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特許7362290分割チューブを備えた植え込み可能医療装置取り外しシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】分割チューブを備えた植え込み可能医療装置取り外しシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/95 20130101AFI20231010BHJP
【FI】
A61F2/95
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019085271
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2019188152
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】15/964,857
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham MA 02767-0350 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ロレンツォ
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0097462(US,A1)
【文献】特開2012-192177(JP,A)
【文献】特開2014-140565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/95 - 2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植え込み可能医療装置を身体の血管の標的位置に送達するための取り外しシステムであって、
略中空の遠位側チューブであって、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端との間にある、圧縮状態から延伸状態へと軸方向に移動可能である、前記遠位側チューブ自体の圧縮可能部分と、
を含む遠位側チューブと、
近位端及び遠位端を有する略中空の近位側チューブと、
前記遠位側チューブの前記近位端と前記近位側チューブの前記遠位端との間に配設されて前記近位側チューブと前記遠位側チューブとを接合している溶接部と、
前記遠位側チューブの前記遠位端に係合された前記植え込み可能医療装置に係合し、かつこれを配置する係合システムと、
を含み、
前記係合システムは、前記植え込み可能医療装置に係合しているとき、前記圧縮可能部分を前記圧縮状態へと動かし、
前記係合システムは、前記植え込み可能医療装置を配置し、前記圧縮可能部分を解放して前記延伸状態にする、取り外しシステム。
【請求項2】
前記係合システムが、前記植え込み可能医療装置に係合しているとき、前記遠位側チューブの前記近位端に取り外し可能に固定されて、前記圧縮状態を維持する、請求項1に記載の取り外しシステム。
【請求項3】
前記係合システムが、前記植え込み可能医療装置に係合しているとき、前記近位側チューブの前記近位端に取り外し可能に固定される、請求項2に記載の取り外しシステム。
【請求項4】
前記係合システムが、
係止部材、及び
ループワイヤを含み、
前記ループワイヤが前記係止部材と相互作用して前記植え込み可能医療装置に係合しているとき、前記ループワイヤへの力によって前記圧縮可能部分が前記圧縮状態へと動かされ、
前記ループワイヤが前記遠位側チューブの前記近位端に溶接されていて前記係合システムを取り外し可能に固定している、請求項2に記載の取り外しシステム。
【請求項5】
前記係止部材への力によって前記ループワイヤが解放され、前記植え込み可能医療装置を外し、前記圧縮可能部分が前記延伸状態に戻れるようになる、請求項4に記載の取り外しシステム。
【請求項6】
前記遠位側チューブの前記圧縮可能部分が、前記遠位側チューブの螺旋状カット部分である、請求項1に記載の取り外しシステム。
【請求項7】
前記圧縮可能部分は、前記圧縮可能部分が前記延伸状態へ移動するとき、前記係合システムによって係合されている前記植え込み可能医療装置を配置するよう適合されている、請求項1に記載の取り外しシステム。
