(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】モータコアプレートの製造方法及びモータコアの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20231010BHJP
B21D 28/02 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
H02K15/02 E
B21D28/02 C
(21)【出願番号】P 2019059565
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-08-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】月岡 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】大谷 秀行
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-194070(JP,A)
【文献】特開平09-117111(JP,A)
【文献】特開2007-098411(JP,A)
【文献】国際公開第2018/127983(WO,A1)
【文献】特開2005-198361(JP,A)
【文献】特開昭56-164565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
B21D 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を用いて、多角形または円形の金属板に対して複数の孔を打ち抜くモータコアプレートの製造方法であって、
前記金型を用いて、前記金属板
のうち前記モータコアプレート形成する領域の外側に形成された複数のパイロット孔に複数のパイロットピンをそれぞれ差し込んだ状態で、
前記金型のパンチで前記金属板に対して前記複数の孔のうち第1の
複数の孔を打ち抜く
第1のステップと、
前記金型を用いて、前記複数のパイロット孔により規定される前記金属板の中心の周りに前記金型に対し相対的に
所定の角度だけ回転させた前記金属板に対して、
前記金型に対し相対的に前記所定の角度だけ回転させた前記複数のパイロット孔に前記複数のパイロットピンをそれぞれ差し込んだ状態で、前記
第1の複数の孔の打ち抜きに用いられた共通の
前記パンチで前記複数の孔のうち前記第1の
複数の孔と回転対称の第2の
複数の孔を打ち抜く
第2のステップと、を有
し、
前記金属板の前記中心を基準とした回転方向において、前記第2の複数の孔のうち少なくとも1つは、前記第1の複数の孔のうち2つの孔の間に形成され、
前記第2のステップを所定回数行うことで、デザインが回転対象部分の該所定回数に応じて変化することを特徴とするモータコアプレートの製造方法。
【請求項2】
前記複数のパイロット孔は4つのパイロット孔であり、
前記複数のパイロットピンは4つのパイロットピンであることを特徴とする請求項1に記載のモータコアプレートの製造方法。
【請求項3】
前記金型に対し相対的に
前記所定の角度だけ回転させる回転動作を挟みながら、前記金型を用いて前記金属板の孔を打ち抜く動作を4回繰り返すことで、前記複数の孔の全てを打ち抜くことを特徴とする請求項2に記載のモータコアプレートの製造方法。
【請求項4】
前記
所定の角度は90(度)であることを特徴とする請求項3に記載のモータコアプレートの製造方法。
【請求項5】
前記モータコアプレートは、
共取り加工により得られたロータプレートとステータプレートとを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のモータコアプレートの製造方法。
【請求項6】
ロータプレートとステータプレートとを含むモータコアプレートの製造方法であって、
第1の金型を用いて、多角形または円形のワークに複数のパイロット孔を形成する第1のステップと、
第2の金型を用いて、前記ワークにスロット孔を形成する第2のステップと、
第3の金型を用いて、前記ワークから
前記ロータプレートを打ち抜く第3のステップと、
第4の金型を用いて、前記ワークから
前記ステータプレートの内周面に対応する部位を打ち抜く第4のステップと、
第5の金型を用いて、前記ワークから前記ステータプレートを打ち抜く第5のステップと、を有し、
前記第2のステップは、
前記第2の金型を用いて、
前記ワークのうち前記モータコアプレート形成する領域の外側に形成された前記複数のパイロット孔に複数のパイロットピンをそれぞれ差し込んだ状態で、
前記第2の金型のパンチで前記ワークに対して複数の孔のうち第1の
複数の孔を打ち抜く
第1のステップと、
前記第2の金型を用いて、前記複数のパイロット孔により規定される前記ワークの中心の周りに前記第2の金型に対し相対的に
所定の角度だけ回転させた前記ワークに対して、
前記第2の金型に対し相対的に前記所定の角度だけ回転させた前記複数のパイロット孔に前記複数のパイロットピンをそれぞれ差し込んだ状態で、前記
第1の複数の孔の打ち抜きに用いられた共通の
前記パンチで前記複数の孔のうち前記第1の
複数の孔と回転対称の第2の
複数の孔を打ち抜く
第2のステップと、を含
み、
前記ワークの前記中心を基準とした回転方向において、前記第2の複数の孔のうち少なくとも1つは、前記第1の複数の孔のうち2つの孔の間に形成され、
前記第2のステップを所定回数行うことで、デザインが回転対象部分の該所定回数に応じて変化することを特徴とするモータコアプレートの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の製造方法により複数のロータプレートおよび複数のステータプレートを
共取り加工で製造するステップと、
前記複数のロータプレートを積層してロータブロックを製造するステップと、
前記複数のステータプレートを積層してステータブロックを製造するステップと、を有することを特徴とするモータコアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータコアプレートの製造方法及びモータコアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータコアプレートの製造方法として、以下の二つの製造方法が知られている。第一の製造方法は、順送プレス金型(プレス加工)による方法である。第二の製造方法は、ワイヤーカット放電加工やレーザカット加工による方法である。
【0003】
