例えば、立体的な三次元構造物のことである。また、本例において、造形装置12により行う造形の動作は、造形段階の動作の一例である。
【0029】
ヘッド部102は、造形物50の材料を吐出する部分である。また、本例において、造形物50の材料としては、インクを用いる。この場合、インクとは、例えば、機能性の液体のことである。また、本例において、インクについては、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体等と考えることもできる。また、より具体的に、ヘッド部102は、造形物50の材料として、複数のインクジェットヘッドから、所定の条件に応じて硬化するインクを吐出する。そして、着弾後のインクを硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成して、積層造形法で造形物を造形する。また、本例では、インクとして、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる。また、ヘッド部102は、造形物50の材料に加え、サポート層52の材料を更に吐出する。これにより、ヘッド部102は、造形物50の周囲に、必要に応じて、サポート層52を形成する。サポート層52とは、例えば、造形中の造形物50の外周を囲むことで造形物50を支持する積層構造物のことである。サポート層52は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。
【0030】
造形台104は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部102におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50を上面に載置する。また、本例において、造形台104は、少なくとも上面が積層方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、走査駆動部106に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、少なくとも上面を移動させる。積層方向とは、例えば、積層造形法において造形の材料が積層される方向のことである。また、本例において、積層方向は、造形装置12において予め設定される主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向である。
【0031】
走査駆動部106は、造形中の造形物50に対して相対的に移動する走査動作をヘッド部102に行わせる駆動部である。この場合、造形中の造形物50に対して相対的に移動するとは、例えば、造形台104に対して相対的に移動することである。また、ヘッド部102に走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部102が有するインクジェットヘッドに走査動作を行わせることである。また、本例において、走査駆動部106は、主走査動作(Y走査)、副走査動作(X走査)、及び積層方向走査(Z走査)をヘッド部102に行わせる。
【0032】
主走査動作とは、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作のことである。本例において、走査駆動部106は、主走査方向における造形台104の位置を固定して、ヘッド部102の側を移動させることにより、ヘッド部102に主走査動作を行わせる。また、走査駆動部106は、例えば、主走査方向におけるヘッド部102の位置を固定して、例えば造形台104を移動させることにより、造形物50の側を移動させてもよい。副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形中の造形物50に対して相対的に移動する動作のことである。また、より具体的に、副走査動作は、例えば、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台104に対して相対的に移動する動作である。本例において、走査駆動部106は、主走査動作の合間に、副走査方向におけるヘッド部102の位置を固定して、造形台104を移
動させることにより、ヘッド部102に副走査動作を行わせる。また、走査駆動部106は、副走査方向における造形台104の位置を固定して、ヘッド部102を移動させることにより、ヘッド部102に副走査動作を行わせてもよい。
【0033】
積層方向走査とは、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に積層方向へヘッド部102を移動させる動作のことである。また、走査駆動部106は、造形の動作の進行に合わせてヘッド部102に積層方向走査を行わせることにより、積層方向において、造形中の造形物50に対するインクジェットヘッドの相対位置を調整する。また、より具体的に、本例の積層方向走査において、走査駆動部106は、積層方向におけるヘッド部102の位置を固定して、造形台104を移動させる。走査駆動部106は、積層方向における造形台104の位置を固定して、ヘッド部102を移動させてもよい。
【0034】
制御部110は、例えば造形装置12のCPUであり、造形装置12の各部を制御することにより、造形物50の造形の動作を制御する。また、本例において、制御部110は、制御PC14から受け取る造形物データに基づき、複数のスライスデータを生成する。この場合、制御部110を有する造形装置12について、例えば、スライスデータ生成装置を兼ねていると考えることができる。また、本例において、制御部110は、生成したそれぞれのスライスデータに基づき、造形装置12の各部を制御する。この場合、制御部110は、例えば、ヘッド部102における各インクジェットヘッドの動作を制御することにより、造形物の造形に用いるインクを各インクジェットヘッドに吐出させる。本例によれば、造形物50を適切に造形できる。また、造形物データからスライスデータを生成する動作については、後に更に詳しく説明をする。
【0035】
続いて、造形装置12におけるヘッド部102の構成について、更に詳しく説明をする。
