(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】腫瘍を治療するための医薬組成物、キット及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/763 20150101AFI20231010BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20231010BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231010BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231010BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231010BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20231010BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20231010BHJP
【FI】
A61K35/763
A61K31/7105
A61K48/00
A61P35/00
A61P43/00 121
C12N7/01 ZNA
C12N15/113 140Z
(21)【出願番号】P 2021578059
(86)(22)【出願日】2019-07-04
(86)【国際出願番号】 CN2019094645
(87)【国際公開番号】W WO2021000309
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520400807
【氏名又は名称】イムヴィラ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IMMVIRA CO., LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シャオチン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ジョシャ
(72)【発明者】
【氏名】ロイツマン,バーナード
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,グレイス グオイン
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-512205(JP,A)
【文献】国際公開第2014/152932(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/027847(WO,A1)
【文献】Immunotherapy,2018年,Vol.10, No.9,p.779-786
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の腫瘍を治療するための医薬組成物またはキットであって、
(a)治療有効量のエクソソームと、
(b)治療有効量の腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスと、
(c1)医薬組成物の場合、薬学的に許容される担体とを含み、または(c2)キットの場合、使用説明書を含んでいてもよく、
ここで、前記エクソソームは、阻害量のCTLA
-4を標的とするmiRNAと、前記CTLA
-4を標的とするmiRNAのシード配列に作動可能に連結されて前記CTLA
-4を標的とするmiRNAの前記エクソソームへのパッケージングを増強するエキソモチーフとを含み、
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスは、
HSV-1であり、IL-12と抗PD-1抗体の両方を発現する、医薬組成物またはキット。
【請求項2】
前記CTLA
-4を標的とするmiRNAのシード配列が、配列番号1から配列番号4の核酸配列のいずれか1つを含む、請求項1に記載の組成物またはキット。
【請求項3】
前記エキソモチーフが、配列番号21から配列番号49の核酸配列からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の組成物またはキット。
【請求項4】
前記エキソモチーフが、前記CTLA
-4を標的とするmiRNAのシード配列の下流に位置し、且つそれと共有結合している、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項5】
前記エキソモチーフが、前記CTLA
-4を標的とするmiRNAのシード配列以外の1つ又は複数の核酸の突然変異によって得られる、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項6】
前記エキソモチーフが、2つの単一のエキソモチーフの組み合わせによって生成される2つ折りのモチーフであり、前記2つの単一のエキソモチーフのいずれかが、配列番号21から配列番号47の核酸配列からなる群より選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項7】
前記2つ折りのモチーフが、配列番号48の核酸配列を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項8】
作動可能に連結された場合、前記CTLA
-4を標的とするmiRNAと前記エキソモチーフは、少なくとも1つのヌクレオチドもしくは2つのヌクレオチドを共有するか、又はリンカーによって接続される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項9】
前記リンカーが、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U)からなる群より選択される2つ又はそれ以上のヌクレオチドからなる、請求項8に記載の組成物またはキット。
【請求項10】
前記リンカーが-GC-である、請求項9に記載の組成物またはキット。
【請求項11】
作動可能に連結された場合、前記CTLA
-4を標的とするmiRNAと前記エキソモチーフは、配列番号7の核酸配列を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項12】
前記HSV-1がHSV-1のF株である、請求項
1に記載の組成物またはキット。
【請求項13】
天然骨格の117005から132096までのヌクレオチド配列の断片が削除されている、請求項
12に記載の組成物またはキット。
【請求項14】
前記腫瘍が悪性腫瘍である、請求項1から
13のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項15】
前記悪性腫瘍が、黒色腫、線維肉腫、粘液肉腫、軟骨肉腫、骨形成性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、膵がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支原性がん、腎細胞がん、肝がん、胆管がん、絨毛がん、セミノーマ、胚性がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、胃がん及び前胃がんからなる群より選択される、請求項
14に記載の組成物またはキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍を治療するための医薬組成物に関し、特に、治療有効量の、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームと、治療有効量の腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(oHSV)とを含む医薬組成物に関する。本発明はまた、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームとoHSVとを含むキット、並びに前記医薬組成物及び前記キットを使用して腫瘍を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんとは特定の治療法に屈するものや様々な治療法に耐性を生じるものがあって、多面的な疾患として知られている。腫瘍内の細胞のサブセットは従来の治療法に耐性があり、疾患を再発させる原因でもある。
【0003】
がんの外科的治療は一般的な局所治療である。白血病やリンパ腫などの血液系のいくつかの悪性腫瘍に加えて、他の様々な悪性腫瘍として外科的に除去できる1種又は複数種の有形の固形腫瘍がある。ただし、手術はリスクを伴うもので、多くの場合は他の合併症や潜在的な臓器機能障害がある。
【0004】
これまでに、がんの非外科的治療(主に従来の化学療法、標的化生物学的療法及び放射線療法)は完全に満足のいく結果を生み出していない。問題として取り上げられてきているものとしては、標的選択性の低さ、薬剤耐性、転移性疾患に効果的に対処できないこと、重篤な副作用がある。対照的に、腫瘍に対する全身性応答を誘発するために全体的に宿主免疫を誘発する免疫療法は、当面臨床的に大いに見込まれている。
【0005】
腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(oHSV)は、固形腫瘍の治療のために広く研究されている。それは一群のものとして従来のがん治療法に比べて多くの利点がある。具体的には、oHSVは一般に自然免疫の何らかの側面による阻害を受けやすくする突然変異を具現化している。結果として、それらは感染に対する1腫又は複数種の自然免疫応答が損なわれているがん細胞では複製されるが、自然免疫応答が損なわれていない正常な細胞では複製されない。oHSVは通常、ウイルスが複製できる腫瘍塊に直接送達される。全身ではなく標的組織に送達されるため、抗がん剤の特性ともいうべき副作用は持たない。ウイルスは、複数回投与されるとその能力を低下させる獲得免疫応答を特徴的に誘発する。oHSVは、効力の喪失や炎症反応などの有害事象を誘発する証拠なしに幾たびも腫瘍に投与されている。HSVは、そのゲノムに外来DNAを組み込み、腫瘍への投与時にこれらの遺伝子の発現を調節することができる大きなDNAウイルスである。oHSVにおける使用に適する外来遺伝子は腫瘍に対する獲得免疫応答を誘発するために役立つ遺伝子である。
【0006】
細胞の自然免疫応答を克服するという欠陥は、当該ウイルスが抗がん剤として腫瘍溶解oHSVとしても働く腫瘍の範囲を決定している。欠失が広範であるほど、欠失したウイルス遺伝子の機能に依存するoHSVが有効となるがん細胞の範囲は狭い。最新のoHSVの殆どには、抗がん作用を強化するための少なくとも1つの細胞遺伝子が組み込まれている。
【0007】
oHSVベースの治療法の成功はがん細胞の破壊の程度にかかっている。oHSVの開発の初期には、HSVだけでは固形腫瘍の全てのがん細胞を殺すことができず、oHSV治療で全てのがん細胞を効果的に排除する可能性は低く、臨床試験からoHSVによる腫瘍の破壊には腫瘍に対する獲得免疫応答を必要とするということが認識されていた。さらなる研究により、感染した腫瘍細胞の破片によって生成される抗腫瘍免疫応答はサイトカインの組み込みによって増強される可能性があるということが示されている。サイトカイン遺伝子が欠けたoHSVと免疫刺激性サイトカインを組み込んだoHSVとの比較により、この仮説が確認され、最終的には黒色腫の治療のために開発されたoHSVへのGM-CSFの組み込みにつながったのである。
