(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】色・質感測定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/57 20060101AFI20231010BHJP
G01J 3/46 20060101ALI20231010BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
G01N21/57
G01J3/46 Z
G01N21/27 B
(21)【出願番号】P 2020029781
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】302047880
【氏名又は名称】株式会社パパラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-8542(JP,A)
【文献】特開2019-82838(JP,A)
【文献】特開2016-27487(JP,A)
【文献】特開2019-20311(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061191(WO,A1)
【文献】特開2001-165772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01J 3/00-G01J 4/04
G01J 7/00-G01J 9/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻体と、
該外殻体の下端部に沿って設けられ、前記外殻体の内壁面を間接照明する間接照明部と、
前記外殻体の天井部に設けられ、被測定物に所定の角度で直接照明する直接照明部と、
前記天井部に設けられ、被測定物を撮像する色彩計と、
前記間接照明と前記直接照明を切り替え、前記色彩計で取得される間接照明画像と、直接照明画像に基づいて、色と質感を演算する色・質感演算部と、を備え、
当該色・質感演算部が、前記直接照明下で、前記色彩計で被測定物を撮像し、撮像された直接照明画像について、XYZ表色系の明度を演算する第1明度演算部と、
前記間接照明下で、前記色彩計で被測定物を撮像し、撮像された間接照明画像について、XYZ表色系の第2明度を演算する第2明度演算部と、
前記第1明度演算部によって演算された前記直接照明画像の明度のうち、正反射成分に対応する明度と、拡散反射成分に対応する明度の閾値を演算する閾値演算部と、
前記閾値により、前記直接照明画像の正反射成分に対応する明度を有する画素と、前記直接照明画像の拡散反射成分に対応する明度を有する画素を分け、前記直接照明画像の拡散反射成分に対応する明度の
積分値又は平均値と、前記第2明度の
積分値又は平均値との比率を演算し、当該比率に基づいて、前記直接照明画像の拡散反射成分に対応する明度に合わせて調整した調整明度を演算する明度調整部と、
前記第1明度演算部によって演算された前記直接照明画像のXYZ表色系の明度と、前記調整明度の差分を演算する差分演算部と、
を備えた高解像度色・質感測定装置。
【請求項2】
前記閾値演算部において、明度を示す画素数の分布である明度ヒストグラムを作成し、該明度ヒストグラムから前記閾値が演算される請求項1の高解像度色・質感測定装置。
【請求項3】
前記明度調整部において、正反射成分に対応する明度と、拡散反射成分に対応する明度の2値化により、前記画素を分けて記憶する請求項1
又は2の高解像度色・質感測定装置。
【請求項4】
前記第2明度演算部において、間接照明下で、前記色彩計で第1露光時間にて被測定物を撮像し、撮像された間接照明画像について、XYZ表色系の明度を演算し、
前記第1明度演算部で演算された前記直接照明画像の第1明度の最大値及び間接照明画像の第2明度の最大値が同じになるように第2露光時間を設定し、再度、被測定物を撮像し、前記第2明度を再演算する請求項1~
3いずれかの高解像度色・質感測定装置。
【請求項5】
外殻体と、
該外殻体の下端部に沿って設けられ、前記外殻体の内壁面を間接照明する間接照明部と、
前記外殻体の天井部に設けられ、被測定物に所定の角度で直接照明する直接照明部と、
前記天井部に設けられ、被測定物を撮像する色彩計と、
前記間接照明と前記直接照明を切り替え、前記色彩計で取得される間接照明画像と、直接照明画像に基づいて、色と質感を演算する色・質感演算部と、を備えた高解像度色・質感測定装置を用い、
前記直接照明下で、前記色彩計で被測定物を撮像し、撮像された直接照明画像について、XYZ表色系の明度を演算する第1明度演算ステップと、
前記間接照明下で、前記色彩計で第2露光時間にて被測定物を撮像し、撮像された間接照明画像について、XYZ表色系の第2明度を演算する第2明度演算ステップと、
前記第1明度演算
ステップによって演算された前記直接照明画像の第1明度のうち、正反射成分に対応する明度と、拡散反射成分に対応する明度の閾値を演算する閾値演算ステップと、
前記閾値により、前記直接照明画像の正反射成分に対応する明度を有する画素と、前記直接照明画像の拡散反射成分に対応する明度を有する画素を分け、前記直接照明画像の拡散反射成分に対応する明度の
積分値又は平均値と
、前記第2明度の
