(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】ロータ製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20231010BHJP
H02K 1/276 20220101ALI20231010BHJP
H02K 1/278 20220101ALI20231010BHJP
【FI】
H02K15/02 K
H02K1/276
H02K15/02 A
H02K1/278
(21)【出願番号】P 2020156315
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 新也
(72)【発明者】
【氏名】小森 健祐
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-336927(JP,A)
【文献】特開2009-219314(JP,A)
【文献】特開2012-147602(JP,A)
【文献】特開2005-151734(JP,A)
【文献】特開2017-038459(JP,A)
【文献】特開2010-110167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/17
1/27-1/2798
15/00-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着磁磁石が挿入されていない第1ロータコアに対して、第2ロータコアの第2磁石孔に挿入されている着磁磁石を、着磁した状態のままに前記第1ロータコアの第1磁石孔に挿入させるためのロータ製造方法であって、
前記第2磁石孔を前記第1磁石孔と重ねるように、前記第2ロータコアを前記第1ロータコアの積厚方向の第1端面に載置する載置工程と、
非磁性治具を用いて、
前記着磁磁石を前記第2磁石孔から前記第1磁石孔に向けて押し出す押出工程と、を含
み、
前記非磁性治具は、非磁性ガイドレールを有し、
前記押出工程が行われる前に、前記第2磁石孔にある前記着磁磁石は、前記第2磁石孔の第2壁部に吸着されて、前記第2壁部と接触しており、
前記押出工程は、
前記第2壁部と非接触になった前記着磁磁石を、前記非磁性ガイドレールに沿って前記第1磁石孔に向けて押し出すこと、
を含む、
ロータ製造方法。
【請求項2】
前記押出工程は、
前記第2磁石孔にある前記着磁磁石と前記第2壁部とを非接触にするように、前記第2壁部と、前記第2壁部と接触している前記着磁磁石との間に、前記非磁性ガイドレールを挿入して設置すること、
を含む、
請求項1に記載のロータ製造方法。
【請求項3】
前記非磁性ガイドレールを挿入して設置することは、
前記非磁性ガイドレールの挿入側の先端が、前記第2磁石孔を通過して、前記第1磁石孔の前記第1端面の開口部又は前記第1磁石孔の内部に至るように、前記非磁性ガイドレールを前記第2磁石孔に、又は前記第2磁石孔及び前記第1磁石孔に挿入することを含む、
請求項2に記載のロータ製造方法。
【請求項4】
前記第1ロータコアは、前記第2ロータコアが前記第1ロータコアに載置された載置状態において、少なくとも、前記第2ロータコアの前記第2磁石孔が形成された位置に対応する位置に形成された前記第1磁石孔を有し、
前記第1磁石孔の平面視形状は、前記第2磁石孔の平面視形状及と同じ、又は前記第2磁石孔の平面視形状よりも大きく、
前記載置工程は、
前記第2磁石孔を、前記第2磁石孔に対応する前記第1磁石孔と重ねるように、1つ以上の前記第2ロータコアを前記第1ロータコアの前記第1端面に載置することを含む、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のロータ製造方法。
【請求項5】
前記載置工程において、複数の前記第2ロータコアが前記第1ロータコアに載置されるとき、
前記載置工程は、複数の前記第2ロータコアのそれぞれの前記第2磁石孔を重ねるように、複数の前記第2ロータコアを積み上げることで、積厚方向に延在する第2磁石孔セットを有する第2ロータコアセットを構成することを含み、
前記押出工程は、前記非磁性治具が有する非磁性ガイドレールの挿入側の先端が、前記第2磁石孔セットを通過して、前記第1磁石孔の前記第1端面の開口部又は前記第1磁石孔の内部に至るように、前記非磁性ガイドレールを第2磁石孔セットに挿入して設置することを含む、
請求項4に記載のロータ製造方法。
【請求項6】
前記第1ロータコアの第1積厚に応じて、複数の前記着磁磁石の挿入が必要となるとき、
前記押出工程は、前記第2ロータコアセットのうち必要となる各々の前記第2ロータコアの前記第2磁石孔にある前記着磁磁石を、前記非磁性ガイドレールに沿って前記第1ロータコアの前記第1磁石孔に押し出すことを含む
請求項5に記載のロータ製造方法。
【請求項7】
前記第2磁石孔の数は、前記第1磁石孔の数よりも少ないとき、
前記載置工程は、
前記第2ロータコアセットの前記第2磁石孔セットを、前記第2磁石孔セットに対応する前記第1磁石孔の一部と重ねるように、前記第2ロータコアセットを前記第1ロータコアの積厚方向の前記第1端面に載置する第1載置工程と、
前記第2ロータコアセットの前記第2磁石孔セットを、前記第1磁石孔の他の一部と重ねるように、前記第2ロータコアセットを前記第1ロータコアの積厚方向の前記第1端面に載置する第2載置工程と、を含み、
前記押出工程は、
前記第2磁石孔セットにある着磁磁石の一部を、前記非磁性ガイドレールに沿って、前記第1磁石孔の一部に押し出す第1押出工程と、
前記第2磁石孔セットにある着磁磁石の他の一部を、前記非磁性ガイドレールに沿って、前記第1磁石孔の他の一部に押し出す第2押出工程と、含み
前記第1載置工程、前記第2載置工程、前記第1押出工程及び前記第2押出工程は、前記第1載置工程、前記第1押出工程、前記第2載置工程、及び前記第2押出工程の順番で行われる、
請求項5又は6に記載のロータ製造方法。
【請求項8】
前記押出工程によって、前記第1ロータコアの前記第1磁石孔に必要な着磁磁石が挿入された後に、
着磁磁石が挿入されていない他の第1ロータコアを、磁石挿入が終了した前記第1ロータコアと交換する第1ロータコア交換工程をさらに含み、
前記第1ロータコア交換工程は、前記他の第1ロータコアの第1磁石孔を前記第2ロータコアの前記第2磁石孔と重ねるように、前記他の第1ロータコアを前記第2ロータコアの第2端面に設置することを含み、
前記第1ロータコア交換工程が行われた後に、前記押出工程が再びに行われる、
請求項2乃至7の何れか一項に記載のロータ製造方法。
【請求項9】
前記第1ロータコア交換工程は、
前記他の第1ロータコアが前記第2ロータコアに設置される前に、磁石挿入が終了した前記第1ロータコアと干渉しないように、前記非磁性ガイドレールを積厚方向に移動させて、前記第1ロータコアを取り出すことと、
前記他の第1ロータコアが前記第2ロータコアに設置された後に、前記非磁性ガイドレールを、積厚方向に移動させて前記他の第1ロータコアの前記第1磁石孔に挿入させることと、を含む請求項8に記載のロータ製造方法。
【請求項10】
前記押出工程によって、前記第2ロータコアの前記第2磁石孔にある前記着磁磁石が押し出されて、前記第2磁石孔が空となった後に、
着磁磁石が挿入されている他の第2ロータコアを、前記第2磁石孔が空となった使用済の第2ロータコアと交換する第2ロータコア交換工程をさらに含み、
前記第2ロータコア交換工程は、前記他の第2ロータコアの第2磁石孔を前記第1ロータコアの前記第1磁石孔と重ねるように、前記他の第2ロータコアを前記第1ロータコアの第1端面側に設置することを含み、
前記第2ロータコア交換工程が行われた後に、前記押出工程が再び行われる、
請求項2乃至9の何れか一項に記載のロータ製造方法。
【請求項11】
前記第2ロータコア交換工程は、
前記他の第2ロータコアが前記第1ロータコアに設置される前に、使用済の前記第2ロータコアと干渉しないように、前記非磁性ガイドレールを積厚方向に移動させて、使用済の前記第2ロータコアを取り出すことと、
前記他の第2ロータコアが前記第1ロータコアに設置された後に、前記非磁性ガイドレールを、積厚方向に移動させて、前記他の第2ロータコアの前記第2磁石孔に挿入された着磁磁石と、前記第2磁石孔の第2壁部と非接触するように、前記第2磁石孔に挿入させることと、を含む請求項10に記載のロータ製造方法。
【請求項12】
前記第2磁石孔にある前記着磁磁石は、積厚方向に複数の磁石ブロックに分かれており、
前記押出工程は、前記第1ロータコアの第1積厚に応じて、1つ以上の前記第2ロータコアの各々の前記第2磁石孔にある、複数の前記磁石ブロックの一部又は全部を前記第1磁石孔に押し出すことを含む、
