(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】パワー半導体の温度過昇を検知する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01K 7/01 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
G01K7/01 M
G01K7/01 C
(21)【出願番号】P 2022553429
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2020048325
(87)【国際公開番号】W WO2021149451
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-05-02
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】河原 知洋
(72)【発明者】
【氏名】ブランデレロ、ジュリオ
(72)【発明者】
【氏名】モロヴ、ステファン
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-322185(JP,A)
【文献】特開昭51-077175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0038625(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体の温度過昇を検知する装置であって、
前記パワー半導体の制御電極を介して電流を供給する電流パルス源と、
前記電流パルス源によって供給される前記電流を複製し、該複製電流をエミュレート装置に供給するカレントミラーと、
前記制御電極間
の電圧を前記エミュレート装置の両端
の電圧と比較する比較器と、
前記比較の前記結果を通知する手段と、
を備えることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記比較の前記結果を通知する前記手段は、前記比較器により出力され
る信号に従って前記パワー半導体
の切替パターンを更に制御することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電流
パルス源が印加される前記制御電極は、ゲート及びエミッタ又はゲート及びソースであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記電流パルス源は、前記パワー半導体が切替中又は遷移モードでないときに該パワー半導体に供給される、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記エミュレート装置は、直列接続された抵抗器及びコンデンサから構成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記コンデンサの値は、前記パワー半導体のゲート容量値以下であることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記抵抗器の値は、前記パワー半導体が該パワー半導体
の最大接合部温度にほぼ等しい温度にあるときの該パワー半導体のゲート抵抗値以下であることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記抵抗器の値は、較正段階中に調整されることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記電流パルスの持続時間は、
【数1】
に等しく、式中、Vthは、前記パワー半導体の前記ゲート
の閾値電圧を表し、Vsupplyは、前記パワー半導体がオンになることを防
ぐ負のゲート電圧であるか、又はVsupplyは、前記パワー半導体がオフになることを防
ぐ正のゲート電圧であり、Rgは、前記パワー半導体が該パワー半導体の前記最大接合部温度にほぼ等しい温度にあるときの該パワー半導体の前記ゲート抵抗値であり、Cgは、前記パワー半導体の前記ゲート容量値であり、Iは、前記電流パルスの値であることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
少なくとも1つの抵抗器及び少なくとも1つの他の比較器を更に備え、該少なくとも1つの抵抗器の第1の端子は前記カレントミラーに接続され、該少なくとも1つの抵抗器の第2の端子は前記エミュレート装置に接続され、前記少なくとも1つの他の比較器は、前記パワー半導体の前記電極における前記電圧を、前記少なくとも1つの抵抗器の前記第2の端子における前記電圧と比較することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
パワー半導体の温度過昇を検知する方法であって、
前記パワー半導体の制御電極を介して電流パルスを印加するステップと、
前記電流パルスを複製し、該複製電流パルスをエミュレート装置に供給するステップと、
前記制御電極間
の電圧を前記エミュレート装置の両端
の電圧と比較するステップと、
