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特許73618332-[3-シアノ-4-(2-メチルプロポキシ)フェニル]-4-メチルチアゾール-5-カルボン酸の口腔内崩壊錠
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】2-[3-シアノ-4-(2-メチルプロポキシ)フェニル]-4-メチルチアゾール-5-カルボン酸の口腔内崩壊錠
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/426 20060101AFI20231006BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20231006BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20231006BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231006BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20231006BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20231006BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231006BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231006BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20231006BHJP
【FI】
A61K31/426
A61P19/06
A61K9/16
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/04
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/34
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022073196
(22)【出願日】2022-04-27
(62)【分割の表示】P 2017136717の分割
【原出願日】2017-07-13
(65)【公開番号】P2022093470
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2016138661
(32)【優先日】2016-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228590
【氏名又は名称】日本ケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124822
【弁理士】
【氏名又は名称】千草 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100217098
【弁理士】
【氏名又は名称】清 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100214477
【弁理士】
【氏名又は名称】砂原 一公
(72)【発明者】
【氏名】柳本 剛
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 健太
(72)【発明者】
【氏名】湯本 愛子
(72)【発明者】
【氏名】望月 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 英治
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-114263(JP,A)
【文献】特開2001-192344(JP,A)
【文献】特開2016-079102(JP,A)
【文献】特開2005-029557(JP,A)
【文献】特開2015-040206(JP,A)
【文献】国際公開第2012/005365(WO,A1)
【文献】特表2016-520133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング層で被覆された顆粒であって、(1)核粒子が、フェブキソスタット、崩
壊剤を含み、(2)当該核粒子がメチルセルロース及びアクリルポリマーを含むコーティング層で被覆され、さらに顆粒中に塩化ナトリウムを含み、有機酸を含まない顆粒。
【請求項2】
崩壊剤がクロスポビドンである請求項1記載の顆粒。
【請求項3】
アクリルポリマーがメタクリル酸コポリマーである請求項1又は2記載の顆粒。
【請求項4】
コーティング層に可塑剤を含む請求項1~3記載の顆粒。
【請求項5】
可塑剤がポリエチレングリコールである請求項4記載の顆粒。
【請求項6】
コーティング層に流動化剤を含む請求項1~5記載の顆粒。
【請求項7】
