(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】塞栓デバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
A61B17/12
(21)【出願番号】P 2022571237
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 EP2020064297
(87)【国際公開番号】W WO2021233553
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-02-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514222743
【氏名又は名称】クリアストリーム・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ロナン,アラン
(72)【発明者】
【氏名】シェリダン,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ウォール,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ジャイルズ,キアラン
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-073104(JP,A)
【文献】特開2019-193816(JP,A)
【文献】特開2019-141638(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0062838(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0257765(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0296238(US,A1)
【文献】国際公開第2005/113035(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体管腔中の血栓形成を促進するための塞栓デバイスであって、収縮した送達構成と拡張した配備構成とを有し、複数の可撓性毛を備え、前記複数の可撓性毛のうちの少なくとも1つが撚られた部分を有し、少なくとも1つの前記撚られた部分が前記複数の可撓性毛を互いに固定し、前記複数の可撓性毛が前記少なくとも1つの撚られた部分から少なくとも半径方向外側に延び、前記塞栓デバイスは、芯体をさらに備え、前記可撓性毛の前記少なくとも1つの撚られた部分は、前記芯体が前記少なくとも1つの撚られた部分を取り囲んで固定するように前記芯体内に配置される、塞栓デバイス。
【請求項2】
前記芯体が前記複数の可撓性毛を機械的に固定する、請求項1に記載の塞栓デバイス。
【請求項3】
前記芯体が前記複数の可撓性毛に接着または結合する、請求項1または2に記載の塞栓デバイス。
【請求項4】
前記芯体が硬化性材料または固化性材料であり、任意選択で、前記芯体が加熱、溶剤フラッシュおよび照射のうち少なくとも1つによって硬化可能または固化可能である、請求項1~3のいずれか一項に記載の塞栓デバイス。
【請求項5】
前記芯体が前記可撓性毛の前記撚られた部分を取り囲んで固定するように前記芯体が硬化または固化される、請求項1~4のいずれか一項に記載の塞栓デバイス。
【請求項6】
前記芯体がポリマー、および任意選択でナイロンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の塞栓デバイス。
【請求項7】
前記芯体が樹脂である、請求項1~6のいずれか一項に記載の塞栓デバイス。
【請求項8】
前記芯体が金属および合金の少なくとも一方である、請求項1~5のいずれか一項に記載の塞栓デバイス。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の前記塞栓デバイスを備える塞栓システムであって、前記塞栓デバイスに取り付けられる相互接続モジュールをさらに備える塞栓システム。
【請求項10】
前記相互接続モジュールが送達要素に接続するように構成される、請求項9に記載の塞栓システム。
【請求項11】
前記相互接続モジュールが、第2の複数の可撓性毛を備える毛セグメントに接続するように構成される、請求項9に記載の塞栓システム。
【請求項12】
前記塞栓デバイスに取り付けられる放射線不透過性マーカーをさらに備える、請求項9~11のいずれかに記載の塞栓システム。
【請求項13】
