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特許7362252顔料組成物、インクジェット用水性インク組成物及び固体製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】顔料組成物、インクジェット用水性インク組成物及び固体製剤
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20231010BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20231010BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231010BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
C09D11/322
B41M5/00 120
B41M5/00 110
B41J2/01 501
C09D17/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019006331
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2019127589
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2018007320
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110003764
【氏名又は名称】弁理士法人OMNI国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】榎本 悠人
(72)【発明者】
【氏名】森川 聡一郎
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-297239(JP,A)
【文献】特表平08-509997(JP,A)
【文献】国際公開第2011/114691(WO,A1)
【文献】特開2015-218144(JP,A)
【文献】特開昭62-127356(JP,A)
【文献】国際公開第2011/114689(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C09C 1/00-3/12
A61K 9/20,9/44,
9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料組成物を含み、かつ、可食性を有するインクジェット用水性インク組成物であって、
前記顔料組成物が、少なくとも1種のレーキ顔料、顔料分散剤、及び分散安定剤を少なくとも含み、かつ、可食性を有するのものであり
前記顔料分散剤が、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記分散安定剤がエチレンジアミン四酢酸塩であり、
前記レーキ顔料の含有量が、前記顔料組成物の全質量に対し20質量%以下であり、
前記分散安定剤の含有量が、前記顔料組成物の全質量に対し10質量%以下であるインクジェット用水性インク組成物。
【請求項2】
前記レーキ顔料の含有量が、前記顔料組成物の全質量に対し15質量%以下である請求項1に記載のインクジェット用水性インク組成物。
【請求項3】
前記レーキ顔料が、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号及び青色2号からなる群より選ばれる何れか1種の染料をレーキ化したものである請求項1又は2に記載のインクジェット用水性インク組成物。
【請求項4】
インクジェット用水性インクの乾燥皮膜を表面に有する固体製剤であって、
前記インクジェット用水性インクは、請求項1~3の何れか1項に記載のインクジェット用水性インク組成物を含むものである固体製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顔料組成物、インクジェット用水性インク組成物及び固体製剤に関し、より詳細には、医薬品や食品等の固体製剤に対する画像印刷に適用可能であり、レーキ顔料の分散安定性(保存安定性)に優れた顔料組成物、インクジェット用水性インク組成物及び固体製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品等の固体製剤(例えば、錠剤やカプセル剤等)への印刷に用いるインクジェット用インクは、染料を用いた染料インクと、顔料を分散させた顔料インク(例えば、特許文献1)とに大別される。一般に、染料インクは色彩が多様で、鮮やかな発色性に優れるという長所を持つ一方、褪色し易く耐光性に劣るという短所を持つ。これに対して、顔料インクは、染料インクと比べ褪色し難く、耐光性に優れるという長所を持つ一方、染料インクと比べ発色性に劣るという短所を持つ。従って、耐光性に優れた画像を固体製剤に印刷するとの観点からは、顔料インクを採用するのが好適である。
【0003】
ここで、顔料は有機顔料と無機顔料に大きく分類され、当該有機顔料としては、例えば、溶媒に可溶な染料をレーキ化して得られるレーキ顔料が挙げられる。レーキ顔料は染料のような鮮やかな色を呈し、水に対して不溶性の性質を有する。そこで、このレーキ顔料を用いた顔料インクで固体製剤の表面に印刷を行えば、発色性に優れ、かつ耐光性及び耐水性を有する印刷画像を形成することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-140414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ペイントシェーカーを用いて、所望の平均分散粒子径でレーキ顔料が分散した顔料組成物を作製したところ、レーキ顔料の平均分散粒子径が時間の経過と共に増大し、顔料組成物がゲル化することが判明した。