請求項4乃至11の何れか一項に記載のロータ製造方法。
【請求項13】
前記第1ロータコアの前記第1積厚が、前記第2ロータコアの第2積厚と同じ、又は前記第2積厚よりも小さいとき、
前記押出工程は、前記第1積厚に応じて、1つの前記第2ロータコアの前記第2磁石孔にある複数の前記磁石ブロックの全部又は一部を前記第1磁石孔に押し出すことを含む、
請求項12に記載のロータ製造方法。
【請求項14】
前記第1ロータコアの前記第1積厚が、前記第2ロータコアの第2積厚よりも大きいとき、
前記押出工程は、前記第1積厚に応じて、複数の前記第2ロータコアの各々の前記第2ロータコアの前記第2磁石孔にある複数の前記磁石ブロックの全部又は一部を前記第1磁石孔に押し出すことを含む、
請求項12に記載のロータ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータコアの磁石孔に挿入された永久磁石を回収する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、可動子または固定子に形成された貫通孔の内部に固定された永久磁石を取り出す永久磁石の製造方法であって、可動子または固定子を加熱する工程と、貫通孔の内部から、強磁性体を含む材料で形成された永久磁石ホルダへ永久磁石を移動させる工程と、永久磁石ホルダに磁気吸着力によって保持された永久磁石を加熱することにより永久磁石を減磁する工程と、を備えた永久磁石の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような特許文献1に開示された磁石回収方法によれば、ロータコアに使用された永久磁石を回収した上で、永久磁石の再利用を果たすことができる。しかしながら、このような磁石回収方法によって回収された永久磁石はすでに脱磁状態になっている。このため、脱磁した永久磁石を他のロータコアに再利用するとき、永久磁石を再び着磁させる必要がある。よって、永久磁石の再利用に係る製造工程が煩雑になってしまう。その結果、効率よく永久磁石を再利用して、新しいロータを製造することができなくなる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みて発明されたものであり、本発明の目的は、ロータコアの磁石孔に、他のロータコアの磁石孔に挿入されている着磁磁石を着磁した状態のままに挿入させることで、着磁磁石の再利用を可能にするとともに、再利用時に着磁磁石を再び着磁させる必要がなく、製造工程の簡易化及び効率化を実現できるロータ製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るロータ製造方法は、着磁磁石が挿入されていない第1ロータコアに対して、第2ロータコアの第2磁石孔に挿入されている着磁磁石を、着磁した状態のままに第1ロータコアの第1磁石孔に挿入させるためのロータ製造方法であって、第2磁石孔を第1磁石孔と重ねるように、第2ロータコアを第1ロータコアの積厚方向の第1端面に載置する載置工程と、非磁性治具を用いて、着磁磁石を第2磁石孔から第1磁石孔に向けて押し出す押出工程と、を含む。なお、積厚とは、各ロータコアの軸方向の厚みを意味し、積厚方向とは、各ロータコアの厚み方向を意味する。
【0008】
上記態様のロータ製造方法は、着磁磁石が挿入されていない第1ロータコアに対して、非磁性治具を用いて、第1ロータコアに重ねられた第2ロータコアの第2磁石孔に挿入されている着磁磁石を、第2磁石孔から押し出しながら、第1ロータコアの第1磁石孔に挿入させる。このようなロータ製造方法によって、簡易に、第2ロータコアに使用された着磁磁石を第1ロータコアの第1磁石孔に挿し込んで再利用することができる。よって、ロータ製造を製造する度に、新しい着磁磁石を製造する必要がなくなる。その結果、磁石作製コストを低減するとともに、磁石資源の濫用を抑制することができる。
【0009】
また、第1実施形態に係るロータ製造方法では、着磁磁石が第1ロータコアの第1磁石孔に挿入される前に、一旦第2ロータコアの第2磁石孔から外部に取り出されることがない。このため、着磁磁石が外部に取り出されることによって脱磁状態になることを抑制することができる。また、第1実施形態に係る非磁性治具は、非磁性材料によって構成されている。このため、磁性治具を採用する場合による着磁磁石の脱磁の発生を回避することができる。その結果、第2ロータコアに使用された着磁磁石が着磁した状態のままに第1ロータコアに挿入される。よって、脱磁した着磁磁石を再利用するときに係る再着磁の必要性がなくなる。その結果、ロータ製造方法の製造工程の簡易化及び効率化を実現できる。
【0010】
また、上記方法において、非磁性治具は、非磁性ガイドレールを有し、押出工程が行われる前に、第2磁石孔にある着磁磁石は、第2磁石孔の第2壁部に吸着されて、第2壁部と接触しており、押出工程は、第2磁石孔にある着磁磁石と第2壁部とを非接触にするように、第2壁部と、第2壁部と接触している着磁磁石との間に、非磁性ガイドレールを挿入して設置することと、第2壁部と非接触になった着磁磁石を、非磁性ガイドレールに沿って第1磁石孔に向けて押し出すことと、を含んでもよい。
【0011】
上記方法は、非磁性ガイドレールを採用している。このような非磁性ガイドレールによって、着磁磁石と第2磁石孔の第2壁部とは、非接触状態になる。よって、着磁磁石と第2磁石孔の第2壁部とが直接接触する直接接触状態に比べて、第2磁石孔の第2壁部が着磁磁石に与える吸着力は弱くなる。このため、着磁磁石を移動させるための力が小さくなる。また、非接触状態において、着磁磁石は、非磁性ガイドレールだけと接触している。一方、直接接触状態において、着磁磁石は、第2磁石孔の第2壁部と接触している。このため、直接接触状態に比べて、非接触状態では、着磁磁石と周囲構成との接触面積が小さくなる。よって、非接触状態においては、着磁磁石が受ける摩擦力も小さくなる。従って、非磁性ガイドレールを採用することによって、着磁磁石を第1ロータコアの第1磁石孔に向けて押し出すときに、着磁磁石が受ける抵抗力、すなわち、上述した吸着力及び摩擦力が小さくなる。その結果、直接接触状態に比べて、非磁性ガイドレールを採用することで、より容易かつスムースに着磁磁石を第1ロータコアの第1磁石孔に押し出すことができる。さらに、非磁性ガイドレールは、着磁磁石の移動方向をガイドする機能を有する。その結果、非磁性ガイドレールを採用しない場合に比べて、非磁性ガイドレールを採用することによって、容易かつ正確に着磁磁石を第1ロータコアの第1磁石孔に挿入することができ、ロータ製造方法の作業性及び効率化を向上させることができる。
【0012】
また、非磁性ガイドレールを採用する場合、着磁磁石と第2磁石孔の第2壁部とは非接触状態になっているが、着磁磁石は、第2磁石孔の第2壁部によって吸着され続ける。このため、非接触状態になっても、着磁磁石は、外力を受けない場合において、第2ロータコアの第2磁石孔から落ちることがない。よって、別途に着磁磁石の落下防止するための治具を設ける必要がない。その結果、ロータ製造方法の製造工程を簡易化することができる。
【0013】
また、上記方法において、非磁性ガイドレールを挿入して設置することは、非磁性ガイドレールの挿入側の先端が、第2磁石孔を通過して、第1磁石孔の第1端面の開口部又は第1磁石孔の内部に至るように、非磁性ガイドレールを第2磁石孔に、又は第2磁石孔及び第1磁石孔に挿入することを含んでもよい。
【0014】
上記方法によれば、容易かつ正確に着磁磁石を第1ロータコアの第1磁石孔に挿入することによって、ロータ製造方法の作業性及び効率化を向上させることができる。
【0015】
また、上記方法において、第1ロータコアは、第2ロータコアが第1ロータコアに載置された載置状態において、少なくとも、第2ロータコアの第2磁石孔が形成された位置に対応する位置に形成された第1磁石孔を有し、第1磁石孔の平面視形状は、第2磁石孔の平面視形状と同じ、又は第2磁石孔の平面視形状よりも大きく、載置工程は、第2磁石孔を、第2磁石孔に対応する第1磁石孔と重ねるように、1つ以上の第2ロータコアを第1ロータコアの第1端面に載置することを含んでもよい。
【0016】
上記方法よれば、同じ構成を有する第1ロータコア及び第2ロータコアのみならず、異なる構成を有する第1ロータコア及び第2ロータコアに係る着磁磁石の挿入を実現することができる。
【0017】
