(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】光電界センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 29/08 20060101AFI20231010BHJP
G02F 1/035 20060101ALI20231010BHJP
G02F 1/225 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
G01R29/08 F
G01R29/08 D
G02F1/035
G02F1/225
(21)【出願番号】P 2020002975
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 良和
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/193629(WO,A1)
【文献】特開2014-215140(JP,A)
【文献】特開2006-317239(JP,A)
【文献】特開2000-097980(JP,A)
【文献】特開2005-201819(JP,A)
【文献】特開2014-002005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 29/00-29/26、
15/00-17/22、
19/00-19/32、
G02F 1/00-1/125、
1/21-7/00、
G02B 6/00、
6/02、
6/245-6/25、
6/46-6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する材料からなる基板上に形成された光導波路と、該光導波路に電界を印加するために設けた変調電極と、該変調電極に接続され前記基板上に配置されたアンテナと、前記光導波路を伝播する光波を反射してその伝播方向を反転させる光反射部と、を有し、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光導波路に入力された光波の位相を変調し位相変調光として出力するように構成した光電界センサヘッドと、
前記光電界センサヘッドの前記光導波路への入力光を供給する光源と、
前記光電界センサヘッドから出力された前記位相変調光を光波の強度を変調した強度変調光に変換する変換手段と、
前記強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器と、
前記光源からの出力光を前記光電界センサヘッドに導き、かつ、前記光電界センサヘッドからの出力光を前記変換手段に導く入出力光ファイバと、
を有し、
前記のO/E変換された電気信号により前記光電界センサヘッドが配置された場の電界を測定する光電界センサ
において、
前記アンテナに誘起される電圧信号は高周波信号であって、前記変換手段は、前記位相変調光をシングルモード光ファイバに入力し、該シングルモード光ファイバの分散特性を利用して前記位相変調光を前記高周波信号により強度変調された強度変調光に変換する手段であることを特徴とする光電界センサ。
【請求項2】
前記アンテナに誘起される電圧信号は高周波信号であって、前記変調電極の前記光導波路方向の中心と前記光反射部との間の距離Dは、前記光導波路中の変調波の波長をLとすると、mL/2-L/8≦D≦mL/2+L/8、(ここでmは1以上の整数)であることを特徴とする請求項1に記載の光電界センサ。
【請求項3】
前記光導波路方向に沿って配置された複数のアンテナと該複数のアンテナにそれぞれ接続された複数の変調電極とを有し、前記複数の変調電極の前記光導波路方向の中心間隔Pは、nL/2-L/4≦P≦nL/2+L/4、(ここでnは1以上の整数)であることを特徴とする請求項2に記載の光電界センサ。
【請求項4】
電気光学効果を有する材料からなる基板上に形成された光導波路と、該光導波路に電界を印加するために設けた変調電極と、該変調電極に接続され前記基板上に配置されたアンテナと、前記光導波路を伝播する光波を反射してその伝播方向を反転させる光反射部と、を有し、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光導波路に入力された光波の位相を変調し位相変調光として出力するように構成した光電界センサヘッドと、
前記光電界センサヘッドの前記光導波路への入力光を供給する光源と、
前記光電界センサヘッドから出力された前記位相変調光を光波の強度を変調した強度変調光に変換する変換手段と、
前記強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器と、
前記光源からの出力光を前記光電界センサヘッドに導き、かつ、前記光電界センサヘッドからの出力光を前記変換手段に導く入出力光ファイバと、
を有し、
前記のO/E変換された電気信号により前記光電界センサヘッドが配置された場の電界を測定する光電界センサ
において、
前記変換手段は、前記光源からの出力光の一部と、前記位相変調光を干渉させる手段を有し、第1及び第2の入力ポートからなる2つの入力ポートと第1及び第2の出力ポートからなる2つの出力ポートを有する光分岐を備え、前記光源からの出力を前記第1の入力ポートに接続し、前記第1の出力ポートを前記入出力光ファイバに接続し、前記第2の出力ポートに光反射器を接続することにより、前記光反射器から戻る前記光源からの出力光の一部と前記入出力光ファイバから戻る前記位相変調光を干渉させ、前記第2の入力ポートから強度変調光として出力することを特徴とする光電界センサ。
【請求項5】
電気光学効果を有する材料からなる基板上に形成された光導波路と、該光導波路に電界を印加するために設けた変調電極と、該変調電極に接続され前記基板上に配置されたアンテナと、前記光導波路を伝播する光波を反射してその伝播方向を反転させる光反射部と、を有し、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光導波路に入力された光波の位相を変調し位相変調光として出力するように構成した光電界センサヘッドと、
