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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】車両用エアコン装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
B60H1/00 102P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021519330
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2020017200
(87)【国際公開番号】W WO2020230548
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2019089439
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 優作
(72)【発明者】
【氏名】長野 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】泉川 志郎
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 久善
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-062035(JP,A)
【文献】特開2009-143338(JP,A)
【文献】特開2016-078797(JP,A)
【文献】特開2007-333312(JP,A)
【文献】特開平11-245644(JP,A)
【文献】特開2002-144848(JP,A)
【文献】特開2005-319874(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0168117(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0144521(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を送風する送風部(11;11B)と、
前記送風部(11;11B)から送風された前記空気を加熱または冷却する熱交換器(40)がケース(20;20B)に収容された温調部(12;12A;12B)と、
前記送風部(11)から前記温調部(12;12A;12B)へ前記空気を導くダクト部(13;13A;13B)と、を備え、
前記熱交換器(40)は、前記空気の流れ方向を基準として上流側に位置する流入面(41)を含むと共に、この流入面(41)から流入した前記空気が通過する際に、前記空気と熱交換を行い、
前記ケース(20;20B)は、前記流入面(41)に対向する位置に、前記ダクト部(13;13A;13B)から前記温調部(12;12A;12B)に導かれた前記空気の流れ方向を略90度曲げて前記流入面(41)に導く流れ方向変更部(30)を有し、
前記ケース(20;20B)の内壁面と前記流入面(41)との間の熱交換器上流空間(22)内に、前記流入面(41)を正対して見たときに前記流れ方向変更部(30)よりも面積の小さいガイド部(60、70;60A、70A;60B)が設けられ
前記ケース(20)は、上ケース(20a)と、この上ケース(20a)の下部に位置する下ケース(20b)とで構成され、
前記上ケース(20a)と前記下ケース(20b)との間に前記熱交換器上流空間(22)の少なくとも一部を上下に仕切る仕切板(50;50A)が設けられ、
前記ガイド部(60、70;60A、70A)は、前記仕切板(50;50A)の上面(51b;51Ab)及び/又は下面(51a;51Aa)から上下方向に延びるよう立設されていることを特徴とする車両用エアコン装置。
【請求項2】
前記ダクト部(13)は、前記上ケース(20a)及び前記下ケース(20b)と接続され、
前記ダクト部(13)を通流する前記空気の流れ方向を基準として見たときに、前記ダクト部(13)の下底面(13a)は、上り傾斜を有して構成され、
前記ガイド部(60、70)は、前記仕切板(50)の下面(51a)に固定された第1ガイド(60)を含むことを特徴とする請求項に記載の車両用エアコン装置。
【請求項3】
前記ダクト部(13)は、前記上ケース(20a)および前記下ケース(20b)と接続され、
前記ダクト部(13)を通流する前記空気の流れ方向を基準として見たときに、前記ダクト部(13)の天井面(13b)は、上り傾斜を有して構成され、前記仕切板(50)は前記天井面(13b)よりも緩い傾斜を有して構成され、
