(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】液圧回転機械、液圧回転機械の弁板、及び液圧回転機械のシリンダブロック
(51)【国際特許分類】
F04B 1/2021 20200101AFI20231006BHJP
F03C 1/253 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
F04B1/2021
F03C1/253
(21)【出願番号】P 2023071701
(22)【出願日】2023-04-25
【審査請求日】2023-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】大江 敬
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-042733(JP,A)
【文献】特開2016-138479(JP,A)
【文献】特開平08-277777(JP,A)
【文献】特開2018-155193(JP,A)
【文献】中国実用新案第205117703(CN,U)
【文献】特開2009-097515(JP,A)
【文献】実開平01-083183(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/00- 7/06
F03C 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液が流入する流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されるケーシングと、
前記ケーシングに軸支されている軸部材に相対回転不能に設けられるブロック本体と、前記ブロック本体の一端部において開口する複数のシリンダボアと、前記ブロック本体の他端部において開口し且つ前記シリンダボアの各々に繋がる複数のシリンダポートとを含むシリンダブロックと、
前記軸部材を外囲するように前記ケーシングに配置され、且つ一端部に前記ブロック本体の他端部に摺接する環状の摺接部を含む環状の弁板本体と、前記弁板本体において前記複数のシリンダポートに対応させて形成され且つ前記流入路に繋がる流入側ポートと、前記弁板本体において前記複数のシリンダポートに対応させて形成され且つ前記流出路に繋がる流出側ポートとを有する弁板と、
前記シリンダボアの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、を備え、
前記弁板本体は、一端部であって前記摺接部より径方向内方及び径方向外方の少なくとも一方に形成されている少なくとも1つのキャビテーション抑制部を含み、
前記キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝であ
って、2つの段部を有する階段状に形成されている、液圧回転機械。
【請求項2】
前記キャビテーション抑制部は、前記摺接部に隣接する第1段部を有し、
前記第1段部は、前記ブロック本体の他端部に対応させて形成されている、請求項
1に記載の液圧回転機械。
【請求項3】
前記キャビテーション抑制部は、前記ブロック本体と前記弁板本体との間の間隔が前記摺接部から離れるに従って広くなる、請求項1に記載の液圧回転機械。
【請求項4】
液圧回転機械の弁板であって、
前記液圧回転機械の軸部材に外囲するように配置され、一端部にブロック本体の他端部に摺接する環状の摺接部を含む環状の弁板本体と、
前記弁板本体において
、複数のシリンダポートに対応させて形成される流入側ポート及び流出側ポートと、を備え、
前記弁板本体は、前記摺接部より径方向内方及び径方向外方の少なくとも一方に形成されている少なくとも1つのキャビテーション抑制部を含み、
前記キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝であ
って、2つの段部を有する階段状に形成されている、液圧回転機械の弁板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弁板上をシリンダブロックが摺動回転する液圧回転機械、並びにその弁板及びシリンダブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のような液圧ポンプが実用に供されている。液圧ポンプは、吸入ポート及び吐出ポートが形成されている弁板を備えている。液圧ポンプでは、シリンダブロックが回転することによってシリンダポートの接続先が吸入ポート及び吐出ポートに交互に切替わる。これにより、液圧ポンプでは、吸入ポートからシリンダポートを介してシリンダボアに作動液が吸入され、またシリンダボアからシリンダポートを介して吐出ポートに作動液が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の液圧ポンプでは、シリンダブロックの端面にシリンダポートが形成されている。そして、シリンダブロックは、端面が弁板に押し付けられて弁板上を摺動回転する。他方、シリンダブロックの端面と弁板との間には、僅かな隙間があり、シリンダポートからの作動液がその隙間を通って漏れ出る。隙間では、出口においてキャビテーションが生じる。これにより、出口付近において、シリンダブロック及び弁板に対してエロ―ジョンが発生する。
【0005】
そこで本開示は、シリンダブロックと弁板との間の隙間の出口付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる液圧回転機械、並びにその弁板及びシリンダブロックを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の液圧回転機械は、作動液が流入する流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されるケーシングと、前記ケーシングに軸支されている軸部材に相対回転不能に設けられるブロック本体と、前記ブロック本体の一端部において開口する複数のシリンダボアと、前記ブロック本体の他端部において開口し且つ前記シリンダボアの各々に繋がる複数のシリンダポートとを含むシリンダブロックと、前記軸部材を外囲するように前記ケーシングに配置され、且つ一端部に前記ブロック本体の他端部に摺接する環状の摺接部を含む環状の弁板本体と、前記弁板本体において前記複数のシリンダポートに対応させて形成され且つ前記流入路に繋がる流入側ポートと、前記弁板本体において前記複数のシリンダポートに対応させて形成され且つ前記流出路に繋がる流出側ポートとを有する弁板と、前記シリンダボアの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、を備え、前記弁板本体は、一端部であって前記摺接部より径方向内方及び径方向外方の少なくとも一方に形成されている少なくとも1つのキャビテーション抑制部を含み、前記キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝であるものである。
【0007】
本開示の第1の液圧回転機械に従えば、弁板本体は、一端部であって摺接部より径方向内方及び径方向外方の少なくとも一方に形成されているキャビテーション抑制部を含んでいる。キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝である。それ故、摺動部と摺接部との間の隙間に漏れ出た作動液は、その隙間から径方向に流れ出ると、キャビテーション抑制部に達する。それ故、隙間から径方向に流れ出る作動液の液圧が急激に低下することをキャビテーション抑制部によって抑制することができる。従って、隙間の出口付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができ、更にキャビテーションによって出口付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0008】