身体管腔中の血栓形成を促進するための塞栓デバイスであって、収縮した送達構成と拡張した配備構成とを有し、複数の毛セグメントを備え、各セグメントが複数の可撓性毛を備え、前記毛セグメントのうちの少なくとも1つについて、前記複数の可撓性毛のうちの少なくとも1つが、撚られた部分を備え、
少なくとも1つの前記撚られた部分が前記毛セグメントの前記複数の可撓性毛を互いに固定し、前記複数の可撓性毛が前記少なくとも1つの撚られた部分から少なくとも半径方向外側に延び、前記塞栓デバイスは、芯体をさらに備え、前記可撓性毛の前記少なくとも1つの撚られた部分は、前記芯体が前記少なくとも1つの撚られた部分を取り囲んで固定するように前記芯体内に配置される、塞栓デバイス。
【請求項14】
管腔中の血栓形成を促進するための、収縮した送達構成と拡張した配備構成とを有する塞栓デバイスを製造する方法であって、
複数の可撓性毛を用意するステップと、
前記複数の可撓性毛のうちの少なくとも1つの毛を撚って少なくとも1つの撚られた部分を形成するステップであって、前記可撓性毛が前記少なくとも1つの撚られた部分から少なくとも半径方向外側に延びるように、前記少なくとも1つの撚られた部分が前記複数の可撓性毛を互いに固定する、ステップと、
芯体を用意するステップであって、前記可撓性毛の前記少なくとも1つの撚られた部分は、前記芯体が前記少なくとも1つの撚られた部分を取り囲んで固定するように前記芯体内に配置される、ステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、身体管腔中の血栓形成を促進するための、収縮した送達構成と拡張した配備構成とを有する塞栓デバイスに関する。本開示はまた、塞栓デバイスを製造する方法、および塞栓デバイスを製造するための製造装置に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
塞栓デバイスは、血栓形成を促進し、最終的に血管を閉塞させるために、医療従事者が脈管構造中の特定の位置に配備し得る。通常、塞栓デバイスは、送達ワイヤを使用して、配備位置に到達するまでガイドカテーテルの中を通して押し進められる。デバイスが配備の必要な位置に到達すると、デバイスはガイドカテーテルから遠位方向に配備され、送達ワイヤから取り外され、送達ワイヤおよび送達カテーテルが除去される。
【0003】
重大な悪影響を引き起こし得るので、塞栓デバイスは一度配備されたら脈管構造内で移動しないことが重要である。同様に、塞栓デバイスの構成要素も脈管構造内を移動し、同様の悪影響を及ぼし得るので、これらは破損、離脱、または塞栓デバイスから脱落しないことが重要である。
【0004】
したがって、移動のリスクが低減された塞栓デバイスが求められている。
【0005】
塞栓デバイスはまた、より多くの異なった形態の脈管構造に配備されることが可能になるように、長手方向の大きさの小さいものが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、身体管腔中の血栓形成を促進するための塞栓デバイスが提供され、塞栓デバイスは収縮した送達構成と拡張した配備構成とを有し、塞栓デバイスは複数の可撓性毛を備え、複数の可撓性毛のうちの少なくとも1つは撚られた部分を有し、少なくとも1つの撚られた部分が複数の可撓性毛を互いに固定し、複数の可撓性毛が少なくとも1つの撚られた部分から少なくとも半径方向外側に延びている。1つまたは複数の撚られた部分は、個々の毛が塞栓デバイスから離脱することを抑制し得る。撚られた部分は、毛を一か所で固定するためのステムのような別個の固定要素を不要にし得、塞栓デバイスの長手方向の大きさを縮小し、デバイスをより小さいまたは短い脈管構造中に配備することを可能にする。
【0007】
第1の態様の塞栓デバイスは芯体(core body)を備え得、可撓性毛の少なくとも1つの撚られた部分は、芯体が少なくとも1つの撚られた部分を取り囲んで固定するように、芯体内に配置されている。芯体は、毛が塞栓デバイスから離脱することをさらに抑制し得る。
【0008】
本明細書に開示する塞栓デバイスの芯体は、複数の可撓性毛を機械的に固定し得る。
【0009】
芯体は複数の可撓性毛に接着または結合し得る。
【0010】
芯体は、硬化性材料(curable material)または固化性材料(settable material)であり得、加熱、溶剤フラッシュおよび照射のうちの少なくとも1つによって硬化可能または固化可能であり得る。
【0011】
芯体は、可撓性毛の部分を囲んで固定するように、硬化または固化され得る。
【0012】
芯体はポリマー、および任意選択でナイロンであり得る。芯体は、樹脂であり得る。芯体は、金属および合金の少なくとも一方であり得る。
