(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】光学フィルムの通紙方法
(51)【国際特許分類】
B65H 19/10 20060101AFI20231010BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231010BHJP
B65H 20/02 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B65H19/10 A
G02B5/30
B65H20/02 Z
(21)【出願番号】P 2018232354
(22)【出願日】2018-12-12
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 洋明
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳史
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-248590(JP,A)
【文献】特開2013-206963(JP,A)
【文献】特開平08-230144(JP,A)
【文献】特開2018-052556(JP,A)
【文献】特開2005-089180(JP,A)
【文献】特開2015-092214(JP,A)
【文献】特開2000-143045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 19/10
G02B 5/30
B65H 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニップローラを構成する駆動ローラ及びこれに対向する従動ローラを有する搬送設備のパスラインに光学フィルムを通紙する方法であって、
前記ニップローラを開いた状態で、前記駆動ローラだけに前記光学フィルムを接触させて前記光学フィルムの先端部に張力をかける際に、前記駆動ローラを駆動して前記駆動ローラが回転している状態にする、光学フィルムの通紙方法。
【請求項2】
前記駆動ローラに前記光学フィルムを接触させる前から前記駆動ローラを駆動する、請求項1に記載の光学フィルムの通紙方法。
【請求項3】
前記光学フィルムの通紙時の前記駆動ローラの回転速度を、前記光学フィルムの通紙後の通常搬送時の前記駆動ローラの回転速度以下に設定する、請求項1
又は2に記載の光学フィルムの通紙方法。
【請求項4】
前記光学フィルムが、偏光フィルムである、請求項1から
3の何れか一項に記載の光学フィルムの通紙方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルム等の光学フィルムを通紙する方法に関する。特に、本発明は、光学フィルムの外観不良が生じ難い光学フィルムの通紙方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学フィルムは、液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置等に用いられている。光学フィルムとしては、例えば、偏光フィルム(偏光子)、偏光フィルムを含む偏光板、位相差フィルム、アンチグレアフィルム等が挙げられる。
光学フィルムは、通常、長尺帯状の原反フィルムを用いて製造される。原反フィルムを搬送設備で長手方向に搬送しながら、順次各種の処理を施すことで、製品としての長尺帯状の光学フィルムが製造される。長尺帯状の光学フィルムは、用途に応じたサイズに切断され、画像表示装置等に用いられる。
以下、本明細書では、製品としての光学フィルムのみならず、原反フィルム及び中間製品のフィルムも含めて光学フィルムと称する。
【0003】
光学フィルムの搬送設備としては、通常、駆動ローラ及び従動ローラ(フリーローラともいう)を有する設備が用いられる(例えば、特許文献1、2参照)。
駆動ローラは、モータによって駆動されて回転し、摩擦力によって光学フィルムを長手方向に搬送するためのローラである。従動ローラは、自由に回転し、長手方向に搬送される光学フィルムを案内するためのローラである。
【0004】
ここで、光学フィルム製品の製造を開始する際には、上記の駆動ローラ及び従動ローラを有する搬送設備のパスライン(駆動ローラ及び従動ローラの位置によって決まる光学フィルムの搬送経路)に光学フィルムを通紙する作業を行う必要がある。通紙とは、人が光学フィルムの先端部を手で引っ張って、駆動ローラ及び従動ローラに光学フィルムを掛けていき、光学フィルムをパスラインに沿わせる作業である。