前記光電界センサヘッドの前記光導波路への入力光を供給する光源と、
前記光電界センサヘッドから出力された前記位相変調光を光波の強度を変調した強度変調光に変換する変換手段と、
前記強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器と、
前記光源からの出力光を前記光電界センサヘッドに導き、かつ、前記光電界センサヘッドからの出力光を前記変換手段に導く入出力光ファイバと、
を有し、
前記のO/E変換された電気信号により前記光電界センサヘッドが配置された場の電界を測定する光電界センサ
において、
複数の前記光電界センサヘッドと、合波器と、分波器とを有し、
前記光源は波長が異なる複数の光波を出力する光源であって、
前記複数の光電界センサヘッドの前記光導波路にはそれぞれ異なる波長の光波を入力し、前記複数の光電界センサヘッドからの出力光を前記合波器により合波し、該合波器の出力を前記変換手段に入力し、前記変換手段からの出力を前記分波器により分波し、該分波器の出力を前記O/E変換手段に入力することを特徴とする光電界センサ。
【請求項6】
複数の
前記光電界センサヘッドと、合分波器と、分波器とを有し、
前記光源は波長が異なる複数の光波を合波して出力する光源であって、
前記第1の出力ポートと前記複数の光電界センサヘッドとの間に前記合分波器を挿入することにより該合分波器により分波されたそれぞれ異なる波長の光波が前記複数の光電界センサヘッドに入力し、それらの複数の光電界センサヘッドから戻る出力光が前記合分波器により合波されて前記第1の出力ポートに戻るように設定され、
前記第2の入力ポートからの出力を前記分波器により分波し、該分波器の出力を前記O/E変換手段に入力することを特徴とする
請求項4に記載の光電界センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電界センサヘッドを用いて、電磁波などの電界を光信号に変換し、その場の電界を検出する光電界センサに関する。
【背景技術】
【0002】
EMC分野における電磁波ノイズの検出やイミュニティ試験等における電磁波強度の測定、放送用又は通信用の送信アンテナから放出される電磁波の監視等において、電磁波の電界強度や位相を任意の場所で正確に測定することが必要とされる。従来、このような目的で、光ファイバにより入力された入力光の強度をその場の電界強度に応じて変調して光ファイバにより出力する光電界センサヘッドと、その出力光を電気信号に変換するO/E変換器とを用い、そのO/E変換された電気信号により、その場の電界を測定する光電界センサが使用されている。主として誘電体材料で構成され、電波周波数での応答が可能な広帯域特性を有する光電界センサヘッドを測定箇所に設置し、それと光源およびO/E変換器などの測定機器との間を光ファイバで接続することにより、測定する電磁波や電磁ノイズ、落雷などによる誘導の影響を受けないで、電磁波の強度や位相特性を正確に測定することができるという特徴がある。
【0003】
通常、光電界センサは、電気光学効果を有する材料から作られた基板、例えばニオブ酸リチウム結晶基板上に、光導波路と、その光導波路近傍に設置された変調電極とにより構成した光変調器と、アンテナとを備え、電磁波等の電界によりアンテナに誘起された電圧を変調電極に印加して光変調器を通過する光波の強度を変調することを動作原理としている。この場合、アンテナは基板上に一体として形成されるか、又は基板の外部に設置される。
【0004】
このような光電界センサの従来例としては、高周波数化に対応した光電界センサが特許文献1に、3軸方向の電界検出を可能にした光電界センサが特許文献2に記載されている。また、光電界センサを用いた電磁波の測定システムの例が特許文献3及び4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-352165号公報
【文献】特開2007-78633号公報
【文献】特開2014-2005号公報
【文献】特開2017-9445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、光電界センサヘッドを構成する光導波路型の光変調器としては、分岐干渉型光導波路に変調電極を設置したマッハツェンダ型光変調器が使用されている。しかし、この光変調器を光電界センサヘッドに使用する場合、変調電極への印加電圧が0のときの2つの位相シフト光導波路間の位相差、すなわちバイアス点を一定の範囲内に制御する必要があるため、光導波路の設計や製造条件の制御等を高精度に行う必要があり、また、上記のバイアス点の温度等の周囲環境による変動を小さくするためにも特別な工夫を必要としていた。このため、光電界センサヘッドの製造コストを低減することは容易ではなかった。光電界センサをEMC分野やアンテナ計測等のより広い分野に適用していくためには、そのコスト低減は重要な課題であった。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、従来に比べて製造コストの大幅な低減を可能とする光電界センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の観点では、本発明による光電界センサは、電気光学効果を有する材料からなる基板上に形成された光導波路と、該光導波路に電界を印加するために設けた変調電極と、該変調電極に接続され前記基板上に配置されたアンテナと、前記光導波路を伝播する光波を反射してその伝播方向を反転させる光反射部と、を有し、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光導波路に入力された光波の位相を変調し位相変調光として出力するように構成した光電界センサヘッドと、前記光電界センサヘッドの前記光導波路への入力光を供給する光源と、前記光電界センサヘッドから出力された前記位相変調光を光波の強度を変調した強度変調光に変換する変換手段と、前記強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器と、前記光源からの出力光を前記光電界センサヘッドに導き、かつ、前記光電界センサヘッドからの出力光を前記変換手段に導く入出力光ファイバと、を有し、前記のO/E変換された電気信号により前記光電界センサヘッドが配置された場の電界を測定することを特徴とする。