特許文献1には、帯板状の材料から所望の外周形状の個片を得るプレス加工方法であって、帯板状の材料から所望の外周形状の一部を少なくとも2箇所打ち抜いて、打ち抜いた2箇所の間に帯板状の材料と個片とを連結する保持用リード部を形成する予備抜きステップと、予備抜きステップで形成された保持用リード部を残して、帯板状の材料から所望の外周形状に相当する部分を分断する外周形状切断ステップとを有するプレス加工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プレス金型を用いた方法(第一の製造方法)では、製品の大型化に伴い、プレス機も200トン以上の能力と2mを超える大きなベッドサイズを必要とする。また、送り装置、矯正機、アンコイラーなどの周辺設備も大型の専用設備を必要とし、投資がかさむ。また、金型のコストが高い。また、一般的なプレス金型と比べて、金型が大型化し、かつ使用する打ち抜き刃物(パンチ、ダイ、ストリッパー入れ子)が大きくなるため、金型の製作リードタイムが長くなりやすい。
【0006】
ワイヤーカット放電加工やレーザカット加工による方法(第二の製造方法)では、プレス金型を必要としないため初期投資コスト面で優位であるが、輪郭寸法精度、加工断面、バリの大きさの点でプレス金型(プレス加工)による方法に劣る。また、試作で得られた技術ノウハウを量産用プレス金型に応用することができない。また、共取り(ステータの内側の余剰ブランクからロータを製造すること、すなわちステータとロータの両方を製造すること)ができない。
【0007】
そこで本発明は、低コストで高精度なモータコアプレートの製造方法及びモータコアの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としてのモータコアプレートの製造方法は、金型を用いて、多角形または円形の金属板に対して複数の孔を打ち抜くモータコアプレートの製造方法であって、前記金型を用いて、前記金属板のうち前記モータコアプレート形成する領域の外側に形成された複数のパイロット孔に複数のパイロットピンをそれぞれ差し込んだ状態で、前記金型のパンチで前記金属板に対して前記複数の孔のうち第1の複数の孔を打ち抜くステップと、前記金型を用いて、前記複数のパイロット孔により規定される前記金属板の中心の周りに前記金型に対し相対的に所定の角度だけ回転させた前記金属板に対して、前記金型に対し相対的に前記所定の角度だけ回転させた前記複数のパイロット孔に前記複数のパイロットピンをそれぞれ差し込んだ状態で、前記第1の複数の孔の打ち抜きに用いられた共通の前記パンチで前記複数の孔のうち前記第1の複数の孔と回転対称の第2の複数の孔を打ち抜くステップとを有し、前記金属板の前記中心を基準とした回転方向において、前記第2の複数の孔のうち少なくとも1つは、前記第1の複数の孔のうち2つの孔の間に形成され、前記第2のステップを所定回数行うことで、デザインが回転対象部分の該所定回数に応じて変化する。好ましくは、前記複数のパイロット孔は4つのパイロット孔であり、前記複数のパイロットピンは4つのパイロットピンである。また好ましくは、前記金型に対し相対的に前記所定の角度だけ回転させる回転動作を挟みながら、前記金型を用いて前記金属板の孔を打ち抜く動作を4回繰り返すことで、前記複数の孔の全てを打ち抜く。また好ましくは、前記所定の角度は90(度)である。また好ましくは、モータコアプレートは、共取り加工により得られたロータプレートとステータプレートとを含む。
【0009】
本発明の他の側面としてのモータコアプレートの製造方法は、第1の金型を用いて、多角形または円形のワークに複数のパイロット孔を形成する第1のステップと、第2の金型を用いて、前記ワークにスロット孔を形成する第2のステップと、第3の金型を用いて、前記ワークからロータプレートを打ち抜く第3のステップと、第4の金型を用いて、前記ワークからステータプレートの内周面に対応する部位を打ち抜く第4のステップと、第5の金型を用いて、前記ワークから前記ステータプレートを打ち抜く第5のステップとを有し、前記第2のステップは、前記第2の金型を用いて、前記ワークのうち前記モータコアプレート形成する領域の外側に形成された前記複数のパイロット孔に複数のパイロットピンをそれぞれ差し込んだ状態で、前記第2の金型のパンチで前記ワークに対して複数の孔のうち第1の複数の孔を打ち抜くステップと、前記第2の金型を用いて、前記複数のパイロット孔により規定される前記ワークの中心の周りに前記第2の金型に対し相対的に所定の角度だけ回転させた前記ワークに対して、前記第2の金型に対し相対的に前記所定の角度だけ回転させた前記複数のパイロット孔に前記複数のパイロットピンをそれぞれ差し込んだ状態で、前記第1の複数の孔の打ち抜きに用いられた共通の前記パンチで前記複数の孔のうち前記第1の複数の孔と回転対称の第2の複数の孔を打ち抜くステップとを含み、前記ワークの前記中心を基準とした回転方向において、前記第2の複数の孔のうち少なくとも1つは、前記第1の複数の孔のうち2つの孔の間に形成され、前記第2のステップを所定回数行うことで、デザインが回転対象部分の該所定回数に応じて変化する。
【0010】
本発明の他の側面としてのモータコアの製造方法は、前記モータコアプレートの製造方法により複数のロータプレートおよび複数のステータプレートを共取り加工で製造するステップと、前記複数のロータプレートを積層してロータブロックを製造するステップと、前記複数のステータプレートを積層してステータブロックを製造するステップとを有する。
【0014】
本発明のその他の目的及び効果は以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低コストで高精度なモータコアプレートの製造方法及びモータコアの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態におけるモータコアプレート製造装置の側面図である。
【
図2】本実施形態におけるモータコアプレートの製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】本実施形態におけるプレス金型の平面図である。
【
図6】本実施形態における第1の金型による成形方法の説明図である。
【
図7】本実施形態における第2の金型による成形方法の説明図である。
【
図8】本実施形態におけるロータブロックおよびステータブロックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
まず、
図1乃至
図5を参照して、本実施形態におけるモータコアプレートの製造に用いる金型、及び、モータコアプレート製造装置について平面的な配置を主に説明する。
