(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】データキャリア構造体及びデータキャリアシステム
(51)【国際特許分類】
G06K 19/07 20060101AFI20231010BHJP
G06K 19/073 20060101ALI20231010BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20231010BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20231010BHJP
H01Q 7/00 20060101ALI20231010BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20231010BHJP
H01Q 21/28 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
G06K19/07 200
G06K19/07 230
G06K19/073 027
G06K19/077 264
G06K7/10 232
G06K7/10 240
G06K7/10 184
H01Q7/00
H01Q1/52
H01Q21/28
(21)【出願番号】P 2019138136
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】598005878
【氏名又は名称】吉川工業アールエフセミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】川島 裕嗣
(72)【発明者】
【氏名】石井 英一
【審査官】田名網 忠雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/174797(WO,A1)
【文献】特開2007-257538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/07
G06K 19/073
G06K 19/077
G06K 7/10
H01Q 7/00
H01Q 1/52
H01Q 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面側に配置された第1のアンテナコイルを有する第1のデータキャリアと、
前記第1の面と対向する第2の面側に配置された第2のアンテナコイルを有する第2のデータキャリアと、
前記第1のアンテナコイルと前記第2のアンテナコイルとの間において前記第2のアンテナコイルの近傍に配置された金属箔とを有し、
前記第2のアンテナコイルの大きさは、前記第1のアンテナコイルの大きさと略同じ又は小さく、
前記金属箔の大きさは、前記第2のアンテナコイルの大きさより小さいことを特徴とするデータキャリア構造体。
【請求項2】
前記第2のアンテナコイルと前記金属箔との距離は、前記第1のアンテナコイルと前記金属箔との距離よりも短いことを特徴とする請求項1記載のデータキャリア構造体。
【請求項3】
前記金属箔は、
前記第2のアンテナコイルから、前記第2のアンテナコイル
によって閉じられる領域の面積と等しい面積となる真円の直径の(1/10)~(1/5)の距離を離して配置され、
前記第1のアンテナコイルから、前記第1のアンテナコイル
によって閉じられる領域の面積と等しい面積となる真円の直径の(1/2)以上の距離を離して配置されていることを特徴とする請求項1記載のデータキャリア構造体。
【請求項4】
前記金属箔は、前記第2のアンテナコイルの大きさに対して
前記第2のアンテナコイルによって閉じられる領域の面積と等しい面積となる真円の直径の(1/10)~(1/5)分全外周について内側に小さいことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のデータキャリア構造体。
【請求項5】
前記第2のアンテナコイルの大きさは、前記第1のアンテナコイルの大きさと略同じであることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のデータキャリア構造体。
【請求項6】
前記第2のアンテナコイルの大きさは、前記第1のアンテナコイル
によって閉じられる領域の面積の略(1/2)であることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のデータキャリア構造体。
【請求項7】
前記金属箔は、アルミ、銅、及びステンレスの内の何れかで形成されていることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のデータキャリア構造体。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載のデータキャリア構造体と、
前記データキャリア構造体が有するデータキャリアと通信するリーダ/ライタ装置とを有するデータキャリアシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データキャリア構造体及びデータキャリアシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
データキャリアの用途として、管理対象に無線(RFID:Radio Frequency IDentification)タグを取り付けて管理することが一般に行われている。管理対象に取り付けられた無線タグとリーダ/ライタ装置とが無線信号を用いて通信を行うことで、無線タグに対して、例えば管理対象に係るデータ(情報)等の書き込みや読み出しを行うことが可能である。また、管理対象に無線タグとともに加速度センサーを内蔵して、管理対象に係る情報として管理対象の向きも取得可能にしたデータキャリアシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、管理対象の向きを認識するために加速度センサーを内蔵するとコストが増大してしまう。本発明の目的は、加速度センサー等のコストの高い素子を用いることなく、データキャリアを有する管理対象とリーダ/ライタ装置のアンテナとの相対的な向きを認識できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るデータキャリア構造体は、第1の面側に配置された第1のアンテナコイルを有する第1のデータキャリアと、前記第1の面と対向する第2の面側に配置された第2のアンテナコイルを有する第2のデータキャリアと、前記第1のアンテナコイルと前記第2のアンテナコイルとの間において前記第2のアンテナコイルの近傍に配置された金属箔とを有し、前記第2のアンテナコイルの大きさは、前記第1のアンテナコイルの大きさと略同じ又は小さく、前記金属箔の大きさは、前記第2のアンテナコイルの大きさより小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、コストの高い素子を用いることなく、データキャリアを有する管理対象とリーダ/ライタ装置のアンテナとの相対的な向きを認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態におけるデータキャリア構造体の例を説明する図である。