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、医薬品や食品等の固体製剤に対し発色性に優れた画像の印刷に適用可能であり、レーキ顔料の分散安定性(保存安定性)に優れた顔料組成物、インクジェット用水性インク組成物及び固体製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る顔料組成物は、前記の課題を解決するために、少なくとも1種のレーキ顔料、顔料分散剤、及び分散安定剤を少なくとも含む可食性の顔料組成物であって、前記分散安定剤が、カルボン酸、カルボン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩及びエチレンジアミン四酢酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記レーキ顔料の含有量が、前記顔料組成物の全質量に対し20質量%以下であり、前記分散安定剤の含有量が、前記顔料組成物の全質量に対し10質量%以下である。
【0008】
レーキ顔料においては、例えば、ペイントシェーカーを用いて、所望の平均分散粒子径で分散させた顔料組成物を作製したところ、時間の経過と共に平均分散粒子径が増大し、顔料組成物がゲル化するという問題が判明した。これは、レーキ顔料に由来する金属イオンが顔料分散剤と結合する結果生じるものと考えられ、このゲル化の問題に対し、本発明においては、前記構成の通り、レーキ顔料の分散状態を安定的に維持させる分散安定剤として、カルボン酸、カルボン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩及びエチレンジアミン四酢酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有させる。これにより、本発明においては、これらの化合物がレーキ顔料由来の金属イオンをキレート化する結果、当該金属イオンと顔料分散剤との結合を防止し、顔料組成物のゲル化を防止することができる。すなわち、前記の構成によれば、カルボン酸等をレーキ顔料の分散安定剤として含有させることにより、当該レーキ顔料の平均分散粒子径が時間の経過と共に増大するのを抑制し、レーキ顔料の分散安定性(保存安定性)を向上させることができる。
【0009】
尚、分散安定剤の含有量は、顔料組成物の全質量に対し10質量%以下であり、これにより、分散安定剤が過剰に存在することによるレーキ顔料の分散性の低下を抑制することができる。また、レーキ顔料の含有量を顔料組成物の全質量に対し20質量%以下とすることにより、当該顔料組成物を含む水性インク組成物をインクジェットノズルから吐出させる際の吐出安定性を良好に維持することができる。
【0010】
前記の構成においては、前記レーキ顔料の含有量が、前記顔料組成物の全質量に対し15質量%以下であることが好ましい。
【0011】
また前記の構成においては、前記レーキ顔料が、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号及び青色2号からなる群より選ばれる何れか1種の染料をレーキ化したものであることが好ましい。
【0012】
前記の構成においては、前記顔料分散剤が、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、多糖類、ゼラチン、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0013】
また、本発明に係るインクジェット用水性インク組成物は、前記の課題を解決するために、顔料組成物を含み、かつ、可食性を有するものである。
【0014】
前記の構成によれば、顔料組成物には、レーキ顔料の分散状態を安定的に維持させるための分散安定剤として、顔料組成物の全質量に対し10質量%以下のカルボン酸等が含まれている。本発明のインクジェット用水性インク組成物はそのような顔料組成物を含み構成されるものであるため、これにより、本発明においては、レーキ顔料の平均分散粒子径が時間の経過に伴って増大するのを抑制し、顔料組成物がゲル化するのを防止したインクジェット用水性インク組成物を提供することができる。また、レーキ顔料の含有量を顔料組成物の全質量に対し20質量%以下とするので、インクジェットノズルからの吐出安定性が良好なインクジェット用水性インク組成物を提供することができる。
【0015】
また、本発明に係る固体製剤は、前記の課題を解決するために、インクジェット用水性インクの乾燥皮膜を表面に有する固体製剤であって、前記インクジェット用水性インクは、前記インクジェット用水性インク組成物を含むものである。
【0016】
前記の構成によれば、インクジェット用インクの乾燥皮膜中には、少なくとも1種のレーキ顔料が含まれるため、乾燥皮膜により形成される印刷画像は、良好な耐光性を維持しつつ発色性に優れている。また、水性インク組成物は、レーキ顔料の分散状態を安定的に維持させる分散安定剤を含むものであるので、インクジェット方式で固体製剤の表面に水性インク組成物を吐出させる際に、その吐出不良を抑制することができる。その結果、固体製剤の表面に吐出不良なく乾燥被膜を形成することができ、視認性に優れた画像の形成を可能にする。これにより、例えば、製品情報を印刷した場合には、調剤ミスや誤飲等を防止することが可能な固体製剤を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カルボン酸、カルボン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩及びエチレンジアミン四酢酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる分散安定剤を、顔料組成物の全質量に対し10質量%以下で含有させることにより、レーキ顔料の平均分散粒子径が時間の経過と共に増大するのを抑制し、顔料組成物がゲル化するのを防止することができる。すなわち、本発明によれば、カルボン酸等の分散安定剤を含有させることにより、レーキ顔料の分散安定性(保存安定性)を向上させることができる。また、レーキ顔料を顔料組成物の全質量に対し20質量%以下で含有させるので、医薬品や食品等の固体製剤に対し、インクジェット方式で吐出安定性を損なうことなく良好に直接印刷することができる。さらに、着色剤としてレーキ顔料を用いることで、印刷画像の耐光性及び発色性を優れたものにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(顔料組成物)