図1(c)は、ヘッド部102の構成の一例を示す。本例において、ヘッド部102は、複数のインクジェットヘッド、複数の紫外線光源204、及び平坦化ローラ206を有する。また、複数のインクジェットヘッドとして、図中に示すように、インクジェットヘッド202s、インクジェットヘッド202w、インクジェットヘッド202y、インクジェットヘッド202m、インクジェットヘッド202c、インクジェットヘッド202k、及びインクジェットヘッド202tを有する。これらの複数のインクジェットヘッドは、例えば、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。また、それぞれのインクジェットヘッドは、造形台104と対向する面に、所定のノズル列方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。また、本例において、ノズル列方向は、副走査方向と平行な方向である。
【0036】
また、これらのインクジェットヘッドのうち、インクジェットヘッド202sは、サポート層52の材料を吐出するインクジェットヘッドである。サポート層52の材料としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。インクジェットヘッド202wは、白色(W色)のインクを吐出するインクジェットヘッドである。また、本例において、白色のインクは、光反射性のインクの一例であり、着色用の有色のインクと共に造形物50の各部を構成することで、造形物50の内部において、造形物50の外部から入射した光を反射する。また、これにより、造形物50において、白色のインクは、減法混色法での色表現における背景として機能する。
【0037】
インクジェットヘッド202y、インクジェットヘッド202m、インクジェットヘッド202c、インクジェットヘッド202k(以下、インクジェットヘッド202y~kという)は、着色用の有色のインクを吐出する着色用のインクジェットヘッドである。より具体的に、インクジェットヘッド202yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。また、インクジェット
ヘッド202kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。この場合、YMCKの各色は、減法混色法によるフルカラー表現に用いるプロセスカラーの一例である。また、本例において、YMCKの各色のインクは、白色のインクと共に造形物50の各部を構成することで、造形物50の各部を着色する。
【0038】
また、インクジェットヘッド202tは、クリアインクを吐出するインクジェットヘッドである。クリアインクとは、例えば、無色の透明色(T)であるクリア色のインクのことである。本例において、クリアインクは、例えば、造形物50の表面に透明な保護層を形成する場合等に用いられる。また、クリアインクについては、必要に応じて、造形物50のおける保護層以外の形成に用いてもよい。より具体的に、この場合、例えば、造形物50において着色がされる部分の形成時において、色の違いによって生じるYMCKの各色のインクの使用量の合計の変化を補填するためにクリアインクを用いること等が考えられる。また、この場合、造形物50の各部について、白インクと、着色用の有色のインクと、クリアインクとを用いて形成すると考えることができる。
【0039】
ここで、上記においても説明をしたように、本例において、ヘッド部102は、制御部110の制御に応じて、各インクジェットヘッドからインクを吐出する。また、制御部110は、スライスデータに基づき、造形システム10の各部の動作を制御する。そのため、ヘッド部102の動作については、例えば、スライスデータに基づいて複数色のインクを吐出する動作等と考えることができる。
【0040】
複数の紫外線光源204は、インクを硬化させるための光源(UV光源)であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。また、本例において、複数の紫外線光源204のそれぞれは、間にインクジェットヘッドの並びを挟むように、ヘッド部102における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。紫外線光源204としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源204として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。平坦化ローラ206は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための平坦化手段である。平坦化ローラ206は、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。
【0041】
以上のような構成のヘッド部102を用いることにより、造形物50を構成するインクの層を適切に形成できる。また、複数のインクの層を重ねて形成することにより、造形物50を適切に造形できる。
【0042】
続いて、造形物データに基づいてスライスデータを生成する動作等について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例において、スライスデータは、造形しようとする造形物50の断面を示すデータである。また、造形装置12は、外部から色彩が視認できる表面のみではなく、内部についても着色がされた造形物50を造形する。そして、この場合、スライスデータとして、造形物50の内部に対応する部分も含めて、造形物50の断面の各位置の色を示すデータを用いることになる。また、この場合、スライスデータについて、造形物50の断面の全体に対応する部分に色が付けられたカラー画像データに相当するデータ等と考えることもできる。
【0043】
また、本例において、造形装置12における制御部110は、造形物50の全体を示す造形物データに基づき、50の各位置の断面をそれぞれが示す複数のスライスデータを生成する。そして、この場合、上記のようなスライスデータを生成するためには、造形物データとしても、造形物50の内部の色に関する情報を含むデータを用いることが必要になる。また、この点に関し、最も単純に考えるのであれば、造形物データとして、例えば造形しようとする造形物50の立体的な構造について内部まで含めて忠実に表現するデータ
(例えば、三次元空間における各位置に対して個別に色が指定された3Dデータ)等を用いることが考えられる。しかし、この場合、造形物50の内部の各位置の色等を全て指定することで、データ量が大きく増大するおそれもある。また、造形物データとして、特別な形式なデータを用いることが必要になり、造形物データを用意する作業に大きな手間がかかるおそれがある。また、造形物データの作成について、公知の3DCAD等では行えなくなること等も考えられる。そこで、本例においては、造形物データとして、造形物50の立体的な構造を忠実に表現するデータ等ではなく、より少ないデータ量で造形物50を示す形式のデータを用いる。
