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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20231010BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20231010BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231010BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20231010BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
C09D11/30
C09D11/101
B41J2/01 501
B41J2/01 127
B41M5/00 120
C09D133/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021044804
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022143981
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】391001505
【氏名又は名称】アジア原紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】国保 怜
(72)【発明者】
【氏名】田中 和弘
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-140491(JP,A)
【文献】特開2009-179681(JP,A)
【文献】国際公開第2013/062090(WO,A1)
【文献】特開2020-105530(JP,A)
【文献】特開2009-173712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型組成物であって、
(A)ラジカル重合性化合物、(B)光重合開始剤、及び(C)アミン系化合物を含有し、
前記(B)光重合開始剤は、(B1)硫黄系化合物と、(B2)アシルホスフィンオキシド系化合物とを含み、前記(B1)硫黄系化合物は、スルホン系化合物及びチオベンゾイル系化合物の両方、又はスルホン系化合物である、活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
前記(C)アミン系化合物は、(C1)アミノ変性化合物及び(C2)芳香族アミン系化合物の少なくとも一方を含み、前記(C1)アミノ変性化合物は、アミノ変性アクリレートオリゴマー及びアミノ変性アクリレートポリマーの少なくとも一方である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
前記活性エネルギー線硬化型組成物中における前記(B)光重合開始剤の含有量は、4.2質量%以上であり、
前記活性エネルギー線硬化型組成物中における前記(B1)硫黄系化合物の含有量は、0.4質量%以上であり、
前記活性エネルギー線硬化型組成物中における(B2)アシルホスフィンオキシド系化合物の含有量は、0.7質量%以上である、請求項1又は請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
前記(B)光重合開始剤は、(B3)チオキサントン系化合物をさらに含み、
前記活性エネルギー線硬化型組成物中における(B3)チオキサントン系化合物の含有量は、1.0質量%以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
前記(A)ラジカル重合性化合物は、(A1)第1重合性化合物と、(A2)第2重合性化合物との少なくとも一方の重合性化合物を含み、
前記(A1)第1重合性化合物は、ビニルエーテル基及びアリルエーテル基の少なくとも一方のエーテル基と、(メタ)アクリロイル基とを有する化合物であり、
前記(A2)第2重合性化合物は、芳香族骨格を有する(メタ)アクリレート化合物である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項6】
前記(A)ラジカル重合性化合物の官能基数は、1~3である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項7】
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、記録物上に硬化膜を形成する用途に用いられる、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項8】
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、顔料を含まない、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項9】
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、インクジェット印刷用途に用いられる、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷等の印刷に用いられるインク組成物として、例えば、活性エネルギー線硬化型組成物が知られている(特許文献1~3、及び非特許文献1参照)。活性エネルギー線硬化型組成物は、例えば、溶媒又は分散媒を揮発させることで膜を形成する組成物とは異なり、乾燥工程が不要となるため、例えば、印刷物の生産効率を高めることが容易となる。活性エネルギー線硬化型組成物に含有される重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物、及びカチオン重合性化合物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-031667号公報
【文献】国際公開第2010/140360号
【文献】特開2010-241894号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】日本画像学会誌、第49巻、第5号、412-416(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような活性エネルギー線硬化型組成物に用いられる重合性化合物のうち、ラジカル重合性化合物は、カチオン重合性化合物よりも安価で汎用性が高い。ところが、活性エネルギー線の照射によるラジカル重合性化合物の重合反応は、活性エネルギー線硬化型組成物中に溶存する酸素や雰囲気中の酸素により阻害され易い。このような実情から、ラジカル重合性化合物を含有し、硬化性をより高めることを可能にした活性エネルギー線硬化型組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様では、活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型組成物であって、(A)ラジカル重合性化合物、(B)光重合開始剤、及び(C)アミン系化合物を含有し、前記(B)光重合開始剤は、(B1)硫黄系化合物と、(B2)アシルホスフィンオキシド系化合物とを含み、前記(B1)硫黄系化合物は、スルホン系化合物及びチオベンゾイル系化合物の少なくとも一方である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化性を高めることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、活性エネルギー線硬化型組成物の一実施形態について説明する。
