(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】ベンゾトリアゾール系共重合体およびこれを用いた紫外線吸収剤
(51)【国際特許分類】
C08F 220/36 20060101AFI20231010BHJP
A61K 8/84 20060101ALI20231010BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20231010BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20231010BHJP
C08F 4/00 20060101ALI20231010BHJP
C08F 293/00 20060101ALI20231010BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
C08F220/36
A61K8/84
A61Q17/04
C08F220/28
C08F4/00
C08F293/00
C08F290/06
(21)【出願番号】P 2019206250
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-11-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30度北陸地区高分子若手研究会(呉羽ハイツ)平成30年11月16日発表 第67回高分子学会北陸支部研究発表会講演要旨集67巻 第22頁 平成30年11月17日発行 第67回高分子学会北陸支部研究発表会(富山大学五福キャンパス) 平成30年11月17日発表
(73)【特許権者】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(73)【特許権者】
【識別番号】301000675
【氏名又は名称】シプロ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126549
【氏名又は名称】中川 信治
(72)【発明者】
【氏名】阪口 壽一
(72)【発明者】
【氏名】北村 真也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 保
(72)【発明者】
【氏名】上坂 敏之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 彰次郎
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-034998(JP,A)
【文献】特開2018-177976(JP,A)
【文献】特開2012-025811(JP,A)
【文献】特開2014-037352(JP,A)
【文献】特表2008-510718(JP,A)
【文献】特開2009-299034(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131258(WO,A1)
【文献】特開平02-063463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
A61K 8/84
A61Q17/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール誘導体化合物と、下記の一般式(2)を構成単位として含むポリエチレングリコール誘導体化合物を共重合してなることを特徴とするベンゾトリアゾール系共重合体。
【化1】
一般式(1)
[式中、R
1は水素原子、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基、トリル基、ホルミル基、アルキル炭素数1~7のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、またはトルオイル基を表し、R
2は炭素数1~8のアルキレン基を表し、R
3は水素原子、またはメチル基を表す]
【化2】
一般式(2)
[式中、nは2以上の整数を表す]
【請求項2】
上記一般式(1)におけるR
1が炭素数2~8のアルキル基であり、R
2がエチレン基である、ベンゾトリアゾール誘導体化合物と、上記の一般式(2)を構成単位として含むポリエチレングリコール誘導体化合物を重合してなることを特徴とする請求項1記載のベンゾトリアゾール系共重合体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のベンゾトリアゾール系共重合体を含有する紫外線吸収剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンゾトリアゾール系共重合体に関し、さらに、これを含有する紫外線吸収剤に関する。さらに詳しくは、紫外領域全体を吸収し、親水性の化粧基材や有機材料に対して高い溶解性を示しながら水溶液は弱酸性~中性であり、さらに加水分解を起こさない紫外線吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光に含まれる紫外線は、UV-A領域(320~400nm)、UV-B領域(290~320nm)、UV-C領域(~290nm)に分けられるが、UV-A領域(320~400nm)およびUV-B領域(290~320nm)の紫外線は、皮膚へ様々な影響を及ぼす。UV-A領域は皮膚の黒化や、血管や皮膚組織への影響があるとされ、UV-B領域は紅斑や水疱の形成、メラニン形成亢進、色素沈着を引き起こすことが知られている。このような光による皮膚への悪影響を防ぐため、従来より各種の紫外線吸収剤が化粧品等に添加されており、例えば、安息香酸系、ケイ皮酸系、ベンゾフェノン系、ジベンゾイルメタン系、サリチル酸系等の化合物が使用されている。
【0003】
また、有機材料は太陽光の紫外線の作用によって劣化し、分解や変色などの現象を引き起こすことがよく知られている。このような光による劣化を防ぐため、従来より各種の紫外線吸収剤が有機材料に添加されており、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、サリシレート系、トリアジン系等の化合物が使用されている。
【0004】
しかし、これら紫外線吸収剤は一般的に疎水性であることから、親水性の化粧品や有機材料への使用は困難であった。親水性の化粧品に紫外線吸収剤の配合が望まれているほか、親水性の有機材料を用いる、水性インク、水性塗料、消臭剤、芳香剤、ヘアケア製品、ボディーケア製品等に紫外線吸収剤の使用が望まれている。
【0005】
現在使用されている親水性の紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物にスルホ基を導入した、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸水和物(商品名「SEESORB(登録商標)101S」,シプロ化成株式会社製)がある。親水性置換基であるスルホ基を導入することで、ベンゾフェノン系化合物に親水性を持たせることができるが、スルホ基の影響で水溶液のpHは強酸性であり、使用できる用途は限定される。特許文献1および特許文献2では、ケイ皮酸系化合物に糖鎖を導入して親水性を付与しているが、ケイ皮酸系化合物は主にUV-B領域を吸収するため、紫外線領域全体を吸収するには、他の紫外線吸収剤との併用が必要である。特許文献3では、ベンゾトリアゾール系化合物に親水性を付与できるポリエチレングリコール誘導体化合物をエステル結合により導入することで、親水性の紫外線吸収剤を実現しているが、本発明者が実際に合成して水溶液で保管したところ、徐々にエステル結合が加水分解して分解物が析出することが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-263596号
