(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】モータシステムおよびモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 29/08 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
H02K29/08
(21)【出願番号】P 2023518883
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2022038821
【審査請求日】2023-03-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】三好 将仁
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】十時 詠吾
(72)【発明者】
【氏名】杉元 紘也
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-011637(JP,A)
【文献】特開2001-033277(JP,A)
【文献】特開昭58-116057(JP,A)
【文献】特開2016-188700(JP,A)
【文献】特開2012-083236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 29/08
H02P 6/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータを制御する制御部と、を備えるモータシステムにおいて、
前記モータは、
磁束を発生する磁束発生体が配置された回転子と、
前記回転子と対向して配置されたバックヨークと、前記バックヨークから前記回転子に向かって突出しており、前記回転子の回転方向に間隔をあけて並んで配置された複数のティースとを有する固定子と、
前記固定子に巻回された巻線と、
隣接する前記ティースの間の空間であるスロットに設けられ磁束密度を計測する複数の磁気センサと、
を有し、
前記巻線は、第1の巻線と、前記磁束発生体の極対数よりも1大きい、または、1小さい極対数を発生する第2の巻線と、を含み、
前記モータは、同一の相であって通電の向きが互いに逆の前記第1の巻線の間であり、互いに異なる相の前記第2の巻線の間に位置する前記磁気センサである第1のセンサ、および、同一の相であって通電の向きが互いに逆の前記第1の巻線の間であり、互いに異なる相であって前記第1のセンサの両側に位置する前記第2の巻線の相の組み合わせと同じ組み合わせの相の前記第2の巻線の間に位置する前記磁気センサである第2のセンサの一対の前記磁気センサを3組有し、
前記制御部は、
複数の前記磁気センサの信号に基づいて前記回転子の回転角度および偏心量の少なくとも一方を求める演算部を有し、
前記演算部は、前記3組の前記一対の前記磁気センサの前記第1のセンサの信号と前記第2のセンサの信号との和または差を演算する
ことを特徴とするモータシステム。
【請求項2】
モータと、前記モータを制御する制御部と、を備えるモータシステムにおいて、
前記モータは、
磁束を発生する磁束発生体が配置された回転子と、
前記回転子と対向して配置されたバックヨークと、前記バックヨークから前記回転子に向かって突出しており、前記回転子の回転方向に間隔をあけて並んで配置された複数のティースとを有する固定子と、
前記固定子に巻回された巻線と、
隣接する前記ティースの間の空間であるスロットに設けられ磁束密度を計測する複数の磁気センサと、
を有し、
前記巻線は、前記磁束発生体の極対数と等しい極対数を発生する第1の巻線と、前記磁束発生体の極対数よりも1大きいまたは1小さい極対数を発生する第2の巻線と、を含み、
前記モータは、同一の相であって通電の向きが互いに逆の前記第1の巻線の間であり、同一の相であって通電の向きが互いに逆の前記第2の巻線の間に位置する前記磁気センサである第1のセンサ、および、同一の相であって通電の向きが互いに逆の前記第1の巻線の間であり、同一の相であって通電の向きが互いに逆の前記第2の巻線の間に位置する前記磁気センサである第2のセンサの一対の前記磁気センサを3組有し、
前記制御部は、
複数の前記磁気センサの信号に基づいて前記回転子の回転角度および偏心量の少なくとも一方を求める演算部を有し、
前記演算部が用いる前記磁気センサの信号は、前記3組の前記一対の前記磁気センサの前記第1のセンサおよび前記第2のセンサの信号である
ことを特徴とするモータシステム。
【請求項3】
前記巻線は、前記磁束発生体の極対数と等しい極対数を発生するものを含む
ことを特徴とする請求項
1に記載のモータシステム。
【請求項4】
前記磁気センサは、前記スロットの内部であって、前記ティースの先端よりも前記バックヨーク側に配置されている
ことを特徴とする請求項1
または2に記載のモータシステム。
【請求項5】
前記演算部は、それぞれの前記一対の前記磁気センサの前記第1のセンサの信号と前記第2のセンサの信号との和または差を演算する
ことを特徴とする請求項
2に記載のモータシステム。
【請求項6】
前記スロットの数であるスロット数は、12以上の6の倍数であり、
前記磁束発生体の極対数および前記巻線が発生する極対数は、前記スロット数の3分の1倍の値よりも大きく、前記スロット数の3分の2倍の値よりも小さい
ことを特徴とする請求項1
または2に記載のモータシステム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記巻線の通電量を変化させたときに取得された前記磁気センサの信号から求められた、前記通電量と前記磁気センサの信号の変化量との関係を示す情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記情報が示す前記通電量と前記磁気センサの信号の変化量との関係に基づいて、前記磁気センサの信号を補正する補正部と、
をさらに有する
ことを特徴とする請求項1
または2に記載のモータシステム。
【請求項8】
磁束を発生する磁束発生体が配置された回転子と、
前記回転子と対向して配置されたバックヨークと、前記バックヨークから前記回転子に向かって突出しており、周方向に間隔をあけて配置された複数のティースとを有する固定子と、
前記固定子に巻回された巻線と、
隣接する前記ティースの間の空間であるスロットに設けられた複数の磁気センサと、
を備え、
前記巻線は、第1の巻線と、前記磁束発生体の極対数よりも1大きい、または、1小さい極対数を発生する第2の巻線と、を含み、
前記磁気センサは、同一の相であって通電の向きが互いに逆の前記第1の巻線の間であり、互いに異なる相の前記第2の巻線の間に位置する前記磁気センサである第1のセンサ、および、同一の相であって通電の向きが互いに逆の前記第1の巻線の間であり、互いに異なる相であって前記第1のセンサの両側に位置する前記第2の巻線の相の組み合わせと同じ組み合わせの相の前記第2の巻線の間に位置する前記磁気センサである第2のセンサを一対とする前記磁気センサの3組である
ことを特徴とするモータ。
【請求項9】
磁束を発生する磁束発生体が配置された回転子と、
前記回転子と対向して配置されたバックヨークと、前記バックヨークから前記回転子に向かって突出しており、周方向に間隔をあけて配置された複数のティースとを有する固定子と、
前記固定子に巻回された巻線と、
隣接する前記ティースの間の空間であるスロットに設けられた複数の磁気センサと、
を備え、
前記巻線は、前記磁束発生体の極対数と等しい極対数を発生する第1の巻線と、前記磁束発生体の極対数よりも1大きい、または、1小さい極対数を発生する第2の巻線と、を含み、
前記磁気センサは、同一の相であって通電の向きが互いに逆の前記第1の巻線の間であり、同一の相であって通電の向きが互いに逆の前記第2の巻線の間に位置する前記磁気センサである第1のセンサ、および、同一の相であって通電の向きが互いに逆の前記第1の巻線の間であり、同一の相であって通電の向きが互いに逆の前記第2の巻線の間に位置する前記磁気センサである第2のセンサを一対とする前記磁気センサの3組である
ことを特徴とするモータ。
【請求項10】
前記巻線は、前記磁束発生体の極対数と等しい極対数を発生するものを含む
ことを特徴とする請求項
8に記載のモータ。
【請求項11】
前記磁気センサは、前記スロットの内部であって、前記ティースの先端よりも前記バックヨーク側に配置されている
ことを特徴とする請求項
8または9に記載のモータ。
【請求項12】
前記スロットの数であるスロット数は、12以上の6の倍数であり、
前記磁束発生体の極対数および前記巻線が発生する極対数は、前記スロット数の3分の1倍の値よりも大きく、前記スロット数の3分の2倍の値よりも小さい
ことを特徴とする請求項
