(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】抗菌抗カビ剤、硬質表面洗浄用組成物及び硬質表面洗浄用エアゾール製品
(51)【国際特許分類】
A01N 35/02 20060101AFI20231010BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20231010BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20231010BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20231010BHJP
A01N 25/06 20060101ALI20231010BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20231010BHJP
A01N 31/08 20060101ALI20231010BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20231010BHJP
C11D 3/18 20060101ALI20231010BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20231010BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
A01N35/02
A01P3/00
A01N25/02
A01N25/30
A01N25/06
A01N33/12 101
A01N31/08
C11D3/48
C11D3/18
C11D3/20
C11D17/04
(21)【出願番号】P 2018225126
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-08-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】高岳 留美
(72)【発明者】
【氏名】守谷 和騎
(72)【発明者】
【氏名】田澤 寿明
【審査官】坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-181261(JP,A)
【文献】特開2017-119680(JP,A)
【文献】特開2018-184368(JP,A)
【文献】特開2008-231058(JP,A)
【文献】特開2006-193602(JP,A)
【文献】特開2009-132665(JP,A)
【文献】特開2014-028838(JP,A)
【文献】特表2009-517447(JP,A)
【文献】特表2015-500818(JP,A)
【文献】特表2005-521775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のモノテルペン化合物(A)と、第四級アンモニウム塩から選択される少なくとも1種の化合物(B)とを含有する抗菌抗カビ剤であって、前記化合物(B)として、下記一般式(Ia)で表される化合物、及び、下記一般式(Ib)で表される化合物から選択される少なくとも1種の第四級アンモニウム塩を含有する抗菌抗カビ剤。
【化1】
式(Ia)及び(Ib)中、
R
1、R
2及びR
3は、各々独立に、炭素数1~16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、R
4は、ポリオキシエチレン又は炭素数1~16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、Xa
-は、カルボン酸イオン又は重炭酸イオンを表し、Xb
2-は、炭酸イオンを表す。
【請求項2】
少なくとも1種のモノテルペン化合物(A)と、第四級アンモニウム塩から選択される少なくとも1種の化合物(B)とを含有する抗菌抗カビ剤であって、前記化合物(B)として、下記一般式(Ia)で表される化合物、及び、下記一般式(Ib)で表される化合物から選択される少なくとも1種の第四級アンモニウム塩を含有する抗菌抗カビ剤。
【化2】
式(Ia)及び(Ib)中、
R
1、R
2及びR
3は、各々独立に、炭素数1~16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、R
4aは、ポリオキシエチレンを表し、R
4bは、ポリオキシエチレン又は炭素数1~16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、Xa
-は、塩化物イオン、カルボン酸イオン又は重炭酸イオンを表し、Xb
2-は、炭酸イオンを表す。
【請求項3】
少なくとも1種のモノテルペン化合物(A)と、第四級アンモニウム塩から選択される少なくとも1種の化合物(B)とを含有する抗菌抗カビ剤であって、前記化合物(B)として、下記一般式(Ia)で表される化合物、及び、下記一般式(Ib)で表される化合物から選択される少なくとも1種の第四級アンモニウム塩とベンザルコニウムとを含有する抗菌抗カビ剤。
【化3】
式(Ia)及び(Ib)中、
R
1、R
2及びR
3は、各々独立に、炭素数1~16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、R
4は、ポリオキシエチレン又は炭素数1~16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、Xa
-
は、カルボン酸イオン又は重炭酸イオンを表し、Xb
2-は、炭酸イオンを表す。
【請求項4】
前記化合物(B)として、ベンザルコニウムを更に含有する、請求項
2に記載の抗菌抗カビ剤。
【請求項5】
前記第四級アンモニウム塩は非塩素系化合物である、請求項2又は3に記載の抗菌抗カビ剤。
【請求項6】
前記モノテルペン化合物(A)として、非環式モノテルペン化合物を少なくとも含有する、請求項1乃至5の何れか1項に記載の抗菌抗カビ剤。