前記比較の前記結果を通知するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記エミュレート装置は、直列接続された抵抗器及びコンデンサから構成され、前記方法は、前記パワー半導体が所定の温度で加熱されるときに前記抵抗器の値を調節するステップを更に含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、パワー半導体の温度過昇を検知する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体装置は、最大接合部温度未満で動作するように作られる。最大接合部温度を超えての動作は、パワー半導体装置の不可逆的で破局的な故障につながり得る熱暴走条件を引き起こす場合がある。最大接合部温度を超えての動作は、不良冷却装置、パワー半導体の仕様を超える過渡動作、エージング等の様々な状況によって生じる場合がある。
【0003】
今日、チップ温度のセンサーとして用いられる組み込みダイオードを有するトランジスタのようなパワー半導体装置が用いられている。ダイオードの順方向電圧降下は温度に依存する。この解決策は、トランジスタの利用可能な活性領域の損失をもたらし、パワー半導体への接続数を増やす。
【0004】
熱電対又は負温度係数抵抗器を用いた接合部温度の直接測定は、センサーの低帯域幅、及びそれらをパワー半導体の近くに配置できないことから、温度過昇の検出と両立しない。
【0005】
温度の光学測定もまた、待ち時間を増やすデジタル処理及び較正を必要とするため遅い。
【0006】
パワー半導体の感熱電気パラメータの使用は見込みがある。例えば、パワー半導体の温度は、アクティブなパワー半導体に測定電流を注入して、温度に依存するオン状態電圧を測定することによって観測され得る。
【0007】
結果として、この測定は、伝導電流の既知の状態で行うか、又は全ての伝導電流について較正する必要があるため、測定回路の複雑度を高め、さらにこの測定に関連する精度は十分でない場合があり、よって誤トリガーを生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、パワー半導体の温度過昇を検知する低複雑度で正確な装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため、本発明は、パワー半導体の温度過昇を検知する装置であって、パワー半導体の制御電極を介して電流を供給する電流パルス源と、電流パルス源によって供給される電流を複製し、複製電流をエミュレート装置に供給するカレントミラーと、制御電極間の電圧をエミュレート装置の両端の電圧と比較する比較器と、比較の結果を通知する手段とを備えることを特徴とする、装置に関する。
【0010】
本発明はまた、パワー半導体の温度過昇を検知する方法であって、パワー半導体の制御電極を介して電流パルスを印加するステップと、電流パルスを複製し、複製電流パルスをエミュレート装置に供給するステップと、制御電極間の電圧をエミュレート装置の両端の電圧と比較するステップと、比較の結果を通知するステップとを含むことを特徴とする、方法に関する。
【0011】
したがって、本発明は、複雑になることなく、パワー半導体の温度過昇を検出し、熱暴走を防ぐことができる。エミュレート装置のために、アナログ-デジタル変換器を導入して実際の温度を読み取る必要がない。
【0012】
特定の特徴によれば、比較の結果を通知する手段は、比較器により出力される信号に従ってパワー半導体の切替パターンを更に制御する。
【0013】
特定の特徴によれば、電流源が印加される制御電極は、ゲート及びエミッタ又はゲート及びソースである。
【0014】
特定の特徴によれば、電流パルス源は、パワー半導体が切替中又は遷移モードでないときにパワー半導体に供給される。
【0015】
したがって、ユーザーは、熱暴走を防ぐために、パワー半導体を停止又は減速させることを決めることができる。さらに、制御電極における電圧は、電流パルスに従ってのみ変化し、電磁的及び他の妨害は、パワー半導体の温度過昇の検知中に妨げとならない。
【0016】
本発明によれば、エミュレート装置は、直列接続された抵抗器及びコンデンサから構成される。
【0017】
したがって、エミュレート装置は、例えば最大接合部温度のすぐ下の温度のような所与の温度において、パワー半導体の内部ゲートと同じインピーダンスを有する。エミュレート装置は、電流パルス源に従って変化する閾値を作成するために用いられる。その場合、パワー半導体の電極における電圧と、エミュレート装置における電圧との比較は、電流パルス源の値とは無関係となる。
【0018】
本発明によれば、コンデンサの値は、パワー半導体のゲート容量値以下である。
【0019】
したがって、本発明は、比較器の出力における誤警報を防止することができる。
【0020】
本発明によれば、抵抗器の値は、パワー半導体がパワー半導体の最大接合部温度にほぼ等しい温度にあるときのパワー半導体の内部ゲート抵抗値以下である。
【0021】
したがって、パワー半導体の最大接合部温度以下である閾値温度を定めることができる。
【0022】
本発明によれば、抵抗器の値は、較正段階中に調整される。
【0023】
したがって、各パワー半導体の内部ゲート抵抗の変動を補償することができる。
【0024】
本発明によれば、電流パルスの持続時間は、