流動化剤がタルクである請求項6記載の顆粒。
【請求項8】
フェブキソスタット及び崩壊剤を含む核粒子を形成し、該核粒子をメチルセルロース及びアクリルポリマーを含むコーティング層で被覆する工程を含み、さらに顆粒中に塩化ナトリウムを含み、有機酸を含まない顆粒の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7記載の顆粒を含む口腔内崩壊錠。
【請求項10】
請求項1~7記載の顆粒、崩壊剤及び賦形剤を含む請求項9記載の口腔内崩壊錠。
【請求項11】
崩壊剤がクロスポビドンである請求項10記載の顆粒。
【請求項12】
賦形剤が糖アルコールである請求項10又は11記載の口腔内崩壊錠。
【請求項13】
錠剤硬度が50N~120Nである請求項9~12記載の口腔内崩壊錠。
【請求項14】
フェブキソスタット及び崩壊剤を含む核粒子を形成し、該核粒子をメチルセルロース及びアクリルポリマーを含むコーティング層で被覆し顆粒を製造する工程、及び該顆粒と崩壊剤及び賦形剤とを混合する工程を含む口腔内崩壊錠(但し、錠剤中に塩化ナトリウムを含み、有機酸を含まない)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高尿酸血症治療薬であるフェブキソスタットにおいて、薬物由来のえぐみ等が低減され、かつ高い錠剤硬度及び口腔内での崩壊性に優れた口腔内崩壊錠に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化が進む中で高齢者の方が様々な疾患に罹患するケースが増えており、そのため複数の医薬品を服用する必要が生じている。医薬品には様々な剤形が存在するが、携帯性に優れた錠剤での形態が最も多い。錠剤は、通常水などにより服用されるが、高齢者あるいは小さな子供にとっては、嚥下が困難で服用しづらいため苦痛となるケースがある。その解決の一つとして、服用時に水を必要としない、口腔内で錠剤を崩壊させることでそのまま服用可能な、口腔内崩壊錠の開発が行われてきた。口腔内崩壊錠は、このような特性から患者のコンプライアンスの向上を図ることが可能となる。
【0003】
一方、口腔内崩壊錠の問題としては、口腔内で崩壊するため医薬品に由来するえぐみや苦味、刺激などの不快な味等が生じる点、口腔内崩壊錠の崩壊性に対し品質維持の観点からある程度の錠剤硬度が必要となるが、硬度は崩壊性と相反する性質であり、一般的に錠剤の硬度を下げると崩壊性は向上するが、錠剤の品質維持において破損、割れなどが生じやすくなり、これらの錠剤は製品として耐えない。また、硬度を上げると口腔内での崩壊時間が長くなり、服用した患者が薬物由来の不快な味等に長時間曝露されるという問題が生じることから、錠剤の崩壊性と硬度の相反する性質を、不快な味から回避する上においても両立させる必要がある点、などが挙げられる。
これらの問題は医薬品ごとに異なっており、医薬品の開発において都度検討を要することから、口腔内崩壊錠に関する出願が複数報告されている。
【0004】
例えば特許文献1には、苦味を有するピタバスタチンに関し、ピタバスタチンを含有する粒子を含み、該粒子はピタバスタチンを被覆する被覆層を有し、該被覆層はアクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体を含有する苦味のマスキングされた口腔内崩壊錠について、特許文献2には、苦味を有するアトルバスタチンに関し、アトルバスタチンまたはその医薬的に許容可能な塩と、アルカリ化剤と、胃溶性ポリマーとを造粒して形成されたものである、苦味の抑制された口腔内崩壊錠に関する技術が開示されている。
また、特許文献3にはガランタミン又はその塩および添加剤としてカルボキシメチルスターチナトリウムを含有する口腔内崩壊錠が良好な崩壊性および硬度を示すこと、特許文献4ではリスペリドン、結晶セルロース、無機賦形剤、カルメロースおよび錠剤1錠あたり0.8重量%以下の滑沢剤を含有する粉末を圧縮成型することにより、良好な崩壊性を示し、錠剤硬度が確保された口腔内崩壊錠剤が得られることが開示されている。
【0005】
2-[3-シアノ-4-(2-メチルプロポキシ)フェニル]-4-メチルチアゾール-5-カルボン酸(一般名:フェブキソスタット:以下、フェブキソスタットという)は、非プリン型の高いキサンチンオキシダーゼ阻害活性を有する医薬品であり、日本においては、帝人ファーマ株式会社から「フェブリク(登録商標)錠」の商品名で2011年より痛風及び高尿酸血症の治療薬として錠剤の形態で製造及び販売されている。このフェブキソスタットの口腔内崩壊錠への適用を考えた場合、フェブキソスタットそのものに由来するえぐみなどの不快な味やのどへの刺激など好ましくない性質を有することから、そのマスキングのための技術的な検討が必要であった。
【0006】