【請求項7】
前記モノテルペン化合物(A)として、シトラールを少なくとも含有する、請求項1乃至6の何れか1項に記載の抗菌抗カビ剤。
【請求項8】
前記モノテルペン化合物(A)と前記化合物(B)の配合割合は、質量比で1:10~10:1である、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗菌抗カビ剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗菌抗カビ剤を含有する硬質表面洗浄用組成物。
【請求項10】
界面活性剤、水溶性溶剤及び水を更に含有する、請求項9に記載の硬質表面洗浄用組成物。
【請求項11】
前記化合物(B)として前記第四級アンモニウム塩と、前記界面活性剤として非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の少なくとも一方とを含有する、請求項10に記載の硬質表面洗浄用組成物。
【請求項12】
液化ガスを更に含有する、請求項9乃至11のいずれか1項に記載の硬質表面洗浄用組成物。
【請求項13】
前記抗菌抗カビ剤の配合割合が、前記硬質表面洗浄用組成物の全質量に対し0.01~1質量%である、請求項9乃至12のいずれか1項に記載の硬質表面洗浄用組成物。
【請求項14】
エアゾールバルブを備えた容器に、請求項9乃至13のいずれか1項に記載の硬質表面洗浄用組成物を充填してなる硬質表面洗浄用エアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌抗カビ剤、硬質表面洗浄用組成物及び硬質表面洗浄用エアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
住環境設備には、便器、浴槽、洗面台、壁面等に使用されるセラミックス、プラスチック、タイル、金属等の硬質表面が多く存在する。これら硬質表面には、細菌類や真菌類(カビ等)など様々な微生物が付着する。従来より、硬質表面に付着する微生物の繁殖を防止するために、種々多様な抗菌抗カビ剤が開発されてきた。
【0003】
抗菌抗カビ剤の有効成分として、天然系の香料が使用されることがある。例えば、特許文献1には、シトラール、リナロール、テトラヒドロリナロールなど、特定のテルペン及びその誘導体が、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)及びペニシリウム・ビリディカトム(Penicillium viridicatum)に対し、繁殖を阻止する性能を有することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
テルペン系化合物を含め、抗菌抗カビ剤としてこれまで用いられてきた各種薬剤を単独で使用すると、抗菌抗カビ剤として十分に効果を持たせるためには多量の薬剤を必要とし、コストはもとより、皮膚刺激や環境悪化など安全性の問題が生じる。更に、薬剤単剤では、特定の細菌やカビに対する繁殖防止性能はあっても、広範囲の微生物に対しては効果が弱いという問題があった。
【0006】
本発明は、低濃度使用においても、細菌や、カビ等の真菌類など広範囲な微生物に対して優れた抗菌抗カビ効果を有すると共に、低濃度使用の結果として生産コストが低く、且つ人体や環境に優しい抗菌抗カビ剤を提供することを目的とする。また、本発明は、上記抗菌抗カビ剤を含有する硬質表面洗浄用組成物、及び硬質表面洗浄用エアゾール製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために、各種薬剤の組み合わせについて鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一側面によると、モノテルペン化合物(A)と、第四級アンモニウム塩及びフェノール系殺菌剤から選択される少なくとも1種の化合物(B)とを含有する抗菌抗カビ剤が提供される。
【0009】
一形態において、上記抗菌抗カビ剤は、上記モノテルペン化合物(A)として、非環式モノテルペン化合物を少なくとも含有する。
【0010】
一形態において、上記抗菌抗カビ剤は、上記モノテルペン化合物(A)として、アルデヒド基を有する非環式モノテルペンを少なくとも含有する。
【0011】
他の形態において、上記抗菌抗カビ剤は、上記モノテルペン化合物(A)として、シトラールを少なくとも含有する。
【0012】
他の形態において、上記第四級アンモニウム塩は、下記一般式(Ia)で表される化合物、下記一般式(Ib)で表される化合物、及び塩化ベンザルコニウムから成る群から選択される化合物である。
【0013】
【化1】
式(Ia)及び(Ib)中、
R
1、R
2及びR
3は、各々独立に、炭素数1~16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、R
4は、ポリオキシエチレン又は炭素数1~16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、Xa
-は、塩化物イオン、カルボン酸イオン又は重炭酸イオンを表し、Xb
2-は、炭酸イオンを表す。
【0014】
他の形態において、上記第四級アンモニウム塩は非塩素系化合物である。
【0015】
他の形態において、上記フェノール系殺菌剤はイソプロピルメチルフェノールである。
【0016】
他の形態において、上記モノテルペン化合物(A)と上記化合物(B)の配合割合は、質量比で1:10~10:1であってよく、1:5~5:1であってよい。ここで、上記抗菌抗カビ剤が2種以上の化合物(B)を含有する場合、上記配合比における化合物(B)は合計を意味する。
【0017】
また、本発明の他の側面によると、上記抗菌抗カビ剤を含有する硬質表面洗浄用組成物が提供される。
【0018】
一形態において、上記硬質表面洗浄用組成物は、界面活性剤、水溶性溶剤及び水を更に含有する。
【0019】
