(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】化粧料用粉体複合体及びそれを含む化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20231010BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20231010BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20231010BHJP
A61K 8/21 20060101ALI20231010BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20231010BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20231010BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/02
A61K8/89
A61K8/21
A61K8/44
A61K8/36
A61Q17/04
(21)【出願番号】P 2020537497
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 KR2018016495
(87)【国際公開番号】W WO2019135528
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2018-0001356
(32)【優先日】2018-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ク-チョル・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ウ-ソン・シム
(72)【発明者】
【氏名】ジュンソク・ヨム
(72)【発明者】
【氏名】ウォン-ジン・コ
(72)【発明者】
【氏名】ネ-ギュ・カン
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175867(JP,A)
【文献】特開2016-079148(JP,A)
【文献】特開平10-059824(JP,A)
【文献】特開2002-363444(JP,A)
【文献】特開2007-277415(JP,A)
【文献】特開2011-140449(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0276178(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体に下記化学式(1):
【化1】
(化学式(1)において、RはC
1~C
8の脂肪族炭化水素基であり、AMPは2-アミノ-2-メチルプロパン-1-オールまたは2-アミノ-2-メチルプロパン-1,3-ジオール由来の基であり、m、nはそれぞれ1以上の整数であり、m+n<1,000,000である。)
で表される両親媒性共重合体が吸着されている化粧料用粉体複合体であって、
前記粉体は
、粉体の表面が炭化水素鎖を有するように疎水化処理された粉体であり、前記両親媒性共重合体は
前記疎水化処理された粉体の表面に吸着されており、
前記両親媒性共重合体の吸着量が、
疎水化前の粉体の総重量に対して5~30重量%である、化粧料用粉体複合体。
【請求項2】
前記疎水化処理が、シリコーン化合物、アルキルシラン化合物、チタン酸アルキル化合物、フッ素化合物、アミノ酸化合物、脂肪酸化合物及びこれらの混合物から選択される撥水処理剤によって行われる、請求項1に記載の化粧料用粉体複合体。
【請求項3】
前記両親媒性共重合体が、2-アミノ-2-メチルプロパン-1,3-ジオール-アクリレート共重合体及び2-アミノ-2-メチルプロパン-1-オール-アクリレート共重合体のいずれか一つ以上である、請求項1に記載の化粧料用粉体複合体。
【請求項4】
前記化粧料用粉体複合体が、湿式工程または乾式工程によって製造される、請求項1に記載の化粧料用粉体複合体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の化粧料用粉体複合体を含む化粧料組成物。
【請求項6】
前記化粧料組成物が、湿潤剤及び分散剤のいずれか一つ以上をさらに含む、請求項5に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記化粧料組成物が、紫外線遮断用化粧料組成物である、請求項5に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料用粉体複合体及びそれを含む化粧料組成物に関し、より具体的には、撥水性を有する化粧料粉体の洗浄容易性を改善するための化粧料用粉体複合体及びそれを含む化粧料用組成物に関する。