フェブキソスタットを含有する口腔内崩壊錠に関する技術としては、特許文献5には、フェブキソスタットを含む核粒子がメタクリル酸コポリマーを含む層で被覆され、さらに水溶性糖類を含む層でオーバーコートされた粒子を含んでなる口腔内速崩性錠剤が、特許文献6には、クロスポビドン等崩壊剤で被覆された核顆粒を圧縮成形してなされる錠剤であって、該核顆粒がその内部にもクロスポビドン等の崩壊剤を含んでおり、その内部および/または外部に薬物を含んでいる口腔内速崩性錠剤について、実施例1でフェブキソスタットを用いた例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-237651号公報
【文献】特開2013-231011号公報
【文献】特開2012-188364号公報
【文献】国際公開第2008/081774号パンフレト
【文献】特許第5000017号公報
【文献】特許第4934144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、フェブキソスタット由来のえぐみやのどへの刺激が低減され、かつ高い錠剤硬度を有し、口腔内での崩壊性の優れた口腔内崩壊錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、フェブキソスタットを含有する顆粒において、顆粒の核粒子がフェブキソスタット及び崩壊剤を含み、かつセルロース誘導体及びアクリルポリマーを含むコーティング層で被覆された顆粒が、フェブキソスタット由来のえぐみやのどへの刺激が低減されること、およびこの顆粒を含む口腔内崩壊錠が、前記顆粒の特性を保持したまま、錠剤として十分な硬度及び良好な口腔内における崩壊性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、核粒子がフェブキソスタット及び崩壊剤を含み、該核粒子がセルロース誘導体及びアクリルポリマーを含むコーティング層で被覆された顆粒を提供するものである。
また本発明は、前記顆粒の製造方法を提供するものである。
また本発明は、前記顆粒を含有する口腔内崩壊錠を提供するものである。
また本発明は、前記口腔内崩壊錠の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフェブキソスタット及び崩壊剤を含む核粒子をセルロース誘導体及びアクリルポリマーを含むコーティング層で被覆した顆粒及びこの顆粒を含有する口腔内崩壊錠は、フェブキソスタット由来のえぐみやのどへの刺激が低減され、十分な硬度及び良好な崩壊性を有するため、フェブキソスタットを含有する口腔内崩壊錠として非常に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の核粒子及び口腔内崩壊錠の調製に用いられる崩壊剤としては、例えば、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース(カルメロース)、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルスターチ、デンプン、部分α化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム等が挙げられ、好ましくはクロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドンであり、さらに好ましくはクロスポビドンである。さらに本発明に用いられるクロスポビドンとしては、ポリプラスドン(登録商標)XL、 ポリプラスドン(登録商標)XL-10、ポリプラスドン(登録商標)INF-10(以上、Ashland社製)、コリドン(登録商標)CL、コリドン(登録商標)CL-F、コリドン(登録商標)CL-SF、コリドン(登録商標)CL-M等が挙げられ、好ましくはコリドンCL、コリドンCL-F、コリドンCL-SF、コリドンCL-M(以上、BASFジャパン社製)であり、特に好ましくはコリドンCL-Fである。用いられる崩壊剤の配合量は、核粒子中5~30質量%が好ましく、さらに好ましくは5~15質量%である。また、口腔内崩壊錠に配合する場合には、後末中1~10質量%が好ましく、さらに好ましくは2~6質量%である。
【0013】
本発明で用いられる賦形剤は、核粒子及び口腔内崩壊錠に配合することができ、例えばエリスリトール、D-ソルビトール、キシリトール、D-マンニトール、マルチトール等の糖アルコールが挙げられ、好ましくはD-マンニトールが挙げられる。該賦形剤の含有量は、核粒子中1~50質量%が好ましく、さらに好ましくは10~40質量%である。また、口腔内崩壊錠に配合する場合には、後末中10~80質量%が好ましく、さらに好ましくは30~70質量%である。
【0014】
