(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】情報表示システム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20231010BHJP
G16H 80/00 20180101ALI20231010BHJP
G06Q 50/22 20180101ALN20231010BHJP
【FI】
A61B10/00 Y
G16H80/00
A61B10/00 V
G06Q50/22
(21)【出願番号】P 2019115620
(22)【出願日】2019-06-21
【審査請求日】2022-06-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1 平成30年7月8日 平成30年度地域活動事業部東海・北陸ブロック研修会にて発表 2 平成30年8月25日 平成三十年度公益社団法人北海道栄養士会 医療栄養士協議会地方研修会(十勝)にて発表 3 平成30年9月27日 富山県老人福祉施設協議会 研修会にて発表 4 平成30年10月20日、21日 富山県歯科医師会 平成30年度 在宅歯科医療研修会にて発表 5 平成30年11月18日 山梨県歯科医師会 高齢者の食支援(摂食嚥下)研修事業にて発表 6 平成30年12月16日 平成30年度 石川県歯科医師会 高齢者食支援アドバンスコース研修会にて発表 7 平成31年1月13日 第4回 岐阜県歯科衛生士会 研修会にて発表 8 平成31年3月22日 平成30年度 栄養管理体制整備事業 食支援連携セミナーにて発表 9 平成31年4月6日 MRI研修会「知っておきたい!高齢者の「食べる力」と服薬支援~「食べる力」の見える化と機能低下への対応~」にて発表 10 平成31年4月14日 第3回食力の会オープンセミナー 「い~とみるカードを用いたワークショップ」にて発表 11 平成31年4月17日 高齢者のアドヒアランスを考える inKAGAにて発表 12 令和1年6月6日、7日、8日 第31回日本老年学会総会にて展示
(73)【特許権者】
【識別番号】517074602
【氏名又は名称】長谷 剛志
(73)【特許権者】
【識別番号】000153823
【氏名又は名称】株式会社八光
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】100103643
【氏名又は名称】松嶋 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100134599
【氏名又は名称】杉本 和之
(72)【発明者】
【氏名】長谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】町田 秀企
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-180956(JP,A)
【文献】特開2015-043914(JP,A)
【文献】特開2001-119513(JP,A)
【文献】実開昭54-120345(JP,U)
【文献】特開2017-070638(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0078186(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0179381(US,A1)
【文献】米国特許第05984685(US,A)
【文献】摂食・嚥下障害に対する看護師の意識調査―摂食・嚥下障害アセスメント表,摂食・嚥下訓練カードを使用して― ,日本看護学会論文集・成人看護II,2003年,Vol.34,pp.338-340
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/00- 5/0538
A61B 5/06- 5/398
G06Q 50/22
G16H 10/00-80/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数組のカードを含むカードセットであって、前記複数組のカードそれぞれは、当該複数組のカード間で同じ複数のカードからなり、前記複数のカードそれぞれには、摂食嚥下障害を有する者の状態として考えられる複数種類の候補それぞれが表されているカードセットと、情報表示装置と、を有する情報表示システムであって、
前記情報表示装置は、
前記複数組のカードが一組ずつ配られた複数の観察者のうち一定数以上の複数人それぞれにより、前記複数のカードの中から、観察対象者の状態に該当すると判断した候補のカードとして同じカードが選択されたときの当該選択されたカードの入力を受け付ける受付手段と、
前記受付手段が入力を受け付けた前記カードに基づいて、前記観察対象者に関する情報を表示部に表示する表示制御手段と、を備える、
情報表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば摂食嚥下障害が疑われる者の食事を支援するための、カードセット、プログラム、情報表示システム、及び、状態把握方法に関する。
【背景技術】
【0002】
摂食嚥下障害が疑われる者の食事を支援するときには、特許文献1が開示するように、医師、介護士等の観察者が、食事支援の対象者(入院患者、老人)を観察して当該対象者の状態を把握し、把握した状態に基づいて、当該対象者の食事支援の方法(経口維持計画)を検討していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記対象者の食事支援の方法の検討を適切に行うためには、上記対象者の状態を精度良く把握することが必要となる。しかし、特許文献1では、当該対象者の状態を精度良く把握する点について考慮されていない。
【0005】
この発明は、食事支援の対象者の状態を精度良く把握できるよう支援する、カードセット、プログラム、及び、情報表示システムと、食事支援の対象者の状態を精度良く把握できる状態把握方法と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るカードセットは、
複数組のカード(例えば、カードグループ111A~111E)を含むカードセット(例えば、カードセット110)であって、
前記複数組のカードそれぞれは、当該複数組のカード間で同じ複数のカード(例えば、カードC1~C25)からなり、
前記複数のカードそれぞれには、摂食嚥下障害を有する者の状態として考えられる複数種類の候補それぞれが表されている(例えば、
図2のカードC1~C25)。
【0007】
上記構成によれば、食事支援の対象者の状態を精度良く把握できるよう支援することができる。
【0008】
(2)上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係るカードセットは、
複数のカード(例えば、カードC1~C25)を含むカードセット(例えば、1組のカードグループ111Aからなるカードセット)であって、
前記複数のカードそれぞれには、摂食嚥下障害を有する者の状態として考えられる複数種類の候補それぞれが表されている(例えば、
図2のカードC1~C25)。
【0009】
上記構成によれば、食事支援の対象者の状態を精度良く把握できるよう支援することができる。
【0010】