【
図2】第1の実施形態におけるデータキャリア構造体の他の例を説明する図である。
【
図3】第1の実施形態におけるデータキャリアの機能構成例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態における通信動作を説明する図である。
【
図5】第1の実施形態における通信動作を説明する図である。
【
図6】第1の実施形態におけるデータキャリア構造体の他の例を説明する図である。
【
図7】第2の実施形態におけるデータキャリア構造体の例を説明する図である。
【
図8】第2の実施形態におけるリーダ/ライタ装置を説明する図である。
【
図9】第2の実施形態における受信アンテナを説明する図である。
【
図10】第2の実施形態において管理対象をサービスエリアに並べた例を示す図である。
【
図11】第2の実施形態におけるリーダ/ライタ装置(受信系)の構成例を示す図である。
【
図12】第3の実施形態におけるデータキャリア構造体の例を説明する図である。
【
図13】第3の実施形態におけるリーダ/ライタ装置のアンテナの例を示す図である。
【
図14】第3の実施形態におけるリーダ/ライタ装置による磁界強度を説明する図である。
【
図15】第3の実施形態におけるリーダ/ライタ装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。
図1を参照して、第1の実施形態におけるデータキャリア構造体について説明する。
図1(A)~
図1(C)は、第1の実施形態におけるデータキャリア構造体としての管理対象100の内部の構成例を示す図である。
図1(A)は、管理対象100の構成を示す斜視図であり、
図1(B)は、管理対象100の構成を示す側面図である。また、
図1(C)は、第1の面の上方から見た管理対象100の構成を示している。
【0010】
第1の実施形態におけるデータキャリア構造体としての管理対象100は、第1のデータキャリア110、第2のデータキャリア120、及び金属箔130を有する。管理対象100内における第1の面(例えば、表面)101側に第1のデータキャリア110が配され、第1の面に対向する第2の面(例えば、裏面)102側に第2のデータキャリア120が配され、第1のデータキャリア110と第2のデータキャリア120との間に金属箔130が配されている。
【0011】
第1のデータキャリア110は、第1のアンテナコイル111及び第1のタグチップ112を有する。第1のタグチップ112は、第1のアンテナコイル111に誘導される電圧を動作電源として動作する。また、第2のデータキャリア120は、第2のアンテナコイル121及び第2のタグチップ122を有する。第2のタグチップ122は、第2のアンテナコイル121に誘導される電圧を動作電源として動作する。金属箔130は、例えばアルミ箔である。なお、金属箔130は、アルミ箔に限らず、強磁性を示さない金属が適用でき、例えば銅(Cu)や磁石につかないステンレス等で形成されていてもよい。
【0012】
第1のアンテナコイル111と第2のアンテナコイル121は、同じ又は略同じ大きさである。また、第1のアンテナコイル111と第2のアンテナコイル121は、平行又は略平行になるように配置されている。金属箔130は、第2のアンテナコイル121の大きさ(第2のアンテナコイル121によって閉じられる領域)よりも小さく、第2のアンテナコイル121の近傍に配置されている。金属箔130は、第2の面102から見て第2のアンテナコイル121の背面に配置されている。このように、本実施形態におけるデータキャリア構造体としての管理対象100においては、第2のアンテナコイル121の近くに金属箔130が存在するため、第2のデータキャリア120が通信可能な距離限界は第1のデータキャリア110より短くなっている。
【0013】
例えば、第2のアンテナコイル121の形状が円形である場合、金属箔130は、第2のアンテナコイル121の直径の(1/10)~(1/5)分だけ全外周について内側に小さいサイズとする。また、金属箔130は、第2のアンテナコイル121から、第2のアンテナコイル121の直径の(1/10)~(1/5)の距離を離して配置し、第1のアンテナコイル111から、第1のアンテナコイル111の直径の(1/2)以上の距離を離して配置する。なお、第1のアンテナコイル111や第2のアンテナコイル121の形状が真円でなく、例えば楕円や方形等である場合には、等しい面積となる真円の直径をアンテナコイルの直径と換算して距離を決める。
【0014】
一例として、第1のアンテナコイル111及び第2のアンテナコイル121の直径が20mmであるとする。この場合、金属箔130は、大きさが第2のアンテナコイル121に対して全外周について3mm程度内側に小さく、第2のアンテナコイル121から3mm程度離れた位置で、かつ第1のアンテナコイル111から10mm以上離れた位置に配置される。
【0015】
ここで、管理対象100において、第1のデータキャリア110、第2のデータキャリア120、及び金属箔130を除いたその内部は、交流磁界に影響を及ぼしにくい(交流磁界が減衰されにくい)物質で構成されている。例えば、管理対象100の内部は、樹脂、木材、陶器、ガラス、セラミック、紙、磁石、絶縁された金属粉等で構成されている。なお、第1のデータキャリア110、第2のデータキャリア120、及び金属箔130の一部又は全部を、支持部材等を用いて管理対象100の内面等に固定するようにして、内部を空間とするようにしてもよい。
【0016】
なお、
図1(A)~(C)には、第1のアンテナコイル111及び第2のアンテナコイル121の形状が円形である例を示したが、アンテナコイルの形状は、これに限定されるものではない。例えば、アンテナコイルの形状は、楕円であったり、方形であったりしてもよい。一例として、
図2(A)~
図2(C)に、アンテナコイルの形状が方形である場合の第1の実施形態におけるデータキャリア構造体としての管理対象200の内部の構成例を示す。
図2(A)は、管理対象200の構成を示す斜視図であり、
図2(B)は、管理対象200の構成を示す側面図である。また、
図2(C)は、第1の面の上方から見た管理対象200の構成を示している。
【0017】
第1の実施形態におけるデータキャリア構造体としての管理対象200は、第1のデータキャリア210、第2のデータキャリア220、及び金属箔230を有する。管理対象200内における第1の面(例えば、表面)201側に第1のデータキャリア210が配され、第1の面に対向する第2の面(例えば、裏面)202側に第2のデータキャリア220が配され、第1のデータキャリア210と第2のデータキャリア220との間に金属箔230が配されている。