本出願は、2018年1月4日出願の韓国特許出願第10-2018-0001356号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンデーション、アイシャドウなどのメイクアップ化粧料、ボディーパウダー、ベビーパウダーなどのボディー用化粧料、及びサンクリーム、サンスティックなどの紫外線遮断用化粧料などの化粧料組成物に配合される粉体は、化粧持ち力を高めるために表面が撥水処理されている。粉体の表面を撥水処理する方法は当業界に広く知られている。一例として、高級脂肪酸、高級アルコール、炭化水素、トリグリセリド、エステル、シリコーンオイル、シリコーン樹脂などのシリコーン類、またはフッ素化合物などを使用して粉体の表面を被覆することで、粉体の表面に疎水性を与える方法が挙げられる。
【0003】
しかし、疎水化処理粉体を配合する場合、化粧持ちは向上するものの、洗浄容易性(すすぎ性)が低下する問題がある。化粧持ちは優れるが、洗浄後にも肌に化粧料が残る問題が生じる。化粧料が肌に残ると、毛穴を塞いで肌トラブルを引き起こしたり、色素沈着を引き起こしたりするなどの問題のため、ユーザにかなりの不便を与える。
【0004】
そこで、化粧持ち性に優れながらも洗浄時には洗浄容易性に優れた化粧料組成物が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決して、化粧持ち力に優れながらも、洗浄時の洗浄容易性を改善するための化粧料用粉体複合体及びそれを含む化粧料組成物を提供することを課題とする。
【0006】
具体的には、本発明は、化粧料組成物に使用される粉体、特に疎水化処理された粉体の洗浄容易性を改善するための粉体複合体及びそれを含む化粧料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、粉体に下記化学式(1)で表される両親媒性共重合体が吸着された化粧料用粉体複合体、及びそれを含む化粧料組成物を提供する。
【化1】
化学式(1)において、RはC
1~C
8の脂肪族炭化水素基であり、AMPはアミノメチル-2-プロパノールまたはアミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールである。また、m、nはそれぞれ1以上の整数であり、m+n<1,000,000である。
【0008】
前記RはC1~C8の脂肪族炭化水素基であり、前記脂肪族炭化水素基は、より具体的には、C1~C8の直鎖状または分枝状、飽和または部分的に不飽和の、鎖状または環状の基であり得、これらに制限されない。望ましくは、直鎖状の飽和炭化水素基であり得る。前記AMPは、アミノメチル-2-プロパノールまたはアミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールであり、前記m、nはそれぞれ1以上の整数であり、m+n<1,000,000である。望ましくは、前記m、nは、それぞれ10以上の整数であり得、m+n<100,000であり得る。また、前記両親媒性共重合体の各単量体の重合比は、これらに制限されないが、本発明の優れた効果のため、m:nは1:1<m:n<1:100であり、望ましくは1:1<m:n<1:10であり得る。より望ましくは、m:nは3:7であり得る。
【0009】
本発明者らは、撥水性に優れながらも洗浄容易性が改善された化粧料用粉体及びそれを含む化粧料組成物を提供しようとして研究努力した。その結果、粉体、特に公知の撥水処理剤などで表面が既に疎水化処理された粉体の表面に、上記化学式(1)で表される両親媒性共重合体が吸着された粉体複合体を製造した。このようにして得られた粉体複合体を含む化粧料組成物を肌に塗布したとき、撥水性及び化粧持ち力が相変らず優れながらも、水または界面活性剤を含む公知の洗浄剤を用いて洗浄する場合、洗浄容易性が改善されることを見出して本発明の完成に至った。
【0010】
本発明において、「粉体」は、化粧料に使用される粉体であることが望ましい。化粧料に使用される粉体としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、絹雲母、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ及びこれらの複合体などの無機粉体、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、ポリメチルベンゾグアナミン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼンスチレン共重合体、前記化合物の単量体の二種以上からなる共重合体、セルロイド、アセチルセルロース、セルロース、多糖類、タンパク質、CIピグメントイエロー、CIピグメントオレンジ、CIピグメントグリーン、シルクパウダー、ナイロンパウダー、12ナイロン、6ナイロン、アクリルパウダー、スチレンアクリル酸共重合体などの有機粉体が挙げられるが、これらに制限されない。また、望ましくは、二酸化チタン、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム、チタン酸コバルト、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、タルク、カオリン、絹雲母、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母などの無機粉体を使用することができる。