8または9に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気センサを用いてモータの回転角度および偏心量の少なくとも一方を検出するモータシステムおよびモータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータは、電流と磁束密度との相互作用によってトルクを発生させる。モータの回転角度または偏心量を検知するために、回転子に永久磁石、界磁巻線などの磁束を発生する磁束発生体を配置し、磁気センサで回転子からの磁束密度を計測して、演算に利用する方法がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、永久磁石が配置された回転子と、磁気センサとを備え、モータの回転角度を検知する機能を有するモータが開示されている。特許文献1に開示されたモータにおいて、磁気センサは、巻線が巻回された複数のティースの間に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたモータによれば、磁気センサは、回転子に配置された永久磁石が発生させる磁束だけでなく、通電した際に巻線に発生する磁束も検知してしまう可能性がある。このため、巻線の通電時によって磁気センサの信号が変化してしまい、回転角度または偏心量の検知誤差が増大する可能性があるという問題があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能なモータシステムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示のモータシステムは、モータと、モータを制御する制御部と、を備えるモータシステムにおいて、モータは、磁束を発生する磁束発生体が配置された回転子と、回転子と対向して配置されたバックヨークと、バックヨークから回転子に向かって突出しており、回転子の回転方向に間隔をあけて並んで配置された複数のティースとを有する固定子と、固定子に巻回された巻線と、隣接するティースの間の空間であるスロットに設けられ磁束密度を計測する複数の磁気センサと、を有し、巻線は、第1の巻線と、磁束発生体の極対数よりも1大きい、または、1小さい極対数を発生する第2の巻線と、を含み、モータは、同一の相であって通電の向きが互いに逆の第1の巻線の間であり、互いに異なる相の第2の巻線の間に位置する磁気センサである第1のセンサ、および、通電の向きが互いに逆の第1の巻線の間であり、互いに異なる相であって第1のセンサの両側の位置する第2の巻線の相の組み合わせと同じ組み合わせの相の第2の巻線の間に位置する磁気センサである第2のセンサの一対の磁気センサを3組有し、制御部は、複数の磁気センサの信号に基づいて回転子の回転角度および偏心量の少なくとも一方を求める演算部を有し、演算部は、3組の一対の磁気センサの第1のセンサの信号と第2のセンサの信号との和または差を演算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能なモータシステムを提供することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1にかかるモータシステムの構成を示す図
【
図2】実施の形態1にかかるモータの断面構成を示す図
【
図4】実施の形態1にかかるモータのXZ断面の構成を示す図
【
図5】回転子および磁気センサの間の回転軸方向の位置ずれ量と磁気センサの検出する信号の大きさとの相関を表す図
【
図6】回転子の傾きに対する磁気センサの検出信号の大きさの関係を示す図
【
図7】磁気センサの位置と半径方向の磁束密度との関係を示す図
【
図8】実施の形態1の変形例にかかるモータの断面構成を示す図
【
図9】実施の形態2にかかるモータの断面構成を示す図
【
図10】実施の形態2の変形例にかかるモータの断面構成を示す図
【
図11】実施の形態3にかかるモータの断面構成を示す図
【
図12】実施の形態3の変形例にかかるモータの断面構成を示す図
【
図13】実施の形態4にかかる制御部の構成を示す図
【
図14】巻線への通電量と磁気センサの信号との関係の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態にかかるモータシステムおよびモータを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかるモータシステム100の構成を示す図である。モータシステム100は、モータ1と、制御部2とを有する。モータ1は、電気エネルギーを力学的エネルギーに変換する装置である。具体的には、モータ1は、磁界と電流の相互作用による力を利用して回転運動を出力する。制御部2は、モータ1を制御する。
【0012】
モータ1には、磁束密度を計測する磁気センサ17が取り付けられている。磁気センサ17は、計測した磁束密度を示す信号を制御部2に出力する。制御部2は、磁気センサ17の信号に基づいて、モータ1の回転角度および偏心量を演算する演算部21を有する。制御部2は、検知した回転角度および偏心量に基づいて、モータ1を制御することができる。なお、
図1では1つのブロックで磁気センサ17を表しているが、モータ1は、複数の磁気センサ17を有する。また、ここでは制御部2は、回転角度および偏心量を検知することとしたが、制御部2は、回転角度および偏心量の少なくとも一方を検知する。つまり、制御部2は、回転角度のみを検知してもよいし、偏心量のみを検知してもよいし、回転角度および偏心量の両方を検知してもよい。
【0013】
図2は、実施の形態1にかかるモータ1の断面構成を示す図である。モータ1の回転軸の方向をZ軸方向とした場合、
図2は、XY断面を示している。モータ1は、回転子10と、回転子10に配置された永久磁石11と、固定子12とを有する。回転子10は、Z軸方向を長手方向とする円柱状をしており、外周に永久磁石11が配置されている。回転子10の永久磁石11は、磁束を発生する磁束発生体の一例である。磁束発生体は、永久磁石11の他に、界磁巻線であってもよい。ここでは、永久磁石11が発生する磁束は、モータ1のトルクの発生に寄与すると共に、回転角度および偏心量の検出のためにも用いられる。このため、モータ1全体の体積および質量の増加を低減しつつ、回転角度および偏心量を検出することが可能になる。固定子12は、回転子10と空隙をあけた状態で回転子10と対向して配置された筒状のバックヨーク13と、バックヨーク13から回転子10に向けて突出する複数のティース14とを有する。複数のティース14は、周方向に互いに間隔をあけて配置されている。隣接するティース14の間の空間は、スロット15と呼ばれる。
【0014】
固定子12のティース14およびスロット15の数は12であり、回転子10の永久磁石11の極数は10である。したがって、モータ1は、10極12スロットである。
【0015】
また、モータ1は、複数のティース14のそれぞれに巻回された巻線16を有する。なお、U相の巻線16を16Uまたは16U(バー)と称する。U(バー)は、Uの上にバーを付したものを表す。以下、同様に、符号の上にバーを付したものを、符号の後に(バー)を付して表すことがある。ここで、巻線16U(バー)は、通電の向きが巻線16Uと逆であることを意味している。ここでは、巻線16Uは、正の電流を通電したときに、巻線16Uが巻回されたティース14に外向きの磁束が発生するように巻回されており、巻線16U(バー)は、正の電流を通電したとき、巻線16U(バー)が巻回されたティース14に内向きの磁束が発生するように巻回されているものとする。
【0016】
モータ1が12スロットの形状で10極の磁界が発生するように、モータ1は、
図2の紙面の3時の方向から反時計回りに順に、巻線16U、巻線16U(バー)、巻線16V(バー)、巻線16V、巻線16W、巻線16W(バー)、巻線16U(バー)、巻線16U、巻線16V、巻線16V(バー)、巻線16W(バー)、巻線16Wを有する。
【0017】
磁気センサ17は、ホール素子などのセンサであり、磁界や磁束密度を電圧に変換して計測することができる。モータ1は、6つの磁気センサ17を有している。複数の磁気センサ17のそれぞれを区別する場合、符号17の後にハイフンおよび数字を付して、磁気センサ17-1~17-6と称する。磁気センサ17は、しきい値を境に出力が変化するデジタル出力方式であってもよいし、磁束密度の値に比例してリニアに出力が変化するアナログ出力方式であってもよい。デジタル出力方式では、回転角度および偏心量の範囲を知ることができ、アナログ出力方式では、回転角度および偏心量の値を直接知ることができる。また、アナログ出力方式では、デジタル出力方式よりも、巻線16への通電による磁束の影響が、磁気センサ17の信号に直接現れて問題となりやすい。以下では、磁気センサ17はアナログ出力方式であることとして説明する。なお、空気中では磁界と磁束密度とは比例する。以降は、主に磁気センサ17の検出対象は磁束密度であると表記するが、磁界であっても構わない。
【0018】
磁気センサ17は、両側のティース14に巻回された巻線16の相が同一であって、通電の向きが互いに逆となるようなスロット15に設けられる。言い換えると、磁気センサ17は、相が同一であって、通電の向きが互いに逆となるような巻線16の間に設けられる。具体的には、磁気センサ17-1は、巻線16Uおよび巻線16U(バー)の間に設けられている。磁気センサ17-2は、巻線16Vおよび巻線16V(バー)の間に設けられている。磁気センサ17-3は、巻線16Wおよび巻線16W(バー)の間に設けられている。磁気センサ17-4は、巻線16Uおよび巻線16U(バー)の間に設けられている。磁気センサ17-5は、巻線16Vおよび巻線16V(バー)の間に設けられている。磁気センサ17-6は、巻線16Wおよび巻線16W(バー)の間に設けられている。