また、上記方法において、載置工程において、複数の第2ロータコアが第1ロータコアに載置されるとき、載置工程は、複数の第2ロータコアのそれぞれの第2磁石孔を重ねるように、複数の第2ロータコアを積み上げることで、積厚方向に延在する第2磁石孔セットを有する第2ロータコアセットを構成することを含み、押出工程は、非磁性ガイドレールの挿入側の先端が、第2磁石孔セットを通過して、第1磁石孔の第1端面の開口部又は第1磁石孔の内部に至るように、非磁性ガイドレールを第2磁石孔セットに挿入して設置することを含んでもよい。
【0018】
上記方法によれば、必要に応じて、自由に使用する第2ロータコアの数を調整するができる。
【0019】
また、上記方法において、第1ロータコアの第1積厚に応じて、複数の着磁磁石の挿入が必要となるとき、押出工程は、第2ロータコアセットのうち必要となる各々の第2ロータコアの第2磁石孔にある着磁磁石を、非磁性ガイドレールに沿って第1ロータコアの第1磁石孔に押し出すことを含んでもよい。
【0020】
上記方法によれば、様々な積厚を有する第1ロータコアに係る着磁磁石の挿入を適用することができる。
【0021】
また、上記方法において、第2磁石孔の数は、第1磁石孔の数よりも少ないとき、載置工程は、第2ロータコアセットの第2磁石孔セットを、第2磁石孔セットに対応する第1磁石孔の一部と重ねるように、第2ロータコアセットを第1ロータコアの積厚方向の第1端面に載置する第1載置工程と、第2ロータコアセットの第2磁石孔セットを、第1磁石孔の他の一部と重ねるように、第2ロータコアセットを第1ロータコアの積厚方向の第1端面に載置する第2載置工程と、を含み、押出工程は、第2磁石孔セットにある着磁磁石の一部を、非磁性ガイドレールに沿って、第1磁石孔の一部に押し出す第1押出工程と、第2磁石孔セットにある着磁磁石の他の一部を、非磁性ガイドレールに沿って、第1磁石孔の他の一部に押し出す第2押出工程と、含み第1載置工程、第2載置工程、第1押出工程及び第2押出工程は、第1載置工程、第1押出工程、第2載置工程、及び第2押出工程の順番で行われてもよい。
【0022】
上記方法によれば、異なる数の磁石孔を有するロータコアに係る着磁磁石の挿入を実現することができる。
【0023】
また、上記方法において、押出工程によって、第2ロータコアの第2磁石孔にある着磁磁石が押し出されて、第2磁石孔が空となった後に、着磁磁石が挿入されていない他の第1ロータコアを、磁石挿入が終了した第1ロータコアと交換する第1ロータコア交換工程をさらに含み、第1ロータコア交換工程は、他の第1ロータコアの第1磁石孔を第2ロータコアの第2磁石孔と重ねるように、他の第1ロータコアを第2ロータコアの第2端面に設置することを含み、交換工程が行われた後に、押出工程が再び行われてもよい。
【0024】
上記方法によれば、効率よく第1ロータコアに着磁磁石を挿入することができる。
【0025】
また、上記方法において、第1ロータコア交換工程は、他の第1ロータコアが第2ロータコアに設置される前に、磁石挿入が終了した第1ロータコアと干渉しないように、非磁性ガイドレールを積厚方向に移動させて、第1ロータコアを取り出すことと、他の第1ロータコアが第2ロータコアに設置された後に、非磁性ガイドレールを、積厚方向に移動させて他の第1ロータコアの第1磁石孔に挿入させることと、を含んでもよい。
【0026】
上記方法によれば、第1ロータコアの交換をスムースに行うことができる。
【0027】
また、上記方法において、押出工程によって、第2ロータコアの第2磁石孔にある着磁磁石が押し出されて、第2磁石孔が空となった後に、着磁磁石が挿入されている他の第2ロータコアを、第2磁石孔が空となった使用済の第2ロータコアと交換する第2ロータコア交換工程をさらに含み、第2ロータコア交換工程は、他の第2ロータコアの第2磁石孔を第1ロータコアの第1磁石孔と重ねるように、他の第2ロータコアを第1ロータコアの第1端面側に設置することを含み、第2ロータコア交換工程が行われた後に、押出工程が再び行われてもよい。
【0028】
上記方法によれば、効率よく第2ロータコアにある着磁磁石を利用することができる。
【0029】
また、上記方法において、第2ロータコア交換工程は、他の第2ロータコアが第1ロータコアに設置される前に、使用済の第2ロータコアと干渉しないように、非磁性ガイドレールを積厚方向に移動させて、使用済の第2ロータコアを取り出すことと、他の第2ロータコアが第1ロータコアに設置された後に、非磁性ガイドレールを、積厚方向に移動させて、他の第2ロータコアの第2磁石孔に挿入された着磁磁石と、第2磁石孔の第2壁部と非接触するように、第2磁石孔に挿入させることと、を含んでもよい。
【0030】
上記方法によれば、スムースに第2ロータコアの交換を行うことができる。
【0031】
また、上記方法において、第2磁石孔にある着磁磁石は、積厚方向に複数の磁石ブロックに分かれており、押出工程は、第1ロータコアの第1積厚に応じて、1つ以上の第2ロータコアの各々の第2磁石孔にある、複数の磁石ブロックの一部又は全部を第1磁石孔に押し出すことを含んでもよい。
【0032】
上記方法によれば、様々な積厚を有するロータコアに対応することができる。
【0033】
また、上記方法において、第1ロータコアの第1積厚が、第2ロータコアの第2積厚と同じ、又は第2積厚よりも小さいとき、押出工程は、第1積厚に応じて、1つの第2ロータコアの第2磁石孔にある複数の磁石ブロックの全部又は一部を第1磁石孔に押し出すことを含んでもよい。
【0034】
上記方法によれば、異なる積厚を有するロータコアの適用性を向上させることができる。
【0035】
また、上記方法において、第1ロータコアの第1積厚が、第2ロータコアの第2積厚よりも大きいとき、押出工程は、第1積厚に応じて、複数の第2ロータコアの各々の第2ロータコアの第2磁石孔にある複数の磁石ブロックの全部又は一部を第1磁石孔に押し出すことを含んでもよい。
【0036】
上記方法によれば、ロータコアの積厚に応じて、自由に挿入する磁石ブロックの数を調整することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、ロータコアの磁石孔に、他のロータコアの磁石孔に挿入されている着磁磁石を着磁した状態のままに挿入させることで、着磁磁石の再利用を可能にするとともに、再利用時に着磁磁石を再び着磁させる必要がなく、製造工程の簡易化及び効率化を実現できるロータ製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】第1実施形態に係るロータの構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るロータコアユニットの構成を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る磁石孔及び磁石ユニットの構成を示す部分拡大図である。
【
図4】第1実施形態に係るロータコアの構成を示す部分拡大図である。
【
図5】第1実施形態に係る着磁磁石の構成を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係るロータ製造方法のフロチャート図である。
【
図7】
図6のステップS20係るロータ製造方法を詳細に説明するための図である。
【
図8】
図6のステップS30に係るロータ製造方法を詳細に説明するための図である。
【
図9】
図6のステップS30及びステップS40に係るロータ製造方法を詳細に説明するための図である。
【
図10】第2実施形態に係るロータ製造方法のフロチャート図である。
【
図11】
図10のステップS20係るロータ製造方法を詳細に説明するための図である。
【
図12】
図10のステップS30に係るロータ製造方法を詳細に説明するための図である。
【
図13】
図10のステップS40に係るロータ製造方法を詳細に説明するための図である。
【
図14】
図10のステップS50に係るロータ製造方法を詳細に説明するための図である。
【
図15】第3実施形態に係るロータ製造方法のフロチャート図である。
【
図16】
図15のステップS20係るロータ製造方法を詳細に説明するための図である。
【
図17】
図15のステップS30に係るロータ製造方法を詳細に説明するための図である。
【
図18】
図15のステップS40に係るロータ製造方法を詳細に説明するための図である。
【
図19】
図15のステップS50に係るロータ製造方法を詳細に説明するための図である。
【
図20】第4実施形態に係るロータ製造方法のフロチャート図である。
【
図21】
図20のステップS20係るロータ製造方法を詳細に説明するための図である。
【
図22】
図20のステップS30に係るロータ製造方法を詳細に説明するための図である。
【
図23】
図20のステップS40に係るロータ製造方法を詳細に説明するための図である。
【
図24】