積分値又は平均値との比率を演算し、当該比率に基づいて、前記直接照明画像の拡散反射成分に対応する明度に合わせて調整した調整明度を演算する明度調整ステップと、
前記第1明度演算
ステップによって演算された前記直接照明画像のXYZ表色系の明度と、前記調整明度の差分を演算する差分演算部ステップと、
を含む高解像度色・質感測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光沢、艶感、メタリック感等の質感を測定する色・質感測定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象として、最近、メタリック感や艶感などを色と同時に定量化したいニーズが多くなっている。メタリック塗装や、髪の毛や食品の色と艶、光沢感のある建材の色と艶等がある。こうした中で現状では色は、分光測色計、艶感は艶計を用いて定量化を行っている。人の目には艶感は色と同時に見て評価をしているので、これを同じ目線で定量化できる方法が望ましい。例えば、台所、マンション或いはホテルの大理石調のセラミック等の艶感が、施工したあと問題になることがある。建材は実際には、色と艶感、光沢感を同時測定したいという要望がある。色は、表面に照明を当てて測る分光測色計により測定し、艶感・光沢感は、表面に照明を当てて測る艶計・光沢計があり、それと併合して測定することが一般的である。色と質感を画像処理により評価する特許文献1もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
艶感や光沢については、見た目の感覚に近い、新たな評価手法が求められているが、従来技術では、いまだ十分な評価を得られていない。例えば、建材等の分野では、タイルから構成される壁面のうち一部のタイルだけに艶感がないと、大部分は艶で光っているにもかかわらず、一部には艶がないため、一部が浮き上がってしまい、壁面全体にアンバランスが生じる。特許文献1において、メタリック感をある程度は、測定できるが、光沢や艶感を生じる材料、例えば、アルミニウムフレークの粒子径、粒数等による質感の相違までは把捉できないおそれがあり、また、検査照明等が画一的であるので、見た目に近い感覚のきめ細かな艶感の評価は困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、外殻体と、該外殻体の下端部に沿って設けられ、前記外殻体の内壁面を間接照明する間接照明部と、前記外殻体の天井部に設けられ、被測定物に所定の角度で直接照明する直接照明部と、前記天井部に設けられ、被測定物を撮像する色彩計と、前記間接照明と前記直接照明を切り替え、前記色彩計で取得される間接照明画像と、直接照明画像に基づいて、色と質感を演算する色・質感演算部と、を備えている。
【0006】
図4に示す通り、当該色・質感演算部が、前記直接照明下で、前記色彩計で被測定物を撮像し、撮像された直接照明画像について、XYZ表色系の第1明度Ld(x,y)を演算する第1明度演算部と、前記間接照明下で、前記色彩計で被測定物を撮像し、撮像された間接照明画像について、XYZ表色系の第2明度Lr(x,y)を演算する第2明度演算部と、前記第1明度演算部によって演算された前記直接照明画像の明度のうち、正反射成分に対応する明度と、拡散反射成分に対応する明度の閾値Tを演算する閾値演算部と、前記閾値Tにより、前記直接照明画像の正反射成分に対応する明度を有する画素と、前記直接照明画像の拡散反射成分に対応する明度を有する画素を分け、前記直接照明画像の拡散反射成分に対応する明度LdT(x,y)の
積分値又は平均値Mean(LdT(x,y))と、前記第2明度LrT(x,y)の
積分値又は平均値Mean(LrT(x、y))との比率を演算し、当該比率に基づいて、前記第2明度LrT(x,y)を前記直接照明画像の拡散反射成分に対応する明度LdT(x、y)に合わせて調整した調整明度Lr
1T(x,y)を演算する明度調整部と、前記第1明度演算部によって演算された前記直接照明画像のXYZ表色系の第1明度Ld(x,y)と、調整明度Lr
1T(x,y)の差分を演算する差分演算部と、を備えた高解像度色・質感測定装置である。(x,y)は画素を特定するための位置(座標)情報である。
【0007】
直接照明に関する三帯域視覚感度値はi、間接照明に関する三帯域視覚感度値はj、直接照明に関するL値はd、間接照明に関するL値はr、直接照明の閾値T以下のL値、又はこれに対応する間接照明のL値はT、のサフィックスを、それぞれ、付す。(x、y)は撮像素子53における画素の位置を整数の組み合わせで示すもの(x=1~s、y=1~t、sは撮像素子53の一行の総画素数、tは一列の総画素数)である。Mean(LdT(x、y))=Σ(LdT(x、y))/nT、Mean(LrT(x、y))=Σ(LrT(x、y))/nT、nTは閾値以下の総画素数である。
【0008】
直接照明だけで間接照明を用いずに、閾値を用いて正反射成分を抽出することは、限られた場合に適用されるだけであるので、本発明の対象としない。一般の対象として、明るさの相違や凹凸のある建材や、髪の毛などのように、艶がいろいろな部分に局在したり、さらに、冷凍焼きおにぎりのように、艶が局在してそれほど大きく出なかったりする場合などを扱うには、間接照明画像を完全に艶消しした状態として使うことが、正反射成分の抽出、定量化には適している。平板など単純な形のもので大きく艶があるものに限り、近似的には、間接照明画像を用いずに、直接照明画像だけで、閾値を用いて正反射成分を抽出することは可能である。