【0019】
なお、
図2では、6つの磁気センサ17-1~17-6を示しているが、モータ1は、複数の磁気センサ17を有していれば、その数は特に限定されない。磁気センサ17から角度を算出するためには、回転子10の回転に伴って少なくとも2つの位相の異なる正弦波上の磁束密度の波形を検出できればよい。このため、磁気センサ17は、最低2つ必要となる。
【0020】
回転子10の角度、つまり回転角をθとし、磁気センサ17から波形X=cosθ、波形Y=sinθの情報が演算できれば、以下の数式(1)を用いて回転角θを算出することができる。tan-1は、アークタンジェントを意味する。
【0021】
【0022】
cosθおよびsinθの波形は、電気的に位相が90°異なる位置に配置された2つの磁気センサ17から直接取得することができる。また、3個以上の磁気センサ17の信号から、後述する三相二相変換を含む四則演算をすることによっても、cosθおよびsinθの波形を算出することができる。さらに、磁気センサ17が2個だけ配置されており、且つ、電気的な位相差が90°ではない場合であっても、2つの信号から四則演算することで、cosθおよびsinθの波形を得ることができる。例えば、波形X=cosθと、波形Y’=cos(θ-60°)が得られているとする。この場合、以下の数式(2)の演算をすれば、波形Y=sinθを得ることができる。
【0023】
【0024】
同じ相の巻線16は、全て直列につなげてもよいし、一部並列につなげてもよい。同じ相の巻線16を全て直列につなげば、同じ相の全ての巻線16に流れる電流の値は同じとなる。また、同じ相の巻線16の一部を並列につないだとしても、並列回路で循環する電流が小さければ、各巻線16に流れる電流値は同じとみなすことができる。また、U相、V相、およびW相の三相の接続は、Y結線であってもよいし、Δ結線であってもよい。
【0025】
図3は、
図2の部分拡大図である。
図3を用いて、磁気センサ17を、両側のティース14に巻回された巻線16の相が同一であって、通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に設けたときに、巻線16からの通電により発生する磁束密度を相殺する原理について説明する。
図3は、巻線16Uに正の電流が流れているときの様子を示している。右ねじの法則により、巻線16Uおよび巻線16U(バー)の周りには、それぞれ磁束密度が発生する。発生する磁束密度の大きさは、電流に概ね比例し、巻線16からの距離に反比例する。したがって、巻線16に流す電流が大きいほど、また磁気センサ17が巻線16に近いほど、磁気センサ17が巻線16の発生する磁束密度から受ける影響は大きくなる。
【0026】
しかしながら、磁気センサ17は、両側のティース14に巻回された巻線16の相が同一であって、通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に設けられている。つまり、磁気センサ17の両側に位置する巻線16の相は同一であって、通電の向きは互いに逆である。このため、磁気センサ17を配置した場所に発生する磁束密度は、磁気センサ17の両側に配置された2つの巻線16のそれぞれが発生する磁束密度の和となる。具体的には、
図3に示す磁気センサ17-1は、巻線16Uから発生する磁束18Uの影響と、巻線16U(バー)から発生する磁束18U(バー)の影響とを受ける。このとき、磁気センサ17-1が巻線16Uと巻線16U(バー)とのちょうど中間位置に配置されている場合、半径R方向において、磁束18Uと、磁束18U(バー)とは、互いに大きさが同じで向きが逆となる。したがって、巻線16Uが磁気センサ17-1に与える影響は、巻線16(バー)が磁気センサ17-1に与える影響によって相殺される。ここでは、磁気センサ17-1について説明したが、他の磁気センサ17-2~17-6についても同様である。磁気センサ17-1~17-6の配置された位置では、巻線16の通電量が増減しても磁束密度は変動せず、回転子10の永久磁石11からの磁束だけが現れるようになる。このため、磁気センサ17は、回転子10の永久磁石11からの磁束だけを検出することが可能になる。
【0027】
なお、上記では、モータ1が回転子10と固定子12とが径方向に対向するラジアルギャップモータである場合について説明した。回転子10と固定子12とが回転軸方向に対向するアキシャルギャップモータについても、同様の効果がある。アキシャルギャップモータの場合、回転子10からの磁束の方向は、主に回転軸方向となる。また、固定子12において、磁気センサ17の両側の巻線16からの磁束の方向も、主に回転軸方向となる。アキシャルギャップモータについても、磁気センサ17を、同一の相であって通電の向きが互いに逆であるような2つの巻線16の間に配置すれば、両側の巻線16からの磁束は、互いに大きさが同じで逆の向きとなり、打ち消し合う。このため、磁気センサ17は、回転子10に配置された永久磁石11からの磁束のみを検出することが可能になる。
【0028】
上述の通り、磁気センサ17を、両側のティース14に巻回された巻線16の相が同一であって、通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に配置することによって、巻線16が磁気センサ17に与える影響を考慮する必要がなくなる。このため、磁気センサ17と巻線16との間の距離を離す必要がなくなる。したがって、磁気センサ17を巻線16の近くに配置することが可能になる。限られたスロット15の空間を、巻線16と磁気センサ17との距離をとるための空間の代わりに巻線16に充てることが可能になるため、巻線16の抵抗を低下させ、運転時の銅損を下げることができる。巻線からの影響を大幅に低減するためには、モータ1や巻線16とは物理的に離れた位置に、回転角度および偏心量を検出するための検出専用の永久磁石を用意して、その検出専用の永久磁石の磁束を検出するという対策をとることもあるが、その必要もなくなる。また結果として、出力や損失を同一とするとき、モータ1全体の大きさおよび質量を低減することが可能になる。
【0029】
図4は、実施の形態1にかかるモータ1のXZ断面の構成を示す図である。ここでは、XZ断面は、回転軸と半径R方向とを含む断面である。従来、巻線16からの磁束の影響を低減するために、磁気センサ17の位置を、回転軸方向、つまり、Z軸方向にずらす方法があった。しかしながら、磁気センサ17の位置を回転軸方向にずらすと、回転子10の永久磁石11からの磁束19の大きさも低減するため、SNR(Signal to Noise Ratio)は結果的に下がりにくい。モータ1の磁気センサ17は、回転軸方向に巻線16から遠ざけた位置に配置してもよいが、
図4にΔz≒0として示すように、回転軸方向において、回転子10の中心位置に配置してもよい。これは、上述の通り、磁気センサ17を、両側のティース14に巻回された巻線16の相が同一であって、通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に配置することで、回転軸方向のいずれの場所であっても、両側の巻線16からの影響が相殺されるためである。Δzは、各磁気センサ17の回転軸方向における、回転子10の中心位置からの位置ずれ量を示している。
図4には、Δz≒0の磁気センサ17と、Δz<0の磁気センサ17と、Δz>0の磁気センサ17とが示されている。
【0030】
また、回転子10が磁気浮上によって空中に浮いていたり、組み立てに誤差があったり、回転子10や固定子12に振動が発生している場合には、磁気センサ17に対する回転子10の相対的な位置が、回転軸方向または傾き方向にずれることがある。このとき、回転子10の永久磁石11から軸方向にずれた位置では、回転子10の変位や磁気センサ17の配置場所のずれなどによって、磁気センサ17が検出する信号の大きさが大きく異なる場合がある。磁気センサ17の位置を回転子10よりも軸方向にずらした位置に配置したとき、回転子10と磁気センサ17との間の距離が増加すれば、磁気センサ17の信号の大きさは減少し、回転子10と磁気センサ71との間の距離が減少すれば、磁気センサ17の信号の大きさは増加する。
【0031】
図5は、回転子10および磁気センサ17の間の回転軸方向の位置ずれ量Δzと磁気センサ17の検出する信号の大きさとの相関を表す図である。
図5の横軸は、回転子10および磁気センサ17の間の回転軸方向の位置ずれ量Δzであり、
図5の縦軸は、磁気センサ17の検出信号の大きさBである。磁気センサ17の検出信号の大きさBは、Δz=0付近で極大値をもち、Δz≒0付近では検出信号の大きさBの変化は小さい。これに対して、位置ずれ量Δzの絶対値が大きくなると、わずかなΔzの値の変化によって、磁気センサ17の検出信号の大きさBの変化が大きくなる。
【0032】
図6は、回転子10の傾きΔθに対する磁気センサ17の検出信号の大きさBの関係を示す図である。Δz≒0となる位置に磁気センサ17を配置した場合、回転子10が傾いてΔθの値が変化しても、磁気センサ17と永久磁石11との間の距離はほとんど変わらないため、磁気センサ17の検出信号の大きさBも変わらない。これに対して、Δz>0となる位置に磁気センサ17を配置した場合、回転子10が傾いてΔθの絶対値が変化すると、磁気センサ17と永久磁石11との間の距離が変化する。
