(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】フローリアクターを用いるN-カルボキシ無水物の合成方法
(51)【国際特許分類】
C07D 263/44 20060101AFI20231010BHJP
C07D 265/26 20060101ALI20231010BHJP
C07D 498/04 20060101ALI20231010BHJP
C07D 413/06 20060101ALI20231010BHJP
C07D 265/10 20060101ALI20231010BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20231010BHJP
B01J 19/00 20060101ALN20231010BHJP
【FI】
C07D263/44
C07D265/26
C07D498/04 101
C07D413/06
C07D498/04 111
C07D265/10
C07F7/18 U
B01J19/00 321
(21)【出願番号】P 2019094952
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2018129847
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.平成30年1月11日発行のフロー・マイクロ合成国際会議(ICAMS-1)の要旨集において発表、2.平成30年1月19日開催のフロー・マイクロ合成国際会議(ICAMS-1)においてポスター発表、3.平成30年3月3日発行の国際CLSフォーラムの要旨集において発表、4.平成30年3月3日開催の国際CLSフォーラムにおいてポスター発表、5.平成30年3月6日発行の日本化学会第98春季年会(2018)の予稿集(講演番号:1PC-036)において発表、6.平成30年3月20日開催の日本化学会第98春季年会(2018)においてポスター発表(講演番号:1PC-036)、7.平成30年3月6日発行の日本化学会第98春季年会(2018)の予稿集(講演番号:3H6-36)において発表、8.平成30年3月22日開催の日本化学会第98春季年会(2018)において口頭発表(講演番号:3H6-36)
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】布施 新一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】小竹 佑磨
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/016376(WO,A1)
【文献】Org. Process. Res. Dev.,2018年01月22日,22,247-251
【文献】Angew. Chem. Int. Ed.,2018年07月12日,57,11389-11393
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 263/44
C07D 265/26
C07D 498/04
C07D 413/06
C07D 265/10
C07F 7/18
B01J 19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローリアクターを用いる合成方法であって、
原料溶液の一方が下記一般式(1-1)で表される化合物を含む原料溶液(1-1)であり、
もう一方が下記ホスゲン、ジホスゲン、炭酸ビス(トリクロロメチル)(またはトリホスゲン)、クロロギ酸4-ニトロフェニルから選ばれる化合物を含む原料溶液(1-2)であり、
【化1】
[式中、
R
1
は、―Hを表し、
R
2
およびR
3
は、それぞれ独立に、―H、―OH、―COOH、―COO
-、―CN、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のチオ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のスルホ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のシリル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルキニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~20のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリールオキシ基を表し、
R
2
およびR
3
は、互いに結合して環を形成していてもよい。
mは1~6の整数を表し、mが2以上の場合、複数存在するR
2およびR
3は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
Mはアルカリ金属原子を表す。]
前記原料溶液の混合開始から60秒以内に、
あらかじめ
原料溶液(1-1)をpH7~14に調整されている塩基性溶液がpH0~7の酸性に変わ
り、
混合後に、有機溶媒の注入にて希釈することを特徴とする合成方法。
【請求項2】
前記原料溶液の混合開始後に、
有機溶媒の注入により混合後の溶液を1.1倍以上に希釈することを特徴とする、請求項1に記載の合成方法。
【請求項3】
前記原料溶液の混合後に、希釈に使用する
有機溶媒が酢酸エチルまたはジクロロメタンである、
請求項1または請求項2に記載の合成方法。
【請求項4】
前記一般式(1-1)において、R
3が―Hであり、mが1であり、Mがナトリウム原子である
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項5】
前記合成方法において、温度範囲が-10~40℃である、請求項1
~請求項4のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項6】
前記合成方法において、前記原料溶液
(1-1)が、ピリジン、N-メチルモルホリン、N-メチルピペリジン、N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン、ジエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、アンモニアから選ばれる少なくとも1種の塩基を含有する塩基性溶液である、請求項1
~請求項5のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項7】
前記合成方法において、前記原料溶液
(1-2)の溶媒が有機溶媒である、請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項8】
前記合成方法において、前記原料溶液
(1-2)の溶媒がアセトニトリルまたはテトラヒドロフランである、請求項
7に記載の合成方法。
【請求項9】
前記フローリアクターがマイクロフローリアクターである、請求項1~請求項
8のいずれか一項に記載の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローリアクターを用いるN-カルボキシ無水物などの化合物の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N-カルボキシ無水物(NCA)はオリゴペプチドや非ペプチド化合物の合成におけるα-アミノ酸のビルディングブロックとして、またポリペプチド合成の原料として重要である。とりわけ、NCAの重合がポリペプチド合成の第一選択肢となっていることから、後者の用途は重要性が高い。タンパク質構成アミノ酸および非タンパク質構成アミノ酸から誘導される多様なNCAの重合により、得られるポリペプチドの特性は自在に変化させることができるため、ポリペプチドは生体適合性材料、生分解性ポリマー、薬剤および薬剤キャリアとして利用されている。原料のNCAの側鎖構造以外に、NCAの純度もポリペプチドの特性に大きく影響することがよく知られている。そのため、高純度のNCAを様々なアミノ酸から合成する手法が極めて重要である。
【0003】
1922年に報告されたFuchs-Farthing法(非特許文献1、2)は現在でも工業的に利用されているNCAの唯一の実践的合成となっている(下記式(A)参照)。この方法では、アミノ酸をホスゲンおよびホスゲン等価体と反応させることで、塩化水素の生成を伴いつつ目的のNCA(式中、「NCA(desired)」と記載)を一工程で合成できる。この方法は工程数が少なく、二酸化炭素と塩化水素のみを副生し、また、NCAは酸性条件下では比較的安定であるため、望まない重合反応等を惹起しない点が特長である。一方で、酸性条件下ではアミノ酸のアミノ基とカルボキシル基の双方の求核性が低下し、また、固体のアミノ酸と液体のホスゲンおよびホスゲン等価体の溶液を反応させねばならないため、強酸中で長時間加熱する必要があるなど比較的厳しい反応条件を要する(例えば、約40-50℃、2-5時間、pH<1)。このため、酸性条件下で不安定な官能基をもつNCAの合成は不可能であり、また、塩化水素存在下での加熱はしばしばNCAの開環反応を惹起し、望まない酸塩化物(副生物)を与えて、目的物の純度を低下させてしまう。
【0004】
過去に、これらの問題を解決するため、塩化水素のスカベンジャーを用いる方法、ウレタン保護されたアミノ酸を用いる方法、ジフェニルカルボナートを用いる手法、N-カルバモイルアミノ酸のニトロソ化を経る方法、減圧下で窒素気流を用いて塩化水素を除去する方法等が報告されてきた(特許文献1~3など)。しかしながら、これらの方法は純度低下、工程数増加、プロセス煩雑化といった別の短所をもつため、Fuchs-Farthing法を置き換えるまでには至っていない。
【0005】
下記式(B)で表されるようなNCA合成を塩基性条件下で行えば、アミノ酸のアミノ基およびカルボキシラートは双方、低温下でも速やかに短時間でホスゲンおよびホスゲン等価体を攻撃して目的のNCAを与えると期待できるが、塩基性条件下では、NCAの窒素原子上のプロトンが速やかに引き抜かれて、ポリマー副生成物の生成などの望まない重合反応が惹起される。また、遊離のアミノ酸は通常水にしか溶けないことが多いが、塩基性条件下で水が存在する中で反応させると生成物のNCAが加水分解されることが想定される。これらの理由のため、NCAの塩基性条件下での反応は未報告となっている。
【0006】
【0007】
一方、マイクロフローリアクターを用いる合成方法(マイクロフロー合成)は、内径が1mm以下のマイクロメーターオーダーの微小な流路を有する空間で化学反応を起こさせることを特徴とし、フローリアクターを用いる合成方法(フロー合成)の一種であることから、従来のバッチ合成法と比べて、混合時間が短く、熱伝導の高い空間であることから反応時間や反応温度を厳密に制御可能であり、また、合成の連続生産が容易、反応の安全性などの面で大きな利点が報告されている。マイクロフロー合成は、特に、タンパク質や複素環化合物などの合成など、高温高圧下で反応中に分解しやすい不安定な構造の分子の合成に適していることが近年報告されている(特許文献4~6など)が、しかしながら、NCAなどのアミノ酸誘導体の合成において、副生成物の低減を可能にした例は少なく課題が多いのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-145871号公報
【文献】特開2002-371070号公報
【文献】特表2008-518032号公報
【文献】特開2005-185972号公報
【文献】特開2011-116731号公報
【文献】特開2017-137244号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】F.Fuch, 「Ber. Dtsch. Chem. Ges.」(ドイツ),1922年,第55巻,p.2943.
