(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】埋め殺し型コンクリート基礎
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20231010BHJP
E02D 27/00 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
E02D27/01 102Z
E02D27/01 D
E02D27/00 C
(21)【出願番号】P 2020016734
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】592243313
【氏名又は名称】フジプレコン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】松林 神秀
(72)【発明者】
【氏名】松林 克法
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英介
(72)【発明者】
【氏名】熊木 重人
(72)【発明者】
【氏名】樋口 博俊
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-007820(JP,A)
【文献】登録実用新案第3058012(JP,U)
【文献】特開平07-082753(JP,A)
【文献】特開2007-039935(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0200707(US,A1)
【文献】特開2014-125830(JP,A)
【文献】特開2009-097201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
E02D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立方体状をなし、略中央には上下に開口する空間部が設けられた器具箱用基礎であって、
コンクリート部材で形成された略L形をなす外枠ブロック及び内枠ブロックと、これらを各々接続してそれぞれ方形枠状に形成した外型枠及び内型枠と、前記外型枠と内型枠との間に設けられたコンクリート充填部と、前記コンクリート充填部に止着された基礎ボルト取付部材と、前記基礎ボルト取付部材により基礎上面に突設され、基礎上に設置される器具箱を固定する基礎ボルトと、を有し、
前記外型枠と内型枠とコンクリート充填部に充填されるコンクリートは一体化して器具箱用基礎を形成する、
ことを特徴とする埋め殺し型コンクリート基礎。
【請求項2】
前記外枠ブロックを接続しての方形枠状の外型枠の形成につき、前記外枠ブロックの接続部にずれ止め機能を有する接続具が用いられ、前記内枠ブロックを接続しての方形枠状の内型枠の形成につき、前記内枠ブロックの接続部にずれ止め機能を有する接続具が用いられた、
ことを特徴とする請求項1記載の埋め殺し型コンクリート基礎。
【請求項3】
前記外型枠及び内型枠は、複数段積み重ね可能に構成された、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の埋め殺し型コンクリート基礎。
【請求項4】
前記外型枠と内型枠との間にはケーブル入り口及びケーブル溜用の開口部が設けられる、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の埋め殺し型コンクリート基礎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート基礎枠埋め殺し型のコンクリート基礎に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道の踏切などで信号器具箱を敷設する際、その地盤下にコンクリート基礎を作製する必要がある。その際、あらかじめ工場で製造された既存の組立基礎を使用して容易に作製することが考えられるが、特に寒冷地(雪国)では、長年の雪圧によるひび割れや基礎自体の傾斜など、前記組立基礎では、その耐久性に不安が生じていた。
よって、従来通り、木材の型枠を施工現場で組み立て、もって該型枠内にコンクリートを充填してコンクリート基礎を施工していた。
【0003】
しかしながら、現場施工でのコンクリート基礎の作製では生コンクリートの硬化時間や木材型枠の設置やその撤去に長時間を要し、工期が長期化する要因となっていた。また、現場でのコンクリート基礎の施工は高度の技能を必要とされ、しかも将来に亘り品質の管理を継続していかなければならないとの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かくして、本発明は前記従来からの課題を解決するために創案されたもので、木材型枠を使用した現場でのコンクリート基礎の施工ではないため、生コンクリートの硬化時間や木材型枠の設置やその撤去に長時間を要することなく、工期も長期化せず、高度な施工技能も必要とせず、将来に亘っての品質の維持も持続でき、さらには現場での簡単な組み立てのみで施工できるコンクリート基礎枠埋め殺し型コンクリート基礎を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