【0009】
上記のように、本発明における光電界センサヘッドは、その場の電界によって、入力した光波を強度変調するのではなく、位相を変調して位相変調光として出力する。その後、入出力光ファイバから戻ってきた位相変調光を変換手段により強度変調光に変換し、O/E変換器により電気信号に変換するものである。本発明のように、入力した光波を位相変調する場合は、電気光学効果を有する材料からなる基板、例えばニオブ酸リチウム結晶基板上に、単なる直線状の光導波路を形成し、その光導波路に電界を印加するための変調電極を光導波路上、又は光導波路を挟んで設けることにより容易に実現できる。この場合は、従来のマッハツェンダ型光変調器のようなバイアス点はないので、光導波路形成においては特別な制御は必要なく、伝搬している光波に位相シフトを与えるだけであるので温度等の周囲環境による変動はほとんど生じない。このため、光電界センサヘッドの製造コストを従来に比べ大幅に低減可能である。また、アンテナを変調電極と同一の製造工程で基板上に形成すれば製造コストも低減できる。
【0010】
さらに、本発明においては、光導波路を伝播する光波を反射してその伝播方向を反転させる反射型の位相光変調器の構成を用いる。このような反射型の光変調器構成を用いることにより、光波は透過型の光変調器構成に比べて2倍の長さの電極長を通過することになり、位相変調の高効率化、広帯域化が可能となり、かつ小型化が可能となる。さらには、光電界センサヘッドには1本の入出力光ファイバのみが接続されるので、入力及び出力の2本の光ファイバを必要とする透過型の光変調器構成の光電界センサヘッドに比べて、小型化が可能となり、取り扱いも容易となる。また、本発明においては、光サーキュレータや光分岐等を用いることにより、光源からの出力光を入出力光ファイバに入力し、入出力光ファイバからの出力光を変換手段に導くことができる。
【0011】
一方、本発明においては、光電界センサヘッドの入出力光ファイバから戻る位相変調光を強度変調光に変換するための変換手段が必要となる。この変換手段は、位相変調光をそれと同じ波長成分を有する光波と干渉させる手段を構成することにより実現できる。
【0012】
なお、基板上に形成するアンテナは変調電極と一体化し、変調電極の一部にアンテナ機能を持たせてもよい。また、複数個の光電界センサヘッドを用いる場合、1つの基板上にそれぞれの光電界センサヘッドに対応する光導波路、変調電極及びアンテナをそれぞれ形成することも可能である。また、1つの光導波路に対して複数のアンテナと複数の変調電極を配置して、変調効率を高め、高感度化を図ることも可能である。
【0013】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点の光電界センサにおいて、前記アンテナに誘起される電圧信号は高周波信号であって、前記変調電極の前記光導波路方向の中心と前記光反射部との間の距離Dは、前記光導波路中の変調波の波長をLとすると、mL/2-L/8≦D≦mL/2+L/8、(ここでmは1以上の整数)であることを特徴とする。本発明の反射型の光電界センサヘッドにおいては、往路の変調電極で位相変調され光反射部で反射された光信号が復路で再び同じ変調電極を通過するとき、さらなる位相変調を受ける。この場合、検出する電界の周波数が低い場合は、光波は電界の大きさや極性が変化する前に往復するので2度の変調により変調度が加算される。しかし、検出する電磁波の周波数が高い場合、変調電極を往復する間に変調電極に印加される電圧信号の極性が反転すると往復により変調度は低下してしまう。
【0014】
本観点の発明では、検出する電界の周波数が高い場合でも、光波が変調電極を往復することによって変調度が加算されるように反射部の位置を設定している。ここで、光導波路中の変調波の波長Lとは、光導波路中の位相変調された光波の位相変化に対応する1周期の長さである。変調電極の中心と光反射部との距離DをL/2の整数倍とすることにより、光波が変調電極の中心と反射部とを往復する長さがLの整数倍となり、光波には往復により常に同位相の電圧信号が印加されることになる。距離Dの値はL/2の整数倍が望ましいが、その値のずれがL/8以下であれば変調度は加算される。なお、ニオブ酸リチウム結晶基板上の光導波路を用いる場合、光導波路中の変調波の波長Lの値は、変調周波数2GHzで6.8cm程度であるので、実際上、2GHz程度以上の周波数では本観点の発明は有効である。
【0015】
第3の観点では、本発明は、前記第2の観点の光電界センサにおいて、前記光導波路方向に沿って配置された複数のアンテナと該複数のアンテナにそれぞれ接続された複数の変調電極とを有し、前記複数の変調電極の前記光導波路方向の中心間隔Pは、nL/2-L/4≦P≦nL/2+L/4、(ここでnは1以上の整数)であることを特徴とする。検出する電磁波の周波数が高い場合、光導波路中の光波が変調電極を通過中に変調電極に印加される電圧信号の極性が反転すると変調度は低下してしまう。そこで、変調電極の光導波路方向の長さは光導波路中の変調波の波長Lの1/2以下である必要があり、通常、その長さにより変調効率、すなわち光電界センサヘッドの感度は制限される。本観点の発明では、複数の変調電極を変調度が順次加算されるような間隔で配置して高感度化を図ることができる。例えば、複数の変調電極をL/2の中心間隔で配置して、隣り合う変調電極間で光導波路中に互いに逆相の電界が印加されるようにすること、又は、複数の変調電極をLの中心間隔で配置して、隣り合う変調電極間で光導波路中に同相の電界が印加されるようにすることである。この場合、変調電極にはそれぞれ同じ電圧信号を誘起するアンテナを配置して接続すればよい。上記の逆相の電界を光導波路中に印加する方法としては、例えば、Zカットのニオブ酸リチウム結晶基板上の光導波路を用いる場合、後の実施例に述べるように、光導波路上に配置する電極を反対側のアンテナパッドに接続することにより実現できる。中心間隔Pの値はL/2の整数倍が望ましいが、その値のずれがL/4以下であれば変調度は加算される。
