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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】試料容器およびキャップ
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20231010BHJP
   B01L 3/00 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
G01N35/02 B
B01L3/00
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2019062668
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020160007
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】千田 剛
(72)【発明者】
【氏名】小池 洋毅
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-144782(JP,A)
【文献】特開昭59-010349(JP,A)
【文献】国際公開第2018/161618(WO,A1)
【文献】特表2014-517916(JP,A)
【文献】特開2007-205728(JP,A)
【文献】特開2005-324832(JP,A)
【文献】特開2014-211437(JP,A)
【文献】特開2012-159358(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0224497(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
B01L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する容器本体と、
前記容器本体の前記開口を塞ぐように配置され、吸引管が通過可能なスリットが形成されたスリット形成部と、前記スリットとは異なる位置に設けられ、少なくとも前記スリットからの前記吸引管の引き抜き時に前記吸引管の外周面と接触する接触部とを含むキャップと、を備え、
前記容器本体は、前記開口とは反対側に底面を有する筒状形状を有し、
前記接触部は、前記スリット形成部における前記容器本体の底面側の表面に設けられた第1接触部を含み、
前記第1接触部は、前記スリットの中心の周りに配置された複数の突起により構成され、前記スリットから前記吸引管が引き抜かれる際の前記スリット形成部の変形に伴って、前記複数の突起が前記吸引管に向けて移動するように構成されている、試料容器。
【請求項2】
前記接触部は、前記吸引管の通過方向から見て前記スリットの中心の周りを取り囲むように配置されている、請求項1に記載の試料容器。
【請求項3】
前記スリット形成部は、前記スリット内の前記吸引管との摺動により前記底面側の表面が前記開口側に変形し、
前記複数の突起は、前記スリット形成部の前記開口側への変形に伴って前記吸引管側に倒れることにより、先端部を前記吸引管の外周面に接触させるように構成されている、請求項1または2に記載の試料容器。
【請求項4】
前記スリット形成部は、前記スリットによって分割された複数の片部を有し、
前記複数の突起の数は、前記複数の片部の数よりも多い、請求項3に記載の試料容器。
【請求項5】
前記複数の突起は、前記吸引管が引き抜かれる際の前記スリット形成部の変形に伴って、隣り合う前記突起の先端部が互いに接触して環状の前記第1接触部を形成するように構成され、
環状の前記第1接触部の内径が、前記吸引管の外径に一致する、請求項3または4に記載の試料容器。
【請求項6】
前記キャップは、前記スリット形成部および前記第1接触部を囲むように設けられ、弾性変形して前記スリット形成部および前記第1接触部を移動可能に支持する弾性部をさらに含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の試料容器。
【請求項7】
前記スリット形成部は、前記容器本体の前記底面側に突出するように前記弾性部に接続されている、請求項6に記載の試料容器。
【請求項8】
前記複数の突起は、前記吸引管が前記スリットに挿入される際の前記スリット形成部の変形に伴って、前記吸引管から離れる方向に移動するように構成されている、請求項3~7のいずれか1項に記載の試料容器。
【請求項9】
開口を有する容器本体と、
前記容器本体の前記開口を塞ぐように配置され、吸引管が通過可能なスリットが形成されたスリット形成部と、前記スリットとは異なる位置に設けられ、少なくとも前記スリットからの前記吸引管の引き抜き時に前記吸引管の外周面と接触する接触部とを含むキャップと、を備え、
前記接触部は、前記吸引管の通過方向において前記スリット形成部に対して、前記容器本体の底面側とは反対側に配置された第2接触部を含む、試料容器。
【請求項10】
前記第2接触部は、吸水性素材により形成されている、請求項9に記載の試料容器。
【請求項11】
前記第2接触部は、前記吸引管が接触状態で通過可能な貫通した通路部を有する、請求項9または10に記載の試料容器。
【請求項12】
前記容器本体は、前記開口とは反対側に底面を有する筒状形状を有し、
前記キャップは、前記スリット形成部から前記開口に向けて延びる筒状部と、前記筒状部から前記開口の中心軸に向けて突出する係止部とを含み、
前記第2接触部は、前記筒状部の内部で前記スリット形成部と前記係止部との間に配置され、かつ、前記筒状部と前記第2接触部との間に隙間を有することにより前記筒状部内で移動可能に形成されている、請求項11に記載の試料容器。
【請求項13】
前記容器本体は、前記開口とは反対側に底面を有する筒状形状を有し、
前記接触部は、前記スリット形成部の前記底面側の表面に設けられた第1接触部を含む、請求項9~12のいずれか1項に記載の試料容器。
【請求項14】
前記第1接触部は、
前記スリットの中心の周りに配置された複数の突起により構成され、
前記スリットから前記吸引管が引き抜かれる際の前記スリット形成部の変形に伴って、前記複数の突起が前記吸引管に向けて移動するように構成されている、請求項13に記載の試料容器。
【請求項15】
前記キャップを覆うように前記容器本体に配置されたキャップカバーをさらに備え、
前記キャップカバーは、前記容器本体の外周を取り囲むように配置される周壁部を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の試料容器。
【請求項16】
前記容器本体内に設けられ、前記容器本体内を摺動するピストンと、前記ピストンに接続され前記容器本体の底面から突出するピストンロッドと、をさらに備え、
前記ピストンロッドの前記ピストン近傍には、前記ピストンから前記ピストンロッドを折って除去するための切り込みが設けられ、
前記キャップカバーには、前記キャップの前記スリットに挿入される管部が取り付け可能に構成されている、請求項15に記載の試料容器。
【請求項17】
容器本体の開口を塞ぐように配置され、吸引管が通過可能なスリットが形成された試料容器用のキャップであって、
前記スリットが形成されたスリット形成部と、
前記スリットとは異なる位置に設けられ、少なくとも前記スリットからの前記吸引管の引き抜き時に前記吸引管の外周面と接触する接触部と、を備え、
前記接触部は、前記スリット形成部における前記容器本体の底面側の表面に設けられた第1接触部を含み、
前記第1接触部は、前記スリットの中心の周りに配置された複数の突起により構成され、前記スリットから前記吸引管が引き抜かれる際の前記スリット形成部の変形に伴って、前記複数の突起が前記吸引管に向けて移動するように構成されている、キャップ。
【請求項18】
前記接触部は、前記吸引管の通過方向から見て前記スリットの中心の周りを取り囲むように配置されている、請求項17に記載のキャップ。
【請求項19】
前記スリット形成部は、前記スリット内の前記吸引管との摺動により前記底面側の表面が前記開口側に変形し、
前記複数の突起は、前記スリット形成部の前記開口側への変形に伴って前記吸引管側に倒れることにより、先端部を前記吸引管の外周面に接触させるように構成されている、請求項17または18に記載のキャップ。
【請求項20】
前記スリット形成部は、前記スリットによって分割された複数の片部を有し、
前記複数の突起の数は、前記複数の片部の数よりも多い、請求項19に記載のキャップ。
【請求項21】
前記複数の突起は、前記吸引管が引き抜かれる際の前記スリット形成部の変形に伴って、隣り合う前記突起の先端部が互いに接触して環状の前記第1接触部を形成するように構成され、
環状の前記第1接触部の内径が、前記吸引管の外径に一致する、請求項19または20に記載のキャップ。
【請求項22】
前記スリット形成部および前記第1接触部を囲むように設けられ、弾性変形して前記スリット形成部および前記第1接触部を移動可能に支持する弾性部をさらに備える、請求項19~21のいずれか1項に記載のキャップ。
【請求項23】
前記スリット形成部は、前記容器本体の前記底面側に突出するように前記弾性部に接続されている、請求項22に記載のキャップ。
【請求項24】
前記複数の突起は、前記吸引管が前記スリットに挿入される際の前記スリット形成部の変形に伴って、前記吸引管から離れる方向に移動するように構成されている、請求項19~23のいずれか1項に記載のキャップ。
【請求項25】
容器本体の開口を塞ぐように配置され、吸引管が通過可能なスリットが形成された試料容器用のキャップであって、
前記スリットが形成されたスリット形成部と、
前記スリットとは異なる位置に設けられ、少なくとも前記スリットからの前記吸引管の引き抜き時に前記吸引管の外周面と接触する接触部と、を備え、
前記接触部は、前記吸引管の通過方向において前記スリット形成部に対して、前記容器本体の底面側とは反対側に配置された第2接触部を含む、キャップ。
【請求項26】