本開示の液圧回転機械の弁板は、前記液圧回転機械の軸部材に外囲するように配置され、一端部にブロック本体の他端部に摺接する環状の摺接部を含む環状の弁板本体と、前記弁板本体において、前記複数のシリンダポートに対応させて形成される流入側ポート及び流出側ポートと、を備え、前記弁板本体は、前記摺接部より径方向内方及び径方向外方の少なくとも一方に形成されている少なくとも1つのキャビテーション抑制部を含み、前記キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝であるものである。
【0009】
本開示の液圧回転機械の弁板に従えば、弁板本体は、摺接部より径方向内方及び径方向外方の少なくとも一方に形成されているキャビテーション抑制部を含んでいる。キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝である。それ故、摺動部と摺接部との間の隙間に漏れ出た作動液は、その隙間から径方向に流れ出ると、キャビテーション抑制部に達する。それ故、隙間から径方向に流れ出る作動液の液圧が急激に低下することをキャビテーション抑制部によって抑制することができる。従って、隙間の出口付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができ、更にキャビテーションによって出口付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0010】
本開示の第2の液圧回転機械は、作動液が流入する流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されるケーシングと、前記ケーシングに軸支されている軸部材に相対回転不能に設けられ且つ他端部に環状の摺動部を含むブロック本体と、前記ブロック本体の一端部において開口する複数のシリンダボアと、前記摺動部において開口し且つ前記シリンダボアの各々に繋がる複数のシリンダポートと、を含むシリンダブロックと、一端部に前記摺動部を摺接させ且つ前記軸部材を外囲するように前記ケーシングに固定される環状の弁板本体と、前記弁板本体において前記複数のシリンダポートに対応させて形成され且つ前記流入路に繋がる流入側ポートと、前記弁板本体において前記複数のシリンダポートに対応させて形成され且つ前記流出路に繋がる流出側ポートとを含む弁板と、前記シリンダボアの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、を備え、前記ブロック本体は、前記摺動部の径方向内方及び外方の少なくとも一方に形成されている少なくとも1つのキャビテーション抑制部を有し、前記キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝であるものである。
【0011】
本開示の第2の液圧回転機械に従えば、弁板本体は、摺接部より径方向内方及び径方向外方の少なくとも一方に形成されているキャビテーション抑制部を含んでいる。キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝である。それ故、摺動部と摺接部との間の隙間に漏れ出た作動液は、その隙間から径方向に流れ出ると、キャビテーション抑制部に達する。それ故、隙間から径方向に流れ出る作動液の液圧が急激に低下することをキャビテーション抑制部によって抑制することができる。従って、隙間の出口付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができ、更にキャビテーションによって出口付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0012】
本開示の液圧回転機械シリンダブロックは、前記液圧回転機械のケーシングに軸支されている軸部材が相対回転不能に挿通されている筒状のブロック本体と、前記ブロック本体の一端部において開口する複数のシリンダボアと、前記ブロック本体の他端部に形成され、弁板の一端部に摺接する環状の摺動部と、前記摺動部において開口し且つ前記シリンダボアの各々に繋がる複数のシリンダポートと、を備え、前記ブロック本体は、前記摺動部の径方向内方及び外方の少なくとも一方に形成されている少なくとも1つのキャビテーション抑制部を含み、前記キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝であるものである。
【0013】
本開示の液圧回転機械のシリンダブロックに従えば、ブロック本体は、摺動部の径方向内方及び外方の少なくとも一方に形成されているキャビテーション抑制部を含んでいる。キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝である。それ故、摺動部と摺接部との間の隙間に漏れ出た作動液は、その隙間から径方向に流れ出ると、キャビテーション抑制部に達する。それ故、隙間から径方向に流れ出る作動液の液圧が急激に低下することをキャビテーション抑制部によって抑制することができる。従って、隙間の出口付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができ、更にキャビテーションによって出口付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の液圧回転機械、並びにその弁板及びシリンダブロックによれば、シリンダブロックと弁板との間の隙間の出口付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る液圧回転機械を示す断面図である。
【
図2】
図1の弁板を拡大して示す拡大断面図である。
【
図3】
図1の液圧回転機械の領域Xを拡大して示す拡大断面図である。
【
図4】本開示の第2実施形態に係る液圧回転機械の一部分を拡大して示す拡大断面図である。
【
図5】本開示の第3実施形態に係る液圧回転機械の一部分を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示に係る第1乃至第3実施形態の液圧回転機械1,1A,1B、並びにその弁板16,16A及びシリンダブロック12,12Bについて前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する液圧回転機械1,1A,1B、弁板16,16A、及び,シリンダブロック12,12Bは、本開示の一実施形態に過ぎない。従って、本開示は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0017】
[第1実施形態]
<液圧回転機械>
図1に示す液圧回転機械1は、ショベルやクレーン等の建設機械、フォークリフト等の産業機械、トラクター等の農業機械、及びプレス機等の油圧機械等、種々の機械に備わっている。液圧回転機械1は、液圧ポンプ及び液圧モータの少なくとも一方として機能する。本実施形態において、液圧回転機械1は、液圧ポンプであって、可変容量形の斜板ポンプである。但し、液圧回転機械1は、固定容量形の斜板ポンプであってよく、また斜軸ポンプであってもよい。液圧回転機械1は、図示しない駆動源(例えば電動機、エンジン、又はその両方)により駆動されることによって作動液(油及び水等の液体)を吐出する。液圧回転機械1は、ケーシング10と、軸部材11と、シリンダブロック12と、複数のピストン13と、斜板14と、レギュレータ15と、弁板16と、を備えている。
