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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】容器詰酒類または酒類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12H 6/02 20190101AFI20231010BHJP
   C12G 3/02 20190101ALI20231010BHJP
【FI】
C12H6/02
C12G3/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019052038
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020150835
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-03-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年3月22日にオエノンホールディングス株式会社のホームページのhttp://www.oenon.jp/news/2018/0322-1.htmlにて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】303036670
【氏名又は名称】合同酒精株式会社
(72)【発明者】
【氏名】近井 智行
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 直也
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-143503(JP,A)
【文献】Food Chemistry,2007年,105,771-783
【文献】イタリアの食後酒の定番「リモンチェッロ」飲み方とカクテルレシピ、オススメ銘柄の解説,NomiLOGのWaybackmachine archive,2017年11月27日,https://web.archive.org/web/20190106031527/https://www.green-alaska.com/entry/2017/11/27/231620,[検索日2023年2月23日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C
C12G
C12H
A23L2
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ぺリルアルデヒド、シソオール及びぺリルアルコールと、アルコールと、を含む酒類であって、
アルコール濃度20%(v/v)換算でのぺリルアルデヒドの含有量が0.6ppm以上、
アルコール濃度20%(v/v)換算でのシソオール及びぺリルアルコールの含有量の和が0.6ppm以上であり、
ペリルアルデヒドの含有量と、シソオール及びぺリルアルコールの含有量の和の比がアルコール濃度20%(v/v)換算で、1:1~1:100の範囲内にあることを特徴とする容器詰酒類。
【請求項2】
シソオールとペリルアルコールの含有量の和がアルコール濃度20%(v/v)換算で38ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の容器詰酒類。
【請求項3】
ぺリルアルコールの含有量がアルコール濃度20%(v/v)換算で1.5ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の容器詰酒類。
【請求項4】
ペリルアルデヒドの含有量がアルコール濃度20%(v/v)換算で12ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の容器詰酒類。
【請求項5】
ペリルアルデヒドの含有量と、シソオール及びぺリルアルコールの含有量の和の比がアルコール濃度20%(v/v)換算で、1:1~1:10の範囲内にあることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の容器詰酒類。
【請求項6】
ペリルアルデヒドの含有量と、シソオール及びペリルアルコールの含有量の和の比がアルコール濃度20%(v/v)換算で、1:1~1:5の範囲内にあることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の容器詰酒類。
【請求項7】
炭酸ガスを含有することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の容器詰発泡性酒類。
【請求項8】
酒類の原料となる物品に発酵させる手段を講じる第1の工程と、
上記第1の工程によって得られた醪を蒸留する第2の工程と、
上記第1の工程から上記第2の工程前までの間における醪に、乾燥した紫蘇を添加し、発酵させる手段を講じる紫蘇発酵工程と、を有する酒類の製造方法であって