【0013】
第2の態様によれば、第1の態様の塞栓デバイスを備える塞栓システムであって、中心部で塞栓デバイスに取り付けられる相互接続モジュールをさらに備える塞栓システムが提供される。相互接続モジュールは、送達要素に接続するように構成され得る。相互接続モジュールは、第2の複数の毛を備える毛セグメントに接続するように構成され得る。毛セグメントは、第1の態様と同様に固定された複数の毛を備え得、またはステムから少なくとも半径方向外側に延びる複数の毛を備え得る。
【0014】
塞栓システムは、中心部に取り付けられる放射線不透過性マーカーをさらに備え得る。
【0015】
第3の態様によれば、身体管腔中の血栓形成を促進するための塞栓デバイスが提供され、塞栓デバイスは収縮した送達構成と拡張した配備構成とを有し、塞栓デバイスは複数の毛セグメントを備え、各セグメントは複数の可撓性毛を備え、毛セグメントのうちの少なくとも1つについて、複数の可撓性毛のうちの少なくとも1つは撚られた部分を備え、少なくとも1つの撚られた部分は毛セグメントの複数の可撓性毛を互いに固定し、複数の可撓性毛は少なくとも1つの撚られた部分から少なくとも半径方向外側に延びる。
【0016】
第4の態様によれば、管腔中の血栓形成を促進するための、収縮した送達構成と拡張した配備構成とを有する塞栓デバイスを製造する方法が提供され、本方法は、複数の可撓性毛を用意するステップと、複数の可撓性毛のうちの少なくとも1つの毛を撚って少なくとも1つの撚られた部分を形成するステップであって、毛が少なくとも1つの撚られた部分から少なくとも半径方向外側に延びるように、少なくとも1つの撚られた部分が複数の可撓性毛を互いに固定する、ステップとを含む。
【0017】
本開示のより良い理解のために、および、どのように同じことが実施され得るかを示すために、以下の概略図面が例としてのみ参照される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】1つまたは複数の例による、非拘束構成の塞栓デバイスの側面図である。
【
図1B】1つまたは複数の例による、
図1Aの塞栓デバイスの垂直断面図である。
【
図2A】1つまたは複数の例による、送達カテーテル内の収縮した送達構成の塞栓デバイスの側面図である。
【
図2B】1つまたは複数の例による、身体管腔内の拡張した配備構成の塞栓デバイスの側面図である。
【
図3】本明細書に示し、説明する、1つまたは複数の実施形態による、非拘束構成の別の塞栓デバイスの側面図である。
【
図4】本明細書に示し、説明する、1つまたは複数の実施形態による、非拘束構成の、さらに別の塞栓デバイスの側面図である。
【
図5】本明細書に示し、説明する、1つまたは複数の実施形態による、非拘束構成の、またさらに別の塞栓デバイスの側面図である。
【
図6A】本明細書に示し、説明する、1つまたは複数の実施形態による、送達カテーテル内の収縮した送達構成の塞栓デバイスの側面図である。
【
図6B】本明細書に示し、説明する、1つまたは複数の実施形態による、送達カテーテル内の拡張した配備構成の塞栓デバイスの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示を通じて、「塞栓デバイス(embolisation device)」という用語は、身体管腔中に永久的または半永久的に植え込まれ得るデバイスを指し得る。したがって、「塞栓デバイス」は、数日間などの一時期身体管腔中に配置されるようにも、無期限に管腔内に配置されるようにも構成され得る。この目標を達成するために、「塞栓デバイス」は、隔離した状態で身体管腔中に植え込まれ得るように、送達要素から選択的に取り外されるように構成され得る。
【0020】
本開示を通じて、「身体管腔(bodily lumen)」という用語は、ヒトまたは動物の身体の管状構造内の内部空間を指し得る。「身体管腔」は、例えば、動脈または静脈であり得る。
【0021】
本開示を通じて、要素の「収縮した送達構成(collapsed delivery configuration)」という用語は、要素の拡張した配備構成(expanded deployed configuration)よりも小さい半径方向の大きさを有する要素の構成を指し得る。
【0022】
本開示を通じて、「固定する(anchor)」という用語は、要素を部分的にまたは完全に一箇所に固定することを指し得る。
【0023】