(3)前記複数のカードそれぞれの前記候補は、少なくとも絵及び言葉により表現されている(例えば、
図2のカードC1~C25)、
ようにしてもよい。
【0011】
上記構成によれば、カードが表す候補を直感的に分かりやすくすることができる。
【0012】
(4)上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
前記カードセットとともに使用されるコンピュータ(例えば、情報表示装置150、又は、情報表示装置150A)を、
前記複数組のカードが一組ずつ配られた複数の観察者のうち一定数(例えば、全員、過半数以上の所定数、又は、2人)以上の複数人それぞれにより、前記複数のカード中から、観察対象者の状態に該当すると判断した候補のカードとして同じカードが選択されたときの当該選択されたカードの入力(例えば、ディスプレイ154に表示したカードの選択、カードに印刷された所定画像の読み取り)を受け付ける受付手段、
前記受付手段が入力を受け付けた前記カードに基づいて、前記観察対象者に関する情報(例えば、「考えられることは?」欄の情報、「こんな対応策を検討しましょう」欄の情報、レーダーチャートR1)を表示部(例えば、ディスプレイ154)に表示する表示制御手段、
として機能させる。
【0013】
上記コンピュータは、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等であればよく、これらの内部の、前記プログラムを実行可能なプロセッサ等であってもよい。
【0014】
上記構成によれば、食事支援の対象者の状態を精度良く把握できるよう支援することができる。さらに、観察対象者に関する情報(例えば、食事支援の方法の検討に使用される情報等)を表示することで、コンピュータのユーザ(観察者等)は観察対象者に関する情報を得ることができる。
【0015】
(5)前記受付手段は、
前記複数のカードを前記表示部に画像で表示する第1手段(例えば、
図9(D)~(H)の画面参照)と、
前記表示部に表示された前記複数のカードのうちから、前記選択された候補のカードを選択する操作(例えば、
図9(D)~(H)の画面上でカードを選択する操作)を受け付ける第2手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記複数のカードそれぞれに対応した複数の第1情報(例えば、選択項目データベースの「選択項目」)と、前記複数のカードのうち対応するカードが選択されたときに考えられること(例えば、選択項目データベースの「考えられること」)及び検討すべき事項(例えば、「検討事項」)のうちの少なくとも一方を示す複数の第2情報と、をそれぞれ対応付けて記憶した記憶手段(例えば、不揮発製記憶装置151)から、前記第2手段により受け付けられた操作により選択された前記カードに対応した第1情報に対応する前記第2情報を取得して前記表示部に表示する(例えば、「考えられることは?」欄の情報、「こんな対応策を検討しましょう」欄の情報をディスプレイ154に表示する)、
ようにしてもよい。
【0016】
上記第1情報は、対応するカードが表す前記の候補を特定する情報(例えば、選択項目)の他、対応するカードを特定する情報(例えば、カード番号のデータ)であってもよい。
【0017】
上記構成によれば、食事支援の対象者の状態を精度良く把握できるよう支援することができる他、考えられること及び検討すべき事項の表示により食事支援(特に、食事を支援するための方法の検討)を補助できる。
【0018】
(6)前記複数のカードそれぞれには、所定画像(例えば、二次元コード等の所定画像G)が印刷されており、
前記所定画像は、当該所定画像が印刷された前記カードを表し、
前記受付手段は、前記選択されたカードに印刷された前記所定画像を読み取ること(例えば、所定画像Gの撮影)で前記選択されたカードの入力を受け付ける、
ようにしてもよい。
【0019】
前記の所定画像は、当該所定画像が印刷された前記カードが表す候補を表すことで、前記カードを表すものであってもよい。
【0020】
上記構成によれば、食事支援の対象者の状態を精度良く把握できるよう支援することができる他、カードの入力が容易である。
【0021】
(7)上記目的を達成するため、本発明の第4の観点に係る情報表示システムは、
前記カードセットと、情報表示装置(例えば、情報表示装置150、又は、情報表示装置150A)と、を有する情報表示システム(例えば、情報表示装置100)であって、
前記情報表示装置は、
前記複数組のカードが一組ずつ配られた複数の観察者のうち一定数(例えば、全員、過半数以上の所定数、又は、2人)以上の複数人それぞれにより、前記複数のカードの中から、観察対象者の状態に該当すると判断した候補のカードとして同じカードが選択されたときの当該選択されたカードの入力(例えば、ディスプレイ154に表示したカードの選択、カードに印刷された所定画像の読み取り)を受け付ける受付手段(例えば、情報表示装置150や情報表示装置150AのCPU153、ディスプレイ154、及び、入力装置155)と、
前記受付手段が入力を受け付けた前記カードに基づいて、前記観察対象者に関する情報(例えば、「考えられることは?」欄の情報、「こんな対応策を検討しましょう」欄の情報、レーダーチャートR1)を表示部(例えば、ディスプレイ154)に表示する表示制御手段(例えば、情報表示装置150や情報表示装置150AのCPU153)と、を備える。
【0022】
上記構成によれば、食事支援の対象者の状態を精度良く把握できるよう支援することができる。
【0023】
(8)上記目的を達成するため、本発明の第5の観点に係る状態把握方法は、
摂食嚥下障害が疑われる対象者(実際に摂食嚥下障害を有する者を含む)の状態(例えば、観察所見)を把握する状態把握方法であって、
複数の観察者それぞれに、摂食嚥下障害を有する者の状態として考えられる候補がそれぞれ表された複数のカード(例えば、カードC1~C25)を1組ずつ配布する(例えば、カードグループ111A~111Eを1組ずつ配布する)配布ステップと、
前記複数の観察者それぞれが、配布された前記複数のカードの中から、前記対象者の観察の結果、前記対象者の状態に該当すると判断した候補のカードを選択する選択ステップと、を備え、
前記選択ステップにおいて、前記複数の観察者のうちの一定数(例えば、全員、過半数以上の所定数、又は、2人)以上の複数人が同じカードを選択したときに、当該カードに表された前記候補を前記対象者の状態として把握する。
【0024】
上記構成によれば、食事支援の対象者の状態を精度良く把握できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、食事支援の対象者の状態を精度良く把握できるよう支援する、カードセット、プログラム、及び、情報表示システムと、食事支援の対象者の状態を精度良く把握できる状態把握方法と、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本願発明の一実施形態における情報表示システムの構成図である。
【
図2】カードグループを構成する複数のカードを示す図である。
【
図3】選択項目データベースの構成の一例図である。
【
図4】選択項目データベースの構成の一例図である。
【
図5】個人情報データベースの構成の一例図である。
【
図6】観察所見データベースの構成の一例図である。
【