【0018】
第1のデータキャリア210は、
図1に示した第1のデータキャリア110と同様に、第1のアンテナコイル211及び第1のタグチップ212を有する。また、第2のデータキャリア220は、
図1に示した第2のデータキャリア120と同様に、第2のアンテナコイル221及び第2のタグチップ222を有する。金属箔230は、
図1に示した金属箔130と同様である。
【0019】
図3は、本実施形態におけるデータキャリアの機能構成例を示すブロック図である。本実施形態におけるデータキャリアは、アンテナ301、送受信部302、電源部303、制御部304、及びメモリ305を有する。
【0020】
アンテナ301は、リーダ/ライタ装置との間で無線信号を含む電波を送受信し、リーダ/ライタ装置と通信するためのアンテナである。アンテナ301は、例えば
図1に示したアンテナコイル111、121や
図2に示したアンテナコイル211、221が相当する。送受信部302は、アンテナ301で受信した電波からデータを復調するとともに、制御部304から出力されるデータを基に無線信号を生成してアンテナ301に出力する。電源部303は、アンテナ301で受信した電波を基に電力を生成する。制御部304は、データキャリアの各機能部を統括的に制御する。制御部304は、例えばリーダ/ライタ装置から送信されたコマンドに応じた処理を行う。メモリ305は、データキャリアの動作に係るプログラムやデータ等を記憶する不揮発性メモリである。
【0021】
第1の実施形態における管理対象100とリーダ/ライタ装置401との通信動作について説明する。
図4(A)は、管理対象100の第1の面(例えば、表面)101側から駆動して通信させるときの動作を説明する図である。
図4(A)において、破線で示すようにリーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402から発生する磁束が、第1のデータキャリア110が有する第1のアンテナコイル111を通過することにより第1のデータキャリア110は十分に駆動される。よって、第1のデータキャリア110は、リーダ/ライタ装置401と通信する。一方、第2のデータキャリア120は、第2のアンテナコイル121に近い位置にある金属箔130がリーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402から発生する磁束の通過を妨害するために十分には駆動されない。よって、第2のデータキャリア120は、リーダ/ライタ装置401と通信しない。
【0022】
図4(B)は、管理対象100の第2の面(例えば、裏面)102側から駆動して通信させるときの動作を説明する図である。
図4(B)に示すように、管理対象100の第2の面(例えば、裏面)102側から駆動する場合、金属箔130は、リーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402に対して、第2のデータキャリア120が有する第2のアンテナコイル121の背面側にあることになる。したがって、金属箔130による影響は小さく、
図4(B)において、破線で示すようにリーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402から発生する磁束が、第2のデータキャリア120が有する第2のアンテナコイル121を通過することにより第2のデータキャリア120は十分に駆動される。よって、第2のデータキャリア120は、リーダ/ライタ装置401と通信する。また、第1のデータキャリア110は、金属箔130との距離が大きいため、リーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402から発生する磁束の第1のアンテナコイル110の通過について金属箔130による影響は小さい。よって、第1のデータキャリア110は、リーダ/ライタ装置401と通信できる場合もあれば通信できない場合もある。
【0023】
以上のように、管理対象100の第1の面(例えば、表面)101側から駆動して通信させる場合、リーダ/ライタ装置401は、第1のデータキャリア110と通信でき、第2のデータキャリア120と通信できない。また、管理対象100の第1の面(例えば、表面)101側から駆動して通信させる場合、リーダ/ライタ装置401は、第2のデータキャリア120と通信でき、第1のデータキャリア110と通信できる場合と通信できない場合がある。したがって、第1のデータキャリア110とのみ通信できた場合には管理対象100の第1の面(例えば、表面)101側から駆動したと判断でき、第1のデータキャリア110との通信にはかかわらず第2のデータキャリア120と通信できた場合には管理対象100の第2の面(例えば、裏面)102側から駆動したと判断できる。つまり、加速度センサー等のコストの高い素子を用いることなく、複数のデータキャリアを用いることで、リーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402に対して、管理対象100の第1の面(例えば、表面)101が向いているか、第2の面(例えば、裏面)102が向いているかを認識することが可能となる。
【0024】
また、
図4(C)に示すように管理対象100の第1の面101及び第2の面102が重力方向に対してほぼ平行となる場合、加速度センサーだけでは管理対象100の向きを検出することができない。それに対して、本実施形態によれば、リーダ/ライタ装置401と第1のデータキャリア110及び第2のデータキャリア120との間の通信状況(通信の成否)に基づいて、リーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402に対して、管理対象100の第1の面(例えば、表面)101が向いているか、第2の面(例えば、裏面)102が向いているかを認識することができる。
【0025】
第1の実施形態における管理対象100とリーダ/ライタ装置401との通信動作の他の例について説明する。
図5(A)~
図5(F)は、管理対象100の側面からリーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402をかざして通信する場合を説明する図である。
図5(A)~
図5(F)は、リーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402に対する管理対象100の位置を順次ずらした状態を示している。
【0026】
図5(A)~
