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特許7362144再生ケイ酸アルミニウム材及び、再生ケイ酸アルミニウム材を含む粒子状混合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】再生ケイ酸アルミニウム材及び、再生ケイ酸アルミニウム材を含む粒子状混合物
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/26 20060101AFI20231010BHJP
   C04B 35/16 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
C01B33/26
C04B35/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021506050
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2019059867
(87)【国際公開番号】W WO2019201966
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】18167919.2
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18167910.1
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18167937.4
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520404573
【氏名又は名称】ベコー アイピー ホールディングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セヴェリン,エリック
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-063172(JP,A)
【文献】特開平10-025171(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103833331(CN,A)
【文献】CHANDRA, Navin et al,Waste Management,2008年,Vol.28,PP.1993-2002,DOI:10.1016/j.wasman.2007.09.001
【文献】SOKOLAR, Radomir et al.,Ceramics International,2010年,Vol.36,PP.215-221,DOI:10.1016/j.ceramint.2009.07.009
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20-33/46
C04B 35/16
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック物品の製造において使用するのに適した粒子状混合物であって、当該粒子状混合物が、
40wt%~70wt%の再生ケイ酸アルミニウム材、及び
30wt%~60wt%の、クレイ(パイロフィライトクレイを除く)、頁岩(シェール)、長石、及びそれらの任意の組み合わせから選択される物質
を含むものであり、
ここで、前記再生ケイ酸アルミニウム材が、以下の粒度分布を有するものである
(i)10μm~30μmの粒子径d50
(ii)40μm未満の粒子径d70;及び
(iii)60μm未満の粒子径d98
粒子状混合物
【請求項2】
前記再生ケイ酸アルミニウム材が、再生材料の少なくとも99wt%が75μm未満の粒径を有する粒度分布を有する、請求項1に記載の粒子状混合物
【請求項3】
前記再生ケイ酸アルミニウムが、
(a)1.0%~5.0%の可燃性炭素;及び
(b)0.5%~3.0%の酸化鉄
を含む、請求項1又は2に記載の粒子状混合物
【請求項4】
前記再生ケイ酸アルミニウム材が、以下の粒度分布:
(i)10μm~25μmの範囲の粒子径d50
(ii)30μm未満の粒子径d70;及び
(iii)55μm未満の粒子径d98
を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の粒子状混合物
【請求項5】
前記再生ケイ酸アルミニウム材が、石炭燃焼生成物に由来する、請求項1~4のいずれか1項に記載の粒子状混合物
【請求項6】
前記粒子状混合物が、以下の粒度分布:
(i)10μm~30μmの粒子径d50
(ii)50μm未満の粒子径d70;及び