【文献】A.C.Furthing, 「J. Chem. Soc.」(イギリス),1950年,p.3213-3217.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、フローリアクターを用いるN-カルボキシ無水物(NCA)などの合成や製造において、目的の化合物を高収率で連続生産することが可能な合成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、マイクロフローリアクターなどのフローリアクターを用いるN-カルボキシ無水物(NCA)などの合成において、合成開始(原料溶液の混合)後の短時間に(瞬間的に)反応溶液を塩基性から酸性(または酸性から塩基性)へ切り替える合成方法を用いることにより、速やかな反応の進行と生成物の重合の抑制が両立することを見出した。また、フローリアクターを用いた、有機溶媒などの溶媒の注入による反応溶液の希釈により、塩化水素などの酸と生成物との接触確率を低減させて、酸性条件下で不安定な官能基の分解を回避できることを見出した。すなわち本発明は、以下の内容で構成されている。
【0012】
1.フローリアクターを用いる合成方法であって、
少なくとも2種の原料溶液の混合開始から60秒以内に、
あらかじめpH7~14に調整されている塩基性溶液がpH0~7の酸性に変わること、または、あらかじめpH0~7に調整されている酸性溶液がpH7~14の塩基性に変わること、を特徴とする合成方法。
【0013】
2.前記原料溶液の混合開始後に、溶媒の注入により混合後の溶液を1.1倍以上に希釈することを特徴とする合成方法。
【0014】
3.前記合成方法において、温度範囲が-10~40℃である合成方法。
【0015】
4.前記合成方法において、前記原料溶液が、ピリジン、N-メチルモルホリン、N-メチルピペリジン、N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン、ジエチルアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、アンモニアから選ばれる少なくとも1種の塩基を含有する塩基性溶液である合成方法。
【0016】
5.前記合成方法において、前記原料溶液が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸から選ばれる少なくとも1種の酸を含有する酸性溶液である合成方法。
【0017】
6.前記合成方法において、前記原料溶液の溶媒が有機溶媒である合成方法。
【0018】
7.前記合成方法において、前記原料溶液の溶媒がアセトニトリルまたはテトラヒドロフランである合成方法。
【0019】
8.前記原料溶液の混合後に、希釈に使用する溶媒が有機溶媒または水である合成方法。
【0020】
9.前記原料溶液の混合後に、希釈に使用する溶媒が酢酸エチルまたはジクロロメタンである合成方法。
【0021】
10.前記合成方法において、前記原料溶液に含まれる物質が、
下記一般式(1-1)および(1-2)で表される化合物である合成方法。
【0022】
【0023】
[式中、R1~R3は、それぞれ独立に、―H、―OH、―COOH、―COO-、―CN、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のチオ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のスルホ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のシリル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルキニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~20のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリールオキシ基を表し、
R1~R3は、隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよい。
mは1~6の整数を表し、mが2以上の場合、複数存在するR2およびR3は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
Mは水素原子またはアルカリ金属原子を表す。]
【0024】
【0025】
[式中、XおよびYは、それぞれ独立に、―Cl、―OCCl3、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のチオ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20の複素環基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリールオキシ基を表す。]
【0026】
11.前記一般式(1-1)において、R3が―Hであり、mが1であり、Mがナトリウム原子である合成方法。
【0027】
12.前記フローリアクターがマイクロフローリアクターである合成方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明のフローリアクターを用いる合成方法によれば、目的の構造を有するN-カルボキシ無水物(NCA)などの化合物を、高収率で連続生産することが可能な合成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の「フローリアクターを用いる合成方法」で用いる装置の具体例を表す概略図である。
【
図2】本発明の「フローリアクターを用いる合成方法」で用いる装置に、混合後の溶液を希釈する機構を加えた装置の具体例を表す概略図である。
【
図3】本発明の「フローリアクターを用いる合成方法」を用いた、合成の具体例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<フローリアクターを用いる合成方法(フロー合成)>
本発明の合成方法で用いる
図1の装置の具体例の概略図を用いて、以下に詳細に説明する。
図1は本発明の合成方法における最低限必要な装備を概略的に示したものであり、以下の例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、省略、置換、数値などの変更、好ましい具体例の交換などが可能である。
【0031】
本発明における「フローリアクター」とは、
図1中のフローリアクター100で示される機構を有する。本発明のフローリアクターを用いる合成方法においては、化学反応前の原料物質を含む原料溶液(1-1)(図中の○記号)と、化学反応前の別の原料物質を含む原料溶液(1-2)(図中の△記号)とを、ミキサー20内で混合して化学反応させることによって、生成物2(または生成物を含有する混合後の溶液2)(図中の□記号)を合成し、混合後の溶液中に生成物2を含有し、ミキサー20の外部へ排出する機能を有する。
本発明の「フローリアクター」装置の細部を詳細に説明する。フローリアクター100は、原料溶液(1-1)を連続的に供給することのできる原料溶液供給装置11を有しており、原料溶液供給装置11は送液管110と接続しており、送液管110はミキサー20の1個の導入口と接続している。また、フローリアクター100は、原料溶液(1-2)を連続的に供給することができる原料溶液供給装置12を有しており、原料溶液供給装置12は送液管120と接続しており、送液管120はミキサー20の別の1個の導入口と接続している。ミキサー20は1個の排出口を有し、この排出口は反応管21と接続している。ミキサー20内部の空間内で、原料溶液(1-1)と原料溶液(1-2)の混合が開始し、ミキサー20内部から反応管21内部において反応が起こり、生成物2を含有する溶液が移動し、反応管21を通してフローリアクター100の外部に排出され、生成物2を得ることが出来る。また、反応管21において、ミキサー20の側と反対側の端部に別のミキサーを接続し、次の化学反応や化学処理を行うことができる。
【0032】
本発明における「フローリアクター」は、バッチ式の反応容器に比べて小さいミキサーの空間内で反応が行われるため、伝熱性に優れており、温度分布の偏りの少ない反応を行うことができる。そのため、バッチ式の反応容器では困難な温度(高温、低温)を必要とする反応に適している。また、強酸や強塩基に対し不安定な有機化合物などを少量で短時間に連続的に取り扱えるため、不安定な中間体を経由する合成にも適している。また、混合を瞬時に行えるため、溶液中での不均一な分散状態を経ずに反応が行える利点がある。さらに、加圧も容易に行うことができ、反応速度を高めるのに有効である。
【0033】
本発明の合成方法は、前記したフローリアクターを用いる合成方法であって、フローリアクター内での少なくとも2種の原料溶液の混合開始から60秒以内に、あらかじめpH7~14に調整されている塩基性溶液がpH0~7の酸性に変わること、または、あらかじめpH0~7に調整されている酸性溶液がpH7~14の塩基性に変わること、を特徴とする合成方法である。ここで、「原料溶液」とは、「あらかじめpH7~14に調整されている塩基性溶液」または「あらかじめpH0~7に調整されている酸性溶液」を意味しており、「混合開始」とは、これらのいずれかの原料溶液が、もう1種の「原料溶液」と混合することによって化学反応が開始する時点を意味する。すなわち、
図1中、原料供給装置11内の原料溶液(1-1)が送液管11を通してミキサー20に導入され、かつ、原料供給装置12内の原料溶液(1-2)が送液管12を通してミキサー20に導入された時点であって、これらの物質の混合が開始した時点を意味する。
【0034】
本発明の合成方法において、「少なくとも2種の原料溶液」のうち1種(原料溶液(1-1))は、具体的には、化学反応前の物質と、塩基または酸とを、水や有機溶媒などの溶媒を用いて、pH7~14に調整されている塩基性容液であるか、または、pH0~7に調整した酸性溶液である。この原料溶液のうち1種(原料溶液(1-1))は、塩基性溶液でも酸性溶液でもいずれでもよいが、あらかじめpH7~14に調整されている塩基性溶液であることが好ましい。前記塩基性溶液の溶媒としては原料溶液(1-1)に含まれる原料物質を溶解するものであれば限定されないが、水、水溶液、有機溶媒、または水および有機溶媒が混合したものがあげられ、水または水溶液であることが好ましい。
【0035】
本発明の合成方法においては、少なくとも2種の原料溶液のうち、もう1種(原料溶液(1-2))は、ミキサー20内において、原料溶液(1-1)中の原料物質と化学反応する溶液である。前記原料溶液の溶媒としては、原料溶液(1-2)に含まれる原料物質を溶解するものであれば限定されないが、水、水溶液、有機溶媒、または水および有機溶媒が混合したものがあげられ、有機溶媒であることが好ましい。
【0036】
本発明の合成方法においては、混合開始後0秒から60秒の短時間内に、化学反応により、あらかじめ調製されている塩基性または酸性の溶液のpHが変化する。この化学反応の時間(反応時間)は、ミキサー内に溶液が導入(注入)されて混合開始の時点から、混合溶液がミキサーの排出口を出て反応管21内を移動し、管外に排出されるかまたは次のミキサー30(後述の
図2で説明する)に導入されるまでの時点を意味する。この時間は、合成開始後0秒に限りなく近い短時間でもよく(例えば、0.01秒~0.1秒以内、または、0.1秒~1秒以内など)、また長時間であっても0~60秒の間が好ましい。上述のように、本発明は、フローリアクターを利用した効率的な混合を行うことにより、塩基性から酸性へ、または、酸性から塩基性への短時間の変換(もしくは瞬間的スイッチ)を可能にしている。
【0037】
本発明の合成方法において、
図1は、原料溶液(1-1)と原料溶液(1-2)の2種類の物質が反応する場合のフローリアクター100の例を示しているが、原料溶液(1-1)と反応する物質は、原料溶液(1-2)のみに限定されない。例えば、原料溶液(1-2)以外の原料溶液(1-3)~原料溶液(1-9)のいずれか1種以上を、原料溶液(1-2)と同様に、それぞれ送液管130、140、150、160、170、180および190を通してすべてミキサー20に導入することができるように配管することによって、目的とする化学反応を行っても良い。原料溶液(1-1)と反応する物質の数としては、1種または2種であるのが好ましい。
【0038】
本発明の合成方法において、
図1における反応管21を通して移動した混合後の溶液(図中、生成物2と表す)は、続けて、ミキサー30に導入されてもよい。この場合について、
図2のフローリアクター100を表す概略図を用いて説明する。本発明においては、混合後の溶液2(生成物2)の導入口とは別のミキサー30の導入口に、溶媒22(図中の22は溶媒供給装置を含む)が送液管220を通してミキサー30に注入(または導入)される。ミキサー30の内部において、生成物2を含む溶液と溶媒22との混合による状態変化が起こるが、本発明においては、この状態変化は、溶媒22の注入によって、生成物2を含有する混合後の溶液を1.1倍以上に希釈する工程であることが好ましく、すなわち、溶媒22は、生成物2を含有する混合後の溶液を希釈することのできる溶媒であることが好ましい。ミキサー30で混合されて希釈された容液は、反応管31を通して移動し、生成物2を含有する溶液の状態で、目的の分子構造などの状態を安定に保ったまま得ることができる。
【0039】
本発明の合成方法において、「溶媒の注入により混合後の溶液を1.1倍以上に希釈する」工程は、生成物2を含有する混合後の溶液と、溶媒22とがミキサー内部において初めて混合した時点から短時間に混合が行われることであり、混合開始0秒から0.1~60秒以内に、均一な混合が行われて希釈されることが好ましく、均一な混合が行われるまでの時間は、短いほど好ましい。
また、生成物2がミキサー30内において希釈される場合、
図2では、生成物2を含有する溶液と溶媒22の2種類の物質が混合する場合の例を示しているが、生成物2を含有する溶液を希釈する溶媒は溶媒22のみに限定されない。例えば、溶媒22以外の溶媒23~溶媒29のいずれか1種以上を、溶媒22と同様に、それぞれ対応する送液管230、240、250、260、270、280および290を通してすべてミキサー30に導入することができるように配管することによって、目的とする希釈を行っても良い。よって、ミキサー20において混合後の溶液(生成物2)をミキサー30における溶媒の注入により希釈する溶媒の種類の数としては、1種または2種であるのが好ましい。
【0040】
本発明の合成方法においては、前記原料溶液の混合開始後に、溶媒の注入により混合後の溶液を希釈することが好ましく、その場合の希釈の程度としては、少量でも溶媒が注入することが好ましく、希釈の倍率としては、1.1倍以上に希釈することが好ましく、希釈倍率は高いほど好ましい。
【0041】
本発明のフローリアクターの各部について、
図1または
図2を用いて、以下に詳細に説明する。前記11で表される原料溶液供給装置は、液状の原料物質を含有するの原料溶液2を連続的に供給できる器具や装置であれば特に限定されず、市販のものを使用することが可能であり、具体的には、ガスタイトシリンジおよびシリンジポンプなどを用いた送液ポンプなどがあげられ、特に限定されない。前記12で表される原料溶液(1-2)を供給する原料溶液供給装置、または
図2中の溶媒供給装置22についても、前記11と同様のものがあげられる。溶液の流量は適当な機器により変化させることができる。さらに、最終的に回収する生成物の量(収量)については、原料溶液を連続的に供給している限り、連続的に排出される反応後の溶液(反応液)の回収時間を長くすることにより、より多くの生成物を回収することができる。
【0042】
本発明のフローリアクターにおいて、
図1または
図2中、送液管110および120または反応管21および31は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂などの樹脂製、ステンレス鋼などの金属製などの材質のものがあげられ、水や有機溶媒、温度変化によって変質や腐食しないものが好ましい。これらの送液管や反応管は、温度を変えられるように、加熱機器(ヒーター)や冷却装置が付属することができる。具体的には、オイルバス、ウォーターバスなどの恒温槽や温風恒温槽による加熱、アルコール、エチレングリコール、液体窒素などの冷媒を入れたクライオスタットなどの恒温槽による冷却、送液管や反応管の周囲に線状の電熱ヒーターやリボンヒーターなどを巻くことによる通電加熱、などの方法により、送液管や反応管の周囲の温度を変化させることにより、反応温度や液体の輸送の温度を調整することができる。送液管および反応管の材質は、-200℃~100℃の温度変化に耐久性のあるものが好ましい。送液管および反応管の形状は、特に限定されないが、後述する、ミキサー内部の流路と同程度の内径であることが好ましい。本発明のフローリアクターにおいて、送液管および反応管の内径は、様々な大きさのものが使用でき、数十~数百μmオーダー、数mmオーダー、数cmオーダー、さらにそれ以上の内径のものが使用可能である。それぞれの内径は10μm~5cmが好ましく、0.1mm~1cmがより好ましく、0.1mm~2mmが特に好ましい。具体的には、流路内径1mm以下のミキサー(マイクロミキサー)を用いる場合、送液管および反応管の内径は、内径が0.15mm~1mmの範囲であることが好ましい。送液管および反応管の長さは、特に限定されないが、ミキサーでの混合後の反応管において混合や反応が十分行われる長さであればよく、例えば、流路内径1mm以下のミキサーを用いる場合、100mm~1000mmの長さであるのが好ましく、200mm~500mmの長さであるのがより好ましい。
【0043】
本発明の合成方法において、温度範囲は、溶媒が水または水溶液を含有する場合、溶媒が凍らない範囲であることが好ましく、-10~+40℃の温度範囲が好ましい。
【0044】
本発明の「フローリアクターを用いる合成方法」において、
図1または
