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特許7362256車両管理システム、車両管理装置、および車両管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】車両管理システム、車両管理装置、および車両管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20231010BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20231010BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20231010BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/0968 B
G08G1/13
G08G1/09 F
G08G1/09 E
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019018460
(22)【出願日】2019-02-05
(65)【公開番号】P2020125976
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 良貴
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-050183(JP,A)
【文献】特開2017-174208(JP,A)
【文献】特開2013-124951(JP,A)
【文献】特開2014-048077(JP,A)
【文献】特開2018-054370(JP,A)
【文献】特開2017-128213(JP,A)
【文献】特開2016-115023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-25/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の乗員の異常に起因した緊急事態の際に、前記自車両及び救急車両を管理する車両管理システムであって、
サーバと、
前記サーバが前記自車両及び前記救急車両と通信可能な通信装置と、を備え、
前記サーバは、
前記自車両から、前記自車両の位置情報を取得し、
前記救急車両から、前記救急車両の位置情報を取得し、
前記自車両の目的地を病院に設定し、
前記自車両が前記病院に到着するまでの走行経路を第1走行経路として演算し、
前記自車両及び前記病院の位置情報に基づいて、前記自車両と前記病院との間の距離を算出し、
前記救急車両及び前記病院の位置情報に基づいて、前記救急車両と前記病院との間の距離を算出し、
前記自車両と前記病院との間の距離と、前記救急車両と前記病院との間の距離との比較結果に応じて、前記救急車両が病院に到着するまでの走行経路を第2走行経路として演算し、
前記第1走行経路と前記第2走行経路が交差する場合に、前記第1走行経路と前記第2走行経路が交差する地点を交差位置として特定し、
前記救急車両が前記自車両と前記救急車両の待ち合わせ位置を出発してから前記病院に到着するまでの所要時間が短くなるように、前記交差位置から前記病院に至るまでの経路上の何れかの地点に、前記待ち合わせ位置を設定し、
前記待ち合わせ位置に関する情報を、前記自車両及び前記救急車両に送信する車両管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両管理システムであって、
前記待ち合わせ位置に関する情報は、少なくとも、前記待ち合わせ位置の位置情報と、前記自車両が前記待ち合わせ位置に到着するまでの走行経路及び前記救急車両が前記待ち合わせ位置に到着するまでの走行経路の情報とを含む車両管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両管理システムであって、
前記サーバは、
前記自車両から、遠隔指示の必要性に関する情報を取得し、
取得した前記情報に基づいて、路肩又は所定の駐車場を前記待ち合わせ位置として設定する車両管理システム。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の車両管理システムであって、
前記サーバは、
前記自車両が前記待ち合わせ位置に到着するまでの所要時間が短くなるように、前記待ち合わせ位置を設定する車両管理システム。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の車両管理システムであって、
前記サーバは、
前記自車両及び前記救急車両のうち少なくとも何れか一方が前記病院への走行を開始した時点よりも後に、前記待ち合わせ位置を設定する車両管理システム。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の車両管理システムであって、
前記サーバは、
前記交差位置から前記病院に至るまでの複数の道路のうち、道路幅が最も広い道路上に前記待ち合わせ位置を設定する車両管理システム。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の車両管理システムであって、
前記サーバは、
前記待ち合わせ位置の到着までに行われる前記自車両の右折及び左折の回数が少なくなるように、前記待ち合わせ位置を設定する車両管理システム。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の車両管理システムであって、
前記サーバは、
前記自車両、前記救急車両、及び前記病院の周辺道路における渋滞情報を取得し、
前記渋滞情報に基づいて、前記自車両及び前記救急車両が渋滞中の道路を回避して走行するように、前記待ち合わせ位置を設定する車両管理システム。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の車両管理システムであって、
前記サーバは、
前記自車両から、前記自車両の周囲の環境に関する情報を周囲環境情報として取得し、
前記周囲環境情報に基づいて、設定された前記待ち合わせ位置を修正する車両管理システム。
【請求項10】
自車両の乗員の異常に起因した緊急事態の際に、前記自車両及び救急車両を管理する車両管理システムであって、
サーバと、
前記サーバが前記自車両及び前記救急車両と通信可能な通信装置と、を備え、
前記サーバは、
前記自車両から、前記自車両の位置情報を取得し、
前記救急車両から、前記救急車両の位置情報を取得し、
前記自車両の目的地を病院に設定し、
前記自車両が前記病院に到着するまでの走行経路を第1走行経路として演算し、
前記自車両及び前記病院の位置情報に基づいて、前記自車両と前記病院との間の距離を算出し、
前記救急車両及び前記病院の位置情報に基づいて、前記救急車両と前記病院との間の距離を算出し、
前記自車両と前記病院との間の距離と、前記救急車両と前記病院との間の距離との比較結果に応じて、前記救急車両が病院に到着するまでの走行経路を第2走行経路として演算し、
前記第1走行経路と前記第2走行経路が交差する場合に、前記第1走行経路と前記第2走行経路が交差する地点を交差位置として特定し、
前記交差位置から前記病院に至るまでの経路上の何れかの地点に、前記自車両と前記救急車両の待ち合わせ位置を設定し、
前記待ち合わせ位置に関する情報を、前記自車両及び前記救急車両に送信し、
前記自車両から、前記自車両の周囲の環境に関する情報を周囲環境情報として取得し、
前記周囲環境情報に基づいて、前記待ち合わせ位置付近において、前記自車両及び前記救急車両が停車することが可能なスペースを特定し、
前記自車両を前記スペースの中央付近で停車させるための指示を、前記自車両に送信し、
前記救急車両が前記待ち合わせ位置から所定の範囲内に位置する場合、前進又は後進により前記自車両を前記スペース内の他の位置に移動させるための指示を、前記自車両に送信する車両管理システム。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の車両管理システムであって、
前記サーバは、
前記自車両が前記第1走行経路に沿って走行して前記病院に到着するまでに要する第1時間と、前記自車両が前記待ち合わせ位置に到着するまでに要する時間と前記救急車両が前記待ち合わせ位置から前記病院に到着するまでに要する時間を足し合わせた第2時間とを比較し、
前記第1時間が前記第2時間よりも早い場合、前記自車両を前記第1走行経路に沿って走行させるための指示を、前記自車両に送信し、前記待ち合わせ位置に関する情報を前記救急車両に送信しない車両管理システム。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載の車両管理システムであって、
前記自車両は、
前記自車両の乗員の異常を検出するセンサと、
サーバと通信可能な車載通信機器と、
前記サーバからの遠隔指示に基づき、前記自車両の運転を制御する車載コントローラと、を備え、
前記車載コントローラは、
前記センサにより前記自車両の乗員の異常を検出した場合、前記遠隔指示の必要性の有無を判断し、
前記遠隔指示が必要と判断した場合、前記車載通信機器を介して、前記遠隔指示の必要性に関する情報を、前記サーバに送信する車両管理システム。
【請求項13】
自車両に搭載される車両管理装置であって、
救急車両と通信可能な車載通信機器と、
前記自車両の乗員の異常に起因した緊急事態の際に、前記救急車両を管理する車載コントローラを備え、
前記車載コントローラは、
前記救急車両から、前記救急車両の位置情報を取得し、
前記自車両の目的地を病院に設定し、
前記自車両が前記病院に到着するまでの走行経路を第1走行経路として演算し、
前記自車両及び前記病院の位置情報に基づいて、前記自車両と前記病院との間の距離を算出し、
前記救急車両及び前記病院の位置情報に基づいて、前記救急車両と前記病院との間の距離を算出し、
前記自車両と前記病院との間の距離と、前記救急車両と前記病院との間の距離との比較結果に応じて、前記救急車両が病院に到着するまでの走行経路を第2走行経路として演算し、
前記第1走行経路と前記第2走行経路が交差する場合に、前記第1走行経路と前記第2走行経路が交差する地点を交差位置として特定し、
前記救急車両が前記自車両と前記救急車両の待ち合わせ位置を出発してから前記病院に到着するまでの所要時間が短くなるように、前記交差位置から前記病院に至るまでの経路上の何れかの地点に、前記待ち合わせ位置を設定し、
前記車載通信機器を介して、前記待ち合わせ位置に関する情報を、前記救急車両に送信する車両管理装置。
【請求項14】
サーバを用いて、自車両の乗員の異常に起因した緊急事態の際に、前記自車両及び救急車両を管理する車両管理方法であって、
前記自車両及び救急車両の位置情報を取得し、
前記自車両の目的地を病院に設定し、
前記自車両が前記病院に到着するまでの走行経路を第1走行経路として演算し、
前記自車両及び前記病院の位置情報に基づいて、前記自車両と前記病院との間の距離を算出し、
前記救急車両及び前記病院の位置情報に基づいて、前記救急車両と前記病院との間の距離を算出し、
前記自車両と前記病院との間の距離と、前記救急車両と前記病院との間の距離との比較結果に応じて、前記救急車両が病院に到着するまでの走行経路を第2走行経路として演算し、