(iii)75μm未満の粒子径d98
を有する、請求項のいずれか1項に記載の粒子状混合物。
【請求項7】
前記粒子状混合物が、さらにガラスを含み、
ここで、クレイ(パイロフィライトクレイを除く)、頁岩、長石、及びガラスの合計量が、60wt%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の粒子状混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生ケイ酸アルミニウム材及び、再生ケイ酸アルミニウム材を含む粒子状混合物に関する。この粒子状混合物及び再生ケイ酸アルミニウム材は、セラミック物品の製造、特にセラミック磁器質床タイルの製造において使用するのに適している。
【背景技術】
【0002】
セラミック製造において使用できる粒子状混合物に、リサイクル材料(再生ケイ酸アルミニウム材など)を使用することについて関心が寄せられている。再生ケイ酸アルミニウム材は、典型的には、石炭燃焼生成物、例えばフライアッシュから得られる。これは環境に対する利点を有する。
【0003】
しかしながら、セラミック物品、特にセラミック磁器質床タイルの製造におけるそのような再生ケイ酸アルミニウム材の使用は、特に、高濃度で使用された場合、特にグレーズドセラミック物品のグレーズについての問題を生じる可能性がある。これは、特に、大規模製造プロセスに関連する。
【0004】
再生ケイ酸アルミニウム材の使用は、従来のセラミック組成物と比べて、製造プロセスにより大きなばらつきを生じる。このより大きなばらつきは、高濃度の再生ケイ酸アルミニウム材が使用される場合、より大きな影響を与える。
【0005】
セラミック物品、特にセラミック磁器質床タイルは、一貫性のない様式及び/又は過度に縮む可能性があり、これは次に内部応力の原因となり得る。これは、例えば、破損のような欠陥、または、例えば、取り扱いの際に破損しやすい弱い内部構造をもたらしうる。
【0006】
他の問題として、ブラックコアリング(black coring)、及び不適切な吸水性が挙げられる。これは、特にセラミック磁器質床タイルにとって重要である。
【0007】
本発明は、再生ケイ酸アルミニウム材及び、セラミック物品、特にセラミック磁器質床タイルを製造するのに使用可能な粒子状混合物であって、再生ケイ酸アルミニウム材を含み、しかも、ブラックコアリング(黒芯形成)がなく、収縮がわずかで、優れた(すなわち、低い)吸水性を示す粒子状混合物を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、粒度分布、特に粒子径d50をコントロールし、ブラックコアリングを回避し、最適な収縮及び低い吸水率を有する良好な特性を提供する。小さすぎる粒径の使用は、望まないブラックコアリングと過度の収縮をもたらす一方、粒径を大きくしすぎると、ガラス化の不足により不適切な(高い)吸水性をもたらす。これらは非常に質の悪いセラミック物品(磁器質床タイルなど)をもたらす。本発明で要求される粒度分布、特に粒子径d50の使用は、これらの問題を克服し、ブラックコアリングが無く、許容範囲の収縮と、非常に低い吸水性を有するセラミック物品を提供する。これは、セラミック磁器質床タイル及びそれらの製造にとって非常に望ましい。セラミック磁器質床タイルは、強度が高く、水に不浸透性である必要があり、加えて、それらは特にブラックコアリングの問題の影響を受けやすい。これらの理由から、本発明の粒子状混合物及び再生ケイ酸アルミニウム材は、特に、セラミック磁器質床タイル、及び特にセラミックグレス(gres)磁器質床タイルの製造において、使用するのに適している。
【0009】
本発明は、優れた特性を有するセラミック磁器質床タイルなどのセラミック物品への、再生ケイ酸アルミニウム材の組み込みを可能にする粒子状混合物及び再生ケイ酸アルミニウム材を提供する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、セラミック物品の製造において使用するのに適した再生ケイ酸アルミニウム材に関するものであり、前記再生ケイ酸アルミニウム材は、以下の粒度分布を有している:
(i)粒子径d50が10μm~30μmであり;
(ii)粒子径d70が40μm未満であり;及び
(iii)粒子径d98が60μm未満である。
本発明は、セラミック物品の製造において使用するのに適した、上記再生ケイ酸アルミニウム材を含む粒子状混合物にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
粒子状混合物:
典型的には、粒子状混合物は、セラミック物品の製造に使用するのに適しており、特にセラミック磁器質床タイル製造に使用するのに適している。典型的には、セラミック製造プロセスは、粒子状混合物を液圧プレス等のプレス機に運ぶこと、粒子状混合物をグリーン物品へと加圧することを含む。グリーン物品はその後、乾燥機、次に窯(キルン)に運ばれ、焼結又は焼成されてセラミック物品を形成する。当該分野で知られている標準的なセラミック製造プロセスが適切である。
【0012】
粒子状混合物は、典型的には、30wt%~80wt%の再生ケイ酸アルミニウム材、好ましくは、50wt%より多く80wt%以下、又は60wt%~80wt%、あるいは70wt%~80wt%の再生ケイ酸アルミニウム材を含む。粒子状混合物は、30wt%~75wt%、又は30wt%~70wt%、又は35wt%~75wt%、又は35wt%~70wt%、又は40wt%~75wt%、又は40wt%~70wt%の再生ケイ酸アルミニウム材を含んでもよい。再生ケイ酸アルミニウムは、後により詳細に記載される。
【0013】
粒子状混合物は、20wt%~70wt%、又は20wt%~50wt%、又は20wt%~40wt%、又は20wt%~30wt%、又は30wt%~60wt%の、クレイ、頁岩(シェール)、長石、ガラス及びそれらの任意の組み合わせから選択される物質を含む。好ましい物質は、クレイと長石の組み合わせである。適切なクレイは、ウクライナクレイ(Ukrainian clay)等の標準的なクレイである。好ましいクレイは、標準的なクレイと高塑性クレイの組み合わせである。標準的なクレイと高塑性クレイの重量比は、2:1~5:1の範囲内であってもよい。適切なクレイは、ベントナイトクレイ等の高塑性クレイである。典型的には、高塑性クレイは、25.0より高いAttterburg塑性指数を有する。典型的には、標準的なクレイは、25.0以下のAttterburg塑性指数を有する。
【0014】
典型的には、粒子状混合物は、以下の粒度分布を有する:
(i)10μm~30μmの粒子径d50
(ii)50μm未満の粒子径d70;及び
(iii)70μm未満の粒子径d98
【0015】
好ましくは、粒子状混合物は、以下の粒度分布を有する:
(i)10μm~25μmの粒子径d50
(ii)30μm未満の粒子径d70;及び
(iii)55μm未満の粒子径d98
【0016】
粒子状混合物の粒子径d50は、典型的には、10μm~30μm、又は10μm~25μm、又は15μm~20μmの範囲である。粒子状混合物の粒子径d70は、典型的には、50μm未満、又は40μm未満、又は30μm未満であり、及び典型的には、15μm~35μm、又は20μmより大きく30μm以下の範囲である。粒子状混合物の粒子径d98は、典型的には、75μm未満、又は70μm未満、又は60μm未満、又は55μm未満であり、及び典型的には、40μm以上60μm未満、又は45μm以上55μm未満の範囲である。
【0017】
粒子状混合物は、粒子径d10が、3μm~12μm、又は4μm~11μmの範囲内である粒度分布も有してよい。粒子状混合物は、粒子径d90が、50μm未満、又は45μm未満、又は40μm未満、又は30μm~40μmの範囲内である粒度分布も有してよい。粒子状混合物は、粒子径d30が、6μm~20μm、又は10μm~15μmの範囲内である粒度分布も有してよい。
【0018】
粒子状混合物の粒度分布は、粉砕、分級、及び/又は配合の任意の組み合わせによってコントロールすることができる。粒子状混合物の粗画分(又はカット)及び微細画分(又はカット)への分離は、空気分級によって都合よく行うことができ、この際、機械篩で使用されるスクリーンを目詰まりさせうるより小さな粒子がある。粗画分と微細画分のサイズは、分級機の操作によって決定できる。典型例は、ホソカワミクロン株式会社のMicron Separator Air Classifierである。機械類は、ローターの遠心力と空気の求心力のバランスをとることによって、粒子を分類することができる。分離される物質は、ファンにより吸気ダクト内へ及びローターまで引き込まれ、そこで2つの相反する力がそれを分類する。より微細な粒子は、より求心力の影響を受けやすく、他方、粗い粒子は、遠心力の影響をより受けやすい。これらの力は、粗物質を機械の内壁の下方へ流し、その物質を粗粒子放出へと移行させて空にする一方、微細な粒子は、気流を通じてローターへと移動し、その後、上部排出ダクトを通じて放出される。内部ローターの回転速度を変更することによって、粗及び微細カットのサイズを、容易に調節することができる。ローターの速度を速めると、粗画分及び微細画分間のスプリット(split)サイズが大きくなる。