図20のステップS50に係るロータ製造方法を詳細に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面の記載において同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本発明の技術的範囲を当該実施の形態に限定して解するべきではない。
【0040】
[第1実施形態]
<ロータ1>
まず、
図1及び
図2を参照しつつ、第1実施形態に係るロータ1の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係るロータ1の構成を示す図である。
図2は、第1実施形態に係るロータコアユニット2の構成を示す図である。以下では、説明の便宜のために、
図1に示されたロータ1の状態を「組立状態」と呼ぶことがある。
【0041】
第1実施形態に係るロータ1は、例えば、電気自動車やハイブリッド車両の走行駆動源又は発電機として用いられる回転電機のロータ部分である。具体的には、ロータ1は、ロータ1の周囲に設けられた筒状のステータ(図示せず)とともに、回転電機を構成する。
【0042】
ロータ1は、
図1に示すように、ロータコアユニット2と、ロータコアユニット2の両端面と当接するように配置された一対のエンドプレート4と、ロータコアユニット2の中央部分に配置されたシャフト6と、ロータコアユニット2及び一対のエンドプレート4をシャフト6に固定させるための固定部材8とを備える。
【0043】
ロータコアユニット2は、
図1に示すように、ロータコア20と、ロータコア20を貫通するように配置された複数の磁石ユニット30とを有する。ロータコア20は、例えば、複数の珪素鋼板が積層されて構成された円環状の部品である。以下では、珪素鋼板が積層される方向、すなわちロータコア20の厚み方向を「積厚方向」と呼ぶ。複数の磁石ユニット30は、
図2に示すように、ロータコア20の周縁側の周方向に配置されている。なお、ロータコア20及び磁石ユニット30の詳細については、後述する。
【0044】
一対のエンドプレート4は、2つの、同じ寸法を有する円板状の部材を含む。各円板状の部材の中央部分に、シャフト6を通すための孔が形成されている。また、エンドプレート4の材料は、例えば、アルミニウムや銅等の非磁性金属材料である。組立状態において、一対のエンドプレート4は、ロータコアユニット2の両端面に溶接されている。
【0045】
シャフト6は、例えば、鋼材によって形成された丸棒である。シャフト6は、フランジ7を有する。組立状態において、シャフト6は、ロータコアユニット2及び一対のエンドプレート4を貫通するように配置されている。フランジ7は、ロータコアユニット2に溶接された1つのエンドプレート4に当接している。こうして、ロータコアユニット2及び一対のエンドプレート4がシャフト6に対する取付位置は決められる。
【0046】
固定部材8は、円板状の部材である。この円板状の部材の中央部分に、シャフト6を通すための孔が形成されている。組立状態において、固定部材8は、ロータコアユニット2に溶接された他の1つのエンドプレート4と当接するように、シャフト6に固定される。こうして、ロータコアユニット2及び一対のエンドプレート4は、固定部材8及びフランジ7によって挟まれてシャフト6に固定される。
【0047】
<ロータコア20及び磁石ユニット30の詳細>
続いて、
図1乃至
図5を参照しつつ、ロータコア20及び磁石ユニット30の構成について詳細に説明する。
図3は、第1実施形態に係る磁石孔21及び磁石ユニット30の構成を示す部分拡大図である。
図4は、第1実施形態に係るロータコア20の構成を示す部分拡大図である。
図5は、第1実施形態に係る着磁磁石31の構成を示す図である。
【0048】
(ロータコア20)
ロータコア20は、
図2及び
図4示すように、積厚方向にロータコア20を貫通するように形成された複数の孔を有する。これらの孔は、ロータコア20の周縁側の周方向に間隔をおいてそれぞれが所定姿勢で形成された複数の磁石孔21と、ロータコア20の中央部分に形成された1つのシャフト孔22とを含む。
【0049】
また、ロータコア20は、積厚方向の一方側に位置する第1端面201と、積厚方向の他方側に位置する第2端面202とを有する。なお、以下では、第1端面201又は第2端面202に向かってロータコア20を平面視することを「平面視」と略称し、平面視によって見える形状を「平面視形状」と呼ぶ。
【0050】
磁石孔21の平面視形状は、
図4に示すように、略矩形状をなしている。また、磁石孔21は、磁石孔21の中央部分に位置する中央空間210と、磁石孔21の中央空間210以外の空隙である空隙213とを有する。中央空間210及び空隙213とも、積厚方向にロータコア20を貫通している。
【0051】
中央空間210は、磁石ユニット30の磁石部材(後述する着磁磁石31)を配置するための空間である。
図4に示すように、中央空間210は、幅方向の両側に、壁部211及び壁部212を有する。
図3に示すように、壁部211及び壁部212のそれぞれは、組立状態において、着磁磁石の幅方向の両主面と接触する部分である。
【0052】
空隙213は、磁石ユニット30の固定部材(後述する樹脂部材33)を配置するための空間である。
図4に示すように、空隙213は、中央空間210を挟むように、中央空間210の両側に形成されている。
【0053】
(磁石ユニット30)
磁石ユニット30は、ロータコア20の磁石孔21を充填するように、磁石孔21に配置されている。
図3に示すように、磁石ユニット30は、着磁磁石31と、着磁磁石31の位置を固定するための樹脂部材33とを有する。
【0054】
着磁磁石31は、永久磁石の一例である。
図5に示すように、着磁磁石31の全体は、長尺状をなしている。また、着磁磁石31は、複数の磁石ブロック32を有する。これらの磁石ブロック32は、並べられて着磁磁石31を構成している。言い換えれば、組立状態において、着磁磁石31は、ロータコア20の積厚方向に複数の磁石ブロック32に分割されている。なお、着磁磁石31は、複数の磁石ブロック32に分割されず、1つの磁石であってもよい。
【0055】
また、着磁磁石31を一体として捉えると、
図5に示すように、着磁磁石31は、第1主面311、第2主面312、第1側面313及び第2側面314との4つの周壁面と、第1端面301及び第2端面302との2つ端面とを有する。
【0056】
組立状態において、第1側面313及び第2側面314は、空隙213に向かい、樹脂部材33と接触する面である。第1主面311は、磁石孔21の壁部211と接触する面であり、第2主面312は、磁石孔21の壁部212と接触する面である。また、第1端面301は、ロータコア20の第2端面202側に位置する面であり、第2端面302は、ロータコア20の第1端面201側に位置する面である。
【0057】
また、第1主面311は、着磁磁石31のS極を構成し、第2主面312は、着磁磁石31のN極を構成する。言い換えれば、着磁磁石31の内部に発生した磁束の磁束線方向は、
図3に示すように、第1主面311から第2主面312に向かうようになっている。
【0058】
樹脂部材33は、モールド材の一例である。樹脂部材33は、磁石孔21の、着磁磁石31の両側にある空隙213に充填されて、着磁磁石31の第1側面313及び第2側面314と接触する。こうして、樹脂部材33が固化すること、着磁磁石31が磁石孔21に対して完全に固定される。
【0059】
<ロータ製造方法>
続いて、
図6乃至
図9を参照しつつ、第1実施形態に係るロータ製造方法について説明する。
図6は、第1実施形態に係るロータ製造方法のフロチャート図である。
図7は、
図6のステップS20を説明する図である。
図8は、
図6のステップS30を説明する図である。
図9は、
図6のステップS30及びステップS40を説明する図である。なお、
図9は、一部の磁石孔21及び着磁磁石31の表示を省略している。また、
図7及び
図9は、見やすくするために、着磁磁石31及び非磁性ガイドレール50を実線で表示している。
【0060】
第1実施形態に係るロータ製造方法は、非磁性治具を用いて、着磁磁石31の挿入が必要である新しいロータコア20に対して、回転電機に使用されたロータ1から取り外された古いロータコアユニット2の着磁磁石31を、着磁した状態のままに新しいロータコア20に挿入させるためのロータ製造方法の一例である。以下では、区別するために、新しいロータコア20を「第1ロータコア20A」と呼び、古いロータコアユニット2及び古いロータコアユニット2のロータコア20を「第2ロータコアユニット2B」及び「第2ロータコア20B」と呼ぶ。なお、第1ロータコア20A及び第2ロータコアユニット2Bの各構成に対しても、同様のルールで呼ぶ。