【請求項8】
前記遠位側チューブの前記圧縮可能部分は、前記係合システムが前記植え込み可能医療装置から外れているとき、前記延伸状態へと自動的/弾性的に移動するよう適合されている、請求項1に記載の取り外しシステム。
【請求項9】
前記近位側チューブと前記遠位側チューブとの間の隙間は、前記近位側チューブを前記遠位側チューブに溶接する溶接帯を含む、ことを更に含む、請求項1に記載の取り外しシステム。
【請求項10】
前記遠位側チューブの前記近位端と前記近位側チューブの前記遠位端とが、溶接されたときに互いに接触する、請求項1に記載の取り外しシステム。
【請求項11】
前記近位側チューブが、前記近位端と前記遠位端との間に、前記近位側チューブ自体の、可撓性である可撓性部分を含み、かつ、
前記遠位側チューブが、前記近位端と前記圧縮可能部分との間に、前記遠位側チューブ自体の、可撓性である可撓性部分を含む、請求項1に記載の取り外しシステム。
【請求項12】
近位端及び遠位端を有する中空の遠位側チューブと、近位端及び遠位端を有する中空の近位側チューブと、係合システムと、を含む取り外しシステムであって、植え込み可能医療装置を身体の血管の標的位置に送達するための取り外しシステムの製造方法であって、
前記遠位側チューブ上の前記近位端と前記遠位端との間に圧縮可能部分を形成する工程と、
前記植え込み可能医療装置を前記係合システムに係合させる工程と、
前記圧縮可能部分を圧縮するために前記係合システムに力を印加する工程と、
前記係合システムを前記遠位側チューブに固定して圧縮状態を維持する工程と、
前記遠位側チューブと前記近位側チューブとを合わせて接合する工程と、
を含む、取り外しシステムの製造方法。
【請求項13】
前記係合システムが、前記遠位側チューブの前記近位端に取り外し可能に固定される、請求項12に記載の取り外しシステムの製造方法。
【請求項14】
前記植え込み可能医療装置に係合しているとき、前記係合システムを前記近位側チューブの前記近位端に取り外し可能に固定する工程を更に含む、請求項13に記載の取り外しシステムの製造方法。
【請求項15】
前記係合システムが、係止部材及びループワイヤを含み、
前記係合させる工程が、前記係止部材と共に前記ループワイヤを用いて前記植え込み可能医療装置を係合させる工程を更に含み、
前記印加する工程が、前記ループワイヤに力を印加して前記圧縮可能部分を前記圧縮状態へと動かす工程を更に含む、請求項13に記載の取り外しシステムの製造方法。
【請求項16】
前記形成する工程が、前記遠位側チューブの一部分を螺旋状カットする工程を含む、請求項12に記載の取り外しシステムの製造方法。
【請求項17】
前記遠位側チューブの前記圧縮可能部分は、前記係合システムが前記植え込み可能医療装置から外れているとき、延伸状態へと自動的/弾性的に移動するよう適合されている、請求項12に記載の取り外しシステムの製造方法。
【請求項18】
前記接合する工程が、
前記近位側チューブと前記遠位側チューブとの間に溶接帯を含む隙間を形成する工程と、
前記溶接帯で前記近位側チューブを前記遠位側チューブに溶接する工程と、を更に含む、請求項12に記載の取り外しシステムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ヒト被験体の身体の血管を介してナビゲート可能な介入的医療装置システムに関する。より具体的には、本発明は、植え込み可能医療装置を身体の血管の標的位置に配置するための取り外しシステムと、その使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の血管構造の中に治療装置(例えば拡張バルーン、ステント及び塞栓コイル)を位置決めして配置するためのカテーテル送達システムを使用することは、血管内疾患を治療するための標準手技となっている。そのような装置は、特に、従来の手術手技が不可能である場合、又は患者に大きな危険をもたらす領域を治療する場合、例えば脳血管の中の動脈瘤を治療する場合に有効であることが見出されている。脳血管を囲む繊細な組織、特に、例えば脳組織のために、脳血管の欠陥を治療するための外科手技を実行することは、非常に難しく、しばしば危険である。カテーテル配置システムの進歩によって、このような場合に代替となる治療が提供されている。カテーテル送達システムの利点として挙げられるのは、周囲の組織への外傷のリスクを低減することが見出されているアプローチによって血管を治療するための方法を提供すること、及び過去に手術不能であると考えられていた血管の治療を可能にすることである。
