IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社レーザーメカトロ研究所の特許一覧

<>
  • 特許-コンクリート床面凹部形成方法 図1
  • 特許-コンクリート床面凹部形成方法 図2
  • 特許-コンクリート床面凹部形成方法 図3
  • 特許-コンクリート床面凹部形成方法 図4
  • 特許-コンクリート床面凹部形成方法 図5
  • 特許-コンクリート床面凹部形成方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】コンクリート床面凹部形成方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/08 20060101AFI20231010BHJP
   B23K 26/36 20140101ALI20231010BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
E04F15/08 Z
B23K26/36
E04G23/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023115371
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2023061039の分割
【原出願日】2023-04-04
【審査請求日】2023-07-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521263685
【氏名又は名称】株式会社レーザーメカトロ研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100120226
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 知浩
(72)【発明者】
【氏名】日暮 功一
(72)【発明者】
【氏名】金谷 義夫
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3233685(JP,U)
【文献】特開2018-187811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/08
E04G 23/02
B23K 26/36-26/402
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆材で被覆される前のコンクリート床面の表面に凹部を形成するコンクリート床面凹部形成方法であって、
複数のレーザ部からパルスレーザを同時に出射し、前記コンクリート床面に照射された前記パルスレーザの一部が重なり合うようにして走査し、前記コンクリート床面の前記表面に前記凹部を形成する、コンクリート床面凹部形成方法。
【請求項2】
集塵機装置を接続し、前記集塵機装置で前記コンクリート床面の表面改質時に発生する粉塵を吸引しながら、前記コンクリート床面の前記表面に前記凹部を形成する、請求項1に記載のコンクリート床面凹部形成方法。
【請求項3】
前記レーザ部は、3基搭載されている、請求項1又は2に記載のコンクリート床面凹部形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厨房などにおける床面の目粗しに好適なコンクリート床面凹部形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンクリート表面改質装置は、1基のレーザ装置を備えており、1基のレーザ装置によりコンクリート床面の表面改質を行っていた。具体的に、従来のコンクリート表面改質装置は、台車の先端側に1個のレーザ装置が設けられており、その後ろ側にシステムコントローラ及びレーザドライバが設けられている。コンクリート表面改質装置をコンクリートの床面上を一定速度で移動させ、スイッチを操作してシステムコントローラにより1個のレーザ装置を駆動させ、床面に対してレーザヘッドからパルスレーザを出力する。パルスレーザは、高速スキャナで床面上をスキャンする。床面にパルスレーザが照射されると、表面に凹部が形成される。床面の微細な凹凸により、床表面に塗布する樹脂材との密着性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録3233685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、1基のレーザ装置では、コンクリート床面の面積が大きい場合、効率的にコンクリート床面の表面改質ができず、多大な時間を要していた。