前記第1走行経路と前記第2走行経路が交差する場合に、前記第1走行経路と前記第2走行経路が交差する地点を交差位置として特定し、
前記救急車両が前記自車両と前記救急車両の待ち合わせ位置を出発してから前記病院に到着するまでの所要時間が短くなるように、前記交差位置から前記病院に至るまでの経路上の何れかの地点に、前記待ち合わせ位置を設定し、
前記待ち合わせ位置に関する情報を、前記自車両及び前記救急車両に送信する車両管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の乗員の異常に起因した緊急事態の際に、自車両及び救急車両を管理する車両管理システム、車両管理装置、及び車両管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転者の異常を検出した情報を取得する異常情報取得部と、運転者の異常の検知が継続した場合に、当該運転者が運転困難状態にあると判定する状態判定部と、状態判定部によって運転困難状態と判定されたことに基づき、車両を自動で停車させる自動退避制御を開始する退避制御部と、異常が検知されたときから運転困難状態と判定されるまでの間に、車両の車線逸脱の防止機能を少なくとも含む運転支援制御を開始する支援制御部と、を備える走行制御装置が知られている(特許文献1)。この走行制御装置は、退避場所の探索を退避場所探索装置に開始させる探索制御部を、さらに備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-196285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、退避場所を探索する際、救急車両による退避場所あるいは病院への搬送経路を考慮しない。そのため、例えば、救急車両が病院と異なる方向から退避場所に向かうと、救急車両が退避場所に到着するまでに時間がかかり、その結果、乗員の異常を検知した時点から乗員が病院に到着するまでの時間が長くなる場合がある、という問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、自車両の乗員の異常に起因した緊急事態の際に、乗員の異常を検知した時点から乗員が病院に到着するまでの時間の短縮を図ることが可能な車両管理システム、車両管理装置及び車両管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車両及び救急車両の位置情報を取得し、自車両の目的地を病院に設定し、自車両が病院に到着するまでの走行経路を第1走行経路として演算し、自車両及び病院の位置情報に基づいて、自車両と病院との間の距離を算出し、救急車両及び病院の位置情報に基づいて、救急車両と病院との間の距離を算出し、自車両と病院との間の距離と、救急車両と病院との間の距離との比較結果に応じて、救急車両が病院に到着するまでの走行経路を第2走行経路として演算し、第1走行経路と第2走行経路が交差する場合に、第1走行経路と第2走行経路が交差する地点を交差位置として特定し、交差位置から病院に至るまでの経路上のいずれかの地点に、自車両と救急車両の待ち合わせ位置を設定し、待ち合わせ位置に関する情報を、自車両及び救急車両に送信することで、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自車両及び救急車両それぞれの病院までの走行経路に基づいて、待ち合わせ位置が設定されるため、自車両及び救急車両の移動効率を向上させることができ、その結果、乗員の異常を検知した時点から乗員が病院に到着するまでの時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る車両管理システムの構成図である。
図2図2は、救急車両の特定方法の一例を説明するための図である。
図3図3は、第1走行経路の一例である。
図4図4は、第2走行経路の一例である。
図5図5は、交差地点の一例、及び待ち合わせ位置の候補の一例である。
図6図6は、停車スペースの特定方法の一例を説明するための図である。
図7図7は、待ち合わせ位置付近に停車スペースを特定できない場合において、対象車両を誘導する方法の一例である。
図8図8は、待ち合わせ位置付近に停車スペースを特定できない場合において、対象車両を誘導する方法の他の例である。
図9図9は、停車位置を修正する方法の一例を説明するための図である。
図10図10は、乗員に異常が発生してから、対象車両と救急車両が待ち合わせ位置に関する情報を受信するまでの車両管理システムの制御手順を示すフローチャートである。
図11図11は、対象車両が待ち合わせ位置付近に到着してから、救急車両が待ち合わせ位置に到着するまでの車両管理システムの制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
≪第1実施形態≫
以下、図面に基づいて、本発明の第1実施形態に係る車両管理システムについて説明する。本実施形態では、車両管理システムと車両管理方法を、車両の乗員の異常に起因して緊急事態が発生した場面に適用した場合を例に挙げて説明する。本実施形態における車両管理システム及び車両管理方法が管理する対象には、自車両及び救急車両が含まれる。なお、本実施形態において、緊急事態とは、救急車両で車両の乗員を病院まで搬送する必要性がある事態を示す。
【0011】
図1は、車両管理システム1を示す構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る車両管理システム1は、複数の車両に搭載された複数の車載システム100と、車両の外部に設けられた救急システム200とから構成される。図1では、一台の車両に搭載された車載システム100を示しているが、車両管理システム1は、車載システム100を複数備えた構成とすることができる。
【0012】
複数の車載システム100と救急システム200とは、通信回線を介して各種情報の授受が可能となっている。通信回線としては、例えば、携帯電話網、無線LAN網、DSRC(Dedicated Short Range Communications)網、及び電力線通信網などが挙げられる。
【0013】
車載システム100が搭載される車両としては、電動モータを駆動源として備える電気自動車、内燃機関を駆動源として備えるエンジン自動車、電動モータ及び内燃機関の両方を駆動源として備えるハイブリッド自動車を例示できる。なお、電動モータを駆動源とする電気自動車やハイブリッド自動車には、二次電池を電動モータの電源とするタイプや燃料電池を電動モータの電源とするタイプのものも含まれる。
【0014】
車載システム100は、図1に示すように、センサ群110、周囲検出装置120、ナビゲーション装置130、地図データベース140、異常検知センサ150、車載通信装置160、駆動制御装置170、車載コントローラ180を備える。これらの装置は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
【0015】
センサ群110は、車両の走行状態を検出する装置で構成されている。例えば、センサ群110としては、車速センサ、エンジン回転センサ、アクセル開度センサ、ブレーキ開度センサ、操舵角センサなどが挙げられる。車速センサは、ドライブシャフトなどの駆動系の回転速度を計測し、これに基づいて車両の走行速度を検出する。エンジン回転センサは、エンジン回転数を検出する。アクセル開度センサは、アクセルペダルの操作量を検出する。ブレーキ開度センサは、ブレーキペダルの操作量を検出する。操舵角センサは、ステアリングの操舵角を検出する。センサ群110の検出結果は、車載コントローラ180に出力される。これにより、車載コントローラ180は、自車両の走行状態に関する情報を取得する。
【0016】
周囲検出装置120は、車両の周辺に存在する対象物を検出する。例えば、周囲検出装置120としては、車載カメラ121、レーダー122が挙げられる。車載カメラ121は、車両の周辺を撮像する。車載カメラ121は、例えば、自車両の前方を撮像する前方カメラ、自車両の後方を撮像する後方カメラ、自車両の側方を撮像する側方カメラで構成される。レーダー122は、車両の周辺に存在する障害物を検出する。レーダー122は、例えば、自車両の前方に存在する障害物を検出する前方レーダー、自車両の後方に存在する障害物を検出する後方レーダー、自車両の側方に存在する障害物を検出する側方レーダーで構成される。レーダー122は、自車両から障害物までの距離及び自車両に対して障害物が位置する方向を検出する。なお、周囲検出装置120として、上述した車載カメラ121、レーダー122のうちいずれか1つを用いる構成としてもよいし、2種類以上を組み合わせる構成としてもよい。自車両を中心として全方位を検出できるように、周囲検出装置120を構成することが好ましい。
【0017】
周囲検出装置120が検出する対象としては、例えば、自転車、バイク、自動車、路上障害物、交通信号機、路面標示などが挙げられる。路面標示には、横断歩道、停止線、進行方向、車線境界線、中央線などの指示表示と、車両通行帯、車両通行区分、駐停車禁止、路側帯などの規制表示が含まれる。
【0018】
周囲検出装置120の検出結果は、車載コントローラ180に出力される。これにより、車載コントローラ180は、自車両の周囲の環境に関する情報を取得する。
【0019】
また、周囲検出装置120は、検出結果を分析し、自車両が停車可能なスペース(以降、停車スペースともいう)を特定する機能を備えていてもよい。例えば、周囲検出装置120は、自車両から路面標示までの距離及び路面標示が位置する方向、障害物等までの距離及び障害物が位置する方向から、自車両が駐車又は停車する広さがあるか否かの判定を行ってもよい。この場合、周囲検出装置120には、予め自車両の車幅、全長など自車両の大きさに関する情報が記憶されている。なお、停車スペースを特定する機能は、周囲検出装置120が備えることに限定されず、例えば、車載コントローラ180が当該機能を備えていてもよい。
【0020】
ナビゲーション装置130は、GPS131により検出された自車両の位置情報に基づいて、自車両の現在位置から目的地までの経路を示してドライバに誘導する。ナビゲーション装置130は、地図データベース140から地図情報を取得し、自車両の位置情報と目的地の位置情報から、自車両の走行経路を演算する。ナビゲーション装置130は、自車両の位置情報及び自車両の走行経路の情報を車載コントローラ180に出力する。自車両の走行経路には、実際に自車両が走行した経路及びこれから自車両が走行する予定の経路が含まれる。
【0021】
地図データベース140は、地図情報を格納している。地図情報は、道路情報と交通規則情報を含む。道路情報は、ノードと、ノード間を接続するリンクにより定義される。リンクは車線レベルで識別される。
【0022】
本実施形態の道路情報は、各道路リンクの識別情報ごとに、道路種別、道路幅、道路形状、直進の可否、進行の優先関係、追い越しの可否(隣接車線への進入の可否)、車線変更の可否その他の道路に関する情報を対応づけて記憶する。また、道路情報は、各道路リンクの識別情報ごとに、交差点の位置、交差点の進入方向、交差点の種別その他の交差点に関する情報を対応づけて記憶する。