前記第2接触部は、吸水性素材により形成されている、請求項25に記載のキャップ。
【請求項27】
前記第2接触部は、前記吸引管が接触状態で通過可能な貫通した通路部を有する、請求項25または26に記載のキャップ。
【請求項28】
前記スリット形成部から前記開口に向けて延びる筒状部と、
前記筒状部から前記開口の中心軸に向けて突出する係止部とをさらに備え、
前記第2接触部は、前記筒状部の内部で前記スリット形成部と前記係止部との間に配置され、かつ、前記筒状部と前記第2接触部との間に隙間を有することにより前記筒状部内で移動可能に形成されている、請求項27に記載のキャップ。
【請求項29】
前記接触部は、前記スリット形成部における前記容器本体の底面側の表面に設けられた第1接触部を含む、請求項25~28のいずれか1項に記載のキャップ。
【請求項30】
前記第1接触部は、
前記スリットの中心の周りに配置された複数の突起により構成され、
前記スリットから前記吸引管が引き抜かれる際の前記スリット形成部の変形に伴って、前記複数の突起が前記吸引管に向けて移動するように構成されている、請求項29に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試料容器およびキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図22に示すように、開口901を有する容器本体902と、容器本体902の開口901を塞ぐように配置され、吸引管905が通過可能なスリット(切り込み穴)904が形成されたキャップ903と、を備える試料容器900が開示されている。試料容器900は、血液や尿等の体液試料を収容する。この特許文献1の試料容器900は、キャップ903のスリット904を介して吸引管905を試料容器900に挿入して試料を吸引し、吸引後に吸引管905をスリット904から抜き去ることによりスリット904が閉じて試料容器900が閉塞されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/118076号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されたような試料容器は、自動測定装置にセットされる。自動測定装置が備える吸引管により試料容器内の試料が吸引された後、自動測定装置において試料に対する測定動作が実施される。自動測定装置では、複数の試料を測定する際の試料のキャリーオーバーを抑制するために、試料の吸引後の吸引管が洗浄液により洗浄される。しかし、試料に含有される成分の濃度が高い場合や試料の粘性が高い場合など様々な試料が想定されるため、自動測定装置における吸引管の洗浄能力や洗浄時間を十分に確保する必要がある。
【0005】
ここで、試料容器から引き抜いた後に吸引管に付着する試料が低減されれば、自動測定装置における吸引管の洗浄処理に要求される洗浄能力や洗浄時間の条件を緩和することができる。そこで、試料容器から引き抜いた後の吸引管の表面に試料が残留することを抑制可能な試料容器が望まれている。
【0006】
この発明は、試料容器から引き抜いた後の吸引管の表面に試料が残留するのを抑制することに向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の局面による試料容器(100)は、図1に示すように、開口(21)を有する容器本体(20)と、容器本体(20)の開口(21)を塞ぐように配置され、吸引管(30)が通過可能なスリット(11a)が形成されたスリット形成部(11)と、スリットとは異なる位置に設けられ、少なくともスリットからの吸引管の引き抜き時に吸引管の外周面と接触する接触部とを含むキャップと、を備え、容器本体は、開口とは反対側に底面を有する筒状形状を有し、接触部は、スリット形成部における容器本体の底面側の表面に設けられた第1接触部を含み、第1接触部は、スリットの中心の周りに配置された複数の突起により構成され、スリットから吸引管が引き抜かれる際のスリット形成部の変形に伴って、複数の突起が吸引管に向けて移動するように構成されている。なお、「少なくともスリットからの吸引管の引き抜き時に吸引管の外周面と接触する」とは、試料用器内の試料を吸引するために吸引管をスリットに挿入する時には、接触部が吸引管の外周面とは接触しない構成を許容することを意味する。
【0008】
この発明の第1の局面による試料容器(100)では、上記のように、キャップ(10)に形成されたスリット(11a)に加えて、スリット(11a)とは異なる位置に設けられた接触部(12)が、少なくともスリット(11a)からの吸引管(30)の引き抜き時に吸引管(30)の外周面(31)と接触する。そのため、吸引管(30)の引き抜き時に、吸引管(30)とスリット(11a)の内面との接触によって吸引管(30)の外周面(31)に付着した試料が除去されることに加えて、さらに吸引管(30)と接触部(12)との接触によって吸引管(30)の外周面(31)に付着した試料が除去される。その結果、試料を吸引した吸引管(30)が試料容器(100)から引き抜かれた後に、吸引管(30)の外周面(31)に付着した状態で試料が残留することを抑制できる。以上により、試料容器(100)から引き抜いた後の吸引管(30)の表面に試料が残留するのを抑制することができる。
【0009】
図5に示すように、上記第1の局面による試料容器(100)において、好ましくは、接触部(12)は、吸引管(30)の通過方向から見てスリット(11a)の中心の周りを取り囲むように配置されている。このように構成すれば、スリット(11a)に挿入された吸引管(30)の周囲を取り囲むように接触部(12)を配置できる。そのため、吸引管(30)の外周面(31)の周方向におけるより広い範囲に亘って、吸引管(30)に付着した試料を除去することができる。そのため、吸引管(30)の表面における試料の残留を効果的に抑制できる。
【0010】
図4に示すように、上記第1の局面による試料容器(100)では、容器本体(20)は、開口(21)とは反対側に底面(22)を有する筒状形状を有し、接触部(12)は、スリット形成部(11)の底面(22)側の表面(11c)に設けられた第1接触部(110)を含む。これにより、吸引管(30)をスリット(11a)から引き抜く際に、吸引管(30)のうち試料が付着した領域は、最初に第1接触部(110)に到達して付着した試料が除去された後で、スリット形成部(11)に到達する。そのため、吸引管(30)に付着した試料がスリット(11a)によって除去されることを抑制できる。ここで、スリット(11a)によって試料が除去される場合、試料はスリット形成部(11)のスリット(11a)の部分に付着する。スリット(11a)は、吸引管(30)が挿入されることにより押し拡げられて隙間が形成され、吸引管(30)が抜き取られることにより復元して隙間が閉じる。そのため、スリット(11a)の部分に試料が付着していると、吸引管(30)がスリット(11a)から抜き取られて隙間が閉じる際に、スリット(11a)に付着した試料が飛散する可能性がある。上記構成によれば、吸引管(30)に付着した試料がスリット(11a)によって除去されることを抑制できるので、スリット(11a)に付着した試料が飛散することを抑制できる。
【0011】
図7に示すように、上記第1の局面による試料容器では、第1接触部(110)は、スリット(11a)の中心の周りに配置された複数の突起(111)により構成され、スリット(11a)から吸引管(30)が引き抜かれる際のスリット形成部(11)の変形に伴って、複数の突起(111)が吸引管(30)に向けて移動するように構成されている。これにより、吸引管(30)が引き抜かれる際の吸引管(30)とスリット形成部(11)との摩擦によって、スリット形成部(11)は開口(21)側に引き摺られるように変形する。このスリット形成部(11)の変形を利用して、複数の突起(111)を吸引管(30)に向けて移動させて吸引管(30)の外周面(31)に押し付けることができる。その結果、より確実に、吸引管(30)に付着した試料を除去することができる。
【0012】
図7に示すように、上記スリット(11a)から吸引管(30)が引き抜かれる際のスリット形成部(11)の変形に伴って、複数の突起(111)が吸引管(30)に向けて移動する構成において、好ましくは、スリット形成部(11)は、スリット(11a)内の吸引管(30)との摺動により底面(22)側の表面(11c)が開口(21)側に変形し、複数の突起(111)は、スリット形成部(11)の開口(21)側への変形に伴って吸引管(30)側に倒れることにより、先端部(112)を吸引管(30)の外周面(31)に接触させるように構成されている。このように構成すれば、吸引管(30)との摩擦によってスリット形成部(11)が開口(21)側に引き摺られることにより、スリット形成部(11)の底面(22)側の表面(11c)が、吸引管(30)を中心に、吸引管(30)の外周面(31)に近付くように傾斜する。そのため、スリット形成部(11)の底面(22)側の表面(11c)に設けた複数の突起(111)を、吸引管(30)側に傾斜するように倒して吸引管(30)に押圧することができる。このように、吸引管(30)が引き抜かれる際のスリット形成部(11)の変形を利用することによって、簡単な構造で、より確実に、第1接触部(110)を吸引管(30)に接触させることができる。
【0013】
図11に示すように、この場合、好ましくは、スリット形成部(11)は、スリット(11a)によって分割された複数の片部(11b)を有し、複数の突起(111)の数は、複数の片部(11b)の数よりも多い。このように構成すれば、吸引管(30)がスリット(11a)を通過する際に接触する片部(11b)の数よりも多い数の突起(111)によって、吸引管(30)に付着した試料を除去することができる。そのため、より効果的に、吸引管(30)に付着した試料を除去することができる。
【0014】
