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特許7362068コンクリート構造物に対する非破壊検査方法及び非破壊検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】コンクリート構造物に対する非破壊検査方法及び非破壊検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/265 20060101AFI20231010BHJP
   G01N 29/04 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
G01N29/265
G01N29/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019217645
(22)【出願日】2019-11-30
(65)【公開番号】P2021085860
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年1月29日「卒業研究運営委員」発行の「独立行政法人国立高等専門学校機構 長岡工業高等専門学校 機械工学科 卒業研究発表会 講演予稿集」において公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年1月29日「独立行政法人国立高等専門学校機構 長岡工業高等専門学校」発行の「環境都市工学科 卒業研究発表会 概要集」において公開
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(73)【特許権者】
【識別番号】509147787
【氏名又は名称】株式会社 ダイアテック
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】村上 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】池田 富士雄
(72)【発明者】
【氏名】丸山 聡
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知也
(72)【発明者】
【氏名】柳 翼
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-219076(JP,A)
【文献】特開2001-165915(JP,A)
【文献】特開2018-128279(JP,A)
【文献】特開2016-191661(JP,A)
【文献】特開2018-179819(JP,A)
【文献】特開2019-039787(JP,A)
【文献】上半 文昭,ドローンを用いたコンクリート橋部材の詳細検査手法,コンクリート工学,2019年09月,Vol.57 No.9,p.699-704
【文献】和田 秀樹,ドローンを活用したインフラ点検ロボットの研究開発,検査技術,日本工業出版,2017年10月01日,Vol.22 No.10,p.48-53
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01N 3/00-3/62
G01M 7/00-7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動用の回転翼より生じる噴射風圧により移動し車輪部を有する移動基体に、圧接保持手段が設けられ、この圧接保持手段は、被検査対象部の垂直な若しくは傾斜する被検査面に圧接保持用の回転翼からの噴射風圧により前記移動基体を圧接保持状態とするものであり、また、前記移動基体には、前記被検査対象部の被検査面を転動して該被検査面を打撃する回転式打撃部と、この回転式打撃部で前記被検査対象部の被検査面を打撃することにより発生する弾性波を該被検査対象部の被検査面に転動当接して受信する弾性波受信部とが設けられ、この弾性波受信部は、前記移動基体に対して起伏自在に設けられる取付部に回転不能に設けられる非回転軸部と、この非回転軸部に回転自在に被嵌される回転環状部と、前記非回転軸部に設けられ弾性波を受信する受信子とから成り、前記取付部には該取付部を起き付勢する付勢部材が設けられ、この付勢部材は、前記回転環状部が前記被検査対象部の被検査面に圧接するように構成され、また、前記移動基体には、駆動モーターにより前記車輪部を駆動する補助移動手段が設けられた以上の構成を有する非破壊検査装置を用いて行うコンクリート構造物に対する非破壊検査方法であって、前記被検査対象部の垂直な若しくは傾斜する被検査面に前記非破壊検査装置を移動させ、この非破壊検査装置の移動時に前記回転式打撃部による打撃と、この打撃により発生する弾性波の前記弾性波受信部による受信を行い、この受信した前記弾性波に基づき前記被検査対象部の欠陥発生状態を確認することを特徴とするコンクリート構造物に対する非破壊検査方法。