図2中にミキサー20また30として記載されている部分は、一般に、「マイクロフローリアクター」(または「マイクロリアクター」、「マイクロミキサー」、「マイクロ熱交換器」、「フローマイクロ反応器))などと呼ばれている市販の装置に使用されているものを利用できる。これらの「マイクロフローリアクター」は、マイクロメーターオーダー~1mm以下の内径の流路を有する空間において液状物質など流体の混合や化学反応を行うことを目的とした装置であるが、本発明の「フローリアクター」を用いる合成方法は、原料溶液の混合開始から短時間内にpHを変換することを特徴とした合成方法であることから、この合成の条件を満たす装置であれば、フローリアクター内の空間の大きさは、マイクロメーターオーダー~1mm以下の流路に限定されない。したがって、ミキサー内部の流路は、数十~数百μmオーダー、数mmオーダー、数cmオーダー、さらにそれ以上のものが使用可能である。なお、本発明においては、ミキサーの流路の内径としては、内径が10μm~5cmのものが好ましく、0.1mm~1cmのものがより好ましく、0.15mm~1mmのものが特に好ましく、本発明のフローリアクターとしては、マイクロフローリアクターであることが好ましい。
また、本発明の「フローリアクター」は、用途に応じた独特の流路形状構造を有することにより、異なる効果を得ることができる。
図1または
図2におけるミキサーは導入口が2個、排出口が1個のものであり、このような形状であれば特に限定されないが、例えば、V字型、T字型などのものがあげられるが、本発明では、いずれの形状のものが使用できる。また、原料溶液が3種以上の場合、導入口が3流路~9流路のものを使用することができる。ミキサーの材質としては、特に限定されないが、金属、ガラス、単結晶シリコン、樹脂などの材質があげられ、強度、温度の伝熱性、溶媒の耐腐食性の点から、ステンレス鋼の金属製であることが好ましい。
【0045】
本発明の合成方法において、前記原料溶液が塩基性溶液である場合、塩基性溶液を調製するために用いる塩基としては、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、N-メチルモルホリン(NMM)、N,N-ジメチルエチルアミン、N-メチルピペリジン、N,N-ジエチルメチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、アニリン、ジメチルアニリン、シクロヘキシルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン、ピペラジン、1,4-エチレンピペラジン、イミダゾール、オキサゾール、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリエタノールアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの有機塩基;
水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化ベリリウム(Be(OH)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化鉄(II、III)(Fe(OH)2、Fe(OH)3)、水酸化マンガン(Mn(OH)2)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、水酸化銅(II)(Cu(OH)2)、水酸化ランタン(La(OH)3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸ルビジウム(Rb2CO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、リン酸三ナトリウム(Na3PO4)、リン酸三カリウム(K3PO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸水素二カリウム(K2HPO4)、アンモニア(NH3)、などの無機塩基;またはこれらの塩基と反応して得られる塩があげられる。これらの中でも有機塩基であることが好ましく、またこれらの塩基は置換基を有していてもよい。これらのうち、原料溶液としてあらかじめ塩基性に調整する場合の塩基としては、25℃の水溶液中における酸解離定数(pKa)が5~12のものが好ましい。
【0046】
本発明の合成方法において、前記原料溶液が酸性溶液である場合、酸性溶液を調製するために用いる酸としては、塩酸(HCl)、次亜塩素酸(HClO)、亜塩素酸(HClO2)、塩素酸(HClO3)、過塩素酸(HClO4)、次過塩素酸(HClO5)、臭化水素酸(HBr)、次亜臭素酸(HOBr)、臭素酸(HBrO3)、フッ化水素酸(HF)、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)、過硫酸(H2SO5)、リン酸(H3PO4)、過リン酸(H3PO5)、ヘキサフルオルロリン酸(HPF6)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、ヘキサフルオロアンチモン酸(HF6Sb)、ヨウ素酸(HIO3)、次亜ヨウ素酸(HIO)、過ヨウ素酸(HIO4、H5IO6)、ホウ酸(B(OH)3)、テトラフルオロホウ酸(HBF4)、炭酸(H2CO3)、過炭酸(H2CO4、H2C2O6)、過マンガン酸(HMnO4)、クロム酸(H2CrO4)、酢酸(CH3COOH)、過酢酸(CH3COO2H)、トリフルオロ酢酸(CF3COOH)、クロロ酢酸(ClCH2COOH)、ジクロロ酢酸(Cl2COOH)、トリクロロ酢酸(Cl3CCOOH)、安息香酸(C6H5COOH)、過安息香酸(C6H5COO2H)、メタクロロ安息香酸(mClC6H4COO2H)、メタンスルホン酸(CH3SO3H)、エタンスルホン酸(C2H5SO3H)、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸(CH3C6H4SO3H)、トリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO3H)、クエン酸(C(OH)(CH2COOH)2COOH)、ギ酸(HCOOH)、グルコン酸(HOCH2CH(OH)CH(OH)CH(OH)CH(OH)COOH)、乳酸(CH3CH(OH)COOH)、シュウ酸((COOH)2)、酒石酸((CH(OH)COOH)2)、チオシアン酸(HSCN)、などの無機酸、有機酸またはそれらと反応して得られる塩があげられる。
【0047】
本発明の合成方法において、前記原料溶液の溶媒としては、水、水溶液、有機溶媒、は水と有機溶媒の混合溶媒、複数の有機溶媒(または有機化合物を溶解した有機溶液)の混合溶媒があげられ、水または有機溶媒が好ましく、有機溶媒がより好ましい。具体的に、アセトニトリル(AN)、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP);酢酸、ギ酸、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタンなどの直鎖状もしくは分岐状のアルカン;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、1-メトキシ-2-プロパノール(プロピレングリコール1-モノメチルエーテル)、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート、ジエチルエーテルなどのアルコールやエーテル類;アセトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、3-ペンタノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン、アニリン、フェノール、ジフェニルエーテルなどの芳香族炭化水素;ピリジン、ピロリジン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロチオフェン、ピロール、フラン、チオフェン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、オキサゾール、チアゾール、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、エチレンオキシド、モルホリン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、インドール、キノリン、イソキノリン、1-ベンゾフラン、などの複素環式化合物;などが有機溶媒または溶媒に含まれる有機化合物としてあげられる。
【0048】
本発明の合成方法における、前記原料溶液の混合後に希釈に使用する溶媒としては、有機溶媒、水、水溶液、有機溶媒と水の混合溶媒、複数の有機溶媒(または有機化合物を溶解した有機溶液)の混合溶媒があげられるが、前記した「原料溶液の溶媒」であげたものと同様のものが使用できる。希釈に使用する溶媒としては、有機溶媒または水が好ましく、有機溶媒がより好ましい。有機溶媒を使用する場合、酸または塩基の溶解性が比較的低い有機溶媒であれば特に限定されず、水との混和性が低く分液に適する溶媒が好ましい。前記有機溶媒のうち、例えば、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ヘキサン、ペンタン、アセトニトリル、テトラヒドロフランなどがあげられ、酢酸エチルまたはジクロロメタンが好ましい。
【0049】
本発明における「フローリアクターを用いた合成方法」によって得られる物質としては、有機化合物、無機化合物のいずれでもよく、それらの複合体であってもよい。具体的な化合物としては、顔料、染料、食用色素、有機エレクトロルミネッセンス材料などの色素化合物材料や有機半導体材料;除草剤、殺虫剤、肥料など農薬の原体化合物;医薬中間体;N-カルボキシ無水物(NCA)などのアミノ酸などの生体高分子関連の化合物;ポリオール、イソシアネートなどの樹脂材料前駆体;エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂など熱可塑性樹脂や熱硬化性、機能性樹脂などの高分子化合物;過酸化水素、過酢酸などのペルオキシド構造(―O―O―)を有する不安定基を有する化合物;ニトロ化などの高温反応、ホスゲンまたはホスゲン誘導体などの毒劇物反応の少量-連続合成が必要な化合物;フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンまたはこれらに炭素材料に可溶性置換基を付与した化合物;などの合成に応用することができる。
【0050】
本発明の合成方法において好ましい例としては、前記原料溶液に含まれる物質が、下記一般式(1-1)および(1-2)で表される化合物であることがあげられる。具体的には、下記一般式(1-1)で表される化合物を含有する原料溶液と、下記一般式(1-2)で表される化合物を含有する原料溶液とを、フローリアクターを用いる合成方法により混合し反応させることによって、下記一般式(2)で表される化合物を合成する方法であることが好ましい。なお、下記一般式(1-1)は、アミノ酸の一般的な構造式を表しており、例えば、R1=R3=H、m=1、M=H、の場合、α-アミノ酸を表し、R2を置換することによって多種のアミノ酸を表すことができる。また、この場合、下記一般式(2)は、「α-アミノ酸-N-カルボキシ無水物(通称NCA)」を表している。
【0051】
【0052】
[式中、R1~R3は、それぞれ独立に、―H、―OH、―COOH、―COO-、―CN、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のチオール基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のスルホ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のシリル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルキニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~20のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリールオキシ基を表し、
R1~R3は、隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよい。
mは1~6の整数を表し、mが2以上の場合、複数存在するR2およびR3は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
Mは水素原子またはアルカリ金属原子を表す。]
【0053】
【0054】
[式中、XおよびYは、それぞれ独立に、―Cl、―OCCl3、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のチオ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基、または、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリールオキシ基を表す。]
【0055】
【0056】
[式中、R1~R3およびmは、前記一般式(1-1)と同じ意味を表す。]
【0057】
本発明の合成方法において、前記原料溶液に含まれる物質が、上記一般式(1-1)および(1-2)で表される化合物であって、上記一般式(2)で表される化合物を得ることができる反応式は、一部(Mなど)を省略して下記式(3)のように表される。
【0058】
【0059】
以下、上記の合成方法について詳細を説明する。最初に、前記一般式(1-1)について説明する。
【0060】
一般式(1-1)において、R1~R3で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のチオ基」における「チオ基」は、「―S―H」または「―S―」を有する基を意味し、「置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のチオ基」における「置換基」は、「―S―」の一方に結合する置換基または金属原子を意味する。
【0061】
一般式(1-1)において、R1~R3で表される「置換基を有してもよい炭素原子数1~20のスルホ基」における「スルホ基」は、「―SO3―H」または「―SO3―」を意味し、「置換基を有してもよい炭素原子数0~20のスルホ基」における「置換基」は、「―SO3―」の一方に結合する置換基または金属原子を意味する。
【0062】
一般式(1-1)において、R1~R3で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基」における「炭素原子数0~20のアミノ基」としては、具体的に、無置換アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジ-t-ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などがあげられる。
【0063】
一般式(1-1)において、R1~R3で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のシリル基」における「炭素原子数0~20のシリル基」としては、具体的に、―SH3、トリメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基などがあげられる。
【0064】
一般式(1-1)において、R1~R3で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、具体的に、メチル基(―Me)、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソオクチル基などの分岐状のアルキル基があげられる。
【0065】
一般式(1-1)において、R1~R3で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基」における「炭素原子数3~20のシクロアルキル基」としては、具体的に、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などがあげられる。
【0066】
一般式(1-1)において、R1~R3で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、などをあげることができる。
【0067】
一般式(1-1)において、R1~R3で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルキニル基」における「炭素原子数2~20のアルキニル基」としては、エチニル基、「―C≡C―」を有する基があげられ、「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルキニル基」における「置換基」は、「―C≡C―」の一方に結合する置換基または金属原子を意味する。
【0068】
一般式(1-1)において、R1~R3で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」における「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」としては、具体的に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などの直鎖状のアルコキシ基;イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの分岐状のアルコキシ基があげられる。
【0069】
一般式(1-1)において、R1~R3で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数5~20のシクロアルコキシ基」における「炭素原子数5~20のシクロアルコキシ基」としては、具体的に、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基;1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、などがあげられる。
【0070】
一般式(1-1)において、R1~R3で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアシル基」における「炭素原子数1~20のアシル基」としては、具体的に、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリリル基、ベンゾイル基などがあげられる。