他の形態において、上記硬質表面洗浄用組成物は、上記化合物(B)として上記第四級アンモニウム塩と、上記界面活性剤として非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の少なくとも一方とを含有する。
【0020】
他の形態において、上記硬質表面洗浄用組成物は、上記化合物(B)として上記フェノール系殺菌剤と、上記界面活性剤として陰イオン界面活性剤とを含有する。
【0021】
他の形態において、上記硬質表面洗浄用組成物は、液化ガスを更に含有する。
【0022】
他の形態において、上記硬質表面洗浄用組成物の全質量に対する上記抗菌抗カビ剤の含有率は、0.01~1質量%であってよく、0.1~0.8質量%であってよい。
【0023】
また、本発明の他の側面によると、エアゾールバルブを備えた容器に、上記硬質表面洗浄用組成物を充填してなる硬質表面洗浄用エアゾール製品が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、低濃度使用においても、細菌や、カビ等の真菌類など広範囲な微生物に対して優れた抗菌抗カビ効果を有すると共に、低濃度使用の結果として生産コストが低く、且つ人体や環境に優しい抗菌抗カビ剤、硬質表面洗浄用組成物及び硬質表面洗浄用エアゾール製品を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る硬質表面洗浄用エアゾール製品の外観を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。
≪抗菌抗カビ剤≫
本発明の実施形態に係る抗菌抗カビ剤は、抗菌抗カビ成分として、少なくとも1種のモノテルペン化合物(A)と、第四級アンモニウム塩及びフェノール系殺菌剤から選択される少なくとも1種の化合物(B)とを有効成分として含有する組成物である。
【0027】
ここで、有効成分として含有するとは、所望される抗菌抗カビ性能を発揮できる程度に、少なくとも1種のモノテルペン化合物(A)と少なくとも1種の化合物(B)からなる抗菌抗カビ成分を含有していることを意味し、その含有率は適宜設定することができる。したがって、実施形態に係る抗菌抗カビ剤は、モノテルペン化合物(A)と化合物(B)からなる抗菌抗カビ成分のみからなる組成物であってもよいし、他の抗菌抗カビ成分や、抗菌抗カビ性能を有しない他の任意成分を含有する組成物であってもよい。
【0028】
本発明の実施形態に係る抗菌抗カビ剤は、一形態において、硬質表面に対して好適に使用される。硬質表面は、特に限定されるものではないが、一例を挙げると、トイレ、浴室、台所、洗面台などの、壁や床、器具、機器等に設けられる表面であり、セラミックス、プラスチック、金属、ガラス等が挙げられる。
【0029】
特に、本発明の実施形態に係る抗菌抗カビ剤は、硬質表面が、微生物が付着し増殖し得る面である場合に、充分な抗菌抗カビ効果を発揮し得る。一例を挙げると、便器、浴槽、洗面台等である。
【0030】
本発明の実施形態に係る抗菌抗カビ剤が優れた抗菌抗カビ効果を示す微生物は、真菌類、細菌類等を含む広範囲の微生物に及ぶ。細菌としては、具体的に、大腸菌(Escherichia coli)等のエシェリヒア(Escherichia)属、Methylobacterium mesophilicum等のメチロバクテリウム(Methylobacterium)属、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)等のシュードモナス(Pseudomonas)属、Serratia marcescens等のセラチア(Serratia)属などのグラム陰性菌、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)等のスタフィロコッカス(Staphylococcus)属、Bacillus subtilis、Bacillus cereus等のバチルス(Bacillus)属細菌、乳酸菌などのグラム陽性菌等が挙げられる。
【0031】
真菌として、具体的には、クロカワカビ(Cladosporium cladosporioides)等のクラドスポリウム(Cladosporium)属、アオカビ(Penicillium citrinum)等のペニシリウム(Penicillium)属、コウジカビ(Aspergillus brasiliensis)等のアスペルギルス(Aspergillus)属、ススカビ(Alternaria alternata)等のアルテルナリア(Alternaria)属、アカカビ(Fusarium solani)等のフザリウム(Fusarium)属、Eurotium herbariorum等のユーロチウム(Eurotium)属、ロドトルラ属(Rhodotorula mucilaginosa)等の赤色酵母類、アウレオバシジウム(Aureobasidium)属、エキソフィアラ(Exophiala)属等の黒色酵母類、フォーマ(Phoma)属、カンジダ(Candida)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属等が例示される。
【0032】
本実施形態に係る抗菌抗カビ剤は、便器等において発生しやすい微生物全般に対し優れた抗菌抗カビ効果を示す。すなわち、大腸菌(Escherichia coli)や黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のみならず、便器における黒系及び赤系の汚れの原因となる微生物、例えば、黒系のクラドスポリウム(Cladosporium)属、エキソフィアラ(Exophiala)属等、赤系のメチロバクテリウム(Methylobacterium)属、ロドトルラ属(Rhodotorula mucilaginosa)等に対しても好適に作用する。
【0033】
以下、抗菌抗カビ成分について詳細に説明する。
<モノテルペン化合物(A)>