【0019】
粉砕システムは、分級機との組み合わせでミルを含むことが非常に多い。これらの分級機は、ミルと密接に一体化されていてもよく(例えば、ホソカワミクロン株式会社のAir Classifier Mill MS 1500 AC)、あるいは、装置の別々の部品であってもよい。適切なミルには、MBE Coal and Mineral社のPalla Vibrating Mill、又はホソカワミクロン株式会社のMikro Pulverizer(登録商標)Hammer & Screen Millが含まれる。粒子の分布は、単に大きさの上限及び下限ではなく、混合物の全体の分布が変更されるように、異なる大きさの画分を選択的に配合することによって調節することができる。
【0020】
粒子状混合物の粒度分布は、任意の適切な粒径制御技術によってコントロールできる。ある適切な技術は空気分級である。
【0021】
本発明において、粒子状混合物の粒度分布は、注意深くコントロールされる。当該分野で既知の、及びセラミック製造プロセスで日常的に使用される標準的なセラミック混合物は、より大きな粒度分布、例えば、63μm以上の粒子径d98を有する。粒子状混合物の粒度分布をコントロールすることによって、本発明は、セラミック製造での使用に適切であり、非常に滑らかな表面を有するセラミック物品をもたらす粒子状混合物を提供する。理論に拘束されることは望まないが、本発明者は、粒子状混合物に存在する可能性があり且つ最終的に得られたセラミック物品の表面に現れ得る不純物が、人の目で容易に認識されなくなることを、本発明で要求される粒子状混合物の粒度分布が確実にすると考える。さらに、本発明で要求される粒度分布は、粒子状混合物中に存在する可燃性不純物が、セラミック製造の加熱段階の間に確実に発火できるようにする。このことは、これらの不純物が、セラミック製造プロセスの焼結段階前に(典型的には物品の孔が閉じる前に)燃え尽きて、ブラックコアリングを確実に回避するのに役立つ。これは、燃焼ガスが物品から抜け出すことを可能にし、これにより物品は、セラミック製造プロセスの間の望まない膨張から保護される。
【0022】
粒子状混合物は、バインダーを、典型的には0.1wt%~3.0wt%のバインダー、又は0.5wt%~2.0wt%のバインダーを含んでもよい。適切なバインダーは、後により詳細に記載される。典型的には、粒子状混合物へのバインダーの組み込みは、粒子状混合物から形成される(例えば、セラミック製造プロセスの間に加圧によって得られる)グリーン物品に、十分な強度を付与する。
【0023】
粒子状混合物は、混合物に十分なせん断力を与えて物質を分散させることができる任意のミキサーで、個々の成分をブレンドすることによって作り出すことができる。適切なミキサーとして、ホソカワミクロン株式会社のFlexomixerシリーズ、又はLoedige CBミキサーなどの高せん断ミキサーが挙げられる。他の適切なミキサーとして、リボンブレンダー又はパドルミキサー又は連続スクリューミキサー等の低せん断ミキサーが挙げられる。適切なミキサーとして、Morton Mixer社のModel 50 X 10リボンブレンダー、及びDynamic Air社のBella Model XNパドルミキサーが挙げられる。ミキサーは連続式であってもバッチ式であってもよい。他の選択肢は、個々の物質を連続的に供給し、空気輸送システムによって運搬する空気圧混合を使用することである。空気輸送システム内で、通常、物質は高度に分散された状態となり、空気流内で十分に混合される。他の適切な種類の連続ミキサーは、搬送スクリューであり、特に混合を強化するための逆混合エレメントを備えたものである。粒子混合物を作る適切な搬送スクリューミキサーの一例は、Hydroscrew社のMESC200モデルである。高せん断ミキサーは、典型的には数秒間で、別々の物質から混合により粒子状混合物を作り出すことができる。低せん断ミキサーは、適切な均質混合物を作り出すのに、典型的には1~10分間の混合を必要とする。粒子状混合物を作る別の可能性のある方法は、個々の物質をグラインダーに供給することである。ミル内で典型的に付与される、高せん断及び強い空気流及び強い混合は、非常に急速に均質な混合物を作り出し、これはその後必要に応じて分級されてもよい。ほとんどのミルは、物質を混合し、及びそれらを粉砕する十分な能力を有し、これには先に記載した任意のミルが含まれる。
【0024】
再生ケイ酸アルミニウムは、クレイ及び/又は長石などの他の成分と、先に記載したミキサー及び方法を使用して混合されることができる。様々な物質が、ミキサーに別々に添加されてもよく、又は主混合の前に処理装置内で事前混合されてもよい。