【0008】
免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子を組み込むと、腫瘍に対する免疫応答が増強されるが、抗腫瘍効果にとって重要なT細胞によって引き起こされる細胞毒性の効果的な増強は認められなかった。腫瘍はPD-1及びCTLA4阻害経路を利用して免疫系を沈黙させる。PD-1は活性化T細胞及びその他の造血細胞において発現され、CTLA4は制御性T細胞を含め活性化T細胞において発現される。腫瘍はPD-1及びCTLA4阻害経路を利用して宿主免疫応答を回避する。
【0009】
前臨床及び臨床的な設定下で広範な研究と試験があるにも関わらず、腫瘍の治療方法にはニーズが満たされていないままである。
【発明の概要】
【0010】
概要
本発明の一態様は、治療有効量の、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームと、治療有効量の、免疫刺激剤又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現する腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(oHSV)とを含む医薬組成物に関する。
【0011】
前記エクソソームは、前記CTLA4を標的とするmiRNAに、任意選択でリンカーによって作動可能に連結されたエクソソームパッケージング関連モチーフ(以下、「エキソモチーフ」ともいう)を含む。一実施形態において、前記エクソソームは阻害量のCTLA4を標的とするmiRNAを含み、ただし前記CTLA4を標的とするmiRNAはCTLA4のmRNAに結合するシード配列を有し、且つエキソモチーフは、CTLA4を標的とするmiRNAのシード配列に作動可能に連結されて前記CTLA4を標的とするmiRNAのエクソソームへのパッケージングを増強する。いくつかの実施形態において、前記エキソモチーフは、CTLA4を標的とするmiRNAのシード配列の下流に位置し、且つそれと共有結合している。いくつかの実施形態において、前記エキソモチーフは、前記CTLA4を標的とするmiRNAのシード配列の下流に位置し、且つリンカーによってそれとリンクされている。いくつかの実施形態において、前記エキソモチーフは前記CTLA4を標的とするmiRNAのシード配列以外の1つ又は複数の核酸の突然変異によって得られる。いくつかの実施形態において、前記エキソモチーフは、2つの単一のエキソモチーフの組み合わせによって生成される2つ折りのモチーフである。いくつかの実施形態において、作動可能に連結された場合、前記CTLA4を標的とするmiRNAと前記エキソモチーフは少なくとも1つ又は2つのヌクレオチドを共有する。
【0012】
oHSVは、免疫刺激剤又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現する組換え腫瘍溶解性HSV-1である。
【0013】
本発明の別の態様は、治療有効量の、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームと、治療有効量のoHSVと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。前記エクソソームは、前記CTLA4を標的とするmiRNAに、任意選択でリンカーによって作動可能に連結されたエクソソームパッケージング関連モチーフを含む。前記oHSVは、免疫刺激剤又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現する。
【0014】
本発明の別の態様は、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームと、免疫刺激剤又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現するoHSVとを含む腫瘍を治療するためのキットに関する。前記キットは、腫瘍を治療するための前記エクソソーム及び前記oHSVの使用の説明書をさらに含んでもよい。
【0015】
本発明のさらなる態様は、治療有効量の、CTLA4を標的とするmiRNAを担持する前記エクソソームと、治療有効量の、免疫刺激剤又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現するoHSVとを同時に対象に投与することを含む対象の腫瘍を治療するための方法に関する。
【0016】
本発明のさらなる態様は、それを必要とする対象に、oHSV療法に加えて、治療有効量の、本発明のCTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームを投与することを含む、対象におけるoHSV療法の有効性を増強するための方法に関する。
【0017】
本発明の他の態様は、以下の説明を読むことで容易に得るものであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】パネルAはCTLA4を標的とするmiRNAをコードするプラスミドの模式図である。前記プラスミドは、その3’-UTRにCTLA4遺伝子を標的とするように設計されたmiRNA(miR-CTLA-4)をコードする配列を含むEGFPをコードする配列から構成されている。パネルBは、マウスCTLA4遺伝子を標的とするmiRNAのヌクレオチド配列を示す。太字、斜体、下線で強調表示されているヌクレオチドはエクソソームパッケージング関連モチーフ(エキソモチーフ)を表す。パネルCは設計されたmiRNAによるCTLA4のダウンレギュレーションを示す。24ウェルプレートに播種されたHEp-2細胞に、CTLA4(1#-10#)に対するmiRNA又は非標的miRNA(NT)をコードする10のDNA配列を発現する0.25μgのプラスミドと、Hisタグ付きマウスCTLA4(Hisタグ付きCTLA4)をコードする0.25μgのプラスミドとをコトランスフェクトしていた。72時間のトランスフェクション後に細胞を回収した。CTLA4及びGAPDHの蓄積は、当業者に知られているように測定された。
【
図2】miR-CTLA-4を担持するエクソソームの特性研究である。T150フラスコに播種されたHEp-2細胞に10μgのmiR-CTLA-4-3#プラスミド又は非標的miRNA(NT)を発現するプラスミドをトランスフェクトし、その後、無血清培地でインキュベートした。48時間後、培地を収集し、材料と方法で説明されているようにエクソソームを精製した。精製されたエクソソームは2つの一連の分析にかけられた。まず(パネルA)、エクソソームを生成する等量の細胞と等量のエクソソームが可溶化され、変性ゲルで電気泳動にかけられ、CD9、フロチリン-1(Flotilin-1)及びカルネキシン(Calnexin)に対する抗体によってプローブされた。一般的に、精製されたエクソソームにはCD9、フロチリン-1(Flotilin-1)が含まれており、カルネキシン(Calnexin)は含まれない。トランスフェクトされた細胞によって生成されたエクソソーム(パネルB)のサイズ分布は、材料と方法で説明されているように得られたものである。
【
図3】miR-CTLA-4を担持するエクソソームを単独で投与した場合(パネルA)、又はT1012G(パネルB)、T2850(パネルC)又はT3855(パネルD)と同時に投与した場合のMFC腫瘍の成長への影響である。MFC腫瘍細胞をC57BL/6Jマウスの右脇腹に皮下注射した。平均80mm
3のMFC腫瘍を、8匹1群の動物に10μgのエクソソームと単独で注射し、又は50μLの1×10
7pfuのT1012G、T2850又はT3855と同時に注射した。全ての研究が同時に行われており、結果は4つのパネルに示す。腫瘍体積は各群の8匹の動物の平均値±SEMとして示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
「一」又は「1つ」の実体という表現は当該実体の1つ又は複数を指すということに留意されたい。例えば、「エクソソーム」は1つ又は複数のエクソソームを表すと理解されている。したがって、用語「1つ」、「1つ又は複数」及び「少なくとも1つ」は本明細書で入れ替わって使用される。
【0020】
「相同性」、「同一性」又は「類似性」とは2つのペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は比較のために整列され得る各配列の位置を比較することによって決定することができる。比較された配列の位置が同じ塩基又はアミノ酸で占められている場合、当該分子はその位置において相同である。配列間の相同性の程度は配列によって共有される一致する又は相同の位置の数の関数である。「無関係の」又は「非相同の」配列は本開示の配列の1つと、40%未満の同一性、好ましくは25%未満の同一性を共有する。
【0021】
ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド領域(又は1つのポリペプチド又はポリペプチド領域)が別の配列と特定のパーセンテージ(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%)の「配列同一性」を有するとは、整列された時、当該2つの配列を比較する際に塩基(又はアミノ酸)の当該パーセンテージが同じであることを意味する。この整列及びパーセンテージ相同性又は配列同一性は、当技術分野で知られているソフトウェアプログラムを使用して決定することができる。
【0022】
本明細書で使用される「リンカー」という用語は、同じ又は異なる2つ又はそれ以上のヌクレオチドを含むヌクレオチド配列の短い断片を指し、前記ヌクレオチドはアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U)からなる群より選択される。
【0023】
本明細書で使用される「治療」(“treat”または“treatment”)という用語は、治療目的の処置と予防的な手段の両方を指し、目的は腫瘍の進行などの望ましくない生理学的変化又は障害を予防又は減速(軽減)することである。有益な又は望ましい臨床結果には、症状の緩和、疾患の程度の軽減、腫瘍の安定した(すなわち、悪化しない)状態、腫瘍成長の阻害、腫瘍の体積の減少、腫瘍の進行の遅延又は減速、腫瘍の状態の改善又は軽減及び寛解(部分的又は全体的)が含まれるが、これらに限定されず、しかも検出可能か検出不可能かは問わない。治療を必要とする者には、既に腫瘍を持っている者だけでなく、腫瘍が生じがちの者も含まれる。
【0024】
「対象」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳動物」とは、診断、予後又は治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象には、人間、家畜、農場動物、動物園の動物、競技動物又は愛玩動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、乳牛などが含まれる。本明細書で対象としてヒトは好ましい。
【0025】
本明細書で使用される「治療を必要とする患者」又は「治療を必要とする対象」などの表現には、例えば、検出、診断手順及び/又は治療のための本開示の組成物の投与から利益を得る対象、例えば、哺乳動物対象が含まれる。