【請求項2】
請求項1記載のコンクリート構造物に対する非破壊検査方法において、前記圧接保持手段は、前記被検査対象部の垂直な若しくは傾斜する被検査面への噴射風圧方向が可変できる構成であることを特徴とするコンクリート構造物に対する非破壊検査方法。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載のコンクリート構造物に対する非破壊検査方法において、前記回転式打撃部は、前記移動基体に設けられた駆動部により、前記被検査対象部の被検査面を転動する転動構造体で構成された打撃部が駆動回転するように構成されていることを特徴とするコンクリート構造物に対する非破壊検査方法。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載のコンクリート構造物に対する非破壊検査方法において、前記回転式打撃部は、付勢部材の付勢により前記被検査対象部の被検査面に圧接せしめられていることを特徴とするコンクリート構造物に対する非破壊検査方法。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載のコンクリート構造物に対する非破壊検査方法において、前記圧接保持用の回転翼の噴射風圧は、前記被検査対象部の被検査面と交差する方向への噴射風圧であり、この噴射風圧により前記移動基体を前記被検査対象部の被検査面に圧接保持するように構成されていることを特徴とするコンクリート構造物に対する非破壊検査方法。
【請求項6】
移動用の回転翼より生じる噴射風圧により移動し車輪部を有する移動基体に、圧接保持手段が設けられ、この圧接保持手段は、被検査対象部の垂直な若しくは傾斜する被検査面に圧接保持用の回転翼からの噴射風圧により前記移動基体を圧接保持状態とするものであり、また、前記移動基体には、前記被検査対象部の被検査面を転動して該被検査面を打撃する回転式打撃部と、この回転式打撃部で前記被検査対象部の被検査面を打撃することにより発生する弾性波を該被検査対象部の被検査面に転動当接して受信する弾性波受信部とが設けられ、この弾性波受信部は、前記移動基体に対して起伏自在に設けられる取付部に回転不能に設けられる非回転軸部と、この非回転軸部に回転自在に被嵌される回転環状部と、前記非回転軸部に設けられ弾性波を受信する受信子とから成り、前記取付部には該取付部を起き付勢する付勢部材が設けられ、この付勢部材は、前記回転環状部が前記被検査対象部の被検査面に圧接するように構成され、また、前記移動基体には、駆動モーターにより前記車輪部を駆動する補助移動手段が設けられていることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項7】
請求項6記載の非破壊検査装置において、前記圧接保持手段は、前記被検査対象部の垂直な若しくは傾斜する被検査面への噴射風圧方向が可変できる構成であることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項8】
請求項6,7いずれか1項に記載の非破壊検査装置において、前記回転式打撃部は、前記移動基体に設けられた駆動部により前記被検査対象部の被検査面を転動する転動構造体で構成された打撃部が駆動回転するように構成されていることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項9】
請求項6~8いずれか1項に記載の非破壊検査装置において、前記回転式打撃部は、付勢部材の付勢により前記被検査対象部の被検査面に圧接せしめられていることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項10】
請求項6~9いずれか1項に記載の非破壊検査装置において、前記圧接保持用の回転翼の噴射風圧は、前記被検査対象部の被検査面と交差する方向への噴射風圧であり、この噴射風圧により前記移動基体を前記被検査対象部の被検査面に圧接保持するように構成されていることを特徴とする非破壊検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物に対する非破壊検査方法及び非破壊検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、橋梁やビルなどのコンクリート構造物に対する非破壊検査方法で使用される検査装置として、例えば特開2018-179819号に開示される検査装置(以下、従来例)が提案されている。