【0071】
一般式(1-1)において、R1~R3で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」としては、具体的に、フェニル基、ベンゾイル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、インデニル基、フルオレニル基などの芳香族炭化水素基(本発明における「芳香族炭化水素基」とは、アリール基または縮合多環芳香族基も含む)があげられる。
【0072】
一般式(1-1)において、R1~R3で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基」における「炭素原子数2~20の複素環基」としては、具体的に、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、カルバゾニル基、カルボリニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基などがあげられる。
【0073】
一般式(1-1)において、R1~R3で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリールオキシ基」における「炭素原子数6~20のアリールオキシ基」としては、具体的に、フェニルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基などがあげられる。
【0074】
一般式(1-1)においてR1~R3で表される、
「置換基を有する炭素原子数0~20のチオ基」、
「置換基を有する炭素原子数0~20のスルホ基」、
「置換基を有する炭素原子数0~20のアミノ基」、
「置換基を有する炭素原子数0~20のシリル基」、
「置換基を有する炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、
「置換基を有する炭素原子数3~20のシクロアルキル基」、
「置換基を有する炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、
「置換基を有する炭素原子数2~20のアルキニル基」、
「置換基を有する炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、
「置換基を有する炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基」、
「置換基を有する炭素原子数1~20のアシル基」、
「置換基を有する炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」、
「置換基を有する炭素原子数2~20の複素環基」、または
「置換基を有する炭素原子数6~20のアリールオキシ基」における「置換基」としては、
具体的に、水酸基(―OH)、ニトロ基(―NO2)、ニトロソ基(―NO)、シアノ基(―CN)、カルボキシル基(―COOH)、―COO-、
―SO3
-、チオール基(―SH)、置換基を有するチオ基(―S―)、スルホンアミド(―S(=O)2―NH2)基、メシル基、トシル基などのスルホニル基(―S(=O)2―)を有する基;
無置換アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジ-t-ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの、炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素原子数6~20のアリール基を有する一置換もしくは二置換アミノ基;
無置換シリル基、―SH3、トリメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基などの炭素原子数0~20のシリル基;
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、n-オクチル基、t-オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基などの炭素原子数3~20のシクロアルキル基;
ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;
エチニル基、または「―C≡C―」を複数結合した炭素原子数2~20の基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基などの炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;
シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基;
ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリリル基、ベンゾイル基などの炭素原子数1~20のアシル基
フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基;
ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、カルバゾニル基、カルボリニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナントリジニル基、ヒダントイン基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ピラニル基、クマリニル基、イソベンゾフラニル基、キサンテニル基、オキサントレニル基、ピラノニル基、チエニル基、チオピラニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、チオキサンテニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、モルホリニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基などの炭素原子数2~20の複素環基;
シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、(1,3-もしくは1,4-)シクロヘキサジエニル基、1,5-シクロオクタジエニル基などの炭素原子数3~20の環状オレフィン基;などがあげられる。これらの「置換基」は、1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」は前記例示した置換基を有していてもよく、さらに、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0075】
一般式(1-1)において、R1は、―H、置換基を有していてもよい炭素原子数0~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基が好ましい。
【0076】
一般式(1-1)において、R2およびR3は、―H、置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数0~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基が好ましい。
【0077】
一般式(1-1)において、R1~R3は、隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよく、環を形成する場合、5員環または6員環であることが好ましい。
【0078】
一般式(1-1)において、mはメチレン基、メチレン基に結合したR2およびR3の数を表し、1~6の整数を表し、1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0079】
一般式(1-1)において、「M」は、水素原子、または、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子、セシウム原子などのアルカリ金属原子を表し、ナトリウム原子であることが好ましい。
【0080】
続いて、前記一般式(1-2)で表される化合物について説明する。一般式(1-2)において、XおよびYで表される、
「置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のチオ基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基」または
「置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリールオキシ基」は、
前記一般式(1-1)においてR1~R3で表されるそれぞれの基と同じ意味を有する。
【0081】
前記一般式(1-2)で表される化合物の具体例としては、ホスゲン、ジホスゲン、炭酸ビス(トリクロロメチル)(またはトリホスゲン)、カルボニルジイミダゾール、クロロギ酸4-ニトロフェニルなどがあげられるが、これらに限定されない。具体的な構造としては、下記式のような化合物があげられるがこれらに限定されない。
【0082】
【0083】
一般式(1-2)において、XおよびYは、―OCCl3であるのが好ましい。また、一般式(1-2)で表される化合物は、炭酸ビス(トリクロロメチル)またはトリホスゲンであることが好ましい。
【0084】
本発明のフローリアクターを用いる合成方法において、前記原料溶液に含まれる物質が、前記一般式(1-1)および(1-2)で表される化合物である合成方法について、
図3を用いて以下に詳細に説明する。
図3は、本発明のフローリアクター100を説明する
図1または
図2に基づいて、具体的な化合物の合成例を示した概略図である。
【0085】
図3において、原料溶液(1-1)として、前記一般式(1-1)で表される化合物(アミノ酸のナトリウム塩など)(1当量)と塩基(1当量以上)を溶媒1(例えば、水)に溶解した原料溶液(1-1)を、「あらかじめpH7~14に調整されている塩基性溶液」とする。この「塩基性溶液」を原料溶液供給装置11を用いて、反応に適した流速で注入する。同時に、原料溶液(1-2)として、前記一般式(1-2)で表される化合物(例えば、ホスゲンおよびホスゲン等価体など)(ホスゲン換算で1当量以上)を溶媒2(例えば、有機溶媒)に溶解した原料溶液(1-2)を、原料溶液供給装置12を用いて、反応に適した流速で注入している。このとき、両者の原料溶液の流速は、溶液中の原料物質どうしの反応に化学量論的に適した流速に調整されている。本発明における原料溶液または原料溶液の混合開始後に希釈する溶媒の流速としては、フローリアクターの流路の形状により異なるが、例えばマイクロフローリアクターのような1mm以下の流路を有するフローリアクターの場合、0.1~50mL/minの間であればよく、0.3~10mL/minであるの好ましい。こうして、原料溶液(1-1)と原料溶液(1-2)がミキサー20に導入されると、2種の溶液が混合し、合成開始となる。
【0086】
続いて、ミキサー20内部での混合開始からミキサー20の排出口を経て送液管21の内部における反応としては、3段階(
図3中のステップ1~3)の反応に分けられる。以下、各ステップについての簡便な説明のために、
図3に示すように、一般式(1-1)においてはR
1=R
3=HおよびM=Naとし、一般式(1-2)においてはX=Y=Clのホスゲン(またはホスゲン等価体)の例について説明する。
混合直後のステップ1(s1)においては、最も求核性の高いカルボキシ基(―COO
-)がホスゲンおよびホスゲン等価体をまず攻撃し、続いてアミノ基(―NH
2)がホスゲンおよびホスゲン等価体を攻撃して所望のNCAと、1当量の塩基の塩酸塩を生じる。
次にステップ2(s2)においては、過剰に添加したホスゲンおよびホスゲン等価体はここで水と反応して分解し、塩化水素を生じる。残存した塩基は塩化水素と反応してやがてすべての塩基が消費される。
その後のステップ3(s3)においては、生じた塩化水素は反応溶液中で遊離のまま存在するため、反応溶液が酸性となる。これにより塩基性条件下でのNCAの望まない重合および加水分解が抑制される。このようにして、目的の構造を有するNCAなどの前記一般式(2)で表される化合物を得ることができる。
【0087】
また、合成されたNCAを含有する液体(上記の3ステップ後の液体を反応溶液とする)は水と有機溶媒、塩化水素を含んでいるが、もし有機溶媒が塩化水素をよく溶かすものであって、なおかつNCAが酸性条件下で不安定な官能基をもつ場合には、これが損なわれるおそれがある。これを防ぐためには、
図2のフローリアクターの図で示すように、送液管21の先にミキサー30を接続し、ミキサー30に送液管220を通して原料供給源22から、反応溶液と酸の溶解性が低い有機溶媒などの適した溶媒を導入して、ミキサー30内部で瞬時に希釈し、有機層中の酸濃度を低下させることが好ましく、このような方法によって、目的の構造を有するNCAなどの前記一般式(2)で表される化合物をより高収率で得ることができる。
【0088】
本発明の合成方法で得られる、前記一般式(2)で表される化合物の具体例を下記に示すが、これらに限定されない。これらは、生じ得るすべての構造異性体、立体異性体を包含するものとし、下記構造式では、水素原子を一部省略している。
【0089】
【0090】
【実施例】
【0091】
以下実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0092】
[実施例1]
<マイクロフローリアクターの組み立て>
図2に示すようなフローリアクター100の実施例として、下記のようにマイクロフローリアクターを組み立てた。原料溶液(1-1)供給装置としてガスタイトシリンジ11と、ミキサー20の導入口とを、PTFE樹脂製送液管110およびステンレス鋼製送液管110(溶液の温度制御用)で接続した。同様に、原料溶液(1-2)供給源としてガスタイトシリンジ12と、ミキサー20のもう一方の導入口とを、PTFE樹脂製送液管120およびステンレス鋼製送液管120(溶液の温度制御用)で接続した。ミキサー20の排出口とミキサー30の導入口とを反応管21(PTFE樹脂製)で接続し、ミキサー30の排出口と背圧弁を反応管31で接続した。各ミキサーと反応管は、温度制御用のウォーターバスに浸漬した。
フローリアクターの各部の詳細は下記の通りである。
ミキサー:マイクロミキサー(三幸精機株式会社製、ステンレス鋼製、内径:0.25mm)
送液管または反応管:PTFE製チューブ(センシュー化学株式会社製(内径:0.25mmもしくは0.80mm);PEEKユニオン、ステンレス鋼製チューブ、ステンレス鋼製フィッティング、ステンレス鋼製ユニオン(内径:0.80mm)および背圧弁(40psi(GLサイエンス株式会社製)
原料溶液供給装置(溶液導入用):シリンジポンプ(Harvard社製、PHD ULTRA and PHD2000)、ガスタイトシリンジ(SGE社製、10mL)、ガスタイトシリンジ-PTFEチューブ接続コネクター(フロン工業株式会社製)
【0093】
<NCAのフロー合成>
<L-フェニルアラニン-NCA(式(2a))の合成>
原料溶液(1-1)として、遊離アミノ酸(L-フェニルアラニン)のナトリウム塩(0.50M,1.00当量)とN-メチルモルホリン(2.25M,4.50当量)の水溶液(流速:2.40mL/min)と、原料溶液(1-2)としてトリホスゲン(0.25M,1.00当量)溶液(溶媒:アセトニトリル)(4.80mL/min)を20℃に制御された水浴中に浸けたミキサー20にシリンジポンプで導入し、混合した。この混合後の溶液は20℃に制御された水浴中に浸けた反応管21(内径:0.25mm,長さ:244mm,体積:12.0μL,反応時間:0.10秒)を通過中に反応する。この混合後の溶液と、酢酸エチル(流速:2.40mL/min)を20℃に制御された水浴中に浸けたミキサー30にシリンジポンプで導入し、前記混合後の溶液に酢酸エチル溶媒を注入することにより希釈した。希釈した溶液は20℃に制御された水浴中に浸けた反応管31(内径:0.80mm,長さ:298mm,体積:150μL,反応時間:0.94秒)を通過させた後、背圧弁も通過させて、40mLの酢酸エチルを入れて0℃に冷却したフラスコ中に反応液として回収した。なお、反応液の回収はシリンジポンプの運転開始から20秒後、定常状態に達した後に始め、100秒間回収した。
得られた二層混合物の有機層のみを分液回収し、さらに水層から酢酸エチルで抽出して回収した有機層を混合した。この有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に10℃で濃縮することにより、生成物のL-フェニルアラニン-NCA(式(2a))を得た。
【0094】
なお、本発明の実施例で合成された生成物の構造解析、純度評価は、下記の測定により行った。融点測定、核磁気共鳴分析(1H-NMR、13C-NMR、型番:ブルカー社製 AVANCE III HD 500)、赤外分光分析(IR、型番:日本分光株式会社製フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)FT/IR-4100、赤外-全反射測定(ATR、型番:ATR PRO ONE))、旋光分析(型番:ルドルフ・リサーチ・アナリティカル社製旋光計 Autopol IV)、質量分析(MS、型番:ブルカー株式会社製 エレクトロスプレーイオン化高分解能質量分析(HRMS)装置(ESI-TOF-MS)、型番:micrOTOF II)、高速液体クロマトグラフィー分析(HPLC、型番:株式会社島津製作所製 LC-10AT VP、SPD-10A VP、CTO-20A、SCL-10A VP)。NMR測定により目的物以外の不純物が観察された場合、適切な溶媒を用いた再結晶操作により精製した。
【0095】
回収したL-フェニルアラニン-NCA(下記式(2a))について、精製方法および同定のための分析結果を下記に示す。また、表1に実施例1で得られたL-フェニルアラニン-NCAの収率を示す。
精製方法:分液操作;収量:400mg,2.09mmol,quant.,白色固体;
融点:88-89℃;
IR(ATR法):(cm-1)3258,1833,1769,1364,1295,1116,917,755.