【0025】
再生ケイ酸アルミニウムを包含する粒子状混合物を製造する好ましい方法は、異なる物質を、粉砕プロセスに供給し、任意の粉砕工程を使用して、空気輸送及び混合と組み合わせて、均質な混合物が形成されるように、個々の物質を配合及び混合することである。
【0026】
他の物質を、粒子状混合物に添加する必要がある場合もある。例えば、ポリマー及び可塑剤が、特定の性質を持たせるため、又は焼成の前にセラミック物品のグリーン強度を増加させるために必要に応じて添加される。粉末形態の任意の物質を上述のように添加することができる。しかしながら、水溶液又は水性懸濁液中の物質は、通常、高せん断ミキサー、例えばFlexomixer又は同様のもの、あるいはLoedige CB中で、添加する必要があるであろう。混合物に添加される液状物質は、通常、粒子混合物全体に液体を微細分散させるための高せん断混合工程を使用することによって、混合物中に微細に分散させる必要がある。
【0027】
完成したセラミック物品に特定の性質を付与するために添加できる他の物質が、混合プロセス中に、粒子状混合物に組み込まれてもよい。
【0028】
好ましくは、粒子状混合物は、噴霧乾燥によって調製されない。このような不適切な噴霧乾燥プロセス工程は、再生ケイ酸アルミニウム材及び他の固体物質(例えばクレイ及び/又は長石)の水性スラリーの形成を伴い、この水性スラリーを噴霧乾燥して粒子状混合物を形成する。このようなプロセスは、かなりの量のエネルギーを伴うため、望ましくない。
【0029】
粒子状混合物は、0.5wt%~8.0wt%、又は1.0wt%~8.0wt%、又は1.0wt%~7.0wt%、又は1.0wt%~6.0wt%、又は1.0wt%~5.0wt%、又は1.0wt%~4.0wt%、又は1.0wt%~3.0wt%の可燃性炭素を含んでもよい。再生ケイ酸アルミニウム材は、2.0wt%より多く8.0wt%以下、又は2.5wt%~7.0wt%の可燃性炭素を含んでもよい。
【0030】
粒子状混合物は、0.5wt%~12.0wt%、又は0.5wt%~11.0wt%、又は0.5wt%~10wt%、又は0.5wt%~9.0wt%、又は0.5wt%~8.0wt%、又は0.5wt%~7.0wt%、又は0.5wt%~6.0wt%、又は0.5wt%~5.0wt%、又は0.5wt%~4.0wt%、又は0.5wt%~3.0wt%、又は0.5wt%~2.0wt%の酸化鉄を含んでもよい。
【0031】
再生ケイ酸アルミニウム材:
典型的には、再生ケイ酸アルミニウム材は、石炭燃焼生成物に由来する。
【0032】
典型的には、再生ケイ酸アルミニウム材は、石炭燃焼生成物(アッシュ等)を、選鉱プロセスにかけることによって得られる。再生ケイ酸アルミニウムは、典型的には、選鉱されたフライアッシュである。
【0033】
典型的には、再生ケイ酸アルミニウム材は、石炭燃焼生成物(アッシュ等)を、初回粒径スクリーン(1mmスクリーン等)にかけて、大きな物体を取り除き、その後、1又は複数のより小さな粒径スクリーン(250μm及び/又は125μm等)にかけて、大きな粒子を取り除くことによって得られる。この選別された物質は、典型的には、その後、酸化鉄含量を減らすために磁気分離工程にかけられる。この磁気分離工程は、第一の磁気分離工程(例えば、8,000ガウス又は8,000付近のガウスにて)、続いて第二の磁気分離工程(例えば、30,000ガウス又は30,000付近のガウスにて)を含んでもよい。あるいは1つの磁気分離工程(例えば、8,000ガウス又は8,000付近のガウスにて)のみが使用されてもよい。この物質はその後、典型的には、炭素削減工程、例えばか焼又は浮遊選鉱、好ましくはか焼にかけられる。物質は、静電選別技術にかけられてもよい。
【0034】
再生ケイ酸アルミニウム材は、典型的には、主にケイ酸アルミニウムである。再生ケイ酸アルミニウム材は、典型的には、可燃性炭素及び酸化鉄を含み;及びさらに、微量の他の物質、例えば、ナトリウム塩及び/又はマグネシウム塩、及び酸化鉄以外の金属酸化物、例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、及び酸化チタン等を含んでもよい。再生ケイ酸アルミニウム材は、典型的には、少なくとも88wt%のケイ酸アルミニウム、好ましくは少なくとも90wt%のケイ酸アルミニウムを含む。可燃性炭素と酸化鉄の量によっては、再生ケイ酸アルミニウムは、少なくとも92wt%、又は少なくとも94wt%、又は少なくとも96wt%、又は少なくとも98wt%のケイ酸アルミニウムを含んでもよい。
【0035】
