(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】放射線検出器及び放射線診断装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/17 20060101AFI20231010BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20231010BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20231010BHJP
H04N 5/32 20230101ALI20231010BHJP
【FI】
G01T1/17 F
A61B6/03 350H
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G01T1/20 F
H04N5/32
(21)【出願番号】P 2019048267
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2022-01-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】西島 輝
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-013422(JP,A)
【文献】特開2007-221368(JP,A)
【文献】特開2012-178825(JP,A)
【文献】特開2016-010064(JP,A)
【文献】特開2016-112175(JP,A)
【文献】米国特許第05838372(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 - 1/16
G01T 1/167- 7/12
A61B 6/00 - 6/14
H04N 5/30 - 5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射放射線に応じた電気信号を出力する光センサ部と、
前記光センサ部に接続され、制御信号に従うタイミングで前記電気信号を読み出す読出回路と、
前記読出回路の読み出しタイミングを制御する読出制御部と、
前記制御信号の波形が変化したとき、前記制御信号を補正する補正部と、
前記光センサ部に接続されていないダミー回路と、
を具備し、
前記光センサ部は、複数の放射線検出素子と、前記複数の放射線検出素子にそれぞれ接続され、スイッチ信号に基づいて駆動する複数の読出スイッチとを有し、
前記読出回路は、前記複数の読出スイッチに接続されており、前記制御信号に従うタイミングで前記複数の放射線検出素子から前記電気信号を順番に読み出し、
前記補正部は、前記ダミー回路から出力された前記制御信号の波形が変化したとき、前記制御信号を補正する、
放射線検出器。
【請求項2】
前記読出制御部は、前記複数の放射線検出素子の読出タイミングと電荷積分時間とを制御する第1の読出信号を前記制御信号として出力し、
前記読出回路は、前記複数の読出スイッチにそれぞれ接続され、前記第1の読出信号に基づいて、前記読出タイミングと前記電荷積分時間とを規定する前記スイッチ信号を前記制御信号として出力する複数のスイッチ駆動回路を有する、
請求項
1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記読出回路は、クロック信号を出力するクロックと、クロック信号に基づいて前記複数の放射線検出素子の読出タイミングと電荷積分時間とを制御する第2の読出信号を前記制御信号として出力する遅延回路とをさらに有し、
前記複数のスイッチ駆動回路の各々は、前記第2の読出信号にさらに基づいて前記スイッチ信号を出力する、
請求項
2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記補正部は、前記スイッチ信号又は前記第1の読出信号の波形が変化したとき、前記制御信号を補正する、請求項
2又は
3に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記補正部は、前記クロック信号又は前記第2の読出信号の波形が変化したとき、前記制御信号を補正する、請求項
3に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記読出制御部は、前記複数の放射線検出素子の読出タイミング及び電荷積分時間を制御する第1の読出信号を前記制御信号として前記ダミー回路へ出力し、
前記ダミー回路は、前記第1の読出信号に基づいて、前記スイッチ信号を前記制御信号として前記補正部へ出力する、
請求項
1に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記ダミー回路は、前記入射放射線の強度分布に応じた位置に配置されている、
請求項
1又は
6に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記ダミー回路は、ウェッジ及び被検体を通過した前記入射放射線の強度が所定値以上である前記複数の放射線検出素子に接続された前記読出回路とともに配置されている、請求項
7に記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記補正部は、前記制御信号の波形情報に基づいて、前記制御信号の波形変化を判定する判定部をさらに有し、
前記制御信号は、パルス波であり、
前記判定部は、前記制御信号の第1の波高値を超えているパルス幅が第1のパルス幅より小さいとき、前記制御信号の波形が変化したと判定する、
請求項1乃至
8のうち何れか1項に記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記補正部は、前記制御信号の波形情報に基づいて、前記制御信号の波形変化を判定する判定部をさらに有し、
前記制御信号は、パルス波であり、
前記判定部は、前記パルス波の立ち上がりの遅延時間が第1の遅延時間より大きいとき、前記制御信号の波形が変化したと判定する、
請求項1乃至
8のうち何れか1項に記載の放射線検出器。
【請求項11】
前記補正部は、スイングレベル又はドライブ電流の値を変更することにより、前記制御信号を補正する、請求項1乃至
10のうち何れか1項に記載の放射線検出器。
【請求項12】
請求項1に記載の放射線検出器と、
前記電気信号に基づいて画像データを生成する画像生成部と
を具備する放射線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検出器及び放射線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータ断層撮影装置のX線検出器において、半導体回路が用いられている。このような半導体回路は、X線に暴露され得る環境で用いられている。半導体回路は、X線の被曝により劣化する。半導体回路がX線の被曝により劣化すると、信号の読み出しに関する制御信号もまた劣化する。
【0003】
半導体回路は、例えば、耐放射線半導体プロセスを用いて製造されたり、X線から遮蔽された領域に配置されたりしている。しかし、遮蔽領域の大きさ及び位置には制限があり、X線検出器の内部のレイアウトの自由度が制限されたりする。さらに、X線検出器へ入射したX線により生じた散乱線は、遮蔽領域にも入射し得る。このため、半導体回路へのX線の入射を無くすことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-221368号公報
【文献】特開昭62-59472号公報
【文献】特開平8-274598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする課題は、放射線で劣化した半導体回路の動作を補償することができる放射線検出器及び放射線診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る放射線検出器は、光センサ部、読出回路、読出制御部及び補正部を備える。光センサ部は、入射放射線に応じた電気信号を出力する。読出回路は、前記光センサ部に接続され、制御信号に従うタイミングで前記電気信号を読み出す。読出制御部は、前記読出回路の読み出しタイミングを制御する。補正部は、前記制御信号の波形が変化したとき、前記制御信号を補正する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1のX線検出器の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2の読出回路の配置の一例について説明するための図である。