上記紫蘇発酵工程が下記(1)~(3)から選択される少なくとも一つを伴うことを特徴とする酒類の製造方法。
(1)紫蘇発酵工程におけるpHが4.0以下である
(2)添加する乾燥した紫蘇が冷蔵もしくは冷凍した紫蘇または略常温状態にある
(3)上記紫蘇発酵工程の発酵時間が1時間~8日間の範囲内である
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペリルアルデヒドと、シソオールまたはぺリルアルコールの少なくとも一つを含有する容器詰酒類または酒類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原材料に紫蘇を使用した酒類の製造方法に係る発明が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。 特許文献1には、赤ジソ、青ジソ、エゴマの生葉から選択される少なくとも一つの生葉を凍結、解凍、搾汁することにより得られるアクを除去した生葉の加工処理物に係る発明が記載されている。このような加工処理を行うことで、生葉特有の青臭さや土臭さが除去または低減され、生葉特有の特徴香気が引立つと記載されている。上記加工処理物を乙類焼酎の原材料の一部として使用し、ペリルアルデヒド含有量を1.5mg/L以上であるシソ特有の香味に優れた焼酎を得ることができると記載されている。
【0003】
特許文献2には、アルコールを含有する蒸留原料と生の紫蘇とを単式蒸留釜に張り込む工程と、当該蒸留原料を所定の温度で蒸留等する蒸留酒の製造方法に係る発明が記載されている。これによって、フレッシュで自然な紫蘇の芳香を有する良質の蒸留酒を得ることができると記載されている。ペリルアルデヒド以外の香気成分として、リモネン、シネオール、リナロール、ベンズアルデヒド、α-ピネン及びβ-ピネンからなる群から選ばれる1種類以上を含むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-143503号公報
【文献】国際公開第2008/153118号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に開示された発明は、紫蘇の生葉を使用すること及びペリルアルデヒドを香りの指標とすることが共通する。しかしながら、本発明者らが上記特許文献に記載の発明を検討したところ、紫蘇の青臭さ、土臭さ、油臭さが酒類及び容器詰酒類に残存することがあり、さらなる改善が求められていた。
【0006】
本発明は、紫蘇の青臭さ、土臭さ、油臭さを低減しつつ、紫蘇の芳香を高めた容器詰酒類および酒類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の技術的構成を有することにより、本発明の課題を解決したものである。
【0008】
(1)ぺリルアルデヒドと、シソオールまたはぺリルアルコールの少なくとも一つと、アルコールと、を含む酒類であって、アルコール濃度20%(v/v)換算でのぺリルアルデヒドの含有量が0.6ppm以上、アルコール濃度20%(v/v)換算でのシソオール及びぺリルアルコールの含有量の和が0.6ppm以上であることを特徴とする容器詰酒類。
(2)シソオールとペリルアルコールの含有量の和がアルコール濃度20%(v/v)換算で38ppm以下であることを特徴とする(1)に記載の容器詰酒類。
(3)ぺリルアルコールの含有量がアルコール濃度20%(v/v)換算で1.5ppm以下であることを特徴とする(1)に記載の容器詰酒類。
(4)ペリルアルデヒドの含有量がアルコール濃度20%(v/v)換算で12ppm以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の容器詰酒類。
(5)ペリルアルデヒドの含有量と、シソオール及びぺリルアルコールの含有量の比がアルコール濃度20%(v/v)換算で、1:0.01~1:100の範囲内にあることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の容器詰酒類。
(6)ペリルアルデヒドの含有量と、シソオール及びペリルアルコールの含有量の比がアルコール濃度20%(v/v)換算で、1:0.1~1:10の範囲内にあることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の容器詰酒類。
(7)炭酸ガスを含有することを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の容器詰発泡性酒類。
(8) 酒類の原料となる物品に発酵させる手段を講じる第1の工程と、上記第1の工程によって得られた醪を蒸留する第2の工程と、上記第1の工程から上記第2の工程前までの間における醪に、紫蘇を添加し、発酵させる手段を講じる紫蘇発酵工程と、を有する酒類の製造方法であって、上記紫蘇発酵工程が下記(i)~(iii)から選択される少なくとも一つを伴うことを特徴とする酒類の製造方法。
(i)紫蘇発酵工程におけるpHが4.0以下である