【0018】
<ケーシング>
ケーシング10には、収容空間21が形成されている。そして、収容空間21には、シリンダブロック12、複数のピストン13、斜板14、レギュレータ15、及び弁板16等が収容されている。収容空間21は、ケーシング10において、軸線方向一方側の端部(即ち、一端部、以下同様)において開口21aを有している。なお、軸線方向は、所定の軸線L1が延在する方向である。
【0019】
ケーシング10には、吸入路22と、吐出路23とが形成されている。流入路の一例である吸入路22には、作動液が導かれる。他方、流出路の一例である吐出路23には、作動液が吐出される。吸入路22及び吐出路23は、例えばケーシング10において収容空間21の軸線方向他方側に形成されている。そして、吸入路22及び吐出路23は、収容空間21の軸線方向他方側の端部(即ち、他端部、以下同様)において開口している。
【0020】
<軸部材>
軸部材11は、回転軸線の一例である軸線L1まわりに回転可能にケーシング10に軸支されている。軸部材11は、軸線L1に沿って延在している。軸部材11は、ケーシング10を貫通しており、その軸線方向一方側の部分が開口21aからケーシング10外に突き出ている。軸部材11の軸線方向一方側の部分には、駆動源(図示せず)が連結されている。軸部材11は、駆動源によって軸線L1まわりに回転駆動される。なお、軸部材11は、駆動源に直接連結されているものに限定されず、駆動源に減速機等を介して間接的に連結されていてもよい。
【0021】
<シリンダブロック>
シリンダブロック12は、軸部材11が相対回転不能に挿通されている。シリンダブロック12は、軸部材11を介してケーシング10に回転可能に設けられている。シリンダブロック12は、ブロック本体12aと、複数のシリンダボア12bと、複数のシリンダポート12cと、を含んでいる。
【0022】
ブロック本体12aは、筒状(本実施形態において、円筒状)に形成されている。ブロック本体12aは、軸部材11が相対回転不能に設けられている。より詳細に説明すると、ブロック本体12aの内孔には、その軸線に沿って軸部材11が相対回転不能に挿通されている。ブロック本体12aは、他端部を収容空間21の他端部に対向させるようにして収容空間21に収容されている。ブロック本体12aは、駆動源が軸部材11を回転させることによって軸線L1まわりに回転する。
【0023】
また、ブロック本体12aは、他端部に環状の摺動部12dを含んでいる。より詳細に説明すると、摺動部12dは、例えば内周縁部に形成されており、軸部材11を外囲するように配置されている。摺動部12dは、軸方向一方に凹むように凹状に形成されている。本実施形態において、摺動部12dは、例えば部分球面状に形成されている。
【0024】
複数のシリンダボア12bは、シリンダブロック12の一端部にて開口している。より詳細に説明すると、複数のシリンダボア12bは、シリンダブロック12の一端部において、軸部材11の周り(即ち、軸線L1の周り)に周方向に互いに間隔をあけて配置されている。本実施形態において、シリンダブロック12には9つのシリンダボア12bが形成されている。但し、前述するシリンダボア12bの数は一例に過ぎず、8つ以下であってもよく、また10個以上であってもよい。
【0025】
複数のシリンダポート12cは、シリンダブロック12の軸線方向他端部にて開口している。より詳細に説明すると、複数のシリンダポート12cは、摺動部12dにおいて開口している。また、複数のシリンダポート12cは、シリンダボア12bに夫々繋がっている。より詳細に説明すると、各シリンダポート12cは、シリンダボア12bの各々に対応させて形成されており、対応するシリンダボア12bに繋がっている。即ち、シリンダブロック12には、シリンダボア12bと同数のシリンダポート12cが形成されている。
【0026】
<ピストン>
複数のピストン13は、シリンダボア12bの各々に挿入されている。即ち、液圧回転機械1には、シリンダボア12bと同数のピストン(本実施形態において、9つのピストン)13が備わっている。そして、ピストン13の各々は、各シリンダボア12bにおいて往復運動する。また、ピストン13の先端部分には、摺動回転可能にシュー18が取り付けられている。
【0027】
<斜板>
斜板14はシリンダブロック12の軸線方向一方側に間隔をあけて配置されている。斜板14は、シリンダブロック12の方に傾倒している。斜板14は、複数のシュー18を軸線方向一方側から支持している。また、複数のシュー18は、押え板20によって斜板14に押えられており、斜板14上を軸線L1まわりに摺動回転する。それ故、シリンダブロック12が回転すると、ピストン13がシリンダボア12bを往復運動する。また、斜板14は、軸線L1に直交する軸線L2まわりに傾倒することができる。即ち、斜板14は、傾点角を変えることができる。それ故、ピストン13のストローク量を変えることができる。これにより、各シリンダボア12bから吐出される作動液の量、即ち吐出量を変えることができる。
【0028】
<レギュレータ>
レギュレータ15は、斜板14を軸線L2まわりに回動させることによって斜板14の傾転角を変える。より詳細に説明すると、レギュレータ15は、図示しないサーボピストンが連結部材15aを介して斜板14と連結されている。そして、レギュレータ15は、入力される信号(例えば、パイロット圧)に応じてサーボピストンを動かす。これにより、斜板14の傾点角が調整される。
【0029】
<弁板>
弁板16は、ケーシング10に設けられている。より詳細に説明すると、弁板16は、収容空間21の他端部に固定されている。弁板16は、収容空間21の他端部とシリンダブロック12との間に介在している。そして、弁板16には、シリンダブロック12の他端部(より詳細に説明すると、摺動部12d)が押し付けられている。シリンダブロック12は、摺動部12dを弁板16上で摺動させるようにして軸線L1まわりに回転する。更に詳細に説明すると、弁板16は、
図2に示すように弁板本体16aと、吸入ポート16bと、吐出ポート16cとを含んでいる。
【0030】
弁板本体16aは、軸方向に見て環状に形成されている。本実施形態において、弁板本体16aは、軸方向方に見て円環状に形成されている。弁板本体16aは、環状の摺接部16d、第1キャビテーション抑制部16eと、第2キャビテーション抑制部16fとを含んでいる。
【0031】
摺接部16dは、一端部に形成されており、ブロック本体12aの他端部(本実施形態において摺動部12d)に摺接する。より詳細に説明すると、摺接部16dは、弁板本体16aの一端部であって径方向中間部分に形成されている。即ち、摺接部16dは、弁板本体16aの内周縁及び外周縁の各々から径方向に離して形成されている。更に、摺接部16dは、摺動部12dに対応するように形成されている。即ち、摺接部16dは、軸線方向一方側に突出するように凸状に湾曲している。より詳細に説明すると、摺接部16dは、部分球面状に形成されている。本実施形態において、摺接部16dは、例えばシリンダブロック12の摺動部12dより小さい曲率半径で形成されている。但し、摺接部16dは、例えばシリンダブロック12の摺動部12dと同じ曲率半径で形成されてもよい。
【0032】