【
図4】
図4は、
図2の判定回路の動作の一例について説明するための図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5のダミー回路の配置の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る放射線検出器及び放射線診断装置を説明する。
【0009】
本実施形態に係る放射線検出器は、X線やガンマ線等の任意の放射線を検出する検出器に適用可能である。本実施形態に係る放射線診断装置は、X線コンピュータ断層撮影装置やX線診断装置、核医学診断装置に適用可能である。以下、本実施形態に係る放射線診断装置は、X線コンピュータ断層撮影装置であるとする。本実施形態に係る放射線検出器は、X線コンピュータ断層撮影装置により搭載されるX線検出器であるとする。
【0010】
X線コンピュータ断層撮影装置(CT装置)には、第3世代CT、第4世代CT等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本実施形態へ適用可能である。ここで、第3世代CTは、X線管と検出器とが一体として被検体の周囲を回転するRotate/Rotate-Typeである。第4世代CTは、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管のみが被検体の周囲を回転するStationary/Rotate-Typeである。
【0011】
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1の構成を示す図である。X線コンピュータ断層撮影装置1は、X線管11から被検体Pに対してX線を照射し、照射されたX線をX線検出器12で検出する。X線コンピュータ断層撮影装置1は、X線検出器12からの出力に基づいて被検体Pに関するCT画像を生成する。
【0012】
図1に示すように、X線コンピュータ断層撮影装置1は、架台10、寝台30及びコンソール40を有する。なお、
図1では説明の都合上、架台10が複数描画されている。架台10は、被検体PをX線CT撮影するための構成を有するスキャン装置である。寝台30は、X線CT撮影の対象となる被検体Pを載置し、被検体Pを位置決めするための搬送装置である。コンソール40は、架台10を制御するコンピュータである。例えば、架台10及び寝台30はCT検査室に設置され、コンソール40はCT検査室に隣接する制御室に設置される。架台10、寝台30及びコンソール40は互いに通信可能に有線または無線で接続されている。なお、コンソール40は、必ずしも制御室に設置されなくてもよい。例えば、コンソール40は、架台10及び寝台30とともに同一の部屋に設置されてもよい。また、コンソール40が架台10に組み込まれてもよい。
【0013】
図1に示すように、架台10は、X線管11、X線検出器12、回転フレーム13、X線高電圧装置14、制御装置15、ウェッジ16、コリメータ17及びデータ収集回路(DAS:Data Acquisition System)18を有する。
【0014】
X線管11は、X線を被検体Pに照射する。具体的には、X線管11は、熱電子を発生する陰極と、陰極から飛翔する熱電子を受けてX線を発生する陽極と、陰極と陽極とを保持する真空管とを含む。X線管11は、高圧ケーブルを介してX線高電圧装置14に接続されている。陰極と陽極との間には、X線高電圧装置14により管電圧が印加される。管電圧の印加により陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔する。陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔することにより管電流が流れる。X線高電圧装置14からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子が飛翔し、熱電子が陽極に衝突することによりX線が発生される。例えば、X線管11には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0015】
なお、X線を発生させるハードウェアはX線管11に限られない。例えば、X線管11に代えて、第5世代方式を用いてX線を発生させることにしても構わない。第5世代方式は、電子銃から発生した電子ビームを集束させるフォーカスコイルと、電磁偏向させる偏向コイルと、被検体Pの半周を囲い偏向した電子ビームが衝突することによってX線を発生させるターゲットリングとを含む。
【0016】
X線検出器12は、X線管11から照射され被検体Pを通過したX線を検出し、検出されたX線の線量に対応した電気信号をDAS18に出力する。X線検出器12は、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向)に複数配列された構造を有する。X線検出器12は、例えば、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは、入射X線量に応じた光量の光を出力する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射面側に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドは、コリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光の光量に応じた電気信号に変換する。光センサとしては、例えば、フォトダイオードが用いられる。
【0017】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを回転軸(Z軸)回りに回転可能に支持する円環状のフレームである。具体的には、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持する。回転フレーム13は、固定フレーム(図示せず)に回転軸回りに回転可能に支持される。制御装置15により回転フレーム13が回転軸回りに回転することによりX線管11とX線検出器12とを回転軸回りに回転させる。回転フレーム13は、制御装置15の駆動機構からの動力を受けて回転軸回りに一定の角速度で回転する。回転フレーム13の開口部19には、画像視野(FOV)が設定される。
【0018】
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し床面に対し水平である軸方向をX軸方向、Z軸方向に直交し床面に対し垂直である軸方向をY軸方向と定義する。
【0019】
X線高電圧装置14は、高電圧発生装置及びX線制御装置を有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧及びX線管11に供給するフィラメント電流を発生する。X線制御装置は、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行う。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。X線高電圧装置14は、架台10内の回転フレーム13に設けられてもよいし、架台10内の固定フレーム(図示しない)に設けられても構わない。
【0020】
ウェッジ16は、被検体Pに照射されるX線の線量を調節する。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線の線量が予め定められた分布になるようにX線を減衰する。例えば、ウェッジ16としては、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)等のアルミニウム等の金属板が用いられる。
【0021】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を限定する。コリメータ17は、X線を遮蔽する複数の鉛板をスライド可能に支持し、複数の鉛板により形成されるスリットの形態を調節する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。
【0022】