【0033】
モータ1は、磁気センサ17を、同一の相であって、通電の向きが互いに逆である巻線16の間に配置している。このような条件を満たしていれば、磁気センサ17をモータ1の回転軸方向において、回転子10の中心位置であるΔz≒0付近に配置することで、回転子10の永久磁石11からの磁束の大きさは増加させつつ、巻線16からの磁束の影響を低減することができる。その結果、回転軸方向において、回転子10の中心位置からずらした位置に磁気センサ17を配置する従来の技術と比較して、SNRを各段に改善することができる。また、磁気センサ17をモータ1の回転軸方向の中心部であるΔz≒0付近に配置すれば、回転子10および磁気センサ17が相対的に軸方向や傾き方向にずれても、磁気センサ17の検出信号の大きさBはほとんど変わらない。そのため、磁気センサ17が、磁気センサ17や回転子10の位置ずれ、振動などに対してロバストに磁束を検出することが可能になる。また、磁気センサ17を複数配置して、Δz>0の位置、Δz<0の位置にも配置すれば、通電による巻線16からの磁束の影響を抑えつつ、回転子10の軸方向の位置や傾き方向の位置も検出することができるようになる。
【0034】
図7は、磁気センサ17の位置と半径R方向の磁束密度との関係を示す図である。
図7には、磁気センサ17を回転子10の近く、つまり、回転子10と固定子12との間の空隙であるギャップ付近に配置したときの半径R方向の磁束密度が破線で示されている。また、
図7には、磁気センサ17をギャップから遠ざけてスロット15の内部に配置したときの半径R方向の磁束密度が実線で示されている。ギャップから遠ざけた位置とは、
図2に示すような回転子10が固定子12の内側にあるインナーロータ型では、正の半径R方向側を意味し、回転子10が固定子12の外側にあるアウターロータ型では負の半径R方向を意味する。磁気センサ17は、ギャップに近いほど、永久磁石11からの磁束を多く拾うことになり、得られる信号は大きくなる。しかしながら、永久磁石11からの磁束は、基本波成分だけでなく、高調波成分も多く含まれる。このため、磁気センサ17が検出する信号は、磁気センサ17をギャップに近い位置に配置して、磁気センサ17の信号が高調波成分を多く含む場合、
図7の破線に示すように、理想的な正弦波にはならず、角度誤差が増大する。
【0035】
磁気センサ17をギャップから遠ざけて、スロット15の内部の方向、つまりティース14の先端よりもバックヨーク13側に配置すると、基本波成分は低下するが、角度誤差の要因となる空間高調波成分が大幅に低下する。このため、磁気センサ17が検出する信号は、正弦波に近づき、永久磁石11からの空間高調波による角度誤差が低減する。ここで、磁気センサ17をスロット15の内部に配置すると、結果的に、固定子12の巻線16に近づくことになり、磁気センサ17は、巻線16からの磁束の影響を受けやすくなる。しかしながら、上記で説明したように、磁気センサ17を、同一の相であって通電の向きが互いに逆である巻線16の間に配置するようにすれば、一方の巻線16からの磁束の影響を、他方の巻線16からの磁束の影響によって相殺することができるため、巻線16からの磁束の影響の増加を抑制することができる。したがって、磁気センサ17を、スロット15の内部において、同一の相であって通電の向きが互いに逆である巻線16の間に配置することによって、永久磁石11からの空間高調波の影響の低減と、巻線16からの磁束の影響の低減とを、両立することが可能になる。
【0036】
続いて、10極12スロットであって、
図2に示すように磁気センサ17を配置したときに各磁気センサ17が検出する信号と、これらの信号を用いて制御部2の演算部21が行う後処理の方法とを数式を用いて説明する。
【0037】
極対数は5である。極対数の値である「5」は、スロット数「12」の3分の1である「4」よりも大きく、スロット数「12」の3分の2である「8」よりも小さい。
【0038】
ここで、6つの磁気センサ17-1~17-6のそれぞれの信号を、S1~S6とする。つまり、n番目の磁気センサ17-nの信号をSnとする。Snは、以下の数式(3)で表される。ここで、B0は半径R方向に偏心していないときの回転子10の永久磁石11からの磁束の基本波の振幅であり、pは永久磁石11の極対数であり、θは回転子10の角度であり、αnは磁気センサ17の配置した角度である。bは永久磁石11の基本波に対する3次高調波成分の割合を表す係数であり、rは回転子10の偏心の大きさであり、φはX軸方向を基準0度とする回転子10の偏心の向きであり、RnおよびLnはそれぞれn番目の磁気センサ17-nの両隣に位置する巻線16の通電によって発生する磁束密度である。
【0039】
【0040】
X方向の回転子10の変位量をxとし、Y方向の回転子10の変位量をyとすると、x,yのそれぞれと、r,φとの間には、以下の数式(4)および数式(5)の関係が成り立つ。
【0041】
【0042】
【0043】
図2中において、紙面3時の方向を0°として、α
1=15°、α
2=α
1+60°、α
3=α
1+120°、α
4=α
1+180°、α
5=α
1+240°、α
6=α
1+300°とする。また、p=5である。α
2=α
5-180°、α
6=α
3+180°の関係を利用すると、S
1~S
6のそれぞれは、以下の数式(6)~数式(11)で表される。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
ここで、制御部2の演算部21は、磁気センサ17を2個で1対として、一対の磁気センサ17の信号の差を演算する。具体的には、演算部21は、磁気センサ17-1および磁気センサ17-4を一対のセンサとし、磁気センサ17-2および磁気センサ17-5を一対のセンサとし、磁気センサ17-3および磁気センサ17-6を一対のセンサとする。
【0051】
S1-S4は、以下の数式(12)で表され、S5-S2は、以下の数式(13)で表され、S3-S6は、以下の数式(14)で表される。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
さらに、演算部21は、算出した「S1-S4」、「S5-S2」、「S3-S6」に対して、数式(15)で表されるように、三相二相変換をする。
【0056】
【0057】
数式(15)では、永久磁石11の基本波に対する3次高調波成分の割合を表す係数bの値が0でなくても、三相二相変換後の信号にはbが含まれない。したがって、一対の磁気センサ17の信号の差をとって、三相二相変換を行うことにより、三次高調波成分の影響を除去することができる。
【0058】
また、磁気センサ17の両隣りに位置する巻線16は、同一の相であって通電の向きが逆であるという条件を考慮する。例えば、磁気センサ17の両隣にはU相の巻線16UおよびU(バー)層の巻線16U(バー)とが位置している。ここで、巻線16Uに流れる電流をiuとして、比例係数をkとすると、R1=kiuとなり、L1=-kiuとなる。したがって、R1+L1=0が成り立つ。同様に、全ての磁気センサ17は、両側のティース14に巻回された巻線16が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロットに設けられるため、Rn+Ln=0が成り立つ。このとき、以下の数式(16)が成立する。
【0059】
【0060】
したがって、演算部21は、数式(16)に、検出された磁気センサ17の信号を代入して、アークタンジェントを演算することで、p(θ-α1)が求められる。ここで、pおよびα1が既知であるとすると、演算部21は、θを算出することができる。
【0061】
つまり、演算部21が出力する角度情報は、永久磁石11からの3の倍数の空間高調波と、巻線16からの磁束との影響が除去されている。
【0062】
次に、偏心量の算出方法について説明する。磁気センサ17を2個1対として、和の演算をする。具体的には、演算部21は、磁気センサ17-1および磁気センサ17-4を一対のセンサとし、磁気センサ17-2および磁気センサ17-5を一対のセンサとし、磁気センサ17-3および磁気センサ17-6を一対のセンサとする。
【0063】
S1+S4は、以下の数式(17)で表され、S2+S5は、以下の数式(18)で表され、S3+S6は、以下の数式(19)で表される。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
さらに、演算部21は、算出した「S1+S4」、「S2+S5」、「S3+S6」に対して、数式(20)で表されるように、三相二相変換をする。
【0068】
【0069】
数式(20)に示されるように、偏心量については、三相二相変換を行っても、永久磁石11の三次高調波成分の影響は残る。しかしながら、磁気センサ17をスロット15の内部に配置すれば、前述の通り、三次高調波の割合を大幅に低減することができる。Rn+Ln=0が成立し、三次高調波が相対的に無視できる程度に小さいとすると、数式(20)は、数式(21)のように近似することができる。
【0070】
【0071】
B0cosp(θ-α1)およびB0sinp(θ-α1)が算出できているので、これを回転行列として利用すれば、以下の数式(22)に示すように、θを含まず、rおよびφを含む関数を得ることができる。