本実施の形態に係る顔料組成物は、着色剤として少なくとも1種のレーキ顔料と、顔料分散剤と、分散安定剤とを少なくとも含む顔料分散体の組成物である。また、本実施の形態の顔料組成物は、薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合した材料を用いることにより、可食性を有するものにすることができ、これにより、医薬品や食品等の固体製剤へのインクジェット方式での画像等の記録に好適に用いることができる。
【0019】
ここで、本明細書において「可食性」とは、医薬品若しくは医薬品添加物として経口投与が認められている物質、及び/又は食品若しくは食品添加物として認められているものを意味する。また、本明細書において「インクジェット方式」とは、水性インク組成物を微細なインクジェットヘッドより液滴として吐出して、その液滴を固体製剤に定着させ、画像形成させる方式を意味する。尚、固体製剤の詳細については、後述する。
【0020】
レーキ顔料は、顔料組成物中に分散状態で存在する。レーキ顔料としては可食性を有するものであれば特に限定されない。ここで、「レーキ顔料」とは、主溶媒に可溶性の染料をレーキ化して得られる顔料を意味し、より詳細には、金属塩等の沈殿剤を加えることにより染料を沈殿剤に吸着させ、不溶性塩(不溶性の微粒子)として沈殿させた沈殿物である。主溶媒に可溶性を示す染料については特に限定されないが、好ましくは、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号及び青色2号からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0021】
レーキ顔料のより具体的な例としては、赤色2号アルミニウムレーキ、赤色3号アルミニウムレーキ、赤色4号アルミニウムレーキ、赤色40号アルミニウムレーキ、赤色102号アルミニウムレーキ、黄色4号アルミニウムレーキ、黄色4号バリウムレーキ、黄色4号ジルコニウムレーキ、黄色5号アルミニウムレーキ、黄色5号バリウムレーキ、黄色5号ジルコニウムレーキ、緑色3号アルミニウムレーキ、青色1号アルミニウムレーキ、青色1号バリウムレーキ、青色1号ジルコニウムレーキ、青色2号アルミニウムレーキ等が挙げられる。これらのレーキ顔料は1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
レーキ顔料の含有量は、顔料組成物の全質量に対し20質量%以下であり、好ましくは1質量%~20質量%、より好ましくは5質量%~15質量%である。レーキ顔料の含有量を20質量%以下にすることにより、顔料組成物を用いた水性インクのインクジェットノズルからの吐出安定性を良好に維持することができる。尚、レーキ顔料の含有量を1質量%以上にすることより、印刷画像の視認性の向上が図れる。また、レーキ顔料が顔料組成物中に複数種含まれる場合は、全てのレーキ顔料の含有量の合計が前記数値範囲に含まれていればよい。
【0023】
顔料分散剤は、分散媒におけるレーキ顔料の分散性を向上させる。顔料分散剤としては、レーキ顔料の分散性を向上させることができ、かつ、可食性を有するものであれば特に限定されない。顔料分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、多糖類、ゼラチン、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0024】
レーキ顔料と顔料分散剤の含有比は、質量基準で1:0.2~1:4であることが好ましく、1:0.5~1:1であることがより好ましい。含有比が1:0.2以上であると、レーキ顔料の分散性の低下を防止することができる。その一方、含有比が1:4以下であると、水性インクの粘度増大によりノズルプレートに水性インクが付着し、それに起因して吐出安定性が低下するのを防止することができる。
【0025】
分散安定剤は、レーキ顔料に由来する金属イオン(例えば、アルミニウムイオン等)が顔料分散剤と結合するのを防止するため、当該金属イオンをキレート化する機能を有する。これにより、レーキ顔料の分散安定性を向上させることができ、より詳細には、レーキ顔料の平均分散粒子径が時間の経過と共に増大するのを防止し、一定期間の保管後においても良好な分散状態を維持し、顔料組成物のゲル化を防止することができる。
【0026】
尚、本明細書において「分散安定性」とは、顔料組成物又は当該顔料組成物を含むインクジェット用水性インク組成物(詳細については、後述する。)に分散安定剤を含有させることにより、レーキ顔料の分散性が一定時間経過した後においても低下し難い性質を意味し、保存安定性ともいう。
【0027】
分散安定剤としては、レーキ顔料の分散安定性を向上させることができ、かつ、可食性を有するものであれば特に限定されない。そのような分散安定剤としては、例えば、カルボン酸、カルボン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩及びエチレンジアミン四酢酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0028】
カルボン酸としては特に限定されず、例えば、L-酒石酸、DL-酒石酸、グルコン酸、クエン酸、フマル酸、DL-リンゴ酸、乳酸等が挙げられる。
【0029】