[α]31
D=-97.5(c 1.05,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)7.34-7.27(m,3H),7.17-7.16(m,2H),6.62(brs,1H),4.52(dd,J=4.4,7.5Hz,1H),3.22(dd,J=4.4,14.2Hz,1H),3.01(dd,J=7.5,14.2Hz,1H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)169.1,152.4,133.9,129.4,129.2,128.0,59.0,37.7.
【0096】
【0097】
【0098】
[実施例2および実施例3]
遊離アミノ酸のナトリウム塩/N-メチルモルホリン水溶液の流速を1.8mL/minおよび1.2mL/minに変えた以外は、実施例1と同様の方法で、L-フェニルアラニン-NCAを合成した。表1に収率を合わせて示す。
【0099】
[実施例4]
トリホスゲンを溶解した溶液の溶媒をアセトニトリルからテトラヒドロフランに変え、遊離アミノ酸のナトリウム塩/N-メチルモルホリン水溶液の流速を1.2mL/minにした以外は、実施例1と同様の方法で、L-フェニルアラニン-NCAを合成した。表1に収率を合わせて示す。
【0100】
表1から明らかなように、アセトニトリルやテトラヒドロフランなどの溶媒を用いた結果は、高い収率でL-フェニルアラニン-NCAを合成することができ、特に、アセトニトリル溶媒の場合は、より高い収率を得た。
【0101】
[実施例5~実施例10]
トリホスゲンの当量をXとし、塩基の当量をYとし、酸解離定数(pKa)(水、25℃)の異なる様々な塩基について、比較を行った。表2に結果を示す。
【0102】
【0103】
[比較例1]
<バッチ合成方法によるL-フェニルアラニン-NCA(式(2a))の合成>
下記式(4)で表されるバッチ式の合成方法で、下記式(2a)で表されるNCAを合成した。以下に方法を示す。強撹拌(磁気撹拌機、1000rpm)したL-フェニルアラニン ナトリウム塩(下記式(1a))(0.50M、1.00当量(eq.))、N-メチルモルホリン(NMM)(2.25M、4.50当量(eq.))(1.00mL)の水溶液に対してトリホスゲン(triphosgene)の(0.250M,1.0当量)のアセトニトリル(MeCN)(2.00mL)溶液をアルゴン雰囲気下、20℃で一気に加えた。20℃で10秒間撹拌後(対応するフロー合成では反応時間が0.1秒だが、この操作をバッチ式の反応で実現することは不可能であるため、10秒に設定した)イソプロピルアミン(5.00M,10.0当量)のジクロロメタン(DCM)(1.00mL)溶液を20℃で一気に加えた。その後、飽和重曹水と飽和食塩水を加え、分液後、水層からDCMで2回抽出した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して下記式(3a)で表される化合物を得た。
【0104】
【0105】
上記のバッチ式の合成方法により回収したL-フェニルアラニン-NCA(式(2a))の同定分析結果を下記に示す。また、収率の結果を表2に合わせて示す。
IR(neat):(cm-1)3299,2972,1651,1524,1455,1366,1173,745,702.
[α]31
D=-48.9(c 1.10,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)7.33-7.28(m,2H),7.24-7.20(m,3H),7.08(brd,J=7.0Hz,1H),4.08-4.01(m,1H),3.54(dd,J=4.0,9.0Hz,1H),3.20(dd,J=4.0,13.5Hz,1H),2.71(dd,J=9.0,13.5Hz,1H),1.39(brs,2H),1.11(d,J=6.5Hz,6H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)173.1,137.8,129.2,128.4,126.6,56.2,41.0,40.6,22.6,22.5.
HRMS(ESI-TOF-MS):calcd.for [C12H18N2O+H]+ 207.1492, found 207.1487.
【0106】
表2の結果から、本発明のフローリアクターを用いた場合、各種塩基で60%以上の再現性のある収率が得られた。特に、L-フェニルアラニン-NCAが、トリホスゲン1.0、N-メチルモルホリン4.5当量の場合に高収率で得られることがわかった。
一方、バッチ合成法で行った場合、本合成を3回行ったところ収率は76-94%とばらつき、再現性の高い結果を得ることはできなかった。これは二層系反応において僅かな混合操作の違いも反応成績に影響を与えるためであり、本反応をバッチ反応で再現性良く実施することは著しく困難である。
【0107】
[実施例11]
<O-ベンジル-L-セリン-NCA(式(2b))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をO-ベンジル-L-セリンに変えた以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2b)で表されるO-ベンジル-L-セリン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作と再結晶
収量:370mg(1.67mmol)、収率84%、白色固体;融点69-70℃.
IR(ATR法):(cm-1)3178,2859,1845,1747,1357,1292,1098,921,740.
[α]32
D=-32.1(c 1.11,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)7.39-7.28(m,5H),5.89(brs,1H),4.60-4.54(m,2H),4.44(dd,J=3.0,5.5Hz,1H),3.79-3.73(m,2H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)167.7,152.6,136.7,128.8,128.4,128.0,73.8,67.9,58.5.
【0108】
【0109】
[実施例12]
<O-ベンジル-L-スレオニン-NCA(式(2c))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をO-ベンジル-L-スレオニンに変えた以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2c)で表されるO-ベンジル-L-スレオニン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製法:分液操作
収量:473mg,2.01mmol,quant.,白色固体;融点120-121℃.
IR(ATR法):(cm-1)3260,1852,1744,1252,1090,923,660.
[α]26
D=-68.5(c 1.04,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz、CDCl3):δ(ppm)7.36-7.26(m,5H),6.73(brs,1H),4.61(d,J=11.5Hz,1H),4.43(d,J=11.5Hz,1H),4.18(d,J=4.5Hz,1H),3.94-3.89(m,1H),1.33(d,J=6.0Hz,3H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)167.8,152.9,137.0,128.7,128.3,128.0,73.2,71.4,63.0,16.1.
【0110】
【0111】
[実施例13]
<S-ベンジル-L-システイン-NCA(式(2d))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をS-ベンジル-L-システインに変えた以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2d)で表されるS-ベンジル-L-システイン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製法:分液操作
収量:491mg,2.07mmol,quant.;白色固体;融点100-101℃.
IR(ATR法):(cm-1)3299,1793,1291,1122,1077,928,753,713.
[α]23
D=-63.0(c 1.28,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)7.36-7.26(m,5H),6.42(brs,1H),4.31(dd,J=3.6,7.1Hz,1H),3.76(s,2H),2.95(dd,J=3.6,14.5Hz,1H),2.77(dd,J=7.1,14.5Hz,1H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)168.2,152.2,137.2,129.1,129.0,127.9,57.8,37.2,32.8.
【0112】
【0113】
[実施例14]
<サルコシン-NCA(式(2e))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をサルコシンに変えた以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2e)で表されるサルコシン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製法:分液操作と再結晶
収量:186mg,1.62mmol,収率81%,白色固体;融点95-96℃(分解).
IR(ATR法):(cm-1)2968,1847,1757,1444,1401,1274,1218,984,902,748.
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)4.13(s,2H),3.06(s,3H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)165.3,152.4,51.1,30.5.
【0114】
【0115】
[実施例15]
<L-プロリン-NCA(式(2f))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をL-プロリンに変えた以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2f)で表されるL-プロリン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作と再結晶
収量:240mg,1.70mmol,収率85%,白色固体;融点44-46℃.
IR(ATR法):(cm-1)2912,1822,1765,1363,1326,950,919,760.
[α]33
D=-100.9(c 1.11,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)4.35(dd,J=7.8,9.0Hz,1H),3.82-3.76(m,1H),3.36-3.31(m,1H),2.36-2.30(m,1H),2.26-2.19(m,1H),2.18-2.09(m,1H),2.00-1.92(m,1H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)168.9,155.0,63.2,46.7,27.8,27.0.
【0116】
【0117】
[実施例16]
<グリシン-NCA(式(2g))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をグリシンに変えた以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2g)で表されるグリシン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作と再結晶
収量:132mg,1.31mmol,収率65%;黄白色固体;融点>200℃.
IR(ATR法):(cm-1)3256,1856,1732,1644,1275,1071,930,720,637.
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ(ppm)8.83(brs,1H),4.19(s,2H).
13C NMR(125MHz,DMSO-d6):δ(ppm)169.4,153.0,46.3.
【0118】
【0119】
[実施例17]
<L-アラニン-NCA(式(2h))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をL-アラニンに変えた以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2h)で表されるL-アラニン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作
収量:190mg,1.65mmol,収率83%,白色固体;融点85-86℃.
IR(ATR法):(cm-1)3324,1832,1763,1359,1281,1142,926,742.