【0003】
一般的に、これらの手技は、送達カテーテルの遠位端部を患者の血管構造の中に挿入することと、それを血管構造を通して所定の送達部位まで導くことと、を含む。塞栓コイルのような血管閉塞装置は、送達部材の端部に取り付けられ、これがカテーテルを通してコイルを押し、カテーテルの遠位端から送達部位へと押し出す。これらの手技に伴う問題のうちのいくつかは、コイルの完全な解放及び配置を確実にすることに関する。例えば、米国特許第5,250,071号(Palermo)(参照により本明細書に組み込まれる)は、システム及びコイルのインターロック留め金がコントロールワイヤにより合わせて保持される取り外しシステムについて記述している。コントロールワイヤが、近位に移動されると、留め金が互いに解放される。しかしながらこのシステムは、解放された留め金を互いから分離するための確実な手段を含んでおらず、そのため、コントロールワイヤを単に引き戻すだけでは、コイルの解放及び配置が確実には行われない。現在使用されている多数の他の取り外しシステムが、同様の問題を抱えている。
【0004】
加えて、米国特許第8,062,325号は血管閉塞装置を送達及び配置するための単一の管状担体を開示しているが、これは単一の圧縮可能部分のみを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、植え込み可能医療装置の解放及び配置を確実にすることができる、より迅速な解放取り外しシステム又は方法のニーズが依然として存在する。単純かつ安価な係止及び配置システムを組み込んだ取り外しシステム又は方法により、更なる利点が実現する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
取り外しシステムは、略中空の遠位側チューブにより、植え込み可能医療装置を身体の血管の標的位置に送達する。この遠位側チューブは、近位端と、遠位端と、近位端と遠位端との間にある、圧縮状態から延伸状態へと軸方向に移動可能である、遠位側チューブ自体の圧縮可能部分とを有する。近位端及び遠位端を有する略中空の近位側チューブであって、近位側チューブと遠位側チューブとが接合される、近位側チューブと、遠位側チューブの遠位端に係合された植え込み可能医療装置に係合し、かつこれを配置する係合システムと、が更に含まれる。この係合システムは、植え込み可能医療装置に係合しているとき、圧縮可能部分を圧縮状態へと動かし、植え込み可能医療装置を配置し、圧縮可能部分を解放して延伸状態にする。
【0007】
別の一実施例において、この係合システムは、植え込み可能医療装置に係合しているとき、遠位側チューブの近位端に取り外し可能に固定されて、圧縮状態を維持することができる。更に、この係合システムは、植え込み可能医療装置に係合しているとき、近位側チューブの近位端に取り外し可能に固定され得る。
【0008】
一実施例の係合システムは、係止部材、及びループワイヤを有する。ループワイヤが係止部材と相互作用して植え込み可能医療装置に係合しているとき、ループワイヤへの力によって圧縮可能部分が圧縮状態へと動かされ、ループワイヤは遠位側チューブの近位端に溶接されていて係合システムを取り外し可能に固定している。係止部材への力によってループワイヤが解放され、植え込み可能医療装置を外し、圧縮可能部分が延伸状態に戻れるようになる。
【0009】
他の実施例では、遠位側チューブの螺旋状カット部分となっている遠位側チューブの圧縮可能部分を有する。この圧縮可能部分は、圧縮可能部分が延伸状態へ移動するとき、係合システムによって係合されている植え込み可能医療装置を配置するよう適合させることができる。更に、遠位側チューブの圧縮可能部分は、係合システムが植え込み可能医療装置から外れているとき、延伸状態へと自動的/弾性的に移動するよう適合される。近位側チューブはまた、近位端と遠位端との間に、近位側チューブ自体の、可撓性である可撓性部分を含んでよく、かつ、遠位側チューブは、近位端と圧縮可能部分との間に、遠位側チューブ自体の、可撓性である可撓性部分を含み得る。
【0010】