図1は、本実施形態におけるモータコアプレート製造装置(プレス装置)1の側面図である。
【0019】
ここで、
図1に示されるように、本発明の実施により製造されるものとして、ロータを製造するための部材となるロータプレート51を積層したものをロータブロック81といい、ステータを製造するための部材となるステータプレート53を積層したものをステータブロック83という。また、本実施形態においては、ロータとステータとを区別せずにこれらを指すとき及び両方を指すときにはモータコアといい、ロータブロックとステータブロックとを区別せずにこれらを指すとき及び両方を指すときにはモータコアブロックといい、ロータプレートとステータプレートとを区別せずにこれらを指すとき及び両方を指すときにはモータコアプレートというものとする。
【0020】
図3は、本実施形態におけるプレス金型の平面図であり、
図3(a)~(e)は、モータコアプレートを製造するために用いられる第1の金型(パイロット孔加工金型)11、第2の金型12、第3の金型13、第4の金型14、および、第5の金型15をそれぞれについて主要部分の平面上の位置関係を示している。なお、これらの図における各部の位置は、各金型に設けられるパンチ等の配置を下から見たように配置されており、平面視した場合には上下反転したような配置となる。
【0021】
(モータコアプレート製造装置、金型およびワーク)
図4および
図5は、本実施形態における成形品(ワーク)の平面図である。これらの図では、
図1の左から右へ流れる工程に沿ってモータコアプレートが製造されていく各工程におけるワークや成形品が示されている。
図4(a)は原材料の鋼板(金属平板)であるワーク40を示し、これに対して
図1の左端のモータコアプレート製造装置1で、
図3(a)及び
図6に示される第1の金型11を用いた加工が行われる。
【0022】
図4(b)は第1の金型11を用いた成形後(プレス加工後)のワーク40a、
図4(c)は第2の金型12を用いた1回目の成形後のワーク40b、
図4(d)は第2の金型12を用いた2回目の成形後のワーク40c、
図4(e)は第2の金型12を用いた3回目の成形後のワーク40d、
図4(f)は第2の金型12を用いた4回目の成形後のワーク40eをそれぞれ示す。これらは
図1の左から2番目のモータコアプレート製造装置1で、
図3(b)及び
図7に示される第2の金型12を用いた加工が行われることで製造される。
【0023】
図5(a)は第3の金型13を用いた成形後のワーク40fおよびロータプレート51を示し、これらは
図1の左から3番目のモータコアプレート製造装置1で、
図3(c)に示される第3の金型13を用いた加工が行われることで製造される。
図5(b)は第4の金型14を用いた成形後のワーク40gおよびステータプレートの内周における環状部分であるリング52(ステータプレートの内周面に対応する部位)を示し、これらは
図1の左から4番目のモータコアプレート製造装置1で、
図3(d)に示される第4の金型14を用いた加工が行われることで製造される。
図5(c)は第5の金型15を用いた成形後のワーク(スケルトン40h)およびステータプレート53を示し、これらは
図1の右端のモータコアプレート製造装置1で、
図3(e)に示される第5の金型15を用いた加工が行われることで製造される。
【0024】
このように、本実施形態におけるモータコアプレート製造装置1は、第1の金型11、第2の金型12、第3の金型13、第4の金型14、および、第5の金型15の5つの金型を順に用いて成形品(ワーク)に対してプレス加工を行うことにより、ロータプレート51とステータプレート53とを製造することができる。
【0025】
本実施形態において、成形品(ワーク)は例えば板厚が0.5mm以下で、縦250mm、横250mm程度の電磁鋼板が用いられる。このワークには、コイル状に巻き付けられた帯状の鋼板を長尺のまま使用せず、所定幅ずつに切り分けたもの(定尺シート材)が用いられる。これにより、ワークを任意に回転させることが可能となる。なお、ワークの形状は上述したものに限定されるものではない。例えば、ワークの外形は、多角形や円形としてもよい。多角形のワークの外形としては、例えば略正方形、略正六角形、略正八角形のうちのいずれかにしてもよい。もちろん、長方形のような任意の多角形でも構わないが、回転させながら加工を行う関係で、縦横比が同一となることが好ましく、ワークの外形としては正方形や円形とするのが好ましい。一方、後述するパイロットピンをモータコアプレートを成形する領域の外側に設ける必要があるときには、後述するうち抜き回数に応じた角数の多角形とするのが好ましい。いずれの場合でも帯状の金属材を用いて一方向に送りながら加工する順送方式向けの材質とは異なり、後述するワークを所定の角度ずつ回転させ、加工する動作を繰り返す方式(以下、回転順送方式という場合がある)による成形を可能としている。
【0026】
図1に示されるように、モータコアプレートの製造方法は、左から順に、第1の工程から第5の工程を有する。本実施形態では、モータコアプレートのデザイン特徴を利用して、最小限の刃物で回転方向に順送させることで、モータコアプレートとしての全形状を得ることができる。すなわち、モータコアプレートに設けられる孔は、モータコアプレートの中心を通過する所定の線に対して反転させたり、それらの孔を回転方向に繰り返すような形状と位置にデザインされ配置される。このため、モータコアプレート上において、向きや形状の異なる複数種類の孔が回転中心に対して同じ向きで一定の角度間隔に設けられるデザインとなるものが多い。したがって、繰り返して設けられる最小単位の孔だけを打ち抜くことができるパンチやダイ(刃物)を設けることで、最小限の刃物で全周分の孔抜きが可能となる。ただし、最小単位の孔だけを打ち抜く場合には、打抜きを繰り返す回数が多くなるため、最小単位の孔に対して適宜の数を乗じたものを1組のパンチやダイとして設けて加工することで、打抜きの繰返し回数を減らして金型コストと製造時間との兼ね合いの取れた工程とすることができる。
【0027】
なお、本実施形態では、ワーク40aを90度ごとに回転させて合計4回の打抜きを行うことになるが、これらの設定値もモータコアプレートのデザインが回転対称部分の繰り返し回数に応じて変化することになるため、この数値に限定されるものではない。例えば、回転角度を180度(=360度/2回)、120度(=360度/3回)、72度(=360度/5回)、60度(=360度/6回)、45度(=360度/8回)、40度(=360度/9回)、36度(360度/10回)などに変えて実施してもよい。これらによっても、モータコアプレートの全周に亘って設けられる孔等を一度に孔抜きする場合と比較して、パンチやダイの刃物の数を大幅に削減らすことができる。