DAS18は、X線検出器12により検出されたX線の線量に応じた電気信号をX線検出器12から読み出す。DAS18は、読み出した電気信号を増幅し、ビュー期間に亘り電気信号を積分することにより当該ビュー期間に亘るX線の線量に応じたデジタル値を有する検出データを収集する。検出データは、投影データと呼ばれる。DAS18は、例えば、投影データを生成可能な回路素子を搭載した特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)により実現される。投影データは、非接触データ伝送装置等を介してコンソール40に伝送される。
【0023】
制御装置15は、コンソール40の処理回路44のシステム制御機能441に従いX線CT撮影を実行するためにX線高電圧装置14やDAS18を制御する。制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)あるいはMPU(Micro Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。処理回路は、ハードウェア資源として、CPU等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。また、制御装置15は、ASICやフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)により実現されてもよい。また、制御装置15は、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)又は単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されてもよい。制御装置15は、コンソール40若しくは架台10に取り付けられた、後述する入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台10及び寝台30の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台10をチルトさせる制御、及び寝台30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台10をチルトさせる制御は、架台10に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。なお、制御装置15は架台10に設けられてもよいし、コンソール40に設けられても構わない。
【0024】
寝台30は、基台31、支持フレーム32、天板33及び寝台駆動装置34を備える。基台31は、床面に設置される。基台31は、支持フレーム32を、床面に対して垂直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体である。支持フレーム32は、基台31の上部に設けられるフレームである。支持フレーム32は、天板33を中心軸(Z軸)に沿ってスライド可能に支持する。天板33は、被検体Pが載置される柔軟性を有する板である。
【0025】
寝台駆動装置34は、寝台30の筐体内に収容される。寝台駆動装置34は、被検体Pが載置された支持フレーム32と天板33とを移動させるための動力を発生するモータ又はアクチュエータである。寝台駆動装置34は、コンソール40等による制御に従い作動する。
【0026】
コンソール40は、メモリ41、ディスプレイ42、入力インターフェース43及び処理回路44を有する。メモリ41とディスプレイ42と入力インターフェース43と処理回路44との間のデータ通信は、バス(BUS)を介して行われる。なお、コンソール40は架台10とは別体として説明するが、架台10にコンソール40又はコンソール40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0027】
メモリ41は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ41は、例えば、投影データや再構成画像データを記憶する。メモリ41は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体であってもよい。メモリ41は、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ41の保存領域は、X線コンピュータ断層撮影装置1内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。
【0028】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。ディスプレイ42としては、種々の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。例えばディスプレイ42として、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)又はプラズマディスプレイが使用可能である。また、ディスプレイ42は、架台10に設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0029】
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。入力インターフェース43としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜、使用可能となっている。なお、本実施形態において、入力インターフェース43は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。また、入力インターフェース43は、架台10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0030】
処理回路44は、入力インターフェース43から出力される入力操作の電気信号に応じてX線コンピュータ断層撮影装置1全体の動作を制御する。処理回路44は、X線検出器12から出力された電気信号に基づいて画像データを生成する。処理回路44は、画像生成部の一例である。例えば、処理回路44は、ハードウェア資源として、CPUやMPU、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路44は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、システム制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、画像処理機能444、表示制御機能445等を実行する。なお、各機能441~445は単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能441~445を実現するものとしても構わない。
【0031】
システム制御機能441において処理回路44は、X線CT撮影を行うためX線高電圧装置14と制御装置15とDAS18とを制御する。
【0032】
前処理機能442において処理回路44は、DAS18から出力された投影データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施す。
【0033】
再構成処理機能443において処理回路44は、前処理機能442による前処理後の投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行い、CT画像データを生成する。
【0034】
画像処理機能444において処理回路44は、再構成処理機能443によって生成されたCT画像データを、任意断面の断面画像データや任意視点方向のレンダリング画像データに変換する。変換は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて行われる。例えば、処理回路44は、当該CT画像データにボリュームレンダリングや、サーフェスレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planar Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して、任意視点方向のレンダリング画像データを生成する。なお、任意視点方向のレンダリング画像データの生成は再構成処理機能443が直接行っても構わない。
【0035】