【0023】
本実施形態の交通規則情報は、経路上における一時停止、駐車/停車禁止、徐行、制限速度、車線変更禁止など、車両が走行時に遵守すべき交通に関する規則である。各規則は、地点(緯度、経度)ごと、リンクごとに定義される。交通規則情報には、道路側に設けられた装置から取得する交通信号の情報を含めてもよい。なお、地図情報は道路情報や交通規則情報に限られず、地図における背景情報(河川、施設、鉄道、地名など)が含まれていてもよい。
【0024】
また、地図データベース140に記憶された地図情報は、自動運転に適した高精度地図情報でもよい。高精度地図情報は、外部との通信により取得される。高精度地図情報は、センサ群110を用いてリアルタイムで取得した情報に基づき生成されてもよい。
【0025】
本実施形態において自動運転とは、運転主体が運転者のみでない場合の運転を示すものとする。例えば、運転主体に運転者とともに、運転者が行う運転操作を支援する運転支援コントローラ(図示しない)が含まれている場合や、運転者に代わり運転操作を実行する車載コントローラ180が含まれている場合が該当する。なお、本実施形態では、車載コントローラ180を運転主体として説明する。車載コントローラ180による自動運転については後述する。
【0026】
異常検知センサ150は、自車両の乗員の異常を検知する。乗員とは、自車両に搭乗している人物を示しており、当該人物が座っている座席の種別(運転席、助手席、後部座席など)により区別されるものではない。異常検知センサ150としては、乗員の外観を撮像する車載カメラや乗員の体温を検知するサーモセンサ等が挙げられる。例えば、異常検知センサ150は、乗員に異常な量の発汗がある場合や、乗員の体温が平熱以上の場合、乗員が意識不明の場合、乗員に異常が発生したと検知する。そして、異常検知センサ150は、異常が発生したことを示す異常検知フラグと、検知した乗員の異常の内容(例えば、異常な発汗あり、体温が平熱以上など)を、異常検知情報として、車載コントローラ180に出力する。これにより、車載コントローラ180は、乗員に異常が発生したことと、異常の内容を取得することができる。なお、異常検知センサ150は、これらの機器や装置の一つで構成されることに限られず、これらの機器や装置を複数備えていてもよい。
【0027】
また、乗員のうち運転者の異常を検知する方法は、異常検知センサ150による検知方法に限られず、センサ群110の検出結果に基づいて車載コントローラ180が運転操作から異常を検知する方法であってもよい。例えば、ステアリング操作、アクセル操作、ブレーキ操作、方向指示器操作について、運転者に異常がない場合の一定の操作範囲を予め設けておく。そして、車載コントローラ180は、運転操作が操作範囲外の操作に該当する場合、運転者には異常が発生したと検知してもよい。この場合、車載コントローラ180は、異常検知センサ150を設けることなく、運転者の異常を検知することができる。
【0028】
また、乗員の異常を検知する方法は、装置等による検知だけでなく、乗員自らが異常を通知する方法であってもよい。例えば、車載システム100は、異常検知センサ150の代わりに、又はこれとともに、入力装置(図示しない)を備えていてもよい。入力装置は、例えば、乗員の手操作による入力が可能なダイヤルスイッチ、ディスプレイ画面上に配置されたタッチパネル、あるいは、乗員の音声による入力が可能なマイクなどの装置である。例えば、乗員が自身の体調に異常を感じた場合、乗員が入力装置に設けられた特定のスイッチ(異常を通知するためのスイッチなど)を押したり、タッチパネルのうち特定の部分(異常を通知するためのアイコンなど)に触れたりすることで、入力装置は、異常検知情報を、車載コントローラ180に出力する。これにより、車載コントローラ180は、乗員の異常を検知することができる。
【0029】
車載通信装置160は、救急システム200が備える通信装置210と相互に通信可能な装置である。車載通信装置160には、車載コントローラ180から、自車両の位置情報、周囲環境情報、及び乗員の異常検知情報が入力される。車載通信装置160は、車載コントローラ180から入力される情報を、通信装置210に送信する。また、車載通信装置160は、通信装置210から受信した待ち合わせ位置に関する情報を、車載コントローラ180に出力する。車載通信装置160が送受信するそれぞれの情報については後述する。
【0030】
駆動制御装置170は、自車両の走行を制御する。駆動制御装置170は、ブレーキ制御機構、アクセル制御機構、エンジン制御機構、及びHMI(ヒューマンインターフェイス)機器等を備えている。駆動制御装置170には、後述する車載コントローラ180から制御信号が入力される。駆動制御装置170は、車載コントローラ180の制御に応じて、駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては電動モータ動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と電動モータとのトルク配分も含む)、ブレーキ動作、及びステアリングアクチュエータの動作等を制御することで、自車両の自動運転を実行する。また駆動制御装置170は、車載コントローラ180からの制御信号に応じて、車両の各輪の制動量を制御することで自車両の移動方向を制御してもよい。なお、各機構の制御は、完全に自動で行われてもよいし、運転者の運転操作を支援する態様で行われてもよい。本実施形態では、各機構の制御を完全に自動で行うものとして説明する。各機構の制御は、運転者の介入操作により中断又は中止させることができる。駆動制御装置170による走行制御方法は、上記の制御方法に限られず、その他の周知の方法を用いることもできる。
【0031】
車載コントローラ180は、自車両の走行を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0032】
車載コントローラ180は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、情報取得機能、周辺認識機能、自動運転機能、緊急運転機能、を実現する。以降、各機能について説明する。
【0033】
情報取得機能について説明する。車載コントローラ180は、情報取得機能により、自車両の走行に関する走行情報、自車両の周囲の環境に関する周囲環境情報、自車両が走行している道路の交通規則に関する交通規則情報、及び自車両の位置情報を取得する。走行情報は、車速センサにより検出された自車両の車速情報、操舵角センサにより検出された自車両の操舵情報等を含んでいる。周囲環境情報は、車載カメラ121により撮像された自車両の周辺の撮像画像、レーダー122により検出された障害物に関する情報等を含んでいる。交通規則情報は、地図データベース140に格納された、自動運転に必要な、道路種別、道路形状、車線数、走行車線の法定速度の情報、及び交通規則の内容を含んでいる。自車両の位置情報は、周囲検出装置120により検出された自車両の現在の位置情報、及び自車両の走行経路を含んでいる。
【0034】
次に、周辺認識機能について説明する。車載コントローラ180は、周辺認識機能により、自車両の周辺の状態を認識する。具体的には、車載コントローラ180は、自車両の周辺に存在する障害物の有無、自車両に対して障害物が存在する方向、障害物までの距離を認識する。また、車載コントローラ180は、自車両の周辺にある停車スペースを特定する。例えば、車載コントローラ180は、自車両から路面標示までの距離及び路面標示が位置する方向、障害物等までの距離及び障害物が位置する方向から、自車両の周辺には自車両が停車可能な広さがあるか否かの判定を行う。これにより、車載コントローラ180は、例えば、自車両の周辺にある駐車場、道路の路肩、路側帯などを、駐車スペースとして特定することができる。
【0035】
次に、自動運転機能について説明する。車載コントローラ180は、自動運転機能により、自車両を走行経路に沿って走行させるために、自車両の目的地までの運転を自動的に実行する。例えば、乗員がナビゲーション装置130に対して自車両の目的地を設定すると、ナビゲーション装置130は、目的地までの走行経路を演算し、走行経路及び目的地の情報を、車載コントローラ180に出力する。車載コントローラ180は、地図データベース140の地図情報に基づいて、走行経路に沿って走行する際の自車両の基本車速(例えば、走行経路を走行する際の自車両の平均車速)を算出する。そして、車載コントローラ180は、周辺認識機能により認識された自車両の周辺の状態に基づいて、走行経路及び基本車速をベースにして、直近の自車両の目標経路及び目標車速を演算する。また、車載コントローラ180は、自車両の周辺の状況が変化すると、目標経路及び目標車速を逐次修正する。なお、周辺の状況変化としては、例えば、他車両との位置関係、障害物との位置関係、信号機の色の変化、車線数の増減などが挙げられる。
【0036】
車載コントローラ180は、目標経路及び目標車速に従って自車両を走行させるために、各駆動機構(上述したブレーキ制御機構、アクセル制御機構、エンジン制御機構など)を制御するための制御信号を生成する。例えば、車載コントローラ180は、操舵量、駆動量、制動量を生成する。車載コントローラ180は、生成した制御信号を、駆動制御装置170に出力する。なお、上述した自車両を自動的に運転させるための方法は、一例であって特に限定されるものではない。自車両を自動的に運転させるための技術は、本願出願時に知られた技術を適宜用いることができる。
【0037】
次に、緊急運転機能について説明する。車載コントローラ180は、緊急運転機能により、自車両を救急車両との待ち合わせ位置まで走行させるために、待ち合わせ位置までの運転を自動的に実行する。車載コントローラ180には、後述する救急システム200から待ち合わせ位置に関する情報が入力される。待ち合わせ位置に関する情報には、少なくとも、待ち合わせ位置の位置情報、待ち合わせ位置までの自車両の走行経路(以降、緊急走行経路とも称す)の情報が含まれている。待ち合わせ位置は、例えば、緯度及び経度で示される。また、待ち合わせ位置に関する情報には、その他にも、待ち合わせ位置の道路情報、救急車両が待ち合わせ位置に到着する予定時刻が含まれていてもよい。なお、待ち合わせ位置、待ち合わせ位置までの走行経路については後述する。
【0038】
車載コントローラ180は、救急システム200から待ち合わせ位置に関する情報が入力されると、自車両の運転を、自動運転機能による運転から、緊急運転機能による運転に切り替える。車載コントローラ180は、待ち合わせ位置及び緊急走行経路に基づいて、緊急走行経路に沿って走行する際の自車両の基本車速を算出する。そして、車載コントローラ180は、周辺認識機能により認識された自車両の周辺の状態に基づいて、緊急走行経路及び基本車速をベースにして、直近の自車両の目標経路及び目標車速を算出する。また、車載コントローラ180は、自車両の周辺の状態が変化すると、目標経路及び目標車速を逐次修正する。なお、車載コントローラ180は、緊急運転機能による運転を実行する場合には、自動運転機能による運転を実行する場合と異なり、自車両の車速が可能な限り遅くなるように、目標車速を算出する。これは、緊急運転機能が実行されている場合には、自車両の乗員に何らかの異常が発生しているため、自車両の走行の安全性を確保する、という観点に基づくものである。