図5(C)においては、リーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402から発生した磁束は、第1のデータキャリア110が有する第1のアンテナコイル111を通過し、第2のデータキャリア120が有する第2のアンテナコイル121を通過しにくい。よって、リーダ/ライタ装置401は、第1のデータキャリア110と通信し、第2のデータキャリア120と通信しない。
【0027】
また、
図5(D)においては、リーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402から発生した磁束は、第1のデータキャリア110が有する第1のアンテナコイル111及び第2のデータキャリア120が有する第2のアンテナコイル121を通過している。よって、リーダ/ライタ装置401は、第1のデータキャリア110及び第2のデータキャリア120と通信する。
【0028】
また、
図5(E)~
図5(F)においては、リーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402から発生した磁束は、第2のデータキャリア120が有する第2のアンテナコイル121を通過し、第1のデータキャリア110が有する第1のアンテナコイル111を通過しにくい。これは、リーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402の中心部に近づくことで、アンテナコイル402による磁界が第1のアンテナコイル111と平行な方向に近づくためである。よって、リーダ/ライタ装置401は、第2のデータキャリア120と通信し、第1のデータキャリア110と通信しない。なお、管理対象100をリーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402の中心付近に配置すると、同様の理由からリーダ/ライタ装置401は、第1のデータキャリア110及び第2のデータキャリア120ともに通信できない。
【0029】
管理対象100の側面から駆動して通信させる場合には、通信しやすい位置関係になるように管理対象100を配置するガイド枠等を設けることが望ましい。例えば、リーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402が台等に埋め込まれている場合には、その台上に管理対象をおく場合に位置や向き等を示すガイドを設けることが望ましい。なお、管理対象100の側面から駆動して通信させる場合に通信可能な範囲を広げるには、リーダ/ライタ装置401に複数のアンテナコイル402を設け、複数のアンテナコイル402を並べて配置し通信に使用するアンテナコイルを順次切り替えることで実現可能である。
【0030】
図6(A)~
図6(C)は、第1の実施形態におけるデータキャリア構造体としての管理対象100の他の構成例を示す図である。
図6(A)は、管理対象100の構成を示す斜視図であり、
図6(B)は、管理対象100の構成を示す側面図である。また、
図6(C)は、第1の面の上方から見た管理対象100の構成を示している。この
図6(A)~
図6(C)において、
図1(A)~
図1(C)に示した構成要素と対応する構成要素には同一の符号を付している。
【0031】
図6(A)~
図6(C)に示す例は、第1のデータキャリア110が有する第1のアンテナコイル111に対して、第2のデータキャリア120が有する第2のアンテナコイル121の大きさを小さくしている。例えば、第2のアンテナコイル121の大きさを、第1のアンテナコイル111の大きさの約(1/2)程度とする。
【0032】
図1(A)~
図1(C)に示した例と比較すると、第2のアンテナコイル121の大きさが小さいので、
図6(A)~
図6(C)に示す例では、第2のデータキャリア120の通信可能距離が短くなる。したがって、リーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402の出力を大きくしても、
図4(A)に示したような駆動状態でリーダ/ライタ装置401が第2のデータキャリア120と通信しないことを担保することができる。このように
図6(A)~
図6(C)に示した構成とすることで、リーダ/ライタ装置401のアンテナコイル402の出力を大きくすることが可能となり、通信可能な距離を延ばしたり、管理対象100の側面から駆動するときの通信特性を改善したりすることができる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下、第2の実施形態におけるデータキャリアシステムのデータキャリア構造体及びリーダ/ライタ装置について説明する。
【0034】
図7を参照して、第2の実施形態におけるデータキャリア構造体について説明する。
図7(A)~
図7(C)は、第2の実施形態におけるデータキャリア構造体としての管理対象700の内部の構成例を示す図である。
図7(A)は、管理対象700の構成を示す斜視図であり、
図7(B)は、管理対象700の構成を示す側面図である。また、
図7(C)は、第1の面の上方から見た管理対象700の構成を示している。
【0035】
第2の実施形態におけるデータキャリア構造体としての管理対象700は、第1のデータキャリア710及び第2のデータキャリア720を有する。第2の実施形態における管理対象700は、第1の実施形態とは異なり、金属箔を有していない。管理対象700内における第1の面(例えば、表面)701側に第1のデータキャリア710が配され、第1の面に対向する第2の面(例えば、裏面)702側に第2のデータキャリア720が配される。
【0036】
第1のデータキャリア710は、第1のアンテナコイル711及び第1のタグチップ712を有する。第1のタグチップ712は、第1のアンテナコイル711に誘導される電圧を動作電源として動作する。また、第2のデータキャリア720は、第2のアンテナコイル721及び第2のタグチップ722を有する。第2のタグチップ722は、第2のアンテナコイル721に誘導される電圧を動作電源として動作する。
【0037】
第1のアンテナコイル711と第2のアンテナコイル721は、同じ又は略同じ大きさである。また、第1のアンテナコイル711と第2のアンテナコイル721は、アンテナコイルの大きさ(形状が円形であればアンテナコイルの直径)以上の距離を空けて、平行又は略平行になるように配置されている。なお、アンテナコイルの形状が真円でなく、例えば楕円や方形等である場合には、等しい面積となる真円の直径をアンテナコイルの大きさと換算して距離を決める。
【0038】
管理対象700において、第1のデータキャリア710及び第2のデータキャリア720を除いたその内部は、交流磁界に影響を及ぼしにくい(交流磁界が減衰されにくい)物質で構成されている。例えば、管理対象700の内部は、樹脂、木材、陶器、ガラス、セラミック、紙、磁石、絶縁された金属粉等で構成されている。なお、第1のデータキャリア710及び第2のデータキャリア720の一部又は全部を、支持部材等を用いて管理対象700の内面等に固定するようにして、内部を空間とするようにしてもよい。