【0005】
例えば、光学フィルムが偏光フィルムである場合、一の原反フィルムと次の原反フィルムとをスプライスして(一の原反フィルムの後端部と次の原反フィルムの先端部とを繋ぐこと)搬送することができない。偏光フィルムの原反フィルムは、処理浴中で延伸処理を施されるので、一般的なテープやレーザ溶接等でスプライスしても、スプライス部分が外れてしまうからである。したがい、繰出ローラに巻回された原反フィルムが無くなる度に、次の繰出ローラに巻回された原反フィルムを手で通紙している。
【0006】
従来、上記の通紙作業中に、光学フィルムの擦れや切れが生じる場合があった。特に、偏光フィルムのような薄い光学フィルムほど、通紙作業中に擦れや切れが生じるおそれがあった。光学フィルムの先端部に擦れや切れが生じて傷になったとしても、通紙作業を行ったこの先端部を製品として使用しなければ、特に問題は生じない。
しかしながら、光学フィルムの擦れや切れに起因して、駆動ローラや従動ローラの表面(通常はゴム材料)に凹凸が生じたり、光学フィルムの形成材料や駆動ローラ等の表面のゴム材料からなる異物が発生することによって問題が生じる場合がある。具体的には、駆動ローラ等の表面にいったん凹凸が生じると交換するまで直らないため、通紙作業が完了した後の通常搬送時の光学フィルムに駆動ローラ等の表面の凹凸が転写されることで、光学フィルムに外観不良が生じる場合がある。また、発生した異物は、光学フィルムの搬送設備が設けられた雰囲気中や処理槽中に長時間漂うため、この異物が光学フィルムに付着することで、光学フィルムに外観不良が生じる場合がある。光学フィルムは、例えば、数10μm程度の寸法の凹凸や異物であっても、視認できた場合には外観不良となり、製品の歩留まり低下に通じるおそれがある。このため、通紙作業中に生じる光学フィルムの擦れや切れに起因した光学フィルムの外観不良をできる限り生じさせないことが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-248590号公報
【文献】特開2004-341515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、光学フィルムの外観不良が生じ難い光学フィルムの通紙方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、通紙作業中に擦れや切れが生じる原因の一つが搬送設備の駆動ローラにあることを知見した。具体的には、従来、通紙作業中には常に駆動ローラの駆動を停止していた。駆動ローラの駆動を停止すると、通紙作業中に駆動ローラは回転しない。このため、駆動ローラと駆動ローラに掛けられた光学フィルムとの間に滑りが生じて、光学フィルムに擦れや切れが生じることが分かった。
【0010】
本発明は、上記の本発明者らの知見に基づき完成したものである。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、ニップローラを構成する駆動ローラ及びこれに対向する従動ローラを有する搬送設備のパスラインに光学フィルムを通紙する方法であって、前記ニップローラを開いた状態で、前記駆動ローラだけに前記光学フィルムを接触させて前記光学フィルムの先端部に張力をかける際に、前記駆動ローラを駆動して前記駆動ローラが回転している状態にする、光学フィルムの通紙方法を提供する。ニップローラは、駆動ローラと従動ローラが対向配置され、各ローラの間で光学フィルムを搬送するローラである。
【0011】
本発明によれば、駆動ローラに光学フィルムを接触させて光学フィルムの先端部に張力をかける際に、駆動ローラを駆動して回転している状態にするため、駆動ローラに対する光学フィルムの滑りが抑制され、光学フィルムに擦れや切れが生じ難くなる。この結果、光学フィルムに外観不良が生じ難くなる。
【0012】
本発明において、前記駆動ローラに前記光学フィルムを接触させる前から前記駆動ローラを駆動することが好ましい。
【0013】
上記の好ましい方法によれば、光学フィルムの擦れや切れの発生を確実に抑制可能である。
【0014】
また、前記課題を解決するため、本発明は、駆動ローラとしてのサクションローラを有する搬送設備のパスラインに光学フィルムを通紙する方法であって、前記駆動ローラに前記光学フィルムを接触させて前記光学フィルムの先端部に張力をかける際に、前記駆動ローラを駆動して前記駆動ローラが回転している状態にする、光学フィルムの通紙方法としても提供される。