前記ガイド部(60、70)は、前記仕切板(50)の上面(51b)に固定された第2ガイド(70)を含むことを特徴とする請求項又は請求項いずれか記載の車両用エアコン装置。
【請求項4】
前記ダクト部(13A)は、前記上ケース(20a)および前記下ケース(20b)と接続され、
前記ダクト部(13A)を通流する前記空気の流れ方向を基準として見たときに、前記ダクト部(13A)の天井面(13Ab)は下り傾斜を有して構成され、
前記ガイド部(60A、70A)は、前記仕切板(50A)の上面(51Ab)に固定された第1ガイド(60A)を含むことを特徴とする請求項又は請求項いずれか記載の車両用エアコン装置
【請求項5】
前記ダクト部(13A)は、前記上ケース(20a)および前記下ケース(20b)と接続され、
前記ダクト部(13A)を通流する前記空気の流れ方向を基準として見たときに、前記ダクト部(13A)の下底面(13Aa)は下り傾斜を有して構成され、前記仕切板(50A)は前記下底面(13Aa)よりも緩い傾斜を有して構成され
前記ガイド部(60A、70A)は、前記仕切板(50A)の下面(51Aa)に固定された第2ガイド(70A)を含むことを特徴とする請求項又は請求項いずれか記載の車両用エアコン装置。
【請求項6】
前記流れ方向変更部(30)は、段差形状を呈する複数の段差部(31)を有し、
前記ガイド部(60、70;60A、70A;60B)の少なくとも一部は、前記ダクト部(13;13A;13B)を通流する前記空気の流れ方向を基準としてみたときに、前記複数の段差部(31)よりも上流側に位置していることを特徴とする請求項1乃至請求項いずれか1項記載の車両用エアコン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の温度を所定の温度に調節するための車両用エアコン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内の温度を所定の温度に調節するために、車両には、車両用エアコン装置が搭載されている。車両用エアコン装置に関する従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に開示された車両用エアコン装置は、ダクト部から温調部に導かれた空気の流れ方向を略90度曲げて熱交換器に導く流れ方向変更部が、ケースに段差状に形成されてなる。流れ方向変更部によって、熱交換器に向かって空気を導くことができる。加えて、ケースを段差状に形成するため、特に下流側においてケースの小型化に資する。
【0004】
また、特許文献2に開示された車両用エアコン装置は、ケースの内壁面と熱交換器との間に、ダクト部から導かれた空気を熱交換器に導く複数のガイド部が設けられている。ガイド部を設けることにより、熱交換器の全体に空気を流すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-203063号公報(図5
【文献】特開2009-143338号公報(図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の車両用エアコン装置によれば、流路の方向が大きく変わるため、流れ方向変更部よりも上流側の部位において熱交換器に風を導くのが困難である。すなわち、熱交換器を通過する空気の風量を均一化することが難しい。
【0007】
一方、特許文献2の車両用エアコン装置によれば、熱交換器の全体に風を導くことができるものの、特許文献1のようにケースを段差状に形成することによる小型化を図ることができず、ケースが大型化する。ケースの大型化は、車両用エアコン装置全体の大型化につながる。
【0008】
本発明は、小型でありながら熱交換器を通過する風量を均一化することができる車両用エアコン装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明によれば、空気を送風する送風部(11;11B)と、
前記送風部(11;11B)から送風された前記空気を加熱または冷却する熱交換器(40)がケース(20;20B)に収容された温調部(12;12A;12B)と、
前記送風部(11)から前記温調部(12;12A;12B)へ前記空気を導くダクト部(13;13A;13B)と、を備え、
前記熱交換器(40)は、前記空気の流れ方向を基準として上流側に位置する流入面(41)を含むと共に、この流入面(41)から流入した前記空気が通過する際に、前記空気と熱交換を行い、