第1キャビテーション抑制部16eは、弁板本体16aの一端部であって、摺接部16dより径方向内方に形成されている。より詳細に説明すると、第1キャビテーション抑制部16eは、弁板本体16aの一端部であって内周縁部に全周にわたって形成されている。即ち、第1キャビテーション抑制部16eは、径方向(より詳細に説明すると、径方向内方)に開口する環状溝である。また、第1キャビテーション抑制部16eは、ブロック本体12aの摺動部12dに面している。それ故、第1キャビテーション抑制部16eは、ブロック本体12aと弁板本体16aとの間の間隔を、その径方向内方に向かって段階的に広げることができる。即ち、ブロック本体12aと弁板本体16aとの間の間隔は、摺動部12dと摺接部16dとの間の隙間24において極僅かであって、第1キャビテーション抑制部16eにおいて広がる。なお、ブロック本体12aと弁板本体16aとの間の間隔は、ブロック本体12aと弁板本体16aとの軸方向の距離である。また、第1キャビテーション抑制部16eは、ブロック本体12aの他端部に対応するように形成されている。より詳細に説明すると、第1キャビテーション抑制部16eは、径方向に進むにつれて弁板16の他端側に傾斜するテーパ状に形成されている。これにより、第1キャビテーション抑制部16eは、ブロック本体12aの他端部との間の間隔が一定又は大きく変化しないようになっている。なお、第1キャビテーション抑制部16eは、軸方向一方側に突出するように湾曲していてもよい。また、第1キャビテーション抑制部16eの深さh1は、例えば0.3mm以上1mm以下となっている。
【0033】
第2キャビテーション抑制部16fは、弁板本体16aの一端部であって、摺接部16dより径方向外方に形成されている。より詳細に説明すると、第2キャビテーション抑制部16fは、弁板本体16aの一端部であって摺接部16dより外周縁側に全周にわたって形成されている。即ち、第2キャビテーション抑制部16fは、径方向(より詳細に説明すると、径方向外方)に開口する環状溝である。また、第2キャビテーション抑制部16fは、ブロック本体12aの摺動部12dに面している。それ故、第2キャビテーション抑制部16fは、ブロック本体12aと弁板本体16aとの間の間隔を、その径方向外方に向かって段階的に広げることができる。即ち、ブロック本体12aと弁板本体16aとの間の間隔は、第2キャビテーション抑制部16fにおいて広がるようになっている。更に詳細に説明すると、第2キャビテーション抑制部16fは、階段状に形成されている。即ち、第2キャビテーション抑制部16fは、複数の段部16h,16iを有している。なお、第2キャビテーション抑制部16fは、本実施形態において、2つの段部16h,16iを有している。
【0034】
第1段部16hは、径方向において摺接部16dに隣接している。即ち、第1段部16hは、摺接部16dを外囲するように、摺接部16dの周りに全周にわたって形成されている。第1段部16hは、ブロック本体12aの他端部(より詳細に説明すると、摺動部12d)に対応するように形成されている。より詳細に説明すると、第1段部16hは、径方向に進むにつれて弁板16の他端側に傾斜するようにテーパ状に形成されている。これにより、第1段部16hは、ブロック本体12aの他端部との間の間隔が一定又は大きく変化しないようになっている。なお、第1段部16hは、軸方向一方側に突出するように湾曲していてもよい。また、第1段部16hの深さh2は、例えば0.3mm以上1mm以下となっている。
【0035】
第2段部16iは、第1段部16hの径方向外側に隣接するように形成されている。即ち、第2段部16iは、第1段部16hを外囲するように、第1段部16hの周りに全周にわたって形成されている。第2段部16iは、第1段部16hより軸方向他方側に凹んでいる。第2段部16iは、例えば軸線L1に垂直に且つ平坦に形成されている。また、第2段部16iの深さh3は、例えば0.5mm以上2.5mm以下となっている。
【0036】
また、弁板本体16aの外周縁部16jは、以下のように形成されている。即ち、外周縁部16jは、第2段部16iより径方向外側の部分であって、第2段部16iに繋がっている。外周縁部16jは、第2段部16iより軸方向他方側に凹んでいる。それ故、第2キャビテーション抑制部16fは、径方向外方に開口している。また、外周縁部16jは、径方向外側に進むに従って軸方向他方に傾斜している。これにより、シリンダブロック12の他端部が外周縁部16jに当たることが抑制される。より詳細に説明すると、シリンダブロック12は、シリンダボア12bにおいてピストン13を往復運動させながら軸線L1まわりに回転する。それ故、軸部材11は、シリンダブロック12から荷重を受けて例えば
図1の紙面下方に撓む。それ故、シリンダブロック12が転動する。外周縁部16jを傾斜させることによって、転動した際にシリンダブロック12の軸方向他端部が外周縁部16jに当たることを抑制することができる。
【0037】
このような形状を有する弁板本体16aは、軸部材11を外囲するようにケーシング10に固定されている。弁板本体16aは、その内孔に軸部材11を挿通させて収容空間21の他端部に固定されている。そして、弁板本体16aは、収容空間21の他端部とシリンダブロック12との間に介在している。更に詳細に説明すると、弁板本体16aは、シリンダブロック12の摺動部12dを摺接部16dに押し付けられるようにして収容空間21に配置される。なお、摺接部16dは、例えばシリンダブロック12の摺動部12dより小さい曲率半径で形成されている。これにより、シリンダブロック12のシリンダポート12c付近を弁板16の摺接部16dにより密着させることができる。従って、シリンダポート12cからシリンダブロック12と弁板16との間に漏れ出る作動液の量が抑制されている。
【0038】
吸入ポート16b及び吐出ポート16cは、円弧状に形成され、同心円上に互いに間隔をあけて配置されている。流入側ポートの一例である吸入ポート16bは、吸入路22に繋がっている。流出側ポートの一例である吐出ポート16cは、吐出路23に繋がっている。また、吸入ポート16b及び吐出ポート16cは、複数のシリンダポート12cに対応させて弁板本体16aに形成されている。より詳細に説明すると、吸入ポート16b及び吐出ポート16cは、軸方向に見て複数のシリンダポート12cの各々と重なるように配置されている。吸入ポート16b及び吐出ポート16cの各々には、シリンダポート12cを介して各シリンダボア12bが接続されている。そして、各シリンダボア12bは、シリンダブロック12が回転することによって吸入ポート16b及び吐出ポート16cに交互接続される。吸入ポート16bは、接続されるシリンダポート12cを介して各シリンダボア12bに吸入路22の作動液を導く。また、吐出ポート16cは、接続されるシリンダポート12cを介してシリンダボア12bから吐出路23に作動液を吐出させる。
【0039】
<液圧回転機械の動作>
液圧回転機械1は、以下のように動作する。即ち、駆動源(図示せず)が軸部材11を駆動することによって、シリンダブロック12が軸線L1まわりに回転する。そうすると、シリンダポート12cの接続先が吸入ポート16b及び吐出ポート16cの間で切り替わる。また、シリンダブロック12が回転することによって、複数のピストン13が軸線L1まわりに回転すると共にシリンダボア12bを往復運動する。これにより、吸入ポート16bを介してシリンダボア12bに作動液が吸引され、その後シリンダボア12bから吐出ポート16cに作動液が吐出される。このようにして、液圧回転機械1は、作動液を吐出する。なお、液圧回転機械1では、レギュレータ15によって斜板14の傾転角が調整される。そうすると、ピストン13のストローク量が調整される。これにより、液圧回転機械1の吐出量を調整することができる。
【0040】