【文献】特開平9-268194号
【文献】特開2014―37352号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況下、本発明における課題は、紫外領域全体を吸収し、親水性の化粧基材や有機材料に対して高い溶解性を示しながら水溶液は強酸性ではなく、さらに加水分解を起こさない新規化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、下記の一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール誘導体化合物と、下記の一般式(2)を構成単位として含むポリエチレングリコール誘導体化合物を共重合したベンゾトリアゾール系共重合体を、紫外線吸収剤として用いることを上記課題の主要な解決手段とする。
【化1】
一般式(1)
[式中、R
1は水素原子、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基、トリル基、ホルミル基、アルキル炭素数1~7のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、またはトルオイル基を表し、R
2は炭素数1~8のアルキレン基を表し、R
3は水素原子、またはメチル基を表す]
【化2】
一般式(2)
[式中、nは2以上の整数を表す]
【発明の効果】
【0009】
本発明のベンゾトリアゾール系共重合体は、紫外領域全体を吸収し、親水性の化粧基材や有機材料に対して高い溶解性を示しながら水溶液は弱酸性~中性であり、さらに加水分解を起こさないことから、従来技術の課題を解決し得る紫外線吸収剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】共重合体(a)の紫外~可視吸収スペクトルである。
【
図2】共重合体(b)の紫外~可視吸収スペクトルである。
【
図3】共重合体(c)の紫外~可視吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明につき詳細に説明する。本発明は紫外線吸収剤として、下記の一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール誘導体化合物と、下記の一般式(2)を構成単位として含むポリエチレングリコール誘導体化合物を共重合したベンゾトリアゾール系共重合体を用いたものである。以下に一般式(1)、および一般式(2)を構成単位として含むポリエチレングリコール誘導体において表される化合物について説明する。
【化1】
一般式(1)
【0012】
一般式(1)中、R1は水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基等の炭素数1~8の直鎖または分岐のアルキル基;フェニル基;トリル基;ホルミル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、オクタノイル基、2-エチルヘキサノイル基等のアルキル炭素数1~7の直鎖又は分岐のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基;トルオイル基が挙げられ、R2はメチレン基、エチレン基、トリエチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数1~8の直鎖または分岐のアルキレン基が挙げられ、R3は水素原子;メチル基が挙げられる。
【0013】
上記一般式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体化合物は、好ましくはR1が炭素数2~8のアルキル基であり、R2がエチレン基で表される化合物である。
【0014】
ベンゾトリアゾール誘導体化合物上記一般式(1)としては、例えば、次に示すものを挙げることができる。2-[2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルメタクリレート、2-[2-(4-エトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルメタクリレート、2-[2-(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルメタクリレート、2-[2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルメタクリレート、2-[2-(4-ベンゾイルオキシ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルメタクリレート、4-[2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]ブチルメタクリレート、4-[2-(4-エトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]ブチルメタクリレート、4-[2-(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]ブチルメタクリレート、4-[2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]ブチルメタクリレート、4-[2-(4-ベンゾイルオキシ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]ブチルメタクリレート、2-[2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルアクリレート、2-[2-(4-エトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルアクリレート、2-[2-(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルアクリレート、2-[2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルアクリレート、2-[2-(4-ベンゾイルオキシ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルアクリレート等。
【0015】
ここに例示する化合物の中で、特に2-[2-(4-エトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルメタクリレート、2-[2-(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルメタクリレート、2-[2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルメタクリレート、2-[2-(4-エトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルアクリレート、2-[2-(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルアクリレート、2-[2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルアクリレートが好ましく用いられる。