【0028】
なお、本実施形態においては、モータコアプレートに設けられる孔でモータコアに特有なものとして、幅広く形成され磁石等が挿入される孔を「スロット」といい、コイル用の巻き線の巻き付けのために最終的な形状が溝状になる孔を「スロット用孔」という場合がある。
【0029】
図1の左端のモータコアプレート製造装置1において行われる第1の工程は、第1の金型11を用いてワーク(電磁鋼板)40のプレス加工を行う工程である。第1の金型11は、
図3(a)に示されるように、パイロット孔抜き部31、ロータ軸孔抜き部32、および、ダボかしめ用孔抜き部33を有する。
図4(a)に示されるワーク40に対して、第1の金型11を用いて第1の工程を行うことにより、
図4(b)に示されるように、4つのパイロット孔41、1つのロータ軸孔42、および、8つのダボかしめ用孔43が形成されたワーク40aが得られる。ここで、ワーク40aの中心Cは4つのパイロット孔41によって規定されることになる。具体的には、ワーク40aの中心Cは、4つのパイロット孔41の中央の位置として規定される。これにより、パイロット孔41を用いて、ワーク40aの中心Cを正確かつ簡単に特定できることになり、これ以降の加工においても中心を同一とした加工が可能となる。
【0030】
また、パイロット孔41は、後述する第2の工程においては、ワーク40aを回転させてもパイロットピン17を挿入可能とする必要があるため、これらを回転順送方式に適合した配置にする必要がある。例えば本実施形態では、ワーク40aを90度ごとに回転させて合計4回の打抜きにおいて、いずれの場合にもパイロットピン17が挿入されるパイロット孔41を変えても挿入できなければならない。したがって、例えば上述した繰り返し回数に応じた数の正多角形とすることができることから、パイロットピン17及びパイロット孔41は、正四角形(正方形)に配置されることになる。
【0031】
なお、第1の工程では、ダボかしめ用孔43に替えてダボかしめ用の半抜きの加工をしてもよい。この場合には、ダボかしめ用孔抜き部33の位置に半抜き用のパンチ等が設けられる。なお、ダボかしめによるモータコアプレートの積層を行う場合には、ダボかしめ用孔43が形成されたモータコアプレート上に、半抜きされたモータコアプレートの突起を下向きに積層していくことで、モータコアプレートの積層が可能である。このため、ダボかしめ用孔43用のパンチ及びダイと、半抜き用のパンチ等を第1の金型11において切り替え可能としてもよい。これによれば、簡易な交換工程のみでダボかしめにより積層したモータコアブロックの製造が可能となる。
【0032】
図1の左から2番目のモータコアプレート製造装置1において行われる第2の工程は、第1の工程後に、第2の金型12を用いてワーク40aのプレス加工を行う工程である。第2の金型12は、
図3(b)に示されるように、ロータプレート51のスロット形状抜き部34、35、丸孔抜き部36、および、ステータプレート53のスロット用孔抜き部37を有する。このように、第2の金型12は、ワーク40aに対して、a個(14個)の孔を1回の打ち抜き動作に成形する刃物(パンチやダイ)を有する構成といえる。
【0033】
図4(b)に示されるワーク40aに対して、第2の金型12を用いて第2の工程(1回目)を行うことにより、
図4(c)に示されるように、ロータプレート51のスロット44a、45a、丸孔46a、および、ステータプレート53のスロット用孔47aが形成されたワーク(モータコア用のスロット付き板)40bが得られる。
【0034】
続いて、ワーク40bを
図4(b)の向きから反時計回りに90度(=360度/4回)だけ回転させた後、
図4(c)に示されるワーク40bに対して、第2の金型12を用いて第2の工程(2回目)を行うことにより、
図4(d)に示されるように、ロータプレート51のスロット44b、45b、丸孔46b、および、ステータプレート53のスロット用47bが形成されたワーク40cが得られる。
【0035】
続いて、ワーク40cを更に反時計回りに90度だけ回転させた後(当初の位置からワークを180度回転させた状態において)、
図4(d)に示されるワーク40cに対して、第2の金型12を用いて第2の工程(3回目)を行うことにより、
図4(e)に示されるように、ロータプレート51のスロット44c、45c、丸孔46c、および、ステータプレート53のスロット用孔47cが形成されたワーク40dが得られる。
【0036】
続いて、ワーク40dを更に反時計回りに90度だけ回転させた後(当初の位置からワークを270度回転させた状態において)、
図4(e)に示されるワーク40dに対して、第2の金型12を用いた第2の工程(4回目)を行うことにより、
図4(f)に示されるように、ロータプレート51のスロット44d、45d、丸孔46d、および、ステータプレート53のスロット用孔47dが形成されたワーク40eが得られる。
【0037】
したがって、
図4に示されるように、第2の金型12では、1回の孔抜き動作で成形されるa個(本実施形態では14個)の孔が、ワーク40aの中心Cに対して回転対称でb組(本実施形態では4組)配置されているモータコアプレートの製造を行うことができる。換言すれば、第2の金型12によれば、任意の正の整数a(ここでは14)と2以上の整数b(ここでは4)とを掛け合わせた数の複数(ここでは56)の孔を、ワーク40aから打ち抜いて複数の孔が成形される。
【0038】
結果的に、この第2の金型12を用いた孔抜きによって第2の工程では56個の孔がワーク40aに対して形成されることになる(
図4(f)参照)。
【0039】
このように本実施形態において、第2の金型12は、製品形状の1/4(90度分相当)だけ打ち抜き刃物(パンチ、ダイ、ストリッパー入れ子(ストリッパー))を有する。通常、スロット形状をそのまま一括して打ち抜こうとすると刃物の個数が多くなるが、本実施形態の構成を採用することにより、第2の金型12の刃物部の数(コスト)を低減(本実施形態では約1/4に低減)することができる。また、第2の金型12では、第2の工程において打ち抜かれる複数(ここでは56)の孔のうちa個(14個)の孔が、孔同士が離れるように型面上で分散するように刃物が配置されている。これにより、プレス盤面内(第2の金型12の盤面内)での荷重の偏りを抑制して傾きやかじりの発生も防止できる。また、刃物を離して配置することで、ダイやストリッパーを第2の金型12内で保持する部材(いわゆるダイ入れ子やストリッパー入れ子)の肉厚を確保して強度を高め、長寿命化を図ることもできる。