カルボン酸塩としては特に限定されず、例えば、クエン酸カルシウム、クエン酸トリエチル、クエン酸ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等のクエン酸塩;グルコン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム等のグルコン酸塩;L-酒石酸ナトリウム等のL-酒石酸塩;乳酸アルミニウム、乳酸カルシウム等の乳酸塩;フマル酸一ナトリウム等のフマル酸塩;リンゴ酸二ナトリウム等のリンゴ酸塩;コハク酸二ナトリウム等のコハク酸塩;DL-酒石酸ナトリウム等のDL-酒石酸塩等が挙げられる。
【0030】
ホスホン酸としては特に限定されず、例えば、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、フィチン酸等が挙げられる。
【0031】
ホスホン酸塩としては特に限定されず、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム等が挙げられる。
【0032】
エチレンジアミン四酢酸塩としては特に限定されず、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩ナトリウムカルシウム等が挙げられる。
【0033】
尚、例示した分散安定剤は、それぞれ1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
分散安定剤の含有量は、顔料組成物の全質量に対し10質量%以下であり、好ましくは0.1質量%~6質量%、より好ましくは1質量%~2質量%である。分散安定剤の含有量を10質量%以下にすることにより、分散安定剤が過剰に存在することによるレーキ顔料の分散安定性の低下を抑制することができる。尚、分散安定剤の含有量を0.1質量%以上にすることより、レーキ顔料の分散安定性を向上させることができる。また、分散安定剤が顔料組成物中に複数種含まれる場合は、全ての分散安定剤の含有量の合計が数値範囲に含まれていればよい。
【0035】
本実施の形態に係る顔料組成物に於いては、レーキ顔料を分散させるための分散媒が含まれる。分散媒としては水が挙げられ、より詳細には、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水等のイオン性不純物を除去したものが挙げられる。特に、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間にわたってカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。また、分散媒の含有量としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
【0036】
また、分散媒としては、水と水溶性有機溶剤の混合溶液を用いてもよい。水溶性有機溶剤としては薬事法等の基準に該当するものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、エチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。さらに、分散媒に水溶性有機溶剤を併用する場合の配合量としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
【0037】
顔料組成物の25℃におけるpHは、レーキ顔料の分散安定性の観点から、2~10の範囲内が好ましく、5~9の範囲内がより好ましく、6~8の範囲内が特に好ましい。
【0038】
顔料組成物中のレーキ顔料の体積基準積算粒度分布における積算粒度で10%の粒子径(D10)は、顔料組成物の作製直後及び一定期間の経過後において、50nm~300nmの範囲内が好ましく、70nm~150nmの範囲内がより好ましい。D10を50nm以上にすることにより、過分散による凝集を抑制することができる。その一方、D10を300nm以下にすることにより、吐出安定性の低下を防止することができる。
【0039】
また、分散状態にあるレーキ顔料の体積基準積算粒度分布における積算粒度で50%の粒子径(D50)は、顔料組成物の作製直後及び一定期間の経過後において、50nm~700nmの範囲内が好ましく、60nm~500nmの範囲内がより好ましく、70nm~150nmの範囲内が特に好ましい。D50を50nm以上にすることにより、分散安定性、耐光性及び吐出安定性の低下を防止し、印刷濃度の低下も防止することができる。その一方、D50を700nm以下にすることにより、レーキ顔料の分離や沈降を防止し、分散安定性の維持が図れる。
【0040】
さらに、レーキ顔料の体積基準積算粒度分布における積算粒度で99%の粒子径(D99)は、顔料組成物の作製直後及び一定期間の経過後において、50nm~3000nmの範囲内が好ましく、60nm~800nmの範囲内がより好ましく、100nm~600nmの範囲内が特に好ましい。D99を50nm以上にすることにより、分散安定性、耐光性及び吐出安定性の低下を防止し、印刷濃度の低下も防止することができる。その一方、D99を3000nm以下にすることにより、吐出安定性の低下を防止することができる。
【0041】
尚、レーキ顔料が顔料組成物中に複数種含まれる場合は、各々のレーキ顔料のD10、D50及びD99が前記数値範囲に含まれていればよい。また、レーキ顔料のD10、D50及びD99の値は、マイクロトラックUPA-EX150(商品名、日機装(株)製)を用いて動的光散乱法により測定した値である。
【0042】
本実施の形態の顔料組成物の製造方法において、レーキ顔料、顔料分散剤、分散安定剤、分散媒及び必要に応じて配合するその他の添加剤の混合方法や添加順序は、特に限定されない。例えば、レーキ顔料、顔料分散剤、分散安定剤及び分散媒としての水等を一度に混合し、この混合液に対し通常の分散機を用いて分散処理を施してもよい。
【0043】