【0005】
そこで、本発明は、コンクリート床面の面積にかかわらず、コンクリート床面の表面改質を効率的に行うことができるコンクリート床面凹部形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、被覆材で被覆される前のコンクリート床面の表面に凹部を形成して前記表面を改質するコンクリート表面改質装置であって、パルスレーザを出射して前記コンクリート床面上に照射するレーザ部を、前記コンクリート床面に対して平行方向に沿って複数配置した。
【0007】
複数の前記レーザ部は、前記コンクリート床面に照射された前記パルスレーザの一部が重なり合う位置に配置されていることが好ましい。
【0008】
前記レーザ部は、防護カバーに取り付けられ、前記防護カバーは、前記レーザ部から出射された前記パルスレーザを所定の方向に走査するための走査部を収容する第1のカバー部と、前記第1のカバー部に連通して形成され、前記第1のカバー部の容積と比較して小さく設定されるとともに、前記走査部で走査された前記パルスレーザが入射する第2のカバー部と、を有することが好ましい。
【0009】
前記防護カバーは、ベース部材の上面に設置され、前記ベース部材の下面には、前記第2のカバー部と連通するとともに、前記第1のカバー部の容積よりも小さい容積を有し、前記コンクリート床面上の前記パルスレーザの走査範囲を絞る絞り部を有することが好ましい。
【0010】
前記絞り部の少なくとも一部には、前記絞り部の内部に入射した前記パルスレーザを視認可能な透明部材で構成されていることが好ましい。
【0011】
前記第2のカバー部には、前記コンクリート床面の表面改質時に発生する粉塵を吸引する集塵機装置が接続することが好ましい。
【0012】
前記レーザ部が3基配置されていることが好ましい。
【0013】
第2の発明は、被覆材で被覆される前のコンクリート床面の表面に凹部を形成して前記表面を改質する表面改質方法であって、複数のレーザ部からパルスレーザを同時に出射し、前記パルスレーザを前記コンクリート床面上で走査して前記コンクリート床面の前記表面に前記凹部を形成する。
【0014】
前記コンクリート床面に照射された前記パルスレーザの一部が重なり合うようにして前記コンクリート床面の前記表面に前記凹部が形成されることが好ましい。
【0015】
前記レーザ部から出射された前記パルスレーザを防護カバーの内部に入射させ、前記防護カバーに、容積が大きくなる第1のカバー部と、前記第1のカバー部よりも容積が小さくなる第2のカバー部と、を形成し、前記パルスレーザを前記第1のカバー部から前記第2のカバー部に至るように走査して、前記コンクリート床面に照射させ、前記コンクリート床面の前記表面に前記凹部を形成することが好ましい。
【0016】
前記第2のカバー部に集塵機装置を接続し、前記集塵機装置で前記コンクリート床面の表面改質時に発生する粉塵を吸引しながら、前記コンクリート床面の前記表面に前記凹部を形成することが好ましい。
【0017】
前記レーザ部は、3基搭載され、前記3基の前記レーザ部から前記パルスレーザを同時に出射し、前記パルスレーザを前記コンクリート床面上で走査して前記コンクリート床面の前記表面に前記凹部を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コンクリート床面の面積にかかわらず、コンクリート床面の表面改質を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート表面改質装置の側面側から見た図である。
図2】本発明の一実施形態に係るコンクリート表面改質装置の正面側から見た図である。
図3】本発明の一実施形態に係るコンクリート表面改質装置の各種スイッチ類を示した図である。
図4】本発明の一実施形態に係るコンクリート表面改質装置の制御系統を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係るコンクリート表面改質装置による床面の目粗しの様子を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るコンクリート表面改質装置により床面上に形成されたレーザ痕の様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係るコンクリート表面改質装置及びコンクリート表面改質方法について、図面を参照して説明する。
【0021】
[コンクリート表面改質装置の全体構成]
