(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】到来方向測定装置、到来方向測定プログラム及び位置標定システム
(51)【国際特許分類】
G01S 3/48 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
G01S3/48
(21)【出願番号】P 2019114409
(22)【出願日】2019-06-20
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】越後貫 智也
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-008011(JP,A)
【文献】特開2006-337279(JP,A)
【文献】特開2010-112795(JP,A)
【文献】特開平10-020018(JP,A)
【文献】特開2008-045880(JP,A)
【文献】特開2006-047282(JP,A)
【文献】米国特許第3935574(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00 - 3/74
5/00 - 5/14
7/00 - 7/64
13/00 - 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が搭載するアンテナが受信した送信源からの受信波を取得し、信号部分空間法を用いて、前記受信波の到来方向のスペクトルを算出するスペクトル算出部と、
前記スペクトルの最大強度を抽出し、前記最大強度が所定強度閾値以下であるときには、前記最大強度を与える前記到来方向の情報を前記送信源の位置標定処理へ出力せず、前記送信源の位置標定処理に今回の前記送信源の標定位置として前回の前記送信源の標定位置を出力させ、前記最大強度が前記所定強度閾値より大きいときには、前記最大強度を与える前記到来方向の情報を前記送信源の位置標定処理へ出力し、前記送信源の位置標定処理に前回の前記送信源の標定位置に代えて今回の前記送信源の標定位置を出力させる到来方向出力部と、を備え
、
前記到来方向出力部は、前記送信源の位置標定処理へ情報を出力しない前記到来方向の間引き量が所定間引き量となるように、前記所定強度閾値を設定している
ことを特徴とする到来方向測定装置。
【請求項2】
前記到来方向出力部は、状態空間モデルの状態方程式及び観測方程式として、前記送信源の運動モデル及び前記送信源の測量方程式をそれぞれ用いた、前記送信源の位置標定処理における前記送信源の位置標定精度が所定標定精度となるように、前記所定強度閾値を設定している
ことを特徴とする、請求項
1に記載の到来方向測定装置。
【請求項3】
移動体が搭載するアンテナが受信した送信源からの受信波を取得し、信号部分空間法を用いて、前記受信波の到来方向のスペクトルを算出するスペクトル算出部と、
前記スペクトルの最大強度を抽出し、前記最大強度が所定強度閾値以下であるときには、前記最大強度を与える前記到来方向の情報を前記送信源の位置標定処理へ出力せず、前記送信源の位置標定処理に今回の前記送信源の標定位置として前回の前記送信源の標定位置を出力させ、前記最大強度が前記所定強度閾値より大きいときには、前記最大強度を与える前記到来方向の情報を前記送信源の位置標定処理へ出力し、前記送信源の位置標定処理に前回の前記送信源の標定位置に代えて今回の前記送信源の標定位置を出力させる到来方向出力部と、を備え
、
前記到来方向出力部は、状態空間モデルの状態方程式及び観測方程式として、前記送信源の運動モデル及び前記送信源の測量方程式をそれぞれ用いた、前記送信源の位置標定処理における前記送信源の位置標定精度が所定標定精度となるように、前記所定強度閾値を設定している
ことを特徴とする到来方向測定装置。
【請求項4】
前記到来方向出力部は、前記送信源の位置標定処理へ情報を出力する前記到来方向の測定精度が所定測定精度となるように、前記所定強度閾値を設定している
ことを特徴とする、請求項1
から3のいずれかに記載の到来方向測定装置。
【請求項5】
前記到来方向出力部は、前記送信源と前記アンテナとの間に前記移動体によるマルチパスがあるかどうかを判定し、前記マルチパスがあるときには、前記最大強度を与える前記到来方向の情報を前記送信源の位置標定処理へ出力せず、前記マルチパスがないときには、前記最大強度を与える前記到来方向の情報を前記送信源の位置標定処理へ出力する
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の到来方向測定装置。
【請求項6】
移動体が搭載するアンテナが受信した送信源からの受信波を取得し、信号部分空間法を用いて、前記受信波の到来方向のスペクトルを算出するスペクトル算出ステップと、
前記スペクトルの最大強度を抽出し、前記最大強度が所定強度閾値以下であるときには、前記最大強度を与える前記到来方向の情報を前記送信源の位置標定処理へ出力せず、前記送信源の位置標定処理に今回の前記送信源の標定位置として前回の前記送信源の標定位置を出力させ、前記最大強度が前記所定強度閾値より大きいときには、前記最大強度を与える前記到来方向の情報を前記送信源の位置標定処理へ出力し、前記送信源の位置標定処理に前回の前記送信源の標定位置に代えて今回の前記送信源の標定位置を出力させる到来方向出力ステップと、