前記ケース(20;20B)は、前記流入面(41)に対向する位置に、前記ダクト部(13;13A;13B)から前記温調部(12;12A;12B)に導かれた前記空気の流れ方向を略90度曲げて前記流入面(41)に導く流れ方向変更部(30)を有し、
前記ケース(20;20B)の内壁面と前記流入面(41)との間の熱交換器上流空間(22)内に、前記流入面(41)を正対して見たときに前記流れ方向変更部(30)よりも面積の小さいガイド部(60、70;60A、70A;60B)が設けられたことを特徴とする車両用エアコン装置が提供される。
【0011】
そして、前記ケース(20)は、上ケース(20a)と、この上ケース(20a)の下部に位置する下ケース(20b)とで構成され、
前記上ケース(20a)と前記下ケース(20b)との間に前記熱交換器上流空間(22)の少なくとも一部を上下に仕切る仕切板(50;50A)が設けられ、
前記ガイド部(60、70;60A、70A)は、前記仕切板(50;50A)の上面(51b;51Ab)及び/又は下面(51a;51Aa)から上下方向に延びるよう立設されている。
【0012】
好ましくは、前記ダクト部(13)は、前記上ケース(20a)及び前記下ケース(20b)と接続され、
前記ダクト部(13)を通流する前記空気の流れ方向を基準として見たときに、前記ダクト部(13)の下底面(13a)は、上り傾斜を有して構成され、
前記ガイド部(60、70)は、前記仕切板(50)の下面(51a)に固定された第1ガイド(60)を含む。
【0013】
好ましくは、前記ダクト部(13)は、前記上ケース(20a)および前記下ケース(20b)と接続され、
前記ダクト部(13)を通流する前記空気の流れ方向を基準として見たときに、前記ダクト部(13)の天井面(13b)は、上り傾斜を有して構成され、前記仕切板(50)は前記天井面(13b)よりも緩い傾斜を有して構成され、
前記ガイド部(60、70)は、前記仕切板(50)の上面(51b)に固定された第2ガイド(70)を含む。
【0014】
好ましくは、前記ダクト部(13A)は、前記上ケース(20a)および前記下ケース(20b)と接続され、
前記ダクト部(13A)を通流する前記空気の流れ方向を基準として見たときに、前記ダクト部(13A)の天井面(13Ab)は下り傾斜を有して構成され、
前記ガイド部(60A、70A)は、前記仕切板(50A)の上面()に固定された第1ガイド(60A)を含む。
【0015】
好ましくは、前記ダクト部(13A)は、前記上ケース(20a)および前記下ケース(20b)と接続され、
前記ダクト部(13A)を通流する前記空気の流れ方向を基準として見たときに、前記ダクト部(13A)の下底面(13Aa)は下り傾斜を有して構成され、前記仕切板(50A)は前記下底面(13Aa)よりも緩い傾斜を有して構成され、
前記ガイド部(60A、70A)は、前記仕切板(50A)の下面(51Aa)に固定された第2ガイド(70A)を含む。
【0016】
好ましくは、前記流れ方向変更部(30)は段差形状を呈する複数の段差部(31)を有し、
前記ガイド部(60、70;60A、70A;60B)の少なくとも一部は、前記ダクト部(13;13A;13B)を通流する前記空気の流れ方向を基準としてみたときに、前記複数の段差部(31)よりも上流側に位置している。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ケースは、ダクト部から温調部に導かれた空気の流れ方向を略90度曲げて熱交換器の流入面に導く流れ方向変更部を有している。また、ケースの内壁面と熱交換器の流入面との間の熱交換器上流空間内に、ガイド部が設けられている。ガイド部は、流入面を正対して見たときに流れ方向変更部よりも面積が小さい。つまり、流れ方向変更部を有するケースを用いつつ、流れ方向変更部に対して小さな領域にガイド部を設けることとした。流れ方向変更部を有するケースを用いることにより、ケースを小型化することができる。加えて、ガイド部を設けることにより、より熱交換器の流入面の全体に風を導くことができる。このとき、ガイド部の設けられる領域を小さくすることにより、ケースの大型化を防止することができる。このため、小型でありながら熱交換器の全体に風を導いて、もって熱交換器を通過する風量を均一化した車両用エアコン装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1による車両用エアコン装置の斜視図である。