【数1】
に等しく、式中、Vthは、半導体のゲートの閾値電圧を表し、Vsupplyは、パワー半導体がオンになることを防ぐ負のゲート電圧であるか、又はVsupplyは、パワー半導体がオフになることを防ぐ正のゲート電圧であり、Rgは、パワー半導体がパワー半導体の最大接合部温度にほぼ等しい温度にあるときのパワー半導体の内部ゲート抵抗値であり、Cgは、パワー半導体のゲート容量値であり、Iは、電流パルスの値である。
【0025】
したがって、パワー半導体の状態は、パルス持続時間の間、同一に維持される。
【0026】
本発明によれば、少なくとも1つの抵抗器及び少なくとも1つの比較器を更に備え、少なくとも1つの抵抗器の第1の端子はカレントミラーに接続され、少なくとも1つの抵抗器の第2の端子はエミュレート装置に接続され、少なくとも1つの比較器は、パワー半導体の電極における電圧を、少なくとも1つの抵抗器の第2の端子における電圧と比較する。
【0027】
本発明によれば、方法は、パワー半導体が所定の温度で加熱されるときにエミュレート装置の抵抗値を調節するステップを更に含む。
【0028】
本発明の特徴は、例示の実施形態の以下の説明を読むことによってより明らかになる。この説明は、添付図面に関して作成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明によるパワー半導体装置の温度を検知する装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】本発明によるパワー半導体の電気的等価回路を示す図である。
【
図4】本発明によるパワー半導体の温度を検知するために用いられるエミュレート装置の一例を示す図である。
【
図5】本発明によるパワー半導体装置の温度を検知するために用いられる
カレントミラーの一例を示す図である。
【
図6】本発明によるパワー半導体の温度を検知するために用いられる信号を示す図である。
【
図7】エミュレート装置の少なくとも1つの部品の数値が正確に定義されていない場合に生じ得る信号を示す図である。
【
図8】最大接合部温度が検出されたときに生じる信号を示す図である。
【
図9】エミュレートパワー半導体の抵抗器の値を調節するために用いられるアルゴリズムの一例を示す図である。
【
図10】本発明によるパワー半導体装置の温度を検知する装置の構成の一例を示す図である。
【
図11】本発明によるパワー半導体装置の温度を検知する装置の構成の別の例を示す図である。
【
図12】本発明によるパワー半導体装置の温度を検知するアルゴリズムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明によるパワー半導体装置の温度を検知する装置の構成の一例を示す。
【0031】
パワー半導体の温度を検知する装置は、パワー半導体が切替中又は遷移モードでないときに電流パルス源60によってパワー半導体(Sc)10の制御電極を介して供給される電流を複製するカレントミラー70を備える。
【0032】
制御電極は、ゲート及びエミッタ又はゲート及びソースである。
【0033】
複製電流は、エミュレート装置20に供給される。
【0034】
パワー半導体10のゲートとエミッタとの間又はゲートとソース電圧との間の検知電圧は、エミュレート装置20の電圧を比較する比較器30に供給される。
【0035】
変形において、制御電極間の電圧をエミュレート装置の両端の電圧に対して検知する代わりに、電圧は、1つの制御電極と基準、例えば、アースとの間で検知される。
【0036】
エミュレート装置の電圧がパワー半導体10の検知された電極電圧よりも高い場合、比較器30の出力はハイレベルとなる。
【0037】
パワー半導体の温度を検知する装置は、所定の信号又は所定のメッセージを転送することによって比較の結果を通知するか、又はマンマシンインターフェースにより所定の情報を生成するコントローラ50を備える。
【0038】
特定の具現化態様において、コントローラは、パワー半導体10の接合部温度を下げるために、パワー半導体のゲート-ソース間電圧を更に制御し、動作中にパワー半導体装置に印加されるゲート-ソース間電圧パターンを変更する。
【0039】
エミュレート装置は、検出すべき所望の温度におけるパワー半導体10の、ゲート-エミッタ経路のうちの1つのような入力インピーダンスを表すエミュレートインピーダンスである。
【0040】
パルス電流源60のパルス持続時間は、パワー半導体がオン又はオフになることを避けるために或る特定の期間、通常は数マイクロ秒まで制御される。次に、実際のトランジスタの両端の電圧を、エミュレートインピーダンスの両端の電圧と比較する。したがって、測定された電圧がエミュレート装置における電圧よりも高い場合、つまり、ゲート抵抗がエミュレート装置のものよりも高い値を有する場合、パワー半導体10の接合部温度は目標点よりも熱く、比較器30は、温度超過を示す信号を出力する。最後に、温度過昇信号が、比較の結果を通知するコントローラ50に供給される。
【0041】
特定の具現化態様において、コントローラ50は、パワー半導体の切替速度を更に低下させるか、又はしばらくの間、切替を停止する。
【0042】