【0016】
第4の観点では、本発明は、前記第1乃至第3の観点の光電界センサにおいて、前記アンテナに誘起される電圧信号は高周波信号であって、前記変換手段は、前記位相変調光をシングルモード光ファイバに入力し、該シングルモード光ファイバの分散特性を利用して前記位相変調光を前記高周波信号により強度変調された強度変調光に変換する手段であることを特徴とする。
【0017】
光波の位相がマイクロ波周波数等の高周波帯で変調されていれば、シングルモード光ファイバの分散特性を利用して強度変調光に変換することが可能である。波長分散により位相変調された光波成分と無変調の光波成分との間に遅延時間の違いにより半波長の位相差が生ずれば最大振幅の強度変調光が得られる。例えば、1km当たり波長分散が約17ps/nmであるシングルモード光ファイバを用いれば、変調周波数が30GHzである場合、上記の位相差を与えるシングルモード光ファイバの長さは4km程度である。本観点の発明を用いれば、変換手段として光分岐などの構成部品が不要となる。
【0018】
第5の観点では、本発明は、前記第1乃至第3の観点の光電界センサにおいて、前記変換手段は、前記位相変調光を分割し、その分割された2つの位相変調光に位相差を与えて干渉させる手段を有することを特徴とする。位相変調光を強度変調光に変換する手段としては、位相変調光を2分割して、それらの位相変調光に位相差を与えて干渉させてもよい。例えば、光電界センサヘッドから戻る位相変調光を光ファイバ分岐等により2分岐し、その分岐された光波間に位相差を与えて再び合流させればよい。この場合、与える位相差は変調周波数によって最適な値を選択すればよい。
【0019】
第6の観点では、本発明は、前記第1乃至第3の観点の光電界センサにおいて、前記変換手段は、前記光源からの出力光の一部と、前記位相変調光を干渉させる手段を有することを特徴とする。位相変調光を強度変調光に変換する手段としては、位相変調光を同じ光源からの出力光の一部と干渉させるホモダイン検出光学系を構成する方法が最も一般的である。この場合、光電界センサにおいては、通常の光伝送システムとは異なり、変調された光波はその光源に近接して配置された検出機器に戻って来るので、容易にホモダイン検出光学系を構成可能である。例えば、光源からの光を光ファイバ分岐により2分岐して、一方を光電界センサヘッドに供給し、他方を光電界センサヘッドから戻る位相変調光と光ファイバ合波器等により干渉させることにより実現できる。
【0020】
第7の観点では、本発明は、前記第6の観点の光電界センサにおいて、前記変換手段は、第1及び第2の入力ポートからなる2つの入力ポートと第1及び第2の出力ポートからなる2つの出力ポートを有する光分岐を備え、前記光源からの出力を前記第1の入力ポートに接続し、前記第1の出力ポートを前記入出力光ファイバに接続し、前記第2の出力ポートに光反射器を接続することにより、前記光反射器から戻る前記光源からの出力光の一部と前記入出力光ファイバから戻る前記位相変調光を干渉させ、前記第2の入力ポートから強度変調光として出力することを特徴とする。
【0021】
本観点の発明では、光源からの出力光を入出力光ファイバに入力し、入出力光ファイバからの出力光を変換手段に導く入出力光の分離と変換手段の2つの機能を1つの光分岐と光反射器のみを用いて実現することができ、構成の大幅な簡易化が可能となる。この場合の光分岐としては、光ファイバ分岐による2×2分岐器や、半透過プリズムを用いた2×2分岐器を用いることができる。
【0022】
第8の観点では、本発明は、前記第1乃至第6の観点の光電界センサにおいて、複数の光電界センサヘッドと、合波器と、分波器とを有し、前記光源は波長が異なる複数の光波を出力する光源であって、前記複数の光電界センサヘッドの前記光導波路にはそれぞれ異なる波長の光波を入力し、前記複数の光電界センサヘッドからの出力光を前記合波器により合波し、該合波器の出力を前記変換手段に入力し、前記変換手段からの出力を前記分波器により分波し、該分波器の出力を前記O/E変換手段に入力することを特徴とする。
【0023】
複数の場所や電波の異なる偏波方向の電界を測定する場合、複数の光電界センサヘッドを配置する必要があるが、本観点の発明を用いれば、そのような場合でも検出系の構成を簡易化することが可能となる。複数の光電界センサヘッドにそれぞれ異なる波長の光波を供給し、それらから出力された位相変調光を合波して波長多重光として1つの変換手段に入力し、その出力を分波することにより、必要な変換手段の数を減らすことができる。この場合の光源の波長間隔は、使用する変換手段の動作波長範囲等を考慮して選択すればよい。なお、各光電界センサヘッドからの位相変調光の合波は、検出系において光分岐等により入出力光の分離を行った後に各出力光を合波器に入力して行うことができる。又は、光電界センサヘッドの近くに光分岐等と合波器を配置し、各光電界センサヘッドの入出力端の近くでそれぞれの光分岐により入出力光の分離を行った後に、それぞれの光分岐から戻る出力光を合波器に入力し、合波器の出力を1本の光ファイバにより検出系に伝送してもよい。
【0024】