図2図1に示された車両用エアコン装置の要部分解斜視図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5図3に示された車両用エアコン装置の変更例について説明する図である。
図6】実施例2による車両用エアコン装置の要部断面図である。
図7図6に示された仕切板、第1ガイド、及び、第2ガイドの斜視図である。
図8】実施例3による車両用エアコン装置の側面図である。
図9図8のIX-IX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図中Frは車両の進行方向を基準として前、Rrは車両の進行方向を基準として後、Leは車両の乗員を基準として左、Riは車両の乗員を基準として右、Upは上、Dnは下を示している。
<実施例1>
【0020】
図1を参照する。車室内の温度を調節する車両用エアコン装置10(以下、「エアコン装置10」と略記する。)は、例えば、乗用車に搭載される。エアコン装置10は、車室内の前方で、概ね左右方向に延びるよう配置されている。
【0021】
エアコン装置10は、吸い込んだ空気を送風する送風部11と、この送風部11から送風された空気の温度調節を行い車室内に吐出する温調部12と、送風部11から温調部12へ空気を導くダクト部13と、を有する。
【0022】
送風部11には、図示しないインペラ及びモータが収納されている。モータの駆動によってインペラが回転されることにより、車室内及び/又は車室外の空気が、送風部11内に吸い込まれる。送風部11に吸い込まれた空気は、ダクト部13を介して温調部12に供給される。
【0023】
図2及び図3を参照する。温調部12は、ケース20と、このケース20の内部に収納されダクト部13から吐出された空気と熱交換を行う熱交換器40と、ケース20内に設けられケース20の内部を上下に仕切る仕切板50と、この仕切板50の下面に固定され風を熱交換器40に向かってガイドする第1ガイド60(ガイド部60)と、仕切板50の上面に固定され風を熱交換器40に向かってガイドする第2ガイド70(ガイド部70)と、を有する。
【0024】
図1及び図4を参照する。ダクト部13は、送風部11から温調部12に向かって上り勾配に配置されている。より詳細に説明すると、ダクト部13の下底面13aは、空気の流れ方向に沿って上り傾斜に形成されている。また、ダクト部13の天井面13bも、空気の流れ方向に沿って上り傾斜に形成されている。
【0025】
図2及び図3を参照する。ケース20の内部空間は、空気の流れ方向を基準として、空気が導入される空気導入口21から熱交換器40よりも上流側の領域である熱交換器上流空間22と、熱交換器40よりも下流側の領域である熱交換器下流空間23と、に分けることができる。ケース20の前面は、左側から導入された空気を後方に向かって導く、流れ方向変更部30を含む。流れ方向変更部30は、実質的に、ケース20のうち熱交換器40と対向する部分である。
【0026】
なお、以下において、「上流」という場合には、空気の流れ方向を基準として上流をいい、「下流」という場合には、空気の流れ方向を基準として下流をいう。
【0027】
ケース20は、共に樹脂製の上ケース20aと下ケース20bと、からなり、下ケース20bに上ケース20aが重ね合わされてなる。前述した空気導入口21、熱交換器上流空間22、熱交換器下流空間23、流れ方向変更部30は、それぞれ上ケース20a及び下ケース20bの両方によって形成されている。
【0028】
流れ方向変更部30は、上流側よりも下流側の方が、より後方に位置するよう構成されている。具体的には、図3に示されるように複数の段差部31が形成されていることが好ましい。
【0029】
段差部31は、熱交換器40に略平行な平面部31aと、この平面部31aから熱交換器40に向かって延びる壁部31bと、からなる。平面部31aに対した壁部31bのなす角は、90°より大きいもので、熱交換器40を通過する空気の風量分布やエアコン装置10の通気抵抗を考慮して適宜設定される。図3は、一例として、平面部31aに対した壁部31bのなす角がいずれも略90°である構成を示している。ダクト部13からケース20の内部に導入された空気は、それぞれの壁部31bによって、熱交換器40に向かって流れ方向を変更するようガイドされる。
【0030】
なお、流れ方向変更部30の形状は、任意の形状を採用することができる。例えば、平面部31aに対した壁部31bのなす角が上流側は相対的に小さく、下流側にあるほど相対的に大きくなるよう構成してもよい。
【0031】
