(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】計測情報取引システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20231010BHJP
【FI】
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2019096494
(22)【出願日】2019-05-23
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 孝美
【審査官】野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-536938(JP,A)
【文献】特開2010-092362(JP,A)
【文献】特開2012-112719(JP,A)
【文献】特開2012-138090(JP,A)
【文献】特開2019-028827(JP,A)
【文献】特開2018-166284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報提供者情報と、情報提供者の建屋における計測情報と、を紐付けてピア・ツー・ピアのネットワークにおいて分散型台帳に情報を記録する記録手段と、
情報利用者が記録手段により記録された情報を閲覧する閲覧手段と、
を備え、
情報利用者が、閲覧を希望する情報を入力することにより、入力された情報を、前記分散型台帳に記録された情報から抽出する検索手段を備え、
検索手段により抽出された情報を情報利用者が取得すると、その情報に対する対価を情報提供者に対してスマートコントラクトにより自動的に付与する契約手段を備えた計測情報取引システム。
【請求項2】
契約手段は、計測情報に対して定められた対価を、検索手段による検索結果で対象となった情報提供者数で案分し、前記対象となった情報提供者に対して前記案分した対価を付与する請求項1に記載の計測情報取引システム。
【請求項3】
検索手段は、情報利用者が閲覧を希望する情報提供者の数を入力する機能を備え、
契約手段は、情報利用者が閲覧を希望する情報提供者の数が前記検索手段による検索結果の対象者数を超える場合、ランダムに情報提供者を選ぶ請求項1に記載の計測情報取引システム。
【請求項4】
情報提供者情報と、情報提供者の建屋における計測情報と、を紐付けてピア・ツー・ピアのネットワークにおいて分散型台帳に情報を記録する記録手段と、
情報利用者が記録手段により記録された情報を閲覧する閲覧手段と、
を備え、
情報利用者が閲覧を希望する情報の情報提供者に許可を得るために依頼を行う依頼手段と、
情報提供者の操作により、情報提供者情報とその計測情報とを紐付けた情報を情報利用者が閲覧することを許可する許可手段と、
を備えた計測情報取引システム。
【請求項5】
情報提供者情報と、情報提供者の建屋における計測情報と、を紐付けてピア・ツー・ピアのネットワークにおいて分散型台帳に情報を記録する記録手段と、
情報利用者が記録手段により記録された情報を閲覧する閲覧手段と、
を備え、
情報提供者の操作により、情報提供者情報とその計測情報とを紐付けた情報を情報利用者が閲覧することを許可する許可手段を備え、
許可手段は、情報提供者が分散型台帳に記録する情報提供者情報とその計測情報を入力する機能を備える計測情報取引システム。
【請求項6】
情報提供者情報と、情報提供者の建屋における計測情報と、を紐付けてピア・ツー・ピアのネットワークにおいて分散型台帳に情報を記録する記録手段と、
情報利用者が記録手段により記録された情報を閲覧する閲覧手段と、
を備え、
情報提供者へ
、記録された情報を閲覧した情報利用者の情報、閲覧された情報提供者情報とその計測情報、いつ記録された情報が閲覧されたのかという情報の何れかを含む閲覧情報を通知する通知手段を備える計測情報取引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測情報取引システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、ネットワークによりサーバに送られた計測情報をサーバで収集することで、その情報を利用するシステムがある。また、情報提供者の情報と、その情報提供者の計測情報とを紐付けた情報が提供者と利用者との間で取引され、利用されることが想定される。例えば、情報提供者の住んでいる地域と家族構成(4人家族等)などの情報提供者情報と、情報提供者の家族の消費電力量とを紐付けた情報を企業や官公庁に提供することなどが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の技術では、情報をサーバで集中管理しており、サーバ自体や、その設置場所、維持管理のためのコストがかかってしまう。