より望ましくは、二酸化チタン、酸化亜鉛、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム、チタン酸コバルト、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、タルク、カオリン、絹雲母、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母及びこれらの複合体である無機粉体を使用することができる。より望ましくは、二酸化チタン、酸化亜鉛、タルク及びこれらの混合粉体を使用することができる。また、粉体の形状は、例えば板状、球状、多孔性球状、鱗片状などであり得るが、これらに制限されず、粒子径なども特に制限されない。
【0011】
本発明において、前記粉体としては、表面が疎水化処理された粉体を使用することができ、このとき、本発明による両親媒性共重合体は、前記疎水化処理された粉体の表面に吸着された粉体複合体を提供することができる。本発明において、前記「疎水化処理」とは、化粧料に使用される粉体に撥水性を付与するための当業界に公知の粉体加工を意味する。前記疎水化処理は、公知の方法であれば特に制限されず、例えばシリコーン化合物、アルキルシラン化合物、チタン酸アルキル化合物、フッ素化合物、アミノ酸化合物及び脂肪酸化合物などを含む群から選択された一つ以上の撥水処理剤によって粉体の表面を処理する方法が挙げられる。前記シリコーン化合物は、例えば粉体に直接結合する水素原子を有するシリコーン化合物を使用することができ、例えば、ジメチコン、メチコン、ハイドロゲンジメチコン、トリエトキシカプリルシラン、アクリルシリコーン、セチルジメチコン共重合体、(ジメチコン/メチコン)共重合体、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、(アクリレート/アクリル酸トリデシル/メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル/メタクリル酸ジメチコン)共重合体、PEG-11メチルエーテルジメチコン、ポリグリセリル-3ジシロキサンジメチコン、(ステアロキシメチコン/ジメチコン)共重合体、PEG/PPG-10/3オレイルエーテルジメチコン、トリメチルシロキシケイ酸、メチルフェニルシリコーン、ジメチコン共重合体、(ジメチコン/ビニルジメチコン)共重合体、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)共重合体、(アミノメチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)共重合体などを使用できるが、これらに制限されない。前記アルキルシラン化合物は、公知のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシランなどを使用できるが、これらに制限されない。前記チタン酸アルキル化合物は、例えばイソプロポキシチタニウムトリステアレート、トリイソプロポキシチタニウムイソステアレート、イソプロポキシチタニウムトリパルミテート、イソプロポキシチタニウムトリミリステートなどを使用できるが、これらに制限されない。前記フッ素化合物は、例えばトリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシランなどを使用できるが、これらに制限されない。前記アミノ酸化合物は、例えばN-アシルアミノ酸金属塩などが挙げられ、前記N-アシルアミノ酸金属塩の前駆体であるN-アシルアミノ酸は、例えばN-アシル-N-メチル-グリシン、N-アシル-N-メチル-b-アラニン及びN-アシル-L-グルタミン酸などが挙げられるが、これらに制限されることはない。前記脂肪酸化合物は、例えば脂肪酸としてアルミニウムミリステート、ソジウムミリステート、カルシウムミリステート、マグネシウムステアレート、アルミニウムステアレート、ソジウムステアレート、カルシウムステアレート、及びパルミチン酸、ジメチコノールステアレート、ジメチコノールヒドロキシステアレートなどを使用できるが、これらに制限されない。特に、粉体の表面が炭化水素鎖を有するように疎水化処理される場合、本発明による両親媒性共重合体との吸着力を高めることができるため、粉体の表面が炭化水素鎖を有するように疎水化処理されることが望ましい。前記疎水化処理された粉体は、製造して使用してもよく、製造されて市販の疎水化処理された粉体を使用してもよい。
【0012】