【0044】
図2は、本例において用いる造形物データ及びスライスデータについて更に詳しく説明をする図である。
図2(a)は、造形物データの形式について説明をする図であり、3DCAD等のソフトウェアを用いて作成中の造形物データの構成の一例を示す。また、
図2(a)については、例えば、造形物データの3Dデータの構成を示すイメージ図等と考えることもできる。また、より具体的に、
図2(a)においては、西瓜を表現する造形物を造形しようとする場合について、この造形物に対応する造形物データ300の構成の一例を模式的に示している。
【0045】
造形物データ300の作成や編集は、ユーザにより、例えば制御PC14(
図1参照)又は他のコンピュータ等において、公知の3DCADのソフトウェアを用いて行うことが考えられる。また、より具体的に、本例においては、レイヤー機能を有する3DCADのソフトウェアを用いて、造形物データ300の作成や編集を行う。この場合、レイヤーとは、例えば、3Dデータを編集するソフトウェア(例えば、3DCADのソフトウェア)等で定義されている一般的なレイヤー(3Dレイヤー)のことである。また、レイヤーについては、例えば、3D空間の同じ位置で論理的に重なる互いに独立な空間に対応する構成等と考えることもできる。
【0046】
尚、本例において、造形物データ300を作成する動作は、造形物データ準備段階の動作の一例である。また、
図2(a)においては、図示の便宜上、グレースケール画像での図示を行っている。しかし、実際の造形物データ300においては、造形しようとする造形物の色に合わせて、フルカラーでの色が設定されている。また、この図では、西瓜の内部に対応する造形物の内部にまで色が設定されていることを示すために、一部を切断して、中身が見える状態で造形物データ300の構成の例を図示している。しかし、実際の造形物データ300としては、例えば実際の西瓜と同様に、外側から直接的には中身を視認できない状態で造形物を示すデータを用いることが考えられる。
【0047】
また、本例において、造形物データ300が示す造形物は、図中に示すように、複数のパーツ302a~fにより構成されている。この場合、複数のパーツ302a~fのそれぞれは、造形物の一部を示す部分である。より具体的に、図中に示す場合において、パーツ302aは、西瓜の表面の部分を示している。また、パーツ302bは、パーツ302aが示す部分の内側の部分を示している。パーツ302cは、パーツ302bが示す部分の内側の部分を示している。パーツ302dは、パーツ302cが示す部分の更に内側の部分を示している。パーツ302eは、パーツ302dが示す部分の更に内側の部分を示している。また、パーツ302fは、パーツ302eが示す部分の内側にある西瓜のタネに相当する部分を示している。
【0048】
また、本例の造形物データ300において、パーツ302a~fのそれぞれは、各パーツに対応するパーツデータにより示されている。この場合、パーツデータとは、造形物の一部を示すデータであり、パーツの外面形状と、パーツに対応する部分の外面に対して着色される色(外面の色)とを少なくとも示す。この場合、パーツの形状に関し、外面形状を示すとは、例えば、厚みのない、又は厚みに意味のない曲面の形状により外面の形状を
指定することである。また、より具体的に、本例のパーツデータにおいて、色については、外面の色のみを示す。この場合、外面の色のみを示すとは、例えば、パーツの内部に対しては色の設定が行われていないことである。また、このようなパーツデータについては、例えば、パーツの外面の形状及び色のみが指定されたデータ等と考えることもできる。
【0049】
また、本例のパーツデータにおいて、外面に対して着色される色は、例えば、テクスチャマッピングにより設定される。テクスチャマッピングとは、例えば、立体形状の表面にテクスチャを貼り付けるようにして立体形状の表面の各位置の質感(色等)を設定することである。また、テクスチャとは、例えば、コンピュータグラフィックスにおいて、三次元のオブジェクト表面に貼り付けられる模様のことである。また、この場合、パーツの位置毎に設定すべき色を示すテクスチャ(例えば、カラー画像を示すテクスチャ等)を貼り付けることで、パーツの外面の各位置に対し、色の設定を行う。このように構成すれば、例えば、パーツデータにおいて、外面の色を適切に設定することができる。
【0050】
また、より具体的に、図示した場合において、パーツ302a~fのそれぞれに対応するパーツデータについて、外面の色としては、それぞれのパーツの位置に応じて、西瓜の各部の色が設定されている。例えば、西瓜の外側の部分に対応するパーツ302aを示すパーツデータの場合、外面の各位置に対し、緑の地色の中に黒い縞が入るような西瓜の外側の模様を示すテクスチャにより、パーツの表面の色を設定する。また、西瓜の表面と実との間の各位置の部分に対応するパーツ302b~dのそれぞれを示すパーツデータにおいては、西瓜における各位置の色を示すテクスチャにより、パーツの表面の色を設定する。この場合、パーツ302bの表面には、例えば、西瓜の表面における緑色よりも黄色味が強い黄緑色を設定することが考えられる。また、パーツ302cの表面には、例えば、薄い黄色又はそれに近い色を設定することが考えられる。パーツ302dの表面には、例えば、オレンジ又はそれに近い色を設定することが考えられる。また、西瓜の実の部分に対応するパーツ302eを示すパーツデータにおいては、西瓜の実の色である赤色を示すテクスチャにより、パーツの表面の色を設定する。また、西瓜のタネに相当するパーツ302fを示すパーツデータにおいては、タネの色である黒色を示すテクスチャにより、パーツの表面の色を設定する。
【0051】
ここで、本例のパーツデータのように、対応するパーツの外面の形状及び色を指定する場合、特別な形式のデータ等を用いることなく、公知の3DCAD等を用いて、各パーツを適切に表現することができる。また、より具体的に、本例において、それぞれのパーツデータは、それぞれのレイヤーと対応付けて作成される。この場合、それぞれのパーツデータがそれぞれのレイヤーと対応付けて作成されるとは、例えば、一つのパーツデータに対応する部分を一つのレイヤーに含めることである。また、この場合、それぞれのパーツデータは、いずれかの一つのレイヤーに対応付けられる。このように構成した場合、例えば、少ないデータ量のパーツデータにより造形物の各部の状態を適切に指定することができる。また、この場合、特別な形式のデータ等を用いることなく、例えば公知の3DCAD等のソフトウェアを用いて、複数のパーツデータを含む造形物データを適切に作成することができる。そのため、本例によれば、例えば、内部が着色された造形物の造形を行う場合において、造形物を示す造形物データを適切に作成することができる。