そのため、計測情報を活用するために情報収集するコストも増大してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、情報提供者情報とその計測情報を低コストで取引できるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、情報提供者情報と、情報提供者の建屋における計測情報と、を紐付けてピア・ツー・ピアのネットワークにおいて分散型台帳に情報を記録する記録手段と、情報利用者が記録手段により記録された情報を閲覧する閲覧手段と、を備えた計測情報取引システムとする。
【0007】
また、情報利用者が、閲覧を希望する情報を入力することにより、入力された情報を、前記分散型台帳に記録された情報から抽出する検索手段を備えた構成とすることが好ましい。
【0008】
また、検索手段により抽出された情報を情報利用者が取得すると、その情報に対する対価を情報提供者に対してスマートコントラクトにより自動的に付与する契約手段を備えた構成とすることが好ましい。
【0009】
また、検索手段は、情報利用者が閲覧を希望する計測情報の計測時期を入力する機能を備える構成とすることが好ましい。
【0010】
また、契約手段は、計測情報に対して定められた対価を、検索手段による検索結果で対象となった情報提供者数で案分し、前記対象となった情報提供者に対して前記案分した対価を付与する構成とすることが好ましい。
【0011】
また、検索手段は、情報利用者が閲覧を希望する情報提供者の数を入力する機能を備え、契約手段は、情報利用者が閲覧を希望する情報提供者の数が前記検索手段による検索結果の対象者数を超える場合、ランダムに情報提供者を選ぶ構成とすることが好ましい。
【0012】
また、情報利用者が閲覧を希望する情報の情報提供者に許可を得るために依頼を行う依頼手段と、情報提供者の操作により、情報提供者情報とその計測情報とを紐付けた情報を情報利用者が閲覧することを許可する許可手段と、を備えた構成とすることが好ましい。
【0013】
また、情報提供者の操作により、情報提供者情報とその計測情報とを紐付けた情報を情報利用者が閲覧することを許可する許可手段を備え、許可手段は、情報提供者が分散型台帳に記録する情報提供者情報とその計測情報を入力する機能を備える構成とすることが好ましい。
【0014】
また、情報提供者へ閲覧情報を通知する通知手段を備える構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、情報提供者情報とその計測情報を低コストで取引できるシステムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】計測情報取引システムを利用した例1のフロー図である。
【
図3】計測情報取引システムを利用した例2のフロー図である。
【
図4】計測情報取引システムを利用した例3のフロー図である。
【
図5】計測情報取引システムを利用した例4のフロー図である。
【
図6】計測情報取引システムを利用した例5のフロー図である。
【
図7】計測情報取引システムを利用した例6のフロー図である。
【
図8】計測情報取引システムを利用した例7のフロー図である。
【
図9】計測情報取引システムを利用した例8のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に発明を実施するための形態を示す。
図1に示されていることから理解されるように、本実施形態の計測情報取引システム10は、情報提供者情報と、情報提供者の建屋における計測情報と、を紐付けてピア・ツー・ピアのネットワークにおいて分散型台帳1に情報を記録する記録手段と、情報利用者が記録手段により記録された情報を閲覧する閲覧手段と、を備えている。このため、情報を記録するサーバが必要なくなり、低コストで情報提供者情報とその計測情報とを紐付けた情報を情報利用者に提供することができる。
【0018】
記録手段での記録は、情報提供者側が提供者情報と計測情報を紐付けて、分散型台帳1に記録するものとしても良いし、提供者情報と計測情報を分散型台帳1に同時に記録することで紐付けるものとしても良い。
【0019】
ここで、ピア・ツー・ピア(Peer to Peer)について、説明する。ピア・ツー・ピアは、多数のシステム間で通信を行なうためのアーキテクチャのひとつであり、ピア(仲間など)同士が通信を行なう通信方式の基盤システムである。本実施形態では、ピア・ツー・ピアのネットワークで接続されている。