本発明による化粧料用粉体複合体は、前記粉体(望ましくは、疎水化処理された粉体)の表面に化学式(1)の両親媒性共重合体が吸着された形態にある。本明細書において、粉体に両親媒性共重合体が「吸着」されることを表すために使った用語「吸着」とは、前記粉体に前記両親媒性共重合体が付着、結合、コーティングまたは被覆されることを意味し、本発明の効果を達成するための形態であれば吸着の形態は特に制限されない。前記両親媒性共重合体が粉体の表面に、または疎水化処理された粉体を使用する場合は粉体の疎水化された表面に付着されることで、粉体の撥水効果を維持しながらも、洗浄時に容易に除去されるようにする。
【0013】
本発明において、前記両親媒性共重合体の粉体に対する付着量は、前記粉体の総重量に対して5~30重量%であり得、望ましくは8~23重量%であり得る。本明細書において、前記粉体が疎水化処理された粉体である場合、前記付着量は、疎水化処理前の粉体の重量に対して両親媒性共重合体が5~30重量%であることを示す。前記付着された両親媒性共重合体の重量が粉体の総重量に対して5~30重量%である場合、撥水性に優れながらも洗浄容易性が改善された粉体複合体を提供することができる。前記付着量が5重量%未満であると、疎水化処理された粉体の撥水効果が大きくて水相に分散し難く、優れた洗浄力を発揮することができない。また、前記付着量が30重量%を超えると、両親媒性共重合体が表面に付着された粉体を製造することができない。
【0014】
本発明において、化学式(1)の両親媒性共重合体は、望ましくはアミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール-アクリレート共重合体及びアミノメチル-2-プロパノール-アクリレート共重合体のいずれか一つ以上を含むことができ、より望ましくはアミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール-アクリレート共重合体単独、アミノメチル-2-プロパノール-アクリレート共重合体単独、またはこれらの混合物を使用することができる。本発明者らは、本発明による両親媒性共重合体として前記アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール-アクリレート共重合体単独、アミノメチル-2-プロパノール-アクリレート共重合体単独、またはこれらの混合物を使用して製造された化粧料用粉体複合体を含む化粧料組成物が、化粧持ち力に優れながらも、洗浄後肌に残る問題が著しく改善されることを確認した。
【0015】
本発明による化粧料用粉体複合体において、粉体に対する両親媒性共重合体の付着は、当業界に公知の粉体コーティング方法によって行うことができる。望ましくは、湿式工程または乾式工程によって製造できる。
【0016】
前記湿式工程において、粉体(望ましくは、疎水化処理された粉体)と両親媒性共重合体とを適切な溶媒に分散させた後、均質ミキサーで撹拌して前記粉体の表面に両親媒性共重合体を吸着させる工程を行うことができる。前記撹拌は、例えば撹拌翼を有する反応槽またはディスパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ホモミキサー、ニーダーなどの混合機によって行うことができる。また、前記撹拌は、1,000~10,000rpmで行い、粉体の表面に対する均質な吸着のため、望ましくは3,000~7,000rpmで行い、より望ましくは5,000~6,000rpmで行うことができる。また、前記撹拌は、30分~3時間行うことができ、望ましくは1時間~2時間行うことができる。前記適切な溶媒は、湿式工程に使用される公知の溶媒として本発明の目的を阻害しない範囲で使用でき、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールなどのアルコール系有機溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンまたはメチルシクロヘキサノンなどのケトン系有機溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチルまたは乳酸エチルなどのエステル系有機溶媒、ジメチルホルムアミド、ジケチルアセトアミドまたはn-メチルピロリドンなどのアミド系有機溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、またはジメチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒などを使用できるが、これらに制限されない。なかでも、特にエタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノールなどのアルコール系溶媒を使用することが望ましく、より望ましくはエタノールを使用することができる。前記溶媒としてアルコール系、特にエタノールを使用する場合、製造される本発明の化粧料用粉体複合体に優れた安定性を与えることができる。
【0017】