【0009】
「第1明度演算部」、「第2明度演算部」のXYZ表色系の明度としては、色彩計で測定される三帯域視覚感度値S1i,S2i,S3iから、3刺激値XYZに変換し、3刺激値XYZからLabを演算し、明度Lとする例が挙げられる。撮像の露光時間は、間接照明と直接照明で値は同じでも相違してもよい。
【0010】
「直接照明部」、「間接照明部」には、LED、ランプ、人工太陽灯等が挙げられる。照明部は1~数台以上を並置することができる。
【0011】
「正反射成分」、「拡散反射成分」は、JISZ8722:2000 色の測定方法-反射及び透過物体色 解説 解5、https://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/section4/02.html等の記載を参照されたい。
【0012】
「明度」は、基本的には、XYZ表色系の測定値である。「XYZ表色系」とは、RGB表色系を単純な一次変換で負の値が現れないように、CIEが1931年にRGB表色系と同時に定めたものである。
【0013】
「被測定物」は、車両、建材、電気製品、毛髪、食品等が挙げられる。車両は自動車、二輪自動車、自転車、人力車、そり、手押し車、荷車、馬車、リヤカ等が挙げられる。
【0014】
「色彩計」とは、物体の色度分布を2次元で計測する装置等である。株式会社パパラボのPPLB-400、PPLB-600等が例示され、測定範囲内の色差ΔEの変化と、Lab値の各値を示したグラフを表示できる。始点からの色差ΔEを得られることで、被測定物における発色の違いや色ムラ等を検証・検査ができる。Lab系の場合、L値、a値、b値のグラフ変化から、どのように色が変化しているのかを読み取ることができる。
【0015】
「色彩計」は、
図6に示す三つの特定の規格化感度(S
1(λ),S
2(λ),S
3(λ))により、三つのチャンネルに分けて撮像対象物を撮像するものが例示される。これらの分光感度を得るために設定された光学フィルタ又はダイクロイックミラーもしくはダイクロイックプリズム等のいずれであるかを問わず用いることができる。
【0016】
「色彩計」の分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は、CIE XYZ分光感度から負の値を持たない、単独ピークを持つ山形であり、それぞれの分光感度曲線のピーク値が等しく、分光感度の曲線の重なりは最小限にするという条件から等価変換したものが例示される。例えば、分光感度S1のカーブは、ピーク波長が582nmであり、半値幅が523~629nmであり、1/10幅が491~663nmである。分光感度S2のカーブは、ピーク波長が543nmであり、半値幅が506~589nmであり、1/10幅が464~632nmである。分光感度S3のカーブは、ピーク波長が446nmであり、半値幅が423~478nmであり、1/10幅が409~508nmである。
【0017】
「制御部」は、いわゆるパソコン、コントローラ等の適宜の制御装置である。
【0018】
「XYZ表色系」には、例えば、Yxy、XYZ、Lab、Luv等のCIE表色系を含み、2次元色度図又は3次元色空間を含む概念である。
【0019】
xyY表色系(Yxy表色系ともいう)とは、XYZ表色系では数値と色の関連がわかりにくいので、XYZ表色系から絶対的な色合いを表現するために定められたものである。
【0020】
Luv表色系とは、CIEが1976年に定めた均等色空間のひとつであり、CIELuvは光の波長を基礎に、XYZ表色系のxy色度図の波長間隔の均等性を改善したものであり、日本ではJIS Z8518に規定されている。
【0021】
Lab表色系とは、CIE Labなどがあり、XYZ表色系から知覚と装置の違いによる色差を測定するために派生したものであり、日本ではJIS Z 8729に規定されている。
【0022】
「XYZ表色系」には、2次元座標と3次元座標で規定される色空間が含まれる。色空間の代表例としては、XYZ色空間と、Lab色空間等の構成例がある。2次元の色空間の場合、例えば、Yxy色空間、Luv色空間の場合、2次元平面であるxy色度図(Yxy色空間で正規化したxy色度値(平面))、uv色度図、u’v’色度図が挙げられる。平面上での2次元色度図の画素の密度として表現されるxy色度ヒストグラム分布又はLuv色度ヒストグラム分布等が対応する。3次元の色空間の場合、例えば、XYZ色空間、Lab色空間の場合、3次元空間であるXYZ色空間、Lab色空間が挙げられる。3次元での色空間上の画素の密度として表現されるXYZ色空間ヒストグラム、又はLab色空間ヒストグラム分布等が対応する。
【0023】
2次元のxy色度平面、uv色度図、u’v’色度図での色と質感の分離に対して、他のXYZ色空間とLab色空間等は3次元色空間上で色と質感の分離となる。xy色度ヒストグラムに対して、XYZ色空間ヒストグラム、Lab色空間ヒストグラム等のように、区別して定義している。
【0024】
前記閾値演算部において、明度を示す画素数の分布である明度ヒストグラムを作成し、該明度ヒストグラムから前記閾値が演算されることが好ましい。