【0026】
本発明では、とりわけCTLA4をコードする核酸分子の機能又は効果を調節するために、アンチセンスオリゴマー及び類似の種が使用される。本発明のオリゴマーとその標的核酸のハイブリダイゼーションは、一般に「アンチセンス」と呼ばれる。結果として、本発明のいくつかの好ましい実施形態の実施に含まれると考えられる好ましいメカニズムは、本明細書では「アンチセンス阻害」と呼ばれる。そのようなアンチセンス阻害は、典型的にはオリゴヌクレオチド鎖又はセグメントの水素結合に基づくハイブリダイゼーションに基づくもので、その結果、少なくとも1つの鎖又はセグメントが切断、分解され又はその他の方法で作動不能になる。これに関しては、現在そのようなアンチセンス阻害のために特定の核酸分子及びそれらの機能を標的とすることが好ましい。
【0027】
干渉されるRNAの機能には、タンパク質翻訳部位へのRNAの転移、RNA合成部位から離れている細胞内の部位へのRNAの転移、RNAからのタンパク質の翻訳、1つ又は複数のRNA種を生成するためのRNAのスプライシング、RNAに関与し又は促進される可能性のあるRNAが関与する触媒活性又は複合体の形成が含まれてもよい。標的核酸の機能に対するそのような干渉の好ましい結果は、CTLA4の発現の調節である。本発明の文脈において、「調節」及び「発現の調節」は、遺伝子、例えば、DNA又はRNAをコードする核酸分子の量又はレベルの減少(阻害)を意味する。mRNAは常に好ましい標的核酸である。
【0028】
本発明の文脈において、「ハイブリダイゼーション」は、オリゴマーの相補的な鎖の対形成を意味する。本発明において、対形成の好ましいメカニズムは、オリゴマー化合物の鎖の相補的なヌクレオシド又はヌクレオチド塩基(核酸塩基)間の、ワトソンクリック(Watson-Crick)、フーグスティーン(Hoogsteen)又は逆フーグスティーン(reversed Hoogsteen)水素結合といった水素結合を含む。例えば、アデニンとチミンは水素結合の形成を通じて対になる相補的核酸塩基である。ハイブリダイゼーションは様々な状況において発生する。
【0029】
本発明において、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」又は「ストリンジェントな条件」という表現は、本発明の化合物がその標的配列に、しかも最小数の他の配列にハイブリダイズする条件を指す。ストリンジェントな条件は配列に依存し、状況が異なればそれが異なり、本発明の文脈において、オリゴマー化合物が標的配列にハイブリダイズする「ストリンジェントな条件」は、オリゴマーの性質及び組成並びにそれらを研究するアッセイによって決定される。
【0030】
本明細書で使用される「相補的」は、オリゴマー化合物の2つの核酸塩基間の正確な対形成のための能力を指す。例えば、オリゴヌクレオチド(オリゴマー化合物)の特定の位置にある核酸塩基が、標的核酸の特定の位置にある核酸塩基と水素結合できる場合、前記標的核酸はDNA、RNA又はオリゴヌクレオチド分子である。その場合、オリゴヌクレオチドと標的核酸との間の水素結合の位置は相補的な位置と見なされる。当該オリゴヌクレオチド及び更なるDNA、RNA又はオリゴヌクレオチド分子は、各分子内の十分な数の相補的な位置が互いに水素結合できる核酸塩基によって占められている場合に、互いに相補的である。したがって、「特異的にハイブリダイズ可能」及び「相補的」は、オリゴヌクレオチドと標的核酸との間に安定的かつ特異的な結合が起こるように、十分な数の核酸塩基に対する十分な程度の正確な対形成又は相補性を表すために使用される用語である。
【0031】
当技術分野において、アンチセンスオリゴマーの配列は、特異的にハイブリダイズ可能となるためにその標的核酸の配列に対して100%相補的である必要がないことが理解される。さらに、オリゴヌクレオチドは、介在又は隣接するセグメントがハイブリダイゼーションイベント(例えば、ループ構造又はヘアピン構造)に関与しないように、1つ又は複数のセグメントにわたってハイブリダイズしてもよい。本発明のアンチセンス化合物は、標的核酸内の標的領域に対して少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%の配列相補性を含むことが好ましく、それらは少なくとも90%の配列相補性を含むことがより好ましく、それらは標的とされる標的核酸配列内の標的領域に対して少なくとも95%又は少なくとも99%の配列相補性を含むことがさらに好ましい。例えば、アンチセンスオリゴマーの20個の核酸塩基のうち18個が標的領域に相補的であり、したがって特異的にハイブリダイズするアンチセンス化合物は、90%の相補性を表すものであろう。この例では、残りの非相補的核酸塩基は、相補的な核酸塩基とクラスター化されるか又は散在している可能性があり、互いに又は相補的な核酸塩基に隣接している必要はない。したがって、標的核酸と完全に相補的な2つの領域に隣接する4つの非相補的な核酸塩基を有する長さが18個の核酸塩基のアンチセンスオリゴマーは、標的核酸と77.8%の全体的な相補性を有し、したがって本発明の範囲に属する。当技術分野で知られているBLASTプログラム(基本的な局所整列検索ツール)及びPowerBLASTプログラムを使用して標的核酸の領域とのアンチセンス化合物の相補パーセンテージを決定することができる。
【0032】
本発明の文脈において、「オリゴヌクレオチド」という用語は、リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA)のオリゴマー又はポリマー、あるいはその模倣物、キメラ、類似体及び同族体を指す。当該用語には、天然に存在する核酸塩基、糖及び共有ヌクレオシド間(骨格)結合から構成されるオリゴヌクレオチド、並びに同じように機能する非天然に存在する部分を有するオリゴヌクレオチドが含まれる。そのような改変又は置換されたオリゴヌクレオチドは、例えば、増強された細胞への取り込み、標的核酸に対する増強された親和性、及びヌクレアーゼの存在下で増加した安定性などの望ましい特性により一般に天然の形態よりも好ましい。
【0033】
本明細書で使用される用語「microRNA」、「miRNA」又は「miR」とは、一般に標的メッセンジャーRNA(mRNA)転写物の3つのプライム(3’)非翻訳領域(3’UTRs)の相補配列に結合することによって、一般に遺伝子サイレンシングを引き起こす、遺伝子の発現を調節するために転写後に機能するRNAを指す。miRNAは、典型的には長さが21又は22のヌクレオチドの小さな調節RNA分子である。用語「microRNA」、「miRNA」及び「miR」は入れ替わって使用される。
【0034】
本明細書で使用される「腫瘍」という用語は、制御不能に成長する形質転換細胞を含む悪性組織(すなわち、過剰増殖性疾患)を指す。腫瘍には、白血病、リンパ腫、骨髄腫、形質細胞腫など、及び固形腫瘍が含まれる。本発明に基づいて治療できる固形腫瘍の例には、肉腫及びがん腫、例えば、黒色腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨形成性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫(Ewing’s tumor)、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、膵がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支原性がん、腎細胞がん、肝がん、胆管がん、絨毛がん、セミノーマ、胚性がん、ウィルムス腫瘍(Wilms’ tumor)、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、胃がん及び前胃がんが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書で使用される「CTLA4」という用語は、共刺激を阻害し、且つ阻害シグナルをT細胞に伝達することによってT細胞活性化を弱めることができる多くの共抑制分子の1つである「細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4」を指す。CTLA4のアミノ酸配列は、アクセッション番号NP_033973.2又はNP_001268905.1にてNCBIより利用できる。CTLA4はCtla-4、Cd152又はLy-56としても知られる。CTLA4のNCBI配列アクセッション番号はNC_000067.6で、遺伝子IDは12477である。ヒトCTLA4遺伝子は免疫グロブリンスーパーファミリーに属する233のアミノ酸のタンパク質をコードする。CTLA4は2つの疎水性領域に隣接する1つのV様ドメインで構成されている。CTLA4はT細胞の増殖とCTLA4の分化で極めて重要な役割を果たす免疫シナプスの構造を変化させることもできる。CTLA4の多型はI型糖尿病、原発性胆汁性肝硬変、バセドウ病(Graves’ disease)などの複数の疾患に対する感受性と関連している。
【0036】
本明細書で使用される「IL-12」という用語は、強力な抗腫瘍効果を有するサイトカインである「インターロイキン12」を指す。したがって、IL-12がTH-1タイプの免疫応答を誘発し、これは永続的な抗腫瘍効果をもたらす可能性がある。IL-12は、インビボでの抗血管新生活性を有し、これもその抗腫瘍効果に寄与することが報告されている。IL-12は、CTL、ナチュラルキラー細胞及びマクロファージの活性化の刺激やクラスIIMHC抗原の発現の誘発/増強といった能力を含む複数の免疫調節効果を持つIFN-γの高レベル産生を刺激することが最近報告されている。IFN-γは、腫瘍部位へのT細胞の遊走を誘発するプロセスにおいて重要な役割を果たす。IFN-γの腫瘍内レベルの増加は腫瘍量のサイズの減少と関連している。
【0037】
プログラム細胞死1(PD-1)はアポトーシスを起こしているマウスT細胞株のサブトラクティブハイブリダイゼーションによって最初に同定された50-55kDaのI型膜貫通型受容体である(Ishida et al.,1992,Embo J.11:3887-95)。CD28遺伝子ファミリーのメンバーであるPD-1は活性化されたT、B細胞及び骨髄系細胞において発現される(Greenwald et al.,2005.Annu.Rev.Immunol.23:515-48;Sharpe et al.,2007,Nat.Immunol.8:239-45)。ヒトとマウスのD-1は約60%のアミノ酸同一性を共有し、しかもIg-Vドメインを定義する4つの潜在的なN-グリコシル化部位と残基が保存されている。PD-1はT細胞の活性化を負に調節し、当該阻害機能はその細胞質ドメインの免疫受容体チロシンベースの抑制モチーフ(ITIM)と関連している(Parry et al.,2005,Mol.Cell.Biol.25:9543-53)。PD-1のこの阻害機能の崩壊は自己免疫につながる可能性がある。
【0038】