前記乾式工程において、両親媒性共重合体を適切な溶媒に溶解させて溶液を製造した後、粉体(望ましくは、疎水化処理された粉体)にスプレー噴霧する方法で行うことができる。乾式工程のための適切な溶媒は、本発明の目的を阻害しない範囲で乾式工程に使用される公知の溶媒を使用することができ、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールなどのアルコール系有機溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンまたはメチルシクロヘキサノンなどのケトン系有機溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチルまたは乳酸エチルなどのエステル系有機溶媒、ジメチルホルムアミド、ジケチルアセトアミドまたはn-メチルピロリドンなどのアミド系有機溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、またはジメチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒などを使用できるが、これらに制限されない。なかでも、特にエタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノールなどのアルコール系溶媒を使用することが望ましい。より望ましくは、アルコールを使用することができる。前記溶媒としてアルコール系、特にエタノールを使用する場合、製造される本発明の化粧料用粉体複合体に優れた安定性を与えることができる。前記両親媒性共重合体が溶解された溶液において、両親媒性共重合体の濃度は5%~10%であることが望ましく、より望ましくは7.5%であり得る。前記濃度の溶液で乾式工程を行う場合、本発明が目的とする効果を奏する化粧料用粉体複合体を製造することができ、上記の範囲外の濃度で用いる場合は、粉体複合体の安定性が低下する問題が生じるおそれがある。
【0018】
本発明は、本発明による化粧料用粉体複合体を含む化粧料組成物を提供することができる。本発明による化粧料組成物は、化粧持ち力に優れると同時に、洗浄時に化粧料が肌に残る問題が大幅に改善されているという効果を奏することができる。前記化粧料用粉体複合体は、化粧料組成物の総重量に対して1~30重量%、望ましくは5~25重量%、より望ましくは20重量%で含有できるが、これらに制限されない。
【0019】
本発明において、前記化粧料組成物は、ファンデーション、溶液、外用軟膏、クリーム、フォーム、栄養化粧水、柔軟化粧水、パック、メイクアップベース、プライマー、エッセンス、サンスクリーンクリム、サンオイル、サンスクリーンスティック、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、ローション、オイル、スプレーなどの剤形で製造でき、化粧料は乳液型、クリーム型、スティック型、固型、多層分離型など多様な形態で製造することができるが、これらに制限されない。特に、本発明による化粧料組成物は、化粧料の洗浄後の肌残留性が問題になる剤形、特に紫外線遮断用成分が配合される紫外線遮断用化粧料、リキッドファンデーション化粧料、メイクアップベース、またはプライマーに配合される場合、洗浄性、すすぎ性、洗浄容易性などで従来の化粧料に比べて優れた効果を奏することができる。
【0020】
本発明による化粧料組成物は、本発明による化粧料用粉体複合体を水相または油相に公知の方法で分散させて製造することができる。本発明による化粧料用粉体複合体の含有形態は、特に制限されないが、一例として前記粉体複合体が分散液の形態で含まれて製造されることが挙げられる。
【0021】
本発明による化粧料組成物は、湿潤剤及び分散剤のいずれか一つ以上をさらに含むことができる。前記湿潤剤は、化粧料組成物に使用される湿潤剤であれば特に制限されないが、例えば1,3-ブチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリンなどが挙げられる。望ましくは、湿潤剤としてグリセリンを使用することができる。前記湿潤剤の含量は、化粧料組成物の総重量に対して10~30重量%であり得、望ましくは20重量%であり得る。前記分散剤は、化粧料組成物に使用される公知の分散剤を使用することができ、HLB(Hydrophil-Lipophile balance)7.0以上のものであれば、本発明の目的を阻害しない範囲内でその種類は特に制限されない。前記分散剤の含量は、化粧料組成物の総重量に対して5~15重量%であり得、望ましくは10重量%であり得る。湿潤剤及び分散剤がそれぞれ上記の含量で含まれる場合、化粧料組成物に優れた安定性を与えることができ、一定した化粧料組成物の効果を奏することができる。
【0022】
本発明による化粧料組成物が紫外線遮断用化粧料として製造される場合、紫外線遮断用化粧料組成物は、特に分散剤及び/または湿潤剤をさらに含むことができ、特に分散液の形態で製造できる。
【0023】
また、本発明による紫外線遮断用化粧料組成物は、無機紫外線遮断剤、有機紫外線遮断剤、またはこれらの混合物を含むことができる。本発明において、前記無機紫外線遮断剤、有機紫外線遮断剤、またはこれらの混合物は、前記紫外線遮断用化粧料組成物の総重量に対して1~40重量%、望ましくは10~30重量%、より望ましくは20~25重量%の含量で含有できるが、これらに制限されない。