を順にコンピュータに実行させ
、
前記到来方向出力ステップは、前記送信源の位置標定処理へ情報を出力しない前記到来方向の間引き量が所定間引き量となるように、前記所定強度閾値を設定している
ことを特徴とする到来方向測定プログラム。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の到来方向測定装置と、
(1)前記到来方向の情報を取得し、前記移動体の移動方向に対する左右方向の周囲の所定方向範囲内に、前記到来方向がないか又は前記到来方向があるかを判定するとともに、前記移動体の移動に伴って、前記到来方向が変化しないか又は前記到来方向が変化するかを判定し、(2)状態空間モデルの状態方程式及び観測方程式として、前記送信源の運動モデル及び前記送信源の測量方程式をそれぞれ用いて、前記到来方向の実測値と前記到来方向の予測値とが一致するように、前記送信源の位置を標定するにあたり、前記所定方向範囲内に前記到来方向がないと判定されるとともに、前記移動体の移動に伴って前記到来方向が変化しないと判定されたときには、前記送信源の位置標定を開始せず、前記所定方向範囲内に前記到来方向があると判定されるとともに、前記移動体の移動に伴って前記到来方向が変化すると判定されたときには、前記送信源の位置標定を開始する位置標定装置と、
を備えることを特徴とする位置標定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信源の位置を標定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
送信源の位置を標定する技術が、特許文献1、2等に開示されている。特許文献1、2では、送信源からの受信波の到来方向の実測値と、カルマンフィルタ等による送信源からの受信波の到来方向の予測値と、が一致するように、送信源の位置を標定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5730473号明細書
【文献】特許第5730506号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の位置標定結果を
図1に示す。三角印で示した航空機は、送信源の位置標定システムを搭載し、ひし形印で示した送信源を投下し、送信源の投下直後に直進し、しばらくの後に180°旋回し、180°旋回後に直進する。ひし形印で示した送信源は、送信源の投下位置にほぼ固定されている。航空機から延びる直線は、送信源からの受信波の到来方向の測定結果を示す。刻々と移動する丸印は、送信源の標定位置を示す。
【0005】
ここで、送信源の標定位置は、送信源の投下直後に、航空機の直進に伴って、連続的に直進している。なお、送信源からの受信波の到来方向の測定結果は、送信源の投下直後に、送信源の真位置と航空機の位置とを結ぶ方向とほぼ一致する方向を示している。
【0006】
そして、送信源の標定位置は、送信源の投下直後から、180°旋回時にかけて、不連続的に飛んでいる。なお、送信源からの受信波の到来方向の測定結果は、180°旋回時に、送信源の真位置と航空機の位置とを結ぶ方向と一致しない方向を示している。
【0007】
さらに、送信源の標定位置は、いったん送信源の真位置からずれてしまうと、その後に送信源の真位置に近づくものの、収束後に送信源の真位置に一致することが困難になる。
【0008】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、送信源の位置を標定するにあたり、送信源の標定位置が送信源の真位置からずれることを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来技術の位置標定結果において、送信源からの受信波の到来方向の測定結果は、180°旋回時に、送信源の真位置と航空機の位置とを結ぶ方向と一致しない方向を示している。その原因として、航空機の主翼又は胴体等によるマルチパスが、送信源と航空機に搭載のアンテナとの間に存在する。そして、一のアンテナの受信波と他のアンテナの受信波との相関が低くなり、受信波の到来方向のスペクトルの最大強度が低くなる。
【0010】
そこで、前記課題を解決するために、航空機等の移動体の構造物によるマルチパスが、送信源と航空機等の移動体に搭載のアンテナとの間に存在するときに、受信波の到来方向のスペクトルの最大強度を与える受信波の到来方向の情報を、送信源の位置標定処理へ出力しないこととした。より具体的には、受信波の到来方向のスペクトルの最大強度が、所定強度閾値以下であるときに、受信波の到来方向のスペクトルの最大強度を与える受信波の到来方向の情報を、送信源の位置標定処理へ出力しないこととした。
【0011】