上述の実施例を用いて植え込み可能医療装置を取り外す方法は、遠位側チューブ上の近位端と遠位端との間に圧縮可能部分を形成する工程と、植え込み可能医療装置を係合システムに係合させる工程と、圧縮可能部分を圧縮するために係合システムに力を印加する工程と、係合システムを遠位側チューブに固定して圧縮状態を維持する工程と、遠位側チューブと近位側チューブとを合わせて接合する工程とを含み得る。上述のように、係合システムは遠位側チューブの近位端に取り外し可能に固定され得る。
【0011】
取り外し方法の一実施形態は、植え込み可能医療装置に係合しているとき、係合システムを近位側チューブの近位端に取り外し可能に固定する工程を更に含み得る。この係合工程は、係止部材と共にループワイヤを用いて植え込み可能医療装置を係合させる工程を含んでよく、この力を印加する工程は、ループワイヤに力を印加して圧縮可能部分を圧縮状態へと動かす工程を更に含む。他の例示的な工程には、係止部材に力を印加する工程と、植え込み可能医療装置を外す工程と、圧縮可能部分を延伸状態に戻らせる工程とが含まれる。
【0012】
この形成工程の実施例には、遠位側チューブの一部分を螺旋状カットする工程が含まれてよく、更に、圧縮可能部分を延伸状態に動かすことにより、係合された植え込み可能医療装置を配置する工程を有し得る。加えて、遠位側チューブの圧縮可能部分は、係合システムが植え込み可能医療装置から外れているとき、延伸状態へと自動的/弾性的に移動するよう適合され得る。
【0013】
更に、接合工程は、溶接帯において近位側チューブを遠位側チューブに溶接する工程を更に有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の上述の態様及び更なる態様は、添付図面と共に以下の説明を参照することによって更に詳しく説明され、添付図面において、種々の図の同様の数字は同様の構造要素及び特徴を示す。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、本発明の原理を例示することに主眼が置かれている。図は、限定としてではなく単なる例示として、本発明の装置の1つ又は2つ以上の実現例を描写している。
図1A】医療装置が部分的に外れた状態の、本発明の取り外しシステムの一実施例の分解図である。
図1B図1Aの拡大図である。
図2】医療装置が係合した状態の、本発明の取り外しシステムの一実施例の分解図である。
図3A】一実施例によるループワイヤの一例の側面斜視図である。
図3B】別の一実施例によるループワイヤの一例の平面図である。
図4】別の一実施例における、上向き状態での、ループワイヤの正面斜視詳細図である。
図5A】医療装置及びループワイヤが固定された状態の、本発明の取り外しシステムの一実施例の分解図である。
図5B】遠位側チューブに固定されたループワイヤの拡大図である。
図6】近位側チューブと遠位側チューブとの間の隙間の平面図である。
図7】合わせて溶接された近位側チューブ及び遠位側チューブの平面図である。
図8】小さなチューブでの近位側溶接部を示す。
図9】本発明の取り外しシステムを形成する例示的な方法を示す。
図10A】取り外されている医療装置を示し、一部が断面で示されている。
図10B】取り外されている医療装置を示し、一部が断面で示されている。
図10C】取り外されている医療装置を示し、一部が断面で示されている。
図10D】取り外されている医療装置を示し、一部が断面で示されている。
図11】圧縮状態及び拡大状態にある遠位側チューブの一実施例の側面図である。
図12】取り外されている医療装置の一実施例の前側面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図は、本発明による略中空又は管状の構造を示す。本明細書で使用されるとき、用語「管状」及び「管」は、広義に解釈されるものとし、直円柱構造や、断面が厳密に円形である構造、長さにわたって均一な断面である構造に制限されるものではない。例えば、管状構造又は管状系は、一般に、実質的に直円柱構造として図示される。しかしながら、管状系は、本発明の範囲から逸脱することなく、テーパ状又は湾曲した外面を有し得る。
【0016】