図7】食事提案データベースの構成の一例図である。
【
図9】情報表示装置により表示される各種表示画面を示す図である。
【
図12】変形例で使用される記入用紙を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施の形態にかかる情報表示システム100を、図面を参照しながら説明する。
【0028】
(情報表示システム100の概略説明)
情報表示システム100は、
図1に示すように、カードセット110と、情報表示装置150と、を備えている。情報表示システム100は、摂食嚥下障害が疑われる者(実際に摂食嚥下障害を有すると診断されている者も含む。)を対象者とし、当該対象者の食事を支援するシステムである。当該対象者は、病院の患者、又は、介護施設の入所者などである。食事の支援では、医師、歯科医師等の複数人の観察者が、食事をする対象者の状態を観察して把握し、把握した状態(観察所見)に基づいて、食事を支援するための方法(経口維持計画等)を検討して実施する。情報表示システム100は、特に、前記観察から前記方法の検討の過程で使用され、前記対象者の状態の精度の良い把握を支援するとともに、食事支援(特に、食事を支援するための方法の検討)を補助する。上記の観察者には、医師、及び、歯科医師の他、栄養士(管理栄養士を含む)、看護師、歯科衛生士、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士、介護職員、及び、介護支援専門員なども含まれる。
【0029】
(カードセット110の構成)
カードセット110は、5組のカードグループ111A~111Eを有する。カードグループ111A~111Eそれぞれは、
図2に示すような、互いに異なる25種類のカードC1~C25からなる。この25種類のカードC1~C25は、カードグループ111A~111Eで共通である。つまり、カードグループ111A~111Eは、それぞれ、同じカードC1~C25で構成されている。
【0030】
カードC1~C25それぞれには、摂食嚥下障害を有する者の状態として考えられる候補(観察者に選択される状態の候補)が表されている。例えば、カードC1~C25それぞれは、紙製、又は、合成樹脂製等のシート状基材に、前記候補を示す言葉やイラストを印刷して表示することにより形成される。
【0031】
前記候補は、例えば、摂食嚥下障害を有する者に表れると考えられる状態、及び/又は、その候補の状態になると(例えば、体温が高くなると)摂食嚥下機能が低下する(摂食嚥下障害が表れる)と考えられる状態を含む。前記候補は、食事をするときの対象者の状態を含む。当該状態は、対象者を観察することによって把握できる状態を含む。観察は、対象者の見た目の状態(例えば、食事の様子の外観)を見ることの他、過去の病歴(特に、その食事のタイミング以前の病歴)を調べること、及び、検温することなども含んでもよい。
【0032】
カードC1には、前記候補として、「どこか元気でない様子である」との言葉とともに、当該言葉を表す絵(元気のない様子の男性老人のイラスト)が印刷されている。他のカードC2~25も同様に、前記候補を表現した言葉及び絵が印刷されている(詳細は
図2参照)。各カードC1~C25は、前記のシート基材に印刷された絵及び文字により前記の候補を表している。カードC1~C25は、1枚1枚、異なる種類の候補を表している。カードC1~C25それぞれには、通し番号として、カード番号1~25のいずれかが割り当てられている。
図2のカードC1~C25が表す各状態は、一例であり、他の状態を適宜採用してもよい。
【0033】
(情報表示装置150の構成)
情報表示装置150は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等からなり、
図1に示すように、不揮発性記憶装置151と、RAM(Random Access Memory)152と、CPU(Central Processing Unit)153と、ディスプレイ154と、入力装置155と、を備える。
【0034】
不揮発性記憶装置151は、ハードディスクなどである。不揮発性記憶装置151には、情報表示装置150を動作させるのに必要な各種プログラム、各種データが記憶されている。例えば、不揮発性記憶装置151には、食事支援プログラム11、選択項目データベース12、個人情報データベース13、観察所見データベース14、食事提案データベース15などが記憶されている。
【0035】
食事支援プログラム11は、CPU153に実行される。CPU153は、食事支援プログラム11を実行することで、後述の食事支援処理を実行する。
【0036】
選択項目データベース12は、
図3及び4に示すように、「選択項目」と、当該「選択項目」に対応付けられた「考えられること」及び「検討事項」と、を含む。選択項目データベース12は、予め用意されたものであり、「考えられること」及び「検討事項」の内容は、「選択項目」との関係で、専門家が予め定めたものである。
【0037】
各選択項目は、摂食嚥下障害を有する者の状態として考えられる候補である。後述のように、選択項目は、対象者を観察した観察者により選択される項目である。選択項目は、合計25あり、カードC1~C25それぞれが表している前記候補でもある。各選択項目には、「項目番号」として、「1」~「25」が順次割り当てられている(
図2及び3の「項目番号」の欄の数字参照)。なお、当該項目番号と、カードC1~C25に割り当てられているカード番号と、は、同じ番号同士、同じ候補に割り当てられている。
【0038】
項目番号1~5の各選択項目は、対象者の全身状態に関する選択項目であり、「全身状態」のカテゴリに属する(
図3参照)。カードC1~C5も、「全身状態」のカテゴリに属する。
【0039】
項目番号6~10の各選択項目は、対象者の認知機能に関する選択項目であり、「認知機能」のカテゴリに属する(
図3参照)。カードC6~C10も、「認知機能」のカテゴリに属する。
【0040】
項目番号11~15の各選択項目は、対象者の口腔機能に関する選択項目であり、「口腔機能」のカテゴリに属する(
図3参照)。カードC11~C15も、「口腔機能」のカテゴリに属する。
【0041】
項目番号16~20の各選択項目は、対象者の咽頭機能に関する選択項目であり、「咽頭機能」のカテゴリに属する(
図4参照)。カードC16~C20も、「咽頭機能」のカテゴリに属する。
【0042】
項目番号21~25の各選択項目は、対象者の姿勢(食べるときの姿勢)に関する選択項目であり、「姿勢」のカテゴリに属する(
図4参照)。カードC21~C25も、「姿勢」のカテゴリに属する。
【0043】
「考えられること」は、対応する選択項目が観察者により選択されたときに、その対象者に関して考えられることである。つまり、「考えられること」は、選択項目の状態の対象者に関して考えられることである。「考えられること」は、例えば、対象者の状態が選択項目の状態となっている原因、その対象者に懸念されるリスクを含む。例えば、項目番号1の選択項目(「どこか元気がない様子である」)が選択されたときの「考えられること」としては、「疲れやすい」、「栄養状態が悪い」、「精神的な問題がある」、「脱水の可能性がある」、「処方薬が影響している」がある(
図3参照)。
【0044】