具体的には、本開示は、移動体が搭載するアンテナが受信した送信源からの受信波を取得し、信号部分空間法を用いて、前記受信波の到来方向のスペクトルを算出するスペクトル算出部と、前記スペクトルの最大強度を抽出し、前記最大強度が所定強度閾値以下であるときには、前記最大強度を与える前記到来方向の情報を前記送信源の位置標定処理へ出力せず、前記最大強度が前記所定強度閾値より大きいときには、前記最大強度を与える前記到来方向の情報を前記送信源の位置標定処理へ出力する到来方向出力部と、を備えることを特徴とする到来方向測定装置である。
【0012】
また、本開示は、移動体が搭載するアンテナが受信した送信源からの受信波を取得し、信号部分空間法を用いて、前記受信波の到来方向のスペクトルを算出するスペクトル算出ステップと、前記スペクトルの最大強度を抽出し、前記最大強度が所定強度閾値以下であるときには、前記最大強度を与える前記到来方向の情報を前記送信源の位置標定処理へ出力せず、前記最大強度が前記所定強度閾値より大きいときには、前記最大強度を与える前記到来方向の情報を前記送信源の位置標定処理へ出力する到来方向出力ステップと、を順にコンピュータに実行させるための到来方向測定プログラムである。
【0013】
これらの構成によれば、送信源の位置標定を開始した後に続行するにあたり、送信源の標定位置が送信源の真位置からずれることを低減することができる。
【0014】
また、本開示は、前記到来方向出力部は、前記送信源の位置標定処理へ情報を出力する前記到来方向の測定精度が所定測定精度となるように、前記所定強度閾値を設定していることを特徴とする到来方向測定装置である。
【0015】
この構成によれば、受信波の到来方向のスペクトルの最大強度に対する所定強度閾値を低くし過ぎないことにより、受信波の到来方向の測定精度を高くすることができ、ひいては、送信源の標定位置の標定精度を高くすることができる。
【0016】
また、本開示は、前記到来方向出力部は、前記送信源の位置標定処理へ情報を出力しない前記到来方向の間引き量が所定間引き量となるように、前記所定強度閾値を設定していることを特徴とする到来方向測定装置である。
【0017】
この構成によれば、受信波の到来方向のスペクトルの最大強度に対する所定強度閾値を高くし過ぎないことにより、受信波の到来方向の間引き量を少なくすることができ、ひいては、送信源の標定位置の標定精度を高くすることができる。
【0018】
また、本開示は、前記到来方向出力部は、前記送信源の位置標定処理における前記送信源の位置標定精度が所定標定精度となるように、前記所定強度閾値を設定していることを特徴とする到来方向測定装置である。
【0019】
この構成によれば、受信波の到来方向のスペクトルの最大強度に対する所定強度閾値を低くし過ぎないとともに高くし過ぎないことにより、受信波の到来方向の測定精度を高くすることができ、さらには、受信波の到来方向の間引き量を少なくすることができ、ひいては、送信源の標定位置の標定精度を高くすることができる。
【0020】
また、本開示は、前記到来方向出力部は、前記送信源と前記アンテナとの間に前記移動体によるマルチパスがあるかどうかを判定し、前記マルチパスがあるときには、前記最大強度を与える前記到来方向の情報を前記送信源の位置標定処理へ出力せず、前記マルチパスがないときには、前記最大強度を与える前記到来方向の情報を前記送信源の位置標定処理へ出力することを特徴とする到来方向測定装置である。
【0021】
この構成によれば、送信源の位置標定を開始した後に続行するにあたり、送信源の標定位置が送信源の真位置からずれることを低減することができる。
【0022】
従来技術の位置標定結果において、送信源の標定位置は、送信源の投下直後に、航空機の直進に伴って、連続的に直進している。その原因として、送信源からの受信波の到来方向は、送信源の投下直後に、航空機の直進に伴って、ほぼ変化しない。そして、送信源からの受信波の到来方向の測定結果の些細な誤差は、送信源の投下直後の位置標定の開始時に、送信源の真位置からの送信源の標定位置のずれを生じさせる。
【0023】
そこで、前記課題を解決するために、送信源からの受信波の到来方向が、航空機等の移動体の移動に伴って、大きく変化するときに、送信源の位置標定を開始することとした。より具体的には、送信源からの受信波の到来方向が、航空機等の移動体の移動方向に対して、左右方向範囲内にあるときに、送信源の位置標定を開始することとした。よって、送信源からの受信波の到来方向の測定結果の些細な誤差は、上記開始条件を満たす位置標定の開始時に、送信源の真位置からの送信源の標定位置のずれをほぼ生じさせない。
【0024】
具体的には、本開示は、以上に記載の到来方向測定装置と、(1)前記到来方向の情報を取得し、前記移動体の移動方向に対する左右方向の周囲の所定方向範囲内に、前記到来方向がないか又は前記到来方向があるかを判定し、(2)前記到来方向の実測値と前記到来方向の予測値とが一致するように、前記送信源の位置を標定するにあたり、前記所定方向範囲内に前記到来方向がないと判定されたときには、前記送信源の位置標定を開始せず、前記所定方向範囲内に前記到来方向があると判定されたときには、前記送信源の位置標定を開始する位置標定装置と、を備えることを特徴とする位置標定システムである。