【0024】
本発明において、前記「無機紫外線遮断剤」は、紫外線遮断効果を奏する無機粉体を使用することができ、特に、酸化亜鉛、二酸化チタン、またはこれらの混合物である無機粉体を使用することができる。前記無機紫外線遮断剤として使用される無機粉体は、本発明の目的上、本発明による粉体複合体として製造されて含まれることが望ましい。前記無機紫外線遮断剤を本発明による粉体複合体として製造して含む場合、本発明は、安定的な紫外線遮断効果を奏する紫外線遮断用化粧料組成物を提供することができる。より具体的には、本発明は、日常生活で紫外線遮断効果を維持しながらも、洗浄時の洗浄容易性が改善される紫外線遮断用化粧料組成物を提供することができる。
【0025】
本発明において、前記「有機紫外線遮断剤」は、例えばエチルヘキシルサリチレート、エチルヘキシルパルミテート、オクトクリレン、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、イソアミル-p-メトキシシンナメート、ホモサレート、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルメトキシシンナメート、4-メチルベンジリデンカンファー、及びビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどから選択されるいずれか一つ以上を使用することができるが、これらに限定されることはない。
【0026】
本発明者らは、本発明による紫外線遮断用化粧料組成物が、本発明が適用されていない紫外線遮断用化粧料組成物に比べて優れた紫外線遮断効果及び洗浄容易性を奏することを確認した。具体的には、本発明による紫外線遮断用化粧料組成物と対照化粧料組成物とは、肌に適用した後、初期の紫外線遮断効果は類似するが、時間が経過するにつれて本発明の紫外線遮断効果は維持される一方、対照化粧料組成物の紫外線遮断効果は減少することを確認した。また、肌に適用し1時間乾燥させた後、洗浄剤を用いて水で洗浄する場合、対照化粧料組成物は肌に残るが、本発明による紫外線遮断用化粧料組成物はきれいに洗浄されることを確認した。このことから、本発明を適用して紫外線遮断効果及び洗浄容易性に優れた紫外線遮断用化粧料組成物を提供できることを確認した。
【0027】
本発明による紫外線遮断用化粧料は、耐水性、耐油性、耐皮脂性などに優れて化粧持ち力に優れながらも洗浄容易性が大きく改善されているという効果を奏することができる。従来、紫外線遮断用化粧料組成物に配合される成分は、洗浄後に肌に残留したとき、軽くは肌トラブル、深刻な場合は皮膚癌までの各種の問題を起こすおそれがある。そのため、化粧料組成物を洗浄し易くすると、化粧持ち力が低下し、化粧料の適用後に時間が経過するにつれて紫外線遮断効果が低下する問題を引き起こし得る。本発明を適用する場合、優れた化粧持ち力と洗浄容易性の効果を全て奏する化粧料組成物、特にこのような問題が大幅に改善された紫外線遮断用化粧料組成物を提供することができる。
【0028】
本発明による化粧料組成物は、上述した成分の外に、本発明の効果を阻害しない範囲内で、化粧料組成物に通常配合される成分、例えば界面活性剤、乳化剤、ゲル化剤、高分子、美容成分、紫外線遮断成分、保湿剤、色素、防腐剤、香などを適量配合して通常の方法によって製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の化粧料用粉体複合体は、粉体の撥水処理効果を維持しながらも、界面活性剤などによる洗浄時に容易に除去されることができる。
【0030】
本発明による化粧料用粉体複合体を含む化粧料組成物は、化粧持ち力に優れながらも、洗浄時に過度なクレンジングを必要とすることなく容易に洗浄され得、化粧料の肌残留量を著しく改善して肌トラブルなどの問題を減少させることができる。
【0031】
本発明による紫外線遮断用化粧料組成物は、優れた紫外線遮断効果及び洗浄容易性を奏することができる。
【0032】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】17%アルミニウムステアレートで表面処理した二酸化チタン(A、左側)、及び本発明を適用して17%アルミニウムステアレートで表面処理した二酸化チタンに両親媒性共重合体を付着させた粉体複合体(B、右側)の水分散度を比べた結果である。
【
図2】本発明によって製造された実施例1(A)及び実施例2(B)の動的光散乱粒度分布結果を示したグラフである。グラフのy軸は体積(%)を示し、x軸は粒子の大きさ(μm)を示す。
【
図3】実施例4、比較例2及び比較例3の撥水性及び洗浄力の差を比べた結果を示したものである。それぞれの写真において、左側は比較例2を、中央は実施例4を、右側は比較例3を示したものである。左側の写真は700rpmで30分間撹拌した後の写真であり、中央の写真は洗浄剤を投入した後700rpmで30分間撹拌した後、右側の写真は洗浄剤を投入した後700rpmで120分間撹拌した後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の理解を助けるために実施例などを挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形でき、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例】