図1乃至図3に示すように、コンクリート表面改質装置10は、例えば、台車12の先端側に設けられたレーザ装置14と、レーザ装置14の後ろ側に設けられた制御システム52(図4参照)の主要素であるシステムコントローラ16A、16B、16Cと、レーザ装置14の後ろ側に設けられレーザ装置14の一部を構成するレーザドライバ18A、18B、18Cと、を備えている。レーザ装置14とシステムコントローラ16A、16B、16Cとレーザドライバ18A、18B、18Cとは、台車12に搭載されており、全体として一体的に移動可能となっている。
【0022】
図4に示すように、コンクリート表面改質装置10は、さらに集塵機装置20を備えている。図示の例では、集塵機装置20は、台車12には搭載されておらず、コンクリート床面FC上の適宜位置に置かれる。集塵機装置20は、台車12の移動を妨げないように、例えば、伸縮・曲折自在の蛇腹パイプ22で接続されている。
【0023】
台車12は、荷台24と、ハンドル26(図2では図示省略)と、複数のキャスター28と、を備えており、作業者がハンドル26を操作して全体がコンクリート床面FC上を移動できるようになっている。システムコントローラ16A、16B、16Cには、各種スイッチが設けられている。各種スイッチの詳細は後述する。ハンドル26には、ハンドルスイッチ30(図3参照)が設けられており、レーザ装置14からのパルスレーザLZの出力を制御できるようになっている。
【0024】
[レーザ装置の構成]
レーザ装置14は、レーザドライバ18A、18B、18Cと、レーザヘッド32A、32B、32Cと、高速スキャナ34と、スキャンレンズ36と、を備えており、レーザドライバ18A、18B、18Cを除いて筒状の防護カバー38によって覆われている。レーザドライバ18A、18B、18Cの上には、システムコントローラ16A、16B、16Cが重ねて置かれている。防護カバー38の第2カバー部42には、排気口44が設けられている。防護カバー38は、レーザ光が外部に漏れるのを防止するとともに、レーザ光の照射によって生ずる粉塵の飛散を防止する機能を備えている。
【0025】
ここで、レーザヘッド32A、32B、32Cは、コンクリート床面FCに対して平行方向に沿って複数配置されている。本実施形態では、3基のレーザヘッド32A、32B、32Cが配置されている構成であるが、3基に限定されるものではない。レーザドライバ18A、18B、18C及びシステムコントローラ16A、16B、16Cは、3基のレーザヘッド32A、32B、32Cを駆動制御する。
【0026】
なお、レーザヘッド32A、32B、32Cは、本発明の「レーザ部」の一実施態様である。
【0027】
複数のレーザヘッド32A、32B、32Cは、例えば、各レーザヘッド32A、32B、32Cからコンクリート床面FCに照射されたパルスレーザLZの一部が重なり合うような位置に配置されている。パルスレーザLZの一部が重なり合うとは、例えば、図6に示すように、コンクリート床面FCに照射されたパルスレーザ痕L1、L2、L3の一部が重なり合う部分(図6の斜線領域)が生じることを意味している。図6の符号M1は、隣接するレーザヘッド32Aとレーザヘッド32Bから照射されたパルスレーザ痕L1、L2の一部が重なり合うパルスレーザ重合痕M1である。図6の符号M2は、隣接するレーザヘッド32Bとレーザヘッド32Cから照射されたパルスレーザ痕L2、L3の一部が重なり合うパルスレーザ重合痕M2である。パルスレーザ重合痕M1、M2は、レーザ光の照射エネルギーが他の部位よりも高くて深く削れるため、白っぽくなる。換言すると、パルスレーザ重合痕M1、M2の色は、他の部分の色と異なる。このため、コンクリート床面FCに照射されたパルスレーザ痕L1、L2、L3が複数のレーザヘッド32A、32B、32Cのうち、どのレーザヘッド32A、32B、32Cによる処理なのかを瞬時に判別することができる。
【0028】
防護カバー38の第2のカバー部42には、排気口44が形成されている。排気口44には、蛇腹パイプ22を介して集塵機装置20が接続されている。集塵機装置20は、コンクリート床面FC上の適宜位置に置かれており、必ずしも台車12と連動して動く必要はない。蛇腹パイプ22が伸縮自在・曲折自在となっているので、集塵機装置20をいずれか適当な場所に設置して、台車12をレーザ照射のために移動することができる。
【0029】
[防護カバーの構成]
ここで、防護カバー38の構成について詳細に説明する。
【0030】
図1に示すように、防備カバー38は、第1のカバー部40と、第2のカバー部42と、で構成されている。第1のカバー部40には、レーザヘッド32A、32B、32Cから出射されたパルスレーザLZを所定の方向に走査するための高速スキャナ34と、スキャンレンズ36と、が収容されている。高速スキャナ34は、例えば、パルスレーザLZを反射する反射ミラー(図示省略)と、反射ミラーで反射されたパルスレーザLZを所定の角度の範囲で走査させるスキャナ本体(図示省略)と、で構成されている。換言すれば、高速スキャナ34とは、ポリゴンミラーやガルバノミラーを利用してレーザ光をスキャンするためのものである。なお、レーザ光のスキャンは、防護カバー38で覆われた範囲となっている。