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化する。活性エネルギー線硬化型組成物は、(A)ラジカル重合性化合物、(B)光重合開始剤、及び(C)アミン系化合物を含有する。
【0009】
<(A)ラジカル重合性化合物>
ラジカル重合性化合物は、活性エネルギー線が照射されると重合反応により硬化する化合物である。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線(UV)、及び電子線(EB)が挙げられる。
【0010】
ラジカル重合性化合物は、単官能基又は多官能基を有するラジカル重合性化合物であり、モノマーであってもよいし、オリゴマーであってもよい。
単官能基を有するラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリレートが挙げられる。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ブチルシクロヘキサノールアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イルメチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、β-カルボキシルエチルアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、イミドアクリレート、イソアミルアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、及びω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレートが挙げられる。
【0011】
多官能基を有するラジカル重合性化合物としては、例えば、ジ(メタ)アクリレートが挙げられる。ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリジプロピレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0012】
多官能基を有するラジカル重合性化合物としては、さらに、例えば、トリアクリレート、テトラアクリレート、ヘキサアクリレート、及びオリゴアクリレートが挙げられる。トリアクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヒドロキシピバリン酸トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化リン酸トリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2-ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、及びプロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。テトラアクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、及びエトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートが挙げられる。ペンタアクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレートが挙げられる。ヘキサアクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが挙げられる。オリゴアクリレートとしては、例えば、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4-ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6-ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、及びペンタエリスリトールオリゴアクリレートが挙げられる。
【0013】
さらに、ラジカル重合性化合物としては、例えば、上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、環状又は直鎖状の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0014】
ラジカル重合性化合物は、一種類又は二種類以上を使用することができる。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを示す。
ラジカル重合性化合物の官能基数は、活性エネルギー線硬化型組成物を低粘度化するという観点から、1~3であることが好ましい。
【0015】
ラジカル重合性化合物は、活性エネルギー線の照射による反応性に優れるという観点から、下記(A1)第1重合性化合物と(A2)第2重合性化合物との少なくとも一方の重合性化合物を含むことが好ましい。
【0016】
(A1)第1重合性化合物は、ビニルエーテル基及びアリルエーテル基の少なくとも一方のエーテル基と、(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。(A2)第2重合性化合物は、芳香族骨格を有する(メタ)アクリレート化合物である。
【0017】
(A1)第1重合性化合物としては、例えば、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒社製、商品名:VEEA)、メタクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒社製、商品名:VEEM)、及び2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル(日本触媒社製、商品名:AOMA(FX-AO-MA))が挙げられる。
【0018】
(A2)第2重合性化合物としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレンポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0019】
活性エネルギー線硬化型組成物中におけるラジカル重合性化合物の含有量は、60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは75質量%以上である。活性エネルギー線硬化型組成物中における重合性化合物の含有量は、99質量%以下であることが好ましく、より好ましくは95質量%以下である。
【0020】
<(B)光重合開始剤>