分散処理における分散時間は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。レーキ顔料の分散処理の際に使用される分散機としては、一般に使用される分散機であれば特に限定されない。具体的には、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、ナノマイザー等が挙げられる。
【0044】
尚、本実施の形態の顔料組成物は、インクジェット用水性インク組成物(詳細については後述する)の形態のほか、当該水性インク組成物を調製するための顔料分散液の形態をも包含するものである。
【0045】
(インクジェット用水性インク組成物)
本実施の形態に係るインクジェット用水性インク組成物(以下、「水性インク組成物」という。)は、少なくとも顔料組成物を含み、主溶媒が水である水性インクである。また、本実施の形態の水性インク組成物は可食性を有し、インクジェット記録用として好適に用いられるものである。さらに、水性インク組成物は着色剤としてレーキ顔料が用いられることから、通常の顔料を用いた水性インク組成物と比較して発色性に優れている。
【0046】
顔料組成物の含有量は、水性インク組成物の全質量に対し顔料分換算で20質量%以下であり、1質量%~20質量%の範囲が好ましく、2質量%~15質量%の範囲がより好ましく、2質量%~10質量%の範囲がさらに好ましく、4質量%~8質量%の範囲内が特に好ましい。顔料組成物の含有量を20質量%以下にすることにより、分散性を向上させることができる。尚、顔料組成物の含有量を1質量%以上にすることにより、着色力を向上させることができる。また、「顔料分換算」とは、レーキ顔料の含有量のみで換算することを意味する。
【0047】
本実施の形態の水性インク組成物に於いては、水(主溶媒としての水)を含有する。水としては、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水等のイオン性不純物を除去したものを用いるのが好ましい。特に、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間にわたってカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。また、水の含有量としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
【0048】
本実施の形態の水性インク組成物においては、薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合するものであれば、その他の添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、表面張力調整剤、湿潤剤、水溶性樹脂、有機アミン、界面活性剤、防腐剤、粘度調整剤、消泡剤、酸化防止剤、還元防止剤等が挙げられる。表面張力調整剤及び湿潤剤を除き、これらの添加剤の含有量は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる(表面張力調整剤及び湿潤剤の含有量については、それぞれ後述する。)。
【0049】
表面張力調整剤としては、薬事法等の基準に適合するものであれば特に限定されず、具体的には、例えば、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、カプリル酸デカグリセリル、ラウリン酸デカグリセリル等が挙げられる。
【0050】
表面張力調整剤の含有量は、水性インク組成物の全質量に対し、0.1質量%~5質量%の範囲内であることが好ましく、1質量%~2質量%の範囲内であることがより好ましい。表面張力調整剤の含有量が0.1質量%以上であると、インクジェット方式で印刷を行った場合に、インクジェットヘッドにおけるノズルでのメニスカス形成不良等による吐出不良を防止し、当該ノズルの目詰まりが発生するのを防止することができる。その結果、吐出安定性の向上が図れる。その一方、表面張力調整剤の含有量が5質量%以下であると、表面張力調整剤の不溶分や乳化不良による吐出への悪影響を防止することができる。
【0051】
湿潤剤としては、薬事法等の基準に適合するものであれば特に限定されず、具体的には、例えば、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0052】
湿潤剤の添加量は、水性インク組成物の全質量に対し、1質量%~50質量%が好ましく、10質量%~40質量%がより好ましい。湿潤剤の含有量を1質量%以上にすることにより、インクジェットヘッドのノズル近傍での目詰まりを防止し、吐出性能の一層の向上が図れる。その一方、湿潤剤の含有量を50質量%以下にすることにより、水性インク組成物の粘度を適性に制御することができる。
【0053】
本実施の形態の水性インク組成物は、インクジェット用インクに好適に使用することができる。さらに、本実施の形態の水性インク組成物は、薬事法等の基準に適合した材料を用いるので、可食性を有しており、サプリメント等の錠剤の表面に直接印刷することが可能である。また、素錠及びOD錠など表面の平滑性が悪い錠剤に対しても、インクジェット方式による非接触印刷を可能にする。さらに、本実施の形態の水性インク組成物は、レーキ顔料を用いるので、耐光性及び発色性に優れた画像を、医薬品又はサプリメント等の固体製剤表面に直接印刷することができる。
【0054】
尚、本実施の形態の水性インク組成物は、最終製品たるインクジェット用水性インクに少なくとも含まれるものであるほか、当該インクジェット用水性インクそのものとしても用いることができる。
【0055】
本実施の形態の水性インク組成物は、前述の各成分を適宜な方法で混合することよって製造することができる。即ち、例えば、顔料組成物の分散液に、別途前述した添加剤等を加え、更に水にて希釈する。その後、十分に撹拌し、必要に応じて目詰まりの原因となる粗大粒子及び異物を除去するための濾過を行う。これにより、本実施の形態に係る水性インク組成物を得ることができる。