【0072】
【0073】
これは、回転子10の半径方向の位置情報と等価である。演算部21は、上記のように偏心量を算出することができる。
【0074】
なお、上記では永久磁石11の極対数が5であって奇数である場合について説明したが、極対数が偶数である場合についても、同様にして回転角および偏心量を求めることができる。ただし、極対数が偶数である場合には、角度の算出において、一対の磁気センサ17の信号の差の代わりに、和を演算する。
【0075】
また、上記では10極12スロットのモータ1について説明したが、スロット数が12以上の6の倍数であり、永久磁石11の極対数pおよび巻線16が発生する極対数が、スロット数の3分の1倍の値よりも大きく、スロット数の3分の2倍の値よりも小さければよい。スロット数、永久磁石11の極対数p、および巻線16が発生する極対数の関係を上記のようにすることで、両側のティース14に巻回された巻線16が同一の相であって通電の向きが互いに逆となるようなスロット15を設けることが可能になる。このため、演算部21がモータ1の回転角および偏心量の少なくとも一方を求める際に使用する磁気センサ17の信号を、両側のティース14に巻回された巻線16が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に設けられた磁気センサ17の信号とすることができる。
【0076】
図8は、実施の形態1の変形例にかかるモータ1-1の断面構成を示す図である。
図8には、8極9スロットのモータ1-1が示されている。
図2に示すモータ1と異なる点について主に説明する。モータ1は、10極12スロットであったのに対して、モータ1-1は、8極9スロットである点がモータ1と異なる。つまり、モータ1-1は、回転子10と、固定子12とを有する。また、モータ1-1の固定子12は、9本のティース14を有し、各ティース14には、巻線16が巻回されている。ここで、モータ1-1の巻線16は、
図8の紙面3時の方向から反時計回り方向に順に、巻線16U、巻線16U(バー)、巻線16V(バー)、巻線16V、巻線16V(バー)、巻線16W(バー)、巻線16W、巻線16W(バー)、巻線16U(バー)である。ここで、モータ1-1は、巻線16Uと巻線16U(バー)との間に設けられるスロット15と、巻線16Vと巻線16V(バー)との間に設けられるスロット15と、巻線16Wと巻線16W(バー)との間に設けられるスロット15との3箇所に配置された磁気センサ17を有する。
【0077】
モータ1-1においても、磁気センサ17は、両側のティース14に巻回された巻線16が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に設けられる。また、永久磁石11の極対数pは4であり、極対数pは、スロット数9の3分の1倍の値である3よりも大きく、スロット数9の3分の2倍の値である6よりも小さい。
【0078】
ここでは8極9スロットの例を示したが、スロット数が9以上の3の倍数であり、永久磁石11の極対数pおよび巻線16が発生する極対数が、スロット数の3分の1倍の値よりも大きく、スロット数の3分の2倍の値よりも小さければよい。スロット数、永久磁石11の極対数p、および巻線16が発生する極対数の関係を、上記のようにすることで、両側のティース14に巻回された巻線16が同一の相であって通電の向きが互いに逆となるようなスロット15を設けることが可能になる。
【0079】
なお、
図2および
図8では、固定子12を回転子10の外側に配置して、半径方向にギャップ面を有して固定子12と回転子10とが対向したラジアルギャップモータについて示したが、固定子12が回転子10の内側に配置されたアウターロータ型であっても、上記に説明したような効果を得ることができる。また、固定子12と回転子10とが軸方向にギャップ面を有して対向するアキシャルギャップモータであっても、同様の効果を得ることができる。
【0080】
なお、U相、V相およびW相の巻線16の結線方法は、Y結線であってもよいし、Δ結線であってもよい。また、同じ相の巻線16は、直列につないでも並列につないでも、同じ相にはほぼ同じ大きさの電流が流れるため、同様の効果が得られる。また、実施の形態1では3相の巻線16を用いたモータ1およびモータ1-1について説明したが、2相の巻線や4相以上の巻線を用いる場合であっても、同一の相であって通電の向きが互いに逆である巻線の間に磁気センサ17を配置すれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0081】
また、単相のインバータおよび巻線を複数使う場合でも、単相の巻線の間に磁気センサを配置すれば同様の効果を得ることができる。
【0082】
以上説明したように、実施の形態1によれば、モータ1と、モータ1を制御する制御部2とを備えるモータシステム100が提供される。モータ1は、磁束を発生する磁束発生体である永久磁石11が配置された回転子10と、回転子10と対向して配置された固定子12とを有する。固定子12は、回転子10と対向して配置されたバックヨーク13と、バックヨーク13から回転子10に向かって突出しており、回転子10の回転方向に間隔をあけて並んで配置された複数のティース14とを有する。また、モータ1は、固定子12に巻回された巻線16と、隣接するティース14の間の空間であるスロット15に設けられ磁束密度を計測する複数の磁気センサ17とを有する。制御部2は、複数の磁気センサ17の信号から回転子10の回転角度および偏心量の少なくとも一方を求める演算部21を有する。演算部21が用いる磁気センサ17の信号は、両側の巻線16が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に設けられた磁気センサ17の信号である。磁気センサ17を、両側の巻線16が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に設けることによって、この磁気センサ17の信号は、巻線16への通電時であっても、両側の巻線16のうち一方の巻線16からの影響が、他方の巻線16からの影響によって相殺されたものとなる。したがって、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。
【0083】
また、磁気センサ17は、スロット15の内部であって、つまり、隣接するティース14の間であって、ティース14の先端よりも、モータ1の回転軸を中心とする半径R方向において、バックヨーク13側に配置される。これにより、磁気センサ17の信号から空間高調波成分を大幅に低減することが可能になり、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。なお、アキシャルモータであれば、バックヨーク13側とは軸方向つまりZ方向を意味する。
【0084】
また、モータ1は、それぞれが第1のセンサおよび第2のセンサを含む1対の磁気センサ17を3組有し、演算部21は、それぞれの組において、第1のセンサの信号と第2のセンサの信号との和または差を演算する。これによって、演算部21が出力する回転角度および偏心量からは、永久磁石11からの3の倍数の空間高調波成分の影響と、巻線16への通電により発生する磁束の影響とが除去される。したがって、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。
【0085】
また、モータ1のスロット15の数であるスロット数は、「12」であり、この値は、12以上の6の倍数であるという条件を満たす。また、モータ1において、磁束発生体である永久磁石11の極対数および巻線16が発生する極対数は「5」であり、この値は、スロット数「12」の3分の1倍の値である「4」よりも大きく、スロット数「12」の3分の2倍の値である「8」よりも小さいという条件を満たす。このような条件を満たすようなスロット数および極対数とすることによって、両側のティース14に巻回された巻線16が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に磁気センサ17を配置することが可能になる。したがって、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。
【0086】
また、実施の形態1の変形例にかかるモータ1-1は、8極9スロットである。この場合、スロット数は「9」であり、この値は、9以上の3の倍数であるという条件を満たす。また、永久磁石11の極対数および巻線16が発生する極対数は「4」であり、この値は、スロット数「9」の3分の1倍の値である「3」よりも大きく、スロット数「9」の3分の2倍の値である「6」よりも小さいという条件を満たす。このような条件を満たすようなスロット数および極対数とすることによって、両側のティース14に巻回された巻線16が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に磁気センサ17を配置することが可能になる。したがって、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。
【0087】
実施の形態2.