【0039】
本実施形態では、緊急運転機能により目標経路及び目標車速を算出又は修正する方法と、自動運転機能により目標経路及び目標車速を算出又は修正する方法は同じものとする。このため、緊急運転機能による制御信号の生成方法は、自動運転機能による制御信号の生成方法と同様であるため、自動運転機能での説明を適宜援用する。
【0040】
また、車載コントローラ180は、待ち合わせ位置に関する情報に、ハザードランプの点滅に関する指示が含まれている場合、方向指示器の制御を実行する。例えば、車載コントローラ180は、ハザードランプの点滅指示が入力されると、自車両の左右に設けられた方向指示器が点滅するように、ハザードランプ点滅の制御信号を生成する。そして、車載コントローラ180は、ハザードランプ点滅の制御信号を、駆動制御装置170に出力して、自車両の方向指示器を点滅させる。これにより、自車両はハザードランプを点滅させながら、待ち合わせ位置まで走行することができる。
【0041】
また、車載コントローラ180は、待ち合わせ位置に関する情報の他にも、後述するサーバ220からの遠隔指示を受信した場合、遠隔指示に従って車両が走行するように、車両の運転を制御する。サーバ220からの遠隔指示としては、特定の停車スペースで停車する停車指示、停車スペースに停車している際に前進又は後進指示する停車位置変更指示、病院までの走行経路に沿って車両を走行させる走行指示などが挙げられる。それぞれ指示については後述する。遠隔指示に、ハザードランプの点滅に関する指示が含まれている場合、上述の制御と同様に、車載コントローラ180は、ハザードランプの点滅の指示に従い、自車両の方向指示器を点滅させる。なお、遠隔指示に、停車後のハザードランプの点滅指示が含まれている場合、車載コントローラ180は、車両が停車した後も、自車両の方向指示器を点滅させる。これにより、自車両は、待ち合わせ位置又はその周辺の停車スペースに、ハザードランプを点滅させたまま停車することができる。
【0042】
次に、救急システム200について説明する。本実施形態の救急システム200は、自車両の乗員の異常に起因した緊急事態の際に、自車両の乗員を救急車両で効率良く病院まで搬送するためのシステムである。図1に示すように、救急システム200は、通信装置210、サーバ220、データベース230を備えている。
【0043】
通信装置210は、電話回線網などを介して、車載システム100が備える車載通信装置160と通信可能な装置である。通信装置210は、車載通信装置160から受信した情報を、サーバ220に出力するとともに、サーバ220から入力される情報を、車載通信装置160に送信する。車載通信装置160から受信した情報には、自車両の位置情報、乗員の異常検知情報が含まれている。サーバ220から入力される情報については後述する。
【0044】
また、通信装置210は、電話回線網等を介して、救急車両(図示しない)が備える車載通信装置とも通信することができる。通信装置210は、救急車両の車載通信装置から受信した情報を、サーバ220に出力するとともに、サーバ220から入力される情報を、救急車両の車載通信装置に送信する。救急車両の車載通信装置から受信した情報には、救急車両の位置情報が含まれている。サーバ220から入力される情報については後述する。
【0045】
さらに、通信装置210は、車両(自車両及び救急車両を含む)以外とも通信することもできる。例えば、通信装置210は、道路交通情報通信システムVICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System、以下同じ。)と通信することも可能であり、サーバ220は、VICSからの情報をもとに現在の交通状況を把握することができる。通信装置210は、VICSから受信した交通情報を、サーバ220に出力する。交通情報としては、例えば、渋滞する道路、渋滞の距離、通行止め区間等の情報が挙げられる。
【0046】
データベース230は、救急車両及び病院に関する情報を格納している。救急車両に関する情報としては、救急車両が待機する場所(以降、待機所とも称す)の情報、待機所ごとに最大待機可能な救急車両の台数の情報などが挙げられる。病院に関する情報としては、病院の位置情報、各病院の対応可能な専門分野(例えば、○○科など)の情報などが挙げられる。
【0047】
サーバ220は、乗員に異常があった車両及び救急車両を管理するための装置であり、CPU、ROM、RAMで構成されている。サーバ220は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、車両情報取得機能、異常判断機能、対象車両特定機能、救急車両情報取得機能、救急車両特定機能、第1走行経路演算機能、第2走行経路演算機能、待ち合わせ位置設定機能、緊急走行経路演算機能、通知機能、停車スペース誘導機能、及び停車位置修正機能、を実現する。以降、各機能について説明する。なお、車両情報取得機能、異常判断機能、対象車両特定機能、救急車両情報取得機能、救急車両特定機能、第1走行経路演算機能、第2走行経路演算機能、待ち合わせ位置設定機能、緊急走行経路演算機能、及び通知機能は、車両の乗員に異常が発生した際に、乗員に異常が発生した車両と救急車両が待ち合わせをする場面で実行される。また、停車スペース誘導機能、及び停車位置修正機能は、待ち合わせ位置付近において、遠隔指示により車両の運転を制御する場面で実行される。
【0048】
車両情報取得機能について説明する。サーバ220は、車両情報取得機能により、通信装置210を介して、車両から、車両の位置情報、周囲環境情報、及び乗員の異常検知情報を取得する。サーバ220は、一台の車両に限られず、複数の車両それぞれから、これらの情報を取得することができる。
【0049】
次に、異常判断機能について説明する。サーバ220は、異常判断機能により、車両の乗員に異常が発生したか否かを判断する。例えば、サーバ220は、車載通信装置160から、通信装置210を介して、乗員の異常検知情報が入力されると、異常検知フラグにより、異常検知情報を受信した車両について、乗員に異常が発生したと判断する。また、サーバ220は、異常判断機能により、異常検知情報に含まれる異常の内容から、どのような異常が発生したかを認識することができる。乗員の異常としては、例えば、車酔い等の病院での診断は不要とされる症状、頭痛、悪寒、発熱、意識不明の重体等の病院での診断が必要とされる症状が挙げられる。
【0050】
次に、対象車両特定機能について説明する。サーバ220は、対象車両特定機能により、乗員に異常が発生したと判断した車両を、対象車両として特定する。そして、サーバ220は、対象車両の位置情報から、対象車両が位置する地点を特定する。サーバ220は、対象車両の位置情報の更新に応じて、対象車両が位置する地点を逐次更新する。
【0051】
次に、救急車両情報取得機能について説明する。サーバ220は、救急車両情報取得機能により、通信装置210を介して、救急車両から救急車両の位置情報を取得する。本実施形態において、救急車両とは、人命救助や火災対応など、何らかの理由で急を要する業務に利用される自動車である緊急自動車の一種である。特に、救急車両は、人命救助の場面で利用される、いわゆる救急車である。なお、本実施形態において、救急車両が属する機関は、特に限定されるものではない。
【0052】
次に、救急車両特定機能について説明する。サーバ220は、救急車両特定機能により、出動要請する救急車両を特定する。例えば、サーバ220は、データベース230に格納されている救急車両の情報から、対象車両の周辺において待機中の救急車両を抽出する。例えば、サーバ220は、対象車両から所定の範囲内の距離で救急車両が待機している場合、この救急車両を対象車両の周辺で待機中の救急車両として抽出する。そして、サーバ220は、抽出した救急車両を、出動要請する救急車両として特定する。
【0053】
また、サーバ220は、異なる地点において待機中の複数の救急車両を抽出した場合、対象車両の位置までの移動効率、又は病院までの移動効率に基づいて、複数の救急車両の中から、出動要請する救急車両を特定する。例えば、サーバ220は、待機所から病院に至るまでの道路、待機所から対象車両の現在位置に至るまでの道路、又は病院の周辺の道路について、交通渋滞情報を取得する。そして、サーバ220は、複数の救急車両の中から、交通渋滞を避けて病院に到着することが可能な救急車両、又は交通渋滞を避けて対象車両の現在位置に到着することが可能な救急車両を、出動要請する救急車両として特定する。なお、交通渋滞を避けるように走行できるか否かだけでなく、右折及び左折が少ない回数で病院又は対象車両の現在位置まで到着することが可能な救急車両を、出動要請する救急車両として特定してもよい。
【0054】
図2は、救急車両の特定方法の一例について説明するための図である。図2は、車両V1の乗員がサーバ220に対して異常を通知した場面を示す。図2において、サーバ220は車両V1を対象車両V1として特定している。対象車両V1の周辺には、待機所A、Bが存在するため、サーバ220は、複数の救急車両の中から、待機所Aで待機中の救急車両A1と、待機所Bで待機中の救急車両B1を、出動要請する救急車両の候補として抽出する。そして、サーバ220は、2つの救急車両のうち、移動効率がより高い方の救急車両を、出動要請する救急車両を特定する。例えば、サーバ220は、対象車両V1の現在位置に到着するまでに救急車両A1が走行する道路の交通情報と、対象車両V1の現在位置に到着するまでに救急車両B1が走行する道路の交通情報とを比較する。図2において、対象車両V1の現在位置へ到着するまでに、救急車両B1の方が、救急車両A1よりも渋滞中の道路をより長く走行する場合、サーバ220は、救急車両B1の移動効率は救急車両A1の移動効率よりも低いと判断し、救急車両A1を出動要請する救急車両として特定する。
【0055】
次に、第1走行経路演算機能について説明する。サーバ220は、対象車両及び病院の位置情報に基づいて、対象車両が病院に到着するまでの一又は複数の走行経路を、第1走行経路として演算する。例えば、サーバ220は、データベース230に格納されている病院のデータから、対象車両が最短距離で到着することが可能な病院を特定する。この際に、サーバ220は、交通渋滞情報から、対象車両から最短距離に位置する病院までの道路に渋滞があると判定した場合、渋滞していない道路を走行して到着可能な病院であって、対象車両から最短距離ではないが比較的短い距離に位置する病院を特定してもよい。そして、サーバ220は、対象車両の目的地を、乗員により設定された目的地から、特定した病院へ変更する。サーバ220は、対象車両が特定した病院に到着するまでの走行経路を、第1走行経路として演算する。
【0056】
次に、第2走行経路演算機能について説明する。サーバ220は、対象車両及び病院の位置情報に基づいて、救急車両が病院に到着するまでの一又は複数の走行経路を、第2走行経路として演算する。なお、第2走行経路を演算する際に対象となる救急車両は、救急車両特定機能により特定した救急車両である。