【0025】
この構成によれば、送信源の位置標定を開始するにあたり、送信源の標定位置が送信源の真位置からずれることを低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
このように、本開示は、送信源の位置を標定するにあたり、送信源の標定位置が送信源の真位置からずれることを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】第1実施形態の位置標定システムの構成を示す図である。
【
図3】第1実施形態の位置標定処理の手順を示す図である。
【
図4】第1実施形態の到来方向出力の内容を示す図である。
【
図5】第1実施形態の到来方向出力の内容を示す図である。
【
図6】第1実施形態の強度閾値設定の内容を示す図である。
【
図7】第1実施形態の位置標定結果を示す図である。
【
図8】第2実施形態の位置標定システムの構成を示す図である。
【
図9】第2実施形態の標定開始処理の手順を示す図である。
【
図10】第2実施形態の標定開始処理の内容を示す図である。
【
図11】第2実施形態の標定開始処理の内容を示す図である。
【
図12】第2実施形態の位置標定処理の手順を示す図である。
【
図13】第2実施形態の標定切替処理の手順を示す図である。
【
図14】第2実施形態の位置標定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0029】
(第1実施形態)
第1実施形態の位置標定システムの構成を
図2に示す。位置標定システムPは、到来方向測定装置1及び位置標定装置2から構成される。到来方向測定装置1は、スペクトル算出部11及び到来方向出力部12から構成される。位置標定装置2は、位置標定部22から構成される。位置標定システムPは、
図3に示す到来方向測定プログラム及び位置標定プログラムを、コンピュータにインストールすることにより実現される。
【0030】
スペクトル算出部11は、移動体が搭載するアンテナが受信した送信源からの受信波を取得し、信号部分空間法を用いて、受信波の到来方向のスペクトルを算出する。ここで、受信波の到来方向のスペクトルとして、MUSIC(Multiple Signal Classification)スペクトル等が挙げられる。そして、スペクトル算出部11は、MUSICスペクトルを算出するために、各アンテナ間の受信位相差の情報、各アンテナの搭載位置の情報及び各送信源の送信周波数の情報を取得する。
【0031】
位置標定部22は、到来方向の実測値と到来方向の予測値とが一致するように、送信源の位置を標定する。ここで、位置標定部22として、カルマンフィルタ等が挙げられ、カルマンフィルタ等の状態方程式として、固定点モデル(送信源が固定。)又は移動点モデル(送信源が移動。)等が挙げられ、カルマンフィルタ等の観測方程式として、三角測量方程式等が挙げられる。そして、位置標定部22は、送信源の位置を標定するために、到来方向の情報、移動体の位置姿勢の情報及び前回の標定位置の情報を取得する。
【0032】
ここで、従来技術の位置標定結果においては、送信源からの受信波の到来方向の測定結果は、180°旋回時に、送信源の真位置と航空機の位置とを結ぶ方向と一致しない方向を示している。その原因として、航空機の主翼又は胴体等によるマルチパスが、送信源と航空機に搭載のアンテナとの間に存在する。そして、一のアンテナの受信波と他のアンテナの受信波との相関が低くなり、受信波の到来方向のスペクトルの最大強度が低くなる。
【0033】
そこで、第1実施形態においては、航空機等の移動体の構造物によるマルチパスが、送信源と航空機等の移動体に搭載のアンテナとの間に存在するときに、受信波の到来方向のスペクトルの最大強度を与える受信波の到来方向の情報を、送信源の位置標定処理へ出力しないこととした。より具体的には、受信波の到来方向のスペクトルの最大強度が、所定強度閾値以下であるときに、受信波の到来方向のスペクトルの最大強度を与える受信波の到来方向の情報を、送信源の位置標定処理へ出力しないこととした。
【0034】
第1実施形態の位置標定処理の手順を
図3に示す。第1実施形態の到来方向出力の内容を
図4、5に示す。第1実施形態の強度閾値設定の内容を
図6に示す。スペクトル算出部11は、受信波を取得し(ステップS1)、MUSICスペクトルを算出する(ステップS2)。到来方向出力部12は、最大強度を抽出する(ステップS3)。
【0035】
到来方向出力部12は、最大強度が所定強度閾値以下であるときには(ステップS4、YES)、最大強度を与える到来方向の情報を送信源の位置標定処理へ出力しない(ステップS5)。位置標定部22は、到来方向の情報を取得せず(ステップS6)、今回の送信源の標定位置として前回の送信源の標定位置を出力する(ステップS7)。
【0036】
到来方向出力部12は、最大強度が所定強度閾値より大きいときには(ステップS4、NO)、最大強度を与える到来方向の情報を送信源の位置標定処理へ出力する(ステップS8)。位置標定部22は、到来方向の情報を取得し(ステップS9)、前回の送信源の標定位置に代えて今回の送信源の標定位置を出力する(ステップS10)。