図1A図1B、及び図2に示すように、本発明の取り外しシステム10の一実施例は、近位側の細長い送達ハイポチューブアセンブリ100及び遠位側送達チューブ300を有し得る。植え込み可能医療装置12が、遠位送達チューブ300の一端に係合される。植え込み可能医療装置12は塞栓コイルであり得るが、ただし実質的には、本発明による取り外しシステム10によって、あらゆる植え込み可能医療装置12を送達及び配置し得ることが理解されよう。医療装置12は、係止部材140及びループワイヤ400を用いてシステムに係合される。医療装置12は、係合システム140、400に接合する係止部分18を有する。
【0017】
近位側送達チューブ100は、近位端部分102と、遠位端部分104と、それらの間にある可撓性部分106とを有し得る。近位側送達チューブ100はその中に軸方向管腔108を形成する。近位端102は、軸方向管腔108に沿って、より小さい直径のチューブ110に係合している(図5A図6図8を参照)。遠位側送達チューブ300は、近位端部分302と、遠位端部分304と、これら2つの間にある圧縮可能部分306とを有し得る。一実施例において、圧縮可能部分306は遠位端部分304に近づいていてよく、近位端部分302と圧縮可能部分306の間は可撓性部分305であり得る。遠位側送達チューブ300はその中に軸方向管腔308を形成する。
【0018】
送達チューブ100、300は、生体適合性材料(例えばステンレス鋼)で製造され得る。チューブ100、300は典型的に約0.010インチ~約0.018インチの直径を有してよく、好ましいチューブは約0.0145インチの直径を有し得る。これらのチューブ寸法の例は、神経血管系内の標的位置(典型的には動脈瘤)に塞栓コイルを送達及び配置するのに好適である。別の用途には、他の材料からなる別の寸法のチューブ100、300が有用であり得、これらも本発明の範囲内である。
【0019】
可撓性部分106、305によって、送達チューブ100、300は屈曲し撓むことが可能になる。このことは、カテーテルを通して、ヒトの血管構造を通る曲がりくねった経路を通ってシステム10をトラッキングするのを支援する。可撓性部分106、306は、干渉螺旋状カットを備えて形成することができる。これらのカットにより、屈曲を可能にする隙間が得られるが、一実施例において、これらのカットは螺旋状カットばねとして作用しない。すなわち、屈曲し撓むことはできるが、圧縮はされない。
【0020】
圧縮可能部分306は延伸状態と圧縮状態との間で軸方向に調節可能である。好ましくは、圧縮可能部分306は、レーザー切断操作により形成されたチューブ300の螺旋状カット部分から形成される。ただし、軸方向調節を可能にするような軸方向調節任意の他の配列(例えば、巻かれたワイヤ又は螺旋状リボン)もまた、本発明による取り外しシステムと共に使用するのに好適である。最も好ましくは、圧縮可能部分306は静止時に延伸状態にあり、他に拘束がない限り、圧縮状態から延伸状態に自動的又は弾性的に戻る。圧縮可能部分306の機能が以下により詳細に説明される。
【0021】
図3A図3B図4は、ループワイヤ400の例を示す。いくつかの実施形態において、ループワイヤ400は比較的小さく、毛髪の太さを有していてよく、よって、誤って接触することによる損傷を防ぐため、遠位側送達チューブ300の遠位端304により完全に遮蔽されていることが望ましい可能性がある。ループワイヤ400は、図3Aに示すように、ループ状になった細長いワイヤであり得る。ループワイヤ400aは更に、図3Bに示すように、開口部405を備えた単一の細長いワイヤであり得る。開口部405は、ループワイヤ400aをゆるく半分に折り曲げることによって形成することができる。別の一実施形態において、ループワイヤ400bは、遠位部分に開口部405aを画定する平坦なリボン形状を含み、開口部405bは、植え込み可能医療装置12の端に係合するのに好適な上向き状態であり得る。ループワイヤ400、400a、400bの実施例は、上向き状態へと弾性的に変形可能であってよく、これにより、他に拘束がないとき、実質的に平坦な状態に戻る。ループワイヤ400、400a、400bは、ニチノール及びステンレス鋼を含む任意の数の材料で形成することができる。
【0022】