【0015】
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、ニップローラを構成する駆動ローラ及びこれに対向する従動ローラを有する搬送設備のパスラインに光学フィルムを通紙する方法であって、前記従動ローラに前記光学フィルムを接触させるだけで前記光学フィルムの通紙が可能である場合には、前記ニップローラを開いた状態で、前記従動ローラだけに前記光学フィルムを接触させて、前記光学フィルムの通紙の際に前記駆動ローラの駆動を停止する、光学フィルムの通紙方法としても提供される。
本発明によれば、光学フィルムの通紙作業中に駆動ローラの駆動を停止するため、通紙作業の安全性を高めることが可能である。また、駆動ローラの駆動を停止しても、通紙作業中には、駆動ローラに光学フィルムを接触させる必要がないため、停止している駆動ローラに対する光学フィルムの滑りに起因した光学フィルムの擦れや切れの発生を抑制可能である。
【0016】
本発明において、前記光学フィルムの通紙時の前記駆動ローラの回転速度を、前記光学フィルムの通紙後の通常搬送時の前記駆動ローラの回転速度以下に設定することが好ましい。
【0017】
上記の好ましい方法によれば、通紙作業の安全性を高めることが可能である。また、通紙作業を容易に行うことも可能である。
【0019】
本発明は、前記光学フィルムが、偏光フィルムである場合(偏光フィルムの原反フィルム及び中間製品のフィルムも含む)に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光学フィルムを通紙する際に光学フィルムに擦れや切れが生じ難く、光学フィルムに外観不良が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る通紙方法を適用する偏光フィルムを含む偏光板の製造設備の概略構成例を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る通紙方法を適用する搬送設備の一例を部分的に示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る通紙方法を用いて、
図2に示す搬送設備のパスラインに偏光フィルムを通紙する手順を示す説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る通紙方法を適用する他の搬送設備の一例を部分的に示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る通紙方法を適用する更に他の搬送設備の一例を部分的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る光学フィルムの通紙方法について、光学フィルムが偏光フィルムである場合を例に挙げて説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る通紙方法を適用する偏光フィルムを含む偏光板の製造設備の概略構成例を示す模式図である。
図1に示す矢符は、各フィルムの搬送方向を意味する。
図1に示す製造設備を用いて偏光版Fを製造するにあたっては、まず、繰出ローラ1に巻回されたポリビニルアルコール系フィルム等の原反フィルムF0を繰り出し、処理槽2内の処理浴に浸漬して、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質で染色すると共に一軸延伸する。次いで、オーブン3で乾燥させることで、偏光フィルムF1が得られる。なお、偏光フィルムF1の厚みは、特に限定されるものではないが、一般的に、1~80μm程度であり、1~20μmが好ましい。
【0024】
次いで、繰出ローラ5から繰り出された保護フィルムF2の片面にグラビアコータ6で紫外線硬化型接着剤(以下、UV接着剤という)を塗工する。そして、貼り合わせローラ7によって、UV接着剤が塗工された保護フィルムF2を偏光フィルムF1の両面に貼り合わせる。次いで、紫外線照射装置8でUV接着剤を硬化させた後、オーブン9で乾燥させる。最後に、両面に保護フィルムF2が貼り合わせられた偏光フィルムF1の片面に、繰出ローラ10から繰り出された表面保護フィルムF3を貼り合わせローラ11によって貼り合わせることで、偏光板Fが得られる。得られた偏光板Fは、巻取ローラ12で巻き取られる。
【0025】
本実施形態に係る通紙方法は、以上に説明した偏光板Fの製造設備のうち、偏光フィルムF1の製造設備10が具備する搬送設備(例えば、処理槽2に設けられた搬送設備等)に用いられる。