また、液圧回転機械1では、回転時においてシリンダブロック12の摺動部12dが弁板16の摺接部16d上を摺動する。この際、シリンダポート12cから隙間24に作動液が漏れ出る。隙間24に漏れ出た作動液は、隙間24を径方向内方及び外方に夫々流れ、やがて第1キャビテーション抑制部16e及び第2キャビテーション抑制部16fに至る。そして、作動液は、第1キャビテーション抑制部16e及び第2キャビテーション抑制部16fを通ってブロック本体12aと弁板本体16aとの間から夫々流出する(
図3の矢印Y1,Y2参照)。この際、流出する作動液の液圧は、第1キャビテーション抑制部16e及び第2キャビテーション抑制部16fの各々によって段階的に低下する。それ故、作動液の液圧が急激に低下することを抑制することができる。従って、第1キャビテーション抑制部16e及び第2キャビテーション抑制部16fの各々は、隙間24の出口24a,24b付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができ、更にキャビテーションによって出口24a,24b付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。また、第1段部16hは、第2段部16iと繋がる部分にある環状の出口24c付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができ、更にキャビテーションによって出口24c付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0041】
本実施形態の液圧回転機械1及び弁板16において、弁板本体16aは、摺接部16dの径方向内方及び外方に夫々形成されている第1キャビテーション抑制部16e及び第2キャビテーション抑制部16fを含んでいる。第1キャビテーション抑制部16e及び第2キャビテーション抑制部16fは、径方向内方及び外方に夫々開口する環状溝である。それ故、隙間24に漏れ出た作動液は、その隙間24から径方向内方及び外方に夫々流れ出ると、第1キャビテーション抑制部16e及び第2キャビテーション抑制部16fに夫々達する。それ故、隙間24から径方向に流れ出る作動液の液圧が急激に低下することを第1キャビテーション抑制部16e及び第2キャビテーション抑制部16fの各々によって抑制することができる。従って、隙間24の出口24a,24b付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができ、更にキャビテーションによって出口24a,24b付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0042】
更に、本実施形態の液圧回転機械1において、第2キャビテーション抑制部16fが階段状に形成されている。それ故、第2キャビテーション抑制部16fにおいて、隙間24に繋がる部分の高さを小さくすることができる。それ故、隙間24の出口24b付近における作動液の液圧降下を更に抑制することができる。これにより、キャビテーションが発生することを更に抑制することができる。従って、キャビテーションによって出口24b付近で発生するエロ―ジョンを更に抑制することができる。
【0043】
更に、本実施形態の液圧回転機械1において、第1段部16hは、摺動部12dに対応するように湾曲している。それ故、第1段部16hにおいて、隙間24の間隔が変わることを抑えることができる。これにより、第1段部16hにおいて作動液の液圧が急激に降下することを抑制することができる。従って、第1段部16hの出口24c付近においてキャビテーションが発生することを更に抑制することができ、キャビテーションによって出口24c付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0044】
[第2実施形態]
図4に示す第2実施形態の液圧回転機械1Aは、第1実施形態の液圧回転機械1と構成が夫々類似している。従って、第2実施形態の液圧回転機械1Aの構成については、主に第1実施形態の液圧回転機械1と異なる点が説明され、同一の構成については同一の符号を付して説明が省略される。後で説明する、第3実施形態の液圧回転機械1についても、その他の実施形態と異なる点が主に説明され、同一の構成については同一の符号を付して説明が省略される。
【0045】
第2実施形態の液圧回転機械1Aは、ケーシング10と、軸部材11と、シリンダブロック12と、複数のピストン13と、斜板14と、レギュレータ15と、弁板16Aと、を備えている。
【0046】
弁板16Aは、弁板16と同様にケーシング10に設けられている。そして、弁板16は、弁板本体16Aaと、吸入ポート16bと、吐出ポート16cとを含んでいる。弁板本体16Aaは、例えば円環状の円板状に形成されている。また、弁板本体16Aaは、環状の摺接部16d、第1キャビテーション抑制部16Aeと、第2キャビテーション抑制部16Afとを含んでいる。
【0047】
第1キャビテーション抑制部16Aeは、弁板本体16Aaの一端部であって、摺接部16dより径方向内側に形成されている。より詳細に説明すると、第1キャビテーション抑制部16Aeは、弁板本体16Aaの一端部であって内周縁部に形成されている。即ち、第1キャビテーション抑制部16Aeもまた、径方向(より詳細に説明すると、径方向内方)に開口する環状溝である。また、第1キャビテーション抑制部16Aeは、ブロック本体12aと弁板本体16Aaとの間の間隔が摺接部16dから離れるに従って広くなっている。即ち、第1キャビテーション抑制部16Aeは、径方向内方に進むに従ってブロック本体12aと弁板本体16Aaとの間の間隔を広くするように形成されている。より詳細に説明すると、第1キャビテーション抑制部16Aeは、径方向内方に進むに従ってブロック本体12aと弁板本体16Aaとの間の間隔を広くすべく、例えば摺動部12dより小さい曲率半径で湾曲している。本実施形態において、第1キャビテーション抑制部16Aeの曲率半径は、摺動部12dの曲率半径の0.8倍以上1倍以下となっている。なお、第1キャビテーション抑制部16Aeは、径方向内方に進むに従ってブロック本体12aと弁板本体16Aaとの間の間隔を広くすべく、テーパ状に形成されていてもよい。
【0048】
第2キャビテーション抑制部16Afは、弁板本体16Aaの一端部であって、摺接部16dより径方向外側に形成されている。より詳細に説明すると、第2キャビテーション抑制部16Afは、弁板本体16Aaの一端部であって摺接部16dより外周縁側に形成されている。即ち、第2キャビテーション抑制部16Afもまた、径方向(より詳細に説明すると、径方向外方)に開口する環状溝である。第2キャビテーション抑制部16Afは、ブロック本体12aと弁板本体16Aaとの間の間隔が摺接部16dから離れるに従って広くなっている。即ち、第2キャビテーション抑制部16Afは、ブロック本体12aと弁板本体16Aaとの間の間隔を径方向外側に進むに従って広くするように形成されている。より詳細に説明すると、第2キャビテーション抑制部16Afは、ブロック本体12aと弁板本体16Aaとの間の間隔を径方向外側に進むに従って広くすべく、例えば摺動部12dより小さい曲率半径で湾曲している。本実施形態において、第2キャビテーション抑制部16Afの曲率半径は、摺動部12dの曲率半径の0.8倍以上1倍以下となっている。なお、第2キャビテーション抑制部16Afは、径方向内方に進むに従ってブロック本体12aと弁板本体16Aaとの間の間隔を広くすべく、テーパ状に形成されていてもよい。
【0049】
このように構成される液圧回転機械1Aでは、第1実施形態の液圧回転機械1と同様に第1キャビテーション抑制部16Ae及び第2キャビテーション抑制部16Afによって、隙間24の出口24a,24b付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができる。そして、キャビテーションによって出口24a,24b付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0050】