図9に示すように、上記スリット(11a)から吸引管(30)が引き抜かれる際のスリット形成部(11)の変形に伴って、複数の突起(111)が吸引管(30)に向けて移動する構成において、好ましくは、複数の突起(111)は、吸引管(30)が引き抜かれる際のスリット形成部(11)の変形に伴って、隣り合う突起(111)の先端部(112)が互いに接触して環状の第1接触部(110)を形成するように構成され、環状の第1接触部(110)の内径が、吸引管(30)の外径に一致する。このように構成すれば、複数の突起(111)が環状の第1接触部(110)を形成するように隣接し、吸引管(30)の外周面(31)に押し付けられることによって、環状の第1接触部(110)の内径が、吸引管(30)の外径に一致する。その結果、第1接触部(110)が、吸引管(30)の外周面(31)と周方向の全周に亘って接触することができるので、吸引管(30)に付着した試料が残留することを、より一層効果的に抑制できる。
【0015】
図4に示すように、上記スリット(11a)から吸引管(30)が引き抜かれる際のスリット形成部(11)の変形に伴って、複数の突起(111)が吸引管(30)に向けて移動する構成において、好ましくは、キャップ(10)は、スリット形成部(11)および第1接触部(110)を囲むように設けられ、弾性変形してスリット形成部(11)および第1接触部(110)を移動可能に支持する弾性部(15)をさらに含む。このように構成すれば、スリット(11a)に挿入された吸引管(30)が引き抜かれる際の摩擦によって、弾性部(15)が引張変形を生じて、スリット形成部(11)および第1接触部(110)の全体を開口(21)側に移動させる。弾性部(15)によってスリット形成部(11)および第1接触部(110)の移動量が大きくなるので、複数の突起(111)が設けられたスリット形成部(11)の底面(22)側の表面(11c)を大きく傾斜させることができる。その結果、複数の突起(111)の移動量を大きくできるので、より確実に、複数の突起(111)を吸引管(30)の外周面(31)に接触させることができる。また、吸引管(30)がスリット(11a)の中心からずれた状態で挿入された場合でも、弾性部(15)の弾性変形によって、スリット形成部(11)および第1接触部(110)の全体を吸引管(30)の位置に追従するように移動させることができる。その結果、スリット(11a)の中心からずれて挿入された状態の吸引管(30)が引き抜かれる際にも、複数の突起(111)を吸引管(30)の外周面(31)に接触させることができる。
【0016】
図4に示すように、この場合、好ましくは、スリット形成部(11)は、容器本体(20)の底面(22)側に突出するように弾性部(15)に接続されている。このように構成すれば、スリット形成部(11)が、吸引管(30)が挿入されていない状態で、予め容器本体(20)の底面(22)側に凸状に形成される。そのため、スリット(11a)に挿入された吸引管(30)が引き抜かれる際に、スリット形成部(11)を、底面(22)側に向いた凸状の状態から開口(21)側に大きく変形させることができる。これにより、スリット形成部(11)の底面(22)側の表面(11c)の変形量を大きく確保できるので、スリット形成部(11)の底面(22)側の表面(11c)の変形に伴う複数の突起(111)の移動量を大きくすることができる。その結果、より確実に、複数の突起(111)を吸引管(30)の外周面(31)に接触させることができる。
【0017】
図6に示すように、上記スリット(11a)から吸引管(30)が引き抜かれる際のスリット形成部(11)の変形に伴って、複数の突起(111)が吸引管(30)に向けて移動する構成において、好ましくは、複数の突起(111)は、吸引管(30)がスリット(11a)に挿入される際のスリット形成部(11)の変形に伴って、吸引管(30)から離れる方向に移動するように構成されている。このように構成すれば、吸引管(30)がスリット(11a)に挿入される際には、スリット形成部(11)が底面(22)側に引き摺られるように変形するので、複数の突起(111)を吸引管(30)から離れる方向に移動させて吸引管(30)と非接触の状態にすることができる。これにより、試料容器(100)内に吸引管(30)を挿入する際の摺動抵抗を抑制できるので、試料の吸引時に、容易に吸引管(30)を試料容器(100)内に挿入することができる。
【0018】
図16に示すように、第2の局面による試料容器は、開口を有する容器本体と、容器本体の開口を塞ぐように配置され、吸引管が通過可能なスリットが形成されたスリット形成部と、スリットとは異なる位置に設けられ、少なくともスリットからの吸引管の引き抜き時に吸引管の外周面と接触する接触部とを含むキャップと、を備え、接触部(12)は、吸引管(30)の通過方向においてスリット形成部(11)に対して、容器本体の底面側とは反対側に配置された第2接触部(120)を含む。これにより、吸引管(30)が試料容器(100)から引き抜かれる際に、スリット(11a)を通過した部分に付着した試料を除去することができる。また、吸引管(30)がスリット(11a)から抜き取られてスリット(11a)の隙間が閉じる際に、スリット(11a)に付着した試料が開口(21)の外部へ飛散することを、第2接触部(120)によって抑制することができる。
【0019】
図16に示すように、上記第2の局面による試料容器において、好ましくは、第2接触部(120)は、吸水性素材により形成されている。このように構成すれば、吸引管(30)に付着した試料を吸収して、吸引管(30)の外周面(31)から除去することができる。
【0020】
図16に示すように、上記第2の局面による試料容器において、好ましくは、第2接触部(120)は、吸引管(30)が接触状態で通過可能な貫通した通路部(121)を有する。このように構成すれば、吸引管(30)が第2接触部(120)の通路部(121)を通過する過程で、吸引管(30)の外周面(31)に付着した試料を、通路部(121)の内面によって拭き取ることができる。その結果、吸引管(30)の外周面(31)における試料の残留を効果的に抑制できる。
【0021】
図16に示すように、この場合、好ましくは、容器本体(20)は、開口(21)とは反対側に底面(22)を有する筒状形状を有し、キャップ(10)は、スリット形成部(11)から開口(21)に向けて延びる筒状部(13)と、筒状部(13)から開口(21)の中心軸に向けて突出する係止部(16)とを含み、第2接触部(120)は、筒状部(13)の内部でスリット形成部(11)と係止部(16)との間に配置され、かつ、筒状部(13)と第2接触部(120)との間に隙間(CL)を有することにより筒状部(13)内で移動可能に形成されている。このように構成すれば、第2接触部(120)をキャップ(10)の内部に収納することができる。そのため、たとえば第2接触部(120)をキャップ(10)とは別個に容器本体(20)に取り付ける構成と比較して、試料容器(100)の構造を簡素化できる。また、第2接触部(120)が、筒状部(13)と第2接触部(120)との間の隙間(CL)の分だけ筒状部(13)内で移動できるので、吸引管(30)がスリット(11a)の中心からずれた状態で挿入される場合でも、吸引管(30)の位置ずれに追従するように第2接触部(120)を移動させることができる。
【0022】
図20に示すように、上記第2の局面による試料容器において、好ましくは、キャップ(10)を覆うように容器本体(20)に配置されたキャップカバー(40)をさらに備え、キャップカバー(40)は、容器本体(20)の外周を取り囲むように配置される周壁部(41)を含む。このように構成すれば、キャップカバー(40)の周壁部(41)を把持して、キャップ(10)を容易に着脱することができる。
【0023】
図21に示すように、この場合、好ましくは、容器本体(20)内に設けられ、容器本体(20)内を摺動するピストン(60)と、ピストン(60)に接続され容器本体(20)の底面(22)から突出するピストンロッド(61)と、をさらに備え、ピストンロッド(61)のピストン(60)近傍には、ピストン(60)からピストンロッド(61)を折って除去するための切り込み(62)が設けられ、キャップカバー(70)には、キャップ(10)のスリット(11a)に挿入される管部(80)が取り付け可能に構成されている。このように構成すれば、ピストンロッド(61)を引いてピストン(60)を容器の底面(22)側に移動させることにより、管部(80)を介してスリット(11a)の内側の容器本体(20)内に試料を容易に導入することができる。また、ピストンロッド(61)を引いて試料を導入した後、ピストンロッド(61)をピストン(60)近傍で折って除去することにより、ピストンロッド(61)が邪魔になるのを抑制することができる。
【0024】
この発明の第の局面によるキャップ(10)は、図1に示すように、容器本体(20)の開口(21)を塞ぐように配置され、吸引管(30)が通過可能なスリット(11a)が形成された試料容器(100)用のキャップ(10)であって、スリット(11a)が形成されたスリット形成部(11)と、スリット(11a)とは異なる位置に設けられ、少なくともスリット(11a)からの吸引管(30)の引き抜き時に吸引管(30)の外周面(31)と接触する接触部(12)と、を備え、接触部は、スリット形成部における容器本体の底面側の表面に設けられた第1接触部を含み、第1接触部は、スリットの中心の周りに配置された複数の突起により構成され、スリットから吸引管が引き抜かれる際のスリット形成部の変形に伴って、複数の突起が吸引管に向けて移動するように構成されている
【0025】
この発明の第の局面によるキャップ(10)では、上記のように、キャップ(10)のスリット形成部(11)に形成されたスリット(11a)に加えて、スリット(11a)とは異なる位置に設けられた接触部(12)が、少なくともスリット(11a)からの吸引管(30)の引き抜き時に吸引管(30)の外周面(31)と接触する。そのため、吸引管(30)の引き抜き時に、吸引管(30)とスリット(11a)の内面との接触によって吸引管(30)の外周面(31)に付着した試料が除去されることに加えて、さらに吸引管(30)と接触部(12)との接触によって吸引管(30)の外周面(31)に付着した試料が除去される。その結果、試料を吸引した吸引管(30)が試料容器(100)から引き抜かれた後に、吸引管(30)の外周面(31)に付着した状態で試料が残留することを抑制できる。以上により、試料容器(100)から引き抜いた後の吸引管(30)の表面に試料が残留するのを抑制することができる。