本発明のコーティング層におけるコーティング基剤に用いられるアクリルポリマーとしては、メタクリル酸コポリマーL(例えば、Eudragit(登録商標) L100、Evonik社製)、メタクリル酸コポリマーS(例えば、Eudragit(登録商標) S100、Evonik社製)、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(例えば、Eudragit(登録商標) E100、Eudragit(登録商標) EPO、Evonik社製)、乾燥メタクリル酸コポリマーLD(例えば、Eudragit(登録商標) L100-55、Evonik社製)、メタクリル酸コポリマーLD(例えば、Eudragit(登録商標)L30D-55、Evonik社製)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液(例えば、Eudragit(登録商標) NE30D、Evonik社製)、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(例えば、Eudragit(登録商標) RL100/RLPO/RL30D、Eudragit(登録商標) RS100/RSPO/RS30D、Evonik社製)などのメタクリル酸誘導体を含むポリマーが挙げられ、好ましくはメタクリル酸コポリマーLDが挙げられる。該アクリルポリマーの含有量は、被覆層中のポリマー固形分重量に対し、約1~約30重量%、好ましくは約3~約25重量%、より好ましくは約5~約20重量%である。
【0015】
本発明のコーティング層の調製に用いられるセルロース誘導体としては、メチルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性のセルロース誘導体が挙げられるが、特に粘度が1~100mPa・sのものが好ましく、さらに好ましくは1~50mPa・s、より好ましくは1~10mPa・sのものが挙げられ、メチルセルロースが好ましい。本発明で用いられるメチルセルロースとしては、例えばメトローズ(登録商標)SM-4、メトローズ(登録商標)SM-15、メトローズ(登録商標)SM-25、メトローズ(登録商標)SM-50が挙げられ、より好ましくはメトローズ(登録商標)SM-4、メトローズ(登録商標)SM-15、メトローズ(登録商標)SM-25が挙げられ、最も好ましくはメトローズ(登録商標)SM-4である。ここでいう粘度とは、20℃、2%水溶液における粘度を指すものである。該セルロース誘導体の含有量は、被覆層中のポリマー固形分重量に対し、約1~約30重量%、好ましくは約3~約25重量%、より好ましくは約5~約20重量%である。
【0016】
本発明で用いられる可塑剤としては、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、フタル酸ジエチル、トリアセチン、ゴマ油、ヒマシ油等が挙げられ、好ましくはポリエチレングリコールが挙げられる。本発明に用いられるポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール11000又はポリエチレングリコール20000等が挙げられ、好ましくはポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000が挙げられ、より好ましくはポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000が挙げられる。該可塑剤の含有量は、被覆層中のポリマー固形分重量に対し、約1~約30重量%、好ましくは約3~約25重量%、より好ましくは約5~約20重量%である。
【0017】
本発明の核粒子及びコーティング層の調製において用いられる流動化剤としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、タルク、合成ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが挙げられる。好ましくは、タルク、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸であり、特に好ましくはタルクである。これらは単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。流動化剤の含有量は、コーティング層中のポリマー固形分重量に対し、約1~約50重量%、好ましくは約3~約40重量%、より好ましくは約5~約35重量%であり、核粒子中においては0.01~10質量%が好ましく、さらに好ましくは1~5質量%である。
【0018】
本発明において用いられる塩化ナトリウムの含有量は、顆粒中及び/又は口腔内崩壊錠の後末中、0.1~10質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5~4質量%である。
【0019】
本発明で用いられる溶解補助剤は、本発明における核粒子に配合することができ、例えばクエン酸ナトリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムが挙げられ、好ましくは酸化マグネシウムである。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。溶解補助剤の含有量は、核粒子中0.01~10質量%が好ましく、さらに好ましくは0.05~2質量%である。
【0020】