本開示を通じて、「ステム」という用語は、デバイスの背骨として働くために塞栓デバイスの長さに沿って長手方向に延び、塞栓デバイスのさらに付け加えられる要素(例えば、複数の可撓性毛)よりも大幅に小さい半径方向の大きさを有する細長い要素を指し得る。ステムは、複数の可撓性毛の実質的に全長手方向の大きさに沿って延び得る(例えば、塞栓デバイスが非制限構成、収縮した送達構成および/または拡張した配備構成にあるとき)。ステムは、塞栓デバイスの実質的に全長に沿って延び得る。
【0024】
本開示を通じて、「芯体(core body)」という用語は、芯体を貫いて延びる可撓性毛の一部を囲んで固定するために適した物体を指し得る。
【0025】
本明細書に記載するいずれの例においても、「毛(bristle)」という用語は、実質的に単一片で形成された細長い糸を指し得る。「毛」は弾力のある毛であり得る。弾力のある毛は、特定の曲率に偏っていることがある。
【0026】
本開示を通じて、「半径方向外側に(radially outwardly)」という用語は、デバイスの長手方向に追加的に延在する要素を除外するものではない。例えば、複数の可撓性毛は、塞栓デバイスの芯体または長手方向軸から半径方向外側および長手方向に延び得る。
【0027】
本開示を通じて、「半径方向の大きさ(radial extent)」という用語は、塞栓デバイスの芯体また撚られた部分の中心から半径方向外側に向かう特定の方向における半径方向の大きさを指し得る。例えば、塞栓デバイスは、拡張した配備構成よりも収縮した送達構成において、より小さい半径方向の大きさを有する。
【0028】
本開示を通じて、「取り囲む(surround)」という用語は、第1の要素が、第2の要素の実質的に全周について第2の要素と接触するときを指し得る。
【0029】
本開示を通じて、「機械的に固定する(mechanically anchor)」という用語は、接着/結合を担う固定する要素と固定される要素との間の分子間力および/または化学結合ではなく、固定要素の巨視的特性によって引き起こされる機械的力によって、実質的に要素を固定することを指す。
【0030】
本開示を通じて、用語「毛セグメント(bristle segment)」は、隣接する毛の間隔が所定の距離未満である毛のグループを指し得る。2つの毛セグメントが「離間している(spaced apart)」場合、毛セグメントの間隔(すなわち、第1のセグメントの最遠位の毛と第2のセグメントの最近位の毛との間隔)は、毛セグメントのうちの少なくとも1つの中で隣接する毛の間隔より大きい。
【0031】
複数の可撓性毛は、収縮した送達構成において、収縮した構成を有し得る。複数の可撓性毛は、拡張した配備構成において、拡張した構成を有し得る。複数の毛は、ステムから半径方向外側に、ステムを中心とする複数の半径方向に延び得る。
【0032】
拡張された構成では、複数の可撓性毛は、身体管腔中にデバイスを固定するように構成され得る。複数の可撓性毛は、実質的にすべての固定力を身体管腔中の塞栓デバイスに与えるように構成され得る。
【0033】
拡張された構成では、複数の可撓性毛が身体管腔に接触するように構成され得る。
デバイスが送達カテーテル内に配置される際は、収縮送達形態が採用される。より具体的には、ステムから外側に延びる複数の可撓性毛は、収縮した送達構成において、要素の拡張した配備構成における毛の半径方向の大きさよりも小さい半径方向の大きさを有する。
【0034】
毛は、ステンレス鋼、エルジロイ、ニチノールなど、柔軟な、すなわち弾力的に変形可能な材料で作られ得る。他の適切な材料、例えば、任意の適切なポリマー、または任意の他の形状記憶金属または金属合金も使用され得る。
【0035】
個々の可撓性毛の直径は、0.036mm(0.0014インチ)から0.053mm(0.0021インチ)まで変動し得る。例えば、個々の可撓性毛の直径は、0.0381mm(0.0015インチ)、0.0445mm(0.00175インチ)または0.0508mm(0.002インチ)であり得る。拡張された可撓性毛によって形成される半径方向プロファイルの平均半径方向直径は、5mmから30mmまで変動し得る。
【0036】
流量制限器は、薄膜ニチノール、薄膜PTFE(polytetrafluoroethylene)、ポリウレタンなどの薄膜エラストマー、ポリマー、その他任意の種類の適切な生体適合性材料からなる膜であり得る。膜は任意の自己拡張型材料で作られ得る。膜は、4μm~35μmの膜厚と5mm~20mmの半径方向直径とを有し得る。例えば、膜の直径は、6.5mm、9mm、または16mmであり得る。さらに、膜は非透過性でも半透過性でもよい。
【0037】
図1Aは、塞栓デバイス100を概略的に示す。塞栓デバイス100は、身体管腔中での血栓形成を促進するように、身体管腔中に配備するように構成される。