本明細書で使用される「抗体」又は「抗原結合ポリペプチド」は、1つ又は複数の抗原を特異的に認識してそれと結合するポリペプチド又はポリペプチド複合体を指す。抗体は、全抗体及びその任意の抗原結合断片又はその一本鎖であってもよい。したがって、「抗体」という用語は、抗原に結合する生物学的活性を有する免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む任意のタンパク質又はペプチド含有分子を含む。その例には、重鎖又は軽鎖の相補性決定領域(CDR)又はそのリガンド結合部分、重鎖又は軽鎖可変領域、重鎖又は軽鎖定常領域、フレームワーク(FR)領域又はその任意の部分、又は結合タンパク質の少なくとも1つの部分が含まれるが、これらに限定されない。抗体という用語にはまた、活性化時に抗原結合能力を有するポリペプチド又はポリペプチド複合体が含まれる。
【0039】
「治療有効量」とは、本開示の腫瘍溶解ウイルス及び/又はエクソソームが、上記の「治療」に十分な量で投与されることを意味する。特定の個体の障害又は状態の治療に治療的に有効な量は疾患の症状及び重症度に依存し、且つ標準的な臨床技術によって決定することができる。さらに、最適な用量範囲を決定することの手助けとして、インビトロ又はインビボアッセイを任意選択で使用することができる。製剤に使用される正確な用量は投与経路、及び疾患又は障害の重症度にも依存し、開業医の判断及び各患者の状況に応じて決定すべきである。有効な用量は、インビトロ又は動物モデル試験システムから得られた用量反応曲線から推定することができる。
【0040】
CTLA4を標的とするmiRNA
本明細書で入れ替わって使用される「CTLA4を標的とする複数のmiRNA」、「CTLA4を標的とする1つのmiRNA」、「CTLA4を標的とするmiRNA」といった用語は、細胞内でのCTLA4の転写、翻訳そして発現が損なわれるか、減少するか又は排除されるよう、タンパク質CTLA4をコードするmRNAを標的とし又はそれと特異的に結合するように設計された小さな非コードRNA(microRNA又はmiRNA)を指す。上記で説明されているように、miRNAは必ずしも100%の特異性で標的mRNAに結合するとは限らない。miRNAは、標的mRNAへの結合の特異性を決定するシード配列(5’末端から2つ-8つのヌクレオチド)を持っていることが知られているが、残りのヌクレオチドは必ずしも標的mRNAと正確に相補的ではない。したがって、一実施形態において、前記miRNAは、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4のヌクレオチド配列のいずれかのシード配列を有する。いくつかの実施形態において、CTLA4を標的とするmiRNAは、細胞に送達された後、細胞におけるCTLA4タンパク質の発現を遮断する。
【0041】
CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソーム
エクソソームは細胞膜に由来する小さくて比較的均一なサイズの小胞である。例えば、エクソソームは約30-約100nmの直径を有する。それらはいくつかの重要なタンパク質(例えば、CD9、CD63、CD81、CD82、アネキシン、フロチリン(Flotillin)など)を含み、さらにそれらはタンパク質、mRNA、長鎖ノンコーディングRNA及びmiRNAをパッケージングする。エクソソームはペイロードを1つの細胞から別の細胞に輸送する。レシピエント細胞に入ると、エクソソームペイロードが細胞質に放出される。
【0042】
いくつかの実施形態において、CTLA4を標的とするmiRNAは、エクソソームを介して細胞に送達される。したがって、一実施形態において、上記で説明されているようなCTLA4を標的とするmiRNAのいずれかを担持するエクソソームが提供される。本発明では、「エキソモチーフ」と呼ばれるヌクレオチド配列の断片を使用してmiRNAのエクソソームへのパッケージングを促進又は増強する。一実施形態において、前記エキソモチーフは表1に記載されているいずれかの配列から選択される。
【0043】
【0044】
いくつかの実施形態において、前記エキソモチーフは組み合わせて使用される。例えば、表に記載されている2つ又はそれ以上のエキソモチーフを組み合わせて2つ折りのエキソモチーフを形成する。当該モチーフは、あるエキソモチーフの5’末端を別のエキソモチーフの3’末端にリンクすることによって線形結合されてもよい。これに関連して、あるエキソモチーフの5’末端の最初のヌクレオチドが別のエキソモチーフの3’末端の最後のヌクレオチドと同じである場合に、同じヌクレオチドの1つを省略できるように設計することができる。例えば、「GGAG」(配列番号21)が「GGAC」(配列番号22)と組み合わされて2つ折りのエキソモチーフ「GGAGGAC」(配列番号48)を形成する。あるエキソモチーフの5’末端の最初のヌクレオチドが別のエキソモチーフの3’末端の最後のヌクレオチドと異なる場合に、当該2つのエキソモチーフはリンカーによって又は共有結合によって直接的に接続されてもよい。例えば、「GGAC」(配列番号22)はリンカー「UG」によって「GGAG」(配列番号21)と組み合わされて2つ折りのエキソモチーフ「GGACUGGGAG」(配列番号49)を形成することができ、「GGAC」(配列番号22)はまた、共有結合によって「GGAG」(配列番号21)と組み合わされて2つ折りのエキソモチーフ「GGACGGAG」(配列番号51)を形成することができる。本発明ではまた、3つ折り又はそれ以上のエキソモチーフ、すなわち配列番号21から配列番号47の3つ又はそれ以上のモチーフからなるエキソモチーフも検討される。したがって、本明細書で使用される「エキソモチーフ」という用語は、配列番号21から配列番号47のいずれかの単一のエキソモチーフ、単一のモチーフの組み合わせによって生成されるいずれかの2つ折り(例えば、配列番号48-52のいずれか)、3つ折り又はそれ以上のエキソモチーフを含む、エクソソームへのmiRNAのパッケージングを増強又は促進することができるヌクレオチド配列を含むことを意図する。
【0045】
本発明において、エキソモチーフはmiRNAのシード配列に作動可能に連結されている。「作動可能にリンク」という用語は、エクソソームへのmiRNAのパッケージングが増強又は促進される、調節配列(例えば、エクソモチーフ)と核酸配列(例えば、miRNAのシード配列)との間の機能的なリンクを指す。例えば、第1核酸配列が第2核酸配列と機能的な関係に置かれる場合に、第1核酸配列は第2核酸配列に作動可能に連結される。作動可能に連結されたRNA配列は互いに隣接してもよいし、リンカーによって接続されてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、エキソモチーフはmiRNAのシード配列の下流に位置する。いくつかの実施形態において、エキソモチーフはmiRNAのシード配列の上流に位置する。いくつかの実施形態において、前記miRNAのシード配列はエキソモチーフに隣接している。一実施形態において、エキソモチーフはmiRNAのシード配列に作動可能に連結されている。一実施形態において、エキソモチーフはmiRNAのシード配列以外の1つ又は複数のヌクレオチド配列の突然変異によって得られる。一実施形態において、エキソモチーフを有する前記CTLA4を標的とするmiRNAは配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8のヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、エキソモチーフを有する前記CTLA4を標的とするmiRNAは配列番号5、配列番号6、配列番号7又は配列番号8のヌクレオチド配列である。
【0047】
エキソモチーフがmiRNAのシード配列の下流に位置するいくつかの実施形態において、シード配列の3’末端の最後のヌクレオチドとエキソモチーフの5’末端の最初のヌクレオチドは同じヌクレオチド、例えば、グアニンヌクレオチド「G」を共有する。例えば、配列番号6はエキソモチーフとシード配列との間のグアニンヌクレオチド「G」の共有を示している。エキソモチーフがmiRNAのシード配列の下流に位置するいくつかの実施形態において、シード配列の3’末端の最後の2つのヌクレオチドとエキソモチーフの5’末端の最初の2つのヌクレオチドは2つの同じヌクレオチド、例えば、2つのグアニンヌクレオチド「GG」を共有する。例えば、配列番号8はエキソモチーフとシード配列との間の2つのグアニンヌクレオチド「GG」の共有を示している。
【0048】
いくつかの実施形態において、エキソモチーフはmiRNAのシード配列の下流に位置し、リンカー、例えば、「GC」によってmiRNAのシード配列に接続される。例えば、配列番号7はエキソモチーフとシード配列がリンカー「GC」によって接続されていることを示している。
【0049】
シード配列とエキソモチーフに加えて、miRNAにはmRNAの標的領域への結合を促進する追加の核酸配列も含まれている。これらの追加の核酸は通常、エキソモチーフの下流に位置し、しかも数ヌクレオチド、例えば、1つから10のヌクレオチドの長さを有する。追加の核酸配列は好ましくは標的mRNAの対応するセグメントに相補的であるが、上記で説明されているように、必ずしも100%相補的であるとは限らない。
【0050】
実施例に記載されるように、miRNA発現ベクター及びCTLA4をコードするプラスミドで細胞をコトランスフェクトするなど、miRNAをエクソソームに転移するための方法は当技術分野で利用可能である。エクソソームの分離、同定又は特性研究は当技術分野で技術的に実現が可能である。CD9、CD63、CD81、CD82、アネキシン、フロチリン(Flotillin)などのいくつかのタンパク質は、エクソソームのマーカーとして使用できる。miRNAをエクソソームにパッケージングするための他の方法も本発明に適用できる。
【0051】
本発明のエクソソームは、阻害量のCTLA4を標的とするmiRNAを含む。阻害量とは、対象となるmiRNAが腫瘍細胞に送達された後、タンパク質CTLA4の発現を阻害するのに十分な量を意味する。
【0052】
以下の表は、本発明の実施例で使用されるmiRNA、シード配列、及びmiRNA-モチーフの核酸配列を示している。
【0053】
【0054】
腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(oHSV)
本明細書で使用される腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(oHSV)は、腫瘍細胞の破壊に利用可能で又は効果的であるように設計される、当技術分野で知られている任意の腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1)を指す。さらに、本発明で使用されるoHSVはまた、天然のoHSVの1つ又は複数の特徴が削除されるように遺伝子操作することができる。さらに又は代わりに、天然に存在するoHSVは、免疫療法又は免疫刺激特性などのウイルスの1つ又は複数の追加の機能を提供するように、ウイルスのゲノムにコード配列の1つ又は複数の外因性断片を導入するように遺伝子操作されてもよい。
【0055】