【0026】
図2は、本実施形態に係る通紙方法を適用する搬送設備の一例を部分的に示す模式図である。
図2は、通紙後の偏光フィルムF1(原反フィルムF0及び中間製品のフィルムも含む)を通常搬送している状態を示している。
図2に示すように、搬送設備100は、駆動ローラR1及び従動ローラR2を有する。
図2に示す駆動ローラR1は、従動ローラR2に対して水平方向(
図2の左右方向)に対向配置されており、両者でニップローラRを構成している。
【0027】
図3は、本実施形態に係る通紙方法を用いて、
図2に示す搬送設備100のパスラインに偏光フィルムF1を通紙する手順を示す説明図である。
まず、
図3(a)に示すように、ニップローラRを開く。具体的には、ニップローラRの駆動ローラR1の駆動を停止した状態で、ニップローラRの従動ローラR2を矢符Aの方向に移動させる。
【0028】
次に、
図3(b)に示すように、駆動ローラR1を駆動して矢符Bの方向に所定の回転速度で回転させる。このときの駆動ローラR1の回転速度は、
図2に示す通紙後の偏光フィルムF1の通常搬送時(偏光板Fの製造時)の駆動ローラR1の回転速度以下(同じ、又は、より小さい)に設定することが、通紙作業の安全性や容易性を高める上で好ましい。
通紙作業時の駆動ローラR1の回転速度は、周速度に換算して、5~30m/minが好ましく、5~20m/minがより好ましく、10~15m/minがさらに好ましい。
【0029】
次に、
図3(c)に示すように、駆動ローラR1が回転している状態で、人が偏光フィルムF1の先端部(
図3(c)の右側の端部)を手で引っ張って、最も左側の従動ローラR2、その右側の従動ローラR2及び駆動ローラR1の順に偏光フィルムF1を掛けていき、この3つのローラの位置によって決まるパスラインPL(
図3(a)参照)に偏光フィルムF1を沿わせる。これにより、搬送設備100の駆動ローラR1までの通紙作業が完了する。なお、パスラインPLは、通紙作業を行う際の各ローラ(駆動ローラR1又は従動ローラR2)の位置によって決まる仮想線であり、隣り合う2つのローラの共通接線を含んでいる。
【0030】
上記のようにして通紙作業が完了すれば、ニップローラRを閉じる。具体的には、ニップローラRの従動ローラR2を
図3(c)に示す矢符Cの方向に移動させて、偏光フィルムF1に接触させる。そして、
図3(d)に示すように、ニップローラRによって偏光フィルムF1を搬送する。
なお、
図3に図示しない偏光フィルムF1の搬送方向下流側にも、駆動ローラR1や従動ローラR2が存在する場合には、引き続いて、これらのローラに対する通紙作業を行うことになる。この搬送方向下流側の通紙作業において、人が偏光フィルムF1の先端部を手で引っ張って張力をかける際には、
図3に示す駆動ローラR1も駆動して回転させることになる。
【0031】
以上に説明した本実施形態に係る通紙方法によれば、駆動ローラR1に偏光フィルムF1を接触させて偏光フィルムF1の先端部を手で引っ張って張力をかける際には、駆動ローラR1を駆動して回転している状態であるため、駆動ローラR1に対する偏光フィルムF1の滑りが抑制され、偏光フィルムF1に擦れや切れが生じ難くなる。この結果、偏光フィルムF1に外観不良が生じ難くなる。
【0032】
なお、
図3を参照して説明した例では、
図3(b)に示すニップローラRを開いた直後に駆動ローラR1を駆動して回転させている。すなわち、駆動ローラR1に偏光フィルムF1を接触させる前から駆動ローラR1を駆動している。
しかしながら、本発明は、これに限るものではなく、少なくとも駆動ローラR1に偏光フィルムF1を接触させて偏光フィルムF1の先端部に張力をかける際に、駆動ローラが回転している状態であればよい。例えば、駆動ローラR1に偏光フィルムF1を掛けて接触させた状態であったとしても、偏光フィルムF1を引っ張らない(張力をかけない)限り、必ずしも駆動ローラR1を駆動して回転させる必要はない。
【0033】
図4は、本実施形態に係る通紙方法を適用する他の搬送設備の一例を部分的に示す模式図である。
図4に示す搬送設備100Aも、
図2に示す搬送設備100と同様に、駆動ローラR1’及び従動ローラR2を有する。ただし、
図4に示す駆動ローラR1’は、
図2に示す駆動ローラR1と異なり、ニップローラを構成せず、駆動ローラR1’単独で偏光フィルムF1を長手方向に搬送することができる。このような駆動ローラR1’としては、偏光フィルムF1を負圧吸引しながら搬送するサクションローラを例示できる。