【0057】
サーバ220は、救急車両の位置、対象車両の位置、及び病院の位置の関係性に応じた第2走行経路を演算する。例えば、救急車両と病院の間の距離が対象車両と病院の間の距離よりも長い場合、すなわち、病院に対して対象車両が救急車両よりも近い地点に位置する場合、サーバ220は、救急車両が最短時間で病院に到着することが可能な走行経路を第2走行経路として演算する。これは、例えば、救急車両が迂回した走行経路に沿って病院に到着した場合、病院への到着は対象車両よりも遅れると予測され、救急車両で乗員を搬送しても、乗員の異常を検知した時点から乗員が病院に到着するまでの所要時間は長くなる、という観点に基づくものである。
【0058】
反対に、例えば、救急車両と病院の間の距離が対象車両と病院の間の距離よりも短い場合、すなわち、病院に対して救急車両が対象車両よりも近い地点に位置する場合、サーバ220は、救急車両が迂回して病院に到着することが可能な走行経路を第2走行経路として演算する。この際に、サーバ220は、迂回後に第1走行経路に沿うような走行経路を第2走行経路として演算してもよい。これは、例えば、病院に対して救急車両の方が対象車両よりも近いにもかかわらず、救急車両が最短時間で到着可能な走行経路に沿って病院に到着した場合、第1走行経路と第2走行経路が交差する地点が存在せず、対象車両及び救急車両の移動効率が良い地点を、対象車両と救急車両の待ち合わせ位置として設定することができない、という観点に基づくものである。
【0059】
次に、待ち合わせ位置設定機能について説明する。サーバ220は、待ち合わせ位置設定機能により、対象車両と救急車両が待ち合わせするための位置を待ち合わせ位置として設定する。待ち合わせ位置は、救急車両により病院に搬送するために、異常がある乗員を救急車両に乗せるための位置である。サーバ220は、第1走行経路及び第2走行経路に基づいて、待ち合わせ位置を設定する。
【0060】
本実施形態に係るサーバ220による待ち合わせ位置の設定方法について説明する。まず、サーバ220は、第1走行経路と第2走行経路が交差する地点を交差地点として特定する。この際に、第1走行経路又は第2走行経路として演算された走行経路が複数存在する場合、サーバ220は、第1走行経路と第2走行経路の全ての組み合わせについて、交差地点を特定する。
【0061】
次に、サーバ220は、交差地点から病院に至る経路上の何れかの地点に、待ち合わせ位置を設定する。サーバ220は、交差地点から病院に至る経路を待ち合わせ対象経路として設定する。そして、例えば、サーバ220は、待ち合わせ対象経路上において、救急車両が病院に到着するまでの所要時間が短くなるような位置を、待ち合わせ位置として設定する。また、例えば、サーバ220は、待ち合わせ対象経路上において、対象車両が待ち合わせ位置に到着するまでの所要時間が短くなるような位置を、待ち合わせ位置として設定する。また、例えば、サーバ220は、待ち合わせ位置に到着するまでに行われる対象車両の右折及び左折の回数が少なくなるような位置を、待ち合わせ位置として設定する。また、例えば、サーバ220は、対象車両、救急車両、及び病院の周辺道路における交通渋滞情報を取得し、交通渋滞情報に基づいて、対象車両及び救急車両が渋滞中の道路を回避して走行できるような位置を、待ち合わせ位置として設定する。
【0062】
また、例えば、サーバ220は、乗員の異常の内容(異常の症状)ごとに設けられた待ち合わせ位置の設定基準に従って、待ち合わせ位置を設定してもよい。例えば、サーバ220は、乗員の異常の症状がどのカテゴリに属するかを判別し、判別したカテゴリに紐付く待ち合わせ位置の設定基準に従って、待ち合わせ位置を設定してもよい。待ち合わせ位置の設定基準の一例としては、乗員の異常の症状が比較的軽度の場合には、ある程度右折及び左折の回数が多くても、救急車両と早く待ち合わせできる位置に、待ち合わせ位置を設定する基準が挙げられる。この場合、対象車両が進行方向の反転や、別の道路へ移動により、多少乗員に負荷がかかっても、救急車両での搬送時間が短くなる地点に、待ち合わせ位置を設定することができる。また、設定基準の他の例としては、乗員の異常の症状が比較的重度の場合、右折及び左折の回数を少なくし、対象車両が待ち合わせ位置に到着するまでの所要時間が短くなるような位置に、待ち合わせ位置を設定する基準が挙げられる。この場合、乗員に負荷がかからないように、例えば、現在位置から比較的近い地点に、待ち合わせ位置を設定することができる。
【0063】
また、例えば、サーバ220は、救急車両がサイレンを鳴らして走行する際の超法規的措置を考慮して、対象経路上において病院までの距離が最も遠い地点である交差地点を、待ち合わせ位置として設定してもよい。これは、救急車両の場合、人命救助や災害・事故などの解決のために、通常遵守しなければならない交通規則の一部が免除されるため、救急車両が待ち合わせ位置から病院に到着するまでの所要時間は、普通車両が待ち合わせ位置から病院に到着するまでの所要時間よりも短くすることができる、という観点に基づくものである。例えば、救急車両は、渋滞中の道路を走行する場合であっても、一般車両の一時的な待避により道が開けるため、一般車両が渋滞中の道路を走行するよりも速い速度で走行することができる。なお、待ち合わせ位置から病院に到着するまでの所要時間だけでなく、救急車両の場合、待機所から待ち合わせ位置に到着するまでの所要時間も短くすることができる。
【0064】
待ち合わせ位置としては、道路の路肩、路側帯が挙げられる。また、本実施形態では、道路に面する位置に駐車場が設けられている場合、サーバ220は、当該駐車場も待ち合わせ位置の対象とする。また、サーバ220は、交差点内、交差点の周辺、交差点以外の横断歩道を避けるように、待ち合わせ位置を設定する。
【0065】
図3図5を用いて、待ち合わせ位置の設定の具体例について説明する。図3は、サーバ220により演算された第1走行経路の一例である。また、図4は、サーバ220により演算された第2走行経路の一例である。また、図5は、サーバ220により特定された交差地点の一例、及びサーバ220により設定される可能性のある待ち合わせ位置の候補の一例である。なお、図3図5は、サーバ220による処理を説明するための図であり、それぞれの図は同じ場面を示している。図3図5では、サーバ220は、乗員が異常を通知した車両V2を対象車両V2として特定し、待機所Cで待機中の救急車両C1を出動要請する救急車両として特定している。
【0066】
図3に示すように、サーバ220は、対象車両V2が病院に到着するまでの走行経路R1~走行経路R3を、第1走行経路として演算する。また、図4に示すように、サーバ220は、救急車両C1が病院に到着するまでの走行経路R4及び走行経路R5を、第2走行経路として演算する。そして、図5に示すように、サーバ220は、図3に示す第1走行経路(走行経路R1~R3)と、図4に示す第2走行経路(走行経路R4、R5)が交差する位置を、交差位置P1、2として特定する。交差位置P1は、図3に示す走行経路R1又は走行経路R2と、図4に示す走行経路R4又は走行経路R5とが交差する地点である。また、交差位置P2は、図3に示す走行経路R3と、図4に示す走行経路R5とが交差する地点である。
【0067】
サーバ220は、複数の交差位置が存在する場合、対象車両から近い地点にある交差位置を特定し、当該交差位置から病院までの経路上の何れかの地点に、待ち合わせ位置を設定する。図5の例の場合、サーバ220は、2つの交差位置P1、P2のうち、交差位置P1から病院に至るまでの経路R6、R7上の何れかの地点に、待ち合わせ位置を設定する。これにより、異常が発生した乗員を対象車両で移動させる距離を短くすることができる。
【0068】
また、サーバ220は、道路交通状況について、経路R6に含まれる区間eと経路R7に含まれる区間dとを比較し、区間eの方が区間dに比べて交通量が少ないと判定し、区間eの何れかの地点に、待ち合わせ位置を設定する。これにより、区間a、区間bのように、救急車両C1が迂回して待ち合わせ位置に到着しなければならない区間に、待ち合わせ位置を設定することを防ぐことができる。また、区間cのように、救急車両C1が中央分離帯を回り込む必要がある区間に、待ち合わせ位置を設定することを防ぐことができる。また、区間dのように、交通量が多い区間に、待ち合わせ位置を設定することを防ぐことができる。
【0069】
また、サーバ220は、待ち合わせ位置設定機能により、道路幅を考慮して、待ち合わせ位置を設定する。例えば、交差位置から病院至るまでに複数の道路が存在する場合、サーバ220は、複数の道路のうち、道路幅が最も広い道路を特定し、特定した道路上に待ち合わせ位置を設定する。これにより、救急車両がスムーズに待ち合わせ位置まで到着することができ、救急車両の待ち合わせ位置までの移動効率を向上させることができる。
【0070】
また、サーバ220は、待ち合わせ位置を設定するよりも、対象車両及び救急車両が病院に向けて出発することを優先させる。例えば、サーバ220は、待ち合わせ位置を設定するよりも前に、通信装置210を介して、第1走行経路に関する情報を、対象車両に送信する。これにより、対象車両の車載コントローラ180は、第1走行経路に沿って対象車両を病院まで走行させることができる。また、サーバ220は、待ち合わせ位置を設定するよりも前に、通信装置210を介して、第2走行経路に関する情報を、救急車両に送信する。これにより、救急車両の車載コントローラ180、又は救急車両の運転者は、第2走行経路に沿って救急車両を病院まで走行させることができる。
【0071】
サーバ220は、対象車両又は救急車両の位置情報を取得することで、対象車両又は救急車両のうち少なくとも何れか一方が病院への走行を開始したことを認識すると、待ち合わせ位置を設定する処理を実行する。待ち合わせ位置は、交差位置から病院に至る経路上の何れか地点であるため、病院までの走行経路である第1走行経路又は第2走行経路上の何れかに設定される可能性が高い。待ち合わせ位置が第1走行経路又は第2走行経路上の何れかの地点に設定された場合、待ち合わせ位置を設定した時点で、少なくとも対象車両又は救急車両のうち何れか一方は、病院への走行を開始しているため、対象車両又は救急車両の待ち合わせ位置までの移動効率を向上させることができる。
【0072】
次に、緊急走行経路演算機能について説明する。サーバ220は、緊急走行経路演算機能により、対象車両が待ち合わせ位置に到着するまでの走行経路を、緊急走行経路として演算する。この際に、サーバ220は、目的地に到着するまでに複数の車線が存在する道路がある場合、対象車両が最も路肩側に位置する車線を走行することを優先させて、緊急走行経路を演算する。言い換えると、サーバ220は、追い越し車線などが含まれないように、緊急走行経路を演算する。これは、待ち合わせ位置までの対象車両の走行の安全性を確保する、という観点に基づくものである。また、サーバ220は、緊急走行経路演算機能により、救急車両が待ち合わせ位置に到着するまでの走行経路を演算する。この際に、サーバ220は、目的地に到着するまでに複数の車線が存在する道路がある場合、救急車両が可能な限り待ち合わせ位置に到着することが可能な車線を選択して、待ち合わせ位置までの走行経路を演算する。例えば、サーバ220は、救急車両が可能な限り追い越し車線を走行するように、待ち合わせ位置までの走行経路を演算する。これは、待ち合わせ位置への到着所要時間を可能な限り短くする、とういう観点に基づくものである。