本開示に従って削除されるヌクレオチドの正確な開始位置及び終了位置はHSV-1ウイルスの株及びゲノム異性体に依存しており、当技術分野の既知の技術によって容易に決定されるということは当業者が理解しているであろう。いくつかの実施形態において、欠失はゲノムのヌクレオチド117005から132096の切除を引き起こす。いくつかの実施形態において、oHSVは、HSV-1の株17(GenBankアクセッション番号NC001806.2)、株KOS1.1(GenBankアクセッション番号KT899744)又は株F(GenBankアクセッション番号GU734771.1)から選択される。いくつかの実施形態において、oHSVはHSV-1の株Fである。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記oHSVはGM-CSF、IL-2、IL-5、IL-12、IL-15、IL-24及びIL-27から選択される免疫刺激剤を発現する遺伝子操作されたHSV-1 F株である。いくつかの実施形態において、前記oHSVはIL-12のみを発現する遺伝子操作されたHSV-1 F株である。いくつかの実施形態において、前記oHSVはIL-12と抗PD-1抗体の両方を発現する遺伝子操作されたHSV-1 F株である。
【0057】
方法と治療法
本開示の一態様は、それを必要とする対象に、治療有効量の、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームと治療有効量の、免疫刺激剤又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現するoHSVとを投与することを含む、対象の腫瘍の治療方法を提供する。
【0058】
本開示の一態様は、それを必要とする対象に、oHSV療法に加えて治療有効量の本発明のCTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームを投与することを含む、対象におけるoHSV療法の有効性を増強するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、oHSVは免疫刺激剤を発現する、又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現する。いくつかの実施形態において、oHSVは、IL-12のみを発現する。いくつかの実施形態において、oHSVはIL-12及び抗PD-1抗体を発現する。
【0059】
いくつかの実施形態において、本開示の方法では、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームと免疫刺激剤又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現するoHSVの投与は、治療有効量の、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームと、治療有効量の、免疫刺激剤又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現するoHSVと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を対象に投与することによって実行される。
【0060】
いくつかの実施形態において、本開示の方法では、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソーム及び免疫刺激剤又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現するoHSVの投与は、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームと、免疫刺激剤又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現するoHSVをそれぞれ対象に投与することによって実行される。いくつかの実施形態において、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームは、免疫刺激剤又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現するoHSVの投与の前、それと同時又はその後に投与される。そのような場合には、互いに約12から72時間以内に2つの形態で対象に投与してもよいということは考えられる。状況によっては、治療期間を大幅に延長することが望ましい場合があるが、それぞれの投与の間には数日(2、3、4、5、6又は7日)から数週間(1、2、3、4、5、6、7又は8)が経過する。
【0061】
いくつかの実施形態において、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームは、免疫刺激剤又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現するoHSVと同時に投与される。いくつかの実施形態において、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームは、治療有効量の、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームと薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物の形態で投与され、且つ免疫刺激剤又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現するoHSVは治療有効量の、免疫刺激剤又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現するoHSVと薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物の形態で投与される。そのような実施形態において、治療有効量の、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームと薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物と、治療有効量の、免疫刺激剤又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現するoHSVと薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を1つのキットにパッケージングすることができる。
【0062】
特定の実施形態において、医薬組成物のいずれかは非経口的又は経口的に、例えば、腫瘍内、静脈内、筋肉内、経皮的又は皮内に投与される。いくつかの実施形態において、医薬組成物のいずれかは、好ましくは腫瘍内に投与される。
【0063】
特定の実施形態において、腫瘍の治療方法は、例えば、腫瘍の成長を阻害すること、及び/又は腫瘍の体積を減少することに関して、oHSV療法の抗腫瘍有効性を増強することである。したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、上記で説明されているように、それを必要とする対象に治療有効量のエクソソームを、治療有効量のoHSVと組み合わせて投与することを含む腫瘍の治療方法を提供する。特定の実施形態において、腫瘍の治療方法は腫瘍に関連する症状の発症、進行及び/又は再発を予防する。したがって、いくつかの実施形態において、対象の腫瘍に関連する症状を予防するための方法は、上記で説明されている治療有効量のエクソソーム及び治療有効量のoHSVを、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記oHSVはGM-CSF、IL-2、IL-5、IL-12、IL-15、IL-24及びIL-27から選択される免疫刺激剤を発現する遺伝子操作されたHSV-1 F株である。いくつかの実施形態において、前記oHSVはIL-12のみを発現する遺伝子操作されたHSV-1 F株である。いくつかの実施形態において、前記oHSVはIL-12と抗PD-1抗体の両方を発現する遺伝子操作されたHSV-1 F株である。
【0065】
本開示の方法は、様々な腫瘍、特には固形腫瘍を治療するために考案される。本発明に基づいて治療できる固形腫瘍の例には、肉腫及びがん腫、例えば、黒色腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨形成性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、膵がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支原性がん、腎細胞がん、肝がん、胆管がん、絨毛がん、セミノーマ、胚性がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、胃がん及び前胃がんが含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
医薬組成物とキット
本開示の一態様は、上記で説明されている治療有効量のエクソソームと治療有効量のoHSVと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。当該医薬組成物は、対象における腫瘍の予防又は治療に有用である。当該医薬組成物は、薬学的に許容される適切な担体又は賦形剤で調製することができる。
【0067】
本開示の別の態様は、上記で説明されている治療有効量のエクソソームと、薬学的に許容される担体とを含む第1医薬組成物を提供する。さらに、上記で説明されている治療有効量のoHSVと、薬学的に許容される担体とを含む第2医薬組成物が提供される。そのような態様において、単一のパッケージングに第1医薬組成物と第2医薬組成物とを含むキットが提供される。当該キットには、医師が臨床的使用中に参照できる使用仕様がさらに含まれてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記oHSVはGM-CSF、IL-2、IL-5、IL-12、IL-15、IL-24及びIL-27から選択される免疫刺激剤を発現する遺伝子操作されたHSV-1 F株である。いくつかの実施形態において、前記oHSVはIL-12のみを発現する遺伝子操作されたHSV-1 F株である。いくつかの実施形態において、前記oHSVはIL-12と抗PD-1抗体の両方を発現する遺伝子操作されたHSV-1 F株である。
【0069】
通常の保管及び使用条件では、これらの製剤/組成物には微生物の成長を防ぐための防腐剤が含まれている。注射可能な使用に適する剤形には、無菌の水溶液又は分散液及び無菌注射溶液又は分散液の即時調製のための無菌粉末が含まれる。全ての場合において、このような形態は無菌でなければならず、且つ注射しやすいように所定の流動性を有する。製造及び保管の条件下で安定しており、且つ細菌や真菌などの微生物の汚染作用から保護されている必要がある。
【0070】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物及び/又は植物油を含む溶媒又は分散媒体であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合に必要な粒子サイズの維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持されてもよい。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされる。多くの場合は、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム又はリン酸緩衝生理食塩水を含めることが好ましいであろう。注射可能な組成物の長期の吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムとゼラチンの組成物での使用によってもたらされる。