【0061】
ここで、第1実施形態に係るロータ製造方法の詳細を説明する前に、まず、第1実施形態に係る第1ロータコア20A及び第2ロータコア20Bの構成と、非磁性治具の構成とについて説明する。
【0062】
(第1ロータコア20A及び第2ロータコア20B)
図7に示すように、第1ロータコア20A及び第2ロータコア20Bは、同じ構成を有する。すなわち、第1ロータコア20A及び第2ロータコア20Bのそれぞれの形状、直径、積厚、及び磁石孔の構成は同じである。特に、第1ロータコア20Aの第1磁石孔21A及び第2ロータコア20Bの第2磁石孔21Bの、平面視形状、数、形成された位置、及び積厚方向における深さは、同じである。なお、第1磁石孔21Aの平面視形状は、第2磁石孔21Bの平面視形状よりも大きく形成されてもよい。
【0063】
こうして、第1ロータコア20Aの各第1磁石孔21Aに挿入されるべき着磁磁石31の磁石ブロック32の数は、第2ロータコア20Bの各第2磁石孔21Bに挿入されている着磁磁石31の磁石ブロック32の数と同じである。
【0064】
よって、第1実施形態では、ロータ製造工程において、第2ロータコア20Bの各第2磁石孔21Bから、対応する第1ロータコア20Aの各第1磁石孔21Aに押し出す着磁磁石31の磁石ブロック32の数を調整する必要がない。言い換えれば、第2ロータコア20Bの各第2磁石孔21Bにある複数の磁石ブロック32の全てを、対応する第1ロータコア20Aの各第1磁石孔21Aに挿入することができる。
【0065】
(非磁性治具)
非磁性治具は、着磁磁石31を、着磁した状態のままに、第2ロータコア20Bの第2磁石孔21Bから第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aに移動させるための治具である。非磁性治具は、非磁性ガイドレール50と、図示されていない非磁性押出部及び非磁性調整部とを有する。
【0066】
非磁性ガイドレール50は、第2ロータコア20Bの第2磁石孔21Bにある着磁磁石31を、第2磁石孔21Bの第2壁部211Bと非接触にするための治具の一例である。また、非磁性ガイドレール50は、着磁磁石31の各磁石ブロック32の移動方向をガイドする機能を有する。
【0067】
図9に示すように、非磁性ガイドレール50は、板状部材である。非磁性ガイドレール50の材質は、例えば、SUS等の硬度が高いかつ弾性変形や塑性変形しづらい材料である。また、非磁性ガイドレール50は、例えば、積厚方向に第1ロータコア20A及び第2ロータコア20Bの両方を貫通できる長さを有する。なお、非磁性ガイドレール50は、必要に応じて他の長さを有してもよい。ただし、非磁性ガイドレール50の長さは、少なくとも第2ロータコア20Bの第2積厚と同じであることが好ましい。
【0068】
第1実施形態では、積厚方向に移動し、着磁磁石31と当接することで、着磁磁石31に第2方向に向く力を与えることができる構成として、非磁性押出部を備えている。非磁性押出部からの外力を受けると、着磁磁石31の各磁石ブロック32は、非磁性ガイドレール50に沿って、第2方向に向けて移動される。すなわち、非磁性押出部は、着磁磁石31の各磁石ブロック32を、非磁性ガイドレール50に沿って、第1磁石孔21Aに向けて押し出す構成である。
【0069】
また、第1実施形態では、磁石孔21に設置された非磁性ガイドレール50を積厚方向の第1方向又は第2方向に移動させ、非磁性ガイドレール50の第1ロータコア20A及び第2ロータコア20Bに対する位置を調整できる構成として非磁性調整部を備えている。
【0070】
(各製造工程)
以下では、ロータ製造方法の各工程について詳細に説明する。
まず、第1ロータコア20A及び第2ロータコア20Bを準備する(S10)。
【0071】
具体的には、第1磁石孔21Aに着磁磁石31が挿入されていない第1ロータコア20Aと、第2磁石孔21Bに着磁磁石31が挿入されている第2ロータコア20Bとを1つずつ準備する。
【0072】
第2ロータコア20Bの準備をより詳細に説明すると、まず、回転電機からロータ1を取り外し、そして、取り外されたロータ1から第2ロータコアユニット2Bを取り出す。次に、第2ロータコアユニット2Bに対して、溶剤を使用して、各第2磁石孔21Bに充填されている樹脂部材33を除去する。こうして、着磁磁石31が挿入されている第2ロータコア20Bの準備が完了する。
【0073】
この場合、樹脂部材33が除去されるため、第2磁石孔21Bに挿入されている着磁磁石31は、外力によって移動できる。一方、外力を受けない場合、着磁磁石31は、第2磁石孔21Bの第2壁部211B及び第2壁部212Bに吸着される。このため、着磁磁石31は、第2磁石孔21Bにおいて自由に動くことができつつ、第2磁石孔21Bから落ちることがない。
【0074】
次に、第2ロータコア20Bを第1ロータコア20Aに載置する(S20)。
【0075】
ステップS20は、載置工程の一例である。具体的には、
図7に示すように、第2ロータコア20Bの第2磁石孔21Bをそれぞれに対応する第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aと重ねるように、第2ロータコア20Bを第1ロータコア20Aの積厚方向の第1端面201Aに載置する。こうして、各第1磁石孔21Aの第1壁部211A及び第1壁部212Aは、それぞれに対応する各第2ロータコア20Bの第2壁部211B及び第2壁部212Bと繋がるようになり、同じ平面を構成する。
【0076】
以下では、重なった第1磁石孔21A及び第2磁石孔21Bを「磁石孔21」と総称することがある。同じ平面となった、第1壁部211A及び第2壁部211Bと、第1壁部212A及び第2壁部212Bとを、「壁部211」及び「壁部212」と総称することがある。
【0077】
続いて、非磁性治具を第2ロータコア20B及び第1ロータコア20Aに設置する(S30)。
【0078】
具体的には、
図8及び
図9に示すように、重ねられた第1ロータコア20A及び第2ロータコア20Bの各磁石孔21(すなわち、重ねられた各第2磁石孔21B及び各第1磁石孔21A)に対して、磁石孔21を貫通するように、4本の非磁性ガイドレール50を挿入する。
【0079】
より詳細に説明すると、
図8に示すように、各磁石孔21に対して、4本の非磁性ガイドレール50のうちの2本を、着磁磁石31の第1主面311と第2壁部211Bとの間に挿入し、他の2本を着磁磁石31の第2主面312と第2壁部212Bとの間に挿入する。また、この場合、
図9に示すように、各磁石孔21に挿入された非磁性ガイドレール50は、その挿入側の先端が第2磁石孔21Bを通過して第1磁石孔21Aの第2端面202Aの開口部に至るように、第2ロータコア20B及び第1ロータコア20Aに対して設置されている。
【0080】
こうして、
図8に示すように、設置された非磁性ガイドレール50によって、第2磁石孔21Bにある着磁磁石31は、第2磁石孔21Bの第2壁部211B及び第2壁部212Bと非接触な状態になっている。このような非接触状態では、直接接触状態に比べて、着磁磁石31の第1主面311から第2壁部211Bまでの距離と、着磁磁石31の第2主面312から第2壁部212Bまでの距離とが、大きくなる。このため、直接接触状態に比べて、第2壁部211B及び第2壁部212Bによる着磁磁石31への吸着力は、弱くなっている。
【0081】
一方、非接触状態において、第2壁部211B及び第2壁部212Bは、弱くなった吸着力によって、着磁磁石31を吸着し続けている。このため、非接触状態においても、外力を受けなければ、着磁磁石31は、第2磁石孔21Bから第1磁石孔21Aに落ちることがない。
【0082】
また、この場合、非磁性押出部及び非磁性調整部は、例えば、第2ロータコア20Bの第1端面201B側に配置されている。
【0083】
次に、非磁性治具を用いて、着磁磁石31を第2磁石孔21Bから第1磁石孔21Aに向けて押し出す(S40)。
【0084】
ステップS40は、押出工程の一例である。具体的には、非磁性押出部は、着磁磁石31の第1端面301と当接するように移動し、積厚方向の第2方向に向く外力を着磁磁石31に加える。よって、着磁磁石31の各磁石ブロック32は、着磁磁石31からの外力の作用によって、非磁性ガイドレール50に沿って移動する。そして、
図9に示すように、着磁磁石31の複数の磁石ブロック32は、順次に第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aに挿入される。
【0085】