【0031】
なお、高速スキャナ34は、本発明の「走査部」の一実施態様である。
【0032】
第2のカバー部42は、第1のカバー部40に連通して形成されている。第2のカバー部42の容積は、第1のカバー部40の容積と比較して小さく設定されている。第2のカバー部42には、第1のカバー部40の内部で高速スキャナ34により走査されたパルスレーザが入射する。
【0033】
防護カバー38は、台車12の荷台24の上面に設置されている。荷台24の下面には、第2のカバー部42と連通するとともに、第1のカバー部41及び第2のカバー部42の各々の容積よりも小さい容積を有し、コンクリート床面FC上のパルスレーザLZの走査範囲を規制する絞り部46が取り付けられている。
【0034】
絞り部46は、4つの側壁部で囲まれた構成をしており、コンクリート床面FCと僅かな離間距離を空けて対面する下面には、パルスレーザLZが通る開口48が形成されている。なお、4つの側壁部は、例えば、アルミニウムで形成されていることが好ましい。
【0035】
第2のカバー部42と絞り部46との連通部位において、絞り部46の開口面積が第2のカバー部42の開口面積と同じか、又は小さくなるように設定されている。これにより、絞り部46の容積を小さくすることができるとともに、絞り部46に入射するパルスレーザLZの走査範囲が絞られるため、コンクリート床面FC上の所定の部位に確実に照射することができる。
【0036】
絞り部46を構成する側壁部の少なくとも一部は、絞り部46の内部に入射したパルスレーザLZを視認可能な透明部材50で構成されている。透明部材50とは、例えば、アクリル樹脂である。これにより、絞り部46の外側から絞り部46の内部に照射されたパルスレーザLZの色やコンクリート床面FCにおける照射部位等を視認でき、レーザ光の状態を把握できる。さらには、レーザヘッド32A、32B、32Cの位置調整やメンテナンス、またレーザ光の出力調整に役立てることが可能になる。なお、透明部材50で構成されている側壁部は、正面側(先端側)の位置にある側壁部が好ましい。
【0037】
荷台24は、本発明の「ベース部材」の一実施態様である。
【0038】
[制御システムの構成]
次に、コンクリート表面改質装置10の制御システムの構成について説明する。
【0039】
図4に示すように、制御システム52は、システムコントローラ16A、16B、16Cを中心に構成されている。システムコントローラ16A、16B、16Cには、ハンドルスイッチ30と、システムキースイッチ54と、緊急停止スイッチ56と、スタートスイッチ58と、方向切換スイッチ60と、レーザドライバ18A、18B、18Cと、レーザヘッド32A、32B、32Cと、高速スキャナ34と、集塵機装置20とがそれぞれ接続されている。
【0040】
ハンドルスイッチ30は、作業者がパルスレーザLZのコンクリート床面FCに対する照射をON・OFFするためのスイッチである。システムキースイッチ54は、起動準備するためのスイッチである。緊急停止スイッチ56は、緊急時にレーザ出力を停止するためのスイッチである。スタートスイッチ58は、レーザ出力を開始及び一定速度で移動するためのスイッチである。方向切換スイッチ60は、前移動と背後移動とを切り替えるためのスイッチである。
【0041】
レーザドライバ18A、18B、18Cは、複数のレーザヘッド32A、32B、32Cを駆動するためのものである。レーザヘッド32A、32B、32Cとしては、例えば、100W程度の比較的低出力のパルスレーザ装置が用いられる。例えば、トルンプ社製、IPGフォトニクス社製、RAYCUS社製、コヒレント社製、イエナオプテック社製のファイバーレーザが適用可能である。本実施形態では、JPT社製ファイバーレーザを使用した。
【0042】
[本実施形態のコンクリート表面改質装置の作用]
次に、本実施形態のコンクリート表面改質装置10の作用、すなわちコンクリート表面改質方法について説明する。
【0043】