本発明の顆粒及び口腔内崩壊錠には、必要により結合剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色剤等を適宜組み合わせて必要量配合することができる。
【0021】
結合剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、部分けん化ポリビニルアルコール、プルラン、部分α化デンプン、デキストリン、キタンサンガム、アラビアゴム末等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドンである。これらは単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0022】
滑沢剤としては、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、軽質無水ケイ酸、硬化油、グリセリン脂肪酸エステル、タルク等が挙げられる。好ましくは、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステルである。これらは単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0023】
矯味剤としては、糖アルコール、アスパルテーム、ステビア、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース等が挙げられる。これらは単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0024】
着色剤としては、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用青色2号アルミニウムレーキ、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、食用赤色2号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用赤色102号アルミニウムレーキ、三二酸化鉄(赤色)、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、オレンジエッセンス、カラメル、タルク、緑茶末等が挙げられる。これらは単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0025】
香料としては、ミント、レモン香料、オレンジコートン、パイナップルフレーバー、l-メントール、ブラックティーミクロン等が挙げられる。これらは単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0026】
本発明で用いられるフェブキソスタットは、結晶多形が存在することが知られており、本発明においてはいずれの結晶形も用いることができるが、例えば特許3547707号公報に開示されているA晶、C晶、G晶などの結晶形が好ましい。さらにこれらの結晶は粉砕により微細化されていてもよい。結晶の粉砕による微細化については、例えば特許第4084309号公報、国際公開第2015/063561号パンフレット記載の方法により行うことができる。
【0027】
本発明における口腔内崩壊錠の成形に関しては、どのような形状も採用することができるが、例えば丸状、楕円状、球状、多角形板状、棒状、ドーナツ状の形状および積層錠、有核錠などであってもよい。また、必要に応じてコーティングによって被覆することもできる。また、識別性向上のためのマーク、文字などの印字を施すことも可能であり、分割用の割線を付してもよい。これらの製剤の大きさは、小型である方が好ましく、好ましくは直径が5~12mm程度、厚みが2~5mm程度である。質量は、好ましくは50~600mg程度である。硬度は、特に限定されないが、錠剤の運搬等による破損を防ぐうえである程度の硬度が必要となる。本発明においては、好ましくは30~150N、より好ましくは40~130N、さらに好ましくは50~120Nである。崩壊時間は特には限定されないが、例えば水なしで服用した場合、口腔内において5~60秒、好ましくは10~40秒、さらに好ましくは15~35秒程度である。
【0028】
本発明の口腔内崩壊錠の硬度は一般公知の方法により測定することができ、例えばロードセル式電動硬度計、Schleuniger錠剤硬度計等の市販の錠剤硬度計を用いることができる。
【0029】
本発明の顆粒及び口腔内崩壊錠の製造は、例えば以下の工程により行うことができる。
(工程1:核粒子の調製)
フェブキソスタット、賦形剤、溶解補助剤、崩壊剤、流動化剤を転動流動層造粒機にて混合した後、結合剤を含む水溶液を噴霧することで核粒子を調製する。
(工程2:コーティング液の調製)
精製水にアクリルポリマー、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、タルクを加え溶解・分散させることでコーティング液を調製する。
(工程3:顆粒の調製)
工程1で調製した核粒子を転動流動層造粒機にて工程2で調製したコーティング液でコーティングし、顆粒を調製する。