【0016】
ベンゾトリアゾール誘導体化合物一般式(1)を合成する方法に特に限定はなく、従来公知の反応原理を広く用いることができ、たとえば、下記(化3~化6)に示した反応式を経て合成することができる。ただし、Xはハロゲン原子を表す。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0017】
【化2】
一般式(2)
[式中、nは2以上の整数を表す]
【0018】
一般式(2)を構成単位とするポリエチレングリコール誘導体化合物としては、具体的には、ポリエチレングリコール、モノメトキシポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、オクトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールメタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、4,4’―アゾビス(4-シアノペンタン酸)ポリエチレングリコールポリマー、4,4’―アゾビス(4-メチルペンタン酸)ポリエチレングリコールポリマーなどが挙げられる。
【0019】
一般式(1)と、一般式(2)を構成単位として含むポリエチレングリコール誘導体化合物の共重合体を得る際の重合方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の重合方法、例えば、ラジカル重合、イオン重合による連鎖重合反応を用いた溶液重合法、塊状(バルク)重合法、懸濁(パール)重合法、リビング重合法、光重合法等を採用することができる。
【0020】
溶液重合法を採用して共重合体を得る場合において用いることができる溶媒としては、具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、その他の高沸点の芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶媒等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら溶媒は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。また、溶媒の使用量は、特に限定されるものではない。
【0021】
懸濁(パール)重合法を採用して共重合体を得る場合において用いることができる分散剤としては、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、 ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩、スチレンとマレイン酸共重合体の塩、α-メチルスチレンとアクリル酸共重合体の塩、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリルアミド、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、デンプン、トラガント、ペクチン、グルー、アルギン酸またはその塩等の高分子界面活性剤;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリオキシアルキレン系分散剤;ポリオキシエチレン-アルキルエーテル、ポリオキシエチレン-アルキルフェノール、ポリオキシエチレン-多価アルコールエステル、多価アルコールと脂肪酸とのエステル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロック縮合物等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。また、これら分散剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。また、分散剤の使用量は、特に限定されるものではない。
【0022】
また、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法を採用して共重合体を得る際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、具体的には、例えば、 2,2'-アゾビス-(2-メチルブチロニトリル) 、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’ -アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t- ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の油溶性のラジカル重合開始剤;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、t-ブチルパーオキサイド、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]・二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]・二硫酸・二水和物、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)・二塩酸塩 、2,2-アゾビス〔N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}・二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-エチルプロパン)・二塩酸塩、2、2-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2-アゾビス(N-ヒドロキシエチルイソブチルアミド)、4,4-アゾビス(4-シアノペンタン酸)等の水溶性のラジカル重合開始剤;過硫酸塩類や有機過酸化物類の重合開始剤にナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、過酸化水素、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸、およびその塩、第一銅塩、第一鉄塩などの還元剤を重合開始剤に組み合わせて用いるレドックス系開始剤;ベンゾフェノン、N,N′-テトラアルキル-4,4′-ジアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1、4,4′-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-メトキシ-4′-ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、アルキルアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体、9-フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(o-ベンゾイルオキシム)]等のオキシムエステル類、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン等のクマリン系化合物、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物等の光(主として紫外線)開裂型ラジカル重合開始剤;有機リチウム、ナトリウム化合物、グリニヤール試薬、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムアルコキシド、アルコール/トリブチルホスフィン、アミン類等のアニオン重合開始剤が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、これら重合開始剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。