IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 青島瓷興新材料有限公司の特許一覧

特許7362151高純度・低アルミニウム類球形β窒化ケイ素粉体、その製造方法と用途
<>
  • 特許-高純度・低アルミニウム類球形β窒化ケイ素粉体、その製造方法と用途 図1
  • 特許-高純度・低アルミニウム類球形β窒化ケイ素粉体、その製造方法と用途 図2
  • 特許-高純度・低アルミニウム類球形β窒化ケイ素粉体、その製造方法と用途 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】高純度・低アルミニウム類球形β窒化ケイ素粉体、その製造方法と用途
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/068 20060101AFI20231010BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
C01B21/068 D
C09K5/14 E
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2021551919
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 CN2019129454
(87)【国際公開番号】W WO2020186880
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】201910205393.2
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521389701
【氏名又は名称】青島瓷興新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鄒芸峰
(72)【発明者】
【氏名】賈再輝
(72)【発明者】
【氏名】崔巍
(72)【発明者】
【氏名】孫思源
(72)【発明者】
【氏名】成会明
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-268903(JP,A)
【文献】特開2000-178013(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110567(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101294067(CN,A)
【文献】特開平07-025603(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105776158(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1935926(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/068
C04B 35/584
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球形度が0.85~0.99であり、Al不純物含有量が450ppm未満であり、粒度範囲が0.5μm~50μmであり、
大きな粒度の大粒子と中程度の粒度の中粒子及び小さな粒度の小粒子からなり、そのうち、前記大粒子の粒度範囲は10μm~50μmであり、前記中粒子の粒度範囲は1.5μm~10μmであり、前記小粒子の粒度範囲は0.5μm~1.5μmであり、前記大粒子と前記中粒子と前記小粒子の質量比は12~18:2~6:1であることを特徴とする、低アルミニウム類球形β窒化ケイ素粉体。
【請求項2】
前記窒化ケイ素粉体の球形度が0.90~0.99であり、Al不純物含有量が400ppm未満であり、粒度範囲が0.5μm~50μmであることを特徴とする、請求項1に記載の窒化ケイ素粉体。
【請求項3】
前記大粒子の粒度範囲は15μm~40μmであり、前記中粒子の粒度範囲は1.8μm~8μmであり、前記小粒子の粒度範囲は0.5μm~1.2μmであり、前記大粒子と前記中粒子と前記小粒子の質量比は12~16:2~5:1であることを特徴とする、請求項1または2に記載の窒化ケイ素粉体。
【請求項4】
前記大粒子の粒度範囲は18μm~25μmであり、前記中粒子の粒度範囲は2μm~6μmであり、前記小粒子の粒度範囲は0.5μm~1.0μmであり、前記大粒子と前記中粒子と前記小粒子の質量比は13~16:2~4.4:1であることを特徴とする、請求項1または2に記載の窒化ケイ素粉体。
【請求項5】
前記大粒子の粒度は20μmであり、前記中粒子の粒度は3.2μmであり、前記小粒子の粒度は0.55μmであり、前記大粒子と前記中粒子と前記小粒子の質量比は15:4:1であることを特徴とする、請求項1または2に記載の窒化ケイ素粉体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の窒化ケイ素粉体およびシリカ粉体を含み、そのうち、前記シリカ粉体は、粒度が10nm~50μmであり、アルミニウム含有量が500ppm以下であり、前記窒化ケイ素粉体と前記シリカ粉体の質量比は1~10:1である、組成物。
【請求項7】
熱伝導性複合材料は、請求項1~5のいずれか1項に記載の窒化ケイ素粉体および樹脂を含み;または請求項6に記載の組成物および樹脂を含むことを特徴とする、熱伝導性複合材料。
【請求項8】
前記熱伝導性複合材料はまた、硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を含むことを特徴とする、請求項7に記載の熱伝導性複合材料。
【請求項9】
前記樹脂は油性樹脂および/または水性樹脂を含むことを特徴とする、請求項7または8に記載の熱伝導性複合材料。
【請求項10】
前記油性樹脂はエポキシ樹脂および/またはシリコーン樹脂を含むことを特徴とする、請求項9に記載の熱伝導性複合材料。
【請求項11】
前記水性樹脂はポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂および/またはアクリル樹脂を含むことを特徴とする、請求項9または10に記載の熱伝導性複合材料。
【請求項12】
前記熱伝導性複合材料の熱伝導率は1.7W/(m・K)より大きいことを特徴とする、請求項7~11のいずれか1項に記載の熱伝導性複合材料。
【請求項13】
前記熱伝導性複合材料の熱伝導率は4.0W/(m・K)より大きいことを特徴とする、請求項7~11のいずれか1項に記載の熱伝導性複合材料。
【請求項14】
前記熱伝導性複合材料の熱伝導率は4.7W/(m・K)より大きいことを特徴とする、請求項7~11のいずれか1項に記載の熱伝導性複合材料。
【請求項15】