表示制御機能445において処理回路44は、画像処理機能444により生成された各種画像データに基づいて、画像をディスプレイ42に表示させる。ディスプレイ42に表示させる画像は、CT画像データに基づくCT画像、任意断面の断面画像データに基づく断面画像、任意視点方向のレンダリング画像データに基づく任意視点方向のレンダリング画像等を含む。
【0036】
なお、コンソール40は、単一のコンソールにて複数の機能を実行するものとして説明したが、複数の機能を別々のコンソールが実行することにしても構わない。例えば、前処理機能442、再構成処理機能443等の処理回路44の機能を分散して有しても構わない。
【0037】
なお、処理回路44は、コンソール40に含まれる場合に限らず、複数の医用画像診断装置にて取得された検出データに対する処理を一括して行う統合サーバに含まれてもよい。
【0038】
なお、後処理は、コンソール40又は外部のワークステーションのどちらで実施することにしても構わない。また、コンソール40とワークステーションの両方で同時に処理することにしても構わない。
【0039】
なお、本実施形態に係る技術は、一管球型のX線コンピュータ断層撮影装置にも、X線管と検出器との複数のペアを回転リングに搭載した、いわゆる多管球型のX線コンピュータ断層撮影装置にも適用可能である。
【0040】
次に、本実施形態に係るX線検出器12の構成について説明する。
【0041】
図2は、
図1のX線検出器12の構成の一例を示す図である。
図3は、
図2の読出回路123の配置の一例について説明するための図である。
図2のX線検出器12は、列単位で逐次的に信号収集を行う逐次収集型の検出器である。なお、全列について同時に信号収集を行う同時収集型の検出器であっても、本技術は適用可能である。
【0042】
図2に示すように、X線検出器12は、光センサ部121、読出回路123及び制御回路125を有する。具体的には、X線検出器12は、図示しない複数のX線検出器モジュールを有する。複数のX線検出器モジュールは、チャネル方向にタイリングされている。各々のX線検出器モジュールには、光センサ部121、読出回路123及び制御回路125が設けられている。なお、制御回路125は、複数のX線検出器モジュールごとに設けられていてもよい。また、
図3に示すように、X線検出器12は、グリッド129をさらに備える。
【0043】
光センサ部121は、例えばシンチレータアレイ及び光センサアレイを含む。シンチレータアレイは、光センサアレイのX線入射面側に配置される。光センサ部121は、入射X線に応じた電気信号を出力する。電気信号の出力は、光センサ部121に入力された制御信号に基づいて行われる。
図2に示すように、光センサ部121は、X線検出素子121a及び読出スイッチ121bを有する。X線検出素子121a及び読出スイッチ121bは、チャネル方向及び列方向に関して2次元状に配列されている。
【0044】
X線検出素子121aは、放射線検出素子の一例である。光センサ部121は、複数のX線検出素子121aが配列された構造を有する。
図3に示すように、複数のX線検出素子121aの各々は、シンチレータ121aa及びフォトダイオード121abを含む。つまり、光センサ部121において、複数のシンチレータ121aa及び複数のフォトダイオード121abは、それぞれチャネル方向及び列方向に関して2次元状に配列されていると表現できる。また、複数のシンチレータ121aaは、複数のフォトダイオード121abのX線入射面側に配置されていると表現できる。
図2及び
図3には、複数のX線検出素子121aのうち一部のX線検出素子121aが模式的に示されている。
図2に示すように、複数のX線検出素子121aは、複数の読出スイッチ121bにそれぞれ接続されている。
【0045】
図2に示すように、複数の読出スイッチ121bは、読出回路123にそれぞれ接続されている。複数の読出スイッチ121bには、制御回路125から制御信号がそれぞれ入力される。各々の読出スイッチ121bは、制御信号に基づいて駆動するスイッチング素子である。複数の読出スイッチ121bは、制御信号に従うタイミングで複数のX線検出素子121aと読出回路123との間を順番に導通状態とする。各々の読出スイッチ121bは、例えばMOS型の電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:MOS-FET)等である。各々の読出スイッチ121bは、例えば、ゲート電圧が0Vのとき、接続されているX線検出素子121aと読出回路123との間を非導通状態とするエンハンスメント型のMOS-FETである。なお、各々の読出スイッチ121bは、例えば、ゲート電圧が0Vのとき、接続されているX線検出素子121aと読出回路123との間を導通状態とするデプレッション型のMOS-FETであってもよい。
【0046】
グリッド129は、複数のX線検出素子121aへの入射X線をX線焦点に照準する。
図3に示すように、グリッド129は、光センサ部121のX線入射面側に配置されている。グリッド129は、X線を吸収する複数のX線遮蔽板129aを有する。各々のX線遮蔽板129aは、光線R10及び光線R30のように、X線遮蔽板129aへ入射したX線を吸収する。グリッド129は、光線R20のように、複数のX線検出素子121aに対する直接線を通過させる。
【0047】
読出回路123等の半導体回路は、X線の被曝により劣化するため、耐放射線半導体プロセスを用いて製造されたり、X線から遮蔽された領域に配置されたりしていることが好ましい。
図3に示すように、光センサ部121の設けられた基板上には、グリッド129によって入射X線から遮蔽された遮蔽領域SAが存在する。遮蔽領域SAは、グリッド129を通過した光線R20等の直接線が到達しない領域である。遮蔽領域SAは、光センサ部121のうち、シンチレータアレイの一部及び/又は光センサアレイの一部を含む。
【0048】
しかしながら、遮蔽領域SAの大きさ及び位置には制限がある。遮蔽領域SAを大きくすると、X線検出器12への入射X線の線量が低下する可能性がある。また、光センサ部121から電気信号を読み出すための半導体回路は、光センサ部121に隣接して設けられることが好ましい。このため、X線検出器12の内部のレイアウトの自由度が制限されていたりする。
【0049】
本実施形態では、
図3に示すように、遮蔽領域SAの内部に読出回路123が配置されている場合を例として説明を続ける。
【0050】
読出回路123は、光センサ部121に接続されている。読出回路123は、制御信号に従うタイミングで光センサ部121から電気信号を読み出す。読出回路123は、DAS18にさらに接続されている。読出回路123は、読み出した電気信号をDAS18へ出力する。
図2に示すように、読出回路123は、スイッチ駆動回路123a、クロック123b、遅延回路123c及び読出線123dを有する。
【0051】
複数のスイッチ駆動回路123aは、複数の読出スイッチ121bにそれぞれ接続されている。複数のスイッチ駆動回路123aには、制御回路125から制御信号がそれぞれ入力される。複数のスイッチ駆動回路123aは、入力された制御信号に基づいて、複数の読出スイッチ121bを制御する制御信号をそれぞれ生成する。複数のスイッチ駆動回路123aは、生成した制御信号を複数の読出スイッチ121bへそれぞれ出力する。任意のスイッチ駆動回路123aは、制御回路125に接続されている。このとき、任意のスイッチ駆動回路123aは、読出スイッチ121bとともに、制御回路125へ制御信号を出力する。
図2には一例として、4つのスイッチ駆動回路123aごとに、任意のスイッチ駆動回路123aが補正回路125cに接続されている場合が示されている。なお、補正回路125cと接続されている任意のスイッチ駆動回路123aは、1~3つのスイッチ駆動回路123aごとであってもよいし、5つ以上のスイッチ駆動回路123aごとであってもよい。
【0052】
クロック123bは、読出制御回路125a及び複数の遅延回路123cに接続されている。クロック123bは、例えば制御装置15に設けられているマスタークロックの出力に基づいて、複数の遅延回路123cを制御する制御信号を生成する。クロック123bは、読出制御回路125aから制御信号が入力されたとき、入力された制御信号に基づいて、複数の遅延回路123cを制御する制御信号を生成する。クロック123bは、生成した制御信号を複数の遅延回路123cへ出力する。
【0053】