【0035】
化粧料用粉体複合体の製造-実施例1及び実施例2の製造
ホモミキサーに両親媒性共重合体の50%エタノール分散液(商品名:MIHAPOL(登録商標)PAU-50、ミウォン商事製)600質量部を投入してエタノール4000質量部で希釈した後、17%アルミニウムステアレートで表面処理された二酸化チタン(商品名:MT-100TV、テイカ株式会社製)1000質量部を投入して6,000rpmで60分間撹拌した。その後、前記反応物を5,000rpmで10分間遠心分離して未反応両親媒性共重合体を分離した。その後、精製水を使用して5,000rpmで10分間2回精製し、前記両親媒性共重合体が粉体の総重量に対して23重量%吸着された粉体複合体(実施例1)を製造した。
【0036】
上記と同じ工程で酸化亜鉛(商品名:SUNZnO-NAS、SUNJINビューティーサイエンス製)を使用して、両親媒性共重合体が粉体の総重量に対して8重量%付着された粉体複合体(実施例2)を製造した。
【0037】
[実施例1の水分散度の比較評価]
製造した粉体複合体(実施例1)と両親媒性共重合体で処理していない17%アルミニウムステアレートとの水分散度を比較実験し、その結果を
図1に示した。
【0038】
[実施例1及び実施例2の粒度分布の分析]
製造した実施例1及び実施例2の粉体複合体の粒度分析を行った。動的光散乱粒度分析機を用いて分析した粉体複合体の粒度分布結果を
図2に示した。
【0039】
化粧料組成物の製造
[O/W剤形のサンクリームの製造-実施例3及び比較例1の製造]
下記表1の組成で実施例3及び比較例1の水中油型(O/W)サンクリームを製造した。下記表に示した成分のうち、水相部は常温で均一に溶解させて製造した。下記表に示した成分のうち、油相部は60℃で均一に溶解させた後、水相部を混合して化粧料組成物を製造した。
【0040】
【0041】
実施例3及び比較例1の洗浄力評価
上記のように製造した実施例3及び比較例1の水中油型(O/W)サンクリームを用いて以下のような方法で洗浄力を評価した。
【0042】
製造した実施例3及び比較例1の化粧料組成物をそれぞれ50μlずつ肌に塗布した後、1時間乾燥させた。その後、流れる水に5回手で擦りながら洗浄して各組成物の除去現象を確認した。JANUS(PIE社製)の紫外線光モードを用いて洗浄程度を確認した結果を下記表2に示した。
【0043】
【表2】
◎:完全に洗浄される
○:洗浄力に優れる
△:洗浄力が普通
×:洗浄されない
【0044】
表2から分かるように、本発明を適用した化粧料組成物の洗浄性が改善されることが確認できた。
【0045】
[W/O剤形のサンクリームの製造-実施例4及び比較例2の製造]
下記表3の組成で実施例4及び比較例2、3の油中水型(W/O)サンクリームを製造した。下記表3に示した成分のうち、水相部は常温で均一に溶解させて製造した。下記表に示した成分のうち、油相部は80℃で均一に溶解させた後、水相部を混合して化粧料組成物を製造した。
【0046】
【0047】
実施例4及び比較例2の洗浄力評価
上記のように製造した実施例4及び比較例2の油中水型(W/O)サンクリームを用いて以下のような方法で洗浄力を評価した。
【0048】
製造した実施例4及び比較例2の化粧料組成物をそれぞれ50μlずつ肌に塗布した後、1時間乾燥させた。その後、流れる水に5回手で擦りながら洗浄して各組成物の除去現象を確認した。JANUS(PIE社製)の紫外線光モードを用いて洗浄程度を確認した結果を下記表4に示した。
【0049】
【表4】
◎:完全に洗浄される
○:洗浄力に優れる
△:洗浄力が普通
×:洗浄されない
【0050】
表4から分かるように、本発明を適用した化粧料組成物の洗浄性が改善されることが確認できた。
【0051】
実施例4、比較例2、比較例3の撥水性及び洗浄力の評価
上記のように製造した実施例4、比較例2及び比較例3の化粧料組成物の撥水性及び洗浄力を以下のような方法で評価し、その結果を
図3及び下記表5に示した。
【0052】
実施例4、比較例2及び比較例3の化粧料組成物をガラス板にそれぞれ1gずつ塗布し、1時間乾燥した。その後、25℃の水に700rpmで30分間撹拌して化粧料組成物の洗浄程度を確認した。その後、洗浄剤を投入して700rpmで120分間撹拌した。このとき、洗浄剤を投入してから30分後及び120分後におけるそれぞれの化粧料組成物の洗浄程度を確認した。
【0053】
【表5】
◎:完全に洗浄される
○:洗浄力に優れる
△:洗浄力が普通
×:洗浄されな
【0054】
表5及び
図3から分かるように、本発明を適用する場合、日常生活で撥水性を維持して化粧持ち力に優れながらも、洗浄剤を通じた洗浄容易性及び洗浄性に優れることが確認できた。