再生ケイ酸アルミニウム材は、以下の粒度分布を有する。
(i)10μm~30μmの粒子径d50
(ii)40μm未満の粒子径d70;及び
(iii)60μm未満の粒子径d98
【0036】
再生ケイ酸アルミニウム材は、以下の粒度分布を有してもよい。
(i)10μm~25μmの粒子径d50
(ii)30μm未満の粒子径d70;及び
(iii)55μm未満の粒子径d98
【0037】
再生ケイ酸アルミニウム材は、典型的には、リサイクル材の少なくとも99wt%が75μm未満の粒径を有するような粒度分布を有する。再生ケイ酸アルミニウム材は、実質的に全てのリサイクル材が75μm未満の粒径を有するような粒度分布を有してもよい。
【0038】
再生ケイ酸アルミニウム材は、粒子径d10が、3μm~10μm、又は4μm~6μmの範囲内である粒度分布も有してよい。再生ケイ酸アルミニウム材は、粒子径d30が、6μm~20μm、又は10μm~15μmの範囲内である粒度分布も有してよい。再生ケイ酸アルミニウム材は、粒子径d90が、50μm未満、又は45μm未満、又は40μm未満、又は30μm~40μmの範囲内である粒度分布も有してよい。
【0039】
再生ケイ酸アルミニウム材の粒度分布は、粒子状混合物の粒度分布をコントロールするために上述したのと同様の手段によってコントロールできる。再生ケイ酸アルミニウム材の粒度分布は、粉砕、分級及び/又は配合の任意の組み合わせによってコントロールできる。
【0040】
再生ケイ酸アルミニウム材は、
(a)任意で、1.0%~5.0%の可燃性炭素;及び
(b)任意で、0.5%~3.0%の酸化鉄
を含んでもよい。
【0041】
再生ケイ酸アルミニウム材は、0.5wt%~8.0wt%、又は1.0wt%~8.0wt%、又は1.0wt%~7.0wt%、又は1.0wt%~6.0wt%、又は1.0wt%~5.0wt%、又は1.0wt%~4.0wt%、又は1.0wt%~3.0wt%の可燃性炭素を含んでもよい。再生ケイ酸アルミニウム材は、2.0wt%より多く8.0wt%以下、又は2.5wt%~7.0wt%の可燃性炭素を含んでもよい。
【0042】
好ましい再生ケイ酸アルミニウム材の一例は、石炭燃焼生成物から可燃性炭素のすべてを除去し、次いでこの無-可燃性炭素材料に、可燃性炭素を添加することによって得られる。このようにして、再生ケイ酸アルミニウム材中に存在する可燃性炭素の量を、注意深く、且つ確実に制御することができる。
【0043】
再生ケイ酸アルミニウム材中に存在する可燃性炭素の量は、か焼、静電除去、及び浮遊選鉱技術(例えば、泡沫-空気(froth-air)浮遊選鉱技術)などの技術によって、コントロールすることができ、典型的には低減することができる。
可燃性炭素レベルをコントロールするこのようなプロセスは、当該分野で十分に知られている。
【0044】
物質をか焼して炭素レベルを低下させる適切な装置として、サウスカロライナ州、レキシントンのSEFA Groupによって供給されているStaged Turbulent Air Reactorsが挙げられる。これらのリアクタは、さらに残留炭素を燃やし尽くすために、受け入れたアッシュを加熱する。
【0045】
よく使用される別の技術は、摩擦静電(triboelectrostatic)選別であり、これにより、特に粉砕後、静電分離器を通過させることによって、炭素粒子を、バルクアッシュ材から除去することができる。炭素粒子を、非炭素粒子とは反対の電荷を有するように帯電させることができ、その後、アッシュ材を静電分離器に通すことによって、除去することができる。このために適切な装置として、マサチューセッツ州、ニーダムのST Equipment and Technologies社によって供給されているSTETセパレーターが挙げられる。
【0046】
適切な泡沫浮遊選鉱装置として、FLSmidthによって供給されているDorr-Oliver and Wemcoユニットが挙げられる。
【0047】
これらのプロセスは全て、過度に高い炭素レベルを低下させることができる。か焼プロセスにおいて、作動温度を上昇させると、炭素レベルはさらに低下するであろう。静電選別において、分離ユニットで使用される電圧を上昇させること、及び分離器に入る物質の粉砕の程度を増加させることは、炭素レベルをさらに減らすために利用可能である。
【0048】
泡沫浮遊選鉱プロセスにおいて、流入材料の粉砕の程度を増加させて、未燃焼炭素粒子をさらにリリースすること、使用する空気の量を増加させること、及び界面活性剤などの添加剤を使用することは、いずれも、炭素レベルの減少を制御するために利用可能である。
【0049】