本発明は、パワー半導体の近くに追加装置なしで、高速帯域幅で、アナログ-デジタル変換器なしで、又はデジタル処理を必要とすることなくパワー半導体の通常動作中に温度過昇を検出することを可能にする。
【0043】
【0044】
パワー半導体は、例えばトランジスタTと、アノードがトランジスタTのエミッタに接続され、カソードがトランジスタTのコレクタに接続されたダイオードDとである。
【0045】
図3は、本発明によるパワー半導体の電気的等価回路を示す。
【0046】
パワー半導体の電気的等価回路は、コンデンサCgと直列接続された抵抗器Rgから構成される。
【0047】
本発明は、接合部温度を推測するために内部ゲート抵抗を利用する。内部ゲート抵抗は、トランジスタの伝統的構造に既に存在する電界効果トランジスタ中のポリシリコン層によって作成される。典型的なトランジスタの場合、温度が上昇すると抵抗の値は上昇する。
【0048】
図4は、本発明によるパワー半導体の温度を検知するために用いられるエミュレート装置の一例を示す。
【0049】
エミュレート装置20は、コンデンサCeと直列接続された抵抗器Reから構成される。
【0050】
抵抗器Reは、最大安全温度動作においてRgと同じ値を有し、コンデンサCeは例えば、Cgと同じ値を有する高安定(例えばC0G)コンデンサである。
【0051】
図5は、本発明によるパワー半導体装置の温度を検知するために用いられる
カレントミラーの一例を示す。
【0052】
カレントミラー70は例えば、ゲインが一致したトランジスタペアから構成される。
【0053】
図6は、本発明によるパワー半導体の温度を検知するために用いられる信号を示す。
【0054】
パルス電流60、パワー半導体10の電圧10o及びエミュレート装置20の電圧の波形、並びに温度過昇信号50oを
図6に3パルス分だけ示す。
【0055】
1つ目のパルス60aの間、パワー半導体10の温度は最大接合部温度に等しい。2つ目のパルス60bの間、パワー半導体10の温度は最大接合部温度よりも低い。電圧10obは電圧20obよりも高い。3つ目のパルス60cの間、パワー半導体の温度は温度閾値、すなわち最大接合部温度よりも高い。電圧20ocは電圧10ocよりも高く、比較器30の出力信号50oの状態が変化する。
図6の例では、Ce=Cgと仮定され、温度変化はもっぱら、パワー半導体のゲート抵抗の温度のばらつきによるものである。
【0056】
図7は、エミュレート装置の少なくとも1つの部品の数値が正確に定義されていない場合に生じ得る信号を示す。
【0057】
本発明によれば、コンデンサCeは厳格にCg以下であって、誤警報の発生を避ける。
図7に示すように、この条件は、抵抗器の値Rgが抵抗器の値Reよりも低いため、電流パルスの最後で電圧10oを電圧20oよりも低く保つために必要十分である。1つ目のパルス60aの間、コンデンサの値Ceはコンデンサの値Cgに等しいため、無限のパルス持続時間であっても誤警報は生じ得ない。2つ目のパルス60bにおいて、コンデンサの値Ceはコンデンサの値Cgよりも高いため、抵抗器の値Rgが抵抗器の値Reより低くても、誤トリガーが出力される。最後に、3つ目のパルス60cにおいて、コンデンサの値Ceはコンデンサの値Cgよりも低く、無限のパルス持続時間であっても誤警報は生じ得ない。
【0058】
パワー半導体10及びエミュレート装置電圧の基本式に基づいて、Iを電流値、及びtを時間として、
【数2】
RgはReよりも小さいため、電圧10oは、t=tmaxに従い電流パルスの最後で20oよりも低くなければならない。すると次式が成り立つ。
【数3】
式中、
【数4】
であり、式中、Vthは、半導体10のゲートの閾値電圧を表し、Vsupplyは、パワー半導体がオンになることを防ぐ負のゲート電圧であるか、又はVsupplyは、パワー半導体がオフになることを防ぐ正のゲート電圧である。R
g-R
eの項が0に近いことを考えると、Ce<Cgとなる。
特定の特徴において、抵抗器Reは、最高温度において抵抗器Rgよりも僅かに小さいか、又は等しい値に設定される。抵抗器Reの値は、次式を用いて計算される。
【数5】
式中、
【数6】
は、最大接合部温度における抵抗器の値である。
【0059】
したがって、2つのコンデンサの間の差は補償され、
図7においてtcmpとして示す比較器の検出時間において温度過昇検出が可能となる。
【0060】
図8は、最大接合部温度が検出されたときに生じる信号を示す。
【0061】
検出時間tcmpが短すぎて簡単に検出できない場合、比較器の出力に対してセット/リセット機能を持つラッチ回路を導入することが可能である。
【0062】
図9は、エミュレートパワー半導体の抵抗器の値を調節するために用いられるアルゴリズムの一例を示す。
【0063】
ステップS80において、パワー半導体を所定の温度、例えば最大接合部温度から1℃を引いた温度で加熱する。
【0064】
ステップS81において、比較器30によって出力された温度過昇信号を確認する。信号がハイレベルである場合、アルゴリズムはステップS81に移る。そうでない場合、本アルゴリズムを中断する。
【0065】
ステップS82において、レーザートリミング技術又はヒューズ溶断を用いて抵抗器の値Reの値を調節する。
【0066】