【0025】
XYZ明度ヒストグラムとLab明度ヒストグラムが例示される。
【0026】
前記明度調整部において、前記明度の指数は、各画素の明度の積分値又は平均値であることが好ましい。
【0027】
露光時間の調整あり(再撮影)でも、調整なし(再撮影なし)で本発明を適用できる。露光時間の調整は、画像を取り込む画像素子53のS/N(信号対雑音比)をより改善して取り込むために必要な処理である。露光時間の調整を行わなくても充分なS/Nが得られれば、演算のみで、算出しても充分な場合もある。露光時間を調整する場合、前記第2明度演算部において、間接照明下で、前記色彩計で第1露光時間にて被測定物を撮像し、撮像された間接照明画像について、XYZ表色系の明度を演算し、前記第2明度演算部において、前記第1明度演算部で演算された前記直接照明画像の明度の最大値及び間接照明画像の第2明度の最大値が同じになるように第2露光時間tr´を設定することが好ましい。
【0028】
前記明度調整部において、正反射成分に対応する明度と、拡散反射成分に対応する明度の2値化により、前記画素を分けて記憶することが好ましい。
【0029】
もう一つの発明は、外殻体と、該外殻体の下端部に沿って設けられ、前記外殻体の内壁面を間接照明する間接照明部と、前記外殻体の天井部に設けられ、被測定物に所定の角度で直接照明する直接照明部と、前記天井部に設けられ、被測定物を撮像する色彩計と、前記間接照明と前記直接照明を切り替え、前記色彩計で取得される間接照明画像と、直接照明画像に基づいて、色と質感を演算する色・質感演算部と、を備えた高解像度色・質感測定装置を用い、前記直接照明下で、前記色彩計で被測定物を撮像し、撮像された直接照明画像について、XYZ表色系の第1明度Ld(x,y)を演算する第1明度演算ステップと、前記間接照明下で、前記色彩計で被測定物を撮像し、撮像された間接照明画像について、XYZ表色系の第2明度Lr(x,y)を演算する第2明度演算ステップと、前記第1明度演算ステップによって演算された前記直接照明画像の明度のうち、正反射成分に対応する明度と、拡散反射成分に対応する明度の閾値Tを演算する閾値演算ステップと、前記閾値Tにより、前記直接照明画像の正反射成分に対応する明度を有する画素と、前記直接照明画像の拡散反射成分に対応する明度を有する画素を分け、前記直接照明画像の拡散反射成分に対応する第1明度LdT(x,y)の積分値又は平均値Mean(LdT(x,y))と、前記第2明度LrT(x,y)の積分値又は平均値Mean(LrT(x、y))との比率を演算し、当該比率に基づいて、前記第2明度LrT(x,y)を前記直接照明画像の拡散反射成分に対応する第1明度LdT(x、y)に合わせて調整した調整明度Lr1(x,y)を演算する明度調整ステップと、前記第1明度演算ステップによって演算された前記直接照明画像のXYZ表色系の明度LdT(x,y)と、調整明度Lr1T(x,y)の差分を演算する差分演算ステップと、を含む高解像度色・質感測定方法である。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、艶感や光沢感等について、見た目の感覚に近い、表面の凹凸、明るさ分布、艶分布、等に対応できる、きめ細かな正確な評価手法を確立できる。例えば、インラインでの測定において、正確な光沢感が測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明実施形態1の高解像度色・質感測定装置1の構成を示す正面図である。
【
図2】(a)本発明実施形態1の高解像度色・質感測定装置1の平面図、(b)は同斜視図である。
【
図3】本発明実施形態1の高解像度色・質感測定装置1の色・質感演算部60の模式図である。
【
図4】本発明実施形態1の高解像度色・質感測定装置1の演算方法を模式的に示す説明図である。
【
図5】本発明実施形態1の高解像度色・質感測定装置1の演算方法の変更形態を模式的に示す説明図である。
【
図6】本発明実施形態1におけるXYZ表色系の2次元色彩計5の分光感度を示す関数である。
【
図7】本発明実施形態1において三つの分光感度(S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ))に従って画像情報を取得する方式の具体例である。(a)はダイクロイックミラーを用いる場合の説明図である。(b)はフィルタターレットを用いる場合の説明図である。(c)は光学フィルタ52a、52b、52cを撮像素子53に微視的に貼着した場合の説明図である。
【
図8】本発明実施形態1の高解像度色・質感測定装置1の制御部の回路構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明実施形態1の高解像度色・質感測定処理を示すフローチャートである。
【
図10】本発明実施形態1の高解像度色・質感測定処理の変更形態を示すフローチャートである。
【
図12】(a)は本発明実施形態2の高解像度色・質感測定装置201の正面図、(b)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1~
図11を参照して、本発明実施形態1の高解像度色・質感測定装置1を説明する。この高解像度色・質感測定装置1は、