【0037】
ここで、到来方向出力部12は、送信源とアンテナとの間に移動体によるマルチパスがあるかどうかを判定してもよい。そして、到来方向出力部12は、マルチパスがあるときには、最大強度を与える到来方向の情報を送信源の位置標定処理へ出力しなくてもよい。一方で、到来方向出力部12は、マルチパスがないときには、最大強度を与える到来方向の情報を送信源の位置標定処理へ出力してもよい。送信源の位置標定が続行されるときには(ステップS11、YES)、ステップS1に戻る。送信源の位置標定が続行されないときには(ステップS11、NO)、
図3のプログラムを終了する。
【0038】
図4では、MUSICスペクトルを示す。所定強度閾値は、
図6を用いて説明される。
図5では、移動体Vとしての航空機と送信源Tと間の位置関係を示す。複数のアンテナAは、移動体Vとしての航空機の胴体の下部に搭載される。移動体Vとしての航空機の主翼及び胴体によるマルチパスの有無は、レイトレイシング等を用いて判定される。
【0039】
図5の上段では、移動体Vとしての航空機は、主翼を水平面内から傾けており、移動体Vとしての航空機の主翼及び胴体によるマルチパスが、送信源Tと一のアンテナAとの間に存在する。
図4の上段は、
図5の上段に対応する。
図4の上段では、一のアンテナAの受信波と他のアンテナAの受信波との相関が低くなり、MUSICスペクトルの最大強度が低くなり、MUSICスペクトルの最大強度が所定強度閾値以下になる(ステップS4、YES)。よって、到来方向の情報の出力条件は、満たされていない(ステップS5)。その理由として、到来方向の測定結果の真到来方向からのずれは、送信源Tの位置標定の開始後の続行時に、送信源Tの真位置からの送信源Tの標定位置のずれを生じさせる。
【0040】
図5の下段では、移動体Vとしての航空機は、主翼を水平面内に置いており、移動体Vとしての航空機の主翼及び胴体によるマルチパスが、送信源Tと両アンテナAとの間に存在しない。
図4の下段は、
図5の下段に対応する。
図4の下段では、一のアンテナAの受信波と他のアンテナAの受信波との相関が高くなり、MUSICスペクトルの最大強度が高くなり、MUSICスペクトルの最大強度が所定強度閾値より大きくなる(ステップS4、NO)。よって、到来方向の情報の出力条件は、満たされている(ステップS8)。その理由として、到来方向の測定結果の真到来方向との一致は、送信源Tの位置標定の開始後の続行時に、送信源Tの真位置からの送信源Tの標定位置のずれをほぼ生じさせない。
【0041】
図6では、所定強度閾値の設定方法を示す。移動体Vとしての航空機は、一定高度の上空を旋回しており、送信源Tは、旋回円外の地上又は海上に位置している。移動体Vとしての航空機の主翼及び胴体によるマルチパスは、移動体Vが送信源Tから遠ざかるほど生じやすく、移動体Vが送信源Tへと近づくほど生じにくいとする。
【0042】
図6の上段では、所定強度閾値は、低過ぎる値に設定されている。すると、移動体Vが送信源Tへと近づくときのみならず送信源Tから遠ざかるときでも、到来方向の情報が間引かれないため、情報を出力されない到来方向の間引き量が少量となり、送信源Tの刻々の移動に対応することができる。しかし、移動体Vが送信源Tへと近づくときのみならず送信源Tから遠ざかるときでも、到来方向の情報が出力されるため、情報を出力される到来方向の測定精度が低精度となる。よって、送信源Tの位置標定精度が低精度となる。
【0043】
図6の下段では、所定強度閾値は、高過ぎる値に設定されている。すると、移動体Vが送信源Tから遠ざかるときを除いて送信源Tへと近づくときのみ、到来方向の情報が出力されるため、情報を出力される到来方向の測定精度が高精度となる。しかし、移動体Vが送信源Tから遠ざかるときを除いて送信源Tへと近づくときのみ、到来方向の情報が間引かれないため、情報を出力されない到来方向の間引き量が多量となり、送信源Tの刻々の移動に対応することができない。よって、送信源Tの位置標定精度が低精度となる。
【0044】
図6の中段では、所定強度閾値は、適切な値に設定されている。すると、移動体Vが送信源Tから遠ざかる/送信源Tへと近づく状態の中間の状態でも、到来方向の情報が出力されるため、情報を出力される到来方向の測定精度が中精度となる。そして、移動体Vが送信源Tから遠ざかる/送信源Tへと近づく状態の中間の状態でも、到来方向の情報が間引かれないため、情報を出力されない到来方向の間引き量が中程度となり、送信源Tの刻々の移動に対応することができる。よって、送信源Tの位置標定精度が高精度となる。
【0045】
そこで、
図6の中段に示したように、到来方向出力部12は、送信源Tの位置標定処理へ情報を出力する到来方向の測定精度が所定測定精度となるように、所定強度閾値を設定することが望ましい。例えば、所定測定精度は、移動体Vが送信源Tから遠ざかったときの到来方向の測定精度より高い測定精度であるとともに、移動体Vが送信源Tから遠ざかっても送信源Tへと近づいてもいないときの到来方向の測定精度と同程度の測定精度であるとすることができる。このように、MUSICスペクトルの最大強度に対する所定強度閾値を低くし過ぎないことにより、到来方向の測定精度を高くすることができ、ひいては、送信源Tの標定位置の標定精度を高くすることができる。