また、重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではない。
【0023】
また、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法を採用して共重合体を得る際に、重合開始剤の機能を持つポリエチレングリコール誘導体化合物を用いることができる。具体的な例として、4,4’―アゾビス(4-シアノペンタン酸)ポリエチレングリコールポリマー、4,4’―アゾビス(4-メチルペンタン酸)ポリエチレングリコールポリマー等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、これら重合開始剤の機能を持つポリエチレングリコール誘導体化合物は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。また、その使用量は、特に限定されるものではない。
【0024】
反応温度は、特に限定されるものではないが、室温~200℃の範囲が好ましく、50℃~150℃の範囲がより好ましい。尚、反応時間は、反応温度、或いは、用いる原材料の種類等に応じて、重合反応が完結するように、適宜設定すればよい。
【0025】
光重合法を採用して共重合体を得る場合において用いる光重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射によって光重合開始作用を示す公知の光重合開始剤のいずれもが使用できる。例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどを挙げることができ、また、ベンゾフェノンおよび/または2-イソプロピルチオキサントンと重合促進剤の2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエートおよび/またはエチル-4-ジメチルアミノベンゾエートといった組み合わせも使用できる。本発明で、これらの光重合開始剤を単独で用いてもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明のベンゾトリアゾール系共重合体を添加可能な親水性化粧基剤は特に限定されるわけではないが、例えば、グリセリン、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、プロパンジオール1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、キシリット、キシリトール、ラノリン、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、エタノール、精製水などが挙げられる。
【0027】
本発明のベンゾトリアゾール系共重合体を添加可能な親水性有機材料は特に限定されるわけではないが、例えば、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、メタノールなどの有機溶剤、ポリメタクリル酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の親水性高分子などが挙げられる。
【0028】
本発明のベンゾトリアゾール系共重合体を親水性化粧基剤や親水性有機材料に添加する場合、紫外線吸収剤としては本発明のベンゾトリアゾール系共重合体のみ、あるいは他の紫外線吸収剤と組み合わせて使用できる。本発明のベンゾトリアゾール系共重合体以外の紫外線吸収剤としては、一般に市場で入手できるもので紫外領域を吸収できるものであれば特に限定されない。例えば、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、サリシレート誘導体、シアノアクリレート誘導体、トリアジン誘導体、ケイ皮酸誘導体等が用いられる。これらの紫外線吸収剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0029】
本発明のベンゾトリアゾール系共重合体は、親水性化粧基剤や親水性有機材料に溶解して使用することができる。親水性化粧基剤や親水性有機材料に対する溶解割合は特に制限されないが、0.01~20重量%の範囲で使用されることが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下に本発明で実施したベンゾトリアゾール系共重合体の合成法及び特性を示す。ただし本発明の共重合体を得る合成方法は実施例の様態に限定されるものではない。
【0031】
(中間体合成例1)
[前駆体;2-[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]-5-オクチルオキシフェノールの合成]
【化7】
【0032】
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、常法にて合成した4-(5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)ベンゼン-1,3-ジオールを176.0g(0.684モル)、メチルイソブチルケトン350ml、1-クロロオクタン142.0g(0.955モル)、炭酸ナトリウム62.0g(0.585モル)、ヨウ化カリウム5.2gを入れて、120~130℃で12時間還流脱水した。水200mlを加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、温水200mlで洗浄した。メチルイソブチルケトン350mlを減圧で回収し、イソプロピルアルコール450mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール200mlで洗浄し、乾燥して、2-(5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-オクチルオキシフェノールを216.9g得た。
【0033】