図1の塞栓デバイス100は、非拘束構成で示されている。
【0038】
塞栓デバイス100は、ステム110と、毛セグメント120a、120bの複数の可撓性毛120と、流量制限膜130とを備える。
【0039】
塞栓デバイス100は、送達要素115(
図2Aに概略的に描かれている)を使用して送達カテーテルの中を通して誘導される。送達要素は、例えばネジ式接続によって、塞栓デバイスの近位端に解放可能に接続され得る。塞栓デバイスが身体管腔内の標的部位に送達されると、塞栓デバイスは送達カテーテルに対して遠位方向に移動し、その結果、毛が、拡張した配備構成に拡張して身体管腔の壁と係合し、デバイスを身体管腔に固定させる。次に、塞栓デバイス100は送達要素から解放され、送達要素および送達カテーテルは引き抜かれる。
【0040】
塞栓デバイス100のステム110は、1つのまたは複数の撚り線で作られ得、撚り線は塞栓デバイスの中で毛120を保持する。
図1Bは、
図1Aの線A-Aに沿って取得された、塞栓デバイス100のクローズアップ断面図である。
図1Bに示す毛120は、図の平面から外に延び、断面が示されている。
図1Bによって分かるように、ステム110の撚り線は、毛120の表面の半径方向に反対の2箇所で毛120に接し、または挟み付け(clamp)ている。このステム110と毛120との接触によってもたらされる摩擦が、毛120を定位置に保持する。しかし、図示の例では、ステム110の撚り線は、毛120の撚り線の間に続く部分を取り囲んでいない。特に、撚り線は、毛120の撚り線に挟まれた部分の円周についてではなく、2箇所においてのみ毛120に接触している。これは、
図1B中の間隙150によって示されている。換言すれば、撚り線によって毛120に加えられる摩擦力は、毛120の表面上の2点のみに集中している。その結果、毛120が、撚り線から、および塞栓デバイス100から離脱または脱落するおそれが残る。さらに、塞栓デバイス100から1本の毛が脱落すると、毛をさらに脱落させるのに必要な力は大幅に減少することが観察されている。かくして、さらに毛が抜けるおそれが高まる。
【0041】
ステム110はまた、塞栓デバイスの長手方向の寸法を増加させ得、これは、塞栓デバイスが長過ぎていくつかの脈管構造は塞栓デバイス100に適さないことがあることを意味する。
【0042】
図2Aは、送達カテーテルCの内部で収縮した送達構成にある塞栓デバイス100の側面図を概略的に示す。
【0043】
図2Aから分かるように、塞栓デバイス100の収縮した送達構成において、複数の可撓性毛120a、120bは、収縮した構成に収縮されている。
【0044】
図2Aからさらに分かるように、塞栓デバイス100の収縮した送達構成において、流量制限膜130は、収縮した構成に収縮されている。
【0045】
図2Aでは、近位の毛セグメント120aと遠位の毛セグメント120bの両方が近位方向を向いている。しかし、当業者には明らかなように、この点に関しては任意の配置が可能である。特に、近位の毛セグメント120aと遠位の毛セグメント120bは、遠位方向を指してもよい。近位の毛セグメント120aが近位方向を指してもよいし、遠位の毛セグメント120bが遠位方向を指してもよい。近位の毛セグメント120aが遠位方向を指してもよいし、遠位の毛セグメント120bは近位方向を指してもよい。
【0046】
図2Bは、身体管腔L中で拡張した配備構成にある塞栓デバイス100を概略的に示す。塞栓デバイス100は、送達要素115(例えば送達ワイヤ)によって、カテーテルCの遠位端に到達するまで送達カテーテルCの中を通して押し進められ得る。カテーテルの端部が身体管腔L中の目標位置に到達すると、カテーテルCは定位置に保持されたまま、デバイス100が送達要素115によってカテーテルCに対して遠位方向に移動させられる。次に、塞栓デバイス100が身体管腔L中で拡張することが可能とされるように、身体管腔L中に挿入された状態で送達カテーテルCを抜去することによって、デバイス100は拡張した配備構成で身体管腔L中に配備される。次に、送達要素115は、例えば、送達要素をひねって両者を分離させることによって、デバイス100から除去される。
【0047】
塞栓デバイス100の拡張した配備構成は、
図2Aに示す収縮した送達構成よりも大きな半径方向の大きさを有する。
図2Bに示す拡張した配備構成では、複数の可撓性毛120a、120bと流量制限膜130とが、塞栓デバイス100を身体管腔L内に固定するように身体管腔Lに接触する。複数の可撓性毛120a、120bと流動制限膜130とによって与えられる固定力は、身体管腔L中の塞栓デバイス100の移動に抵抗するのに十分であり得る。