第2ロータコア20Bの各第2磁石孔21Bに挿入されていた着磁磁石31、すなわち全ての磁石ブロック32が、対応する第1ロータコア20Aの各第1磁石孔21Aに挿入された後に、非磁性調整部は、非磁性ガイドレール50を、第1ロータコア20Aと干渉しないように、積厚方向の第1方向に向けて移動させる。
【0086】
よって、着磁磁石31の各磁石ブロック32は、第1ロータコア20Aの第1壁部211A及び第1壁部212Aと接触するようになる。その結果、着磁磁石31の各磁石ブロック32は、第1壁部211A及び第1壁部212Aによって吸着されて、第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aに固定される。
【0087】
その後、着磁磁石31が挿入された第1ロータコア20Aを非磁性治具から取り出せば、第1ロータコア20Aに係る磁石挿入が終了する。
【0088】
<ロータ製造方法の効果>
このように、第1実施形態に係るロータ製造方法は、着磁磁石31が挿入されていない第1ロータコア20Aに対して、非磁性治具を用いて、第1ロータコア20Aに重ねられた第2ロータコア20Bの第2磁石孔21Bに挿入されている着磁磁石31を、第2磁石孔21Bから押し出しながら、第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aに挿入させる。このようなロータ製造方法によれば、簡易に、古いロータコア20に使用された着磁磁石31を他のロータコア20の磁石孔21に挿し込んで再利用することができる。よって、ロータを製造する度に、新しい着磁磁石を製造する必要がなくなる。その結果、磁石作製コストを低減するとともに、磁石資源の濫用を抑制することができる。
【0089】
また、第1実施形態に係るロータ製造方法では、着磁磁石31が第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aに挿入される前に、一旦第2ロータコア20Bの第2磁石孔21Bから外部に取り出されることがない。このため、着磁磁石31が外部に取り出されることによって脱磁の発生を抑制することができる。また、第1実施形態に係る非磁性治具は、非磁性材料によって構成されている。このため、磁性治具を採用する場合による着磁磁石31の脱磁の発生を回避することができる。その結果、古いロータコア20に使用された着磁磁石31が着磁した状態のままに他のロータコア20に挿入される。よって、脱磁した着磁磁石31を再利用するときに係る再着磁の必要性がなくなる。その結果、ロータ製造方法の製造工程の簡易化及び効率化を実現できる。
【0090】
また、第1実施形態に係る非磁性治具は、非磁性ガイドレール50を採用している。このような非磁性ガイドレール50によって、着磁磁石31と磁石孔21の壁部211及び壁部212とは、非接触状態になる。よって、着磁磁石31と磁石孔21の壁部211及び壁部212とが直接接触する直接接触状態に比べて、磁石孔21の壁部211及び壁部212が着磁磁石31に与える吸着力が弱くなる。このため、着磁磁石31を移動させるための力が小さくなる。また、非接触状態において、着磁磁石31は、非磁性ガイドレール50だけと接触している。一方、直接接触状態において、着磁磁石31は、磁石孔21の壁部211及び壁部212と接触している。このため、直接接触状態に比べて、非接触状態では、着磁磁石31と周囲構成との接触面積が小さくなる。よって、着磁磁石31が受ける摩擦力も小さくなる。従って、非磁性ガイドレール50を採用することによって、着磁磁石31を第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aに向けて押し出すときに、着磁磁石31が受ける抵抗力、すなわち、上述した吸着力及び摩擦力が小さくなる。その結果、直接接触状態に比べて、非磁性ガイドレール50を採用することで、より容易かつスムースに着磁磁石31を第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aに押し出すことができる。
【0091】
さらに、非磁性ガイドレール50は、着磁磁石31の移動方向をガイドする機能を有する。その結果、非磁性ガイドレール50を採用しない場合に比べて、非磁性ガイドレール50を採用することによって、容易かつ正確に着磁磁石31を第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aに挿入することができ、ロータ製造方法の作業性及び効率化を向上させることができる。
【0092】
なお、非磁性ガイドレール50を採用する場合、着磁磁石31と磁石孔21の壁部211及び壁部212とは非接触状態になっているが、着磁磁石31は、磁石孔21の壁部211及び壁部212によって吸着され続ける。このため、非接触状態になっても、着磁磁石31は、外力を受けない場合において、第2ロータコア20Bの第2磁石孔21Bから落ちることがない。よって、別途に着磁磁石31の落下防止するための治具を設ける必要がない。その結果、ロータ製造方法の製造工程を簡易化することができる。なお、1実施形態に係る着磁磁石31が長手方向に複数の磁石ブロック32に分割されている。よって、必要に応じて、自由に第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aに挿入する磁石ブロック32の数を調整することができる。
【0093】
以上のとおり、第1実施形態に係るロータ製造方法は、第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aに、第2ロータコア20Bの第2磁石孔21Bに挿入されている着磁磁石31を着磁した状態のままに挿入させることで、着磁磁石31の再利用を可能にするとともに、再利用時に着磁磁石31を再び着磁させる必要がなく、製造工程の簡易化及び効率化を実現している。
【0094】
[第2実施形態]
続いて、
図10乃至
図14を参照しつつ、第2実施形態に係るロータ製造方法について説明する。
図10は、第2実施形態に係るロータ製造方法のフロチャート図である。
図11は、
図10のステップS20を説明する図である。
図12は、
図10のステップS30を説明する図である。
図13は、
図10のステップS40を説明する図である。
図14は、
図10のステップS50を説明する図である。なお、
図11乃至
図14は、一部の磁石孔21及び着磁磁石31の表示を省略している。また、
図11乃至
図14は、見やすくするために、着磁磁石31及び非磁性ガイドレール50を実線で表示している。
【0095】
以下の説明では、第2実施形態の第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点に係る内容を説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については言及しない。このことは、以下の第3実施形態及び第4実施形態に係る説明でも同様とする。
【0096】
(第1ロータコア20A及び第2ロータコア20B)
図11に示すように、第2実施形態に係る第2ロータコア20Bの第2積厚は、第1実施形態に係る第2ロータコア20Bの第2積厚の2倍である。第2実施形態に係る第2ロータコア20Bの第2積厚以外の構成は、第1実施形態に係る第2ロータコア20Bと同じである。一方、第2実施形態に係る第1ロータコア20Aの構成は、第1実施形態に係る第1ロータコア20Aと同じである。
【0097】
こうして、第2実施形態では、第2ロータコア20Bの第2積厚は、第1ロータコア20Aの第1積厚の2倍である。このため、第2ロータコア20Bの各第2磁石孔21Bに挿入されている着磁磁石31の磁石ブロック32の数は、第1ロータコア20Aの各第1磁石孔21Aに必要な磁石ブロック32の数の2倍である。
【0098】
(ロータ製造方法)
図10乃至
図12に示すように、第2実施形態に係るロータ製造方法のステップS10乃至ステップS30は、第1実施形態に係るロータ製造方法のステップS10乃至ステップS30と同じであるため、それらのステップの説明を省略する。以下では、第2実施形態に係るロータ製造方法のステップS40乃至ステップS60について説明する。
【0099】
ステップS10乃至ステップS30が行われた後に、非磁性治具を用いて、着磁磁石31の一部を第2磁石孔21Bから第1磁石孔21Aに向けて押し出す(S40)。
【0100】
具体的には、