【0052】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、造形物データに基づき、スライスデータの生成を行う。そして、この場合、造形物データの形式について、例えば特定のソフトウェアの専用の形式ではなく、広く用いられている汎用の形式を用いることが好ましい場合がある。そのため、造形物データとしては、例えば、STL形式のデータ等を好適に用いることができる。この場合、例えば、3DCAD等でのデータの作成中等に
図2(a)のように示されるデータについて、STL形式での出力を行って、造形物データを生成する。また、造形システム10(
図1参照)の構成によっては、造形物データと
して、特定のソフトウェアの専用の形式のデータを用いてもよい。
【0053】
また、上記においても説明をしたように、本例において、スライスデータとしては、造形物の内部に対応する部分も含めて、造形物の断面の各位置の色を示すデータを用いる。そして、この場合、スライスデータの生成時には、それぞれのパーツの内部に対応する部分にも、色の設定を行うことが必要になる。より具体的に、この場合、スライスデータの生成時において、例えば、それぞれのパーツデータが示す部分の内部の色を設定する。また、これにより、造形装置12での造形の実行時にそれぞれのパーツデータが示す部分の合間に対して隙間なくインクが充填されるように、スライスデータを生成する。
【0054】
図2(b)は、本例において生成するスライスデータ400の一例を示す図であり、
図2(a)に示した構成の造形物データに基づいてスライスデータを生成する場合について、一つの断面位置におけるスライスデータの構成の一例を示す。図示した場合において、スライスデータ400は、複数の領域402a~fにより構成されている。複数の領域402a~fのそれぞれは、造形物データ300におけるパーツデータが示す部分であり、
図2(a)に示したパーツ302a~fのそれぞれに対応している。また、図からわかるように、本例においては、領域402a~fのそれぞれの間に余計な隙間等を生じさせることなく、スライスデータをする。このように構成すれば、例えば、造形装置12での造形の実行時において、内部に余計な隙間等を生じさせることなく、造形物を適切に造形することができる。
【0055】
続いて、本例においてスライスデータを生成する動作等について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例において、造形物データとしては、複数のパーツデータにより構成されるデータを用いる。また、パーツデータとしては、パーツの形状と、外面の色とを示すデータを用いる。一方で、造形物データに基づいて生成するスライスデータとしては、造形物の内部に対応する部分も含めて、造形物の断面の各位置の色を示すデータを用いる。そして、この場合、スライスデータの生成時には、パーツデータでは色が設定されていないパーツの内部に対応する領域に対して、色を設定することが必要になる。
【0056】
これに対し、本例においては、それぞれのパーツデータに対応する領域に対し、パーツの外面の色に合わせてパーツの内側の色を設定することで、パーツの内部に対応する領域の各位置に対して、色の設定を行う。また、この場合、造形物データが含む複数のパーツデータに対し、それぞれのパーツデータを順番に順次選択して、選択したパーツデータに対応する領域に対する色の設定を行う。また、これにより、造形物の断面の各位置の色を示すスライスデータを生成する。
【0057】
また、より具体的に、本例において、パーツの内部に対応する領域への色の設定を行う場合、造形物における各断面位置に対応するスライスデータの生成時に、そのスライスデータに含まれる各位置に対して、色の設定を行う。また、この場合、順番に選択するそれぞれのパーツデータに対し、パーツデータが示す部分に対応する断面の外周(以下、単に、パーツデータの外周という)の各位置における法線方向(法線ベクトル)を算出する。そして、そのパーツデータが示す部分のうち、少なくとも外周の近傍について、法線方向に沿った各位置に対し、同じ色を設定する。また、この場合、例えば以下において
図3を用いて説明をする方法により、それぞれのパーツの内部に対応する領域への色の設定を行う。
【0058】
図3は、パーツの内部に対応する領域への色の設定の仕方の例を示す図であり、一つのパーツデータに対して行う処理の例を示す。
図3(a)は、本例において行う色の設定の仕方の一例を示す図であり、造形物データにおける一つのパーツ302a(
図2参照)に
対応する領域402aに対して色を設定する場合の動作の一例を示す。本例において、それぞれのパーツデータに対して色の設定を行う場合、他のパーツデータに対応する領域を考慮せずに、処理を行う。また、より具体的に、この場合、パーツデータの外周の各位置における法線について、他の位置の法線(例えば、断面の外周における反対側から伸びてくる法線)とぶつかる位置を算出する。そして、外周の各位置から、この位置(ぶつかる位置)までの間について、同じ色に設定する。また、これにより、外周の各位置に対して設定されている色について、いわば、パーツの内部にまで延長するようにして、各位置への色の設定を行う。また、この場合、色の設定の仕方について、例えば、法線方向に沿って、パーツデータの外周から法線がぶつかる位置までをカラー層にする方法等と考えることもできる。このように構成すれば、各パーツデータにおいて外面に設定されている色に基づき、パーツデータに対応する部分の内部についても、色を適切に設定することができる。
【0059】
ここで、本例において、パーツデータの外周の各位置における法線とは、各位置を通り、かつ、その位置における法線方向と平行な直線のことである。また、この場合、各位置における法線方向は、各位置においてパーツデータの外周と直交し、かつ、造形物の内部へ向かう方向である。また、上記の説明からわかるように、
図3(a)を用いて説明をした方法で色の設定を行う場合、パーツの内部の全体に対して、色が設定されることになる。
【0060】
しかし、造形物データにおいては、例えば
図2(a)に示した場合のように、一つのパーツの内部に他のパーツが存在する場合もある。この場合、パーツデータの関係で考えると、造形物データが含む複数のパーツデータのうち、少なくとも一部のパーツデータが示す部分が、他のパーツデータが示す部分の周囲を囲む部分になっていると考えることもできる。そして、この場合、スライスデータの生成時において、最終的には、内部に含む他のパーツの色も考慮して、各パーツデータに対応する領域に対して、色の設定を行うことが必要になる。