【0020】
本実施形態では、ピア・ツー・ピアネットワークにおいて共有する情報を分散型台帳1に記録する。一つのシステムの分散型台帳1に、所定の情報が書き込まれた場合、ピア・ツー・ピアネットワークにより、他のすべてのシステムが保有する分散型台帳1に、同じ分散情報が書き込まれる。
【0021】
このような分散型台帳1の技術には、例えば、情報の改ざんを防止するために、ブロックチェーン方式を用いることができる。ブロックチェーン方式では、「取引の記録」をまとめた「ブロック」を「チェーン」状に順次追加していく。ブロックチェーンを構成するそれぞれのブロックは、そのブロックと一つ前のブロックに関する情報を含む「ヘッダ」と、ある時間内に行なわれた取引のリストを記録した「トランザクション」とにより構成される。ブロックチェーンにおいては、過去からの全取引記録が記録されているため、仮に不正を行なおうとした場合、不正以降の全ブロックを書き換える必要があり、計算負荷が大きく、改ざんを困難にしている。そして、ピア・ツー・ピアネットワークに接続されている各システムは、一つのピアが発信した情報を、それぞれで分散して共有することになる。なお、ブロックチェーン方式の他にDAG(Directed Acyclic Graph:有向非巡回グラフ)方式なども用いることができる。
【0022】
本発明の典型的な情報提供者は、居住者や企業である。企業は、コンビニエンスストアなどの店舗であっても良い。また、典型的な情報提供者情報は、住所(都道府県、市町村までの情報とすることも考えられる)、電気機器の種類や数、発電設備の有無や種類、計測装置3の設置場所(1階、2階など)、建屋の種類(木造、鉄筋コンクリートなど)などである。情報提供者が居住者の場合は、家族構成(4人家族など)を情報提供者情報としても良いし、情報提供者が企業の場合は、企業規模や業種を情報提供者情報としても良い。
【0023】
典型的な計測情報は、計測装置3で計測されるものであり、消費電力量、発電量(太陽光などの再生可能エネルギによる発電)、買電力、売電力、蓄電池の残量、地震情報(震度、発生時間など)、雷情報、温度、湿度などである。これら全ての計測情報において計測日時に該当する情報も含まれるようにすることが好ましい。このような情報を利用する情報利用者の典型例としては、官公庁や企業などが挙げられる。
【0024】
ここで、本実施形態の計測情報取引システム10を利用する最も単純な流れを説明する。
図2に示すように、記録手段による分散型台帳1への記録を行った後、閲覧手段により利用者が閲覧を行い、その後取引の終了とする。このような流れが最も単純ではあるが、他のステップを踏むようにしても良いことは勿論である。
【0025】
例えば
図3に示す例では、記録手段による分散型台帳1への記録を行った後、情報利用者が検索手段を用いて必要な情報を入力すると、検索手段で分散型台帳1から情報を抽出する。抽出した結果について閲覧手段を用いて利用者が閲覧を行い、契約手段による対価の付与がなされた後、取引の終了とする。
【0026】
このように、情報利用者が、閲覧を希望する情報を入力することにより、入力された情報を、分散型台帳1に記録された情報から抽出する検索手段を備えた構成とすれば、情報利用者が必要となる情報を得ることができるため、好ましい。
【0027】
この検索手段は、情報利用者が閲覧を希望する計測情報の計測時期を入力する機能を備えると、リアルタイムの計測情報や過去の特定時期の計測情報といった計測時期を選ぶことができるため、好ましい。
【0028】
また、検索手段により抽出された情報を情報利用者が取得すると、その情報に対する対価を情報提供者に対してスマートコントラクトにより自動的に付与する契約手段を備えた構成とすることが好ましい。情報提供者と情報利用者の間に仲介作業が発生しないため、契約作業に必要な第三者の仲介手数料などが不要となるので、対価が低金額となる場合でも情報提供者に付与することができるためである。この場合、情報提供者が情報提供に関する条件(アクセス権や情報の種類など)をアプリケーションなどで設定し、アプリケーションを管理する分散型台帳1やサーバにより、スマートコントラクトの条件が生成される。
【0029】
なお、スマートコントラクトとは、ブロックチェーンネットワークなどの分散型台帳1上において交わされる契約である。デジタル形式で記述され、契約内容として設定された条件が達成された場合には、予め設定された内容に従い、自動的に処理が実行されるプログラムである。ブロックチェーンは、中央管理システム等を必要とせずに情報の信頼性を保持する仕組みを有する。このため、スマートコントラクトを生成することで、ユーザは、商取引を仲介するサーバ等を介さずにユーザ間の商取引を行うことができる。