複数の遅延回路123cは、読出制御回路125a及び複数のスイッチ駆動回路123aに接続されている。複数の遅延回路123cは、クロック123bから入力された制御信号に基づいて、それぞれ複数のスイッチ駆動回路123aを制御する制御信号を生成する。複数の遅延回路123cは、読出制御回路125aから制御信号が入力されたとき、入力された制御信号にさらに基づいて、複数のスイッチ駆動回路123aを制御する複数の制御信号を順次生成する。複数の遅延回路123cは、生成した複数の制御信号を複数のスイッチ駆動回路123aへ順次出力する。
【0054】
読出線123dは、複数の読出スイッチ121bに接続されている。つまり、読出線123dは、複数の読出スイッチ121bを介して、複数のX線検出素子121aの各々に接続されている。読出線123dは、DAS18にさらに接続されている。
【0055】
制御回路125は、読出回路123に接続されている。制御回路125は、読出回路123へ制御信号を出力する。制御回路125には、読出回路123を通過した制御信号又は読出回路123で生成された制御信号が入力される。制御回路125は、読出制御回路125a、メモリ125b及び補正回路125cを有する。
【0056】
読出制御回路125aは、メモリ125b及び補正回路125cに接続されている。読出制御回路125aは、読出制御部の一例である。読出制御回路125aは、読出回路123の読出タイミングを制御する制御信号を生成する。読出制御回路125aは、生成した制御信号を複数のスイッチ駆動回路123aへ出力する。読出制御回路125aは、補正回路125cから制御信号が入力されたとき、入力された制御信号に基づいて、読出回路123の読出タイミングを制御する制御信号を生成する。このとき、読出制御回路125aは、生成した制御信号を複数のスイッチ駆動回路123aとともに、クロック123b及び複数の遅延回路123cへ出力する。
【0057】
メモリ125bは、種々の情報を記憶するHDD、SSD、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ125bは、例えば、読出タイミング及び読出時間を制御する制御信号の波形情報を記憶する。波形情報は、制御信号のパルス幅、波高値、パルスの間隔等である。メモリ125bには、制御回路125における処理中のデータが一時的に記憶される。メモリ125bは、HDD、SSD等以外にも、CD、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体であってもよいし、RAM等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ125bの保存領域は、X線コンピュータ断層撮影装置1内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。
【0058】
補正回路125cは、読出制御回路125a、メモリ125b及び任意のスイッチ駆動回路123aに接続されている。補正回路125cは、補正部の一例である。補正回路125cは、制御信号の波形を監視する。補正回路125cは、制御信号の波形が変化したとき、制御信号を補正する。補正回路125cは、判定回路125d及び調整回路125eを有する。
【0059】
判定回路125dは、判定部の一例である。判定回路125dには、任意のスイッチ駆動回路123aから読出スイッチ121bへ供給された制御信号が入力される。判定回路125dは、入力された制御信号の波形変化を判定する。本判定は、制御信号の波形情報に基づいて行われる。本判定で用いられる閾値等は、予め設定されてメモリ125bに記録されている。
【0060】
調整回路125eは、判定回路125dに接続されている。調整回路125eには、判定回路125dから制御信号が入力される。調整回路125eは、判定回路125dにより制御信号の波形が変化したと判定されたとき、調整信号を生成する。調整信号は、制御信号の調整を指示する信号である。調整回路125eは、調整信号を読出制御回路125aへ出力する。
【0061】
読出回路123及び制御回路125は、それぞれ、例えばFPGAにより実現される。読出回路123又は制御回路125は、ASIC、他のCPLD、SPLDにより実現されてもよい。読出回路123又は制御回路125は、CPU、MPU等のプロセッサと、ROM、RAM等のメモリとにより実現されてもよい。また、制御回路125は、制御装置15に設けられていてもよい。読出回路123及び制御回路125は、単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立した処理回路を組み合わせて処理回路を構成してもよい。例えば、制御回路125において、読出制御回路125aと補正回路125cとは、それぞれ独立した処理回路であってもよいし、単一の処理回路で実現されていてもよい。例えば、判定回路125dと調整回路125eとは、それぞれ独立した処理回路であってもよいし、単一の処理回路で実現されていてもよい。
【0062】
次に、本実施形態に係るX線検出器12の動作について説明する。以下の説明において、各々の制御信号は、例えばパルス波であるとする。パルス波の波形は、例えば矩形である。
【0063】
X線管11から発生され被検体Pを通過したX線は、X線検出器12に照射される。
図3に示すように、グリッド129を通過した入射X線は、例えば
図3に示す光線R20のように、複数のX線検出素子121aへ入射する。上述したように、複数のX線検出素子121aは、複数のシンチレータ121aa及び複数のフォトダイオード121abを含む。各々のX線検出素子121aは、入射X線に応じた電気信号を生成する。
【0064】
読出制御回路125aは、メモリ125bを参照し、第1の読出信号S1を生成する。第1の読出信号S1は、制御信号の一例である。第1の読出信号S1は、複数のX線検出素子121aに対する、読出タイミング及び電荷積分時間を制御する信号である。読出制御回路125aは、生成した第1の読出信号S1を複数のスイッチ駆動回路123aの各々へ出力する。
【0065】
クロック123bは、入力されたマスタークロックの出力に基づいて、クロック信号S2を生成する。クロック信号S2は、制御信号の一例である。クロック123bは、生成したクロック信号S2を複数の遅延回路123cへ出力する。
【0066】
複数の遅延回路123cは、入力されたクロック信号S2等に基づいて、複数の第2の読出信号S3を生成する。第2の読出信号S3は、制御信号の一例である。複数の第2の読出信号S3は、複数のX線検出素子121aに対する、読出タイミング及び電荷積分時間を制御する信号である。複数の遅延回路123cは、生成した複数の第2の読出信号S3を複数のスイッチ駆動回路123aへ出力する。ここで、各々のスイッチ駆動回路123aへ供給される第2の読出信号S3は、互いに異なるタイミングを有している。
図2に示すように、複数の遅延回路123cは、例えば読出線123dごとに、4つの互いに異なる第2の読出信号S3を出力する。このとき、複数の遅延回路123cは、4つのスイッチ駆動回路123aごとに同一の第2の読出信号S3を供給する。
【0067】
複数のスイッチ駆動回路123aの各々は、読出制御回路125aから入力された第1の読出信号S1に基づいて、スイッチ信号S4を生成する。スイッチ信号S4は、制御信号の一例である。スイッチ信号S4は、各々のX線検出素子121aに対する、読出タイミング及び電荷積分時間を規定する信号である。複数のスイッチ駆動回路123aの各々は、複数の遅延回路123cから入力された複数の第2の読出信号S3にさらに基づいて、スイッチ信号S4を生成する。このことから、複数のスイッチ駆動回路123aの各々は、クロック信号S2に基づいてスイッチ信号S4を生成するとも表現できる。複数のスイッチ駆動回路123aは、生成したスイッチ信号S4を複数の読出スイッチ121bへそれぞれ出力する。なお、各々の読出スイッチ121bへ供給されるスイッチ信号S4は、第2の読出信号S3と同様に、互いに異なるタイミングを有している。
【0068】
複数の読出スイッチ121bの各々は、スイッチ信号S4に従うタイミング及び電荷積分時間で各々のX線検出素子121aと読出線123dとの間を導通状態とする。このため、例えば読出スイッチ121bがエンハンスメント型のMOS-FETであるとき、各々のX線検出素子121aに対する電荷積分時間は、各々の読出スイッチ121bの駆動時間であるとも表現できる。上述したように、各々の読出スイッチ121bに供給されるスイッチ信号S4の有するタイミングは異なるため、複数の読出スイッチ121bは、順番に導通状態となる。