「検討事項」は、対応する選択項目が観察者により選択されたときに、その対象者に関して検討すべき事項である。前記検討すべき事項は、経口維持計画(経口による食事を維持できるように食事を支援する計画)を立てるために検討すべき事項を含む。当該事項は、例えば、摂食嚥下機能の低下を防止するために検討すべき対応策、摂食嚥下機能障害を有する対象者が安全に食事できるように検討すべき対応策を含む。例えば、項目番号16の選択項目(「お茶や汁物でむせる」)が選択されたときの「検討事項」としては、「食事中の見守りや介助を行う」、「とろみ剤を使用する」がある(
図4参照)。
【0045】
個人情報データベース13は、対象者の個人情報をデータベース化したものである。個人情報データベースは、
図5に示すように、対象者の「ID」に、当該対象者の「姓」、「名」、「性別」、「生年月日」、及び、「直近の観察日」(前回観察した日)を対応付けたものである。「ID」は、各対象者に振られた各対象者に固有の番号である。
【0046】
観察所見データベース14は、選択項目の過去の選択状況(観察所見)、及び、観察者により入力された各種情報を、対象者(ID)ごとにデータベース化したものである。
図6に示すように、観察所見データベース14では、各IDに、項目番号1~25それぞれの選択項目の選択の有無(選択有りの場合は「1」、選択無しの場合は「0」)(
図6の「選択項目(項目番号)」の欄参照)と、その選択を行った観察日(
図6の「観察日」の欄参照)と、観察者により入力されたその他の情報(
図6の「その他」の欄参照)と、が対応付けられている。前記その他の情報には、後述の食事支援処理にて入力される食形態、観察者等の情報が含まれる。観察所見データベース14を構成する各情報は、後述の食事支援処理にて追加される。
【0047】
食事提案データベース15は、
図7に示すように、「選択数」と、各選択数に対応付けられた「食事内容」と、を有する。「選択数」は、項目番号1~25の選択項目のうち選択された選択項目の数である。「食事内容」は、選択数に応じて提案(推奨)される食事の内容を示すものである。食事内容は、ここでは、食事に出される食品の形態である食形態により特定される。
【0048】
食事内容における「絶食」は、食事ではなく点滴等により栄養を供給することである。食事内容における各コードは、「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」における「学会分類2013(食事)」で設定された分類コードであり、「0j」(嚥下訓練食品を指定するコード)、「0t」(嚥下訓練食品を指定するコード)、「1j」(嚥下調整食を指定するコード)、「2-1」(嚥下調整食を指定するコード)、「2-2」(嚥下調整食を指定するコード)、「3」(嚥下調整食を指定するコード)、「4」(嚥下調整食を指定するコード)がある。各コードは、食形態を指定し、「0j」、「0t」、「1j」、「2-1」、「2-2」、「3」、「4」の順で、嚥下がしやすい(「0j」が最も嚥下しやすい)。なお、「4」の上には、摂食嚥下障害を有さない者が通常食べる「普通食」(食形態の一種である)がある。食事内容は、コード以外で特定されてもよい。また、前記の「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」は、あくまで一例であり、食事内容(食形態ないしコード等)は、例えば、「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」に替えて又は加えて他の分類(「発達期摂食嚥下障害児(者)のための嚥下調整食分類2018」など)に従ったものを含んでもよい。
【0049】
図7における「コード4以上」は、コード「4」の他、当該「普通食」も含まれる。食事提案データベース15は、予め用意されたものであり、選択数と食事内容との関係は、専門家が各種調査(例えば、選択数と、摂取可能な食事の形態と、の関係の統計を取る)を行って予め定めたものであればよい。選択数が多ければ多いほど、摂食嚥下障害が重くなる傾向(摂食嚥下機能の低下が著しくなる傾向)がある。従って、食事提案データベース15では、選択数が多いほど、嚥下しやすい食形態が選択される(最終的には絶食となる)。
【0050】
また、不揮発性記憶装置151は、後述の食事支援処理でディスプレイ154に表示する画像の画像データ等も記憶し、CPU152により使用される。
【0051】
CPU153は、RAM152をメインメモリとして、食事支援プログラム11を実行し、後述の食事支援処理を実行する。
【0052】
ディスプレイ154は、液晶表示装置等から構成され、CPU153による制御のもとで各種画像を表示する。
【0053】
入力装置155は、キーボード、マウス等から構成される。
【0054】
(情報表示システム100の使用方法、動作等)
(カードセット110の使用方法例)
カードセット110は、上記観察者により対象者を観察する際に使用される。ここでは、観察者を5人とする。観察者それぞれには、カードセット110のカードグループ111A~111Eが1グループずつ配られる。例えば、1人目の観察者にはカードグループ111Aが配られ、2人目の観察者にはカードグループ111Bが配られる。なお、観察者の人数は、5人以外であってもよく、カードグループは、観察者の人数分用意される。
【0055】
観察者は、食事支援の対象者を観察する。観察者は、特に、食事の際(食前、食事中、食後を含む)の対象者を観察する。食事のメニューは、その対象者に合わせ観察用に適宜決定される。観察者による観察は、前記の食事の様子を撮影した動画等により行われてもよい。各観察者は、対象者を観察した結果、手持ちのカードグループのカードC1~C25から、観察した対象者の状態に該当すると判断した候補を表しているカードを選択する。
【0056】
各観察者は、選択したカードを出し合う。ここでは、5人の観察者全員が選択したカードが表している状態を、観察所見(対象者の状態として考えられる状態)として採用する。このようにして採用された観察所見(状態)が、対象者の状態として、観察者に把握される。把握された観察所見は、下記の食事支援処理で使用される。
【0057】
以上のように、この実施の形態では、カードセット110により、食事支援の対象者の状態が把握される。具体的に、観察者全員が選択したカードが表す候補が、食事支援の対象者の状態(観察所見)として把握される。従来は、当該食事支援の対象者の状態の把握を、複数の観察者の話し合いにより行っていたが、当該話し合いでは、意見を多く主張した者や積極的に発言した者などの特定の者の意見が通りやすくなってしまい、食事支援の対象者の状態を精度良く把握できない場合がある。上記のように、カードにより食事支援の対象者の状態(観察所見)を把握することで、積極的に意見を発言しない者の意見等を前記の把握に反映することができ、特定の人の意見に偏ることなく、多くの人の視点で観察した結果が対象者の状態の把握に反映され、結果として食事支援の対象者の状態の把握の精度を向上させることができる(つまり、食事支援の対象者の状態を精度良く把握することを支援できる)。なお、複数の観察者のうち、全員ではない少なくとも2人以上の一定数(好ましくは、過半数以上の所定数)以上の者が選択したカードが表す候補を、食事支援の対象者の状態(観察所見)として把握(採用)してもよい。これによっても、積極的に意見を発言しない者の意見等を前記の状態の把握に反映することができ、食事支援の対象者の状態の把握の精度を向上させることができる。なお、話し合い等で、他のカード(全員でない、又は、前記一定数未満の観察者が選択したカード)が表す候補を、食事支援の対象者の状態(観察所見)として把握(採用)するか決定してもよい。