【0026】
図5に示すように、上記第の局面によるキャップ(10)において、好ましくは、接触部(12)は、吸引管(30)の通過方向から見てスリット(11a)の中心の周りを取り囲むように配置されている。このように構成すれば、スリット(11a)に挿入された吸引管(30)の周囲を取り囲むように接触部(12)を配置できる。そのため、吸引管(30)の外周面(31)の周方向におけるより広い範囲に亘って、吸引管(30)に付着した試料を除去することができる。そのため、吸引管(30)の表面における試料の残留を効果的に抑制できる。
【0027】
図4に示すように、上記第の局面によるキャップでは、接触部(12)は、スリット形成部(11)における容器本体(20)の底面(22)側の表面(11c)に設けられた第1接触部(110)を含む。これにより、吸引管(30)をスリット(11a)から引き抜く際に、吸引管(30)のうち試料が付着した領域は、最初に第1接触部(110)に到達して付着した試料が除去された後で、スリット形成部(11)に到達する。そのため、吸引管(30)に付着した試料がスリット(11a)によって除去されることを抑制できる。ここで、スリット(11a)によって試料が除去される場合、試料はスリット形成部(11)のスリット(11a)の部分に付着する。スリット(11a)は、吸引管(30)が挿入されることにより押し拡げられて隙間が形成され、吸引管(30)が抜き取られることにより復元して隙間が閉じる。そのため、スリット(11a)の部分に試料が付着していると、吸引管(30)がスリット(11a)から抜き取られて隙間が閉じる際に、スリット(11a)に付着した試料が飛散する可能性がある。上記構成によれば、吸引管(30)に付着した試料がスリット(11a)によって除去されることを抑制できるので、スリット(11a)に付着した試料が飛散することを抑制できる。
【0028】
図7に示すように、上記第3の局面によるキャップでは、第1接触部(110)は、スリット(11a)の中心の周りに配置された複数の突起(111)により構成され、スリット(11a)から吸引管(30)が引き抜かれる際のスリット形成部(11)の変形に伴って、複数の突起(111)が吸引管(30)に向けて移動するように構成されている。これにより、吸引管(30)が引き抜かれる際の吸引管(30)とスリット形成部(11)との摩擦によって、スリット形成部(11)は開口(21)側に引き摺られるように変形する。このスリット形成部(11)の変形を利用して、複数の突起(111)を吸引管(30)に向けて移動させて吸引管(30)の外周面(31)に押し付けることができる。その結果、より確実に、吸引管(30)に付着した試料を除去することができる。
【0029】
図7に示すように、上記スリット(11a)から吸引管(30)が引き抜かれる際のスリット形成部(11)の変形に伴って、複数の突起(111)が吸引管(30)に向けて移動する構成において、好ましくは、スリット形成部(11)は、スリット(11a)内の吸引管(30)との摺動により底面(22)側の表面(11c)が開口(21)側に変形し、複数の突起(111)は、スリット形成部(11)の開口(21)側への変形に伴って吸引管(30)側に倒れることにより、先端部(112)を吸引管(30)の外周面(31)に接触させるように構成されている。このように構成すれば、吸引管(30)との摩擦によってスリット形成部(11)が開口(21)側に引き摺られることにより、スリット形成部(11)の底面(22)側の表面(11c)が、吸引管(30)を中心に、吸引管(30)の外周面(31)に近付くように傾斜する。そのため、スリット形成部(11)の底面(22)側の表面(11c)に設けた複数の突起(111)を、吸引管(30)側に傾斜するように倒して吸引管(30)に押圧することができる。このように、吸引管(30)が引き抜かれる際のスリット形成部(11)の変形を利用することによって、簡単な構造で、より確実に、第1接触部(110)を吸引管(30)に接触させることができる。
【0030】
図11に示すように、この場合、好ましくは、スリット形成部(11)は、スリット(11a)によって分割された複数の片部(11b)を有し、複数の突起(111)の数は、複数の片部(11b)の数よりも多い。このように構成すれば、吸引管(30)がスリット(11a)を通過する際に接触する片部(11b)の数よりも多い数の突起(111)によって、吸引管(30)に付着した試料を除去することができる。そのため、より効果的に、吸引管(30)に付着した試料を除去することができる。
【0031】
図9に示すように、上記スリット(11a)から吸引管(30)が引き抜かれる際のスリット形成部(11)の変形に伴って、複数の突起(111)が吸引管(30)に向けて移動する構成において、好ましくは、複数の突起(111)は、吸引管(30)が引き抜かれる際のスリット形成部(11)の変形に伴って、隣り合う突起(111)の先端部(112)が互いに接触して環状の第1接触部(110)を形成するように構成され、環状の第1接触部(110)の内径が、吸引管(30)の外径に一致する。このように構成すれば、複数の突起(111)部が環状の第1接触部(110)を形成するように隣接し、吸引管(30)の外周面(31)に押し付けられることによって、環状の第1接触部(110)の内径が、吸引管(30)の外径に一致する。その結果、第1接触部(110)が、吸引管(30)の外周面(31)と周方向の全周に亘って接触することができるので、吸引管(30)に付着した試料が残留することを、より一層効果的に抑制できる。
【0032】
図4に示すように、上記スリット(11a)から吸引管(30)が引き抜かれる際のスリット形成部(11)の変形に伴って、複数の突起(111)が吸引管(30)に向けて移動する構成において、好ましくは、スリット形成部(11)および第1接触部(110)を囲むように設けられ、弾性変形してスリット形成部(11)および第1接触部(110)を移動可能に支持する弾性部(15)をさらに備える。このように構成すれば、スリット(11a)に挿入された吸引管(30)が引き抜かれる際の摩擦によって、弾性部(15)が引張変形を生じて、スリット形成部(11)および第1接触部(110)の全体を開口(21)側に移動させる。弾性部(15)によってスリット形成部(11)および第1接触部(110)の移動量が大きくなるので、複数の突起(111)が設けられたスリット形成部(11)の底面(22)側の表面(11c)を大きく傾斜させることができる。その結果、複数の突起(111)の移動量を大きくできるので、より確実に、複数の突起(111)を吸引管(30)の外周面(31)に接触させることができる。また、吸引管(30)がスリット(11a)の中心からずれた状態で挿入された場合でも、弾性部(15)の弾性変形によって、スリット形成部(11)および第1接触部(110)の全体を吸引管(30)の位置に追従するように移動させることができる。その結果、スリット(11a)の中心からずれて挿入された状態の吸引管(30)が引き抜かれる際にも、複数の突起(111)を吸引管(30)の外周面(31)に接触させることができる。
【0033】
図4に示すように、この場合、好ましくは、スリット形成部(11)は、容器本体(20)の底面(22)側に突出するように弾性部(15)に接続されている。このように構成すれば、スリット形成部(11)が、吸引管(30)が挿入されていない状態で、予め容器本体(20)の底面(22)側に凸状に形成される。そのため、スリット(11a)に挿入された吸引管(30)が引き抜かれる際に、スリット形成部(11)を、底面(22)側に向いた凸状の状態から開口(21)側に大きく変形させることができる。これにより、スリット形成部(11)の底面(22)側の表面(11c)の変形量を大きく確保できるので、スリット形成部(11)の底面(22)側の表面(11c)の変形に伴う複数の突起(111)の移動量を大きくすることができる。その結果、より確実に、複数の突起(111)を吸引管(30)の外周面(31)に接触させることができる。
【0034】
図6に示すように、上記スリット(11a)から吸引管(30)が引き抜かれる際のスリット形成部(11)の変形に伴って、複数の突起(111)が吸引管(30)に向けて移動する構成において、好ましくは、複数の突起(111)は、吸引管(30)がスリット(11a)に挿入される際のスリット形成部(11)の変形に伴って、吸引管(30)から離れる方向に移動するように構成されている。このように構成すれば、吸引管(30)がスリット(11a)に挿入される際には、スリット形成部(11)が底面(22)側に引き摺られるように変形するので、複数の突起(111)を吸引管(30)から離れる方向に移動させて吸引管(30)と非接触の状態にすることができる。これにより、試料容器(100)内に吸引管(30)を挿入する際の摺動抵抗を抑制できるので、試料の吸引時に、容易に吸引管(30)を試料容器(100)内に挿入することができる。
【0035】
図16に示すように、第4の局面によるキャップは、容器本体の開口を塞ぐように配置され、吸引管が通過可能なスリットが形成された試料容器用のキャップであって、スリットが形成されたスリット形成部と、スリットとは異なる位置に設けられ、少なくともスリットからの吸引管の引き抜き時に吸引管の外周面と接触する接触部と、を備え、接触部(12)は、吸引管(30)の通過方向においてスリット形成部(11)に対して、容器本体の底面側とは反対側に配置された第2接触部(120)を含む。これにより、吸引管(30)が試料容器(100)から引き抜かれる際に、スリット(11a)を通過した部分に付着した試料を除去することができる。また、吸引管(30)がスリット(11a)から抜き取られてスリット(11a)の隙間が閉じる際に、スリット(11a)に付着した試料が開口(21)の外部へ飛散することを、第2接触部(120)によって抑制することができる。