熱交換器40は、上流側の面であって空気が流入する流入面41と、この流入面41から流入した空気が吐出される吐出面42と、を有する。流入面41から流入した空気は、熱交換器40において熱交換され、吐出面42から熱交換器下流空間23に吐出される。
【0032】
図2及び図4を参照する。仕切板50は、ケース20の内部に位置する仕切板本体部51と、この仕切板本体部51からダクト部13の内部まで延びる仕切板延長部52と、を有する。
【0033】
仕切板本体部51は、上ケース20aと下ケース20bとの間に設けられている。即ち、仕切板本体部51は、上ケース20aと下ケース20bとの境界に沿って配置されている。仕切板本体部51は、ケース20の内壁面に沿った形状を呈する。
【0034】
仕切板延長部52の一部は、ダクト部13の内部に位置している。仕切板延長部52は、送風部11(図1参照)に向かって下り勾配に形成されいる。仕切板延長部52の勾配は、ダクト部13の天井面13bの傾斜よりも緩やかである。
【0035】
第1ガイド60は、仕切板本体部51の下面51aに固定され、第2ガイド70は、仕切板本体部51の上面 に固定されている。第1ガイド60及び第2ガイド70は、それぞれ仕切板本体部51に対して立てられた状態で設けられ、平面視において略L字状を呈する。
【0036】
図3を参照する。第1ガイド60及び第2ガイド70は、複数の平面部31aのうち、最も流入面41に近い平面部31a(最も下流側の平面部31a)よりも流入面41に近い部位に配置されている(延長線L1参照)ことが好ましい。換言すれば、第1ガイド60と第2ガイド70の全ては、最も熱交換器40に近い平面部31aよりも熱交換器40に近い部位に配置されていることが好ましい。これにより、ケース20の大型化を抑制することができる。
【0037】
第1ガイド60は、複数の壁部31bのうち、最も空気導入口21に近い壁部31b(最も下流側の壁部31b)よりも空気導入口21に近い部位に配置されている(延長線L2参照)。これにより、ダクト部13を流れてきた空気の一部が、壁部31bに到達するよりも上流側(すなわち、熱交換器40におけるダクト部13に近接する側)で、第1ガイド部60によって熱交換器40に向かうよう、流れ方向が変更される。
【0038】
図4を参照する。流入面41を正対して見たときに、第1ガイド60及び第2ガイド70が設けられている領域の面積は、流れ方向変更部30の面積よりも小さい。
【0039】
より好ましくは、第1ガイド60及び第2ガイド70が設けられている領域の面積は、第1ガイド60及び第2ガイド70が設けられてない領域の面積よりも小さいことが好ましい。第1ガイド60及び第2ガイド70が設けられた領域は、流れ方向変更部30による空気の流れ方向を変更する効果が得られないところ、このように第1ガイド60及び第2ガイド70の面積を小さいものとすることで、流れ方向変更部30による当該効果の低減を限定的なものとすることができる。
【0040】
図3を参照する。空気導入口21から導入された空気の一部は、第1ガイド60及び第2ガイド70によって熱交換器40の任意の部位に向かって流れ方向を変更するよう、ガイドされる。空気導入口21から導入された空気の残部は、流れ方向変更部30のそれぞれの段差形状によって熱交換器40に向かって流れ方向を変更するよう、ガイドされる。
【0041】
図5を参照する。図5に示されるように、第1ガイド60を複数配置することもできる。即ち、ガイド部材60を、第1ガイド60のみによって構成し、これらを複数設けることも可能である。この場合に、これらの第1ガイド60の全てが、平面部31aよりも流入面41に近い部位に配置されていることが好ましい。さらに、複数の第1ガイド60の全てが、壁部31bよりも空気導入口21に近い部位に配置されていることが好ましい。
【0042】
なお、第2ガイド70(図4参照)も、必要に応じて複数にすることができる。また、ガイド部材70を第2ガイドのみによって構成し、これらを複数設けることも可能である。このとき、第2ガイド70の全てが、平面部31aよりも流入面41に近い部位に配置されていることが好ましい。
【0043】
以上に説明したエアコン装置10は、以下の効果を奏する。
【0044】