【0040】
この場合、刃物の配置を適切に設定するためには、例えば14個の孔について、孔の外周の長さと当該孔の図芯からワーク40aの中心までの水平方向の距離との積の総和を、14個全ての孔の外周の長さの和で除算した値、および、孔の外周の長さと当該孔の図芯からワーク40aの中心までの垂直方向の距離との積の総和を、14個全ての孔の外周の長さの和で除算した値と、ができる限りと小さくなるように配置された孔を同時に孔抜きできる14組の刃物を第2の金型12に設けることができる。このように、本実施形態では、全周分の孔を一括して打ち抜かない構成であることから、刃物の部材配置を調整することで刃物の強度向上を図ることができる。
【0041】
また、第2の工程ではワーク40aに対する複数回の孔抜きを行う際に、パイロット孔41を用い、これにパイロットピン17を差し込むことで、中心Cを一致させ、回転させる動作を挟んでも正確かつ簡易な位置決めが可能となる。
【0042】
次に、
図1の左から3番目のモータコアプレート製造装置1において行われる第3の工程は、第2の工程後に、第3の金型13を用いてワーク40eのプレス加工を行う工程である。第3の金型13は、
図3(c)に示されるように、ロータプレート外形抜き部38を有する。
図4(f)に示されるワーク40eに対して、第3の金型13を用いて第3の工程を行うことにより、ワーク40eからロータプレート外形が切断され、
図5(a)に示されるように、スロット44、45および丸孔46が形成されたロータプレート51、ならびに、ロータプレート51が分離された後のワーク40fが得られる。なお、この時点ではワーク40fにおけるスロット用孔47は内周側において連結されたフラットな曲面であり、巻き線を巻きつけられるスロットにはなってはいない。
【0043】
図1の左から4番目のモータコアプレート製造装置1において行われる第4の工程は、第3の工程後に、第4の金型14を用いてワーク40fのプレス加工を行う工程である。第4の金型14は、
図3(d)に示されるように、ステータプレート内形抜き部39を有する。ステータプレート内形抜き部39は、刃物がスロット用孔47の内側の部分を跨ぐように設けられることになる。
図5(a)に示されるワーク40fに対して、第4の金型14を用いて第4の工程を行うことにより、ワーク40fからリング52が切断されて分離され、
図5(b)に示されるように、ステータプレート内形が形成されたワーク40gが得られる。
【0044】
このように、リング52が切断されることで、スロット用孔47の内側が切断されてステータプレート53の内周でスロット用孔47の一部が開かれた形状となる。これにより、巻き線を巻き付け可能なスロット(溝)をステータプレート53に形成される。また、このように、リング52を打ち抜く構成とすることで、ステータプレート53にスロット(溝)を構成しながら、リング52の内周面に対応するロータプレート51の外周面を円滑な曲面に形成することが可能となる。
【0045】
図1の右端のモータコアプレート製造装置1において行われる第5の工程は、第4の工程後に、第5の金型15を用いてワーク40gのプレス加工を行う工程である。第5の金型15は、
図3(e)に示されるように、ステータ外形抜き部340を有する。
図5(b)に示されるワーク40gに対して、第5の金型15を用いて第5の工程を行うことにより、ワーク40gからステータプレート外形が切断され、
図5(c)に示されるように、ステータプレート53およびスケルトン40hが得られる。
【0046】
上述の通り、第3の工程から第5の工程でのロータプレートの打ち抜き及びステータプレートの打ち抜きを行う際に、スロットの成形(第2の工程)に用いたパイロット孔41を用い、これにパイロットピン17を差し込むことで、中心Cを一致させ、これらの工程においても正確かつ簡易な位置決めが可能となる。
【0047】
(モータコアプレートの製造方法)
次に、
図1乃至
図7を参照して、モータコアプレートの製造方法について金型の詳細な動作も含めて詳述する。なお、この製造方法で用いられる装置や金型の構成について重複する部分は適宜省略しながら説明を行う。
図2は、本実施形態におけるモータコアプレート(ロータプレート51およびステータプレート53)の製造方法を示すフローチャートである。
図6は、本実施形態における第1の金型11による成形方法(プレス加工方法)の説明図である。
図7は、本実施形態における第2の金型12による成形方法の説明図である。
【0048】
まず、
図2のステップS1において、モータコアプレート製造装置1は、第1の金型11を用いて、ワーク40にパイロット孔41等を形成する(第1の工程)。本実施形態では、モータコアプレート製造装置1に上型11aおよび下型11bを有する第1の金型11を取り付け、下型11bの上にワーク40を載置する。
【0049】
図6(a)は、下型11bの上にワーク40を載置した状態(開状態)を示している。上型11aには、パイロット孔抜き部31、ロータ軸孔抜き部32、および、ダボかしめ用孔抜き部33の各パンチ31a、32a、33aが設けられている。各パンチ31a、32a、33aは、パイロット孔抜き部31、ロータ軸孔抜き部32、および、ダボかしめ用孔抜き部33の各位置において下向きに突起するように設けられる。これらのパンチ31a、32a、33aには、例えば超硬を材料として、ワーク40に所定の大きさに孔抜きができる刃先形状で所定の板状又は棒状に構成される。
【0050】
なお、
図6(a)において、各パンチ31a、32a、33aは、先端の位置を異なるように図示しているが、同じ高さとしてもよく、異ならせた高さとしてもよい。
【0051】
また、上型11aには、スプリング18を介してストリッパー(ストリッパー入れ子)16が連結されている。ストリッパー16は、パンチ31a、32a、33aに対応する位置に貫通孔31b、32b、33bが設けられている。これにより、ストリッパー16は、
図6(a)に示されるように、第1の金型11が型閉じされていない状態ではパンチ31a、32a、33aの先端を収容し、各パンチ31a、32a、33aの昇降時にこれを案内する。ストリッパー16は、貫通孔31b、32b、33bが形成された例えば超硬の筒状部材を板状部材に組み付けて構成される。
【0052】
一方、下型11bには、上型11aのパンチ31a、32a、33aの位置に対応した位置において、パンチ31a、32a、33aを挿入可能な貫通孔31c、32c、33cが形成されたダイが設けられている。ダイは、貫通孔31c、32c、33cが形成された例えば超硬の筒状部材を板状部材に組み付けて構成される。