(ii)添加する紫蘇が冷蔵もしくは冷凍した紫蘇または略常温状態にある
(iii)上記紫蘇発酵工程の発酵時間が1時間~8日間の範囲内である
(9)ペリルアルデヒドと、シソオールまたはペリルアルコールの少なくとも一つと、を指標にすることを特徴とする酒類の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紫蘇の青臭さ、土臭さ、油臭さを低減しつつ、紫蘇の芳香を高めた容器詰酒類および酒類の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<容器詰酒類>
本発明に係る容器詰酒類はペリルアルデヒドの含有量が0.6ppm以上、シソオール及びペリルアルコールの含有量の和が0.6ppm以上であることを一特徴とする。各成分の濃度は、アルコール濃度20%(v/v)換算での値である。本発明者らが鋭意検討したところ、所定の条件において、紫蘇に含まれるペリルアルデヒドがシソオールまたはペリルアルコールの少なくとも一方に変化する現象を見出した。例えば、酒類製造における醪のpHは通常4程度であるが、醪のpHを2に近づけるにつれペリルアルデヒドの含有量が増大し、シソオール及びペリルアルコールの含有量の和が減少した酒類が得られる。この性質を利用することで、ペリルアルデヒド単独では感じることができない、紫蘇の生葉を連想させるフレッシュで香り高い芳香を備えた酒類及び容器詰酒類を提供することができることを見出した。
【0011】
容器詰酒類中のペリルアルデヒドの含有量は0.6ppm~12ppmの範囲内にあることが好ましく、0.6ppm~6ppmの範囲内にあることがより好ましく、0.6ppm~3ppmの範囲内にあることがさらに好ましい。ペリルアルデヒドの閾値は低く、上限値を超える量を含んでも、香りを増大させる効果は得られにくくなる。
容器詰酒類中のシソオールの含有量は0.6ppm以上36ppm未満の範囲内にあることが好ましく、0.6ppm~18ppmの範囲内にあることがより好ましく、0.6ppm~4.8ppmの範囲内にあることがより好ましい。シソオールの含有量が300ppm以上になると、シソオールの閾値以上となり、アセトアルデヒドに近い臭いを感じ、好ましくない。シソオールの含有量が300ppm未満であれば、シソオール単独の臭いは感じないが、シソオールの含有量が36ppm超であっても紫蘇の生葉を連想させるフレッシュで香り高い芳香を感じる効果は増大しない。
容器詰酒類中のペリルアルコールの含有量は、0.1ppm~1.5ppmの範囲内にあることが好ましい。
シソオール及びペリルアルコールの含有量の和は0.1ppm~38ppmの範囲内にあることが好ましく、0.6ppm~20ppmの範囲内にあることがより好ましく、0.6ppm~6.3ppmの範囲内にあることがさらに好ましい。
ペリルアルデヒド、シソオール及びペリルアルコールの含有量は、いずれもアルコール濃度20%(v/v)換算での値である。
容器詰酒類中のペリルアルデヒドの含有量が低くなるにつれ、紫蘇の生葉を連想させるフレッシュで香り高い芳香を感じにくくなる。ペリルアルデヒドの含有量が上限値を超えると、青臭さを感じやすくなる傾向にある。
容器詰酒類中のシソオール及びペリルアルコールの含有量の和が低くなるにつれ、紫蘇の生葉を連想させるフレッシュで香り高い芳香を感じにくくなる。ペリルアルデヒドと、シソオールまたはペリルアルコールの少なくとも一つが共存することで、より自然な紫蘇の香りに近づく。シソオール及びペリルアルコールの含有量の和が上限値を超えると、土臭さ、青臭さ、油臭さを感じやすくなる傾向にある。
【0012】
ペリルアルデヒドは紫蘇の香気成分として知られている。紫蘇の生葉を特徴づける香気成分であり、新鮮な生の紫蘇に多く含まれる。紫蘇を収穫した後の時間が経過するにつれ、紫蘇に含まれるペリルアルデヒドは減少する傾向にある。乾燥した紫蘇は生の紫蘇に比べ、ペリルアルデヒドの含有量が少ない。ペリルアルデヒドの閾値は0.030ppm(水溶液中)である。本発明に係る容器詰酒類は、ペリルアルデヒドの閾値を超える量を含み、ペリルアルデヒドに由来する香りを感じることができる。
【0013】
シソオールの閾値は300ppm(水溶液中)である。本発明に係る容器詰酒類は、閾値より低いシソオール量であっても、シソオールを0.6ppm以上含有し、ペリルアルデヒドが共存することで、自然な紫蘇の香りに近づく効果がある。この効果はペリルアルデヒド単独では認められない効果である。
本発明に係る容器詰酒類はシソオール単独での香りを感じているわけではなく、シソオールがペリルアルデヒドの香りを感じやすくする作用があると推測される。また、シソオールとペリルアルデヒドを含ませることで、紫蘇に由来する紫蘇に含まれる不快な臭い(青臭さ、土臭さ、油臭さ)を相対的に感じにくくなることから、これらの不快な臭い成分をシソオールがマスキングしているものと推測される。
【0014】