図1、2に示す通り、入口2Aと、出口2Bを有し、コンベア2Cが入口2Aと出口2Bを通り、下端部2Dと、内壁2E、天井部2F、凹部2G、遮光壁2Hを有するトンネル状の外殻体2と、下端部2Dに沿って設けられ、内壁2Eに対して間接照明を行う間接照明部3と、前記外殻体の天井部2Fに設けられ、被測定物Mに対して所定の角度θで直接照明する直接照明部4と、天井部2Fに設けられ、被測定物Mを撮像する2次元色彩計5と、前記間接照明と前記直接照明を切替えたり、前記2次元色彩計で取得される間接照明画像と、直接照明画像に基づいて、色と質感の演算等を行う色・質感演算部60等を有する制御部6と、表示部7と、を有する。内壁2Eの内側壁面には、積分球などで良く用いられている、白色の硫酸バリウムを塗布している。2次元色彩計5の光軸の角度が垂直方向から15°である。JIS Z8722解説5に記載の条件Cや条件Dに近づけるため、角度を設定する。
【0033】
図3、
図4を参照して色・質感演算部60を説明する。色・質感演算部60は、直接照明下、2次元色彩計5で露光時間tdにて被測定物Mを撮像し、前記直接照明画像について、XYZ表色系の第1明度Ld(x,y)を演算する第1明度演算部60Aと、間接照明下で、2次元色彩計5で露光時間trにて被測定物Mを撮像し、前記間接照明画像について、XYZ表色系の第2明度Lr(x,y)を演算する第2明度演算部60Bと、直接照明画像の明度のうち、正反射成分に対応する明度と、拡散反射成分に対応する明度の閾値Tを演算する閾値演算部60Cと、閾値Tにより、直接照明画像の正反射成分に対応する明度を有する画素と、直接照明画像の拡散反射成分に対応する明度を有する画素を分け、直接照明画像の拡散反射成分に対応する明度LdT(x,y)の指数(本実施形態においては平均値)Mean(LdT(x,y))と、間接照明画像の対応する画素における第2明度LrT(x,y)の指数(本実施形態においては平均値)Mean(Lr
1T(x,y))との比率を演算し、当該比率に基づいて、第2明度Lr(x,y)を直接照明の拡散反射成分を示す明度LdT(x,y)に合わせて調整した調整明度Lr
1T(x,y)を演算する明度調整部60Dと、直接照明画像のXYZ表色系の明度LdT(x,y)と、調整明度Lr
1T(x,y)の差分を演算する差分演算部60Eと、を備えている。明度は、XYZ表色系の測定値から演算したLabのL値である。
【0034】
本実施形態では、間接照明の再撮影を行ってもよい。Ld(x,y)とLr(x,y)の最大値が一致するように第1露光時間trを補正した第2露光時間tr´を設定し、間接照明下で、2次元色彩計5で第2露光時間tr´にて被測定物を撮像し、間接照明画像について、XYZ表色系の調整明度Lr1(x,y)を演算する明度調整部を備えている。
【0035】
本発明実施形態においては、明るさの相違や凹凸のある建材や、髪の毛などのように、艶がいろいろな部分に局在したり、さらに、冷凍焼きおにぎりのように、艶が局在してそれほど大きく出なかったりする場合などを扱うことを主目的としており、間接照明画像を完全に艶消しした状態として使うことが、正反射成分の抽出と定量化には必要である。
【0036】
外殻体2の断面はかまぼこ形状ないし半円筒形状である。外殻体2内のコンベアー2Cで被測定物Mを搬送しながら撮像してもよいし、所定箇所で被測定物Mを停止させて、被測定物Mの撮像を行ってもよい。コンベア2Cでの搬送速度を遅く設定すれば、位置補正は問題ない。
【0037】
間接照明部3、直接照明部4の照明源はキセノンランプ(擬似太陽光)を採用し、搬送コンベア2の搬送方向と平行に線状に配置されている。照明部はキセノンランプのほかに、フレネルレンズ・アセンブリを備えている。キセノンランプ以外にLED人工太陽灯でもよい。照明源は高指向性高演色LEDとする。演色性とは、色の見え方の指標である。演色性が高いほど、色は鮮やかに美しく見える。指向角とは、LEDの光が広がる角度を表す。高指向性高演色LEDは、LEDの発光面の前に、視野角制限フィルム(https://www.shinpoly.co.jp/product/automotive/vcf/n-vcf.html)を貼り、発光視野角を制限した状態で、高指向を実現している。
【0038】
2次元色彩計5の分光感度はルータ条件を満たすものであって、その分光感度(S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ))は、
図6に示す通り、XYZ等色関数から、負の値を持たず、単独ピークを持つ山形であり、それぞれの分光感度曲線のピーク値が等しく、かつ分光感度の曲線の重なりはできるだけ少なくするという条件から等価変換したものである。分光感度(S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ))は具体的には以下の特性を持つ。
記
ピーク波長 半値幅 1/10幅
S
1 582nm 523~629nm 491~663nm
S
2 543nm 506~589nm 464~632nm
S
3 446nm 423~478nm 409~508nm
【0039】
上記の分光感度S1のピーク波長を580±4nm、分光感度S2のピーク波長を543±3nm、分光感度S3のピーク波長を446±7nmとして取り扱うこともできる。
【0040】