光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によりラジカル重合性化合物の重合反応を開始させる。光重合開始剤としては、光ラジカル重合型の光重合開始剤を用いることができる。光ラジカル重合型の光重合開始剤としては、例えば、分子内開裂型の光重合開始剤、及び水素引き抜き型の光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤は、一種類又は二種類以上を使用することができる。
【0021】
光重合開始剤は、(B1)硫黄系化合物と、(B2)アシルホスフィンオキシド系化合物とを含む。
(B1)硫黄系化合物は、スルホン系化合物及びチオベンゾイル系化合物の少なくとも一方である。スルホン系化合物としては、例えば、1-[4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン、及びトリブロモメチルフェニルスルホンが挙げられる。チオベンゾイル系化合物としては、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル4´-メチルジフェニルスルフィド、及び1-〔4-(フェニルチオ)フェニル〕-オクタン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)が挙げられる。
【0022】
(B2)アシルホスフィンオキシド系化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィン酸エチル、及びエチル(3-ベンゾイル-2,4,6-トリメチルベンゾイル)(フェニル)フォスフィンオキシドが挙げられる。
【0023】
光重合開始剤は、(B3)チオキサントン系化合物をさらに含むことが好ましい。(B3)チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、及び2-イソプロピルチオキサントンが挙げられる。
【0024】
光重合開始剤は、必要に応じて、上記以外の化合物を含んでいてもよい。光重合開始剤における上記以外の化合物としては、アルキルフェノン系化合物、イミダゾール系化合物、及びトリアジン系化合物が挙げられる。但し、光重合開始剤としては、活性エネルギー線硬化型組成物を硬化した硬化膜の色調に影響を与え難いものを選択して用いることが好ましい。特に、加飾インクやオーバープリントニスのような着色剤を含まない透明な硬化膜を形成する活性エネルギー線硬化型組成物の場合、硬化膜の黄変等の着色の要因とならない光重合開始剤を選択して用いることが好ましい。
【0025】
アルキルフェノン系化合物としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-{2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル}-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、及び2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オンが挙げられる。
【0026】
イミダゾール系化合物としては、例えば、2´-ビス(2-クロロフェニル)-4,4´,5,5´-テトラフェニル-1,2´-ビイミダゾール、2,2´-ビス(2-クロロフェニル)-4,4´,5,5´-テトラフェニル-1,2´-ビイミダゾール、及び2,2´,4-トリス(2-クロロフェニル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-4´,5´-ジフェニル-1,1´-ビイミダゾールが挙げられる。
【0027】
トリアジン系化合物としては、例えば、2-[2-(4-メトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、及び2-[4´-エチル(1,1´-ビフェニル)-4-イル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
【0028】
活性エネルギー線硬化型組成物中における光重合開始剤の含有量は、4.2質量%以上であることが好ましく、より好ましくは4.5質量%以上であり、さらに好ましくは5.0質量%以上である。活性エネルギー線硬化型組成物中における光重合開始剤の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは18質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0029】
活性エネルギー線硬化型組成物中における(B1)硫黄系化合物の含有量は、0.4質量%以上であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型組成物中における(B1)硫黄系化合物の含有量は、ラジカル重合性化合物に対する溶解性の観点から、15質量%以下であることが好ましい。
【0030】
活性エネルギー線硬化型組成物中における(B2)アシルホスフィンオキシド系化合物の含有量は、0.7質量%以上であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型組成物中における(B2)アシルホスフィンオキシド系化合物の含有量は、硬化膜の黄変を抑えるという観点から、12質量%以下であることが好ましい。
【0031】
活性エネルギー線硬化型組成物中における(B3)チオキサントン系化合物の含有量は、1.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0032】
<(C)アミン系化合物>
(C)アミン系化合物としては、例えば、(C1)アミノ変性化合物、(C2)芳香族アミン系化合物、及び(C3)脂肪族アミン系化合物が挙げられる。
【0033】
(C1)アミノ変性化合物は、アミノ変性アクリレートオリゴマー及びアミノ変性アクリレートポリマーの少なくとも一方である。(C1)アミノ変性化合物としては、例えば、ダイセル・オルネクス社製の市販品(商品名:EBECRYL80、EBECRYL7100)、東亜合成社製の市販品(商品名:アロンDA)、KJケミカルズ社製の市販品(商品名:DMAPAA)、RAHN社製の市販品(商品名:GENOMER5142、GENOMER5161、GENOMER5271、GENOMER5275、GENOMER5695)、及びサートマー社製の市販品(商品名:CN383、CN371NS、CN386、CN549NS、CN550、CN551NS、CN373)が挙げられる。
【0034】
(C2)芳香族アミン系化合物としては、例えば、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、{α-4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルポリ(オキシエチレン)-ポリ〔オキシ(1-メチルエチレン)〕-ポリ(オキシエチレン)}4-(ジメチルアミノ)-ベンゾエート、ポリ(エチレングリコール)ビス(p-ジメチルアミノベンゾエート)、N,N-ジメチルベンジルアミン、(メチルアミノ)ジエタン-2,1-ジイルビス〔4-(ジメチルアミノ)-ベンゾエート〕、及び4,4´-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが挙げられる。