取り外しシステム10を搭載するために、係止部材140が、両チューブ100、300の管腔108、208、308内に、軸方向に挿入される。ループワイヤ400の遠位端404は、遠位側チューブ300の近位端302にあるアンカー部分310を通って遠位側送達チューブ300内へと挿入され、管腔308を通って遠位端304に至る。次にループワイヤ404の遠位端は、ループ状になって開口部405を形成することができる。開口部405は係止部分18を通過し、係止部材140は開口部405を通過して、医療装置12を係合させる。図1A及び図11Aを参照されたい。
【0023】
ループワイヤ400はループワイヤ402の近位端で緊張して引っ張られ、継続的な力Fにより圧縮可能部分306を圧縮する。圧縮の程度は、医療装置12が遠位側チューブ300の遠位端304に取り付けられた後、ループワイヤ400の近位端402に印加される力Fの量によって制御することができる。図2及び図11Aは、取り付けられた医療装置12と、圧縮状態にある遠位側チューブ300を示す。遠位側チューブ300が適切な程度圧縮されたら、ループワイヤ400は、ワイヤ溶接点406(近位端402と遠位端404との間)で、遠位側送達チューブ300のアンカー部分310又はその近くの近位端302に(すなわち圧縮可能部分306の背後に)、アンカー溶接408される。図5A及び図5Bを参照されたい。遠位側送達チューブ300の圧縮レベルは、ループワイヤ400をアンカー溶接部408で定位置に固定する前に、ループワイヤ400に対する力Fの量を変えることにより調節される。
【0024】
図6及び図7は、近位側送達チューブ100と遠位側送達チューブ300とを用いた接合を示す。図6は、近位側チューブ100の遠位端104が、遠位側チューブ300の近位端302に向かって引っ張られ、いくつかの実施例では、これに接触していることを示す。この実施例において、近位側チューブ及び遠位側チューブ100、300は、接触してはいないが、隙間として溶接帯206を残している。2本のチューブ100、300は次に、溶接帯206で円周方向に溶接部210で接合されて、一体型の装置10を形成する。
【0025】
2本のチューブ100、300を溶接する前に、係止部材140(上述)が、近位側チューブ管腔108と、小さいチューブ110とを介して引っ張られる。小さいチューブ110の近位側開口部112(近位側チューブ100の近位端102の反対側)で、係止部材140が小さいチューブ110に溶接142される。これを図8に示す。
【0026】
図9は、取り外しシステム10を組み立てる方法の一実施例を示す。この方法は、遠位側チューブ300に圧縮可能部分306を形成すること(工程1000)と、近位側チューブ100に可撓性部分106を形成すること(工程1002)とを含む。工程1002は更に、遠位側チューブ300に可撓性部分305を形成することを含み得る。圧縮可能部分306は、遠位側チューブ300を螺旋状カットすることにより、又は任意の他の手段により、形成することができ、これにより、圧縮することができ、その後に非圧縮状態に素早く戻ることができるようなチューブを形成することができる。近位側チューブ100の可撓性部分106は干渉カットであってよく、又は、近位側チューブ100の可撓性を高めるような任意の他の手段によるものであってよい。少なくとも遠位側チューブ300の準備ができたら、医療装置12を係合システム140、400に係合させることができ(工程1004)、係合システム140、400に力Fを印加して、圧縮可能部分306を圧縮することができる(工程1006)。ここで、上述の実施例は、係止部材140及びループワイヤ400を係合システムとして使用して示されているが、当業者には、圧縮可能部分306に対する解放可能な力(係合システム140、400が医療装置12から外れたときに解放される)を印加しながら、医療装置12を固定するような、別の方法が認識され得ることに、注意されたい。次に、係合システム140、400の部分406が、遠位側チューブ300に係合し、圧縮可能部分306の圧縮状態を維持する(工程1008)。係合システム140、400の一部分が、近位側チューブ100内に通される(工程1010)。遠位側チューブ300及び近位側チューブ100が、合わせて接合される(工程1012)。ここで、この実施例において、チューブ100、300の端104、302は合わせて溶接210される。次に、係合システム140、400の端が、近位側チューブ100の近位端102に接合され(工程1014)、装置10を完成することができる。