三つの分光感度(S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ))は次の数式1を用いて求められるものである。分光感度自体についての詳細は特開2005-257827号公報を参照されたい。
【数1】
【0041】
2次元色彩計5の高解像度は、4K解像度、8K解像度以上の解像度を有する。2次元色彩計5は、通常の4K解像度では、800万画素となり、最大1200万画素まで対応することができる。4K解像度とは、横4,000×縦2,000前後の画面解像度に対応することをいう。例えば、2次元色彩計5の仕様は、有効頻度値約800万画素、有効面積9.93mm×8.7mm、画像サイズ3.45μm×3.45μm、ビデオ出力12bit、2次元色彩計5のインターフェイスGigE、フレームレート30フレーム/sec、シャッタースピード1/15,600sec~1/15sec、積算時間3秒まで、S/N比60DB以上、レンズマウントFマウント、動作温度0℃~40℃、動作湿度20%~80%が例示される。
【0042】
2次元色彩計5は、
図7に示すように、撮影レンズ51と、この撮影レンズ51の後方に配置された三つの光学フィルタ52a、52b、52c(又は52a´、52c´)と、光学フィルタ52a、52b、52c(又は52a´、52c´)の後方に配置された撮像素子53(CCD、CMOSなど)と、を備えている。2次元色彩計5の三つの分光感度(S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ))は、光学フィルタ52a、52b、52c(又は52a´、52c´)の分光透過率と撮像素子53の分光感度との積により与えられる。
図7における光学フィルタ52a、52b、52cと撮像素子53との配列的関係は模式的に示したものにすぎない。三つの分光感度(S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ))に従って画像情報を取得する方式について以下に具体例を挙げるが、本実施形態1では、その他の方式を採ることもできる。
【0043】
図7(a)に示すものはダイクロイックミラーを用いる方式である。これはダイクロイックミラー52c´により特定の波長の光を反射し、透過した残りの光について、さらに別のダイクロイックミラー52a´により別の特定の波長の光を反射して分光し、撮像素子53a、53b、53cを三つ並列にして読み出す方式である。ダイクロイックミラー52a´が光学フィルタ52a、52bに相当し、ダイクロイックミラー52c´が光学フィルタ52cに相当する。撮影レンズ51から入射する光はダイクロイックミラー52c´により分光感度S
3に従う光が反射され、残りの光は透過する。ダイクロイックミラー52c´により反射された光を反射鏡56により反射して撮像素子53cから分光感度S
3を得る。一方、ダイクロイックミラー52c´を透過した光は、ダイクロイックミラー52a´において、分光感度S
1に従う光が反射され、残りの分光感度S
2に従う光は透過するため、それぞれ撮像素子53a、撮像素子53bにより撮像して分光感度S
1、S
2を得る。ダイクロイックミラーに代えて同様な特性を有するダイクロイックプリズムを用いて三つに分光し、それぞれの光が透過する位置に撮像素子53a、53b、53cを接着してもよい。
【0044】
図7(b)はフィルタターレット57を用いる方式を示す。撮影レンズ51からの入射光と同じ方向を回転軸に持つフィルタターレット57に、光学フィルタ52a、52b、52cを設けて、これらを機械的に回転させ、順次透過する光について撮像素子53により三つの分光感度S
1、S
2、S
3を得る。
【0045】
図7(c)に示すものは光学フィルタ52a、52b、52cを撮像素子53に微視的に貼着する方式である。撮像素子53上における光学フィルタ52a、52b、52cは、ベイヤー配列型に設けられる。この配列は、格子状に分けた撮像素子53上の領域のうち半分に光学フィルタ52bを設け、残りの半分の領域に光学フィルタ52aと光学フィルタ52cとをそれぞれ均等に配置するものである。すなわち、配置量は光学フィルタ52a:光学フィルタ52b:光学フィルタ52c=1:2:1となる。光学フィルタ52a、52b、52cの配列をベイヤー配列以外のものとすることは本実施形態1において特に妨げられない。個々の光学フィルタ52a、52b、52cは非常に微細であるため、印刷により撮像素子53に貼着される。本発明はこの配列に意味があるのではなく、分光感度(S
1(λ)、S
2(λ)、S
3(λ))の特性のフィルタを撮像素子に貼着することにある。
【0046】
図8を参照して色・質感演算を司る制御部6を説明する。この制御部6は、CPU61、RAM62、ROM63、カウンタ64、タイマ65、入出力インタ-フェース68をバス69により相互に接続したものである。入出力インタ-フェース68には、コンベア2C、間接照明部3、直接照明部4、2次元色彩計5、表示部7等が接続されている。CPU61が初期設定、或いは入力信号を受けて所定の演算等を行い、それらに対して、制御信号が送信されるようになっている。
【0047】