【0039】
図8は、第2の実施形態におけるリーダ/ライタ装置を説明する図である。第2の実施形態におけるリーダ/ライタ装置は、データキャリア710、720からの返信信号レベルの強さを検出する機能を有する。第2の実施形態におけるリーダ/ライタ装置は、アンテナ装置として、
図8(A)に示すような、駆動用の駆動アンテナコイル811及び受信用の受信アンテナ821、822、823、824を有する。
図8(A)には4チャネル分の受信アンテナ821~824を有する例を示している。受信アンテナ821~824は、例えば特許第4071858号公報に記載されているような、多数の小ループコイル(セル)を組み合わせたアンテナである。受信アンテナ821~824のそれぞれは、例えば
図8(B)に示すような6個×10個の複数の小ループコイル831を組み合わせて構成される。
【0040】
また、受信アンテナ821~824は、その上方から見た場合、異なる受信アンテナ821~824のアンテナコイル(小ループコイル)が重なり合わないように、位置をずらして配置されている。例えば、小ループコイルの1辺の長さをLとすると、
図8(A)に示すように、受信アンテナ821に対して、受信アンテナ822は第1の方向に(L/2)ずらして配置され、受信アンテナ823は第1の方向に対して垂直な第2の方向に(L/2)ずらして配置され、受信アンテナ824は第1の方向及び第2の方向にそれぞれ(L/2)ずらして配置される。なお、受信アンテナ821~824をずらす量は、これに限定されるものではなく、0からLまでの間であれば任意である。このように、異なる受信アンテナ821~824のアンテナコイルの小ループコイルが重なり合わないように配置することで、リーダ/ライタ装置において受信信号の不感帯が生じることを防止することができる。
【0041】
ここで、受信アンテナ821~824は、それぞれが
図9(A)に示すような4つの小ループコイルを結合した構造を基本構成901~904として構成されている。各基本構成901~904において、
図9(B)に示すように、4つの小ループコイル911~914は、巻線数と表面積が等しく、隣接する小ループコイルでは、コイルの巻線の向きが逆になるように配置される。
図9(B)に示した小ループコイル911の巻線方向が時計回りである場合には、右隣の小ループコイル912の巻線方向及び下方の小ループコイル913の巻線方向は反時計回りとなる。また、小ループコイル911の対角に位置する小ループコイル914の巻線方向は、小ループコイル911と同じ時計回り方向となる。
【0042】
このような構成において、図面裏側から手前方向への垂直磁界が発生している場合、小ループコイル911~914には、
図9(B)中に矢印で示したように、それぞれ時計回りの電流が発生する。小ループコイル911、914では巻線方向と同じ向きの電流が発生するが、小ループコイル912、913では巻線方向と逆向きの電流が発生することになる。したがって、各小ループコイル内を通過する磁界の強さが等しい場合には、小ループコイル911、914で発生した電流と、小ループコイル912、913で発生した電流が互いに打ち消し合い、端子a,b間に出力される電流はゼロとなる。つまり、このような小ループコイル911~914を結合して構成した受信アンテナ821~824は、駆動アンテナコイル811からの信号や周囲の環境からの雑音を相殺し、データキャリアからの受信信号を効率よく検出することが可能となる。
【0043】
なお、小ループコイルの1辺の長さLは、例えば下記の(式1)に基づいて設定される。
(データキャリアのアンテナコイルのサイズ)+最大通信距離×係数A・・・(式1)
(但し、1≦A≦2)
(式1)より求められた値より1辺の長さを短くすると、データキャリアのアンテナコイルから発せられる磁力線が複数の小ループコイルにまたがって通過するおそれがあり、相殺されて検出感度が低下するために実用的ではない。また、(式1)より求められた値より1辺の長さを長くすると、雑音に対する相殺能力が低下したり、データキャリアのアンテナコイルから発せられる磁力線が1つの小ループコイルを通過しても、同じコイルを再度通過してデータキャリアのアンテナコイル側へ戻ってしまうことで磁力線が相殺されたりして検出感度が低下するおそれがあるために、実用的ではない。
【0044】
図10には、駆動アンテナコイル811と受信アンテナ821~824とを重ねて組み込んだ台の上のサービスエリア内に複数の管理対象を並べた例を示している。リーダ/ライタ装置の駆動アンテナコイル811と、受信アンテナ821~824(
図10においては図示せず)を重ねた領域との外周は、ほぼ同じ大きさとしており、サービスエリア1001は、それより周囲が一回り(例えば1cm程度)内側に小さくなっている。また、駆動アンテナコイル811及び受信アンテナ821~824の形状は、同時に通信しようとする管理対象700を並べる領域に対応した形状となっている。
図10に示した例は、リーダ/ライタ装置におけるサービスエリア1001内に、1列に10個で3列に並べ、総数で30個の管理対象700を並べられるサイズの例である。
【0045】
図11は、第2の実施形態におけるリーダ/ライタ装置(受信系)の構成例を示す図である。
図11には、前述した例と同様に、4チャンネル分の受信アンテナ821~824を有する場合を一例として示している。リーダ/ライタ装置(受信系)は、
図8に一例を示した受信アンテナ821~824と、信号処理部1101とを有する。信号処理部1101は、各種の制御等を行うCPU1110と、受信アンテナ821~824にそれぞれ対応して設けられた信号検出部1120とを有する。
【0046】
信号検出部1120は、対応する受信アンテナ821~824の出力を受けて、データキャリア710、720からの信号を検出する。信号検出部1120の各々は、受信アンプ1121、検波器1122、コンパレータ1123、基準電圧1124、アナログ-デジタル変換器(ADC:Analog to Digital Converter)1125、及びメモリ1126を有する。
【0047】
受信アンプ1121は、対応する受信アンテナ821~824の出力(受信信号)を増幅して出力する。検波器1122は、受信アンプ1121の出力からデータキャリア710、720の返信信号を取り出す(検波する)。
【0048】
コンパレータ1123は、検波器1122の出力と、基準電圧1124とを比較し、データキャリア710、720からの信号を受信したか否かを判定する。コンパレータ1123は、例えば検波器1122から出力される信号レベルが、所定の基準電圧より高い場合にデータキャリア710、720からの信号を受信したと判定する。コンパレータ1123での判定結果は、CPU1110へ供給される。
【0049】