【0071】
水溶液での非経口投与の場合は、例えば、必要に応じて溶液を適切に緩衝し、液体希釈剤を最初に十分な生理食塩水又はグルコースで等張にすべき場合がある。これらの特定の水溶液は静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内及び腹腔内投与には特に適する。これに関連して、使用可能な滅菌水性媒体は本開示に照らせば当業者が知るものであろう。例えば、1回の用量を1mLの等張NaCl溶液に溶解して、それを1000mLの皮下注射液に加えるか、又は推奨された注入部位に注射することができる(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版、1035-1038及び1570-1580ページを参照)。用量は、治療される対象の状態に応じて変わるものである。いずれにせよ、投与責任者は個々の対象に適切な用量を決定する。さらに、人間への投与の場合は、製剤はFDAが要求する無菌性、発熱性、一般的な安全性及び純度の基準を満たす必要がある。
【0072】
滅菌注射液は、必要な量の活性化合物を適切な溶媒に、必要に応じて上記に列挙した他の様々な成分とともに組み込んだ後、濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、様々な滅菌された有効成分を基本的な分散媒体及び上に列挙されたものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末の場合は、好ましい調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、これにより事前に滅菌濾過された溶液から有効成分及び任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。
【0073】
本明細書に開示される組成物は中性又は塩の形態で提供されてもよい。薬学的に許容される塩には、(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)酸付加塩が含まれ、これは例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成される。遊離カルボキシ基と形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄などの無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導されてもよい。製剤化の時は、溶液は剤形と適合性のある方法で治療的に有効な量で投与される。当該製剤は、注射可能な溶液、薬物放出カプセルなどの様々な剤形で容易に投与される。
【0074】
本明細書で使用される「担体」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどが含まれる。医薬活性物質へのそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野でよく知られることである。任意の従来の媒体又は薬剤が有効成分と適合しない場合を除いて、前記治療用組成物におけるその使用が予想される。補助的な有効成分も組成物に組み込まれてもよい。
【0075】
「薬学的に許容される」という表現は、ヒトに投与された時にアレルギー性又は同様の有害な反応を生じない分子実体及び組成物を指す。有効成分としてタンパク質を含む水性組成物の調製は当技術分野でよく理解されることである。典型的には、そのような組成物は、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして注射剤として調製され、注射前の液体への溶解又は懸濁に適する固体形態として調製されてもよい。
【実施例】
【0076】
実施例
CTLA4チェックポイントをコードするmRNAが標的となるように特別に設計されたmiRNAを担持し、それを腫瘍細胞に放出するように設計されたエクソソームからなる補助療法の開発について説明する。
【0077】
エクソソームは、サイズとタンパク質の含有量によって治療用途の目的として定義された細胞外小胞である。それらは、それらを生成する細胞にRNAとタンパク質をパッケージングし、且つそれらがさらされる細胞にそれを届ける。このレポートで説明されている研究では、エクソソームのペイロードがmiRNAであることが望ましい。
【0078】
miRNAは、原理的には特定のタンパク質をコードするRNAの複製を制御するために使用できる強力なツールである。目的は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4の複製を遮断でき、且つエクソソームを介して感染細胞に送達されるmiRNAを設計することである。CTLA4をコードするmRNAを標的とする10個のmiRNAを設計した。当該10個のmiRNAのうち、miR-CTLA4-1#、miR-CTLA4-2#、miR-CTLA4-3#及びmiR-CTLA4-6#は感受性細胞へのトランスフェクション後にCTLA4の蓄積を効果的に遮断した。miRNAのエクソソームへのパッケージングを促進するために、miR-CTLA4-3#の配列をエクソソームパッケージングモチーフに組み込んだ。これまでの研究と同様に、miR-CTLA4-3#はエクソソームにパッケージングされ、エクソソームによって感受性細胞に正常に送達され、しかも感受性細胞において少なくとも72時間安定していた。さらに、エクソソームを介して腫瘍に送達されたmiR-CTLA4-3#は、CTLA4の発現を効果的に減少させた。
【0079】
エクソソームへのRNAの組み込みは配列に依存し、且つエクソソームの成分のhnRNPA2B1によって促進される。hnRNPA2B1は、2種の既知のエクソソームパッケージングモチーフ(エキソモチーフ)の1種を含むエクソソームRNAに分類される。hnRNPA2B1の重要な機能は、RNA輸送配列(RTS)と呼ばれる21-ntのRNA配列に結合することによって媒介される、神経細胞の軸索へのmRNA輸送を調節することである。当該配列には両方のエキソモチーフが含まれている。
【0080】
我々は、oHSVのネズミT1、T2及びT3シリーズに対する腫瘍溶解活性に比較的耐性のあるネズミ腫瘍を同定した。oHSVのT1シリーズは免疫調節剤(以下、「T1012G」とも呼ばれる)を発現しないHSV-1 F株である。oHSVのT2シリーズはIL-12のみを発現するHSV-1 F株である(以下、「T2850」とも呼ばれる)。oHSVのT3シリーズはIL-12及び抗PD-1抗体(以下、「T3855」とも呼ばれる)を同時に発現するHSV-1 F株である。
【0081】
実施例は、T3855(又はT2850)及びCTLA4をコードするmRNAを標的とするように設計されたmiRNAを担持するエクソソームを含む組成物を介して腫瘍に送達することによって、T2850、特にT3855の抗腫瘍有効性を増強し、腫瘍の体積を減少させることができることを示している。
【0082】
材料と方法
同系マウスモデルである。MFC腫瘍を受け入れるために同系マウスはBalb/cとした。
【0083】
miR-CTLA-4を発現するプラスミドである。マウスCTLA4に対する標的miRNA配列は、Life TechnologiesのBLOCK-iT(商標)RNAi Designerを使用して設計され、Ige Biotechnology(中国広州)によって合成された。合成されたmiRNA断片を制限酵素BamHI及びXhoIで消化し、pcDNA6.2-GW/EmGFP-miR-negコントロールプラスミド(Invitrogen)の対応する部位にクローニングした。miRNAの配列は次のとおりである。
【0084】
miR-CTLA4-1#:
5’-AACCTTCAGTGGAGTTGGCGAGTTTTGGCCACTGACTGACTcGCCAACCACTGAAGGTT-3’(配列番号53)、
miR-CTLA4-2#:
5’-CTTCAGTGGAGTTGGCGAGCAGTTTTGGCCACTGACTGACTGCTCGCCCtCCACTGAAG-3’(配列番号54)、
miR-CTLA4-3#:
5’-ACTGTGCTGCGGAGGACAAATGTTTTGGCCACTGACTGACATTTGTCCCGCAGCACAGT-3’(配列番号55)、
miR-CTLA4-4#:
5’-CGACATTCACGGAGGAGAATAGTTTTGGCCACTGACTGACTATTCTCCCGTGAATGTCG-3’(配列番号56)、
miR-CTLA4-5#:
5’-GAACCTCACCCTCCAAGGACTGTTTTGGCCACTGACTGACAGTCCTTGGGGTGAGGTTC-3’(配列番号57)、
miR-CTLA4-6#:
5’-ATCCAAGGACTGGGAGCTGTTGTTTTGGCCACTGACTGACAACAGCTCAGTCCTTGGAT-3’(配列番号58)、
miR-CTLA4-7#:
5’-ACTCATGTACCCTCCGCCATAGTTTTGGCCACTGACTGACTATGGCGGGGTACATGAGT-3’(配列番号59)、
miR-CTLA4-8#:
5’-GGCAACGGGAGGCGGAGTTATGTTTTGGCCACTGACTGACATAACTCCCTCCCGTTGCC-3’(配列番号60)、
miR-CTLA4-9#:
5’-GGGCAACGGGACGGAGATTTAGTTTTGGCCACTGACTGACTAAATCTCTCCCGTTGCCC-3’(配列番号61)、
miR-CTLA4-10#:
5’-TGACTGTGCTGCGGCGGACAAGTTTTGGCCACTGACTGACTTGTCCGCCAGCACAGTCA-3’(配列番号62)。
下線は成熟したmiRNA配列を示す。
【0085】
Hisタグ付きマウスCTLA4を発現するプラスミド(mCTLA4-his)は、YouBio Biotechnology(中国長沙)から購入した。
【0086】
細胞株である。HEp-2細胞はアメリカンタイプカルチャーコレクションから取得され、5%(vol/vol)ウシ胎児血清(FBS)を添加したDMEM(Life Technologies)において日常的に培養した。MFC(マウス前胃がん)細胞はJOINN Laboratories,Inc.(中国北京)から提供された。B16(マウス黒色腫)はShenzhen International Institute for Biomedical Research(中国深セン)から提供された。
【0087】
抗体である。本研究で使用される抗体は抗Hisタグ(カタログ番号66005-1-Ig、Proteintech Group)及び抗GAPDH(カタログ番号2118、Cell Signaling Technology)であった。
【0088】