【0046】
そして、
図6の中段に示したように、到来方向出力部12は、送信源Tの位置標定処理へ情報を出力しない到来方向の間引き量が所定間引き量となるように、所定強度閾値を設定することが望ましい。例えば、所定間引き量は、移動体Vが送信源Tから遠ざかったときの到来方向の情報を間引く程度の間引き量であるとともに、移動体Vが送信源Tから遠ざかっても送信源Tへと近づいてもいないときの到来方向の情報を間引かない程度の間引き量であるとすることができる。このように、MUSICスペクトルの最大強度に対する所定強度閾値を高くし過ぎないことにより、到来方向の間引き量を少なくすることができ、ひいては、送信源Tの標定位置の標定精度を高くすることができる。
【0047】
さらに、
図6の中段に示したように、到来方向出力部12は、送信源Tの位置標定処理における送信源Tの位置標定精度が所定標定精度となるように、所定強度閾値を設定することが望ましい。例えば、所定標定精度は、送信源Tの刻々の移動に対応する程度の標定精度であるとすることができる。このように、MUSICスペクトルの最大強度に対する所定強度閾値を低くし過ぎないとともに高くし過ぎないことにより、到来方向の測定精度を高くすることができ、さらには、到来方向の間引き量を少なくすることができ、ひいては、送信源Tの標定位置の標定精度を高くすることができる。
【0048】
第1実施形態の位置標定結果を
図7に示す。三角印で示した航空機は、送信源の位置標定システムを搭載し、ひし形印で示した送信源を投下し、送信源の投下直後に直進し、しばらくの後に180°旋回し、180°旋回後に直進する。ひし形印で示した送信源は、送信源の投下位置にほぼ固定されている。航空機から延びる直線は、送信源からの受信波の到来方向の測定結果を示す。刻々と移動する丸印は、送信源の標定位置を示す。
【0049】
ここで、送信源の標定位置は、送信源の投下直後から、180°旋回時にかけて、不連続に飛んでいない。このように、送信源の位置標定を開始した後に続行するにあたり、送信源の標定位置が送信源の真位置からずれることを低減することができる。
【0050】
しかし、送信源の標定位置は、送信源の投下直後に、航空機の直進に伴って、連続的に直進している。そこで、送信源の位置標定を開始するにあたり、送信源の標定位置が送信源の真位置からずれることを低減するようにしたい(第2実施形態)。
【0051】
(第2実施形態)
第2実施形態の位置標定システムの構成を
図8に示す。位置標定装置2は、第1実施形態と比べて、位置標定部22に加えて、到来方向判定部21から構成される。位置標定システムPは、
図9、12、13に示す到来方向測定プログラム及び位置標定プログラムを、コンピュータにインストールすることにより実現される。
【0052】
ここで、従来技術の位置標定結果においては、送信源の標定位置は、送信源の投下直後に、航空機の直進に伴って、連続的に直進している。その原因として、送信源からの受信波の到来方向は、送信源の投下直後に、航空機の直進に伴って、ほぼ変化しない。そして、送信源からの受信波の到来方向の測定結果の些細な誤差は、送信源の投下直後の位置標定の開始時に、送信源の真位置からの送信源の標定位置のずれを生じさせる。
【0053】
そこで、第2実施形態においては、送信源からの受信波の到来方向が、航空機等の移動体の移動に伴って、大きく変化するときに、送信源の位置標定を開始することとした。より具体的には、送信源からの受信波の到来方向が、航空機等の移動体の移動方向に対して、左右方向範囲内にあるときに、送信源の位置標定を開始することとした。よって、送信源からの受信波の到来方向の測定結果の些細な誤差は、上記開始条件を満たす位置標定の開始時に、送信源の真位置からの送信源の標定位置のずれをほぼ生じさせない。
【0054】
第2実施形態の標定開始処理の手順及び内容を
図9~11に示す。ステップS21~S28は、それぞれ、ステップS1~S6、S8、S9と同様である。ステップS26、S28が実行された後は、それぞれ、ステップS21、S29に移る。
【0055】
到来方向判定部21は、到来方向の情報が取得されたうえで、移動体の移動方向に対する左右方向の周囲の所定方向範囲内に、到来方向がないか(ステップS29、NO)又は到来方向があるか(ステップS29、YES)を判定する。
【0056】
位置標定部22は、所定方向範囲内に到来方向がないと判定されたときには(ステップS29、NO)、送信源の位置標定を開始せず(ステップS30)、ステップS21に戻る。
【0057】
到来方向判定部21は、所定方向範囲内に到来方向があると判定したときには(ステップS29、YES)、到来方向の情報に基づいて、移動体が送信源から遠ざかっているか(ステップS31、遠ざかる)、移動体が送信源へと近づいているか(ステップS31、近づく)又は移動体が送信源を旋回しているか(ステップS31、旋回する)を判定する。