【0073】
次に、通知機能について説明する。サーバ220は、通知機能により、待ち合わせ位置に関する情報を、対象車両及び出動要請する救急車両に送信する。待ち合わせ位置に関する情報は、少なくとも、待ち合わせ位置の位置情報と、緊急走行経路及び救急車両が待ち合わせ位置に到着するまでの走行経路の情報を含んでいる。サーバ220は、通信装置210を介して、待ち合わせ位置に関する情報を、対象車両及び救急車両に送信する。これにより、対象車両に搭載された車載コントローラ180は、救急車両との待ち合わせのために、対象車両を待ち合わせ位置まで走行させることができる。また、救急車両に搭載された車載コントローラ180、又は救急車両の運転者は、対象車両との待ち合わせのために、救急車両を待ち合わせ位置まで走行させることができる。なお、サーバ220は、救急車両に対しては、待ち合わせに関する情報と合わせて、出動要請の情報も送信する。
【0074】
また、サーバ220は、対象車両が直接病院へ移動した方が救急車両による病院搬送よりも移動効率が高いと判断した場合、待ち合わせに関する情報を、対象車両及び救急車両に送信しない。この場合、サーバ220は、対象車両に直接病院へ向かわせるために、第1走行経路に関する情報を、対象車両に送信する。これは、対象車両が直接病院に向かう際の移動効率よりも低いにもかかわらず、乗員を救急車両により病院まで搬送することは、乗員の異常を検知した時点から乗員が病院に到着するまでの時間が長くなるという観点に基づくものである。
【0075】
例えば、サーバ220は、対象車両が第1走行経路に沿って病院に到着するまでに要する時間を第1時間として演算する。演算の際に用いられる対象車両の車速は、車載コントローラ180の緊急運転機能により算出される目標車速、すなわち、車載コントローラ180の自動運転機能により算出される目標車速よりも遅い車速を想定する。また、サーバ220は、対象車両が緊急走行経路に沿って待ち合わせ位置に到着するまでに要する時間と、救急車両が待ち合わせ位置から病院に到着するまでに要する時間を足し合わせた時間を第2時間として演算する。そして、サーバ220は、第1時間と第2時間を比較し、第1時間が第2時間よりも早い場合、救急車両により病院へ搬送する際の移動効率が、対象車両が直接病院まで走行する際の移動効率よりも低いと判定する。なお、サーバ220は、道路の渋滞状況を考慮して、第1時間及び第2時間を演算する。また、サーバ220は、待ち合わせ位置設定の処理と同様に、救急車両がサイレンを鳴らして走行する際の超法規的措置を考慮して、第2時間を演算してもよい。
【0076】
次に、停車スペース誘導機能について説明する。サーバ220は、停車スペース誘導機能により、待ち合わせ位置付近において対象車両を停車させるための停車スペースを特定し、対象車両を停車スペースへ誘導する。例えば、サーバ220は、待ち合わせ位置の手前まで走行してきた対象車両から、周囲環境情報を取得する。サーバ220は、対象車両の周辺の状況から、対象車両が停車するための停車スペースを特定する。サーバ220は、特定した停車スペースの位置情報を、対象車両に送信する。これにより、対象車両の車載コントローラ180は、停車スペースの位置を認識し、対象車両を停車スペースまで移動させることができる。
【0077】
図6は、停車スペースの特定方法の一例を説明するための図である。図6は、図3図5に示す区間eを拡大した図である。図6において、サーバ220は、区間eに待ち合わせ位置M1を設定している。図6は、対象車両V2が待ち合わせ位置M1の手前まで走行してきた場面を示す。
【0078】
図6に示すように、サーバ220は、対象車両V2から送信される周囲環境情報に基づいて、スペースS1~スペースS3には少なくとも対象車両V2が停車可能な広さがあると判定し、スペースS1~スペースS3を、停車スペースの候補として特定する。次に、サーバ220は、スペースS1~スペースS3から、対象車両V2だけでなく救急車両も停車可能な停車スペースを選択する。例えば、サーバ220は、スペースS1~スペースS3の中から、対象車両V2の全長、救急車両の全長、及び所定の長さを足し合わせた長さに最も近い長さを有するスペースを選択する。対象車両V2の全長、救急車両の全長は、予め定められ長さとする。また、所定の長さは、実験的に求められた長さである。
【0079】
図6の例において、スペースS3はスペースS2よりも広いが、スペースS3には、対象車両V2及び救急車両以外の他車両も停車できる広さがあるとする。この場合、サーバ220は、スペースS1~スペースS3の中から、スペースS2を選択する。これは、対象車両V2が救急車両を待つためにスペースS3で停車している間に、他車両がスペースS3に停車することにより、救急車両が停車可能なスペースがなくなる恐れがある、という観点に基づくものである。このような観点に基づいて、サーバ220は、スペースS3よりも狭いスペースS2を、対象車両V2と救急車両の適切な待ち合わせ位置として選択する。
【0080】
また、図7は、待ち合わせ位置付近に停車スペースを特定できない場合において、対象車両を誘導する方法の一例である。図7は、図3図5に示す区間e付近を拡大した図である。また、図7では、図6と同様に、サーバ220は待ち合わせ位置M1を設定している。ただし、図7では、図6と比べて、待ち合わせ位置M1付近には、路肩に駐車する駐車車両の存在により停車スペースがない点で異なっている。また、図7において、複数の対象車両V2は、サーバ220からの遠隔指示に従って、時間の経過とともに移動している様子を示している。
【0081】
図7の例の場合、サーバ220は、待ち合わせ位置M1付近において、停車スペースがないと判断し、区間e以降において停車スペースを特定する。例えば、サーバ220は、病院に至る経路R6(図5参照)の情報を、対象車両V2に送信する。これにより、対象車両V2は、緊急運転機能により、病院へ向かう経路である経路R6に沿って走行する。
【0082】
また、図8は、待ち合わせ位置付近に停車スペースを特定できない場合において、対象車両を誘導する方法の他の例である。図8は、図7と同様に、図3図5に示す区間e付近を拡大した図である。図8は、図7と比べて、区間eに施設Fが備える駐車場Pがある点で異なる。なお、駐車場Pは、対象車両V2が走行する車線に隣接して設けられた駐車場である。
【0083】
図8の例の場合、サーバ220は、待ち合わせ位置M1付近において、停車スペースがないと判断し、施設Fのための駐車場Pを停車スペースとして特定する。そして、サーバ220は、対象車両V2を駐車場Pまで移動させるために、駐車場P又は施設Fの位置情報を、対象車両V2に送信する。これにより、対象車両V2は、緊急運転機能により、駐車場Pまで走行する。
【0084】
次に、停車位置修正機能について説明する。サーバ220は、停車位置修正機能により、救急車両が待ち合わせ位置付近に到着した際に、救急車両を対象車両に近接して停車できるように、対象車両の停車位置を修正する。
【0085】
図9は、停車位置を修正する方法の一例を説明するための図である。図9(A)は、対象車両Vが停車スペースSに停車しており、救急車両D1が停車スペースS付近に到着した場面を示す。図9(B)は、救急車両D1を停車スペースSに進入させるために、対象車両Vが停車スペースS内を移動した場面を示す。図9(B)は、図9(A)の場面から、所定の時間だけ経過した場面である。
【0086】
図9(A)に示すように、サーバ220は、救急車両D1が停車スペースS付近に到着するまでは、対象車両Vを停車スペースの中央付近に停車させる。これにより、停車スペースSに他車両が進入することを防ぎ、救急車両が停車するスペースを確保することができる。そして、救急車両D1が停車スペースS付近に到着すると、図9(B)に示すように、サーバ220は、救急車両D1を停車スペースSに進入させるために、対象車両Vの停車位置を、中央付近から所定の距離だけ前進した位置に修正する。これにより、救急車両D1は、停車スペースSに進入して対象車両Vの後方に停車することができる。なお、対象車両Vの停車位置を、中央付近から所定の距離だけ後進した位置に修正してもよい。所定の距離は、停車スペースの広さや、対象車両と駐車車両との車間距離の応じて定まる距離である。
【0087】
続いて、乗員に異常が発生してから、対象車両と救急車両が待ち合わせ位置に関する情報を受信するまでの本実施形態の車両管理システムの制御手順について説明する。図10は、乗員に異常が発生してから、対象車両と救急車両が待ち合わせ位置に関する情報を受信するまでの本実施形態の車両管理システムの制御手順を示すフローチャートである。なお、図10のフローチャートは、サーバ220が実行する処理を示す。
【0088】
ステップS1では、サーバ220は、通信装置210を介して、車両から、車両の位置情報、周囲環境情報、及び乗員の異常検知情報を取得する。サーバ220は、所定の周期毎に、複数の車両から、これらの情報を取得する。
【0089】
ステップS2では、サーバ220は、ステップS1にて取得した情報に基づいて、車両の乗員に異常が発生したか否かを判断する。具体的には、サーバ220は、乗員の異常検知情報に含まれる異常検知フラグの有無に応じて、異常が発生したか否かを判断する。いずれかの車両において、乗員に異常が発生したと判断した場合、ステップS3に進み、いずれの車両にも、乗員に異常は発生していないと判断した場合、ステップS1に戻る。
【0090】
ステップS3では、サーバ220は、ステップS2にて乗員に異常が発生したと判断した車両を、対象車両として特定する。
【0091】
ステップS4では、サーバ220は、通信装置210を介して、救急車両から、救急車両の位置情報を取得する。サーバ220は、データベース230に情報が格納されている救急車を対象にして、複数の救急車両から、救急車両の位置情報を取得する。なお、本実施形態では、サーバ220は、病院とは異なる場所に待機中の救急車両を対象にして、位置情報を取得するが、病院で待機中の救急車両や、走行中の救急車両を対象にして、位置情報を取得してもよい。
【0092】
ステップS5では、サーバ220は、ステップS4にて取得した救急車両の位置情報と、対象車両の位置情報に基づいて、出動要請する救急車両を特定する。例えば、サーバ220は、対象車両を中心として所定の範囲内に待機している救急車両を、出動要請する救急車両として特定する。また、複数の救急車両が対象車両の周辺に待機していた場合、サーバ220は、対象車両の位置までの移動効率、又は病院までの移動効率に基づいて、複数の救急車両の中から、出動要請する救急車両を特定する。
【0093】
ステップS6では、サーバ220は、対象車両及び病院の位置情報に基づいて、対象車両が病院に到着するまでの一又は複数の走行経路を、第1走行経路として演算する。この際に、サーバ220は、対象車両の病院までの走行の安全性の確保を優先して、対象車両が走行する車線を選択し、第1走行経路を演算する。
【0094】