【0061】
これに対し、本例においては、例えば、一つのスライスデータを生成する動作の中で、複数のパーツデータのそれぞれを順番に選択し、かつ、後で選択するパーツデータに対応する色の設定時に、既に設定されている色に対する上書き処理を行うことで、各パーツデータに対応する領域に対する色の設定を行う。本例によれば、例えば、各パーツデータに対応する領域に対して、色の設定を適切に行うことができる。色の上書き処理については、後に更に詳しく説明をする。
【0062】
また、パーツの内部に対応する領域への色の設定については、上記と異なる方法で行うことも考えられる。
図3(b)は、色の設定の仕方の他の例を示す図であり、領域402aに対して色を設定する場合の動作の変形例を示す。上記においても説明をしたように、
図3(a)を用いて説明をした動作の場合、パーツの内部の全体に対して、色が設定されることになる。これに対し、本変形例においては、パーツの内部のうち、他のパーツと重ならない部分に対してのみ、色の設定を行う。
【0063】
より具体的に、この場合も、外周の各位置に対して設定されている色について、各位置における法線に沿ってパーツの内部にまで延長するようにして、各位置への色の設定を行う。しかし、この場合、色を設定する範囲について、他のパーツデータに対応する領域(例えば、図中の領域402b)とぶつかるまでの範囲のみにする。この場合、例えば、造形物データに含まれるそれぞれのパーツデータに基づき、他のパーツデータに対応する領域とぶつかるまでの範囲を決定する。そして、決定した範囲において、法線に沿って、色の設定を行う。このように構成した場合も、例えば、各パーツデータに対応する領域に対して、色の設定を適切に行うことができる。また、本変形例の動作については、例えば、
処理対象のパーツデータに対応するカラー層に厚みを他のパーツ(例えば、次に選択するパーツ)とぶつかるまでの間隔分にする動作等と考えることもできる。
【0064】
続いて、本例においてスライスデータを生成する動作について、更に詳しく説明をする。
図4及び
図5は、一つのスライスデータにおける各領域(領域402a~f)に対して色を設定する動作について説明をする図である。
図4は、領域402a、bに対して色を設定する動作を説明する図である。
図4(a)は、領域402aに対して色を設定する動作の一例を示す。
図4(b)は、領域402aに対して色を設定する動作の変形例を示す。
図4(c)は、領域402bに対して色を設定する動作の一例を示す。
図5は、領域402c~fに対して色を設定する動作の一例を示す。
【0065】
上記においても説明をしたように、本例において、スライスデータの生成時には、造形物データに含まれるそれぞれのパーツデータを順次選択して、そのパーツデータに対応する領域に対して、色を設定する。また、後で選択するパーツデータに対応する色の設定時に、既に設定されている色に対する上書き処理を行うことで、各パーツデータに対応する領域に対する色の設定を行う。
【0066】
また、本例において、パーツデータを選択する順番については、造形物データの生成時に、予め設定されている。より具体的に、上記においても説明をしたように、本例において、造形物データ300の作成や編集は、レイヤー機能を有する3DCADのソフトウェアを用いて行う。また、これにより、造形物データとして、複数のレイヤーで構成されるデータ形式のデータを用いる。また、この場合において、複数のレイヤーには、例えばソフトウェアの設定においてレイヤーが重なる順番等に応じて、予め順序が設定されている。
【0067】
また、本例において、それぞれのパーツデータは、造形物データを構成するそれぞれのレイヤーと対応付けて作成される。そして、この場合、パーツデータの選択の仕方については、レイヤーに対して設定されている順序に基づき、レイヤー単位で順番を設定する。より具体的に、この場合、スライスデータの生成時には、例えば、設定されている順序に従ってレイヤーを順次選択することで、各レイヤーに対応するパーツデータを順番に選択する。そして、選択したレイヤーに対応付けられているパーツデータが示す部分に対応する断面の各位置の色を設定する。このように構成すれば、例えば、造形物データの作成時等に設定した順番で、それぞれのパーツデータを適切に選択することができる。また、それぞれのパーツデータに基づき、色の設定を適切に行うことができる。
【0068】
また、
図4及び
図5においては、
図2(a)に示した造形物データにおけるパーツ302a~fに対応するパーツデータについて、符号の末尾に付したアルファベットの順番で選択する場合の動作の一例を示している。また、この場合、
図2(b)に示したスライスデータを構成する複数の領域402a~fについて、上記に対応する順番で、色の設定を行うことになる。また、より具体的に、この場合、複数の領域402a~fのうち、先ず、領域402aに対し、色の設定を行う。この場合、例えば
図3(a)を用いて説明をした動作のように、領域402aに対応するパーツデータにおいて外周の各位置に対して設定されている色を法線に沿ってパーツの内部にまで延長するようにして、各位置への色の設定を行う。また、この場合、領域402aの各位置への色の設定が終わった時点で、領域402aの各位置には、例えば
図4(a)に示すように、色が設定される。
【0069】
ここで、
図4(a)に示す結果は、外周の各位置の法線方向について、外周を構成する点毎に算出する場合の例である。この場合、外周を構成する点毎に法線方向を算出するとは、例えば、造形の解像度に応じて設定される最小間隔で並ぶ点毎に法線方向を算出することである。しかし、法線方向については、必ずしも点毎に算出するのではなく、例えば
予め設定された間隔毎に算出してもよい。この場合、法線方向が算出された点の近傍の点について、同じ法線方向を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、各領域に対する色の設定をより簡易に行うことができる。また、この場合、領域402aの各位置には、例えば
図4(b)に示すように、色が設定される。
【0070】
また、領域402aに対する色の設定を行った後には、次の領域402bに対し、色の設定を行う。また、これにより、領域402aの一部に対し、設定されている色の上書き処理を行う。また、この場合、領域402bの各位置への色の設定が終わった時点で、領域402a、bの各位置には、例えば
図4(c)に示すように、色が設定される。また、領域402aに対する色の設定を行った後には、更に、その他の領域に対応するパーツデータを順番に選択して、選択したパーツデータが示す部分に対応する断面の各位置の色を設定する。また、これにより、例えば