【0003】
この従来例は、車輪を設けた基体と、この基体に回動可能に設けられたアームの先端に被検査対象部の表面を叩いて検査する検査部を有し、更に、基体を飛行させる回転翼を有するものであり、例えば被検査対象部の被検査面(コンクリート表面)が垂直壁面の場合、この被検査対象部の表面に車輪が接した状態で回転翼の回転により空中飛行しながら任意の箇所まで移動し、被検査対象部の表面を検査部で叩いて衝撃力の時間変化に基づいて(インピーダンス法を利用して)被検査対象部の劣化を判定するものである。
【0004】
従って、例えば作業者が検査装置を携帯して手作業で非破壊検査を行う場合のように、足場を組んだり高所作業車を用意したりせず、人が近付きにくい高所でも非破壊検査を簡易且つ安全に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-179819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述したコンクリート構造物に対する非破壊検査方法で使用される検査装置について更なる研究開発を進めた結果、従来に無い作用効果を発揮するコンクリート構造物に対する非破壊検査方法及び非破壊検査装置を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
移動用の回転翼7bより生じる噴射風圧により移動し車輪部8を有する移動基体1に、圧接保持手段2が設けられ、この圧接保持手段2は、被検査対象部51の垂直な若しくは傾斜する被検査面51aに圧接保持用の回転翼2bからの噴射風圧により前記移動基体1を圧接保持状態とするものであり、また、前記移動基体1には、前記被検査対象部51の被検査面51aを転動して該被検査面51aを打撃する回転式打撃部3と、この回転式打撃部3で前記被検査対象部51の被検査面51aを打撃することにより発生する弾性波を該被検査対象部51の被検査面51aに転動当接して受信する弾性波受信部4とが設けられ、この弾性波受信部4は、前記移動基体1に対して起伏自在に設けられる取付部13に回転不能に設けられる非回転軸部4aと、この非回転軸部4aに回転自在に被嵌される回転環状部4bと、前記非回転軸部4aに設けられ弾性波を受信する受信子4cとから成り、前記取付部13には該取付部13を起き付勢する付勢部材6が設けられ、この付勢部材6は、前記回転環状部4bが前記被検査対象部51の被検査面51aに圧接するように構成され、また、前記移動基体1には、駆動モーター8aにより前記車輪部8を駆動する補助移動手段が設けられた以上の構成を有する非破壊検査装置Xを用いて行うコンクリート構造物に対する非破壊検査方法であって、前記被検査対象部51の垂直な若しくは傾斜する被検査面51aに前記非破壊検査装置Xを移動させ、この非破壊検査装置Xの移動時に前記回転式打撃部3による打撃と、この打撃により発生する弾性波の前記弾性波受信部4による受信を行い、この受信した前記弾性波に基づき前記被検査対象部51の欠陥発生状態を確認することを特徴とするコンクリート構造物に対する非破壊検査方法に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載のコンクリート構造物に対する非破壊検査方法において、前記圧接保持手段2は、前記被検査対象部51の垂直な若しくは傾斜する被検査面51aへの噴射風圧方向が可変できる構成であることを特徴とするコンクリート構造物に対する非破壊検査方法に係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載のコンクリート構造物に対する非破壊検査方法において、前記回転式打撃部3は、前記移動基体1に設けられた駆動部3aにより、前記被検査対象部51の被検査面51aを転動する転動構造体で構成された打撃部3bが駆動回転するように構成されていることを特徴とするコンクリート構造物に対する非破壊検査方法に係るものである。
【0011】
また、請求項1~3いずれか1項に記載のコンクリート構造物に対する非破壊検査方法において、前記回転式打撃部3は、付勢部材5の付勢により前記被検査対象部51の被検査面51aに圧接せしめられていることを特徴とするコンクリート構造物に対する非破壊検査方法に係るものである。
【0012】
また、請求項1~4いずれか1項に記載のコンクリート構造物に対する非破壊検査方法において、前記圧接保持用の回転翼2bの噴射風圧は、前記被検査対象部51の被検査面51aと交差する方向への噴射風圧であり、この噴射風圧により前記移動基体1を前記被検査対象部51の被検査面51aに圧接保持するように構成されていることを特徴とするコンクリート構造物に対する非破壊検査方法に係るものである。