ステップS7では、サーバ220は、対象車両及び病院の位置情報に基づいて、ステップS5にて特定した救急車両が病院に到着するまでの一又は複数の走行経路を、第2走行経路として演算する。例えば、救急車両が対象車両よりも病院に近い場合、サーバ220は、迂回して第1走行経路に合流するような走行経路を、第2走行経路として演算する。また、例えば、対象車両が救急車両よりも病院に近い場合、サーバ220は、最短時間で病院に到着可能な走行経路を、第2走行経路として演算する。この際に、サーバ220は、救急車両の病院までの到着所要時間の短縮を優先して、救急車両が走行する車線を選択し、第2走行経路を演算する。
【0095】
ステップS8では、サーバ220は、対象車両と救急車両が待ち合わせするための位置を、待ち合わせ位置として設定する。サーバ220は、ステップS6にて演算した第1走行経路と、ステップS7にて演算した第2走行経路に基づいて、待ち合わせ位置を設定する。例えば、サーバ220は、第1走行経路と第2走行経路が交差する地点を交差地点として特定し、交差地点から病院に至る経路上の何れかの地点に、待ち合わせ位置を設定する。なお、サーバ220は、道路の路肩又は路側帯を、待ち合わせ位置に設定する。
【0096】
ステップS9では、サーバ220は、対象車両がステップS8にて設定した待ち合わせ位置に到着するまでの走行経路を、緊急走行経路として演算する。この際に、サーバ220は、対象車両の待ち合わせ位置までの走行の安全性の確保を優先して、対象車両が走行する車線を選択し、緊急走行経路を演算する。
【0097】
ステップS10では、サーバ220は、通信装置210を介して、待ち合わせ位置に関する情報を、対象車両及び救急車両に送信する。待ち合わせ位置に関する情報は、少なくとも、ステップS8にて設定した待ち合わせ位置の位置情報と、ステップS9にて演算した緊急走行経路を含む。ステップS10の処理が終了すると、サーバ220は、乗員に異常が発生してから、対象車両と救急車両が待ち合わせ位置に関する情報を受信するまでの処理を終了する。
【0098】
続いて、対象車両が待ち合わせ位置付近に到着してから、救急車両が待ち合わせ位置に到着するまでの本実施形態の車両管理システムの制御手順について説明する。図11は、対象車両が待ち合わせ位置付近に到着してから、救急車両が待ち合わせ位置に到着するまでの本実施形態の車両管理システムの制御手順を示すフローチャートである。なお、図11のフローチャートは、サーバ220が実行する処理を示す。
【0099】
ステップS11では、サーバ220は、通信装置210を介して、対象車両から、車両の位置情報、周囲環境情報を取得する。
【0100】
ステップS12では、サーバ220は、ステップS11にて取得した情報に基づいて、対象車両が待ち合わせ付近に到着したか否かを判定する。待ち合わせ位置付近とは、緊急走行経路において、待ち合わせ位置よりも所定の距離だけ手前の地点である。なお、所定の距離は、実験的に求められ値である。対象車両が待ち合わせ位置付近に到着したと判定した場合、ステップS13へ進み、対象車両が待ち合わせ位置付近に到着していないと判定した場合、ステップS11へ戻る。
【0101】
ステップS13では、サーバ220は、ステップS11にて取得した周囲環境情報に基づいて、対象車両が停車可能な停車スペースがあるか否かを判断する。例えば、サーバ220は、予め記憶してある対象車両の全長と救急車両の全長に関する情報から、対象車両の全長、救急車両の全長、及び所定の長さを足し合わせた長さを有するスペースを、停車スペースに設定する。そして、サーバ220は、道路の路肩側に停車スペースがあるか否かを判断する。なお、サーバ220は、交差点内、交差点の周辺、交差点以外にある横断歩道上を、停車スペースの対象外とする。停車スペースがあると判断した場合、ステップS14に進み、停車スペースがないと判断した場合、ステップS18へ進む。
【0102】
ステップS14では、サーバ220は、対象車両をステップS13にて特定した停車スペースへ誘導する。具体的には、サーバ220は、停車スペースの位置情報と、停車スペースでの停車指示を、対象車両に送信する。停車指示には、停車スペースの中央付近の位置情報、及び停車スペースの中央付近で停車するような指示情報が含まれる。
【0103】
ステップS15では、サーバ220は、通信装置210を介して、救急車両の位置情報を取得する。ステップS16では、サーバ220は、ステップS15にて取得した救急車両の位置情報に基づいて、救急車両が待ち合わせ位置付近に到着したか否かを判断する。救急車両が待ち合わせ位置付近に到着したと判断した場合、ステップS17へ進み、救急車両が待ち合わせ位置付近に到着していないと判断した場合、ステップS15へ戻る。
【0104】
ステップS17では、サーバ220は、対象車両の停車位置を修正する指示を、対象車両に送信する。例えば、サーバ220は、停車スペース内の中央付近に停車している対象車両に対して、所定の距離だけ前進又は後進するような指示を、対象車両に送信する。ステップS17の処理が終了すると、サーバ220は、対象車両が待ち合わせ位置付近に到着してから、救急車両が待ち合わせ位置に到着するまでの処理を終了する。
【0105】
ステップS13にて停車スペースがないと判断した場合、ステップS18へ進む。ステップS18では、サーバ220は、病院へ走行する指示を、対象車両に送信する。例えば、サーバ220は、図10に示すステップS6にて演算した第1走行経路の情報を、対象車両へ送信する。
【0106】
ステップS19では、サーバ220は、走行中の対象車両から周囲環境情報を取得し、停車位置を特定する。そして、サーバ220は、通信装置210を介して、特定した停車位置に対象車両を誘導する。
【0107】
ステップS20では、サーバ220は、ステップS19にて特定した停車位置を、待ち合わせ位置とし、待ち合わせ位置の情報を更新する。そして、サーバ220は、通信装置210を介して、更新した待ち合わせ位置の情報を、救急車両へ送信する。ステップS20の処理が終了すると、ステップS15へ進む。
【0108】
このように、本実施形態では、自車両の乗員の異常に起因した緊急事態の際に、サーバ220は、病院までの搬送時間を短縮することが可能な待ち合わせ位置であって、救急車両との待ち合わせ位置を設定することができる。一般的に、車両同士の待ち合わせを行う技術において、双方の車両にとって、移動効率の良い地点を待ち合わせ位置として設定する処理は、比較的容易である。一般車両同士(交通規則を遵守しなければならない車両同士)の待ち合わせでは、待ち合わせの対象には、交通規則の遵守という前提が設けられている。この前提があるため、移動距離、道路形状(車線数、道路種別)、道路の交通状況(渋滞状況、道路規制など)を考慮することで、移動効率の良い待ち合わせ位置を設定することができる。言い換えると、待ち合わせの対象には、同じ条件が課されているともいえる。
【0109】
しかし、救急車両と一般車両との待ち合わせの場合、待ち合わせ対象の一方(救急車両)には、交通規則の遵守という前提が設けられていない。言い換えると、待ち合わせの対象には、同じ条件が課されていない。このため、一般車両同士の待ち合わせと同様に、移動距離等を考慮しただけでは、移動効率の良い待ち合わせ位置を設定することは難しい。例えば、一般車両同士の待ち合わせの場合、渋滞中の道路を走行した先にある待ち合わせ位置は、移動効率が良い地点とは言えない。しかし、例えば、救急車両と一般車両との待ち合わせの場合、救急車両は渋滞中の道路においても道が開けるため、渋滞中の道路を走行した先にある待ち合わせ位置が、移動効率が良い地点となる可能性がある。一般的な車両同士の待ち合わせ技術において、緊急車両の一種である救急車両特有の特性を考慮することは難しい。
【0110】
これに対して、本実施形態に係るサーバ220は、道路交通状況、病院までの距離、待ち合わせ位置までの距離だけなく、サイレンを鳴らして走行する救急車両の超法規的措置を考慮して、救急車両による病院への搬送に適した地点に待ち合わせ位置を設定することもできる。これにより、待ち合わせの対象に、交通規則の一部が免除される車両が含まれている場合でも、移動効率の良い地点に待ち合わせ位置を設定することができる。
【0111】
また、一般的な待ち合わせ技術では、乗員の異常の有無及び異常の内容と、待ち合わせ位置の設定方法とは関連付けられておらず、乗員に異常が発生した場合に、乗員にかかる負荷を軽減させつつ、救急車両との待ち合わせに適した地点を、待ち合わせ位置として設定するのは難しい。これに対して、本実施形態に係るサーバ220は、乗員の異常の内容(異常の症状)ごとに設けられた待ち合わせ位置の設定基準に従って、待ち合わせ位置をすることができる。これにより、乗員に異常が発生した場合であっても、救急車両と待ち合わせするにあたり、乗員にかかる負荷を軽減させつつ、救急車両との待ち合わせに適した地点に、待ち合わせ位置を設定することができる。
【0112】
以上のように、本実施形態に係る車両管理システムは、サーバ220を用いて、乗員の異常に起因した緊急事態の際に、車両及び救急車両を管理する。サーバ220は、通信装置210を介して、乗員に異常が発生した車両である対象車両から、対象車両の位置情報を取得し、救急車両から、救急車両の位置情報を取得し、対象車両の目的地を病院に設定し、対象車両が病院に到着するまでの走行経路を第1走行経路として演算し、対象車両及び病院の位置情報に基づいて、救急車両が病院に到着するまでの走行経路を第2走行経路として演算し、第1走行経路と第2走行経路が交差する地点を交差位置として特定し、交差位置から病院に至る経路上の何れかの地点に、対象車両と救急車両の待ち合わせ位置を設定し、待ち合わせ位置に関する情報を、対象車両及び救急車両に送信する。これにより、対象車両及び救急車両それぞれの病院までの走行経路に基づいて設定された待ち合わせ位置にて、対象車両と救急車両が待ち合わせすることができ、自車両及び救急車両の移動効率を向上させることができる。その結果、救急車両によりスムーズに病院に搬送することができ、乗員の異常を検知した時点から乗員が病院に到着するまでの時間の短縮を図ることができる。
【0113】
また、本実施形態では、待ち合わせ位置に関する情報は、少なくとも、待ち合わせ位置の位置情報と、対象車両の緊急走行経路及び救急車両が待ち合わせ位置に到着するまでの走行経路の情報を含んでいる。これにより、対象車両の車載コントローラ180は、緊急運転機能により、本来の目的とは異なる待ち合わせ位置まで、対象車両を走行させることができる。また、救急車両の車載コントローラ180、又は救急車両の運転者は、待ち合わせ位置に、救急車両を到着させることができる。
【0114】
さらに、本実施形態では、サーバ220は、救急車両が病院に到着するまでの所要時間が短くなるように、待ち合わせ位置を設定する。これにより、待ち合わせ位置を出発してから病院に到着するまでの所要時間が短くなり、乗員の異常を検知した時点から乗員が病院に到着するまでの時間の短縮を図ることができる。
【0115】
加えて、本実施形態では、サーバ220は、対象車両が待ち合わせ位置に到着するまでの所要時間が短くなるように、待ち合わせ位置を設定する。これにより、対象車両が出発してから待ち合わせ位置に到着するまでの所要時間が短くなり、乗員の異常を検知した時点から乗員が病院に到着するまでの時間の短縮を図ることができる。
【0116】