CPU61は、各部に出力する制御信号を生成し、プログラム制御によって、制御信号を出力することで、色・質感制御を実行する。RAM62は、色・質感制御などのデータを一時的に読み書きするものである。ROM63に色・質感制御などのプログラムが読み出し専用で格納されている。CPU61の内部演算は、64ビットの浮動小数点で演算する。途中の演算でオーバーフロ-等のトラブルがない。プログラム制御に代えて、LSIロジック等のハードウェア制御によっても実施が可能である。
【0048】
カウンタ64は、閾値T、画素数、明度L、明度ヒストグラム等のカウント値や累計値等を示す計数部等として機能するものであり、電源投入後、カウンタ64のカウント値、累計値の初期値を「0」とし、各種入力信号を参照して、カウントやインクリメントするものである。
【0049】
タイマ65は第1露光時間tr、第2露光時間tr´等の時間演算処理等を行なうものである。
【0050】
表示部7は制御部6と接続され、制御部6で処理された画像信号を受信して、画像を画面に表示するようになっている。制御部6又は表示部7は、適宜、入力手段(図示略)等を備える。入力手段はキーボード、マウス、表示部7に設けられるタッチパネル等である。
【0051】
図4、
図9等を参照し、高解像度色・質感測定装置1の動作の具体例を挙げて説明する。
【0052】
2次元色彩計5、制御部6、表示部7に電源が入ると、
図9に示す通り、初期化をした後、第1明度演算部60A、第2明度演算部60Bにおいて、それぞれ、露光時間を第1露光時間td、trに設定し、間接照明と直接照明のON/OFFを切り替え、それぞれの点灯に対応して、2次元色彩計5で被測定物Mを撮像し、それぞれの直接照明三帯域視覚感度値S
1i,S
2i,S
3i(i=1~n:nは総画素数)と、間接照明三帯域視覚感度値S
1j,S
2j ,S
3j(j=1~n:nは総画素数)を得る(S1)。
【0053】
S1で取得した三帯域視覚感度値S1i,S2i,S3i、及び、S1j,S2j ,S3jから、対応する、XiYiZi、及び、XjYjZjを演算し、XiYiZi、XjYjZjから、それぞれ、Lab値を演算し、直接照明Ld(x,y)、間接照明Lr(x,y)とする(S2)。
【0054】
閾値演算部60Cにおいて、直接照明画像の明度ヒストグラムを作成する(S3)。
図11に示す通り、横軸がLd(x,y)、縦軸が画素数であり、横軸の各明度に属する画素数を積算することにより、直接照明画像の明度ヒストグラムを作成する。
【0055】
図11に示す通り、L値に対する画素数の分布のヒストグラムを取ると、拡散反射成分と正反射成分の2つの山ができる。反射率が高い対象の場合、正反射成分の画素数が大きくなるため、拡散反射成分の画素数が小さくなる。反射率が低い対象の場合、正反射成分の画素数が小さくなるため、拡散反射成分の画素数が大きくなる。拡散反射成分が全部又はほとんどである場合には、この処理の意味はなくなるため、艶感の計測は必要ない。艶感であるので、明度Lの処理となるが、最終結果としては、L値、a値、b値のそれぞれの平均を算出してもよい。艶感のL値と、艶感のあるところのa値、b値も計測できる。図示は略すが、間接照明明度ヒストグラムは拡散反射成分の1つの山を持つ。間接照明では全方位より光が集まるため、間接照明だけにすると正反射成分はなくなり、拡散反射成分だけになる。
【0056】
閾値演算部60Cにおいて、S6で作成した直接照明明度ヒストグラムから、Ohtsu等の手法により、
図11の閾値Tを演算する(S4)。
【0057】
明度調整部に60Dにおいて、直接照明画像で閾値T以下の値を有する画素のLdT(x,y)の平均値と、間接照明画像における、LdT(x,y)に対応する画素のLrT(x,y)の平均値を演算し、比率を演算する。平均値に代えて、積分値でもよい。これらの平均値又は積分値を、本発明においては指数と呼ぶ。この指数の比率により、
図4の下部に記載の計算式例に従い、間接照明画像の第2明度LrT(x,y)の指数を直接照明画像の明度LdT(x,y)の指数に揃えて、間接照明画像の調整明度Lr
1T(x,y)を演算する(S8)。下付きの「1」は比率で補正されたことを示すサフィックスである。
【0058】
指数は平均値であるが積分値で代替してもよい。閾値T等の演算に当たっては、あらかじめ、直接照明明度の2値化、例えば、フラグ0又は1を設定し、直接照明の正反射成分に対応する明度を有する画素の場合は「1」、直接照明の拡散反射成分に対応する明度を有する画素の場合は「0」を設定し、フラグとL値をセットで記憶し、正反射成分と拡散成分とを区別しする。
【0059】
画素すべてについて、差分ΔF=LdT(x,y)-Lr
1T(x,y)を演算すると、
図4に示す通り、正反射成分のL値が抽出され(S6)、リターンとする。正反射成分のL値、又は、当該L値の指数(平均値若しくは積分値)等が艶感を示す指標となる。差分ΔFの演算により、拡散反射成分がキャンセルされる。拡散反射成分が残る可能性があるが、数値としては小さいので、艶感の評価には影響しない。
【0060】
3刺激値XYZ、Lab、明度ヒストグラム作成等については、特許文献1、特開2019-20311、特開2018-141687、特開2018-115877等も併せて参照されたい。
【0061】
図5は