【0034】
図4に示す搬送設備100Aのパスラインに偏光フィルムF1を通紙する場合も、駆動ローラR1’が回転している状態で、人が偏光フィルムF1の先端部(
図4の右側の端部)を手で引っ張って、従動ローラR2及び駆動ローラR1’の順に偏光フィルムF1を掛けていき、この2つのローラの位置によって決まるパスラインに偏光フィルムF1を沿わせる。これにより、搬送設備100Aの駆動ローラR1’までの通紙作業が完了する。
【0035】
なお、
図4に示す搬送設備100Aのパスラインに偏光フィルムF1を通紙する場合も、搬送設備100の場合と同様に、少なくとも駆動ローラR1’に偏光フィルムF1を接触させて偏光フィルムF1の先端部に張力をかける際に、駆動ローラR1’が回転している状態であればよい。
また、駆動ローラR1’の回転速度は、通紙後の偏光フィルムF1の通常搬送時(偏光板Fの製造時)の駆動ローラR1’の回転速度以下に設定することが好ましい。
さらに、
図4に図示しない偏光フィルムF1の搬送方向下流側にも、駆動ローラR1、R1’や従動ローラR2が存在する場合には、引き続いて、これらのローラに対する通紙作業を行うことになる。この搬送方向下流側の通紙作業において、人が偏光フィルムF1の先端部を手で引っ張って張力をかける際には、
図4に示す駆動ローラR1’も駆動して回転させることになる。
【0036】
図5は、本実施形態に係る通紙方法を適用する更に他の搬送設備の一例を部分的に示す模式図である。
図5に示す搬送設備100Bも、
図2に示す搬送設備100や
図4に示す搬送設備100Aと同様に、駆動ローラR1及び従動ローラR2を有する。
図5に示す駆動ローラR1は、従動ローラR2に対して上下方向に対向配置されており、両者でニップローラRを構成している。
【0037】
本実施形態に係る通紙方法を用いて、
図5に示す搬送設備100BのパスラインPLに偏光フィルムF1を通紙する際には、まず、
図5(a)に示すように、ニップローラRを開く。具体的には、ニップローラRの駆動ローラR1の駆動を停止した状態で、ニップローラRの従動ローラR2を矢符Dの方向に移動(降下)させる。
【0038】
次に、
図5(b)に示すように、駆動ローラR1が停止している状態で、人が偏光フィルムF1の先端部(
図5(b)の右側の端部)を手で引っ張って、最も左側の従動ローラR2、真ん中の従動ローラR2及び最も右側の従動ローラR2の順に偏光フィルムF1を掛けていき、この3つのローラの位置によって決まるパスラインPL(
図5(a)参照)に偏光フィルムF1を沿わせる。これにより、搬送設備100Bの最も右側の従動ローラR2までの通紙作業が完了する。
【0039】
上記のようにして通紙作業が完了すれば、ニップローラRを閉じる。具体的には、ニップローラRの従動ローラR2を
図5(c)に示す矢符Eの方向に移動(上昇)させて、駆動ローラR1に偏光フィルムF1を接触させる。この後に駆動ローラR1を駆動して矢符Gの方向に所定の回転速度で回転させる。そして、
図5(d)に示すように、ニップローラRによって偏光フィルムF1を搬送する。
【0040】
以上に説明した
図5に示す搬送設備100Bの場合、従動ローラR2に偏光フィルムF1を接触させるだけで偏光フィルムF1の通紙が可能である。この場合には、偏光フィルムF1の通紙の際に駆動ローラR1の駆動を停止することが可能である。すなわち、通紙完了までの間に偏光フィルムF1を駆動ローラR1に接触させる必要がないため、停止している駆動ローラに対する光学フィルムの滑りに起因した光学フィルムの擦れや切れの発生を抑制可能である。
【0041】
なお、
図5に図示しない偏光フィルムF1の搬送方向下流側にも、駆動ローラR1や従動ローラR2が存在する場合には、引き続いて、これらのローラに対する通紙作業を行うことになる。この搬送方向下流側の通紙作業において、人が偏光フィルムF1の先端部を手で引っ張って張力をかける際には、
図5に示す駆動ローラR1を駆動して回転させることになる。
【0042】
以上に説明した本実施形態では、光学フィルムが偏光フィルムである場合を例に挙げて説明したが、本発明は、これに限るものではなく、その他の各種光学フィルムに適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
100、100A、100B・・・搬送設備
R・・・ニップローラ
R1、R1’・・・駆動ローラ
R2・・・従動ローラ
F1・・・偏光フィルム(光学フィルム)