前記熱伝導性複合材料の熱伝導率は5.6W/(m・K)より大きいことを特徴とする、請求項7~11のいずれか1項に記載の熱伝導性複合材料。
【請求項16】
前記熱伝導性複合材料の熱伝導率は6.2W/(m・K)より大きいことを特徴とする、請求項7~11のいずれか1項に記載の熱伝導性複合材料。
【請求項17】
前記熱伝導性複合材料の熱伝導率は6.5W/(m・K)より大きいことを特徴とする、請求項7~11のいずれか1項に記載の熱伝導性複合材料。
【請求項18】
(1)シリコン粉末からアルミニウムを取り除くステップ;前記ステップ(1)では、前記シリコン粉末からアルミニウムを取り除く手段は酸洗を含み、酸洗後前記シリコン粉末のアルミニウム含有量は500ppm未満であり;
(2)ステップ(1)で得られたシリコン粉末をβ窒化ケイ素および研削媒体と均一に混合および研削し、乾燥後、スラリーをふるいにかけるステップ;前記ステップ(2)では、前記シリコン粉末と前記β窒化ケイ素のアルミニウム含有量は500ppm未満であり;前記ステップ(2)では、前記研削はナイロンボールミルタンクで行われ;
(3)保護雰囲気下でステップ(2)で得られた混合物の燃焼合成を行うステップ;
(4)ステップ(3)で得られた生成物を任意選択にボールミル処理するステップ;前記ステップ(4)では、前記ボールミルは非Alのライニングで行われ、前記非Alのライニングは、ナイロンライニングやポリウレタンライニングを含み;
(5)ステップ(4)で得られた生成物からアルミニウムを取り除くステップ;
(6)ステップ(5)で得られた生成物の表面改質処理を行い、前記ステップ(6)では、前記表面改質処理は、ステップ(5)で得られた生成物を表面改質剤と混合することを含み;前記窒化ケイ素粉体製品を得るステップを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の窒化ケイ素粉体の製造方法。
【請求項19】
前記ステップ(2)では、前記研削媒体には無水エタノールが含まれることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ステップ(2)では、前記ふるい分けは200メッシュのふるいにかけることであることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ステップ(3)では、前記保護雰囲気は高純度N2であり、前記高純度N2のN2体積割合は99.999%よりも大きいことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記ステップ(3)は、ステップ(2)で得られた混合物をるつぼに入れ、次にるつぼを燃焼合成反応釜に入れ、原料の一端に点火タングステンフィラメントを置き、タングステンフィラメントにチタン粉末を被せて点火剤とし、1MPa~12MPaの高純度N2(N2含有量>99.999vol%)雰囲気下で、一端で点火して自己伝播反応を起こし、反応がサンプルの一端から他端まで伝播すると完了することを含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記ステップ(4)では、前記ボールミルのボールは窒化ケイ素ボールを使用し、前記ボールミル時間は0~24hであることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記ステップ(5)では、前記アルミニウムを取り除く方法は酸洗いであることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記ステップ(5)は、ステップ(4)で得ら生成物を、体積割合10~20%の硝酸、60~80%の塩酸、および10~20%の硫酸を併用して、1~10h酸洗いすることを含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記表面改質剤はシランカップリング剤を含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記ステップ(6)は、ステップ(5)で得られた生成物とシランカップリング剤をエタノールに加え、シランカップリング剤を窒化ケイ素粉体の0.5~2wt%の割合で加え、固形分が30~80wt%であるスラリーを調製し、前記スラリーを均一に混合して乾燥することを含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
SHF及びEHF電子パッケージ材料のフィラーとしての、請求項1に記載のβ窒化ケイ素粉体の使用。
【請求項29】
請求項1~5のいずれか1項に記載の窒化ケイ素粉体のSHF及びEHF電子パッケージ材料のフィラーとしての使用;或いは、請求項6に記載の組成物のSHF及びEHF電子パッケージ材料のフィラーとしての使用;或いは、請求項7~17のいずれか1項に記載の熱伝導性複合材料のSHF及びEHF電子パッケージ材料のフィラーとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2019年3月18日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号201910205393.2で、発明名称が「高純度・低アルミニウム類球形β窒化ケイ素粉体、その製造方法と用途」である先行出願に基づいて優先権を主張する。前記先行出願は、その全体が引用により本願に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、高純度・低アルミニウム類球形β窒化ケイ素粉体に関し、電子パッケージ材料のフィラーとして、特に高熱伝導SHF及びEHF電子パッケージ材料、例えば新興5G通信分野に好適に用いられ、電子パッケージ分野に属する。
【0003】
〔背景技術〕
現代のマイクロエレクトロニクス技術の急速な進歩に伴い、電子製品及びそのデバイスは、小型化、高集積化、高パワー化の方向に徐々に発展しており、これは強力な使用機能をもたらすと同時に、消費電力と発熱量の継続的な増加にもつながる。データによると、ほとんどの電子機器では、動作温度を80℃よりも高くしてはいけなく;この温度を超えると、温度が10℃上昇するごとに信頼性が半分に低下し;システム過熱によるチップの故障がチップ故障の原因の50%以上を占めるから、チップの放熱問題が電子製品のさらなる発展を制限するボトルネックになっていることが分かる。
【0004】
〔発明の概要〕
本発明の一つの態様は、球形度が0.5~0.99であり、Al不純物含有量が500ppm未満であり、粒度範囲が0.5μm~50μmである高純度・低アルミニウム類球形β窒化ケイ素粉体を提供する。
【0005】