図3及び図4を参照する。ケース20は、ダクト部13から温調部12に導かれた空気の流れ方向を略90度曲げて熱交換器40の流入面41に導く流れ方向変更部30を有している。また、ケース20の内壁面と熱交換器40の流入面41との間の熱交換器上流空間22内に、第1ガイド60及び第2ガイド70が設けられている。第1ガイド60及び第2ガイド70は、流入面41を正対して見たときに流れ方向変更部30よりも面積が小さい。つまり、流れ方向変更部30を有するケース20を用いつつ、流れ方向変更部30に対して小さな領域に第1ガイド60及び第2ガイド70を設けることとした。流れ方向変更部30を有するケース20を用いることにより、ケース20を小型化することができる。加えて、第1ガイド60及び第2ガイド70を設けることにより、より熱交換器40の流入面41の全体に風を導くことができる。このとき、第1ガイド60及び第2ガイド70の設けられる領域を小さくすることにより、ケース20の大型化を防止することができる。このため、小型でありながら熱交換器40を通過する風量を均一化することができる車両用エアコン装置10を提供することができる。
【0045】
さらに、第1ガイド60及び第2ガイド70は、仕切板50の上面51b及び下面51aから上下方向に延びるよう立設されている。例えば、第1ガイド60及び第2ガイド70を予め仕切板50に固定し、仕切板50をケース20に固定することができる。第1ガイド60及び第2ガイド70を、ケース20の内壁面と流入面41との間の熱交換器上流空間22内に設けるうえで、好ましい構成である。上述したように、第1ガイド60又は第2ガイド70のみによってガイド部材60、70が構成される場合も同じ効果を得ることができる。
【0046】
ダクト部13の下底面13aは、空気の流れ方向に沿って上り傾斜に構成されている。ダクト部13に沿って流れた空気は、左右方向だけでなく上方に向かって流れる。このため、仕切板50の下面51aに接触すると共に、下ケース20bの下方には流れにくい事情がある。ここで、仕切板50の下面51aのうちダクト部13に近接した部位に第1ガイド60を設けることにより、熱交換器上流空気22の、特に仕切壁50よりも下方の領域において、空気の流れ方向の変更を円滑に行うことができる。
【0047】
ダクト部13の天井面13bは、上り傾斜を有して構成され、仕切板50は天井面13bよりも緩い傾斜を有して構成されている。ダクト部13の天井面13bがケース20に向かって上り勾配を有して形成されている場合、特に仕切板50の上面近傍の空間において、熱交換器40に向けて空気の流れ方向が変化しにくいところ、このような部位に第2ガイド70を設けることにより、熱交換器上流空間22の、特に仕切壁50よりも上方の領域において、空気の流れ方向の変更を円滑に行うことができる。
【0048】
第1ガイド60は、複数の段差部31よりも上流側に位置している。つまり、第1ガイド60及び第2ガイド70の少なくとも一部は、複数の段差部31よりも上流側に位置している。ダクト部13を流出した空気は、ケース20に設けられた段差部31によって、熱交換器40に向けて空気の流れ方向が変更される。ここで、段差部31よりも上流側に第1ガイド60及び第2ガイド70の少なくとも一部を設けたことで、段差部31に到達する前であっても一部の空気の流れ方向を熱交換器40に向けて変更可能とし、熱交換器40を通流する空気の風量の分布を均一化できる。
【0049】
<実施例2>
次に、実施例2によるエアコン装置10Aを図面に基づいて説明する。
【0050】
図6及び図7を参照する。実施例2によるエアコン装置10Aは、実施例1によるエアコン装置10(図1参照)とは、ダクト部13Aの指向する方向が異なっている。これにより、第1ガイド60A、及び、第2ガイド70Aの固定される位置も異なっている。また、仕切板50Aの形状が異なっている。その他の基本的な構成については、実施例1によるエアコン装置10と共通する。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0051】
ダクト部13Aは、空気の流れ方向に沿って下り傾斜に形成されている。より詳細に説明すると、ダクト部13Aの下底面13Aaは、空気の流れ方向に沿って下り傾斜に形成されている。また、ダクト部13Aの天井面13Abも、空気の流れ方向に沿って下り傾斜に形成されている。
【0052】
仕切板50Aは、ケース20の内部に位置する仕切板本体部51Aと、この仕切板本体部51Aからダクト部13の内部まで延びる仕切板延長部52Aと、を有する。
【0053】
仕切板本体部51は、一部が欠肉状に形成され(図7参照)、そのほかの部位は、ケース20の内壁面に沿った形状を呈する。欠肉状に形成された部位を貫通部53Aという。貫通部53Aが形成されていることにより、ケース20の内部において仕切板50Aの下部から上部、又は、上部から下部へ空気が通過することができる。換言すれば、貫通部53Aは、仕切板50Aを貫通し、熱交換器上流空間22のうちの仕切板50Aの下部の領域と上部の領域とを繋いでいる部位、ということができる。