ペリルアルコールの閾値は1.66ppm(水溶液中)である。本発明に係る容器詰酒類は、閾値より低いペリルアルコール量であっても、ペリルアルコールを0.1ppm以上含有し、ペリルアルデヒドが共存することで、自然な紫蘇の香りに近づく効果がある。この効果はペリルアルデヒド単独では認められない効果である。
ペリルアルコールはシソオールよりも閾値が低いため、本発明の容器詰酒類に閾値を超えるペリルアルコールを含ませても良い。閾値未満のペリルアルコールを含ませることで自然な紫蘇の香りに近づけた容器詰酒類を提供することができる。
【0015】
本発明に係る容器詰酒類中のペリルアルデヒドの含有量と、シソオール及びペリルアルコールの含有量の和の比はアルコール濃度20%(v/v)換算で、1:0.01~1:100の範囲内にあることが好ましく、1:0.1~1:10の範囲内にあることがより好ましく、1:1~1:5の範囲内にあることが特に好ましい。
上記の比よりもシソオール及びペリルアルコールの含有量の和が少なくなると、自然な紫蘇の香りを感じやすくする作用が生じにくくなる。
上記の比よりもシソオール及びペリルアルコールの含有量の和が高くなっても、自然な紫蘇の香りを感じやすくする作用は向上せず、経済的ではない。
【0016】
本発明に係る容器詰酒類中のペリルアルデヒドの含有量と、シソオールの含有量の比はアルコール濃度20%(v/v)換算で、1:0.01~1:100の範囲内にあることが好ましく、1:0.1~1:10の範囲内にあることがより好ましく、1:0.5~1:5の範囲内にあることが特に好ましい。
上記の比よりもシソオールの含有量が少なくなると、自然な紫蘇の香りを感じやすくする作用が生じにくくなる。
上記の比よりもシソオールの含有量が高くなると、相対的にペリルアルデヒドの量が減少するため、紫蘇の生葉を連想させるフレッシュで香り高い芳香を感じにくくなる。
【0017】
本発明に係る容器詰酒類中のペリルアルデヒドの含有量と、ペリルアルコールの含有量の比はアルコール濃度20%(v/v)換算で、1:0.01~1:100の範囲内にあることが好ましく、1:0.1~1:10の範囲内にあることがより好ましく、1:0.2~1:1の範囲内にあることが特に好ましい。
上記の比よりもペリルアルコールの含有量が少なくなると、自然な紫蘇の香りを感じやすくする作用が生じにくくなる。
上記の比よりもペリルアルコールの含有量が高くなると、相対的にペリルアルデヒドの量が減少するため、紫蘇の生葉を連想させるフレッシュで香り高い芳香を感じにくくなる。
【0018】
本発明に係る容器詰酒類のpHは2~8の範囲内にあることが好ましく、pHが3~7の範囲内にあることがより好ましい。
pHが下限値未満であると、酸味が強くなりすぎる問題や香りを感じにくくなり好ましくない。
pHが上限値超であると、エグ味、雑味、イガイガ感等の不快さを感じやすくなる問題がある。
【0019】
本発明に係る容器詰酒類の固形分は、0.5(w/v)%以下であることが好ましい。
本発明に係る容器詰酒類に、酸味料、糖類、食物繊維等の各種添加物を加えることにより、固形分を0.5(w/v)%超とした容器詰めした混成酒類(リキュール)としても良い。固形分を増やすことにより、容器詰酒類の味を好ましいものに調整しやすくなる。
【0020】
本発明に係る容器詰酒類は透明であることが好ましい。色は無色であることが好ましいが、着色成分を入れることで着色しても良い。
【0021】
本発明に係る容器詰酒類はアルコール(エタノール)を含み、アルコール濃度は0.01%以上であればよい。アルコール濃度は0.01%~45%の範囲内にあることが好ましく、1%~30%の範囲内にあることがより好ましく、3%~25%の範囲内にあることがさらに好ましく、10%~25%の範囲内にあることが特に好ましい。
アルコール濃度によって、ペリルアルデヒド、シソオール及びペリルアルコールの香り自体に大きな差は無い。
【0022】
容器詰酒類中のペリルアルデヒド、シソオール及びペリルアルコールの含有量は、アルコール濃度20%(v/v)換算での値を意味する。容器詰酒類中のアルコール濃度が20%(v/v)以上であれば、水でアルコール濃度が20%になるよう希釈した時の値である。容器詰酒類中のアルコール濃度が20%未満であれば、当該容器詰酒類中のアルコール濃度で除した後、20を乗じた値とすれば良い。
【0023】
本発明における容器詰酒類は、単式蒸留焼酎等の蒸留酒類及びリキュール等の混成酒類並びにこれらに発泡性を持たせた発泡性酒類を容器詰めしたものを含む。混成酒類は蒸留酒類をベースに任意成分を加えることで得られる。
【0024】
本発明に係る容器詰酒類に、炭酸ガスを含ませて発泡性の容器詰酒類としても良い。炭酸ガス圧は、20℃において測定される炭酸ガス圧をいう。炭酸ガス圧は、0.1~0.3MPaの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.15~0.3MPaである。炭酸ガス圧は、国税庁所定分析法に基づく、ビールのガス圧分析法によって測定した値を意味する。
【0025】
<酒類の製造方法>
本発明の酒類の製造方法は、