本発明の一つの態様によると、前記窒化ケイ素粉体は、球形度が0.85~0.99であり、Al不純物含有量が450ppm未満であり、粒度範囲が0.5μm~50μmである。
【0006】
本発明の一つの態様によると、前記窒化ケイ素粉体は、球形度が0.90~0.99であり、Al不純物含有量が400ppm未満であり、粒度範囲が0.5μm~50μmである。
【0007】
本発明の一つの態様によると、前記窒化ケイ素粉体は、大きな粒度の大粒子と小さな粒度の小粒子からなり、そのうち、前記大粒子の粒度範囲は10μm~50μmであり、前記小粒子の粒度範囲は0.5μm~10μmであり、前記大粒子と前記小粒子の質量比は2~8:1である。
【0008】
本発明の一つの態様によると、前記大粒子の粒度範囲は12μm~40μmであり、前記小粒子の粒度範囲は1μm~8μmであり、前記大粒子と前記小粒子の質量比は3~7:1である。
【0009】
本発明の一つの態様によると、前記大粒子の粒度範囲は15μm~30μmであり、前記小粒子の粒度範囲は2μm~5μmであり、前記大粒子と前記小粒子の質量比は3~5:1である。
【0010】
本発明の一つの態様によると、前記大粒子の粒度は20μmであり、前記小粒子の粒度は3.2μmであり、前記大粒子と前記小粒子の質量比は4:1である。
【0011】
本発明の一つの態様によると、前記窒化ケイ素粉体は、大きな粒度の大粒子と中程度の粒度の中粒子及び小さな粒度の小粒子からなり、そのうち、前記大粒子の粒度範囲は10μm~50μmであり、前記中粒子の粒度範囲は1.5μm~10μmであり、前記小粒子の粒度範囲は0.5μm~1.5μmであり、前記大粒子と前記中粒子と前記小粒子の質量比は12~18:2~6:1である。
【0012】
本発明の一つの態様によると、前記大粒子の粒度範囲は15μm~40μmであり、前記中粒子の粒度範囲は1.8μm~8μmであり、前記小粒子の粒度範囲は0.5μm~1.2μmであり、前記大粒子と前記中粒子と前記小粒子の質量比は12~16:2~5:1である。
【0013】
本発明の一つの態様によると、前記大粒子の粒度範囲は18μm~25μmであり、前記中粒子の粒度範囲は2μm~6μmであり、前記小粒子の粒度範囲は0.5μm~1.0μmであり、前記大粒子と前記中粒子と前記小粒子の質量比は13~16:2~4.4:1である。
【0014】
本発明の一つの態様によると、前記大粒子の粒度は20μmであり、前記中粒子の粒度は3.2μmであり、前記小粒子の粒度は0.55μmであり、前記大粒子と前記中粒子と前記小粒子の質量比は15:4:1である。
【0015】
本発明の一つの態様は、上記のような窒化ケイ素粉体およびシリカ粉体を含み、そのうち、前記シリカ粉体は、粒度が10nm~50μmであり、アルミニウム含有量が500ppm以下であり、前記窒化ケイ素粉体と前記シリカ粉体の質量比は1~10:1である組成物を提供する。
【0016】
本発明の一つの態様は、上記のような窒化ケイ素粉体および樹脂を含み、または上記のような組成物および樹脂を含む熱伝導性複合材料を提供する。
【0017】
本発明の一つの態様によると、前記熱伝導性複合材料はまた、硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を含む。
【0018】
本発明の一つの態様によると、前記樹脂は、油性樹脂および/または水性樹脂を含む。
【0019】
本発明の一つの態様によると、前記油性樹脂はエポキシ樹脂および/またはシリコーン樹脂を含む。
【0020】
本発明の一つの態様によると、前記水性樹脂はポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂および/またはアクリル樹脂を含む。
【0021】
本発明の一つの態様によると、前記熱伝導性複合材料の熱伝導率は1.7W/(m・K)より大きい。
【0022】
本発明の一つの態様によると、前記熱伝導性複合材料の熱伝導率は4.0W/(m・K)より大きい。
【0023】
本発明の一つの態様によると、前記熱伝導性複合材料の熱伝導率は4.7W/(m・K)より大きい。
【0024】
本発明の一つの態様によると、前記熱伝導性複合材料の熱伝導率は5.6W/(m・K)より大きい。
【0025】
本発明の一つの態様によると、前記熱伝導性複合材料の熱伝導率は6.2W/(m・K)より大きい。
【0026】
本発明の一つの態様によると、前記熱伝導性複合材料の熱伝導率は6.5W/(m・K)より大きい。
【0027】
本発明の一つの態様は、以下のステップを含む、上記のような窒化ケイ素粉体の製造方法を提供する:
(1)シリコン粉末からアルミニウムを取り除くステップ;
(2)ステップ(1)で得られたシリコン粉末をβ窒化ケイ素および研削媒体と均一に混合および研削し、乾燥後、スラリーをふるいにかけるステップ;
(3)保護雰囲気下でステップ(2)で得られた混合物の燃焼合成を行うステップ;
(4)ステップ(3)で得られた生成物を任意選択にボールミル処理するステップ;
(5)ステップ(4)で得られた生成物からアルミニウムを取り除くステップ;
(6)ステップ(5)で得られた生成物の表面改質処理を行い、前記窒化ケイ素粉体製品を得るステップ。
【0028】
本発明の一つの態様によると、上記窒化ケイ素粉体の製造方法の前記ステップ(1)では、前記シリコン粉末からアルミニウムを取り除く方法は酸洗いである。
【0029】
本発明の一つの態様によると、上記窒化ケイ素粉体の製造方法の前記ステップ(1)は、以下の内容を含み:シリコン粉末を硝酸とフッ化水素酸で体積比10:1で5min酸洗い、そのうち、前記硝酸の質量濃度は10~20%であり、前記フッ化水素酸の質量濃度は5%である。
【0030】
本発明の一つの態様によると、上記窒化ケイ素粉体の製造方法の前記ステップ(1)では、前記シリコン粉末のアルミニウム含有量は500ppm未満である。
【0031】
本発明の一つの態様によると、上記窒化ケイ素粉体の製造方法の前記ステップ(2)では、前記シリコン粉末と前記β窒化ケイ素のアルミニウム含有量は500ppm未満である。
【0032】
本発明の一つの態様によると、上記窒化ケイ素粉体の製造方法の前記ステップ(2)では、前記研削媒体には無水エタノールが含まれる。
【0033】
本発明の一つの態様によると、上記窒化ケイ素粉体の製造方法の前記ステップ(2)では、前記研削はナイロンボールミルタンクで行われる。
【0034】
本発明の一つの態様によると、上記窒化ケイ素粉体の製造方法の前記ステップ(2)では、前記ふるい分けは200メッシュのふるいにかけることである。
【0035】
本発明の一つの態様によると、上記窒化ケイ素粉体の製造方法の前記ステップ(3)では、前記保護雰囲気は高純度N2であり、前記高純度N2のN2体積割合は99.999%よりも大きい。
【0036】