【0030】
契約手段は、計測情報に対して定められた対価を、検索手段による検索結果で対象となった情報提供者数で案分し、前記対象となった情報提供者に対して前記案分した対価を付与するものとすることが好ましい。多くの情報提供者が対価を受け取れ、恩恵を感じてもらえるからである。
【0031】
対価としては、仮想通貨、電子マネー、電子ポイントなどを用いることが例示できる。仮想通貨の場合イーサリアムなどのスマートコントラクト機能を備えるものを利用することが好ましい。
【0032】
契約方法としては特段の制限はなく、誰にでも公開する自由アクセスの形態を採用しても良いが、個人情報を提供するので、情報提供者が許可した場合に、利用者へ情報を提供する限定アクセスの形態をとっても良い。後者の場合、情報提供者が許可した場合に、利用者へ情報を提供する許可手段を計測情報取引システム10に備えるようにすることが好ましい。また、個人情報へのアクセス権を利用者に個別に付与し、情報利用者によるアクセス記録をハッシュ化してブロックチェーン上に記録し、管理するのが好ましい。
【0033】
許可手段では、情報を選択して開示を許可できるものとしても良い。この場合、
図4に示すことから理解されるように、開示が可能な情報を入力し、分散型台帳1へ記録するようにすれば良い。このように、許可手段が、情報提供者が分散型台帳1に記録する情報提供者情報とその計測情報を入力する機能を備えるようにすれば、提供者があらかじめ利用者に閲覧させることができる情報を選択できるため、提供者が秘匿したい情報は開示せずに済む。
【0034】
情報利用者を制限する場合、あらかじめ情報提供者が選択した企業や業種などに対して情報利用者に権限を付与する仕組みとしても良いし、情報利用者から閲覧依頼が来たら、情報提供者が情報利用者に閲覧の権限を付与するか否かを判断する仕組みとしても良い。前者の場合、
図5及び
図6に示すことから理解されるように、予め許可手段で閲覧できる情報利用者を入力できるようにすることが好ましい。後者の場合、
図7から
図9に示すことから理解されるように、閲覧依頼が行われるたびに許可するか否かを判断するようにしても良い。このように、情報利用者が閲覧を希望する情報の情報提供者に許可を得るために依頼を行う依頼手段と、情報提供者の操作により、情報提供者情報とその計測情報とを紐付けた情報を情報利用者が閲覧することを許可する許可手段と、を備えた構成とすれば、情報を閲覧できる情報利用者を情報提供者が選択できるので、個人情報の不要な漏洩を防ぐことができる。
【0035】
例えば、情報提供者はあらかじめ、情報提供できる提供者情報と計測情報を分散型台帳1に記録しておき、情報利用者が複数の情報提供者に希望する情報の閲覧希望を依頼した際に、情報提供者に回答期限を設け、期限内に許可された情報提供者の情報が契約対象となるようにしても良い。
【0036】
また、検索手段は、情報利用者が閲覧を希望する情報提供者の数を入力する機能を備え、契約手段は、情報利用者が閲覧を希望する情報提供者の数が前記検索手段による検索結果の対象者数を超える場合、ランダムに情報提供者を選ぶようにすることも好ましい。
【0037】
記録手段や許可手段は情報提供者側のスマートホンやPCなどの端末にインストールしたアプリケーションにより機能させるようにするのが好ましい。また、検索手段は情報利用者側のスマートホンやPCなどの端末にインストールしたアプリケーションにより機能させるようにするのが好ましい。また、計測装置3と連携したその他通信装置であっても良い。例えば、分電盤の導電部から電力を得る通信装置に上記手段を備えるものであっても良い。計測情報によりこのような通信装置と端末のアプリとを併用するものであっても良い。
【0038】
また、情報利用者が閲覧した後に、情報利用者の情報、閲覧した情報提供者情報とその計測情報、いつ閲覧されたのかなどの閲覧に関する情報をフィードバックして情報提供者に通知する通知手段があってもよい。このように、情報提供者へ閲覧情報を通知する通知手段を備えるようにすれば、いつ誰がどんな情報を閲覧したかの情報を提供者が得ることができるので取引の透明性が増す。
【0039】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、フローの順番を入れ替えることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 分散型台帳
3 計測装置
10 計測情報取引システム