【0048】
図2Bに示す拡張した配備構成では、塞栓デバイス100が身体管腔Lを閉塞し、そこに血栓形成を促進し得る。
【0049】
図3は、本開示による別の塞栓デバイス300を概略的に示す。ここでも塞栓デバイス300は、そこに血栓形成を促進するために、身体管腔中に配備するように構成されている。
図3の塞栓デバイス300は、非拘束構成で示されている。
【0050】
塞栓デバイス300は複数の毛220を備える。複数の毛220のうちの少なくとも1本は、撚られた部分350を備える。複数の毛が撚られた部分350によって一緒に固定されるように、撚られた部分は複数の毛を互いに固定する。例えば、少なくとも1つの撚られた部分は、それらを一緒に固定するのに十分な方法で、他の毛の周りにかけられ得る。撚られた部分350は、説明のために簡略化されていることに留意されたい。1つまたは複数の結び目またはループまたはそれらの任意の組合せなど、複数の毛220を一緒に固定するために使用され得る、少なくとも1つの撚られた部分の多くの異なる可能な構成があることは、当業者には明らかであろう。他の例では、毛220が一緒に確実に固定されるように、複数の毛220が撚られた部分を有し得る。いくつかの例では、複数の毛は、互いに編まれ(plaited)ても、または編み込まれ(braided)てもよい。毛220は撚られた部分350によって互いに固定され、別個の固定要素が必要でないため、塞栓デバイス300の長手方向の大きさが縮小される。例えば、毛が固定される長手方向に延びるステムは必要ないことがある。
【0051】
塞栓デバイス300は、毛の中に長手方向に配置された、流量制限膜320(例えば円板状膜)などの流量制限器をさらに備え得る。
図3に示すように、流量制限器は、毛が低い半径方向プロファイルで長手方向に延びるように(例えば毛マニピュレータを使用して)毛の一部を操作し、流量制限器を、毛の一部にわたってデバイスに取り付け(すなわち、毛を膜の中心の孔に通し)、流量制限器が毛の中で長手方向に配置され近位および遠位の隣接する毛によって定位置に固定されるように毛を解放することによって、デバイスに取り付けられ得る。あるいは、膜220はメッシュ膜であり得、毛の少なくとも何本かは、それらの毛が膜220をデバイス300に固定するように、メッシュ膜の中心に近いメッシュの目を通過する。
【0052】
図2Aおよび
図2Bに示す塞栓デバイス200の場合と同様に、塞栓デバイス300は、送達カテーテル内に配置され得る、
図2Bに示す構成に類似する収縮した送達構成を有する。塞栓デバイス300は、解放可能な接続機構を有する相互接続モジュール360によって塞栓デバイスに解放可能に接続され得る、または押し要素であり得る送達要素(例えば、
図2Aに示すように、プッシュワイヤまたは送達ワイヤ)によって、送達カテーテルの中を通して押し進められ得る。塞栓デバイスが身体管腔内の所望の位置に到達すると、塞栓デバイス300と送達カテーテルとが相対的に移動させられ、塞栓デバイス300が身体管腔に送達される。例えば、カテーテルが後退させられ、送達要素が定位置に保持される。次に、送達要素は、塞栓デバイス300から解放され(必要な場合)、身体管腔から送達カテーテルと共に除去される。
【0053】
接続機構は、任意の適切な接続機構であり得る。例えば、その機構は、塞栓デバイスに接続された雄/雌ネジ付きコネクタと、送達要素に接続された雌/雄ネジ付きコネクタとを備え得る。その場合、送達要素は、送達要素から塞栓デバイス200を解放するために回転させられ得る。当業者には、何か他の解放可能な接続機構が適していることは明らかであろう。接続機構を備える相互接続モジュール360は、接着または結合によって塞栓デバイス300に接続され得る。
【0054】
拡張した配備構成では、塞栓デバイス300の毛220が、
図2Bに示す構成に類似して、デバイスを身体管腔に固定するために身体管腔に係合するように外側に延びる。
【0055】
図4は、本開示による別の塞栓デバイス300を概略的に示す。ここでも塞栓デバイス300は、そこに血栓形成を促進するために、身体管腔中に配備するように構成されている。
図4の塞栓デバイス300は、非拘束構成で示されている。
【0056】
図3に示す塞栓デバイスの場合と同様に、塞栓デバイス300は、複数の毛220を備える。複数の毛220のうちの少なくとも1本は、撚られた部分350を備える。撚られた部分は、