本発明の一つの態様によると、上記窒化ケイ素粉体の製造方法の前記ステップ(3)は、以下の内容を含み:ステップ(2)で得られた混合物をるつぼに入れ、次にるつぼを燃焼合成反応釜に入れ、原料の一端に点火タングステンフィラメントを置き、タングステンフィラメントにチタン粉末を被せて点火剤とし、1MPa~12MPaの高純度N2(N2含有量>99.999vol%)雰囲気下で、一端で点火して自己伝播反応を起こし、反応がサンプルの一端から他端まで伝播すると完了する。
【0037】
本発明の一つの態様によると、上記窒化ケイ素粉体の製造方法の前記ステップ(4)では、前記ボールミルはナイロンライニングまたはポリウレタンライニングで行われる。
【0038】
本発明の一つの態様によると、上記窒化ケイ素粉体の製造方法の前記ステップ(4)では、前記ボールミルのボールは窒化ケイ素ボールを使用し、前記ボールミル時間は0~24hである。
【0039】
本発明の一つの態様によると、上記窒化ケイ素粉体の製造方法の前記ステップ(5)では、前記アルミニウムを取り除く方法は酸洗いである。
【0040】
本発明の一つの態様によると、上記窒化ケイ素粉体の製造方法の前記ステップ(5)は、以下の内容を含み:ステップ(4)で得られた生成物を、体積割合10~20%の硝酸、60~80%の塩酸、および10~20%の硫酸を使用して、1~10h酸洗する。
【0041】
本発明の一つの態様によると、上記窒化ケイ素粉体の製造方法の前記ステップ(6)では、前記表面改質処理は、ステップ(5)で得られた生成物を表面改質剤と混合することを含み;好ましくは、前記表面改質剤はシランカップリング剤を含む。
【0042】
本発明の一つの態様によると、上記窒化ケイ素粉体の製造方法の前記ステップ(6)は、以下の内容を含み:ステップ(5)で得られた生成物とシランカップリング剤をエタノールに加え、シランカップリング剤を窒化ケイ素粉体の0.5~2wt%の割合で加え、固形分が30~80wt%であるスラリーを調製し、前記スラリーを均一に混合して乾燥する。
【0043】
本発明の一つの態様は、前記熱伝導性複合材料の製造方法を提供し、前記方法は以下の内容を含み:前述窒化ケイ素粉体を樹脂と混合し、任意選択に硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を加え、前記熱伝導性複合材料を作成する。
【0044】
本発明の一つの態様は、SHF及びEHF電子パッケージ材料のフィラーとしてのβ窒化ケイ素粉体の用途を提供する。
【0045】
本発明の一つの態様は、SHF及びEHF電子パッケージ材料のフィラーとしての前記窒化ケイ素粉体の用途を提供する。
【0046】
本発明の一つの態様は、SHF及びEHF電子パッケージ材料のフィラーとしての前記組成物の用途を提供する。
【0047】
本発明の一つの態様は、SHF及びEHF電子パッケージ材料のフィラーとしての前記熱伝導性複合材料の用途を提供する。
【0048】
本発明の実施例によって提供される高純度・低アルミニウム類球形β窒化ケイ素粉体は、球形度が高く(0.5~0.99)、不純物含有量が低く(Al不純物含有量<500ppm)、有機基体と配合して複合材料を製造した後、熱伝導率が高く(6.5W/(m・K)に達し)、高熱伝導SHF及びEHF電子パッケージ材料に特に適用している。
【0049】
現在の3G、4G通信手段で使用される電磁波の帯域は、主にUHF(0.3~3GHz)およびSHF(3~30GHz)のローエンドに分布している。無線通信技術の急速な発展に伴い、次の第5世代の通信技術(つまり、ミリ波、超広帯域、超高速、超低遅延を主な特徴とする5G)に用いられる電子波の波長帯域は、SHF(3~30GHz)のハイエンドおよびEHF(30~300GHz)に分布している。5G通信チップの集積度が大幅に向上し、使用中の熱流束密度も大幅に増加するため、新しい5G通信は通信ハードウェア機器に対するより高い要求を提唱する。その中でも、既存の電子通信デバイスのパッケージ材料の多くは、5GなどのSHFおよびEHF通信シーンに効果的に適用することが困難である。例えば、現在のパッケージ材料に最も一般的に使用されているフィラーはシリカであり、シリカの固有熱伝導率はわずか30 W/(m・K)であり、高集積度と高熱流束密度の5G通信応用シーンでは、シリカをフィラーとするパッケージ材料は、最小要件さえ満たしていない。従って、SHF(3~30GHz)およびEHF(30~300GHz)の応用シーンに適する新しいパッケージ材料を見つけることが急務である。
【0050】
パッケージ材料は、成形コンパウンド、トップ封止材、ポッティング材、プリント回路基板、アンダーフィラーなどを含み、チップの配置、固定、保護、および電熱性能の向上の役割を果たし、チップの放熱にとって重要な手段である。従って、パッケージ材料は、高熱伝導率、低誘電率、低誘電損失、チップ(Si)に相応しい熱膨張係数、および水と反応して劣化しないなどの特性を備えている必要がある。有機樹脂には、一般的にパッケージ材料の基体として使用されているエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂などがあり、展延性と成形性は良好であるが、熱伝導率は0.5W/(m・K)未満と非常に低い。そのため、熱伝導率を高めるために、熱伝導率が高く、絶縁性に優れたセラミック粒子材料を有機樹脂にできるだけ高い割合で充填する必要があり、上記セラミック粒子材料の充填量は60~90vol%である。
【0051】
パッケージ材料として、この分野の従業員が最初に考えるのはシリカであり、これは現在最も広く使用されている材料であるが、β窒化ケイ素は言うまでもなく、窒化ケイ素についてはほとんど考えられない。以前に、窒化ケイ素の最も一般的な用途は、α窒化ケイ素をセラミックスラリーに調製して焼結した後、電子デバイスの基板材料として使用されていた。この幅広い用途において、α窒化ケイ素はβ窒化ケイ素に比べて明らかな利点がある。その理由は、α窒化ケイ素は低温準安定相であり、高い焼結活性を持ち、焼結中にβ相に変態すると同時に緻密化プロセスを経て、最終的に良好な緻密性と機械的特性を備える基板が得られる。しかし、β窒化ケイ素自体は高温安定相であり、焼結活性が低く、セラミックへの焼成時に緻密化が困難であるため、最終的に得られる基板の機械的特性は要件を満たすことが困難である。従って、この分野で窒化ケイ素について言及すると、ほとんどの人がα窒化ケイ素セラミックスラリーを焼結して基板を製造することを考え、α窒化ケイ素は、窒化ケイ素のほぼすべての応用価値を表している。SHF(3~30GHz)およびEHF(30~300GHz)の応用シーンに適する新しいパッケージ材料のフィラーを見つける場合、窒化ケイ素は研究者の考察範囲にはまったく入らない。これは、絶対的な主流のα窒化ケイ素の性質が研究者に深く感銘を与えたため、窒化ケイ素は次の理由で直接拒否される:窒化ケイ素の硬度が高すぎ、窒化ケイ素をフィラーとしてパッケージ材料を製造した後、適用するのに切断する必要があり;しかし、窒化ケイ素の硬度が高すぎるからこそ、切断プロセスは非常に難しく、工具の損傷だけのコストは高くて耐えられない。