モノテルペン化合物(A)は、2つのイソプレン単位からなる、C10H16の分子式を持つ化合物であり、その誘導体であってもよい。また、立体異性体が存在する場合、その立体異性体のいずれか1つの形であってもよいし、それらの混合物の形であってもよい。
【0034】
モノテルペン化合物(A)は、非環式モノテルペンであってもよいし、単環式モノテルペンであってもよいし、複環式モノテルペンであってもよい。
【0035】
非環式モノテルペンとしては、シトラール、シトロネラール、オシメン、ミルセン、ゲラニオール、β-シトロネロール、リナロール、ネロール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、ラバンジュロール、ギ酸リナリル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸ネリル、酢酸ラバンジュリル、酢酸オシメニル、酢酸ミルセニル、プロピオン酸リナリル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸シトロネリル、酪酸リナリル、酪酸ゲラニル、酪酸シトロネリル、イソ酪酸リナリル、イソ酪酸ゲラニル、イソ酪酸シトロネリル、安息香酸リナリル、安息香酸ゲラニル等が例示される。
【0036】
単環式モノテルペンとしては、リモネン、フェランドレン、テルピノレン、テルピネン、メンタン等が例示される。
【0037】
複環式モノテルペンとしては、カレン、ツジェン、ピネン等が例示される。
【0038】
一形態において、抗菌抗カビ剤は、モノテルペン化合物(A)として非環式モノテルペンを含有することが好ましく、少なくともシトラール、シトロネラール等のアルデヒド基を有する非環式モノテルペンを含有することがより好ましく、少なくともシトラールを含有することが更に好ましい。シトラールはtrans/cis型の異性体が存在し、トランス型をα-シトラール(ゲラニアール)、シス型をβ-シトラール(ネラール)と呼ぶが、どちらも効果が認められ、α-、β-の混合物であってもよい。
【0039】
<化合物(B)>
化合物(B)としての第四級アンモニウム塩は、特に限定されない。一例を挙げると、第四級アンモニウム塩は、下記一般式(Ia)で表される化合物、下記一般式(Ib)で表される化合物、及び塩化ベンザルコニウムから成る群から選択される化合物である。
【0040】
【0041】
式(Ia)及び(Ib)中、
R1、R2及びR3は、各々独立に、炭素数1~16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、R4は、ポリオキシエチレン又は炭素数1~16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、Xa-は、塩化物イオン、カルボン酸イオン又は重炭酸イオンを表し、Xb2-は、炭酸イオンを表す。
【0042】
一般式(Ia)又は(Ib)で表される四級アンモニウム塩は、一形態において、R1及びR2は炭素数8~10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、R3及びR4はメチル基であるカチオン部を有する化合物であることが好ましい。また、他の形態において、一般式(Ia)又は(Ib)で表される四級アンモニウム塩は、R1及びR2は炭素数8~10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、R3はメチル基であり、R4はポリオキシエチレンであるカチオン部を有する化合物であることが好ましい。
【0043】
このような一般式(Ia)又は(Ib)で表される第四級アンモニウム塩は、例えば、ロンザジャパン株式会社から、商品名Bardap(登録商標)26、Carboquat(登録商標)MW50、Bardac(登録商標)LF-80、Bardac 2250、Bardac 2280、Bardac 205Mとして入手可能である。
【0044】
Xa-により表されるカルボン酸イオンとしては、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、等が挙げられる。
【0045】
一形態において、第四級アンモニウム塩は非塩素系化合物であってよい。そのような第四級アンモニウム塩としては、例えば、一般式(Ia)中のXa-がカルボン酸イオン又は重炭酸イオンである化合物、又は一般式(Ib)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
化合物(B)としてのフェノール系殺菌剤は、特に限定されない。一例を挙げると、フェノール系殺菌剤は、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、チモール、パラクロロメタクレゾール、レゾルシン、ヒノキチオール、ヘキサクロロフェン、トリクロサン等であってよく、これらの中から1種又は2種以上を用いることができる。一形態において、フェノール系殺菌剤は、IPMP、チモール又はトリクロサンであることが好ましく、IPMPであることがより好ましい。IPMPとしては、3-メチル-4-イソプロピルフェノール(ビオゾール)、2-イソプロピル-5-メチルフェノール(チモール)、2-メチル-5-イソプロピルフェノール(カルバクロール)のいずれも好適に用いることができ、中でも3-メチル-4-イソプロピルフェノール(ビオゾール)が好ましい。
【0047】
モノテルペン化合物(A)と化合物(B)との配合割合は、対象となる硬質表面の種類や工業製品の種類、抗菌抗カビ剤をする条件等などによって、適切に選択される。一形態において、モノテルペン化合物(A)と化合物(B)との配合割合は、質量比で1:10~10:1であってよく、1:5~5:1であってよい。
【0048】
本発明の実施形態に係る抗菌抗カビ剤は、その使用目的、用途に応じて様々な形態において用いることができる。例えば、その優れた効果を阻害しない範囲において、公知の添加剤、例えば、界面活性剤、増粘剤、溶剤、香料、他の殺菌剤などと混合され使用され得る。一形態において、本発明の実施形態に係る抗菌抗カビ剤は、以下に説明する硬質表面洗浄用組成物として好適に使用される。