【0013】
また、移動用の回転翼7bより生じる噴射風圧により移動し車輪部8を有する移動基体1に、圧接保持手段2が設けられ、この圧接保持手段2は、被検査対象部51の垂直な若しくは傾斜する被検査面51aに圧接保持用の回転翼2bからの噴射風圧により前記移動基体1を圧接保持状態とするものであり、また、前記移動基体1には、前記被検査対象部51の被検査面51aを転動して該被検査面51aを打撃する回転式打撃部3と、この回転式打撃部3で前記被検査対象部51の被検査面51aを打撃することにより発生する弾性波を該被検査対象部51の被検査面51aに転動当接して受信する弾性波受信部4とが設けられ、この弾性波受信部4は、前記移動基体1に対して起伏自在に設けられる取付部13に回転不能に設けられる非回転軸部4aと、この非回転軸部4aに回転自在に被嵌される回転環状部4bと、前記非回転軸部4aに設けられ弾性波を受信する受信子4cとから成り、前記取付部13には該取付部13を起き付勢する付勢部材6が設けられ、この付勢部材6は、前記回転環状部4bが前記被検査対象部51の被検査面51aに圧接するように構成され、また、前記移動基体1には、駆動モーター8aにより前記車輪部8を駆動する補助移動手段が設けられていることを特徴とする非破壊検査装置に係るものである。
【0014】
また、請求項6記載の非破壊検査装置において、前記圧接保持手段2は、前記被検査対象部51の垂直な若しくは傾斜する被検査面51aへの噴射風圧方向が可変できる構成であることを特徴とする非破壊検査装置に係るものである。
【0015】
また、請求項6,7いずれか1項に記載の非破壊検査装置において、前記回転式打撃部3は、前記移動基体1に設けられた駆動部3aにより前記被検査対象部51の被検査面51aを転動する転動構造体で構成された打撃部3bが駆動回転するように構成されていることを特徴とする非破壊検査装置に係るものである。
【0016】
また、請求項6~8いずれか1項に記載の非破壊検査装置において、前記回転式打撃部3は、付勢部材5の付勢により前記被検査対象部51の被検査面51aに圧接せしめられていることを特徴とする非破壊検査装置に係るものである。
【0017】
また、請求項6~9いずれか1項に記載の非破壊検査装置において、前記圧接保持用の回転翼2bの噴射風圧は、前記被検査対象部51の被検査面51aと交差する方向への噴射風圧であり、この噴射風圧により前記移動基体1を前記被検査対象部51の被検査面51aに圧接保持するように構成されていることを特徴とする非破壊検査装置に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のようにしたから、例えば被検査対象部の被検査面が高所の垂直壁面などの人が近付きにくい箇所であっても非破壊検査を簡易且つ安全にすることができ、しかも、従来例のように被検査対象部まで移動し、その位置で停止後、被検査面を叩いて被検査対象部51の欠陥発生状態を確認するものではなく、移動しながら常時、被検査面への打撃及び弾性波の受信を行うものであるから、広範囲において非破壊検査を迅速に行うことができるなど、従来に無い作用効果を発揮するコンクリート構造物に対する非破壊検査方法及び非破壊検査装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施例に係る非破壊検査装置Xの斜視図である。
図2】本実施例に係る非破壊検査装置Xの側面図である。
図3】本実施例に係る要部の説明図である。
図4】本実施例に係る要部の動作説明図である。
図5】本実施例に係る要部の動作説明図である。
図6】本実施例に係る要部の動作説明図である。
図7】本実施例に係る要部の動作説明図である。
図8】本実施例に係る要部の動作説明図である。
図9】本実施例の使用状態説明図である。
図10】本実施例に係る非破壊検査装置Xを用いたコンクリート構造物に対する非破壊検査方法の説明図である。
図11】本実施例に係る非破壊検査装置Xを用いたコンクリート構造物に対する非破壊検査方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0021】
本発明に係る非破壊検査装置Xを被検査対象部51の被検査面51aで移動させる。
【0022】
非破壊検査装置Xは、被検査対象部51の被検査面51aに対して風力により圧接保持状態となる圧接保持手段2を備えており、この圧接保持手段2により、例えば被検査対象部51の被検査面51aが垂直壁面などでも張り付いたような状態となり、被検査対象部51の被検査面51aから落下せず移動できる。