【0053】
続いて、
図6(a)の状態から上型11aと下型11bとを型閉じして(互いに近づけて)ストリッパー16でワーク40をクランプすると、
図6(b)の状態(閉状態)になる。そして、
図6(b)の状態から更に型締めをして力を加え、パイロット孔抜き部31、ロータ軸孔抜き部32、および、ダボかしめ用孔抜き部33のパンチ31a、32a、33aがダイに挿入される工程において、ワーク40をせん断することで対応部分の孔抜きを行う。ここでは、
図6(c)に示されるように、ストリッパー16の下面から各パンチ31a、32a、33aが突出し、ワーク40を貫通して、下型11bのダイの貫通孔31c、32c、33cに挿入される。これにより、パンチ31a、32a、33aに対応する位置のワーク(不要部分)が打ち抜かれ下型11bから落下し排出される。
【0054】
次いで、型開きすることで、ストリッパー16でワーク40aを押さえながら、ワーク40からパンチ31a、32a、33aを引き抜き、更にワーク40aからストリッパー16を引き離す。これにより、
図6(d)に示されるように、パイロット孔41、ロータ軸孔42、および、ダボかしめ用孔43が形成されたワーク40aが得られる。本実施形態では、後のステップS2以降との関係では、少なくともパイロット孔41の打ち抜きを行っている必要がある。また、ここでは、パイロット孔41の打ち抜きに合わせて、ロータ軸孔42を打ち抜き、ダボかしめ用の加工としてダボかしめ用孔43の打ち抜きを行っているが、必ずしもこの工程で行う必要はない。また、これらの加工をいつ行うかは同種の孔の数などに応じて任意に設定できる。例えばダボかしめ用孔43の打ち抜きは、ステップS2において行ってもよい。これは、ダボかしめ用孔43の成形数が8個であり、ステップ2を4回繰り返す場合に、2個ずつ成形すればよいからである。続いて、
図2のステップS2において、モータコアプレート製造装置1は、第2の金型12を用いて、ワーク40aにスロット44、45、丸孔46、および、スロット用孔47を形成する(第2の工程)。このように、パイロット孔41を成形する第1の金型11を用いてワーク40に対してパイロット孔41を成形した後に、スロット44a、45a等の成形が行われる。
【0055】
続いて、モータコアプレート製造装置1に上型12aおよび下型12bを有する第2の金型12を取り付け、下型12bの上にワーク40aを載置する。
【0056】
図7(a)は、下型12bの上にワーク40aを載置した状態(開状態)を示している。上型12aには、ロータプレート51のスロット抜き部34、35、および、丸孔抜き部36、ならびに、ステータプレート53のスロット用孔抜き部37の各パンチ34a、35a、36a、37aが設けられている。
【0057】
また、上型12aには、スプリング18を介してストリッパー19が連結されている。ストリッパー19は、パンチ34a、35a、36a、37aに対応する位置に貫通孔34b、35b、36b、37bが設けられている。これにより、ストリッパー19は、パンチ31a、32a、33aの先端の収容し案内をする。また、上型12aには、その先端がストリッパー19を貫通した位置(下側の位置)にパイロットピン17が設けられている。パイロットピン17は、第1の工程にてワーク40aの四隅に正方形をなすように形成されたパイロット孔41に挿入される。
【0058】
ここで、パイロットピン17は第1の金型11におけるパイロット孔抜き部31と同一の位置に設けられることで、パイロット孔41にパイロットピン17を挿入するだけで中心Cを同一に保ちながら複数の加工を繰り返すことができる。
【0059】
一方、下型12bには、上型12aのパンチ34a、35a、36a、37aの位置に対応した位置に、これらを挿入可能な貫通孔34c、35c、36c、37cが形成されたダイが設けられている。下型12bには、パイロットピン17を挿入可能なパイロットピン挿入孔170が設けられている。
【0060】
以上の通り、パイロット孔抜き部31のパンチ31aに替えてパイロットピン17が設けられる点と、各パンチダイの配置が異なる点を除けば、ステップS2の第2の金型12は、ステップS1の第1の金型11と同等の構成を持つことになる。
【0061】
図7(a)の状態から上型12aと下型12bとを型閉じしてワーク40aをストリッパー19でクランプし、更に型締めをして力を加えることにより、スロット形状抜き部34、35、36、37の各パンチ34a、35a、36a、37aを用いてワーク40aの対応部分の孔抜き(第2の金型12を用いた1回目の成形:1ストローク加工)を行う。これにより、
図3(c)に示されるワーク40bが得られる。
【0062】
より具体的には、ストリッパー(ストリッパー入れ子)19によるクランプの前にパイロットピン17がワーク40aのパイロット孔41と下型12bのパイロットピン挿入孔170に挿入されることにより、第1の金型11及び第2の金型12に対するワーク40aの位置に合わせが行われる。続いて、ストリッパー19でワーク40aをクランプすることで、ワーク40aが適切な位置に固定される。次いで、ストリッパー19の貫通孔34b、35b、36b、37bに案内された各パンチ34a、35a、36a、37aを下型12bにおけるダイの貫通孔34c、35c、36c、37cに挿入することで、所定の打ち抜きを行うことができる。これにより、ロータプレート51のスロット44a、45a、および、丸孔46a、ならびに、ステータプレート53のスロット用孔47aが形成されたワーク40bが得られる。
【0063】
続いて、
図2のステップS3において、スロット等の成形を所定回数行ったか否かを判定する。本実施形態において、第2の金型12は、製品形状の1/4(90度分相当)だけ打ち抜き刃物(パンチ等)を有するため、第2の金型12を用いた第2の工程を4回繰り返す必要がある。すなわち、本実施形態における所定回数は4回となる。
【0064】
ステップS3にてスロット孔の成形を所定回数行っていない場合、ステップS4に進む。ステップS4において、ワーク40bを回転(本実施形態では90度だけ回転)させる。そして、ワーク40bに対して第2の金型12を用いてステップS2(1ストローク加工)を行うことにより、ワーク40cが得られる。同様に、回転と1ストローク加工とを繰り返し、ワーク40cからワーク40dが得られ、ワーク40dからワーク40eが得られる。
【0065】