図4の実施形態の変更形態を示すので、主に相違点について説明し、共通処理は説明を援用する。共通する処理は説明を援用し、追加されたS2-1~S2-3を説明する。第2明度演算部60Bにおいて、直接照明画像の第1明度Ld(x,y)の最大値と間接照明画像の第2明度Lr(x,y)の最大値が一致するように、第1露光時間trを調整して、第2露光時間tr´を設定する(S2-1)。間接照明をONとし、直接照明をOFFとし、S3で延長した第2露光時間tr´で被測定物Mを再撮像する(S2-2)。
【0062】
第2明度演算部60Bにおいて、Lab再演算により、
図5の下部の計算式例により、間接照明画像の調整明度Lr
2T(x,y)を再演算する(S5)。
【0063】
S1、S2、S3~S6は、
図4と同様の処理を行う。画素すべてについて、差分ΔF=LdT(x,y)-Lr
2T(x,y)を演算すると、
図5に示す通り、正反射成分のL値が抽出され(S6)、リターンとする。下付きの「1」は、第2露光時間tr´の再撮影により得られるL値、下付きの「2」は、比率で補正されたことを示すサフィックスである。
【0064】
本発明実施形態の高解像度色・質感測定装置によれば、見た目の感覚に近い、艶感や光沢のきめ細かな新たな評価手法を確立できる。例えば、建材等の分野では、タイルから構成される壁面のうち一部のタイルだけに艶感がないという事態を解消でき、壁面全体にバランスのとれた光沢感が生じる。インライン測定であっても、正確な光沢感が測定できる。例えば、メタリック感はメタリック成分の粒量と粒の分布が関係するが、それらも考慮して測定ができる。例えば、アルミニウムのフレークを塗料に混ぜるとメタリック感が出る。フレークを多量に塗料に混ぜると、キラキラ感が増加する。フレームの粒度を大きくして、ゴツゴツ感をつける。メタリック感は、密度が少なくなっても、メタリック感は強くなる。フレークの細かい粒を多量に混ぜるときもある。ゴツゴツ感など、人間の目では微妙に違って見える。このようなフレークの粒子の大小、フレークの混合量の多寡により、メタリック感を精密に定量化できるので、精密なメタリック感の制御が可能である。
【0065】
実施形態2の高解像度色・質感測定装置201について図面を参照して説明する。基本的には共通する構成については説明を援用し、相違する構成について
図12等を参照し説明する。部品番号は基本的には200番台として、実施形態1に対応させている。以下、実施形態2を詳細に説明する。
【0066】
実施形態2は、インライン測定ではなく、オフライン測定に基づくので、外殻体に半球ドームを用いている。毛髪、食品等の艶感に適用できる。高解像度色・質感測定装置201は、ドーム型筐体202と、毛髪等を照明するLEDを有する単数又は複数の間接照明部203と、直接照明部204と、対象物である毛髪等を撮像する2次元色彩計205と、照明電源のオン/オフ、色・質感演算等を行い、2次元色彩計205等と接続する制御部206と、表示部207と、把持部208と、を備えている。
【0067】
ドーム型筐体202は、
図12に示す通り、円形の開口部202A、下端部202D、ドーム形状(例えば、半球状)の内壁202E、円弧状の天井部202F、環状の凹部202G、環状の遮光壁202H、天井部202Fの中心縦軸に対して2次元色彩計205に角度をもたせて傾斜して固定するための取付部202Kを備えている。取付部202Kの位置を中心からずらした理由は、対象物に艶があるものは、レンズが画像に直接うつりこむため、これを防ぐことにある。その角度(中心から傾斜した角度)は、例えば、傾斜角度10°~30°が例示される。
【0068】
間接照明部203は、
図12に示す通り、ドーム型筐体202の内壁の内周辺部に円環状に分散配置され、上方の内壁面に光を照射する間接的な照明となる。実施形態2はオフラインへの応用であり、毛髪、食品等へ展開する形態で実施する場合、リング状の間接照明部203を配置する。
【0069】
把持部208は、
図12に示す通り、手で握られるようなグリップの形状に形成されており、手動で被測定物を撮像できるようにする。その近傍に2次元色彩計205の撮像ボタン(図示略)が設けてある。
【産業上の利用可能性】
【0070】
対象物は建材、毛髪、化粧品、食品(冷凍食品の焼きおにぎり、柿の種等)、自動車、電機製品等の幅広い分野で光沢感、艶感、照感等の質感を色と共に測定できる。
【0071】
本発明の実施形態は、上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改変等を加えることができ、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれ、技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることは言うまでもない。例えば、三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))に従って画像を取得する方式、明度としてL値を演算する方式について、本実施形態において挙げた方式は具体例に過ぎないものであって、これらに限られず、その他の方式によっても本発明の技術的思想は実施される。
【符号の説明】
【0072】
1 高解像度色・質感測定装置
2 外殻体
2A 入口
2B 出口
2C コンベア
2D 下端部
2E 内壁
2F 天井部
2G 凹部
2H 遮光壁
3 間接光源部
M 被測定物
θ 角度
4 直接照明部
5 2次元色彩計
6 制御部
7 表示部