また、本実施形態では、サーバ220は、対象車両及び救急車両のうち少なくとも何れか一方が病院への走行を開始した時点よりも後に、待ち合わせ位置を設定する。これにより、待ち合わせ位置を設定した時点で、対象車両及び救急車両のうち少なくも何れか一方は、設定された待ち合わせ位置の方面へ移動しており、乗員の異常を検知した時点から救急車両との待ち合わせまでの時間の短縮を図ることができる。
【0117】
さらに、本実施形態では、サーバ220は、交差位置から病院に至るまでの複数の道路のうち、道路幅が最も広い道路上に待ち合わせ位置を設定する。これにより、待ち合わせ位置において、例えば、救急車両の隊員が乗員をスムーズに救急車両に乗せることができ、救護活動の効率の向上を図ることができる。
【0118】
加えて、本実施形態では、サーバ220は、待ち合わせ位置の到着までに行われる対象車両の右折及び左折の回数が少なくなるように、待ち合わせ位置を設定する。これにより、可能な限り直進で待ち合わせ位置に到着することができ、待ち合わせ位置到着までの安全性の向上を図ることができる。
【0119】
また、本実施形態では、サーバ220は、対象車両、救急車両、及び病院の周辺道路における渋滞情報を取得し、渋滞情報に基づいて、対象車両及び救急車両が渋滞中の道路を回避して走行するように、待ち合わせ位置を設定する。これにより、対象車両及び救急車両の待ち合わせ位置到着までの所要時間を可能な限り短縮することができる。
【0120】
さらに、本実施形態では、サーバ220は、通信装置210を介して、対象車両の周囲環境情報を取得し、周囲環境情報に基づいて、設定された待ち合わせ位置を修正する。これにより、例えば、待ち合わせ位置に駐車車両が存在しても、待ち合わせ位置周辺の停車スペースにて、対象車両と救急車両が待ち合わせをすることができる。
【0121】
加えて、本実施形態では、サーバ220は、周囲環境に基づいて、待ち合わせ位置付近において、対象車両及び救急車両が停車することが可能な停車スペースを特定し、通信装置210を介して、対象車両を停車スペースの中央付近で停車させるための指示を、対象車両に送信し、救急車両が待ち合わせ位置付近に到着した場合、前進又は後進により対象車両を停車スペース内で移動させるための指示を、対象車両に送信する。これにより、救急車両の到着までに他車両が停車スペースに進入することを防ぐとともに、救急車両が到着した際には、救急車両を停車スペースへ停車させることができる。
【0122】
また、本実施形態では、サーバ220は、対象車両が第1走行経路に沿って走行して病院に到着するまでに要する第1時間と、対象車両が待ち合わせ位置に到着するまでに要する時間と救急車両が待ち合わせ位置から病院に到着するまでに要する時間を足し合わせた第2時間とを比較し、第1時間が第2時間よりも早い場合、救急車両による搬送する際の移動効率が、対象車両が直接病院に向かう際の移動効率よりも低いと判断し、対象車両を第1走行経路に沿って走行させるための指示を、対象車両に送信し、待ち合わせ位置に関する情報を、救急車両に送信しない。これにより、救急車両を利用することでかえって病院に到着する時間が遅れることを防ぐことができ、その結果、乗員の異常を検知した時点から乗員が病院に到着するまでの時間の短縮を図ることができる。
【0123】
本実施形態では、乗員に異常が発生したか否かの判断について、サーバ220が行う構成を例に挙げて説明したが、以下のような変形例に係る構成であってもよい。例えば、車載コントローラ180が異常の発生の有無の判断を行い、異常の内容から、サーバ220からの遠隔指示の必要性を判断してもよい。そして、車載コントローラ180は、車載通信装置160を介して、遠隔指示の必要性に関する情報を、サーバ220に送信してもよい。サーバ220は、通信装置210を介して、遠隔指示の必要性に関する情報を受信し、異常の症状に応じて、救急車両との待ち合わせ位置を設定してもよい。
【0124】
例えば、車載コントローラ180は、異常検知センサ150から入力される異常検知情報に基づいて、乗員に異常が発生したか否かを判断する。車載コントローラ180は、乗員に異常が発生したと判断した場合、異常の内容から、乗員を救急車両で病院に搬送するか否かを判断する。例えば、乗員の異常が微熱症状に該当した場合、車載コントローラ180は、病院への搬送を不要と判断する。また、例えば、乗員の異常が意識不明の症状に該当した場合、車載コントローラ180は、病院への搬送を必要と判断する。そして、車載コントローラ180は、車載通信装置160を介して、サーバ220による遠隔指示を必要とする情報を、サーバ220に送信する。
【0125】
サーバ220は、車載コントローラ180から送信された、遠隔指示を必要とする情報に基づいて、乗員をどの程度走行させてよいかを判断したうえで、救急車両との待ち合わせ位置を設定する。例えば、サーバ220は、乗員の異常が意識不明の症状に該当するため、車両を停車させた方がよいと判断し、対象車両の周辺の停車スペース(例えば、道路の路肩、所定の施設の駐車場)へ、対象車両を移動させるための指示を、対象車両へ送信する。
【0126】
このように変形例に係るサーバ220は、対象車両から、遠隔指示の必要性に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて、道路の路肩又は所定の駐車場を待ち合わせ位置として設定する。これにより、遠隔指示が確実に必要な場合に、対象車両に遠隔指示することができ、サーバによる誤判断によって、不要に遠隔指示を行うリスクを低減することができる。
【0127】
また、変形例に係る車両は、乗員の異常を検出する異常検知センサ150と、サーバ220と通信可能な車載通信装置160と、サーバ220からの遠隔指示に基づき、車両の運転を制御する車載コントローラ180と、を備えている。車載コントローラ180は、異常検知センサ150により乗員の異常を検出した場合、遠隔指示の必要性の有無を判断し、遠隔指示が必要と判断した場合、車載通信装置160を介して、遠隔指示の必要性に関する情報を、サーバ220に送信する。これにより、車両ごとに、遠隔指示が必要な判断基準を変更することができ、サーバ220は、乗員の年齢、体調等に応じて適切に遠隔指示をすることができる。
【0128】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係る車両管理装置について説明する。本実施形態では、車載システムが、上述した実施形態に係るサーバ220(図1参照)が備える機能を備えている。すなわち、本実施形態では、車載システムは、サーバを介することなく、出動要請する救急車両の特定、待ち合わせ位置の設定、救急車両へ待ち合わせ位置に関する情報を送信などの処理を実行する。
【0129】
車載システム(図示しない)は、車両管理装置(図示しない)を備えている。この車両管理装置は、車両の乗員の異常に起因した緊急事態の際に、救急車両を管理する。本実施形態に係る車両管理装置が管理する対象は、救急車両である。
【0130】
車両管理装置は、救急車両と通信可能な車載装置と、自車両の乗員の異常に起因した緊急事態の際に、救急車両を管理する車載コントローラと、を備えている。車載通信装置は、上述した実施形態における車載通信装置160(図1参照)に相当する。本実施形態に車載装置についての説明は、上述した実施形態における車載通信装置160の説明を適宜援用する。また、車載コントローラは、上述した実施形態における車載コントローラ180(図1参照)が備える機能と、上述した実施形態におけるサーバ220が備える機能とを備えている。車載コントローラが備える機能についての説明は、上述した実施形態における車載コントローラ180の説明と、上述した実施形態におけるサーバ220の説明を適宜援用する。
【0131】
なお、上述した実施形態に係る車両管理システムでは、乗員に異常が発生したと判断された車両を対象車両として特定していたが、本実施形態では、車両管理装置が乗員の異常発生の有無を判断するため、本実施形態の車載コントローラは、対象車両特定機能を備えていない。また、上述した実施形態に係る車両管理システムでは、サーバ220は、サイレンを鳴らして走行する際の救急車両への超法規的措置を考慮して、第1走行経路及び第2走行経路の交差点から病院に至る経路上の何れかの地点に、待ち合わせ位置を設定したが、本実施形態に係る車載コントローラは、救急車両への超法規的措置に関する情報を有していないため、この点を考慮することなく、待ち合わせ位置を設定する。
【0132】
以上のように、本実施形態では、車載コントローラは、車載通信装置を介して、救急車両から、救急車両の位置情報を取得し、自車両の目的地を病院に設定し、自車両が病院に到着するまでの走行経路を第1走行経路として演算し、対象車両及び病院の位置情報に基づいて、救急車両が病院に到着するまでの走行経路を第2走行経路として演算し、第1走行経路と第2走行経路が交差する地点を交差位置として特定し、交差位置から病院に至るまでの経路上の何れかの地点に、自車両と救急車両の待ち合わせ位置を設定する。そして、車載コントローラは、車載通信装置を介して、待ち合わせ位置に関する情報を、救急車両に送信する。これにより、自車両及び救急車両それぞれの病院までの走行経路に基づいて設定された待ち合わせ位置にて、自車両と救急車両が待ち合わせすることができ、自車両及び救急車両の移動効率を向上させることができる。その結果、救急車両によりスムーズに病院に搬送することができ、乗員の異常を検知した時点から乗員が病院に到着するまでの時間の短縮を図ることができる。
【0133】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0134】
例えば、上述した第1実施形態では、対象車両が待ち合わせ位置まで走行する際に、車載コントローラ180は、緊急運転機能により、車速制御や操舵制御などの運転制御を行う構成を例に挙げて説明したが、待ち合わせ位置までの運転制御は、サーバ220が行ってもよい。例えば、サーバ220は、対象車両から送信される位置情報及び周囲環境情報に基づいて、対象車両の各制御機構の制御信号を生成し、対象車両に運転制御に関する制御信号を送信してもよい。
【0135】
例えば、本明細書では、本発明に係る車両管理システムを、車両管理システム1を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書では、本発明に係るサーバを、サーバ220を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書では、本発明に係る通信装置を、通信装置210を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0136】
1…車両管理システム
100…車載システム
110…センサ群
120…周囲検出装置
121…車載カメラ
122…レーダー
130…ナビゲーション装置
131…GPS
140…地図データベース
150…異常検知センサ
160…車載通信装置
170…駆動制御装置
180…車載コントローラ
200…救急システム
210…通信装置
220…サーバ
230…データベース
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