このように、第2の金型12を用いて、パイロット孔41が成形されたワークをパイロットピン17に合わせて、成形毎に360度をbで除算した角度単位で回転させる動作を挟んで、スロットの成形を(b回)繰り返し行うことになる。すなわち、bは360を割り切れる整数となり、回転動作における回転角度は360/b(度)となる。このように、第2の金型12に対し相対的に回転させる回転動作を挟みながら、第2の金型12を用いてワークの孔を打ち抜く動作をb回(bは2以上の整数)繰り返すことで、複数の孔の全てを打ち抜くことになる。
【0066】
具体的には、
図7に示すような1ストローク加工を4回繰り返し、全4ストロークの加工を行うことで、所定のスロットの全周分全て成形された状態とすることができる。ここでも、パイロット孔41にパイロットピン17を挿入するだけで、中心Cを同一に保ちながら複数回の加工を正確かつ簡単に繰り返すことができる。
【0067】
また、本実施形態では、被成形品を一定方向に流しながら所定距離ずつ移動させながら加工を行う通常の順送プレス金型とは異なり、所定の角度(本実施形態では90度)ずつ回転させながら加工を行う必要がある。このため、本実施形態におけるパイロット孔41やパイロットピン17は、これらの中心Cに対して90度おきに配置されることになる。
【0068】
また、上述の工程は、第2の金型12を用いてワーク40aに対して複数の孔44a、45a、46a、47aを打ち抜くモータコアプレートの製造方法であり、第2の金型12を用いて、ワーク40aに対して複数の孔44a、45a、46a、47aのうち第1の孔を打ち抜く1回目のステップS2と、第2の金型12を用いて、第2の金型12に対し相対的に回転させたワーク40bに対して、複数の孔44a、45a、46a、47aのうち第1の孔44a、45a、46a、47aと回転対称(同一の孔グループ)の第2の孔44b、45b、46b、47bを打ち抜く2回目のステップS2とを少なくとも含むことが必要となり、実際には3回目までのステップS2を含むことになる。
【0069】
これにより、これらの第1の孔44a、45a、46a、47aおよび第2の孔44a、45a、46a、47aは、第2の金型12の共通のパンチ(スロット抜き部34、35、丸孔抜き部36、スロット用孔抜き部37)で打ち抜かれることで、刃物の数が削減される。
【0070】
ステップS3にてスロット孔の成形を所定回数行ったと判断された場合、ステップS5に進む。ステップS5において、モータコアプレート製造装置1は、第3の金型13(
図3(c)参照)を用いて、ワーク40eに対してロータプレート51の打ち抜きを行う(第3の工程)。なお、このステップ以降のステップに対応する工程でも、各パンチ、ダイ等の配置を除き、
図7に示されるようなパイロットピン17を有する金型が用いられることになるため、詳細な説明は省略する。このステップにおいても、パイロットピン17をパイロット孔41に挿入することで、中心Cを前のステップと合わせた状態でロータプレート外形抜き部38における加工を行うことができる。これにより、
図5(a)に示されるように、ワーク40eからロータプレート51が得られる。また、ロータプレート51を分離した後のワーク40fが得られる。
【0071】
すなわち、ステップS5では、スロット等の成形後に、第3の金型13(ロータプレートの打ち抜き金型)を用いてロータプレート51を打ち抜く工程が行われることになる。
【0072】
続いてステップS6において、モータコアプレート製造装置1は、ワーク40fに対してステータプレート53の打ち抜きを行う。ここでは、まずモータコアプレート製造装置1は、ステータプレート53の内周面の成形を行うため、ステータプレート内形抜き部39を有する第4の金型14(
図3(d)参照)を用いて、ワーク40fに対してプレス加工を行う(第4の工程)。これにより、
図5(b)に示されるように、ワーク40fからリング52が分離したワーク40gが得られる。
【0073】
続いて、モータコアプレート製造装置1は、ステータプレート53を成形するため、ステータ外形抜き部340を有する第5の金型15(
図3(e)参照)を用いて、ワーク40gに対してプレス加工を行う(第5の工程)。これにより、
図5(c)に示されるように、ワーク40gから、ステータプレート53およびスケルトン40hが得られる。以上のステップを経て、モータコアプレートを構成するロータプレート51およびステータプレート53を製造することができる。
【0074】
すなわちステップS6では、ステップ4でロータプレート51の打ち抜いた後に、第4の金型14と第5の金型15を用いてステータプレート53の外形を打ち抜く工程がわれることになる。すなわち、ステータプレート53を打ち抜くための金型は、ロータプレートを打ち抜いた金属板からステータプレート53の内周形状に打ち抜く第4の金型14と、ステータプレート53の外周形状で打ち抜く第5の金型15とで構成されることになる。そして、これらの金型14、15を用いて順次加工することで、ステータプレート53を成形される。以上により、ロータプレート51とステータプレート53の共取りが可能となる。
【0075】
(効果)
以上で説明したとおり、本実施形態によれば、刃物の数が少ない第2の金型12を用いてプレス加工で成形できるため、順送プレス金型を用いる場合よりも低コストであり、順送プレス金型を用いた場合と同等の高精度(±0.1mm)を確保することができる。
【0076】
また、第2の金型12において、刃物の数を大幅に削減することができるため、モータコアプレートを製造する金型の総コストを圧縮することが可能となる。また、刃物の数を大幅に削減することができるため、順送プレス金型を用いる場合よりもリードタイム(金型の製造時間)を短くすることが可能である。
【0077】
また、一括して孔抜きする数を大幅に減らすことで、50トン程度の能力の小型のプレス機でも比較的大形のモータコアを製造可能であり、設備投資を抑制しながらモータコアの高精度な製造を行うことができる。
【0078】
また、ワイヤーカット放電加工やレーザカット加工ではなく、順送プレス金型と同様に同じプレス方法(回転順送方式)を用いるため、試作で得られたノウハウを量産用の順送プレス金型に応用することができ、本実施形態で用いた刃物の設計をそのまま流用して順送プレス金型を用いた量産可能な方法を行うことができる。このように、試作から中量産において、低コストかつ高精度な加工を実現しつつ、量産品と同等の製品性能を期待することができる。
【0079】
また、プレスによる製造方法であるために、ロータプレート51の外周とステータプレート53の内周とを近接させて配置できることで、ロータプレート51とステータプレート53の共取りができ、材料を節約して低コスト化を図ることができる。
【0080】
(モータコアの製造方法)
次に、