【0035】
(C3)脂肪族アミン系化合物としては、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンが挙げられる。
(C)アミン系化合物は、(C1)アミノ変性化合物及び(C2)芳香族アミン系化合物の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0036】
活性エネルギー線硬化型組成物中における(C)アミン系化合物の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型組成物中における(C)アミン系化合物の含有量は、20質量%以下であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型組成物中における(C)アミン系化合物の含有量は、0.5質量%以上、15質量%以下の範囲内であることがより好ましくは、さらに好ましくは1.0質量%以上、10質量%以下の範囲内である。
【0037】
<上記以外の成分>
活性エネルギー線硬化型組成物には、ポリマーを含有させることもできる。ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びポリエステル樹脂が挙げられる。ポリマーは、一種類又は二種類以上を使用することができる。
【0038】
(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチルとメタクリル酸n-ブチルとの共重合体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0039】
(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、三菱レイヨン社製の市販品(商品名:ダイヤナールBR、ダイヤナールHR、ダイヤナールHW、ダイヤナールLP、ダイヤナールLR、ダイヤナールLW、ダイヤナールLX、ダイヤナールSE)、日立化成工業社製の市販品(商品名:ヒタロイド7975、ヒタロイド7988、ヒタロイド7975D)、根上工業社製の市販品(商品名:ハイパールM-4006、ハイパールM-4501、ハイパールM-5000、ハイパールM-5001)、及び荒川化学社製の市販品(商品名:ビームセット243NS、ビームセット255、ビームセット261、ビームセット271)が挙げられる。
【0040】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等が挙げられる。
ケトン樹脂としては、例えば、ケトン・アルデヒド縮合樹脂、ホルムアルデヒド等のアルデヒド化合物を反応させて得られたケトン樹脂、及びウレタン変性ケトン樹脂が挙げられる。ケトン樹脂としては、例えば、荒川化学工業社製の市販品(商品名:K-90)、EVONIK Industries AG社製の市販品(商品名:VariPlus AP、VariPlus SK、VariPlus 1201TF、VariPlus CA)が挙げられる。
【0041】
ジアリルフタレート樹脂としては、例えば、大阪ソーダ社製の市販品(商品名:ダイソーダップ、ダイソーイソダップ、ダイソーダップモノマー、ダイソーダップ100モノマー)が挙げられる。
【0042】
塩素化ポリオレフィン樹脂としては、例えば、日本製紙社製の市販品(スーパークロン814HS、スーパークロン390S)、及び東洋紡社製の市販品(商品名:ハードレン13-LLP、ハードレン15-LLP)が挙げられる。塩化ビニル系樹脂としては、例えば、日信化学工業社製の市販品(商品名:ソルバインCL、ソルバインCNL、ソルバインC5R、ソルバインTA5R)、及びカネカ社製の市販品(商品名:カネビニールMシリーズ、カネビニールHMシリーズ、カネビニールT5シリーズ)が挙げられる。
【0043】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、積水化学工業社製の市販品(商品名:エスレックB、エスレックKX、エスレックKW)が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、高松油脂社製の市販品(商品名:ペスレジンAシリーズ、ペスレジンSシリーズ)、及び東洋紡社製の市販品(商品名:バイロン103、バイロン200、バイロン220)が挙げられる。
【0044】
活性エネルギー線硬化型組成物中におけるポリマーの含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは3質量部以上である。活性エネルギー線硬化型組成物中におけるポリマーの含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは15質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0045】
活性エネルギー線硬化型組成物には、表面張力調整剤を含有させることもできる。表面張力調整剤は、活性エネルギー線硬化型組成物の表面張力を所定の範囲に調整可能な化合物である。表面張力調整剤としては、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、変性シリコーンオイル、及び有機溶剤が挙げられる。
【0046】
イオン性界面活性剤のアニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ベンゼンスルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類、ポリオキシエチレン硫酸エステル塩類、及びリン酸エステル塩類が挙げられる。
【0047】
脂肪酸塩類としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、及び半硬化牛脂脂肪酸ナトリウムが挙げられる。
アルキル硫酸エステル塩類としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸トリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、及びオクタデシル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0048】
ベンゼンスルホン酸塩類としては、例えば、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及びドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0049】
ナフタレンスルホン酸塩類としては、例えば、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、及びナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物が挙げられる。
スルホコハク酸エステル塩類としては、例えば、スルホコハク酸ジドデシルナトリウム、及びスルホコハク酸ジオクタデシルナトリウムが挙げられる。
【0050】