立方体状をなし、略中央には上下に開口する空間部が設けられた器具箱用基礎であって、
コンクリート部材で形成された略L形をなす外枠ブロック及び内枠ブロックと、これらを各々接続してそれぞれ方形枠状に形成した外型枠及び内型枠と、前記外型枠と内型枠との間に設けられたコンクリート充填部と、前記コンクリート充填部に止着された基礎ボルト取付部材と、前記基礎ボルト取付部材により基礎上面に突設され、基礎上に設置される器具箱を固定する基礎ボルトと、を有し、
前記外型枠と内型枠とコンクリート充填部に充填されるコンクリートは一体化して器具箱用基礎を形成する、
ことを特徴とし、
または、
前記外枠ブロックを接続しての方形枠状の外型枠の形成につき、前記外枠ブロックの接続部にずれ止め機能を有する接続具が用いられ、前記内枠ブロックを接続しての方形枠状の内型枠の形成につき、前記内枠ブロックの接続部にずれ止め機能を有する接続具が用いられた、
ことを特徴とし、
または、
前記外型枠及び内型枠は、複数段積み重ね可能に構成された、
ことを特徴とし、
または、
前記外型枠と内型枠との間にはケーブル入り口及びケーブル溜用の開口部が設けられる、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるコンクリート基礎枠埋め殺し型コンクリート基礎であれば、 現場での木材型枠を使用したコンクリート基礎の施工ではないため、生コンクリートの硬化時間や木材型枠の設置やその撤去に長時間を要することなく、工期も長期化せず、高度な施工技能も必要とせず、将来に亘っての品質も維持でき、さらには現場での簡単な組み立てのみで施工できるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明により作製された器具箱用基礎の概略を説明する説明図である。
【
図3】外枠ブロックの構成を説明する説明図(1)である。
【
図4】外枠ブロックの構成を説明する説明図(2)である。
【
図5】内枠ブロックの構成を説明する説明図(1)である。
【
図6】内枠ブロックの構成を説明する説明図(2)である。
【
図9】開口ブロックの構成を説明する構成説明図である。
【
図10】設置ガイドベースの構成を説明する構成説明図である。
【
図11】外型枠と内型枠を組み立て、基礎ボルト取付具及び接続具を取り付けた状態を説明する説明図である。
【
図12】基礎ボルト取付具の構成を説明する説明図(1)である。
【
図13】基礎ボルト取付具の構成を説明する説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の実施例を図に基づいて説明する。
ここで、一般的に、器具箱用基礎は、立方体状、例えば直方体状をなしており、略半分以上は地中に埋設されて構成される。そして、略中央部分には上下に開口する空間部が設けられる。
【0010】
通常、前記器具箱用基礎は、コンクリート部材によって形成されている。すなわち、従来では、施工現場で基礎形成用の型枠、すなわち例えば木製の外型枠や内型枠が組み立てられ、組み立てられた型枠内にコンクリートが打設されて形成されている。
【0011】
しかしながら、本発明では図に示す以下の構成を採用した。
ここで、
図3、
図4において、符号1は、コンクリート部材で形成された略L形をなす外枠ブロックを示す。該外枠ブロック1は、あらかじめ工場で製造される。次に、
図5、
図6において、符号2は内枠ブロックを示す。この内枠ブロック2についてもあらかじめ工場で製造される。
【0012】
ここで、
図11に示すように、外枠ブロック1を長方形状に枠組みし、接続具3により接続して長方形枠体状の外型枠4を構成する。尚、外枠ブロック1は、略L型に形成されており、そのL型の付け目である基部6からの長さが同一には構成されてはいない。一方側の長さが長く構成されている。これにより長方形状の枠体が形成できる。
【0013】
また、この外型枠4は、例えば線路脇に設置されるが、その線路脇の施工箇所では所定の深さまで掘削し、その掘削した施工箇所に外型枠4を設置するものとなる。鉄道関係のケーブルやその他の器具を収納する器具箱の基礎であるため、基礎の半分程度は埋設して水平性を確保し、安定性を確保することが必要となる。
【0014】
ところで、前記掘削した箇所には、
図10に示す設置ガイドベース8をあらかじめ設置する。この設置ガイドベース8をガイドにして外型枠4及び内型枠5を設置していくものとなる。
図10に示す如きである。
【0015】
次に、施工箇所の所定位置に設置した外型枠4の内側に所定の間隔をあけて前記内枠ブロック2を長方形の枠体状に枠組みし、接続具3により接続して内型枠5を構成する。
【0016】
そして、上記のように長方形の枠体状に枠組みして形成した外型枠4の上にさらに外型枠4を枠組みして積み重ねる。また、内型枠5の上にもさらに内型枠5を枠組みして積み重ねる。
【0017】