図9は、実施の形態2にかかるモータ1-2の断面構成を示す図である。なお、モータ1-2は、16極18スロットである点と、各ティース14に2種類の巻線が巻回されている点とが実施の形態1と異なる。モータ1-2の構成は、上記の点を除いてはモータ1と同様である。モータ1-2は、バックヨーク13およびティース14を有する回転子10と、永久磁石11が設けられた回転子10と、隣接するティース14の間の空間に設けられた磁気センサ17とを有する。なお、磁気センサ17の信号は、実施の形態1と同様に、制御部2の演算部21に出力される。以下、実施の形態1と異なる点について主に説明する。
【0088】
モータ1-2は、18本のティース14を有する。各ティース14には、第1の巻線31と、第2の巻線32とが巻回されている。
図9の例では、第1の巻線31と、第2の巻線32とは重畳して巻回されている。ここでは、第1の巻線31は、第2の巻線32の外側に巻回されている。また、回転子10は、16極の永久磁石11を有する。固定子12のスロット15の数は18である。
【0089】
第1の巻線31は、16極の磁界を発生するように、18個のティース14に巻回されている。モータ1-2の第1の巻線31は、
図9の紙面3時の方向から反時計回りに順番に、第1の巻線31U、第1の巻線31U(バー)、第1の巻線31V(バー)、第1の巻線31V、第1の巻線31V(バー)、第1の巻線31W(バー)、第1の巻線31W、第1の巻線31W(バー)、第1の巻線31U(バー)、第1の巻線31U、第1の巻線31U(バー)、第1の巻線31V(バー)、第1の巻線31V、第1の巻線31V(バー)、第1の巻線31W(バー)、第1の巻線31W、第1の巻線31W(バー)、第1の巻線31U(バー)である。モータ1-2の第2の巻線32は、14極の磁界を発生するように18個のティース14に巻回されている。第2の巻線32は、
図9の紙面3時の方向から反時計回りに順番に、第2の巻線32V、第2の巻線32V(バー)、第2の巻線32W(バー)、第2の巻線32U(バー)、第2の巻線32U、第2の巻線32V、第2の巻線32W、第2の巻線32W(バー)、第2の巻線32U(バー)、第2の巻線32V(バー)、第2の巻線32V、第2の巻線32W、第2の巻線32U、第2の巻線32U(バー)、第2の巻線32V(バー)、第2の巻線32W(バー)、第2の巻線32W、第2の巻線32Uである。
【0090】
第2の巻線32が発生する極対数は7であり、永久磁石11の極対数pは8である。このとき、第2の巻線32が発生する極対数は、永久磁石11の極対数よりも1大きいかまたは1小さいという条件を満たす。また、第2の巻線32が発生する極対数は、スロット数の3分の1倍の値である6よりも大きく、スロット数の3分の2倍の値である12よりも小さい。
【0091】
モータ1-2は、6個の磁気センサ17-1~17-6を有する。磁気センサ17-1は、第1の巻線31Uと第1の巻線31U(バー)との間に配置されている。磁気センサ17-2は、第1の巻線31Vと第1の巻線31V(バー)との間に配置されている。磁気センサ17-3は、第1の巻線31Wと第1の巻線31W(バー)との間に配置されている。磁気センサ17-4は、第1の巻線31Uと第1の巻線31U(バー)との間に配置されている。磁気センサ17-5は、第1の巻線31Vと第1の巻線31V(バー)との間に配置されている。磁気センサ17-6は、第1の巻線31Wと第1の巻線31W(バー)との間に配置されている。
【0092】
また、磁気センサ17-1は、第2の巻線32Vと第2の巻線32V(バー)との間に配置されている。磁気センサ17-2は、第2の巻線32Uと第2の巻線32U(バー)との間に配置されている。磁気センサ17-3は、第2の巻線32Wと第2の巻線32W(バー)との間に配置されている。磁気センサ17-4は、第2の巻線32Uと第2の巻線32U(バー)との間に配置されている。磁気センサ17-5は、第2の巻線32Uと第2の巻線32U(バー)との間に配置されている。磁気センサ17-6は、第2の巻線32Wと第2の巻線32W(バー)との間に配置されている。
【0093】
モータ1-2では、磁気センサ17-1~17-6のそれぞれは、両側のティース14に巻回された第1の巻線31が同一の相であって通電の向きが互いに逆であり、且つ、両側のティース14に巻回された第2の巻線32が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に設けられている。このため、実施の形態1と同様に、第1の巻線31の磁束の影響と、第2の巻線32の磁束の影響とを、同時に低減することができる。
【0094】
また、
図10は、実施の形態2の変形例にかかるモータ1-3の断面構成を示す図である。ここでは、モータ1-2と異なる点について主に説明する。モータ1-3の第1の巻線31は、モータ1-3の回転軸を中心とする半径R方向において、第2の巻線32の内側に巻回されている。このように第1の巻線31および第2の巻線32を巻回した場合であっても、モータ1-2と同様の効果を奏することができる。
【0095】
なお、もし第2の巻線32が、
図9の紙面3時の方向から反時計回りに順番に、第2の巻線32U、第2の巻線32V、第2の巻線32V(バー)、第2の巻線32W(バー)、第2の巻線32U(バー)、第2の巻線32U、第2の巻線32V、第2の巻線32W、第2の巻線32W(バー)、第2の巻線32U(バー)、第2の巻線32V(バー)、第2の巻線32V、第2の巻線32W、第2の巻線32U、第2の巻線32U(バー)、第2の巻線32V(バー)、第2の巻線32W(バー)、第2の巻線32Wとした場合、上記の効果が得られない。第2の巻線32の配置は、第1の巻線31との関係も考慮して、両側のティース14に巻回された第1の巻線31が同一の相であって通電の向きが互いに逆となるスロット15の両側のティース14に巻回する第2の巻線32が同一の相であって通電の向きが互いに逆となるように、工夫する必要がある。
【0096】
以上説明したように、実施の形態2によれば、
図1のモータ1の代わりにモータ1-2を備えるモータシステム100が提供される。以下、モータ1-2を備えるモータシステム100について説明するが、モータ1-2の代わりにモータ1-3を備えるモータシステム100についても同様である。モータ1-2は、磁束を発生する磁束発生体である永久磁石11が配置された回転子10と、回転子10と対向して配置された固定子12とを有する。固定子12は、回転子10と対向して配置されたバックヨーク13と、バックヨーク13から回転子10に向かって突出しており、回転子10の回転方向に間隔をあけて並んで配置された複数のティース14とを有する。また、モータ1は、固定子12に巻回された第1の巻線31と、隣接するティース14の間の空間であるスロット15に設けられ磁束密度を計測する複数の磁気センサ17とを有する。制御部2は、複数の磁気センサ17の信号から回転子10の回転角度および偏心量の少なくとも一方を求める演算部21を有する。演算部21が用いる磁気センサ17の信号は、両側の第1の巻線31が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に設けられた磁気センサ17の信号である。磁気センサ17を、両側の第1の巻線31が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に設けることによって、この磁気センサ17の信号は、第1の巻線31への通電時であっても、両側の第1の巻線31のうち一方の第1の巻線31からの影響が、他方の第1の巻線31からの影響によって相殺されたものとなる。したがって、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。
【0097】
また、実施の形態2においても、磁気センサ17は、スロット15の内部であって、つまり、隣接するティース14の間であって、ティース14の先端よりも、モータ1の回転軸を中心とする半径R方向において、バックヨーク13側に配置される。これにより、磁気センサ17の信号から空間高調波成分を大幅に低減することが可能になり、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。
【0098】
また、モータ1-2は、それぞれが第1のセンサおよび第2のセンサを含む1対の磁気センサ17を3組有し、演算部21は、それぞれの組において、第1のセンサの信号と第2のセンサの信号との和または差を演算する。これによって、演算部21が出力する回転角度および偏心量からは、永久磁石11からの3の倍数の空間高調波成分の影響と、第1の巻線31への通電により発生する磁束の影響とが除去される。したがって、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。
【0099】
また、モータ1-2のスロット15の数であるスロット数は、「18」であり、この値は、12以上の6の倍数であるという条件を満たす。また、モータ1-2において、磁束発生体である永久磁石11の極対数および巻線16が発生する極対数は「8」であり、この値は、スロット数「18」の3分の1倍の値である「6」よりも大きく、スロット数「18」の3分の2倍の値である「12」よりも小さいという条件を満たす。このような条件を満たすようなスロット数および極対数とすることによって、両側の第1の巻線31が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に磁気センサ17を配置することが可能になる。したがって、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。
【0100】
また、実施の形態2によれば、モータ1-2は、固定子12に巻回された第2の巻線32をさらに有する。第2の巻線32が発生する極対数「7」は、磁束発生体である永久磁石11の極対数「8」よりも1大きいか、または、永久磁石11の極対数「8」よりも1小さいという条件を満たす。また、第2の巻線32が発生する極対数「7」は、スロット数「18」の3分の1倍の値である「6」よりも大きく、スロット数「18」の3分の2倍の値である「12」よりも小さいという条件を満たす。このような条件を満たすようなスロット数および極対数とすることによって、両側の第2の巻線32が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に磁気センサ17を配置することが可能になる。したがって、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。
【0101】
実施の形態3.