ポリオキシエチレン硫酸エステル塩類としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸トリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸ナトリウム、及びポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0051】
リン酸エステル塩類としては、例えば、ドデシルリン酸カリウム、及びオクタデシルリン酸ナトリウムが挙げられる。
イオン性界面活性剤のカチオン性界面活性剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。第四級アンモニウム塩類としては、例えば、酢酸オクタデシルアンモニウム、ヤシ油アミン酢酸塩等のアルキルアミン塩類、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、及び塩化ドデシルベンジルジメチルアンモニウムが挙げられる。
【0052】
イオン性界面活性剤の両性イオン性活性剤としては、例えば、アルキルベタイン類、及びアミンオキシド類が挙げられる。アルキルベタイン類としては、例えば、ドデシルベタイン、及びオクタデシルベタインが挙げられる。アミンオキシド類としては、例えば、ドデシルジメチルアミンオキシドが挙げられる。
【0053】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンフェニルエーテル類、オキシラン重合体類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ソルビトール脂肪酸エステル類、及びグリセリン脂肪酸エステル類が挙げられる。
【0054】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル類としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル、及びポリオキシエチレン(9-オクタデセニル)エーテルが挙げられる。
【0055】
ポリオキシエチレンフェニルエーテル類としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが挙げられる。
オキシラン重合体類としては、例えば、ポリ酸化エチレン、及びコ-ポリ酸化エチレン酸化プロピレンが挙げられる。
【0056】
ソルビタン脂肪酸エステル類としては、例えば、ソルビタンドデカン酸エステル、ソルビタンヘキサデカン酸エステル、ソルビタンオクタデカン酸エステル、ソルビタン(9-オクタデセン酸)エステル、ソルビタン(9-オクタデセン酸)トリエステル、ポリオキシエチレンソルビタンドデカン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンヘキサデカン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオクタデカン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオクタデカン酸トリエステル、ポリオキシエチレンソルビタン(9-オクタデセン酸)エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン(9-オクタデセン酸)トリエステルが挙げられる。
【0057】
ソルビトール脂肪酸エステル類としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビトール(9-オクタデセン酸)テトラエステルが挙げられる。
グリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、グリセリンオクタデカン酸エステル、グリセリン(9-オクタデセン酸)エステルが挙げられる。
【0058】
変性シリコーンオイルとしては、例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチレン変性シリコーンオイル、オレフィン変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、及びアルキル変性シリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルの中でも、活性エネルギー線硬化型組成物に対して良好な溶解性を示すことから、各種有機基を導入した変性シリコーンオイルを使用することが好ましい。各種有機基を導入した変性シリコーンオイルとしては、例えば、末端(メタ)アクリル変性シリコーンオイル、末端エポキシ変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0059】
変性シリコーンオイルは、基材に形成した硬化膜の表面に過剰にブリードすることがない。このため、硬化膜の表面のべたつきや、硬化膜の表面を通してのオイルの移行を抑えることができる。変性シリコーンオイルの中でも、活性エネルギー線硬化性の照射により硬化する化合物が好ましく、例えば、シリコーンポリエーテルアクリレート、及びポリエーテル変性シロキサンコポリマー及びエポキシ変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0060】
有機溶剤としては、例えば、エステル類、ケトン類、環状エーテル類、アミド類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、ジエチレングリコールエステル類、脂肪族炭化水素類、及びアルコール類が挙げられる。
【0061】
エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0062】
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンが挙げられる。環状エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、及びジオキサンが挙げられる。アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0063】
芳香族炭化水素類としては、例えば、キシレン、トルエン、及びソルベントナフサが挙げられる。
グリコールエーテル類としては、例えば、プロピレングリコールメチルエーテル、及びエチルセロソルブが挙げられる。
【0064】
ジエチレングリコールエステル類としては、例えば、カルビトールアセテートが挙げられる。
脂肪族炭化水素類としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、及びミネラルスピリットが挙げられる。
【0065】
アルコール類としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、及びプロピルアルコールが挙げられる。
活性エネルギー線硬化型組成物中における表面張力調整剤の含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上である。活性エネルギー線硬化型組成物中における表面張力調整剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下である。