【0049】
≪硬質表面洗浄用組成物及び硬質表面洗浄用エアゾール製品≫
本発明の実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物は、上述した抗菌抗カビ剤を含有する。対象となる硬質表面に使用することにより、優れた微生物防除効果を発揮する。この使用対象となる硬質表面は、上述した通り、トイレ、浴室、台所、洗面台などの、壁や床、器具、機器等に設けられる、セラミクス、プラスチック、金属、ガラス等の表面である。一例を挙げると、本発明の実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物は、微生物が付着し増殖しやすい便器、浴槽、洗面台等に好適に用いられる。
【0050】
本発明の実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物において、上述した抗菌抗カビ剤の配合割合は、対象となる硬質表面の種類や工業製品の種類などの条件によって、適切に選択され得る。一形態において、硬質表面洗浄用組成物中の抗菌抗カビ剤の配合割合は、硬質表面洗浄用組成物の全質量を基準として、0.01~1質量%であってよく、0.1~0.8質量%であってよい。抗菌抗カビ剤の使用濃度がこのように低くても、本発明の実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物は、細菌や真菌類など広範囲な微生物に対して優れた抗菌抗カビ効果を有する。また、低濃度使用の結果、人体や環境にも優しい。
【0051】
本発明の実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物は、上述した抗菌抗カビ剤の効果を阻害しない範囲において、他の成分、例えば、界面活性剤、水溶性溶剤、増粘剤、水などの任意の成分を含有することができる。
【0052】
実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物が含有し得る界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、天然系界面活性剤、アミノ酸系活性剤などを適宜選択して用いることができる。一形態において、水系組成物に用いることができる界面活性剤であればよい。また、後述するエアゾール製品として提供される場合には、泡の形成性の観点から適宜選択することができる。
【0053】
界面活性剤の具体例として、ポリオキシエチレン(以下、「POE」と表記する。)セチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEイソセチルエーテル、POEイソステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;モノヤシ油脂肪酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;POE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;モノステアリン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;POEラノリンアルコールなどのポリオキシエチレンラノリンアルコール;POE硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸ペンタグリセリル、モノミリスチン酸ペンタグリセリル、モノオレイン酸ペンタグリセリル、モノステアリン酸ペンタグリセリル、モノラウリン酸デカグルセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル;モノオレイン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;モノパルミチン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノイソステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸POEソルビット、テトラステアリン酸POEソルビット、テトラオレイン酸POEソルビットなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;などの非イオン系界面活性剤が挙げられる。
【0054】
また、脂肪酸石鹸;アルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などのアニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0055】
また、アルキルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイド類、アルキルジメシルスルホベタイン等のスルホベタイン類、カルボベタイン類などの両性界面活性剤が挙げられる。
【0056】
また、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体などのシリコーン系界面活性剤や、サーファクチンナトリウム、シクロデキストリン、水添酵素大豆レシチンなどの天然系界面活性剤や、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸カリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ラウロイル-L-グルタミン酸カリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸カリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウムおよびN-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウムなどのN-アシルグルタミン酸塩、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸、N-ラウロイル-L-グルタミン酸、N-ステアロイル-L-グルタミン酸などのN-アシルグルタミン酸、N-ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウムなどのN-アシルグリシン塩、N-ヤシ油脂肪酸アシル-DL-アラニントリエタノールアミンなどのN-アシルアラニン塩、などのアミノ酸系界面活性剤などがあげられる。