図5に示すように、色の上書き処理を順次行いつつ、領域402c~fに対し、色の設定を行う。本例によれば、スライスデータの生成時において、例えば、先に選択したパーツデータに基づいて設定した色について、後で選択するパーツデータに基づき、色の上書き処理を適切に行うことができる。また、これにより、スライスデータの各領域に対し、色の設定を適切に行うことができる。
【0071】
また、上記において説明をした動作については、例えば、それぞれのパーツデータが示す部分のうち、内側の他のパーツデータと重なっていない部分について、法線方向に沿った各位置に対し、同じ色を設定する動作等と考えることもできる。また、この場合、例えば、他のパーツデータが示す部分の周囲を囲む部分を示すパーツデータを外側データと定義し、当該他のパーツデータを内側データと定義すれば、スライスデータの生成時において、外側データが示す部分から内側データが示す部分を除いた部分に対し、外側データの法線方向に沿った各位置に対し、同じ色を設定すると考えることができる。
【0072】
続いて、本例においてスライスデータを生成する動作について、フローチャートを用いて、更に詳しく説明をする。
図6は、スライスデータを生成する動作の一例を示すフローチャートであり、造形装置12における制御部110(
図1参照)により造形物データに基づいてスライスデータを生成する動作の一例を示す。また、本例において、制御部110でスライスデータを生成する動作は、スライスデータ生成段階の動作の一例である。制御部110は、以下において説明をする動作により、積層方向の互いに異なる位置において造形物の断面をそれぞれが示す複数のスライスデータを生成する。
【0073】
より具体的に、スライスデータを生成する動作において、制御部110は、先ず、断面位置の初期化を行うことで、最初のスライスデータに対応する断面位置を設定する(S102)。最初のスライスデータとは、複数のスライスデータのうち、最初に生成するスライスデータのことである。また、本例において、最初のスライスデータは、例えば、造形物における一番下の部分の形成時に用いられるスライスデータである。また、この場合、最初のスライスデータに対応する断面位置とは、例えば、複数のスライスデータのそれぞれに対応する断面の位置のうち、積層方向において最も下側の位置になる。
【0074】
また、断面位置の初期化を行った後には、造形物データに基づき、上記において説明をした色の上書き処理等を行うことで、最初のスライスデータを生成する。また、この動作においては、先ず、造形物データにおいて用いられている複数のレイヤーに対して設定されている順序に基づき、最初のレイヤーを選択する(S104)。また、この場合、レイヤーを選択することにより、そのレイヤーに対応するパーツデータを選択する。
【0075】
そして、選択したパーツデータに対し、
図2及び
図3等を用いて説明をしたように法線方向(法線ベクトル)を算出し(S106)、算出した法線方向に基づき、カラー層の厚みの算出と、色変換とを行う(S108)。この場合、カラー層の厚みの算出とは、例え
ば、上記において説明をしたように法線がぶつかる位置を算出して、法線方向に沿って同じ色を設定する範囲を決定することである。また、色変換とは、カラー層の厚みの算出結果に基づき、選択されているパーツデータが示す領域の各位置の色を決定することである。
【0076】
また、カラー層の厚みの算出と、色変換とを行った後には、色の上書き処理を行うことで、生成中のスライスデータの各位置に色を設定する(S110)。この場合、色の上書き処理とは、ステップS108での算出結果に基づき、生成中のスライスデータが占める範囲のうち、選択されているパーツデータに対応する領域へ色を設定する動作のことである。また、この場合、最初に選択されるパーツデータに基づく色の上書き処理については、例えば、生成中のスライスデータが占める範囲に対して最初に色を設定する処理と考えることができる。
【0077】
また、パーツデータに対応する色の上書き処理が終了した後には、そのパーツデータに対応するレイヤーが最後のレイヤー(最終レイヤー)であるか否かを確認することで、未処理のパーツデータの有無を確認する(S112)。そして、未処理のパーツデータが残っている場合(S112:No)には、ステップS104に戻り、複数のレイヤーに対して設定されている順序に基づき、次のレイヤーを選択する。また、これにより、次に処理対象となるパーツデータを選択する。また、以降は、選択したパーツデータに基づき、ステップS106~S110の動作を繰り返すことで、スライスデータにおいてそのパーツデータに対応する領域に対し、色の設定を行う。また、ステップS112において、未処理のパーツデータの有無を再度確認して、必要に応じて、全てのパーツデータに対応する処理が完了するまで、上記の動作を繰り返す。このように構成すれば、例えば、それぞれのパーツデータに基づく色の設定を適切に行うことができる。
【0078】
ここで、上記においても説明をしたように、最初に選択されるパーツデータに基づく色の上書き処理については、例えば、生成中のスライスデータが占める範囲に対して最初に色を設定する処理と考えることができる。これに対し、2番目以降に選択されるパーツデータの場合、色の上書き処理については、例えば、生成中のスライスデータが占める範囲に対し、先の処理で設定されている色を変更する処理等と考えることができる。この場合、先の処理で設定されている色を変更するとは、例えば、生成中のスライスデータが占める範囲における少なくとも一部に対し、色を変更することであってもよい。また、より具体的に、スライスデータの生成時において、例えば、他のパーツデータ(内側データ)が示す部分の周囲を囲む部分を示すパーツデータである外側データと、内側側データとの関係において、外側データ示す部分の内部の色を設定する場合、外側データに基づく色の上書き処理により、内側データが示す部分にも、外側データが示す部分の外面に対して設定されている色に基づいて、色を設定することになる。そして、この場合、その後、内側パーツデータが示す部分の内部の色を設定する場合において、内側パーツデータに対応する内部の色について、外側データが示す部分の内部の色の設定時に設定されている色を変更する上書き処理を行うことになる。本例によれば、例えば、それぞれのパーツデータが示す部分の内部の色について、外面に対して設定されている色に基づいて適切に設定することができる。また、これにより、例えば、それぞれのパーツデータが示す部分に対応する断面の各位置の色を適切に設定することができる。