10Lの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-(5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-オクチルオキシフェノールを216.9g(0.587モル)、47%臭化水素酸125.8g(0.731モル)、スルホラン1800mlを入れて100~105℃で48時間撹拌した。トルエン800ml、水3500mlを加えて、静置して下層の水層を分離して除去し、温水1300mlで2回洗浄し、トルエン800mlを減圧で回収した。イソプロピルアルコール800ml、水200mlを加えて、5℃まで冷却し、析出する結晶をろ過し、イソプロピルアルコール水溶液(80% V/V)200mlで洗浄し、乾燥して、2-(5-ヒドロキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-オクチルオキシフェノールを126.6g得た。
【0034】
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-(5-ヒドロキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-オクチルオキシフェノールを126.6g(0.356モル)、メチルイソブチルケトン450ml、2-クロロエタノール35.8g(0.445モル)、炭酸ナトリウム23.5g(0.222モル)、ヨウ化カリウム17.8gを入れて、113~118℃で10時間還流脱水した。250mlの水を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、温水150mlで洗浄した。メチルイソブチルケトン450mlを減圧で回収後にイソプロピルアルコール500mlを加えて10℃まで冷却し、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール50mlで洗浄し、乾燥して、2-[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]-5-オクチルオキシフェノールを95.3g得た。収率35%(4-(5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)ベンゼン-1,3-ジオールから)であった。
【0035】
(中間体合成例2)
[化合物(a);2-[2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルメタクリレートの合成]
【化8】
化合物(a)
【0036】
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]-5-オクチルオキシフェノールを95.3g(0.239モル)、トルエン550ml、メタクリル酸50.6g(0.588モル)、メタンスルホン酸29.8g(0.310モル)を入れて、110~115℃で4時間還流脱水した。水200ml、炭酸ナトリウム32.8g(0.309モル)を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、活性炭1.8gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、そのろ液からトルエン550mlを減圧で回収した後にイソプロピルアルコール750mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール100mlで洗浄した後、減圧下40℃で乾燥し、白色結晶を88.1g得た。全量をイソプロピルアルコールで再結晶して、減圧下40℃で乾燥し、化合物(a)を77.8g得た。収率70%(2-[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]-5-オクチルオキシフェノールから)であった。融点は92℃。
【0037】
また、HPLC分析により、化合物(a)の純度を測定した。
<測定条件>
装置:L-2130((株)日立ハイテクノロジーズ製)
使用カラム:SUMIPAX ODS A-212 6×150mm 5μm
カラム温度:40℃
移動相: メタノール/水=99/1
流速:1.0ml/min
<測定結果>
HPLC面百純度:99.9%
なお、以下の化合物(b)も化合物(a)と同様の測定条件でHPLC分析を行った。
【0038】
また、化合物(a)の紫外~可視吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長λmaxは350nmであり、この時の吸光度εは30900であった。スペクトルの測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:UV-2450((株)島津製作所製)
測定波長:250~ 450nm
溶媒:クロロホルム
濃度:10ppm
セル:1cm石英
なお、以下の化合物(b)、(c)、(d)も化合物(a)と同様の測定条件で紫外~可視吸収スペクトルの測定を行った。
【0039】
また、化合物(a)のNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:JEOL AL-300
共振周波数:300MHz(1H-NMR)
溶媒:クロロホルム-d
1H-NMRの内部標準物質として、テトラメチルシランを用い、ケミカルシフト値はδ値(ppm)、カップリング定数はHertzで示した。またsはsinglet、dはdoublet、tはtriplet、ddはdouble doublet、mはmultiplet、bはbroadの略とする。以下の化合物(b)、(c)、(d)においても同様である。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=11.3(s,OH),8.19(d,1H,J=9.9Hz,benzotriazole-H),7.78(dd,1H,J=9.92Hz,J=0.96Hz,J=0.87Hz,benzotriazole-H),7.0-7.3(m,2H,benzotriazole-H,phenol-H),6.67(d,1H,J=2.91Hz,phenol-H),6.59(dd,1H,J=10.2Hz,J=2.94Hz,J=3.06Hz,=CH2-H),6.17(s,1H,phenol-H),5.61(t,1H,=CH2-H),4.57(t,2H,O-CH2-CH2-O-H),4.32(t,2H,O-CH2-CH2-O-H),4.00(t,2H,pH-O-CH2-H),1.80(m,2H,CH2-H),1.2-1.6(m,10H,(CH2)5-H),0.89(s,3H,CH3-H)
【0040】
(中間体合成例3)
[化合物(b);2-[2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルアクリレートの合成]
【化9】
化合物(b)
【0041】
メタクリル酸をアクリル酸とした以外は中間体合成例2と同様にして、化合物(b)を収率43%(2-[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]-5-オクチルオキシフェノールから)で得た。融点86℃、HPLC面百純度98.7%、最大吸収波長λmaxが351nmの時の吸光度εは29700であった。
【0042】
また、化合物(b)のNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置: VARIAN Mercury300
共振周波数:300MHz(1H-NMR)
溶媒:クロロホルム-d
得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。なお、以下の化合物(c)、(d)も化合物(b)と同様の測定条件でNMR測定を行った。