エクソソームの分離である。HEp-2細胞(5×106)にmiR-CTLA-4を発現する10μgのプラスミドをトランスフェクトした。4時間のインキュベーション後、細胞をPBSで3回リンスして、血清中のエクソソームの汚染の可能性を排除し、細胞を無血清培地でさらに48時間培養した。総エクソソーム分離キット薬剤(Thermo Fisher、カタログ番号4478359)の推奨用量と混合して上澄み液を回収し、4℃下で一晩保管した後、1時間遠心分離した。次に、ペレット化したエクソソームを200μLのPBSに再懸濁するか、又はRIPAバッファーで溶解し、製造元の説明に従って増強型BCAタンパク質検出キット(中国Beyotime Biotechnology)を使用してBCAアッセイで定量した。エクソソームタンパク質の含有量は、ウシ血清アルブミン標準濃度に対して562nmでの吸光度をプロットすることによって作成された標準曲線に対する較正によって決定された。
【0089】
エクソソームのサイズと定量分析である。エクソソームのサイズ分布分析は、qNanoシステム(ニュージーランド・クライストチャーチ、Izon)を使用して行われた。IzonのqNano技術(www.izon.com)は単一分子電気泳動によってナノポアを通過する細胞外小胞を検出するために利用される。実際には、粒子サイズを平均化することなく、エクソソームのサイズが75から150nmの小胞の粒子ごとの正確な特性研究が可能である。精製したエクソソームを、0.05%のTween-20とPBSによって1:10に希釈し、激しく振とうし、製造元の説明に従ってNP150(A45540)ナノポアアパーチャを使用して測定した。データ処理と分析は、ソフトウェアIzon Control Suite v3.3(Izon Science)において実行された。
【0090】
イムノブロットアッセイである。イムノブロットアッセイによるHisタグ付きCTLA-4、GAPDH及びエクソソームメーカータンパク質の検出である。細胞を回収し、1mMプロテアーゼ阻害剤のフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)(Beyotime)及びホスファターゼ阻害剤(Beyotime)を添加したRIPA溶解バッファー(Beyotime)で溶解した。細胞溶解物を熱変性させ、SDS-PAGEによって分離し、ポリフッ化ビニリデンメンブレン(Millipore)に転写した。まず適切な一次抗体、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体(Pierce)及びECL薬剤(Pierce)とのインキュベーションによってタンパク質を検出し、フィルムに露光するか、又はChemiDoc Touch Imaging System(Bio-Rad)を使用して画像をキャプチャし、次にソフトウェアImageLabを用いて処理した。ソフトウェアImageJを使用して対応するバンドの密度を定量化した。
【0091】
oHSVの構築である。例示的なoHSV(例えば、T2850及びT3855)の構築は、(a)野生型HSV-1ゲノムのUL56遺伝子のプロモーターとUS1遺伝子のプロモーターとの間の欠失を含むことによって、(i)全てのダブルコピー遺伝子の1つコピーが欠けており、且つ(ii)全ての既存のオープンリーディングフレーム(ORF)の発現に必要な、前記欠失後のウイルスDNAにおける配列は無傷である改変されたHSV-1ゲノム、及び(b)免疫刺激剤及び/又は免疫療法剤をコードし、上記のように改変されたHSV-1ゲノムの少なくとも欠失領域に安定的に組み込まれた異種核酸配列を含む、組換え腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1)を含む。免疫刺激剤又は免疫療法剤をコードする異種核酸配列が1つのみ挿入される場合は、当該異種核酸配列は、ゲノムの欠失領域に組み込まれることが好ましい。免疫刺激剤及び/又は免疫療法剤をコードする異種核酸配列が2つ以上挿入される場合は、第1の異種核酸配列は、ゲノムの欠失領域に挿入されることが好ましい。第2の又はその次の異種核酸配列はゲノムのL成分に挿入される。腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(oHSV)の構築とその特性の詳細については、WO2017/181420を参照する。
【0092】
結果
miR-CTLA-4を含むエクソソーム(miR-CTLA-4 exo)の設計と製造
最初の一連の実験の目的はCTLA4を標的とするmiRNAを含むエクソソームを設計及び製造することであった。そのためには、最初にmiR-CTLA4-1#、miR-CTLA4-2#、miR-CTLA4-3#、miR-CTLA4-4#、miR-CTLA4-5#、miR-CTLA4-6#、miR-CTLA4-7#、miR-CTLA4-8#、miR-CTLA4-9#及びmiR-CTLA4-10#と呼ばれる10個のmiRNAを構築した。
図1に示す各miRNAの配列には、miRNAのシード配列の下流にエクソソームパッケージング関連モチーフ(exo-motifs)を具体化する追加の配列が含まれている。
図1Aに示すように、miRNAは、材料と方法で説明されているように、「pcDNA6.2-GW/EmGFP-miR-negコントロールプラスミド」と名づけたmiRNA発現ベクターに、EGFPをコードするオープンリーディングフレームの下流にクローニングされた。
【0093】
次に、miRNAをテストするために、HEp-2細胞に上記のmiRNA発現ベクター(miRmCTLA4-1#、miRmCTLA4-2#、miRmCTLA4-3#、miRmCTLA4-4#、miRmCTLA4-5#、miRmCTLA4-6#、miRmCTLA4-7#、miRmCTLA4-8#、miRmCTLA4-9#、miRmCTLA4-10#)及びC末端にHisタグ付けされたCTLA4をコードするプラスミド(mCTLA4-His)をコトランスフェクトした。
図1Bに示すように、CTLA4の蓄積を抑制する上で、10の構築体の中でmiR-CTLA4-3#が最も効果的であった。結果は、CTLA4の蓄積がmiR-CTLA4-3#によってより高い効率で阻害されることを示している。miR-CTLA4-1#、miR-CTLA4-2#、miR-CTLA4-4#、miR-CTLA4-5#、miR-CTLA4-6#、miR-CTLA4-7#は中程度の効果を示す一方、非標的(NT)、miR-CTLA4-8#、miR-CTLA4-9#及びmiR-CTLA4-10#プラスミドは、CTLA4の蓄積に影響を与えなかったのである(
図1B)。したがって、miR-CTLA4-3#がさらなる研究のために選ばれた。
【0094】
次のステップでは、選んだmiR-CTLA-4をコードするエクソソームを構築した。T150フラスコに播種されたHEp-2細胞に、miR-CTLA4-3#をコードする10μgのプラスミド又は非標的miRNA(NT)を発現するプラスミドをトランスフェクトした。48時間後、細胞外培地を回収し、材料と方法で説明されているようにエクソソームを精製した。
【0095】
miR-CTLA-4を担持するエクソソームの特性研究
miR-CTLA-4を担持するエクソソームの特性を検討するためにいくつかの実験を実行した。まず、エクソソームを生成する等量の細胞と等量のエクソソームが可溶化され、変性ゲルで電気泳動にかけられ、CD9、フロチリン-1(Flotilin-1)及びカルネキシン(Calnexin)に対する抗体によってプローブされた。予想の通り、結果(
図2A)は、エクソソームにCD9とフロチリン-1(Flotilin-1)が含まれているが、カルネキシン(Calnexin)は含まれていないことを示す。
【0096】
次に、miR-CTLA4をコードする10μgのプラスミド又は非標的miRNAを発現するプラスミドによってトランスフェクトされたHEp-2細胞から精製されたエクソソームは、IzonのqNano技術を用いるナノ粒子トラッキング分析によってそのサイズに関して測定された。結果(
図2B)は、トランスフェクトされた細胞によって生成されたエクソソームの直径が平均100-200nmであることを示している。
【0097】
「miR-CTLA-4を担持するエクソソームとoHSVのMFC移植腫瘍への同時投与が、T1又はT2 oHSVではなくT3 oHSVの腫瘍溶解活性を増強させた。」
【0098】
この一連の実験の最初のステップでは、HEp-2の複製培養物にmiR-CTLA4-3#のプラスミドをトランスフェクトし、細胞を48時間培養した。次に、HEp-2で生成されたエクソソーム(miR-CTLA-4 exo)を、材料と方法で説明されているように精製した。
【0099】
その次のステップでは、材料と方法で説明されているようにoHSV T1012G、T2850及びT3855を構築した。次に、8匹1群の8群のC57BL/6Jマウスに腫瘍を発生させるために右脇腹にマウス前胃がん(MFC)細胞を皮下注射した。腫瘍が平均80mm
3に達すると、腫瘍内に1×10
7pfuのT1012G(
図3B)、T2850(
図3C)又はT3855(
図3のD)を単独の1回で、又は10μgのmiR-CTLA-4エクソソームと組み合わせて注射した。
【0100】
最後に、注射後26日まで3日又は4日ごとに腫瘍体積を測定した。結果は、注射後に各群で腫瘍体積が徐々に増加したことを示している。
図3Aは、miRNA-CTLA4 exoを注射したマウスの腫瘍体積がコントロールの腫瘍体積とほぼ同じ速さで増加し、注射後26日で、miRNA-CTLA4 exoを注射したマウスの腫瘍体積がコントロールの腫瘍体積よりも大きいことを示している。
図3Bは、注射後にコントロール群、T1012G群及びT1012G+miRNA-CTLA4 exo群の腫瘍体積が徐々に増加したことを示している。注射後26日で、T1012G+miRNA-CTLA4 exoを注射したマウスの腫瘍体積はコントロール群及びT1012G群の腫瘍体積よりも小さかった。
図3Cでは、T2850群及びT2850+miRNA-CTLA4 exo群の腫瘍体積はコントロール群の腫瘍体積よりも増加が遅かった。注射後26日で、T2850群及びT2850+miRNA-CTLA4 exo群の腫瘍体積はコントロール群の腫瘍体積より小さく、しかもT2850+miRNA-CTLA4 exo群の腫瘍体積はT2850単独群の腫瘍体積と有意差がなかった。
図3のDでは、T3855+miRNA-CTLA4 exo群の腫瘍体積の増加が最も遅く、次はT3855群、最後はコントロール群となった。注射後26日で、コントロール群の腫瘍体積が最も大きく、次はT3855群で、T3855+miRNA-CTLA4 exo群の腫瘍体積が最も小さかった。
【0101】
この一連の実験の結果は、T2850とT3855が腫瘍の成長を効果的に阻害でき、T3855とmiRNA-CTLA4 exoの腫瘍内同時投与がT3855の抗腫瘍有効性を高め、腫瘍の成長を阻害したことを示している。
【0102】
結果は、miR-CTLA4-3#がCTLA-4を標的とし、且つCTLA-4の発現をダウンレギュレートすることを示している。また、miR-CTLA4-3#がエクソソームにパッケージングされており、且つ精製されたエクソソームにはCD9、フロチリン-1(Flotilin-1)が含まれていたが、カルネキシン(Calnexin)は含まれていなかった。プラスミドmiR-CTLA4-3#又は非標的miRNA(NT)によってトランスフェクトされたHep-2細胞によって生成されたエクソソームは平均直径が100-200nmであった。本明細書の結果はまた、IL-12単独又はIL-12と抗PD-1抗体の両方を発現するoHSVが腫瘍の成長を効果的に阻害できることを示している。最後に、CTLA4を標的とするmiRNAを担持するエクソソームとIL-12と抗PD-1抗体の両方を発現するoHSVの腫瘍内同時投与が、oHSVの抗腫瘍有効性を高め、腫瘍の成長を阻害することを示している。