図3に関連して上述したように、複数の毛が撚られた部分350によって一緒に固定されるように、複数の毛を互いに固定する。複数の毛220を一緒に固定するために使用され得る、撚られた部分の多くの異なる可能な構成があることは、ここでも明らかであろう。他の例では、複数の毛220は、毛220が互いにしっかりと固定されるように、各々が撚られた部分を有し得る。いくつかの例では、複数の毛が、互いに編まれてもよく、または編み込まれてもよい。
【0057】
撚られた部分350に加えて、
図4の塞栓デバイス300は、撚られた部分350を囲んで固定する芯体210を備える。撚られた部分350と芯体210とは、ともに可撓性毛220が脱落することを抑制するように働く。撚られた部分を備える毛は、撚られた部分の存在により、芯体210から脱落する(例えば、抜き取られる)ことが特に抑制されている。毛が一緒に編まれまたは編み込まれている実施形態では、編みが、毛の各々が外れることを抑制する。
【0058】
図4の芯体210はまた、芯体を貫いて延びる可撓性毛の一部を取り囲んで固定するために適切な材料で作られ得る。例えば、芯体210は、複数の可撓性毛を接着または結合する材料で作られ得る。加えて、および代替的に、芯体210は、芯体210が可撓性毛220を機械的に固定するように構成され得る。
【0059】
例えば、芯体210は、例えば、加熱、溶剤フラッシュおよび/または照射によって硬化可能または固化可能な硬化性材料または固化性材料であり得る。芯体210は、ポリマー、ナイロン、樹脂、または金属もしくは金属合金であり得る。
【0060】
デバイス300はまた、先の実施形態に対応する流量制限器を備え得る。流量制限器は、膜320、例えば円板状の膜を備え、毛の一部を低い半径方向プロファイルで長手方向に延びるように操作し、毛を膜の中心の孔に通し、膜が毛の間で長手方向に固定されるように毛を解放することによって、デバイスに取り付けられ得る。流量制限器はまた、膜320をデバイスにさらに固定するために、芯体350を部分的に通って広がり得る。例えば、膜320は製造中に、芯体350がデバイスに追加される前にデバイスに取り付けられ得る。
【0061】
図4の塞栓デバイス300は、この場合も送達カテーテルC内に配置され得る収縮した送達構成を有する。塞栓デバイス300は、接続機構によって塞栓デバイスに解放可能に接続され得る送達要素によって、送達カテーテルの中を通して押し進められ得る。塞栓デバイスが身体管腔内の所望の位置に到達すると、塞栓デバイス300と送達カテーテルとが相対的に移動させられ、塞栓デバイスが身体管腔に送達される。例えば、送達要素は定位置に保持されたまま、カテーテルが後退させられる。次に、送達要素が塞栓デバイス300から解放され、送達カテーテルと共に身体管腔から除去される。
【0062】
接続機構は、ネジ機構など任意の適切な接続機構であり得、先に説明した例でさらに詳細に説明したように、デバイスに接続される相互接続モジュール360に備えられ得る。例えば、モジュール360は、芯体350によってデバイス300に固定されてもよいし、芯体350に接着剤または溶接によって固定されてもよい。
【0063】
図5は、非拘束構成の、本開示による別の塞栓デバイスを概略的に示す。
図5の塞栓デバイスは2つの毛セグメントを備え、各々が、芯体210から、および撚られた部分350から、それぞれ通常(すなわち、少なくとも)半径方向外側に延びる複数の毛を備えている。2つの毛セグメントは互いに接続されている。毛セグメントは、例えば接着剤または溶接を介して互いに直接接続されても、また例えば溶接または接着剤によってそれぞれの毛セグメントに取り付けられ得る相互接続モジュール550を介して間隔を空けて接続されてもよい。相互接続モジュール550は、任意の生体適合性材料で作られ得、ポリマー、ナイロン、樹脂、金属、または合金であり得る。相互接続モジュールは、一体型であり得る。流量制限器は、毛セグメント間(例えば、相互接続モジュール550上)または毛セグメントの毛の間に取り付けられ得る。前と同様に、
図5に示す塞栓デバイスは送達カテーテル内に配置され得る収縮した送達構成を有し、先に説明した例と同様の方法で身体管腔に配備され得る(すなわち、デバイスを送達要素に解放可能に接続するために、解放可能接続機構を備える相互接続モジュールがデバイスの近位端に取り付けられ得る)。
【0064】
相互接続モジュール550が本明細書に開示した塞栓デバイスのうちの任意の2つを接続するように構成され得、間隔を空けて配置される任意の数の毛セグメントの塞栓デバイスが、複数の相互接続モジュール550を使用して毛セグメントを接続することによって提供され得ることは、当業者には明らかであろう。
【0065】
図6Aは、送達カテーテルC内で収縮した送達構成にある塞栓デバイス600の側面図を概略的に示す。塞栓デバイス600は、ここに開示した実施形態のいずれでも、例えば