【0058】
位置標定部22は、所定方向範囲内に到来方向があるものの(ステップS29、YES)、移動体が送信源から遠ざかっていると判定されたときには(ステップS31、遠ざかる)、送信源の位置標定を開始せず(ステップS30)、ステップS21に戻る。
【0059】
位置標定部22は、所定方向範囲内に到来方向があるとともに(ステップS29、YES)、移動体が送信源へと近づいていると判定されたときには(ステップS31、近づく)、送信源の位置標定を開始し(ステップS32)、
図9のプログラムを終了する。
【0060】
位置標定部22は、所定方向範囲内に到来方向があるとともに(ステップS29、YES)、移動体が送信源を旋回していると判定されたときには(ステップS31、旋回する)、送信源の位置標定を開始し(ステップS32)、
図9のプログラムを終了する。
【0061】
図10では、移動体Vが送信源Tを通過する。
図11では、移動体Vが送信源Tを旋回する。移動体Vの移動方向に対する前方方向を0°方向とし、移動体Vの移動方向に対する後方方向を180°方向とし、移動体Vの移動方向に対する右側方向を90°方向とし、移動体Vの移動方向に対する左側方向を270°方向とする。移動体Vの移動方向に対する右側方向の周囲の所定方向範囲を、90°方向を中心とし0°方向及び180°方向の近傍を除外する範囲とし、移動体Vの移動方向に対する左側方向の周囲の所定方向範囲を、270°方向を中心とし0°方向及び180°方向の近傍を除外する範囲とする。
【0062】
図10の上段の左側では、移動体Vは、移動体位置R1に位置し、送信源Tへと近づく。そして、到来方向は、0°方向の近傍であり、所定方向範囲内にない(ステップS29、NO)。よって、送信源Tの位置標定の開始条件は、満たされていない(ステップS30)。その理由として、
図10の下段の左側に示したように、到来方向は、移動体Vの直進に伴って、ほぼ変化しないため、到来方向の測定結果の些細な誤差は、送信源Tの位置標定の開始時に、送信源Tの真位置からの送信源Tの標定位置のずれを生じさせる。
【0063】
図10の上段の中央では、移動体Vは、移動体位置R2に位置し、送信源Tへと最も近づく。そして、到来方向は、90°方向の近傍であり、所定方向範囲内にある(ステップS29、YES)。よって、送信源Tの位置標定の開始条件は、満たされている(ステップS32)。その理由として、
図10の下段の中央に示したように、到来方向は、移動体Vの直進に伴って、大きく変化するため、到来方向の測定結果の些細な誤差は、送信源Tの位置標定の開始時に、送信源Tの真位置からの送信源Tの標定位置のずれをほぼ生じさせない。
【0064】
図10の上段の右側では、移動体Vは、移動体位置R3に位置し、送信源Tから遠ざかる。そして、到来方向は、180°方向の近傍であり、所定方向範囲内にない(ステップS29、NO)。よって、送信源Tの位置標定の開始条件は、満たされていない(ステップS30)。その理由として、
図10の下段の右側に示したように、到来方向は、移動体Vの直進に伴って、ほぼ変化しないため、到来方向の測定結果の些細な誤差は、送信源Tの位置標定の開始時に、送信源Tの真位置からの送信源Tの標定位置のずれを生じさせる。
【0065】
図10の上段の左側と比べて、移動体Vが送信源Tへと近づいたときに、かつ、
図10の上段の中央と比べて、移動体Vが送信源Tへと近づいていないときに(ステップS29、YES及びステップS31、近づく)、送信源Tの位置標定の開始条件が満たされていることが望ましい(ステップS32)。その理由として、到来方向が移動体Vの移動に伴って大きく変化する期間を長くすることにより、送信源Tの位置標定精度を高くすることができる。
【0066】
図10の上段の中央と比べて、移動体Vが送信源Tから遠ざかったときに、かつ、
図10の上段の右側と比べて、移動体Vが送信源Tから遠ざかっていないときに(ステップS29、YES及びステップS31、遠ざかる)、送信源Tの位置標定の開始条件が満たされていないことが望ましい(ステップS30)。その理由として、到来方向が移動体Vの移動に伴って大きく変化する期間を短くしてしまうため、送信源Tの位置標定精度を低くしてしまう。
【0067】
図11の上段の左側、中央及び右側では、それぞれ、移動体Vは、移動体位置R1、R2、R3に位置し、送信源Tを旋回する(ステップS31、旋回する)。そして、到来方向は、90°方向の近傍であり、所定方向範囲内にある(ステップS29、YES)。よって、送信源Tの位置標定の開始条件は、満たされている(ステップS32)。その理由として、
図11の下段の左側、中央及び右側に示したように、それぞれ、到来方向は、移動体Vの旋回に伴って、90°方向の近傍のままであるため、到来方向の測定結果の些細な誤差は、送信源Tの位置標定の開始時に、送信源Tの真位置からの送信源Tの標定位置のずれをほぼ生じさせない。そして、到来方向が移動体Vの移動に伴って所定方向範囲内のままである期間を長くすることにより、送信源Tの位置標定精度を高くすることができる。