これらの界面活性剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
本発明の一形態において、実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物が化合物(B)として第四級アンモニウム塩を含有する場合、界面活性剤として非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。第四級アンモニウム塩と非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤とが併用されることにより、混合ミセルが形成され、微生物に対する洗浄力を向上させることが可能となる。
【0058】
また、本発明の他の形態において、実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物が化合物(B)としてフェノール系殺菌剤を含有する場合、界面活性剤としてアニオン系界面活性剤を使用することが好ましい。フェノール系殺菌剤とアニオン系界面活性剤とが併用されることにより、微生物に対する洗浄力を向上させることが可能となる。
【0059】
実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の配合割合は特に限定されないが、例えば、組成物の全質量を基準として、0.1~10質量%であってよく、0.5~5質量%であってよい。界面活性剤の配合割合を抑えることは、泡切れやすすぎ性の観点から好ましい。
【0060】
実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物が含有し得る水溶性溶剤は、特に限定されるものではない。後述するエアゾール製品として提供される場合には、泡の形成性(発泡性)を調整し得るものであることが好ましい。水溶性溶剤として、具体的には、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数2または3の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、へキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどの2~3価のポリオールなどを挙げることができる。これらは1種または2種以上を混合して使用することができるが、泡の形成性の調整しやすさという観点からエタノールを用いることが好ましい。
【0061】
実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物が水溶性溶剤を含有する場合、水溶性溶剤の配合割合は特に限定されないが、例えば、組成物の全質量を基準として、1~20質量%であってよく、5~15質量%であってよい。
【0062】
実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物が含有し得る増粘剤としては、特に限定されるものではない。後述するエアゾール製品として提供される場合には、泡の持続性(保持性)を調整し得るものであることが好ましい。増粘剤として、具体的には、キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガムなどのガム質;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ニトロセルロース、結晶セルロースなどのセルロース系高分子;デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、デンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、アルギン酸ナトリウム、変性ポテトスターチ、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどが挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して使用することができるが、泡の保持性に優れる観点からは、ヒドロキシエチルセルロースを用いることが好ましい。
【0063】
実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物が増粘剤を含有する場合、増粘剤の配合割合は特に限定されないが、例えば、組成物の全質量を基準として、0.01~5質量%であってよく、0.1~1質量%であってよい。
【0064】
実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物は、一形態において主剤として水を含有する。実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物が水を含有する場合、水の配合割合は特に限定されないが、例えば、組成物の全質量を基準として、70~99質量%であってよく、80~95質量%であってよい。
【0065】