第2実施形態の液圧回転機械1Aにおいて、摺接部16dは、ブロック本体12aと弁板本体16Aaとの間の間隔が摺接部16dから離れるに従って広くなるように湾曲している。それ故、隙間24の出口24a,24b付近において作動液の液圧が急激に降下することを抑制することができる。これにより、キャビテーションが発生することを抑制することができ、キャビテーションによって出口24a,24b付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0051】
その他、第2実施形態の液圧回転機械1A及び弁板16Aは、第1実施形態の液圧回転機械1及び弁板16と同様の作用効果を奏する。
【0052】
[第3実施形態]
第3実施形態の液圧回転機械1Bは、
図1に示すようにケーシング10と、軸部材11と、シリンダブロック12Bと、複数のピストン13と、斜板14と、レギュレータ15と、弁板16Bと、を備えている。液圧回転機械1Bでは、シリンダブロック12Bの他端部に第1キャビテーション抑制部12e及び第2キャビテーション抑制部12fが形成されている。そして、第1キャビテーション抑制部12e及び第2キャビテーション抑制部12fは、他端部において摺動部12dの径方向内方及び外方に夫々形成されている。以下では、シリンダブロック12B及び弁板16Bが更に詳細に説明される。
【0053】
図5に示すシリンダブロック12Bは、軸部材11が相対回転不能に挿通されている。シリンダブロック12Bは、軸部材11を介してケーシング10に回転可能に設けられている。シリンダブロック12Bは、ブロック本体12Baと、複数のシリンダボア12bと、複数のシリンダポート12cと、を含んでいる。ブロック本体12Baは、ブロック本体12aと同様に筒状(本実施形態において、円筒状)に形成されている。また、ブロック本体12Baの内孔には、軸部材11が相対回転不能に挿通されている。ブロック本体12Baの軸方向一端部には複数のシリンダボア12bが形成されている。ブロック本体12Baは、軸方向他端部に摺動部12Bdを含んでいる。摺動部12Bdは、ブロック本体12Baの軸方向他端部において径方向中間部分に形成されている。即ち、摺動部12Bdは、ブロック本体12aの内周縁より径方向外側、また外周縁より径方向内側に離して形成されている。ブロック本体12Baは、更に第1キャビテーション抑制部12eと、第2キャビテーション抑制部12fとを含んでいる。
【0054】
第1キャビテーション抑制部12eは、ブロック本体12Baの他端部であって、摺動部12Bdの径方向内側に形成されている。より詳細に説明すると、第1キャビテーション抑制部12eは、ブロック本体12Baの他端部であって内周縁部に全周にわたって形成されている。即ち、第1キャビテーション抑制部12eは、径方向(より詳細に説明すると、径方向内方)に開口する環状溝である。また、第1キャビテーション抑制部12eは、後で詳述する弁板本体16Baの一端部(より詳細に説明すると、摺接部16Bd)に面している。それ故、ブロック本体12Baと弁板本体16Baとの間の間隔を、その径方向内側に向かって段階的に広げることができる。即ち、ブロック本体12Baと弁板本体16Baとの間の間隔は、摺動部12Bdと摺接部16BdBとの間の隙間24において極僅かであって、第1キャビテーション抑制部12eにおいて広がる。また、第1キャビテーション抑制部12eは、弁板本体16Baの摺接部16Bdに対応するように形成されている。より詳細に説明すると、第1キャビテーション抑制部12eは、軸方向一方側に凹んでテーパ状に形成されている。これにより、第1キャビテーション抑制部12eは、弁板16Bの一端部(より詳細に説明すると、後で詳述すう摺接部16Bd)との間の間隔が一定又は大きく変化しないようになっている。なお、第1キャビテーション抑制部12eは、軸方向一方側に凹んで部分球面状に形成されていてもよい。また、第1キャビテーション抑制部12eの深さh4は、例えば0.3mm以上1mm以下となっている。
【0055】
第2キャビテーション抑制部12fは、ブロック本体12Baの他端部であって、摺動部12Bdより径方向外側に形成されている。より詳細に説明すると、第2キャビテーション抑制部12fは、ブロック本体12Baの他端部であって摺動部12Bdより外周縁側に全周にわたって形成されている。即ち、第2キャビテーション抑制部12fは、径方向(より詳細に説明すると、径方向外方)に開口する環状溝である。また、第2キャビテーション抑制部12fは、弁板本体16Baの摺接部16Bdに面している。それ故、第2キャビテーション抑制部16fは、ブロック本体12Baと弁板本体16Baとの間の間隔を、その径方向外方に向かって段階的に広げることができる。即ち、ブロック本体12Baと弁板本体16Baとの間の間隔は、第2キャビテーション抑制部12fにおいて広がるようになっている。更に詳細に説明すると、第2キャビテーション抑制部12fは、階段状に形成されている。即ち、第2キャビテーション抑制部12fは、複数の段部12h,12iを有しており、階段状に形成されている。なお、第2キャビテーション抑制部12fは、本実施形態において、2つの段部12h,12iを有している。
【0056】
第1段部12hは、径方向において摺動部12Bdに隣接している。即ち、第1段部12hは、摺動部12Bdを外囲するように、摺動部12Bdの周りに全周にわたって形成されている。第1段部12hは、後で詳述する弁板本体16Baの他端部(より詳細に説明すると、摺接部16Bd)に対応するように湾曲している。より詳細に説明すると、第1段部12hは、軸方向一方側に突出するようにテーパ状に形成されている。これにより、第1段部12hは、後で詳述する弁板16Aの一端部(より詳細に説明すると、後で詳述する摺接部16Bd)との間の間隔が一定又は大きく変化しないようになっている。なお、第1段部12hは、軸方向一方側に突出するように湾曲していてもよい。第1段部12hの深さh5は、例えば0.3mm以上1mm以下となっている。
【0057】
第2段部12iは、第1段部12hの径方向外側に隣接するように形成されている。即ち、第2段部12iは、第1段部12hを外囲するように、第1段部12hの周りに全周にわたって形成されている。第2段部12iは、第1段部12h軸方向他方側に凹んでいる。第2段部12iは、例えば軸線L1に垂直に且つ平坦に形成されている。また、第2段部12iの深さh6は、例えば0.5mm以上2.5mm以下となっている。
【0058】
弁板16Bは、弁板16と同様にケーシング10に設けられている。即ち、弁板16Bもまた、収容空間21の軸線方向他端部に固定されて、収容空間21の軸線方向他端部とシリンダブロック12との間に介在している。そして、弁板16Bには、摺動部12Bdが押し付けられている。弁板16Bは、弁板本体16Baと、吸入ポート16bと、吐出ポート16cとを含んでいる。
【0059】
弁板本体16Baは、軸方向に見て環状の板状に形成されている。本実施形態において、弁板本体16aは、軸方向方見て円環状の円板状に形成されている。弁板本体16aは、軸方向一端部に環状の摺接部16Bdを含んでいる。摺接部16Bdは、摺動部12Bdに摺接する。摺接部16dは、軸線方向一方側に突出するように湾曲しており、部分球面状に形成されている。なお、摺接部16Bdもまた、例えば摺動部12Bdより小さい曲率半径で形成されている。
【0060】