さらに、複数波長の光波の光電界センサヘッドへの供給は、光源の各波長の出力光を合波器で合波して1本の光ファイバで光電界センサヘッドの近くまで導き、その後、分波して光電界センサヘッドのそれぞれの光分岐に供給してもよい。また、本観点の発明において、各光電界センサヘッドの出力にそれぞれ対応して複数のO/E変換器を備えてもよいが、O/E変換器の必要数を減らすために、各出力光をスイッチ等により順次切り替えて1つのO/E変換器に接続して検出してもよい。
【0025】
第9の観点では、本発明は、前記第7の観点の光電界センサにおいて、複数の光電界センサヘッドと、合分波器と、分波器とを有し、前記光源は波長が異なる複数の光波を合波して出力する光源であって、前記第1の出力ポートと前記複数の光電界センサヘッドとの間に前記合分波器を挿入することにより該合分波器により分波されたそれぞれ異なる波長の光波が前記複数の光電界センサヘッドに入力し、それらの複数の光電界センサヘッドから戻る出力光が前記合分波器により合波されて前記第1の出力ポートに戻るように構成され、前記第2の入力ポートからの出力を前記分波器により分波し、該分波器の出力を前記O/E変換手段に入力することを特徴とする。
【0026】
複数の光電界センサヘッドを配置する場合、本観点の発明を用いれば、検出系の構成をさらに簡易化することが可能となる。光源から出力される合波された異なる波長の光波を波長多重光として第7の観点の発明の光分岐に導き、その出力を1本の光ファイバで光電界センサヘッドの近くまで導き、その後、合分波器で分波して各光電界センサヘッドの入出力光ファイバに供給する。それらから出力された位相変調光を再び合分波器で合波して波長多重光として上記の光分岐に戻すものである。必要な変換手段の数や入出力光の分離手段の数を減らすことができる。この場合の光源の波長間隔は、光分岐による干渉動作の波長範囲等を考慮して選択すればよい。
【発明の効果】
【0027】
上記のように、本発明により、従来に比べて製造コストの大幅な低減を可能とする光電界センサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施例1に用いる光電界センサヘッドの第1の構成例を模式的に示す図であり、
図1(a)は上面図、
図1(b)は部分的な断面図。
【
図2】本発明の実施例1の光電界センサを用いた測定システムのブロック構成図。
【
図3】光電界センサヘッドの第2の構成例を模式的に示す上面図。
【
図4】本発明の実施例2に用いる光電界センサヘッドの構成を模式的に示す上面図。
【
図5】本発明の実施例2の光電界センサのブロック構成図。
【
図6】本発明の実施例3の光電界センサのブロック構成図。
【
図7】本発明の実施例4に用いる光電界センサヘッドの構成を模式的に示す上面図。
【
図8】本発明の実施例4の光電界センサのブロック構成図。
【
図9】本発明の実施例5の光電界センサのブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の光電界センサを実施例により詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、その重複した説明を省略する。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明の実施例1の光電界センサに用いる光電界センサヘッドの第1の構成例を模式的に示す図であり、
図1(a)は上面図、
図1(b)はA-A断面の拡大図である。
【0031】
図1において、光電界センサヘッド10は、電気光学効果を有する代表的な材料であるニオブ酸リチウム(LiNbO
3)結晶からXカットで切り出して作られた基板11と、基板11の上面側にTi拡散によって作られた直線状の光導波路12と、光導波路12を挟んで配置された1対の帯状の電極からなる変調電極14と、変調電極14に接続され基板11上に配置されたアンテナ15と、光導波路12を伝播する光波を反射してその伝播方向を反転させる光反射部16と、を有している。その場の電界によりアンテナ15に誘起される電圧信号により光導波路12に入力された光波の位相を変調し位相変調光として出力するように構成されている。すなわち、電波等の電界によりアンテナ15を構成するアンテナパッド15aとアンテナパッド15b間に電圧が誘起され、その電圧が変調電極14を構成する帯状電極14aと帯状電極14b間に印加されることにより、その間に配置された光導波路12の屈折率変化が生ずる。この結果、光導波路12を通過する光波の位相が変調される。さらに、
図1のように、光導波路12を伝播する光波を光反射部16で反射して戻すことにより、光波が変調電極14を2回通過するので、位相変調の高効率化が可能となり、かつ小型化が可能となる。なお、光導波路12を伝搬する光波はTEモードとなるように設定されている。
【0032】
光導波路12と変調電極14の間には、光導波路12を伝播する光波の一部が変調電極14に吸収されるのを防ぐため、バッファ層13が設置されている。バッファ層13は、主として二酸化ケイ素(SiO2)膜等から作られ、その厚さは0.1~1.0μm程度である。変調電極14及びアンテナ15は、スパッタリング等によって成膜されたクロム(Cr)と金(Au)の2層膜である。光導波路12の幅Wは5~12μm程度、光導波路12の長さは10~40mm程度である。帯状電極14a及び14bの幅は5~20μm程度、その長さは5~30mm程度である。帯状電極14aと14bの間隔は10~50μm程度である。アンテナパッド15a及び15bの大きさは3~15mm程度が可能であり、その形状は矩形である必要はなく、電界により変調電極14に電圧を誘起できればよい。光反射部16は、例えば、金属ミラー等を光導波路12の端面に固定すること等により実現できる。
【0033】
光導波路12の光入出射端には入出力光ファイバ17が接続されている。入出力光ファイバ17の光導波路12との接続端部はフェルール等の補強部品内に挿入され、固定されている。入出力光ファイバ17の一部と基板11は、その場の電界への影響を防ぐため、樹脂やガラス等の絶縁体材料で構成したパッケージ18の中に収納されている。