【0036】
図16に示すように、上記第4の局面によるキャップにおいて、好ましくは、第2接触部(120)は、吸水性素材により形成されている。このように構成すれば、吸引管(30)に付着した試料を吸収して、吸引管(30)の外周面(31)から除去することができる。
【0037】
図16に示すように、上記第4の局面によるキャップにおいて、好ましくは、第2接触部(120)は、吸引管(30)が接触状態で通過可能な貫通した通路部(121)を有する。このように構成すれば、吸引管(30)が第2接触部(120)の通路部(121)を通過する過程で、吸引管(30)の外周面(31)に付着した試料を、通路部(121)の内面によって拭き取ることができる。その結果、吸引管(30)の外周面(31)における試料の残留を効果的に抑制できる。
【0038】
図16に示すように、この場合、好ましくは、スリット形成部(11)から開口(21)に向けて延びる筒状部(13)と、筒状部(13)から開口(21)の中心軸に向けて突出する係止部(16)とをさらに備え、第2接触部(120)は、筒状部(13)の内部でスリット形成部(11)と係止部(16)との間に配置され、かつ、筒状部(13)と第2接触部(120)との間に隙間(CL)を有することにより筒状部(13)内で移動可能に形成されている。このように構成すれば、第2接触部(120)をキャップ(10)の内部に収納することができる。そのため、たとえば第2接触部(120)をキャップ(10)とは別個に容器本体(20)に取り付ける構成と比較して、試料容器(100)の構造を簡素化できる。また、第2接触部(120)が、筒状部(13)と第2接触部(120)との間の隙間(CL)の分だけ筒状部(13)内で移動できるので、吸引管(30)がスリット(11a)の中心からずれた状態で挿入される場合でも、吸引管(30)の位置ずれに追従するように第2接触部(120)を移動させることができる。
【発明の効果】
【0039】
試料容器から引き抜いた後の吸引管の表面に試料が残留するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】試料容器の一例を示した模式的な上面図および縦断面図である。
図2】試料容器の接触部を示した模式的な拡大断面図である。
図3】測定装置を説明するためのブロック図である。
図4】試料容器を示した縦断面図である。
図5】吸引管の挿入時のキャップを示した斜視図である。
図6】試料容器への吸引管の挿入時のキャップおよび接触部を説明するための図である。
図7】試料容器から吸引管の引き抜く際のキャップおよび接触部を説明するための図である。
図8】試料容器から吸引管が引き抜かれた状態のキャップおよび接触部を示した図である。
図9】試料容器から吸引管の引き抜く際の複数の突起を示した斜視図である。
図10】試料容器から吸引管の引き抜く際の複数の突起と吸引管とを示した側面図である。
図11】スリットと複数の突起とを示したキャップの模式的な下面図である。
図12】吸引管の挿入位置がずれた状態を示したキャップの模式的な下面図である。
図13】弾性部の第1の構成例を示した図である。
図14】弾性部の第2の構成例を示した図である。
図15】弾性部の第3の構成例を示した図である。
図16】第2接触部を備えたキャップおよび試料容器の構成例を示した拡大断面図である。
図17】第2接触部と筒状部とを示したキャップの模式的な横断面図である。
図18】第2接触部を備えたキャップの第2の構成例を示した図である。
図19】接触部を備えたキャップの変形例を示した図である。
図20】試料容器にキャップカバーを取り付けた場合の例を示した側面図である。
図21】試料容器にピストンを設けた場合の例を示した側面図である。
図22】従来の試料容器を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0042】
(試料容器の構成)
図1および図2を参照して、本実施形態による試料容器100の概要について説明する。
【0043】
試料容器100は、試料90を貯留するための容器である。試料容器100には、測定装置により測定される試料90が貯留される。試料90は、たとえば、尿、血液、細胞などの生体に由来するものである。また、試料容器100には、試料90として液体が貯留される。試料容器100には、試料90として粉体が貯留されてもよい。
【0044】
試料容器100には、図1および図2に示すように、測定装置の吸引管30(一点鎖線部)が挿入される。そして、吸引管30は、試料容器100内の試料90を吸引する。これにより、測定装置に試料90が取り込まれて測定が行われる。試料90が吸引された後、吸引管30は、測定装置において洗浄液により洗浄される。
【0045】
試料容器100は、キャップ10と、容器本体20と、を備える。容器本体20は、開口21を有している。キャップ10は、容器本体20の開口21を塞ぐように配置されている。また、キャップ10は、吸引管30が通過可能なスリット11aが形成されたスリット形成部11を含む。また、キャップ10は、スリット11aとは異なる位置に設けられた接触部12を備える。接触部12は、少なくともスリット11aからの吸引管30の引き抜き時に吸引管30の外周面31と接触するように構成されている。
【0046】
スリット形成部11は、キャップ10の一部として形成されている。図1の例では、スリット形成部11は、開口21を塞ぐように形成されている。スリット形成部11は、板状形状あるいは膜状形状を有する。スリット形成部11は、少なくともスリット11aの部分が、吸引管30からの押圧力によって弾性変形可能である。スリット形成部11は、たとえば、シリコンなどのゴム材料により形成されている。
【0047】
スリット11aは、スリット形成部11を厚み方向に貫通する切れ目である。スリット11aは、キャップ10における吸引管30の通路を提供する。スリット11aは、スリット形成部11を、複数の片部11bに分割する。分割された片部11bと片部11bとの間がスリット11aである。
【0048】
スリット11aは、吸引管30が挿入されていない場合は、隙間が閉じられるように形成される。つまり、吸引管30が挿入されていない場合、複数の片部11bが互いに接触することにより、スリット11aが閉じられる。スリット11aが閉じられた状態で、スリット形成部11は、試料容器100を密閉する。本明細書では、「試料容器を密閉する」とは、試料90がスリット11aを通過できない状態のことを意味し、試料90以外の気体が僅かに通過することは許容する。スリット11aの形状は、吸引管30が通過可能であれば任意である。スリット11aは、たとえば図1に示す例では、スリット形成部11に十字形状に形成されている。スリット11aは、平面視において、開口21の中心とスリット11aの中心とが略一致するように形成されている。
【0049】
吸引管30は、スリット11aの形成位置に挿入される。吸引管30が片部11bを下方に押圧することにより、片部11bが弾性変形する。片部11bの弾性変形によって、平面視におけるスリット11aが開いて、吸引管30が通過可能な大きさまでスリット11aが押し拡げられる。吸引管30を下方移動させることにより、拡大したスリット11aの内部を通って吸引管30が容器本体20の内部に進入する。吸引管30は、容器本体20の内部の試料90に接触するまで移動して、試料90を吸引する。試料90の吸引後、吸引管30が上方移動する。吸引管30の先端がスリット11aの内部から上方へ離脱すると、弾性変形していた片部11bの復元力によって、スリット11aが閉じられる。
【0050】
接触部12は、スリット11a内に挿入された状態の吸引管30と接触可能な位置に設けられる。接触部12は、スリット形成部11と一体的に形成されていてもよいし、スリット形成部11とは別部品として別体で形成されていてもよい。接触部12は、スリット形成部11とは別部品として設けられる場合、キャップ10または容器本体20に保持される。
【0051】
接触部12は、スリット11aよりも開口21側に配置されてもよいし、スリット11aよりも容器本体20の底面22側に配置されてもよい。接触部12がスリット形成部11に設けられる場合、吸引管30の挿入に伴うスリット形成部11の弾性変形によって、接触部12の位置が変化しうる。接触部12は、吸引管30の挿入によって接触部12の位置が変化する場合でも、少なくとも吸引管30の引き抜き時には、吸引管30の外周面31と接触する位置に配置される。図1の例では、接触部12は、スリット11aよりも容器本体20の底面22側に離れて配置されている。そのため、スリット形成部11の弾性変形の影響は受けない。
【0052】
接触部12は、吸引管30の外周面31のうち、周方向の一部または全周に亘って接触する。接触部12は、キャップ10に1つまたは複数設けられる。接触部12は、吸引管30と接触する部分が、吸引管30からの押圧力によって弾性変形可能でありうる。接触部12は、たとえば、シリコンなどのゴム材料により形成されうる。これにより、接触部12を吸引管30の外周面31に効果的に密着させることができる。
【0053】
図1の例では、接触部12は、スリット形成部11と同様に平板形状を有する。接触部12は、開口21の中心軸AXに向けて外周側から突出するように延びている。接触部12は、開口21の中心軸AX側の先端12a間の間隔が、吸引管30の外径以下となるように形成されている。接触部12は、たとえば先端12aが平面視で円形状に形成されており、円形状の先端12aによって吸引管30を摺動しながら通過させる貫通孔を構成しうる。
【0054】