作業者は、システムキースイッチ54をONとして、起動準備を行う。そして、作業者は、集塵機装置20を適当な位置に設置するとともに、ハンドル26を操作して、コンクリート床面FC上を一定速度でコンクリート表面改質装置10を移動させる。スタートスイッチ58をONにすると、システムコントローラ16A、16B、16Cにより3基のレーザドライバ18A、18B、18Cが起動される。すると、並行配置された3基のレーザヘッド32A、32B、32CからパルスレーザLZが同時に出力され、コンクリート床面FCに照射される。このとき、パルスレーザLZは、高速スキャナ34でコンクリート床面FC上をスキャンする。作業者が、何らかの事情でハンドルスイッチ30を起動すると、レーザ出力はOFFになって停止する。
【0044】
図5にはコンクリート床面FCの様子が示されており、図5(A)に示すコンクリート床面FCにパルスレーザLZが照射されると、図5(B)に示すようにコンクリート床面FCの表面に凹部HCが形成される。作業者は、ハンドル26を操作して、パルスレーザLZの走査方向と交わる方向に台車12を移動することで、コンクリート床面FCの全体に凹部HCが形成され、コンクリート床面FCは凹凸となる。
【0045】
図2に示すように、並行配置された3基のレーザヘッド32A、32B、32CからパルスレーザLZが同時に出力されるため、コンクリート床面FCには、3つのパルスレーザ痕L1、L2、L3が同時に形成される。これにより、コンクリート床面FCの表面改質処理が短時間で完了でき、処理効率が上がる。
【0046】
ここで、図6に示すように、3つのパルスレーザ痕L1、L2、L3のうち、隣接するパルスレーザ痕、例えばパルスレーザ痕L1とパルスレーザ痕L2とのエッジ部分同士、パルスレーザ痕L2とパルスレーザ痕L3とのエッジ部分同士が重なり合う。パルスレーザ痕L1とパルスレーザ痕L2とのエッジ部分同士が重なり合う部分をパルスレーザ重合痕M1と称し、パルスレーザ痕L2とパルスレーザ痕L3とのエッジ部分同士が重なり合う部分をパルスレーザ重合痕M2と称する。
【0047】
各パルスレーザ重合痕M1、M2は、他のパルスレーザ痕L1、L2、L3と比較して、色合いが異なるものであり、肉眼でも視認することができる。このため、パルスレーザ重合痕M1、M2が形成されることにより、パルスレーザ痕L1、L2、L3の区別が視認できる。これにより、どのパルスレーザ痕L1、L2、L3がどのレーザヘッド32A、32B、32Cに対応しているのかを把握することができ、パルスレーザ痕L1、L2、L3のいずれかに色合いから不具合が生じた場合には、それに対応するレーザヘッド32A、32B、32Cを特定することができる。この結果、レーザヘッド32A、32B、32Cの出力調整や交換等のメンテナンスが容易になり、コンクリート床面FCの表面改質処理の精度が低下することを防止できる。
【0048】
パルスレーザLZによる凹部HCの形成時には、システムコントローラ16A、16B、16Cによって集塵機装置20が駆動される。このため、凹部HCの形成に伴って発生した粉塵は、防護カバー38の内部から蛇腹パイプ22を介して集塵機装置20に集められる。これにより、粉塵が室内に飛散することによる作業環境の悪化が低減されるようになる。
【0049】
特に集塵機装置20が防塵カバー38のうち、容積の小さい第2のカバー部42に接続されている。ここで、第2のカバー部42の容積が第1のカバー部40の容積と比較して小さくなるように設定されているため、凹部HCの形成に伴って発生した粉塵を容積の小さい第2のカバー部42に誘導でき、第2のカバー部42の内部を舞う粉塵から優先的に外部に排出することが可能になる。
【0050】
ここで、仮に第2のカバー部42の容積が第1のカバー部40の容積と同じように設定されていれば、防塵カバー38の内部の全ての空間部位に粉塵が拡散されてしまい、防塵カバー38の内部の粉塵の全てを外部に排出するための時間が長くなる。防塵カバー38の内部に粉塵が舞っている状態が長時間続くと、パルスレーザLZが粉塵で乱反射して、コンクリート床面FCに照射されるレーザ光の光量が低下し、表面改質の処理精度が低下する問題がある。
【0051】
しかしながら、本実施形態では、第2のカバー部42の容積を第1のカバー部40の容積よりも敢えて小さくして、第2のカバー部42の内部に集塵機装置20を接続することで、凹部HCの形成に伴って発生した粉塵を容積の小さい第2のカバー部42に誘導して、第2のカバー部42の内部の粉塵から優先的に外部に排出できる。これにより、防塵カバー38の内部の粉塵が第1のカバー部40の内部で拡散されず、防塵カバー38の内部の粉塵を短時間で外部に排出することに成功した。この結果、コンクリート床面FCに照射されるレーザ光の光量が低下せず、表面改質の処理精度を高く維持することができる。
【0052】