図12に示すように、非磁性押出部は、着磁磁石31を構成する複数の磁石ブロック32のうちの半分を、非磁性ガイドレール50に沿って第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aに挿入する。なお、着磁磁石31の磁石ブロック32に係る挿入方法は、第1実施形態に係るステップS40と同じであるため、説明を省略する。
【0101】
次に、新しい第1ロータコア20Aを、磁石挿入が終了した第1ロータコア20Aと交換する(S50)。
【0102】
ステップS50は、第1ロータコア交換工程の一例である。具体的には、
図13に示すように、非磁性調整部は、非磁性ガイドレール50を、第1ロータコア20Aと干渉しないように、積厚方向の第1方向に移動させる。そして、磁石挿入が終了した第1ロータコア20Aを非磁性治具から取り出すことができる。
【0103】
磁石挿入が終了した第1ロータコア20Aを取り出した後に、磁石ブロック32が挿入されていない、新しい第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aを、第2ロータコア20Bの第2磁石孔21Bと重なるように、新しい第1ロータコア20Aを第2ロータコア20Bの第2端面202B側に配置する。
【0104】
そして、新しい第1ロータコア20Aが交換された後に、
図14に示すように、非磁性調整部は、非磁性ガイドレール50を、その挿入側の先端が第1磁石孔21Aの第2端面202Aの開口部に至るように、第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aに挿入して設置する。
【0105】
続いて、非磁性治具を用いて、着磁磁石31の他の一部を第2磁石孔21Bから第1磁石孔21Aに向けて押し出す(S60)。
【0106】
具体的には、
図14に示すように、非磁性押出部は、着磁磁石31を構成する複数の磁石ブロック32のうちの残り半分を、非磁性ガイドレール50に沿って、交換された第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aに挿入する。なお、着磁磁石31の磁石ブロック32に係る挿入方法は、第1実施形態に係るステップS40と同じであるため、説明を省略する。
【0107】
そして、第2ロータコア20Bの各第2磁石孔21Bにある残り半分の磁石ブロック32が、対応する第1ロータコア20Aの各第1磁石孔21Aに挿入された後に、非磁性調整部は、非磁性ガイドレール50を、第1ロータコア20Aと干渉しないように、積厚方向の第1方向に移動させる。
【0108】
その後、必要な磁石ブロック32が挿入された第1ロータコア20Aを非磁性治具から取り出せば、第1ロータコア20Aに係る磁石挿入が終了する。
【0109】
(ロータ製造方法の効果)
このような第2実施形態に係るロータ製造方法は、第1実施形態と同様の効果を実現できるとともに、異なる積厚を有する第1ロータコア20A及び第2ロータコア20Bに対応することができる。すなわち、第2実施形態に係るロータ製造方法は、様々な積厚を有するロータコアの磁石挿入に係る製造に使用することが可能である。その結果、第2実施形態に係るロータ製造方法の適用できる範囲を広げることができる。
【0110】
また、1つの第2ロータコア20Bに対して、新しい第1ロータコア20Aを、磁石挿入が終了した第1ロータコア20Aと交換することによって、第2ロータコア20Bにある着磁磁石31の再利用をより効率よく行うことができる。これによって、第2実施形態に係るロータ製造方法の製造効率の向上を実現できる。
【0111】
なお、第1ロータコア20Aを交換しても、着磁磁石31は着磁済みの状態で第2ロータコア20Bに保持されている。このため、第1ロータコア20Aの交換による着磁磁石31の脱磁が発生することがない。また、この場合、非磁性治具の非磁性ガイドレール50は、第2ロータコア20Bに設置されたままの状態である。このため、非磁性ガイドレール50によって、新しい第1ロータコア20Aの第2ロータコア20Bに対する位置決め等は容易に行うことができる。
【0112】
[第3実施形態]
続いて、
図15乃至
図19を参照しつつ、第3実施形態に係るロータ製造方法について説明する。
図15は、第3実施形態に係るロータ製造方法のフロチャート図である。
図16は、
図15のステップS20を説明する図である。
図17は、
図15のステップS30を説明する図である。
図18は、
図15のステップS40を説明する図である。
図19は、
図15のステップS50を説明する図である。なお、
図16乃至
図19は、一部の磁石孔21の表示を省略している。また、
図16乃至
図19は、見やすくするために、着磁磁石31及び非磁性ガイドレール50を実線で表示している。
【0113】
(第1ロータコア20A及び第2ロータコア20B)
図16に示すように、第3実施形態に係る第2ロータコア20Bの第2積厚は、第1実施形態に係る第2ロータコア20Bの第2積厚の1/2である。第3実施形態に係る第1ロータコア20Aの第1積厚は、第3実施形態に係る第2ロータコア20Bの第2積厚の3倍である。このため、第2ロータコア20Bの各第2磁石孔21Bに挿入されている着磁磁石31の磁石ブロック32の数は、第1ロータコア20Aの各第1磁石孔21Aに挿入されることが必要な磁石ブロック32の数の1/3である。
【0114】
(ロータ製造方法)
まず、第1ロータコア20A及び第2ロータコアセット20Sを準備する(S10)。
【0115】
第2ロータコアセット20Sに係る準備は、
図16に示すように、3つの第2ロータコア20Bを、それぞれの第2磁石孔21Bを重ねるように、積厚方向に積み上げて第2ロータコアセット20Sを構成する。一方、第1ロータコア20Aに係る準備は第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0116】
以下では、説明の便宜のために、3つの第2ロータコア20Bの各重なった第2磁石孔21Bを「第2磁石孔セット21S」と呼び、各第2磁石孔セット21Sに挿入されている3つの着磁磁石31を「着磁磁石セット31S」と呼ぶことがある。
【0117】
次に、第2ロータコアセット20Sを第1ロータコア20Aに載置する(S20)。
【0118】
具体的には、
図16に示すように、第2ロータコアセット20Sの第2磁石孔セット21Sをそれぞれに対応する第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aと重ねるように、第2ロータコアセット20Sを第1ロータコア20Aの積厚方向の第1端面201Aに載置する。
【0119】
続いて、非磁性治具を第2ロータコアセット20S及び第1ロータコア20Aに設置する(S30)。
【0120】
ステップS30に係る非磁性ガイドレール50の挿入方法は、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0121】
次に、非磁性治具を用いて、第2磁石孔セット21Sにある着磁磁石セット31Sの一部を第1磁石孔21Aに向けて押し出す(S40)。
【0122】
具体的には、非磁性押出部は、着磁磁石セット31Sの一部を、非磁性ガイドレール50に沿って第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aに挿入する。また、
図17に示すように、第2ロータコアセット20Sのうちの第1方向側の2つの第2磁石孔21Bが空になった後に、非磁性押出部による着磁磁石セット31Sへの作用を一旦停止させる。
【0123】
続いて、新しい第2ロータコア20Bを、使用済の第2ロータコア20Bと交換する(S50)。
【0124】
ステップS50は、第2ロータコア交換工程の一例である。具体的には、
図18に示すように、非磁性調整部は、4本の非磁性ガイドレール50を、第1方向側に位置する2つの第2ロータコア20Bと干渉しないように、積厚方向の第2方向に移動させる。そして、第1方向側に位置する2つの第2ロータコア20Bを非磁性治具から取り出すことができる。
【0125】
2つの第2ロータコア20Bを取り出した後に、着磁磁石31が挿入されている、2つの新しい第2ロータコア20Bのそれぞれの第2磁石孔21Bを、第1ロータコア20Aに載置されている第2ロータコア20Bの第2磁石孔21Bと重なるように、第1ロータコア20Aに載置されている第2ロータコア20Bの第1端面201B側に載置する。こうして、新しい第2ロータコアセット20Sが構成される。
【0126】
2つの新しい第2ロータコア20Bが交換された後に、