図1の例では、吸引管30の先端がスリット11aの内部を通って容器本体20の内部に進入すると、吸引管30が接触部12の先端12aと接触する。吸引管30は、接触部12を弾性変形させながら、容器本体20の内部に進入する。接触部12は、吸引管30の外周面31に押圧される。接触部12は、試料90の吸引後、吸引管30が引き抜かれる際も、吸引管30の外周面31との接触状態を維持する。吸引管30は、接触部12に対して摺動しながら上方移動する。
【0055】
図2に示すように、吸引管30をスリット11aの内部から上方に引き抜く際、吸引管30の外周面31に付着した試料90は、外周面31と接触する接触部12の位置に到達すると、接触部12によって拭われる。そのため、接触部12の形成位置を通過する際、吸引管30の外周面31に付着した試料90は除去される。
【0056】
なお、吸引管30をスリット11aの内部から上方に引き抜く際、吸引管30の外周面31に付着した試料90がある場合、付着した試料90の一部は、スリット11aの部分で除去されうる。吸引管30の外周面31とスリット11aの内面との接触箇所では、試料90が除去され片部11bに付着する。ただし、スリット11aは、吸引管30によって押し拡げられて拡大しているため、吸引管30の外周面31とは接触しない部分がある。吸引管30の外周面31とスリット11aの内面とが接触していない箇所では、試料90はスリット11aによって除去されない。このように、スリット11aは、吸引管30が挿入されていない状態で開口21を閉じる機能を有する必要がある一方、接触部12は、開口21を閉じている必要はない。そのため、接触部12には、吸引管30に付着した試料90を除去するのに適した形状を採用することが可能である。
【0057】
接触部12は、スリット11aと相互に補完的な関係を有しうる。たとえば、接触部12は、吸引管30の外周面31のうちスリット11aの内面とは接触しない部分と接触するように設けられてもよい。スリット11aは、吸引管30の外周面31のうち接触部12とは接触しない部分と接触するように設けられてもよい。
【0058】
上記のように、キャップ10に形成されたスリット11aに加えて、スリット11aとは異なる位置に設けられた接触部12が、少なくともスリット11aからの吸引管30の引き抜き時に吸引管30の外周面31と接触する。そのため、吸引管30の引き抜き時に、吸引管30とスリット11aの内面との接触によって吸引管30の外周面31に付着した試料90が除去されることに加えて、さらに吸引管30と接触部12との接触によって吸引管30の外周面31に付着した試料90が除去される。その結果、試料90を吸引した吸引管30が試料容器100から引き抜かれた後に、吸引管30の外周面31に付着した状態で試料90が残留することを抑制できる。以上により、試料容器100から引き抜いた後の吸引管30の表面に試料90が残留するのを抑制することができる。
【0059】
図1および図2の構成例では、接触部12は、吸引管30の通過方向から見てスリット11aの中心の周りを取り囲むように配置されている。これにより、スリット11aに挿入された吸引管30の周囲を取り囲むように接触部12を配置できる。そのため、吸引管30の外周面31の周方向におけるより広い範囲に亘って、吸引管30に付着した試料90を除去することができる。そのため、吸引管30の表面における試料90の残留を効果的に抑制できる。
【0060】
(測定装置の構成)
図3を参照して、試料容器100に貯留された試料90を測定する測定装置200の構成について説明する。
【0061】
測定装置200は、たとえば、試料90としての尿検体を測定する。測定装置200は、図3に示すように、制御部210と、測定部220と、分注部230と、洗浄部240とを備える。分注部230には、試料容器100から試料90を吸引する吸引管30が設けられている。
【0062】
制御部210は、測定装置200の各部を制御する。制御部210は、測定装置200による試料90の測定処理を制御する。制御部210は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などの処理部と、メモリなどの記憶部を含む。また、制御部210は、プログラムに基づいて測定処理を実行する。制御部210は、測定結果を、測定装置200に接続された分析装置250に送信する。
【0063】
分析装置250は、測定装置200によって測定された試料90の成分の情報を分析する。分析装置250によって分析される尿検体中の成分は、たとえば、尿中有形成分である。尿中有形成分は、たとえば、赤血球、白血球、上皮細胞、円柱、細菌、異型細胞、白血球凝集である。分析装置250は、たとえば、汎用コンピュータにより構成されていてもよい。
【0064】
測定部220は、試料容器100から分注部230により分注した試料90を測定する。測定部220は、たとえば、フローサイトメータを含む。フローサイトメータは、フローサイトメトリー法により試料90を光学的に測定する。測定部220は、セルに流れる試料90に光を照射するとともに、試料90からの光を検出して測定を行う。また、測定部220は、試料90に試薬が加えられて調製された調製試料の測定を行う。
【0065】
分注部230は、試料容器100から尿検体を吸引し、測定部220に分注する。試料容器100の吸引管30は、2本の管が一体に設けられていてもよい。たとえば、吸引管30は、吸引用の管と撹拌用の管との2本が一体に設けられていてもよい。
【0066】
洗浄部240は、試料容器100から尿検体を吸引した後の吸引管30を洗浄する。洗浄部240は、たとえば洗浄液を吸引管30に吐出する吐出部241と、吐出された洗浄液を受け入れる洗浄槽242とを備える。
【0067】
制御部210は、尿検体のキャリーオーバーが許容範囲内まで抑制されるように、洗浄部240による吸引管30の洗浄動作を制御する。制御部210は、洗浄部240に対して、たとえば洗浄液の供給量、洗浄動作を1回実施するために要する洗浄時間、洗浄回数などを制御する。上記の接触部12を有するキャップ10を用いた試料容器100によって、吸引管30の外周面31に付着する試料90の残留量が低減されるので、測定装置200における吸引管30の洗浄処理に要求される洗浄能力や洗浄時間の条件を緩和することができる。すなわち、上記の接触部12を有するキャップ10を用いた試料容器100によれば、接触部12を有するキャップ10を用いない場合と比べて、洗浄液の供給量を低減したり、洗浄時間を短縮したり、洗浄回数を減少させることが可能である。
【0068】
(キャップおよび試料容器の構成例)
次に、本実施形態によるキャップ10および試料容器100の構成例について説明する。
【0069】
図4の構成例では、試料容器100は、容器本体20の開口21にキャップ10が設けられている。キャップ10は、容器本体20を密閉するとともに、吸引管30が挿入されるスリット11aが形成されたスリット形成部11を有する。つまり、キャップ10は、ゴムのカスの発生を抑制するため、ピアシングにより吸引管が挿入されるものではなく、スリット11aを介して吸引管30が挿入される。
【0070】
キャップ10は、ゴム材料により形成されている。たとえば、キャップ10は、シリコンゴムにより形成されている。また、キャップ10は、エラストマやEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などのシリコンゴム以外のゴム材料や、樹脂材料により形成されていてもよい。また、キャップ10は、2段成形により一体物として形成されてもよい。
【0071】
容器本体20は、開口21とは反対側に底面22を有する筒状形状を有する。図4の例では、容器本体20は、直線状に延びる円筒形状を有し、上端部に開口21が形成され、下端部に塞がれた底面22を有している。キャップ10の中心軸、開口21の中心軸AX、および容器本体20の中心軸は一致している。容器本体20は、内部に尿試料90を収容することが可能である。容器本体20は、たとえば、樹脂製またはガラス製である。樹脂としては、たとえばポリスチレンまたはポリプロピレンなどが挙げられる。容器本体20の上端部の開口21内に、キャップ10が着脱可能に嵌め込まれている。
【0072】
キャップ10は、上記したスリット形成部11と、スリット形成部11から開口21に向けて延びる筒状部13と、を含む。図4の例では、スリット形成部11が開口21よりも底面22側の位置に配置されている。筒状部13は、容器本体20に挿入され容器内壁に密着するように円筒形状を有する。筒状部13は、容器本体20の内周に当接する。筒状部13の上部には、開口14が設けられている。また、筒状部13の内側には内部空間が形成されている。
【0073】
(第1接触部)
図4の例では、接触部12は、スリット形成部11の底面22側の表面11cに設けられた第1接触部110を含む。第1接触部110は、スリット形成部11と一体形成されている。これにより、吸引管30をスリット11aから引き抜く際に、吸引管30のうち試料90が付着した領域は、最初に第1接触部110に到達して付着した試料90が除去された後で、スリット形成部11に到達する。そのため、吸引管30に付着した試料90がスリット11aによって除去されることを抑制できる。ここで、スリット11aは、吸引管30が抜き取られることにより復元して隙間が閉じる。そのため、スリット11aの部分に試料90が付着していると、吸引管30がスリット11aから抜き取られて隙間が閉じる際に、スリット11aに付着した試料90が飛散する可能性がある。第1接触部110によれば、吸引管30に付着した試料90がスリット11aによって除去されることを抑制できるので、スリット11aに付着した試料90が飛散することを抑制できる。
【0074】
図4に示すように、第1接触部110は、スリット11aの中心の周りに配置された複数の突起111により構成されている。複数の突起111は、スリット形成部11の底面22側の表面11cから、底面22側に向けて突出するように設けられている。図5に示すように、複数の突起111は、スリット形成部11に形成されたスリット11aの周囲を取り囲むように、環状に並んで配列されている。
【0075】