また、荷台24の下面には、第2のカバー部42と連通するとともに、第1のカバー部40の容積よりも小さい容積を有し、コンクリート床面FC上のパルスレーザLZの走査範囲を絞る絞り部46が設けられており、パルスレーザLZが絞り部46の開口48から外部に出ていき、コンクリート床面FCに照射される。これにより、コンクリート床面FCに照射されるレーザ光を絞ることができ、コンクリート床面FCに与えるレーザ強度が密になり、レーザ痕に不良が生じ難くなる。この結果、コンクリート床面FCの表面改質の処理精度を高めることができる。
【0053】
さらには、絞り部46の少なくとも一部には、絞り部46の内部に入射したパルスレーザLZを視認可能な透明部材50で構成されているため、パルスレーザLZの出力状態を視認することができる。なお、作業者はレーザ光を安全に視認できる特殊なサングラスを身につけて、パルスレーザLZの出力状態を確認することは言うまでもない。これにより、パルスレーザLZの出力状態により、レーザヘッド32A、32B、32Cのメンテナンスの必要性を早い段階で把握でき、コンクリート床面FCの表面改質処理の低下を防止できる。
【0054】
以上のようにして、コンクリート床面FCに対して凹部HCが形成された後、図5(C)に示すように、樹脂材CTが塗布される。樹脂材CTとしては、メタクリル樹脂やエポキシ樹脂が使用される。これにより、コンクリート床面FCの表面の凹部HCに樹脂材CTが入り込んで密着性が大幅に向上するようになる。一方、従来技術では、図5(D)に示すように、コンクリート床面FCと樹脂材CTとの間の密着性が悪く、不良部位FBが存在していた技術的問題があった。
【0055】
本実施形態によれば、高品質コンクリートの床面FCに対し、パルスレーザLZを走査して照射することとしたので、コンクリート床面FCに微細な凹凸が形成されるようになる。このため、床表面に塗布する樹脂材との密着性が向上するという優れた効果が得られる。
【0056】
[実用新案登録3233685号に記載された考案との比較]
次に、本願の先行技術である実用新案登録3233685号公報に記載されている表面改質装置(以下、先行技術という。)と比較する。
【0057】
先行技術は、1個のレーザヘッドでコンクリート床面の表面改質処理を行っていたため、コンクリート床面のレーザ光の照射面積が小さく限られ、膨大な表面改質処理に伴う時間を要していた。これに対して、本実施形態のコンクリート表面改質装置10によれば、複数、特に3基のレーザヘッド32A、32B、32Cを同時に駆動して、コンクリート床面FCに対してレーザ光を照射するため、照射面積が広くなり、表面改質処理に伴う時間を短縮することができる。
【0058】
ここで、コンクリート表面改質装置10の3基のレーザヘッド32A、32B、32Cを同時に駆動して、コンクリート床面FCに対してレーザ光を照射するとコンクリート床面FCに3つのパルスレーザ痕L1、L2、L3が形成される。各パルスレーザ痕L1、L2、L3は、同じ色合いを呈しているため、どのレーザヘッド32A、32B、32Cによって形成されたレーザ痕なのかを判別できない事態になる。このため、いずれかのレーザ痕が不良である場合には、それに対応するレーザヘッド32A、32B、32Cを特定すめることができなかった。
【0059】
そこで、本実施形態のように、複数のレーザヘッド32A、32B、32Cは、図6に示すようにコンクリート床面FCに照射されたパルスレーザLZの一部が重なり合う位置に配置されている構成を採用したことにより、3つのパルスレーザ痕L1、L2、L3が同じ色合いを呈していても、パルスレーザLZの一部が重なり合うパルスレーザ重合痕M1、M2の色合いが他のレーザ痕の色合いと明確に異なるため、どのレーザヘッド32A、32B、32Cによって形成されたパルスレーザ痕なのかを判別することができる。これにより、パルスレーザ痕に不良が認められる場合には、不良であるパルスレーザ痕に対応するレーザヘッド32A、32B、32Cを瞬時に特定することができ、確実にメンテナンスを行うことができる。
【0060】
先行技術の防護カバーは、一定の容積で固定された所謂寸胴タイプの形状を有していた。このため、他の要素を収容する関係で防護カバーの容積が大きくなり、一部においてデッドスペースが生じていた。コンクリート床面の表面改質処理では、防護カバーの内部の全体に粉塵が舞い上がり、パルスレーザの一部が粉塵に対して乱反射して、コンクリート床面に届かない状況になっていた。この現象は、粉塵の舞い上がり状況によって、毎回の表面改質処理ごとに変動するため、レーザ痕に不良のムラが生じ、レーザヘッドの出力制御では改善することができない不具合が生じていた。
【0061】