【0079】
また、ステップS112において、直前に処理を行ったパーツデータに対応するレイヤーが最後のレイヤー(最終レイヤー)であると判断した場合(S112:Yes)、その時点で設定されている断面位置に対応する処理の結果(スライス結果)を出力することで、その断面位置に対応するスライスデータを生成する(S114)。また、ステップS114においては、例えばRIP処理等の必要な処理を必要に応じて更に行うことで、スライスデータを生成することが考えられる。この場合、RIP処理等については、例えば、
スライスデータを生成する公知の動作と同一又は同様に行うことが考えられる。また、RIP処理等については、例えば、全ての断面位置に対して上記の各処理を行った後に、別途行うこと等も考えられる。
【0080】
また、設定されている断面位置に対応するスライスデータを生成した後には、その時点で設定されている断面位置について、最終の断面位置であるか否かの確認を行う(S116)。この場合、最終の断面位置とは、最後に生成されるスライスデータに対応する断面位置のことである。そして、その時点で設定されている断面位置が最終の断面位置ではなく(S116:No)、まだ生成していないスライスデータが存在する場合、次に生成するスライスデータに対応する断面位置を設定する(S118)。そして、ステップS104以降の動作を繰り返すことで、次のスライスデータを生成する。
【0081】
また、ステップS116において、その時点で設定されている断面位置が最終の断面位置であると判断した場合(S116)、スライスデータを生成する動作を終了する。本例によれば、造形物データに基づき、複数のスライスデータを適切に生成することができる。また、スライスデータとして、例えば、内部が着色される造形物の断面を示すデータを適切に生成できる。この場合、内部が着色される造形物とは、例えば、パーツデータが示す部分の内部が着色される造形物のことである。また、この場合、造形装置12においてスライスデータに基づいて造形の動作を実行することで、例えば、内部が着色された造形物を適切に造形することができる。
【0082】
続いて、上記において説明をした構成に関する補足説明や、変形例の説明等を行う。上記においても説明をしたように、本例においては、スライスデータの生成時に、パーツデータに対応する部分の外周の各位置に対して設定されている色について、いわば、パーツの内部にまで延長するようにして、各位置への色の設定を行う。また、順番に選択するパーツデータに基づき、上記において説明をしたように色の上書き処理を行うことで、スライスデータが占める範囲の各位置に対し、色の設定を行う。また、このような処理については、例えば、積層方向における各位置のスライスデータの生成時において、それぞれのパーツデータに対応するパーツの外周に適宜厚みを持たせる処理を行うことで、パーツ間に隙間が生じないようにスライスデータを生成していると考えることができる。また、このような処理については、例えば、それぞれのパーツデータが示すパーツの外面の間に対して色を設定して、パーツの外面の合間の色を補う処理等と考えることもできる。
【0083】
また、この場合、パーツの外周の厚み(カラー層の厚み)については、それぞれのパーツの外面の形状を指定する曲面の内側方向へ広げていると考えることができる。そして、この場合、パーツデータとしては、例えば、スライスデータを生成するそれぞれの断面位置での内側方向及び外側方向が決まっているデータを用いることが考えられる。この場合、例えば、それぞれのパーツデータにおいて外面を構成する曲面に対し、内側方向及び外側方向を予め設定しておくこと等も考えられる。また、パーツデータに対応する内側方向及び外側方向については、例えば、パーツデータが示す形状に応じて決定してもよい。より具体的に、パーツデータとしては、例えば、パーツの外面を構成する曲面に対応してスライスデータに対応する断面位置に現れる曲線が閉曲線(1周して繋がるような端のない曲線)になるデータを用いることが考えられる。そして、この場合、内側方向及び外側方向について、閉曲線の内部へ向かう方向を内側方向とし、外部へ向かう方向を外側方向とすることが考えられる。
【0084】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、それぞれのパーツデータについて、レイヤーと対応付けて管理をしている。この場合、例えば使用するレイヤーの数(レイヤリングの数)をより多くすることで、より多くのパーツデータを用いることが可能になる。また、これにより、例えば、造形物の内部(中身)等をより詳細に表現(再現
)することが可能になる。
【0085】
また、本例においては、上記において説明をしたスライスデータに基づいて造形装置12において造形物を造形することで、内部が着色された造形物を造形する。そして、この場合において、
図1等を用いて説明をしたように、YMCKの各色のインクと、白色のインクとを用いて、造形物50の各部を形成する。また、この場合、各色のインクとしては、内部の着色を行う場合用の専用のインク(バルクカラー造形専用のインク)に限らず、例えば、造形物50の表面のみを着色する場合に用いるインクと同一又は同様のインクを用いることができる。そして、この場合、造形装置12においては、内部が着色された造形物に限らず、表面のみが着色された造形物を更に造形してもよい。この場合、表面のみが着色された造形物とは、例えば、外部から色彩を視認できる領域に着色領域を形成し、その内側に光反射領域を形成する造形物のことである。また、この場合、着色領域については、例えば、YMCKの各色のインクと、クリアインクとを用いて、予め設定された厚さで形成することが考えられる。また、光反射領域については、白色のインクを用いて形成することが考えられる。このように構成すれば、造形装置12において、多様な造形物を適切に造形することができる。
【0086】
また、造形装置12の構成の変形例においては、造形物の内部を着色する場合により合わせた特徴を有するインクを用いること等も考えられる。この場合、着色用の有色のインク(YMCKの各色のインク等)として、各色の色材に加え、白色の色材を含むインクを用いることが考えられる。また、この場合、白色の色材としては、白色のインク用の色材(顔料)と同一又は同様の色材を好適に用いることができる。
【0087】