ADC1125は、検波器1122の出力、すなわちデータキャリア710、720の返信信号の信号レベルをアナログ-デジタル変換し、信号強度に応じたデジタル値を出力する。ADC1125の出力、言い換えればデータキャリア710、720の返信信号の信号レベルは、メモリ1126に記憶され、CPU1110へ供給される。CPU1110は、例えば、それぞれの信号検出部1120から供給されるコンパレータ1123での判定結果、及びメモリ1126に記憶された信号強度に応じたデジタル値に基づいて、管理対象700の向きを判断する。なお、各信号検出部1120にメモリ1126を設けずに、ADC1125の出力をCPU1110へ供給し、CPU1110においてADC1125の出力を保持するようにしてもよい。
【0050】
ここで、アンテナコイルが駆動して発生する磁界の強度は、アンテナコイル面とその直近、例えばアンテナのサイズ(直径相当)の10%程度まではほぼ同じ強さであり、それを越えてアンテナコイル面から遠ざかるにつれて小さくなり、アンテナのサイズ(直径相当)の(1/2)より遠ざかると急激に低下する。前述したように、本実施形態におけるリーダ/ライタ装置の駆動用の駆動アンテナコイル811のサイズは、同時に通信させる管理対象700の大きさ及び数に応じた大きさとしている。
【0051】
駆動アンテナコイル811のサイズと比較して、駆動アンテナコイル811面から管理対象700が有するデータキャリア710、720のアンテナコイル711、712までの距離の差は小さい。駆動アンテナコイル811のサイズを考慮すると、遠い側に位置するデータキャリア710、720のアンテナコイル711、712までの距離も、ほぼ同じ磁界強度で駆動できる範囲内にある。よって、管理対象700が有する第1のデータキャリア710及び第2のデータキャリア720を駆動する磁界強度は、ほぼ同等である。
【0052】
一方、管理対象700が有する第1のデータキャリア710及び第2のデータキャリア720からの返信信号が、リーダ/ライタ装置の受信用の受信アンテナ821~824で検出される信号レベルには差がある。これは、受信アンテナ821~824に対して、データキャリア710、720のアンテナコイル711、712の一方がほぼ密着している状態であり、他方がアンテナコイル711、712の大きさ以上離れている状態であり、さらに受信アンテナ821~824を構成する小ループコイルのサイズが小さく設定されているからである。
【0053】
例えば、受信アンテナ821~824の小ループコイルのサイズを、第1のアンテナコイル711と第2のアンテナコイル721との間の距離の4倍のサイズまで小さくすると、受信アンテナ821~824で検出されるデータキャリア710、720からの返信信号は、約1.3倍以上の信号レベルの差がある。また、受信アンテナ821~824の小ループコイルのサイズを、アンテナコイル711、721間の距離の3倍のサイズまで小さくすると、受信アンテナ821~824で検出されるデータキャリア710、720からの返信信号は、約1.5倍以上の信号レベルの差がある。また、受信アンテナ821~824の小ループコイルのサイズを、アンテナコイル711、721間の距離の2倍のサイズまで小さくすると、受信アンテナ821~824で検出されるデータキャリア710、720からの返信信号は、約2倍以上の信号レベルの差がある。
【0054】
管理対象700が有するデータキャリア710、720を駆動する磁界強度は、管理対象700がサービスエリア1001内のどの位置にあるかで変わるが、同一の管理対象700が有するデータキャリア710、720は、同じレベルの磁界で駆動される。これは、駆動アンテナコイル811面に対して、データキャリア710、720のアンテナコイル711、721が、駆動アンテナコイル811のサイズに対して十分に小さな距離しか離れずに、上下に同じ位置で重なっているためである。また、駆動アンテナコイル811の外周部では距離が離れたときの磁界はより急激に弱くなるが、データキャリア710、720の内の駆動アンテナコイル811面に近い側のデータキャリアのみ通信できれば良いので問題とはならない。
【0055】
以上の説明から明らかなように第2の実施形態によれば、リーダ/ライタ装置が、各管理対象700が有する第1のデータキャリア710及び第2のデータキャリア720と順次、個別に通信する。第1のデータキャリア710及び第2のデータキャリア720ともに通信できた場合、検出した第1のデータキャリア710及び第2のデータキャリア720からの返信信号の信号レベルを比較することで、信号レベルの大きい方のデータキャリアが受信アンテナ821~824に近い側にあると判断できる。また、第1のデータキャリア710及び第2のデータキャリア720の内の一方のデータキャリアしか通信できない場合、通信できたデータキャリアが受信アンテナ821~824に近い側にあると判断できる。
【0056】
すなわち、リーダ/ライタ装置が、管理対象700が有する第1のデータキャリア710及び第2のデータキャリア720ともに通信でき、受信アンテナ821~824を介して検出された返信信号の信号レベルにおいて第1のデータキャリア710からの返信信号が最も大きい信号レベルである場合、リーダ/ライタ装置の駆動アンテナコイル811に対して、管理対象700の第1の面(例えば、表面)701が向いていると判断できる。同様に、リーダ/ライタ装置が、第1のデータキャリア710及び第2のデータキャリア720ともに通信でき、検出された返信信号の信号レベルにおいて第2のデータキャリア720からの返信信号が最も大きい信号レベルである場合、リーダ/ライタ装置の駆動アンテナコイル811に対して、管理対象700の第2の面(例えば、裏面)702が向いていると判断できる。
【0057】
また、リーダ/ライタ装置が、第1のデータキャリア710と通信でき、第2のデータキャリア720とは通信できない場合、リーダ/ライタ装置の駆動アンテナコイル811に対して、管理対象700の第1の面(例えば、表面)701が向いていると判断できる。同様に、リーダ/ライタ装置が、第1のデータキャリア710とは通信できず、第2のデータキャリア720と通信できた場合、リーダ/ライタ装置の駆動アンテナコイル811に対して、管理対象700の第2の面(例えば、裏面)702が向いていると判断できる。
【0058】
このように第2の実施形態によれば、加速度センサー等のコストの高い素子を用いることなく、複数のデータキャリアを用いることで、リーダ/ライタ装置の駆動アンテナコイル811に対して、管理対象700の第1の面(例えば、表面)701が向いているか、第2の面(例えば、裏面)702が向いているかを認識することが可能となる。なお、管理対象700における第1の面701及び第2の面702以外の4側面からの駆動については、第1の実施形態と同様の通信状態を実現することができる。