【0023】
また、非破壊検査装置Xの移動時に常時、回転式打撃部3による打撃と、この打撃により発生した弾性波を弾性波受信部4で受信し、この受信した弾性波に基づき被検査対象部51の欠陥発生状態(例えば空洞化した部位の有無や、その位置や大きさなど)を確認する。
【0024】
この回転式打撃部3による打撃と弾性波受信部4による弾性波の受信が移動しながら行える為、広範囲において迅速に非破壊検査が行えることになる。
【0025】
また、本発明の弾性波受信部4は、前記弾性波を被検査対象部51の被検査面51aに当接して直接受信する構成の為、高精度な非破壊検査が迅速に行える。
【0026】
即ち、例えば被検査対象部51の被検査面51aを打撃した際に生じる音を基に検査する場合、周囲の騒音(車両走行音や打撃の反響音)の影響を受け易いという問題があるが、本発明は、前述した構成から、周囲の騒音の影響を受けることなく高精度な非破壊検査が行えることになり、しかも、被検査面51aから直接弾性波を受信するから、それだけ高精度な非破壊検査を行うことができる。更に、従来例とは異なり、非破壊検査のたびに停止する必要はなく、被検査対象部51の被検査面51aを移動させながら迅速且つ広範囲に非破壊検査が行えることになる。
【実施例
【0027】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0028】
本実施例は、コンクリート構造物に対する非破壊検査方法であって、下記の非破壊検査装置Xを用いて実施される。尚、この非破壊検査装置Xには、弾性波データを基に被検査対象部51の欠損発生状態を確認する図示省略のデータ処理装置(コンピュータ)が接続される。
【0029】
この非破壊検査装置Xは、被検査体対象部51の被検査面(コンクリート表面)51aに風圧により圧接保持状態となる圧接保持手段2を備えた移動基体1に、被検査対象部51のコンクリート表面51aを転動して該コンクリート表面51aを打撃する回転式打撃部3と、この回転式打撃部3で打撃することにより発生する弾性波(例えば衝撃弾性波の反射波)を該被検査対象部51のコンクリート表面51aに転動当接して受信する弾性波受信部4を備えたものである。
【0030】
具体的には、移動基体1は、図1~3に図示したように適宜な金属製の部材で形成された板状構造体であり、その上面前方位置には後述する風力移動手段7を支承する一対の第一支承部10が設けられ、上面後方位置には後述する圧接保持手段2を支承する第二支承部11が設けられている。
【0031】
第二支承部11には、圧接保持手段2の角度を調整する角度調整部11aが設けられている。
【0032】
この角度調整部11aは、圧接保持手段2を止着部材12を介して取り付けるための複数の取付孔11a’を並設して構成されており、取付位置を可変することで圧接保持手段2の角度を調整することができる。
【0033】
また、移動基体1には、被検査対象部51のコンクリート表面51aを走行移動するための車輪部8が設けられている。
【0034】
この車輪部8は、図1,2に図示したように移動基体1の前端部及び基端部に設けられる車輪取付部8aに、車軸8cの左右に車輪8bを設けた車輪体を回転自在に設けて構成されている。
【0035】
また、この前後の各車輪部8は、適宜な駆動源14(モーター)によって駆動回動するように設けられており、後述する風力移動手段7による移動力に加えて移動基体1の移動を補助する。尚、車輪体の車軸に対する駆動源の駆動力は図示省略の歯車を介して伝達するように構成されている。
【0036】
また、移動基体1には、風力移動手段7が設けられている。
【0037】
この風力移動手段7は、図1に図示したように筒状体7a内に回転翼7bを設けた風車構造体であり、移動基体1の上面前方位置に設けられた第一支承部10夫々で支承される。
【0038】
この各風力移動手段7は、移動基体1の後方へ風を噴射する向きに設定され、この後方への風の噴射により移動基体1は前方へ移動するように構成されている。
【0039】
圧接保持手段2は、図1に図示したように筒状体2a内に回転翼2bを設けた風車構造体であり、移動基体1の上面後方位置に設けられた第二支承部11夫々で支承される。
【0040】
この各圧接保持手段2は、移動基体1を被検査対象部51のコンクリート表面51aに配した際、該コンクリート表面51aと交差する方向へ風を噴射するように設定され、この風の噴射により移動基体1は被検査対象部51のコンクリート表面51aに圧接保持せしめられるように構成されている。
【0041】
また、移動基体1の下面前方位置には弾性波受信部4(転動構造体)が設けられている。