図19に示すように、非磁性調整部は、非磁性ガイドレール50を、その第1方向側の先端が第2磁石孔セット21Sの第1端面201Bの開口部に至るように、第1方向側に位置する2つの第2ロータコア20Bの第2磁石孔21Bに挿入して設置する。具体的には、各第2磁石孔21Bに対して、4本の非磁性ガイドレール50のうちの2本を、着磁磁石31の第1主面311と第2壁部211Bとの間に挿入し、他の2本を着磁磁石31の第2主面312と第2壁部212Bとの間に挿入する。
【0127】
次に、非磁性治具を用いて、着磁磁石セット31Sの他の一部を第1磁石孔21Aに向けて押し出す(S60)。
【0128】
そして、第2ロータコア20Bの各第2磁石孔21Bにある残り半分の磁石ブロック32が、対応する第1ロータコア20Aの各第1磁石孔21Aに挿入された後に、非磁性調整部は、非磁性ガイドレール50を、第1ロータコア20Aと干渉しないように、積厚方向の第1方向に移動させる。
【0129】
その後、必要な磁石ブロック32が挿入された第1ロータコア20Aを非磁性治具から取り出せば、第1ロータコア20Aに係る磁石挿入が終了する。
【0130】
(ロータ製造方法の効果)
このような第3実施形態に係るロータ製造方法によれば、第1実施形態と同様の効果を実現できるとともに、異なる積厚を有する第1ロータコア20A及び第2ロータコア20Bに対応することができる。すなわち、第3実施形態に係るロータ製造方法は、様々な積厚を有するロータコアの磁石挿入に係る製造に使用することが可能である。その結果、第3実施形態に係るロータ製造方法の適用できる範囲を広げることができる。
【0131】
また、1つの第1ロータコア10Aに係る磁石挿入に対して、新しい第2ロータコア20Bを、使用済の第2ロータコア20Bと交換することによって、第1ロータコア10Aへの挿入に必要となる磁石ブロックの数に応じて、使用する第2ロータコア20Bの数を自由に調整することができる。これによって、第3実施形態に係るロータ製造方法の適用性を向上させることができる。
【0132】
なお、第2ロータコア20Bを交換する場合、非磁性治具の非磁性ガイドレール50は、交換していない第2ロータコア20B及び第1ロータコア20Aに設置されたままの状態である。このため、非磁性ガイドレール50によって、新しい第2ロータコア20Bの、交換していない第2ロータコア20B及び第1ロータコア20Aに対する位置決め等は容易に行うことができる。
【0133】
[第4実施形態]
続いて、
図20乃至
図24を参照しつつ、第4実施形態に係るロータ製造方法について説明する。
図20は、第4実施形態に係るロータ製造方法のフロチャート図である。
図21は、
図20のステップS20を説明する図である。
図22は、
図20のステップS30を説明する図である。
図23は、
図20のステップS40を説明する図である。
図24は、
図20のステップS50を説明する図である。なお、
図21乃至
図24は、一部の磁石孔21の表示を省略している。また、
図21乃至
図24は、見やすくするために、着磁磁石31及び非磁性ガイドレール50を実線で表示している。
【0134】
(第1ロータコア20A及び第2ロータコア20B)
図21に示すように、第4実施形態に係る各第2ロータコア20Bの第2磁石孔21Bの数は、第1実施形態に係る第2ロータコア20Bの第2磁石孔21Bの数の1/2である。一方、第4実施形態に係る第1ロータコア20Aの構成は、第1実施形態に係る第1ロータコア20Aと同じである。また、第4実施形態に係る各第2ロータコア20Bの第2積厚は、第4実施形態に係る第1ロータコア20Aの第1積厚と同じである。
【0135】
(ロータ製造方法)
まず、第1ロータコア20A及び第2ロータコアセット20Sを準備する(S10)。
【0136】
第4実施形態に係る第2ロータコアセット20Sに係る準備は、第3実施形態のステップS10と同じであるため、説明を省略する。
【0137】
次に、第2ロータコアセット20Sの第2磁石孔セット21Sを第1磁石孔21Aの一部と重ねるように、第2ロータコアセット20Sを第1ロータコア20Aに載置する(S20)。
【0138】
ステップS20は、第1載置工程の一例である。ここで、第2ロータコアセット20Sの第2磁石孔セット21Sの数は、第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aの数の1/2である。このため、
図21に示すように、まず、第2ロータコアセット20Sの第2磁石孔セット21Sを、それぞれに対応する第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aのうちの半分と重ねるように、第2ロータコアセット20Sを第1ロータコア20Aの第1端面201Aに載置する。
【0139】
続いて、非磁性治具を第2ロータコアセット20S及び第1ロータコア20Aに設置する(S30)。
【0140】
第4実施形態に係るステップS30の設置方法は、第3実施形態のステップS30と同じであるため、説明を省略する。
【0141】
次に、非磁性治具を用いて、第2磁石孔セット21Sにある着磁磁石セット31Sの一部を第1磁石孔21Aに向けて押し出す(S40)。
【0142】
ステップS40は、第1押出工程の一例である。第4実施形態に係るステップS40の押し出す方法は、第3実施形態のステップS40と同じであるため、説明を省略する。
【0143】
続いて、第2ロータコアセット20Sの第2磁石孔セット21Sを第1磁石孔21Aの他の一部と重ねるように、第2ロータコアセット20Sを第1ロータコア20Aに載置する(S50)。
【0144】
ステップS50は、第2載置工程の一例である。具体的には、
図23に示すように、まず、非磁性調整部は、非磁性ガイドレール50を、第1ロータコア20Aと干渉しないように、積厚方向の第1方向に移動させる。そして、第2ロータコアセット20Sは、第1ロータコア20Aに対して移動や回転させることができる。こうして、
図23に示すように、第2ロータコアセット20Sの第2磁石孔セット21Sを第1磁石孔21Aのうちの残り半分と重ねるように、第2ロータコアセット20Sを回転させて、第1ロータコア20Aの第1端面201Aに設置する。
【0145】
そして、第2ロータコアセット20Sを設置した後に、
図24に示すように、非磁性調整部は、非磁性ガイドレール50を、その挿入側の先端が第1磁石孔21Aの第2端面202Aの開口部に至るように、第1ロータコア20Aの第1磁石孔21Aに挿入して設置する。
【0146】
次に、非磁性治具を用いて、第2磁石孔セット21Sにある着磁磁石セット31Sの他の一部を第1磁石孔21Aに向けて押し出す(S60)。
【0147】
ステップS60は、第2押出工程の一例である。具体的には、
図24に示すように、第2磁石孔セット21Sに残った着磁磁石セット31Sを、非磁性ガイドレール50に沿って第1磁石孔21Aに向けて押し出す。なお、第4実施形態に係るステップS40の押し出す方法は、第3実施形態のステップS40と同じであるため、説明を省略する。
【0148】
そして、第2ロータコア20Bの各第2磁石孔21Bに挿入されていた残り半分の磁石ブロック32が、対応する第1ロータコア20Aの各第1磁石孔21Aに挿入された後に、非磁性調整部は、4本の非磁性ガイドレール50を、第1ロータコア20Aと干渉しないように、積厚方向の第1方向に移動させる。
【0149】
その後、必要な磁石ブロック32が挿入された第1ロータコア20Aを非磁性治具から取り出せば、第1ロータコア20Aに係る磁石挿入が終了する。
【0150】
(ロータ製造方法の効果)
このような第4実施形態に係るロータ製造方法によれば、第1実施形態と同様の効果を実現できるとともに、異なる数の磁石孔を有する第1ロータコア20A及び第2ロータコア20Bに対応することができる。その結果、第4実施形態に係るロータ製造方法の適用できる範囲を広げることができる。
【0151】
また、1つの第1ロータコア20Aに対して、同一の第2ロータコアセット20Sを数回に亘って第1ロータコア20Aの全ての第1磁石孔21Aに磁石ブロックを挿入することを実現できる。よって、第2ロータコアセット20Sにある着磁磁石31の再利用を効率よく行うことができる。その結果、第4実施形態に係るロータ製造方法の製造効率の向上を実現できる。
【0152】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0153】
1…ロータ、2…ロータコアユニット、2B…第2ロータコアユニット、4…エンドプレート、6…シャフト、8…固定部材、20…ロータコア、20A…第1ロータコア、20B…第2ロータコア、21…磁石孔、21A…第1磁石孔、21B…第2磁石孔、22…シャフト孔、30…磁石ユニット、31…着磁磁石、32…磁石ブロック、33…樹脂部材、50…非磁性ガイドレール