【0056】
尚、各材料の混合方法としては特に限定されず、例えば、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合を行う。また、濾過方法としては特に限定されず、例えば、遠心濾過、フィルター濾過等を採用することができる。
【0057】
本実施の形態の水性インク組成物は、レーキ顔料の分散性及び分散安定性(保存安定性)に優れているので、インクジェット用インクに好適に使用することができる。特に、本実施の形態の水性インク組成物は、薬事法等の基準に適合したレーキ顔料及び分散安定剤等を用いるので、可食性を有しており、医薬品やサプリメント等の固体製剤の表面に直接印刷することが可能である。また、素錠やOD錠など表面の平滑性が悪い錠剤に対しても、インクジェット方式による非接触印刷を可能にする。さらに、水性インク組成物は耐光性にも優れているので、医薬品やサプリメント等の固体製剤の表面に直接印刷しても滲みの発生を防止することができる。
【0058】
(固体製剤)
本明細書において、「固体製剤」とは食品製剤及び医薬製剤を含む意味であり、固体製剤の形態としては、例えばOD錠(口腔内崩壊錠)、素錠、FC(フィルムコート)錠、糖衣錠等の錠剤又はカプセル剤が挙げられる。また、固体製剤は、医薬品用途であってもよく、食品用途であってもよい。食品用途の錠剤の例としては、錠菓やサプリメント等の健康食品が挙げられる。
【0059】
固体製剤の表面には、水性インク組成物を含む水性インクを用いて、インクジェット記録方法により直接印刷された乾燥皮膜からなる印刷画像が形成される。そして乾燥皮膜は、水性インク組成物中に含まれていたレーキ顔料により少なくとも構成される。
【0060】
本実施の形態の固体製剤において、乾燥皮膜からなる印刷画像は耐光性に優れているため、例えば、製品情報などの各種情報の画像の劣化を防止することが可能である。また、印刷画像は発色性にも優れているため、使用者に対する識別性も向上させることができる。その結果、本実施の形態の固体製剤は、長期にわたって良好な視認性を維持し、調剤ミスや誤飲の防止を可能にする。
【0061】
固体製剤の表面に対するインクジェット記録方法については、特に限定されない。具体的には、例えば、微細なノズルより水性インクを液滴として吐出し、その液滴を錠剤表面に付着させることにより行うことができる。吐出方法として特に限定されず、例えば、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型等)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等)等の公知の方法を採用することができる。
【実施例
【0062】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、各実施例に記載されている材料や含有量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。また、顔料組成物の各材料は何れも薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方又は食品添加物公定書の基準に適合するものである。
【0063】
(実施例1)
本実施例においては、レーキ顔料としての黄色4号アルミニウムレーキ(三栄源株式会社製)8g、顔料分散剤としてのポリアクリル酸ナトリウム(商品名:TEGO(登録商標) Dispers 715W、Evonik社製、質量平均分子量3000)6g、分散安定剤としてのリン酸水素二ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)1gを容器に添加し、さらにイオン交換水45gを加えた。続いて、容器中の混合液を分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて、常温下で3時間(分散時間)分散させた。また、分散の際にはジルコニアビーズ(平均粒径0.8mm)130gを混合して行った。これにより、本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0064】
(実施例2)
本実施例においては、分散安定剤としてのリン酸水素二ナトリウムの含有量を2g、イオン交換水の含有量を44gに変更した。それら以外は実施例1と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0065】
(実施例3)
本実施例においては、分散安定剤としてコハク酸二ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を用いた。それ以外は実施例1と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0066】
(実施例4)
本実施例においては、分散安定剤としてのコハク酸二ナトリウムの含有量を2g、イオン交換水の含有量を44gに変更した。それら以外は実施例3と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0067】
(実施例5)
本実施例においては、分散安定剤としてリンゴ酸二ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を用いた。それ以外は実施例1と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0068】
(実施例6)
本実施例においては、分散安定剤としてのリンゴ酸二ナトリウムの含有量を2g、イオン交換水の含有量を44gに変更した。それら以外は実施例5と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0069】
(実施例7)