【0052】
しかしながら、本発明の発明者は、新しいパッケージ材料を探す過程で、上記固定観念を打ち破った。上記固定観念は実際には以下のような技術的事実によって引き起こされ:現在、α窒化ケイ素は窒化ケイ素のほぼすべての応用価値を表しているため、窒化ケイ素について言及すると、研究者は常にα窒化ケイ素を考える。α窒化ケイ素の硬度はかなり高い。これは人々に重要な状況を見落とさせ:β窒化ケイ素は研究者が考えるほど硬くない。それでは、β窒化ケイ素を使用してパッケージ材料を製造することの上記いわゆる技術的障害は実際には存在しない。この技術的障害が存在すると考えるのも、上記固定観念によるものである。この固定観念はまた、本発明が提案される前の技術状況をもたらし、即ち、長い間、β窒化ケイ素は、研究者によってチップパッケージ材料のフィラーとは見なされていなかった。
【0053】
上記固定観念を打ち破った後、本発明の発明者はさらに驚くべきことに次のことを発見し:β窒化ケイ素はパッケージ材料を製造するためのフィラーとして使用できるだけでなく、その性能も非常に良好であり、特にSHFおよびEHF通信応用シーンでは、より多くの利点がある。例えば、最も一般的に使用されているシリカと比較して、β窒化ケイ素の熱伝導率は270W/(m・K)であるが、シリカはわずか30W/(m・K)である。β窒化ケイ素の熱伝導率は、シリカの熱伝導率よりもほぼ10倍高くなっている。将来、SHFおよびEHF通信技術が実現すると、熱伝導率のみの点について、β窒化ケイ素はシリカよりも絶対的な利点がある。
【0054】
本発明の発明者は、パッケージ材料のフィラーとしてのセラミック粒子材料は、以下の特徴を有するべきであることに気づき:低い誘電率(<6)、低い誘電損失(<0.01)、できるだけ低い熱膨張係数、高い固有熱伝導率。
【0055】
表1は、本発明の発明者によって検討されたいくつかのセラミックフィラーの関連する物理的特性を示している。酸化アルミニウムの固有熱伝導率は低く、同様に新世代のSHFおよびEHF通信応用での電子パッケージフィラーの要件を満たすこともできない。窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物、及び炭化ケイ素は、高い固有熱伝導率を持っている。ただし、炭化ケイ素は絶縁材料ではなく、高い誘電率と誘電損失を持ち;窒化アルミニウムはSHFとEHFで比較的高い誘電率と熱膨張係数を持ち;窒化ホウ素の熱膨張係数も比較的高く、且つその形態はほとんどフレークであるため、高充填量の要求を満たすことは困難である。さらに、窒化ホウ素の価格は比較的高い。
【0056】
上記固定観念を打ち破った後、本発明の発明者はSHFおよびEHF通信分野に適するセラミック材料を探す時に、窒化ケイ素が最高の総合的性能を有することを認識した。窒化ケイ素は、低誘電率、低誘電損失、低熱膨張係数、及び高い固有熱伝導率を持つだけでなく、優れた熱的安定性および化学的安定性と優れた絶縁性能を備えているため、電子パッケージフィラーに非常に適用している。また、その誘電率と誘電損失はSHFとEHFでより低いため、特に高熱伝導SHF及びEHF電子パッケージ材料に好適に用いられる。本発明の発明者は、窒化ケイ素の上記特性が、今後の5G通信応用などのSHFおよびEHF応用シーンに特に適用していることを認識しているため、SHFおよびEHF通信応用シーンでのパッケージ材料の製造に適する窒化ケイ素フィラーの研究と開発を行っている。
【0057】
【表1】
【0058】
また、窒化ケイ素の熱伝導は主に格子振動により行われ、完全な結晶構造によりフォノンの散乱を効果的に抑制できる。結晶粒界、欠陥、および不純物原子の導入は、結晶構造の完全性に影響を与え、フォノン散乱を増加させ、材料の実際の熱伝導率を低下させる。なお、原子の線形配置と原子間の相互作用は、材料の熱伝達に大きな影響を与える。α窒化ケイ素の場合、c軸に沿った積層順序はABCABCであり、β窒化ケイ素の積層順序はABABであり、原子がよりきれいに配置されているため、β窒化ケイ素のc軸の熱伝導率はα窒化ケイ素よりも高い。従って、熱伝導性フィラーとして、β窒化ケイ素はα窒化ケイ素よりも有利である。
【0059】
最後に、パッケージ材料を高い熱伝導率にするために、フィラーは、可能な限り高い割合で熱伝導性パッケージ材料に充填される。これは、有機基体中のフィラーの充填率が低い場合、フィラー粒子が分散し、パッケージ材料の熱伝導率が基本的に有機基体の熱伝導率に依存するためである。しかしながら、充填率が浸透閾値に達すると、充填粒子間に熱伝導チェーンが形成され、パッケージ材料の熱伝導率を大幅に向上することができる。もちろん、有機基体へのフィラーの充填量は高ければ高いほど良いわけではなく、充填量が高いと同時に、パッケージ材料の展延性と成形性が良好であることを保証する必要がある。従って、フィラーとしてのセラミック粉体は、一定の形態および粒度の要件も満たす必要があり、パッケージ材料の充填率を高めながら、粘度を可能な限り低く保つ必要がある。
【0060】
上記認識に基づいて、本発明の発明者は、研究において、β窒化ケイ素がSHFおよびEHF通信応用シーンに応用される時パッケージ材料のフィラーの性能をさらに向上するために、β窒化ケイ素の球形度、不純物含有量と粒度範囲が、いくつかの重要なパラメータであることを発見した。詳しい説明は以下の通りである。
【0061】
(1)球形度の影響
高充填量では、球形粒子は大きな利点を示す。第一に、球形粉体の比表面積はフレークおよび柱状材料の比表面積よりも小さいため、フィラーと有機基体間の界面熱抵抗を効果的に低減し、パッケージ材料の熱伝導率を向上することができ;第二に、それらによって調製されたパッケージ材料の熱伝導率は等方性を示すが、フレークおよび柱状材料は基体内で特定の方向に分布しやすく、パッケージ材料に異方性を示させ;第三に、球形粉体の比表面積はフレークおよび柱状材料の比表面積よりも小さいため、フィラーと有機基体間の摩擦を効果的に低減できるため、粘度のより低いパッケージ材料が得られる。
【0062】
球形度で粉体の形態を特徴づけることができる。球形度とは、砕屑粒子が球にどの程度近いかを指す。DLは粒子の最大内接球の半径である。DSは粒子の最小内接球の半径である。生成物中の粉体粒子DS/DLの平均値は球形度である。
【0063】
(2)不純物含有量の影響