δ=11.3(b,OH),8.21(d,1H,J=9.07Hz,benzotriazole-H),7.79(d,1H,J=9.07Hz,benzotriazole-H),7.18(d,1H,J=2.3Hz,phenol-H),7.16(d,1H,J=2.3Hz,phenol-H),7.15(d,1H,J=1.81,benzotriazole-H,),6.67(s,1H,phenol-H),6.60(m,1H,=CH2-H),6.20(q,1H,CH=-H),5.89(dd,1H,J=10.5Hz,J=0.66Hz,J=0.75Hz,=CH2-H),4.32(t,2H,O-CH2-CH2-O-H),4.00(t,2H,O-CH2-CH2-O-H),0.8-2(m,17H,n-C8H17-H)
【0043】
(中間体合成例4)
[化合物(c);2-[2-(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルメタクリレートの合成]
【化10】
化合物(c)
【0044】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、4-(5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)ベンゼン-1,3-ジオールを17.0g(0.066モル)、メチルイソブチルケトン35ml、1-ブロモブタン9.2g(0.067モル)、炭酸ナトリウム5.6g(0.053モル)、ヨウ化カリウム4.9gを入れて105~115℃で4時間還流撹拌した。水35mlを加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、温水35mlで洗浄した。メチルイソブチルケトン35mlを減圧で回収後にイソプロピルアルコール100mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール20mlで洗浄し、乾燥して、5-ブトキシ-2-(5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノールを15.0g得た。
【0045】
500mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、5-ブトキシ-2-(5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノールを15.0g(0.048モル)、47%臭化水素酸9.9g(0.058モル)、スルホラン145mlを入れて100~105℃で48時間撹拌した。トルエン70ml、水200mlを加えて、静置して下層の水層を分離して除去し、温水100mlで2回洗浄し、トルエン70mlを減圧で回収した。イソプロピルアルコール30ml、水15mlを加えて、5℃まで冷却し、析出する結晶をろ過し、イソプロピルアルコール水溶液(70% V/V)20mlで洗浄し、乾燥して、5-ブトキシ-2-(5-ヒドロキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノールを6.2g得た。
【0046】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、5-ブトキシ-2-(5-ヒドロキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノールを6.2g(0.021モル)、メチルイソブチルケトン50ml、2-クロロエタノール7.4g(0.092モル)、炭酸ナトリウム4.9g(0.046モル)、ヨウ化カリウム0.2gを入れて113~118℃で10時間還流脱水した。水50mlを加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、温水50mlで洗浄した。メチルイソブチルケトン50mlを減圧で回収後にイソプロピルアルコール25mlを加えて5℃まで冷却し、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール15mlで洗浄し、乾燥して、5-ブトキシ-2-(5-(2-ヒドロキシエトキシ)-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノールを3.4g得た。
【0047】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、5-ブトキシ-2-(5-(2-ヒドロキシエトキシ)-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノールを3.4g(0.010モル)、トルエン40ml、メタクリル酸1.7g(0.020モル)、メタンスルホン酸0.2g(0.002モル)を入れて、110~115℃で4時間還流脱水した。水30ml、炭酸ナトリウム0.7g(0.007モル)を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、活性炭0.1gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時にろ過し、ろ液からトルエン40mlを減圧で回収した後にイソプロピルアルコール30mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール15mlで洗浄した後、減圧下40℃で乾燥し、白色結晶を2.7g得た。この2.7gをイソプロピルアルコールで再結晶して、減圧下40℃で乾燥し、化合物(c)を2.2g得た。収率8%(4-(5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)ベンゼン-1,3-ジオールから)であった。融点101℃、最大吸収波長λmaxが351nmの時の吸光度εは29100であった。
【0048】
また、HPLC分析により、化合物(c)の純度を測定した。
<測定条件>
装置:L-2130((株)日立ハイテクノロジーズ製)
使用カラム:Inertsil ODS-3 4.6×150mm 5μm
カラム温度:25℃
移動相: アセトニトリル/水=9/1(リン酸3ml/L)
流速:1.0ml/min
<測定結果>
HPLC面百純度:98.7%
なお、以下の化合物(d)も化合物(c)と同様の測定条件でHPLC測定を行った。
【0049】
また、化合物(c)のNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=11.3(b,OH),8.21(d,1H,J=9.24Hz,benzotriazole-H),7.80(dd,1H,J=9.1Hz,J=0.66Hz,J=0.66Hz,benzotriazole-H),7.18(d,1H,J=2.31Hz,phenol-H),6.68(d,1H,J=2.64Hz,phenol-H),6.60(dd,1H,J=9.2Hz,J=2.64Hz,J=2.64Hz,benzotriazole-H,),6.18(s,1H,=CH2-H),5.62(m,1H,=CH2-H),0.9-2.1(m,3H,9H,CH3,n-C4H9-H)
【0050】
(中間体合成例5)