図2に示す例では、読出線123dごとに、1つの読出スイッチ121bが導通状態になる。
【0069】
複数のX線検出素子121aの各々で生成された電気信号は、各々の読出スイッチ121bが導通状態であるとき、読出線123dへ出力される。読出線123dは、各々のX線検出素子121aから順番に入力された電気信号を、順次、DAS18へ出力する。DAS18は、入力された電気信号を逐次収集する。
【0070】
このように、本実施形態に係るX線検出器12において、読出回路123は、制御信号に従うタイミングで、複数のX線検出素子121aから電気信号を順番に読み出す。
【0071】
読出回路123は、複数のX線検出素子121aの各々から電気信号を読み出すために、光センサ部121の近傍に配置されることが望ましい。
図3を参照して上述したように、本実施形態に係る読出回路123は、グリッド129を通過した光線R20等の直接線が到達しない遮蔽領域SAの内部に設けられている。一方で、光センサ部121の内部又はグリッド129の一部等でX線が散乱する場合がある。このようなとき、光線R21又は光線R31のような散乱線は、遮蔽領域SAの内部へ到達し得る。読出回路123に含まれる半導体素子等の部品は、X線等の放射線によって劣化する。このとき、読出回路123を通過する制御信号又は読出回路123で生成された制御信号が劣化する。例えば、MOS-FETが放射線により劣化すると、ゲート・ソース間の静電容量が大きくなり、出力される制御信号の波形は、なまるような形になる。制御信号が劣化した場合、例えば読出スイッチ121bの駆動時間が短くなったりして、各々のX線検出素子121aに対する電荷積分時間が不足する可能性がある。
【0072】
このため、本実施形態に係るX線検出器12において、補正回路125cは、制御信号の波形を監視する。補正回路125cは、制御信号の波形が変化したとき、制御信号を補正する。以下、
図2に示すように、任意のスイッチ駆動回路123aに供給されたスイッチ信号S4が監視される場合を例として説明をする。スイッチ信号S4が劣化したとき、スイッチ駆動回路123a等、読出回路123の備える各部のうち少なくとも1つの要素が劣化していると判断できる。
【0073】
なお、補正回路125cが監視する制御信号は、スイッチ信号S4に限らない。例えば、補正回路125cは、一本の信号線に接続された全てのスイッチ駆動回路123aに供給された後の第1の読出信号S1を監視してもよい。例えば、補正回路125cは、クロック信号S2又は第2の読出信号S3を監視してもよい。補正回路125cは、パルスの立ち上がり時間、パルス幅又はパルスの間隔が短い制御信号を監視するように構成されていることが好ましい。
【0074】
図4は、補正回路125cの動作について説明するための図である。ここでは、スイッチ信号S4が矩形パルス波である場合を例として説明をする。
図4中のグラフにおいて、縦軸は波高値Hを示し、横軸は時間を示す。
図4中のグラフにおいて、実線は理想的なスイッチ信号S4の波形の一例を示し、破線は劣化したスイッチ信号S4の波形の一例を示す。また、理想的なスイッチ信号S4の波形は、波高値H1であり、パルス幅Δt1であるとする。
【0075】
判定回路125dは、補正回路125cに入力されたスイッチ信号S4の波形情報を取得する。波形情報は、入力されたスイッチ信号S4のパルス幅Δt2を含む。パルス幅Δt2は、例えば、第1の波高値H2を超えている時間幅である。第1の波高値H2は、例えばMOS-FETのゲートしきい値電圧に対応している。判定回路125dは、スイッチ信号S4の波形情報に基づいて、スイッチ信号S4の波形が変化したか否かを判定する。本判定において、判定回路125dは、パルス幅Δt2が第1のパルス幅より小さいとき、スイッチ信号S4の波形が変化したと判定する。
【0076】
なお、波形情報は、入力されたスイッチ信号S4の立ち上がりの遅延時間Δt3であってもよい。このとき、判定回路125dは、遅延時間Δt3が第1の遅延時間より大きいとき、スイッチ信号S4の波形が変化したと判定する。
【0077】
なお、第1のパルス幅の値又は第1の遅延時間の値は、例えば、予め設定されてメモリ125b等に記録されている。また、メモリ125bには、第1のパルス幅の値又は第1の遅延時間の値の代わりに、理想的なスイッチ信号S4の波形情報と、劣化したと判定される変化の割合とが記録されていてもよい。
【0078】
スイッチ信号S4の波形が変化したと判定されたとき、判定回路125dは、制御信号の補正を指示する調整信号を生成する。調整信号は、例えば制御信号を出力するドライバのスイングレベルを変化させるための信号である。調整信号は、例えば制御信号を出力するドライバのエンファシスを変化させるための信号である。調整信号は、例えば制御信号を出力するドライバに対するドライブ電流の値を変化させるための信号である。調整信号の指示する制御信号の補正量は、スイッチ信号S4の変化量に応じた補正量であってもよいし、スイッチ信号S4の変化の方向に応じた一定量であってもよい。補正回路125cは、調整回路125eで生成された調整信号を読出制御回路125aへ出力する。
【0079】
読出制御回路125aは、入力された調整信号に応じた制御信号を生成する。
図2に示す例では、読出制御回路125aは、入力された調整信号に応じて第1の読出信号S1を生成する。また、読出制御回路125aは、入力された調整信号に応じてクロック信号S2を補正する第1の補正信号S5と、第2の読出信号を補正する第2の補正信号S6を生成する。
【0080】
読出制御回路125aは、生成した第1の読出信号S1を複数のスイッチ駆動回路123aへ出力する。読出制御回路125aは、生成した第1の補正信号S5をクロック123bへ出力する。クロック123bは、入力された第1の補正信号S5にさらに基づいて、クロック信号S2を生成する。読出制御回路125aは、生成した第2の補正信号S6を複数の遅延回路123cへ出力する。複数の遅延回路123cは、入力された第2の補正信号S6にさらに基づいて、複数の第2の読出信号S3を生成する。
【0081】
なお、補正回路125cは、判定回路125dを有していなくてもよい。この場合、補正回路125cは、スイッチ信号S4の波形の変化量に応じて、調整信号を生成すればよい。スイッチ信号S4の波形の変化量は、基準となるスイッチ信号S4の波形情報と、入力されたスイッチ信号S4の波形情報との差分である。基準となるスイッチ信号S4の波形情報は、例えばメモリ125bに記録されている。
【0082】
なお、調整信号は、第1の読出信号S1、第1の補正信号S5及び第2の補正信号S6のうち、何れか1つ又は2つを補正するための信号であってもよい。
【0083】
なお、本実施形態では、例えば
図3に示すように、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型のX線検出器12を例として説明したがこれに限らない。X線検出器12は、直接変換型の検出器であってもよい。この場合、例えば、本実施形態に係る複数のX線検出素子121aは、それぞれ、直接変換型の検出器における複数の電荷収集電極及び電荷蓄積層に相当する。
【0084】
以上で、第1の実施形態に係るX線検出器12について説明を終了する。本実施形態に係る放射線検出器及び放射線診断装置によれば、以下のことが言える。
【0085】
本実施形態に係る放射線検出器は、光センサ部121と、読出回路123と、読出制御部と、補正部とを備える。本実施形態に係る放射線検出器は、例えばX線検出器12である。光センサ部121は、入射放射線に応じた電気信号を出力する。読出回路123は、光センサ部121に接続され、制御信号に従うタイミングで光センサ部121から電気信号を読み出す。読出制御部は、読出回路123の読み出しタイミングを制御する。本実施形態に係る読出制御部は、例えば読出制御回路125aである。補正部は、制御信号の波形が変化したとき、制御信号を補正する。本実施形態に係る補正部は、例えば補正回路125cである。
【0086】
本実施形態に係る放射線診断装置は、放射線検出器と、画像生成部とを備える。本実施形態に係る放射線診断装置は、例えばX線コンピュータ断層撮影装置1である。画像生成部は、放射線検出器から出力された電気信号に基づいて画像データを生成する。本実施形態に係る画像生成部は、例えば処理回路44である。