図11は、実施の形態3にかかるモータ1-4の断面構成を示す図である。モータ1-4は、実施の形態2にかかるモータ1-2と同様に、第1の巻線31および第2の巻線32の2種類の巻線を有する。モータ1-2では、磁気センサ17が配置されたスロット15の両側のティース14に巻回された第1の巻線31および第2の巻線32の両方が、同一の相であって通電の向きが互いに逆であるという特徴を有していた。これに対してモータ1-4では、磁気センサ17が配置されたスロット15の両側のティース14に巻回された第1の巻線31は、同一の相であって通電の向きが互いに逆であるという特徴を有し、磁気センサ17が配置されたスロット15の両側のティース14に巻回された第2の巻線32は、異なる相となっている。なお、磁気センサ17の信号は、実施の形態1と同様に、制御部2の演算部21に出力される。以下、具体的に説明する。
【0102】
モータ1-4は、回転子10と、回転子10に配置された永久磁石11と、バックヨーク13およびティース14を有する固定子12と、隣接するティース14間の空間であるスロット15に配置された磁気センサ17とを有する。ティース14には、第1の巻線31および第2の巻線32が巻回されている。第1の巻線31および第2の巻線32は、重畳して巻回されており、ここでは、第1の巻線31は、第2の巻線32の外側に巻回されている。また、回転子10は、10極の永久磁石11を有する。固定子12のスロット15の数は12である。
【0103】
第1の巻線31は、10極の磁界を発生するように、12個のティース14に巻回されている。第2の巻線32は、8極の磁界を発生するように、12個のティース14に巻回されている。第1の巻線31は、
図11の紙面3時の方向から反時計回りに順番に、第1の巻線31U、第1の巻線31U(バー)、第1の巻線31V(バー)、第1の巻線31V、第1の巻線31W、第1の巻線31W(バー)、第1の巻線31U(バー)、第1の巻線31U、第1の巻線31V、第1の巻線31V(バー)、第1の巻線31W(バー)、第1の巻線31Wである。第2の巻線32は、
図11の紙面3時の方向から反時計回りに順番に、第2の巻線32U、第2の巻線32V、第2の巻線32W、第2の巻線32U、第2の巻線32V、第2の巻線32W、第2の巻線32U、第2の巻線32V、第2の巻線32Wである。
【0104】
第2の巻線32が発生する極対数は4であり、永久磁石11の極対数は5である。このとき、第2の巻線32が発生する極対数は、永久磁石11の極対数よりも1大きいかまたは1小さいという条件を満たす。
【0105】
モータ1-4は、6つの磁気センサ17-1~17-6を有している。磁気センサ17-1は、第1の巻線31Uと第1の巻線31U(バー)との間に配置されている。磁気センサ17-2は、第1の巻線31Vと第1の巻線31V(バー)との間に配置されている。磁気センサ17-3は、第1の巻線31Wと第1の巻線31W(バー)との間に配置されている。磁気センサ17-4は、第1の巻線31Uと第1の巻線31U(バー)との間に配置されている。磁気センサ17-5は、第1の巻線31Vと第1の巻線31V(バー)との間に配置されている。磁気センサ17-6は、第1の巻線31Wと第1の巻線31W(バー)との間に配置されている。
【0106】
また、磁気センサ17-1は、第2の巻線32Uと第2の巻線32Vとの間に配置されている。磁気センサ17-2は、第2の巻線32Wと第2の巻線32Uとの間に配置されている。磁気センサ17-3は、第2の巻線32Vと第2の巻線32Wとの間に配置されている。磁気センサ17-4は、第2の巻線32Uと第2の巻線32Vとの間に配置されている。磁気センサ17-5は、第2の巻線32Wと第2の巻線32Uとの間に配置されている。磁気センサ17-6は、第2の巻線32Vと第2の巻線32Wとの間に配置されている。
【0107】
ここで、磁気センサ17の両側に位置する第1の巻線31は、同一の相であって通電の向きが互いに逆であるという条件を満たすが、磁気センサ17の両側に位置する第2の巻線32は、異なる相となっている。このため、磁気センサ17の信号には、単体でみると、第2の巻線32の通電による影響を受ける。そこで、制御部2の演算部21は、磁気センサ17を2個で一対として扱い、一対の磁気センサ17の2つの信号の差を演算することによって、第2の巻線32の影響を相殺する。ここで、磁気センサ17の両側に位置する第2の巻線32の相の組み合わせが同じである2つの磁気センサ17を一対の磁気センサ17として扱うこととする。
【0108】
例えば、磁気センサ17-1および磁気センサ17-4は、共に第2の巻線32Uと第2の巻線32Vとの間に配置されている。ここで、第2の巻線32が磁気センサ17-1に与える影響を、係数をk、U相電流をiu、V相電流をivとすると、kiu+kivと表される。また、同様に、第2の巻線32が磁気センサ17-4に与える影響も、kiu+kivと表される。したがって、磁気センサ17-1と磁気センサ17-4とを一対として扱い、磁気センサ17-1の信号と磁気センサ17-4の信号との差を演算すれば、互いの第2の巻線32の影響が相殺され、回転子10の永久磁石11の磁束成分だけを抽出することができる。
【0109】
同様に、磁気センサ17-2および磁気センサ17-5は、共に、第2の巻線32Wと第2の巻線32Uとの間に配置されている。また、磁気センサ17-3および磁気センサ17-6は、共に、第2の巻線32Vと第2の巻線32Wとの間に配置されている。このため、磁気センサ17-2および磁気センサ17-5を2個で一対として扱い、磁気センサ17-3および磁気センサ17-6を2個で一対として扱うことで、第2の巻線32の影響を相殺することができる。
【0110】
図12は、実施の形態3の変形例にかかるモータ1-5の断面構成を示す図である。モータ1-5の構成は、モータ1-4と比較して、第1の巻線31および第2の巻線32をティース14に巻回する方法が異なる以外はモータ1-4と同様である。モータ1-5の第1の巻線31は、モータ1-5の回転軸を中心とする半径R方向において、第2の巻線32の内側に巻回されている。このように第1の巻線31および第2の巻線32を巻回した場合であっても、磁気センサ17を2個で一対として扱うことで、モータ1-4と同様の効果を奏することができる。
【0111】
以上説明したように、実施の形態3によれば、
図1のモータ1の代わりにモータ1-4を備えるモータシステム100が提供される。以下、モータ1-4を備えるモータシステム100について説明するが、モータ1-4の代わりにモータ1-5を備えるモータシステム100についても同様である。モータ1-4は、磁束を発生する磁束発生体である永久磁石11が配置された回転子10と、回転子10と対向して配置された固定子12とを有する。固定子12は、回転子10と対向して配置されたバックヨーク13と、バックヨーク13から回転子10に向かって突出しており、回転子10の回転方向に間隔をあけて並んで配置された複数のティース14とを有する。また、モータ1は、固定子12に巻回された第1の巻線31と、隣接するティース14の間の空間であるスロット15に設けられ磁束密度を計測する複数の磁気センサ17とを有する。制御部2は、複数の磁気センサ17の信号から回転子10の回転角度および偏心量の少なくとも一方を求める演算部21を有する。演算部21が用いる磁気センサ17の信号は、両側の第1の巻線31が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に設けられた磁気センサ17の信号である。磁気センサ17を、両側の第1の巻線31が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に設けることによって、この磁気センサ17の信号は、第1の巻線31への通電時であっても、両側の第1の巻線31のうち一方の第1の巻線31からの影響が、他方の第1の巻線31からの影響によって相殺されたものとなる。したがって、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。
【0112】
また、実施の形態3においても、磁気センサ17は、スロット15の内部であって、つまり、隣接するティース14の間であって、ティース14の先端よりも、モータ1の回転軸を中心とする半径R方向において、バックヨーク13側に配置される。これにより、磁気センサ17の信号から空間高調波成分を大幅に低減することが可能になり、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。
【0113】
また、モータ1-4は、それぞれが第1のセンサおよび第2のセンサを含む1対の磁気センサ17を3組有し、演算部21は、それぞれの組において、第1のセンサの信号と第2のセンサの信号との和または差を演算する。これによって、演算部21が出力する回転角度および偏心量からは、永久磁石11からの3の倍数の空間高調波成分の影響と、第1の巻線31への通電により発生する磁束の影響とが除去される。したがって、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。
【0114】
また、モータ1-4のスロット15の数であるスロット数は、「12」であり、この値は、12以上の6の倍数であるという条件を満たす。また、モータ1-4において、磁束発生体である永久磁石11の極対数および巻線16が発生する極対数は「5」であり、この値は、スロット数「12」の3分の1倍の値である「4」よりも大きく、スロット数「12」の3分の2倍の値である「8」よりも小さいという条件を満たす。このような条件を満たすようなスロット数および極対数とすることによって、両側の第1の巻線31が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に磁気センサ17を配置することが可能になる。したがって、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。
【0115】
また、実施の形態3によれば、モータ1-4は、ティース14に巻回された第2の巻線32をさらに有する。第2の巻線32が発生する極対数「4」は、磁束発生体である永久磁石11の極対数「5」よりも1大きいか、または、永久磁石11の極対数「5」よりも1小さいという条件を満たす。また、磁気センサ17が設けられたスロット15の両側の第2の巻線32の相は互いに異なる。演算部21は、モータ1-4が有する複数の磁気センサ17のうちの1つである第1のセンサの信号と、第1のセンサが設けられたスロット15の両側の第2の巻線32の相の組み合わせと同じ組み合わせの相の第2の巻線32の間に配置された第2のセンサの信号との和または差を演算することによって、磁気センサ17の信号から第2の巻線32からの磁束の影響を相殺することができる。したがって、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。
【0116】
実施の形態4.