【0027】
図10A図10Dを参照すると、医療装置12の取り外しがより詳細に示されている。図10Aは、医療装置12の係止部分18に係止された係合システム140、400を示す。ループワイヤ400の開口部405は、係止部分18を通して配置され得る。係止部材140が開口部405を通して配置されると、これで医療装置12が固定される。遠位側チューブ300を圧縮状態にするために、力Fは事前に印加されている。図10Bは、医療装置12の解放順序を開始するために、近位側に引っ張られつつある係止部材140を示す。図10Cは、係止部材140が開口部405から出て、ループワイヤ400がない状態で引っ張られる時点を示す。ループワイヤ400の遠位端404は脱落し、又はその事前形成された形状に戻り(上述のように)、係止部分18から出る。図から分かるように、これで医療装置12を取り外しシステム10に保持しているものは何もない。図10Dは、解放順序の終了時を示す。ここで、圧縮可能部分306は元の形状に拡張し、又は戻り、前方に「弾ける」。遠位側チューブ300の遠位端304により弾性力Eが医療装置12に付与され、これを「押し出し」、医療装置12のクリーンな分離と送達を確実に行う。
【0028】
図11は、医療装置12を伴っていないが、圧縮可能部分306が軸方向に短くなって圧縮状態になっている遠位側チューブ300を示す。具体的には、圧縮可能部分306が延伸状態から圧縮状態に移動し、遠位側チューブ300が軸方向に短縮される距離「D」が示されている。この圧縮は軸Aに沿って起こり得る。図12は、取り外し時点の医療装置12の別の図を示す。係止部材140は近位側に引っ張られ、これによりループワイヤ400から分離されており、よって遠位側圧縮部分306が拡張する際に医療装置12が分離でき、医療装置12を送達システム10から更に引き離す。矢印「E」は、医療装置12を遠位端304から離れるよう「押す」弾性力を示し、これにより、クリーンな分離と、患者体内の標的部位への送達が確実に行われる。弾性力Eは管腔308の軸Aに作用し、医療装置12を軸Aに沿って「押す」(図8及び図11を参照)。
【0029】
本明細書に含まれる記述は、本発明の実施形態の例であり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。本明細書に記載されているように、本発明は、多数の構成、多数の剛性特性、及びそれを送達する方法を含む、血管閉塞装置のための本発明の送達及び解放システムの数多くの変形例及び改変例が企図される。また、材料及び解放機構の構成において、多くの可能な変形例がある。これらの改変は、本発明が関連する当技術分野の当業者に明らかであろうし、かつ、以下の特許請求項の範囲内であることが意図される。
【0030】
〔実施の態様〕
(1) 植え込み可能医療装置を身体の血管の標的位置に送達するための取り外しシステムであって、
略中空の遠位側チューブであって、
近位端と、
遠位端と、
前記近位端と前記遠位端との間にある、圧縮状態から延伸状態へと軸方向に移動可能である、前記遠位側チューブ自体の圧縮可能部分と、
を含む遠位側チューブと、
近位端及び遠位端を有する略中空の近位側チューブと、
前記遠位側チューブの前記近位端と前記近位側チューブの前記遠位端との間に配設されて前記近位側チューブと前記遠位側チューブとを接合している溶接部と、
前記遠位側チューブの前記遠位端に係合された前記植え込み可能医療装置に係合し、かつこれを配置する係合システムと、
を含み、
前記係合システムは、前記植え込み可能医療装置に係合しているとき、前記圧縮可能部分を前記圧縮状態へと動かし、
前記係合システムは、前記植え込み可能医療装置を配置し、前記圧縮可能部分を解放して前記延伸状態にする、取り外しシステム。
(2) 前記係合システムが、前記植え込み可能医療装置に係合しているとき、前記遠位側チューブの前記近位端に取り外し可能に固定されて、前記圧縮状態を維持する、実施態様1に記載の取り外しシステム。
(3) 前記係合システムが、前記植え込み可能医療装置に係合しているとき、前記近位側チューブの前記近位端に取り外し可能に固定される、実施態様2に記載の取り外しシステム。
(4) 前記係合システムが、
係止部材、及び
ループワイヤを含み、