[α]23
D=+3.8(c 1.05,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ(ppm)9.00(brs,1H),4.50-4.45(m,1H),1.33(d,J=7.0Hz,3H).
13C NMR(125MHz,DMSO-d6):δ(ppm)172.5,151.8,52.9,16.8.
【0120】
【0121】
[実施例18]
<L-バリン-NCA(式(2i))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をL-バリンに変えた以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2i)で表されるL-バリン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作と再結晶
収量:244mg,1.71mmol,収率86%,白色固体;融点62-63℃(分解).
IR(ATR法):(cm-1)3288,2974,1838,1748,1368,1255,1112,1084,938,753.
[α]31
D=-45.5(c 1.07,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)6.48(brs,1H),4.22-4.21(m,1H),2.29-2.21(m,1H),1.09(d,J=6.5Hz,3H),1.04(d,J=6.5Hz,3H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)168.8,153.0,63.2,30.9,18.4,16.7.
【0122】
【0123】
[実施例19]
<L-ロイシン-NCA(式(2j))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をL-ロイシンに変え、反応液回収時間を1335秒とした以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2j)で表されるL-ロイシン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作と再結晶
収量:3.81g,24.2mmol,収率91%,白色固体;融点69-71℃.
IR(ATR法):(cm-1)3288,2965,1814,1749,1474,1369,1291,935,616.
[α]33
D=-45.6(c 1.00,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)6.59(brs,1H),4.34(dd,J=3.7,8.8Hz,1H),1.87-1.78(m,2H),1.72-1.65(m,1H),1.01(d,J=6.4Hz,3H),0.99(d,J=6.4Hz,3H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)170.0,152.7,56.3,41.0,25.2,22.8,21.7.
【0124】
【0125】
[実施例20]
<L-イソロイシン-NCA(式(2k))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をL-イソロイシンに変えた以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2k)で表されるL-イソロイシン-NCAを得た。同定分析結果を下記に示す。
収量:322mg,2.05mmol,quant.,白色固体;融点67-68℃.
IR(ATR法):(cm-1)3276,2969,1847,1761,1355,1311,1230,915,759.
[α]23
D=-29.7(c 1.15,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ(ppm)9.08(s,1H),4.39(d,J=4.0Hz,1H),1.82-1.78(m,1H),1.39-1.31(m,1H),1.26-1.17(m,1H),0.92(d,J=6.9Hz,3H),0.86(t,J=7.4Hz,3H).
13C NMR(125MHz,DMSO-d6):δ(ppm)170.9,152.2,61.8,36.5,23.9,14.8,11.3.
【0126】
【0127】
[実施例21]
<L-メチオニン-NCA(式(2l))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をL-メチオニンに変えた以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2l)で表されるL-メチオニン-NCAを得た。同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作
収量:379mg,2.16mmol,quant.,黄色油状.
IR(neat):(cm-1)3319,1853,1781,1271,1099,919,758.
[α]24
D=-2.4(c 0.83,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)7.12(brs,1H),4.54-4.52(m,1H),2.69(t,J=7.0Hz,2H),2.30-2.24(m,1H),2.16-2.10(m,4H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)169.9,152.9,56.7,30.2,29.9,15.2.
【0128】
【0129】
[実施例22]
<O-t-ブチルジメチルシリル-L-セリン-NCA(式(2o))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をO-t-ブチルジメチルシリル-L-セリンに変え、反応液回収時間を50秒とした以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2o)で表されるO-t-ブチルジメチルシリル-L-セリン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作
収量:233mg,0.951mmol,収率95%,白色固体;融点80-81℃.
IR(ATR法):(cm-1)3284,2928,2856,1859,1750,1258,1098,895.
[α]25
D=-42.5(c 1.13,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)6.42(brs,1H),4.38(t,J=3.0Hz,1H),4.01(dd,J=3.0,11.0Hz,1H),3.89(dd,J=3.0,11.0Hz,1H),0.88(s,9H),0.08(s,6H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)168.1,153.2,61.9,60.4,25.7,18.2,-5.4,-5.6.
HRMS(ESI-TOF-MS):calcd.for [C10H19NO4Si+Na]+ 268.0976,found 268.0994.
【0130】
【0131】
[実施例22]
<O-t-ブチル-L-チロシン-NCA(式(2p))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をO-t-ブチル-L-チロシンに変えた以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2p)で表されるO-t-ブチル-L-チロシン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作
収量:544mg,2.06mmol,quant.,白色固体;融点110-111℃.
IR(ATR法):(cm-1)3272,2975,1853,1742,1506,1366,1159,898,753.
[α]23
D=-90.3(c 1.21,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ(ppm)9.05(s,1H),7.08(d,J=8.5Hz,2H),6.91(d,J=8.5Hz,2H),4.74(t,J=4.5Hz,1H),2.98(d,J=4.5Hz,2H),1.27(s,9H).
13C NMR(125MHz,DMSO-d6):δ(ppm)170.9,154.1,151.6,130.2,129.3,123.5,77.8,58.3,35.6,28.5.
【0132】
【0133】
[実施例23]
<L-アスパラギン酸-4-t-ブチルエステル-NCA(式(2q))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をL-アスパラギン酸-4-t-ブチルエステルに変えた以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2q)で表されるL-アスパラギン酸-4-t-ブチルエステル-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作
収量:506mg,2.35mmol,quant.,白色固体;融点137-139℃.
IR(ATR法):(cm-1)3277,1750,1717,1368,1234,1157,1100,947,903,751.
[α]23
D=-59.7(c 1.07,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ(ppm)8.98(s,1H),4.61(t,J=4.0Hz,1H),2.91(dd,J=4.0,17.5Hz,1H),2.67(dd,J=4.0,17.5Hz,1H),1.38(s,9H).
13C NMR(125MHz,DMSO-d6):δ(ppm)171.1,168.2,152.2,81.5,53.8,35.9,27.5.
【0134】
【0135】
[実施例24]
<L-グルタミン酸-5-t-ブチルエステル-NCA(式(2r))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をL-グルタミン酸-5-t-ブチルエステルに変え、反応液回収時間を95秒とした以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2r)で表されるL-グルタミン酸-5-t-ブチルエステル-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作と再結晶
収量:348mg,1.52mmol,収率80%,白色固体;融点96-97℃.
IR(ATR法):(cm-1)3313,2981,1859,1789,1696,1284,1156,1098,924,587.
[α]31
D=-26.9(c 1.04,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz, CDCl3):δ(ppm)6.38(brs,1H),4.37-4.35(m,1H),2.47(t,J=6.5Hz,2H),2.29-2.23(m,1H),2.09-2.02(m,1H),1.46(s,9H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)172.3,169.7,151.5,82.2,57.5,31.5,28.2,27.2.
【0136】
【0137】
[実施例25]
<Nε-(t-ブトキシカルボニル)-L-リシン-NCA(式(2u))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をNε-(t-ブトキシカルボニル)-L-リシンに変え、反応液回収時間を80秒とした以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2u)で表されるNε-(t-ブトキシカルボニル)-L-リシン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作と再結晶
収量:440mg,1.61mmol,quant.,白色固体;融点135-136℃.
IR(ATR法):(cm-1)3374,3284,2949,1815,1760,1687,1523,1245,943,747.
[α]30
D=-34.7(c 1.17,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)6.85(brs,1H),4.67(brs,1H),4.32(dd,J=4.5,6.5Hz,1H),3.18-3.10(m,2H),2.05-2.00(m,1H),1.88-1.81(m,1H),1.57-1.45(m,13H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)170.1,156.8,152.2,80.0,57.6,39.5,30.8,29.4,28.6,21.2.
【0138】
【0139】
[実施例26]
<1-t-ブトキシカルボニル-L-トリプトファン-NCA(式(2v))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸を1-t-ブトキシカルボニル-L-トリプトファンに変え、反応液回収時間を23秒とした以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2v)で表される1-t-ブトキシカルボニル-L-トリプトファン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作
収量:159mg,0.482mmol,quant.,白色固体;融点155-156℃.
IR(ATR法):(cm-1)3260,1854,1768,1739,1362,1251,1096,913,761.
[α]26
D=-52.2(c 0.89,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)8.13(brd,J=7.5Hz,1H),7.49-7.48(m,2H),7.36-7.33(m,1H),7.27-7.24(m,1H),6.24(brs,1H),4.57(dd,J=3.5,8.5Hz,1H),3.39(dd,J=3.5,14.5Hz,1H),3.06(dd,J=8.5,14.5Hz,1H),1.66(s,9H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)168.9,152.0,149.5,135.7,129.4,125.2,124.9,123.1,118.5,115.8,113.2,84.5,57.7,28.3,28.0.
【0140】
【0141】
[実施例27]
<L-アリルグリシン-NCA(式(2w))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をL-アリルグリシンに変えた以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2w)で表されるL-アリルグリシン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作
収量:264mg,1.87mmol,収率94%,白色固体;融点45-46℃.
IR(ATR法):(cm-1)3288,1826,1761,1363,1292,929,742,573.
[α]23
D=-57.9(c 1.19,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)6.77(brs,1H),5.80-5.71(m,1H),5.30-5.25(m,2H),4.42(dd,J=4.5,7.0Hz,1H),2.74-2.69(m,1H),2.57-2.51(m,1H);
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)169.1,152.8,129.9,121.6,57.3,35.9.
【0142】
【0143】
[実施例28]
<DL-プロパルギルグリシン-NCA(式(2x))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をDL-プロパルギルグリシンに変えた以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2x)で表されるDL-プロパルギルグリシン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作
収量:266mg,1.91mmol,収率96%,白色固体;融点113-115℃.
IR(ATR法):(cm-1)3342,3289,1831,1749,1286,929,758.
1H NMR(500MHz,アセトン-d6):δ(ppm)8.01(brs,1H),4.75-4.73(m,1H),2.84(dd,J=3.0,4.5Hz,2H),2.60(t,J=3.0Hz,1H).
13C NMR(125MHz,アセトン-d6):δ(ppm)170.5,152.7,78.2,73.6,57.3,22.2.
【0144】
【0145】
[実施例29]
<L-(3,4-アセトニド-ジヒドロキシ)フェニルアラニン-NCA(式(2y))の合成>
実施例1の遊離アミノ酸をL-(3,4-アセトニド-ジヒドロキシ)フェニルアラニンに変え、反応液回収時間を25秒とした以外は、実施例1と同様にフロー合成を行い、下記式(2y)で表されるL-(3,4-アセトニド-ジヒドロキシ)フェニルアラニン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
精製方法:分液操作と再結晶
収量:106mg,0.402mmol,収率80%,白色固体;融点130-132℃.
IR(ATR法):(cm-1)3358,1850,1766,1493,1259,928,758,574.
[α]31
D=-97.7(c 0.894,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)6.69-6.57(m,3H),6.02(brs,1H),4.48-4.47(m,1H),3.20(dd,J=3.0,14.0Hz,1H),2.89(dd,J=9.0,14.0Hz,1H),1.67(s,6H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)168.8,151.8,148.3,147.4,126.9,121.9,118.7,109.1,108.8,59.1,37.8,26.0.
HRMS(ESI-TOF-MS):calcd.for[C13H13NO5+Na]+ 286.0686, found 286.0689.