窒化ケイ素の熱伝導は主に格子振動により行われ、完全な結晶構造によりフォノンの散乱を効果的に抑制できる。結晶粒界、欠陥、および不純物原子の導入は、結晶構造の完全性に影響を与え、フォノン散乱を増加させ、材料の実際の熱伝導率を低下させる。SHFとEHF通信機器(例えば5G通信チップ)の集積度が大幅に改善されたため、使用中の熱流束密度も大幅に増加し、放熱への要求がより高くなっているため、厳密に不純物含有量を制御し、不純物によって引き起こされる熱伝導率の低下を低減するする必要がある。従って、SHFとEHF通信応用分野では、窒化ケイ素の不純物含有量に対する要求が高くなる。
【0064】
(3)粒度の影響
サブミクロンおよびミクロンレベルの粉体と比較して、ナノ粉体は比表面積が大きいため、有機基体と混合した後の粘度が非常に高く、界面熱抵抗も大きくなり、パッケージ材料の熱伝導率を低下させ、また、ナノ材料の製造コストが高く、産出量が低く、不純物含有量が高く、および結晶性が悪いという特徴があり、熱伝導性フィラーとしての使用には適していない。サブミクロンおよびミクロンレベルの粉体の場合、粒度が大きいほど、比表面積が小さくなり、界面熱抵抗が低くなるが、熱伝導チェーンの形成に対しては不利になる。従って、大きな粒度の粉体粒子は、高い充填量でより高い熱伝導率を得ることができ、一方、小さな粒度の粉体粒子は、低い充填量でより良い熱伝導性能を示す。実際の応用では、異なる粒度の粉体粒子を混合してグラデーションを形成し、そのうち、大粒子は熱伝導の本体として機能し、小粒子は熱伝達のブリッジとして機能し、これにより、パッケージ材料はより高い熱伝導率を得ることができる。同時に、大粒子の隙間に小粒子を充填することで、より高い充填量を得ることができる。
【0065】
従って、熱伝導性フィラーとしての窒化ケイ素は、次の特徴を備える必要があり:高純度(低不純物含有量)β窒化ケイ素、類球形の形態、およびサブミクロン-ミクロンレベルで制御可能な粒度でグラデーションを形成する。しかしながら、既存の技術では、上記要件を満たすと同時に、球形の形態を有するβ窒化ケイ素を調製することがまだ不可能である。
【0066】
本発明の目的は、高純度・低アルミニウム類球形β窒化ケイ素粉体を提供することであり、改良された燃焼合成法、炭素熱還元法、造粒焼結法、直接窒化法、高温気相法などによって調製され、球形度は0.5~0.99であり、そのうち、燃焼合成法、炭素熱還元法等で調製された場合の球形度は0.5~0.95であり、造粒焼結法などで調製された場合の球形度は0.9~0.99である。Al不純物含有量は500μg/g(ppm)以下に達することができる。燃焼合成法を例にとると、Al不純物含有量の制御方法は、原料としてのシリコン粉末を酸洗いでAlを除去し、窒素雰囲気の純度を制御し、ポリウレタン、ナイロンなどの材料のライニングおよび窒化ケイ素ボールを使用し、酸洗でAl不純物を取り除くことを含むが、これらに限定されない。上記特性のβ窒化ケイ素粉体は、電子パッケージ材料のフィラーとして使用することに非常に適しており、特に高熱伝導SHF及びEHF電子パッケージ材料、例えば新興5G通信分野に好適に用いられる。
【0067】
本発明は、粒度範囲が0.5~50μmであり、粒度サイズが調整・制御されることができる高純度・低アルミニウム類球形β窒化ケイ素粉体に関する。そのうち、燃焼合成法、炭素熱還元法などで調製された場合の粒度は0.5~20μmであり、造粒焼結法などで調製された場合の粒度は5~50μmである。燃焼合成法を例にとると、窒化ケイ素の粒度制御は、添加剤の種類と含有量、窒素圧、原料の粒度、希釈剤の割合及び粒度などによって達成できる。なお、添加剤の種類と含有量が粒度に影響を与える原理は次のとおりであり:添加剤の種類と含有量の変化は燃焼合成温度を変化させることができ、例えば、一部の添加剤は熱を吸収、放出でき;また、添加剤の種類と含有量の変化は原料の分散状態を変化することができ、例えば、炭素粉末は分離機能を有し;添加剤も原料と反応することができ、例えば、水とシリコンが反応して酸化ケイ素などを形成する。窒素圧が高く、希釈剤の割合が低く、希釈剤の粒度が大きく、燃焼合成の温度が高いほど、β窒化ケイ素の成長が速くなり、粉体の粒度が大きくなる。また、シリコン粉末の粒度が大きいほど、それをテンプレートとして合成したβ窒化ケイ素の粒度も大きくなる。
【0068】
この高純度・低アルミニウム類球形β窒化ケイ素粉体は、表面改質処理を施すことができる。
【0069】
表面改質処理後のβ窒化ケイ素粉体は、有機樹脂を配合した後、より高い充填量と熱伝導率を達成するために、異なる粒度でグラデーションを形成することができる。
【0070】
グラデーションした後のβ窒化ケイ素粉体は、熱伝導性複合材料を作成するために有機樹脂と混合する必要がある。また、硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を加える必要がある。
【0071】
従来技術と比較して、本発明、以下の顕著な利点を有する:
当該β窒化ケイ素粉体は、球形度が高く、不純物含有量が低く、熱伝導率が非常に高い。
【0072】
当該β窒化ケイ素粉体の粒度はサブミクロン-ミクロンレベルの範囲で調整・制御されることができ、ミクロンレベルの粒度のβ窒化ケイ素粉体はより高い充填量を得ることができ;異なる粒度のβ窒化ケイ素粉体がグラデーションを形成してより高い充填量と熱伝導率を得ることができる。
【0073】
当該β窒化ケイ素粉体は、表面改質後有機樹脂との相溶性が良く、樹脂への充填量がより高くなる。
【0074】
当該β窒化ケイ素粉体が有機樹脂と配合すると、熱伝導率の高い複合材料が得られ、電子パッケージ材料のフィラーとして非常に適していることを示し、また、β窒化ケイ素自体の優れた特性により、特に高熱伝導SHF及びEHF電子パッケージ材料に好適に用いられる。
【0075】
なお、本発明の発明者は、窒化ケイ素がパッケージ材料の製造に適していないという固定観念を打ち破ったことに留意されたい。この技術的障害の突破は、本発明の従来技術への最も重要な貢献を完全に実証した。また、本発明の発明者は、β窒化ケイ素が特にSHFおよびEHF通信分野におけるパッケージ材料として好適に用いられ、β窒化ケイ素の球形度、不純物含有量、および粒度範囲がパッケージ材料としてのβ窒化ケイ素に影響を与える重要なパラメータであることをさらに認識した。上記認識はまた、本発明の従来技術への貢献を反映している。窒化ケイ素の球形度を増加する手段、窒化ケイ素の不純物含有量を減少する手段、および窒化ケイ素粒子の粒径範囲を制御する手段は、不思議で未知ではないかもしれないが、本発明が提案される前に、この分野の研究者がこれらの手段を用いて対応するパラメータを向上することを考えにくい。前述の技術的障害に加えて、もう1つの最大の障害は、コストの大幅増加につながることである。研究者がSHFおよびEHF通信分野でのβ窒化ケイ素の利点を深く理解していない場合、コスト増加の障害により、これらの試みが直接放棄されてしまう。従って、本発明の発明者が技術的障害を打ち破り、上記知識を有する場合にのみ、上記手段を用いてβ窒化ケイ素の上記パラメータを向上することを考えることができ、それをSHFおよびEHF通信応用シーンに特に適したものにする。製造コストの増加は、SHFおよびEHF通信応用シーンでのβ窒化ケイ素の優れた性能によってもたらされる商業的価値によって完全にカバーされる。