【0058】
(情報表示装置150の使用方法等)
情報表示装置150が使用されるとき、当該情報表示装置150は、下記の食事支援処理を行う。以下では、食事支援処理を通して、情報表示装置150の使用方法等を説明する。
【0059】
情報表示装置150のCPU153は、
図8に示す食事支援処理を実行する。食事支援処理は、前記の観察が行われたときに利用される。食事支援処理は、例えば前記の観察に参加した観察者のうちの1人がユーザとして入力装置155を操作して食事支援プログラム11を起動させたことを契機として開始される。
【0060】
食事支援処理において、CPU153は、まず、個人情報入力受付処理を実行する(ステップS101)。例えば、CPU153は、
図9(A)の個人情報入力画面をディスプレイ154に表示する。ユーザは、入力装置155を用いて、今回の観察の対象者の個人情報(ここでは、姓、名、性別、生年月日、及び、観察日(今回の観察の日にち))を個人情報入力画面の入力欄N1~N5に順次入力していく。入力された内容は、入力欄N1~N5に表示される(以下、他の入力欄についても同様。また、後述のチェックボックスがチェックされた場合でも、チェックされたことが塗りつぶし等により表示される)。
【0061】
ユーザは、姓等の各情報の入力を終了すると、入力装置155を用いて「次」のボタン画像B1を選択する。CPU153は、当該選択を受け付けると、ステップS101の処理を終了する。すでに入力されている姓等の各情報はRAM152に保持される。
【0062】
その後、CPU153は、食形態入力受付処理を実行する(ステップS102)。例えば、CPU153は、
図9(B)の食形態入力画面をディスプレイ154に表示する。ユーザは、入力装置155を用いて、今回の観察で対象者が食べた食事の「食形態」を入力する。食形態は、例えば、主食の情報(呼称及び「学会分類2013(食事)」におけるコード)、副食の情報(呼称及び「学会分類2013(食事)」におけるコード)、とろみにより特定される。これらは、入力欄N11~N15に入力される。入力欄N11には、主食の呼称(白飯、食パン等)が入力される。入力欄N12には、当該主食の「学会分類2013(食事)」におけるコードが入力される(普通食の場合には、「普通食」と入力される。コードについて同じ)。入力欄N13には、副食の称呼(クリームシチュー、魚の煮物等)が入力される。入力欄N14には、当該副食の「学会分類2013(食事)」におけるコードが入力される。入力欄N15には、とろみ(濃い、中間、薄い、無し(とろみ無し))が入力される。ユーザは、入力を終了すると、入力装置155を用いて「次」のボタン画像B12を選択する。CPU153は、当該選択を受け付けると、ステップS102の処理を終了する。すでに入力されている食形態(主食(呼称及びコード)、副食(呼称及びコード)、とろみ)はRAM152に保持される。なお、「前」のボタン画像B11が選択された場合には、ステップS101の処理に戻る。
【0063】
その後、CPU153は、観察者入力受付処理を実行する(ステップS103)。例えば、CPU153は、
図9(C)の観察者入力画面をディスプレイ154に表示する。ユーザは、入力装置155を用いて、医師、歯科医師、管理栄養士・栄養士、看護師、歯科衛生士、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士、介護職員、介護支援専門員、及び、その他それぞれに対応するチェックボックスCH21~CH31をチェックすることで、今回の観察に参加した観察者(観察者)を入力する。観察者は、職種で特定される。ユーザは、入力を終了すると、入力装置155を用いて「次」のボタン画像B22を選択する。CPU153は、当該選択を受け付けると、ステップS103の処理を終了する。すでに入力(チェック)されている観察者の情報はRAM152に保持される。なお、「前」のボタン画像B21が選択された場合には、ステップS102の処理に戻る。
【0064】
その後、CPU153は、観察所見入力受付処理を実行する(ステップS104)。
【0065】
当該観察所見入力受付処理において、CPU153は、まず、
図9(D)の第1観察所見入力画面をディスプレイ154に表示する。第1観察所見入力画面では、全身状態のカテゴリに属する項目番号1~5の選択項目がカードC1~C5(
図2)の画像として表示される。ユーザは、入力装置155を用いて、画面に表示されているカードC1~C5のうち、前記カードセット110の使用において観察所見として採用された状態(候補)、つまり、対象者の状態として把握された状態(候補)を表すカード(5人の観察者全員等が選択したカード)を選択する。この選択により、選択されたカードに対応する選択項目(選択されたカードのカード番号と同じ番号の項目番号に割り当てられている選択項目)が選択されたことになる(以下、カードの選択について同じ)。このような選択により、今回の観察の対象者の状態(選択されたカードが表す前記候補ないし選択されたカードに対応する選択項目)が観察所見として入力される。ユーザは、選択を終了すると(選択無しの場合を含む。以下同じ)、入力装置155を用いて「次」のボタン画像B32を選択する。CPU153は、当該選択を受け付けると、
図9(E)の第2観察所見入力画面をディスプレイ154に表示する。このとき、各カードC1~C5ないし各選択項目の選択の有無の情報がRAM152に保持される。当該情報は、観察所見データベース内の情報と同様の、選択された選択項目の項目番号については「1」が割り当てられ、選択されていない選択項目の項目番号については「0」が割り当てられた情報を含む(以下、同じ)。「前」のボタン画像B31が選択された場合には、ステップS103の処理に戻る。
【0066】
図9(E)の第2観察所見入力画面では、認知機能のカテゴリに属する項目番号6~10の選択項目がカードC6~C10(
図2)の画像として表示される。ユーザは、入力装置155を用いて、画面に表示されているカードC6~C10のうち、前記カードセット110の使用において観察所見として採用された状態を表すカード(5人の観察者全員が選択したカード)を選択する。このような選択により、今回の観察の対象者の状態(選択されたカードが表す前記候補ないし選択されたカードに対応する選択項目)が観察所見として入力される。ユーザは、選択を終了すると、入力装置155を用いて「次」のボタン画像B42を選択する。CPU153は、当該選択を受け付けると、
図9(F)の第3観察所見入力画面をディスプレイ154に表示する。このとき、各カードC6~C10ないし各選択項目の選択の有無の情報がRAM152に保持される。「前」のボタン画像B41が選択された場合には、ステップS103の処理に戻る。
【0067】
図9(F)の第3観察所見入力画面には、口腔機能のカテゴリに属する項目番号11~15の選択項目がカードC11~C15(