【0066】
活性エネルギー線硬化型組成物には、重合禁止剤を含有させることもできる。重合禁止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ニトロソアミン系化合物、ヒドロキノン系化合物、ベンゾキノン系化合物、リン系化合物、及び硫黄系化合物が挙げられる。
【0067】
活性エネルギー線硬化型組成物には、フィラーを含有させることもできる。フィラーを含有させることにより、硬化膜の表面の滑り性や耐擦過性を高めることができる。また、フィラーを含有させることにより、艶消しの硬化膜を得ることができる。フィラーとしては、例えば、体質顔料、及び樹脂ビーズが挙げられる。体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、球状シリカ、及び中空シリカが挙げられる。
【0068】
活性エネルギー線硬化型組成物には、着色成分を含有させることもできる。着色成分としては、例えば、顔料及び染料が挙げられる。顔料は、有機顔料であってもよいし、無機顔料であってもよい。無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、及び炭酸カルシウムが挙げられる。有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、レーキ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系赤色顔料、イソインドリノン系顔料、ピランスロン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キノフタロン系有機顔料、及びイソインドリン系顔料が挙げられる。染料としては、例えば、直接染料、反応染料、酸性染料、カチオン染料、ナフトール染料、及び分散染料が挙げられる。
【0069】
活性エネルギー線硬化型組成物にフィラーや着色成分を含有させる場合、必要に応じて分散剤を用いることができる。分散剤としては、例えば、高分子型分散剤、及び低分子型分散剤が挙げられる。
【0070】
活性エネルギー線硬化型組成物は、無色透明な硬化膜又は有色透明な硬化膜を形成する用途に用いることができる。この場合、活性エネルギー線硬化型組成物が顔料を含有すると、活性エネルギー線照射時に顔料によって活性エネルギー線が物理的に遮蔽されるおそれがある。この点、活性エネルギー線硬化型組成物は、顔料を含まないことが好ましい。この場合、顔料によって活性エネルギー線が物理的に遮蔽されることを防ぐことができ、活性エネルギー線による反応性を高めることができる。
【0071】
<活性エネルギー線硬化型組成物が適用される基材>
活性エネルギー線硬化型組成物が適用される基材は、特に限定されない。基材としては、例えば、紙基材、樹脂基材、金属基材、ガラス基材、ゴム基材、及びセラミックス基材が挙げられる。紙基材としては、例えば、コート紙、アート紙、微塗工紙、上質紙、及び合成紙が挙げられる。樹脂基材の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、及び塩化ビニル樹脂が挙げられる。樹脂基材の形状としては、例えば、フィルム、シート、プレート、及びその他の成形物が挙げられる。金属基材の金属としては、例えば、ステンレス、アルミニウム、鉄、及び銅が挙げられる。金属基材の形状としては、例えば、プレート、及びその他の成形物が挙げられる。
【0072】
活性エネルギー線硬化型組成物が適用される基材は、例えば文字、写真、イラスト、図、又は記号等の情報が記録された記録物であってもよい。情報の記録方法は、特に限定されない。情報の記録方法としては、例えば、インクジェット印刷、オフセット印刷、トナー印刷、フレキソ印刷、昇華印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、パッド印刷、スプレー塗布、及び刷毛、筆塗布が挙げられる。
【0073】
基材は、異種材料が複合された基材であってもよい。異種材料が複合された基材としては、例えば、金属やセラミックスを樹脂フィルムに蒸着した蒸着フィルムが挙げられる。
<活性エネルギー線硬化型組成物の使用方法>
活性エネルギー線硬化型組成物を基材に塗布することで塗布層を形成し、塗布層を活性エネルギー線により硬化させることで、基材上に硬化膜を形成することができる。基材上に塗布層を形成する方法としては、例えば、インクジェット印刷、オフセット印刷、ロールコーター印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、パッド印刷、スプレー塗布、及び刷毛塗布が挙げられる。
【0074】
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、インクジェット印刷用途に好適に用いることができる。
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物を基材に塗布した塗布層は、特に限定されない。塗布層の厚さは、例えば、30μm以下であってもよく、25μm以下であってもよい。なお、ここでいう塗布層の厚さは、単層の厚さであり、活性エネルギー線硬化型組成物を基材に塗布、硬化を繰り返すことで、例えば、500μm以上の硬化膜を形成してもよい。
【0075】
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物を基材に塗布した塗布層の厚さは、上記のように比較的薄い塗布層であってもよい。このような比較的薄い塗布層は、活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェット印刷によって基材に塗布することで容易に形成することができる。
【0076】
なお、硬化膜は、単層構造であってもよいし、複数の硬化膜を重ねて形成した複層構造であってもよい。
活性エネルギー線硬化型組成物に着色成分を含有させる場合、活性エネルギー線硬化型組成物をインクや塗料として用いることができる。この場合、硬化膜により、例えば、文字、写真、イラスト、図、又は記号を形成することができる。
【0077】
活性エネルギー線硬化型組成物に着色成分を含有させない場合、活性エネルギー線硬化型組成物は、加飾インク、オーバープリントニス、アンダーコート剤、接着剤として使用することができる。加飾インクは、基材の意匠性や訴求性を高める用途で使用される。オーバープリントニスは、基材を保護したり、基材に光沢感やマット感といった意匠性を付与したりする用途で使用される。アンダーコート剤としては、例えば、基材の密着性や濡れ性を向上させるプライマーが挙げられる。接着剤は、対象となる基材同士の貼り合わせや、対象となる基材及び図柄を転写する用途で使用される。
【0078】
<本実施形態の作用及効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)活性エネルギー線硬化型組成物は、(A)ラジカル重合性化合物、(B)光重合開始剤、及び(C)アミン系化合物を含有する。(B)光重合開始剤は、(B1)硫黄系化合物と、(B2)アシルホスフィンオキシド系化合物とを含む。(B1)硫黄系化合物は、スルホン系化合物及びチオベンゾイル系化合物の少なくとも一方である。