【0042】
この弾性波受信部4は、図2,3に図示したように移動基体1の下面に設けられる後述する取付部13に回転不能に設けられる非回転軸部4aと、この非回転軸部4aに対して回転自在に被嵌する回転環状部4bとで構成されており、この非回転軸部4aと回転環状部4bとの接触部位には図示省略のベアリング構造が設けられている。
【0043】
また、弾性波受信部4は、非回転軸部4aに後述する回転式打撃部3により発生する弾性波を受信する受信子4cが設けられて構成されている。
【0044】
この受信子4cは、図2に図示したように加速度センサーであり、転動構造体の全体にて弾性波を感知するものである。つまり、コンクリート表面51aから回転環状部4b及び非回転軸部4aを伝達した弾性波を感知するものである。
【0045】
また、この構造から、受信子4cと被検査対象部51のコンクリート表面51aとの距離が一定に保たれ(回転式打撃部1との距離もほぼ一定に保たれる)、高精度な検査を達成し得ることになる。
【0046】
また、弾性波受信部4(転動構造体)は、被検査対象部51に配されて移動する際、被検査対象部51のコンクリート表面51a(垂直壁面)を転動するように構成されている。
【0047】
取付部13は、図2,3に図示したように移動基体1の下面前後左右位置に枢着される第一棒材13aと第一棒材13aの先端部間に枢着される第二棒材13bとで構成されたリンク構造体であり、移動基体1の下面に対して起伏可能に設けられている。
【0048】
また、この取付部13には付勢部材6が設けられており、この付勢部材6により起き方向に付勢されている。
【0049】
この構成から、弾性波受信部4(転動構造体)は、取付部13の起伏動に伴い移動基体1の下面に対して接離方向に移動し、付勢部材6の付勢に抗して移動基体1に接近する方向に移動可能となる。
【0050】
また、弾性波受信部4(転動構造体)は、被検査対象部51のコンクリート表面51aに接地しない状態においては、その下面が車輪8bの下面よりも下方位置となるように構成されている(図6参照)。
【0051】
従って、車輪8bを表面に接地した際、弾性波受信部4(転動構造体)は被検査対象部51のコンクリート表面51aに圧接することになる(図7参照)。
【0052】
移動基体1には、回転式打撃部3が設けられている。
【0053】
この回転式打撃部3は、図3に図示したように適宜な金属製の部材で形成したものであり、移動基体1に設けられる駆動部3a(モーター)の先端に打撃部3bを駆動回転自在に設けて構成されている。
【0054】
この打撃部3bは、断面六角形状にして略半球形状体であり、被検査対象部51のコンクリート表面51aを転動した際、該コンクリート表面51aを六つの角縁で殴打するように構成されている。
【0055】
また、回転式打撃部3は、金属製の付勢部材5(板バネ)を介して移動基体1に設けられている。
【0056】
この構成から、回転式打撃部3は、付勢部材5の弾性に伴い移動基体1の下面に対して接離方向に移動し、この付勢部材5の付勢に抗して移動基体1に接近する方向に移動可能となる。
【0057】
また、回転式打撃部3は、被検査対象部51のコンクリート表面51aに接地しない状態においては、その下面が車輪8bの下面よりも下方位置となるように構成されている(図4参照)。
【0058】
従って、車輪8bを表面に接地した際、回転式打撃部3は被検査対象部51のコンクリート表面51aに圧接することになる(図5参照)。
【0059】
また、本実施例に係る非破壊検査装置Xは、前述した各種装置(圧接保持手段2,風力移動手段7,回転式打撃部3及び弾性波受信部4)をリモコンにより遠隔操作し得るように構成されている。
【0060】
以上の構成から成る非破壊検査装置Xを用いたコンクリート構造物に対する非破壊検査方法について説明する。尚、本実施例では、検査対象となるコンクリート構造物として、図9に図示したように垂直な壁面構造物を採用しているが、本実施例の特性を発揮する箇所であれば適宜採用し得るものである。
【0061】
本実施例に係る非破壊検査装置Xを被検査対象部51のコンクリート表面51aで移動させる。
【0062】
非破壊検査装置Xは、被検査対象部51のコンクリート表面51aに対して風力により圧接保持状態となる圧接保持手段2を備えており、この圧接保持手段2により、例えば被検査対象部51のコンクリート表面51aが垂直壁面などでも張り付いたような状態となり、被検査対象部51のコンクリート表面51aから落下しない。
【0063】