酒類の原料となる物品に発酵させる手段を講じる第1の工程と、
上記第1の工程によって得られた醪を蒸留する第2の工程と、
上記第1の工程から上記第2の工程前までの間における醪に、紫蘇を添加し、発酵させる手段を講じる紫蘇発酵工程と、を有する酒類の製造方法であって
上記紫蘇発酵工程が下記(1)~(3)から選択される少なくとも一つを伴うことを特徴とする。
(1)紫蘇発酵工程におけるpHが4.0以下である
(2)添加する紫蘇が冷蔵もしくは冷凍した紫蘇または略常温状態にある
(3)上記紫蘇発酵工程の発酵時間が1時間~8日間の範囲内である
醪とは、酒類の原料となる物品に発酵させる手段を講じたもの(酒類の製造の用に供することができるものに限る。)で、蒸留する前のものをいう。
上記(1)~(3)はそれぞれ単独で使用しても良いし、複数を組み合わせて使用しても良いし、全てを組み合わせても良い。全てを組み合わせることが最も好ましい。
上記の方法で酒類を製造した後、その酒類を容器詰めした容器詰酒類の製造方法とすることもできる。
【0026】
蒸留した直後の酒類(水やエタノール等を添加していないもの)中の各香気成分の含有量は、アルコール濃度20%(v/v)換算で容器詰酒類に含まれる各香気成分の含有量以上である。蒸留した直後の酒類に含まれる各香気成分の含有量は閾値を超える状態にあることが多い。蒸留した直後の酒類に、水や連続式蒸留アルコール等のアルコール類を加えることで、本発明の容器詰酒類とすることができる。これによって、紫蘇の生葉を連想させるフレッシュで香り高い芳香を備えた容器詰酒類を提供することができる。
【0027】
本発明の容器詰酒類を製造するには、蒸留した直後の酒類に含まれる各香気成分を以下の範囲にすることが好ましい。
蒸留した直後の酒類に含まれるペリルアルデヒドの含有量は5ppm~100ppmの範囲にあることが好ましく、5ppm~50ppmの範囲にあることがより好ましく、5ppm~25ppmの範囲にあることがさらに好ましい。
蒸留した直後の酒類に含まれるシソオールの含有量は5ppm~300ppmの範囲内にあることが好ましく、5ppm~100ppmの範囲内にあることがより好ましく、5ppm~50ppmの範囲内にあることがさらに好ましい。
蒸留した直後の酒類に含まれるぺリルアルコールの含有量は、0.5ppm~10ppmの範囲にあることが好ましい。
蒸留した直後の酒類に含まれるシソオール及びペリルアルコールの含有量の和は5ppm~310ppmの範囲内にあることが好ましく、5ppm~110ppmの範囲内にあることがより好ましく、5ppm~60ppmの範囲内にあることがさらに好ましい。
上記の香気成分は、アルコール濃度20%(v/v)換算での含有量である。
蒸留した直後の酒類には、蒸留した直後の酒類を複数混合したもの及連続式蒸留アルコール等のアルコールを添加する前の酒類を含む。
【0028】
<第1の工程>
第1の工程は発酵工程を含むものであればよい。発酵させる手段としては、酒類の原料となる物品に酵母等の微生物を加え、発酵条件(発酵温度、発酵日数)を適宜設定すればよい。発酵工程の前または発酵工程とともに糖化工程を伴うものであってもよい。糖化工程は糖化用の酵素を加える方法が挙げられる。酒類の原料となる物品は1回で全量を加えても良く、複数回に分けて加えても良い。本発明においては、複数回に分けて加えることが好ましい。これによって、醪のアルコール度数を高めることができる。
【0029】
<第2の工程>
第2の工程は、第1の工程によって得られた醪を蒸留する工程をいう。第2の工程は、醪に含まれるアルコール含有物を蒸留する工程である。第2の工程後に、例えば、加水工程、火入れ工程、瓶詰め工程等を行うことも可能である。本発明においては、第2の工程を行ったものは酒類として取り扱い、酒類を容器詰めしたものを容器詰酒類として取り扱う。容器は紙製、プラスチック製、金属製等任意のものを使用することができ、容器の容量に制限はない。
【0030】
(紫蘇発酵工程)
(1)紫蘇発酵工程における醪のpHは4.0以下にすることが好ましく、3.6以下にすることがより好ましい。醪のpHを4.0以下にすることによって、酒類に含まれるペリルアルデヒドを高め、適度なシソオールまたはペリルアルコールのいずれか一方を含んだ状態とすることができる。醪のpHを下げすぎると、醪中の酵母が死滅しやすくなるため、2.0以上とすることが好ましく、2.5以上とすることがより好ましい。
醪のpHは発酵が進んでも変化しない。発酵が進んだ醪のpHは4.0前後で変わらない。pH4.0の醪に紫蘇を添加すると、酒類に含まれるペリルアルデヒドが減少し、シソオール及びペリルアルコールの含有量の和が増大する傾向にある。紫蘇発酵工程における醪のpHを2~3.5の範囲にするには、酵母による発酵だけでは不十分であり、酸を添加する必要がある。酸は無機酸でも有機酸でもよい。無機酸としては塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸等が挙げられる。有機酸としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸等が挙げられる。強酸を使用すると局所的にpHが低くなることで酵母が死滅することから、弱酸を使用することが好ましく、有機酸を使用することが好ましい。酒税法上認められた酸を使用することが好ましい。