前記ループワイヤが前記係止部材と相互作用して前記植え込み可能医療装置に係合しているとき、前記ループワイヤへの力によって前記圧縮可能部分が前記圧縮状態へと動かされ、
前記ループワイヤが前記遠位側チューブの前記近位端に溶接されていて前記係合システムを取り外し可能に固定している、実施態様2に記載の取り外しシステム。
(5) 前記係止部材への力によって前記ループワイヤが解放され、前記植え込み可能医療装置を外し、前記圧縮可能部分が前記延伸状態に戻れるようになる、実施態様4に記載の取り外しシステム。
【0031】
(6) 前記遠位側チューブの前記圧縮可能部分が、前記遠位側チューブの螺旋状カット部分である、実施態様1に記載の取り外しシステム。
(7) 前記圧縮可能部分は、前記圧縮可能部分が前記延伸状態へ移動するとき、前記係合システムによって係合されている前記植え込み可能医療装置を配置するよう適合されている、実施態様1に記載の取り外しシステム。
(8) 前記遠位側チューブの前記圧縮可能部分は、前記係合システムが前記植え込み可能医療装置から外れているとき、前記延伸状態へと自動的/弾性的に移動するよう適合されている、実施態様1に記載の取り外しシステム。
(9) 前記近位側チューブと前記遠位側チューブとの間の隙間は、前記近位側チューブを前記遠位側チューブに溶接する溶接帯を含む、ことを更に含む、実施態様1に記載の取り外しシステム。
(10) 前記遠位側チューブの前記近位端と前記近位側チューブの前記遠位端とが、溶接されたときに互いに接触する、実施態様1に記載の取り外しシステム。
【0032】
(11) 前記近位側チューブが、前記近位端と前記遠位端との間に、前記近位側チューブ自体の、可撓性である可撓性部分を含み、かつ、
前記遠位側チューブが、前記近位端と前記圧縮可能部分との間に、前記遠位側チューブ自体の、可撓性である可撓性部分を含む、実施態様1に記載の取り外しシステム。
(12) 近位端及び遠位端を有する中空の遠位側チューブと、近位端及び遠位端を有する中空の近位側チューブと、を含む植え込み可能医療装置の取り外し方法であって、
前記遠位側チューブ上の前記近位端と前記遠位端との間に圧縮可能部分を形成する工程と、
前記植え込み可能医療装置を係合システムに係合させる工程と、
前記圧縮可能部分を圧縮するために前記係合システムに力を印加する工程と、
前記係合システムを前記遠位側チューブに固定して圧縮状態を維持する工程と、
前記遠位側チューブと前記近位側チューブとを合わせて接合する工程と、
を含む、取り外し方法。
(13) 前記係合システムが、前記遠位側チューブの前記近位端に取り外し可能に固定される、実施態様12に記載の取り外し方法。
(14) 前記植え込み可能医療装置に係合しているとき、前記係合システムを前記近位側チューブの前記近位端に取り外し可能に固定する工程を更に含む、実施態様13に記載の取り外し方法。
(15) 前記係合システムが、係止部材及びループワイヤを含み、
前記係合工程が、前記係止部材と共に前記ループワイヤを用いて前記植え込み可能医療装置を係合させる工程を更に含み、
前記印加する工程が、前記ループワイヤに力を印加して前記圧縮可能部分を前記圧縮状態へと動かす工程を更に含む、実施態様13に記載の取り外し方法。
【0033】
(16) 前記係止部材に力を印加する工程と、
前記植え込み可能医療装置を外す工程と、
前記圧縮可能部分を延伸状態に戻らせる工程と、を更に含む、実施態様15に記載の取り外し方法。
(17) 前記形成工程が、前記遠位側チューブの一部分を螺旋状カットする工程を含む、実施態様12に記載の取り外し方法。
(18) 前記圧縮可能部分を前記延伸状態に動かすことにより、係合された前記植え込み可能医療装置を配置する工程を更に含む、実施態様12に記載の取り外し方法。
(19) 前記遠位側チューブの前記圧縮可能部分は、前記係合システムが前記植え込み可能医療装置から外れているとき、前記延伸状態へと自動的/弾性的に移動するよう適合されている、実施態様12に記載の取り外し方法。
(20) 前記接合工程が、
前記近位側チューブと前記遠位側チューブとの間に溶接帯を含む隙間を形成する工程と、
前記溶接帯で前記近位側チューブを前記遠位側チューブに溶接する工程と、を更に含む、実施態様12に記載の取り外し方法。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12