図3、
図4または
図5を参照して説明した実施形態でもあり得る。
【0066】
図6Aから分かるように、塞栓デバイス600の収縮した送達構成では、デバイスの複数の可撓性毛および(任意選択で)流量制限器が、収縮した構成に収縮されている。
図2Aに示す例と同様に、デバイス600の各セグメントの可撓性毛は、収縮した構成にあるとき、近位方向または遠位方向のいずれかを指し得ることに留意されたい。
【0067】
図6Bは、身体管腔L中の拡張した配備構成の塞栓デバイス600を概略的に示す。塞栓デバイス600は、送達要素620(例えば送達ワイヤ)によって、カテーテルCの遠位端に到達するまで送達カテーテルCの中を通して押し進められ得る。カテーテルの端部が身体管腔L中の目標位置に到達すると、カテーテルCは定位置に保持されたまま、デバイス600が送達要素620によってカテーテルCに対して遠位方向に移動させられる。次に、塞栓デバイス600が身体管腔L内で拡張することを可能にされるように、身体管腔L中に挿入された状態で送達カテーテルCを抜去することによって、デバイス600は拡張した配備構成で身体管腔L中に配備される。次に、例えば、送達要素620がデバイス600の相互接続モジュール610から離脱するとき、送達要素をひねって両者を離脱させることによって、送達要素620はデバイス600から除去される。あるいは、デバイスは相互接続モジュール610を備えていないことがあり、送達要素620がプッシュワイヤであってもよい。したがって、その場合、デバイス600は、デバイス600をカテーテルCから押し出すだけで送達される。
【0068】
塞栓デバイス600の拡張した配備構成は、
図6Aに示す収縮した送達構成より大きい半径方向の大きさを有する。
図6Bに示す拡張した配備構成では、複数の可撓性毛および(任意選択で)流量制限膜が、塞栓デバイス600を身体管腔L内に固定するように、身体管腔Lに接触する。複数の可撓性毛と流量制限膜とによって与えられる固定力は、身体管腔L中の塞栓デバイス600の移動に抵抗するのに十分であり得る。
【0069】
図6Bに示す拡張した配備構成では、塞栓デバイス600が身体管腔Lを閉塞し、そこで血栓形成を促進し得る。
図3および
図4に示すような、毛を固定するための1つまたは複数の撚られた部分を備える塞栓デバイスは、
- 複数の可撓性毛を用意し、
- 複数の毛のうちの少なくとも1本の毛を撚って少なくとも1つの撚られた部分を形成し、毛が少なくとも1つの撚られた部分から半径方向外側に延びるように、少なくとも1つの撚られた部分が複数の毛を互いに固定すること
によって製造され得る。
【0070】
本方法は、複数の撚られた部分を形成するステップを含み得る。例えば、本方法は、毛を中央部分で一緒に編む、または編み込むステップを含み得る。
【0071】
毛を定位置に確実に固定するために、撚られた部分が一度形成された後に、毛は追加で形状固定され得る。
【0072】
少なくとも1本の毛を撚る方法は多数存在することは、当業者には理解されよう。毛を固定するための撚られる部分の数や撚り方は、固定される毛の本数、毛の機械的特性、および毛の直径や長さなどの様々な要因に依存する。
【0073】
撚られた部分を形成した後に、芯体を追加で設け得る。例えば、1つまたは複数の撚られた部分が金型に挿入され、金型に芯体用の材料が加えられ、固化され得る。あるいは、芯体材料が、例えば液相で撚られた部分に直接加えられれば、固化され、芯体が生成され得る。
【0074】
本明細書に開示する塞栓デバイスは、塞栓デバイスに取り付けられる放射線不透過性マーカーをさらに備え得る。放射線不透過性マーカーは、相互接続モジュールであっても(例えば、相互接続モジュールが放射線不透過性材料で作られても、それを含んでもよい)、塞栓デバイスに取り付けられる別個の要素であってもよい。マーカーは、例えば、接着剤や溶接によって塞栓デバイスに接続され得る。
【0075】
上記のすべては、本開示の範囲に完全に含まれ、上記に開示した特定の組合せに限定されることなく、上述した特徴の1つまたは複数の組合せが適用される代替例の基礎を形成するとみなされる。
【0076】
このことを考慮すると、本開示の教示を実施する多くの代替案が存在する。当業者であれば、開示された、または上記から導出可能な同様のものの一部またはすべての技術的効果を保持しつつ、本技術分野におけるその人の普通の一般的な知識に照らして、本開示の範囲内で、自身の状況および要件に合わせて、上記開示を改変し、適合させることが可能となることが期待される。このような等価物、改変物または翻案物はすべて本開示の範囲に含まれる。