尚、外枠ブロック1あるいは内枠ブロック2につき、図に示すものより倍の高さを有する製品を製造しておけば、施工現場において積み重ねる必要はない。しかし、倍の高さの製品であると、形状が大きくなり、重量も重くなり、施工現場に運搬するのは困難を極める。よって、形状を分割型にし、施工現場で積み上げる方式とした。
【0018】
図1、
図11に示すように、長方形の枠体状に枠組みした短手方向の接続部13には接続具3としてH形鋼を採用している。従って、前記H形鋼の下側の凹部を下側の外枠ブロック1の接続部13に嵌め込む。これにより外枠ブロック1を接続できると共に、前後にずれることを防止するずれ止めに出来る。尚、H形鋼には、そのウェブに厚みがあるため、その厚みの分だけ切削などして接続部13の上面を低くしておく必要がある。
【0019】
そして、H形鋼の上側の凹部に積み重ねる外枠ブロック1の接続部13を嵌め込む。これにより積み上げた外枠ブロック1を接続できると共に、前後にずれることを防止するずれ止めに出来る。
【0020】
長方形の枠体状に枠組みした長手方向の接続部14には接続具3としてH形鋼を採用しても良いし、コ字型の接続具3を使用しても良い。H型鋼を使用する場合には、H形鋼の下側の凹部を下側の外枠ブロック1の接続部14に嵌め込む。これにより外枠ブロック1を接続できると共に、前後にずれることを防止するずれ止めに出来る。尚、H形鋼には、そのウェブに厚みがあるため、その厚みの分だけ切削などして前記接続部14の上面を低くしておく必要がある。
【0021】
尚、外型枠4及び内型枠5の大きさにつき、その大きさを変えて長方形の枠体状の大きさを大きく形成することも出来る。その場合、繋ぎ合わされる外枠ブロック1の間及び内枠ブロック2に平板状の長さ調整ブロックを継ぎ足すことになる。
その場合、H形鋼の上側の凹部には、積み重ねる外枠ブロック1と長さ調整ブロックとの接続部を嵌め込むことになる。
【0022】
次に、長方形状に枠組みした外型枠4と内型枠5との間の隙間、例えば幅方向に生じている隙間には、
図12、
図13に示す基礎ボルト取付具9を取り付ける。該基礎ボルト取付具9には、基礎ボルト10があらかじめ取り付けられている。
この基礎ボルト10の先端が基礎上面から突設するように前記基礎ボルト取付具9を配置する。
【0023】
尚、
図1に示すように、組み立てた基礎枠の上面には前記基礎ボルト10の先端を保持する基礎ボルトガイドステイ11を設置しておく。これにより外型枠1と内型枠2との間に生ずる隙間にコンクリートを打設し、振動を与えて充填しても前記基礎ボルト10の設置位置が動くことがない。
【0024】
以上において、前記外型枠4と内型枠5との間にコンクリートを打設して、所定時間の養生の後、固化する。そして、本発明において、固化した後には、前記外型枠4及び内型枠5を脱型する必要がない。前記外型枠4も内型枠5も前記打設したコンクリートと一体化するものとなり、器具箱用基礎を構成するものとなる。
【0025】
このように、本発明では、コンクリート基礎の外形と同様の形をした外枠ブロック1及び内枠ブロック2をコンクリート部材によりあらかじめ作製しておく。すなわち、略L字状の外形をなし、所定の幅を有するコンクリート製外枠ブロック1及び内枠ブロック2を工場であらかじめ作製しておき、それを現場で組み立て、積み重ねるなどする。
【0026】
すなわち、現場において、略L字状のコンクリート製外枠ブロック1及び内枠ブロック2を用いて長方形状の外型枠4と内型枠5を枠組みし、枠体を形成する。さらに、外型枠4と内型枠5を積み重ねて基礎枠を作製する。
【0027】
積み重ね段数は2段以上の複数段にすることが出来、その段数は任意で変更できる。現場の状況により深く基礎を埋設しなければならない場合に対応したものである。
【0028】
組み立てた外型枠4と内型枠5との間に生コンクリートを流し込み、基礎枠と流し込んだコンクリートを一体化させる。
基礎枠の構造はケーブル入口やケーブル溜を考慮した構造、すなわち、内型枠5の内側に設けられた基礎の空間部と外部とが連通する開口部を設けた構造とし、器具箱設置後の施工性を高めている。
【0029】
すなわち、開口ブロック12を取り付けてケーブル入口を確保し、また外枠ブロック1と内枠ブロック2との間にケーブル溜を設けられる構造とした。
【0030】
上記のように基礎枠の組み立て工程が簡単な構造としてある。すなわち、L形ブロック、すなわち外枠ブロック1や内枠ブロック2の組み立てと積上げで基礎枠を完成することを可能としたものである。
【0031】
さらに、基礎ボルト取付具9及び基礎ボルトガイドステイ11を設置することにより、基礎ボルト10の位置出しを簡単に、かつ確実に行えるものとなっている。
【0032】
そして、コンクリート部材で作製した前記外枠ブロック1及び内枠ブロック2など組立基礎枠をそのまま基礎として活用し、基礎作製時に発生する産業廃棄物の処理を不要としている。すなわち、組立基礎枠は埋め殺しタイプの残存型枠であり木枠作製時のような産業廃棄物を排出することがないのである。
【符号の説明】
【0033】
1 外枠ブロック
2 内枠ブロック
3 接続具
4 外型枠
5 内型枠
6 基部
8 設置ガイドベース
9 基礎ボルト取付具
10 基礎ボルト
11 基礎ボルトガイドステイ
12 開口ブロック
13 短手方向の接続部
14 長手方向の接続部