【0076】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下に実施例の図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の説明の図面は、本発明のいくつかの実施例にのみ関連し、本発明を限定するものではない。
【0077】
図1〕実施例1におけるβ窒化ケイ素粉体のXRD図である。
【0078】
図2〕実施例1におけるβ窒化ケイ素粉体のSEM図である。
【0079】
図3〕実施例1におけるβ窒化ケイ素粉体の粒度分布図である。
【0080】
〔発明を実施するための形態〕
以下、本発明の高純度・低アルミニウム類球形β窒化ケイ素粉体を、具体の実施例と併せてさらに説明する。下記実施例は本発明を例示的に説明・解釈するものだけであり、本発明の保護範囲を限定するものではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現された技術は本発明により請求される範囲内に含まれる。
【0081】
特に明記しない限り、本明細書のppmは質量比を指す。
【0082】
試験方法:
生成物の熱伝導性能を試験するために、質量比で75%の窒化ケイ素粉体と25%の有機樹脂の割合で材料を取り、3ロールミルで完全に混合し、混合したスラリーを金型に注ぎ、乾燥オーブンに入れ、100℃で2h硬化させた後、取り出し、硬化した複合材料を30mm*30mm、厚さ1mmのサンプルに加工し、レーザーパルス法でサンプルの熱伝導率を測定する。球形度試験は定義に基づき、SEM画像で、20個の粒子を選択し、測定するDLは粒子の最大内接球の半径であり、測定するDSは粒子の最小内接球の半径である。DS/DLの平均値は球形度である。粉体の粒度を測定するためにレーザー粒径分析器を使用し、Al含有量を測定するために誘導結合プラズマ分光法(ICP)を使用する。
【0083】
実施例1 改良された燃焼合成法により高球形度・低Alのβ窒化ケイ素を調製する方法
シリコン粉末をフッ化水素酸と硝酸で酸洗い、低アルミニウムの高純度シリコン粉末(<500ppm)を取得し、低アルミニウムの高純度シリコン粉末と低アルミニウムのβ窒化ケイ素(<500ppm))希釈剤を質量比1:1で、媒体として無水エタノールを使用し、ナイロンボールミルタンクでボールミル処理を行い、均一に混合した。スラリーを乾燥した後、200メッシュのふるいにかけ;混合物をるつぼに入れ、次にるつぼを燃焼合成反応釜に入れ、原料の一端に点火タングステンフィラメントを置き、タングステンフィラメントに少量のチタン粉末を被せて点火剤とする。8MPaの高純度(N2含有量>99.999vol%)N2雰囲気で、一端で点火して自己伝播反応を起こし、反応がサンプルの一端から他端まで伝播すると完了し、β窒化ケイ素粉体が得られ、粉体のXRDを図1に示し(図1に示すように、実施例1で得られたほとんどすべての窒化ケイ素はβ相であり);得られた生成物をナイロンやポリウレタンなどの非Alライニングでボールミル処理し、窒化ケイ素ボールを使用して4 hボールミル処理し、粒度2.15μm、球形度0.89のβ窒化ケイ素粉体を取得し、粉体の形態及び粒度を図2図3に示し;得られた窒化ケイ素粉体を硝酸、塩酸、硫酸などの混酸で酸洗い、ICPで測定したAl含有量は392ppmであり、最終的に粒度2.15μm、球形度0.89、アルミニウム含有量392ppmの高純度β窒化ケイ素粉体を得た。
【0084】
実施例2 改良された炭素熱還元法により高球形度・低Alのβ窒化ケイ素を調製する方法
質量比が1:2である低アルミニウム炭素粉末(<500ppm)と低アルミニウム非晶質酸化ケイ素(<500ppm)粉体を原料とし、低アルミニウム炭酸カルシウム添加剤(<500ppm)を、原料全質量の10mol%の割合で加えた。上記原料を水と混合して固形分30vol%のスラリーを調製し、24hボールミル処理を行い、乾燥、研削した。上記原料を、ガス圧焼結炉にて温度1800℃、窒素圧4MPa、反応時間2hの炭素熱還元反応を行った。得られた生成物をマッフル炉に入れ、650℃で5h保持して余剰炭素を除去し、球形度0.93、粒度9.02μm、アルミニウム含有量445ppmの高純度β窒化ケイ素粉体を得た。
【0085】
実施例3 改良された造粒焼結法により高球形度・低Alのβ窒化ケイ素を調製する方法
低Alのα窒化ケイ素(<500ppm)粉体を原料とし、5wt%の低アルミニウム酸化イットリウム(<500ppm)と5wt%の低アルミニウム酸化アルミニウム(<500 ppm)添加剤を加え、原料全質量に占める割合が1wt%の分散剤と2wt%のバインダーPVBを加えて固形分30vol%のスラリーを調製し、24hボールミル処理を行い、均一に混合した。ボールミル処理後のスラリーを噴霧造粒し、球形α窒化ケイ素造粒粉を作製した。噴霧造粒プロセスの各パラメータは、熱風の入口温度150 ℃、排風温度50 ℃、アトマイザーの遠心ディスク回転数6000rpmである。造粒粉をるつぼに入れ、ガス圧焼結炉で焼結温度1800 ℃、窒素圧4Mpa、保持時間4hの焼結を行った。球形度0.99、粒度28μm、アルミニウム含有量372ppmの高純度β窒化ケイ素粉体を得た。
【0086】
実施例4 表面改質処理
粒度2.15μm、Al含有量392ppm、球形度0.89のβ窒化ケイ素粉体と1wt%のシランカップリング剤をエタノールに加え、固形分50wt%のスラリーを調製し、粉体とシランカップリング剤を均一に混合した後、乾燥し、表面改質処理を完了した。表面改質処理後のβ窒化ケイ素粉体は、未処理のβ窒化ケイ素粉体よりも熱伝導率が著しく上昇している。表面処理されていない粒度2.15μm、Al含有量392ppm、球形度0.89のβ窒化ケイ素粉体をフィラーとする場合、熱伝導率は3.2W/(m・K)しかない。しかし、表面改質処理後、熱伝導率は3.9W/(m・K)に上昇する。
【0087】
実施例5
炭素熱還元法により球形度0.95のβ窒化ケイ素粉体を調製し、中央粒径が0.77μmであり、Al含有量が389ppmである。上記β窒化ケイ素粉体を表面改質処理し、次にエポキシ樹脂と混合し、硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を加え、熱伝導性複合材料を作成した。サンプルの熱伝導率をレーザーパルス法で測定し、その結果を表2に示す。
【0088】
実施例6