図8を参照して、本実施形態におけるモータコア(より詳しくはロータブロック81およびステータブロック83)及びその製造方法について説明する。
図8(a)はロータブロック81の斜視図、
図8(b)はステータブロック83の斜視図である。
図8(a)に示されるように、ロータブロック81は、上述した各工程(ステップ)により製造された複数のロータプレート51を積層して構成される。同様に、
図8(b)に示されるように、ステータブロック83は、上述した各工程(ステップ)により製造された複数のステータプレート53を積層して構成される。
【0081】
続いて、複数のロータプレート51を上述したようなかしめ又は接着により固定してロータブロック81を形成した後、ロータブロック81のスロット44、45に磁石(図示せず)を挿入して固定し、軸を挿入して固定することにより、ロータ(図示せず)が製造される。
【0082】
また、複数のステータプレート53を積層したステータブロック83の内周に設けられたスロット(溝)で分けられた磁極部分に電線を巻き付けて巻き線(コイル)を成形することにより、ステータが製造される。これにより、本実施形態におけるモータコアブロックを低コストかつ高精度に製造できるため、モータコア(ロータおよびステータ)を低コストかつ高精度に製造できる。
以上で説明したとおり、本実施形態によれば、低コストで高精度なモータコアプレートの製造方法、モータコアの製造方法、金型、及び、モータコアプレート製造装置を提供することができる。
【0083】
(変形例)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0084】
上述した実施形態において第2の工程を行うモータコアプレート製造装置1を1台設ける構成例を示したが、これに限定されない、例えばモータコアプレート製造装置1を2台に増やして、並列的または直列的に打ち抜き動作を分担させる構成としてもよい。すなわち、2台の第2の工程を行うモータコアプレート製造装置1のそれぞれに供給されるワーク40の半分ずつを分担させる並列的な構成としてもよい。また、供給されるワーク40の全部について2台の第2の工程を行うモータコアプレート製造装置1に分担させるが、第2の工程の全ストローク(例えば4ストローク)のうちの半分のストローク(2ストローク)を1台のモータコアプレート製造装置1に分担させる直列的な構成としてもよい。
【0085】
また、上述した実施形態では、第2の金型12でのみ複数回(上述の例では4回)打ち抜く動作を繰り返す構成例について説明したが、第2の金型12に相当する金型を複数備える構成としてもよい。例えば、種類の異なる第2の金型12に相当する金型を複数設けて、それぞれについて別の回数の打ち抜きを行うこともできる。例えば、一方の第2の金型12では、4回打ち抜く構成とし、他方の第2の金型12では、5回打ち抜く構成する。
【0086】
具体的には、上述した第2の金型12とは別に、任意の正の整数cと2以上の整数d(上述のbと同一ではない)とを掛け合わせた数の孔を打ち抜く金型であって、ワークに対して、c個の孔を1回の打ち抜き動作に成形する刃物を備えた第2の金型12をさらに用いることができる。この構成例では、整数aと整数bとを掛け合わせた数の孔を打ち抜く金型(上述の実施形態における第2の金型12)を用いてパイロットピン17に合わせ当該数の孔(a×b)を打ち抜いた後に、整数cと整数dとを掛け合わせた数の孔を打ち抜く第2の金型12を用いてパイロットピン17に合わせて当該数(c×d)の孔を打ち抜く。これにより、例えば4回打ち抜く必要があるデザインと、5回打ち抜く必要があるデザインとが混在しているようなモータコアプレートであっても、金型コストの増加を抑えながら打ち抜くことが可能となるこのため、モータコアプレートの設計の自由度を高くすることができる。
【0087】
また、上述の実施形態では、ロータプレート51とステータプレート53を共取りできるような構成について説明したがこれに限定されない。例えば、1つのワーク40からロータプレート51のみを打ち抜く構成としてもよく、ステータプレート53のみを打ち抜く構成としてもよい。
【0088】
また、上述の実施形態ではモータコアプレートにおけるa個の孔を離して成形する例について説明したが、a個の孔(刃物)は、金型面上で近づけて成形されるように刃物を配置してもよい。この場合、パンチやダイなどを保持する部材を小さくすることができる。
【0089】
また、パイロット孔41を成形する第1の金型11を用いて、ワーク40に対してパイロット孔41を成形した後に、スロット44a、45a等の成形を行ったが、パイロット孔41は一連の工程で成形せずに、事前に成形しておいて、上述した第2の工程以降の工程のみを実施してもよい。
【0090】
また本実施形態において、各工程における各金型へのワークの投入および各金型からのワークの取り出しは、手動または自動のいずれで行ってもよい。
【0091】
また本実施形態において、第2の工程においてワークを回転させる際には、手動でワークを第2の金型から取り出して、回転後のワークを第2の金型に戻すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0092】
モータコアプレート製造装置において第2の金型を回転可能に構成し、ワークを手動で回転させる代わりに、第2の金型を自動で回転させてワークを取り出すことなく複数回の成形を行うように構成することもできる。
【0093】
また、ロータ及びステータを製造する際に、これらの磁石とコイルを入れ替えて製造できるようなモータコアプレートとしてもよい。この場合、スロット用孔をロータプレートの外周の位置に形成し、磁石を挿入するスロットをステータプレートに形成する。そして、複数のステータプレートを積層し、かしめ又は接着により固定してステータブロックを形成した後、ステータブロックのスロット、に磁石(図示せず)を挿入して固定することにより、ステータ(図示せず)が製造される。また、複数のロータプレートを積層したロータブロックの外周に設けられたスロット(溝)で分けられた磁極部分に電線を巻き付けて巻き線(コイル)を成形し、軸を挿入して固定することにより、ロータが製造される。
【符号の説明】
【0094】
1 モータコアプレート製造装置(プレス装置)
11 第1の金型
12 第2の金型
13 第3の金型
14 第4の金型
15 第5の金型
16、19 ストリッパー
17 パイロットピン
34、35 スロット抜き部
36 丸孔抜き部
37 スロット用孔抜き部
40 ワーク
51 ロータプレート
53 ステータプレート
81 ロータブロック
83 ステータブロック