【0054】
仕切板延長部52の一部は、ダクト部13の内部に位置している。仕切板延長部52は、送風方向に沿って下り勾配に形成されいる。仕切板延長部52の勾配は、ダクト部13Aの下底面13Aaの傾斜よりも緩やかである。
【0055】
第1ガイド60Aは、仕切板50Aの上面51Abに固定されている。第2ガイド70Aは、仕切板50Aの下面51Aaに固定されている。エアコン装置10Aは、第1ガイド60Aを備え第2ガイド70Aを備えない形態、第1ガイド60Aを備えず第2ガイド70Aを備える形態、第1ガイド60Aと第2ガイド70Aとのいずれも備える形態の、いずれであってもよい。
【0056】
以上に説明したエアコン装置10Aも、本発明所定の効果を奏する。
【0057】
ダクト部13の天井面13Abは、空気の流れ方向に沿って下り傾斜に構成されている。ダクト部13Aに沿って流れた空気は、左右方向だけでなく下方に向かって流れる。このため、仕切板50Aの上面51Abに接触するとともに、上ケース20aの上方には流れにくい事情がある。ここで、仕切板50Aの上面51Abのうちダクト部13に近接した部位に第1ガイド60Aを設けることにより、熱交換器上流空気22の、特に仕切板50Aよりも上方の領域において、空気の流れ方向の変更を円滑に行うことができる。
【0058】
ダクト部13Aの下底面13Aaは、下り傾斜に構成され、仕切板50Aは下底面13Aaよりも緩い傾斜を有して構成されている。ダクト部13の下底面13Aaがケース20に向かって下り勾配を有して形成されている場合、特に仕切板50Aの下面51Aa近傍の空間において、熱交換器40に向けて空気の流れ方向が変化しにくいところ、このような部位に第2ガイド70を設けることにより、熱交換器上流空間22の、特に仕切板50よりも下方の領域において、空気の流れ方向の変更を円滑に行うことができる。
【0059】
<実施例3>
次に、実施例3によるエアコン装置10Bを図面に基づいて説明する。
【0060】
図8及び図9を参照する。実施例3によるエアコン装置10Bは、実施例1によるエアコン装置10(図1参照)とは、送風部11B、ダクト部13B、温調部12Bが上下方向に延びるよう配置されている点で異なっている。その他の基本的な構成については、実施例1によるエアコン装置10と共通する。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0061】
エアコン装置10Bは、送風部11Bとダクト部13Bとが一体的に形成されていると共に、一体化された送風部11B及びダクト部13Bが温調部12Bの上部に配置されている。
【0062】
ケース20Bは、上方から下方へ流れる空気を車両後方へ向かって流す。
【0063】
第1ガイド60Bは、左右方向に延びるよう構成されている。
【0064】
以上に説明したエアコン装置10Bも本発明所定の効果を奏する。
【0065】
尚、各実施例は、適宜組み合わせることもできる。例えば、ケースに向かって上り勾配に形成されたダクト部を有するエアコン装置の仕切板の一部を欠肉状に形成し、貫通部を形成することができる。また、ケースに向かって下り勾配に形成されたダクト部を有するエアコン装置の仕切板に、貫通部が形成されていないものを用いることもできる。さらには、仕切板の上面に複数の第1ガイドを固定することもできる。これらに限らず、各実施例は任意に組み合わせることができる。
【0066】
本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のエアコン装置は、乗用車に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0068】
10、10A、10B…車両用エアコン装置
11、11B…送風部
12、12A、12B…温調部
13、13A、13B…ダクト部、13a、13Aa…下底面、13b、13Ab…天井面
20、20B…ケース、20a…上ケース、20b…下ケース
22…熱交換器上流空間
30…流れ方向変更部
31…段差部
40…熱交換器
41…流入面
50、50A…仕切板、51a、51Aa…下面、51b、51Ab…上面
60、60A、60B…第1ガイド(ガイド部)
70、70A…第2ガイド(ガイド部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9