また、上記においては、それぞれのスライスデータの生成時において順番にパーツデータを選択する方法に関し、レイヤーの順序に従ってパーツデータを選択する場合の動作を説明した。また、パーツデータの選択の仕方の変形例においては、例えば、レイヤーの順序以外の事項に基づいてパーツデータの選択を行うことも考えられる。また、このような方法としては、例えば、それぞれのパーツデータが示すパーツの位置に基づき、パーツデータを選択する順序を自動的に決定すること等が考えられる。より具体的に、この場合、造形物データが含む複数のパーツデータについて、例えば、より外側にあるパーツデータから順番に選択を行うことが考えられる。この場合、より外側にあるパーツとは、例えば、造形物の外面により近い位置にあるパーツのことである。また、この場合、例えば、他のパーツデータが示す部分の周囲を囲む部分を示すパーツデータについて、当該他のパーツデータよりも先に選択することになる。このように構成した場合も、例えば、一定のルールに従って、それぞれのパーツデータを適切に選択することができる。また、この場合、パーツを選択する順番について、スライスデータの生成を開始する前に予め設定するのではなく、それぞれのパーツデータが示す部分の位置関係に基づき、スライスデータの生成時に順番を決定してもよい。
【0088】
また、上記においては、内部が着色される造形物に対応するスライスデータを生成する動作に関し、それぞれの断面位置に対応するスライスデータを生成する動作の中で断面における各位置の色を設定するような処理(カラー化処理)について、説明をした。しかし、スライスデータを生成する動作の変形例においては、例えば、造形物データの全体に対してまとめてカラー化処理を行い、カラー化処理後の状態で造形物を示すデータ(処理済3Dデータ)に対してスライス処理を行って、複数のスライスデータを生成すること等も考えられる。
【0089】
図7は、スライスデータを生成する動作の変形例を示すフローチャートであり、造形物データの全体に対してまとめてカラー化処理を行う場合の動作の一例を示す。本変形例において、制御部110は、断面位置を設定して断面位置毎の処理を行う処理の前に、造形
物データが示す造形物の全体に対し、カラー化処理を行う。
【0090】
より具体的に、この場合、先ず、造形物データにおいて用いられている複数のレイヤーに対して設定されている順序に基づき、最初のレイヤーを選択する(S202)。また、これにより、そのレイヤーに対応するパーツデータを選択する。そして、選択したパーツデータが示すパーツの外面の各位置に対し、法線方向(法線ベクトル)を算出する(S204)。また、この場合、
図6に図示したフローチャートにおけるステップS106の動作とは異なり、立体的なパーツの外面形状を示す曲面に対して、直接、法線方向を算出する。そのため、各位置における法線方向は、
図6に図示したフローチャートにおけるステップS106の動作で算出される法線方向とは異なる方向であってもよい。
【0091】
また、本変形例においても、算出した法線方向に基づき、カラー層の厚みの算出と、色変換とを行う(S206)。この場合も、
図6に図示したフローチャートにおけるステップS108の動作とは異なり、立体的なパーツの外面形状を示す曲面の全体に対し、直接、これらの処理を行う。また、これにより、パーツの全体に対し、内部の各位置の色を設定する。
【0092】
また、これらの処理に続いて、選択しているパーツデータに対応する色の上書き処理を行う(S208)。この場合、色の上書き処理については、造形物の全体に対してパーツが占める範囲の各位置の色を設定する動作等を考えることができる。また、パーツデータに対応する色の上書き処理が終了した後には、そのパーツデータに対応するレイヤーが最後のレイヤー(最終レイヤー)であるか否かを確認することで、未処理のパーツデータの有無を確認する(S210)。そして、未処理のパーツデータが残っている場合(S210:No)には、ステップS202に戻り、複数のレイヤーに対して設定されている順序に基づき、次のレイヤーを選択する。また、これにより、次に処理対象となるパーツデータを選択する。また、以降は、選択したパーツデータに基づき、ステップS204~S208の動作を繰り返すことで、そのパーツデータに対応する領域に対し、色の設定を行う。また、ステップS210において、未処理のパーツデータの有無を再度確認して、必要に応じて、全てのパーツデータに対応する処理が完了するまで、上記の動作を繰り返す。
【0093】
また、ステップS210において、直前に処理を行ったパーツデータに対応するレイヤーが最後のレイヤー(最終レイヤー)であると判断した場合(S210:Yes)、それまでの処理の結果を出力することで、造形物データにカラー化処理を行った結果を示すデータである処理済3Dデータを出力する(S212)。そして、処理済3Dデータに対してスライス処理を行うことで、複数のスライスデータを生成する(S214)。
【0094】
ここで、本変形例において、処理済3Dデータとしては、例えば、造形物を構成する全ての位置に対して色が設定されたデータを用いることが考えられる。そして、この場合、処理済3Dデータのデータ量がかなり大きくなることも考えられる。しかし、上記の説明から明らかなように、処理済3Dデータは、スライスデータを生成する一連の動作の中で一時的に用いるデータである。そして、このような場合、データ量の大きなデータを用いるとしても、大きな問題は生じにくい。また、この場合、ステップS214において行うスライス処理においては、いわば、処理済3Dデータをそのままスライスすることで、造形物の内部の色等を示すスライスデータを容易かつ適切に生成することができる。以上のように、本変形例においても、内部が着色される造形物を造形する場合に用いるスライスデータを適切に生成することができる。また、これにより、例えば、内部が着色された造形物を適切に造形することができる。また、本変形例においても、造形物データの全体に対してまとめて行うカラー化処理について、例えば、パーツデータが示す部分の内部の色を外面に対して設定されている色に基づいて設定する動作等と考えることができる。また、カラー化処理について、後に行うスライス処理の動作と合わせて考えることで、例えば
、それぞれのパーツデータが示す部分に対応する断面の各位置の色を設定する動作等と考えがこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、例えば造形方法に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0096】
10・・・造形システム、12・・・造形装置、14・・・制御PC、50・・・造形物、52・・・サポート層、102・・・ヘッド部、104・・・造形台、106・・・走査駆動部、110・・・制御部、202・・・インクジェットヘッド、204・・・紫外線光源、206・・・平坦化ローラ、300・・・造形物データ、302・・・パーツ、400・・・スライスデータ、402・・・領域