燃焼合成法により球形度0.92のβ窒化ケイ素粉体を調製し、中央粒径が3.5μmであり、Al含有量が387ppmである。上記β窒化ケイ素粉体を表面改質処理し、次にエポキシ樹脂と混合し、硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を加え、熱伝導性複合材料を作成した。サンプルの熱伝導率をレーザーパルス法で測定し、その結果を表2に示す。
【0089】
実施例7
燃焼合成法により球形度0.88のβ窒化ケイ素粉体を調製し、中央粒径が9.3μmであり、Al含有量が292ppmである。上記β窒化ケイ素粉体を表面改質処理し、次にエポキシ樹脂と混合し、硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を加え、熱伝導性複合材料を作成した。サンプルの熱伝導率をレーザーパルス法で測定し、その結果を表2に示す。
【0090】
実施例8
造粒焼結法により球形度0.99のβ窒化ケイ素粉体を調製し、中央粒径が28μmであり、Al含有量が412ppmである。上記β窒化ケイ素粉体を表面改質処理し、次にエポキシ樹脂と混合し、硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を加え、熱伝導性複合材料を作成した。サンプルの熱伝導率をレーザーパルス法で測定し、その結果を表2に示す。
【0091】
実施例9
造粒焼結法により球形度0.99のβ窒化ケイ素粉体を調製し、中央粒径が45μmであり、Al含有量が475ppmである。上記β窒化ケイ素粉体を表面改質処理し、次にエポキシ樹脂と混合し、硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を加え、熱伝導性複合材料を作成した。サンプルの熱伝導率をレーザーパルス法で測定し、その結果を表2に示す。
【0092】
実施例10
上記実施例8の粒度28μmのβ窒化ケイ素粉体と実施例6の3.5μmのβ窒化ケイ素粉体を80:20の割合で混合した。上記β窒化ケイ素粉体を表面改質処理し、次にエポキシ樹脂と混合し、硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を加え、熱伝導性複合材料を作成した。サンプルの熱伝導率をレーザーパルス法で測定し、その結果を表2に示す。
【0093】
実施例11
上記実施例8の粒度28μmのβ窒化ケイ素粉体と実施例5の0.77μmのβ窒化ケイ素粉体を80:20の割合で混合した。上記β窒化ケイ素粉体を表面改質処理し、次にエポキシ樹脂と混合し、硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を加え、熱伝導性複合材料を作成した。サンプルの熱伝導率をレーザーパルス法で測定し、その結果を表2に示す。
【0094】
実施例12
上記実施例8の粒度28μm、実施例6の3.5μmと実施例5の0.77μmのβ窒化ケイ素粉体を75:20:5の割合で混合した。上記β窒化ケイ素粉体を表面改質処理し、次にエポキシ樹脂と混合し、硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を加え、熱伝導性複合材料を作成した。サンプルの熱伝導率をレーザーパルス法で測定し、その結果を表2に示す。
【0095】
実施例13
上記実施例8の粒度28μmのβ窒化ケイ素粉体と28μmのシリカ粉体を80:20の割合で混合した。上記β窒化ケイ素粉体とシリカ粉体を表面改質処理し、次にエポキシ樹脂と混合し、硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を加え、熱伝導性複合材料を作成した。サンプルの熱伝導率をレーザーパルス法で測定し、その結果を表2に示す。
【0096】
実施例14
球形度0.99のβ窒化ケイ素粉体は、中央粒径が28μmであり、Al含有量が412ppmである。上記β窒化ケイ素粉体を表面改質処理し、次にシリコーン樹脂と混合し、硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を加え、熱伝導性複合材料を作成した。サンプルの熱伝導率をレーザーパルス法で測定し、その結果を表2に示す。
【0097】
比較例1
球形度0.99のシリカ粉体は、中央粒径が28μmである。上記シリカ粉体をエポキシ樹脂と混合し、硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を加え、熱伝導性複合材料を作成した。サンプルの熱伝導率をレーザーパルス法で測定し、その結果を表2に示す。
【0098】
比較例2
球形度0.99のシリカ粉体は、中央粒径が28μmである。上記シリカ粉体をシリコーン樹脂と混合し、硬化剤、促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、応力吸収剤、および接着補助剤を加え、熱伝導性複合材料を作成した。サンプルの熱伝導率をレーザーパルス法で測定し、その結果を表2に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
結果議論:
窒化ケイ素粉体は有機樹脂との混合により高い熱伝導率が得られ、現在広く使用されているSiO2フィラーよりも優れた性能を有する。実施例5~9の結果から、他の条件が同じか大きく異ならない場合は、0.55μm~50μmの範囲では、粒径が大きいほど熱伝導率が高くなることが分かる。実施例5~12の結果から、他の条件が同じか大きく異ならない場合は、異なる粒径の窒化ケイ素粉体でグラデーションを形成することは、単一粒径の窒化ケイ素粉体を用いた場合よりも熱伝導率が高くなることが分かる。実施例5~12で、実施例12が6.5W/(m・K)という最も高い熱伝導率を示したことから、大、中、小の3種類のサイズの異なる粒子でグラデーションを形成した方が、より熱伝導率を向上することができる。
【0101】
実施例8と実施例13との結果を比較すると、他の条件が同じか大きく異ならない場合は、窒化ケイ素粉体をシリカと窒化ケイ素の混合粉体に置き換え、シリカの量を小さい範囲に抑え、熱伝導率が小幅に落ち、シリカの誘電性能及び価格面での優位性を考慮しても高い利用可能性を有することが分かる。
【0102】
実施例8の結果と比較例1の結果、及び実施例14の結果と比較例2の結果を比較すると、本発明に係る窒化ケイ素粉体を用いると、他の条件が同じか大きく異ならない場合には従来のシリカ粉体と比較して熱伝導率が著しく向上することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1】実施例1におけるβ窒化ケイ素粉体のXRD図である。
図2】実施例1におけるβ窒化ケイ素粉体のSEM図である。
図3】実施例1におけるβ窒化ケイ素粉体の粒度分布図である。
図1
図2
図3