図13は、実施の形態4にかかる制御部2-1の構成を示す図である。制御部2-1は、演算部21と、補正部22と、記憶部23とを有する。なお、ここでは、制御部2-1には、モータ1に配置された磁気センサ17の信号が入力されることとしたが、制御部2-1に入力される信号は、モータ1-1~1-5のいずれか1つに配置された磁気センサ17の信号であってもよい。
【0117】
補正部22は、磁気センサ17の両側に位置する巻線16への通電量の変化による磁気センサ17の信号への影響を補正する機能を有する。
【0118】
記憶部23は、通電量に対応した磁気センサ17の信号の変化量を記憶している。この変化量は、巻線16への通電量を変化させたときに実際に検知された磁気センサ17の信号から算出される。
【0119】
図14は、巻線16への通電量と磁気センサ17の信号との関係の一例を示す図である。
図14の横軸は、巻線16に流れる電流i
nである。電流i
nのnは、磁気センサ17の両側に配置された巻線16の相であるU、V、W相のいずれかであってもよいし、三相の電流のうち複数を四則演算した後の値であってもよい。
図14の縦軸は、磁気センサ17の信号S
nである。信号S
nのnは、センサ番号であってもよいし、複数の磁気センサ17の信号を四則演算した後の値であってもよい。縦軸の切片は、回転子10が寄与している項を意味する。この値は、回転子10が回転すると変化する。
【0120】
理想的には、磁気センサ17の両側に位置する巻線16への通電量が変化しても、磁気センサ17の両側の巻線16の影響は、一方の巻線16からの影響と他方の巻線16からの影響とが相殺し合って、磁気センサ17の信号は、電流i
nの値によらず一定である。しかしながら、実際には、磁気センサ17の両側に位置する巻線16の巻き膨らみの違いによる非対称性や、磁気センサ17の配置ずれなどに起因して、電流i
nの影響が相殺されずにわずかに残る。このため、
図14に示すように、通電量によって磁気センサ17の信号が変化することがある。この関係は、上述の通り、巻線16の非対称性や磁気センサ17の配置ずれなどに起因するため、モータ1の個体ごとに異なる。両側に位置する巻線16が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロット15に磁気センサ17を配置することによって、巻線16への通電が磁気センサ17に与える影響を大幅に低減することができるが、上記のような、巻線16の非対称性や磁気センサ17の配置ずれなどに起因する通電の影響がわずかに残る。補正部22は、巻線16の非対称性や磁気センサ17の配置ずれなどに起因する通電の影響を、後処理によって補正する。
【0121】
図15は、
図13に示す補正部22の説明図である。補正部22は、磁気センサ17の信号S
nを補正して、補正後の信号S
n’を出力する。例えば、
図14に示すような電流i
nと磁気センサ17の信号S
nとの関係から、電流i
nと信号S
nとの間に線形性が成り立つとした場合、S
n=S
n’+k
ni
nの関係が成り立つ。ここで、S
n’は、磁気センサ17の出力する信号S
nのうち回転子10が寄与している項であり、
図14においては、切片が相当する。k
ni
nは、固定子12の電流i
nが寄与する項である。
図14において、係数k
nは、傾きが相当する。係数k
nは、例えば、上述のR
n+L
nであってもよい。理想的には、係数k
n=0である。
【0122】
図14に示したような実測の結果から、例えば、最小二乗法を用いることで、補正部22は、係数k
nを求めることができる。また、2つの条件で実測した結果(S
n1,i
n1)および(S
n2,i
n2)のみから、単に、(S
n1-S
n2)/(i
n1-i
n2)を演算することによっても、係数k
nを求めることができる。
【0123】
補正部22は、係数knを求めることができると、「Sn’=Sn-knin」を演算することによって、磁気センサ17の信号を補正することができる。したがって、補正部22は、記憶部23に記憶された、通電量と磁気センサ17の信号の変化量との関係を示す情報に基づいて、磁気センサ17の信号Snから、補正後の信号Sn’を算出して、演算部21に出力することができる。
【0124】
なお、上記では、
図14に示したように、電流i
nと磁気センサ17の信号S
nとの関係が一次関数で表されることとして説明したが、一次関数に限らず、二次関数などを使用してもよい。また、補正部22を省略しても実施の形態1と同様の効果を奏することはできるため、補正部22を省略してもよい。
【0125】
以上説明したように、実施の形態4にかかる制御部2-1は、巻線16の通電量を変化させたときに取得された磁気センサ17の信号から求められた、通電量と磁気センサ17の信号の変化量との関係を記憶する記憶部23と、記憶部23に記憶された通電量と磁気センサ17の信号の変化量との関係に基づいて、磁気センサ17の信号を補正する補正部22と、を有する。ここで、通電量と磁気センサ17の信号の変化量との関係を示す情報は、例えば、係数knであってもよいし、各通電量に対応する磁気センサ17の信号の変化量であってもよい。このような構成を有することによって、巻線16への通電量の変化によって、磁気センサ17の信号が変化してしまう場合であっても、磁気センサ17の信号を補正することによって、回転角度および偏心量の少なくとも一方である検知対象の情報の検知誤差を低減することが可能になる。
【0126】
なお、
図1に示す制御部2および
図13に示す制御部2-1のそれぞれは、処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いた制御回路であってもよい。制御部2,2-1を実現するための専用のハードウェアは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものである。
【0127】
上記の処理回路が、CPUを用いた制御回路で実現される場合、制御回路は、プロセッサと、メモリとを備えることができる。プロセッサは、CPUであり、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)などとも呼ばれる。メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disk)などである。
【0128】
上記の処理回路が制御回路により実現される場合、プロセッサがメモリに記憶された、各構成要素の処理に対応するプログラムを読み出して実行することにより実現される。また、メモリは、プロセッサが実行する各処理における一時メモリとしても使用される。
【0129】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0130】
例えば、上記の実施の形態では、巻線16、第1の巻線31、および第2の巻線32は、ティース14に巻回されることとしたが、固定子12に巻回されればよく、例えば、バックヨーク13に巻回されてもよい。バックヨーク13に巻回される場合であっても、巻線16、第1の巻線31、および第2の巻線32は、スロット15の両側に位置するように、例えば、ティース14が並ぶ周方向において、各ティース14の両側に巻回される。
【符号の説明】
【0131】
1,1-1~1-5 モータ、2,2-1 制御部、10 回転子、11 永久磁石、12 固定子、13 バックヨーク、14 ティース、15 スロット、16 巻線、17,17-1~17-6 磁気センサ、18U,19 磁束、21 演算部、22 補正部、23 記憶部、31 第1の巻線、32 第2の巻線、100 モータシステム。
【要約】
モータ(1)と、モータを制御する制御部と、を備えるモータシステムにおいて、モータは、磁束を発生する磁束発生体が配置された回転子(10)と、回転子と対向して配置されたバックヨーク(13)と、バックヨークから回転子に向かって突出しており、回転子の回転方向に間隔をあけて並んで配置された複数のティース(14)とを有する固定子(12)と、固定子に巻回された巻線(16)と、隣接するティースの間の空間であるスロット(15)に設けられ磁束密度を計測する複数の磁気センサ(17-1~17-6)と、を有し、制御部は、複数の磁気センサの信号に基づいて回転子の回転角度および偏心量の少なくとも一方を求める演算部を有し、演算部が用いる磁気センサの信号は、両側の巻線が同一の相であって通電の向きが互いに逆であるようなスロットに設けられた磁気センサの信号である。