【0068】
第2実施形態の位置標定処理の手順を
図12に示す。
図12に示した位置標定処理は、
図9に示した標定開始処理に続いて行われる。ステップS41~S46、S48、S49は、それぞれ、ステップS21~S28と同様である。
【0069】
ステップS46が実行された後には、ステップS47に移る。位置標定部22は、送信源の位置標定を開始した後に(ステップS32)、到来方向の情報が取得されていないときでも(ステップS46)、送信源の位置標定を続行する(ステップS47)。つまり、位置標定部22は、到来方向の情報が取得されていないときでも(ステップS46)、今回の送信源の標定位置として前回の送信源の標定位置を出力する(ステップS47)。
【0070】
ステップS49が実行された後には、ステップS50に移る。位置標定部22は、送信源の位置標定を開始した後に(ステップS32)、所定方向範囲内に到来方向がないと判定されたときでも、送信源の位置標定を続行する(ステップS50)。つまり、位置標定部22は、所定方向範囲内に到来方向があるかどうかによらず、前回の送信源の標定位置に代えて今回の送信源の標定位置を出力する(ステップS50)。
【0071】
送信源の位置標定が続行されるときには(ステップS51、YES)、ステップS41に戻る。送信源の位置標定が続行されないときには(ステップS51、NO)、
図12のプログラムを終了する。このように、送信源の位置標定の中断によるカルマンフィルタ等への不定期な入力をなくすことにより、カルマンフィルタ等を適切に動作させることができる。
【0072】
第2実施形態の標定切替処理の手順を
図13に示す。
図13に示した標定切替処理は、
図12に示した位置標定処理に続いて行われる。位置標定部22は、先行する送信源の位置標定において、送信源の標定位置が所定程度に収束する前に、後続する送信源の位置標定を開始するにあたり、所定方向範囲内に到来方向があると判定されたことを開始条件とする。
【0073】
位置標定部22は、先行する送信源の位置標定において、開始条件が満たされていない状態から開始条件が満たされている状態へと遷移したときに、位置標定を開始する。
【0074】
位置標定部22は、先行する送信源の位置標定において、送信源の標定位置が所定程度に収束する前に、後続する送信源の位置標定を開始する。ここで、カルマンフィルタ等の状態方程式(固定点モデル(送信源が固定。)又は移動点モデル(送信源が移動。)等)は、先行する及び後続する送信源の位置標定において、同じでもよく異なってもよい。
【0075】
位置標定部22は、後続する送信源の位置標定において、開始条件が満たされていない状態から開始条件が満たされている状態へと遷移したときに、位置標定を開始する。
【0076】
位置標定部22は、後続する送信源の位置標定において、送信源の標定位置が所定程度に収束した後に、先行する送信源の位置標定を終了する。ここで、位置標定部22は、先行する送信源の位置標定において、開始時から終了時までの標定位置を採用する。そして、位置標定部22は、後続する送信源の位置標定において、開始時から収束時までの標定位置を採用せず、収束時から終了時までの標定位置を採用する。
【0077】
このように、先行する送信源の位置標定において、送信源の標定位置の収束後に標定位置を真位置に修正することができなくても、後続する送信源の位置標定において、送信源の標定位置の収束前に標定位置を真位置に修正することができる。
【0078】
第2実施形態の位置標定結果を
図14に示す。三角印で示した航空機は、送信源の位置標定システムを搭載し、ひし形印で示した送信源を投下し、送信源の投下直後に直進し、しばらくの後に180°旋回し、180°旋回後に直進する。ひし形印で示した送信源は、送信源の投下位置にほぼ固定されている。航空機から延びる直線は、送信源からの受信波の到来方向の測定結果を示す。刻々と移動する丸印は、送信源の標定位置を示す。
【0079】
ここで、送信源の標定位置は、送信源の投下直後に、航空機の直進に関わらず、送信源の投下位置にほぼ固定されている。このように、送信源の位置標定を開始するにあたり、送信源の標定位置が送信源の真位置からずれることを低減することができる。
【0080】
そして、送信源の標定位置は、送信源の投下直後から、180°旋回時にかけて、不連続に飛んでいない。このように、送信源の位置標定を開始した後に続行するにあたり、送信源の標定位置が送信源の真位置からずれることを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示の到来方向測定装置、到来方向測定プログラム及び位置標定システムは、航空機が送信源を投下したとき等に、送信源の位置標定を開始した後に続行するにあたり、送信源の標定位置が送信源の真位置からずれることを低減することができる。
【符号の説明】
【0082】
P:位置標定システム
V:移動体
T:送信源
A:アンテナ
D:左右方向範囲
R1、R2、R3;移動体位置
1:到来方向測定装置
2:位置標定装置
11:スペクトル算出部
12:到来方向出力部
21:到来方向判定部
22:位置標定部