【0087】
本実施形態に係る放射線検出器及び放射線診断装置において、光センサ部121は、複数の放射線検出素子と、複数の読出スイッチ121bとを有している。本実施形態に係る放射線検出素子は、例えばX線検出素子121aである。複数の読出スイッチ121bは、複数の放射線検出素子にそれぞれ接続されている。複数の読出スイッチ121bは、スイッチ信号S4に基づいてそれぞれ駆動する。また、読出回路123は、複数の読出スイッチ121bに接続されている。読出回路123は、制御信号に従うタイミングで複数の放射線検出素子から電気信号を順番に読み出す。
【0088】
本実施形態に係る放射線検出器及び放射線診断装置において、読出制御部は、複数の放射線検出素子の読出タイミングと電荷積分時間とを制御する第1の読出信号S1を制御信号として出力する。また、読出回路123は、複数のスイッチ駆動回路123aを有する。複数のスイッチ駆動回路123aは、複数の読出スイッチ121bにそれぞれ接続されている。複数のスイッチ駆動回路123aは、第1の読出信号S1に基づいて、読出タイミングと電荷積分時間とを規定するスイッチ信号S4を制御信号として出力する。
【0089】
本実施形態に係る放射線検出器及び放射線診断装置において、読出回路123は、クロック123bと、複数の遅延回路123cとをさらに有する。クロック123bは、クロック信号S2を出力する。複数の遅延回路123cは、クロック信号S2に基づいて読出タイミングと電荷積分時間とを制御する複数の第2の読出信号S3を制御信号として出力する。複数のスイッチ駆動回路123aの各々は、第2の読出信号S3にさらに基づいてスイッチ信号S4を出力する。
【0090】
本実施形態に係る放射線検出器及び放射線診断装置において、補正部は、スイッチ信号S4の波形が変化したとき、制御信号を補正する。補正される制御信号は、第1の読出信号S1、クロック信号S2、第2の読出信号S3及びスイッチ信号S4のうち少なくとも1つの制御信号である。補正部は、スイッチ信号S4に代えて、第1の読出信号S1、クロック信号S2又は第2の読出信号S3の波形が変化したとき、制御信号を補正してもよい。
【0091】
本実施形態に係る放射線検出器及び放射線診断装置において、補正部は、判定部をさらに有する。本実施形態に係る判定部は、例えば判定回路125dである。判定部は、制御信号の波形情報に基づいて、制御信号の波形変化を判定する。制御信号は、パルス波である。判定部は、制御信号の第1の波高値H2を超えているパルス幅が第1のパルス幅より小さいとき、制御信号の波形が変化したと判定する。なお、判定部は、パルス波の立ち上がりの遅延時間Δt3が第1の遅延時間より大きいとき、制御信号の波形が変化したと判定してもよい。
【0092】
本実施形態に係る放射線検出器及び放射線診断装置において、補正部は、スイングレベル又はドライブ電流の値を変更することにより、制御信号を補正する。
【0093】
これらの構成によれば、X線等の放射線で劣化した半導体回路の動作を補償することができる。つまり、本技術を用いれば、X線の被曝に伴い生じた制御信号の劣化に基づく動作不良を抑制できる。また、本技術は、耐放射線半導体プロセス、放射線の遮蔽領域の配置等の他の放射線対策技術の代替としたり、他の放射線対策技術と組み合わせたりできるため、半導体回路の耐放射線設計を容易にできる。
【0094】
[第2の実施形態]
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る放射線検出器及び放射線診断装置を説明する。ここでは、主に第1の実施形態との相違点について説明する。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0095】
第1の実施形態では、任意の読出スイッチ121bへ供給されたスイッチ信号S4について波形変化を監視するX線検出器12を例として説明をした。第2の実施形態に係るX線検出器12は、実動作回路とともに、X線による出力変化を監視するためのダミー回路をさらに備え、ダミー回路を通過した制御信号について波形変化を監視するものとする。以下、本実施形態に係る放射線検出器及び放射線診断装置について説明する。
【0096】
まず、本実施形態に係るX線検出器12の構成について説明する。
【0097】
図5は、本実施形態に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。
図5に示すように、本実施形態に係るX線検出器12は、ダミー回路127をさらに備える。
【0098】
ダミー回路127は、実動作回路に含まれていない回路である。ダミー回路127は、光センサ部121に接続されていない回路である。ダミー回路127は、例えば光センサ部121に接続されていない読出回路123である。ダミー回路127は、光センサ部121に接続されていない読出回路123の一部であってもよい。ダミー回路127は、例えば、スイッチ駆動回路123a、クロック123b及び遅延回路123cのうち何れか1つ又は2つであってもよい。
【0099】
なお、ダミー回路127は、X線検出素子121a又は読出線123dに接続されていない読出スイッチ121bであってもよい。ダミー回路127は、読出線123dに接続されていない読出スイッチ121bと、当該読出スイッチ121bに接続されているX線検出素子121aとであってもよい。また、ダミー回路127は、読出回路123又は読出回路123の一部と、X線検出素子121a又は読出線123dに接続されていない読出スイッチ121bとを有していてもよい。また、ダミー回路127は、読出回路123又は読出回路123の一部と、読出線123dに接続されていない読出スイッチ121bと、当該読出スイッチ121bに接続されているX線検出素子121aとを有していてもよい。
【0100】
以下、
図5に示すように、読出スイッチ121bに接続されていないスイッチ駆動回路123aがダミー回路127として設けられている場合を例として説明をする。
【0101】
ダミー回路127は、各スイッチ駆動回路123aと同様に、読出制御回路125a及び遅延回路123cに接続されている。ダミー回路127には、複数の遅延回路123cのうち任意の1つの遅延回路123cが接続されている。ダミー回路127は、第1の実施形態に係る任意のスイッチ駆動回路123aと同様に、補正回路125cにさらに接続されている。ダミー回路127には、制御回路125及び遅延回路123cから制御信号が入力される。ダミー回路127は、入力された制御信号に基づいて、読出スイッチ121bを制御する制御信号と同様の制御信号を生成する。ダミー回路127は、生成した制御信号を補正回路125cへ出力する。
【0102】
なお、本実施形態に係るX線検出器12では、複数のスイッチ駆動回路123aの各々と、補正回路125cとは接続されていない。
【0103】
図6は、
図5のダミー回路127の配置の一例について説明するための図である。
図6に示すX線検出器12は、複数のX線検出器モジュール12mがチャネル方向にタイリングされている場合が例として示されている。各々のX線検出器モジュール12mは、光センサ部121、読出回路123及び制御回路125を有する。
図6中のグラフにおいて、縦軸は入射X線の線量を示し、横軸はX線検出器12のチャネル方向の位置を示す。
図6中のグラフにおいて、破線は被検体Pが配置されていないときのX線検出器12への入射X線のプロファイルを示し、実線は被検体Pが配置されていないときのX線検出器12への入射X線のプロファイルを示す。
【0104】
ダミー回路127は、例えば読出回路123とともに配置されている。ダミー回路127が複数のスイッチ駆動回路123aの各々と同一の構成であるとき、ダミー回路127は、複数のスイッチ駆動回路123aとともに配置されることが好ましい。このような中、ダミー回路127は、全てのX線検出器モジュール12mに設けられていなくてもよい。例えば、ダミー回路127は、入射X線の強度分布に応じた位置に配置されている。例えば、ダミー回路127は、入射X線の線量が高い位置に優先して配置されている。以下、入射X線の線量が高い位置を高線量位置と記載する。
【0105】
ウェッジ16により減衰されたX線と、被検体Pにより減衰されたX線とは、線量の分布が異なる。このため、