本実施例においては、分散安定剤としてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を用いた。それ以外は実施例1と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0070】
(実施例8)
本実施例においては、分散安定剤としてのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの含有量を2g、イオン交換水の含有量を44gに変更した。それら以外は実施例7と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0071】
(比較例1)
本比較例においては、分散安定剤を配合せず、イオン交換水の含有量を46gに変更した。それら以外は実施例1と同様の方法にて本比較例に係る顔料組成物を作製した。
【0072】
【表1】
【0073】
(実施例9)
本実施例においては、分散安定剤としてクエン酸(和光純薬工業株式会社製)を用いた。それ以外は実施例1と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0074】
(実施例10)
本実施例においては、分散安定剤としてリンゴ酸(和光純薬工業株式会社製)を用いた。それ以外は実施例9と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0075】
(実施例11)
本実施例においては、分散安定剤としてクエン酸1gを用い、顔料分散剤としてポリビニルピロリドン(商品名;コリドン12PF、BASFジャパン株式会社製)0.1gを用いた。さらに、イオン交換水の含有量を50.9gに変更した。それら以外は実施例1と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0076】
(実施例12)
本実施例においては、分散安定剤としてリンゴ酸を用いた。それ以外は実施例11と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0077】
(実施例13)
本実施例においては、分散安定剤としてリンゴ酸二ナトリウム2gを用いた。さらに、イオン交換水の含有量を49.9gに変更した。それら以外は実施例11と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0078】
(比較例2)
本比較例においては、分散安定剤を配合せず、イオン交換水の含有量を51.9gに変更した。それら以外は実施例11と同様の方法にて本比較例に係る顔料組成物を作製した。
【0079】
【表2】
【0080】
(実施例14)
本実施例においては、レーキ顔料としての赤色3号アルミニウムレーキ(三栄源株式会社製)8g、顔料分散剤としてのポリアクリル酸ナトリウム(商品名:TEGO(登録商標) Dispers 715W、Evonik社製、質量平均分子量3000)6g、分散安定剤としてのリンゴ酸二ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)2gを容器に添加し、さらにイオン交換水44gを加えた。続いて、容器中の混合液を分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて、常温下で3時間(分散時間)分散させた。また、分散の際にはジルコニアビーズ(平均粒径0.8mm)130gを混合して行った。これにより、本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0081】
(比較例3)
本比較例においては、分散安定剤を配合せず、イオン交換水の含有量を46gに変更した。それら以外は実施例14と同様の方法にて本比較例に係る顔料組成物を作製した。
【0082】
(実施例15)
本実施例においては、レーキ顔料として緑色3号アルミニウムレーキ(ダイワ化成株式会社製)を用いた。それ以外は実施例14と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0083】
(比較例4)
本比較例においては、分散安定剤を配合せず、イオン交換水の含有量を46gに変更した。それら以外は実施例15と同様の方法にて本比較例に係る顔料組成物を作製した。
【0084】
(実施例16)
本実施例においては、レーキ顔料として青色1号アルミニウムレーキ(三栄源株式会社製)を用いた。それ以外は実施例14と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0085】
(比較例5)
本比較例においては、分散安定剤を配合せず、イオン交換水の含有量を46gに変更した。それら以外は実施例16と同様の方法にて本比較例に係る顔料組成物を作製した。
【0086】
【表3】
【0087】
(実施例17)
本実施例においては、レーキ顔料としての赤色40号アルミニウムレーキ(三栄源株式会社製)8g、顔料分散剤としてのポリアクリル酸ナトリウム(商品名:TEGO(登録商標) Dispers 715W、Evonik社製、質量平均分子量3000)6g、分散安定剤としてのリンゴ酸二ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)2gを容器に添加し、さらにイオン交換水44gを加えた。続いて、容器中の混合液を分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて、常温下で3時間(分散時間)分散させた。また、分散の際にはジルコニアビーズ(平均粒径0.8mm)130gを混合して行った。これにより、本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0088】
(比較例6)
本比較例においては、分散安定剤を配合せず、イオン交換水の含有量を46gに変更した。それら以外は実施例17と同様の方法にて本比較例に係る顔料組成物を作製した。