図2)の画像として表示される。ユーザは、入力装置155を用いて、画面に表示されているカードC11~C15のうち、前記カードセット110の使用において観察所見として採用された状態を表すカード(5人の観察者全員が選択したカード)を選択する。このような選択により、今回の観察の対象者の状態(選択されたカードが表す前記候補ないし選択されたカードに対応する選択項目)が観察所見として入力される。ユーザは、選択を終了すると、入力装置155を用いて「次」のボタン画像B52を選択する。CPU153は、当該選択を受け付けると、
図9(G)の第4観察所見入力画面をディスプレイ154に表示する。このとき、各カードC11~C15ないし各選択項目の選択の有無の情報がRAM152に保持される。「前」のボタン画像B51が選択された場合には、ステップS103の処理に戻る。
【0068】
図9(G)の第4観察所見入力画面には、咽頭機能のカテゴリに属する項目番号16~20の選択項目がカードC16~C20(
図2)の画像として表示される。ユーザは、入力装置155を用いて、画面に表示されているカードC16~C20のうち、前記カードセット110の使用において観察所見として採用された状態を表すカード(5人の観察者全員が選択したカード)を選択する。このような選択により、今回の観察の対象者の状態(選択されたカードが表す前記候補ないし選択されたカードに対応する選択項目)が観察所見として入力される。ユーザは、選択を終了すると、入力装置155を用いて「次」のボタン画像B62を選択する。CPU153は、当該選択を受け付けると、
図9(H)の第5観察所見入力画面をディスプレイ154に表示する。このとき、各カードC16~C20ないし各選択項目の選択の有無の情報がRAM152に保持される。「前」のボタン画像B61が選択された場合には、ステップS103の処理に戻る。
【0069】
図9(H)の第5観察所見入力画面には、姿勢保持のカテゴリに属する項目番号21~25の選択項目がカードC21~C25(
図2)の画像として表示される。ユーザは、入力装置155を用いて、画面に表示されているカードC21~C25のうち、前記カードセット110の使用において観察所見として採用された状態を表すカード(5人の観察者全員が選択したカード)を選択する。このような選択により、今回の観察の対象者の状態(選択されたカードが表す前記候補ないし選択されたカードに対応する選択項目)が観察所見として入力される。ユーザは、選択を終了すると、入力装置155を用いて「次」のボタン画像B72を選択する。CPU153は、当該選択を受け付けると、ステップS104の処理を終了する。このとき、各カードC21~C25ないし各選択項目の選択の有無の情報がRAM152に保持される。「前」のボタン画像B71が選択された場合には、ステップS103の処理に戻る。
【0070】
CPU153は、ステップS104の後、データベース登録処理を実行する(ステップS105)。CPU103は、まず、今回の個人情報入力受付処理(ステップS101)にて入力(自動表示も含む)され、RAM152に保持されている姓、名、性別、及び、生年月日のセットが個人情報データベース13において同じIDに対応付けられてすでに登録されているかを判別する。登録されていない場合(観察が初回のとき)、まず、IDを生成する。IDは、個人情報データベース13にすでに登録されているIDの中で最も大きい番号+1で生成される。その後、CPU153は、当該新たに生成したIDと、RAM152に保持されている、姓、名、性別、生年月日、及び、観察日と、を、互いに対応付けて個人情報データベース13に登録する。観察日は、直近観察日として登録される。ID、姓、名、性別、生年月日、及び、直近観察日により、個人情報データベース13における1つのレコードが構成される。姓等がすでに登録されている場合(観察が初回でないとき)、当該1つのレコードにおける直近観察日を、今回入力され、RAM152に保持されている観察日に更新する。CPU153は、新たに登録又はすでに登録されている今回の処理対象のレコード(ID、姓、名、性別、生年月日、観察日)を個人情報レコードとしてRAM152に保持しておく。
【0071】
また、CPU153は、食形態入力受付処理(ステップS102)、観察者入力受付処理(ステップS103)、観察所見入力処理(ステップS104)にて入力されRAM152に保持した各種情報を、観察所見データベース14に追加登録する。具体的には、CPU153は、前記でRAM152に保持している、IDと、観察日と、項目番号「1」~「25」の選択項目それぞれの選択の有無と、今回の観察で対象者が食べた食事の食形態(主食(呼称及びコード)、副食(呼称及びコード)、とろみ)と、今回の観察に参加した観察者と、を互いに対応付けて1つのレコードとして観察所見データベース14(
図6参照)に追加登録する。なお、前記の食形態及び観察者は、その他の情報(
図6)として登録される。CPU153は、今回の処理対象のレコードを観察関連レコードとしてRAM152に保持しておく。
【0072】
ステップS105のあと、CPU153は、データベース登録処理(ステップS105)で保持した各レコードの内容を反映した食事支援情報を表示する食事支援情報表示処理を実行する(ステップS106)。食事支援情報の一例を
図10に示す。食事支援情報は、ユーザにより入力された情報に基づく各種の情報(「考えられることは?」、「こんな対応策を検討しましょう」、「推奨される食事内容」等の判定結果を含む。)が一覧表示されたものである。
【0073】
図10の「氏名」、「性別」、「生年月日」、「観察日」の欄には、上記でRAM152に保持した個人情報レコードの内容(姓、名、性別、生年月日、観察日)が表示される。「年齢」は、生年月日から算出される。「観察回数」は、今回の観察が何回目であるかを示すものであり、観察所見データベース14に登録されている、前記レコードに含まれるIDを有するレコードの数により特定される(同じIDのレコードが3つであれば、3回目)。
【0074】
図10の「食形態」における、「主食」の欄、「副食」の欄、「とろみ」の欄には、観察関連レコードに含まれる、食形態の主食(呼称及びコード)、副食(呼称及びコード)、とろみが表示される。
【0075】
「い~とみるスコア」の欄に表示されている5角形のレーダーチャートR1は、前記の観察関連レコードに含まれる、項目番号「1」~「25」の選択項目それぞれの選択の有無に基づいて作成される。具体的に、CPU153は、前記選択の有無の情報に基づいて、選択された選択項目の数(選択数)をカテゴリ(「全身状態」、「認知機能」、「口腔機能」、「咽頭機能」、「姿勢」)ごとに特定して点数化する。当該点数は、5から選択数を減じた数であり、5点満点である(点数が高い方が、選択数が少ない)。CPU153は、5つのカテゴリ毎に点数化して得られた点数を5角形のレーダーチャートR1で表示する。5角形のレーダーチャートR1は、今回の観察により得られたものとして、実線で描かれている。
【0076】
「い~とみるスコア」の欄に表示されている5角形のレーダーチャートR2は、観察所見データベース14における、前記の観察関連レコードに含まれるIDと同じIDを有するレコードのうち、当該観察関連レコードが有する観察日の1つ前の観察日を有するレコードに基づいて作成される。具体的に、CPU153は、前記1つ前の観察日を有するレコードを特定してRAM152に読み出し、読み出したレコードに含まれる、項目番号「1」~「25」の選択項目それぞれの選択の有無に基づいて、上記と同様に、選択数をカテゴリごとに特定して点数化する。CPU153は、5つのカテゴリごとに点数化して得られた点数を5角形のレーダーチャートR2で表示する。5角形のレーダーチャートR2は、前回の観察により得られたものとして、点線で描かれている。