実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物は、エアゾールバルブを備えた容器に充填され、エアゾール製品として提供される場合、液化ガスを更に含有してよい。ここでエアゾール製品とは、液化ガスの気化によって、内容物がバルブを通って容器の外に自力で霧状や泡(フォーム)状に放出される製品をいい、正立用エアゾールバルブ、倒立用エアゾールバルブ等が挙げられる。以下において、液化ガスを含有する硬質表面洗浄用組成物を「エアゾール組成物」ともいい、「液化ガス」に対し、エアゾール組成物が含有する液化ガス以外の成分を「原液」又は「水性原液」ともいう。
【0066】
図1は、本発明の実施形態に係る硬質表面洗浄用エアゾール製品(倒立用エアゾール製品)1の外観を示す概略図であり、耐圧容器2、倒立用エアゾールバルブ3、及び噴射部材4を備える。耐圧容器2は、ブリキ、ステンレス等の金属で形成される。エアゾール製品1は、水性原液を耐圧容器2に充填し、倒立用エアゾールバルブ3を固着した後、液化ガスを充填することにより製造することができる。硬質表面洗浄用エアゾール製品は、原液を泡形成するためのスパウトを備える構造とすることが好ましい。倒立用エアゾールバルブ3を開き、上記エアゾール組成物を噴射すると、噴射された内容物は液化ガスの急激な膨張によって細かい霧や泡状となる。
【0067】
実施形態に係るエアゾール組成物に用いられる液化ガスは、エアゾール容器内では液体であり、外部に噴射すると気化して水性原液を発泡させ、泡を形成し得るものであれば特に限定されない。このような液化ガスとしては、たとえば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234ze)、トランス-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234yf)などのハイドロフルオロオレフィン、ジメチルエーテル、およびこれらの混合物などが挙げられる。また液化ガスにはノルマルペンタン、イソペンタンを配合してもよい。
【0068】
液化ガスの蒸気圧(20℃)は0.20~0.55MPaであることが好ましく、0.30~0.45MPaであることがより好ましい。なお、この蒸気圧は静止法で測定された値である。蒸気圧が0.2MPaよりも低い場合は泡の形成性が悪くなり、0.55MPaよりも高い場合は対象物に付着しにくくなることがあり、飛散して使用者が吸引しやすくなることがある。なお、水性原液に用いる成分および配合量が同一の場合、液化ガスの蒸気圧(20℃)が、0.30~0.35MPaでは低温下における泡形成性が良好になるという効果が得られ、0.36~0.45MPaでは低温下における泡の持続性が優れるという効果が得られるため、目的とする製品の性質にあわせて適宜液化ガスの蒸気圧を選択すればよい。
【0069】
なお、本明細書において泡形成性が良好であるとは、泡の体積が大きいことを意味し、泡の持続性が優れるとは、形成された泡が維持され、すぐ消えずに残ることを意味する。
【0070】
本発明の実施形態におけるエアゾール組成物における液化ガスの配合割合は、特に限定されないが、例えば、3~40質量%であってよく、5~35質量%であってよい。液化ガスの配合割合が3%より少ない場合は発泡しにくくなることがあり、40%よりも多い場合は飛散が多くなり対象物に付着しにくいとともに使用者が吸引しやすくなることがある。
【0071】
以上説明した本発明の実施形態に係るエアゾール製品の使用方法は特に限定されないが、例えば、上記硬質表面に適当量を噴射した後、泡が消えるまで数分間放置し、その後、水等で流せばよい。
【0072】
本発明の実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物は、上記成分の他に、その使用目的、用途等に応じて、公知の添加剤、例えば、他の界面活性剤、殺菌剤、除菌剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、紫外線分散剤、色素、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、薬剤、香料等のその他の成分を組み合わせることができる。その他の成分の配合割合は特に限定されないが、例えば、実施形態に係る硬質表面洗浄用組成物の全質量を基準として、0.01~1.0質量%である。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例及び比較例によってさらに詳細に説明するが、本発明は当該実施例及び比較例によって何ら制限されるものではない。
【0074】
<硬質表面洗浄用組成物の調製>
後掲の表1に示す各成分を、同表に示す配合割合(質量%)にて混合して各種組成物を調製した。表1中、抗菌香料1、2、殺菌剤1~6は以下の通りである。
【0075】
・抗菌香料1:ハーブ系調合香料であり、シトラールを10質量%含有する。
・抗菌香料2:シトラス系調合香料であり、シトラールを40質量%含有する。
【0076】
・殺菌剤1:N,N-ジデシル-N-メチルポリ(オキシエチル)アンモニウムプロピオネート(Bardap(登録商標)26、ロンザジャパン株式会社)
【化3】
【0077】
・殺菌剤2:N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム炭酸塩/重炭酸塩(Carboquat(登録商標)MW50、ロンザジャパン株式会社)
【化4】
【0078】
・殺菌剤3:N,N-ジオクチルN,N-ジメチルアンモニウムクロライド(Bardac(登録商標)LF-80、ロンザジャパン株式会社)
【化5】
【0079】
・殺菌剤4:N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウムクロライド混合物(Bardac(登録商標)205M、ロンザジャパン株式会社)/塩化ベンザルコニウム(カチオーゲン(登録商標)BC-50、第一工業製薬株式会社)
【化6】
【0080】
・殺菌剤5:塩化ベンザルコニウム(カチオーゲン(登録商標)BC-50、第一工業製薬株式会社)
【化7】
【0081】
・殺菌剤6:イソプロピルメチルフェノール(3-メチル-4-イソプロピルフェノール)
【化8】
【0082】
<評価方法>