醪のpHを塩基性に調整するときは、水に溶解した時に塩基性を示す物質を使用すればよい。弱塩基でも強塩基でも使用することができる。醪の急激なpH変化は酵母に影響を与えることから、緩衝作用を持った塩基を使用することが好ましい。塩基としてはリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用することができる。酒税法上認められた塩基を使用することが好ましい。
【0031】
上記の紫蘇発酵工程における醪のpH調整は、紫蘇を添加する前に行うことが好ましい。これによって、紫蘇及び醪に含まれるペリルアルデヒドを減少しにくくすることができる。
【0032】
(2)添加する紫蘇は、一旦乾燥させた後、冷蔵もしくは冷凍した紫蘇または略常温状態で保管することが好ましい。
生の紫蘇を乾燥させる方法は、紫蘇に含まれる水分を揮発させることができれば制限されない。例えば、生の紫蘇を天日干ししてもよいいし、室内で自然乾燥させても良いし、室内で冷風または熱風を送風させて乾燥させても良い。紫蘇に含まれる香気成分は、生葉であれ乾燥葉であれ徐々に揮発するため、室内で熱風を送風して短時間で乾燥させることが好ましい。
本発明における乾燥した紫蘇は、20℃の室温に10日間放置したときに腐らない性質を有するものであればよい。具体的には、乾燥した紫蘇に含まれる水分含量を30%以下としたものが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。紫蘇の水分含量は加熱乾燥法で測定することができる。
乾燥した紫蘇を冷蔵保管するときの温度は0度超~10度の範囲にすることが好ましい。乾燥した紫蘇を冷凍保管するときの温度は、0度以下であることが好ましく、-10度以下であることがより好ましく、-20度以下であることが特に好ましい。乾燥した紫蘇を冷凍保管するときの温度の下限値は特に限定されないが、保管温度が低くなるにつれ電力や設備等が必要になり経済的ではないことから、-90度程度以上とすれば良い。
略常温状態にある紫蘇とは、冷蔵または冷凍した紫蘇(乾燥したもの)を、醪に添加するまでの間に冷蔵または冷凍した温度を超える環境下で保管したものをいう。醪に投入する前に冷蔵または冷凍した温度を超える環境下で紫蘇(乾燥したもの)を保管しても、自然な紫蘇の香りを持った酒類を製造することができる。
(3)紫蘇発酵工程の発酵時間は、醪中の酵母が紫蘇を資化することができれば制限されないが、1時間~8日間の範囲にすることが好ましく、6時間~5日間の範囲にすることがより好ましく、12時間~3日間の範囲にすることがさらに好ましい。
発酵時間を長くすると、酒類の発酵感が増すものの、ペリルアルデヒドの含有量及びペリルアルデヒドに由来する香りを感じにくくなる傾向にある。
発酵時間が短いと、酒類の発酵感が不足する傾向にある。
【0033】
ペリルアルデヒドと、シソオールまたはペリルアルコールの少なくとも一つと、を指標にすることで、紫蘇のフレッシュで自然な芳香を有する酒類を製造することができる。ペリルアルデヒドと、シソオールと、ペリルアルコールと、を指標にすることが好ましい。これらの香気成分は、紫蘇または紫蘇から抽出した抽出液、紫蘇を投入した後の醪、当該醪を蒸留した後の酒類であれば、どの段階で分析しても良い。
紫蘇から抽出した抽出液としては、水を使用しても良いし、アルコールを含むものであってもよい。アルコール濃度の制限はない。
醪であれば、紫蘇を投入した直後の醪、発酵中の醪、発酵終了後の醪、蒸留する直前の醪のいずれを分析しても良い。酒類であれば、蒸留した直後の酒類、酒類を容器詰めする直前の酒類、酒類を容器詰めした後の酒類のいずれを分析しても良い。
【0034】
以下、本発明を構成する材料等について説明する。
【0035】
(ペリルアルデヒド、シソオール及びペリルアルコールを含む材料)
ペリルアルデヒド、シソオール及びペリルアルコールを含む材料として、香料及び紫蘇を単独または併用して使用することができる。本発明に係る容器詰酒類においては、天然物である紫蘇を使用することが好ましい。紫蘇はペリルアルデヒド、シソオール及びペリルアルコールを含む。紫蘇は、葉及び茎の一方を使用しても良いし、両方を使用しても良い。天然物であるために紫蘇に含まれるペリルアルデヒド、シソオール、ペリルアルコール量に差が生じやすいが、総じて紫蘇の葉の方がペリルアルデヒド、シソオール、ペリルアルコールを多く含む傾向にある。