【0146】
【0147】
[実施例30]
<N-τ-トリチル-L-ヒスチジン-NCA(式(2m))の合成>
原料溶液(1-1)として、N-τ-トリチル-L-ヒスチジンのナトリウム塩(0.20M,1.00当量)とN-メチルモルホリン(0.90M,4.50当量)の水溶液(流速:2.40mL/min)と、原料溶液(1-2)としてトリホスゲン(0.10M,1.00当量)のアセトニトリル溶液(流速:4.80mL/min)を40℃に制御された水浴中に浸けたミキサー20にシリンジポンプで導入し、混合した。混合後の溶液は40℃に制御された水浴中に浸けた反応管21(内径:0.25mm,長さ:244mm,体積:12.0μL,反応時間:0.10秒)を通過中に反応する。この混合後の溶液と、酢酸エチル(流速:2.40mL/min)を40℃に制御された水浴中に浸けたミキサー30にシリンジポンプで導入し、前記混合後の溶液に酢酸エチル溶媒を注入することにより希釈した。希釈した溶液は40℃に制御された水浴中に浸けた反応管31(内径:0.80mm,長さ:298mm,体積:150μL,反応時間:0.94秒)を通過させた後、背圧弁も通過させて、40mLの酢酸エチルを入れて0℃に冷却したフラスコ中に反応液として回収した。なお、反応液の回収はシリンジポンプの運転開始から20秒後、定常状態に達した後に始め、70秒間回収した。
回収した反応液にN-メチルモルホリン(44.0μL,0.400mmol,0.714当量)を0℃で入れ、分液操作により有機層のみを得た。この有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に10℃で濃縮することにより、生成物のN-τ-トリチル-L-ヒスチジン-NCA(式(2m))(収量:188mg,0.444mmol,収率79%)を白色固体として得た。
【0148】
回収したL-ヒスチジン-NCA(下記式(2m))の同定分析結果を下記に示す。
融点:>200℃.
IR(ATR法):(cm-1)3059,1848,1781,1444,1288,923,747,699.
[α]25
D=-34.6(c 1.04,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)7.59(brs,1H),7.38-7.08(m,16H),6.66(s,1H),4.55(dd,J=3.5,8.0Hz,1H),3.15(dd,J=3.5,15.0Hz,1H),2.97(dd,J=8.0,15.0Hz,1H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)170.1,151.8,142.2,139.0,134.8,129.8,128.4,128.3,119.8,75.7,58.1,30.1.
【0149】
【0150】
[実施例31]
<N-ω-ニトロ-L-アルギニン-NCA(式(2n))の合成>
原料溶液(1-1)として、N-ω-ニトロ-L-アルギニンのナトリウム塩(0.50M,1.00当量)とN-メチルモルホリン(2.25M,4.50当量)の水溶液(流速:2.40mL/min)と、原料溶液(1-2)としてトリホスゲン(0.25M,1.00当量)のアセトニトリル溶液(流速:4.80mL/min)を20℃に制御された水浴中に浸けたミキサー20にシリンジポンプで導入し、混合した。この混合後の溶液は20℃に制御された水浴中に浸けた反応管21(内径:0.25mm,長さ:244mm,体積:12.0μL,反応時間:0.10秒)を通過中に反応する。この混合後の溶液と、酢酸エチル(流速:2.40mL/min)を20℃に制御された水浴中に浸けたミキサー30にシリンジポンプで導入し、前記混合後の溶液に酢酸エチルを注入することにより希釈した。希釈した溶液は20℃に制御された水浴中に浸けた反応管31(内径:0.80mm,長さ:298mm,体積:150μL,反応時間:0.94秒)を通過させた後、背圧弁も通過させて、40mLの酢酸エチルを入れて0℃に冷却したフラスコ中に回収した。なお、反応液の回収はシリンジポンプの運転開始から20秒後、定常状態に達した後に始め、90秒間回収した。
回収液にN-メチルモルホリン(110μL,1.00mmol,0.556当量)を0℃で入れ、分液操作により有機層のみを得た。この有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に10℃で濃縮することにより生成物のN-ω-ニトロ-L-アルギニン-NCA(式(2n))(収量:163mg,0.665mmol,収率37%)を白色固体として得た。
【0151】
回収したL-アルギニン-NCA(下記式(2n))の同定分析結果を下記に示す。
融点:>200℃.
IR(ATR法):(cm-1)3376,3309,3213,1832,1770,1608,1252,1108,926.
[α]25
D=-11.9(c 0.60,DMF).
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ(ppm)9.12(s,1H),8.56(brs,1H),7.88(brs,2H),4.45(dd,J=5.0,5.5Hz,1H),3.18-3.17(m,2H),1.81-1.58(m,4H).
13C NMR(125MHz,DMSO-d6):δ(ppm)171.6,159.3,152.0,63.4,56.9,52.5,28.5.
HRMS(ESI-TOF-MS):calcd.for[C7H11N5O5+Na]+ 268.0652, found 268.0660.
【0152】
【0153】
[実施例32]
<N-β-トリチル-L-アスパラギン-NCA(式(2s))の合成>
原料溶液(1-1)として、遊離アミノ酸(N-β-トリチル-L-アスパラギン)のナトリウム塩(0.40M,1.00当量)とN-メチルモルホリン(1.80M,4.50当量)の水溶液(流速: 2.40 mL/min)と、原料溶液(1-2)としてトリホスゲン(0.25M,1.00当量)のアセトニトリル溶液(流速:4.80mL/min)を20℃に制御された水浴中に浸けたミキサー20にシリンジポンプで導入し、混合した。混合物は20℃に制御された水浴中に浸けた反応管21(内径:0.25mm,長さ:244mm,体積:12.0μL,反応時間:0.10秒)を通過中に反応する。この混合後の溶液と、酢酸エチル(流速:2.40mL/min)を20℃に制御された水浴中に浸けたミキサー30にシリンジポンプで導入し、前記混合後の溶液に酢酸エチルを注入することにより希釈した。希釈した混合液は20℃に制御された水浴中に浸けた反応管31(内径:0.80mm,長さ:298mm,体積:150μL,反応時間:0.94秒)を通過させた後、背圧弁も通過させて、40mLの酢酸エチルを入れて0℃に冷却したフラスコ中に反応液として回収した。なお、反応液の回収はシリンジポンプの運転開始から20秒後、定常状態に達した後に始め、50秒間回収した。
続いて分液操作により有機層のみを回収した。この有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に10℃で濃縮することにより、生成物のN-β-トリチル-L-アスパラギン-NCA(式(2s))を得た。
【0154】
回収したN-β-トリチル-L-アスパラギン-NCA(下記式(2s))の同定分析結果を下記に示す。
収量:310mg,0.774mmol,収率97%,白色固体;融点>200℃.
IR(ATR法):(cm-1)3356,1858,1787,1665,1507,1267,907.
[α]25
D=-4.6(c 0.62,DMF).
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ(ppm)8.99(s,1H),8.89(s,1H),7.28-7.14(m,15H),4.55(t,J=4.0Hz,1H),3.06(dd,J=4.0,16.5Hz,1H),2.75(dd,J=4.0,16.5Hz,1H).
13C NMR(125MHz,DMSO-d6):δ(ppm)171.5,167.8,152.3,144.4,128.5,127.6,126.5,69.6,53.9,36.8.
【0155】
【0156】
[実施例33]
<N-ω-トリチル-L-グルタミン-NCA(式(2t))の合成>
実施例32の遊離アミノ酸をN-ω-トリチル-L-グルタミンに変え、反応液回収時間を80秒とした以外は、実施例32と同様にフロー合成を行い、分液操作の後さらに再結晶を行うことにより精製し、下記式(2t)で表されるN-ω-トリチル-L-グルタミン-NCAを得た。同定分析結果を下記に示す。
収量:434mg,1.05mmol,収率82%,白色固体;融点>200℃.
IR(ATR法):(cm-1)3384,3199,1850,1778,1669,1489,915,754,700.
[α]26
D=-21.5(c 1.01,CH2Cl2).
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ(ppm)9.06(s,1H),8.68(s,1H),7.29-7.17(m,15H),4.34(t,J=6.5Hz,1H),2.48-2.34(m,2H),1.94-1.83(m,2H).
13C NMR(125MHz,DMSO-d6):δ(ppm)171.4,170.6,151.9,144.8,128.5,127.5,126.4,69.3,56.4,30.8,26.9.
【0157】
【0158】
[実施例34]
<β-NCAのフロー合成>
<β-フェニルアラニン-NCA(式(2-8i))の合成>
原料溶液(1-1)として、遊離アミノ酸(β-フェニルアラニン)のナトリウム塩(0.25M,1.00当量)とN-メチルモルホリン(0.63M,2.52当量)の水溶液(流速:2.40mL/min)と、原料溶液(1-2)としてトリホスゲン(0.084M,0.67当量)溶液(溶媒:アセトニトリル)(流速:4.80mL/min)を20℃の水浴中に浸けたミキサー20にシリンジポンプで導入し混合し、20℃の水浴中の反応管21(内径:0.25mm,長さ:244mm,体積:12.0μL,反応時間:0.10秒)を通過中に反応する。この混合後の溶液と、酢酸エチル(流速:2.40mL/min)を20℃に制御された水浴中に浸けたミキサー30にシリンジポンプで導入し、前記混合後の溶液に酢酸エチル溶媒を注入することにより希釈した。希釈した溶液は20℃の水浴中の反応管31(内径:0.80mm,長さ:298mm,体積:150μL,反応時間:0.94秒)を通過させた後、背圧弁も通過させて、40mLの酢酸エチルに入れて0℃に冷却したフラスコ中に反応液として回収した。なお、反応液の回収はシリンジポンプの運転開始から20秒後、定常状態に達した後に始め、100秒間回収した。
得られた二層混合物の有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に20℃以下で濃縮することにより、下記式(2-8i)で表される生成物β-フェニルアラニン-NCAを得た。精製方法および同定分析結果を下記に示す。
【0159】
精製方法:分液操作
収量:127.5mg,0.74mmol,収率93%,白色固体;融点:97-99℃.
IR(ATR法):(cm-1)3230,3148,1791,1734,1383,1332,1115,1023,977.
1H NMR(500MHz,CD3CN):δ(ppm)7.42-7.39(m,2H),7.37-7.33(m,3H),6.94(brs,1H),4.79-4.76(m,1H),3.04(dd,J=5.5,16.5Hz,1H),2.88(dd,J=8.0,16.5Hz,1H).
13C NMR(125MHz,CD3CN):δ(ppm)163.9,150.2,137.6,129.6,129.4,125.9,51.0,37.0.
HRMS (ESI-TOF-MS):calcd.for [C6H9NO3+Na]+ 214.0475,found 214.0476.
【0160】
【0161】
以下の実施例における他のβ-アミノ酸についても、実施例34の遊離アミノ酸を対応する置換基を有するβ-アラニン誘導体に変えた以外は、実施例34と同様に合成した。結果を精製方法および同定分析結果と合わせて下記に示す。
【0162】
[実施例35]
<β-アラニン-NCA(式(2-8a))の合成>
精製方法:分液操作
収量:65.9mg,0.57mmol,収率57%,白色固体,84-86℃ decomp.;
IR(ATR法):(cm-1)3254,3150,2929,1798,1705,1344,1060,749.
1H NMR(500MHz,CD3CN):δ(ppm)6.49(brs,1H),3.33-3.30(m,2H),2.71(t,J=7.0Hz,2H).
13C NMR(125MHz,CD3CN):δ(ppm)167.3,150.8,35.6,29.1.
HRMS(ESI-TOF-MS):calcd.for [C5H7NO3+Na]+ 138.0162,found 138.0161.
【0163】
【0164】
[実施例36]
<β-ホモアラニン-NCA((2-8b))の合成>
精製方法:分液操作
収量:56.4mg,0.44mmol,収率69%,白色固体,92-95℃ deconp.
IR(ATR法):(cm-1)3154,2975,1807,1714,1386,1331,1106,995,595.