【0077】
図10の「観察所見」の欄には、前記の観察関連レコードに含まれる、項目番号「1」~「25」の選択項目それぞれの選択の有無が、選択項目とともにカテゴリ(「全身状態」、「認知機能」、「口腔機能」、「咽頭機能」、「姿勢」)毎に表示される。各選択項目の先頭の四角により選択の有無が示され、白抜きの四角は、選択されていない旨を示す(
図10では、例えば、「食欲がない」の選択項目は、選択無しである)。黒に塗りつぶされた四角は、選択されている旨を示す(
図10では、例えば、「現在37℃以上の発熱がある」の選択項目は、選択有りである)。
図10のように、選択結果を選択項目とともに一覧表示することで、選択状況を視覚的に容易に把握できる。
【0078】
図10の「考えられることは?」の欄には、選択項目データベース12(
図3、
図4)において、前記の観察関連レコード(項目番号「1」~「25」の選択項目それぞれの選択の有無)により特定される選択有りの選択項目に対応付けられている「考えられること」が一覧表示される。具体的にCPU153は、前記の観察関連レコードに含まれる前記選択の有無に基づき、今回選択された選択項目を特定し、特定した選択項目に基づき、選択項目データベース12を参照し、当該特定した選択項目に対応付けられている「考えられること」(例えば、「現在37℃以上の発熱がある」が選択されている場合には、「脱水の可能性がある」、「口腔の衛生状態が悪い」、「誤嚥のリスクが高い」)をすべて読み出す。CPU153は、読み出した「考えられること」を「考えられることは?」の欄に表示する。なお、CPU153は、読み出した複数の「考えられること」の中に、重複するものがある場合、そのうちの1つのみを表示するようにする。
【0079】
図10の「こんな対応策を検討しましょう」の欄には、選択項目データベース12(
図3、
図4)において、前記の観察関連レコード(項目番号「1」~「25」の選択項目それぞれの選択の有無)により特定される選択有りの選択項目に対応付けられている「検討事項」が一覧表示される。具体的にCPU153は、前記で特定した選択有りの選択項目に基づき、選択項目データベース12を参照し、当該特定した選択項目に対応付けられている「検討事項」(例えば、「現在37℃以上の発熱がある」が選択されている場合には、「脱水対策について検討する」、「食事中の見守りや介助を行う」、「口腔ケアの方法について検討する」)をすべて読み出す。CPU153は、読み出した「検討事項」を「こんな対応策を検討しましょう」の欄に表示する。なお、CPU153は、読み出した複数の「検討事項」の中に、重複するものがある場合、そのうちの1つのみを表示するようにする。
【0080】
図10の「推奨される食事内容」の欄には、推奨(提案)される食事内容が表示される。ここでは、「学会分類2013(食事)」のコード等(ここでは、食形態)により推奨内容が表示される。推奨内容は、食事提案データベース15により特定されるものである。具体的に、CPU153は、前記で特定した選択有りの選択項目の数(選択数)をカウントし、カウントした選択数に基づき、食事提案データベース15を参照し、当該選択数に対応付けられた食事内容(「絶食」又は前記のコード)を読み出し、読み出した食事内容を「推奨される食事内容」の欄に表示する。
【0081】
図10の「追加コメント」の欄には、ユーザにより入力装置155を介してコメントが適宜入力される。
【0082】
観察者や観察に参加しなかった関係者(以下、まとめて観察者等という。)は、会議(他職種会議)を行い、対象者が経口による食事を継続できるための対応策を協議し、経口維持計画(経口による食事を維持できるように食事を支援する計画)を作成する。このときに、
図10の食事支援情報(特に、「考えられることは?」、「こんな対応策を検討しましょう」、「推奨される食事内容」の各欄に表示された情報(「考えられること」、「検討事項」の内容)、レーダーチャートR1及びR2)が参照される。これにより、観察者等は経口維持計画を作成するときのヒントを視覚的に得ることができる。これにより、食事支援(特に、食事を支援するための方法の検討)を効果的に補助することができる。「考えられること」と、「こんな対応策を検討しましょう」とのうちのいずれかのみを採用してもよく、その場合でも上記効果はある程度得られる。また、本実施形態では、ユーザが必要な情報を入力すれば、自動で食事支援情報が生成されるので、食事の支援が容易となっている。
【0083】
選択項目データベース12の「考えられること」、「検討事項」は、複数の選択項目に重複して対応しているもの(例えば、「処方薬の影響について主治医に相談する」など)を含むが、この実施の形態の食事支援情報では、この重複が排除されているので、容易に「考えられること」(「考えられることは?」欄の記載内容)、「検討事項」(「こんな対応策を検討しましょう」欄の記載内容)を把握できる。従って、本実施形態によれば、経口維持計画の作成が容易である。さらに、「推奨される食事内容」により食事内容の具体的な提案が受けられるので、経口維持計画の作成が容易である。
【0084】
また、選択数が多ければ多いほど摂食嚥下機能の低下が著しくなると考えられるので、選択数を上記のように点数化して示されるレーダーチャートの面積が小さくなればなるほど(選択数が少ないほど面積は大きい)、摂食嚥下機能が低下する傾向がある。
図10のように、前回の観察によるレーダーチャートR2と、今回の観察によるレーダーチャートR1とを重ねて表示することで、これらの面積の比較がしやすく、観察者は、対象者の摂食嚥下機能の低下度合い等を視覚的に容易に把握できる。
【0085】
情報表示装置150のCPU153は、経口維持計画書の作成を支援するため、経口維持計画書の作成に必要な情報の入力を入力装置155を介して受け付け、入力された情報をテンプレートとして用意した経口維持計画書(
図11参照)に反映させ、反映させた経口維持計画書を食事支援情報とともに出力(プリンターへの出力)してもよい。経口維持計画書の作成に必要な情報としては、(1)他職種会議に参加した参加者、(2)今後の課題や目標、(3)期間、(4)対象者(ここでは、利用者)又は家族の意向、(5)これまで実施された検査項目(反復唾液嚥下テスト(RSST)、 改定水飲みテスト(MWST) 、食物テスト(FT)、 頸部聴診、 嚥下内視鏡検査(VE)、 嚥下造影検査(VF))、(6)食事の形態・とろみ、補助食品、食事の周囲環境を変更するか現状維持するかの情報、(7)口腔ケアの方法を変更するか現状維持するかの情報、(8)医療又は歯科医療の受診の必要性、(9)経口維持加算における算定加算(I)に必要な情報(気づいた点やアドバイス等と、それを提案した者の氏名及び職種)、(10)経口維持加算における算定加算(II)に必要な情報(気づいた点やアドバイス等と、それを提案した者の氏名及び職種)、(11)医師又は歯科医師からの気づいた点やアドバイス等と、その医師又は歯科医師の氏名)等がある。入力された情報は、例えば、
図11の経口維持計画書のテンプレートの各欄に反映され、適宜、食事支援情報とともに印刷等される。これによって、経口維持計画書を半自動で作成することができ、経口維持計画書の作成のが容易である。
【0086】