【0059】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。以下、第3の実施形態におけるデータキャリアシステムのデータキャリア構造体及びリーダ/ライタ装置について説明する。
【0060】
図12を参照して、第3の実施形態におけるデータキャリア構造体について説明する。
図12(A)及び
図12(B)は、第3の実施形態におけるデータキャリア構造体としての管理対象1200の内部の構成例を示す図である。
図12(A)は、管理対象1200の構成を示す斜視図であり、
図12(B)は、管理対象1200の構成を示す側面図である。
【0061】
第3の実施形態におけるデータキャリア構造体としての管理対象1200は、その内部における第1の面(例えば、表面)1201側に配された第1のデータキャリア1210を有する。第1のデータキャリア1210は、第1のアンテナコイル1211及び第1のタグチップ1212を有する。第1のタグチップ1212は、第1のアンテナコイル1211に誘導される電圧を動作電源として動作する。
【0062】
第1のデータキャリア1210の第1のアンテナコイル1211は、管理対象1200における第1の面に対向する第2の面(例えば、裏面)1202とアンテナコイルの大きさ(形状が円形であればアンテナコイルの直径)以上の距離を離して配置されている。なお、アンテナコイルの形状が真円でなく、例えば楕円や方形等である場合には、等しい面積となる真円の直径をアンテナコイルの大きさと換算して距離を決める。管理対象1200において、第1の面1201と第2の面1202とは、平行又は略平行となっている。
【0063】
管理対象1200において、第1のデータキャリア1210を除いたその内部は、交流磁界に影響を及ぼしにくい(交流磁界が減衰されにくい)物質で構成されている。例えば、管理対象1200の内部は、樹脂、木材、陶器、ガラス、セラミック、紙、磁石、絶縁された金属粉等で構成されている。なお、第1のデータキャリア1210を、支持部材等を用いて管理対象1200の内面等に固定するようにして、内部を空間とするようにしてもよい。
【0064】
第3の実施形態におけるリーダ/ライタ装置について説明する。第3の実施形態におけるリーダ/ライタ装置は、駆動アンテナコイルの駆動レベルを第1のレベルと、第1のレベルより強い第2のレベルとに切り替えることが可能となっている。
図13は、第3の実施形態におけるリーダ/ライタ装置の駆動アンテナコイルの構成例を示す図である。
図13(A)には、形状が正方形の駆動アンテナコイルの例を示しており、
図13(B)には、形状が長方形の駆動アンテナコイルの例を示している。
【0065】
図13(A)に示す駆動アンテナコイル1301は、その辺の長さL1が第1のデータキャリア1210の第1のアンテナコイル1211の大きさ(形状が円形であればアンテナコイルの直径)と同じ又は略同じとなっている。また、
図13(B)に示す駆動アンテナコイル1302は、その短辺の長さL2が第1のデータキャリア1210の第1のアンテナコイル1211の大きさ(形状が円形であればアンテナコイルの直径)と同じ又は略同じとなっており、長辺の長さL3が長さL2より長くなっている。
【0066】
以下に説明するように、
図13(A)に示した駆動アンテナコイル1301に交流電流を流すことで発生する磁界の強度は、駆動アンテナコイル1301面に密着した状態での磁界強度に対して、駆動アンテナコイル1301面から辺の長さL1相当分離れた点での磁界強度は大きな比で小さくなる。同様に、
図13(B)に示した駆動アンテナコイル1302に交流電流を流すことで発生する磁界の強度は、駆動アンテナコイル1302面に密着した状態での磁界強度に対して、駆動アンテナコイル1302面から短辺の長さL2相当分離れた点での磁界強度は大きな比で小さくなる。
【0067】
図14は、
図13(A)及び
図13(B)に示した駆動アンテナコイル1301、1302により発生する磁界強度と距離の関係の例を示す図である。ここで、リーダ/ライタ装置における駆動アンテナコイルの駆動レベルは、弱い側である第1のレベルであるとする。また、第1のデータキャリア1210の第1のアンテナコイル1211の大きさを0.02m(=20mm)とし、駆動アンテナコイル1301、1302面からの距離(通信距離)が0.005m(=5mm)の位置での磁界強度が同じ(10AT/m)になるようにして駆動した例を示している。すなわち、駆動アンテナコイル1301の辺の長さL1及び駆動アンテナコイル1302の短辺の長さL2が0.02m(=20mm)である例を示している。なお、駆動アンテナコイル1302の長辺の長さL3は、一例として0.3m(=300mm)とする。
【0068】
図14において、駆動アンテナコイル面からの距離(通信距離)に対する駆動アンテナコイル1301による磁界強度を実線1401で示し、駆動アンテナコイル1302による磁界強度を破線1402で示している。
図14から明らかなように、駆動アンテナコイルの大きさが小さいほど、駆動アンテナコイル面からの距離(通信距離)が離れると磁界強度が小さくなる。
【0069】
データキャリアは、一般に、リーダ/ライタ装置の駆動アンテナコイルからできるだけ遠くまで通信動作を行えるように、小さな磁界強度でも動作するように設計されている。また、データキャリアは、一般に、リーダ/ライタ装置の駆動アンテナコイルに近づいて強い磁界強度でも正常に通信動作を行えるように、許容磁界強度の上限は大きく設計されている。
【0070】
以下、駆動アンテナコイル1301、1302による磁界強度が
図14に示したように変化するものとし、管理対象1200が有する第1のデータキャリア1210が動作可能な磁界強度の下限が4~8AT/mの範囲にあり、上限が150AT/m以上である場合の例を説明する。
【0071】
図14に示したように、駆動アンテナコイル面からの距離(通信距離)が約5mmで磁界強度が10AT/mになるように設定しているので、第1のデータキャリア1210は、動作可能な磁界強度の下限が大きい側にばらついて8AT/mであっても、密着状態から5mmまでは、下限値を超えた強さの磁界で駆動されるので通信動作を行える。一方、駆動アンテナコイル面からの距離(通信距離)が15mmより遠いと、第1のデータキャリア1210は、動作可能な磁界強度の下限が小さい側にばらついて4AT/mであっても、駆動アンテナコイルによる磁界強度が下限値に達しないので通信動作を行えない。
【0072】
すなわち、管理対象1200の第1の面(例えば、表面)1201がリーダ/ライタ装置の駆動アンテナコイル1301、1302に接している場合には、第1のデータキャリア1210は、リーダ/ライタ装置と通信する。一方、管理対象1200の第2の面(例えば、裏面)1202がリーダ/ライタ装置の駆動アンテナコイル1301、1302に接している場合には、第1のデータキャリア1210は、リーダ/ライタ装置と通信しない。
【0073】