炭素レベルは、微細に粉砕した可燃性炭素リッチ材料を、粒子状混合物に添加することによって増加させることができる。粒子状混合物の調製に関与する任意の粉砕工程に、可燃性炭素リッチ材料を添加することが特に好ましいと思われる。可燃性炭素リッチ材料が、可燃性炭素リッチのアッシュから前もって抽出された材料であることも、好ましい。これは効率を最大化する。粉砕した石炭等の他の原料も、当然使用できる。好ましくは、粒子状混合物中の可燃性炭素リッチ材料の粒径は、粒子状混合物中に存在する他の材料の粒径と同程度である。
【0050】
再生ケイ酸アルミニウム材は、0.5wt%~12.0wt%、又は0.5wt%~11.0wt%、又は0.5wt%~10wt%、又は0.5wt%~9.0wt%、又は0.5wt%~8.0wt%、又は0.5wt%~7.0wt%、又は0.5wt%~6.0wt%、又は0.5wt%~5.0wt%、又は0.5wt%~4.0wt%、又は0.5wt%~3.0wt%、又は0.5wt%~2.0wt%の酸化鉄を含んでもよい。
【0051】
好ましい再生ケイ酸アルミニウム材の一例は、石炭燃焼生成物から酸化鉄のすべてを除去し、次いでこの無-酸化鉄材料に、酸化鉄を添加することによって得られる。このようにして、再生ケイ酸アルミニウム材中に存在する酸化鉄の量を、注意深く、且つ確実に制御することができる。
【0052】
再生ケイ酸アルミニウム中の酸化鉄の量は、典型的には、粒子状混合物中の酸化鉄レベルを検出し、もしそれが規格外あれば、次に再生ケイ酸アルミニウムから除去する酸化鉄の量を増加させるか、又はケイ酸アルミニウムに酸化鉄リッチ材料を添加するプロセスによってコントロールされる。
【0053】
酸化鉄量は、再生ケイ酸アルミニウムを、1又は複数の磁気選別機に通すことによって低下させることができる。これらは、再生ケイ酸アルミニウムの通過流に磁場をかけ、これにより、酸化鉄等の磁気の影響を受けやすい物質をバルク流から除去する。マグネタイト等の磁性物質は、10,000ガウス(=1テスラ)以下の強度の低い磁場を使用して除去することができる。ヘマタイト(赤鉄鉱)等の磁気の影響を受けにくい鉱物も、磁気分離を使用して取り出せるが、通常、最大で2又は3テスラのはるかに高い磁場強度を必要とする。しばしば磁気分離プロセスは、低強度の分離工程、続いて高強度の分離工程を使用する。再生ケイ酸アルミニウムから酸化鉄を取り出すのに適切な装置として、中国、広東省、フォーシャン市のFoshan Wandaye Machinery Equipment社製の磁気選別機のWDY種が挙げられる。WD-7A-300モデルが使用できた。磁気分離は、ウェットスラリーでも行うことができるが、これは、二次乾燥工程を必要とするため、再生ケイ酸アルミニウムを処理する好ましいルートではない。
【0054】
再生ケイ酸アルミニウム中の酸化鉄量は、再生ケイ酸アルミニウムへ酸化鉄リッチ材料を制御しながら添加することによって増加できる。マグネタイト又はヘマタイト等の酸化鉄鉱物が最も好ましいが、他の供給源も使用できる。特に好ましい供給源は、過剰に高いレベルの酸化鉄を有する再生ケイ酸アルミニウムの前処理によって取り出された酸化鉄の再利用である。好ましくは、酸化鉄リッチ粒子は、均一性を確保するために、再生ケイ酸アルミニウムと同程度の大きさを有する。酸化鉄リッチ材料は、均一性を補助するため、任意の混合又は粉砕工程前に、再生ケイ酸アルミニウムに添加されてもよい。
【0055】
好ましくは、再生ケイ酸アルミニウム材は、
(a)1.0%~3.0%の可燃性炭素;及び
(b)0.5%~2.0%の酸化鉄
を含む。
【0056】
可燃性炭素:
一般的に、可燃性炭素は、強熱減量(LOI:loss on ignition)法によって測定できる炭素である。この可燃性炭素は、粒子状混合物中で注意深く制御される必要がある。再生ケイ酸アルミニウム材は、不燃性炭化物等の不燃性炭素を、一般的には非常に低濃度(微量)で含んでもよい。
【0057】
酸化鉄:
典型的には、酸化鉄含量は、蛍光X線分光法(XRF)によって測定される。
【0058】
バインダー:
適切な任意のバインダーは、有機バインダーである。適切な有機バインダーとして、ポリビニルアルコール、流動化剤(superplasticizer)、メチルセルロース、カルボメトキシセルロース、又はデキストリンが挙げられる。他のバインダーは、当業者に周知である。有機バインダーは液状であってもよい。
【0059】
可燃性炭素含量の測定方法:
可燃性炭素のレベルは、ASTM D7348による強熱減量(LOI)試験によって測定される。この試験では、サンプルを乾燥するために、まず1gのフライアッシュを150℃で乾燥する。このサンプルをその後冷却し、秤量する。次に、サンプルを2時間かけて段階的に500℃に達するまで加熱する。