この状態で、風力移動手段7を作動させると、噴射される風力により被検査対象部51のコンクリート表面51aを上昇移動する。この際、必要に応じて駆動源14(モーター)によって前後の各車輪部8を駆動回動させる。非破壊検査装置Xの降下は、風力移動手段7から噴射される噴射圧を適宜弱めることで行われる。
【0064】
また、非破壊検査装置Xの移動時に常時、回転式打撃部3による打撃と、この打撃により発生した弾性波を弾性波受信部4で受信する。
【0065】
この受信した弾性波に基づき被検査対象部51の欠陥発生状態(例えば空洞化した部位の有無や、その位置や大きさなど)を確認する。例えば図10のような健全な領域を移動している状態と、図11のような被検査対象部51に空洞Sがある領域を移動している状態のように、回転式打撃部3で打撃してから弾性波受信部4で弾性波を受信するまでの時間の違いによって、被検査対象部51の空洞Sの有無や深さを特定することができる。
【0066】
よって、本実施例によれば、回転式打撃部3による打撃と弾性波受信部4による弾性波の受信が移動しながら行える為、広範囲において迅速に非破壊検査が行えることになる。
【0067】
また、本実施例の弾性波受信部4は、弾性波を被検査対象部51のコンクリート表面51aに当接して直接受信する構成の為、高精度な非破壊検査が迅速に行える。
【0068】
即ち、例えば被検査対象部51のコンクリート表面51aを打撃した際に生じる音を基に検査する場合、周囲の騒音(車両走行音や打撃の反響音)の影響を受け易いという問題があるが、本発明は、前述した構成から、周囲の騒音の影響を受けることなく高精度な非破壊検査が行えることになり、しかも、コンクリート表面51aから直接弾性波を受信するから、それだけ高精度な非破壊検査を行うことができる。更に、従来例とは異なり、非破壊検査のたびに停止する必要はなく、被検査対象部51のコンクリート表面51aを移動させながら迅速且つ広範囲に非破壊検査が行えることになる。
【0069】
また、本実施例は、弾性波受信部4は、非破壊検査装置Xの移動時に被検査対象部51のコンクリート表面51aを転動する転動構造体で構成されているから、非破壊検査装置Xを移動させながら確実に非破壊検査が行えることになる。
【0070】
また、本実施例は、弾性波受信部4は、移動基体1に設けられる非回転軸部4aとこの非回転軸部4aに回転自在に被嵌される回転環状部4bとから成り、非回転軸部4aに弾性波を受信する受信子4cが設けられているから、被検査対象部51のコンクリート表面51aに対する受信子4cの距離を一定に保つことができ、精度の高い検査が行えることになる。
【0071】
また、本実施例は、回転式打撃部3は、移動基体1に設けられた駆動部3aにより、被検査対象部51のコンクリート表面51aを転動する転動構造体で構成された打撃部3bが駆動回転するように構成されているから、非破壊検査装置Xを停止した状態においても打撃部3bを駆動回転させて打撃して、非破壊検査が行えることになる。
【0072】
また、本実施例は、回転式打撃部3は、付勢部材5の付勢により被検査対象部51のコンクリート表面51aに圧接せしめられているから、回転式打撃部3を常時被検査対象部51のコンクリート表面51aに当接させた状態が得られる。
【0073】
また、本実施例は、弾性波受信部4は、付勢部材6の付勢により被検査対象部51のコンクリート表面51aに圧接せしめられているから、弾性波受信部4を常時被検査対象部51のコンクリート表面51aに当接させた状態が得られる。
【0074】
また、本実施例は、圧接保持手段2は、被検査対象部51のコンクリート表面51aと交差する方向へ風を噴射する回転翼2bであり、この回転翼2bから風を噴射することで移動基体1を被検査対象部51のコンクリート表面51aに圧接保持するように構成されているから、被検査対象部51のコンクリート表面51aが垂直若しくは傾斜していても落下せず移動することができる。
【0075】
また、本実施例は、移動基体1は、風力により移動する風力移動手段7を具備しているから、被検査対象部51のコンクリート表面51aを良好に移動することができる。
【0076】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0077】
X 非破壊検査装置
1 移動基体
2 圧接保持手段
2b 回転翼
3 回転式打撃部
3a 駆動部
3b 打撃部
4 弾性波受信部
4a 非回転軸部
4b 回転環状部
4c 受信子
5 付勢部材
6 付勢部材
7b 回転翼
8 車輪部
8a 駆動モーター
13 取付部
51 被検査対象部
51a 被検査面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11