[試験1]
試験菌として、大腸菌(NBRC3972)及び黄色ブドウ球菌(NBRC12732)を用い、以下の方法で試験を行った。
【0083】
(a)試験菌液の作製
上記各試験菌を培養後、1/2ニュートリエント液体培地に懸濁・分散させて、菌濃度が1~9×108cfu/mLになるように1/2ニュートリエント液体培地を用いて調整し、3質量%ウシ血清アルブミン水溶液と等量混合して、試験菌液を得た。
【0084】
(b)試験菌液の接種
ガラスシャーレに、直径20mm、厚さ1mm、表面グレード2Bのステンレス鋼製円板を滅菌したものを置き、円板表面に上記試験菌液0.01mLをマイクロピペットで接種し塗り広げた。25℃の条件でガラスシャーレのふたをせずに放置し、試験菌液の乾燥を確認した後、速やかに、試料(表1に従い調製した各種組成物)0.1mLを、マイクロピペットで直径20mmのステンレス鋼製円板表面3.14cm2に対して接種し塗り広げて付着させた。付着5分後に、付着させた組成物が流れ落ちないように注意しながら一定量のLP水希釈液に投入し、組成物の殺菌性能を不活性化した。
【0085】
(c)試験菌の培養
LP水希釈液中の菌液を混釈培養法にて、37℃で24時間培養した。培養後に形成されたコロニーをカウントし、生菌数を換算した。得られる値をY1とする。なお、上記試料に替えて0.05質量%ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート水溶液を用いて同様の試験を行ったものを対照とし、同様に培養後に形成されたコロニーをカウントし、生菌数を換算した。得られる値をX1とする。除菌活性値は以下の計算式にて数値化し、以下の基準に従って殺菌性能の指標とした。評価結果を表1に示す。
【0086】
<除菌活性値計算式>
除菌活性値=logX1-logY1
【0087】
<評価基準>
A:除菌活性値が5以上
B:除菌活性値が2以上5未満
C:除菌活性値が2未満。
【0088】
[試験2]
試験カビとして、環境分離カビであるCladosporium sp.、Exophiala sp.、試験菌として環境分離菌であるMethylobacterium sp.を用い、以下の方法で試験を行った。
【0089】
(a)試験カビ液及び試験菌液の作製
上記試験カビをポテトデキストロース寒天培地、上記試験菌をR2A培地でそれぞれ培養し、試験カビは胞子数が1~30×105cfu/mL、試験菌は菌数が1~9×108cfu/mLになるように、0.05質量%ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート水溶液を用いて調整し、試験カビ液及び試験菌液とした。
【0090】
(b)試料作製
滅菌水を用いて、表1に従い調製した各種組成物の濃度が50質量%になるように調整したものを試料とした。
【0091】
(c)試験カビ液及び試験菌液の接種
試験管に、作製した各試料9mLを入れ、これに試験カビ液、試験菌液をそれぞれ1mLずつ接種し、ただちにボルテックスミキサーを用いて攪拌した。攪拌終了から10分後に、この液1mlをLP液体培地9mlに加えて不活化した。
【0092】
(d)試験カビ及び試験菌の培養
LP液体培地溶液を混釈培養法にて、カビについては25℃にて4日間培養し、菌については37℃で24時間培養した。培養後に形成されたコロニーをカウントし、胞子数及び生菌数を換算した。得られる値をY2とする。
【0093】
なお、上記試料に替えて生理食塩水を用いて同様の試験を行ったものを対照とし、同様に培養後に形成されたコロニーをカウントし、胞子数及び生菌数を換算した。得られる値をX2とする。除菌活性値は以下の計算式にて数値化し、以下の基準に従って殺カビ・殺菌性能の指標とした。評価結果を表1に示す。
【0094】
<除菌活性値計算式>
除菌活性値=logX2-logY2
【0095】
<評価基準>
[カビ]
A:除菌活性値が4以上
B:除菌活性値が2以上4未満
C:除菌活性値が2未満
[菌]
A:除菌活性値が5以上
B:除菌活性値が2以上5未満
C:除菌活性値が2未満。
【0096】
【0097】
【0098】
※抗菌香料1:ハーブ系調合香料、シトラール10質量%含む。
※抗菌香料2:シトラス系調合香料、シトラール40質量%含む。
※殺菌剤1:N,N-ジデシル-N-メチルポリ(オキシエチレン)アンモニウムプロピオネート(Bardap26;ロンザジャパン株式会社)
※殺菌剤2:N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウム炭酸塩/重炭酸塩(Carboquat MW50;ロンザ株式会社)
※殺菌剤3:ジオクチルジメチルアミニウムクロライド(Bardac LF80;ロンザジャパン株式会社)
※殺菌剤4:N,N-ジデシル-N,N-ジメチルアンモニウムクロライド(Bardac 205M、ロンザジャパン株式会社)/塩化ベンザルコニウム(カチオーゲンBC-50;第一工業製薬株式会社)混合物
※殺菌剤5:塩化ベンザルコニウム(カチオーゲンBC-50;第一工業製薬株式会社)
※殺菌剤6:IPMP(3-メチル-4-イソプロピルフェノール(ビオゾール(登録商標): 大阪化成株式会社))
※ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(エマルゲン(登録商標)LS110;花王株式会社)
※POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム(アルスコープ(登録商標)NS-230;東邦化学工業株式会社)。
【0099】
表1の評価結果から、本発明の実施形態に係る抗菌抗カビ剤を含有する組成物は、抗菌抗カビ剤が低濃度であっても、広範囲な微生物に対して優れた抗菌抗カビ効果を有することがわかる。
【0100】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0101】
1 エアゾール製品
2 耐圧容器
3 倒立用エアゾールバルブ
4 噴射部材