(変形例)
以下、上記実施形態の変形例を説明する。以下の変形例の少なくとも一部は矛盾が生じない限り組み合わせることができる。なお、上記実施の形態の構成や下記の構成は、上記「発明が解決しようとする課題」等に係る構成であるか否かに関わらず、どの構成であっても省略できる(その場合には、別の発明となりうる)。
【0087】
(変形例1)
カードセット110を用いた、食事支援の対象者の状態(観察所見)の特定は、当該状態の特定の経験が浅い者のための研修に用いてもよい。このような場合、例えば、研修の参加者全員に、カードグループを1組ずつ配布するとともに、当該参加者をグループ(班)分けする。そして、研修の参加者全員に、食事支援の対象者を観察させる(例えば、動画等により食事の様子を観察させる)。観察後、グループ分けした各参加者に、食事支援の対象者の状態に該当する候補のカードを出させる。各グループにおいて、そのグループに属する参加者全員(又は前記所定数の者)が同じカードを出した場合、当該カードが表す候補を、当該グループが特定した食事支援の対象者の状態(観察所見)とする。このようなことは、各グループによって行う。そして、特定した観察所見をグループ毎に発表し、答え合わせ等を行う。このようなことによっても、食事支援の対象者の状態を精度良く把握することを支援できる。なお、他のカード(全員でない、又は、前記所定数未満の観察者が選択したカード)が表す候補を、食事支援の対象者の状態(観察所見)として特定するかグループ毎に話し合ってもよい。
【0088】
なお、各グループは、カードを出したあと、
図12に示すような記入用紙に、所定情報を記入してもよい。記入用紙には、そのグループを特定する情報(○○班)、症例番号、一致カード番号、不一致カード番号、考えられること、及び、検討事項それぞれの記入欄がある。「症例番号」の記入欄には、対象者や、対象者の食事の様子の日時等を特定する番号が記入される。「一致カード番号」の記入欄には、グループ全員が出したカードのカード番号が記入される。「不一致カード番号」の記入欄には、グループの一部の者が出したカードのカード番号が記入される。「考えられること」の記入欄には、一致カード番号に記入されたカード番号のカードが表す状態を有する対象者に関して考えられること(対象者の状態が選択項目の状態となっている原因、その対象者に懸念されるリスク等)が記入される。当該「考えられること」は、情報表示装置150によって表示される「考えられることは?」欄の記載内容が参照されて記入される。「対応策」の記入欄には、一致カード番号に記入されたカード番号のカードが表す状態を有する対象者に関して検討すべき対応策又は実際に採用される対応策(摂食嚥下機能の低下を防止するための対応策、摂食嚥下機能障害を有する対象者が安全に食事できるための対応策)が記入される。当該「対応策」は、情報表示装置150によって表示される「こんな対応策を検討しましょう」欄の記載内容が参照されて記入される。研修の講師は、当該記入用紙を各グループから集めて、各記入用紙の記入内容を発表する及び考察を述べるようにしてもよい。なお、不一致カード番号のカードについては、各グループで議論を行ってもよい。さらに、議論の内容等について、別の記入用紙に記入して前記講師に渡して考察を述べてもらってもよい。
【0089】
(変形例2)
カードC1~C25それぞれに、
図13に示すような、二次元コード等の所定画像Gを印刷してもよい。所定画像Gは、例えば、二次元コードである。所定画像Gは、当該所定画像Gが印刷されたカード(特に、当該カードが表す候補)を表す。この場合、情報表示装置150は、
図13に示すように、当該所定画像を撮影するカメラを有するスマートフォン又はタブレット等の可搬型の情報表示装置150A(機能構成については
図2と同様でよい。なお、CPU153は、各種プロセッサに変更可能である。情報表示装置150についても同様)であるとよい。この場合、観察者等のユーザは、観察者全員(又は前記一定数以上の者)が選択したカードを前記カメラにより撮影し(読み取り)、情報表示装置150Aは、当該撮影した所定画像に基づき、前記選択されたカード(所定画像が表すカード)を特定する。例えば、ユーザは、情報表示装置150Aを操作して、観察者全員(又は前記一定数以上の者)が選択したカードを前記カメラにより撮影していき、全てのカードの撮影後、情報表示装置150Aを操作して撮影終了を入力する。情報表示装置150Aは、当該撮影した所定画像に基づき、前記選択されたカード(所定画像が表すカード)を特定する。情報表示装置150Aは、特定したカードについて、上記実施の形態でユーザが入力装置155を用いて選択したカードについての処理と同様の処理を行えばよい。特に、情報表示装置150は、特定したカードが表す候補を、選択された選択項目として、
図13に示すようにレーダーチャートR1(レーダーチャート)を表示するとよい。この際、他の情報の表示を省略することで、レーダーチャートR1を見やすくできる(なお、上記実施の形態のようにレーダーチャートR2を加えて表示してもよい)。なお、所定画像は、バーコード等の他のコードであってもよい。情報表示装置150は、上記コードを読み取る読取手段を有するとよい。変形例2によれば、読取手段によるコードの読み取りにより、情報表示装置150に、観察者全員(又は前記一定数以上の者)が選択したカードを入力でき、これにより、カード入力、レーダーチャートR1(レーダーチャート)等の情報の表示が容易となっている。
【0090】
(変形例3)
不揮発性記憶装置151に記憶された各種データ(特に各種のデータベース)は、情報表示装置100の外部のサーバ等に格納されてもよい。選択項目データベース12に記憶された「選択項目」を、カード番号等、カードを特定可能な情報としてもよい(カードから、選択項目の内容(摂食嚥下障害を有する者の状態として考えられる候補)を特定できるため)。この場合、上記実施の形態でのカードの選択や、変形例2でのカードの読み取りでは、カードを特定可能情報に基づき、選択項目データベース12が参照され、「考えられること」、「検討事項」が取得される。
【0091】
(変形例4)
カードセット110は、一組のカードであってもよい。複数のカードセット110により、上記状態の把握を行ってもよい。また、一組のカードを、複数の観察者間で回して、上記のようなカードの選択を行ってもよい。一組のカードのみを使用し、例えば、研修等において参加者に上記のような観察及びカードの選択を行わせ、選択したカードについて講師等を交えて議論等することで、対象者の状態の把握の勉強を行ってもよい。
【0092】
(変形例5)
上記カードの入力(ディスプレイ154に表示したカードの選択、カードに印刷された所定画像の読み取り)に基づいてディスプレイ154に表示される情報は、上記に限定されない。当該情報は、観察の対象者の各種情報であればよい。
【符号の説明】
【0093】
11・・・食事支援プログラム、12・・・選択項目データベース、13・・・個人情報データベース、14・・・観察所見データベース、15・・・食事提案データベース、100・・・情報表示システム、110・・・カードセット、111A~111E・・・カードグループ、150,150A・・・情報表示装置、151・・・不揮発性記憶装置、152・・・RAM、153・・・CPU、154・・・ディスプレイ、155・・・入力装置、R1,R2・・・レーダーチャート、C1~C25・・・カード