第1接触部110は、スリット11aから吸引管30が引き抜かれる際のスリット形成部11の変形に伴って、複数の突起111が吸引管30に向けて移動するように構成されている。
【0076】
図6図8は、吸引管30をスリット11a内に挿入(図6参照)し、スリット11a内から上方に引き抜くように移動(図7参照)させ、吸引管30がスリット11a内から上方に引き抜かれた状態(図8参照)になるまでの変化を示している。
【0077】
図6に示すように、吸引管30を挿入する際には、スリット形成部11が下方に押し下げられる。このとき、複数の突起111が開く。図6の状態で、試料容器100の内部の試料90が吸引される。なお、図5は、図6の状態におけるキャップ10の斜視図である。
【0078】
図7に示すように、吸引管30が引き抜かれる際に上方移動すると、スリット形成部11が図7のように変形する。つまり、吸引管30が引き抜かれる際の吸引管30とスリット形成部11との摩擦によって、スリット形成部11は開口21側に引き摺られるように変形する。スリット形成部11が開口21側に引き摺られるので、複数の突起111が形成された表面11cは、上方に持ち上げられて開口21側に変形する。これにより、吸引管30が引き抜かれる際には、複数の突起111が相互に閉じる。すなわち、複数の突起111が根元の部分から吸引管30側に倒れるように移動する。その結果、図9および図10に示すように、複数の突起111の先端部は、吸引管30の外周面31に対して押圧され外周面31に密着する。図9は、吸引管30を省略して図7の状態を示した斜視図である。図10は、図7の状態におけるキャップ10の側面図である。
【0079】
図8に示すように、吸引管30は複数の突起111の先端部112と接触したまま上方に摺動し、最終的に吸引管30の先端がスリット11aから引き抜かれる。スリット形成部11および複数の突起111は、図4に示した状態に復元する。
【0080】
このように、スリット11aから吸引管30が引き抜かれる際のスリット形成部11の変形に伴って、複数の突起111が吸引管30に向けて移動するように構成することによって、スリット形成部11の変形を利用して、複数の突起111を吸引管30に向けて移動させて吸引管30の外周面31に押し付けることができる。その結果、より確実に、吸引管30に付着した試料90を除去することができる。
【0081】
また、図7に示したように、スリット形成部11は、スリット11a内の吸引管30との摺動により底面22側の表面11cが開口21側に変形する。そして、複数の突起111は、スリット形成部11の開口21側への変形に伴って吸引管30側に倒れることにより、先端部112を吸引管30の外周面31に接触させるように構成されている。これにより、スリット形成部11の底面22側の表面11cに設けた複数の突起111を、吸引管30側に傾斜するように倒して吸引管30に押圧することができる。このように、吸引管30が引き抜かれる際のスリット形成部11の変形を利用することによって、簡単な構造で、より確実に、第1接触部110を吸引管30に接触させることができる。
【0082】
本実施形態では、複数の突起111の数は、複数の片部11bの数よりも多い。すなわち、図11に示すように、スリット形成部11は、十字のスリット11aによって分割された4つの片部11bを有している。そして、図11図5も参照)の例では、複数の突起111の数は、12個であり、片部11bの数よりも多い。これにより、吸引管30がスリット11aを通過する際に接触する片部11bの数よりも多い数の突起111によって、吸引管30に付着した試料90を除去することができる。そのため、より効果的に、吸引管30に付着した試料90を除去することができる。図11では、便宜的に、突起111の先端部112にハッチングを付している。12個の突起111は、スリット11aの周囲を取り囲むように等角度間隔で並んでいる。
【0083】
突起111の数は、図示したものに限られない。突起111は、たとえば、5個~11個、または13個以上でもよい。複数の突起111を環状に並んで配列する構成では、突起111の個数Nは、360度をN等分する約数であることが好ましい。個数Nは、たとえば8、9、10、12、15、18、20などである。
【0084】
また、複数の突起111は、吸引管30が引き抜かれる際のスリット形成部11の変形に伴って、隣り合う突起111の先端部112が互いに接触して環状の第1接触部110を形成するように構成されている。つまり、図7に示した状態では、図9および図10に示したように、隣り合う突起111が互いに接触して、隣り合う突起111の間の隙間が閉じられる。この結果、突起111の先端部112が連続した環状の第1接触部110を形成する。
【0085】
各突起111は、設計上は、スリット11aを通過する吸引管30の外周面31よりもスリット11aの中心側の位置まで先端部112が倒れ込むように設計されている。図7は、一点鎖線で示した吸引管30よりも、先端部112が中心側に移動し得ることを図示している。そのため、実際に吸引管30がスリット11a内に挿入された状態で引き抜かれる際には、複数の突起111の先端部112が吸引管30の外周面31に押し付けられて密着する。この結果、環状の第1接触部110の内径が、吸引管30の外径に一致する。これにより、第1接触部110が、吸引管30の外周面31と周方向の全周に亘って接触することができるので、吸引管30に付着した試料90が残留することを、より一層効果的に抑制できる。
【0086】
なお、図5および図6に示したように、複数の突起111は、吸引管30がスリット11aに挿入される際のスリット形成部11の変形に伴って、吸引管30から離れる方向に移動するように構成されている。すなわち、吸引管30がスリット11aに挿入されていない図4の状態では、複数の突起111は、試料容器100の中心軸AXに沿って真下に向けて突出している。図6の状態では、吸引管30によって、スリット形成部11が底面22側に引き摺られるように変形する。つまり、複数の突起111が形成された表面11cは、図4の状態よりも、下方に押し下げられる。その結果、複数の突起111は、先端部112が吸引管30から離れる方向である半径方向外側へ移動する。
【0087】
これにより、吸引管30がスリット11aに挿入される際には、スリット形成部11が底面22側に引き摺られるように変形するので、複数の突起111を吸引管30から離れる方向に移動させて吸引管30と非接触の状態にすることができる。その結果、試料容器100内に吸引管30を挿入する際の摺動抵抗を抑制できるので、試料90の吸引時に、容易に吸引管30を試料容器100内に挿入することができる。
【0088】
このように吸引管30の移動に応じて複数の突起111を移動させるためには、吸引管30の移動に伴うスリット形成部11の変形量を大きくすることが有効である。つまり、図4の通常状態から、図7の状態になる際のスリット形成部11の変形量が大きいほど、表面11cの傾斜角度を大きくして複数の突起111を吸引管30側に大きく移動させることができる。
【0089】
そこで、図4の構成例では、キャップ10は、弾性変形してスリット形成部11および第1接触部110を移動可能に支持する弾性部15を備えている。弾性部15は、スリット形成部11および第1接触部110を囲むように設けられている。弾性部15は、筒状部13とスリット形成部11とを連結している。
【0090】
弾性部15は、スリット形成部11と一体的に形成されている。また、弾性部15は、スリット形成部11よりも小さい厚みを有している。これにより、弾性部15は、スリット形成部11よりも容易に弾性変形するように形成されている。
【0091】
たとえば、弾性部15は、スリット形成部11の厚みの1/1.5倍以下の厚みを有する。また、弾性部15は、スリット形成部11の幅の1/8倍以上1/1.5倍以下の幅を有することが好ましい。たとえば、弾性部15は、スリット形成部11の厚みの1/2.5倍程度の厚みを有する。また、弾性部15は、スリット形成部11の幅の1/3倍程度の幅を有する。
【0092】
なお、弾性部15は、スリット形成部11よりも低弾性率の材料により形成されていてもよい。これによっても、弾性部15をスリット形成部11よりも弾性変形しやすくできる。
【0093】
これにより、弾性部15は、スリット11aに挿入された吸引管30が引き抜かれる際の摩擦によって、弾性部15が引張変形を生じて、スリット形成部11および第1接触部110の全体を開口21側に移動させる。弾性部15によってスリット形成部11および第1接触部110の移動量が大きくなるので、複数の突起111が設けられたスリット形成部11の底面22側の表面11cを大きく傾斜させることができる。その結果、複数の突起111の移動量を大きくできるので、より確実に、複数の突起111を吸引管30の外周面31に接触させることができる。
【0094】
また、弾性部15により、吸引管30の挿入位置に合わせて、平面視におけるスリット11aおよび第1接触部110の位置を調整する作用が得られる。すなわち、図12に示すように、吸引管30がスリット11aの中心(ずなわち、中心軸AX)からずれた状態で挿入された場合でも、弾性部15の弾性変形によって、スリット形成部11および第1接触部110の全体を吸引管30の位置に追従するように移動させることができる。その結果、スリット11aの中心からずれて挿入された状態の吸引管30が引き抜かれる際にも、複数の突起111を吸引管30の外周面31に接触させることができる。図12のように位置ずれした場合、吸引管30がスリット11aから完全に抜き取られると、スリット形成部11は、弾性部15の弾性力により、元の位置に戻される。
【0095】