[化合物(d);2-[2-(4-エトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルメタクリレートの合成]
【化11】
化合物(d)
【0051】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、4-(5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)ベンゼン-1,3-ジオールを10.0g(0.039モル)、メチルイソブチルケトン40ml、ブロモエタン6.4g(0.059モル)、炭酸ナトリウム3.3g(0.031モル)、ヨウ化カリウム3.0gを入れて95~110℃で6時間還流撹拌した。水20mlを加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、温水20mlで洗浄した。メチルイソブチルケトン40mlを減圧で回収後にイソプロピルアルコール100mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール25mlで洗浄し、乾燥して、5-エトキシ-2-(5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノールを8.2g得た。
【0052】
500mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、5-エトキシ-2-(5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノールを8.2g(0.029モル)、47%臭化水素酸6.2g(0.036モル)、スルホラン82mlを入れて100~105℃で33時間撹拌させた。トルエン50ml、水165mlを加えて、静置して下層の水層を分離して除去し、温水80mlで洗浄し、トルエン50mlを減圧で回収した。イソプロピルアルコール35ml、水15mlを加えて、5℃まで冷却し、析出する結晶をろ過し、イソプロピルアルコール水溶液(70% V/V)20mlで洗浄し、乾燥して、5-エトキシ-2-(5-ヒドロキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノールを4.6g得た。
【0053】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、5-エトキシ-2-(5-ヒドロキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノールを4.6g(0.017モル)、メチルイソブチルケトン35ml、2-クロロエタノール1.7g(0.021モル)、炭酸ナトリウム1.1g(0.010モル)、ヨウ化カリウム0.9gを入れて、113~118℃で8時間還流脱水した。水30mlを加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、温水30mlで洗浄した。メチルイソブチルケトン35mlを減圧で回収し、5-エトキシ-2-[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]フェノールの固形分を5.0g得た。
【0054】
300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、5-エトキシ-2-[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]フェノールの固形分を5.0g(0.016モル)、トルエン100ml、メタクリル酸2.7g(0.031モル)、メタンスルホン酸2.0g(0.021モル)を入れて、110~115℃で4時間還流脱水した。水80ml、炭酸ナトリウム1.9g(0.018モル)を加え、静置して下層部の水層を分離して除去し、活性炭0.1gを加え、還流撹拌して脱色させた。熱時ろ過し、ろ液からトルエン100mlを減圧で回収した後にイソプロピルアルコール30mlを加え、析出した結晶をろ過し、イソプロピルアルコール20mlで洗浄した後、減圧下40℃で乾燥し、白色結晶を3.2g得た。この3.2gをイソプロピルアルコールで再結晶して、減圧下40℃で乾燥し、化合物(d)を1.6g得た。収率11%(4-(5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)ベンゼン-1,3-ジオールから)であった。融点156℃、HPLC面百純度98.1%、最大吸収波長λmaxが350nmの時の吸光度εは29000であった。
【0055】
また、化合物(d)のNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=11.3(b,OH),8.21(d,1H,J=9.07Hz,benzotriazole-H),7.79(d,1H,J=9.72,benzotriazole-H),7.16(m,1H,phenol-H),6.68(d,1H,J=2.64Hz,phenol-H),6.59(dd,1H,J=9.2,J=2.8,J=2.64,phenol-H,),6.17(s,1H,C=CH2-H),5.61(t,1H,=CH2-H),4.58(m,2H,O-CH2-CH2-O-H),4.32(t,2H,O-CH2-CH2-O-H),4.08(q,2H,-CH2-CH3-H),1.67(s,3H,C=CH2-CH3-H),1.57(t,3H,CH2-CH3-H)
【0056】
(実施例1)
[共重合体(a);化合物(a)/4,4’―アゾビス(4-シアノペンタン酸)ポリエチレングリコールポリマーの共重合]
【化12】
共重合体(a)
【0057】
50mlのナスフラスコに三方コック、撹拌装置を取り付け、化合物(a)を0.23g(0.5ミリモル)、4,4’―アゾビス(4-シアノペンタン酸)ポリエチレングリコールポリマー(商品名「VPE-0201」Wako Pure Chemicals Industries, Ltd.製)1.0g(0.5ミリモル)を入れ、窒素置換した。そこにトルエン10mlを入れて、80℃で48時間撹拌した。氷浴につけ、ヘキサン100ml中に注ぎ、生成物を沈殿させた。沈殿物をろ過した後、メタノール150mlに溶解し、不溶物をろ過して取り除いた。メタノールを減圧下で除去し、残った固形物を減圧下で乾燥し、共重合体(a)を0.81g得た。
【0058】
また、共重合体(a)の分子量を測定した結果、重量平均分子量(Mw)は9270、数平均分子量(Mn)は3650、多分散度(Mw/Mn)は2.54であった。測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:LC-10AD((株)島津製作所製)
溶離液:クロロホルム
カラム:Shodex K-807L、Shodex K805L、Shodex K-804L(昭和電工(株)製)
なお、以下の共重合体(c)も、同様の測定条件で分子量測定を行った。
【0059】
また、共重合体(a)の紫外~可視吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長λmaxは348.6nmであった。スペクトルを
図1に示す。スペクトルの測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:UV-1850((株)島津製作所製)