【0034】
図2は、本発明の実施例1の光電界センサを用いた測定システムのブロック構成図である。
図2において、本実施例の光電界センサ20は、光電界センサヘッド10と、入出力光ファイバ17、送受信部21により構成されている。送受信部21は、光電界センサヘッド10の光導波路12への入力光を供給する光源22と、光電界センサヘッド10の入出力光ファイバ17への入力光の供給と入出力光ファイバ17からの出力光を分離するための光サーキュレータ28と、入出力光ファイバ17から出力された位相変調光を強度変調光に変換する変換手段として、上記光源22の波長において分散特性を有するシングルモード光ファイバ23を備えている。さらに、上記の強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器24と、アンプ25を備え、アンプ25により増幅された検出信号は光電界センサ20の出力端子26から出力する。出力された信号は処理装置27に送られ、光電界センサヘッドが配置された場の電波等の強度特性及び位相特性の解析、評価等が行われ、それらのデータの保存、表示、出力などが行われる。
【0035】
本実施例において、例えば、光源22の波長を1550nm、シングルモード光ファイバ23の波長分散を約17ps/nm/kmとすれば、変調周波数が30GHzである場合、強度変調光を得るためのシングルモード光ファイバ23の最適な長さは4km程度である。
【0036】
なお、光電界センサヘッド10の光導波路12にTEモードの伝搬光を供給する方法としては、入出力光ファイバ17として偏光保存光ファイバを用いる方法や、光源22からの出射光を互いに直交する2つの偏波を合成した光波とし、光導波路12をTEモードのみ伝搬可能な光導波路とする方法等がある。
【0037】
図3は、本発明の光電界センサに適用可能な光電界センサヘッドの第2の構成例を模式的に示す上面図である。本構成例の光電界センサヘッド30においては、変調電極34は、光導波路12の長手方向に分割され互いに容量結合した4つの帯状電極34a、34b、34c、34dからなる分割電極により構成されている。アンテナ35は、帯状電極34aに接続されたアンテナパッド35aと帯状電極34dに接続されたアンテナパッド35bより構成されている。アンテナパッド35aに接続された帯状電極34aは帯状電極34bの前半部と光導波路12を挟んで対向し、帯状電極34bの後半部は帯状電極34aと光導波路12の同じ側に配置され、帯状電極34cの前半部と光導波路12を挟んで対向している。帯状電極34cの後半部は帯状電極34aと光導波路12の同じ側に配置され、帯状電極34dと光導波路12を挟んで対向している。これにより、帯状電極34aと34b、帯状電極34bと34c、帯状電極34cと34dは互いに容量結合して直列に配置されていることになる。
【0038】
一般的に、変調電極の光導波路に沿った長さを長くすると変調効率が高くなり、光電界センサヘッドにおける検出感度は大きくなる。しかし、変調電極の長さを長くすると電気容量は増加してしまう。電極容量が大きいと電気信号の周波数が高くなるにつれて等価的なインピーダンスが低下し、電極に印加される電圧が低下することにより変調効率が低下する。そこで、高周波の信号検出のためには、電極の容量はできるだけ小さいことが望ましい。この変調電極の長さと電気容量のトレードオフの関係を改善する有力な手段が、1つの変調電極を容量結合した複数の電極に分割した分割電極である。この分割電極を使用することにより、高効率、広帯域の特性を得ることができる。本実施例においてはさらに、光波が変調電極34を2回通過するので、位相変調の高効率化、かつ光電界センサヘッドの小型化が可能となる。
【実施例2】
【0039】
図4は、本発明の実施例2の光電界センサに用いる光電界センサヘッドの構成を模式的に示す上面図である。本実施例の光電界センサヘッド40においては、変調電極44は、光導波路12の長手方向に沿って光導波路12を挟んで配置された帯状電極44aと44b、及び、それらの帯状電極の終端に配置された終端部46aと46bから構成されている。アンテナ45は、帯状電極44aに接続されたアンテナパッド45aと帯状電極44bに接続されたアンテナパッド45bとから構成されている。検出電波の周波数帯において、変調電極44はマイクロ波導波路として機能し、アンテナ45と変調電極44はインピーダンス整合され、終端部46a、46bを開放端、又は短絡端とすることにより、変調電極44を検出電波の周波数において共振させる共振電極とする構造である。この構造では、狭帯域ではあるが、高効率の位相変調特性が得られ、最も高い検出感度を得ることができる。
【0040】
さらに本実施例においては、変調電極44の中心と光反射部16との間の距離Dは、光導波路12中の変調波の波長の1/2のほぼ整数倍となっている。このような設定により、往路の変調電極で位相変調され光反射部16で反射された光信号が復路で再び同じ変調電極を通過するとき、往路と同相の電圧が印加されるので、往復の2度の変調により変調度が加算される。例えば、ニオブ酸リチウム結晶基板上の光導波路を用いる場合、検出電波の周波数を10GHzとすれば、光導波路12中の変調波の波長Lは13.8mm程度であるので、距離Dとしては、6.9mm程度、又は13.8mm程度とすればよい。
【0041】
図5は、本発明の実施例2の光電界センサのブロック構成図である。
図5において、本実施例の光電界センサ50は、光電界センサヘッド40と、入出力光ファイバ17、送受信部51により構成され、送受信部51は、光電界センサヘッド40の光導波路12への入力光を供給する光源22と、強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器24と、アンプ25を備え、アンプ25により増幅された検出信号は光電界センサ50の出力端子26から出力する。本実施例においては、入出力光ファイバ17への入力光と入出力光ファイバ17からの出力光の分離手段として光ファイバ分岐器58を有し、入出力光ファイバ17から出力された位相変調光を強度変調光に変換する変換手段として、光源22からの出力光の一部と位相変調光を干渉させる手段を有している。