【0079】
この構成によれば、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化性を高めることが可能となる。詳述すると、(B1)硫黄系化合物のスルホン系化合物は、ラジカル発生点となる硫黄原子を有することにより、反応性の高いスルホン酸ラジカルを生成すると推測される。(B1)硫黄系化合物のチオベンゾイル系化合物は、ラジカル発生点となるチオベンゾイル基のケトン基に連なる共役系に硫黄原子を有することにより、反応性の高いチオラジカルを生成すると推測される。また、(B2)アシルホスフィンオキシド系化合物は、活性エネルギー線硬化型組成物が塗布された基材との界面において活性エネルギー線硬化型組成物の硬化を促進すると推測される。
【0080】
ここで、(A)ラジカル重合性化合物のラジカル重合は、活性エネルギー線硬化型組成物中に溶存する酸素や雰囲気中の酸素を要因として阻害され易い。この点、(C)アミン系化合物は、ラジカル重合が酸素を要因として阻害されることを低減すると推測される。すなわち、(C)アミン系化合物は、(B1)硫黄系化合物及び(B2)アシルホスフィンオキシド系化合物による反応を促進することで、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化性を向上させると推測される。
【0081】
(2)(C)アミン系化合物は、上述した(C1)アミノ変性化合物及び(C2)芳香族アミン系化合物の少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化性をより向上させることが可能となる。
【0082】
(3)活性エネルギー線硬化型組成物中における(B)光重合開始剤の含有量は、4.2質量%以上であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型組成物中における(B1)硫黄系化合物の含有量は、0.4質量%以上であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型組成物中における(B2)アシルホスフィンオキシド系化合物の含有量は、0.7質量%以上であることが好ましい。この場合、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化性をより向上させることが可能となる。
【0083】
(4)(B)光重合開始剤は、(B3)チオキサントン系化合物をさらに含むことが好ましい。この場合、例えば、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化性をより向上させることが可能となる。詳述すると、(B3)チオキサントン系化合物は、チオベンゾイル系化合物と同様に、ラジカル発生点となるケトン基に連なる共役系に硫黄原子を有することにより、反応性の高いチオラジカルを生成すると推測される。
【0084】
また、(C)アミン系化合物は、(B3)チオキサントン系化合物による反応を促進することで、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化性を向上させると推測される。
ここで、活性エネルギー線硬化型組成物中における(B3)チオキサントン系化合物の含有量は、1.0質量%以下の場合、(B3)チオキサントン系化合物を要因とした硬化膜の黄変を抑えることが可能となる。
【0085】
(5)(A)ラジカル重合性化合物の官能基数は、1~3であることが好ましい。この場合、活性エネルギー線硬化型組成物を低粘度化することが可能となる。従って、例えば、活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェット印刷によって基材に適用する用途に用いた場合、インクジェットヘッドからの吐出性を向上させることができる。ここで、(A)ラジカル重合性化合物の官能基数が比較的少ない場合、活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させるために必要なエネルギーが増大する傾向となる。このような場合であっても、上述したように本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物では、硬化性を高めることが可能となるため、エネルギーの消費量を抑えることが可能となる。
【0086】
(6)活性エネルギー線硬化型組成物を記録物上に塗布した塗布層に活性エネルギー線を照射した場合、記録物中の着色材に活性エネルギー線が吸収され易い。すなわち、活性エネルギー線は、記録物の表面で反射し難いため、塗布層から硬化膜を形成するための活性エネルギー線のエネルギー消費量が増大する傾向となる。上述した本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物では、硬化性を高めることができるため、記録物上に硬化膜を形成する用途においてエネルギー消費量を抑えるという観点で有利となる。
【0087】
(7)活性エネルギー線硬化型組成物は、顔料を含まないことが好ましい。この場合、活性エネルギー線の照射による反応性を高めることができるため、エネルギー消費量を抑えることができる。
【0088】
(8)活性エネルギー線硬化型組成物は、インクジェット印刷用途に用いられることが好ましい。この場合、より薄膜化された硬化膜を効率的に得ることができる。ここで、活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェット印刷することにより、比較的薄い塗布層を形成した場合、(A)ラジカル重合性化合物の重合が活性エネルギー線硬化型組成物中の酸素や雰囲気中の酸素を要因として阻害され易くなる。本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、上述したように(C)アミン系化合物を含有するため、(A)ラジカル重合性化合物の重合が上記酸素を要因として阻害されることを低減すると推測される。このため、インクジェット印刷用途において膜の硬化性を改善する点で特に有利である。
【0089】
(9)活性エネルギー線硬化型組成物にポリマーを含有させることにより、例えば、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化性、硬化膜の光沢性、硬化膜の柔軟性、基材と硬化膜との密着性等の性能を高めることが可能となる。
【実施例
【0090】
次に、実施例及び比較例を説明する。以下、実施例3,4,6,7は、特許請求の範囲に係る発明の参考として示す参考例である。
(実施例1~16)
実施例1~16では、表1及び表2に示す組成となるように各原料を容器に入れ、40~50℃の湯浴中で固形物がなくなるまで撹拌した後、ガラス繊維ろ紙(アドバンテック東洋社製、商品名:GS-25)を用いてろ過することにより活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。
【0091】
表1及び表2中、組成を示す数値の単位は、質量%である。また、表1及び表2中の略号は以下のとおりである。