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)6.95(brs,1H),3.79-3.78(m,1H),2.87(dd,J=4.0,16.0Hz,1H),2.53(dd,J=9.5,16.0Hz,1H),1.35-1.34(d,J=6.5Hz,3H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)164.5,150.4,42.9,36.2,20.7.
【0165】
【0166】
[実施例37]
<α-メチル-β-アラニン-NCA(式(2-8c))の合成>
精製方法:分液操作
収量:86.1mg,0.67mmol,収率67%,白色固体;融点112-114℃.
IR(ATR法):(cm-1)3280,2338,1792,1734,1642,1354,1077,973,598.
1H NMR(500MHz,CD3CN):δ(ppm)6.58(brs,1H),3.34-3.29(m,1H),3.06(t,J=12.0Hz,1H),2.87-2.79(m,1H),1.16(d,J=4.3Hz,3H).
13C NMR(125MHz,CD3CD):δ(ppm)169.5,150.0,41.0,33.6,11.5.
HRMS(ESI-TOF-MS):calcd.for [C5H7NO3+Na]+ 152.0318,found 152.0317.
【0167】
【0168】
[実施例38]
<N-メチル-β-アラニン-NCA(式(2-8d))の合成>
精製方法:分液操作
収量:62.5mg,0.48mmol,収率48%,無色油状.
IR(neat):(cm-1)3500,2935,1796,1731,1356,1152,1097,710.
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)3.47(t,J=6.5Hz,2H),3.12(s,3H),2.87(t,J=6.5Hz,2H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)164.9,149.5,42.9,36.6,29.4.
HRMS (ESI-TOF-MS):calcd.for [C5H7NO3+Na]+ 152.0318,found 152.0318.
【0169】
【0170】
[実施例39]
<α-ジメチル-β-アラニン-NCA(式(2-8e))の合成>
精製方法:分液操作
収量:106.2mg,0.74mmol,収率74%,白色固体;融点:110-112℃.
IR(ATR法):(cm-1)3258,3162,2987,1794,1733,1338,1051,961,697.
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)7.06(brs,1H),3.22(d,J=2.0Hz,2H),1.36(s,6H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)170.5,151.0,47.7,37.0,22.6.
HRMS (ESI-TOF-MS):calcd.for [C6H9NO3+Na]+ 166.0475,found 166.0474.
【0171】
【0172】
[実施例40]
<β-ホモバリン-NCA(式(2-8f))の合成>
精製方法:分液操作
収量:86.2mg,0.67mmol,収率85%,白色固体;融点:69-72℃.
IR(ATR法):(cm-1)3224,2972,2941,1791,1723,1396,1336,1069,966.
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)7.19(brs,1H),3.45-3.41(m,1H),2.82(dd,J=5.0,16.0Hz,1H),2.64(dd,J=8.0,16.0Hz,1H),1.87-1.82(m,1H),1.00(t,J=7.5Hz,6H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)165.1,150.9,52.4,32.1,31.6,17.9,17.8.
【0173】
【0174】
[実施例41]
<β-ホモロイシン-NCA(式(2-8g))の合成>
精製方法:分液操作
収量:127.5mg,0.74mmol,収率98%,白色固体;融点:63-65℃.
IR(ATR法):(cm-1)3270,2959,1797,1721,1389,1329,1120,1012,977.
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)7.29(s,1H),3.69(brs,1H),2.88(dd,J=4.5,16.0Hz,1H),2.55(dd,J=8.0,16.0Hz,1H),1.78-1.70(m,1H),1.57-1.52(m,1H),1.39-1.35(m,1H),0.95(d,J=4.5Hz,6H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)164.8,150.7,45.7,43.8,34.7,24.2,22.5,22.0.
【0175】
【0176】
[実施例42]
<β-ホモフェニルアラニン-NCA(式(2-8h))の合成>
精製方法:分液操作
収量:208.6mg,1.02mmol,quant.,白色固体;融点:97-99℃.
IR(ATR法):(cm-1)3306,1794,1721,1387,1341,1087,982,745,695.
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)7.35-7.17(m,5H),6.77(brs,1H),3.86-3.83(m,1H),2.91-2.80(m,3H),2.61(dd,J=8.0,16.5Hz,1H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)164.4,150.1,134.8,129.3,129.2,127.7,48.1,41.2,33.7.
【0177】
【0178】
[実施例43]
<β-トルニルアラニン-NCA(式(2-8j))の合成>
精製方法:分液操作
収量:202.6mg,0.99mmol,収率99%,白色固体;融点:119-120℃.
IR(ATR法):(cm-1)3253,3165,2933,1792,1741,1340,1079.
1H NMR(500MHz,CD3CN):δ(ppm)7.21(s,4H),6.92(brs,1H),4.74-4.70(m,1H),3.00(dd,J=5.5,16.5Hz,1H),2.85(dd,J=8.5,16.5Hz,1H),2.31(s,3H).
13C NMR(125MHz,CD3CN):δ(ppm)166.3,150.5,139.4,136.7,130.5,126.9,50.8,37.3,21.0.
HRMS(ESI-TOF-MS):calcd.for [C6H9NO3+Na]+ 228.0631,found 228.0632.
【0179】
【0180】
[実施例44]
<β-(4-メトキシフェニル)アラニン-NCA(式(2-8k))の合成>
精製方法:分液操作
収量:193.6mg,0.99mmol,収率88%,白色固体;融点:117-119℃.
IR(ATR法):(cm-1)3221,3146,1799,1739,1614,1378,1174,823,598.
1H NMR(500MHz,CD3CN):δ(ppm)7.26-7.23(m,2H),6.94-6.91(m,2H),6.87(brs,1H),4.72-4.69(m,1H),3.75(s,3H),2.98(dd,J=5.0,16.0Hz,1H),2.86(dd,J=8.5,16.0Hz,1H).
13C NMR(125MHz,CD3CN):δ(ppm)166.4,160.7,150.4,131.5,128.4,115.1,55.8,50.6,37.3.
HRMS(ESI-TOF-MS):calcd.for [C11H11NO4+Na]+ 244.0580,found 244.0579.
【0181】
【0182】
[実施例45]
<β-(4-フルオロフェニル)アラニン-NCA(式(2-8l))の合成>
精製方法:分液操作
収量:199.3mg,0.95mmol,収率95%,白色固体;融点:85-87℃.
IR(ATR法):(cm-1)3243,3155,1792,1737,1511,1323,1121,834,517.
1H NMR(500MHz,CD3CN):δ(ppm)7.37-7.34(m,2H),7.15-7.11(m,2H),6.96(brs,1H),4.79-4.76(m,1H),3.05-3.00(m,1H),2.87(dd,J=8.5,16.5Hz,1H).
13C NMR(125 MHz,CD3CN):δ(ppm)165.3,163.583(d,JC-F=244.0Hz),149.5,135.009(d,JC-F=2.7Hz),128.409(d,JC-F=8.5Hz),115.800(d,JC-F=21.9Hz),49.7,36.4.
19F NMR(471MHz,CD3CN):δ(ppm)-115.0.
HRMS(ESI-TOF-MS):calcd.for [C10H8FNO3+Na]+ 232.0380,found 232.0382.
【0183】
【0184】
[実施例46]
<β-(4-クロロフェニル)アラニン-NCA(式(2-8m))の合成>
精製方法:分液操作
収量:231.1mg,1.02mmol,quant.,白色固体;融点:117-120℃.
IR(ATR法):(cm-1)3240,3150,2258,1793,1739,1371,1326,1119,972.
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(ppm)7.39(d,J=8.5Hz,2H),7.32(d,J=8.5Hz,2H),6.96(brs,1H),4.79-4.76(m,1H),3.04(dd,J=5.5,16.5Hz,1H),2.86(dd,J=8.5,16.5Hz,1H).
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ(ppm)165.9,150.3,138.6,134.7,129.9,128.9,50.5,37.0.
HRMS(ESI-TOF-MS):calcd.for [C10H8ClNO3+Na]+ 248.0085,found 248.0087.
【0185】
【0186】
[実施例47]
<β-(4-ニトロフェニル)アラニン-NCA(式(2-8n))の合成>
精製方法:分液操作
収量:261.0mg,1.11mmol,quant.,黄色油状.
IR(neat):(cm-1)3300,2264,1801,1748,1520,1350,1079,977.
1H NMR(500MHz,CD3CN):δ(ppm)8.19(d,J=8.5Hz,2H),7.57(d,J=8.5Hz,2H),7.04(brs,1H),4.95-4.91(m,1H),3.12(dd,J=5.5,16.5Hz,1H),2.91(dd,J=8.0,16.5Hz,1H).
13C NMR(125MHz,CD3CN):δ(ppm)165.5,150.1,148.8,146.9,128.3,124.9,50.6,36.6.
HRMS(ESI-TOF-MS):calcd.for [C11H11NO4+Na]+ 259.0325,found 259.0328.
【0187】
【0188】
[実施例48]
<イサト酸無水物(式(2-1))の合成>
精製方法:分液操作と再結晶
収量:81.2mg,0.50mmol,収率50%,白色固体;融点:235-238℃.
IR(ATR法):(cm-1)3069,2937,1760,1722,1615,1362,1008,748.
1H NMR(500MHz,DMSO):δ(ppm)11.7(brs,1H),7.91(dd,J=2.5,7.5Hz,1H),7.75-7.72(m,1H),7.26-7.23(m,1H),7.15(d,J=8.5Hz,1H).
13C NMR(125MHz,DMSO):δ(ppm)159.9,147.1,141.4,137.0,129.0,123.5,115.4,110.3.
【0189】
【0190】
[実施例49]
<α-O-t-ブチル-β-アスパラギン酸-NCA(式(2-8p))の合成>
精製方法:分液操作
収量:225.1mg,1.05mmol,quant.,白色固体;融点:84-86℃.
IR(ATR法):(cm-1)3231,3167,2985,1801,1759,1720,1366,1090.
[α]29
D=+40.12(c 1.00,CH3CN)
1H NMR(500MHz,CD3CN):δ(ppm)6.82(brs,1H),4.10-4.07(m,1H),3.02(dd,J=6.5,16.5Hz,1H),2.86(dd,J=4.5,16.5Hz,1H),1.42(s,9H)
13C NMR(125MHz,CD3CN):δ(ppm)169.7,165.4,149.8,84.2,50.3,31.8,27.9.
HRMS(ESI-TOF-MS):calcd.for [C9H13NO5+Na]+ 238.0686,found 238.0683.
【0191】
【0192】
上記実施例の通り、本発明の合成方法により、有機層・水層の二層系の反応原料溶液を用いた場合であっても、フローリアクターにおけるミキサーの利用により高効率な混合を実現しており、これによりバッチ合成法では原理的に不可能な、短持間での塩基性から酸性、または酸性から塩基性への変換により、様々な構造のNCAなどの化合物を合成することが可能である。また、本発明のマイクロフローリアクターを用いる合成方法により、上記合成がさらに効果的に行えることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明のフローリアクターを用いる合成方法によれば、高収率で目的の構造の化合物を製造することが可能であり、すなわち、原料溶液混合後の短時間でのpH変換および希釈により、穏和な温度条件かつ短時間でN-カルボキシ無水物(NCA)などの不安定な官能基を有する化合物を連続的に製造できる。
【符号の説明】
【0194】
100 フローリアクター
1-1および1-2 原料溶液
11および12 原料溶液供給装置
110,120および220 送液管
20および30 ミキサー
21および31 反応管
22 溶媒または溶媒供給装置
2 生成物(または生成物を含有する混合後の溶液)