紫蘇の乾燥状態によって、ペリルアルデヒド、シソオール、ペリルアルコールの量は変動する傾向にある。生の紫蘇が最も各香気成分(ペリルアルデヒド、シソオール、ペリルアルコール)の含有量が多いが、各香気成分の比率は乾燥状態によって変動する。生の紫蘇と乾燥した紫蘇に含まれるペリルアルデヒド及びシソオールの比をとると、生の紫蘇は乾燥した紫蘇よりもペリルアルデヒドの比が相対的に高くなる傾向にあり、乾燥した紫蘇は生の紫蘇よりもシソオールの比が相対的に高くなる傾向にある。この性質を利用して、紫蘇の乾燥状態を調整したり、生の紫蘇と乾燥した紫蘇の混合比を調整する等の方法によって、ペリルアルデヒドとシソオールの比を調整することができる。ペリルアルデヒドとペリルアルコールの比をとったときも上記と同様の傾向にある。
紫蘇の特徴的な香りは、ペリルアルデヒドであると考えられてきたことから、紫蘇を原料とする場合、生の紫蘇を使用して酒類を製造することが行われてきた。これに対し、本発明は乾燥した紫蘇を原料として使用することで、酒類に含まれるシソオール及びペリルアルコールの含有量や比を高めることが可能となった。これにより自然な紫蘇の芳香とした酒類を提供することができる。
【0036】
生の紫蘇はペリルアルデヒド、シソオール及びペリルアルコールの含有量が多いが、腐りやすいことから、ハンドリング上の問題を生じやすい。また、青臭さ、土臭さ、油臭さといった不快な臭いを感じやすい問題もある。
乾燥した紫蘇はペリルアルデヒド、シソオール及びペリルアルコールの含有量が少ないが、腐る問題がないことから、ハンドリング上取り扱いやすい。また、青臭さ、土臭さ、油臭さといった不快な臭いを感じにくい。
【0037】
紫蘇中の香気成分(ペリルアルデヒド、シソオール、ペリルアルコール及び不快な臭いの原因物質)は、大気中に揮発する性質がある。この性質は、紫蘇の乾燥状態によらず、生の紫蘇でも乾燥した紫蘇でも同様である。紫蘇を醪や酒類に使用するまでの保管期間が長くなるほど、紫蘇中の上記香気成分は少なくなる傾向にある。紫蘇中の上記香気成分は、低温で保管するとほとんど揮発しないことから、紫蘇を低温で保管することによって、紫蘇に含まれる香気成分を長期にわたって維持することができる。紫蘇の状態(生葉または乾燥葉)であっても同様の傾向である。紫蘇の保管は冷蔵(0度超~10度)であっても冷凍(0度以下)であっても良い。紫蘇の香気成分は冷凍及び解凍によって紫蘇中の香気成分が減少しないことから、紫蘇を冷凍保管することが好ましい。紫蘇を冷凍保管するときの温度は、0度以下であることが好ましく、-10度以下であることがより好ましく、-20度以下であることが特に好ましい。紫蘇を冷凍保管するときの温度の下限値は特に限定されないが、保管温度が低くなるにつれ電力や設備等が必要になり経済的ではないことから、-90度程度以上とすれば良い。
【0038】
冷凍保存した紫蘇の保管期限は特に限定されないが、紫蘇は毎年収穫する性質があることと、適正な在庫数量を確保する観点から、1日~3年の範囲とするのが好ましく、1か月~2年の範囲とするのがより好ましい。
冷蔵保存した紫蘇の保管期限は、紫蘇が腐る問題を生じることから、1日~60日の範囲とするのが好ましく、1日~30日の範囲とするのがより好ましい。
紫蘇を本発明に係る酒類に直ちに使用するのであれば、冷凍保存や冷蔵保存をする必要はない。紫蘇を直ちに使用する目安は、生の紫蘇であれば紫蘇を収穫してから1日以内であり、乾燥した紫蘇であれば紫蘇の乾燥工程を終えてから1日以内である。
【0039】
(酒類の原料となる物品)
酒類の原料となる物品としては、発酵中の炭素源となり、発酵によってアルコールを生成することができるものであればよく、例えば、米、小麦、大麦、さつまいも、そば、こうりゃん、じゃがいも、ふきのとう、かぼちゃ、デーツ等の含糖物質に加え、これらの加工品や酒粕等を使用することができる。これらの材料は単独で使用しても良いし、複数を混合して使用することも可能である。
酒類の原料となる物品は第1の工程において、一度に全量を加えても良いが、発酵の経過を見ながら複数回に分けて添加した方が、酒類のアルコール量を高くすることができるので好ましい。
【0040】
(任意成分)
本発明の構成及び作用効果を妨げない範囲で、本発明に係る酒類には、その他の材料を配合することができる。その他の材料としては、例えば、糖類、食物繊維、着色料、コーンや大豆などの植物タンパク質およびペプチド含有物、牛血清アルブミン等の動物系タンパク質およびペプチド含有物、アミノ酸などの調味料、アスコルビン酸等の酸化防止剤、酸味料、苦味料、甘味料、香料、炭酸等を挙げることができる。
【0041】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0042】
<実施例>
(紫蘇の乾燥)
収穫した生の紫蘇を乾燥させたものを材料として使用した。乾燥させた紫蘇に含まれる水分含量は20%であった。乾燥させた紫蘇は、紫蘇発酵工程で使用するまで、マイナス20度の冷凍庫で保管した。本実施例における紫蘇の冷凍期間は1か月であった。
(第1の工程) 下記の表1に示す配合にてWine yeast OC-2(独立行政法人酒類総合研究所の保有酵母菌株)を使用し、発酵温度25度、発酵日数13日で醪発酵を行った(一次仕込み後の発酵日数5日、二次仕込み後の発酵日数8日)。第1の工程後の醪のpHは3.8であった。