図6に示すように、X線検出器12に対する入射X線のプロファイルには、高線量位置が存在している。高線量位置は、例えば被検体Pの体輪郭部に近い位置である。入射X線の線量が高い位置に配置されている読出回路123は、他の位置に配置されている読出回路123と比較して劣化しやすい。このことから、ダミー回路127は、少なくともウェッジ16及び被検体Pを通過した入射X線の強度が所定値以上の位置に配置されているX線検出器モジュール12mに設けられていればよい。例えば、ダミー回路127は、X線管11の焦点と、被検体Pの体輪郭部とを通る直線上に位置するX線検出器モジュール12nに配置されている。例えば、ダミー回路127は、当該直線上に位置するX線検出器モジュール12nに隣接するX線検出器モジュール12mにさらに配置されていてもよい。
【0106】
なお、ダミー回路127は、複数のX線検出素子121aとともに遮蔽領域SAの外部に配置されていてもよい。この場合、ダミー回路127が配置されている位置と、遮蔽領域SAの内部との線量の差分が既知であればよい。
【0107】
次に、本実施形態に係るX線検出器12の動作について説明する。
【0108】
ダミー回路127は、複数のスイッチ駆動回路123aの各々と同様に動作する。ダミー回路127には、読出制御回路125aから第1の読出信号S1が入力される。また、ダミー回路127には、接続されている遅延回路123cから第2の読出信号S3が入力される。ダミー回路127は、第1の読出信号S1及び第2の読出信号S3に基づいて、ダミースイッチ信号S7を生成する。ダミースイッチ信号S7は、制御信号の一例である。ダミースイッチ信号S7は、同一の第2の読出信号S3が入力された複数のスイッチ駆動回路123aの各々が生成するスイッチ信号S4と同一である。ダミー回路127は、生成したダミースイッチ信号S7を補正回路125cへ出力する。
【0109】
本実施形態に係るX線検出器12において、補正回路125cは、ダミー回路127を通過した制御信号の波形を監視する。なお、ダミー回路127を通過した制御信号には、ダミー回路127へ入力された制御信号に基づいて、ダミー回路127において生成された制御信号が含まれる。つまり、ダミー回路127を通過した制御信号は、ダミー回路127から出力された制御信号と表現されてもよい。補正回路125cは、ダミー回路127を通過した制御信号の波形が変化したとき、制御信号を補正する。つまり、本実施形態に係る補正回路125cは、第1の実施形態に係る補正回路125cにおけるスイッチ信号S4に対する動作と同様にして、ダミースイッチ信号S7に対して動作する。例えば、ダミースイッチ信号S7が劣化したとき、クロック123b、ダミー回路127に接続された遅延回路123c及びダミー回路127のうち、少なくとも1つの要素が劣化していると判断できる。また、ダミー回路127が劣化しているとき、複数のスイッチ駆動回路123aもまた劣化していると推定できる。
【0110】
判定回路125dは、補正回路125cに入力されたダミースイッチ信号S7の波形情報を取得する。判定回路125dは、ダミースイッチ信号S7の波形情報に基づいて、ダミースイッチ信号S7の波形が変化したか否かを判定する。本判定は、第1の実施形態と同様に、パルス幅に基づいて行われてもよいし、立ち上がりの遅延時間に基づいて行われてもよい。本実施形態に係る波形情報は、入力されたダミースイッチ信号S7のパルス幅又は立ち上がりの遅延時間を含む。
【0111】
ダミースイッチ信号S7の波形が変化したと判定されたとき、判定回路125dは、制御信号の補正を指示する調整信号を生成する。調整信号の指示する制御信号の補正量は、ダミースイッチ信号S7の変化量に応じた補正量であってもよいし、ダミースイッチ信号S7の変化の方向に応じた一定量であってもよい。
【0112】
図2に示す例では、読出制御回路125aは、生成した第1の読出信号S1を複数のスイッチ駆動回路123a及びダミー回路127へ出力する。
【0113】
以上で、第2の実施形態に係るX線検出器12について説明を終了する。本実施形態に係る放射線検出器及び放射線診断装置によれば、以下のことが言える。
【0114】
本実施形態に係る放射線検出器及び放射線診断装置は、ダミー回路127をさらに備える。ダミー回路127は、光センサ部121に接続されていない。補正部は、ダミー回路127から出力された制御信号の波形が変化したとき、制御信号を補正する。これらの構成によれば、実動作回路とは異なるダミー回路127が出力した制御信号を監視するため、制御信号の監視が実動作回路へ影響を与える可能性を低減できる。
【0115】
本実施形態に係る放射線検出器及び放射線診断装置において、読出制御部は、複数の放射線検出素子の読出タイミング及び電荷積分時間を制御する第1の読出信号S1を制御信号としてダミー回路127へ出力する。ダミー回路127は、第1の読出信号S1に基づいて、ダミースイッチ信号S7を制御信号として補正部へ出力する。これらの構成によれば、実動作回路とは異なるダミー回路127は、実動作回路であるスイッチ駆動回路123aからのスイッチ信号S4と同一のダミースイッチ信号S7を生成できる。つまり、本技術は、各々の放射線検出素子の読出タイミング及び電荷積分時間を規定するスイッチ信号S4を、実動作回路の出力する制御信号によらずに監視することができる。
【0116】
本実施形態に係る放射線検出器及び放射線診断装置は、ダミー回路127は、入射放射線の強度分布に応じた位置に配置されている。また、ダミー回路127は、ウェッジ16及び被検体Pを通過した入射放射線の強度が所定値以上である複数の放射線検出素子に接続された読出回路123とともに配置されている。これは、ダミー回路127は、ウェッジ16及び被検体Pを通過した入射放射線の強度が所定値以上である位置に配置されたX線検出器モジュール12nに設けられていると表現できる。これらの構成によれば、ダミー回路127は、全てのX線検出器モジュール12mに設けられていなくてもよい。つまり、上述と同様の効果を得つつ、部品点数を低減できる。部品点数の低減は、放射線検出器の小型化、低コスト化及び内部のレイアウトの自由度の向上に寄与する。
【0117】
なお、上述の実施形態に係る技術は、X線等の放射線の被曝環境下で用いられる相補型MOS(Complementary MOS:CMOS)センサに対する電荷の読み出しにも適用可能である。
【0118】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、X線等の放射線で劣化した半導体回路の動作を補償することができる。
【0119】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device:PLD)等の回路を意味する。PLDは、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)を含む。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、プログラムを実行するのではなく、論理回路の組合せにより当該プログラムに対応する機能を実現してもよい。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1、
図2及び
図5における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0120】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0121】
1…X線コンピュータ断層撮影装置(放射線診断装置)
10…架台
11…X線管
12…X線検出器(放射線検出器)
12m…X線検出器モジュール
13…回転フレーム
14…X線高電圧装置
15…制御装置
16…ウェッジ
17…コリメータ
19…開口部
30…寝台
31…基台
32…支持フレーム
33…天板
34…寝台駆動装置
40…コンソール
41…メモリ
42…ディスプレイ
43…入力インターフェース
44…処理回路
121…光センサ部
121a…X線検出素子
121b…読出スイッチ
123…読出回路
123a…スイッチ駆動回路
123b…クロック
123c…遅延回路
123d…読出線
125…制御回路
125a…読出制御回路
125b…メモリ
125c…補正回路
125d…判定回路
125e…調整回路
127…ダミー回路
129…グリッド
129a…X線遮蔽板
441…システム制御機能
442…前処理機能
443…再構成処理機能
444…画像処理機能
445…表示制御機能