特定の特徴において、抵抗器の値Reは、比較器によって出力された温度過昇信号がハイレベルである場合に増分だけ調節される。例えば、増分は、推定されたRg抵抗器の値の1000ppmに等しく、例えば、公称値が5ΩであるRgの場合に5mΩである。
【0067】
その後、アルゴリズムはステップS81に戻る。
【0068】
図10は、本発明によるパワー半導体装置の温度を検知する装置の構成の一例を示す。
【0069】
装置60は、例えば、バス901によって互いに接続される部品と、プログラムによって制御されるプロセッサ900とに基づく構成を有する。
【0070】
バス901は、プロセッサ900を読み出し専用メモリ(ROM)902、ランダムアクセスメモリ(RAM)903、及び入出力(I/O)インターフェース(I/F)905に接続する。
【0071】
入出力インターフェース(I/F)905は、電流パルス源、カレントミラー70、エミュレート装置20及び比較器30を備える。
【0072】
メモリ903は、
図12に開示するアルゴリズムに関連するプログラムの変数及び命令を受け取るようになっているレジスタを含む。
【0073】
読み出し専用メモリ、又はおそらくはフラッシュメモリ902は、
図12に開示するアルゴリズムに関連するプログラムの命令を含む。
【0074】
装置の電源が入れられると、メモリ903に記憶されている命令がランダムアクセスメモリ903に転送される。
【0075】
装置は、プログラマブルコンピューティングマシン、例えばPC(パーソナルコンピューター)、DSP(デジタル信号プロセッサ)又はマイクロコントローラ等による一組の命令又はプログラムの実行によってソフトウェアで実施することもできるし、それ以外にマシン又は専用構成要素、例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)等によってハードウェアで実施することもできる。
【0076】
言い換えれば、装置は、コントローラ50がプログラムを実行することを可能にする回路部を含む。
【0077】
装置60は、入出力(I/O)インターフェース(I/F)905を介して半導体のゲート信号を制御し、パワー半導体の切替を制御するとともに、エミュレート装置の抵抗器の値を調節するレーザートリミング装置を制御してもよい。
【0078】
図11は、本発明によるパワー半導体装置の温度を検知する装置の構成の別の例を示す。
【0079】
パワー半導体10の温度を検知する装置は、電流パルス源60によってパワー半導体(Sc)10の制御電極を介して供給される電流を複製するカレントミラー70を備える。
【0080】
複製電流は、抵抗器R1の第1の端子及び比較器31の第1の入力に供給される。
【0081】
抵抗器R1の第2の端子は、抵抗器R2の第1の端子及び比較器32の第1の入力に接続される。
【0082】
抵抗器R2の第2の端子は、エミュレート装置20に接続される。
【0083】
図11の例では、
図1に開示する装置に2つの抵抗器及び2つの比較器が追加されていることに留意されたい。
図1に開示する装置に1つの抵抗器及び1つの比較器のみを追加してもよいし、又は
図1に開示する装置に3つ以上の抵抗器及び3つ以上の比較器を追加してもよい。
【0084】
パワー半導体10の制御電極間の検知電圧は、エミュレート装置20の電圧を比較する比較器31、32及び33に供給される。
【0085】
エミュレート装置20の電圧がパワー半導体10の制御電極間の検知電圧よりも高い場合、比較器30の出力はハイレベルとなる。
【0086】
パワー半導体の温度を検知する装置は、比較の結果を通知するコントローラ50を備える。
【0087】
特定の特徴によれば、コントローラ50は、パワー半導体10の接合部温度を下げるために、動作中にパワー半導体装置に印加されるパターンを変更する。
【0088】
エミュレート装置は、検出すべき所望の温度におけるパワー半導体10の入力インピーダンス(ゲート/エミッタ経路)を表すエミュレートインピーダンスである。
【0089】
したがって、パワー半導体10の異なる臨界温度が検出され得る。抵抗器Reの値は、上述した技法のうちの1つを用いて所与の温度について調節される。抵抗器R1及びR2の値は、抵抗器Rgの値に温度ステップを乗算した温度感度に関連して選択される。上記の数値例を挙げると、温度ステップが5℃であり温度感度が5mΩ/℃である場合、抵抗器R1及びR2の値は25mΩとなる。
【0090】
パルス電流源60のパルス持続時間は、パワー半導体がオン又はオフになることを避けるために或る特定の期間、通常は数マイクロ秒まで制御される。次に、半導体の電極の両端の電圧を、エミュレートインピーダンスの両端の電圧と比較する。
【0091】
図12は、本発明によるパワー半導体装置の温度を検知するアルゴリズムの一例を示す。
【0092】
ステップS110において、パワー半導体の制御電極を介して電流パルスを印加する。
【0093】
ステップS111において、電流パルスを複製し、複製電流パルスをエミュレート装置に供給する。
【0094】
ステップS112において、パワー半導体の制御電極間の電圧を、エミュレート装置における電圧と比較する。
【0095】
ステップS113において、比較の結果を通知する。
【0096】
パワー半導体の切替パターンもまた、比較の結果に従って制御してもよい。