(工程4:口腔内崩壊錠の調製)
工程3により得られた顆粒を賦形剤、崩壊剤、流動化剤、塩化ナトリウム、矯味剤と混合した後、さらに滑沢剤を加え混合する。得られた混合物をロータリー式打錠機にて打錠し、口腔内崩壊錠を調製する。
【実施例
【0030】
以下に実施例、比較例および試験例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
(実施例1-1)
工程1 核粒子の製造
フェブキソスタット(国際公開第2015/063561号パンフレットの段落番号[0112]記載の例5に従い調製した) 240g、D-マンニトール(三菱商事フードテック、マンニットC) 134.4g、酸化マグネシウム(富田製薬、XP103) 1g、クロスポビドン(BASFジャパン、コリドンCL-F) 60g、および軽質無水ケイ酸(フロイント産業、アドソリダー101) 12gを転動流動層造粒機(フロイント産業、スパイラフローSFC-MINI)に投入し、給気温度を70℃に制御しながら、7%ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達、HPC-SL)水溶液を5g/分で480g噴霧した。噴霧終了後、顆粒の温度が45℃になるまで乾燥しフェブキソスタット含有核粒子を得た。
【0032】
(実施例1-2)~(実施例1-8)
(実施例1-1)と同様の工程1により(実施例1-2)~(実施例1-8)の核粒子を得、表1にまとめた。
【0033】
【表1】
【0034】
(実施例2-1)
工程2 コーティング液の調製
メタクリル酸コポリマーLD(エボニックジャパン、Eudragit L30D-55) 180g、メチルセルロース(信越化学工業、メトローズSM-4) 12g、マクロゴール6000(三洋化学工業、PEG6000P) 6g、およびタルク(松村産業、クラウンタルク) 24gを適量の水に加え撹拌し、コーティング液(864g)を調製した。
【0035】
工程3 顆粒の製造
工程1で得られた(実施例1-1)のフェブキソスタット含有核粒子を転動流動層造粒機(フロイント産業、スパイラフローSFC-MINI)に投入し、給気温度を40℃に制御しながら、工程2で得られたコーティング液を5g/分で864g噴霧した。噴霧終了後、給気温度を70℃とし、顆粒の温度が45℃になるまで乾燥して、フェブキソスタット含有顆粒を得た。
【0036】
(実施例2-2)~(実施例2-5)
(実施例2-1)と同様の工程2、工程3により(実施例2-2)~(実施例2-5)の顆粒を得、表2にまとめた。
【0037】
【表2】
【0038】
(実施例3-1)
工程4 口腔内崩壊錠の製造
工程3で得られた(実施例2-1)のフェブキソスタット含有顆粒 576g、D-マンニトール(Roquetteジャパン、PEARLITOL 160C) 756g、クロスポビドン(BASFジャパン、コリドンCL-F) 72g、アスパルテーム(味の素) 27.6g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業、アドソリダー101) 36g、塩化ナトリウム(富田製薬) 9.6g、およびフマル酸ステアリルナトリウム(JRS Pharma、PRUV) 22.8gをポリ袋中で混合し、これをロータリー式打錠機(菊水製作所、VELA-5)に加えて圧縮成形を行い、錠剤重量250mg、錠剤径9mm、硬度約75Nの錠剤を製造した。
【0039】
(実施例3-2)~(実施例3-9)
(実施例3-1)と同様の工程4により(実施例3-2)~(実施例3-9)の口腔内崩壊錠を得、表3にまとめた。
【0040】
【表3】
【0041】
(比較例1-1)~(比較例1-3)
(実施例1-1)と同様の工程1により(比較例1-1)~(比較例1-3)の核粒子を得、表4にまとめた。なお、(比較例1-3)と(実施例1-1)は同一のものである。
【0042】
【表4】
【0043】
(比較例2-1)~(比較例2-4)
(実施例2-1)と同様の工程2、工程3により(比較例2-1)~(比較例2-4)の顆粒を得、表5にまとめた。なお、(比較例2-1)と(実施例2-1)は同一のものである。
【0044】
【表5】
【0045】
(比較例3-1)~(比較例3-3)
(実施例3-1)と同様の工程4により(比較例3-1)~(比較例3-3)の口腔内崩壊錠を得、表6にまとめた。
【0046】
【表6】
【0047】
(比較例3-4-A)及び(比較例3-4-B)
工程1 口腔内崩壊錠の製造
(比較例2-1)のフェブキソスタット含有コーティング顆粒 576g、D-マンニトール(Roquetteジャパン、PEARLITOL 160C) 756g、クロスカルメロースナトリウム(旭化成、キッコレートND-200)90g、アスパルテーム(味の素) 27.6g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業、アドソリダー101) 36g、塩化ナトリウム(富田製薬) 9.6g、およびフマル酸ステアリルナトリウム(JRS Pharma、PRUV) 22.8gをポリ袋中で混合した。得られた混合物をロータリー式打錠機(菊水製作所、VELA-5)を用いて圧縮成形を行い、錠剤重量250mg、錠剤径9mm、錠厚3.80mmに調製された錠剤(比較例3-4-A)及び錠剤重量250mg、錠剤径9mm、硬度約80Nを示すよう調製された錠剤(比較例3-4-B)をそれぞれ製造した。