このような形状を有する弁板本体16Baは、第1実施形態の弁板本体16Baと同様に、軸部材11を外囲するようにケーシング10に固定されている。弁板本体16Baは、その内孔に軸部材11を挿入させ、摺動部12Bdを摺接部16Bdに押し付けられるようにして収容空間21の軸線方向他端部に固定されている。
【0061】
このように構成される液圧回転機械1Bでは、第1実施形態の液圧回転機械1と同様に第1キャビテーション抑制部12e及び第2キャビテーション抑制部12fによって、隙間24Bの出口24a,24b付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができる。そして、キャビテーションによって出口24a,24b付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。また、第1段部12hは、第2段部12iと繋がる部分にある環状の出口24c付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができ、更にキャビテーションによって出口24c付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0062】
第3実施形態の液圧回転機械1B及びシリンダブロック12Bは、ブロック本体12aにおいて摺動部12Bdの径方向内方及び外方に夫々形成されている第1キャビテーション抑制部12e及び第2キャビテーション抑制部12fを含んでいる。第1キャビテーション抑制部12e及び第2キャビテーション抑制部12fは、径方向に開口する環状溝である。それ故、隙間24Bに漏れ出た作動液は、その隙間24から径方向に流れ出ると、第1キャビテーション抑制部16e及び第2キャビテーション抑制部16fに夫々達する。それ故、隙間24から径方向に流れ出る作動液(
図5の矢符Y3,Y4参照)の液圧が急激に低下することを第1キャビテーション抑制部12e及び第2キャビテーション抑制部12fによって抑制することができる。従って、第1キャビテーション抑制部12e及び第2キャビテーション抑制部12fは、出口24a,24b付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができ、更にキャビテーションによって出口24a,24b付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0063】
その他、第3実施形態の液圧回転機械1Bは、第1実施形態の液圧回転機械1と同様の作用効果を奏する。
【0064】
[その他の実施形態]
第1及び第2実施形態の液圧回転機械1,1Aにおいて、必ずしも第1キャビテーション抑制部16e及び第2キャビテーション抑制部16fの両方が形成されている必要はなく、少なくとも一方が形成されていればよい。第3実施形態の液圧回転機械1Bの第1キャビテーション抑制部12e及び第2キャビテーション抑制部12fについても同様である。また、第1キャビテーション抑制部16eは、必ずしも段状である必要はなく、第2キャビテーション抑制部16fと同様に階段状に形成されていてもよい。第2キャビテーション抑制部16fもまた、必ずしも階段状である必要はなく、段状に形成されていてもよい。
【0065】
また、第1乃至第3実施形態の液圧回転機械1,1A,1Bにおいて、摺動部12d,12Bd及び摺接部16d,16Bdの曲率半径は、必ずしも同一である必要はなく、摺接部16d,16Bdの曲率半径が摺動部12d,12Bdの曲率半径より小さくてもよい。更に、第1段部16hは、摺動部12dに対応するように湾曲している必要はなく、平坦であったり、湾曲していたり、傾斜していたりしていてもよい。第2段部16iについても同様である。また、深さh1~h6は、前述する範囲に限定されず、出口24a,24bにおけるキャビテーションの発生を抑制できる範囲であればよい。
【0066】
第3実施形態の液圧回転機械1Bのシリンダブロック12Bにおいて、第1キャビテーション抑制部12e及び第2キャビテーション抑制部12fは、第2実施形態の第1キャビテーション抑制部16Ae及び第2キャビテーション抑制部16Afのようにブロック本体12Baと弁板本体16Baとの間の間隔を広くするように湾曲していてもよい。
【0067】
<例示的な実施形態>
第1の局面における液圧回転機械は、作動液が流入する流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されるケーシングと、前記ケーシングに軸支されている軸部材に相対回転不能に設けられるブロック本体と、前記ブロック本体の一端部において開口する複数のシリンダボアと、前記ブロック本体の他端部において開口し且つ前記シリンダボアの各々に繋がる複数のシリンダポートとを含むシリンダブロックと、前記軸部材を外囲するように前記ケーシングに配置され、且つ一端部に前記ブロック本体の他端部に摺接する環状の摺接部を含む環状の弁板本体と、前記弁板本体において前記複数のシリンダポートに対応させて形成され且つ前記流入路に繋がる流入側ポートと、前記弁板本体において前記複数のシリンダポートに対応させて形成され且つ前記流出路に繋がる流出側ポートとを有する弁板と、前記シリンダボアの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、を備え、前記弁板本体は、一端部であって前記摺接部より径方向内方及び径方向外方の少なくとも一方に形成されている少なくとも1つのキャビテーション抑制部を含み、前記キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝である。
【0068】
上記局面によれば、弁板本体は、一端部であって摺接部より径方向内方及び径方向外方の少なくとも一方に形成されているキャビテーション抑制部を含んでいる。キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝である。それ故、摺動部と摺接部との間の隙間に漏れ出た作動液は、その隙間から径方向に流れ出ると、キャビテーション抑制部に達する。それ故、隙間から径方向に流れ出る作動液の液圧が急激に低下することをキャビテーション抑制部によって抑制することができる。従って、隙間の出口付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができ、更にキャビテーションによって出口付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0069】
第2の局面における液圧回転機械では、第1の局面における液圧回転機械において、前記キャビテーション抑制部は、階段状に形成されている。
【0070】
上記局面によれば、キャビテーション抑制部が階段状に形成されている。それ故、少なくとも1つのキャビテーション抑制部において、隙間に繋がる部分の高さを小さくすることができる。それ故、隙間の出口付近における作動液の液圧降下を更に抑制することができる。これにより、キャビテーションが発生することを更に抑制することができる。従って、キャビテーションによって外側の出口付近で発生するエロ―ジョンを更に抑制することができる。
【0071】
第3の局面における液圧回転機械では、第2の局面における液圧回転機械において、前記キャビテーション抑制部は、前記摺接部に隣接する第1段部を有し、
前記第1段部は、前記ブロック本体の他端部に対応させて形成されている。
【0072】
上記局面によれば、第1段部は、ブロック本体の他端部に対応させて形成されている。それ故、第1段部において、隙間の間隔が変わることを抑制することができる。これにより、第1段部において作動液の液圧が急激に降下することを抑制することができる。従って、第1段部の出口付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができ、キャビテーションによってキャビテーション抑制部の出口付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0073】