そこで、本実施形態のように、防護カバー38の構成を、レーザヘッド32A、32B、32Cから出射されたパルスレーザLZを所定の方向に走査するための高速スキャナ34を収容する第1のカバー部40と、第1のカバー部40に連通して形成され、第1のカバー部40の容積と比較して小さく設定されるとともに、高速スキャナ34で走査されたパルスレーザLZが入射する第2のカバー部42と、することにより、防護カバー38の内部のデッドスペースを削減するように工夫した。そして、コンクリート床面FCから近い位置にある第2のカバー部42に集塵機装置20を接続して、容積の小さい第2のカバー部42の内部に粉塵を誘導し、その粉塵から優先的に外部に排出することにより、粉塵の第1のカバー部40内への流入を阻止することができ、防護カバー38の内部に滞留する粉塵を瞬時に取り除くことに成功した。これにより、各レーザヘッド32A、32B、32Cから出射されたパルスレーザLZが防護カバー38内の粉塵に乱反射することを低減でき、コンクリート床面FCに届くレーザ光の光量欠損を削減することができる。この結果、レーザ痕に不良が生じることがなく、コンクリート床面FCの表面改質処理の精度を安定的に高めることができる。
【0062】
また、本実施形態のコンクリート表面改質装置10によれば、コンクリート床面FCに近い絞り部46の一部を透明部材50で構成してコンクリート床面FCに照射するレーザ光を視認することができる。このため、レーザ光が出ているか否か、レーザ光の色やコンクリート床面FC上のレーザ照射面の状況を確認することができ、レーザヘッド32A、32B、32Cが正常に動作しているか否かを容易に判別することができる。仮にレーザヘッド32A、32B、32Cの動作が不良であることが確認できれば、早急にメンテナンスを行うことにより、トラブルを最小限に留めて、大幅な表面改質処理の効率低下を回避できる。
【0063】
また、本発明には数多くの実施形態があり、以上の開示に基づいて多様に改変することが可能である。例えば、次のようなものも含まれる。
(1)上記実施形態では、作業者がレーザ装置14を押して移動するようにしたが、台車12にモータを設けて自走式とし、リモコン等で操作するようにしてもよい。
(2)上記実施形態では、台車12と集塵機装置20とを別体としたが、集塵機装置20を台車12に載せるようにしてもよい。
(3)上記実施形態は、本発明をコンクリート表面の改質に適用したものであるが、コンクリート以外に適用することを妨げるものではない。例えば、御影石のような石材の表面に凹凸を形成するような場合などに対して適用してもよい。あるいは、床面上の凹凸を滑り止めとして利用するようにしてもよい。
【0064】
なお、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具現した一例に過ぎないものである。本発明は、当然ながらこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を利用した全ての態様を含むものである。
【符号の説明】
【0065】
10 コンクリート表面改質装置
12 台車
14 レーザ装置
16A システムコントローラ
16B システムコントローラ
16C システムコントローラ
18A レーザドライバ
18B レーザドライバ
18C レーザドライバ
20 集塵機装置
22 蛇腹パイプ
24 荷台(ベース部材)
26 ハンドル
28 キャスター
30 ハンドルスイッチ
32A レーザヘッド(レーザ部)
32B レーザヘッド(レーザ部)
32C レーザヘッド(レーザ部)
34 高速スキャナ(走査部)
36 スキャンレンズ
38 防護カバー
40 第1のカバー部
42 第2のカバー部
44 排気口
46 絞り部
48 開口
50 透明部材
52 制御システム
54 システムキースイッチ
56 緊急停止スイッチ
58 スタートスイッチ
60 方向切換スイッチ
CT 樹脂材
FB 不良部位
FC コンクリート床面
HC 凹部
LZ パルスレーザ
L1 パルスレーザ痕
L2 パルスレーザ痕
L3 パルスレーザ痕
M1 パルスレーザ重合痕
M2 パルスレーザ重合痕
【要約】
【課題】コンクリート床面の面積にかかわらず、コンクリート床面の表面改質を効率的に行うことができるコンクリート床面凹部形成方法を提供する。
【解決手段】被覆材で被覆される前のコンクリート床面FCの表面に凹部HCを形成して表面を改質するコンクリート床面凹部形成方法であって、パルスレーザLZを出射してコンクリート床面FC上に照射するレーザヘッド32A~32Cを、コンクリート床面FCに対して平行方向に沿って複数配置し、複数のレーザヘッド32A~32Cは、コンクリート床面FCに照射されたパルスレーザLZの一部が重なり合う位置に配置されている。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6