【0060】
酸化鉄含量の測定方法:
酸化鉄のレベルは、蛍光X線によって測定される。再生ケイ酸アルミニウムの典型的な粒径は十分に小さく、この技術は精密測定に適している。この技術は、高エネルギーガンマ線又はX線を使用してサンプルを励起することで機能する。これは、存在する原子のイオン化を引き起こし、これは次いで原子の種類によって決まる固有周波数EM放射線を放射する。異なる周波数の強度分析は、元素分析を行うことを可能にする。適切な装置は、オリンパスによって供給されているXRF分析計のVartaシリーズである。この装置は、元素鉄を検出し、結果は最も一般的には、対応するFe23レベルに換算される。
【0061】
粒度分布の測定方法:
粒度分布は、レーザー回析によって測定される。レーザー回析による粒径分析の望ましい基準は、ISO 8130-13の「Coating powders - Part 13. Particle size analysis by laser diffraction」に示されている。この基準に適合している適切な分析機は、米国、カリフォルニア州、アーバインのHoriba Instruments社;英国、ウースターシャーのMalvern Instruments社;ドイツ、クラウスタール・ツェラーフェルトのSympatec社;米国、カリフォルニア州、フラートンのBeckman-Coulter社によって製造されている。適切な粒径分析機は、Malvern Instruments社のMastersizer 2000である。典型的には、試験物質が初めに液体に分散されるウェット法ではなく、物質が粉末流として試験される「ドライ」分析技術が使用される。測定は、通常、製造者の取扱説明書及び試験手順に従って行われる。
【0062】
結果は、一般的には、ISO 9276-1:1998の「Representation of results of particle size analysis - Part 1: Graphical Representation」、図4A、「Cumulative distribution Q3 plotted on graph paper with a logarithmic abscissa」に従って表される。
【0063】
[実施例]
同量の再生ケイ酸アルミニウム材、クレイ及び長石を含むが、粒度分布の異なる3つのセラミック組成物を準備し、同じ寸法と重量を有するグリーンセラミック試験物品を形成した。
【0064】
これらのグリーン試験物品をその後全て、オーブンで同時に焼成することにより、同一の条件にかけた。得られたセラミック物品を、ブラックコアリングの兆候について、及び吸水率について試験した。試験は、本発明の粒度分布を有する組成物のみが、ブラックコアリング又は許容できないほど高い吸湿を示さない、許容範囲のセラミックスを作ることを明らかにした。
【0065】
3.0wt%のFe23及び7.6wt%の炭素を含む、再生ケイ酸アルミニウム材の3つのサンプルを、クレイ及び曹長石と混合し、以下の特性を有する混合物を得た。再生ケイ酸アルミニウム試験物質の粒度分布、酸化鉄量及び炭素量を、以下に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
次にそれぞれの再生ケイ酸アルミニウム材を、表示量のクレイ及び長石と混合し、以下の組成と特性を有する3つの試験バッチを得た。
【表2】
【0068】
3つの組成物を、その後、セラミック試験物品を作るために使用した。10gの各混合物を、0.8gの10wt%のデキストリン水溶液と混合し、各ウェット混合物を、40MPaの圧力で加圧して、直径26mm・厚み10mmのディスク状試験セラミックとした。サンプルディスクを110℃で一定の重量になるまで乾燥し(約4時間)、その後、まとめてオーブン中で、3℃/分の一定の勾配にて、1230℃の温度まで焼成し、15分間最高温度で保ち、その後7時間冷ました。
【0069】
この後、サンプルをブラックコアリングの痕跡について目視検査し、ISO 10545-3に従ってそれらの吸水率を測定し、及び試験セラミックディスクの初期直径に対する減少率として表される半径方向の収縮を測定した。これらの値は、セラミック物品のガラス化の程度の指標となる。
【0070】
結果を以下に示す。
【表3】
【0071】
このデータは、高濃度のリサイクルされた材料を有し、且つ十分な量のクレイ及び他の物質を有する磁器タイルを製造して、工業的に頑強なセラミック物品を作るための、本発明の粒度分布の利点を示す。