ここで、第3の実施形態におけるリーダ/ライタ装置は、駆動アンテナコイルの駆動レベルを第1のレベルより強い第2のレベルに切り替えられるように構成されている。駆動アンテナコイルの駆動レベルを、第2のレベルとして第1のレベルの10倍に大きくすれば、駆動アンテナコイル面からの距離(通信距離)が約25mmでも磁界強度が8AT/mを超えるので、第1のデータキャリア1210は、動作可能な磁界強度の下限が大きい側にばらついて8AT/mであっても、下限値を超えた強さの磁界で駆動されるので通信動作を行える。
【0074】
すなわち、リーダ/ライタ装置における駆動アンテナコイルの駆動レベルを第2のレベルとして第1のレベルの10倍にすれば、駆動アンテナコイル面に対する管理対象1200の向きによらず、第1のデータキャリア1210とリーダ/ライタ装置とを通信させることができる。なお、駆動アンテナコイルの駆動レベルを第2のレベルとして第1のレベルの10倍にし、駆動アンテナコイル面に対して第1のデータキャリア1210を密着状態としても、そのときの磁界強度は130AT/m程度であり、第1のデータキャリア120の動作可能な磁界強度の範囲にある。
【0075】
前述した例では、第2のレベルを第1のレベルの10倍としたが、これは駆動アンテナコイル面からの距離(通信距離)が25mmでも通信可能なように余裕を持たせているためであり、第2のレベルは第1のレベルの10倍に限定されるものではない。例えば、駆動アンテナコイル面からの距離(通信距離)が20mmの位置において磁界強度を10AT/mとするには、
図13(A)に示した駆動アンテナコイル1301では第1のレベルの6.5倍で駆動すればよく、
図13(B)に示した駆動アンテナコイル1302では第1のレベルの4倍で駆動すればよい。第2のレベルは、駆動アンテナコイルの大きさや通信可能とする距離等に応じて適宜設定すればよい。
【0076】
図15(A)は、第3の実施形態におけるリーダ/ライタ装置(駆動系)の構成例を示す図である。
図15(A)に示すように、第3の実施形態におけるリーダ/ライタ装置(駆動系)は、駆動制御部1510及び駆動アンテナコイル1515を有する。駆動制御部1510は、CPU1511、電源部1512、及び駆動部1513を有する。CPU1511は、リーダ/ライタ装置における各種の制御等を行う。CPU1511は、例えば駆動レベルに応じた電圧で電力を供給するよう電源部1512を制御する。電源部1512は、CPU1511による制御に従って、駆動部1513に電力を供給する。駆動部1513は、電源部1512から電力の供給を受けて、駆動アンテナコイル1515を駆動する。
図15(A)に示したリーダ/ライタ装置においては、CPU1511からの制御指示に応じて、駆動部1513に電力を供給する電源部1512からの電圧を切り替えるようにすることで、第1のレベル、又は第1のレベルより強い第2のレベルで駆動アンテナコイル1515を駆動する。
【0077】
図15(B)は、第3の実施形態におけるリーダ/ライタ装置(駆動系)の他の構成例を示す図である。
図15(B)に示すように、第3の実施形態におけるリーダ/ライタ装置(駆動系)は、駆動制御部1520及び駆動アンテナコイル1525を有する。駆動制御部1520は、CPU1521、電源部1522、駆動部1523、及びレベル制御部1524を有する。CPU1521は、リーダ/ライタ装置における各種の制御等を行う。CPU1521は、例えば駆動レベルに応じた信号レベルの調整を行うようレベル制御部1524を制御する。電源部1522は、所定の電圧で駆動部1523に電力を供給する。駆動部1523は、電源部1522から電力の供給を受けて、駆動アンテナコイル1525を駆動する。レベル制御部1524は、CPU1511による制御に従って、駆動部1523から駆動アンテナコイル1525に供給される信号レベルを制御する。レベル制御部1524は、例えばアッテネーター(減衰器)であり、CPU1511による制御に従って減衰量が切り替えられる。
図15(B)に示したリーダ/ライタ装置においては、CPU1521からの制御指示に応じて、駆動アンテナコイル1525に供給される駆動部1523からの駆動信号のレベルを切り替えるようにすることで、第1のレベル、又は第1のレベルより強い第2のレベルで駆動アンテナコイル1525を駆動する。
【0078】
以上説明したように第3の実施形態におけるデータキャリアシステムでは、リーダ/ライタ装置における駆動アンテナコイルの駆動レベルが強い第2のレベルである場合には、管理対象1200の向きによらず、リーダ/ライタ装置と第1のデータキャリア1210とが通信する。それに対して、リーダ/ライタ装置における駆動アンテナコイルの駆動レベルが弱い第1のレベルである場合には、管理対象1200の第1の面(例えば、表面)1201が駆動アンテナコイル面に接している状態ではリーダ/ライタ装置と第1のデータキャリア1210とが通信し、管理対象1200の第2の面(例えば、裏面)1202が駆動アンテナコイル面に接している状態ではリーダ/ライタ装置と第1のデータキャリア1210とが通信しない。
【0079】
したがって、第3の実施形態によれば、リーダ/ライタ装置が、駆動アンテナコイルの駆動レベルを第1のレベル及び第2のレベルで切り替えて通信動作を実行することで、どの管理対象1200が、リーダ/ライタ装置におけるサービスエリアにあるか検出することができ、また加速度センサー等のコストの高い素子を用いることなく管理対象1200の向きも検出することが可能となる。なお、本実施形態では、駆動アンテナコイルは、サイズを小さく、又は幅(短辺)を狭くする必要があるが、広いサービスエリアを実現するには、駆動アンテナコイルを複数用い、配置位置をずらして順次切り替えて通信するようにすればよい。
【0080】
なお、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0081】
100、200、700 管理対象
101、201、701 第1の面
102、202、702 第2の面
110、210、710 第1のデータキャリア
111、211、711 第1のアンテナコイル
112、212、712 第1のタグチップ
120、220、720 第2のデータキャリア
121、221、721 第2のアンテナコイル
122、222、722 第2のタグチップ
130、230 金属箔
301 アンテナ
302 送受信部
303 電源部
304 制御部
305 メモリ
811、1515、1525 駆動アンテナコイル
821~824 受信アンテナ
1101 リーダ/ライタ装置
1110、1511、1521 CPU
1120 信号検出部
1121 受信アンプ
1122 検波器
1123 コンパレータ
1124 基準電圧
1125 アナログ-デジタル変換器
1126 メモリ
1510、1520 駆動制御部
1512、1522 電源部
1513、1523 駆動部
1524 レベル制御部