【0042】
具体的には、ハーフミラー等を用いたプリズム型の分岐器52と合波器53とを備え、分岐器52により、光源22からの出力光を入出力光ファイバ17への入力光と参照光54とに分岐し、合波器53により、入出力光ファイバ17より伝送された位相変調光と参照光54を干渉させることにより位相変調光を強度変調光に変換する。このように、位相変調された光波は光源22を含む送受信部51に戻って来るので、容易に本実施例のようなホモダイン検出光学系を構成可能である。なお、分岐器52、合波器53の代わりに光ファイバ型の分岐器、合波器を用いてもよく、光ファイバ分岐器58の代わりにプリズム型の分岐器を用いてもよい。
【実施例3】
【0043】
図6は、本発明の実施例3の光電界センサのブロック構成図である。
図6において、本実施例の光電界センサ60は、実施例2と同様の光電界センサヘッド40と、入出力光ファイバ17、送受信部61により構成され、送受信部61は、光電界センサヘッド40の光導波路12への入力光を供給する光源22と、入出力光ファイバ17への入力光と入出力光ファイバ17からの出力光の分離手段として光サーキュレータ28と、強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器24と、アンプ25を備え、アンプ25により増幅された検出信号は光電界センサ60の出力端子26から出力する。本実施例においては、光電界センサヘッド40から出力された位相変調光を強度変調光に変換する変換手段として、位相変調光を分割し、その分割された2つの位相変調光に位相差を与えて干渉させる手段を有している。
【0044】
具体的には、光ファイバ分岐器62及び63を備え、光ファイバ分岐器62により、入出力光ファイバ17より伝送された位相変調光を2つに分岐し、その分岐された2つの出力をそれぞれシングルモード光ファイバからなる位相シフト光ファイバ64及び65を経由して、光ファイバ分岐器63に入力し干渉させることにより位相変調光を強度変調光に変換する。本実施例において、例えば、シングルモード光ファイバの等価屈折率を1.5とすると、その光ファイバ中の光波の速度は2.0×108m/秒となり、位相変調の周波数を10GHzとすると、光ファイバ中の変調波の波長は2cmとなる。そこで、位相シフト光ファイバ64と65に上記の半波長分又はその奇数倍の長さ、すなわち1cm又はその奇数倍の長さの差を与えれば強度変調光を得ることができる。なお、光ファイバ分岐器62及び63の代わりに、プリズム型の分岐器、合波器を用いてもよく、さらには、光ファイバ分岐器62及び63と位相シフト部分を一体化した分岐干渉型の光導波路部品として変換手段を構成してもよい。
【実施例4】
【0045】
図7は、本発明の実施例4の光電界センサに用いる光電界センサヘッドの構成を模式的に示す上面図である。本実施例の光電界センサヘッド70においては、光導波路72の方向に沿って配置された2つのアンテナ76及び77と、アンテナ76に接続された変調電極74及びアンテナ77に接続された変調電極75とを有している。変調電極74と変調電極75の中心間隔Pは、光導波路72中の変調波の波長Lのほぼ1/2の長さに等しくなるように設定されている。また、変調電極74の中心と光反射部16との間の距離Dは、中心間隔Pの長さと同様に波長Lのほぼ1/2となっている。光電界センサヘッド70においては、基板71はニオブ酸リチウム(LiNbO
3)結晶からZカットで切り出して作られた基板であり、光導波路72を伝搬する光波はTMモードとなるように設定されている。
【0046】
変調電極74は、光導波路72の長手方向に沿って光導波路72上に配置された帯状電極74aと帯状電極74aと一定の間隔で配置された帯状電極74bとから構成され、変調電極75は、光導波路72上に配置された帯状電極75bと帯状電極75bと一定の間隔で配置された帯状電極75aとから構成されている。アンテナ76は、帯状電極74aに接続されたアンテナパッド76aと帯状電極74bに接続されたアンテナパッド76bとから構成され、アンテナ77は、帯状電極75aに接続されたアンテナパッド77aと帯状電極75bに接続されたアンテナパッド77bとから構成されている。検出電波の周波数帯において、変調電極74及び75はマイクロ波導波路として機能し、それらの帯状電極の両側の終端部を短絡端とすることにより、変調電極74及び75をそれぞれ、検出電波の周波数において共振させる共振電極とする構造である。この構造では、狭帯域ではあるが、高効率の位相変調特性が得られ、高い検出感度を得ることができる。
【0047】
光電界センサヘッド70において、変調電極74及び75の光導波路72方向の長さは光導波路中の変調波の波長Lの1/2以下である。変調電極74では上側のアンテナパッド76aに接続された帯状電極74aを光導波路72上に配置し、変調電極75では下側のアンテナパッド77bに接続された帯状電極75bを光導波路72上に配置することにより、変調電極74と75では光導波路72中に互いに逆相の電界が印加されるようにしている。これにより、変調電極74と75を通過することにより変調度が加算されるので高感度化を図ることができる。
【0048】
さらに、本実施例においては、変調電極74の中心と光反射部16との間の距離Dは、光導波路12中の変調波の波長Lのほぼ1/2となっているので、変調電極74及び75において、復路で往路と同相の電圧が印加され、往復の2度の変調により変調度が加算される。具体的寸法の一例としては、例えば、ニオブ酸リチウム結晶基板上の光導波路を用いる場合、検出電波の周波数を10GHzとすれば、光導波路12中の変調波の波長Lは13.8mm程度であるので、距離D及び間隔Pとしては、6.9mm程度とすればよい。