【0043】
【表1】
【0044】
(紫蘇発酵工程) 第1の工程で得られた醪に、塩酸、クエン酸またはクエン酸ナトリウムを加えpHを2.2~4.5まで適宜調整した。上記の方法で得られた乾燥し、乾燥後冷凍した紫蘇10gを投入し、25度で1日間発酵させた。試験区1は塩酸を使用し、試験区2~4はクエン酸を使用した。 第1の工程で得られた醪に、pHを調整せず、冷凍した生の紫蘇を80g(水分含量90%)投入し、25℃で1日間発酵させ得たものを試験区5とした。冷凍した生の紫蘇は、収穫した生の紫蘇を直ちにマイナス20度の冷凍庫で保管したものを使用した。
【0045】
(第2の工程) 紫蘇発酵工程後の各醪を、減圧度250mmHgにて減圧蒸留した。得られた蒸留酒のアルコール濃度は試験区1~6ともに35.8%であった。アルコール濃度は京都電子工業製 振動式密度計によって測定した。
【0046】
得られた各蒸留酒を精製水で希釈し、アルコール濃度20.5%の蒸留酒を得、容器詰めすることで容器詰酒類(容器詰蒸留酒)とした。容器詰酒類は評価を行うまで開栓せず、閉鎖系を保つようにした。アルコール濃度は、京都電子工業製 振動式密度計の方法で測定した。
【0047】
(ガスクロマトグラフィ(GC)による香気成分の分析) 各容器詰酒類中のペリルアルデヒド、シソオール及びペリルアルコールの含有量をGC/MS装置を用いて、固相マイクロ抽出法(SPME法)により分析した。分析条件は、次の通りである: ファイバーはPDMS素材で膜厚100μmを使用し、60℃で10分間プレインキュベーション後、60℃で20分間抽出し、250℃3分間で脱離した。カラムはInert Cap Pure WAX(ジーエルサイエンス社製、内径0.25mm、カラム長60m、膜厚0.25μm)を用い、キャリアガスはヘリウムを使用した。分析により得られた香気成分量は、アルコール濃度20%(v/v)あたりの成分量(ppm)で表した。
【0048】
GC分析の結果を、表2に示す。ペリルアルデヒドを(A)、シソオール及びペリルアルコールを(B)とする。(B)該当成分量の和も表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
醪のpHを低下させた試験区1~4、及び冷凍した生の紫蘇を使用した試験区5で得られた蒸留酒はペリルアルデヒドの成分量、及び(B)成分量に差が見られた。
【0051】
(官能評価)
上記のようにもろみpHの異なる条件で製造した5つの蒸留酒(アルコール濃度35.8%)を水で希釈しアルコール濃度20%とした後、連続式蒸留アルコール(アルコール濃度20%)と混和し、容器詰めした容器詰酒類(容器詰蒸留酒)6~10を作成し評価を行うまで開栓せず、閉鎖系を保つようにした。それぞれについてフレッシュな芳香、自然な紫蘇の芳香、不快な臭いを、以下に示す評価基準に基づいて、訓練された専門パネル8名にて官能評価を実施した。不快な臭いは、紫蘇の青臭さ、土臭さ、油臭さを総じた表現とした。容器詰酒類No.6~10は、該飲料中の紫蘇焼酎と糖蜜原料の連続式蒸留アルコールを純アルコール率が88:12になるよう調整したものである。各容器詰酒類のpHはいずれも6.7であった。
なお、訓練された専門パネルは、下記の基準(1)~(4)を満たす者とした。
(1)アルコール飲料に関する10問について3点識別法にて官能試験を行い、6割以上の正答率を有する者
(2)上記(1)を満たす者であって、上記(1)とは異なる日に、アルコール飲料に関する別の10問について3点識別法にて官能試験を行い、6割以上の正答率を有する者
(3)上記(1)及び(2)の官能試験を行った日から、1年を経過していない者
(4)満20歳以上65歳以下の者
(フレッシュな芳香)
1:フレッシュである
2:ややフレッシュである
3:どちらともいえない
4:ややフレッシュでない
5:フレッシュでない
(自然な紫蘇の芳香)
1:自然な紫蘇の芳香
2:やや自然な紫蘇の芳香
3:どちらともいえない
4:やや不自然な紫蘇の芳香
5:不自然な紫蘇の芳香
(不快な臭い)
1:不快な臭いはしない
2:やや不快な臭いはしない
3:どちらともいえない
4:やや不快な臭い
5:不快な臭い
【0052】
官能評価点数は、専門パネル8名の平均点とし、平均点が3点を下まわったとき、紫蘇の芳香が高まったとし、平均点が3点を上まわったとき、紫蘇の芳香が低下したと判断した。評価サンプルの香気成分量、及び官能評価結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
表3の結果から、醪のpHを3.6以下に調整した紫蘇焼酎の方が、不快な臭いが低下することでフレッシュな芳香が増し、自然な紫蘇の芳香が高まることが分かった。さらに、もろみのpHをより低く調整することで、自然な紫蘇の芳香をより高めることができた。容器詰酒類No.10は冷凍した生の紫蘇を使用することによりペリルアルデヒド量が増したが、相対的にシソオール及びペリルアルコール量が少ないため、不快な臭いを強く感じ、自然な紫蘇の芳香が感じにくくなると推察された。