【0103】
本開示は、好ましい実施形態及び任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示される内容の修正、改善及び変形は当業者に想定されるもので、そのような修正、改善及び変形は本開示の範囲内であると見なされる。ここに提供される材料、方法、及び実施例は、好ましい実施形態の代表であり、例示的なものであり、本開示の範囲を制限することを意図するものではない。
【0104】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それぞれが参照により個別に組み込まれるのと同じ程度に、その全体が参照により明示的に組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含め本明細書が優先される。本明細書に例示的に記載されている開示は、本明細書に具体的に開示されていない要素、制限がない場合に適切に実施することができる。したがって、例えば、「含む」、「備える」などの用語は、広範に理解されかつ限定的なものではない。さらに、本明細書で使用される用語及び表現は、説明の用語として使用されており限定ではなく、しかもここに説明される特徴又はその一部の同等物を除外する意図はないが、本開示の範囲内で様々な修正が可能であることは自明である。
本開示は、例えば、以下に関する。
[1]
対象の腫瘍を治療するための医薬組成物であって、
治療有効量のエクソソームと、
治療有効量の腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスと、
薬学的に許容される担体とを含み、
ここで、前記エクソソームは、阻害量のCTLA4を標的とするmiRNAと、前記CTLA4を標的とするmiRNAのシード配列に作動可能に連結されて前記CTLA4を標的とするmiRNAの前記エクソソームへのパッケージングを増強するエキソモチーフとを含み、
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスは、免疫刺激剤を発現する、又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現する、医薬組成物。
[2]
前記CTLA4を標的とするmiRNAのシード配列が、配列番号1から配列番号4の核酸配列のいずれか1つを含む、前記[1]に記載の組成物。
[3]
前記エキソモチーフが、配列番号21から配列番号49の核酸配列からなる群より選択される、前記[1]または[2]に記載の組成物。
[4]
前記エキソモチーフが、前記CTLA4を標的とするmiRNAのシード配列の下流に位置し、且つそれと共有結合している、前記[1]から[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5]
前記エキソモチーフが、前記CTLA4を標的とするmiRNAのシード配列以外の1つ又は複数の核酸の突然変異によって得られる、前記[1]から[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[6]
前記エキソモチーフが、2つの単一のエキソモチーフの組み合わせによって生成される2つ折りのモチーフであり、前記2つの単一のエキソモチーフのいずれかが、配列番号21から配列番号47の核酸配列からなる群より選択される、前記[1]から[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[7]
前記2つ折りのモチーフが、配列番号48の核酸配列を有する、前記[1]から[6]のいずれか一項に記載の組成物。
[8]
作動可能に連結された場合、前記CTLA4を標的とするmiRNAと前記エキソモチーフは、少なくとも1つのヌクレオチドもしくは2つのヌクレオチドを共有するか、又はリンカーによって接続される、前記[1]から[7]のいずれか一項に記載の組成物。
[9]
前記リンカーが、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U)からなる群より選択される2つ又はそれ以上のヌクレオチドからなる、前記[8]に記載の組成物。
[10]
前記リンカーが-GC-である、前記[9]に記載の組成物。
[11]
作動可能に連結された場合、前記CTLA4を標的とするmiRNAと前記エキソモチーフは、配列番号7の核酸配列を有する、前記[1]から[10]のいずれか一項に記載の組成物。
[12]
前記免疫刺激剤が、GM-CSF、IL-2、IL-5、IL-12、IL-15、IL-24及びIL-27から選択される、前記[1]から[11]のいずれか一項に記載の組成物。
[13]
前記免疫刺激剤がIL-12である、前記[12]に記載の組成物。
[14]
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスがIL-12を発現する、前記[1]から[13]のいずれか一項に記載の組成物。
[15]
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスがIL-12と抗PD-1抗体の両方を発現する、前記[1]から[14]のいずれか一項に記載の組成物。
[16]
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスがIL-12及び抗PD-1抗体を発現するHSV-1である、前記[1]から[15]のいずれか一項に記載の組成物。
[17]
前記HSV-1がHSV-1のF株である、前記[16]に記載の組成物。
[18]
天然骨格の117005から132096までのヌクレオチド配列の断片が削除されている、前記[17]に記載の組成物。
[19]
前記腫瘍が悪性腫瘍である、前記[1]から[18]のいずれか一項に記載の組成物。
[20]
前記悪性腫瘍が、黒色腫、線維肉腫、粘液肉腫、軟骨肉腫、骨形成性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、膵がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支原性がん、腎細胞がん、肝がん、胆管がん、絨毛がん、セミノーマ、胚性がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、胃がん及び前胃がんからなる群より選択される、前記[19]に記載の組成物。
[21]
前記対象がヒトである、前記[1]から[20]のいずれか一項に記載の組成物。
[22]
(a)治療有効量のエクソソームであって、阻害量のCTLA4を標的とするmiRNAと、前記CTLA4を標的とするmiRNAのシード配列に作動可能に連結されて前記CTLA4を標的とするmiRNAの前記エクソソームへのパッケージングを増強するエキソモチーフとを含む、前記治療有効量のエクソソームと、
(b)免疫刺激剤を発現する、又は免疫刺激剤と抗PD-1抗体の両方を発現する、治療有効量の腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスとを含む、対象の腫瘍を治療するためのキットであって、
(c)使用説明書を含んでいてもよい、キット。
[23]
前記CTLA4を標的とするmiRNAのシード配列が、配列番号1から配列番号4の核酸配列のいずれか1つを含む、前記[22]に記載のキット。
[24]
前記エキソモチーフが配列番号21から配列番号49の核酸配列からなる群より選択される、前記[22]または[23]に記載のキット。
[25]
前記エキソモチーフが前記CTLA4を標的とするmiRNAのシード配列の下流に位置し、且つそれと共有結合している、前記[22]から[24]のいずれか一項に記載のキット。
[26]
前記エキソモチーフが、前記CTLA4を標的とするmiRNAのシード配列以外の1つ又は複数の核酸の突然変異によって得られる、前記[22]から[25]のいずれか一項に記載のキット。
[27]
前記エキソモチーフが2つの単一のエキソモチーフの組み合わせによって生成される2つ折りのモチーフであり、前記2つの単一のエキソモチーフのいずれかが配列番号21から配列番号47の核酸配列からなる群より選択される、前記[22]から[26]のいずれか一項に記載のキット。
[28]
前記2つ折りのモチーフが配列番号48の核酸配列を有する、前記[22]から[27]のいずれか一項に記載のキット。
[29]
作動可能に連結された場合、前記CTLA4を標的とするmiRNAと前記エキソモチーフは少なくとも1つのヌクレオチドもしくは2つのヌクレオチドを共有するか、又はリンカーによって接続される、前記[22]から[28]のいずれか一項に記載のキット。
[30]
前記リンカーが、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U)からなる群より選択される2つ又はそれ以上のヌクレオチドからなる、前記[29]に記載のキット。
[31]
前記リンカーが-GC-である、前記[30]に記載のキット。
[32]
作動可能に連結された場合、前記CTLA4を標的とするmiRNAと前記エキソモチーフは、配列番号7の核酸配列を有する、前記[22]から[31]のいずれか一項に記載のキット。
[33]
前記免疫刺激剤がGM-CSF、IL-2、IL-5、IL-12、IL-15、IL-24及びIL-27から選択される、前記[22]から[32]のいずれか一項に記載のキット。
[34]
前記免疫刺激剤がIL-12である、前記[33]に記載のキット。
[35]
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスがIL-12を発現する、前記[22]から[34]のいずれか一項に記載のキット。
[36]
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスがIL-12と抗PD-1抗体の両方を発現する、前記[22]から[35]のいずれか一項に記載のキット。
[37]
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスがIL-12及び抗PD-1抗体を発現するHSV-1である、前記[22]から[36]のいずれか一項に記載のキット。
[38]
前記HSV-1がHSV-1のF株である、前記[37]に記載のキット。
[39]
天然骨格の117005から132096までのヌクレオチド配列の断片が削除されている、前記[38]に記載のキット。
[40]
前記腫瘍が悪性腫瘍である、前記[22]から[39]のいずれか一項に記載のキット。
[41]
前記悪性腫瘍が、黒色腫、線維肉腫、粘液肉腫、軟骨肉腫、骨形成性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、膵がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支原性がん、腎細胞がん、肝がん、胆管がん、絨毛がん、セミノーマ、胚性がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、胃がん及び前胃がんからなる群より選択される、前記[40]に記載のキット。
[42]
前記対象がヒトである、前記[22]から[41]のいずれか一項に記載のキット。
【配列表】