【0048】
(比較例3-1-A)、(比較例3-5-A)~(比較例3-8-A)及び(比較例3-1-B)、(比較例3-5-B)~(比較例3-8-B)
(比較例3-4-A)及び(比較例3-4-B)と同様にして、(比較例3-1-A)、(比較例3-5-A)~(比較例3-8-A)及び(比較例3-1-B)、(比較例3-5-B)~(比較例3-8-B)を製造し、表7にまとめた。
【0049】
【表7】
【0050】
〔試験例1-1〕
(実施例3-1)~(実施例3-3)、(比較例3-1)~(比較例3-3)及び(比較例3-4-A及びB)~(比較例3-8-A及びB)の錠剤について、マスキング性を評価した。評価方法は、健康な成人男性5名で行い、錠剤を口腔内で崩壊させた後の主薬の刺激に対するマスキング性を以下に示す基準で評価した。その結果を表8に示す。
0:明らかにマスキング効果があり、刺激を全く感じない
1:マスキング効果はあり、ほとんど刺激を感じない
2:マスキング効果はあるが、刺激を感じる
3:マスキング効果は弱く、刺激を強く感じる(許容可)
4:マスキング効果はなく、刺激を強く感じる(許容不可)
【0051】
【表8】
【0052】
〔試験例2-1〕
(実施例3-1)~(実施例3-3)及び(比較例3-1-A)、(比較例3-4-A)~(比較例3-8-A)の錠剤について、口腔内崩壊時間と硬度を評価した。その結果を表9に示す。硬度は、ポータブル硬度計PC-30(岡田精工)を用いて測定を行った。硬度試験はそれぞれ10錠を用いて行い、得られた結果の平均値を示している。
【0053】
【表9】
【0054】
〔試験例3-1〕
(実施例3-3)及び硬度を約80Nに調製した(比較例3-1-B)、(比較例3-4-B)~(比較例3-8-B)の錠剤について、口腔内崩壊時間と硬度を評価した。その結果を表10に示す。
【0055】
【表10】
【0056】
実施例と比較例を比較すると、表8の結果より比較例の口腔内崩壊錠では良好な口腔内崩壊時間を示すものは錠剤の硬度が低下傾向にあり、また表9より硬度を高くすると崩壊時間の延長傾向がみられた。以上のことより、錠剤の崩壊性及び硬度の両方を同時に満足する口腔内崩壊錠は得られなかった。一方、実施例の口腔内崩壊錠では高い錠剤硬度を示し、かつ良好な口腔内崩壊時間を示すことから、口腔内崩壊錠として優れた性質を示すことがわかった。
【0057】
(実施例1-9)
フェブキソスタット(国際公開第2015/063561号パンフレットの段落番号[0112]記載の例5に従い調製した) 240g、D-マンニトール(三菱商事フードテック、マンニットC) 124.8g、酸化マグネシウム(富田製薬、XP103) 1g、クロスポビドン(BASFジャパン、コリドンCL-F) 60g、および軽質無水ケイ酸(フロイント産業、アドソリダー101) 12gを転動流動層造粒機(フロイント産業、スパイラフローSFC-MINI)に投入し、給気温度を80℃に制御しながら、6%ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達、HPC-L)/塩化ナトリウム(富田製薬、局方塩化ナトリウム)水溶液を5g/分で480g噴霧した。噴霧終了後、顆粒の温度が45℃になるまで乾燥しフェブキソスタット含有核粒子を得た。
【0058】
(実施例1-10)~(実施例1-13)
(実施例1-9)と同様の工程1により(実施例1-10)~(実施例1-13)の核粒子を得、表11にまとめた。
【0059】
【表11】
【0060】
(実施例2-6)~(実施例2-11)
(実施例2-1)と同様の工程2、工程3により(実施例2-6)~(実施例2-11)の顆粒を得、表12にまとめた。
【0061】
【表12】
【0062】
(実施例3-10)~(実施例3-15)
(実施例3-1)と同様の工程4により(実施例3-10)~(実施例3-15)の口腔内崩壊錠を得、表13にまとめた。
【0063】
【表13】
【0064】
[試験例1-2]
(実施例3-10)~(実施例3-15)の錠剤について、試験例1-1と同様にして健康な成人男性5名によるマスキング性の評価を行った。その結果を表14に示す。評価方法は、前記の通りである。
【0065】
【表14】
【0066】
[試験例2-2]
試験例2-27と同様にして(実施例3-10)~(実施例3-15)の錠剤について、口腔内崩壊時間と硬度を評価した。その結果を表15に示す。
【0067】
【表15】
【0068】
表14及び表15の結果より、実施例により製造された各錠剤は、高いマスキング効果を持つ一方で、良好な崩壊性及び硬度を両立することができ、口腔内崩壊錠として優れた性質を示すことがわかった。