第4の局面における液圧回転機械では、第1乃至3の何れかの局面における液圧回転機械において、前記キャビテーション抑制部は、前記ブロック本体と前記弁板本体との間の間隔が前記摺接部から離れるに従って広くなる。
【0074】
上記局面によれば、キャビテーション抑制部は、摺接部から離れるに従って広くなるように湾曲している。それ故、隙間の出口付近において作動液の液圧が急激に降下することを抑制することができる。これにより、キャビテーションが発生することを抑制することができ、キャビテーションによって出口付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0075】
第5の局面における液圧回転機械の弁板は、前記液圧回転機械の軸部材に外囲するように配置され、一端部にブロック本体の他端部に摺接する環状の摺接部を含む環状の弁板本体と、前記弁板本体において、前記複数のシリンダポートに対応させて形成される流入側ポート及び流出側ポートと、を備え、前記弁板本体は、前記摺接部より径方向内方及び径方向外方の少なくとも一方に形成されている少なくとも1つのキャビテーション抑制部を含み、前記キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝である。
【0076】
上記局面によれば、弁板本体は、摺接部より径方向内方及び径方向外方の少なくとも一方に形成されているキャビテーション抑制部を含んでいる。キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝である。それ故、摺動部と摺接部との間の隙間に漏れ出た作動液は、その隙間から径方向に流れ出ると、キャビテーション抑制部に達する。それ故、隙間から径方向に流れ出る作動液の液圧が急激に低下することをキャビテーション抑制部によって抑制することができる。従って、隙間の出口付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができ、更にキャビテーションによって出口付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0077】
第6の局面における液圧回転機械は、作動液が流入する流入路と、作動液が流出する流出路とが形成されるケーシングと、前記ケーシングに軸支されている軸部材に相対回転不能に設けられ且つ他端部に環状の摺動部を含むブロック本体と、前記ブロック本体の一端部において開口する複数のシリンダボアと、前記摺動部において開口し且つ前記シリンダボアの各々に繋がる複数のシリンダポートと、を含むシリンダブロックと、一端部に前記摺動部を摺接させ且つ前記軸部材を外囲するように前記ケーシングに固定される環状の弁板本体と、前記弁板本体において前記複数のシリンダポートに対応させて形成され且つ前記流入路に繋がる流入側ポートと、前記弁板本体において前記複数のシリンダポートに対応させて形成され且つ前記流出路に繋がる流出側ポートとを含む弁板と、前記シリンダボアの各々に挿入され、前記シリンダボアを往復運動する複数のピストンと、を備え、前記ブロック本体は、前記摺動部の径方向内方及び外方の少なくとも一方に形成されている少なくとも1つのキャビテーション抑制部を有し、前記キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝である。
【0078】
上記局面によれば、ブロック本体は、摺動部の径方向内方及び外方の少なくとも一方に形成されているキャビテーション抑制部を有している。キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝である。それ故、摺動部と摺接部との間の隙間に漏れ出た作動液は、その隙間から径方向に流れ出ると、キャビテーション抑制部に達する。それ故、隙間から径方向に流れ出る作動液の液圧が急激に低下することをキャビテーション抑制部によって抑制することができる。従って、キャビテーション抑制部は、隙間の出口付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができ、更にキャビテーションによって出口付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0079】
第7の局面における液圧回転機械のシリンダブロックは、前記液圧回転機械のケーシングに軸支されている軸部材が相対回転不能に挿通されている筒状のブロック本体と、前記ブロック本体の一端部において開口する複数のシリンダボアと、前記ブロック本体の他端部に形成され、弁板の一端部に摺接する環状の摺動部と、前記摺動部において開口し且つ前記シリンダボアの各々に繋がる複数のシリンダポートと、を備え、前記ブロック本体は、前記摺動部の径方向内方及び外方の少なくとも一方に形成されている少なくとも1つのキャビテーション抑制部を含み、前記キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝である。
【0080】
上記局面によれば、ブロック本体は、摺動部の径方向内方及び外方の少なくとも一方に形成されているキャビテーション抑制部を含んでいる。キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝である。それ故、摺動部と摺接部との間の隙間に漏れ出た作動液は、その隙間から径方向に流れ出ると、キャビテーション抑制部に達する。それ故、隙間から径方向に流れ出る作動液の液圧が急激に低下することをキャビテーション抑制部によって抑制することができる。従って、隙間の出口付近においてキャビテーションが発生することを抑制することができ、更にキャビテーションによって出口付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【符号の説明】
【0081】
1,1A,1B 液圧回転機械
10 ケーシング
11 軸部材
12,12B シリンダブロック
12a,12Ba ブロック本体
12b シリンダボア
12c シリンダポート
12d,12Bd 摺動部
12e 第1キャビテーション抑制部
12f 第2キャビテーション抑制部
12h 第1段部
12i 第2段部
13 ピストン
16,16A,16B 弁板
16a,16Aa,16Ba 弁板本体
16e,16Ae 第1キャビテーション抑制部
16f,16Af 第2キャビテーション抑制部
16b 吸入ポート(流入側ポート)
16c 吐出ポート(流出側ポート)
16d,16Bd 摺接部
16h 第1段部
16i 第2段部
22 吸入路(流入路)
23 吐出路(流出路)
【要約】
【課題】
そこで本開示は、シリンダブロックと弁板との間の隙間の出口付近で発生するエロ―ジョンを抑制することができる液圧回転機械を提供することを目的としている。
【解決手段】液圧回転機械は、ケーシングと、ブロック本体と複数のシリンダボアと複数のシリンダポートとを含むシリンダブロックと、弁板本体の一端部にブロック本体の他端部に摺接する環状の摺接部を含む環状の弁板本体と流入側ポートと流出路に繋がる流出側ポートとを有する弁板と、複数のピストンと、を備え、弁板本体は、一端部であって摺接部より径方向内方及び径方向外方の少なくとも一方に形成されている少なくとも1つのキャビテーション抑制部を含み、キャビテーション抑制部は、径方向に開口する環状溝である、液圧回転機械。
【選択図】
図1