また、図4の構成例では、スリット形成部11は、容器本体20の底面22側に突出するように弾性部15に接続されている。弾性部15は、キャップ10の外周部からスリット形成部11に向かって傾斜するように形成されている。これにより、スリット形成部11が、吸引管30が挿入されていない状態で、予め底面22側に凸状に形成される。そして、図7に示したように、スリット11aに挿入された吸引管30が引き抜かれる際に、スリット形成部11を、底面22側に向いた凸状の状態から開口21側に大きく変形させることができる。これにより、スリット形成部11の底面22側の表面11cの変形量を大きく確保できるので、スリット形成部11の底面22側の表面11cの変形に伴う複数の突起111の移動量を大きくすることができる。その結果、より確実に、複数の突起111を吸引管30の外周面31に接触させることができる。
【0096】
図13に示すように、弾性部15は、スリット形成部11の周りに周状に設けられている。これにより、弾性部15によりスリット形成部11をバランスよく支持することができるので、スリット形成部11の吸引管30への追従性を高めることができる。図13の例ではスリット形成部11は、円形状に形成されている。弾性部15は、スリット形成部11の周りに円環状に形成されている。なお、スリット形成部11は、多角形形状に形成されていてもよい。たとえば、スリット形成部11は、図14に示すように、略矩形形状に形成されていてもよい。その場合、弾性部15はスリット形成部11に応じた矩形形状の内周部を有する。また、弾性部15は、図15に示すように、環状に連続していなくてもよい。
【0097】
(第2接触部)
図16に示す例のように、試料容器100は、スリット形成部11よりも開口21側に第2接触部120が設けられていてもよい。
【0098】
すなわち、接触部12は、吸引管30の通過方向においてスリット形成部11の開口21側に配置された第2接触部120を含む。これにより、吸引管30が試料容器100から引き抜かれる際に、スリット11aを通過した部分に付着した試料90を除去することができる。また、吸引管30がスリット11aから抜き取られてスリット11aの隙間が閉じる際に、スリット11aに付着した試料90が開口21の外部へ飛散することを、第2接触部120によって抑制することができる。
【0099】
第2接触部120は、吸水性素材により形成されている。吸水性素材は、たとえば、連続気孔構造を有する多孔質材料である。連続気孔構造は、材料内部に多数の中空空間が形成された構造であって、多数の中空空間が互いに連通している構造である。第2接触部120は、たとえば、微細な連続気孔構造を有するタイプのポリウレタンスポンジにより形成されている。第2接触部120は、毛細管現象によって、表面に接触した液体を内部に吸引する。これにより、吸引管30に付着した試料90を吸収して、吸引管30の外周面31から除去することができる。
【0100】
第2接触部120は、吸引管30が接触状態で通過可能な貫通した通路部121を有する。図16の例では、通路部121は、吸引管30の外径より小さい内径の貫通孔である。このため、吸引管30が通路部121を通る際、吸引管30の外周面31が通路部121の内面と接触したまま摺動する。これにより、吸引管30が第2接触部120の通路部121を通過する過程で、吸引管30の外周面31に付着した試料90を、通路部121の内面によって拭き取ることができる。その結果、吸引管30の外周面31における試料90の残留を効果的に抑制できる。通路部121は、たとえばスリット形成部11に形成されたような貫通したスリットであってもよい。
【0101】
図16の例では、通路部121は、上面開口122の内径が下面開口123の内径よりも大きく形成されている。通路部121は、上面開口122から連続するテーパ状の案内部124を有している。これにより、吸引管30の挿入を容易に行える。
【0102】
図16の例では、キャップ10は、筒状部13から開口21の中心軸AXに向けて突出する係止部16を含む。第2接触部120は、筒状部13の内部でスリット形成部11と係止部16との間に配置されている。第2接触部120は、筒状部13と第2接触部120との間に隙間CLを有することにより筒状部13内で移動可能に形成されている。すなわち、第2接触部120は、別部品として、キャップ10とは別体で設けられ、キャップ10の内部で移動可能に収容されている。第2接触部120は、スリット形成部11の開口21側の表面上に配置されている。
【0103】
第2接触部120の開口21側への移動は、係止部16によって規制される。係止部16は、筒状部13の上端部から筒状部13の中心軸AX方向へ突出するように形成されたリブである。第2接触部120の底面22側への移動は、スリット形成部11によって規制される。図17に示すように、平面視において、第2接触部120の外形は、筒状部13の内径よりも一回り小さい円形状である。そのため、第2接触部120の側面125と、筒状部13の内周面との間に、隙間CLが形成されている。
【0104】
これにより、第2接触部120をキャップ10の内部に収納することができる。そのため、たとえば第2接触部120をキャップ10とは別個に容器本体20に取り付ける構成と比較して、試料容器100の構造を簡素化できる。また、第2接触部120が、筒状部13と第2接触部120との間の隙間CLの分だけ筒状部13内で移動できる。そのため、吸引管30がスリット11aの中心からずれた状態で挿入される場合でも、吸引管30の位置ずれに追従するように第2接触部120を移動させることができる。
【0105】
(キャップの変形例)
図16の構成例では、接触部12は、第1接触部110と第2接触部120とを含む。これにより、吸引管30の引き抜き時に、第1接触部110と第2接触部120とによって、吸引管30に付着した試料90を複数回に亘って除去できる。第1接触部110と第2接触部120との相乗効果によって、試料容器100から引き抜いた後の吸引管30の表面11cに試料90が残留するのをより一層効果的に抑制できる。
【0106】
一方、図18の例では、キャップ10に第1接触部110が設けられておらず、第2接触部120が設けられている。このように、キャップ10に第2接触部120のみを設けてもよい。図4のようにキャップ10に第2接触部120が設けられておらず、第1接触部110が設けられていてもよい。
【0107】
図19に示すように、接触部12は、キャップ10と離間して配置されてもよい。この場合、接触部12は、キャップ10とは別部品として、容器本体20に装着または固定されうる。
【0108】
また、キャップ10と容器本体20とが一体的に設けられていてもよい。キャップ10は、容器本体20の開口21に嵌合した状態で、接着、溶着その他の方法により、容器本体20と一体化されていてもよい。
【0109】
図20に示す例のように、試料容器100は、キャップ10を覆うキャップカバー40を備えていてもよい。
【0110】
具体的には、キャップカバー40は、キャップ10を覆うように容器本体20に配置される。また、キャップカバー40は、容器本体20の外周を取り囲むように配置される周壁部41を含む。これにより、キャップカバー40の周壁部41を把持して、キャップ10を容易に着脱することができる。
【0111】
キャップカバー40は、たとえば、ポリエチレンなどの樹脂材料により形成されている。
【0112】
キャップカバー40は、周壁部41に接続される頂部42を含む。頂部42は、容器本体20の開口21よりも小さい開口43が設けられている。これにより、仮にスリット11aの外に液が出た場合でも、キャップカバー40の外に液漏れするのを抑制することができる。
【0113】
図21に示す例のように、試料容器100は、ピストン60およびピストンロッド61が設けられていてもよい。
【0114】
具体的には、試料容器100は、容器本体20内に設けられ、容器本体20内を摺動するピストン60と、ピストン60に接続され容器本体20の底面22から突出するピストンロッド61と、を備える。また、ピストンロッド61のピストン60近傍には、ピストン60からピストンロッド61を折って除去するための切り込み62が設けられている。キャップカバー70は、キャップ10のスリット11aに挿入される管部80が取り付け可能に構成されている。これにより、ピストンロッド61を引いてピストン60を容器の底面22側に移動させることにより、管部80を介してスリット11aの内側の容器本体20内に試料90を容易に導入することができる。また、ピストンロッド61を引いて試料90を導入した後、ピストンロッド61をピストン60近傍で折って除去することにより、ピストンロッド61が邪魔になるのを抑制することができる。
【0115】
管部80は、キャップカバー70とは別体で構成された試料吸引用の部品である。キャップカバー70の係合部71と、管部80の係合部81とが係合することにより、管部80が容器本体20に対して固定可能である。また、管部80をキャップカバー70に取り付けた場合、管部80の先端は、スリット11aに挿入された状態となる。試料90を試料容器100内に導入する際に、管部80がキャップカバー70に取り付けられる。管部80を介して試料90を試料容器100内に導入した後、管部80はキャップカバー70から取り外される。管部80をキャップカバー70から取り外した場合、管部80がスリット11aから抜き去られて、スリット11aが閉じ容器本体20が密閉される。吸引管30により試料90が吸引される際、管部80が取り外されて、スリット11aが閉じられた状態の試料容器100に対して、吸引管30が挿入される。
【0116】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【符号の説明】
【0117】
10:キャップ、11:スリット形成部、11a:スリット、11b:片部、11c:表面、12:接触部、13:筒状部、15:弾性部、16:係止部、20:容器本体、21:開口、22:底面、30:吸引管、31:外周面、40:キャップカバー、41:周壁部、60:ピストン、61:ピストンロッド、62:切り込み、70:キャップカバー、80:管部、100:試料容器、110:第1接触部、111:突起、112:先端部、120:第2接触部、121:通路部、CL:隙間
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