【0089】
【表4】
【0090】
(実施例18)
本実施例においては、分散安定剤としてのリンゴ酸二ナトリウムの含有量を0.06g、イオン交換水の含有量を45.94gに変更した。それ以外は、実施例16と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0091】
(実施例19)
本実施例においては、分散安定剤としてのリンゴ酸二ナトリウムの含有量を0.1g、イオン交換水の含有量を45.9gに変更した。それ以外は、実施例16と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0092】
(実施例20)
本実施例においては、分散安定剤としてのリンゴ酸二ナトリウムの含有量を0.6g、イオン交換水の含有量を45.4gに変更した。それ以外は、実施例16と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0093】
(実施例21)
本実施例においては、分散安定剤としてのリンゴ酸二ナトリウムの含有量を5.7g、イオン交換水の含有量を40.3gに変更した。それ以外は、実施例16と同様の方法にて本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0094】
【表5】
【0095】
(実施例22)
本実施例においては、レーキ顔料としての青色1号アルミニウムレーキ(三栄源株式会社製)、顔料分散剤としてのポリアクリル酸ナトリウム(商品名:TEGO(登録商標) Dispers 715W、Evonik社製、質量平均分子量3000)、分散安定剤としてのリンゴ酸二ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)及び分散媒としてのイオン交換水を容器に入れ、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて、常温下で6時間(分散時間)分散させた。また、分散の際にはジルコニアビーズ(平均粒径0.8mm)130gを混合させて行った。これにより、本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0096】
次に、顔料組成物に、表面張力調整剤としてのカプリル酸デカグリセリル(商品名:SYグリスターMCA750(商品名、阪本薬品工業株式会社製、HLB値16))及びイオン交換水を加え、表6に示す配合割合となる様に、インクジェット用水性インク組成物(以下、「水性インク組成物」という。)を調製し、ディスパーにて撹拌した。これにより、本実施例の水性インク組成物を作製した。
【0097】
(実施例23)
本実施例においては、レーキ顔料としての青色1号アルミニウムレーキ(三栄源株式会社製)、顔料分散剤としてのポリアクリル酸ナトリウム(商品名:TEGO(登録商標) Dispers 715W、Evonik社製、質量平均分子量3000)、分散安定剤としてのリンゴ酸二ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)及び分散媒としてのイオン交換水を容器に入れ、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて、常温下で6時間(分散時間)分散させた。また、分散の際にはジルコニアビーズ(平均粒径0.8mm)130gを混合させて行った。これにより、本実施例に係る顔料組成物を作製した。
【0098】
次に、顔料組成物に、表面張力調整剤としてのカプリル酸デカグリセリル(商品名:SYグリスターMCA750(商品名、阪本薬品工業株式会社製、HLB値16))、湿潤剤としてのプロピレングリコール及びイオン交換水を加え、表6に示す配合割合となる様に、水性インク組成物を調製し、ディスパーにて撹拌した。これにより、本実施例の水性インク組成物を作製した。
【0099】
(実施例24)
本実施例においては、各成分の配合量を表6に示す値に変更した。それ以外は、実施例23と同様の方法にて本実施例に係る水性インク組成物を作製した。
【0100】
【表6】
【0101】
(レーキ顔料の体積基準積算粒度分布における粒子径の測定)
実施例1~21及び比較例1~6の各顔料組成物について、それぞれ作製直後のD10、D50及びD99を測定した。また、実施例22~24の各水性インク組成物についても、それぞれ作製直後のD10、D50及びD99を測定した。測定は、マイクロトラックUPA-EX150(商品名、日機装(株)製)を用いて動的光散乱法により行った。
【0102】
続いて、各顔料組成物を密閉した容器にそれぞれ保管し、25℃の環境下で、それぞれ一定期間静置して保存した。その後、再びレーキ顔料のD10、D50及びD99について、前述と同様の方法にて測定した。尚、保管期間は、実施例1~16、18~21及び比較例1~5の顔料組成物については3日間とし、実施例17及び比較例6の顔料組成物については10日間とした。結果を表1~表6に示す。
【0103】
(結果)
表1~表5から明らかな通り、実施例1~21の顔料組成物においては、リン酸水素二ナトリウム等の分散安定剤を添加することにより、顔料組成物を一定期間保管した後においても、各レーキ顔料のD10、D50及びD99が大幅に増大するのを抑制し、顔料組成物のゲル化を防止することができた。その一方、比較例1~6の顔料組成物においては、分散安定剤を添加しなかったことから、当該顔料組成物を一定期間保管した後のレーキ顔料のD10、D50及びD99は大幅に増加し、本実施例1~21と比較して分散安定性(保存安定性)に劣ることが確認された。
【0104】
また、表6から明らかな通り、実施例22~24においては、各レーキ顔料のD10が50nm~300nm、D50が50nm~700nm、D99が50nm~3000nmの範囲にあり、良好な吐出安定性を有する水性インク組成物が得られることが確認された。