【0049】
図8は、本発明の実施例4の光電界センサのブロック構成図である。
図8において、本実施例の光電界センサ80は、光電界センサヘッド70と、入出力光ファイバ17、送受信部81により構成され、送受信部81は、光電界センサヘッド70の光導波路72への入力光を供給する光源22と、強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器24と、アンプ25を備え、アンプ25により増幅された検出信号は光電界センサ80の出力端子26から出力する。本実施例においては、入出力光ファイバ17への入力光と入出力光ファイバ17からの出力光の分離手段及び位相変調光を強度変調光に変換する変換手段の両方の機能を有する光ファイバ分岐器82を有している。
【0050】
光ファイバ分岐器82は、入力ポート82a及び82bからなる2つの入力ポートと、出力ポート82c及び82dからなる2つの出力ポートを有している。光源22からの出力を入力ポート82aに接続し、出力ポート82cを入出力光ファイバ17に接続し、出力ポート82dには光ファイバを介して光反射器83を接続している。これにより、光反射器83から戻る光源22からの出力光の一部と入出力光ファイバ17から戻る位相変調光を干渉させ、入力ポート82bから強度変調光として出力するものである。これにより、構成の大幅な簡易化が可能となる。なお、本実施例において、光源22と光ファイバ分岐器82との間に、光源22への戻り光を遮断する光アイソレータを挿入してもよい。
【実施例5】
【0051】
図9は、本発明の実施例5の光電界センサのブロック構成図である。
図9において、本実施例の光電界センサ90は、実施例1の光電界センサヘッド10と同様の3つの光電界センサヘッド10a、10b、10cと、それらの光電界センサヘッドのそれぞれの入出力光ファイバ17a、17b、17cと、送受信部91により構成されている。送受信部91は、光電界センサヘッド10a、10b、10cに、それぞれ異なる波長であるλ
1、λ
2、λ
3、の光波を供給するための3つの光源92a、92b、92cと、入出力光ファイバ17a、17b、17cへの入力光と入出力光ファイバ17a、17b、17cからの出力光をそれぞれ分離する手段として光ファイバ分岐器98a、98b、98cと、入出力光ファイバ17a、17b、17cより伝送された3つの波長λ
1、λ
2、λ
3、の位相変調光を合波するためのWDMカップラ95を備えている。
【0052】
さらに、実施例1と同様に、位相変調光を強度変調光に変換する変換手段として、上記λ1、λ2、λ3の波長において分散特性を有するシングルモード光ファイバ96を備え、λ1、λ2、λ3の波長の強度変調光を分波するためのWDMカップラ97を備えている。分波された波長λ1、λ2、λ3の3つの強度変調光は、それぞれO/E変換器24a、24b、24cにより電気信号に変換され、アンプ25a、25b、25cにより増幅され、それぞれの検出信号は光電界センサ90の出力端子26a、26b、26cから出力する。これにより、光電界センサヘッド10a、10b、10cが置かれた場のそれぞれの電界が検出される。
【0053】
本実施例の光電界センサでは、光電界センサヘッドが配置された3つの場所の電界を同時に検出できる。また、3つの光電界センサヘッドのアンテナの向きが互いに直交するように配置すれば、電波等の電磁波の異なる偏波方向の電界を測定できる。本実施例の光電界センサでは、1つの変換手段を用いるので検出系の構成を簡易化することができる。使用する波長λ1、λ2、λ3の間隔は、使用するシングルモード光ファイバ96の分散特性により決定される動作波長範囲を考慮して選択すればよい。例えば、波長1550nmで波長分散が17ps/nm/kmであるシングルモード光ファイバを用いれば、変調周波数が30GHzである場合、シングルモード光ファイバの長さを4km程度とすれば、動作波長範囲は1530~1560nm程度が可能である。
【0054】
以上のように、本発明により、従来に比べて製造コストの大幅な低減を可能とする光電界センサを得ることができる。
【0055】
本発明は上記の実施例に限定されるものではないことは言うまでもなく、目的に応じて様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例に示した光電界センサヘッドの各種の形態と光電界センサの送受信部の各種の構成との組み合わせは、任意に選択可能である。また、アンテナの形状、その基板上の配置方法、変調電極との接続方法等も目的に合わせて任意に設計可能である。
【符号の説明】
【0056】
10,10a,10b,10c,30,40,70 光電界センサヘッド
11,71 基板
12,72 光導波路
13 バッファ層
14,34,44,74,75 変調電極
14a,14b,34a,34b,34c,34d,44a,44b,74a,74b,75a,75b 帯状電極
15,35,45,76,77 アンテナ
15a,15b,35a,35b,45a,45b,76a,76b,77a,77b アンテナパッド
16 光反射部
17,17a,17b,17c 入出力光ファイバ
18 パッケージ
20,50,60,80,90 光電界センサ
21,51,61,81,91 送受信部
22,92a,92b,92c 光源
23,96 シングルモード光ファイバ
24,24a,24b,24c O/E変換器
25,25a,25b,25c アンプ
26,26a,26b,26c 出力端子
27 処理装置
28 光サーキュレータ
52 分岐器
53 合波器
54 参照光
58,62,63,82,98a,98b,98c 光ファイバ分岐器
64,65 位相シフト光ファイバ
82a,82b 入力ポート
82c,82d 出力ポート
83 光反射器
95,97 WDMカップラ