“重合性化合物A1”は、(A1)第1重合性化合物であり、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒社製、商品名:VEEA)である。
【0092】
“重合性化合物A2”は、(A2)第2重合性化合物であり、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート(サートマー社製、商品名:SR9087)である。
“重合性化合物A3”は、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステルA-HD-N)である。
【0093】
“重合性化合物A4”は、イソオクチルアクリレート(サートマー社製、商品名:SR440)である。
“光重合開始剤B11”は、(B1)硫黄系化合物のスルホン系化合物であり、1-[4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン(IGM Resins社製、商品名:ESACURE1001M)である。
【0094】
“光重合開始剤B12”は、(B1)硫黄系化合物のチオベンゾイル系化合物であり、4-ベンゾイル4´-メチルジフェニルスルフィド(IGM Resins社製、商品名:OMNIRAD BMS)である。
【0095】
“光重合開始剤B13”は、(B1)硫黄系化合物のチオベンゾイル系化合物であり、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(RAHN社製、商品名:GENOCURE PMP)である。
【0096】
“光重合開始剤B21”は、(B2)アシルホスフィンオキシド系化合物であり、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins社製、商品名:OMNIRAD 819)である。
【0097】
“光重合開始剤B22”は、(B2)アシルホスフィンオキシド系化合物であり、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(IGM Resins社製、商品名:OMNIRAD TPO)である。
【0098】
“光重合開始剤B3”は、(B2)チオキサントン系化合物であり、2-イソプロピルチオキサントン(DKSHジャパン社製、商品名:Lunacure 2-ITX)である。
【0099】
“光重合開始剤B4”は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(DKSHジャパン社製、商品名:Lunacure200)である。
“アミン系化合物C1”は、(C1)アミン系化合物のアミノアクリレートオリゴマー(ダイセル・オルネクス社製、商品名:EBECRYL80)である。
【0100】
“アミン系化合物C2”は、(C2)アミン系化合物の芳香族アミン系化合物(RAHN社製、商品名:GENOPOL AB-2)である。
“ポリマー”は、ケトン樹脂(EVONIK Industries AG社製、商品名:TEGO VARIPLUS SK)である。
【0101】
“表面張力調整剤”は、ポリエーテル変性シロキサンコポリマー(EVONIK Industries AG社製、商品名:TEGO GLIDE 440)である。
“重合禁止剤”は、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(BASF社製、商品名:Irganox 1010)である。
【0102】
(比較例1~7)
比較例1~7では、表3に示すように組成を変更した以外は、実施例1~16と同様にして活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。表3中、組成を示す数値の単位は、質量%である。
【0103】
表3中の“光重合開始剤B5”は、ベンゾフェノン(RAHN社製、商品名:GENOCURE BP)である。
(硬化性の評価)
硬化性評価用の印刷物として、コート紙(王子マテリア社製、商品名:OKスーパーポスト)にプロダクションプリンター(富士ゼロックス社製、商品名:Versant180Press)を用いて、CMYKの各色の100%ベタ画像をそれぞれ印刷したものを準備した。次に、バーコーターを用いて、実施例1の活性エネルギー線硬化型組成物を硬化性評価用の印刷物上に塗布し、メタルハライドランプを用いて紫外線を照射することで、平均厚さ5μmの膜を得た。その後、膜の表面を紙ワイパーで6kgf/cmの圧力で10往復擦った。10往復擦っても、膜の表面に傷がつかない場合、硬化膜が得られたと判定した。一方、10往復擦ると膜の表面に傷が付く場合、硬化性評価用の印刷物の印刷層とともに膜が削り取られる場合、又は膜の表面がべたつく場合、膜が未硬化であると判定した。
【0104】
硬化膜が得られる紫外線の照射条件に基づいて、以下のように硬化性の評価を行った。
紫外線の積算光量が100mJ/cm以下の照射条件で硬化した場合:硬化性が非常に優れる(◎)。
【0105】
紫外線の積算光量が101mJ/cm以上、120mJ/cm以下の照射条件で硬化した場合:硬化性が優れる(〇)。
紫外線の積算光量が120mJ/cmの照射条件で未硬化の場合:硬化性が劣る(×)。
【0106】
実施例2~16及び比較例1~7の活性エネルギー線硬化型組成物についても、実施例1の活性エネルギー線硬化型組成物と同様に、硬化性の評価を行った。硬化性の評価結果を表1~表3に示す。
【0107】
(黄変の評価)
バーコーターを用いて、実施例1の活性エネルギー線硬化型組成物を無地のコート紙(王子マテリア社製、商品名:OKスーパーポスト)上に塗布し、メタルハライドランプを用いて積算光量120mJ/cmの照射条件で紫外線を照射することで、平均厚さ15μmの硬化膜を得た。
【0108】
得られた硬化膜を室温下で1日放置した後、硬化膜の黄色度(YI:ASTM E313)とコート紙の未塗工面の黄色度を分光測色計(コニカミノルタ社製:CM-5)で測定した。硬化膜の黄色度とコート紙の未塗工面の黄色度の差から黄変度(ΔYI)を算出した。
【0109】
算出した黄変度から、以下のように黄変の評価を行った。
黄変度(ΔYI)が10.0以下の場合:優れる(◎)。
黄変度(ΔYI)が10.1以上、15.0以下の場合:良好(〇)。
【0110】
黄変度(ΔYI)が15.1以上の場合:不良(×)。
実施例2~16及び比較例1~7の活性エネルギー線硬化型組成物についても、実施例1の活性エネルギー線硬化型組成物と同様に黄変の評価を行った。黄変の評価結果を表1~表3に示す。比較例1~8のうち、120mJ/cmの照射条件で未硬化であり、膜の表面にべたつきが残っている場合は、評価不能(-)と判定した。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
実施例1~16の活性エネルギー線硬化型組成物は、比較例1~7の活性エネルギー線硬化型組成物よりも、硬化性に優れることが分かる。
【0114】
実施例13~15の活性エネルギー線硬化型組成物は、実施例16の活性エネルギー線硬化型組成物よりも、黄変度を低く抑えることができることが分かる。この結果から、(B3)チオキサントン系化合物の含有量が1.0質量%以下の場合、(B3)チオキサントン系化合物を要因とした硬化膜の黄変を抑えることが可能となる。