測定波長:250~500nm
溶媒:クロロホルム
濃度:4.7 mg/L
セル:1cm石英
【0060】
また、共重合体(a)のNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたスペクトルを
図4に示す。測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:ECX-500(日本電子株式会社製)
共振周波数:500MHz(1H-NMR)
溶媒:クロロホルム-d
なお、以下の共重合体(b)、(c)も、同様の測定条件でNMR解析を行った。
【0061】
(実施例2)
[共重合体(b);化合物(b)/ポリエチレングリコールの共重合]
【化13】
共重合体(b)
【0062】
50mlのナスフラスコに三方コック、撹拌装置を取り付け、化合物(b)を1.4g(3.0ミリモル)、ポリエチレングリコール(Wako Pure Chemicals Industries, Ltd.製)6.0g(30ミリモル)を入れ、窒素置換した。そこにトリブチルホスフィン0.30g(1.5ミリモル)を入れて、100℃で24時間撹拌した。ジクロロメタン100mlを加え、分液ロートに移してイオン交換水(100mlx3)で洗浄した。ジクロロメタンを減圧下で除去し、生成物をメタノール150mlに溶解し、不溶物をろ過して取り除いた。メタノールを減圧下で除去し、残った固形物を減圧下で乾燥し、共重合体(b)を0.28g得た。
【0063】
また、共重合体(b)の紫外~可視吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長λmaxは350.8nmであった。スペクトルを
図2に示す。スペクトルの測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:UV-1850((株)島津製作所製)
測定波長:250~500nm
溶媒:クロロホルム
濃度:4.5 mg/L
セル:1cm石英
【0064】
また、共重合体(b)のNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたスペクトルを
図5に示す。
【0065】
(実施例3)
[共重合体(c);化合物(a)/ポリエチレングリコールモノメタクリレートの共重合]
【化14】
共重合体(c)
【0066】
100mlのナスフラスコに三方コック、撹拌装置を取り付け、化合物(a)を0.32g(0.68ミリモル)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名「ブレンマーPE-350」日油(株)製)1.4ml(3.4ミリモル)を入れ、窒素置換した。そこにトルエン10mlとベンゾイルパーオキサイド28mg(0.12ミリモル)を入れて、溶液を窒素ガスでバブリングした。その後、80℃で24時間撹拌した。トルエンを減圧下で除去し、生成物をメタノール50mlに溶解し、不溶物をろ過して取り除いた。メタノール溶液を透析膜(分画分子量1000)に入れ、メタノール中で48時間撹拌し、低分子量体を取り除いた。メタノールを減圧下で除去し、残った固形物を減圧下で乾燥し、共重合体(c)を0.39g得た。
【0067】
また、共重合体(c)の分子量を測定した結果、重量平均分子量(Mw)は82830、数平均分子量(Mn)は16500、多分散度(Mw/Mn)は5.02であった。
【0068】
また、共重合体(c)の紫外~可視吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長λmaxは350.4nmであった。スペクトルを
図3に示す。スペクトルの測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:UV-1850((株)島津製作所製)
測定波長:250~500nm
溶媒:クロロホルム
濃度:4.7mg/L
セル:1cm石英
【0069】
また、共重合体(c)のNMR解析を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたスペクトルを
図6に示す。
【0070】
[溶解度の測定]
実施例1~3で得られた共重合体(a)~(c)、および比較例として従来の一般的な紫外線吸収剤である化合物(e);2-(2-ヒドロキシ-4-オクチロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールの、親水性化粧基材かつ親水性有機材料であるエタノール、親水性化粧基材である精製水、および親水性有機材料であるメタノールへの25℃における溶解度を表1に示す。
【0071】
【0072】
[pHの測定]
実施例1、3でそれぞれ得られた共重合体(a)、(c)、および比較例として従来の一般的な親水性の紫外線吸収剤である化合物(f);2-ヒドロキシ4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸三水和物の水溶液のpHを、pH測定装置を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0073】
【0074】
[水溶液の安定性の確認]
実施例1で得られた共重合体(a)0.1g、および比較例として、ベンゾトリアゾール系化合物にポリエチレングリコール誘導体化合物をエステル結合により導入して親水性を付与した化合物(g);α―[4-(4-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-3-ヒドロキシフェノキシ)ブタノイル]-ω-メトキシポリ(オキシエチレン)0.1gをイオン交換水50mLに溶解させ、25℃で6ヶ月間静置し、濁りの有無を確認した。加水分解してポリエチレングリコールを含む置換基が外れた場合、残存するベンゾトリアゾール骨格は水溶性を示さないことから析出して水溶液に濁りが生じるため、濁りの有無は水溶液における安定性の指標となる。結果を表3に示す。
【0075】
【0076】
表1より、共重合体(a)~(c)は、従来の一般的な紫外線吸収剤である化合物(e)と比較して、親水性化粧基材や親水性有機材料に対して高い溶解性を示すことがわかる。また、表2より、従来の一般的な親水性の紫外線吸収剤である化合物(f)が強酸性を示すのに対して、共重合体(a)、(c)は弱酸性~中性であることがわかり、強酸性では使用できない用途にも使用できる。また、表3より、ベンゾトリアゾール系化合物にポリエチレングリコール誘導体化合物をエステル結合により導入して親水性を付与した化合物(g)が、水溶液での長期保管で分解したのに対して、共重合体(a)は水溶液での長期保管で分解せずに安定であることから、水中で長期間の使用が可能であることがわかり、従来にない有用な親水性紫外線吸収剤であることがわかる。なおpHの測定条件は次の通りである。
<測定条件>
装置:SevenEasy pH(メトラー・トレド製)
温度:22℃
濃度:2000ppm
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の親水性紫外線吸収剤は、紫外領域全体を吸収し、親水性化粧基材や親水性有機材料に対して高い溶解性を示し、水溶液は弱酸性~中性であり、水中において安定で長期間の使用が可能であることから、親水性化粧基材や親水性有機材料に対して好適に利用できる。